JP2006081252A - コイルの巻線構造およびモータおよびコイルの形成方法 - Google Patents

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寿充 歳田
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Abstract

【課題】 コイルの形成時にコイルを損傷させることがなく、コイル形成に要する時間を短縮でき、コイルの占積率を高めることができ、したがってモータの高効率化を図ることのできるコイルの巻線構造およびモータおよびコイルの形成方法を提供する。
【解決手段】 ティース11を挟む2つのスロット13,13内に収容された2つの第一筐体2,2のそれぞれの上端面21,21同士および下端面23,23同士を2つの第二筐体3,3にて繋ぐ。第一筐体2と第二筐体3の内部には貫通孔22,22,…、32,32,…を設け、該貫通孔22,32内には導電材料が充填硬化されて導線41,41,…、42,42,…が形成されている。導線41,41,…、42,42,…をコイルが形成されるように第一筐体2,2と第二筐体3,3を接続してコイルの巻線構造が形成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、モータを構成する固定子または回転子のティースのまわりに形成されるコイルの巻線構造とかかるコイルの巻線構造を有するモータとコイルの形成方法に係り、特にコイルの形成の際にコイルを損傷させることがなく、コイルの形成に要する時間を短縮でき、さらにはコイルの占積率を高めることができ、したがってモータの高効率化を図ることのできるコイルの巻線構造およびモータおよびコイルの形成方法に関するものである。
従来、モータの固定子または回転子のティースのまわりに形成されるコイルは、分布巻き方式と集中巻き方式のいずれかによって形成されていた。分布巻き方式とは、複数のティースを跨いだ状態でコイルを形成する方法であり、予め所望の形状に巻き回されたコイルをインサータ等の専用押し込み機を使用して、複数のティースのまわりにコイルを押し込みながら設置するものである。ティースのまわりにコイルが設置された後、コイルエンドがモータ内に収容されるように上下からコイルエンドを押し潰し、レーシング後にワニスを含浸させることでコイルが成形される。一方、集中巻き方式とは、ティースごとに該ティースのまわりにコイルを形成する方法であり、予め分割されたティースまわりにコイルを形成した後に分割ティースを接合することでステータコアが構成される方法である。
上記する分布巻き方式では、コイルを押し込む専用のインサータを用意する必要があり、スロット間の形状や寸法が変更になるたびにコイルの押し込み時に使用される治具を変更する必要があり、コイル成形時に要するコストの問題や製作手間の問題が指摘されていた。
一方、集中巻き方式では、分布巻き方式に比べてコイルエンドが短くなり、モータの小型化に寄与できるものの、分割された各ティースを接合することから工程数が増加し、したがって製造コストが高くなるといった問題があった。また、分割ティースを最終的には接合するといっても分布巻き方式のような一体成形されたステータコアに比べて品質が低下し、モータ性能の低下に繋がっていた。さらには、コイルの占積率を高める目的で比較的高い緊張力をかけて巻き回すため、エナメル等のコイルの絶縁被膜を傷めてしまうといった問題があった。
ところで、特許文献1においては、自己融着導線を金型内にてプレス加工することで、断面が略六角形に変形された導線からなる枠状コイルおよび枠状コイルの成形方法に関する発明が開示されている。
特開平3−265437号公報
特許文献1の枠状コイルおよび枠状コイルの成形方法によれば、コイルの占積率を高めることができ、したがって高効率のモータを製造することが可能となる。しかし、導線を金型内にてプレス加工する際や高い緊張力をかけて巻き回す際には導線に損傷を与える可能性が高くなるものと考えられる。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、ティースのまわりにコイルを形成する際にコイルに損傷を与えることのないコイルの形成方法およびコイルの巻線構造を提供することを目的とする。また、ティースのまわりにコイルを形成する際に要する時間を短縮することのできるコイルの成形方法およびコイルの巻線構造を提供することを目的とする。