本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、定着手段のニップ部を通過する記録媒体の端面による定着手段の磨耗を軽減すると共に、ロール状の定着手段のニップ部の温度の低下による連続印刷の中断を防止する。
請求項1に記載の画像形成装置は、未定着トナー像を形成されて搬送される記録媒体を加圧、加熱して未定着トナー像を記録媒体に定着させる定着手段と、記録媒体の前記定着手段のニップ部への突入位置を搬送方向と直交する方向へ変位させる突入位置変位手段と、所定のタイミングで前記突入位置変位手段を作動させる第1制御手段と、を有することを特徴とする。
請求項1に記載の画像形成装置では、未定着トナー像を形成されて搬送される記録媒体が定着手段のニップ部によって加圧、加熱され、未定着トナー像が記録媒体に定着される。ここで、記録媒体が定着手段のニップ部を通過する位置が常に一定の場合、記録媒体の端部が常に定着手段のニップ部の同じ箇所を摺擦するので、局所的に定着手段のニップ部の磨耗が激しくなる。
このため、請求項1に記載の画像形成装置では、第1制御手段が、所定枚数毎等の所定のタイミングで突入位置変位手段を作動させ、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を搬送方向と直交する方向へ変位させる。これによって、記録媒体の端部が摺擦するニップ部の箇所が所定のタイミングで変わるので、定着手段の磨耗を軽減できる。
請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記突入位置変位手段は、前記定着手段より搬送方向上流側で記録媒体の搬送位置を搬送方向と直交する方向へ変位させる搬送位置変位手段であることを特徴とする。
請求項2に記載の画像形成装置では、定着手段より搬送方向上流側で記録媒体の搬送位置が、後述するアライニングロール等の搬送位置変位手段によって搬送方向と直交する方向へ変位され、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置が、搬送方向と直交する方向へ変位される。なお、搬送位置変位手段は、記録媒体にトナー像を形成する位置よりも搬送方向上流側であっても、搬送方向下流側であっても良い。
請求項3に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記突入位置変位手段は、前記定着手段を搬送方向と直交する方向へ変位させる定着位置変位手段であることを特徴とする。
請求項3に記載の画像形成装置では、定着手段が定着位置変位手段によって搬送方向と直交する方向へ変位されることで、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置が、搬送方向と直交する方向へ変位される。
請求項4に記載の画像形成装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置であって、前記第1制御手段は、記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると前記突入位置変位手段を作動させることを特徴とする。
請求項4に記載の画像形成装置では、記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、突入位置変位手段が第1制御手段によって作動され、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置が、搬送方向と直交する方向へ変位される。
請求項5に記載の画像形成装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置であって、前記第1制御手段は、所定のサイズの記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると前記突入位置変位手段を作動させることを特徴とする。
請求項5に記載の画像形成装置では、所定サイズの記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、第1制御手段が突入位置変位手段を作動させ、所定サイズの記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を搬送方向と直交する方向へ変位させる。
ここで、記録媒体のサイズによって記録媒体の端部が定着手段のニップ部に摺擦する箇所(搬送方向と直交する方向)が異なり、また、記録媒体の端部が定着手段のニップ部に摺擦する総距離(搬送方向)が異なる。即ち、記録媒体のサイズによって定着手段のニップ部の磨耗の発生箇所、程度が異なるので、記録媒体のサイズに応じて定められた所定枚数毎に、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を変位させることで、定着手段の磨耗を効率良く抑えることができる。
