JPWO2014119600A1 - FlexibleDisplay法 - Google Patents

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Abstract

進化分子工学により有用なタンパク質、ペプチド、ペプチドアナログを選択する際に用いられる改良された方法を提供する。鋳型DNAライブラリーを加えることで、鋳型DNAライブラリーのmRNAへの転写、mRNAとリンカーとの結合、mRNAの翻訳、翻訳産物との結合を介して、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程を反応系中で自動的に行うことを可能にする、転写−リンカー結合−翻訳反応カップリング反応系であって、転写に必要な因子、翻訳に必要な因子、及びリンカーを含む、前記反応系。

Description

本発明は、遺伝子型と表現型の対応付け技術(ディスプレイ法)を利用してmRNAとその翻訳産物との連結体を作製し、機能性のタンパク質、ペプチド、ペプチドアナログを選択する際に用いられる改良された方法に関する。
ファージ提示法(ファージディスプレイ)やmRNA提示法(mRNAディスプレイ)等の進化分子工学的手法を用いることで、様々な機能性のタンパク質やペプチドが創製されている。特に、mRNA提示法(“In vitro virus,” Nemoto N, et al. FEBS Lett. 414, 405-408 (1997)、国際公開WO98/16636;又は “RNA-peptide fusions,” Roberts, R. W. & Szostak, J. W. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94, 12297-12302 (1997)、国際公開WO98/31700)は1012〜13程度の高い多様性をもつペプチドライブラリーを作り出せるため有用な方法であると考えられる。
しかし、mRNA提示法には大きな欠点が存在する。ペプチドライブラリーをつくるためには、いくつもの労力のかかるステップを経なければならないことである。
mRNA提示法において、ペプチドのアミノ酸配列とmRNAの塩基配列の「一対一対応」はリンカーDNAを介した共有結合によって保たれる。このペプチド/リンカーDNA/mRNA複合体を形成させるために、(1)酵素反応や光架橋によってリンカーDNAとmRNAに共有結合を形成させる、そして(2)これを無細胞翻訳系に加えてリンカーDNA末端のピューロマイシンを介してmRNAと翻訳産物を連結させる、ことが必要である。
上述の(1)の操作は、mRNAを翻訳系に添加する前に、チロシルtRNA3’末端部分のアナログであるピューロマイシン(Pu)をリンカーDNAを介してmRNAの3’末端側に連結しておくことを目的とする。このPu-リンカーDNA/mRNA複合体を無細胞翻訳系に導入してmRNAからペプチドを合成すると、ピューロマイシンがリボソームにおけるペプチド転移反応の基質として伸長中のペプチド鎖のC末端を攻撃し、翻訳産物であるペプチド分子がピューロマイシンを介してmRNAと連結する。
リンカーDNAとmRNAとの結合の方法としては、ライゲーション反応、光架橋反応、または2'-O-メチルRNAを用いるハイブリダイゼーションによるものが公知である(非特許文献1−4)。このように、mRNAにリンカーを連結する反応が独立した工程として無細胞翻訳系の外で行われるため、mRNA提示法では、プールのDNAから転写反応を行い、これを精製してリンカーの連結反応を行い、さらにこれを精製して翻訳系に加えるという煩雑な操作が必要である。
したがって、mRNA提示法は一回の選択操作に1〜2日を要する非常に複雑な方法となっている。さらに、実際のペプチドの創製では選択操作を5回〜10回ほど繰り返す必要があり、また有用なペプチドが得られない際は選択条件を変えてすべての操作を繰り返す必要がある。そのためmRNA提示法を用いた有用ペプチドの選択には多くの時間を要し、より迅速な選択法の開発が望まれている。
特許第3683282号広報(国際公開WO98/16636) 特許第3683902号広報 特許第3692542号広報(国際公開WO98/31700)
Nemoto N, et al. FEBS Lett. 414, 405-408 (1997) Roberts, R. W. & Szostak, J. W. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94, 12297-12302 (1997) M Kurz, K Gu, and P. A. Lohse, Nucleic Acids Res. 28 (e83) (2000) I. Tabuchi, S. Soramoto, N. Nemoto et al., FEBS Lett. 508 (3), 309 (2001)
本発明では、迅速かつ簡単に目的のペプチド、タンパク質、ペプチドアナログを選択する方法を提供する。
上述したディスプレイと選択の繰り返し操作を迅速化するためには、各ラウンド中で人が関与する作業工程の数は少ないほどよい。そこで、本発明は、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成を単一のステップで行うことを可能とする新規な反応系を提供する。
本発明の反応系では、無細胞翻訳系中で、転写、mRNAとリンカーの結合、リボソーム上での翻訳、そして翻訳産物とリンカー/mRNAとの複合体形成という一連の反応が自動的に進行することにより、実質的に一工程で翻訳産物のライブラリーが生成する。したがって、鋳型DNAの転写からmRNAに提示された翻訳産物の調製に要する時間が大幅に短縮される。あるいは、翻訳系のみからなる(すなわち、転写に必要な因子を含まない)反応系にmRNAライブラリーとリンカーを加えて、同様の反応を行うことによっても、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を、迅速かつ簡単に一工程で形成可能であるという同等の効果が得られる。
また、この新規な反応系は、先のラウンドから回収し、PCRして得られた2ndラウンド以降のDNAライブラリーを精製することなくそのまま加えて鋳型DNAとして用いて、転写から翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成までの上述の一連の反応を行うこともできる。これにより、有用な翻訳産物の選択操作に要する時間がよりいっそう短縮される。
以下、本発明の要旨を述べる。
特徴的な転写−リンカー結合−翻訳カップリング反応系が、図6−1において図示される。図6−2はリンカーの模式図である。
(1)鋳型DNAライブラリーを加えることで、鋳型DNAライブラリーのmRNAへの転写、mRNAとリンカーとの結合、mRNAの翻訳、翻訳産物との結合を介して、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程を反応系中で自動的に行うことを可能にする、転写−リンカー結合−翻訳反応カップリング反応系であり、本反応系は転写に必要な因子、翻訳に必要な因子、及びリンカーを含む。
(1−2)DNAは転写酵素のプロモータ配列を含み、反応系中に存在する転写に必要な因子により、鋳型DNAライブラリーからmRNAライブラリーが迅速に生成可能となる。転写に必要な因子が、DNAからmRNAへの転写を促進することが好ましい。例えば、転写に必要な因子には、転写酵素が0.1μM以上含まれていてもよい。
(1−3)反応系中に存在する翻訳に必要な因子が、翻訳を促進することが好ましい。例えば、翻訳に必要な因子には、EF-Pが含まれていてもよい。
(1−4)無細胞転写・翻訳系において、転写に必要な因子または翻訳に必要な因子は大腸菌抽出液、小麦胚芽抽出液、ウサギの網状赤血球、昆虫細胞抽出液、ヒト細胞抽出液等に由来することができる。
