JP2008260727A - カカオ有機酸抽出物 - Google Patents

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Abstract

【課題】カカオ豆の外皮を利用して製造することができると共に、優れた生理活性を有するカカオ有機酸抽出物を提供すること。
【解決手段】カカオ豆及び/又はカカオ豆の外皮を含むカカオ原料を有機酸水溶液で抽出して得られるカカオ有機酸抽出物である。有機酸水溶液としては、分子量200以下の低分子量の有機酸を含有する水溶液を用いること好ましい。また、有機酸水溶液は、酢酸水溶液であることが好ましい。カカオ原料としては、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じる外皮を利用することができる。また、カカオ原料としては、胚乳部を含むカカオ豆を利用することもできる。
【選択図】図1

Description

本発明は、カカオ原料を有機酸水溶液にて抽出してなるカカオ有機酸抽出物に関する。
従来より、カカオは、チョコレートやココアの主原料として利用されている。
カカオは、主として赤道付近の高温多湿な地方で栽培される熱帯植物であり、カカオの木の果実の中にある種子(カカオ豆、カカオビンズ)は、チョコレートやココア等に用いられるカカオマスの原料として用いられている。
カカオマスは、カカオビンズ(カカオ豆)を発酵・焙煎等することにより得ることができる。具体的には、図7及び図8に示すごとく、例えばLBCT(図7)又はSLS(図8)と呼ばれる方法により製造されている。
図7及び図8に示すごとく、LBCTやSLS等のカカオマスの製造工程においては、分離(ウィノーイング)工程でカカオビンズを種皮(外皮、シェル)と胚乳部(カカオニブ)とに分離し、このうち胚乳部だけがカカオマスの製造に用いられる。
したがって、カカオマスの製造においては、副生成物としてカカオビンズの外皮が大量に生じる。この外皮は、利用価値がほとんどないため、その大部分が廃棄物として大量に処理されていた。
カカオの歴史は古く、紀元前2000年頃のメキシコ付近に存在した古代アステカ王国において、カカオの栽培がすでに行われていたことが実証されている。当時カカオは「神様の食べ物」といわれ、「適量を飲むと元気になり、快活、活気づく」とされていた。また、16世紀の初め頃には、不老長寿の薬といわれていた。
しかし、カカオから得られるカカオマスを原料とする現代のチョコレートやココアには、強壮効果等の生理活性は確認されていない。
近年、チョコレート中には、フェニルアラニンの代謝物質であり、脳内生理活性物質であるフェネチルアミンが含まれていることが確認された。しかし、その含有量は極少量であり、強壮効果等を促す程の生理活性は確認されていない。
しがたって、カカオには、未だ明らかになっていない生理活性があると考えられていた。
このような背景の中、カカオ豆を原料とし、これを用いて発癌抑制剤を作製する技術が開発されている(特許文献1参照)。この発癌抑制剤は、カカオ豆を原料として得られ、ガン細胞の増殖を抑制するという生理活性を有する。また、この発癌抑制剤の製造方法においては、外皮を除去していないカカオビンズをそのまま原料として用いることができるため、カカオビンズの外皮の廃棄物量を低減することができる。
また、カカオ殻の水抽出物を含有する細胞賦活剤、紫外線障害緩和剤、及びメラニン産生抑制剤等が開発されている(特許文献2参照)。
また、本願の出願人らも、カカオ豆の外皮をアルコール等で抽出してなるカカオ豆外皮抽出物を開発しており、該カカオ豆外皮抽出物がアレルギー反応に対する抑制効果及び交感神経の亢進効果を有することを明らかにしている(特許文献3参照)。
しかしながら、カカオ豆の利用範囲は、依然として広くなく、カカオマスの製造の際に生じる外皮の廃棄量を低減するほど充分ではなかった。また、従来の抽出物の生理活性は充分ではなく、カカオ豆の外皮を利用したより生理活性の高い物質の開発が望まれていた。
特開2003−137800号公報 特開2006−342120号公報 特開2006−63011号公報
