JP2006061080A - 無細胞タンパク質合成系のための媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】有効な立体構造を伴うタンパク質を効率的に生産する方法を提供する。
【解決手段】無細胞タンパク質合成系のための媒体として、遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞内の前記補助タンパク質を含む画分を含有する、媒体を用いる。この媒体を用いることで、遺無細胞タンパク質合成系に十分量でかつ組み合わされたフォールディング補助タンパク質を供給して、容易に立体構造を伴うタンパク質を合成することができる。
【選択図】なし

Description

この発明は、無細胞タンパク質合成系のための媒体及びその利用に関する。
各種生物から採取された核酸を利用して酵素などの有用なタンパク質を探索したり、これらのタンパク質を用いた新たな有用物質を探索することが進められてきている。また、人工的に新たなタンパク質を合成し機能を向上させ、あるいは新たな機能を開発することもすすめられてきている。これらの研究開発を効率的に進めるには、タンパク質を効率的に合成するシステムが必要である。また、得られるタンパク質は本来有すべき立体構造を備えていることが好ましい。したがって、有効な立体構造を有するタンパク質を高効率で生産するシステムが求められている。
このようなシステムとして、無細胞タンパク質合成系の活用が期待されている。現在、無細胞タンパク質合成システムとしては、大きく分けて大腸菌抽出液を用いる系と小麦胚芽など真核細胞抽出液を用いる系とがある。一般に、タンパク質の有効なフォールディングは真核細胞系において可能であるが、大腸菌などの原核細胞系においては極めて困難であるとされている。これは、大腸菌を用いる系では、細胞内で合成された外来タンパク質が細胞内において凝集しやすく、凝集したタンパク質を再度可溶化して機能する立体構造を付与する必要があるからである。さらに、このようなコンフォメーション制御のためにはシャペロンタンパク質の選定や反応条件などを検討する必要があるが、このような条件検討は困難でありしかも必ずしも成功するとは限らないからである。
このような課題を解決すべく、大腸菌抽出液において、標的タンパク質とともにDnaK、DnaJ及びGrpEなどのタンパク質のフォールディングを補助する複数のシャペロンタンパク質を共発現させる試みがある(特許文献1)。また、大腸菌にヒートショックを与えてシャペロンタンパク質の発現を誘導した後、シャペロンタンパク質が発現された大腸菌の抽出液を用いるという試みもある(特許文献2)。
特開2002−335959号公報 特開平7−194374号公報
しかしながら、ヒートショック等によってシャペロンの発現を誘導しても、機能するタンパク質をそれほど効率的に生産されてはおらず、活性あるタンパク質を効率的に合成できていない。また、一方、小麦胚芽抽出液などの真核細胞系においても、実際のところ有効な立体構造のタンパク質が合成される確率は必ずしも高くなく、依然として困難を伴うものである。さらに、真核細胞系では、タンパク質合成に時間がかかるという難点を本来的に備えている。以上のことから、有効な三次元構造を伴うタンパク質の合成には至っていないのが現状である。
そこで、本発明では、有効な立体構造を伴うタンパク質を効率的生産するのに適した無細胞タンパク質合成系のための媒体を提供することを一つの目的とする。また、本発明では、有効な立体構造を伴うタンパク質を効率的に生産する方法を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、大腸菌の無細胞抽出液を用いる無細胞タンパク質合成系に着目した。本発明者らが、この系において効率的なタンパク質のフォールディングを促進する手法を種々検討したところ、細胞にシャペロンなどフォールディング補助タンパク質をコードするDNAを導入して形質転換し、この形質転換体を培養して得られる無細胞抽出液を用いることで、無細胞抽出系においても高効率で有効な立体構造を伴ったタンパク質を合成できることを見出し、本発明を完成した。本発明によれば以下の手段が提供されることになる。
本発明の一つの形態によれば、無細胞タンパク質合成系のための媒体であって、遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞内の前記補助タンパク質を含む画分を含有する、媒体が提供される。この媒体においては、前記フォールディング補助タンパク質は、Hsp70ファミリー、Hsp60ファミリー及びジスルフィド結合形成に関連するタンパク質ファミリーから選択されることが好ましく、さらに、前記フォールディング補助タンパク質は、DnaK、DnaJ、GrpE、GroES及びGroELから選択されることが好ましい。
また、これらのいずれかの無細胞タンパク質合成媒体においては、前記画分には前記細胞内の翻訳因子を含有することが好ましい形態である。これらのいずれかの媒体は、合成しようとする標的タンパク質を多量体タンパク質あるいはジスルフィド結合を備えているタンパク質とすることができる。また、これらのいずれかの媒体においては、前記細胞は、大腸菌あるいは酵母であることが好ましい。無細胞タンパク質合成系のための媒体は、遺伝子組換えによりフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞の抽出液を含むものとすることができる。
