JP2006063011A - カカオ豆外皮抽出物 - Google Patents

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Abstract

【課題】カカオ豆の外皮を利用して製造することができると共に、生理活性を有するカカオ豆外皮抽出物を提供すること。
【解決手段】カカオ豆の外皮を極性溶媒で抽出して得られるカカオ豆外皮抽出物である。該カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンを含有する。極性溶媒は、例えばメタノール、エタノール等のアルコールであることが好ましい。また、カカオ豆の外皮は、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じるものを用いることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、カカオ豆の外皮を抽出して得られるカカオ豆外皮抽出物に関する。
従来より、カカオは、チョコレートやココアの主原料として利用されている。
カカオは、主として赤道付近の高温多湿な地方で栽培される熱帯植物であり、カカオの木の果実の中にある種子(カカオ豆、カカオビンズ)は、チョコレートやココア等に用いられるカカオマスの原料として用いられている。
カカオマスは、カカオビンズ(カカオ豆)を発酵・焙煎等することにより得ることができる。具体的には、図5及び図6に示すごとく、例えばLBCT(図5)又はSLS(図6)と呼ばれる方法により製造されている。
図5及び図6に示すごとく、LBCTやSLS等のカカオマスの製造工程においては、分離(ウィノーイング)工程でカカオビンズを種皮(外皮、シェル)と胚乳部(カカオニブ)とに分離し、このうち胚乳部だけがカカオマスの製造に用いられる。
したがって、カカオマスの製造においては、副生成物としてカカオビンズの外皮が大量に生じる。この外皮は、利用価値がほとんどないため、その大部分が廃棄物として大量に処理されていた。
カカオの歴史は古く、紀元前2000年頃のメキシコ付近に存在した古代アステカ王国において、カカオの栽培がすでに行われていたことが実証されている。当時はカカオは「神様の食べ物」といわれ、「適量を飲むと元気になり、快活、活気づく」とされていた。また、16世紀の初め頃には、不老長寿の薬といわれていた。
しかし、カカオから得られるカカオマスを原料とする現代のチョコレートやココアには、強壮効果等の生理活性は確認されていない。
近年、チョコレート中には、フェニルアラニンの代謝物質であり、脳内生理活性物質であるフェネチルアミンが含まれていることが確認された。しかし、その含有量は極少量であり、強壮効果等を促す程の生理活性は確認されていない。
しがたって、カカオには、未だ明らかになっていない生理活性があると考えられていた。
このような背景の中、カカオ豆を原料とし、これを用いて発癌抑制剤を作製する技術が開発されている(特許文献1参照)。この発癌抑制剤は、カカオ豆を原料として得られ、ガン細胞の増殖を抑制するという生理活性を有する。また、この発癌物質の製造方法においては、外皮を除去していないカカオビンズをそのまま原料として用いることができるため、カカオビンズの外皮の廃棄物量を低減することができる。
しかしながら、カカオ豆の利用範囲は、依然として広くなく、カカオマスの製造の際に生じる外皮の廃棄量を低減するほど充分ではなかった。
特開2003−137800号公報
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、カカオ豆の外皮を利用して製造することができると共に、生理活性を有するカカオ豆外皮抽出物を提供しようとするものである。
本発明は、カカオ豆の外皮を極性溶媒で抽出して得られるカカオ豆外皮抽出物であって、
該カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンを含有することを特徴とするカカオ豆外皮抽出物にある(請求項1)。
本発明のカカオ豆外皮抽出物は、カカオ豆の外皮を極性溶媒で抽出して得られる。
即ち、上記カカオ豆外皮抽出物においては、従来その大部分が廃棄されていたカカオ豆の外皮を原料として製造することができる。そのため、カカオ豆の外皮の廃棄量を低減することができる。また、上記カカオ豆外皮抽出物は、廃棄されるカカオ豆の外皮を原料とすることができるため、低コストで作製することができる。
