図1,図2は本発明を採用した作業車両であるトラクタの側面図及び正面図である。トラクタの走行機体1は左右の下方にクローラタイプの走行装置2L,2Rを備えている。各走行装置2L,2Rは、駆動スプロケット3とアイドラ4との間にクローラ6が巻き回された構造となっている。
図3に示されるように、各駆動スプロケット3内には油圧モータ5が内装されている。各油圧モータ5,5には、各々に対して油圧ポンプ7L,7R(図4参照)が設けられている。各油圧モータ5,5と各々対応する油圧ポンプ7L,7RとによってHST変速装置が構成されている。各油圧モータ5,5は、それぞれ対応する油圧ポンプ7L,7Rによって無段階に変速される。
油圧モータ5には、減速ギヤユニット5aが取り付けられている。該減速ギヤユニット5aには、油圧モータ5の出力回転軸(ロータ軸)5Sから駆動力が入力されている。駆動スプロケット3は減速ギヤユニット5aの出力側に取り付けられている。左右の駆動スプロケット3,3は、減速ギヤユニット5aを介して油圧モータ5によって駆動される。油圧モータ5のロータ軸5Sは、走行機体1の内側に向かっても突出している。ロータ軸5Sの走行機体1の端部側は、ベアリング10aを内装した軸受け部10によって回動自在に支持されている。
油圧モータ5,5は、油圧ポンプ7L,7Rによって変速されるため、最終的に左右のクローラ6,6は、各々対応するHST変速装置によって変速駆動される。両油圧モータ5,5により左右のクローラ6,6を同一速度で回転駆動することによって走行機体1は直進する。左側のクローラ6の回転速度と右側のクローラ6の回転速度に差を設けることによって、走行機体1は、回転速度が小さい側に旋回する。
図4に示されるように、左右の油圧ポンプ7L,7Rには、回動操作されることによって、対応する側の油圧モータ5,5の変速操作を行うトラニオン軸8L,8Rが設けられている。左右の各トラニオン軸8L,8Rには各々トラニオンレバー9L,9Rが設けられている。トラニオンレバー9L,9Rの揺動操作によってトラニオン軸8L,8Rが回動操作され、油圧モータ5,5の変速が行われ、各走行装置2L,2Rの駆動速度(クローラ6,6の回転速度)が変速される。
走行機体1の運転席11内には、図4に示されるように、旋回操作可能なステアリングハンドル12と前後揺動可能な主変速レバー13とが設けられている。ステアリングハンドル12及び主変速レバー13は油圧ポンプ7L,7Rの操作ユニット14に連結接続されている。
操作ユニット14には、左右のトラニオンレバー9L,9Rを各々操作する左右のワイヤ16L,16Rが設けられている。左側のワイヤ16Lはインナ17Lとアウタ18Lとからなり、右側のワイヤ16Rはインナ17Rとアウタ18Rとからなる。左側のインナ17Lの端部は、左側のトラニオンレバー9Lに連結されている。右側のインナ17Rの端部は、右側のトラニオンレバー9Rに連結されている。
操作ユニット14は、ステアリングハンドル12の左又は右への旋回操作及び主変速レバー13の前後揺動操作に応じて左右のインナ17L,17Rを操作する。操作ユニット14は、主変速レバー13の前後揺動操作時に、左右のインナ17L,17Rを、左右両方同時に同方向に同量操作する。
操作ユニット14は、ステアリングハンドル12の左側への旋回操作時には、左側のインナ17Lを操作し、ステアリングハンドル12の右側への旋回操作時には、右側のインナ17Rを操作する。インナ17L,17Rの操作量は、主変速レバー13の揺動角度及びステアリングハンドル14の切れ角(旋回角)に対して比例的に増減する。
以上により走行機体1は前方又は後方に、主変速レバー13の揺動角度(各ポジション)に応じた速度で走行し、ステアリングハンドル12の位置をセンタ(中立位置)に合わせると、ステアリングハンドル12の旋回操作に基づくインナ17L又は17Rの操作が行われないため、左右の油圧モータ5,5が同速で駆動され、走行機体1が直進する。
またステアリングハンドル12を左又は右に旋回操作すると、ステアリングハンドル12の切れ角に対して比例的にインナ17L又は17Rが操作され、左側のインナ17L又は右側のインナ17Rによって左又は右の油圧モータ5が減速側に操作され、左側の走行装置2L又は右側の走行装置2Rの駆動速度が減速され、走行機体1が左又は右に旋回する。
なおステアリングハンドル12を左又は右に旋回操作すると、右側のインナ17R又は左側のインナ17Lによって右又は左側の油圧モータ5を増速側に操作し、右側の走行装置2R又は左側の走行装置2Lの回転速度を増速することによって、走行機体1を左又は右に旋回させるように構成することもできる。
