JP2006081502A - 風味、呈味改善剤及びその製造方法 - Google Patents

風味、呈味改善剤及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、乳、脱脂乳、ホエイ等を原料として製造される、食品にコク味や旨味などを付与し得る風味、呈味改善剤、及びその製造方法、並びに該風味、呈味改善剤を含有する食品を提供する。
【解決手段】乳、脱脂乳又はホエイの膜分離透過液を蛋白質分解酵素で処理することを特徴とする風味、呈味改善剤の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、飲食品の風味、呈味改善剤及びその製造方法に関する。
乳は、蛋白質、脂質、糖質、灰質、水分を含んでおり、遠心分離工程などを経て脱脂乳やクリームに、また、チーズ製造工程を経てホエイ等の成分に分画することが行われている。また、乳、脱脂乳及びホエイは、限外濾過膜(以下、UF膜ともいう)などの膜分離技術を用いて濃縮物(濃縮脱脂乳、WPC,WPI等)と透過液に分離することができる。
これらの乳由来の分離物を呈味性改善剤等に用いる報告例として、次のようなものがある。
例えば、チーズを製造する過程で大量の副産物として排出されるホエイを吸着剤と接触させたのち、エチルアルコール溶液を用いて吸着成分を該吸着剤から溶出して乳製品フレーバーを得る技術が、特許文献1に記載されている。
また、ホエイ等の蛋白の酵素分解処理物をフレーバー付与剤として用いる場合、酵素分解で生じる苦味ペプチド由来の苦味の問題があるが、特許文献2には、この問題を解決するために、プロテアーゼ処理後、麹酵素により熟成させる技術が記載されている。
また、特許文献3には、乳清蛋白質のプロテアーゼ処理物及び乳脂のリパーゼ処理物を有効成分として含有する飲食品の風味改良剤が記載されている。
特開2003−169626 特許第2674695号公報 特開平9−37735号公報(特許第3274792号公報)
しかしながら、上記の先行技術に記載の呈味性改善剤では、呈味性の改善効果は必ずしも充分ではなく、特に、食品に共通するおいしさの成分であるコク味や旨味などの改善乃至増強効果については不十分であった。
そこで、本発明は、乳、脱脂乳、ホエイ等を原料として製造される、食品にコク味や旨味などを付与し得る風味、呈味改善剤及びその製造方法、並びに該風味、呈味改善剤を含有する食品を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、乳、脱脂乳又はホエイを分離膜で処理し、得られる透過液を蛋白質分解酵素で処理して得られた酵素分解物が、種々の飲食品に対して強いコク味及び旨味増強作用を有することを見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のコク味・旨み増強剤を下位概念として含む風味、呈味改善剤(以下、風味、呈味改善剤という)、その製造方法、及び該改善剤を含む食品を提供する。
項1.乳、脱脂乳又はホエイの膜分離透過液を蛋白質分解酵素で処理することを特徴とする風味、呈味改善剤の製造方法。
項2.項1に記載の製造方法により製造される風味、呈味改善剤。
項3.項2に記載の風味、呈味改善剤を含む食品。
項4.食品の風味、呈味を改善するための項2に記載の風味、呈味改善剤の使用。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜分離透過液は、乳、脱脂乳及びホエイを分離膜で処理した後の透過液を意味する。本発明に用いられる乳、脱脂乳及びホエイは特に限定はなく、例えば、次のようなものが用いられる。
乳としては、例えば、牛乳のほか、山羊乳、羊乳、水牛乳、ロバ乳等が挙げられるが、特に牛乳が好ましい。
脱脂乳としては、例えば、上記乳を遠心分離することにより脂質を低減したもの、特に、脂質を0.1〜0.5重量%(以下「%」とも表記する)程度にしたものが挙げられる。