また、上記カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンを含有している。
フェネチルアミンは、フェニルアラニンの代謝物質であり、脳内におけるある種の感情発現を司る物質であると考えられている。
この脳内生理活性物質であるフェネチルアミンは、カカオ豆の胚乳部(カカオニブ)から製造されたチョコレート等にも微量含有されるが、上記カカオ豆外皮抽出物は、カカオニブを原料として得られるチョコレート等よりも高濃度のフェネチルアミンを含有することができる。
それ故、上記カカオ豆外皮抽出物は、例えばクロマトグラフ法等により、フェネチルアミンを生成するための原料として用いることができる。また、上記カカオ豆外皮抽出物自体も、優れた脳内生理活性を発揮することができる。
また、上記カカオ豆外皮抽出物は、アレルギー反応の原因となる好塩基性白血球(好塩基球)の脱顆粒現象を抑制することができる。そのため、上記カカオ豆外皮抽出物は、アレルギー反応に対する抑制効果を発揮することができる。
このように本発明によれば、カカオ豆の外皮を利用して製造することができると共に、生理活性を有するカカオ豆外皮抽出物を提供することができる。
本発明において、上記カカオ豆外皮抽出物は、カカオ豆の外皮を極性溶媒で抽出して得られる。
上記極性溶媒中におけるカカオ豆の外皮の抽出は、例えば上記カカオ豆の外皮を極性溶媒中に浸漬し、加熱することにより行うことができる。具体的には、例えばリフラックス等により行うことができる。
また、上記極性溶媒の量は、上記カカオ豆の外皮1重量部に対して、2〜10重量部であることが好ましい。
上記極性溶媒の量が2重量部未満の場合には、上記カカオ豆の外皮からフェネチルアミン等の生理活性物質が充分に抽出されず、上記カカオ豆外皮抽出物の生理活性が低下するおそれがある。一方、上記極性溶媒の量が10重量部を超える場合には、極性溶媒の増加に見合った効果が得られず、ムダにコストを増加させ溶媒の浪費となってしまうおそれがある。
また、上記カカオ豆の外皮を極性溶媒で抽出後、濾過することが好ましい。この場合には、不純固形物を除去することができ、上記カカオ豆外皮抽出物の生理活性成分の濃度をより高めることができる。
また、上記カカオ豆外皮抽出物においては、抽出後に減圧乾固させることもできる。この場合には、上記カカオ豆外皮抽出物は、長期間保存させても安定して生理活性を示すことができる。即ち、この場合には上記カカオ豆外皮抽出物の安定性を向上させることができる。
上記極性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール等のアルコールや、水等から選ばれる1種以上の溶媒を用いることができる。
好ましくは、上記極性溶媒は、アルコールを含有することがよい(請求項2)。
この場合には、上記カカオ豆外皮抽出物は、上記カカオ豆外皮中に含まれるフェネチルアミン等の生理活性物質をより高濃度で含有することができる。より好ましくは、メタノール、エタノールがよい。
また、上記カカオ豆の外皮は、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じるものであることが好ましい(請求項3)。
この場合には、カカオマスの製造時に廃棄物として大量に生じるカカオ豆の外皮を有効利用することができる。そのため、カカオ豆の外皮の廃棄量を低減することができる。
(実施例1)
次に、本発明のカカオ豆外皮抽出物の実施例につき、説明する。
本例のカカオ豆外皮抽出物は、カカオ豆の外皮を極性溶媒としてのメタノール又はエタノールで抽出して得られるものである。カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンを含有する。
以下、本例のカカオ豆外皮抽出物の製造方法につき、説明する。
まず、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じるカカオ豆の外皮を準備した。このカカオ豆の外皮に、その重量の5倍量のメタノールを加えて、外套温度80℃にてリフラックスを行い、カカオ豆の外皮の抽出を行った。次いで、抽出液を濾紙にて濾過し、固液分離した後、減圧乾固を行い、カカオ豆外皮抽出物を得た。これを試料E1とする。
次に、極性溶媒の種類を変えてカカオ豆外皮抽出物を作製した。