(1−5)翻訳に必要な因子には、20種類のアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)が含まれていてもよい。
(1−6)DNA配列中に、翻訳効率の低いもしくは翻訳されない空きコドンを導入することで、翻訳系中で、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を安定化することも可能である。空きコドンの場所は、望ましくはリンカーがアニールする配列と重なるか、その上流20塩基以内であることができる。
(1−7)鋳型DNAライブラリーのmRNAへの転写、mRNAとリンカーとの結合、mRNAの翻訳、翻訳産物との結合を介して、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程を1時間以内で完了することが可能である。
(2)mRNAとリンカーは、翻訳系中で結合する。リンカーは、翻訳系中でmRNAと複合体を形成する部分を持ち、これにはDNA、RNAなどの核酸や、核酸アナログなどがあるが、これらの例に限らない。当該部分のリンカーの塩基配列がmRNAの3´末端非翻訳領域の配列とアニーリングし、mRNAとリンカーは、共有結合および/または非共有結合を介して結合する。
(2−2)アニーリングにより、リンカーと各mRNAが共有結合を介さずに結合することが好ましい。
(2−3)mRNAと複合体を形成する部分のリンカー塩基配列の3´側の最初の10塩基とmRNAの3´末端非翻訳領域の配列の相補性が50%以上であることが好ましい。
(2−4)mRNAと複合体を形成する部分のリンカー塩基配列の3´側の最初の13塩基は、図1cに記載されたAn13-タイプの Pu-linkerと同じ塩基配列を有していてもよい。
(2−5)mRNAと複合体を形成する部分のリンカー塩基配列の3´側の最初の21塩基は、図1bに記載されたAn21-タイプの Pu-linkerと同じ塩基配列を有していてもよい。
(3)リンカーは翻訳産物と結合可能な求核剤(Nucleophile)を含み、これには翻訳産物と結合可能なアミノアシルRNA、アミノアシルRNAアナログ、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ピューロマイシン、ピューロマイシンアナログなどがあるが、これらの例に限らない。
(4)mRNAをDNAの代わりに使用する場合は、mRNAとリンカーを上記の方法により結合させて用いることができ、この場合は翻訳系のみからなる反応系も使用できる。
(5)翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成を単一の工程で実施して、翻訳産物のライブラリーを作製する方法。当該工程は転写−リンカー結合−翻訳反応カップリング反応系に鋳型DNAライブラリーを加えることを含み、当該反応系は、(1)〜(4)に記載された、転写に必要な因子、翻訳に必要な因子、及びリンカーを含む反応系である。
(6)上記の方法で作成した翻訳産物のライブラリーから、有用な所望の機能を有する翻訳産物を選択し、選択された翻訳産物に結合しているmRNAまたはDNAを増幅することで、所望の機能を有する翻訳産物をコードする核酸ライブラリーを作製できる。この核酸ライブラリーを鋳型として再び上記反応系に加えて翻訳産物のライブラリーを得て、さらに選択−増幅の工程を実施することを複数回繰り返し、有用な翻訳産物をコードする核酸が濃縮された核酸ライブラリーを得ることができる。
(6−2)上記の方法を、第二ラウンド以降で使用することが好ましい。その場合、先のラウンドからのPCR産物を精製しないでそのまま、鋳型DNAライブラリーとして添加することができる。
(6−3)所望の機能を持つ翻訳産物は、標的に結合する翻訳産物であることができる。
(6−4)上記の選択−増幅操作を3時間以内に完了させることが可能である。
(6−5)上記の選択−増幅操作を1日で2回以上繰り返すことが可能である。
(6−6)上記の選択−増幅操作は機械操作により自動化することも可能である。
(6−7)標的は、精製した標的、膜に挿入した標的、ファージに提示した標的、バキュロウイルスに提示した標的、細胞に提示した標的などがあるが、これに限定しない。
(6−8)翻訳産物はペプチド、タンパク質や、ペプチドアナログとすることもできるが、これに限らない。
(6−9)翻訳産物は複合体形成後に、翻訳後修飾により修飾することもできる。
(6−10)標的物質が、ヒト血清アルブミンである、(6−3)の方法。
(7)前記(6−10)の方法により得られた、実施例4の化合物p1とp2。
本発明では、無細胞翻訳系に鋳型DNAを加えるだけで翻訳産物とmRNAの安定な複合体が形成され、従来のmRNA提示法で1〜2日かかる選択操作が3時間程度で完了する。
また、翻訳反応液中に、非タンパク質性アミノ酸やヒドロキシ酸(両方を合わせて「特殊アミノ酸」と称する)を担持させたtRNAを導入することにより、鋳型である核酸分子の配列情報から翻訳により合成された特殊ペプチドを提示した、特殊ペプチド/リンカー/mRNA複合体を得ることができる。
例えば、本方法を用いてヒト血清由来のアルブミンに対して結合する非天然環状ペプチドの選択を試みたところ、14時間で6回のセレクションを経て、強く結合する複数個の非天然環状ペプチドが選択できた。骨格に非タンパク質性アミノ酸を含む環状ペプチド(非天然環状ペプチド)は、ペプチド分解酵素による分解を受けにくいため、薬剤候補やバイオプローブとして期待されている。
このように、本発明では標的に結合する非天然環状ペプチドを迅速に選択することができるため、薬剤候補やバイオプローブとしての非天然環状ペプチドの創製を加速すると考えられる。また、本方法はタンパク質性アミノ酸からなるペプチドやタンパク質にも使用できるため、機能ペプチドや抗体の迅速な創製も可能になると期待される。
転写および翻訳反応とリンカーの結合とをカップリングさせた反応系(TRAP システム: Transcription-translation coupled with Association of Puromycin-linker)を用いた選択操作を示す。(a) TRAP システム中での翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成、逆転写(RT)、標的(Target)を固定化したビーズに対する選択(Selection)、及びPCRの4工程からなる選択操作の模式図。(b) 実施例で使用されたmRNAランダムプールとPu-リンカー(An21)の複合体。(c) ライゲーションを伴う(Li13) または ライゲーションによらない(An13)13塩基対の二本鎖を介するmRNA/Pu-リンカーの構造。 T7-ペプチドプルダウンアッセイを用いたペプチド/リンカー/mRNA複合体の安定性の検討を示す。(a) T7-ペプチドプルダウンアッセイのスキーム。T7- peptideの鋳型及びランダムプール(NNK) 12の鋳型を翻訳し、逆転写(RT)の後、抗T7抗体を固定化したビーズにより複合体を回収した。(b)ペプチド/リンカー/mRNA複合体の安定性の評価。 TRAP システムにおけるランダムペプチド/リンカー/mRNA複合体の形成効率の分析を示す。(a)ビオチン標識化されたペプチドの合成に使用されたビオチン-L-Phe (BioF) の構造。(b)ビオチンプルダウンアッセイのスキーム。合成されたペプチドの N 末端をBioF-tRNAfMet(CAU)を用いてビオチン標識した。翻訳及び逆転写の後、ビオチン化ペプチド/リンカー/mRNA/cDNA複合体 をストレプトアビジン磁気ビーズにより捕捉した。回収された複合体をリアルタイムPCRで定量した。(c)ランダムペプチド/mRNA 複合体形成の効率。 T7ペプチド鋳型の濃縮についての従来型のmRNA提示法(Li13)とAn21タイプのリンカーを使用する方法 (An21)の比較。 Flexible Display法及びmRNA提示法を用いたHSA結合性環状ペプチドのIn vitro セレクション。