本発明の他の一つの形態においては、タンパク質の生産方法であって、上記いずれかの無細胞タンパク質合成系のための媒体を用いてタンパク質を合成する工程を備える、方法が提供される。この方法の前記合成工程において、前記媒体にはタンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび/またはチオレドキシンを含有させることもできる。また、前記合成工程は3時間以内で実施することが好ましい。
さらに、本発明の他の一つの形態によれば、無細胞タンパク質合成系のための媒体の生産方法であって、遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞を培養する工程と、培養された前記細胞内の少なくとも翻訳因子と前記フォールディング補助タンパク質とを含む画分を採取する工程と、
を備える、方法が提供される。この方法においては、前記細胞は、前記フォールディング補助タンパク質は、Hsp70ファミリー、Hsp60ファミリー及びジスルフィド結合形成に関連するタンパク質ファミリーから選択されるフォールディング補助タンパク質をコードするポリヌクレオチドが前記細胞に導入された形質転換体であることが好ましい態様である。また、これらの方法において、前記採取工程を前記画分に還元剤を作用させることなく実施することが好ましい。また、この形態によれば、これらのいずれかに記載の方法により得られる、無細胞タンパク質合成系のための媒体が提供される。
本発明の他の一つの形態によれば、無細胞タンパク質合成系キットであって、上記いずれかの無細胞タンパク質合成系のための媒体を含む、キットも提供される。さらに、本発明の他の一つの形態によれば、遺伝子組換えによりフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞である、無細胞タンパク質合成系のための媒体を生産するための細胞が提供される。また、さらに他の一つの形態によれば、タンパク質のスクリーニング方法であって、上記いずれかの無細胞タンパク質合成系のための媒体を用いて標的タンパク質を合成する工程と、合成された前記標的タンパク質がスクリーニングしようとする目的に応じた機能を有するか否かを確認する工程と、を備える、方法が提供される。
本発明の無細胞タンパク質合成系のための媒体(以下、単にタンパク質合成媒体という。)は、遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞内の前記補助タンパク質を含む画分を含有している。また、本発明のタンパク質の生産方法は、このようなタンパク質合成媒体を用いることを特徴としている。本発明のタンパク質合成媒体を用いることで、無細胞タンパク質合成系に十分量で組み合わされたフォールディング補助タンパク質を供給することができ、これにより容易に活性型の立体構造を伴うタンパク質を合成することができる。すなわち、同時にタンパク質を効率よく可溶化された状態で取得できる。また、本発明によれば、多量体タンパク質あるいはジスルフィド結合を備えるタンパク質であっても、有効な立体構造を備えるものを得ることができる。
さらに、前記細胞内には、前記細胞の転写因子及び翻訳因子も同時に発現される。すなわち、通常、これらの翻訳因子等とフォールディング補助タンパク質とは前記細胞内において同時に発現され、こうした細胞から同時に分画されることが可能である。したがって、フォールディング補助タンパク質とともに少なくともタンパク質合成のための翻訳因子を含む画分を含有するタンパク質合成媒体を容易に得ることができる。このようなタンパク質合成媒体は優れたフォールディング能力あるいは有効な立体構造を伴うタンパク質の合成能力を有している。
本発明のタンパク質合成媒体によれば、フォールディング補助タンパク質を別途準備してこれを無細胞タンパク質合成系に添加する操作を省略ないし簡略化することができるし、タンパク質合成系内においてフォールディング補助タンパク質を共発現させる必要もない。したがって、本発明のタンパク質合成媒体によれば、フォールディング能力あるいは有効な立体構造を伴うタンパク質の合成能力の高い無細胞タンパク質合成系を容易に構築することができる。また、本発明のタンパク質合成媒体は、標的タンパク質を高効率に合成することに寄与することができ、多数のタンパク質を発現させて同定し、その機能をスクリーニングし、あるいはタンパク質に対する生理活性を有する有用物質をスクリーニングするのに好ましく用いられる。
以下、本発明のタンパク質合成媒体について説明するともに、該タンパク質合成媒体の調製、該タンパク質合成媒体を用いたタンパク質の生産について説明する。
(タンパク質合成媒体及びその調製)
本タンパク質合成媒体は、遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞抽出液の少なくとも一部を含んでいる。使用する細胞は、特に限定しない。例えば、大腸菌、酵母、植物種子細胞、哺乳類網状赤血球細胞などが挙げられる。タンパク質の合成スピードを考慮すれば大腸菌を用いることが好ましく、真核生物のタンパク質の発現を考慮すると酵母が好ましい。
