JP2006068694A - マイクロカプセル化された無機コロイドの製造方法 - Google Patents

マイクロカプセル化された無機コロイドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 例えばインクジェット記録方法に適した特性を有するコーティング用又は印刷用組成物に用いた場合でも、組成物中で良好な分散安定性を有するマイクロカプセル化された無機コロイド(マイクロカプセル化無機コロイド)の製造方法を提供する。
【解決手段】 以下の工程:
(1)水性媒体中において、少なくとも一種の無機コロイド粒子と、前記無機コロイド粒子の表面電荷と反対の電荷を帯びた基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤とを混合して水性混合液を得る工程;及び
(2)前記水性混合液に、正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤、及び少なくとも一種の重合性モノマーをさらに添加して乳化重合をする工程、
を含むことを特徴とする、ポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無機化合物からなるコロイドの表面を、ポリマーを主成分とする材料によって被覆して得られるマイクロカプセル化された無機コロイドの製造方法、および本方法によって得られたマイクロカプセルを含む組成物を被コーティング材料又は被印刷材料にコーティング又は印刷し、さらに加熱することによって、前記材料に無機化合物のコーティング又は印刷を行う方法に関するものである。
基材に無機化合物のコーティングを施すことにより、基材に好ましい表面特性を付与する方法が知られている。例えば、光触媒として知られる酸化チタンを被覆することによって基材表面に耐汚染性を付与することや、基材表面をシリカまたはアルミナ等で被覆することにより、基材表面の耐擦傷性を向上させる方法などが考えられている。
基材表面にシリカ等の無機化合物をコーティングする方法としては、例えば、シリカゾル等の無機化合物からなるコロイド(無機コロイド)をコーティングしてから、加熱・焼成する方法が一般的である。
一方、無機コロイドを基材表面にコーティングする場合、一般には、ディッピング、スピンコート、又はナイフコーターを用いたコーティング方法等が知られている。
しかしながら、上記公知の無機コロイドを公知の方法を用いて基材表面に適用した後に焼成しても、無機化合物からなる微細なパターンを有するコーティング膜を基材表面に形成させることは困難であった。また、微細なパターンを基材に形成させる方法としては、例えばインクジェット記録方法を用いて無機コロイドを含むコーティング用又は印刷用組成物を基材表面にコーティング又は印刷する方法が考えられる。しかし、インクジェット記録方法に用いることができる特性を有するインク組成物に従来公知の無機コロイドを含有させた場合、インク組成物中における無機コロイドの分散安定性が充分でないという問題点があった。本発明は、例えばインクジェット記録方法に適した特性を有するコーティング用又は印刷用組成物に用いた場合でも、組成物中で良好な分散安定性を有するマイクロカプセル化された無機コロイド(マイクロカプセル化無機コロイド)の製造方法、およびその製造方法を用いて製造したマイクロカプセル化無機コロイドを用いる基材表面への無機化合物のコーティング又は印刷方法を提供しようとするものである。
本発明の、ポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造法は、以下のステップ:
(1)水性媒体中において、少なくとも一種の無機コロイド粒子と、前記無機コロイド粒子の表面電荷と反対の電荷を帯びた基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤とを混合して水性混合液を得る工程;及び
(2)前記水性混合液に、正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤、及び少なくとも一種の重合性モノマーをさらに添加して乳化重合する工程、
を含むことを特徴とするものである。
さらに上記製造法においては、前記(2)のステップにおいて、前記水性混合液に先ず前記少なくとも一種の重合性モノマーを添加し、次に前記正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤を添加してから乳化重合することが好ましい。
本発明の製造法を用いることによってポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子を製造でき、このマイクロカプセル化無機コロイド粒子は、水性のコーティング用又は印刷用組成物に含有させた場合でも分散安定性に優れ、例えば、基材への塗工液や、インクジェット記録方法に用いるインク組成物に用いる材料として好ましい。
本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造方法に用いる前記無機コロイドは、TiO2、SiO2、GeO2、ZrO2、およびWO2コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明のコーティング用又は印刷用組成物は、上記製造方法を用いて製造されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子を含むことを特徴とするものである。
本発明の無機材料のコーティング又は印刷方法は、被コーティング材料又は被印刷材料に、上記のコーティング用又は印刷用組成物をコーティング又は印刷し、さらに加熱して焼き付けることを特徴とするものである。上記の金属酸化物コロイド粒子を含むコーティング用又は印刷用組成物を基材表面にコーティング又は印刷し、さらに加熱焼成することにより基材表面に耐汚染性、耐擦傷性、及び耐摩耗性、耐蝕性、光沢性、透明性等から選ばれる一つ以上の優れた特性を有する被覆層を形成することができ、さらに例えばインクジェット記録方法を用いることにより基材表面に微細なパターンを有する被覆層を形成させることができる。
本発明の、ポリマーを主成分とする材料で無機コロイド粒子表面を被覆して得られるマイクロカプセル化無機コロイド粒子は、無機コロイド粒子、無機コロイド粒子の表面電荷と反対の電荷に帯電した基を有する重合性界面活性剤、正又は負に帯電した基を有する重合性界面活性剤、及び重合性モノマーを含む原料を用い、さらに所定の重合方法を用いることによって製造することができる。以下、本発明の製造法に用いる各種原料を説明し、さらに本発明の製造法を具体的に説明する。