(a) 実施例4でペプチドの環状化に使用したN-[3-(2-クロロアセトアタミド)ベンゾイル]-L-フェニルアラニン(ClAB-L-Phe) の構造。(b) 実施例4で使用した環状ペプチドライブラリー。ClAB-L-Phe と Cysを両端に有するランダムなアミノ酸配列(n=8〜12)からなる環状ぺプチドを提示するランダム mRNA/Pu-リンカー複合体。(c) Flexible Display法及びmRNA提示法によるHSA-固定化SA-ビーズを用いた選択の過程。cDNA 複合体の回収は 図3と同様に計算した。(d)選択されたペプチドの配列。 X とC は ClAB-L-Phe と Cysをそれぞれ表わす。(e)選択されたペプチドの評価。 リンカーを含有する無細胞転写・翻訳反応系により進行する反応の模式図。 リンカーの模式図。 TRAPシステム中のmRNA転写の進行。転写産物であるmRNAの各時点での量を、RT real-time PCR により測定した。転写−翻訳カップリング反応液(1 μL) は37℃ で20分間実施された。翻訳反応液中の1 μMのランダム-mRNA鋳型を、標準として用いた。エラーバーは3回の実験から求めた標準偏差 を示す。 p1(上)とp2(下)の各ペプチドについてHSAへの結合曲線をBLI法で求めた。 EF-P存在および非存在下での対応付け分子生成を確認した。
1.転写−リンカー結合−翻訳カップリング反応系
本発明の第一の側面は、リンカーを含有する無細胞転写・翻訳反応系(cell-free transcription-translation coupling system)である。この反応系は、転写・翻訳に必要な因子と、翻訳産物のアクセプターをもつリンカーを含み、反応系に鋳型DNAライブラリーを加えることで、鋳型DNAライブラリーのmRNAへの転写、mRNAとリンカーとの結合、リボソーム上でのmRNAの翻訳、及び翻訳産物との結合を介して、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程を反応系中で自動的に行うことを可能にする。
ここで、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程を反応系中で自動的に行うとは、付加的な作業を何ら要しないことを意味する。つまり、本発明の反応系を使用すれば、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程に必要な作業は鋳型DNAライブラリーを反応系に添加することのみであり、反応系の成分の自力により、転写、リンカーとmRNAからなる複合体の形成、そして翻訳産物とリンカーとmRNAからなる複合体の形成が進行する。このような、本発明の反応系により進行する反応を、図6に模式的に示す。
さらに具体的な説明のために、図1a右「TRAP system」に本発明の第一の側面の一例を図示する。転写のためのT7 RNAポリメラーゼと、翻訳産物のアクセプターがピューロマイシン(Pu)であるリンカーを含む反応系が示されている。しかしながら、これはあくまでも一例であって、本発明は図1aで代表される形態に限定されない。本明細書では、以下、本発明の転写−リンカー結合−翻訳カップリング反応系のことをTRAP システムと称する。TRAP システムの変法として、あらかじめ転写したmRNAを使用すること(リンカー結合−翻訳カップリング反応系)も可能であり、この場合には、転写に必要な因子の添加を省略できる。しかしながら、無細胞翻訳系の語は、転写に必要な因子を含む反応系(転写・翻訳系)を指す場合もある。したがって、無細胞翻訳系と無細胞転写・翻訳系は相互に入れ替え可能な用語として使用される。
図1aは、TRAP システム中での翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成、逆転写(RT)、標的(Target)を固定化したビーズに対する選択(セレクション)、及びPCRの4工程からなる選択操作の模式図である。図1a右の吹き出し中に描かれたTRAP システム内の反応は、転写、Puromycin-DNAリンカーの結合、翻訳、及び翻訳産物(Peptide)とペプチドアクセプターの複合体形成がカップリングした一工程となっている。
TRAP システムでは、任意の無細胞翻訳系を利用することができる。このような系は一般的には、リボソームタンパク質、リボソームRNA、アミノ酸、tRNA、GTP、ATP、翻訳開始および伸長因子、ならびに翻訳に必要なその他の因子を含む。TRAP システムで利用可能な公知の無細胞翻訳系には、大腸菌抽出液、小麦胚芽抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、昆虫細胞抽出液、動物細胞抽出液等が含まれる。無細胞翻訳系は生きた生命体を利用しない試験管内の系であるから、反応液の組成や反応温度などの諸条件を任意に変えることができる。特定の成分を除く、あるいは必要な成分を添加する等の手段により、改変された系が好適に利用される。あるいは、1以上の任意の生物から単離された転写及び/又は翻訳に必要な成分を組み合わせて再構成した翻訳系も利用可能である。また、1以上の任意の生物から単離された成分に、in vitro合成された成分を適宜組み合わせて用いることもできる。そのような単離された成分は、生物源から分離・精製することもできるが、遺伝子工学的手法または化学合成、またはそれらを組み合わせた手法によっても製造可能である。なお、本明細書の説明及び後述の実施例においては、原核生物由来の系を用いて説明しているが、あくまで説明の便宜のためであり、真核生物を転写・翻訳酵素源とする反応系の使用を排除する意図ではない。例えば、TRAP システムでは、植物の種子由来の転写・翻訳系が好適に使用可能である。特に、小麦胚芽抽出液由来の系は公知の高効率の系があり、好ましい。
従来型の無細胞翻訳系とTRAP システムの違いは、後者がリンカーを必須の構成成分として含むことである。
本発明を完成させるにあたり、本発明者らは、TRAP システムと、従来型の無細胞翻訳系で公知のmRNA提示法用のリンカーを使用した場合の、翻訳産物/リンカー/mRNAの安定性及び翻訳産物ライブラリー形成の効率を比較した。
従来型の無細胞翻訳系として、実施例では精製した大腸菌由来の成分を利用する無細胞翻訳系を用いた。これは、大腸菌のリボソームやトランスファーRNA(tRNA)、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)などの翻訳反応にかかわる因子をそれぞれ単離、精製後、任意に混合して再構成した翻訳系である。例えば、次の文献に記載された技術が公知である:H. F. Kung, B. Redfield, B. V. Treadwell, B. Eskin, C. Spears and H. Weissbach (1977) “DNA-directed in vitro synthesis of beta-galactosidase. Studies with purified factors” The Journal of Biological Chemistry Vol. 252, No. 19, 6889-6894 ; M. C. Gonza, C. Cunningham and R. M. Green (1985) “Isolation and point of action of a factor from Escherichia coli required to reconstruct translation” Proceeding of National Academy of Sciences of the United States of America Vol. 82, 1648-1652; M. Y. Pavlov and M. Ehrenberg (1996) “Rate of translation of natural mRNAs in an optimized in Vitro system” Archives of Biochemistry and Biophysics Vol. 328, No. 1, 9-16; Y. Shimizu, A. Inoue, Y. Tomari, T. Suzuki, T. Yokogawa, K. Nishikawa and T. Ueda (2001) “Cell-free translation reconstituted with purified components” Nature Biotechnology Vol. 19, No. 8, 751-755;H. Ohashi, Y. Shimizu, B. W. Ying, and T. Ueda (2007) “Efficient protein selection based on ribosome display system with purified components”Biochemical and Biophysical Research Communications Vol. 352, No. 1, 270-276。