大腸菌としては、プラスミドを保持しないことが好ましく、一般にK−1株由来の大腸菌が用いられる。植物種子細胞における植物としては、好ましくはコムギ、オオムギ、イネ、コーン、ホウレンソウが挙げられ、特に好ましくはコムギが挙げられる。特に好ましくはコムギ種子由来のものが挙げられ、なかでも胚乳を含まない胚芽、特にコムギ胚芽由来のものが好ましい。哺乳動物網状赤血球における哺乳動物としては、好ましくはウサギ、マウス、ラット、モルモットが挙げられる。酵母としては、清酒酵母やワイン酵母などが挙げられ、具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロマイセス・ポンベなどのサッカロマイセス属酵母、ピキア・パストリスなどのピキア属酵母を挙げることができる。より好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエなどのサッカロマイセス属を始めとする酵母である。
フォールディング補助タンパク質とは、タンパク質のフォールディングを支援するタンパク質の全てを包含するものであり、いわゆる分子シャペロン、シャペロンあるいはシャペロニンなどと一般的に称呼されるタンパク質を含んでいる。また、フォールディング補助タンパク質は、ストレス条件下で発現することが知られており、熱ショックタンパク質のグループに含めることができる。したがって、熱ショックタンパク質のグループも本発明におけるフォールディング補助タンパク質に含めるものとする。
フォールディング補助タンパク質としては、Hsp70ファミリーに分類されるタンパク質が挙げられる。かかるタンパク質としては、DnaK、DnaJ、GrpEが挙げられる。Hsp60ファミリーに分類されるタンパク質も挙げられる。かかるタンパク質としては、GroES、GroEL等が挙げられる。また、Hsp90ファミリーに分類されるタンパク質であってもよい。Hsp100ファミリーに分類されるタンパク質であってもよい。さらに、sHspファミリーに分類されるタンパク質であってもよい。
また、フォールディング補助タンパク質は、ジスルフィド結合形成に関連するタンパク質のファミリーに分類されるタンパク質も含んでいる。ここで、「ジスルフィド結合形成に関連する」とは、ジスルフィド結合の形成の他、開裂及び交換に関連することを意味している。例えば、DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、チオレドキシンなどのジスルフィド酸化還元酵素やタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)などのイソメラーゼが挙げられる。PDIとしてはカビ由来であることが好ましく、特開平6−38752号公報に開示されるPDIがより好ましい。チオレドキシンとしては植物や動物など真核生物に由来するものを用いることができる。また、フォールディング補助タンパク質としては、ペプチジル−プロリル−シス/トランス−イソメラーゼ(PPI)などのイソメラーゼ等も挙げられる。
この他、フォールディング補助タンパク質としては、上記したものと同一あるいは類似の機能を有するフォールディング補助タンパク質も用いることができる。
これらの各種のフォールディング補助タンパク質は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。本発明においては、これらのフォールディング補助タンパク質はタンパク質合成媒体内において標的タンパク質と共発現するものでなく、タンパク質合成媒体の原材料となる宿主細胞内において発現させるものであり、これらフォールディング補助タンパク質の生産量が標的タンパク質の生産と競合するものではない。したがって、本発明においては、複数種類のフォールディング補助タンパク質を同時にかつ大量に発現させることが容易である。このため、2種類以上、より好ましくは3種類以上のフォールディング補助タンパク質を組み合わせることが好ましい。
フォールディング補助タンパク質としては、Hsp60ファミリー、Hsp70ファミリーに分類されるタンパク質を好ましく用いることができる。具体的には、DnaK、DnaJ、GrpE、GroEL、GroESが挙げられる。なかでも、GroELおよびGroESを好ましく用いることができる。
転写因子、翻訳因子及びフォールディング補助タンパク質は、遺伝子組換えによりフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞内に存在する。「遺伝子組換えにより」とは、宿主とする細胞に対して外来性のポリヌクレオチドを導入するための各種の方法を用いることを意味している。外来性のポリヌクレオチドは、フォールディング補助タンパク質をコードするDNA、外来性のあるいは内在性のフォールディング補助タンパク質の発現を増強するプロモーターをコードするDNAなど、フォールディング補助タンパク質の発現能力を活性化あるいは付与するのに寄与する外来性のポリヌクレオチドであれば限定されない。
フォールディング補助タンパク質の発現能力を活性化あるいは付与は、通常、フォールディング補助タンパク質をコードするポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを転写制御するプロモーター、ターミネーター、選択マーカーなど宿主となる細胞の種類や発現形態などに応じて各種のポリヌクレオチド因子を備えるポリヌクレオチドコンストラクトを宿主となる細胞に導入することによって行う。導入のためのコンストラクトは、細胞の種類や導入方法に応じて従来公知のベクターなどのコンストラクトを適宜選択して用いることができる。