また、ホエイとしては、上記乳や脱脂乳からレンネットを用いて各種のチーズを製造する過程で、カードを分離した後に廃棄物として残るレンネットチーズホエイと呼ばれる水性成分や、酸を用いてチーズを製造する過程で、廃棄物として残る酸ホエイがある。更にまた、カゼインの製造時にレンネットを用いて生じるレンネットカゼインホエイや酸を用いて生じる酸ホエイがある。なお、本発明で用いるホエイとは、後述の分離膜で処理されていないものを意味する。
本発明で用いられる分離膜としては、限外濾過膜、精密濾過膜等を挙げることができる。乳、脱脂乳又は酸ホエイを膜分離対象とする場合の限外濾過膜は、分画分子量が1,000〜800,000Da程度のものであれば良く、好ましくは500,000Da程度以下、より好ましくは50,000Da程度以下のものが好適である。また、レンネットチーズホエイ又はレンネットカゼインホエイを膜分離対象とする場合の限外濾過膜は、分画分子量が30,000Da程度以下、より好ましくは10,000Da程度以下、更には5,000Da程度以下のものが好適である。
乳、脱脂乳又は酸ホエイを膜分離対象とする場合の精密濾過膜の孔径は、0.1〜0.7μm程度、好ましくは0.1〜0.5μm程度、更に好ましくは0.1〜0.3μm程度である。
分離膜の材質としては、高分子材質でも無機材質でもよいが、アルミナ、ジルコニア、チタニア等を用いたセラミックスや酢酸セルロース、ポリサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリスルフォン等の高分子材質が適している。特に、親水性又は耐熱性の高い、ポリオレフィン、ポリスルフォンが好適に用いられる。また、分離膜の形状は、平膜、管状膜、中空糸膜等を用いることができ、モジュールの型もスパイラル型、チューブラ型、プレート&フレーム型、中空糸型等を用いることができる。特に、容積当たりの膜面積が大きい、透過能力が優れている、スパイラル型、中空糸型が好適に用いられる。いずれも安定した濾過流束を確保するために、膜面に沿って処理液を流すクロスフロー濾過を採用するのが好ましい。
特に好ましくは、限外濾過(UF; ultrafiltration)膜及び精密濾過とも、膜材質としてポリスルフォン、膜形状として中空糸型モジュールが用いられる。具体的には、日本アブコー社製、限外濾過膜HF66-60-PM50型、精密濾過膜、HF66-43-PMF0.1等が例示される。
なお、本発明の膜分離透過液は、上述したように、乳、脱脂乳及びホエイを分離膜で処理した後の透過液を意味し、分離膜により濃縮される成分は含まれない。例えば、レンネットチーズホエイを限外濾過膜で濃縮して製造されるホエイ蛋白質濃縮物(WPC)、レンネットチーズホエイを樹脂等で精製してその後限外濾過膜で濃縮製造されるホエイ蛋白質分離物(WPI)等の各溶液は含まれない。また、本発明の膜分離透過液には、膜処理されていないレンネットチーズホエイ等は当然の事ながら含まれない。
得られる分離膜透過液中の固形分濃度は、通常、蛋白質が0.01〜0.8重量%程度、乳糖4.0〜4.7重量%程度に分離されて、次の蛋白質分解酵素処理に供される。

次に、該膜分離透過液を蛋白質分解酵素で処理する。 本発明に用いられる蛋白質分解酵素は、プロテアーゼまたはペプチターゼとも呼ばれ、ペプチド結合の加水分解反応を触媒する酵素の総称である。この酵素には、セリンプロテアーゼ、シスチンプロテアーゼ、アスパルティックプロテアーゼ、金属プロテアーゼなどのエンドペプチダーゼおよびアミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジペプジルアミノペプチダーゼ、ジペプジルカルボキシペプチダーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、金属カルボキシペプチダーゼなどのエキソペプチダーゼが挙げられる。これらの酵素は大部分が市販されており、容易に入手が可能である。