大腸菌由来の成分を利用する無細胞翻訳系の典型的な構成成分には、(i)T7 RNAポリメラーゼ(DNAからの転写も行う場合)、(ii)翻訳因子としての、大腸菌の開始因子(例えば、IF1、IF2、IF3)・伸長因子(例えばEF-Tu、EF-Ts、EF-G)・終結因子及びリボソームリサイクリング因子(例えば、RF1、RF2、RF3、RRF)、(iii)20種類のアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)、メチオニルtRNAホルミル転移酵素(MTF)、(iv)大腸菌70Sリボソーム、(v)大腸菌tRNA(大腸菌から単離)、(vi)各種アミノ酸、NTP、エネルギー再生系(例えばcreatine kinase, myokinase, pyrophosphatase, nucleotide-diphosphatase kinaseのようなエネルギーソース再生のための酵素、その他が含まれる。人工的に合成したアミノアシルtRNAを加えた翻訳系も公知であり、主として非タンパク質性アミノ酸やヒドロキシ酸を翻訳産物に導入するために使用される(A. C. Forster, Z. Tan, M. N. L. Nalam et al., “Programming peptidomimetic syntheses by translating genetic codes designed de novo,” PNAS 2003, vol. 100, no. 11, 6353-6357;T. Kawakami and H. Murakami “Genetically Encoded Libraries of Nonstandard Peptides,” Journal of Nucleic Acids Volume 2012 (2012), Article ID 713510, 15 pages_)。
本発明のTRAP システム(その変法も含む)は、翻訳反応にかかわる因子に加えて、翻訳産物のアクセプターをもつリンカーを含むことを特徴とする。この特徴により、mRNAとリンカーとの結合、リボソーム上でのmRNAの翻訳、及びリンカーを介したmRNAと翻訳産物との結合が、全て無細胞翻訳系内で起こる。したがって、TRAP システム中のリンカー分子は、mRNAとの複合体形成が無細胞翻訳系内で起こるための構造を有する。これに対し、公知のmRNA提示法用のリンカーでは、mRNAとリンカーの結合が翻訳系外での連結反応による。TRAP システムで使用されるリンカーの構造について詳細は後述する。
さらに、TRAP システムでは、反応系の構成成分が公知の無細胞翻訳系から変更され、最適化されている。変更された無細胞翻訳系の例は、アミノ酸、ARS、MTF、終結因子、tRNA等を加えていない翻訳系である。
例えば、実施例にあるTRAP システムは、少なくとも一種の終結因子を含まない。終結因子はmRNA上の終始コドンを認識し、完成したペプチド鎖をリボソームから遊離させるのに必要なタンパク質性因子である。終結因子が存在しないことにより、翻訳を終結ではなく一時停止させることができる。終結因子はペプチド鎖解離因子とも呼ばれ、クラスI およびクラスII と呼ばれる2つのクラスに分類される。クラスI 解離因子は終止コドンを認識してリボソームのペプチド鎖転移反応中心を活性化することで、ペプチド鎖解離反応を進行させると考えられている。大腸菌では、RF1 およびRF2 と命名された2種類のクラスI解離因子が知られており、RF1は終始コドンのうちUAAとUAGを、RF-2はUAAとUGAを認識する。クラスII 解離因子は,クラスI 解離因子によるペプチド鎖解離反応後,リボソーム内のmRNA 上に残されたままのクラスI 解離因子の除去を促進すると考えられている。TRAP システムで利用可能な翻訳系の一例は、クラスI解離因子を欠くものである。大腸菌のリボソームを利用する系の場合、RF1とRF2の両方、またはいずれかのクラスI解離因子を欠くことができる。
翻訳産物ライブラリー形成の効率を高めるため、翻訳に必要な因子が、リボソーム上の翻訳反応を促進することが好ましい。
例えば、翻訳に必要な因子には、さらにEF-Pが含まれていてもよい。EF-Pは、細菌の伸長因子P(elongation factor P)であり、種を超えて高度に保存されたタンパク質である。EF-Pはリボソームに結合して、tRNAおよび解離因子との相互作用を最適化し、翻訳を促進する。EF-Pのリボソーム上での結合部位はPサイトとEサイトの間に位置する。EF-PのN末端ドメインはPサイトに結合したtRNAのアクセプターステムと相互作用し、ぺプチド結合の形成を促進し、リボソームのペプチジル転移酵素の触媒中心でペプチジルtRNAを安定化すると考えられている。EF-Pは修飾されたEF-Pタンパク質であってもよく、修飾により、EF-Pのリボソームへの親和性が向上することが好ましい。EF-Pの修飾は翻訳後修飾の形態(例えばリジン残基上)であることができる。
また、TRAP システムでは、反応系中に存在する翻訳に必要な因子が、翻訳産物への特殊アミノ酸の取込みを促進することが好ましい。
この目的のために、TRAP システムは、限られたアミノ酸だけを与えた系であることができる。例えば、少なくとも一種のタンパク質性アミノ酸を含まない翻訳系では、添加しないタンパク質性アミノ酸のコドンを、特殊アミノ酸でアシル化されたtRNAのアンチコドンに対応させることにより、特殊アミノ酸を含むペプチドをmRNAの遺伝情報に基づき、リボソーム上で翻訳合成できる。あるいは、タンパク質性アミノ酸を含まない系に、予め特殊アミノ酸を結合したアシル化tRNAを加えることにより、タンパク質性アミノ酸を全く含まない特殊ペプチドを翻訳合成することも可能である。また、タンパク質性アミノ酸であるか否かにかかわらず、任意のアミノ酸でアシル化されたtRNAを添加することも可能である。系外で任意のアミノ酸によりアシル化されるtRNAは、翻訳系に存在するARSに対して直交性のオルソゴナルtRNAであることができる。直交性(オルソゴナル)tRNAとは、翻訳系に内在する天然由来のARS(例えば大腸菌由来のARSタンパク質酵素)によって認識されないので、翻訳系内でアミノアシル化されることはないが、リボソーム上のペプチド合成反応では効率よくmRNAのコドンと対合して指定されたアミノ酸を発現させ得るtRNAである。オルソゴナルtRNAとして、例えば、異なる種に由来する天然のサプレッサーtRNA、あるいは、人工的に構築したtRNAが使用される。アシル化されたtRNAは、反応液中にtRNAとARSおよびその基質を加えることで代替も可能である。TRAPシステム中には、20種類のARSが含まれていてもよい。