さらには、コイルの占積率を高めることのできるコイルの巻線構造と高効率化を実現できるモータを提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明によるコイルの巻線構造は、モータを構成する固定子または回転子のティースのまわりに形成されるコイルの巻線構造であって、併設するティースとティースの間に形成されたスロット内に収容可能で両端面が開放された第一筐体と、1つまたは複数のティースを挟む2つのスロット内に収容された2つの前記第一筐体のそれぞれの上端面同士および下端面同士を繋いでコイルエンドを形成する2つの第二筐体と、からなり、第一筐体と第二筐体はともに複数の貫通孔がその内部に形成されており、該貫通孔には導電材料が充填されており、2つの第一筐体のそれぞれの上端面同士および下端面同士と2つの第二筐体の両端面はコイルが形成されるように接続されていることを特徴とする。
本発明のコイルの巻線構造は様々な種類のモータに使用することができる。例えば、固定子である磁石の内部を回転子が回転するDCモータにおいては、略円柱形の回転子に複数の径方向の切り込み(スロット)が設けられることによって放射状に突出するティースが形成されている。この場合は、回転子のティースのまわりに本発明のコイルの巻線構造が形成されることになる。一方、リング状のヨークを基点としてその内側に複数のティースが突出成形されたステータコア(固定子)と、その内部を磁石や回転歯車などの回転子が回転するリラクタンスモータにおいては、固定子のティースのまわりに本発明のコイルの巻線構造が形成されることになる。
ここで、コイルとは、ティースを囲繞するようにティースまわりに形成された一巻きの巻線が多数集まった巻線群のことを意味している。コイルを形成するに際しては、2つの第一筐体が、1つのティースを挟むように該ティースの両側のスロット内に配置される場合と、2以上のティースを挟むように両端に位置するティースの外側のスロット内に2つの第一筐体が配置される場合がある。前者は従来の集中巻き方式の場合(各ティースごとにコイルが形成される場合)に対応するものであり、後者は従来の分布巻き方式(2以上のティースを一まとめにしてコイルが形成される場合)に対応するものである。以下、固定子(ステータコア)に複数のティースが形成されていて、各ティースのまわりにコイルが形成される場合を取り上げて説明する。
第一筐体の内部にはコイルを構成するための貫通孔が複数設けられ、さらに各貫通孔内には導電材料が充填硬化されていて導線が形成されている。ここで、導電材料としては、例えば銅などを使用できる。なお、各貫通孔の断面視形状は円形や多角形など、適宜の形状を選定することができる。第一筐体の形状や寸法については、その高さはステータコアの高さ程度、またはステータコアよりも高く成形されており、軸線方向に垂直な断面視形状は、例えば、併設するティースとヨークに挟まれてできるスロットの形状を該ティース間で2分割してなる形状などである。固定子(ステータコア)のリング方向に複数のコイルが形成されて1つのモータ用固定子ができるため、1つのスロット内には、併設する2つのコイルを構成するための2つの第一筐体が収容される必要があるからである。尤も、少なくとも2つの第一筐体が1つのスロット内に収容される形状であればよく、上記する形状に限定されるものではない。
一方、2つの第一筐体のそれぞれの上端面同士と下端面同士にそれぞれ接続されてコイルエンドを形成する第二筐体においても、第一筐体の各導線とそれぞれ接続されるように複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電材料が充填硬化されて導線が形成されている。第二筐体は、コイルエンドを形成できるように、第一筐体と同じ断面視形状の筐体が湾曲した形状に成型されている。
1つのティースの両側に配置された2つの第一筐体の上端面と接続するように各第一筐体の上端面に第二筐体の両端面をそれぞれ載置する。この状態で、第一筐体の内部に形成された複数の導線の端部と第二筐体の内部に形成された複数の導線の端部はそれぞれ当接した状態となっている。ここで、第一筐体および第二筐体の接続部付近を加熱することにより、当接している各導線の端面を溶融させて一体とする。加熱は、高周波加熱などの適宜の方法でおこなうことができる。
次に、2つの第一筐体の下端面と、該下端面に接続する第二筐体についても上端面と同様の方法によって各導線同士の一体化を図る。ここで2つの第一筐体と上下2つの第二筐体との各導線は複数の閉じた巻線から構成される巻線群(コイル)を形成することになる。かかるコイルを各ティースまわりに形成することにより、モータの固定子が形成されることになる。