なお、本明細書中、「無機コロイド粒子の表面電荷と反対の電荷」とは、無機コロイド粒子表面のイオン性基の電荷がプラス電荷であればマイナス電荷を意味し、無機コロイド粒子表面のイオン性基の電荷がマイナス電荷であればプラス電荷を意味する。
本発明において用いる無機コロイド粒子は、金属酸化物ゾルであることが好ましく、具体的には、TiO2、SiO2、GeO2、ZrO2、およびWO2コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。このような無機コロイド粒子は、溶解している分子やイオンを化学反応によってコロイド状不溶性物質として生成させる凝縮法によって製造することができる。また、市販されている無機コロイド粒子を用いることもでき、例えば、スノーテックス(商品名、日産化学工業社製)、アルミナゾル(商品名、日産化学工業社製)等を用いることができる。
本発明に用いる無機コロイド粒子は、その平均粒径(平均直径)が10〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることが好ましく、10〜30nmであることが特に好ましい。平均粒径が10〜30nmの無機コロイド粒子を用いることによって、透明性、光沢性という効果が得られる。
無機コロイド粒子の平均粒径の調節は製造条件の調節によって行うことができる。また、本明細書における無機コロイド粒子の平均粒径とは、レーザ光散乱法を用いて測定した値である。
上記の無機コロイド粒子は、中性からアルカリ性のpH領域においては、水性媒体中において粒子表面にO-基を有するため、一般に無機コロイド粒子表面は負電荷を帯びている。また、アルミナゾルの場合のように、表面に正電荷を帯びる場合もある。
本発明においては、原料として上記無機コロイド粒子の表面電荷と反対の電荷に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤(以下、これを重合性界面活性剤Aとも記す)を用いる。無機コロイド粒子表面が負電荷を帯びている場合は、重合性界面活性剤Aとしては正電荷に帯びた基を有する重合性界面活性剤を用いる。正電荷に帯電した基を有する重合性界面活性剤としては、いわゆるカチオン性重合性界面活性剤を挙げることができる。また、無機コロイド粒子表面が正電荷を帯びている場合は、重合性界面活性剤Aとしては負電荷を帯びた基を有する重合性界面活性剤を用いる。負電荷を帯びた基を有する重合性界面活性剤としては、いわゆるアニオン性重合性界面活性剤を挙げることができる。
さらに本発明においては、上記の重合性界面活性剤Aと異っていても同じでもよい重合性界面活性剤であって、正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤(以下、これを重合性界面活性剤Bとも記す)をさらに用いる。この重合性界面活性剤Bとしては、アニオン性重合性界面活性剤及び/又はカチオン性重合性界面活性剤を用いることができる。
本発明においては、上記重合性界面活性剤A及びBの他にさらに重合性モノマーを用いて無機コロイド粒子表面を被覆するポリマーを合成し、マイクロカプセル化無機コロイド粒子を製造する。このポリマーの重合には重合開始剤を用いることができる。
以下、本発明において重合性界面活性剤A及び/又は重合性界面活性剤Bとして用いるカチオン性重合性界面活性剤及びアニオン性重合性界面活性剤、本発明で用いる重合性モノマー、並びに重合開始剤について説明する。さらにこれらの原料を用いて無機コロイド粒子をポリマーで被覆する方法について説明する。
〔カチオン性重合性界面活性剤〕
本発明で用いるカチオン性重合性界面活性剤は、イオン性基としてのカチオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
カチオン性重合性界面活性剤のカチオン性基としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH3 +)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(R2NH2 +)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(R3NH+)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R4+)等を挙げることができる。
ここで、Rは、疎水性基及び重合性基であり、以下に示すものを挙げることができる。
上記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl-、Br-、及びI-等を挙げることができる。
上記Rの疎水性基としては、アルキル基及びアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、一つの界面活性剤分子が、アルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
上記Rの重合性基としては、不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。このなかでも特にアクリロイル基及びメタクリロイル基が好ましい。
前記カチオン性重合性界面活性剤の具体的な例としては、特公平4−65824号公報に記載されているようなカチオン性のアリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、及びメタクリル酸誘導体などを挙げることができる。
本発明において用いるカチオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式R[4-(l+m+n)]1 l2 m3 n+・X-で表される化合物を挙げることができる(前記一般式中、Rは重合性基であり、R1、R2、R3はそれぞれアルキル基又はアリール基であり、XはCl、Br又はIであり、l、m及びnはそれぞれ1又は0である)。ここで、前記重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和炭化水素基を有する炭化水素基を好適に例示でき、より具体的には、アリル基、アクロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロぺニル基、ビニリデン基、及びビニレン基等を挙げることができる。
カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