鋳型DNAからの転写を行う場合、TRAP システムは、鋳型DNAからの転写を行うために必要な因子を含む。転写を行うために必要な因子の一例は、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼのような、適当なDNA依存性RNA合成酵素または転写酵素とその基質である。鋳型DNAライブラリーの各DNAは反応系中の転写酵素に対応したプロモータ配列を含み、mRNAが転写される。転写を行うために必要な因子には、さらに、ヌクレオシド三リン酸(NTP)、二価のマグネシウムイオン、DTTなどの還元剤が含まれる。その他、ポリメラーゼの安定化や活性化を助ける試薬として、スペルミジンなどのポリアミンや、非イオン性界面活性剤であるTriton X-100などを添加してもよい。
上述のように、本発明は、翻訳産物の鋳型であるランダムDNAプールから機能性のタンパク質、ペプチド、ペプチドアナログを選択する際に用いられる改良された方法を提供し、該方法は、TRAP システム、逆転写(RT)、選択(セレクション)、及びPCRの4工程からなるラウンドを繰り返すものである。TRAP システムに鋳型DNAライブラリーを加えることで、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体(ディスプレイライブラリー)が反応系中で自動的に形成されることは既に述べた。さらに、TRAPシステムでは、転写に必要な因子の工夫により、前のラウンドのPCRで増幅されたDNAを精製しないでそのまま、鋳型DNAライブラリーとして添加することを可能とする。これにより、従来型のmRNA提示法で必要とされる鋳型DNAライブラリーの精製が不要となり、鋳型DNAライブラリーからmRNAライブラリーが生成する段階が迅速化される。
したがって、TRAP システム中に存在する転写に必要な因子が、DNAからmRNAへの転写を促進することが好ましい。特に、転写に必要な因子は、鋳型DNAライブラリーからmRNAライブラリーが迅速に生成可能となるような量で存在することが好ましい。例えば、転写に必要な因子には、転写酵素が0.1μM以上含まれていてもよい。さらに転写酵素の濃度を高めることで、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の収量を上げることも可能であり、転写酵素は約0.2μM以上、あるいは、0.3μM以上、あるいは、0.4μM以上、あるいは、0.5μM以上、あるいは、0.6μM以上、あるいは、0.7μM以上、あるいは0.8μM以上、あるいは、0.9μM以上含まれていてもよい。T7 RNAポリメラーゼを使用する場合、例えば0. 05μM〜20μM、好ましくは0.1μM〜20μM、あるいは0.2μM〜10μM、さらに好ましくは、約0.5μM〜約5μM、さらにより好ましくは約0.8〜約1.2μM、特に好ましくは約0.9μM〜約1.1μM、あるいは約1.0μM含むことができる。
ここで、“約”は、数値に関して用いる場合、数値の実験誤差内(たとえば、平均の95%信頼区間内)または数値の10パーセント以内(いずれか大きい方)にあるすべての数値を表わす。
2.翻訳産物−リンカー/mRNA複合体の形成
上述したように、本発明の無細胞翻訳系(TRAP システム)は、リンカーを含有する反応系であり、リンカーとmRNAとの複合体形成が反応系内で起こる。
図1aを参照しながら、TRAP システム中で進行する反応の一例を説明する。まず、鋳型DNAライブラリーがmRNAへと転写される。次に、mRNAは、ハイブリダイゼーションにより、リンカー(図中ではPuromycin-DNAリンカーとして示されている)に捕捉される。mRNAの3´−非翻訳領域(3´-UTR)に、リンカーDNAに相補的なGCリッチ配列が配置されていることで、これらの塩基配列同士のアニーリングを経て、リンカーDNA分子とmRNA分子の間に安定な二本鎖が形成される。リボソームはmRNA鎖に沿って開始コドンからオープンリーディングフレーム(ORF)の終点まで移動し、リンカー/mRNA二本鎖部位の直前で停止(stall)する。次いで、リンカー上のペプチドアクセプター(図中ではピューロマイシン“Pu”)が新生ポリペプチド鎖(具体的には、ペプチジルtRNA中のペプチドとtRNAの結合部)を攻撃することで、ペプチド−リンカー/mRNA複合体が形成される。このようにして形成されたペプチド−リンカー/mRNA複合体は、ペプチド鎖がリボソームから解離した後も安定に維持される。
図1bとcには、リンカー/mRNA複合体の構造が示されている。図1bはTRAP システムで使用可能なリンカーがmRNAランダムプールと複合体形成した様子を示す。リンカーのDNA塩基配列部分がmRNA の3′-UTR にアニーリングして、21塩基対の DNA/RNA 二本鎖を形成する構造が描かれる。この例(An21)では、mRNAには(NNK)12ランダム配列の下流に、システイン残基とスペーサー (Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)に対応する塩基配列及びUAGコドンが配置され、最後のGをふくむ21塩基のGCリッチ配列がPu-リンカーとのアニーリング用配列となっている。NNKコドン中、Nは、A、U、CまたはGのいずれかのリボヌクレオチドであり、Kは、UまたはGのいずれかのリボヌクレオチドである。これに対し、図1c中のAn13は、13塩基対の二本鎖形成によるPu-リンカー/mRNA複合体の構造を示す。図1c中のLi13は、公知のmRNA提示法のリンカーを使用したリンカー/mRNA連結構造の例であり、これは本発明に対する比較例であり、mRNAの3´末端がライゲーションによりPu-リンカーの5´末端と共有結合している。
mRNAのオープンリーディングフレームの終点には終始コドンUAGが配置されている。翻訳終結因子RF1が除外された翻訳系ではUAGコドンが空きコドン(ブランク)となっており、このUAGコドンを配置することにより、翻訳終結の際に、リンカー/mRNA二本鎖部位よりも前でリボソームが停止する作用が強化される。
水素結合で形成された二本鎖部位は、RNAヘリカーゼ(二重鎖開裂酵素)活性を有するリボソームに接すると比較的容易に解離してしまう。
したがって、空きコドンにより、mRNA上でリボソームを停止させることには、次の二つの意義があると考えられる:(1)リンカーとmRNAの結合を安定化して、ペプチド−リンカー/mRNA複合体のmRNAからペプチド−リンカー部分が解離して、別のmRNAと再結合することを妨げて、翻訳産物と鋳型核酸との正しい1対1の対応関係を維持すること;(2)ペプチドアクセプターが新生ポリペプチド鎖を攻撃する際の猶予(delay)を与えることにより、ペプチド−リンカー/mRNA複合体形成の効率を高めること。
空コドンは、RF1を除く以外の方法でも作成可能である。また、翻訳効率が低いマイナーコドンで、空きコドンを代用することもできる。したがって、本発明では、鋳型核酸の配列中に、翻訳効率の低いコドンもしくは翻訳されない空きコドンを導入することができる。翻訳効率の低いコドンまたは空きコドンの場所は、望ましくはリンカーがmRNAとアニールする配列(3´-UTRアニーリング用配列)中であるか、その上流20塩基以内であることができる。図1bのように空きコドンまたは翻訳効率の低いコドンをORFの終点に導入することもできる。
空きコドンは、翻訳されないコドンである。無細胞翻訳系から、アミノ酸又は、アミノアシル合成酵素又は、tRNA、または終結因子のようなタンパク質性因子を除くことにより空きコドンを作製することができる。例えば、特定のタンパク質性アミノ酸及びそのアミノ酸に対応するARSを除くことにより、遺伝暗号表の中でそのアミノ酸が規定されていたコドンを「空(ブランク)」にすることができる。
マイナーコドンは使用頻度(codon usage)が低いコドンであり、生物種によって異なる。そのようなマイナーコドンはhttp://www.kazusa.or.jp/codon/のような公開データベースで調べることができる。本発明では、使用される翻訳系に合う適当なマイナーコドンを選択して使用可能である。大腸菌で発現する遺伝子でコドン使用頻度を調べた研究から、使用頻度が低いコドンが多数明らかにされている。そのようなコドンの例として、AGA/AGG/CGA(Arg)、AUA(Ile)、CUA(Leu)GGA(Gly)、CGG(Arg)、CCC(Pro)コドンが挙げられる(Ikemura, T.,(1981)J. Mol. Biol. 146, 1-21; Dong, H. et al.,(1996)J. Mol. Biol. 260, 649-663)。