本発明のコイルの巻線構造によれば、コイル形成時にコイルを傷める危険性がなく、また、予め製作された第一筐体の上に第二筐体を載置して加熱処理をおこなうだけでよく、したがってコイル形成時に要する時間を格段に短縮することができる。
また、本発明によるコイルの巻線構造の好ましい実施形態は、前記貫通孔の断面視形状がハニカム形状であることを特徴とする。
貫通孔の断面視形状を、ハニカム形状、すなわち正六角形もしくは縦長、横長の六角形に成形することにより、かかる形状の導線が適宜の離隔を置いて整列したコイルを形成することができ、コイルの占積率を高めることが可能となる。例えば、従来のように円形断面の導線から構成されるコイルの場合にはその占積率が約45%であったのに対して、ハニカム形状とすることで占積率を80%程度にまで高めることが可能となる。
また、本発明によるコイルの巻線構造の好ましい実施形態は、前記第一筐体および前記第二筐体がともにセラミックスからなることを特徴とする。
セラミックスとしては、例えば、ガラスや陶磁器、アルミナ(酸化アルミニウム(AL))などを使用することができる。セラミックスは、絶縁性能に優れていることに加えてその融点も高く、第一筐体および第二筐体の材質としては特に好ましい。その融点は種類によって異なるものの、1500℃程度〜4000℃程度と極めて高く、例えば銅の融点(約1100℃)よりも高いことから、貫通孔に溶融状態の銅を流し込んだ場合でも、セラミックスにて構成された貫通孔の孔壁はその形状を保持することができ、したがって絶縁皮膜(絶縁壁)にて各導線を絶縁することができる。
また、本発明によるコイルの巻線構造の好ましい実施形態は、前記第一筐体または前記第二筐体のいずれか一方の筐体の内部に形成された導線の端面は該一方の筐体の端面から落ち込んだ位置にくるように成形されており、他方の筐体の内部に成形された導線の端面は該他方の筐体の端面から突出するように成形されており、一方の筐体の前記端面から落ち込んだ位置に他方の筐体の端面から突出する導線を嵌め合わせて双方の導線の端面同士を当接させ、少なくとも該双方の導線の端面を溶融して一体とすることによりコイルが形成されることを特徴とする。
例えば、第一筐体においてはその端面から落ち込んだ位置に導線の端面がくるように導電材料の流し込みをおこなって導線を成形し、第二筐体においてはその端面から導線の端面(端部)が突出するように導線を成形する(この逆の構成であってもよいことは勿論のことである)。ここで、導線を筐体の端面から突出成形する方法としては、導線の突出長と同じ長さの孔を備えた型枠を筐体の端面にその孔と筐体の貫通孔が一致するように設置し、貫通孔に導電材料を流し込むなどの方法がある。第二筐体の端面を第一筐体の端面上に載置すると、第二筐体の端面から突出する導線の端部は第一筐体の貫通孔の落ち込んだ位置まで嵌め合わされることとなり、双方の導線の端面が第一筐体の貫通孔内にて溶融一体化され得る。よって、導線の接合部を筐体にて保護することができるとともに導線の接続面と筐体の接合面が同一平面上とならないため、コイルの品質の向上を図ることができ、接続部の強度を高めることができる。
また、本発明によるモータは、前記コイルの巻線構造を備えたことを特徴とする。
本発明のコイルの巻線構造は、モータの種類に応じて、回転子にティースが設けられている場合と、固定子にティースが設けられている場合の双方に適用することができる。上記するように、本発明のコイルの巻線構造によれば、コイルが形成される際にコイルが損傷する可能性は極めて低くなり、またコイルの形成に要する時間を格段に短縮することができる。加えて、占積率の高いコイルを形成することができるため、モータの高効率化を図ることが可能となる。すなわち、コイルの占積率(断面積)が高まることによってコイルの抵抗が小さくなり、抵抗が小さくなることによって銅損を低減することができ、一定の電流に対するモータ効率を高めることができる。発明者等が、同形状の埋め込み磁石型の同期モータにて断面視がハニカム形状の場合と円形の場合でモータ効率の比較実験をおこなった結果、ハニカム形状の場合はモータ効率を約2%向上させることができるという実験結果を得ている。