図4に示されるように、左右の両アウタ18L,18Rの油圧ポンプ7L,7R側は、各々左右の支持体19L,19Rによって支持されている。各支持体19L,19Rには、電気的にスライドするリニアアクチュエータ22L,22Rのロッド21が連結されている。リニアアクチュエータ22L,22Rは走行機体1側に取り付けられており、リニアアクチュエータ22L,22Rを駆動することによってアウタ18L,18Rの支持位置が変更される。
支持体19L,19Rは、アウタ18L,18Rの支持位置の変更によって、トラニオンレバー9L,9Rの揺動角度が変更されるように設けられている。これにより左右のトラニオンレバー9L,9Rの揺動操作、つまり左右の油圧モータ5,5の変速操作は、操作ユニット14によるインナ17L,17Rの操作以外に、リニアアクチュエータ22L,22Rの駆動によるアウタ18L,18Rの支持位置の調節によっても行われる。
上記リニアアクチュエータ22L,22Rと支持体19L,19Rとによるアウタ18L,18Rの支持構造によって、各油圧モータ5,5の回転数を調節する調節装置が構成されている。そして左右のリニアアクチュエータ22L,22Rは、図5に示されるように、走行制御用のマイコンユニット23の出力側に接続されている。マイコンユニット23を制御装置として調節装置(リニアアクチュエータ22L,22R)の作動が制御される。
マイコンユニット23の入力側には、左右の油圧モータ5,5の回転数を検出する左右の駆動回転センサ26L,26R(詳細は後述する)と、左右のトラニオンレバー9L,9Rの揺動角度を検出する左右のレバーセンサ27L,27Rと、主変速レバー13の揺動角度を検出する主変速センサ28と、ステアリングハンドル12の旋回方向と旋回角度(切れ角)を検出するステアリングセンサ29とが接続されている。
図6に示されるように、左右の各軸受け部10には、回転検出ユニット15が設けられている。回転検出ユニット15は軸受け部に固定されるブロック20に構成されている。ブロック20には、ロータ軸5S,5Sの走行機体1内側の突出端側に連結される回転軸25が回転自在に軸支されている。
該回転軸25には、周面に所定のピッチで複数の歯が設けられた平ギヤ31が一体回転するように取り付けられている。図7に示されるように、各平ギヤ31の周面の外側に、平ギヤ31の歯を非接触で検出するように、3つの磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cがブロック20に取り付けられて設けられている。
回転検出ユニット15が、平ギヤ31の歯を3つの磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cが非接触で検出するように構成されているため、軸受け部10にブロック20をシールして取り付けることによって、回転検出ユニット15を防水性を高めて軸受け部10側に取り付けることができる。また非接触であるため回転検出ユニット15の耐久性は高い。
左右それぞれ3つの磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cによって、左右の各駆動回転センサ26L,26Rが構成されている。マイコンユニット23の入力側には、左右の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cの出力が接続されている。各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cを第1磁気ピックアップセンサ32a,第2磁気ピックアップセンサ32b,第3磁気ピックアップセンサ32cとする。
図8に示されるように、第1磁気ピックアップセンサ32aと第2磁気ピックアップセンサ32bは、第1磁気ピックアップセンサ32aが、所定の歯33aの幅方向(周方向)の中心を検出すると、第2磁気ピックアップセンサ32bが、上記歯33aの他の歯33bを、幅方向の中心から歯のピッチ(1歯ピッチ)の1/3(1/3歯ピッチ)間隔、回転方向又は反回転方向にずれた位置で検出するように配置されている。
また第3磁気ピックアップセンサ32cは、図8に示されるように、第1磁気ピックアップセンサ32a及び第2磁気ピックアップセンサ32bが上記状態のときに、第1磁気ピックアップセンサ32a及び第2磁気ピックアップセンサ32bによって検出する歯33a,33bとは異なる他の歯33cを、幅方向の中心から歯のピッチの2/3(2/3歯ピッチ)間隔、第2磁気ピックアップセンサ32bの場合と同じ方向にずれた位置で検出するように配置されている。
各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cは、上記配置により、論理的には、図9のモデル図に示されるように、所定の歯33xを1/3歯ピッチ間隔で検出するように、1/3歯ピッチ間隔で配置されることになる。これにより各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cは、回転する平ギヤ31の歯の検出を1/3歯ピッチずつずれた異なる位相で行なう。