請求項6に記載の画像形成装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置であって、前記第1制御手段は、所定の坪量の記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると前記突入位置変位手段を作動させることを特徴とする。
請求項6に記載の画像形成装置では、所定の坪量の記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、第1制御手段が、突入位置変位手段を作動させ、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を搬送方向と直交する方向へ変位させる。
ここで、記録媒体の坪量によって記録媒体の端部が定着手段のニップ部に摺擦する圧力が異なり、定着手段の磨耗の程度が異なる。このため、記録媒体の坪量に応じた定められた所定枚数毎に、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を変位させることで、定着手段の磨耗を効率良く抑えることができる。
請求項7に記載の画像形成装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置であって、前記第1制御手段は、所定のサイズ、坪量の記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると前記突入位置変位手段を作動させることを特徴とする。
請求項7に記載の画像形成装置では、第1制御手段が、所定のサイズ、坪量の記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると突入位置変位手段を作動させ、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を搬送方向と直交する方向へ変位させる。
ここで、記録媒体のサイズが一定のサイズであったとしても坪量が異なれば、定着手段の磨耗の程度が異なり、また、記録媒体の坪量が一定の坪量であったとしてもサイズが異なれば、定着手段の磨耗の程度、発生箇所が異なる。このため、記録媒体のサイズ、坪量に応じて定められたた所定枚数毎に、記録媒体の定着手段のニップ部への突入位置を変位させることで、定着手段の磨耗を効率良く抑えることができる。
請求項8に記載の画像形成装置は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置であって、複数の前記定着手段が、記録媒体の搬送経路と前記搬送経路の外側との間で移動可能とされ、前記搬送経路で使用されている前記定着手段と前記搬送経路の外側で待機している前記定着手段を入替える入替え手段と、所定のタイミングで前記入替え手段を作動させる第2制御手段と、を有することを特徴とする。
請求項8に記載の画像形成装置では、複数の定着手段が記録媒体の搬送経路と搬送経路の外側との間で移動可能とされており、第2制御手段が、所定枚数毎等の所定のタイミングで、入替え手段を作動させ、搬送経路で使用されている定着手段と搬送経路の外側で待機している定着手段を入替えさせる。
これによって、記録媒体が定着手段を通過する際に定着手段に発生する磨耗を軽減することができる。また、使用中の定着手段の温度が定着に適した温度範囲を下回った場合でも、搬送経路の外側で待機していた定着手段によって引き続き定着動作を行うことができる。即ち、低下した定着手段の温度が昇温するのを待つ時間を省くことができ、印刷時間の延長を防止できる。
請求項9に記載の画像形成装置は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記第2制御手段は、記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると、前記入替え手段を作動させることを特徴とする。
請求項9に記載の画像形成装置では、記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、入替え手段が第2制御手段によって作動され、搬送経路で使用されている定着手段と搬送経路の外側で待機している定着手段が入替えられる。
請求項10に記載の画像形成装置は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記第2制御手段は、所定のサイズの記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると、前記入替え手段を作動させることを特徴とする。