また、本発明によるコイルの形成方法は、モータを構成する固定子または回転子のティースのまわりにコイルを形成するコイルの形成方法であって、スロット内に収容可能で両端面が開放された筐体であってその内部の複数の貫通孔に導電材料が充填されている第一筐体を成形する第一工程と、1つまたは複数のティースを挟む2つのスロット内に収容された2つの第一筐体のそれぞれの上端部同士および下端部同士を繋いでコイルエンドを形成する筐体であってその内部の複数の貫通孔に導電材料が充填された第二筐体を成形する第二工程と、1つまたは複数のティースを挟むように2つの第一筐体を設置し、2つの第一筐体の各端面に2つの第二筐体のそれぞれの両端面をコイルが形成されるように設置し、第一筐体の複数の導線の端面と、該複数の導線の端面とそれぞれ当接する第二筐体の複数の導線の端面とを少なくとも溶融して双方の導線を一体とする第三工程と、からなることを特徴とする。
第一工程と第二工程においては、予め所望数の第一筐体および第二筐体(それぞれの内部に導線が形成されている状態)をそれぞれ製作しておく。なお、第一工程と第二工程の順序、すなわち第一筐体の製作と第二筐体の製作の順序は適宜の順序でよく、双方の筐体を同時に製作してもよい。
第三工程においては、モータの固定子または回転子を構成する所定数のコイル分の第一筐体をスロット内に一気に配置し、それぞれのコイルを構成する第一筐体と第一筐体の上端面と第二筐体の両端面を接続し、続いてそれぞれのコイルを構成する第一筐体と第一筐体の下端面と第二筐体の両端面を接続していくのが効率的である。
さらに、本発明によるコイルの形成方法の好ましい実施形態は、前記第一工程と前記第二工程においては、一方の筐体はその端面から落ち込んだ位置に導線の端部がくるように成形されるとともに、他方の筐体はその導線の端部が該筐体の端面から突出するように成形され、前記第三工程においては、一方の筐体の端面から落ち込んだ位置に他方の筐体の端面から突出する導線を嵌め合わせて双方の導線の端面同士を当接させ、当接する導線の端面とティースとの間に所定の離隔を保った状態で少なくとも双方の導線の端面を溶融させることを特徴とする。
第三工程における導線の端面とティースとの間の所定の離隔とは、双方の導線の端面を加熱処理する際の熱の影響がティースに及ばない程度の離隔のことである。例えば電磁鋼板からなるティースに一定温度以上の熱が加わると、電磁鋼板内に粒成長が励起され、ティースの強度や磁気特性が初期の値から変化してしまう。したがって、ティースの初期の強度や特性を保持できるだけの離隔を保って、各筐体の導線同士の加熱処理をおこなうものである。なお、加熱処理としては、上記するように例えば高周波加熱を適用することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明のコイルの形成方法およびコイルの巻線構造によれば、コイルの形成時にコイルが損傷する危険性を極めて低くすることができ、よってコイルの品質を向上させることができる。また、本発明のコイルの形成方法およびコイルの巻線構造によれば、コイルの形成に要する時間を格段に短縮することができる。さらに、本発明のコイルの巻線構造によれば、コイルの占積率を高めることができる。したがって、かかるコイルの巻線構造を有する固定子または回転子からなる本発明のモータによれば、モータの高効率化を実現することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明のコイルの巻線構造の一実施形態を示した斜視図であり、図2は、図1のII−II矢視図を、図3は、図2のIII−III矢視図を、図4は、図2のIV−IV矢視図をそれぞれ示している。図5は、本発明のコイルの形成方法を示した斜視図であり、(a)は第三工程において第二筐体を第一筐体に設置する状況を、(b)は第三工程において導線を加熱処理している状況をそれぞれ示している。図6は、図5aのVI−VI矢視図を、図7は、図5aのVII−VII矢視図をそれぞれ示している。なお、図示にて説明するコイルの巻線構造は、固定子(ステータコア)にティースが備えてある場合(例えば、リラクタンスモータ)に関するものであるが、回転子にティースが備えられている場合にも本発明のコイルの巻線構造が使用できることは勿論のことである。
図1において、リング状のヨーク12と、ヨーク12を基点としてリングの内側へ突出する複数のティース11,11,11,…とから構成される固定子1(ステータコア)において、ティース11の両側にあるスロット13,13内に第一筐体2,2がそれぞれ収容され、第一筐体2,2の端面上に第二筐体3,3が設置されてティース11まわりにコイルが形成されている。コイルは各ティース11,11,…ごとに形成されている。この第一筐体2と第二筐体3は、例えばセラミックスから製作することができる。