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、カカオ豆の外皮を利用して製造することができると共に、優れた生理活性を有するカカオ有機酸抽出物を提供しようとするものである。
本発明は、カカオ豆及び/又はカカオ豆の外皮を含むカカオ原料を有機酸水溶液で抽出して得られることを特徴とするカカオ有機酸抽出物にある(請求項1)。
本発明のカカオ有機酸抽出物は、上記カカオ原料を有機酸水溶液で抽出してなる。そのため、上記カカオ有機酸抽出物は、例えばテオブロミン等の生理活性物質を含有し、優れた生理活性を示すことができる。
また、上記カカオ有機酸抽出物においては、上記カカオ原料として、従来その大部分が廃棄されていた上記カカオ豆の上記外皮を用いて製造することができる。そのため、カカオ豆の外皮の廃棄量を低減することができる。また、この場合には、廃棄されるカカオ豆の外皮を原料とすることができるため、低コストで作製することができる。
また、上記カカオ有機酸抽出物は、上記有機酸水溶液で抽出されており、水等で抽出された抽出物に比べてテオブロミン等の生理活性物質を多く含有する。そのため、上記カカオ有機酸抽出物は、より優れた生理活性を発揮することができる。
また、上記カカオ有機酸抽出物は、有機酸で抽出してなるため、アルコール等で抽出した場合に比べて、細胞賦活作用、メラニン酸性抑制作用、抗酸化作用等のより優れた生理活性を示すことができる。
そのため、上記カカオ有機酸抽出物を例えば健康食品、及び化粧品等として利用することができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明において、上記カカオ有機酸抽出物は、上記カカオ原料を上記有機酸水溶液で抽出して得られる。
上記有機酸水溶液中における上記カカオ原料の抽出は、例えば上記カカオ原料を有機酸水溶液中に浸漬し、加熱することにより行うことができる。具体的には、例えばリフラックス等により行うことができる。また、抽出は、室温で行うこともできる。
また、本発明において、上記カカオ原料は、カカオ豆及び/又はカカオ豆の外皮を含有する。即ち、上記カカオ原料としては、例えばカカオ豆の外皮だけを用いることもできるが、外皮付きのカカオ豆を用いることもできる。また、外皮を取り除いたカカオ豆を用いることもできる。
また、上記有機酸水溶液としては、酢酸等の有機酸を含有する水溶液であればよく、その他の成分を含有していてもよい。したがって、上記有機酸水溶液として、醸造酢等を用いることもできる。
また、上記有機酸水溶液の濃度は、1wt%〜50wt%であることが好ましい。
上記有機酸水溶液中の有機酸の濃度が1wt%未満の場合には、上記カカオ原料からテオブロミン等の生理活性成分を充分に抽出することができず、上記カカオ有機酸抽出物の生理活性が低下するおそれがある。一方、有機酸水溶液の濃度を50wt%を超えて大きくしても、それに見合う程生理活性成分量の高い上記カカオ有機酸抽出物を得ることはほとんどできず、製造コストを増大させてしまうおそれがある。また、例えば酢酸等のように臭気を有する有機酸を用いた場合には、上記カカオ有機酸抽出物の臭気が強くなるおそれがある。より好ましくは5wt%〜45wt%がよく、さらに好ましくは10wt%〜40wt%がよい。
また、上記有機酸水溶液の量は、上記カカオ豆及び/又は上記カカオ豆の外皮1重量部に対して、3〜10重量部であることが好ましい。
上有機酸水溶液の量が3重量部未満の場合には、抽出時に撹拌が困難になり、上記カカオ豆の外皮からテオブロミン等の生理活性物質が充分に抽出されず、上記カカオ有機酸抽出物の生理活性が低下するおそれがある。一方、上記有機酸水溶液の量が10重量部を超える場合には、有機酸水溶液の増加に見合った効果が得られず、むだにコストを増加させ抽出溶媒の浪費となってしまうおそれがある。
また、上記カカオ原料を上記有機酸水溶液で抽出した後、濾過することが好ましい。
この場合には、不純固形物を除去することができ、上記カカオ有機酸抽出物の生理活性成分の濃度をより高めることができる。
また、上記カカオ有機酸抽出物においては、抽出後に減圧乾固させることもできる。この場合には、上記カカオ有機酸抽出物は、長期間保存させても安定して生理活性を示すことができる。即ち、この場合には上記カカオ有機酸抽出物の安定性を向上させることができる。