請求項10に記載の画像形成装置では、所定のサイズの記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、入替え手段が第2制御手段によって作動され、搬送経路で使用されている定着手段と搬送経路の外側で待機している定着手段が入替えられる。
ここで、記録媒体のサイズによって定着手段のニップ部が通過する記録媒体から奪われる熱量が異なる。このため、記録媒体のサイズに応じて定められた所定枚数毎に、定着手段の入替えを行うことで、搬送経路で定着動作を行う定着手段のニップ部の温度を確実に定着に適した温度に維持することができる。
請求項11に記載の画像形成装置は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記第2制御手段は、所定の坪量の記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると、前記入替え手段を作動させることを特徴とする。
請求項11に記載の画像形成装置では、所定の坪量の記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、入替え手段が第2制御手段によって作動され、搬送経路で使用されている定着手段と搬送経路の外側で待機している定着手段が入替えられる。
ここで、記録媒体の坪量によって吸収する熱量が異なる。即ち、薄紙と厚紙とでは吸収する熱量が異なり、定着手段のニップ部が、通過する記録媒体から奪われる熱量が異なる。このため、記録媒体の坪量に応じて定められた所定枚数毎に、定着手段の入替えを行うことで、搬送経路で定着動作を行う定着手段のニップ部の温度を確実に定着に適した温度に維持することができる。
請求項12に記載の画像形成装置は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記第2制御手段は、所定のサイズ、坪量の記録媒体が所定枚数、前記定着手段のニップ部を通過すると、前記入替え手段を作動させることを特徴とする。
請求項12に記載の画像形成装置では、所定のサイズ、坪量の記録媒体が所定枚数、定着手段のニップ部を通過すると、入替え手段が第2制御手段によって作動され、搬送経路で使用されている定着手段と搬送経路の外側で待機している定着手段が入替えられる。
ここで、記録媒体のサイズが一定のサイズであったとしても坪量が異なれば、定着手段のニップ部が記録媒体から奪われる熱量が異なり、また、記録媒体の坪量が一定の坪量であったとしてもサイズが異なれば、定着手段のニップ部が記録媒体から奪われる熱量が異なる。このため、記録媒体のサイズ、坪量に応じて定められた所定枚数毎に、搬送経路で使用されている定着手段と搬送経路の外側で待機している定着手段との入替えを行うことで、搬送経路で定着動作を行う定着手段の温度を確実に定着に適した温度に維持することができる。
本発明は上記構成にしたので、定着手段のニップ部を通過する記録媒体の端面による定着手段の磨耗を抑制できると共に、定着手段のニップ部の温度の低下による連続印刷の中断を防止できる。
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、モノクロレーザービームプリンタ(以下、プリンタと言う)10は、感光体ドラム12にトナー像を形成し、感光体ドラム12から用紙Pへトナー像を転写する画像形成部14を備える。この画像形成部14の下方には給紙カセット16がプリンタ本体18に挿抜可能に設けられている。
給紙カセット16には用紙Pが積層されており、給紙カセット16の搬送方向下流端部にはピックアップロール20が設けられている。このピックアップロール20は、最上位の用紙Pに当接し、回転駆動されて用紙Pを1枚ずつ給紙カセット16から搬送方向下流側へ送り出す。
そして、ピックアップロール20よりも下流側の搬送経路Lは上方に向けて延出し、そして、折返されて水平方向に延出して画像形成部14に到達する。この搬送経路Lに沿って複数の搬送ロール22が配設されている。
画像形成部14では、搬送経路Lの上側に感光体ドラム12が配設され、転写ロール29が搬送経路Lを間に置いて感光体ドラム12と対向している。転写ロール29は、感光体ドラム12に圧接されており、感光体ドラム12の回転に従動して回転し、感光体ドラム12と共に用紙Pを狭持搬送する。
そして、感光体ドラム12の周囲には、回転方向(図中反時計回り方向)に順に、クリーニングブレード34、帯電チャージャー36、LEDアレイヘッド44、現像器46が配設されている。
クリーニングブレード34は、用紙Pに転写されずに感光体ドラム12の表面に残留した未転写残留トナーを感光体ドラム12の表面から掻き落して除去する。また、帯電チャージャー36は、感光体ドラム12の表面を一様に帯電する。そして、LEDアレイヘッド44は、感光体ドラム12の帯電面をライン露光し、感光体ドラム12に静電潜像を形成する。