例えば、オリエンターゼONS、オリエンターゼ20A、オリエンターゼ90N、オリエンターゼ10NL、ヌクレイシン(以上、阪急バイオインダストリー社製)、トリプシン、フレーバーザイム1,000L、アルカラーゼ2.4L、ニュートラーゼ0.5L(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、コクラーゼP(三共社製)、パパインW−40、ブロメラインF、プロレザー、パンクレアチンF、プロテアーゼM「アマノ」、プロテアーゼA「アマノ」、プロテアーゼN「アマノ」、プロテアーゼP「アマノ」、ウマミザイムG、ヌクレアーゼ「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ビオプラーゼSP−15FG、パパイン、デナチームAP、デナプシン10P(以上、ナガセケムテックス社製)、プロチンAY−10、プロチンNY−10、サモアーゼY−10(大和化成社製)などが挙げられる。前記蛋白質分解酵素の中でもペプチターゼ、中でもエキソペプチダーゼが好ましい。
また、蛋白質分解酵素は単独でも用いられるが、2種以上組み合わせて用いるのが良い。特に好ましくは、パンクレアチンF、トリプシン等の動物由来の酵素、ブロメラインF、パパイン等の植物由来の酵素およびウマミザイムG、プロテアーゼM等の微生物由来の酵素をそれぞれ少なくとも1つを含む3種以上の酵素を組み合わせて用いるのが、旨味、コク味およびボリューム感が増大する点で良い。
本発明においては、必要に応じ、蛋白質分解酵素に加えて乳糖分解酵素を併用することもできる。
蛋白質分解酵素の使用量は、酵素の種類あるいは酵素活性などによって異なるが、膜分離透過液中の蛋白質1gに対して一般に約100unit〜約500万unit、好ましくは約1,000unit〜約100万unitの範囲内を例示することができる。
膜分離透過液を前記の酵素で分解処理する場合、膜分離透過液と酵素とを混合するが、これらの混合順序は特に限定されない。膜分離透過液はそのまま、あるいは濃縮したものなどあらゆる形態で用いられ、特に限定はされない。酵素処理条件としては、温度は20〜60℃、また処理時間は1〜24時間が適当である。なお、pH条件も酵素反応が進行する限り特に限定されないが、好ましい範囲としてpH4〜9が挙げられる。前記酵素処理において、膜分離透過液は酵素の作用を受けてペプチド、遊離アミノ酸等に分解される。
酵素処理終了後、酵素処理液は、例えば75〜100℃に加熱して酵素を失活させることが好ましい。かくして、得られる酵素処理物が本発明の風味、呈味改善剤である。
本発明の製造方法によれば、乳、脱脂乳又はホエイから得られる膜分離透過液を蛋白質分解酵素で処理する極めてシンプルな工程からなるため、付加価値の高い風味、呈味改善剤を簡便且つ効率的に製造することができる。しかも、ホエイ等の食品廃棄物のリサイクル利用にも寄与する有意義な発明である。
得られた本発明の風味、呈味改善剤は、緑黄色の液体であり、一般的に該改善剤中の固形分は4.0〜6.0%程度、蛋白質は0.2〜1.0%程度であり、わずかに匂いがあるがチーズ臭は全くない。また、ゲル濾過HPLC測定によるその推定分子量分布は、例えば、分子量100〜500の範囲が70%以上、更には90%以上を占めていることが好ましく、アミノ態窒素/全窒素は、例えば0.27〜0.45、更には0.40〜0.45が好ましい。
また、本発明の風味、呈味改善剤は、溶液(液体)として取り扱うことも可能であるが、用途によってはスプレードライ、フリーズドライ等の公知の方法により粉末の形態にすることもできる。
本発明の風味、呈味改善剤は、食品に共通するおいしさの成分として食品にコク味、旨味、ボリューム感などを付与する。更に本発明の風味、呈味改善剤は、強いコク味、旨み増強作用を有するので、下位概念としてコク味、旨み増強剤としても把握することができる。
本発明の風味、呈味改善剤は、これを単独で使用することも可能であり、またベース素材として他の素材、例えば香料、乳素材(脱脂粉乳等)等と組み合わせて使用することも可能である。すなわち、使用について種々の組み合わせが考慮できることも本発明品の利点である。