上記有機酸水溶液は、分子量200以下の低分子量の有機酸を含有することが好ましい(請求項2)。
分子量が200を越える場合には、水に対する溶解度が低下し、上記有機酸水溶液の濃度を高くすることが困難になり、その結果、上記カカオ有機酸抽出物中のテオブロミン等の生理活性成分量が低下するおそれがある。
分子量200以下の低分子量の有機酸としては、例えば酢酸(60)、フマル酸(116)、リンゴ酸(134)、酒石酸(150)、及びクエン酸(192)等を用いることができる。なお、前記各有機酸の後に付した括弧内の数字はその有機酸の分子量を示す。
好ましくは、上記有機酸水溶液は、酢酸水溶液であることがよい(請求項3)。
この場合には、上記カカオ豆の外皮からテオブロミン等の生理活性成分が抽出されやすくなり、上記カカオ有機酸抽出物中に含まれる生理活性成分量を向上させることができる。
また、匂いの少ないカカオ有機酸抽出物が得られ、水等を抽出溶媒とした場合に比べて生理活性成分の抽出量が向上するという観点からは、上記有機酸水溶液としては、クエン酸水溶液を用いることが好ましい。
上記カカオ有機酸抽出物は、少なくともテオブロミンを含有することができる。
この場合には、上記カカオ有機酸抽出物は、テオブロミンが有する優れた生理活性を発揮することができる。具体的には、例えば自律神経の調節作用、血糖値降下作用、利尿作用等の生理活性を発揮することができる。
また、上記カカオ原料としては、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じる上記カカオ豆の上記外皮を利用することが好ましい(請求項4)。
この場合には、カカオマスの製造時に廃棄物として大量に生じるカカオ豆の外皮を有効利用することができる。そのため、カカオ豆の外皮の廃棄量を低減することができる。また、破棄物を利用できるため、上記カカオ有機酸抽出物の製造コストを削減することができる。
また、上記カカオ原料としては、胚乳部を含む上記カカオ豆を利用することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記カカオ有機酸抽出物は、カカオの風味及び芳香等を示すことができる。そのため、健康食品などへの適用が容易になる。
さらに好ましくは、上記カカオ原料としては、外皮付きのカカオ豆を利用することが好ましい。この場合には、カカオ豆の外皮の廃棄量を減らすことができると共に、カカオの風味及び芳香等を示す上記カカオ有機酸抽出物を得ることができる。
上記カカオ有機酸抽出物が含有する生理活性成分は、厳密には明らかではないが、テオブロミン、フェニルエチルアミン、チラミン、及びポリフェノール等を含有すると考えられる。
また、上記カカオ有機酸抽出物は、上記のごとく有機酸で抽出した後、pHが6〜7に調整されていることが好ましい。
この場合には、上記有機酸を例えば健康食品及び化粧品等として利用し易くなる。
上記カカオ有機酸抽出物のpHの調整は、上記有機酸で抽出された上記カカオ有機酸抽出物に、例えば炭酸カリウムや炭酸カルシウム等の弱アルカリ性の物質を溶解させることによって行うことができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例について説明する。
本例においては、カカオ原料を異なる複数の抽出溶媒で抽出し、テオブロミンを指標として生理活性成分の抽出効率を検討する。
まず、カカオ原料を有機酸水溶液で抽出してなるカカオ有機酸抽出物を作製する。
具体的には、まず、カカオ原料として、外皮付きのカカオ豆を準備した。このカカオ原料にその重量の5倍量の醸造酢を加えて、外套温度40℃にてリフラックスを行い、カカオ原料の抽出を行った。醸造酢としては、濃度10wt%で酢酸を含有するものを用いた。次いで、抽出液を濾紙にて濾過し、固液分離し、カカオ有機酸抽出物(液体)を得た。これを試料E1とする。
また、本例においては、クエン酸水溶液を用いてカカオ原料の抽出を行った。
具体的には、カカオ原料(外皮付きのカカオ豆)に、濃度10wt%のクエン酸水溶液をカカオ原料の5倍量(重量)加えて、試料E1の場合と同様に、外套温度40℃にてリフラックスを行い、カカオ原料の抽出を行った。次いで、抽出液を濾紙にて濾過し、固液分離し、カカオ有機酸抽出物(液体)を得た。これを試料E2とする。即ち、試料E2は、抽出溶媒として濃度10wt%のクエン酸水溶液を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
