JP2006076962A - 歯科用セメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】遷移金属元素や亜鉛族元素をまったく含まず、生体安全性に優れ、しかも適切な硬化時間や口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力などの機械的特性を有する歯科用セメント組成物を提供すること。
【解決手段】(a)リン酸カルシウム、(b)水酸化カルシウム、(c)ポリアルケン酸および(d)水を含有する歯科用セメント組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、歯科用セメント組成物に関する。さらに詳しくは、生体安全性に優れた歯科用仮着用セメント、特に口腔インプラントにおける上部構造仮着用セメントとして好適に使用しうる歯科用セメント組成物に関する。
歯科の分野において、術者可撤式の仮着用セメントがテンポラリークラウンの仮着や口腔インプラントにおける上部構造体の装着などに用いられている。口腔インプラントにおける上部構造体の装着方法は、スクリュー固定法とセメント固定法とに大別されるが、審美性や術式の簡便さなどの観点から、仮着用セメントを用いたセメント固定法を使用する頻度が増加しつつある。
仮着用セメントとしては、主にカルボキシレート系セメントとユージノール系セメントが臨床で用いられており、その粉末の主成分は、いずれも酸化亜鉛である。亜鉛は、必須元素ではあるが、細胞毒性が高い元素として知られており、金属アレルギーの原因となることもある。
一方、歯科の分野において、遷移金属元素や亜鉛族元素を含まず、生体親和性が高く、歯牙、骨などの生体硬組織の主な無機構成成分であるリン酸カルシウム系のセメントが開発されている。その例として、生体親和性を有し、歯牙欠損空隙部の治療や修復に、リン酸カルシウム系化合物と水との水和反応により凝結し、ハイドロキシアパタイトに転化する水硬性セメント(例えば、特許文献1参照)や、リン酸カルシウムと硬化液に水と水溶性の高分子酸を配合してなる歯科用硬化性組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、これらの組成物は、いずれも、テンポラリークラウンの仮着用セメントや、口腔インプラントにおける上部構造体の仮着用セメントとしては、硬化時間が長く、口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力が不十分であり、また、崩壊率が高いことなどから使用されるまでには至っていない。
特開平5−095993号公報 特開平62−42625号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、遷移金属元素や亜鉛族元素をまったく含まず、生体安全性に優れ、しかも適切な硬化時間や口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力などの機械的特性を有する歯科用セメント組成物を提供することを課題とする。
本発明は、(a)リン酸カルシウム、(b)水酸化カルシウム、(c)ポリアルケン酸および(d)水を含有する歯科用セメント組成物に関する。
本発明の歯科用セメント組成物は、遷移金属元素や亜鉛族元素をまったく含まず、生体安全性に優れ、しかも適切な硬化時間や口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力などの機械的特性を有する。したがって、本発明の歯科用セメント組成物は、生体安全性に優れた仮着用セメント、特に口腔インプラントにおける上部構造とアバットメントとを仮着するためのセメントとして好適に用いることができる。
本発明者らは、遷移金属元素や亜鉛族元素をまったく含まず、生体安全性に優れ、しかも適切な硬化時間や口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力などの機械的特性を有する歯科用セメント組成物を提供することを課題とし、仮着用セメントの粉末にリン酸カルシウムを用いたカルボキシレート系セメントについて検討した。
従来のカルボキシレートセメントなどでは、ポリカルボン酸のゲル化に酸化亜鉛の粉末から溶出する亜鉛イオン (Zn2+) を架橋剤として用いてセメントを硬化させている。
一方、粉末としてリン酸カルシウムが用いられたセメントでは、リン酸カルシウムから供給されるカルシウムイオン (Ca2+) がポリカルボン酸と架橋反応を生じるので硬化するが、これだけでは、仮着用セメントとしては、硬化時間、口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力などの性能が不十分である。