固定子1の内部からティース11,11を見た図を図2に示している。ティース11を挟むように第一筐体2,2がティース11の両側のスロット13,13内に収容され、第一筐体2,2の上端面21,21上に第二筐体3の両端面31,31が載置している。なお、この第一筐体2と第二筐体3は、後述する加熱処理が既におこなわれており、内部の導線同士が一体となっており、したがって第一筐体2と第二筐体3は導線を介して固着することができる。一方、第一筐体2の下端面23,23と第二筐体3の両端面31,31も導線の一体化によって同様に固着している。
第一筐体2の内部は、図3に示すように、断面視ハニカム形状(図示する六角形は正六角形)の貫通孔22,22,22,…が刻設されており、各貫通孔22,22,22,…内には導電材料(例えば、銅など)が充填硬化されて導線41,41,…が形成されている。
一方、第二筐体3の内部においても、図4に示すように、断面視ハニカム形状の貫通孔32,32,…が両端面31,31間を貫通するように刻設されており、各貫通孔32,32,32,…内にはやはり導電材料が充填硬化されて導線42,42,…が形成されている。
ここで、導線42,42,…の断面形状および寸法は、導線41,41,…の断面形状および寸法と同形状および同寸法に成形されており、さらに、図2に示すように、双方の筐体の端面21,31が重ね合わされた際に、導線41,41,…と導線42,42,…がそれぞれ当接して閉じた巻線を構成するように導線41,42が成形されている。
次に、図5に基づいてコイルの形成方法を説明する。まず、第一筐体2および第二筐体3を製作し、それぞれの貫通孔22,32内に導電材料を流し込んで導線41,42を形成しておく(第一工程、第二工程)。ここで、形成される導線の実施形態を図6,7をもとに説明する。まず、第二筐体3の内部に形成される導線42は、図6に示すように、両端面31,31から所定長さ(h”)突出するように形成される。一方、第一筐体2の内部に形成される導線41は、図7に示すように、上端面21および下端面23からそれぞれ所定長さ(h”)だけ落ち込んだ位置に導線41の端面がくるように形成される。
図5aに戻り、第二筐体3の両端面31,31から突出した導線42,42,42,…を、第一筐体2の貫通孔22,22,22,…へ嵌め込むことにより(矢印X)、導線42,42,42,…の各端面は上端面21,21から所定長さ(h”)だけ落ち込んだ位置にある導線41,41,41,…の端面と当接することとなる。
次に、図5bに示すように、第一筐体2と第二筐体3のそれぞれの端面が当接した付近を高周波加熱にて加熱処理する(Y方向)(第三工程)。端面の当接した付近とは、具体的には各導線41,42の端面が当接している筐体の当接ラインからh”落ち込んだ箇所である。図示しないが、第三工程を全てのティースまわりに実施した後に、ティースの他端側(第一筐体2の下端面23側)においても第三工程を実施することにより、ステータコアのすべてのティースまわりにコイルを形成することができる。
ここで、第一筐体2は、ティース11よりも高くなるように予め製作しておくのが好ましい。図7に示すように、ティース11の上下端面からそれぞれhだけ高い位置に上端面21および下端面23がくるように第一筐体2を製作する。ここで、hはh’とh”の和となるが、このh’は、高周波加熱処理の際に、熱がティース11の上端面付近に作用して該ティース11の初期の強度や磁気特性が変化しない程度の高さに設定されるのがよい。
発明者等は、コイルの断面視形状が円形の場合と、ハニカム形状(正六角形)の場合での占積率の比較をおこなった結果、断面視が円形の場合が45%であるのに対して、ハニカム形状の場合には80%程度にまで高まる試算結果を得ている。この占積率の向上は、同一起磁力(トルク発生に必要となるエネルギーで、コイルの巻数と電流の積となる)の場合に巻線の断面積を大きくすることができることを意味している。巻線の断面積が大きくなることによって抵抗が小さくなり、したがってコイルの発熱による銅損を低減することが可能となる。