大腸菌を宿主に用いる場合には、pBR322、pUC12、pUC13、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119由来のものが好ましく用いられる。また、酵母を宿主に用いる場合には、pRS403、pYES2、pSE937等に由来のものが好ましく用いられる。
2種類以上のフォールディング補助タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入する場合、これらのコード領域はかならずしも一つのオペロン(オペロンを許容する細胞においても)として導入される必要はなく。個別のプロモーターによって制御可能に導入することもできる。フォールディング補助タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、強力なプロモーター活性を有するプロモーターの制御下にあることが好ましいが、誘導的プロモーターの制御下にあってもよい。誘導的プロモーターの制御下にある場合には、必要とされるタンパク質合成媒体の内容に応じて、フォールディング補助タンパク質の生産量や種類を制御することができるからである。
例えば、大腸菌を宿主として用いてフォールディング補助タンパク質を発現させるには、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、araBプロモーターなどが挙げられる。また、IPTG誘導性lacオペレーター配列、テトラサイクリンリプレッサーの結合配列、カタボライト誘導性配列などをプロモーター領域近傍に備えさせることもできる。
また、酵母を宿主とする場合、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子プロモーター(PDCプロモーター)、好ましくは、十分に強力なプロモーターであるPDC1プロモーター、アルコール脱水素酵素遺伝子プロモーター(ADHプロモーター)、好ましくは、ADH1プロモーター、また、高浸透圧応答7遺伝子(HOR7遺伝子)、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素2遺伝子(TDH2遺伝子)、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素3(TDH3)遺伝子、ガラストース一リン酸キナーゼ1(GAL1)遺伝子、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)遺伝子、TEF遺伝子、コールドショックタンパク質遺伝子及び熱ショックタンパク質遺伝子のプロモーターが挙げられる。
遺伝子組換えにより所望のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されあるいは付与されたか否かは、通常の選別方法によって確認することができ、それにより確認された細胞を用いることができる。
こうして遺伝子組換えにより作製された細胞においては、細胞内においては、転写因子、翻訳因子及びフォールディング補助タンパク質が生成される。したがって、かかる細胞を培養し、その細胞抽出液からこれらのタンパク質などを含有する画分を分画することにより、本発明のタンパク質合成媒体を得ることができる。培養条件は、細胞の種類に応じた培養条件を採用することができ、例えば、細胞をその最大増殖期近傍まで培養することができる。なお、フォールディング補助タンパク質の発現を制御するプロモーターを活性化するためにIPTGなどの外部因子を培地に加えて培養することができる。
培養細胞からタンパク質合成媒体を取得するには、回収した細胞を公知の方法で破砕し、少なくともフォールディング補助タンパク質を含有する画分を分画する。好ましくは、同時に翻訳因子を含んで分画し、さらに好ましくは転写因子を含んで分画する。翻訳因子や転写因子を同時に含めることで、より好ましいタンパク質合成媒体が得られる。なお、フォールディング補助タンパク質と翻訳因子等は、通常、細胞抽出液から容易に同時に抽出される。ここで、翻訳因子は、合成しようとするタンパク質をコードするRNAを翻訳できる各種因子を含み、転写因子は、合成しようとする標的タンパク質をコードするDNAなどのポリヌクレオチドをmRNAに転写する各種転写因子を含んでいる。フォールディング補助タンパク質の他、本タンパク質合成媒体に含まれ得る因子としては、例えば、DNA依存性RNAポリメラーゼ、tRNA、アミノアシルRNA合成酵素、リボソーム、開始因子、伸長因子、終結因子などが挙げられる。
本発明のタンパク質合成媒体においては、形質転換細胞と非形質転換細胞からの各抽出画分が適宜組み合わされていてもよい。すなわち、転写因子等とフォールディング補助タンパク質とはこれらが共発現された細胞から同時に回収されてもよいが、それぞれ別途に調製されて混合されてもよい。例えば、所定の遺伝子組換えが施された細胞からフォールディング補助タンパク質を含む画分を分画する一方、この画分に対して、フォールディング補助タンパク質の発現能力に関連して遺伝子組換えされていない細胞から翻訳因子や転写因子を含む画分を分画しこれを混合することもできる。