上記カチオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもでき、例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン(株))、アクリエステルDML60(三菱レイヨン(株))、及びC−1615(第一工業製薬(株))などを挙げることができる。
以上例示したカチオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
〔アニオン性重合性界面活性剤〕
本発明で用いるアニオン性重合性界面活性剤は、イオン性基としてのアニオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、及び特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体などを挙げることができる。
本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1):
Figure 2006068694
[式中、R21及びR31は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、
1は、炭素−炭素単結合又は式:
−CH2−O−CH2
で表される基であり、mは2〜20の整数であり、Xは式−SO31で表される基であり、M1はアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物、又は、例えば、下記一般式(2):
Figure 2006068694
[式中、R22及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Dは、炭素−炭素単結合又は式:
−CH2−O−CH2
で表される基であり、nは2〜20の整数であり、Yは式−SO32で表される基であり、M2はアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。
前記式(1)で表される重合性界面活性剤としては、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている化合物を挙げることができる。式(1)におけるmの値を適宜調整することによって、無機コロイド粒子をマイクロカプセル化して得られるマイクロカプセル化無機コロイド粒子表面の親水性を制御することが可能である。式(1)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記の式(3)で表される化合物を挙げることができ、さらに具体的には、下記の式(3a)〜(3d)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2006068694
[式中、R31、m、及びM1は式(1)で表される化合物と同様である。]
Figure 2006068694
Figure 2006068694
Figure 2006068694
Figure 2006068694
上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−05、HS−10、HS−20、及びHS−1025)(以上、商品名)、あるいは、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープSE−10N、及びSE−20N(以上、商品名)などを挙げることができる。
旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、式(3)で表される化合物において、M1がNH4、R31がC919、m=10とされる化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、式(3)で表される化合物において、M1がNH4、R31がC919、m=20とされる化合物である。
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(4):
Figure 2006068694
[式中、pは9又は11であり、qは2〜20の整数であり、Aは−SO33で表わされる基であり、M3はアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。式(4)で表される好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、下記式の化合物を挙げることができる。
Figure 2006068694
[式中、rは9又は11、sは5又は10である。]
上記アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKHシリーズ(アクアロンKH−5、アクアロンKH−10及びアクアロンKH−20)(以上、商品名)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、上記式(4)で示される化合物において、rが9及びsが5である化合物と、rが11及びsが5である化合物との混合物である。アクアロンKH−10は、上記式で示される化合物において、rが9及びsが10である化合物と、rが11及びsが10である化合物との混合物である。
また、本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、下記の式(S)で表される化合物も好ましい。
Figure 2006068694
[上記式(S)中、R4は水素原子又は炭素数1から12の炭化水素基を表し、lは2〜20の数を表し、M4はアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンを表す。]
以上に例示したアニオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
〔重合性モノマー〕
本発明でいう重合性モノマーとは、その構造中に少なくとも重合性基を有する重合性モノマーをいい、さらに重合性モノマーは疎水性基を有することが好ましい。前記疎水性基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。
上記の脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、及びプロピル基等を、脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、及びイソボルニル基等を、芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、及びナフチル基等を挙げることができる。