そして、現像器46は、感光体ドラム12に形成された静電潜像上にトナーを付着させてトナー像を形成する。現像器46には、現像ロール38、パドルホイール39、攪拌スクリュー48が回転可能に設けられており、攪拌スクリュー48が回転駆動されて現像器46内のトナーとキャリアが攪拌される。そして、十分に攪拌されたトナーとキャリアがパドルホイール39によって現像ロール38に供給される。現像ロール38に現像バイアスが印加され、現像ロール38と感光体ドラム38との間に電位差が発生することで、現像ロール38から感光体ドラム12へトナーが移動する。そして、転写ロール29に転写バイアスが印加されて感光体ドラム12上のトナーが転写ロール29側へ引寄せられることで、感光体ドラム12から用紙Pへトナー像が転写される。
また、画像形成部14の搬送方向下流側には、搬送ベルト28が配設されている。トナー像を転写された用紙Pは、この搬送ベルト28上に送られ、搬送ベルト28によって水平に搬送される。
搬送ベルト28の水平方向には、定着器56A又は定着器56Bが配設されている。詳細は後述するが、定着器56A及び定着器56Bは、昇降機構40によって昇降可能とされており、プリント中には何れか一方が搬送経路Lに配置される。
定着器56A、56Bでは、ヒートロール58に加圧ロール60が圧接されており、用紙Pがヒートロール58と加圧ロール60によって狭持搬送される際に加圧加熱されることで、トナーが溶融して用紙Pに定着する。そして、定着器56A又は定着器56Bから送り出された用紙Pは排出ロール62によってプリンタ10から排紙される。
なお、定着器56A及び定着器56Bへの通紙枚数Nは、カウンタ102(図8参照)によってカウントされているが、この点については後述する。
ここで、定着器56A、56Bを昇降させる昇降機構40について説明する。
図2乃至図4に示すように、支持板42がプリンタ本体18の底板18Aに立設されており、搬送経路Lと直交している。この支持板42には、搬送される用紙Pを通過させるための矩形状の開口42Aが穿設されている。また、支持板42の開口42Aの左右にはそれぞれ、上下方向に延出するスライドレール50が取付けられている。
このスライドレール50は、支持板42に取付けられたレール50Aと、レール50A上を摺動するキャリッジ50Bとで構成されている。キャリッジ50Bの下側には、定着器56Bが取付けられており、キャリッジ50Bの上側には、定着器56Aが取付けられている。即ち、定着器56A、56Bは、上下に配列され、スライドレール50を介して支持板42に上下方向へ移動可能に支持されている。
また、キャリッジ50Bの上端部にはワイヤー52の一端部が取付けられている。このワイヤー52は、搬送方向に沿って配列されたプーリ54A、54B、54Cに巻き掛けられ、他端部をプリンタ本体18の上壁18Bに支持されている。プーリ54Aはレール50の上方に配設され、プーリ54Bは、プーリ54Aと同じ高さ、支持板42よりも搬送方向上流側に配置されている。また、プーリ54Cは、プーリ54A、54Bよりも低い高さ、プーリ54Bより搬送方向上流側且つ上壁18Aに支持されたワイヤ42の他端部より搬送方向下流側に配置されている。
ここで、プーリ54Cは、コ字状の支持板64に回転可能に支持されており、この支持板64は、エアシリンダ66のロッド部66Aの先端部に取付けられている。エアシリンダ66は、支持板42より搬送方向上流側に設置されており、ロッド部66Aを上下方向に移動させる。
即ち、ロッド部66Aが下方へ移動すると、ワイヤー52がプーリ54Cによって引き下げられることで、キャリッジ50Bに取付けられたワイヤー52の一端部が上昇し、定着器56A、56Bが上昇する。逆に、ロッド部66Aが上方へ移動すると、ワイヤー52がプーリー54Cから引張られなくなり、定着器56A、56Bは自重で下降する。
ロッド部66Aの可動範囲は、図示しないストッパによって制限されており、図3に示すように、ロッド部66Aが最上位まで上昇すると定着器56Aのヒートロール58と加圧ロール60とのニップ部Nが、搬送経路Lに位置し、図4に示すように、ロッド部66Bが最下位まで下降すると定着器56Bのヒートロール58と加圧ロール60とのニップ部Nが、搬送経路Lに位置する。
次に、画像形成部14と定着器56A、56Bとの間に配設された搬送位置変位機構30の構成について説明する。
図5、図6に示すように、搬送位置変位機構30は、搬送ベルト28、搬送ガイド32を備える。搬送ベルト28は、搬送方向と直交する方向(以下、幅方向と言う)に並設された搬送ベルト28A、28Bで構成されている。搬送ベルト28Aは、幅方向の一側(図中左側)に配設され、搬送ベルト28Bは、幅方向の他側(図中右側)に配設されている。搬送ベルト28Aは、ロール24A、24Bに巻き掛けられ、搬送ベルト28Aは、ロール26A、26Bに巻掛けられている。
