JP2006066329A - 耐熱電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性及び耐ストレスクラック性に優れる耐熱電線の提供。
【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(A)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(B)を含有し、(A)/(B)のモル比が97.5/2.5〜85/15であり、380℃における容量流速が0.1〜20mm/秒であり、かつMIT折り曲げ寿命が300万回以上である含フッ素共重合体(例えば、(A)/(B)が93.7/6.3である含フッ素共重合体。)と絶縁性の充填剤(例えば、炭酸カルシウム。)とを含有する被覆材料で導体を被覆してなる耐熱電線。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱電線に関する。
フッ素樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、耐ストレスクラック性に優れることから、耐熱電線の被覆材料として使用される。特に、高い信頼性が要求される、航空機、半導体、自動車、OA機器やIT機器の配線用の電線として使用されている。
現在、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEともいう。)で導体を被覆後、架橋させた電線が航空機用の耐熱電線として使用されている(例えば、非特許文献1を参照。)。しかし、航空機の安全性をさらに向上するためにETFEよりも耐熱性に優れる被覆材料が求められ、その候補材料として、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)に基づく繰り返し単位(A)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEという。)に基づく繰り返し単位(B)からなり、(A)/(B)のモル比が99/1〜98/2であるTFE/PPVE共重合体(従来のPFA)がある。しかし、従来のPFAは、ETFEに比較して、耐熱温度が高いものの、カットスルー抵抗性が充分でなかった。本発明者らは、カットスルー抵抗性を向上するため、PFAに絶縁性の充填材を含有させて、被覆材料の硬度を高くする方法を試みたが、この方法では、カットスルー抵抗性は向上するが耐ストレスクラック性が低下することがわかった。
里川孝臣編「ふっ素樹脂ハンドブック」498頁、日刊工業新聞社、1990年
本発明の目的は、耐熱性及び耐ストレスクラック性に優れ、カットスルー抵抗性に優れ、信頼性に優れる耐熱電線を提供することである。
本発明は、TFEに基づく繰り返し単位(A)、PPVEに基づく繰り返し単位(B)を含有し、(A)/(B)のモル比が97.5/2.5〜85/15であり、380℃における容量流速が0.1〜20mm/秒であり、かつMIT折り曲げ寿命が300万回以上である含フッ素共重合体と絶縁性の充填剤とを含有する被覆材料で導体を被覆してなる耐熱電線を提供する。
本発明の耐熱電線は、耐熱性に優れ、耐ストレスクラック性に優れ、カットスルー抵抗性に優れ、信頼性に優れる。
本発明における含フッ素共重合体は、TFEに基づく繰り返し単位(A)、PPVEに基づく繰り返し単位(B)を含有し、(A)/(B)のモル比が97.5/2.5〜85/15である。繰り返し単位(B)が、この範囲より少ないと、含フッ素共重合体は耐ストレスクラック性が充分でなく、多いと耐熱性が充分でない。(A)/(B)は、好ましくは97/3〜90/10であり、さらに好ましくは96/4〜92/8である。
含フッ素共重合体において、前記繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)に加えて、さらに、TFEと共重合可能な、その他のモノマーに基づく繰り返し単位(C)を含有することも好ましい。その他のモノマーの具体例としては、エチレン等の炭化水素系オレフィン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、CH=CX(CFY(ここで、X及びYは、それぞれ独立に水素又はフッ素原子、nは2〜8の整数である。)等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブチルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEという。)(ただし、PPVEを除く。)、酢酸ビニル等のビニルエステル、アルキルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等のビニルエーテル等が挙げられる。
その他のモノマーとしては、HFP、CTFE、PAVE(ただし、PPVEを除く。)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。その他のモノマーに基づく繰り返し単位(C)を含有すると含フッ素共重合体は、耐熱性及び耐薬品性に優れる。繰り返し単位(C)の含有量は、(C)/((A)+(B)+(C))がモル比で0.1/100〜10/100が好ましく、0.2/100〜8/100がより好ましい。
含フッ素共重合体としては、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)のみからなる含フッ素共重合体が好ましい。
本発明のおける含フッ素共重合体の380℃における容量流速は0.1〜20mm/秒である。容量流速は分子量の目安であり、容量流速が小さいと分子量が高く、大きいと分子量が低いことを示す。容量流速がこの範囲よりも小さいと溶融成形性が低く、この範囲よりも大きいと耐熱電線の耐ストレスクラック性が充分でない。好ましくは0.5〜15mm/秒、より好ましくは1〜10mm/秒である。