上記重合性モノマーの重合性基は、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基であって、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択されることが好ましい。
重合性モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、及びジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルメタクリレート等の単官能メタクリル酸エステル類;アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、及び多価カルボン酸アリル等のアリル化合物;フマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸等の不飽和エステル類;N−置換マレイミド、環状オレフィンなどのラジカル重合性基を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明に用いる上記重合性モノマーとして、1分子あたり重合性基を2個以上有する架橋性モノマーを用いてもよい。架橋性モノマーを共重合させて無機コロイド粒子表面の被覆ポリマーを合成することにより、被覆ポリマーの耐溶剤性を高めることができる。被覆ポリマーの耐溶剤性を高めることにより、被覆ポリマーとの親和性が高い溶剤を含む水性組成物中においても、本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の分散安定性を優れたものにできる。
本発明において用いる上記架橋性モノマーとしては、ビニル基,アリル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,及びビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する化合物で、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモピスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロビレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4一(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。
本発明の上記重合性モノマーとしては、さらに下記一般式(5)で表されるモノマーを用いてもよい。
Figure 2006068694
[ただし、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2はt−ブチル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基を表す。mは0〜3、nは0又は1の整数を表す。]
上記一般式(5)において、R2が示す脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、及びアダマンタン基等が挙げられ、ヘテロ環基としてはテトラヒドロフラン基等が挙げられる。
上記一般式(5)で表されるモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
Figure 2006068694
Figure 2006068694
無機コロイド粒子を被覆するポリマー中に一般式(5)で表されるモノマー由来の"嵩高い"基である前記R2基を入れることによって、ポリマーの分子のたわみやすさを低下させ、すなわち、分子の運動性を低下させて、ポリマーの機械的強度や耐熱性を高めることができる。上記の架橋性モノマーや、一般式(5)で表されるモノマーを用いて重合して得られるポリマーは、Tg(ガラス転移温度)が高く、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性に優れるという利点を有する。したがって、架橋性モノマー及び/又は一般式(5)で表されるモノマーを用いることにより、前記ポリマーで被覆された無機コロイド粒子を含むコーティング用又は印刷用組成物を用いて基材にコーティング又は印刷した場合、コーティング又は印刷面を優れた耐擦性と耐摩耗性、耐久性を有するものにできる。また、"嵩高い"基である前記R2基が前記ポリマー中に存在することによって、コーティング用又は印刷用組成物中に含まれる有機溶媒がポリマー内部へ浸透することを抑制でき、それにより前記ポリマーの耐溶剤性を優れたものにすることができる。このため、コーティング用又は印刷用組成物中に水溶性有機溶媒を共存させ、さらにこれらの組成物をインクジェットヘッドから吐出させて基材にコーティング又は印刷する場合でも、組成物中における無機コロイド粒子の分散性や、前記組成物の保存安定性を高めることができる。
しかし、このような架橋性モノマー及び/又は上記一般式(5)で表されるモノマーを多くするとポリマーの可塑性が低くなるために、マイクロカプセル化無機コロイド粒子が基材と密着しにくくなる場合がある。そのため、好ましい基材との密着性が得られるように、これらのモノマーの使用量は適宜調整することが好ましい。
〔重合開始剤〕
無機コロイド粒子を被覆するポリマーは、上述した各種モノマーを用いて重合反応を行うことによって得られる。この重合反応は公知の重合開始剤を用いて行うことができ、特にラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては水溶性の重合開始剤が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)などが挙げられる。
〔マイクロカプセル化無機コロイド粒子の重合法〕
無機コロイド粒子をポリマーで被覆してマイクロカプセル化無機コロイド粒子を製造する方法を以下に説明する。
無機コロイド粒子を被覆するポリマーは上述のとおり重合反応によって合成するが、この重合反応は、超音波発生器、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度調節器を備えた反応容器を使用して行うことが好ましい。
以下、表面にアニオン性基を有する無機コロイド粒子を用いた場合のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造法について説明する。