そこで、本発明者らは、かかる事実に着目して鋭意検討を重ねた結果、適切な量の水酸化カルシウムをセメントに添加し、そのpHを高めた場合には、ポリカルボン酸のカルボキシル基がイオン化し、硬化反応の促進とアバットメントや口腔インプラントにおける上部構造に対する保持力が向上するとともに、リン酸カルシウムの過剰な溶解が抑制され、可溶性のカルシウム塩の生成量が減少し、硬化後のセメント組成物の崩壊率を低下させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のセメント組成物は、遷移金属元素や亜鉛族元素をまったく含まないので、生体安全性に優れたものである。また、本発明のセメント組成物は、水酸化カルシウムが用いられており、この水酸化カルシウムによってpHが高められ、ポリアルケン酸のカルボキシル基がイオン化される。その結果、セメント組成物の硬化反応が促進されるので、圧縮強さが市販されている酸化亜鉛ユージノールセメントよりも高く、金属やセラミックスに対する保持力も向上するという優れた効果が発現される。
したがって、本発明のセメント組成物は、歯科治療における仮着用セメントとして、なかでも特に口腔インプラントにおける上部構造を術者可撤式に固定する仮着用セメントとして好適に使用しうるものであるから、生体安全性に優れた仮着用セメントとして歯科医療に大きく貢献することが期待される。
本明細書において、「 仮着用セメント」 とは、仮着けを想定して調製されたセメントを意味する。仮着用セメントは、歯冠補綴物を術者可撤式に合着し、日常状態で使用され、審美性、機能の回復、装着感などを確認するためのセメント、技工作業時にテンポラリークラウンなどの仮留めに用いられるセメント、口腔インプラントにおける上部構造体の術者可撤式に合着するためのセメントなどとして使用される。
また、「口腔インプラント」とは、例えば、口腔の機能を回復するために、歯を失った顎に人工の歯根を入れることを意味する。口腔インプラントは、主に、インプラント体(顎骨内に埋め込んで骨と生着させる人工歯根部)、アバットメント〔人工歯冠部(口腔インプラントにおける上部構造)を装着するためにインプラント体に連結される支台装置〕、口腔インプラントにおける上部構造(インプラントに装着する人工歯冠部)の3つの部分で構成される。
本発明において、インプラント体およびアバットメントは、歯科の分野で用いられるものであればよく、特に限定はない。また、口腔インプラントにおける上部構造も歯科の分野で用いられるものであればよく、特に限定はない。口腔インプラントにおける上部構造を構成する材料としては、例えば、金属、セラミックス、歯科用コンポジットレジンなどが挙げられる。なお、口腔インプラントにおける上部構造とアバットメントの装着は、術者可撤式でなければならないので、その装着には、スクリュー固定法と仮着用セメントによるセメント固定法が主に用いられる。
本発明においては、従来のカルボキシレートセメントに用いられている酸化亜鉛に代えてリン酸カルシウムが用いられている。このリン酸カルシウムは、優れた生体安全性を発現するものである。
リン酸カルシウムとしては、例えば、α−リン酸三カルシウム(α−TCP)、リン酸四カルシウム(TTCP)、第二リン酸カルシウム二水塩(DCPD)、ハイドロキシアパタイト(HAP)、フッ素アパタイト(FAP)、フッ素化アパタイト、炭酸含有アパタイト(CAP)第二リン酸カルシウム無水塩(DCPA)、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)リン酸八カルシウム(OCP)、非結晶リン酸カルシウム(ACP)、第一リン酸カルシウム無水塩(MCPA)、第一リン酸カルシウム一水塩(MCPM)などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、リン酸四カルシウムは、硬化後のセメント組成物の崩壊率、機械的強さ、および口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力の観点から、好ましいものである。
なお、リン酸カルシウムの製造方法は、どのような方法でもあってもよく、本発明は、かかる製造方法によって限定されるものではない。
リン酸カルシウムは、粉末であることが好ましい。リン酸カルシウムの平均粒径は、硬化前のペースト状態のセメント組成物の被膜厚さおよび硬化後のセメント組成物の機械的強さの観点から、0.1 〜100 μm、好ましくは1〜20μmであることが好ましい。
リン酸カルシウムの粒子の形状は、本発明の本質に影響を及ぼすものではなく、球状、破砕状、板状、針状などのいずれの形状であってもよい。
水酸化カルシウムは、本発明のセメント組成物の硬化速度を高め、また、硬化後のセメント組成物の崩壊率を低減し、その一方で、機械的強さ、および口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力を向上させるために用いられる成分である。