即ち、上記試料E1において極性溶媒として用いたメタノールの代わりに、エタノールを用いてカカオ豆の抽出を行い、カカオ豆外皮抽出物を得た。これを試料E2とする。
試料E2は、メタノールの代わりにエタノールを用いて作製した点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
次いで、上記のようにして得られた試料E1及び試料E2に、フェネチルアミン(2−フェニルエチルアミン)が含まれているか否かを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した。
具体的には、各試料(試料E1及び試料E2)、及び各試料に標品として市販のフェネチルアミン(2−フェニルエチルアミン)を添加した試料のHPLCを行うことにより、フェニルエチルアミンのピーク位置を特定した。
HPLCによる分析は、カラムに250×4.6mmI.D.のDAISO-PAK SP-120-5-ODS-APを用い、移動相にメタノール300mlと純水700mlとの混合溶媒にリン酸20mmol及び1−ペンタスルホン酸ナトリウム2gを溶解してなるSolvent1又はメタノール250mlと純水750mlとの混合溶媒にリン酸20mmol及び1−ペンタスルホン酸ナトリウム2gを溶解してなるSolvent2を用いて行った。また、流速は1ml/min、温度は40℃とし、検出には波長254nmのUVを用いた。
また、HPLC分析用のサンプルは、各試料(試料E1、試料E2)100mgをそれぞれ50vol%メタノール水溶液1mlに溶解し、その内の5μlを用いた。
このHPLCによる分析により、試料E1及び試料E2には、標品と同様の位置にピークが観察された(図示略)。即ち試料E1及び試料E2には、フェネチルアミンが含まれることがわかった。
次に、各試料中に含まれるフェネチルアミン(2−フェニルエチルアミン)の定量を行った。即ち、標品(市販の2−フェニルエチルアミン)及び試料E1及び試料E2について、HPLCを以下の条件にて行うとともに、標品の検量線を作製し、この検量線から試料E1及び試料E2に含まれるフェネチルアミンの含有量を算出した。
具体的には、まず、市販の2−フェニルエチルアミンを水に溶解し、濃度2mg/mlと3mg/mlの2種類の2−フェニルエチルアミン溶液を作製した。濃度2mg/mlの2−フェニルエチルアミン溶液を標品Aとし、濃度3mg/mlの2−フェニルエチルアミン溶液を標品Bとする。
次に、標品A及び標品Bについて、HPLC分析を行った。
HPLCによる分析は、カラムに250×4.6mmI.D.のDAISO-PAK SP-120-5-ODS-APを用い、移動相にはメタノール250mlと純水750mlとの混合溶媒にリン酸20mmol及び1−ペンタスルホン酸ナトリウム2gを溶解してなるSolvent2を用いて行った。流速は1ml/min、温度は40℃とし、検出には波長254nmのUVを用いた。また、HPLC分析用のサンプルは、各標品を5μlずつ用いた。
その結果をそれぞれ図1及び図2に示す。図1が標品AのHPLCの結果であり、図2が標品BのHPLCの結果である。そして、図1及び図2の結果から、2−フェニルエチルアミンの検量線を作製した(図示略)。
次に、上記試料E1及び試料E2について、標品A及び標品Bと同様の条件でHPLC分析を行った。試料E1のHPLCの結果を図3に示す。また、試料E2のHPLCの結果を図4に示す。図3及び図4においては、矢印にて示すピークが、標品(市販のフェネチルアミン)と同様のピーク位置である。
この試料E1及び試料E2のHPLCの結果を上述の2−フェニルエチルアミンの検量線に当てはめて、試料E1及び試料E2の濃度を算出した。その結果、試料E1中の2−フェニルエチルアミンの含有量は0.70mg/ml(0.70重量%)であった。また、試料E2中の2−フェニルエチルアミンの含有量は1.01mg/ml(1.01重量%)であった。
なお、試料E1のHPLC分析においては、350mgの試料E1にメタノール1.75mlを加え溶解させたものに、純水を同量加え、フィルター濾過したものをHPLC分析用のサンプルとして用いた(100mg/ml)。試料E2のHPLC分析においては、380mgの試料E2にメタノール1.9mlを加え溶解させたものに、純水を同量加え、フィルター濾過したものをHPLC分析用のサンプルとして用いた(100mg/ml)。