初めに、表面にアニオン性基を有する無機コロイド粒子を含む水性分散液、すなわち水性混合液を調製する。アニオン性基を表面に有する無機コロイド粒子が水性媒体中に良好に分散していない場合は、重合を行う前処理として、ボールミル、ロールミル、アイガーミル、又はジェットミル等の一般的な分散装置を用いて無機コロイド粒子を水性媒体中に分散させておくことが好ましい。
次に上記水性混合液に、カチオン性重合性界面活性剤を加えて混合する。このとき、無機コロイド粒子を水性媒体中に分散させるとともに、無機コロイド粒子とカチオン性重合性界面活性剤を良く混合するために超音波を混合物に照射することが好ましい。
上記水性混合液へのカチオン性重合性界面活性剤の添加量は、水性混合液に含まれる無機コロイド粒子が有するアニオン性基の総モル数(すなわち、用いた無機コロイド粒子の質量(g)×1gの無機コロイド粒子が表面に有するアニオン性基量(mol/g))に対して、0.5〜2倍モルの範囲であることが好ましく、0.8〜1.2倍モルの範囲であることがさらに好ましい。無機コロイド粒子表面のアニオン性基の総モル量に対して、カチオン性重合性界面活性剤を0.5倍モル以上添加することによって、その後の重合反応によって良好な分散性を有するマイクロカプセル化無機コロイド粒子を得ることができる。これは無機コロイド粒子表面をカチオン性重合性界面活性剤で充分覆うことができるためと考えられる。一方、無機コロイド粒子表面のアニオン性基の総モル量に対するカチオン性重合性界面活性剤の添加量を2倍モル以下にすることによって、無機コロイド粒子を芯物質として持たないポリマー粒子(ポリマーのみからなる粒子)の生成を抑制することができる。これは、無機コロイド粒子に吸着されないカチオン性重合性界面活性剤の量を少なくできるためであると考えられる。
次に、この水性混合液中に正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤(重合性界面活性剤B)、及び少なくとも一種の重合性モノマーをさらに添加して乳化重合を行う。この場合、上記水性混合液に重合性モノマー及び重合性界面活性剤Bを添加する順序は、本発明の効果を奏することができる限り任意の順序で添加することができ、さらに一方又は両者を分割して添加することもできる。本発明の製造法においては、特に水性混合液に、先に重合性モノマーを添加した後、重合性界面活性剤Bを添加することが好ましい。
水性混合液に上記重合性モノマー及び重合性界面活性剤Bを添加する場合も、水性混合液に超音波を照射することが好ましい。以上の工程により、まず、無機コロイド粒子表面のアニオン性基にカチオン性重合性界面活性剤が吸着されると考えられる。次に重合性モノマー及び重合性界面活性剤Bを加え、超音波を照射して処理するが、この処理によって無機コロイド粒子の周囲に存在する重合性界面活性剤分子及び重合性モノマー分子の配置形態が極めて高度に制御され、その最外層では水相に向かって親水性基(アニオン性基又はカチオン性基)が配向した状態(アドミセル(admicell))が形成されると推定される。そして、それを以下に説明するように乳化重合することによって、モノマー分子が無機コロイド粒子のまわりに高度に制御された形態のまま重合されてポリマーになり、本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子が得られると考えられる。
なお、上記の重合反応において水性混合液への超音波の照射を行わなくても、水性媒体中での分散安定性に優れたマイクロカプセル化無機コロイド粒子を得ることができる場合は、超音波照射は必ずしも必要ではない。
ここで、水性混合液中に添加する重合性界面活性剤Bの量は、用いた重合性界面活性剤Aに対して、1倍〜10倍モルの範囲であることが好ましく、1倍モル〜5倍モルの範囲であることがさらに好ましい。前記添加量を1倍モル以上にすることにより、マイクロカプセル化無機コロイド粒子の凝集を抑制でき、分散安定性が優れたマイクロカプセル化無機コロイド分散液が得られる。さらに、得られたマイクロカプセル化無機コロイド分散液を含むコーティング用又は印刷用組成物は、インクジェット記録方法を用いた場合にインクジェットヘッドからの吐出安定性が優れ、また基材への吸着性及び密着性に優れる。また、重合性界面活性剤Bの添加量を重合性界面活性剤Aの10倍モル以下にすることによって、マイクロカプセル化無機コロイド粒子表面に結合又は付着しない重合性界面活性剤Bの量を減らし、芯物質として無機コロイド粒子を含まないポリマー粒子が生成することを抑制できる。
次に上記のようにして各種モノマーを含む水性混合液に重合開始剤を添加して重合反応を行う。重合開始剤の添加は、重合開始剤が活性化される温度に加熱した水性混合液に重合開始剤を一度に若しくは分割して添加しても、又は連続的に添加してもよい。また、重合開始剤を添加した後に、重合開始剤が活性化される温度に水性混合液を加熱してもよい。本発明においては、重合開始剤として水溶性重合開始剤を用い、これを純水に溶解して得られる水溶液を反応容器内の上記水性混合液中に滴下して加えることが好ましい。添加した重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生し、これが重合性界面活性剤A及びBの重合性基や重合性モノマーの重合性基を攻撃することによって重合反応が起こる。重合温度及び重合反応時間は、用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって変わるが、当業者であれば適宜好ましい重合条件を設定することは容易にできる。一般に重合温度は60℃〜90℃の範囲とするのが好ましく、重合時間は3時間〜10時間とするのが好ましい。
上記重合反応においては、上記アニオン性重合性界面活性剤、カチオン性重合性界面活性剤、重合性モノマーは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。また、上記乳化重合反応は、重合性界面活性剤を用いて行っているため、乳化剤を用いなくても原料モノマーを含む水性混合液の乳化状態は良好な場合が多い。したがって、必ずしも乳化剤を用いる必要はないが、必要に応じて公知のアニオン系、ノニオン系、及びカチオン系乳化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の乳化剤を用いることもできる。
アニオン性基を表面に有する無機コロイド粒子に、カチオン性重合性界面活性剤(重合性界面活性剤A)、重合性モノマー、及び重合性界面活性剤Bを加えて乳化し、重合を行った場合は、重合終了後に、得られた水性分散液のpHを7.0〜9.0の範囲に調整し、さらに濾過を行なうことが好ましい。濾過は限外濾過が好ましい。