また、搬送ガイド32は、画像形成部14と支持板42との間に配設され、転写ロール29の搬送方向下流側から支持板42の開口42Aまで搬送方向に沿って延出している。
搬送ガイド32の搬送面32Eの裏面の幅方向一端部(図中左側)、及び幅方向中央部には、それぞれ、支持片32A、支持片32Bが形成されており、この支持片32A、32Bに、ロール24A、24Bの軸方向両端部が軸受25A、25Bを介して回転可能に支持されている。また、搬送ガイド32の搬送面32Eの裏面の幅方向他端部(図中右側)、及び幅方向中央部には、それぞれ支持片32C、支持片32Dが形成されており、この支持片32C、32Dに、ロール26A、26Bの軸方向両端部が軸受27A、27Bを介して回転可能に支持されている。
また、搬送位置変位機構30は、ベルト駆動モータ68、72を備える。ベルト駆動モータ68は、支持片32Aの外側の面に取付けられており、このベルト駆動モータ68のギア68Aと、ロール24Aの回転軸に取付けられたギア70が噛合っている。また、ベルト駆動モータ72は、支持片32Cの外側の面に取付けられており、このベルト駆動モータ72のギア72Aと、ロール26Aの回転軸に取付けられたギア74が噛合っている。ベルト駆動モータ68、72は、回転速度可変式のモータで、プリンタ10全体の制御を司る制御部100(図8参照)によって制御される。
また、搬送ガイド32の搬送面32Eには、搬送ベルト28A、28Bの上面を表側に露出させるための矩形状の開口32F、32Gが穿設されている。搬送ベルト28A、28Bの上面は、搬送面32Eと面一、若しくは搬送面32Eから表側へ僅かに突出するようになっており、搬送ベルト28A、28Bの上面に用紙Pが載るようになっている。また、搬送ガイド32の搬送面32Eの開口32Fの図中左側には、搬送方向に沿って延出するガイドリブ32Hが形成されている。
また、図1に示すように、転写ロール29と搬送ベルト28との間には、用紙Pを検出するセンサ76が配設されている。このセンサ76は、搬送経路Lへ揺動可能に垂下され、搬送される用紙Pによって作動されるアクチュエータ(図示省略)を検出する透過型センサである。なお、用紙Pに向けて光を射出し、用紙Pによって反射される光を受光する投受光センサも適用可能である。
ここで、昇降機構40、搬送位置変位機構30の制御方法の第1実施形態について図7のフローチャートを参照して説明する。
制御部100(図8参照)が、プリントジョブを受信すると本フローが開始され、ステップ101に進む。ステップ101では、カウンタ102(図8参照)にカウントされた通紙枚数Nが(1)式の条件を満たしているか否か判定され、肯定されるとステップ102へ進み、エアシリンダ66を駆動して定着装置56Aを搬送経路Lに移動させる。
N1×2n<N≦N1×(2n+1)…(1)
ここで、N1は、1つの定着器において連続して通紙しても良い枚数(許可通紙枚数)で、連続通紙した際にヒートロール58の熱が奪われてヒートロール58の温度が下がった時に、定着許容温度以下となってしまうことがない最大枚数である。また、nは、n=0、1、2、…となる数で、定着器56A、56Bが一順されるとインクリメントされる変数である。また、Nは、定着器56Aの通紙枚数と定着器56Bの通紙枚数との合計した数値で、システム全体の印刷枚数をカウントするカウンタ102(図8参照)の値を用いている。なお、N及びnは、最初は0であるが、その後は印刷の途中で0クリアされることがない値である。
ステップ101において否定判定がなされると、ステップ103へ進む。ステップ103では、通紙枚数Nが(2)式の条件を満たしているか否かが判定され、肯定されるとステップ104へ、否定されるとステップ105へ進む。
N1×(2n+1)<N≦N1×(2n+2)…(2)
ステップ105では、変数nを1加算して、ステップ101に戻り、以降の処理が繰り返し行われる。一方、ステップ104では、エアシリンダ66を駆動して定着装置56Bを搬送経路Lに移動させる。
即ち、本実施形態では、連続通紙がされた時には、N1で規定された枚数を超えた場合、つまり、1つの定着器の温度が定着許容温度以下となるような場合、使用されていた定着と搬送経路Lの上方又は下方で待機していた定着器との入替えが行われる。これによって、通過する用紙Pから熱を奪われることによって低下したヒートロール58の温度が昇温するのを待つ時間を省くことが出来、プリント時間の延長を防止できる。
一方、1、2枚の用紙Pが時間をおいて通紙されているような場合でも、所定枚数の通紙が行われた場合、使用中の定着器と待機中の定着器との入替えが行われる。これによって、1つの定着器のみ使用頻度が多くなるようなことがなくなるので、用紙Pの端部(紙こば)がニップ部Nに摺擦することによるニップ部Nの磨耗を軽減できる。