前記他の香料としては、例えば、乳製品フレーバー、ストロベリーやアップル等のフルーツ系フレーバー、シトラス系フレーバー、バニラ系フレーバー、コーヒー系フレーバー、洋酒系フレーバー、発泡酒・ビール系フレーバー、紅茶・ウーロン茶・緑茶などの茶系フレーバー等が挙げられる。
本発明の風味、呈味改善剤は、単独でまたは香料及び/又は乳素材と組み合わせて食品に用いられる。例えば、乳製品類としては、クリーム類(生クリーム、植物性油脂を含有するホイップクリーム、クリームソース等を含む)、バター類(植物性油脂を含有するデイリースプレッド等を含む)、チーズ類(プロセスチーズ、チーズフード等を含む)、アイスクリーム類(ラクトアイス等を含む)、濃縮乳類(脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、加糖脱脂濃縮乳等を含む)、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー類、調製粉乳類、牛乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料及びこれら乳製品等を主要原料とする食品;飲料類として果実飲料類、炭酸飲料類、茶系飲料類(紅茶・ウーロン茶・緑茶など)、コーヒー飲料類、機能性飲料;酒類として洋酒類(ワイン・ウイスキー・ブランデー・ラム、ジン、リキュールなど)、清酒類、発泡酒・ビール類;菓子類として、キャンディー・デザート類、チューインガム類、チョコレート類、焼き菓子・ベーカリー類、冷菓類(アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類);スープ類;食肉加工品類;水産加工品類;調理食品類;冷凍食品類;調味料類;電子レンジ食品類;たばこ等が挙げられる。上記食品の中でも、例えば油脂を多量に含むマーガリン等の油性食品、乳製品等の食品が好ましい。
前記食品に対する本発明の風味、呈味改善剤の添加量は、食品の種類や剤形によって異なるが、例えば0.001〜50%、好ましくは0.01〜20%の範囲を例示することができる。また、本発明の風味、呈味改善剤中の固形分換算での添加量として0.00005〜2.5%、好ましくは0.0005〜1%の範囲を例示することができる。
本発明の風味、呈味改善剤は、食品に共通するおいしさの成分として食品にコク味、旨味、ボリューム感などを付与する。
本発明の製造方法は、乳、脱脂乳、ホエイ等を原料として食品にコク味や旨味などを付与し得る、優れた風味、呈味改善剤を簡便に製造することが出来る。
以下、実施例によりこの発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。
[ゲル濾過HPLCの測定方法]
ゲル濾過カラムは、TSK−GEL G2000SWXL(東ソー社製。内径7.8mm、長さ300mm)を用いて、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む45%アセトニトリルの移動相により流速0.5ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、210nmの吸光度で検出した。データ解析は、GPCソフトウエア(島津製作所製)を使用した。分子量マーカーとしてβ―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ヒトインシュリン、バシトラシン、グルタチオンおよびグリシンの分子量(対数目盛)と溶出時間から得られた分子量分布の検量線から、分子量10,000、5,000、1,000、500および100に相当する溶出時間を求めた。
[蛋白質量の測定方法およびアミノ態窒素/全窒素の算出]
蛋白質量の測定は、セミミクロケルダール法にて試料の全窒素を測定し、その値に蛋白質換算係数6.38を乗じた。
また、セミミクロケルダール法にて試料の全窒素を測定し、バンスライク法でそのアミノ態窒素を測定して、両者の比率、すなわちアミノ態窒素/全窒素を算出した。
製造例1(UF膜使用透過液)
