JP2006062908A - W型フェライト焼結体の製造方法及びw型フェライト焼結体 - Google Patents

W型フェライト焼結体の製造方法及びw型フェライト焼結体 Download PDF

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Abstract

【課題】 W相の存在割合が焼結体の全域で高いW型フェライト焼結体を得る手法を提供する。
【解決手段】 所定量の還元剤を含む原料組成物を磁場中で成形して成形体を得る磁場中成形工程と、還元剤の還元温度域における昇温速度を4℃/min以下(ただし、0を含まず)として所定温度まで成形体を昇温し、成形体を焼成する焼成工程と、を備える。酸化性雰囲気中、200〜400℃の温度範囲に成形体を保持する熱処理を行った後に、焼成を行うことがより望ましい。以上の製造方法により得られる焼結体は、焼結体内におけるW相の存在割合が90%以上と高い。
【選択図】図7

Description

本発明は、W型フェライト焼結体に関し、特にW相が焼結体中に占める割合が高いW型フェライト焼結体の製造方法に関するものである。
M型フェライト磁石を凌駕する磁気特性を示す可能性をもつフェライト磁石として、W型のフェライト磁石が知られている。酸化物焼結体からなるW型フェライト磁石は、M型フェライト磁石と同程度の異方性磁界を有しつつ飽和磁化が高い。例えば、特許文献1にはSrO・2(FeO)・n(Fe23)であり、nが7.2〜7.7を満足する組成からなるW型フェライト磁石が開示されている。特許文献1では組成を上述した範囲のものとするとともに、仮焼前の原料粉末に炭素を添加し、仮焼後にさらにCaO、SiO2、炭素をそれぞれ添加することでW型フェライト磁石の磁気特性の向上を図っている。特許文献1では(1)仮焼前の原料粉末に炭素を添加することにより、広範囲の温度域でW型フェライトを生成することが可能となること、(2)炭素は仮焼時における原料粉末の酸化を防止するために還元剤としての役割を有すること、(3)仮焼後かつ微粉砕前に炭素を添加することにより、乾燥温度の最適範囲が高温側に広がり、優れた最大エネルギ積((BH)max)を安定して得ることができること、が炭素の添加理由として挙げられている。
特表2000−501893号公報
上述したように、W型フェライト焼結体を製造する際に、還元剤として機能する炭素を添加することで還元作用や磁気特性の向上という効果が期待できる。特に、Fe2W型フェライト磁石は、二価鉄の量を所望の値に制御することが困難であるが、特許文献1にて提案されているように仮焼後に炭素を添加することで二価鉄の量の制御が容易となる。
ところで、W型フェライト焼結体の磁気特性を向上しようとする場合、焼結体中に占めるW相の存在割合を高くすることが望まれる。W型フェライト焼結体は、同一の組成であっても、製造条件によっては、W相以外にM相、スピネル相(以下、S相ということがある)、ヘマタイト相(以下、H相ということがある)が生成される。高い磁気特性を得るためには、W相の存在割合を高くし、M相、S相及びH相の存在割合を低くする必要がある。また、単一の焼結体を見た場合に、W相の存在割合が焼結体の全域において高いことが、高い磁気特性を得る上で有利である。焼結体の一部、例えば焼結体の表面近傍のW相の存在割合が高くても、それ以外の領域のW相の存在割合が低いと、高い磁気特性を得ることができないからである。
ところが、W相の存在割合を焼結体の全域で高くする手法は提案されていなかった。そこで本発明は、W相の存在割合が焼結体の全域で高いW型フェライト焼結体を得る手法を提供することを目的とする。
特許文献1によれば、仮焼体に炭素を添加した後に100〜200℃の温度域において加熱保持する熱処理を施している。ところが、この温度域の熱処理を施しただけでは、W相の存在割合が低いために、磁気特性の向上効果を十分に享受することができない。以上に対して本発明者らの検討によると、焼成における昇温過程の特定の温度域における昇温速度を制御することにより、W相の存在割合が焼結体の全域で高いW型フェライト焼結体が得られることを確認するに至った。
すなわち本発明は、所定量の還元剤を含む原料組成物を磁場中で成形して成形体を得る磁場中成形工程と、還元剤の還元温度域における昇温速度を4℃/min以下(ただし、0を含まず)として所定温度まで成形体を昇温し、成形体を焼成する焼成工程と、を備えるW型フェライト焼結体の製造方法により前記課題を解決する。