水酸化カルシウムは、粉末であることが好ましい。水酸化カルシウムの平均粒径は、硬化前のペースト状態のセメント組成物の被膜厚さおよび硬化後のセメント組成物の機械的強さの観点から、0.1 〜100 μm、好ましくは1〜20μmであることが望ましい。
水酸化カルシウムの粒子の形状は、本発明の本質に影響を及ぼすものではなく、球状、破砕状、板状、針状などのいずれの形状であってもよい。
水酸化カルシウムの量は、硬化速度を高める観点から、リン酸カルシウム100 重量部に対して、15重量部以上、好ましくは25重量部以上であることが望ましく、またpHが高くなりすぎるのを抑制するとともに、例えば、口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力を維持する観点から、リン酸カルシウム100 重量部に対して55重量部以下、好ましくは45重量部以下であることが望ましい。これらの観点から、水酸化カルシウムの量は、リン酸カルシウム100 重量部に対して、15〜55重量部、好ましくは25〜45重量部であることが望ましい。
本明細書において、ポリアルケン酸とは、カルボキシル基を有する重合体を意味する。ポリアルケン酸のカルボキシル基とリン酸カルシウムから供給されるカルシウムイオンとがキレート反応を起こすことによって硬化反応が生じることから、ポリアルケン酸は、本発明の組成物における必須成分である。
ポリアルケン酸の好適な例としては、例えば、不飽和モノカルボン酸重合体、不飽和ジカルボン酸重合体などの不飽和カルボン酸重合体などが挙げられる。
ポリアルケン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−クロロアクリル酸、2−シアノアクリル酸、アコニチン酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸などの不飽和カルボン酸の単独重合体、該不飽和カルボン酸と共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。
不飽和カルボン酸の量は、不飽和カルボン酸と、該不飽和カルボン酸と共重合可能な他の単量体との合計量の50モル%以上であることが好ましい。
不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体としては、エチレン性不飽和重合性単量体が好ましい。エチレン性不飽和重合性単量体の具体例としては、例えば、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸塩、塩化アリル、酢酸ビニル、1,1,6-トリメチルヘキサメチレンジメタクリレートなどが挙げられる。
ポリアルケン酸の中では、本発明のセメント組成物の硬化時間、硬化後の崩壊率、機械的強さ、および口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力の観点から、アクリル酸単独重合体、マレイン酸単独重合体およびアクリル酸とマレイン酸との共重合体が好ましい。
ポリアルケン酸の重量平均分子量は、本発明の歯科用セメント組成物の硬化物の機械的強さおよび耐久性を高める観点から、1000以上、好ましくは5000以上であることが望ましく、本発明の歯科用セメント組成物の混合時の粘度が高くなり、操作性が低下するのを防止し、操作性を向上させる観点から、50000 以下、好ましくは40000 以下であることが好ましい。これらの観点から、ポリアルケン酸の重量平均分子量は、1000〜50000 、好ましくは5000〜40000 であることが望ましい。
ポリアルケン酸の量は、ポリアルケン酸とリン酸カルシウムとの硬化反応による機械的強度の観点から、リン酸カルシウム100 重量部に対して、2重量部以上、好ましくは5重量部以上であることが望ましく、またセメント組成物の粘度やpHが低くなりすぎるのを抑制する観点から、リン酸カルシウム100 重量部に対して600 重量部以下、好ましくは400 重量部以下であることが望ましい。これらの観点から、ポリアルケン酸の量は、リン酸カルシウム100 重量部に対して、2〜600 重量部、好ましくは5〜400 重量部であることが望ましい。
水は、本発明のセメント組成物におけるポリアルケン酸とリン酸カルシウムとの反応の媒体として必須成分であるとともに、ペースト状態のセメント組成物の粘度を調整するために用いられる成分である。水としては、セメント組成物の硬化や歯牙との接着強さの発現に悪影響を及ぼす不純物を含有していないものであれば、特に限定なく用いることができるが、蒸留水およびイオン交換水が好ましい。