本発明における含フッ素共重合体のMIT折り曲げ寿命は300万回以上である。ここで、MIT折り曲げ寿命とは、ASTM D2176に準じて実施される折り曲げ試験において、試料が破断するまでの折り曲げ回数である。この値が大きいほど、耐ストレスクラック性に優れることを示す。MIT折り曲げ寿命が、これより短いと、耐熱電線の耐ストレスクラック性が低い。好ましくは400万回以上、より好ましくは500万回以上である。
本発明における含フッ素共重合体の製造方法は、特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、含フッ素アルキルエーテル、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等が挙げられる。特に、懸濁重合が好ましい。また、懸濁重合で用いる有機溶媒としては、フッ化炭化水素、フッ化塩化炭化水素及び含フッ素アルキルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が0〜100℃である開始剤が好ましく、20〜90℃である開始剤がより好ましい。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル、イソブチリルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の非フッ素系ジアシルパーオキシド、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)等の含フッ素ジアシルパーオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
重合条件としては、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
本発明において、含フッ素共重合体の容量流速を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン等が挙げられる。
本発明における被覆材料は、含フッ素共重合体と絶縁性の充填材とを含有する。絶縁性の充填剤としては、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機充填剤、ガラス繊維、チタン酸カリウムやホウ酸アルミニウムなどのウィスカ、ポリイミド繊維等の有機充填剤が挙げられる。絶縁性の充填材としては、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
絶縁性の充填剤の含有量として前記含フッ素共重合体と絶縁性の充填剤との質量比が99.9/0.1〜10/90が好ましく、さらに好ましくは99/1〜30/70であり、最も好ましくは90/10〜40/60である。
本発明における被覆材料は、含フッ素共重合体と絶縁性の充填材とを押出混錬機で混錬して製造することが好ましい。混錬方法としては、含フッ素共重合体と絶縁性の充填材とをタンブラやVミキサ、ヘンシェルミキサなどで予備混合した上で同方向又は異方向の2軸押出混錬機に供給するか、又は予備混合しないで、含フッ素共重合体及び絶縁性の充填剤を投入した複数のホッパーから同方向又は異方向の2軸押出混錬機に供給することにより、溶融混練してペレット化する方法が好ましい。2軸押出混錬機の混錬用スクリューとしては、ニーディング機能付きのスクリューが好ましい。また、混練温度としては、含フッ素共重合体の融点以上、分解温度以下が好ましい。具体的には300℃〜400℃が好ましい。
本発明の耐熱電線の製造方法としては、公知の技術を使用することができる。押出し機を用いて溶融させた被覆材料で導体を被覆する方法、テープ状に加工した被覆材料を導体に巻きつける方法、被覆材料の粉末を流動させた槽に導体を浸漬させた後、導体に付着した粉末を加熱溶融して被覆層を形成する方法等が挙げられる。特に、押出し機を用いて溶融させた被覆材料で導体を被覆する方法が好ましい。
押出し機としては、単軸又は2軸押出し機が好ましく、押出し条件としては、シリンダー温度が250〜380℃、クロスヘッド温度が300〜400℃、ダイ温度が320〜420℃であることが好ましい。
本発明の耐熱電線の芯線として用いられる導体としては、特に限定されず、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、スズメッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の各種メッキ線、より線、超電導体、半導体素子リード用メッキ線等が挙げられる。また、導体の径及び被覆材料の被覆厚さは、適宜選定できる。その他に、束ねた複数の耐熱電線の外周を本発明における被覆材料で被覆することも好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、含フッ素共重合体の組成、容量流速、MIT折り曲げ寿命は、以下に記載の方法で測定した。
[TFE共重合体の組成]旭硝子研究報告1990、40(1)、75の記載に準じて、熱溶融状態で含フッ素共重合体の19F−NMR測定する方法によって求めた。
[容量流速]フローテスター(島津製作所社製)を用いて380℃、7kgの荷重下に、直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に含フッ素共重合体を押出したときの含フッ素共重合体の流量(mm/秒)を容量流速とした。
[MIT折り曲げ寿命]含フッ素共重合体を340℃で圧縮成形して得た厚さ0.220〜0.236μmのフィルムを幅12.5mmの短冊状に打ち抜いて測定試料を得た。ASTM D2176に準じて、荷重1.25kg、折り曲げ角度±135度、室温で折り曲げ試験機MIT−D(東洋精機製作社製)を用いて測定試料の折り曲げ試験を行った。破断するまでの折り曲げ回数をMIT折り曲げ寿命とした。