以上のようにして得られる本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子は水性溶媒に対して高い分散安定性を有するが、これは無機コロイド粒子がポリマー層で完全に被覆されている(被覆されていない部分がない)とともに、マイクロカプセル壁材のポリマー層の親水性基が水性溶媒に向かって規則正しく配向しているためであると考えられる。
一方、表面にカチオン性基を有する無機コロイド粒子を原料として用いる場合は、重合性界面活性剤Aとしてアニオン性重合性界面活性剤を用いるとともに、その他の重合性モノマー及び重合開始剤等の原料、並びに超音波照射等の操作及び重合条件等は、上記の場合と同様にして本発明の製造法を実施できる。
本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子は、無機コロイド粒子の表面をポリマーが被覆した形態を有するが、所望により、ポリマーの重合前又は重合反応後に、水性混合液に酸化防止剤及び/又は可塑剤などを添加してポリマーにそれらの添加剤を含有させることもできる。このような酸化防止剤や可塑剤などは公知の材料を用いることができる。
上記方法によって得られる本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の平均粒子径は、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、20〜50nmであることが特に好ましい。マイクロカプセル化無機コロイド粒子の平均粒子径は、市販のレーザードップラー方式粒度分布測定機を使用して測定することができる。また、本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の平均粒子径は、原料として所望の平均粒子径を有する無機コロイド粒子を用いることとあわせて、重合反応開始前に超音波を所定の照射条件(照射エネルギーを制御することを主とし、これは例えば周波数及び照射時間によって制御できる)で反応混合液に照射すること、重合反応中に反応混合物に超音波を照射するか否かの違い、及び重合反応中に反応混合物に超音波を照射する場合はその照射条件の制御等によって所望する粒子径に制御することができる。
以上のようにして得られる本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子を含む水性分散液にさらに所望の材料を混合し、コーティング用又は印刷用組成物を調製する。ここでこれらの組成物を調製する前に、前記水性分散液中に含まれる未反応モノマー(重合性界面活性剤A、B、及び重合性モノマーなどからなるモノマー)を予め除去し精製することが好ましい。
マイクロカプセル化無機コロイド粒子を含む水性分散液を精製する方法としては、遠心分離法及び限外ろ過法等を挙げることができる。
〔コーティング用又は印刷用組成物〕
本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子は、コーティング用又は印刷用組成物に用いることができる。この場合、基材表面に前記組成物をコーティング又は印刷してパターンを形成した後、焼成することによって無機化合物、特に金属酸化物の被覆を基材上に形成できる。ここでコーティング及び印刷は、共に基材表面の一部又は全部に所定の被覆を施すという点では同じである。本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子を含む組成物は、インクジェット記録方法を用いて基材表面にコーティング又は印刷することができ、例えば特に微細なパターンを有する被覆を基材表面に形成したい場合など有効である。以下、マイクロカプセル化無機コロイド粒子を含むコーティング用又は印刷用組成物のうち、例としてインクジェット記録方法に用いるものとして好ましい組成物(インクジェットプリンティングシステム用組成物という)について説明するが、本発明は以下に説明する組成物に限定されるものではない。
[インクジェットプリンティングシステム用組成物]
本発明のインクジェットプリンティングシステム用組成物は、水性組成物であり、水性溶媒中に上記マイクロカプセル化無機顔料が分散されて含まれるものである。組成物中のマイクロカプセル化無機顔料の含有量は、組成物の全重量に対して1重量%〜20重量%であることが好ましく、3重量%〜15重量%であることがさらに好ましい。
また、本発明の上記組成物に用いる上記水性溶媒は、水及び水溶性有機溶媒を含むことが好ましく、さらに所望により他の成分を含むことができる。
上記水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類などを挙げることができる。これらから1種又は2種以上の溶媒を選択して用いることができる。また、水溶性有機溶媒は、焼成温度に応じて適宜選択して用いる。
また、焼付け温度が180℃以上の高温であって、インクジェットプリンティングシステム用組成物のハンドリングを考えて、インクジェットプリンティングシステム用組成物に保水性と湿潤性を付与するには、高沸点水溶性有機溶媒からなる湿潤剤を組成物に添加することが好ましい。このような高沸点水溶性有機溶媒としては、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒が好ましい。
本発明に用いることができる、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、及びペンタエリスリトールを挙げることができる。これらの一種又は2種以上を本発明の組成物に用いることができる。インクジェットプリンティングシステム用組成物に高沸点水溶性有機溶媒を添加することにより、開放状態(室温でこの組成物が空気に触れている状態)で放置しても、無機コロイド粒子の再分散性及び流動性を長時間維持できるインクジェットプリンティングシステム用組成物を得ることができる。さらに、このような組成物は、インクジェットプリンタを用いての印字中もしくは印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難くなるため、インクジェットノズルからの高い吐出安定性を有する。
これらの高沸点水溶性有機溶媒を含めた水溶性有機溶媒の合計の含有量は、インクジェットプリンティングシステム用組成物の全重量に対して、好ましくは10〜50重量%程度であり、より好ましくは10〜30重量%である。