しかしながら、空きコドンやマイナーコドンは、ペプチド−リンカー/mRNA複合体の形成に必ずしも必要というわけではない。
リンカーは、一方の端でmRNAの3´末端側と、もう一方の端でペプチドのC末端側と結合することにより、mRNAとその翻訳産物を連結する。このようなリンカーの機能自体は、TRAPシステムであっても、従来型のmRNA提示法で無細胞翻訳系にリンカー/mRNA連結体を加える場合であっても同様である。
本発明では、mRNAとリンカーは、共有結合および/または非共有結合を介して結合する。mRNAは、好ましくはコード領域外の3´末端配列(3´-UTR)で、リンカーとアニーリングし、共有結合を介して、または非共有結合により、リンカーと結合する。そのために、mRNAは所定の3´末端近傍配列(3´-UTRアニーリング用配列と呼ぶ)を持ち、リンカーは、翻訳系中でmRNAと複合体を形成する部分を持つ。mRNAと複合体を形成する部分のリンカーの構造は、核酸塩基を側鎖に持つ構造であり、DNA、RNAなどの核酸や、核酸アナログなどであることができるが、これらの例に限らない。
一つの態様では、リンカーの核酸塩基部分の5´末端側とmRNA分子の3´末端側とが、塩基対形成に基くハイブリダイゼーション(すなわち水素結合)により、リンカーと各mRNAが共有結合を介さずに複合体を形成する。そのために、リンカーの5´末端側とmRNAの3´末端近傍配列は、数塩基から数十塩基にわたって、互いに塩基対形成により結合し得る配列であることが好ましい。塩基対形成により結合し得る配列とは、完全に対合する(すなわち100%相補的である)ものに限られず、機能に支障のない範囲で不対合塩基の存在も許容される。リンカーの塩基配列と、mRNA分子の3´-UTRアニーリング用配列との、相補性が高いほどハイブリダイゼーションの効率が高くなり、安定性も高くなる。一方、例えば、mRNAと複合体を形成する部分のリンカー塩基配列の3´側の最初の10塩基とmRNAの3´UTRの最も上流側(つまり、3´-UTRアニーリング用配列のコード領域に近接する側)の配列の相補性は50%以上であることが好ましいが、より下流側の配列は、対合する塩基が全く存在しなくても構わない。
本明細書では、リンカー/mRNA複合体において、リンカーの塩基配列とmRNA分子の3´-UTRアニーリング用配列がハイブリダイゼーションによる二本鎖を形成した部位を、リンカー/mRNA二本鎖部位と称する。
別の態様では、mRNAとリンカーは、アニーリングの後、共有結合を介して結合する。例えば、光で架橋する反応や、非天然型の架橋形成塩基を入れておくと、反応系中でアニーリングのあとに共有結合を形成することが可能である。そのような架橋形成反応が可能な塩基の構造は公知である。
上述したように、リンカーのもう一方の端は、翻訳産物と結合可能な構造を有する。本明細書においては、従来のmRNA提示法で一般的に使用されるものと同じ用語を用いて、この部分を、便宜上「ペプチドアクセプター(peptidyl acceptor)」と称し、翻訳産物を「ペプチド」あるいは「ペプチド鎖」ということもあるが、実際にリボソーム上で合成される翻訳産物には典型的なペプチド結合によるもの以外の重合体も含まれることに注意されたい。
ペプチドアクセプターとは、リボソームにおけるペプチド転移反応によって伸長中のペプチド(ペプチジルtRNA)C末端を受け取って、ペプチドと共有結合できる構造を持った分子を意味する。このような機能を果たす数多くの分子が公知であり、本発明でも任意のペプチドアクセプターが利用可能である。
ペプチドアクセプターには、例えば、翻訳産物と結合可能なアミノアシルRNA、アミノアシルRNAアナログ、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ピューロマイシン、ピューロマイシンアナログなど求核性をもつ化合物があるが、これらの例に限らない。
典型的なペプチドアクセプターとペプチドC末端との結合の形成はリボソーム上で起こる通常のペプチド転移反応と同様に、P部位のペプチジルtRNAに付いたペプチドのC末端のエステル結合に、A部位に取り込まれたペプチドアクセプターのアミノ基が近接することにより起こる。従って、当該ペプチド鎖C末端との間で形成される共有結合は、典型的にはアミド結合である。公知のmRNA提示法と同様、ペプチドアクセプターの具体例は、ピューロマイシン(Pu)である。アミノ基だけでなく、水酸基やチオール基などの様々な求核性の官能基をもつ化合物も、翻訳産物との共有結合形成に用いることができる。本明細書ではこのようなリンカー端でペプチドアクセプターとして機能する任意の化合物を「求核剤」と総称する。
リンカーの両端以外の部分は、公知のmRNA提示法で使用されるリンカーの構造と同様である。例えば、一本鎖又は二本鎖DNAやRNA等のオリゴヌクレオチド、ポリエチレン等のポリアルキレン、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリスチレン、多糖類等の直鎖状物質又はこれらの組合わせを適宜選択して用いることができる。
本発明で使用可能なリンカーの非限定的な具体例としては、mRNAと複合体を形成する部分が一本鎖DNAであり、3’末端のdCdC-Pu-3´配列との間がポリエチレングリコールで連結されたPu-DNAリンカーが上げられる。例えば、実施例で使用しているリンカーが典型的な例として挙げられる。
本発明においては、目的に合わせて最適化された構成因子からなる無細胞転写・翻訳反応系に、必要な配列を有する鋳型核酸が供される。DNAの配列については、TRAPシステム中で、cDNAがmRNAに転写される配列が必要である。そのような配列には、使用するRNAポリメラーゼに対応したプロモーター配列が含まれる。mRNAの翻訳が開始されるためには、開始コドン上流の適切な配列が必要である。そのような配列には、例えば、大腸菌由来のリボソームを使用する場合、SD配列を含む。
開始コドンは、翻訳の開始を指定するコドンであり、mRNA上で翻訳産物のN末端となる開始アミノ酸をコードする。mRNA上の開始コドンは一般的にはメチオニンのコドンであるAUGが用いられるため、開始tRNAはメチオニンに対応するアンチコドンを有し、開始tRNAはメチオニン(原核細胞ではホルミルメチオニン)を運ぶ。しかしながら、遺伝暗号のリプログラミングを利用することにより、開始tRNAにメチオニン以外の任意のアミノ酸を結合して翻訳を開始させることができる。また、開始tRNAのアンチコドン配列を変化させることにより、AUG以外の配列も開始コドンとして利用可能である。
コード領域内には、ペプチドライブラリーのためのランダムなアミノ酸配列をコードする部分のC末端側に、柔軟性を持たせるためのペプチドからなるスペーサー配列が連結し、その直後に終止コドンまたは空きコドンまたはマイナーコドンが来ることが望ましい。例えば、図1bの例では、システインの後に、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Serと、その直後に空きコドンUAGがコードされる。ここで、スペーサー配列の直後とは、スペーサー配列に接していなければならないという意味ではなく、スペーサー配列の下流にさらに非コード配列またはその他の直鎖構造が含まれていても良い。空きコドンまたはマイナーコドンの場所は、mRNAの3´-UTRアニーリング用配列中であるか、それよりも上流であることができる。
本来、終止コドンとして使用されているUAGコドンを空きコドンにするためには、無細胞翻訳系から対応する解離因子を除く必要がある。例えば、UAG(アンバーコドン)を用いた場合はRF1を、UGA(オパールコドン)を用いた場合はRF2を、UAA(オーカーコドン)を用いた場合はRF1とRF2の両方を除いて反応液を調製する。