フォールディング補助タンパク質、好ましくは該タンパク質と翻訳因子等を含む画分は、通常、細胞を破砕した後、タンパク質成分およびリボソームを可溶化するための数種類の塩を含有する緩衝液を加えホモジナイズし、遠心分離にて不溶成分を沈殿させ、ゲル濾過等により精製するという方法によって得られるまた、大腸菌からの画分(S30抽出物)の取得は、例えば公知の方法Zubay, G( Annu. Rev. Genet.: vol. 7, p267- 287, 1973; Platt, Coupled transcription- translation in prokaryotic cell-free systems p.179-209(1984); Hames, B. D. and Higgins, S. J., Transcription and Translation: A Practical Approach, IRL Press New York; Kudlicki, Anal Biochem206(2):389-93(1992))に準じて実施できる。
なお、このような細胞抽出液を調製するのに際して、ジスルフィド結合の形成を抑制してタンパク質が凝集するのを防ぐため、2−メルカプトエタノール、システアミン、ジチオスレイトール、グルタチオン、ジチオエリストール、チオグリコレートなどの遊離スルフヒドリル基を含有する還元剤を添加することもできるが、添加しなくてもよい。添加しないでタンパク質合成媒体を調製することによりジスルフィド結合を備えるタンパク質を効率的に合成できる場合もあるからである。これらの還元剤を添加した場合においては、その後、タンパク質合成時には、これらの還元剤を中和または透析により除去する等して不活性化してその作用を低減しあるいは不活性化して、ジスルフィド結合形成による有効な立体構造の形成を促進することができる。
こうして得られたタンパク質合成媒体には、上記還元剤の他、適宜タンパク質合成に必要な追加の成分を加えることができる。かかる追加の成分としてはPDIやチオレドキシンなどのジスルフィド結合形成に関連するフォールディング補助タンパク質を添加してもよい。真核生物由来のフォールディング補助タンパク質は翻訳因子供給源たる細胞内で共発現させずに別途添加しても効果的である。これらの追加の成分は、合成工程においてタンパク質合成媒体に添加されてもよいし、タンパク質合成媒体調整後に添加され合成工程に先だって予め含まれていてもよい。
タンパク質合成媒体は、凍結乾燥して保存されてもよい。凍結乾燥に際しては、凍結乾燥時、解凍時及び保存期間中の転写翻訳因子やフォールディング補助タンパク質の活性を維持するために、多価アルコール、トレハロースやイノシトールなどの多糖類を添加しておくこともできる。又、保存安定性を向上させるために必要な成分が添加されてもよい。
本発明のタンパク質合成媒体は、遺伝子組換えによりフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されあるいは付与された細胞内において、転写因子や翻訳因子とともに発現されたフォールディング補助タンパク質とを含んでいるため、無細胞タンパク質合成に必要な各種因子を一括して備えるものとなっている。したがって、本タンパク質合成媒体によれば、標的タンパク質を可溶化し有効な立体構造を備えさせるためのフォールディング補助タンパク質の組み合わせを探索するという困難さを回避して、容易に機能的なタンパク質を得ることができる。また、フォールディング補助タンパク質の発現は高度に制御可能であって、しかもフォールディング補助タンパク質は標的タンパク質の合成に先立って翻訳因子の供給細胞にて生成されたものであるため、最終的に得られるタンパク質合成媒体中のフォールディング補助タンパク質量を任意に設定することができる。したがって、十分量のフォールディング補助タンパク質を含有するタンパク質合成媒体となっている。また、本発明のタンパク質合成媒体では、熱ショックなどのストレスが細胞に与えられていないため翻訳因子などが不活性化されておらず十分な活性を持っていると推測され、さらに、本発明を拘束するものではないが、本発明のタンパク質合成媒体においては、これらの翻訳因子等と各種フォールディング補助タンパク質とを同時に細胞から分画してくるためにそれぞれが活性の高い状態が保持されていると推測される。
(タンパク質の生産)
このような本発明のタンパク質合成媒体を用いてタンパク質を生産するには、通常の無細胞タンパク質合成系(インビトロ翻訳系あるはインビトロ転写/翻訳系)を構築して合成工程を実施すればよい。これらのタンパク質合成系に必要な成分は、周知であり、例えば、転写あるいは翻訳の鋳型となるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、各種ヌクレオチド、各種アミノ酸、ATPなどエネルギー源、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、酢酸あるいは硫酸の金属塩、ポリエチレングリコール、デキストランなどの高分子化合物、アスコルビン酸などの還元剤が挙げられるが、これらの必要に応じ選択されるものである。合成工程における温度条件は特に限定しないで、用いる合成系に対応した温度条件で行えばよい。
本タンパク質合成媒体によって合成しようとする標的タンパク質は、特に限定するものではなく、公知のタンパク質、公知のアミノ酸配列を組み合わせた融合タンパク質、あるいは人工的なアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。係るタンパク質としては、各種酵素、ホルモン、各種成長因子、ホルモン及び成長因子の受容体、抗体、調節タンパク質が挙げられる。本タンパク質合成媒体によれば、無細胞タンパク質合成系で合成したタンパク質の凝集を抑制しあるいは凝集したタンパク質の凝集状態をほぐしてタンパク質を可溶化することができる。