また、本例においては、酒石酸水溶液を用いてカカオ原料の抽出を行った。
具体的には、カカオ原料(外皮付きのカカオ豆)に、濃度10wt%の酒石酸水溶液をカカオ原料の5倍量(重量)加えて、試料E1の場合と同様に、外套温度40℃にてリフラックスを行い、カカオ原料の抽出を行った。次いで、抽出液を濾紙にて濾過し、固液分離し、カカオ有機酸抽出物(液体)を得た。これを試料E3とする。即ち、試料E3は、抽出溶媒として濃度10wt%の酒石酸水溶液を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
また、本例においては、有機酸を用いて抽出を行った上記試料E1〜上記試料E3との比較用として、2種類のカカオ抽出物(試料C1及び試料C2)を作製した。
具体的には、試料C1は抽出溶媒として水を用いて作製した抽出物である。
即ち、まず、カカオ原料(外皮付きのカカオ豆)に、その5倍量(重量)の水加えて、試料E1の場合と同様に、外套温度40℃にてリフラックスを行い、カカオ原料の抽出を行った。次いで、抽出液を濾紙にて濾過し、固液分離し、カカオ抽出物(液体)を得た。これを試料C1とする。即ち、試料C1は、抽出溶媒として水を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
また、試料C2は抽出溶媒としてアルコール水溶液を用いて作製した抽出物である。
即ち、まず、カカオ原料(外皮付きのカカオ豆)に、濃度70wt%のエタノール水溶液をカカオ原料の5倍量(重量)加えて、試料E1の場合と同様に、外套温度40℃にてリフラックスを行い、カカオ原料の抽出を行った。次いで、抽出液を濾紙にて濾過し、固液分離し、カカオ抽出物(液体)を得た。これを試料C2とする。即ち、試料C2は、抽出溶媒として水を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
次に、各試料(試料E1〜試料E3、試料C1、及び試料C2)について、高速液体クロマトグラフィーにより、テオブロミンの定量分析を行った。
高速液体クロマトグラフィーは、カラムとして、直径4.6mm×長さ250mmのカラム(ダイソー株式会社製のDAISO−PAK SP−100−5−ODS−P)を用い、移動相として、メタノールと濃度20mMのリン酸水溶液との混合液を用い、温度40℃、流速1ml/minという条件で行った。そして、各試料中のテオブロミンを波長280nmの紫外線(UV)吸収スペクトルによって検出し、そのピーク面積からテオブロミン量を測定した。測定は、濃度既知のテオブロミン標品(濃度400ppm)の吸光度との比較から行った。なお、定量分析においては、試料E1〜試料E3、試料C1、及び試料C2の各試料を5倍希釈したサンプルをそれぞれ10μmずつ用いて行った。各試料のUV吸収スペクトルの検出結果を図1〜図5に示し、テオブロミン標品のUV吸収スペクトルの検出結果を図6に示す。また、各試料中のテオブロミン濃度を表1に示す。
Figure 2008260727
図1〜図6及び表1より知られるごとく、有機酸水溶液で抽出して作製した試料E1〜試料E3においては、水で抽出して作製した試料C1に比べて、テオブロミン量が増大していることがわかる。また、エタノールを用いて作製した試料C2もテオブロミン量が高いが、醸造酢(酢酸水溶液)で抽出して作製した試料E1は、さらに高いテオブロミン量を示した。
したがって、酢酸等の有機酸の水溶液を用いることによって、カカオ原料からテオブロミン等に代表される生理活性成分を高濃度で抽出できることがわかる。
また、本例においては、濃度の異なる複数の酢酸水溶液を用いて、カカオ原料(外皮付きのカカオ豆)から3種類のカカオ有機酸抽出物(試料E4〜試料E6)を作製した。
即ち、まず、酢酸(和光純薬工業(株)製)を水で希釈し、濃度10wt%の酢酸水溶液を作製し、この酢酸水溶液を抽出溶媒として用いてカカオ有機酸抽出物(試料E4)を作製した。上記試料E4は、抽出溶媒として濃度10wt%の酢酸水溶液を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したカカオ有機酸抽出物である。