また、上述したように、特定のタンパク質性アミノ酸及び/またはそのアミノ酸に対応するARSを除くことにより、センスコドンを空きコドンにすることも可能である。
ランダム配列は、任意の塩基配列からなるコドンの繰り返しで構成される。例えば、ランダム配列を構成するmRNA配列上のトリプレットの例として、NNUコドンまたはNNKコドン{Nは、A、U、CまたはGのいずれかのリボヌクレオチドであり、Kは、UまたはGのいずれかのリボヌクレオチドである}が挙げられる。NNUライブラリーの利点としては、ランダム領域でUAA及びUAG、UGAで規定されるストップコドンが出現しないため、確度の高いライブラリーを構築することができる。コドンは通常の3塩基(トリプレット)コドンだけでなく、4塩基からなるコドンも利用できる。
mRNAの3’末端非翻訳領域(3’-UTR)には、リンカーと塩基対形成により結合し得る配列(3´-UTRアニーリング用配列)が配置される。
3.選択−増幅操作
本発明のTRAPシステムで作成された「翻訳産物−リンカー/mRNA複合体」のライブラリーから、標的に結合する翻訳産物を選択し、これに結合しているmRNAまたはDNAを増幅して、さらにTRAPシステムで翻訳産物ライブラリーを作ることで、有用な翻訳産物を増幅できる。これが、本発明の第二の側面である。
標的に結合する翻訳産物の選択には、進化分子工学で一般的に使用される公知の方法を利用できる。
進化分子工学では、所望の機能や性質を持つタンパク質やペプチドを創製することを目的として、可能性のある遺伝子を大規模に準備し、その中から狙った表現型を有するクローンを選択する。
基本的には、最初にDNAライブラリーを調製し、in vitro転写産物としてRNAライブラリーを得て、in vitro翻訳産物としてペプチドライブラリーを得る。このペプチドライブラリーから、所望の機能や性質を持つものを何らかのスクリーニング系で選択することになる。例えば、特定のタンパク質に結合するペプチド分子を得たい場合は、標的タンパク質を固相化した磁気ビーズとペプチドライブラリーを混合し、磁気ビーズに結合したペプチド分子の混合物を磁石を用いて回収することができる。このとき、各ペプチド分子には、その鋳型であるmRNAがタグのように付加されているので、回収したペプチド−mRNA複合体のライブラリーから逆転写酵素でmRNAをDNAに戻し、PCRで増幅して狙った表現型を有するクローンが多く含まれるバイアスのかかったライブラリーを得た後に、再度同じような選択実験を行う。あるいは、RNAアプタマーを回収してしまう可能性を回避するため、核酸部分を2本鎖にする目的で、選択前に逆転写反応を行うことも可能である。この操作を繰返すことで、世代の経過とともに所望の表現型を有するクローンがライブラリー中で濃縮されていく。
ペプチドアプタマーを同定する場合、まず選択された対応付け分子の核酸部分からPCRにより核酸ライブラリーを調製してその塩基配列を決定する。次に、塩基配列を用いた遺伝暗号にしたがって翻訳することで標的物質に結合するペプチドアプタマーの配列情報を得る。
標的物質と結合する活性種である複合体を、他の複合体から分離するために、標的物質に、固相への結合により回収可能な修飾を施しておくと便利である。例えば、後述の実施例では、標的物質をビオチン修飾しておき、磁気ビーズに固相化されたビオチン結合タンパク質への特異的な結合を利用して回収している。このような特異的な結合としては、ビオチン結合タンパク質(アビジン、ストレプトアビジンなど)/ビオチンの組み合わせの他にも、マルトース結合タンパク質/マルトース、ポリヒスチジンペプチド/金属イオン(ニッケル、コバルトなど)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、抗体/抗原(エピトープ)などが、利用可能であるが、これらに限定されるものでは勿論ない。また、標的物質の固定化の方法として、固相上への非特異的な吸着や、固相上の官能基とのランダムな共有結合形成も利用可能である。
進化分子工学を用いることで、遺伝子ライブラリーとして、A、T、G、Cの4つの塩基がランダムに結合したDNA配列から、天然には存在しないアミノ酸配列を有するペプチドやタンパク質を得ることも可能である。また、翻訳系に非タンパク質性アミノ酸(またはヒドロキシ酸)でアシル化されたtRNAを導入することにより、in vitro翻訳産物として非タンパク質性アミノ酸(またはヒドロキシ酸)が導入された特殊ペプチドの翻訳による合成も可能である。したがって、翻訳産物はタンパク質性アミノ酸からなるペプチド、タンパク質や、特殊アミノ酸を含むペプチドアナログとすることもできるが、これに限らない。本発明により、鋳型依存的に合成され得るあらゆる翻訳産物とmRNA(あるいはcDNA)の複合体のライブラリーから、所望の結合特性を有する翻訳産物が提示された活性種を選択し、対応付けされた遺伝子部分を増幅、再び翻訳するという作業を繰返すことで、有用な機能を有するペプチド、タンパク質、ペプチドアナログの迅速な創製が可能である。
特殊ペプチドのライブラリーから、従来型のmRNA提示法を利用して生理活性を有するペプチドを探索する手法として、菅らはFitシステム(これは遺伝暗号のリプログラミングを利用して特殊ペプチドを翻訳合成する方法である)及びRapidシステムと呼ばれる方法を確立した(Yuki Goto, Takayuki Katoh & Hiroaki Suga, Nature Protocols, 6, 779-790 (2011);Christopher J Hipolito and Hiroaki Suga, Current Opinion in Chemical Biology 2012, 16(1-2):196-203;Atsushi Yamaguchi, Takayuki Katoh & Hiroaki Suga, Drug Delivery System 26-6: 584-592, 2011)。チオエーテル環状ペプチドを含む特殊ペプチドライブラリーへの適用を具体例とする、Rapidシステムの流れは以下のとおりである。(以下、山口 淳、加藤 敬行、菅 裕明「遺伝暗号のリプログラミングを用いた特殊ペプチド創薬(Drug discovery of non-standard peptide with genetic code reprogramming)」Drug Delivery System 26-6: 584-592, 2011 から引用)
「まず、開始コドン(ATG)とシステインコドン(TGT)に挟まれた領域にアミノ酸のランダム配列(NNK配列;1, 2塩基目のNはA, C, G, T全ての塩基,3塩基目のKはG, Tの2種類の塩基を表す)を持つDNAライブラリーを用意し、これを転写することで鋳型となるmRNAライブラリーが得られる。次にmRNAの3´末端にピューロマイシンを付加したリンカーをライゲーションする。FITシステムによってクロロアセチル基で修飾されたアミノ酸で開始コドンをリプログラミングした翻訳系でピューロマイシンリンカー付きのmRNAを鋳型とした翻訳を行う。翻訳合成されたペプチドと鋳型mRNAはピューロマイシンを介し連結され、続いて自発的かつ不可逆的なペプチドの環状化が起こる。以上により,アミノ酸配列情報がコードされたmRNAが特殊ペプチドと連結したmRNA−特殊ペプチド複合体のライブラリーが構築できる。この複合体のmRNA部位を逆転写し、固相担体に固定化された標的タンパク質と混合した後、非特異的に結合した複合体や結合しなかった複合体を洗い流し、標的タンパク質に結合した特殊ペプチド−mRNA−cDNA複合体のみを選別する。ここから回収した複合体のcDNAをPCRにて増幅した後、再度転写してmRNAライブラリーに変換し、ライゲーション、翻訳合成…という操作を繰り返すことで、ライブラリー内で標的タンパク質に結合するペプチドを濃縮することができ、最終的に得られるペプチド複合体のcDNAを回収してその塩基配列を解析することで、標的タンパク質に結合する特定の特殊ペプチドのアミノ酸配列を解析することが可能となる。」