本発明において、酸化性雰囲気中、200〜400℃の温度範囲に成形体を保持する熱処理(以下、成形体熱処理ということがある)を行った後に焼成を行うことが好ましい。この成形体熱処理を行うことにより、W相の生成が促される。ただし、成形体熱処理のみでは、W相の存在割合が焼結体の全域で高いW型フェライト焼結体を得ることができず、そのために本発明では焼成における昇温速度を上記のように制御する。
本発明における還元剤としては、種々の物質を用いることができるが、その還元能力、コスト等の観点から炭素粉末を用いることが好ましい。還元温度域は、還元剤の種類によって変わるが、炭素粉末の場合500〜900℃が還元温度域になるため、上記の昇温速度の制御は、少なくとも500〜900℃の範囲で行うことになる。還元温度域における昇温速度は、0.1〜3.5℃/minとすることが好ましい。
本発明が適用される焼結体は、式(1)で示す主組成を有することが好ましい。この主組成を有するW型フェライト焼結体に本発明を適用することにより、4550G以上の残留磁束密度(Br)、4000Oe以上の保磁力(HcJ)という高い磁気特性を得ることができる。
AFe2+ aFe3+ b27・・・式(1)
(式(1)において、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1、AはSr及びBaの1種又は2種)
以上の本発明を適用した焼結体は、焼結体内におけるW相の存在割合が90%以上という、これまでにない高いW相の存在割合のW型フェライト焼結体となる。
以上説明したように、本発明によれば、高いW相の存在割合のW型フェライト焼結体を得ることができ、かつそのW型フェライト焼結体は、これまでにない高い磁気特性を得ることができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のW型フェライト焼結体の製造方法は、配合工程、仮焼工程、粗粉砕工程、微粉砕工程、磁場中成形工程、成形体熱処理工程、焼成工程という工程を備えることが望ましい。
ここで、Fe2+は大気中ではFe3+になりやすいため、還元剤、典型的には炭素粉末を少なくとも磁場中成形工程の前に添加するとともに、W相の存在割合を焼結体の全域において高くするために昇温過程における昇温速度を制御する点に本発明の特徴がある。
以下、各工程について順次説明する。
<配合工程>
各原料を秤量後、湿式アトライタ等で1〜3時間程度混合、粉砕処理する。原料粉末としては酸化物、または焼結により酸化物となる化合物を用いることができる。なお、ここではSrCO3粉末及びFe23(ヘマタイト)粉末を用いる例を説明するが、A元素は炭酸塩として添加する形態のほかに酸化物として添加することもできる。Feについても同様でFe23以外の化合物として添加することもできる。さらに、A元素とFeを含む化合物を用いることも可能である。
<仮焼工程>
配合工程で得られた混合粉末を1100〜1350℃で仮焼する。この仮焼を窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で行うことにより、Fe23粉末中のFe3+が還元されてFe2+が生成してW型フェライトが構成される。ただし、この段階でFe2+の量を十分に確保できなければ、W相の他にM相またはH相が存在することになる。なお、W相単相のフェライトを得るためには、酸素分圧を調整することが有効である。酸素分圧を下げると、Fe3+が還元されてFe2+が生成するためである。
<粗粉砕工程>
仮焼体は一般に顆粒状なので、これを解砕するために粗粉砕することが好ましい。粗粉砕工程では、振動ミル等により平均粒径が0.5〜10μmになるまで粉砕する。
<微粉砕工程>
続く、微粉砕工程では、粗粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して1μm以下、好ましくは0.1〜0.8μmに粉砕する。粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gに対して30〜50時間処理すればよい。なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、微粉砕に先立ってCaCO3とSiO2、或いはさらにAl23やCr23等の粉末を添加してもよい。
微粉砕工程は、以下説明するように、第1の微粉砕及び第2の微粉砕に分けて実施することもできる。第1の微粉砕、第2の微粉砕を行う場合には、第1の微粉砕の後に、得られた粉末に熱処理を施す。