各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cが、平ギヤ31の歯底を検出するとロー(L)を、歯を検出するとハイ(H)を出力する場合、各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cからは、歯の1ピッチ毎に歯の幅でHが出力される波形の電気信号が出力される。
ただし各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cから出力される歯の検出波形は、図10(a),(b),(c)のモデル図に示されるように、1/3歯ピッチずつ位相ズレしたものとなる。なお図10(a)が第1磁気ピックアップセンサ32aによって得られる歯の検出波形、図10(b)が第2磁気ピックアップセンサ32bによって得られる歯の検出波形、図10(c)が第3磁気ピックアップセンサ32cによって得られる歯の検出波形である。
このため3つの各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cの出力を合成した図10(d)に示される合成波形では、歯の1ピッチの間に、3回Hが出力される電気信号となる。つまり合成波形においては、油圧モータ5のロータ軸5Sが1回転すると、平ギヤ31が1回転するため、平ギヤ31の歯数の3倍数のHが出力される。
本トラクタには、上記合成波形に基づいて油圧モータ5のロータ軸5Sの回転数、つまり油圧モータ5の回転数を演算する演算手段が設けられている。該演算手段は、上記マイコンユニット23側に記憶されている演算プログラムに基づいてマイコンユニット23が作動することによって実現される。
演算手段(マイコンユニット23)は、演算プログラムによって、上記合成波形において、所定のサンプリング時間内に出力されるHの合計出力回数に基づいて、油圧モータ5の回転数を演算を行なうように構成される。なお1つHが出力されるということは、いずれかの磁気ピックアップセンサ32a又は32b又は32cによって1回歯を検出しているということである。
したがって「所定のサンプリング時間内に出力されるHの合計出力回数」は、「所定のサンプリング時間内の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cによる平ギヤ31の歯の延べ検出回数」と同じである。言い換えれば上記演算手段は、所定のサンプリング時間内の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cによる平ギヤ31の歯の延べ検出回数に基づき油圧モータ5の回転数を演算を行なう。
そして上記平ギヤ31の歯数をn、サンプリング時間をt秒,Hの合計出力回数をxとすると、演算プログラムは、回転数y(rpm)を、
y=(20・x)/(t・n)
としてマイコンユニット23に演算させるように設定されている。
演算手段は、上記のように油圧モータ5の回転数の演算を行なうため、1つのセンサによってサンプリング時間内のギヤの歯の延べ検出回数を測定する場合に比較して、歯の1ピッチに対して等ピッチで3倍の情報を得ることができる。このため同じサンプリング時間であれば、より多くの回数歯を検出することができる。
また歯の1ピッチに対して3回Hが出力されるため、1/3歯ピッチの誤差でロータ軸5Sの回転角度を検出することができる。なお1つのセンサによってサンプリング時間内のギヤの歯の延べ検出回数を測定する場合、歯の1ピッチの誤差が発生する。これにより、サンプリング時間内の回転回数(回転角度)がより小さな誤差で正確に求められる。
以上により本演算手段を使用することによって、サンプリング時間を短くしても、より多くの回数Hが出力され、且つサンプリング時間内のロータ軸5Sの回転角度がより小さな誤差で求められるため、油圧モータ5の回転数を正確に検出することができる。このためサンプリング時間を短くして、油圧モータ5の回転数の全検出期間中のサンプリング回数を増加させることができ、油圧モータ5の回転数検出が更に正確に行われる。例えばサンプリング時間を200msec程度として正確に回転数を検出することができる。また回転方向は、時間経過に対するHの出力波形の立上がりと立下りが逆になることによって検出することができる。