また、本例においては、比較用として、市販のココアをメタノールにて抽出してココア抽出物を作製し、該ココア抽出物中に含まれるフェネチルアミンの含有量を調べた。
まず、市販のココア5gにメタノール20mlを加え、一晩抽出し、ココア抽出物を得た。これを試料C1とする。
次いで、この試料C1をろ過し、得られた溶液に純水20mlを加え、再度フィルターろ過を行ってHPLC分析用のサンプルとした(125mg/ml)。
このサンプル(試料C1)について、上記標品、試料E1及び試料E2と同様に、HPLC分析を行った。次いで、試料E1及び試料E2と同様に、その結果を上述の2−フェニルエチルアミンの検量線に当てはめて、試料C1の濃度を算出した。
その結果、試料C1は、2−フェニルエチルアミンを0.03mg/ml(0.02重量%)含有していた。
このようにして得られた上記試料E1、試料E2、及び試料C1中に含まれる2−フェネチルアミンの含有量を下記の表1に示す。
Figure 2006063011
表1より知られるごとく、カカオ豆外皮抽出物(試料E1及び試料E2)は、ココア抽出物(試料C1)に比べて高い含有率でフェネチルアミンを含有することがわかる。そのため、カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンが有する優れた脳内生理活性を発揮することができる。また、カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンを製造するための原料として用いることもできる。この場合、カカオ豆外皮抽出物を例えばクロマトグラフ法によりさらに生成することによりフェネチルアミンを精製することができる。
また、本例のカカオ豆外皮抽出物は、カカオ豆の外皮を原料としている。そのため、これまで用途が少なく、大量に廃棄されていたカカオ豆の外皮を有効に利用することができる。
(実施例2)
本例は、カカオ豆外皮抽出物の生理活性を調べる例である。具体的には、カカオ豆外皮抽出物の生理活性として、アレルギー反応に対する抑制効果、特にI型アレルギー反応抑制効果を調べる。
I型アレルギー反応は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎(花粉症)等の発症機序であり、免疫グロブリンIgEが主として関与する反応である。本例においては、その試験管内反応モデルとして、脱顆粒による好塩基性白血球(好塩基球)数の減少に対するカカオ豆外皮抽出物の抑制効果を調べる(試験1及び2)。また、比較用としてカカオ豆外皮抽出物の代わりに生理食塩水(試験3〜5)又はテオフィリン(試験6又は7)を用いて好塩基性白血球の減少に対する抑制効果を調べる。
「試験1」
まず、RAST(ラジオアレルゴソルベントテスト)によりスコア−4という高値を示した気管支喘息の既住歴のある患者からヘパリン加静脈血を採取し、この血液をシリコンでコートされた試験管に1mlずつ分注した。
次いで、カカオ豆外皮抽出物として、上記実施例1にて作製した試料E1を準備した。
また、カルボキシメチルセルロースを、濃度が5重量%となるように生理食塩水に溶解して、カルボキシメチルセルロース加生理食塩水を準備した。
次に、試料E1を上記カルボキシメチルセルロース加生理食塩水に懸濁し、濃度1000μg/mlに調整した。続いて、試料E1の溶液0.01mlを、分注した血液(1ml)に滴下し、温度37℃にて10分間インキュベイトした。
次に、ダニ抗原液(Dermatophagoides
farinae、鳥居薬品株式会社製)を生理食塩水で10000倍に希釈した希釈抗原液を準備した。この希釈抗原液0.01mlを、上記のごとく試料E1を添加した血液1ml中に滴下し、よく撹拌して、温度37℃にて15分間インキュベイトした。その後、反応液を、白血球用メランジュールを用いてトルイジンブルー染色液にて希釈染色した。
次いで、フックスローゼンタール血球計算板を用いて、染色された残存好塩基球を400倍の光学顕微鏡にて観察しつつ、残存好塩基球数を計数した。計数は、フックスローゼンタール血球計算板の全区画における好塩基球の残存数を計数することにより行った。その結果を表2に示す。
「試験2」
試料E1の濃度を500μg/mlに変えて血液中に滴下し、その他は上述の試験1の場合と同様にして好塩基球の残存数を計数した。その結果を表2に示す。
「試験3」