さらに、同じ形状の埋め込み磁石型の同期モータでモータ効率を比較した結果、コイル断面が円形の場合が85.7%程度であったのに対して、断面がハニカム形状の場合には87.5%にまで向上する(約2%の向上)という試算結果を得ている。一般に、モータ効率が1%向上すると、車両重量50kgの軽量化に相当する電動車両のエネルギー消費量削減効果があるといわれており、したがって本発明によれば、約100kgの車両重量の軽量化を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本発明のコイルの巻線構造の一実施形態を示した斜視図。 図1のII−II矢視図。 図2のIII−III矢視図。 図2のIV−IV矢視図。 本発明のコイルの形成方法を示した図であり、(a)は第三工程において第二筐体を第一筐体に設置する状況を示した斜視図。(b)は第三工程において導線を加熱処理している状況を示した斜視図。 図5aのVI−VI矢視図。 図5aのVII−VII矢視図。
符号の説明
1…固定子(ステータコア)、2…第一筐体、3…第二筐体、11…ティース、12…ヨーク、13…スロット、21…上端面,23…下端面、31…端面、22,32…貫通孔、41,42…導線

Claims (7)

  1. モータを構成する固定子または回転子のティースのまわりに形成されるコイルの巻線構造であって、
    併設するティースとティースの間に形成されたスロット内に収容可能で両端面が開放された第一筐体と、1つまたは複数のティースを挟む2つのスロット内に収容された2つの前記第一筐体のそれぞれの上端面同士および下端面同士を繋いでコイルエンドを形成する2つの第二筐体と、からなり、第一筐体と第二筐体はともに複数の貫通孔がその内部に形成されており、該貫通孔には導電材料が充填されており、2つの第一筐体のそれぞれの上端面同士および下端面同士と2つの第二筐体の両端面はコイルが形成されるように接続されていることを特徴とする、コイルの巻線構造。
  2. 前記貫通孔の断面視形状がハニカム形状であることを特徴とする、請求項1に記載のコイルの巻線構造。
  3. 前記第一筐体および前記第二筐体がともにセラミックスからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のコイルの巻線構造。
  4. 前記第一筐体または前記第二筐体のいずれか一方の筐体の内部に形成された導線の端面は該一方の筐体の端面から落ち込んだ位置にくるように成形されており、他方の筐体の内部に成形された導線の端面は該他方の筐体の端面から突出するように成形されており、一方の筐体の前記端面から落ち込んだ位置に他方の筐体の端面から突出する導線を嵌め合わせて双方の導線の端面同士を当接させ、少なくとも該双方の導線の端面を溶融して一体とすることによりコイルが形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコイルの巻線構造。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のコイルの巻線構造を備えたことを特徴とする、モータ。
  6. モータを構成する固定子または回転子のティースのまわりにコイルを形成するコイルの形成方法であって、
    スロット内に収容可能で両端面が開放された筐体であってその内部の複数の貫通孔に導電材料が充填されている第一筐体を成形する第一工程と、1つまたは複数のティースを挟む2つのスロット内に収容された2つの第一筐体のそれぞれの上端部同士および下端部同士を繋いでコイルエンドを形成する筐体であってその内部の複数の貫通孔に導電材料が充填された第二筐体を成形する第二工程と、1つまたは複数のティースを挟むように2つの第一筐体を設置し、2つの第一筐体の各端面に2つの第二筐体のそれぞれの両端面をコイルが形成されるように設置し、第一筐体の複数の導線の端面と、該複数の導線の端面とそれぞれ当接する第二筐体の複数の導線の端面とを少なくとも溶融して双方の導線を一体とする第三工程と、からなることを特徴とする、コイルの形成方法。
  7. 前記第一工程と前記第二工程においては、一方の筐体はその端面から落ち込んだ位置に導線の端部がくるように成形されるとともに、他方の筐体はその導線の端部が該筐体の端面から突出するように成形され、前記第三工程においては、一方の筐体の端面から落ち込んだ位置に他方の筐体の端面から突出する導線を嵌め合わせて双方の導線の端面同士を当接させ、当接する導線の端面とティースとの間に所定の離隔を保った状態で少なくとも双方の導線の端面を溶融させることを特徴とする、請求項6に記載のコイルの形成方法。
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