本発明のインクジェットプリンティングシステム用組成物には、さらに2−ピロリドン,N−メチルピロリドン,ε−カプロラクタム,ジメチルスルホキシド,スルホラン,モルホリン,N−エチルモルホリン,及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等からなる群から選ばれる一種以上の極性溶媒を添加することができる。極性溶媒を添加することにより、組成物中におけるマイクロカプセル化無機コロイド粒子の分散性が向上するという効果が得られ、組成物のインクジェットヘッドからの吐出安定性を良好にすることができる。
これらの極性溶媒の含有量は、インクジェットプリンティングシステム用組成物の全重量に対して、好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、より好ましくは1重量%〜10重量%である。
また、本発明のインクジェットプリンティングシステム用組成物にグリセリンを含有させることにより、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなり、さらにこの組成物自身の保存安定性を高めることもできる。
また、本発明のインクジェットプリンティングシステム用組成物は、基材への濡れ性を調節するために、界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸、アシルメチルタウリン酸、ジアルキルスルホ琥珀酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、及びアルキルザルコシン塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステル、多価アルコールアルキルエーテル、アルカノールアミン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
より具体的には、アニオン性界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩などが挙げられ、ノニオン性界面活性剤の具体例としてはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系化合物、並びにポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系化合物等を挙げることができる。
本発明のマイクロカプセル化無機コロイド粒子を含むコーティング用又は印刷用組成物は、上記インクジェット記録方法の他、ディッピング、並びにナイフコータ等を用いたコーティング及びスピンコートなどの公知のコーティング方法、及び印刷方法を用いて、基材にコーティング又は印刷することができる。基材に上記組成物をコーティング又は印刷した後、焼成することによって、基材表面で無機コロイド粒子から無機化合物被膜を形成することができる。焼成温度は、用いる無機コロイドの種類よって異なるが、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは80〜150℃である。
基材に無機化合物被膜を形成することにより、耐摩耗性、耐擦傷性、耐汚染性、耐蝕性、光沢性、透明性が得られる。
マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"〜"MCP2"の製造
「マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"の製造」
日産化学工業(株)製コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO)を100g(SiO2:20%)に、イオン交換水300gを加えて攪拌混合した後、カチオン性重合性界面活性剤としてメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を12.5g加え混合後、超音波を15分間照射した。次いで、ベンジルメタクリレート6g、ドデシルメタクリレート4gを加え混合し、さらに予めイオン交換水50gに溶解しておいたアニオン性重合性界面活性剤 アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)を47.0gと親水性モノマー 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を1.0g加えて混合し、再び超音波を30分間照射した。これを、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管及び超音波発生器を備えた反応容器に投入し、反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水50gに重合開始剤として過硫酸カリウム1.6gを溶解した過硫酸カリウム水溶液を滴下し、窒素雰囲気下、80℃で6時間重合した。重合終了後、1mol/L水酸化カリウム水溶液でpHを8に調製し、限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、固形分濃度を20%にした。濾過後、再度1mol/L水酸化カリウム水溶液でpHを8に調製し、孔径1μmのメンブレンフィルターで粗大粒子を除去して目的のマイクロカプセル化顔料マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"の分散液を得た。
得られた分散液をリーズ&ノースロップ社製のレーザードップラー方式粒度分布測定機マイクロトラックUPA150を用いて体積平均粒子径を測定したところ、25nmであった。得られた分散液を室温で乾燥させ、これを熱走査型熱量計(示差走査熱量計:DSC)DSC200(セイコー電子(株)製)を用いて被覆ポリマーのガラス転移点を測定したところ、−7℃であった。
Figure 2006068694
「マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP2"の製造」