標的タンパク質としては、多量体タンパク質やジスルフィド結合を備えるタンパク質を標的タンパク質とすることが好ましい。これらのタンパク質は、一般に可溶化が困難であるとともに適切な立体構造を形成できない限りタンパク質本来の機能を発現しないからである。本タンパク質合成媒体によれば、有効量のフォールディング補助タンパク質を含有しているため、フォールディング補助タンパク質の一つとしてジスルフィド結合形成に関連するタンパク質のファミリーから選択されるタンパク質を含有する場合には、ジスルフィド結合を備えるタンパク質を容易に合成できる。なお、ジスルフィド結合を備えるタンパク質におけるジスルフィド結合は、本来の機能を発揮するタンパク質が備えている限り、分子内であっても分子間であってもよい。ジスルフィド結合を備えるタンパク質としては、インシュリン、α−キモトリプシン、L鎖とH鎖との間で分子間ジスルフィド結合が形成される抗体、ヘモグロビン、ヘモシアニン、マンガンペルオキシダーゼ、チトクロームCペルオキシダーゼ,リグニンペルオキシダーゼ等のペルオキシダーゼなどの金属含有タンパク質や、NOxリダクターゼ等の還元酵素、トリプシン、セルラーゼ等が挙げられる。
標的タンパク質の合成の鋳型となるポリヌクレオチドは、RNAであってもDNAであってもよく、合成系の種類等により適宜選択される。これらの鋳型は、PCR産物など線状であってもよいし、プラスミドベクターなど環状であってもよい。また、タンパク質のコード領域には、プロモーター、ターミネーターなど転写および/または翻訳のための適当な制御因子を、鋳型ポリヌクレオチドの種類に応じて連結するようにすればよい。
本方法によれば、タンパク質の合成と可溶化などのコンフォメーション制御が効率的に進行して、有効な立体構造を有するタンパク質を速やかに合成できる。これは、本発明のタンパク質合成媒体を用いることによるものと推測されるが、さらに、合成工程において、フォールディング補助タンパク質が合成系において標的タンパク質と共発現されないため、標的タンパク質の合成がフォールディング補助タンパク質の合成と競合しないことにも起因すると推測される。
本方法の合成工程においては、合成系にPDIおよび/またはチオレドキシンを含んでいることが好ましい。これらのジスルフィド結合形成関連フォールディング補助タンパク質を含有することにより、合成される標的タンパク質において適切なジスルフィド結合を形成しあるいは再形成して有効な立体構造を持ったタンパク質を効率よく生産することができる。これらのフォールディング補助タンパク質は、翻訳因子供給細胞において共発現されていてもよいが、ジスルフィド結合を備えるタンパク質を合成する場合に添加することができる。特に、こうしたジスルフィド結合形成関連フォールディング補助タンパク質が本発明のタンパク質合成媒体に含有されていることにより、従来、大腸菌など細菌由来抽出液では困難とされていたジスルフィド結合を備えるタンパク質を容易に生産することができるようになっている。しかも、大腸菌を用いることで、高効率でジスルフィド結合を備えるタンパク質を生産できる。
本方法におけるタンパク質合成工程の時間は、温度等にもよるが、翻訳因子供給細胞として大腸菌を用いた場合には、1時間から24時間以内で合成が可能であるが、本合成工程においては、タンパク質の合成と、凝集抑制ならびに可溶化によるコンフォメーション制御が効率的に進行して、有効な立体構造を有するタンパク質を速やかに合成できるため、発現確認、機能確認等に必要量のタンパク質(通常は、数十〜数百μg/ml程度である)であれば、3時間以内に合成することができ、さらには1時間以内での合成も可能である。なお、こうした合成工程は、バッチ式、連続式、半連続式など各種の形態で実施される。
なお、本方法は、タンパク質の発現方法、タンパク質のスクリーニング方法、翻訳産物のスクリーニング方法、転写あるいは翻訳に対して影響を与える化学物資のスクリーニング方法、遺伝子産物の確認方法、遺伝子発現の制御方法、融合タンパク質の発現方法におけるタンパク質の合成方法にそのまま適用することができる。本方法によれば、有効な立体構造を備えるタンパク質を合成できるので、実効性の高いスクリーニング等が可能であるとともに、大量でかつ高速のスクリーニング等が可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、タンパク質合成媒体、該媒体の生産方法、該媒体を用いたタンパク質の生産方法のほか、該媒体を生産するための細胞、該媒体を含む無細胞タンパク質合成系キットも提供される。さらに、該媒体を用いてタンパク質を合成する工程を備える、各種のスクリーニング方法や研究方法が提供されることになる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に述べる遺伝子組換え操作はMolecular Cloning: A Laboratory Manual (T. Maniatis, et al., Cold Spring Harbor Laboratory) に従い行った。
(フォールディング補助タンパク質が共発現された細胞抽出液からのタンパク質合成媒体の調製及び無細胞タンパク質合成)