第1の微粉砕は、粗大な粒子をなくすこと、さらには磁気特性向上のために焼結後の組織を微細にすることを目的として行うものであり、粗粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して平均粒径で0.08〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。
粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gあたり60〜100時間処理すればよい。
第1の微粉砕で得られた微粉を600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃で、1秒〜100時間保持する熱処理を行う。
第1の微粉砕を経ることにより0.1μm未満の粉末である超微粉が不可避的に生じてしまう。超微粉が存在すると後続の磁場中成形工程で不具合が生じることがある。例えば、湿式成形時に超微粉が多いと水抜けが悪く成形できない等の不具合が生じる。そこで、第1の微粉砕で生じた0.1μm未満の超微粉をそれ以上の粒径の微粉(例えば0.1〜0.2μmの微粉)と反応させることにより、超微粉の量を減少させることを目的とする熱処理を行う。この熱処理により超微粉が減少し、成形性を向上させることができる。
このときの熱処理雰囲気は、仮焼で生成したFe2+が酸化によりFe3+となることを避けるために、非酸化性雰囲気とする。本発明における非酸化性雰囲気とは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気を含む。また本発明の非酸化性雰囲気は、10vol%以下の酸素の含有を許容する。この程度の酸素の含有であれば、上記温度での保持においてFe2+の酸化は無視できる程度である。熱処理雰囲気の酸素含有量は、1vol%以下、さらには0.1vol%以下であることが好ましい。
続く第2の微粉砕では熱処理された微粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第2の微粉砕は、粒度調整やネッキングの除去、添加物の分散性向上を目的として行うものであり、比表面積(BET法による)としては10〜20m2/g、さらには10〜15m2/gの範囲とするのが好ましい。この範囲に比表面積が調整されると、超微粒子が存在していたとしてもその量は少なく、成形性に悪影響を与えない。つまり、第1の微粉砕、粉末熱処理及び第2の微粉砕を経ることにより、成形性に悪影響を与えることなく、かつ焼結後の組織を微細化するという要求を満足することができる。
粉砕方法にもよるが、ボールミルで湿式粉砕する場合には、微粉砕粉末200gあたり10〜40時間処理すればよい。第2の微粉砕を第1の微粉砕と同程度の条件で行うと超微粉が再度生成されることになることと、第1の微粉砕ですでに所望する粒径がほとんど得られていることから、第2の微粉砕は、通常、第1の微粉砕よりも粉砕条件が軽減されたものとする。ここで、粉砕条件が軽減されているか否かは、粉砕時間に限らず、粉砕時に投入される機械的なエネルギを基準にして判断すればよい。
還元剤は、この微粉砕で添加することができる。微粉砕を2段階で行う場合には、第2の微粉砕に先立って還元剤を添加する。還元剤の添加は、W型フェライトを単相に近い状態(または単相)で生成させる上で有効である。なお、本発明において、還元剤として、炭素粉末の他にSi、SiC、有機化合物(例えば、分子量が5000を超えるポリカルボン酸、ポリエーテル系高分子等の高分子)を用いることができる。ただし、以下では還元剤として最も好適な炭素を例にして説明する。
ここで、炭素粉末の添加量(以下、「炭素量」という)は原料粉末に対して0.05〜0.7wt%の範囲とする。炭素量をこの範囲とすることで、後述する焼成工程における炭素粉末の還元剤としての効果を十分に享受することができるとともに、炭素粉末添加なしの場合よりも高い飽和磁化(σs)を得ることができる。本発明における好ましい炭素量は0.1〜0.65wt%、より好ましい炭素量は0.15〜0.6wt%である。なお、添加する炭素粉末のサイズは0.01〜1.0μm程度とすればよい。また、添加する炭素粉末としては、カーボンブラック等の公知の物質を用いることができる。
本発明においては、添加された炭素粉末が成形体中で偏析するのを抑制するために、一般式Cn(OH)nn+2で表される多価アルコールを添加することが好ましい。ここで、上記一般式において、炭素数nは4以上とする。炭素数nが3以下であると、炭素粉末の偏析抑制効果が不十分となる。炭素数nの好ましい値は4〜100、より好ましくは4〜30、さらに好ましくは4〜20、より一層好ましくは4〜12である。なお、多価アルコールは2種以上を併用してもよい。また、本発明で用いる多価アルコールに加えて、他の公知の分散剤をさらに使用してもよい。