生乳(乳脂肪3.8%、無脂乳固形分8.6%)500kgを、75℃15秒間の加熱処理をした後50℃まで冷却し、この生乳を分画分子量50,000Daの限外濾過膜(日本アブコー社製 HF-66-60-PM50 膜面積6.1m)を用いて平均透過流速600/m・hrで処理し、濃縮液125kg、透過液(蛋白質0.5%、乳糖4.5%、全固形分5.2%)375kgを得た。
製造例2(UF膜使用透過液)
原料として生乳に代えて脱脂乳を用いて製造例1と同様に処理することにより、UF膜使用透過液を得た。
試験例1(乳素材の酵素処理後の呈味性)
各種乳素材を酵素処理し、得られた酵素処理物の風味、呈味性について官能評価を行った。
A.乳素材
UF膜透過液(オーム乳業(株)製)(製造例1)
ホエイパウダー(よつば乳業(株)製)
WPC−80(オーストラリアのマレーゴルバン社製)
WPI(ニュージーランドのフォンテラ社製)
B.固形分濃度
UF膜透過液以外の乳素材の固形分濃度は、UF膜透過液の蛋白質及び乳糖の濃度(蛋白質0.5%、乳糖4.5%)に調製した。表1〜4にその処方を示す。尚、前記ホエイパウダーは、蛋白質約10%、乳糖約90%を含有する。
Figure 2006081502
Figure 2006081502
Figure 2006081502
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C.酵素処理
上記実施例1及び比較例1〜3の酵素処理は、各4kgを5Lコルベンに仕込んで、100rpmで攪拌しながら、65℃30分の加熱処理を実施した。その後50℃になるまで冷却し、酵素を添加した。酵素の処方は、ブロメラインF(天野エンザイム製)0.3g(24万unit)、トリプシン(ノボザイム製)0.3g(37万unit)およびウマミザイムG(天野エンザイム製)0.3g(20unit)にて実施した。酵素反応は、50℃にて5時間、攪拌速度100rpmにて行った。その後、酵素を熱失活し10℃まで急冷した。
実施例1で得られた風味、呈味改善剤の固形分濃度は5.2%、乳糖は4.5%、アミノ態窒素/全窒素は0.34であった。また、その推定分子量分布は、ゲル濾過HPLCで測定したところ、分子量100〜500の範囲が95%を占めていた。
D.呈味性の比較
上記C.で得られた酵素処理品について官能評価を行った。具体的には、UF膜透過液の酵素分解物(実施例1)をコントロールとして、10名のパネラーによって、苦み、渋み、雑味、甘み、コク味、旨味、及び後口についての相対評価を実施した。
評価方法は、コントロールと同じであれば0点、コントロールよりわずかに強いプラス1点、コントロールよりわずかに弱いマイナス1点、コントロールより少し強いプラス2点、コントロールより少し弱いマイナス2点、コントロールよりかなり強いプラス3点、コントロールよりかなり弱いマイナス3点にてそれぞれの平均値を算出した。その結果を図1に示す。
比較例1及び2では、実施例1と比較して、渋み、雑味、苦みが強く感じられた。一方、コク、旨味、後口はほとんど感じられなかった。
比較例3では、実施例1と比較して、雑味、渋み、苦みは弱く感じられるが、コク、旨味はほとんど感じられなかった。
実施例1を、比較例1〜3と比較した結果、10名のパネラー中、10人がコク味及び旨味が強いことを識別した。特に、実施例1では、後に残るコクが非常に強いということ、及び口腔中にそのコク或いは旨味と感じられるものが、持続するとの評価が得られた。
試験例2(マーガリンの呈味性の評価)
マーガリン作成時に各種乳素材を添加して、風味、呈味性について官能評価を行った。
A.乳素材
脱脂粉乳(よつば乳業社製)
比較例1で製造されたホエイパウダー酵素分解物
実施例1で製造されたUF膜透過液酵素分解物
B.乳素材添加量
各種乳素材の添加量は、固形分として1%添加して調製した。表5〜8にその処方を示す。
Figure 2006081502
Figure 2006081502
Figure 2006081502
Figure 2006081502
C.風味、呈味性の比較