一方上記演算プログラムを、合成波形のHの出力時間間隔に基づいて油圧モータ5の回転数演算を行なうように構成することもできる。なお1つHが出力されるということは、いずれかの磁気ピックアップセンサ32a又は32b又は32cによって1回歯を検出しているということであるため、「合成波形のHの出力時間間隔」は、「各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cにより検出される平ギヤ31の歯の検出時間間隔」と同じである。言い換えればこの場合上記演算手段は、各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cにより検出される平ギヤ31の歯の検出時間間隔に基づいて油圧モータ5の回転数を演算する。
そして上記平ギヤ31の歯数をn、Hの出力時間間隔をg秒とすると、演算プログラムは、回転数y(rpm)を、
y=20/(g・n)
としてマイコンユニット23に演算させるように設定されている。
この場合演算手段は、上記のように油圧モータ5の回転数の演算を行なうため、1つのセンサによって検出されるギヤの歯の検出時間間隔を測定する場合に比較して、歯の1ピッチの回転に対して3回ロータ軸5Sの回転数の情報を得ることができる。このため油圧モータ5の回転数の全検出期間中の回転数演算回数が増加し、油圧モータ5の回転数検出をより正確に行うことができる。
一方ステアリングハンドル12をセンタに合わせると、前述のように走行機体1は主変速レバー13の揺動位置に応じた速度で直進する。ただしステアリングハンドル12を正確にセンタに位置させないと走行機体1が左又は右方向に曲がるというセッティングでは、操作性が悪いため、ステアリングハンドル12が、センタ位置を中心として左右に所定の遊びを含む範囲(中立範囲)に位置している場合は、走行機体1を直進させるように両油圧モータ5,5の回転数を一致させる制御手段(直進補正手段)が設けられている。
上記直進補正手段は、マイコンユニット23側に記憶されている走行制御プログラム中で実行される。つまり走行制御プログラムに基づいてマイコンユニット23が走行機体1の走行制御を行なう走行制御手段として機能する際に、上記直進補正手段が作動する。
上記走行制御手段は、図11のフローチャートに示されるように、ステップS1において走行機体1が走行中か否かをチェックする。走行中か否かのチェックは駆動回転センサ26L,26Rからの情報に基づき簡単に行うことができる。ステップS1において走行機体1が走行中の場合は、ステップS2に進み、ステアリングハンドル12が中立範囲内に位置しているか否かをステアリングセンサ29からの情報に基づき判断する。
ステップS2においてステアリングハンドル12が中立範囲内に位置している場合には、ステップS3に進み、前回のチェックで走行機体1が「直進走行状態」であったか否かをチェックする。ステップS3において、前回「直進走行状態」ではなかった場合は、ステップS4に進み、「待ち時間中フラグ」のチェックを行う。
ステップS4において「待ち時間中フラグ」がセットされている場合は、ステップS5に進み、待ち時間が経過したか否かをチェックする。ステップS4において「待ち時間中フラグ」がセットされていない場合は、ステップS6に進み、「待ち時間中フラグ」をセットした後、ステップS7に進み、待ち時間タイマをセットし、ステップS5に進み、待ち時間が経過したか否かをチェックする。
ステップS5において待ち時間が経過していない場合は、ステップS1にリターンする。ステップS5において待ち時間が経過している場合は、ステップS8に進み、「待ち時間中フラグ」をクリア(リセット)し、ステップS9に進み、直進補正手段を作動させて直進補正制御を行い、リターンする。
なおステップS3において、前回も「直進走行状態」であった場合は、直進走行の継続中であり、ステップS3から直接ステップS9に進み直進補正制御を行う。またステップS1において走行中ではなかった場合、ステップS2においてステアリングハンドル12が中立範囲内に位置していない場合は、リターンする。ステアリングハンドル12が中立範囲内に位置していない場合は、走行機体1の旋回操作中と考えられるため、別途旋回時の制御が行われる。
上記走行制御によって、ステアリングハンドル12を中立範囲内に位置させると、直進補正制御が行なわれ、走行機体1が直進する。ただしステアリングハンドル12を旋回操作して走行機体1を旋回させた後、ステアリングハンドル12を中立範囲内に戻すと、ステアリングハンドル12の位置が中立範囲に入った直後は、ステップS3において前回の判定が「直進走行状態ではない」と判断される。
このため、ステップS4→ステップS6→ステップS7→ステップS5と進み、待ち時
間が経過するまではステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5を繰り返すことになり、待ち時間が経過する間は、上記のようにステアリングハンドル12を中立範囲内に戻しても、直進補正制御が行なわれない。