上記した一般式は、骨格がすべて鎖式であってかつ不飽和結合を含んでいない場合の式である。多価アルコール中の水酸基数、水素数は一般式で表される数よりも多少少なくてもよい。上記一般式において、飽和結合に限らず不飽和結合を含んでいてもよい。また基本骨格は鎖式であっても環式であってもよいが、鎖式であることが好ましく、また水酸基数と炭素数とが一致することが最も好ましい。この多価アルコールの添加量としては、添加される粉末に対して0.05〜5.0wt%、好ましくは0.1〜3.0wt%、より好ましくは0.3〜2.0wt%とすればよい。なお、添加した多価アルコールのほとんどは磁場中成形工程後に行われる成形体熱処理工程で分解除去される。成形体熱処理工程において分解除去されずに残存した多価アルコールについても、続く焼成工程で分解除去される。
<磁場中成形工程>
磁場中成形工程は乾式成形又は湿式成形のいずれでも行うことができるが、磁気的配向度を高くするためには、湿式成形で行うことが好ましい。よって、以下では湿式成形用スラリの調製について説明した上で、続く磁場中成形工程の説明を行う。
湿式成形を採用する場合は、微粉砕を湿式で行い、得られたスラリを濃縮して湿式成形用スラリを調製することができる。濃縮は、遠心分離やフィルタープレス等によって行えばよい。この際、フェライト磁石粉末が湿式成形用スラリ中の30〜80wt%を占めることが好ましい。また、分散媒としての水には、グルコン酸(塩)、ソルビトール等の界面活性剤を添加することが好ましい。次いで、湿式成形用スラリを用いて磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm2 程度、印加磁場は5〜15kOe程度とすればよい。なお、分散媒は水に限らず、非水系のものでもよい。非水系の分散媒を用いる場合には、トルエンやキシレン等の有機溶媒を用いることができる。非水系の分散媒として、トルエンまたはキシレンを用いる場合には、オレイン酸等の界面活性剤を添加することが好ましい。
<成形体熱処理工程>
本工程では、成形体を200〜400℃の温度で1〜4時間保持する熱処理を行う。この熱処理を酸化性雰囲気中で行うことにより、Fe2+の一部が酸化されてFe3+になる。つまり、本工程では、Fe2+からFe3+への反応をある程度進行させることにより、Fe2+量を所定量に制御するのである。
ここで、熱処理温度と炭素量には密接な関係がある。熱処理自体はフェライトのFeを酸化(Fe2+→Fe3+)し、炭素はフェライトのFeを還元(Fe3+→Fe2+)する役割を担い、これらの条件が焼結体を構成する相の存在に大きく影響を与える。磁気特性の高いW相を得るためには、熱処理温度と炭素量のバランスを取らなくてはならない。熱処理温度が低すぎる場合、または炭素量が多すぎる場合(Fe2+が多い場合)にはS相が発生し、熱処理温度が高すぎる場合、または炭素量が少なすぎる場合(Fe3+が多い場合)にはW相が減少し、M相とH相が増加する。したがって、炭素量が多い場合にはその還元力に釣り合うように熱処理温度を高くする必要がある。
<焼成工程>
続く焼成工程では、成形体を1100〜1270℃(焼成温度)、より好ましくは1160〜1240℃の温度で0.5〜3時間保持して焼成する。焼成雰囲気は、仮焼工程と同様の理由により、非酸化性雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気中にて行う。また、本工程において、炭素粉末が消失する。
本発明は、焼成温度に至るまでの昇温の速度を制御することにより焼結体中におけるW相の存在割合を高め、かつ焼結体中におけるW相の存在割合の変化を小さくすることを可能とする。還元剤の種類によって異なるが、後述するように、400〜1050℃において還元が生じており、この温度域の昇温速度を所定の範囲以下に制御することにより、焼結体中におけるW相の存在割合を高める。昇温速度が速いと焼結体全域におけるW相の存在割合を90%以上にできなくなることから、本発明ではこの昇温速度を、4℃/min以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。昇温速度が遅い場合はW相生成にとって不都合はないものの、焼成時間をいたずらに長くすることを考慮すると、焼成温度は、より好ましくは0.1〜4.0℃/min、さらに好ましくは1.0〜4.0℃/minとする。なお、本発明における昇温速度は、当該温度域における平均の昇温速度を意味するものとする。したがって、当該温度域を、4℃/min以下の一定の速度で昇温する場合に限らず、複数の速度で昇温する場合を含み、また所定温度を維持する過程(昇温速度が0)を含むステップ状の昇温をも包含する。