水の量は、ポリアルケン酸とリン酸カルシウムとの硬化反応を促進させる観点から、リン酸カルシウム100 重量部に対して、4重量部以上、好ましくは10重量部以上であることが望ましく、またセメント組成物の粘度が低くなりすぎるのを抑制する観点から、リン酸カルシウム100 重量部に対して600 重量部以下、好ましくは400 重量部以下であることが望ましい。これらの観点から、水の量は、リン酸カルシウム100 重量部に対して、4〜600 重量部、好ましくは10〜400 重量部であることが望ましい。
ポリアルケン酸と水との重量比(ポリアルケン酸/水)は、硬化前のペースト状のセメント組成物に適度な粘度を付与するとともに、ポリアルケン酸とリン酸カルシウムとの硬化反応を調整する観点から、10/90 以上、好ましくは40/60 以上であり、セメント組成物の粘度が高くなりすぎるのを抑制する観点から、80/20 以下、好ましくは60/40 以下であることが望ましい。これらの観点から、ポリアルケン酸と水との重量比(ポリアルケン酸/水)は、10/90 〜80/20 、好ましくは40/60 〜60/40 であることが望ましい。
本発明のセメント組成物は、例えば、リン酸カルシウム粉末と水酸化カルシウム粉末の混合物(以下、粉末成分という)とポリアルケン酸と水との混合物(ポリアルケン酸水溶液)(以下、液剤成分という)とを、その使用直前に混合し、ペースト状とすることによって得られる。
粉末成分と液剤成分との比率は、粉末成分の粒子径、粒子形状などによって異なるので一概には決定することができない。通常、液剤成分1g あたりの粉末成分の量は、セメント組成物の機械的強さの観点から、0.1g以上、好ましくは0.3g以上であることが望ましく、硬化前のペースト状のセメント組成物の粘度が高くなりすぎないようにする観点から、5g以下、好ましくは3g以下であることが望ましい。これらの観点から、液剤成分1g あたりの粉末成分の量は、0.1 〜5g、好ましくは0.3 〜3gであることが望ましい。
かくして、粉末成分と液剤成分とを混合することにより、本発明のセメント組成物を得ることができる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜6および比較例1
リン酸カルシウムとして、リン酸四カルシウム(以下、TTCPという)(平均粒径:8.5 μm)、第二リン酸カルシウム(以下、DCPAという)(平均粒径:9.5 μm)、ハイドロキシアパタイト(以下、HAP という)(平均粒径:8.2 μm)またはリン酸八カルシウム(以下、OCP という)(平均粒径:8.9 μm)を用いた。また、ポリアルケン酸として重量平均分子量が25000 のポリアクリル酸を用い、水として蒸留水を用いた。
表1に示す組成となるように、リン酸カルシウムと水酸化カルシウムからなる粉末成分と、ポリアルケン酸と水からなる液剤成分とを混合し、セメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物の物性として、硬化時間、圧縮強さおよび崩壊率、ならびに口腔インプラントにおけるアバットメントと上部構造体との保持力を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
(1) 硬化時間、圧縮強さおよび崩壊率
JIS T-6602およびJIS T-6606に規定されている方法に準拠して硬化時間、圧縮強さおよび崩壊率を測定した。
なお、硬化時間は、臨床で実際の使用状況を考慮すると、5〜25分間、好ましくは5〜20分間であることが望ましい。また、圧縮強さおよび上部構造に対する保持力(以下、単に保持力という)はより高いことが好ましく、崩壊率はより低いことが好ましい。
(2) 保持力
口腔インプラントにおける上部構造体を構成するシリンダー(内径3.5 mm)をステンレス鋼製の治具に装着した後、純チタン製アバットメント(外径3.3 mm)とシリンダーとをセメント組成物で仮着し、37℃で60分間放置することにより、試験サンプルを作製した。
得られた試験サンプルを37℃の水中に24時間浸漬した後、該水中から取り出し、引張り試験機〔(株)島津製作所製、EZ Test 〕を用い、クロス・ヘッド速度2mm/minの条件で保持力を測定した。
口腔インプラントにおける上部構造体を構成するシリンダーとして、ゴールドシリンダー〔金合金製のシリンダー、ノーベル・バイオケア(Nobel Biocare) 社製、品番:セラ・ワン・システム(Cera One Syste)〕およびセラミックキャップ〔ノーベル・バイオケア(Nobel Biocare) 社製、商品名:セラ・ワン・システム(Cera One System) 〕を用いた。
Figure 2006076962