そして、ステップ106では、定着許可信号を送信し、ステップ107へ進む。ステップ107では、ピックアップロール20等を駆動させて給紙カセット16から画像形成部14へ用紙Pを給紙させ、画像形成部14の各部を駆動させて用紙Pへトナー像を転写させる。
そして、ステップ108では、センサ76から検出信号を受信するまで否定判定が繰り返され、肯定されるとステップ109へ進む。ステップ109では、センサ76からの検出信号が途切れるまで、即ち、用紙Pへのトナー像の転写が終了し、用紙Pの後端が画像形成部14を通過するまで、否定判定が繰り返され、肯定されるとステップ110へ進む。
ステップ110では、ベルト駆動モータ68の回転速度V1とベルト駆動モータ72の回転速度V2が同一か否かが判定され、肯定されるとステップ111へ進み、否定されるとステップ112へ進む。ステップ111では、ベルト駆動モータ68の回転速度V1を減速させ、ベルト駆動モータ70の回転速度V2をベルト駆動モータ68の回転速度V1よりも速くする。
図9(A)に示すように、用紙Pは、給紙カセット16から搬送ベルト28までセンター基準で搬送され、まず、同速度で回転する搬送ベルト28A、28Bによって搬送ガイド32上を搬送される。そして、図9(B)に示すように、ベルト駆動モータ68の回転速度V1が減速されて搬送ベルト28Bの回転速度V2が搬送ベルト28Aより速くなる。これによって、図9(C)に示すように、用紙Pの送り速度が図中右側の方が左側の方よりも速くなって用紙Pが搬送方向に対して傾斜し、図中左側に寄せられる。そして、図9(D)に示すように、用紙Pは、図中左側の端部をガイドリブ32Hに当接させて搬送される。
即ち、用紙Pは、トナー像を転写された後、幅方向の一側へ例えば0.5mm程シフトされて定着器56Aのニップ部N又は定着器56Bのニップ部Nへ突入する。このため、用紙Pの端部がニップ部Nに摺擦する位置が図10に実線で示すセンター基準の位置から鎖線で示す位置までシフトされるので、ニップ部Nの磨耗を低減できる。
そして、ステップ112では、ベルト駆動モータ68の回転速度V1を増速させ、ベルト駆動モータ72の回転速度V2と同速にする。これによって、センター基準で搬送ベルト28まで搬送された用紙Pは、図中左方向へシフトされることなく、真直ぐ搬送され、定着器56A又は定着器57Aへ突入する。
即ち、図10に鎖線で示すように、前のジョブでは図中左側へシフトされて定着器56Aのニップ部N又は定着器56Bのニップ部Nを通過していた用紙Pが、図中実線で示すセンター基準の位置までシフトされるので、ニップ部Nの磨耗を低減できる。
そして、ステップ113へ進み、プリントジョブが終了したか否かが判定され、否定されるとステップ101へ戻って以降の処理が繰り返され、肯定されると本フローを終了する。
次に、昇降機構40、搬送位置変位機構30の制御方法の第2実施形態について図11のフローチャートを参照して説明する。
制御部100(図8参照)が、プリントジョブを受信すると本フローが開始され、ステップ201に進む。ステップ201では、用紙PのサイズがサイズA(例えば、A4縦)であるか否かが判定され、肯定されるとステップ202へ否定されるとステップ203へ進む。
ステップ202では、許可通紙枚数として設定する変数NXに、サイズAに適した許可通紙枚数N1を設定し、ステップ207へ進む。一方、ステップ203では、用紙PのサイズがサイズB(例えば、A3縦)であるか否かが判定され、肯定されるとステップ204へ否定されるとステップ205へ進む。
ステップ204では、変数NXにサイズBに適した許可通紙枚数N2を設定し、ステップ207へ進む。一方、ステップ205では、用紙PのサイズがサイズC(例えば、B4縦)であるか否かが判定され、肯定されるとステップ206へ進む。ステップ206では、変数NXに、サイズCに適した許可通紙枚数N3を設定し、ステップ207へ進む。ステップ207では、変数NXが(3)式を満たしているか否かが判定される。
NX×2n<N≦NX×(2n+1)…(3)
ステップ207において肯定されるとステップ208へ進む。ステップ208では、エアシリンダ66を駆動して定着器56Aを搬送経路Lへ移動させ、ステップ212へ進む。一方、ステップ207において否定されるとステップ209へ進む。
ステップ209では、通紙枚数Nが(4)式を満たすか否かが判定され、肯定されるとステップ210へ進む。ステップ210では、エアシリンダ66を駆動して定着器56Bを搬送経路Lへ移動させ、ステップ212へ進む。
NX×(2n+1)<N≦NX×(2n+2)…(4)
一方、ステップ209において否定されると、ステップ211へ進み、変数nを1加算して、ステップ201へ戻り、以降の処理が繰り返し行われる。
以上の処理によって、用紙Pのシートサイズに適した通紙枚数が1つの定着器を通ることになる。なお、許可通紙枚数NXは、定着器を通過する用紙Pの総距離が2つの定着器で一定となるように設定されている。