試料E1の代わりに生理食塩水を用いると共に、ダニ抗原希釈液の代わりに生理食塩水を用い、その他は試験1の場合と同様にして好塩基球の残存数を計数した。その結果を表2に示す。
「試験4」
試料E1の代わりに生理食塩水を用いると共に、ダニ抗原希釈液の希釈倍率を5000倍に変更し、その他は試験1の場合と同様にして好塩基球の残存数を計数した。その結果を表2に示す。
「試験5」
試料E1の代わりに生理食塩水を用い、その他は試験1の場合と同様にして、好塩基球の残存数を計数した。その結果を表2に示す。
「試験6」
試料E1の代わりに濃度1000μg/mlのテオフィリン(和光純薬工業(株)製)を用い、その他は試験1の場合と同様にして好塩基球の残存数を計数した。その結果を表2に示す。
「試験7」
試料E1の代わりに濃度500μg/mlのテオフィリン(和光純薬工業(株)製)を用い、その他は試験1の場合と同様にして好塩基球の残存数を計数した。その結果を表2に示す。
また、試験1〜試験7の残存好塩基級数の結果から脱顆粒率及び脱顆粒抑制率を算出した。その結果を表2に示す。
なお、脱顆粒率A(%)は、試験3における残存好塩基球数をRa、各試験における残存好塩基球数をRxとすると下記の式(1)にて算出することができる。
A(%)=(Ra−Rx)/Ra×100 ・・・(1)
また、脱顆粒抑制率B(%)は、試験5における脱顆粒率をA5、各試験における脱顆粒率Axとすると下記の式(2)にて算出することができる。なお、脱顆粒抑制率は、試験1、試験2、試験5、試験6及び試験7について算出した。
B(%)=(1−Ax/A5)×100 ・・・(2)
Figure 2006063011
表2において、まず、試験3〜試験5を比較して知られるごとく、抗原を添加することにより、脱顆粒現象が起こり、抗原濃度依存的に残存好塩基球数が減少していることが確認できる。一般にアレルギー反応においては、抗原に反応して、好塩基性白血球が脱顆粒現象を起こしてトルイジンブルー染色液にて染色される好塩基性白血球の数が減少する。即ち、試験4及び試験5においては、抗原に反応してアレルギー反応を起こして好塩基白血球数が減少していると考えられる。
一方、試料E1を添加した試験1及び試験2においては、試験5に比べて、抗原添加後の残存好塩基球数が増加し、好塩基性白血球の脱顆粒現象が抑制されていることが確認できる。したがって、試料E1は、好塩基性白血球の脱顆粒現象を抑制する効果を有し、これによりアレルギー反応を抑制する効果を有することがわかる。
また、試験1及び試験2と、試験6及び試験7とを比較して知られるごとく、試料E1は、気管支喘息の薬として利用されるテオフィリンと同様に、濃度依存的に好塩基性白血球の脱顆粒を抑制できることがわかる。
このように、本例によれば、カカオ豆外皮抽出物(試料E1)は、アレルギー反応に対する抑制効果を有していることがわかる。
(実施例3)
本例は、カカオ豆外皮抽出物の生理活性として、カカオ豆外皮抽出物の自律神経系への影響を調べた。具体的には、カカオ豆外皮抽出物を被験者に投与し、このときの被験者の皮膚温、脈拍、血圧の変化を調べた。
即ち、まず、カカオ豆外皮抽出物として、実施例1にて作製した試料E1を準備し、この試料E1をその濃度が20重量%となるようにエタノールに溶解して試料E1のエタノール溶液を作製した。この試料E1のエタノール溶液10mlを水50mlに混和し、4人の被験者(被験者A〜D)に経口摂取した。
経口摂取後から60分まで15分毎に、各被験者の皮膚温、脈拍、最高及び最低血圧を測定した。
皮膚温は、オージー技研(株)製の皮膚温測定機(VASO−Trainer)を用いて測定した。この皮膚温測定機においては、発光ダイオードにより皮膚温の変化を1〜10個のランプの点灯(10段階)により表示することができ、温度が最も低い場合は1個のランプが点灯し、温度が最も高い場合は10個のランプが点灯する。本例の測定においては、皮膚温の低下が予測されたので、皮膚温測定機の調節メモリにより、測定開始時においてランプが10個点灯するように設定して、皮膚温の測定に用いた。皮膚温の測定は、ランプの点灯数によって行った。その結果を表3〜6に示す。
また、脈拍、最高及び最低血圧については、テルモ(株)製のテルモ電子血圧計P302を用いて、被験者の上腕部を測定した。
脈拍、最高及び最低血圧は、それぞれ径口摂取前の脈拍、最高及び最低血圧を100とし、これに従って経時毎の測定値を比例計算で算定し直すことにより、指数表示した。その結果をそれぞれ表3〜表6に示す。