昇温速度を制御する温度域は、還元剤の種類によって異なる。具体的には、以下に列挙する通りである。還元剤によって還元作用を起こす温度域が異なるためであり、本発明の包括的な還元温度域は400〜1050℃となる。
炭素(C):500〜900℃
珪素(Si):500〜900℃
炭化珪素(SiC):850〜1050℃
有機化合物:400〜900℃
<相状態>
本発明を適用したW型フェライト焼結体は、焼結体におけるW相の存在割合が90%以上を占める。ここで、焼結体におけるW相の存在割合が90%以上であるから、焼結体の一部の領域でW相の存在割合が90%未満である場合は本発明に該当しない。つまり、本発明によれば焼結体の全域でW相の存在割合が90%以上とすることができる。ただし、この規定に該当するか否かを判断する上で、現実に焼結体の全域にわたってW相の存在割合が90%以上であるか否かを測定する必要はない。焼結体の表面から1.5mmの位置(深さ)を過ぎると、焼結体の相状態が安定する。したがって、焼結体におけるW相の存在割合が90%以上という規定に該当するか否かは、焼結体の表面から1.5mmの位置までの範囲のW相の存在割合を求めれば足りる。
<組成>
本発明はW型フェライト焼結体を対象とする。この焼結体の組成としては、公知の組成を広く適用することができるが、下記式(1)の主組成を有することが好ましい。
AFe2+ aFe3+ b27・・・式(1)
ただし、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1である。また、Aは、Sr及びBaの1種又は2種の元素である。
なお、上記式(1)においてa及びbはそれぞれモル比を表す。
上記組成式において、Fe2+の割合を示すaは、1.1≦a≦2.4の範囲とする。aが1.1未満になると、W相よりも飽和磁化(4πIs)の低いM相、Fe23(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。一方、aが2.4を超えると、スピネル相が生成して、保磁力(HcJ)が低下してしまう。よって、aは、1.1≦a≦2.4の範囲とする。aの好ましい範囲は1.5≦a≦2.4、より好ましい範囲は1.6≦a≦2.1である。
Fe3+の割合を示すbは、12.3≦b≦16.1の範囲とする。bが12.3未満又は16.1を超えると、高いレベルでの保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)を兼備させることができないからである。bの好ましい範囲は13.0≦b≦15.8、より好ましい範囲は14.4≦b≦15.0である。
W型フェライト焼結体の組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、本発明は、A元素(Sr及びBaの1種又は2種)、Fe以外の元素の含有を排除するものではない。これらの元素の他、例えばCa、Si等の元素を含有していてもよい。Ca、SiはCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%とすることが好ましい。SiO2が0.2wt%未満では、SiO2の添加効果が不十分である。また、CaCO3が3.0wt%を超えると磁気特性低下の要因となるCaフェライトを生成するおそれがある。さらに、SiO2が1.4wt%を超えると、残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。以上より、本発明におけるCa成分、Si成分の量はCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%とする。CaCO3及びSiO2は、各々、CaCO3:0.2〜1.5wt%、SiO2:0.2〜1.0wt%の範囲で含むことが望ましく、さらにはCaCO3:0.3〜1.2wt%、SiO2:0.3〜0.8wt%の範囲で含むことが好ましい。
以上の工程を経ることにより、焼結体のW相の存在割合を90%以上、さらには95%以上という従来にはないW型フェライト焼結体を得ることができる。以上の組成を有する本発明によるW型フェライト焼結体は、4550G以上の残留磁束密度(Br)、4000Oe以上の保磁力(HcJ)を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