[耐ストレスクラック性試験]耐熱電線を自己径に巻きつけ、250℃のオーブン中に2週間保持した後の耐熱電線の被覆材料にクラックの有無を目視で観察した。クラックが生じないものを、耐ストレスクラック性が良好と評価した。
[カットスルー抵抗性試験]芯線の径が0.26mm、被覆厚さが0.15mm、仕上がり径が0.56mmの被覆電線を軟鋼製角柱のエッジの上に乗せ、温度150℃で荷重2kgを加え1時間以上絶縁性を保持していた場合にカットスルー抵抗性が良好と評価した。
[実施例1]
内容積400Lの撹拌機付き重合槽内を真空に脱気し、水の204L、メタノールの1.82L、CFHClCFCFCl(以下、AK225cbという。)の41.7L、PPVEの33.9Lを仕込み、重合槽内を50℃に昇温後、TFEを1.21MPa/Gまで導入した。重合開始剤としてジ(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.12質量%225cb溶液を仕込み重合反応を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、TFEを追加添加して圧力を一定に保った。重合中、開始剤溶液を連続的に合計2.5L仕込み、TFEの追加添加量が38kgになったところで重合槽内の温度を25℃まで冷却し、未反応TFEをパージした。重合時間は、7時間であった。得られた重合溶液を静置し、水と含フッ素共重合体のスラリーとに分離し、該スラリ−を150℃にて8時間乾燥することにより、46.4kgの含フッ素共重合体1が得られた。含フッ素共重合体1の組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位のモル比が93.7/6.3であり、容量流速は1.23mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は1200万回であった。
2カ所のニーディング部を有するスクリューがセットされた同方向2軸押出混練機の第1フィーダのホッパに炭酸カルシウム(日東粉化工業社製NS200)を、第2フィーダのホッパに含フッ素共重合体1を炭酸カルシウム/含フッ素共重合体1の質量比が1/1となるように投入し、シリンダ温度380℃、スクリュー回転数100rpmの条件下に、ベント部から真空ポンプで吸引しながら炭酸カルシウムと含フッ素共重合体1とを混練し、吐出されたストランドを徐冷し、ペレタイザで3mm長さに切断してペレット1を作成した。
得られたペレット1を用いて電線を成形した。押出し機は短軸、スクリュー径40mm、スクリュータイプはメタリング、スクリューL/Dは25、スクリュー圧縮比は2.6:1とした。ダイは内径4.3mm、ニップル外径2.0mm、ランド長20mmであった。成形条件としては、シリンダーC1温度320℃、C2温度350℃、C3温度380℃、クロスヘッド温度390℃、ダイ温度400℃、引落とし比59、引取速度100m/分を採用した。導体としては、スズメッキ銅線を用いた。得られた耐熱電線1は、芯線の径が0.26mm、被覆厚さが0.15mm、仕上がり径が0.56mmであった。得られた耐熱電線1の被覆材料の耐ストレスクラック性は良好であった。カットスルー抵抗性は良好であった。
[実施例2]
初期に、水の204L、メタノールの2.96L、225cbの54.3L、PPVEの21.3Lを仕込み、実施例1と同様にして含フッ素共重合体2を製造した。重合開始剤溶液は合計1.4L仕込み、TFEの追加添加量が43kgであった。重合時間は7時間であった。含フッ素共重合体2の47.3kgを得た。含フッ素共重合体2の組成はTFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位のモル比は95.5/4.5であり、容量流速は1.10mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は750万回であった。耐熱電線2の被覆材料の耐ストレスクラック性は良好であった。カットスルー抵抗性は良好であった。
[比較例]
組成がTFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位のモル比が98.7/1.3であり、容量流速が1.8mm/秒であるTFE/PPVE共重合体(従来のPFA、旭硝子社製)のMIT折り曲げ寿命は60万回であった。該PFAを用いて、実施例1と同様に耐熱電線3を製造した。耐熱電線3の耐ストレスクラック性試験を実施した。耐熱電線3の被覆材料には無数の微細クラックが生じ、耐ストレスクラック性が不良であった。カットスルー抵抗性は良好であった。
本発明の耐熱電線は、航空機、半導体、自動車、OA機器、IT機器等の耐熱性、信頼性が要求される電線用途に用いられる。

Claims (3)

  1. テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(A)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(B)を含有し、(A)/(B)のモル比が97.5/2.5〜85/15であり、380℃における容量流速が0.1〜20mm/秒であり、かつMIT折り曲げ寿命が300万回以上である含フッ素共重合体と絶縁性の充填剤とを含有する被覆材料で導体を被覆してなる耐熱電線。
  2. 前記含フッ素共重合体と絶縁性の充填剤との質量比が99.9/0.1〜10/90である請求項1に記載の耐熱電線。
  3. 前記充填剤が、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の耐熱電線。

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