また、本例においては、試料E1の比較用として、試料E1の代わりに濃度20vol%のエタノール水溶液を各被験者に投与し、上記試料E1の場合と同様に、経時後の各被験者の皮膚温、脈拍、最高血圧及び最低血圧の変化を調べた。その結果を表3〜表6に示す。
なお、表3は被験者A、表4は被験者B、表5は被験者C、表6は被験者Dの結果をそれぞれ示すものである。
Figure 2006063011
Figure 2006063011
Figure 2006063011
Figure 2006063011
表3〜表6から知られるごとく、カカオ豆外皮抽出物(試料E1)の投与から30分後に、4例の被験者すべてにおいて皮膚温の低下が観察された。これに対し、20%エタノール溶液を投与した場合には、皮膚温の変化はほとんどなかった。
また、カカオ豆外皮抽出物投与による最高血圧、最低血圧、脈拍への影響を明確にするため、表3〜6におけるカカオ豆外皮抽出物(試料E1)の投与から30分後における各被験者の脈拍、最高及び最低血圧の値を、エタノール溶液を投与した場合に対する相対値で表し、その結果を図7にまとめた。
図7より知られるごとく、カカオ豆外皮抽出物は、4例の内3例の被験者において、エタノール溶液を投与した場合に比べて、最高血圧及び脈拍を上昇させる効果を有していた。また、4例の内3例の被験者において、カカオ豆外皮抽出物は、最低血圧を低下させる効果を有していることがわかる。
この結果から、カカオ豆外皮抽出物は、交感神経を亢進させ血圧を上昇させると共に、末梢血管を収縮させて皮膚温を低下させる効果を有すると推察される。
また、表3〜表6より知られるごとく、カカオ豆外皮抽出物が有する上述の効果は、投与後60分後には消退することから一過性のものであり、カカオ豆外皮抽出物は安全性の高いものであると考えられる。
実施例1にかかる、濃度2mg/mlの2−フェニルエチルアミン水溶液のHPLC分析の結果を示す説明図。 実施例1にかかる、濃度3mg/mlの2−フェニルエチルアミン水溶液のHPLC分析の結果を示す説明図。 メタノールを抽出溶媒として作製したカカオ豆外皮抽出物(試料E1)のHPLC分析の結果を示す説明図。 エタノールを抽出溶媒として作製したカカオ豆外皮抽出物(試料E2)のHPLC分析の結果を示す説明図。 LBCT法によるカカオマスの製造工程の概略を示す説明図。 SLS法によるカカオマスの製造工程の概略を示す説明図。 実施例3にかかる、カカオ豆外皮抽出物の投与から30分後における4人の被験者(被験者A〜D)の脈拍、最高血圧、最低血圧について、エタノール溶液を投与した場合に対する相対値を示す説明図。

Claims (3)

  1. カカオ豆の外皮を極性溶媒で抽出して得られるカカオ豆外皮抽出物であって、
    該カカオ豆外皮抽出物は、フェネチルアミンを含有することを特徴とするカカオ豆外皮抽出物。
  2. 請求項1において、上記極性溶媒は、アルコールを含有することを特徴とするカカオ豆外皮抽出物。
  3. 請求項1又は2において、上記カカオ豆の外皮は、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じるものであることを特徴とするカカオ豆外皮抽出物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010070531A (ja) * 2008-09-22 2010-04-02 Nagaoka Koryo Kk 天然抽出物より得られた脱顆粒抑制剤、β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、抗アレルギー用または抗炎症用の食品、医薬、動物飼料用組成物および化粧品原料用組成物
WO2016046375A1 (en) * 2014-09-25 2016-03-31 Institut National De La Sante Et De La Recherche Medicale (Inserm) Theobroma cacao extract for use in the treatment or prevention of receptor tyrosine kinases related disorders

Cited By (2)

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