表1に示した結果から、各実施例で得られたセメント組成物は、いずれも、比較例1で得られたセメント組成物と対比して、水酸化カルシウムが用いられていることにより、適度な硬化時間を有し、崩壊率が低く、圧縮強さおよび保持力のいずれにも、優れていることがわかる。そのなかでも、実施例1〜4で得られたセメント組成物は、より適度な硬化時間を有し、崩壊率がより低く、圧縮強さおよび保持力のいずれにも、より優れていることがわかる。さらに、実施例1では、リン酸カルシウムとして、リン酸四カルシウムが用いられているので、崩壊率がもっとも低く、圧縮強さおよび保持力のいずれにも、もっとも優れていることがわかる。
実施例7
リン酸カルシウムとして、リン酸四カルシウム(TTCP)〔平均粒径:8.5μm、和光純薬工業(株)製〕を用い、リン酸カルシウムと水酸化カルシウム(平均粒径10.2μm)とを、リン酸カルシウム100 重量部に対する水酸化カルシウムの量が33重量部となるように調製し、粉末成分を得た。
一方、液剤成分として、ポリアルケン酸水溶液〔ポリアクリル酸水溶液:市販のカルボキシレートセメントの液〔シージー(G-C) 社製、商品名:リブカーボ(LIVCARBO)〕を用いた。
次に、液剤成分1gあたりの粉末成分の量が0.63g となるように、粉末成分と液剤成分とを混合し、セメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2に示す。
比較例2
実施例7において、水酸化カルシウムを使用しなかった以外は、実施例7と同様にして、セメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2に示す。
比較例3
従来のセメント組成物として、ポリカルボン酸と酸化亜鉛とがキレート硬化反応を起こす市販の代表的な仮着用のカルボキシレートセメント〔松風社製、商品名:ハイボンド・テンポラリー・セメント(ハード)(HY-BOND TEMPORARY CEMENT (HARD)〕を用い、液剤成分1gあたりの粉末成分の量が1.60g となるように混合して、セメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2に示す。
比較例4
従来のセメント組成物として、酸化亜鉛とユージノールを基剤として市販されている代表的な仮着用の酸化亜鉛ユージノール・セメント〔ジー・シー(G-C) 社製、商品名:ユージノールセメント(EUGENOL CEMENT)〕を用い、液剤成分1gあたりの粉末成分の量が4.55g となるように混合して、セメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物の物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2に示す。
Figure 2006076962
表2に示された結果から、比較例2では、水酸化カルシウムが用いられていないため、市販されているセメント組成物(比較例3および4)と比較して、硬化時間が長いばかりでなく、圧縮強さが低く、しかも崩壊率は高いことがわかる。
これに対して、実施例7では、水酸化カルシウムが用いられているため、水酸化カルシウムが用いられていない比較例2と対比して、硬化時間が短く、圧縮強さが高く、さらに崩壊率が1%程度と非常に低いことがわかる。
また、実施例7で得られたセメント組成物のアバットメントと、口腔インプラントにおける上部構造体との保持力は、市販の仮着用セメントを用いた場合(比較例3および4)よりも著しく高いことがわかる。
以上のことから、実施例7で得られたセメント組成物には、水酸化カルシウムが用いられているので、セメント組成物のpHがある程度高くなり、ポリアルケン酸のカルボキシル基がイオン化されることから、硬化反応が促進され、アバットメントや口腔インプラントにおける上部構造体に対する保持力が高められたものと考えられる。
また、実施例7によれば、粉末成分と液剤成分との混合初期に、得られるセメント組成物のpHが上昇するので、リン酸カルシウム粉末の溶解が抑制され、可溶性のカルシウム塩の生成量が減少するため、崩壊率が低下したものと考えられる。
なお、実施例7で得られたセメント組成物は、表2に示されるように、その原材料に亜鉛などの重金属元素が含まれていないので、生体安全性にも優れていることがわかる。
本発明のセメント組成物は、口腔インプラントにおける上部構造仮着用セメントとして好適に使用しうるものである。

Claims (3)

  1. (a)リン酸カルシウム、(b)水酸化カルシウム、(c)ポリアルケン酸および(d)水を含有する歯科用セメント組成物。
  2. リン酸カルシウムがリン酸四カルシウムである請求項1記載の歯科用セメント組成物。
  3. 水酸化カルシウムの量がリン酸カルシウム100重量部に対して15〜55重量部である請求項1または2記載の歯科用セメント組成物。
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