また、上記試料E4と同様に、濃度20wt%の酢酸水溶液を用いてカカオ有機酸抽出物(試料E5)を作製し、さらに濃度40wt%の酢酸水溶液を用いてカカオ有機酸抽出物(試料E6)を作製した。試料E5及び試料E6は、抽出溶媒としてそれぞれ濃度20wt%及び濃度40wt%の酢酸水溶液を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したカカオ有機酸抽出物である。
これら試料E4〜試料E6についても、上述の高速液体クロマトグラフィーにより、テオブロミンの定量分析を行った。なお、試料E4〜試料E6については10倍希釈したサンプルを用いた。試料E4〜試料E6中のテオブロミン量(濃度)を表2に示す。
Figure 2008260727
表2より知られるごとく、テオブロミン量は酢酸の濃度に依存して増大すると考えられる。また、濃度20wt%の酢酸水溶液を用いた試料E2と、濃度40wt%の酢酸水溶液を用いた試料E3とのテオブロミン量には大きな差がないことから、濃度40wt%を超える酢酸水溶液を用いても得られるテオブロミン量はほとんど増大しないと考えられる。
(実施例2)
本例は、実施例1と同様にカカオ原料(外皮付きカカオ豆)を複数の異なる抽出溶媒を用いて抽出し、得られた抽出物について官能試験を行う例である。
具体的には、まず、外皮付きカカオ豆10gを粉砕し、粉砕物を醸造酢中に加えて、温度40℃で24時間振盪することにより抽出を行った。醸造酢としては、実施例1と同様に濃度10wt%で酢酸を含有するものを用いた。次いで、得られた抽出液を濾紙にて濾過して固液分離し、ろ液に炭酸カリウム(K2CO3)粉末を加えてpHを6に調整した。このようにして得られた抽出液を試料E7とした。
また、試料E7と同様に、醸造酢を用いてカカオ原料(外皮付きカカオ豆)の抽出を行い、濾過した後、炭酸カルシウム(CaCO3)粉末を用いてpHを6に調整して作製した抽出液を試料E8とした。即ち、試料E8は、中和剤として、試料E7の炭酸カリウムの代わりに炭酸カルシウムを用いた点を除いては、上記試料E7と同様にして作製した抽出液である。
また、上記試料E7の醸造酒の代わりに濃度10wt%のクエン酸水溶液を用いてカカオ原料(外皮付きカカオ豆)の抽出を行い、濾過した後、炭酸カリウム粉末を用いてpHを6に調整して作製した抽出液を試料E9とした。即ち、試料E9は、醸造酒の代わりにクエン酸水溶液を用いた点を除いては、上記試料E7と同様にして作製した抽出液である。
また、上記試料E7の醸造酒の代わりに濃度10wt%の酒石酸水溶液を用いてカカオ原料(外皮付きカカオ豆)の抽出を行い、濾過した後、炭酸カリウム粉末を用いてpHを6に調整して作製した抽出液を試料E10とした。即ち、試料E10は、醸造酒の代わりに酒石酸水溶液を用いた点を除いては、上記試料E7と同様にして作製した抽出液である。
また、比較用として、上記試料E7の醸造酒の代わりに水を用いてカカオ原料(外皮付きカカオ豆)の抽出を行い、濾過して作製した抽出液を試料C3とした。即ち、試料C3は、醸造酒の代わりに水を用い、中和用の炭酸カリウム粉末を用いなかった点を除いては、上記試料E7と同様にして作製した抽出液である。
また、上記試料E7の醸造酒の代わりに濃度70wt%のエタノール水溶液を用いてカカオ原料(外皮付きカカオ豆)の抽出を行い、濾過して作製した抽出液を試料C4とした。即ち、試料C4は、醸造酒の代わりにエタノール水溶液を用い、中和用の炭酸カリウム粉末を用いなかった点を除いては、上記試料E7と同様にして作製した抽出液である。
さらに、比較用として、上記試料E7の作製に用いた醸造酒を濾紙にて濾過し、ろ液に炭酸カリウム(K2CO3)粉末を加えてpHを6に調整した試料を作製した。これを試料C5とした。
また、上記試料E7の作製に用いた醸造酒にテオブロミンをその濃度が1000ppmとなるように溶解し、その後濾紙にて濾過し、ろ液に炭酸カリウム(K2CO3)粉末を加えてpHを6に調整した試料を作製した。これを試料C6とした。
次に、上記のようにして各試料(試料E7〜試料E10及び試料C3〜試料C6)を用いて人の肌に対する官能試験を行った。