そして、ステップ212以降は、第1実施形態のステップ106以降と同様の処理が行われる。
ここで、用紙Pのサイズによって用紙Pの端部が定着器56A、56Bのニップ部Nに摺擦する箇所(軸方向)が異なり、また、用紙Pの端部がニップ部Nに摺擦する距離(搬送方向)が異なる。即ち、用紙Pのサイズによってニップ部Nの磨耗の発生箇所、程度が異なるので、用紙Pのサイズに応じて定められた所定枚数毎に、用紙Pのニップ部Nへの突入位置を変位させることで、ニップ部Nの磨耗を効率良く抑えることができる。
次に、昇降機構40、搬送位置変位機構30の制御方法の第3実施形態について図12のフローチャートを参照して説明する。
制御部100(図8参照)が、プリントジョブを受信すると本フローが開始され、ステップ301に進む。ステップ301では、用紙Pの坪量の範囲が第1範囲であるか否かが判定され、肯定されるとステップ302へ否定されるとステップ303へ進む。
ステップ302では、許可通紙枚数として設定する変数NXに、第1範囲に適した許可通紙枚数N1を設定し、ステップ307へ進む。一方、ステップ303では、用紙Pの坪量が第2範囲であるか否かが判定され、肯定されるとステップ304へ否定されるとステップ305へ進む。
ステップ304では、変数NXに第2範囲に適した許可通紙枚数N2を設定し、ステップ307へ進む。一方、ステップ305では、用紙Pの坪量が第3範囲であるか否かが判定され、肯定されるとステップ306へ進む。ステップ306では、変数NXに、第3範囲に適した許可通紙枚数N3を設定し、ステップ307へ進む。ステップ307以降は、第2実施形態のステップ207以降と同様の処理が行われる。
ここで、用紙Pの坪量によって用紙Pの端部がニップ部Nに摺擦する力が異なり、ニップ部Nの磨耗の程度が異なる。このため、用紙Pの坪量に応じて定められた所定枚数毎に、用紙Pのニップ部Nへの突入位置を変位させることで、ニップ部Nの磨耗を効率良く抑えることができる。
次に、昇降機構40、搬送位置変位機構30の制御方法の第4実施形態について図13のフローチャートを参照して説明する。
制御部100(図8参照)が、プリントジョブを受信すると本フローが開始され、ステップ401に進む。ステップ401では、用紙PのサイズがサイズA(例えば、A4縦)であるか否かが判定され、肯定されるとステップ402へ否定されるとステップ403へ進む。
ステップ402では、許可通紙枚数として設定する変数iに1を設定し、ステップ407へ進む。一方、ステップ403では、用紙PのサイズがサイズB(例えば、A3縦)であるか否かが判定され、肯定されるとステップ404へ否定されるとステップ405へ進む。
ステップ404では、変数iに2を設定し、ステップ407へ進む。一方、ステップ405では、用紙PのサイズがサイズC(例えば、B4縦)であるか否かが判定され、肯定されるとステップ406へ進む。ステップ406では、変数iに3を設定し、ステップ407へ進む。
ステップ407では、用紙Pの坪量の範囲が第1範囲であるか否かが判定され、肯定されるとステップ408へ否定されるとステップ409へ進む。
ステップ408では、変数jに1を設定する。一方、ステップ409では、用紙Pの坪量が第2範囲であるか否かが判定され、肯定されるとステップ410へ否定されるとステップ411へ進む。
ステップ410では、変数jに2を設定する。一方、ステップ411では、用紙Pの坪量が第3範囲であるか否かが判定され、肯定されるとステップ412へ進む。ステップ412では、変数jに3が設定される。そして、ステップ413へ進む。
ステップ413では、上述したようにして設定された用紙Pのサイズ、坪量に応じた変数i、jによって選択される許可通紙枚数Nijを許可通紙枚数NXに入れる。ここで、許可通紙枚数Nijは、予め用紙Pのサイズと坪量との組合せに応じて規定されたもので、1つの定着器において、連続通紙した際に、ヒートロール58の熱が奪われて低下するヒートロール58の温度が、定着許容温度以下になってしまうことがない最大枚数であり、変数iと変数jとの組合せとして引き出すことができるように記憶させておいたものである。
そして、ステップ414以降は、、第2実施形態のステップ207以降と同様の処理が行われる。
ここで、用紙Pのサイズが同一であったとしても坪量が異なれば、ニップ部Nの磨耗の程度が異なり、また、用紙Pの坪量が同一であったとしてもサイズが異なれば、ニップ部Nの磨耗の程度、発生箇所が異なる。このため、用紙Pのサイズ、坪量に応じて定められた所定枚数毎に、用紙Pのニップ部Nへの突入位置を変位させることで、ニップ部Nの磨耗を効率良く抑えることができる。
次に、搬送位置変位機構30の第2実施例である突入位置変位機構80について説明する。