日産化学工業(株)製コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO40)を100g(SiO2:40%)に、イオン交換水700gを加えて攪拌混合した後、カチオン性重合性界面活性剤としてメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を6.0g加え混合後、超音波を15分間照射した。次いで、イソボルニルメタクリレート10gと1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート0.05gとドデシルメタクリレート6gを混合して加え攪拌混合し、さらに予めイオン交換水50gに溶解しておいたアニオン性重合性界面活性剤 アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)を22.6gと親水性モノマー 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を1.0g加えて混合し、再び超音波を30分間照射した。これを、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管及び超音波発生器を備えた反応容器に投入し、反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水50gに重合開始剤として過硫酸カリウム1.36gを溶解した過硫酸カリウム水溶液を滴下し、窒素雰囲気下、80℃で6時間重合した。重合終了後、1mol/L水酸化カリウム水溶液でpHを8に調製し、限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、固形分濃度を20%にした。濾過後、再度1mol/L水酸化カリウム水溶液でpHを8に調製し、孔径1μmのメンブレンフィルターで粗大粒子を除去して目的のマイクロカプセル化顔料マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"の分散液を得た。
得られた分散液をリーズ&ノースロップ社製のレーザードップラー方式粒度分布測定機マイクロトラックUPA150を用いて体積平均粒子径を測定したところ、55nmであった。
「マイクロカプセル化無機コロイド粒子を含むコーティング用組成物」の製造
マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"の分散液100gに2−ピロリドンを2gと日本油脂製ノニオンHS−205を0.1g添加して攪拌混合して、マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"を含むコーティング用組成物を作製した。
上記のマイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"を含むコーティング用組成物を容器に入れ、ポリメタクリル酸メチル製レンズを前記組成物中に浸漬して、一定速度で引き上げた。このポリメタクリル酸メチル製レンズを60℃の乾燥炉で3時間、加熱乾燥処理した。処理後のポリメタクリル酸メチル製レンズは、透明性の低下もなく、また、スチールウールでレンズ表面を擦っても全く傷がつかなかった。処理前のポリメタクリル酸メチルの表面を同様にスチールウールで擦ると傷がつくことから、上記処理によって、本発明の「マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP1"を含むコーティング用組成物」でポリメタクリル酸メチル表面がコーティングされ、耐擦傷性を有するものとなった。
「マイクロカプセル化無機コロイド粒子を含む印刷用組成物」の製造
マイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP2"の分散液50gに、予めグリセリン15gと1,2−ヘキサンジオール5gとサーフィノール465(日信化学製)0.2gと水29.8gとpH調整剤でpHを8.0に調製した混合溶媒を攪拌下に徐々に加えてマイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP2"を含む印刷用組成物を作製した
上記のマイクロカプセル化無機コロイド粒子"MCP2"を含む印刷用組成物をインクジェットヘッドが装備された印刷機のインクタンクに充填し、素焼きの陶器製板の半分に厚みが800nmとなるように印刷を施した。これを、60℃の乾燥炉で3時間処理したのち、500℃の電気炉で加熱し焼成した。
処理後の陶器板は光沢があり、スチールウールで擦っても傷がつかず、溶剤に対しても耐性を示した。
これに対して、陶器板の素焼きの部分はスチールウールで擦ると傷がついた。
本発明による無機コロイド粒子は、レンズ、フィルター等の光学物品のハードコート、陶器、ガラス等のコート、鉄やアルミ等、金属類のハードコートや印刷に使用することができ、有用である。

Claims (7)

  1. 以下の工程:
    (1)水性媒体中において、少なくとも一種の無機コロイド粒子と、前記無機コロイド粒子の表面電荷と反対の電荷を帯びた基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤とを混合して水性混合液を得る工程;及び
    (2)前記水性混合液に、正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤、及び少なくとも一種の重合性モノマーをさらに添加して乳化重合をする工程、
    を含むことを特徴とする、ポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造法。
  2. 前記(2)の工程において、前記水性混合液に先ず前記少なくとも一種の重合性モノマーを添加し、次に前記正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤を添加してから乳化重合することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造法。
  3. 前記無機コロイド粒子が、TiO2、SiO2、GeO2、ZrO2、及びWO2コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロカプセル化無機コロイド粒子の製造法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造法を用いて製造されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子を含むコーティング用組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造法を用いて製造されたマイクロカプセル化無機コロイド粒子を含む印刷用組成物。
  6. 被コーティング材料又は被印刷材料に、請求項4に記載の組成物をコーティングし、さらに加熱して焼き付けることを特徴とする無機材料のコーティング方法。
  7. 被コーティング材料又は被印刷材料に、請求項5に記載の組成物を印刷し、さらに加熱して焼き付けることを特徴とする無機材料の印刷方法。

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