待ち時間タイマによって設定される上記待ち時間は、ステアリングハンドル12が中立範囲に入った後、左右の油圧モータ5,5の回転速度が安定する(ステアリングハンドル12の位置に対応する本来の速度となる)までの時間が設定されており、走行機体1を旋回させた後、ステアリングハンドル12を中立範囲内に戻して走行機体1を直進させるような操作を行うと、油圧モータ5,5の回転速度が安定するまで直進補正制御が規制され、旋回終了に伴う走行機体1の不自然な作動が防止され、旋回直後の走行フィールや直進安定性の低下等が防止される。
一方上記直進補正手段は、マイコンユニット23側に記憶されている直進補正プログラムに基づいてマイコンユニット23が作動することによって実現される。そして直進補正手段による直進補正制御の作動フローは、図12に示されるように、まずステップS1において、各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32c毎に、所定のサンプリング時間内のHの出力回数をパルス数として取得してステップS2に進む。
ステップS2では、左側の油圧モータ5側の第1磁気ピックアップセンサ32aから出力されたHの出力回数L1と、左側の油圧モータ5側の第2磁気ピックアップセンサ32bから出力されたHの出力回数L2との差の絶対値(|L1−L2|)を演算し、1と比較する。
ステップS2において、|L1−L2|≦1の場合は、ステップS3に進み、左側の油圧モータ5側の第2磁気ピックアップセンサ32bから出力されたHの出力回数L2と、左側の油圧モータ5側の第3磁気ピックアップセンサ32cから出力されたHの出力回数L3との差の絶対値(|L2−L3|)を演算し、1と比較する。
ステップS3において、|L2−L3|≦1の場合は、ステップS4に進み、左側の油圧モータ5側の第3磁気ピックアップセンサ32cにより発生したパルス数L3と、左側の油圧モータ5側の第1磁気ピックアップセンサ32aにより発生したパルス数L1との差の絶対値(|L3−L1|)を演算し、1と比較する。
ステップS4において、|L3−L1|≦1の場合は、ステップS5に進み、右側の油圧モータ5側の第1磁気ピックアップセンサ32aから出力されたHの出力回数R1と、右側の油圧モータ5側の第2磁気ピックアップセンサ32aから出力されたHの出力回数R2との差の絶対値(|R1−R2|)を演算し、1と比較する。
ステップS5において、|R1−R2|≦1の場合は、ステップS6に進み、右側の油圧モータ5側の第2磁気ピックアップセンサ32bから出力されたHの出力回数R2と、右側の油圧モータ5側の第3磁気ピックアップセンサ32cから出力されたHの出力回数R3との差の絶対値(|R2−R3|)を演算し、1と比較する。
ステップS6において、|R2−R3|≦1の場合は、ステップS7に進み、右側の油圧モータ5側の第3磁気ピックアップセンサ32cから出力されたHの出力回数R3と、右側の油圧モータ5側の第1磁気ピックアップセンサ32aから出力されたHの出力回数R1との差の絶対値(|R3−R1|)を演算し、1と比較する。
ステップS7において、|R3−R1|≦1の場合は、ステップS8に進み、左側の油圧モータ5側の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cから出力されたHの出力回数の合計(LT=L1+L2+L3)を演算するとともに、右側の油圧モータ5側の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cから出力されたHの出力回数の合計(RT=R1+R2+R3)を演算し、ステップS9に進む。
ステップS9では、左側の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cによって発生したパルス数の合計(LT)と右側の各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cによって発生したパルス数の合計(RT)の差の絶対値を演算し、1と比較する。|LT−RT|<1の場合、つまりLT=RTの場合は、両油圧モータ5,5が等速で駆動されているということであり、ステップS10からリターンする。
ステップS9において、|LT−RT|<1ではない場合、つまり|LT−RT|≧1の場合は、ステップS10に進み、LTとRTの大小を比較し、LT>RTの場合は、左側の油圧モータ5の方がサンプル時間内のHの出現回数が多く、回転数が右側に比較して早いということであるため、ステップS11に進み、右側の油圧モータ5を増速してリターンする。