フォールディング補助タンパク質として、大腸菌由来のDnaK/DnaJオペロン、GrpE、GroEL/ESオペロンの各遺伝子を用いた。これら3種遺伝子をそれぞれaraBプロモーターの下流に連結したうえ、この3種類の断片を大腸菌のプラスミドベクターであるpBAD−TOPO(インビトロジェン株式会社製)に組み込んで、フォールディング補助タンパク質発現用プラスミドを構築した。
このプラスミドベクターを用いて常法により大腸菌A19株を形質転換し、選択された大腸菌を、アラビノースを添加したうえ常法の培養条件下において培養し、対数増殖期に到達後菌体を回収した。回収した菌体を破砕後、S30画分を還元剤であるDTTを添加することなく調製し、これをフォールディング補助タンパク質、転写因子及び翻訳因子を含有する画分とし、タンパク質合成媒体とした。なお、S30画分の調製は、Zubay, G( Annu. Rev. Genet.: vol. 7, p267- 287, 1973)及びJiang, X et al( FEBS Lett: vol. 154, p290- 294, 2002)に準じて行った。
無細胞タンパク質合成の鋳型として、5〜100μg/mlのStreptomyces由来のβ−グルコシダーゼ(以下、単にBGLという。)遺伝子にT7プロモーターとT7ターミネーターを付加したDNAのPCR産物を用いた。先に調製したタンパク質合成媒体に対して、56.4mMトリス酢酸緩衝液(pH7.4)、1.2mMATP、1mM GTP、1mM CTP、1mMUTP、40mMクレアチンフォスフェート、0.7mM 20アミノ酸ミックス、4.1%(w/w)ポリエチレングリコール6000、35μg/mlフォリン酸、0.2mg/ml大腸菌tRNA、36mM酢酸アンモニウム、0.15mg/mlクレアチンキナーゼ、10mM酢酸マグネシウム、100mM酢酸カリウム、10μg/mlリファンピシリン、7.7μg/mlT7RNAポリメラーゼ、10〜100μg/mlのカビPDI及び1mM GSH(還元型グルタチオン)/0.1mMGSSG(酸化型グルタチオン)を加え、26℃で3時間、インビトロでの転写および翻訳反応を行った。なお、コントロールとして、フォールディング補助タンパク質発現用プラスミドベクターを導入してない大腸菌A19株を、アラビノースを添加しない以外は上記と同様に培養し調製した画分をタンパク質合成媒体として用いて無細胞タンパク質合成を行った。なお、カビPDIは、特開平6−38752号公報記載のフミコーラ属に属する微生物の培養物から得られた高耐熱性PDIを用いた。
得られた合成反応産物各15μLを、発色基質である2mMpNPG(p−ニトリル−β−D−グルコピラノシド)を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)にそれぞれ添加し、分解されて生成するp−ニトロフェニルの吸光度(405nm)の増加を測定し、これをBGL活性とした。この結果を図1に示す。
図1に示すように、本実施例のタンパク質合成媒体を用いた場合には、コントロールの合成媒体に比較して約11倍のBGL活性が認められた。BGLはジスルフィド結合を有しかつ2量体を形成するタンパク質であることから、本実施例のタンパク質合成媒体によってBGLは正しくフォールディングされるとともに、PDI添加によって適切なジスルフィド結合が形成されて、有効な立体構造を備えるタンパク質として合成されたと考えられた。
(フォールディング補助タンパク質が別途添加されたタンパク質合成媒体における効果)
実施例1で調製したコントロールのタンパク質合成媒体に対して、別途精製品として取得した1μMDnaK、0.4μM DnaJ、0.4μM GrpE、1.25μM GroEL及び1.25μM GroELを各種態様で添加して実施例1と同様にしてタンパク質合成反応を行った。合成産物におけるBGL活性を測定した。結果を図2に示す。なお、図2においては、各種フォールディング補助タンパク質の導入の有無がそれぞれ+及び−で示されている。
図2に示すように、DnaK、DnaJ及びGrpEを添加しても、BGL活性はそれほど増加しなかったにもかかわらず、GroEL及びGroESのみを添加することでコントロールに比して約5倍程度の活性増加が認められた。また、全てのフォールディング補助タンパク質を添加した場合には、GroEL及びGroESを添加した場合よりも若干高いBGL活性が認められた。以上のことから、BGLのフォールディングを主として支援するのはGroEL及びGroESであることがわかった。
(ヒートショックによってフォールディング補助タンパク質の発現を誘導して得られたタンパク質合成媒体との比較)
実施例1においてコントロールとして用いた大腸菌A19株を用いアラビノースを添加しない以外は同じ培養条件で培養して対数増殖期に到達後、42℃、30分間のヒートショックを与えた、その後菌体を回収し同様の方法によりタンパク質合成媒体を調製し、調製した画分をタンパク質合成媒体として用いて無細胞タンパク質合成を行い、BGL活性を測定した。結果を図3に示す。なお図3には、実施例1とコントロールとのBGL活性とを併せて示す。
図3に示すように、ヒートショックによりフォールディング補助タンパク質を誘導したタンパク質合成媒体を用いたタンパク質合成系では、実施例1のコントロールに対して約2倍程度のBGL活性が認められるにとどまり、実施例1のタンパク質合成媒体と比較して6分の1以下であった。