原料粉末として、Fe23粉末(1次粒子径:0.3μm)、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)、BaCO3粉末(1次粒子径:0.05μm)を準備した。この原料粉末を秤量した後、湿式アトライタで2時間混合、粉砕した。
次いで、仮焼を行った。仮焼は管状炉を用い、窒素ガス雰囲気中で1時間保持する条件で行った。なお、保持温度は1300℃とし、保持温度までの昇温及び保持温度からの降温の速度は5℃/minとした。粉砕は、振動ミルにより粗粉砕及びボールミルによる微粉砕の2段階で行った。振動ミルによる粗粉砕は、仮焼体220gについて10分間処理した。
次の微粉砕はボールミルにより2段階で行った。第1の微粉砕は粗粉砕粉末210gに対して水400mlを添加して88時間処理するというものである。
第1の微粉砕後に、微粉砕粉末を窒素ガス雰囲気中、800℃で1時間保持する条件で熱処理を行った。なお、加熱保持温度までの昇温及び加熱保持温度からの降温の速度は5℃/minとした。
続いて、ボールミルを用いて湿式粉砕する第2の微粉砕を行い、湿式成形用スラリを得た。なお、第2の微粉砕前に、上記熱処理がなされた微粉砕粉末に対しSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.6wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%、SrCO3粉末を0.35wt%、BaCO3粉末を1.4wt%、Ga23粉末を4.0wt%、炭素粉末(1次粒子径:0.05μm)を0.4wt%それぞれ添加するとともに、多価アルコールとしてソルビトール(1次粒子径:10μm)を1.2wt%添加した。第2の微粉砕は、第1の微粉砕で得られた粉末210gに対して水400mlを添加して40時間処理するというものである。
第2の微粉砕で得られたスラリを遠心分離器で濃縮した後に磁場中成形を行った。なお、印加した磁界(縦磁場)は12kOe(1000kA/m)であり、成形圧は0.41t/cm2である。この成形体に対して、300℃で3時間大気中にて保持する成形体熱処理を施した後、窒素ガス雰囲気中で表1に示す昇温パターンで1190℃まで昇温したのちに1時間保持することにより5種類の焼結体を得た。得られた焼結体は直径26mm、高さ11mmの円柱状であり、またその主組成は、Sr0.7Ba0.3Fe2 +2Fe3+ 15.027であった。なお、組成分析は理学電機(株)の蛍光X線定量分析装置SIMULTIX3550を用いて行った。
ここで、熱処理を施した後の成形体について、窒素ガス雰囲気中にて、1℃/min及び5℃/minの昇温速度によるTG(Thermogravimetry)曲線を求めた。その結果を図1に示す。昇温速度が5℃/minの場合には500〜800℃で、昇温速度が1℃/minの場合には400〜720℃の温度域で重量減少が起こった。これはカーボンの還元作用(カーボンがW型フェライト中の酸素と反応し、二酸化炭素として系外に抜ける)によるものであり、この温度域で還元が起こっていることを示唆している。また、図1より、昇温速度が遅い場合(1℃/min)には還元はより低い温度から進行し、より低い温度で還元作用が完了していることが見出された。
次に、試料No.1〜5の焼結体について、焼結体密度、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ)、及び飽和磁化(σs)を測定した。その結果を表1及び図2〜図6に示す。なお、残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)は、得られた焼結体の上下面を加工した後、最大印加磁場25kOeのBHトレーサを用いて評価した。また、飽和磁化(σs)の測定は、BHトレーサ測定時のJm(飽和磁化)を焼結体密度で割ることにより求めた。
Figure 2006062908
500〜900℃の昇温速度を遅くすることで保磁力(HcJ)が同等で残留磁束密度(Br)が向上する傾向が見られた。特に、図2に示すように、700〜900℃の昇温速度を1℃/minにしたときに残留磁束密度(Br)は約60G向上した。700〜900℃の昇温速度が異なる試料No.3〜5を比較すると、昇温速度が1℃/minのときに残留磁束密度(Br)が最大となった。図3及び図4を比較すれば、残留磁束密度(Br)向上の要因は飽和磁化(σs)の向上によると考えられる。