ステップS10において、LT<RTの場合は、右側の油圧モータ5の方がサンプル時間内のHの出現回数が多く、回転数が左側に比較して早いということであるため、ステップS12に進み、左側の油圧モータ5を増速してリターンする。上記左又は右の油圧モータ5の変速操作はマイコンユニット23によってリニアアクチュエータ22L又は22Rを作動させることによって行なわれ、増速量は|LT−RT|の値に比例して設定される。以上により左右の油圧モータ5,5の回転数が補正されて同一となる。
なお各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cが、突発的に歯の検出を出力しない(Hを出力しない)場合や、マイコンユニット23側が突発的にHを受け付けない場合があり得る。ただし継続して歯の検出を出力しない場合や、継続してHを受け付けない場合は、センサ32a,32b,32cやマイコンユニット23の故障等が考えられるが、突発的な出力ミスや入力ミスは、単発的と考え、この回の制御は行わずに処理を続行することが効率的であり、望ましい。
上記構成の場合、左右同じ側(左又は右)の各3つの磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cは、サンプリング時間内においてHの出力回数の誤差は1回である。1回を超える回数の差がある場合は、歯の検出ミスを犯しているセンサがあったり、所定のセンサからのH出力をマイコンユニット23側が受け付けていないと考えられる。
このためステップS2,S3,S4,S5,S6,S7において、各差の絶対値が1を越える場合は、ステップS13に進み、タイマカウントを行ない、ステップS14に進み、タイマのタイムアウトをチェックする。タイムアウト前の場合は、ステップS1に戻り、タイムアウトまで各差の絶対値が1を越え続ける場合は、ステップS15に進み磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cの異常を報知する警報を作動させてリターンする。
上記処理により、タイムアウト時間内の歯の検出ミスや、検出信号の入力ミス等は、単発的なミスとして処理され、歯の検出ミスや、検出信号の入力ミス等が発生した時の油圧モータ5,5の増減速(ステップS11,S12)を行なわない。この場合上記ミスがあった回の油圧モータ5,5の増減が行なわれないため、左右の油圧モータ5,5の等速の精度が低下するが、前述のようにサンプリング時間を極めて短くとることができるため、全体の精度低下に対する影響はほとんどない。
このため大きな直進性の低下を引き起こすことなく、単発的な歯の検出ミスや、検出信号の入力ミスによる頻繁な走行停止が防止され、走行性能と作業効率を両立させることができる。
また1度歯の検出ミスや、検出信号の入力ミス等が発生し、タイムアウトまでこれらのミスが継続する(各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cからのHの出力回数の誤差が1回を超え続ける)と、「センサ異常」が報知されるため、センサ報知によって走行機体1を停止させることができる。
左右の油圧モータ5,5の回転数を上記のように前述の合成波形を使用し、サンプリング時間内に各磁気ピックアップセンサ32a,32b,32cから出力されるHの検出回数の左右毎の合計が一致するように制御することによって、左右の油圧モータ5,5の回転数が一致する。この場合前述のようにサンプリング時間内に得られるHの検出回数は多い。
このため左右の油圧モータ5,5の回転数を一致させる制御を比較的大きな数値を用いて行うことができ、制御を容易且つ正確に行うことができる。また前述のように左右の油圧モータ5,5のサンプリング時間内の回転角度を1/3歯ピッチで検出することができるため、直進補正手段による直進補正の精度(左右の油圧モータ5,5の回転数の一致精度)は高い。
なお本実施形態においては、両方の油圧モータ5,5の回転数をリニアアクチュエータ22L,22Rによって調節するように構成したが、いずれか一方の油圧モータのみの回転数を調節するように構成し、常に回転数の調節が可能な側の油圧モータを、他方の油圧モータの回転数に合わせて調節し、直進補正制御を行うように構成することもできる。
この場合、例えば右側の油圧モータのみ回転数の調節が可能な場合は、図12のフローチャートのステップS12を「右減速」とすればよい。なお左側の油圧モータのみ回転数の調節が可能な場合は、図12のフローチャートのステップS11を「左減速」とすればよい。減速量は|LT−RT|の値に比例して設定すればよい。
また回転方向は、前述のように時間経過に対するHの出力波形の立上がりと立下りが逆になることによって検出することができるため、Hの出力波形の立上がりと立下りを考慮するように演算させることによって油圧モータ5,5の回転数及び回転方向をコントロールすることもできる。