さらに、実施例1、コントロール、及びヒートショックに基づく各タンパク質合成媒体に対して、5μMGroEL及び5μM GroESを添加する以外は実施例1と同様にして無細胞タンパク質合成を行い、BGL活性を測定した結果を併せて図3に示す。なお、図3においては、GroEL及びGroES添加したタンパク質合成媒体はいずれも「+GroE」として示されている。
図3に示すように、BGLのフォールディングを効果的に支援すると考えられたGroEL及びGroESを高濃度(5μM)で添加すると、実施例1のタンパク質合成媒体では、BGL活性が増大しなかったが、コントロール及びヒートショックによるタンパク質合成媒体ではBGL活性は増大した。これらのことから、実施例1のタンパク質合成媒体によれば、十分量のGroEL及びGroESなどのフォールディング補助タンパク質が存在し、これらが転写因子及び翻訳因子と協働することによって、可溶化及び正しい立体構造形成が促進されたと考えられた。さらに、適切なジスルフィド結合が可能にフォールディングされ、この結果、PDIにより適切なジスルフィド結合を備えるタンパク質が合成されたと考えられた。
実施例1におけるBGL活性の測定結果を示すグラフであり、本発明のタンパク質合成媒体のフォールディング能力を示す図。 実施例2におけるBGL活性の測定結果を示すグラフであり、各フォールディング補助タンパク質の添加がフォールディング能力に及ぼす影響を示す図。 実施例3におけるBGL活性の測定結果を示すグラフであり、コントロール,ヒートショック(42℃、30分)及び本発明による各タンパク質合成媒体のフォールディング能力を示す図。

Claims (16)

  1. 無細胞タンパク質合成系のための媒体であって、
    遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞内の前記フォールディング補助タンパク質を含む画分を含有する、媒体。
  2. 前記フォールディング補助タンパク質は、Hsp70ファミリー、Hsp60ファミリー及びジスルフィド結合形成に関連するタンパク質ファミリーから選択される請求項1に記載の媒体。
  3. 前記フォールディング補助タンパク質は、DnaK、DnaJ、GrpE、GroES及びGroELから選択される、請求項1または2に記載の媒体。
  4. 前記画分には前記細胞内の翻訳因子を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の媒体。
  5. 合成しようとする標的タンパク質は多量体タンパク質あるいはジスルフィド結合を備えているタンパク質である、請求項1〜4のいずれかに記載の媒体。
  6. 前記細胞は、大腸菌あるいは酵母である、請求項1〜5のいずれかに記載の媒体。
  7. 無細胞タンパク質合成系のための媒体であって、
    遺伝子組換えによりフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞の抽出液を含む、媒体。
  8. タンパク質の生産方法であって、
    請求項1〜7のいずれかに記載の無細胞タンパク質合成系のための媒体を用いてタンパク質を合成する工程を備える、方法。
  9. 前記合成工程において、前記媒体はタンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび/またはチオレドキシンを含有している、請求項8に記載の方法。
  10. 前記合成工程を3時間以内で実施する、請求項8または9に記載の方法。
  11. 無細胞タンパク質合成系のための媒体の生産方法であって、
    遺伝子組換えにより1種あるいは2種以上のフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞を培養する工程と、
    培養された前記細胞内の少なくとも翻訳因子と前記フォールディング補助タンパク質とを含む画分を採取する工程と、
    を備える、方法。
  12. 前記細胞は、前記フォールディング補助タンパク質は、Hsp70ファミリー、Hsp60ファミリー及びジスルフィド結合形成に関連するタンパク質ファミリーから選択されるフォールディング補助タンパク質をコードするポリヌクレオチドが前記細胞に導入された形質転換体である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記採取工程を前記画分に還元剤を作用させることなく実施する、請求項11または12に記載の方法。
  14. 無細胞タンパク質合成系キットであって、
    請求項1〜7のいずれかに記載の無細胞タンパク質合成系のための媒体を含む、キット。
  15. 遺伝子組換えによりフォールディング補助タンパク質の発現能力が活性化されたあるいは付与された細胞である、無細胞タンパク質合成系のための媒体を生産するための細胞。
  16. タンパク質のスクリーニング方法であって、
    請求項1〜7のいずれかに記載の無細胞タンパク質合成系のための媒体を用いて標的タンパク質を合成する工程と、
    合成された前記標的タンパク質がスクリーニングしようとする目的に応じた機能を有するか否かを確認する工程と、
    を備える、方法。
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