飽和磁化(σs)は結晶構造に由来する値であるため、試料No.3〜5の焼結体の相状態をX線回折装置により同定した。なお、W相の存在割合は下記の式(2)により求めた。ただし、同定は円柱状の焼結体の中心部について、その表面から所定値だけ研削した面の相を解析した。また、相変化率は焼結体表面におけるW相の存在割合と、焼結体表面から1.5mmの位置におけるW相の存在割合に基づいて求めた。同定の結果を表2及び図7に示す。
Rw=(2.1×HW)/(2.1×HW+3.3×HM+4.0×HH)…(2)
Rw:W相の存在割合
W:W相の(0 0 10)面ピーク高さ
M:M相の(0 0 6) 面ピーク高さ
H:H相の(0 2 4)面ピーク高さ
式(2)中の係数(2.1、3.3及び4.0)は、測定ピーク強度と各相における最強ピークとの強度比を表している。強度ピーク比は最強ピークの強度比で比較すべきであるが、最強ピークが他の相のピークと重なっているため直接高さを測ることができないためである。
X線回折の条件は以下の通りである。
X線発生装置:3kW
管電圧:35kV
管電流:30mA
サンプリング幅:0.02deg
走査速度:4.00deg/min
発散スリット:1.00deg
散乱スリット:1.00deg
受光スリット:0.30mm
表2及び図7に示すように、焼結体表面については、700〜900℃の昇温速度が5℃/min、3℃/min及び1℃/minのいずれであっても、W相の割合が100%である。焼結体内部については、昇温速度が5℃/minの場合にはW相の割合が90%未満にとどまっているのに対して、昇温速度が3℃/min及び1℃/minの場合には90%以上のW相の割合となっている。これらの結果より、昇温速度が3℃/min及び1℃/minと本発明の範囲にある場合には、焼結体内のW相の変化が10%未満、さらには5%未満となる。また、昇温速度が1℃/minの場合のW相の割合が最も高いことが、高い飽和磁化(σs)が得られた理由と解される。
Figure 2006062908
焼成過程のTG曲線を示す図である。 昇温速度と磁気特性の関係を示すグラフである。 昇温速度と残留磁束密度(Br)の関係を示すグラフである。 昇温速度と飽和磁化(σs)の関係を示すグラフである。 昇温速度と保磁力(HcJ)の関係を示すグラフである。 昇温速度と焼結体密度の関係を示すグラフである。 昇温速度と焼結体におけるW相の存在割合の関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 所定量の還元剤を含む原料組成物を磁場中で成形して成形体を得る磁場中成形工程と、
    前記還元剤の還元温度域における昇温速度を4℃/min以下(ただし、0を含まず)として所定温度まで前記成形体を昇温し、前記成形体を焼成する焼成工程と、
    を備えることを特徴とするW型フェライト焼結体の製造方法。
  2. 酸化性雰囲気中、200〜400℃の温度範囲に前記成形体を保持する熱処理を行った後に、前記焼成を行うことを特徴とする請求項1に記載のW型フェライト焼結体の製造方法。
  3. 前記還元剤が炭素粉末であり、前記還元温度域が500〜900℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のW型フェライト焼結体の製造方法。
  4. 前記還元温度域における昇温速度が、0.1〜3.5℃/minであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のW型フェライト焼結体の製造方法。
  5. 前記焼成によって得られる焼結体は、式(1)で示す主組成を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のW型フェライト焼結体の製造方法。
    AFe2+ aFe3+ b27・・・式(1)
    (式(1)において、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1、AはSr及びBaの1種又は2種)
  6. 式(1)で示す主組成を有する焼結体からなり、前記焼結体内におけるW相の存在割合が90%以上であることを特徴とするW型フェライト焼結体。
    AFe2+ aFe3+ b27・・・式(1)
    (式(1)において、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1、AはSr及びBaの1種又は2種)
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