具体的には、各試料1mlを手のひらに滴下し、それを手全体に塗布し、10分後の手のひらの感触を皮膚の柔らかさの度合いで評価した。評価は、性別や年齢の異なる4人の被験者について行った(下記表3参照)。また、評価は、皮膚の柔らかさが向上した場合には、柔らかさの向上効果が低い順から「+」、「2+」、及び「3+」という3段階の評価で行った。また、変化がない場合を「±」として評価し、皮膚が荒れた場合を「−」として評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2008260727
表3より知られるごとく、有機酸で抽出して作製した試料E7〜試料E10は、試料C3〜試料C6に比べて、皮膚の柔らかさを向上させる効果が高いことがわかる。これは、試料E7〜試料E10が優れた細胞賦活性を有してるためと考えられる。表3より、有機酸で抽出を行った試料E7〜試料E10は、水やエタノールで抽出を行った試料C3及び試料C4に比べて細胞賦活性に優れていると考えられる。
また、テオブロミンを溶媒(醸造酢)に溶解してなる試料C6においては、皮膚の柔らかさの向上効果はほとんど得られていないため、試料E7〜試料E10の細胞賦活性は、これらの試料に含まれるテオブロミン以外の生理活性成分によるものか、テオブロミンとこれ以外の生理活性成分との相乗効果によるものであると類推される。
ところで、上述の実施例1の結果か知られるごとく、有機酸を用いてカカオ原料を抽出して得られる抽出物においては、水で抽出を行った場合に比べて、テオブロミンに代表される生理活性成分が比較的高濃度で抽出されている(実施例1参照)。一方、エタノール等のアルコールを用いた場合においても、テオブロミンが高濃度で検出されたが、表3から知られるごとく、エタノールで抽出した抽出物は、テオブロミンを高濃度で含有するものの、細胞賦活作用は不十分であった。
したがって、カカオ原料を有機酸を用いて抽出した本発明の抽出物は、テオブロミンを含有すると共に、テオブロミン以外にも細胞賦活性作用等を示す生理活性成分を充分に含有し、優れた生理活性作用を示すことができると考えられる。
実施例1における、カカオ原料を醸造酢で抽出してなるカカオ有機酸抽出物(試料E1)の5倍希釈液のUV吸収スペクトルの検出結果を示す線図。 実施例1における、カカオ原料をクエン酸水溶液で抽出してなるカカオ有機酸抽出物(試料E2)の5倍希釈液のUV吸収スペクトルの検出結果を示す線図。 実施例1における、カカオ原料を酒石酸で抽出してなるカカオ有機酸抽出物(試料E3)の5倍希釈液のUV吸収スペクトルの検出結果を示す線図。 実施例1における、カカオ原料を水で抽出してなるカカオ有機酸抽出物(試料C1)の5倍希釈液のUV吸収スペクトルの検出結果を示す線図。 実施例1における、カカオ原料をエタノール水溶液で抽出してなるカカオ有機酸抽出物(試料C2)の5倍希釈液のUV吸収スペクトルの検出結果を示す線図。 実施例1における、テオブロミン標品(濃度400ppm)のUV吸収スペクトルの検出結果を示す線図。 LBCT法によるカカオマスの製造工程の概略を示す説明図。 SLS法によるカカオマスの製造工程の概略を示す説明図。

Claims (5)

  1. カカオ豆及び/又はカカオ豆の外皮を含むカカオ原料を有機酸水溶液で抽出して得られることを特徴とするカカオ有機酸抽出物。
  2. 請求項1において、上記有機酸水溶液は、分子量200以下の低分子量の有機酸を含有することを特徴とするカカオ有機酸抽出物。
  3. 請求項1又は2において、上記有機酸水溶液は、酢酸水溶液であることを特徴とするカカオ有機酸抽出物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記カカオ原料としては、カカオ豆の胚乳部を原料としてカカオマスを製造するときに生じる上記カカオ豆の上記外皮を利用することを特徴とするカカオ有機酸抽出物。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記カカオ原料としては、胚乳部を含む上記カカオ豆を利用することを特徴とするカカオ有機酸抽出物。
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