図14、図15に示すように、突入位置変位機構80は、搬送ベルト82を備える。この搬送ベルト82の幅方向の一側(図中左側)では、支持フレーム84が搬送方向に沿って延出し、搬送ベルト82の幅方向の他側(図中右側)では、支持フレーム86が搬送方向に沿って延出している。搬送ベルト82は、ロール88A、88Bに巻き掛けられており、このロール88A、88Bの軸方向の一端部が支持フレーム84に回転可能に支持され、ロール88A、88Bの軸方向の他端部が支持フレーム86に回転可能に支持されている。
また、支持フレーム84の上部をL字状に折り曲げることで、搬送方向に沿って延出するサイドガイド84Aが形成されている。なお、支持フレーム84の上面84Bは搬送ベルト82の上面と面一になっている。
また、支持フレーム84には支持部材(図示省略)を介して回転軸にアライニングロール92が取付けられたモータ90が上下動可能に取付けられている。このモータ90は、搬送ベルト82の搬送方向下流側に配設されており、最上位でアライニングロール92を用紙Pに当接させる。
ここで、アライニングロール92の回転軸は、搬送方向と傾斜して交差している。図16(A)に示すように、センター基準で搬送ベルト82まで搬送された用紙Pは、図16(B)に示すように、アライニングロール92に当接して搬送方向に対して傾斜し、サイドガイド84A側へ寄せられる。そして、図16(C)に示すように、用紙Pは、図中左側の端部をサイドガイド84Aに当接させた状態で搬送される。
即ち、上述したステップ111において、ベルト駆動モータ68の回転速度を減速させる代りに、モータ90を駆動させると共に上昇させ、回転するアライニングロール92を用紙Pに当接させることで、センター基準で搬送された用紙Pを図中左側へシフトさせて定着器56A、56Bへ突入させる。
また、上述したステップ112において、ベルト駆動モータ68の回転速度を増速させる代りに、モータ90を下降させてアライニングロール92を用紙Pの搬送経路L(図1参照)から下方へ退避させることで、センター基準で搬送された用紙Pを図中左側へシフトさせることなく、そのまま真直ぐ定着器56A、56Bへ突入させる。
なお、モータ90を大きな出力トルクが得られる超音波モータとすることで、アライニングロール92をモータ90によってダイレクトドライブとすることが可能となっている。
ここで、用紙Pは、アライニングロール92によってサイドガイド84A側にシフトされる際に、搬送ベルト82と擦れ合う。このため、両面印刷のジョブにおける裏面の印刷時にはアライニングロール92を搬送経路Lから下方へ退避させておき、用紙Pをシフトさせないことが望ましい。これによって、用紙Pの印刷済みの表面に傷が付くことを防止でき、また、アライニングロール92、搬送ベルト82が汚れることを防止できる。
次に、搬送位置変位機構30の変形例である定着位置変位機構110について説明する。
図17に示すように、定着位置変位機構110を備えるプリンタ120では、定着器56が定着支持フレーム112上に載置されている。図18に示すように、定着位置変位機構110は、2本のスライドレール114を備える。この2本のスライドレール114は、定着支持フレーム112上に取付けられ、幅方向へ沿って延出しており、定着支持フレーム112上に取付けられたレール114Aとレール114A上を摺動するキャリッジ114Bとで構成されている。このキャリッジ114B上に定着器56の底面が取り付けられており、定着器56が幅方向へ移動可能となっている。
また、定着位置変位機構110は、リニアモータ116を備える。リニアモータ116は、定着支持フレーム112上の2本のレール114の間、及び定着器56の底面に取付けられており、定着器56は、このリニアモータ116によって幅方向へ移動される。これによって、図19に示すように、用紙Pの定着器56のニップ部Nへの突入位置がヒートロール58、加圧ロール60の軸方向へシフトされるので、用紙Pの端部がヒートロール58、加圧ロール60に摺擦する位置がシフトされ、ヒートロール58、加圧ロール60の磨耗が軽減される。
なお、本実施例では、定着器56を幅方向へ駆動させる手段としてリニアモータを用いたが、これに限らず、例えば、図20に示すように、定着器56の幅方向の一端側にカム118を設け、定着器56の幅方向の他端側に定着器56を幅方向一端側へ付勢してカム118へ押し当てるバネ122を設けたカム機構等も適用可能である。
また、昇降機構40も、本実施形態の構成に限られず、エアシリンダの上に定着器を載せて、エアシリンダの動力のみで定着器を昇降させる等しても良い。
また、本発明の入替え手段は、定着器を上下方向へ移動させる構成に限られず、定着器を幅方向へ移動させる構成であっても構わない。
さらに、本実施形態では、本発明の搬送位置変位手段を、画像形成部14と定着器との間に設けたが、定着器より搬送方向上流側に配設されてさえいれば良く、画像形成部14より搬送方向上流側に設けても良い。