上記B.で得られた各マーガリンについて、10名のパネラーにより官能評価を行った。その結果、表9に示す評価を示した。
Figure 2006081502
UF膜透過液酵素分解物(実施例2)は、脱脂粉乳(比較例5)やホエイパウダー酵素分解物(比較例6)より、マーガリンに対し強い呈味性を付与していた。特に、UF膜透過液酵素分解物は、以下の点にて効果が顕著であった。
a)パーム油脂(植物性油脂)の風味マスキング効果が高い。
b)マーガリンの風味に奥行きが付き、ボディー感のアップ効果がある。
c)食した場合に、後口に残るコク味が顕著に感じられる。他方、コントロール(比較例4)のマーガリンはコク味は全く感じられないし、脱脂粉乳添加マーガリン(比較例5)もコク味は殆ど感じられない。更に、ホエイパウダー酵素分解物(比較例6)には、微妙に感じられるがその強度は低い。
d)いわゆる、コンパウンド(バターをブレンドした)タイプのマーガリン様の風味、呈味感が感じられる。
試験例3(低脂肪乳の呈味性の評価)
低脂肪乳作成時に、脱脂粉乳又はUF膜透過液酵素分解物(粉末)を添加して、風味、呈味感について官能評価を行った。
A.乳素材
脱脂粉乳(よつば乳業(株)製)
UF膜透過液酵素分解物(粉末;蛋白質約10%、乳糖約89%)は、実施例1で得たUF膜透過液酵素分解物を常法通り凍結乾燥して調製した。
B.添加量
脱脂粉乳又は限外濾過膜透過液酵素分解物(粉末)を、1%添加して調製した。表10及び表11にその処方を示す。
Figure 2006081502
Figure 2006081502
C.風味、呈味性の比較
上記B.で得られた各低脂肪乳について、10名のパネラーにより官能評価を行った。その結果、表12に示す評価を示した。
Figure 2006081502
尚、UF膜透過液酵素分解物(粉末)を0.5%添加して得られた低脂肪乳も実施例3で得られた効果がほぼ同様に認められた。
試験例4(ホイップクリームの呈味性の評価)
ホイップクリーム作成時に、脱脂粉乳又はUF膜透過液酵素分解物(粉末)を添加して、風味、呈味性について官能評価を行った。
A.乳素材
脱脂粉乳(よつば乳業(株)製)
UF膜透過液酵素分解物(粉末)は、試験例3で用いたものと同じである。
B.添加量
脱脂粉乳又はUF膜透過液酵素分解物(粉末)を、1%添加して調製した。表13及び表14にその処方を示す。
Figure 2006081502
Figure 2006081502
C.風味、呈味性の比較
上記B.に示す処方によりホイップクリームを調製し、ホイップマシーンにて気泡させて、10名のパネラーにより官能評価を行った。その結果、表15に示す評価を示した。
Figure 2006081502
尚、砂糖を、双方に6%程度添加して比較すると、上記の差が更に顕著に感じられた。
試験例5(パウンドケーキの風味、呈味性の評価)
製造例2で得たUF透過液を実施例1と同様な条件で酵素処理することにより得られたUF膜透過液酵素分解物を用いて、表16に示す処方により実施例5のパウンドケーキを調製した。比較例9の無添加系を対照にして、5名の専門パネラーで風味、呈味性について官能評価した。
Figure 2006081502
パウンドケーキは、無添加系のそれと較べると、コク味やボリューム感などの呈味性が付与されて、油脂感のマスキングにも優れていた。
試験例1における呈味性の官能評価の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 乳、脱脂乳又はホエイの膜分離透過液を蛋白質分解酵素で処理することを特徴とする風味、呈味改善剤の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法により製造される風味、呈味改善剤。
  3. 請求項2に記載の風味、呈味改善剤を含む食品。
  4. 食品の風味、呈味を改善するための請求項2に記載の風味、呈味改善剤の使用。
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