従来型のmRNA提示法を利用するRapidシステムと、本発明の転写−リンカー結合−翻訳カップリング反応系(TRAPシステム)を利用する選択操作の相違は、主に次の2点である:(1)前者はライゲーションでmRNAと結合するリンカーを利用するのに対し、後者はアニーリングでmRNAを捕捉するリンカーを利用する;(2)そのようなリンカーを含む転写−翻訳反応系(TRAPシステム)を利用することにより、cDNAライブラリーを反応系に添加するだけで、自動的に、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成が起こる。
図1aは本発明により実現される選択操作の模式図である。まず、鋳型DNAライブラリー(Template DNA)を作製し、これをTRAP システムに添加すると翻訳産物/リンカー/mRNA複合体のライブラリーが形成される(Transcription → Association → Translation → Conjugation)。その後、逆転写(RT)を行って翻訳産物/リンカー/mRNA-cDNA複合体としてから選択(Selection)を行う。そして得られた複合体から回収されたcDNAを増幅(PCR)して、次回のラウンドの鋳型DNAライブラリーとする。
増幅後のcDNAを含むPCR反応液は、そのまま精製せずに、TRAP システムに加えることができる。したがって、TRAPシステム)を利用する選択操作は、(1)翻訳産物/リンカー/mRNA複合体の形成、(2)逆転写(RT)、(3)選択(Selection)、及び(4)PCRの4工程からなる一連の操作を1ラウンドとして、これを複数回繰り返す。つまり、工程4の後に、すぐに工程1に進むことができる。これに対し、従来型のmRNA提示法を利用する選択操作は、PCR後のcDNAを精製してから転写反応を行い、これを精製してリンカーの連結反応を行い、さらにこれを精製して翻訳系に加えるという追加の工程が必要である。
本発明において、初回のラウンドでは、あらかじめ転写したmRNAを添加するリンカー結合−翻訳カップリング反応系(TRAPシステムの変法)を使用し、第二ラウンド以降では増幅されたDNAを鋳型とする転写−リンカー結合−翻訳カップリング系(TRAPシステム)を用いることもできる。
あるいは、第二ラウンド以降もmRNAを鋳型とする翻訳系(TRAPシステムの変法)を使用することも可能である。この場合、各ラウンドでcDNAからmRNAを別に転写してから、転写反応液を精製しないでそのまま、リンカーを含む翻訳反応系に加える。この方法は、転写されにくいmRNAを使用する場合に有用であると思われる。
実際に有用なペプチドやタンパク質を創製するためには、上述の一連の操作を、典型的には5回以上繰り返す。
本発明では、従来のmRNA提示法で1〜2日かかる選択操作が3時間程度で完了する。すなわち、一連の操作(1ラウンド)を3時間以内で完了させることが可能である。また、一日で2ラウンド行うことが容易である。転写されやすい遺伝子の場合には、1ラウンドを、2.5時間以内に完了させることも可能である。
例えば、後述の実施例では、ヒト血清由来のアルブミンに対して結合する非天然環状ペプチドの選択を試みたところ、14時間で6回のセレクションを経て、強く結合する複数個の非天然環状ペプチドが選択できた。
上記の選択−増幅操作は機械操作により自動化(オートメーション化)することも可能である。
本発明において、翻訳産物は複合体形成後に、翻訳後修飾により修飾することもできる。翻訳後修飾は、遺伝子配列に基づき合成されたタンパク質の化学構造を変化させる反応であり、例としてリン酸化、糖鎖付加、脂質付加、メチル化、アセチル化等が挙げられる。また、ユビキチンやSUMO のようなポリペプチドによる修飾も、翻訳後修飾に含まれる。
4.標的物質
標的物質は、翻訳産物と相互作用することが有用であり得る任意の化合物であることができる。標的物質としては、タンパク質、核酸、糖質、脂質、その他どのような化合物でもよい。
本発明において、好ましい標的の例は、薬剤開発の標的となり得る物質である。
標的は、精製した(部分的な精製でも良い)標的、膜に挿入した標的、ファージに提示した標的、バキュロウイルスに提示した標的、細胞に提示した標的などがあるが、これに限定されない。
具体的な標的の一例として、血清アルブミンが挙げられる。血清アルブミンは、血清中で最も豊富に存在するタンパク質であり、数多くの作用を持つ。例えば、脂肪酸及び薬剤のような多数の疎水性分子に対するキャリヤータンパク質としての作用、または腫瘍細胞のエネルギー源としての作用等が挙げられる(Elena Neumann, Eva Frei, Dorothee Funk et al., Expert Opin. Drug Deliv. 7 (8), 915 (2010))。さらに、アルブミンの分解はFc受容体が媒介するリサイクリング系により阻害され、これにより、その半減期が血清中で延長する(Jan Terje Andersen and Inger Sandlie, Drug Metab. Pharmacokinet. 24 (4), 318 (2009))。したがって、アルブミン結合分子とコンジュゲートした薬剤は効率的に腫瘍細胞に送達され、長時間有効であり得る。このようなコンセプトが薬学研究に適用され、例えば、細菌のタンパク質ドメインや抗体のような多くの天然または人工のアルブミンに結合する生体分子が利用されている(S. C. Makrides, P. A. Nygren, B. Andrews et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 277 (1), 534 (1996);Lucy J. Holt, Amrik Basran, Kate Jones et al., Protein Eng. Des. Sel. 21 (5), 283 (2008))。このような、アルブミン結合性の分子は、薬剤の血中半減期を伸ばすのに有効であると考えられる。
本発明では、後述する実施例において、Flexible Display法により、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する2つの環状ペプチドを取得した(実施例5、図5d、図8)。
p1:XTYNERLFWC
p2:XSQWDPWAIFWC
(X は ClAB-L-Pheを示す)
これらの環状ペプチドも、本発明の範囲に含まれる。
5.本発明で使用される一般的な技術と用語の説明
これまでの説明および後述の実施例の内容に関し、分子生物学的手法の詳細は、例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001; Golemis, Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual, 2nd edition, Cold Spring Laboratory Press, 2005などを参照されたい。
上述の他、本発明の実施のための材料及び方法は、化学及び分子生物学の技術分野で慣用される技術に従って、様々な一般的な教科書や専門的な参考文献に記載されている方法を用いる。専門的な参考文献には、本発明者らのグループによりこれまで公表された多数の論文や特許文献が含まれる。そのような一般的な教科書や専門的な参考文献を本明細書に援用する。
本明細書中で別途定義しない限り、本発明に関して用いる科学用語および技術用語は当業者が一般に理解している意味をもつ。さらに、以下の説明が本発明の態様の記載に用いる用語に適用できる。それらは、本明細書に援用した教科書や参考文献に矛盾する定義が含まれればそれらに代わるものである。
ペプチド、タンパク質、ペプチドアナログ、特殊ペプチド
ペプチドとは、様々なアミノ酸がアミド結合(ペプチド結合)によって連結してできた生体高分子化合物の総称である。一般に、鎖中が50アミノ酸残基以下の比較的短いものをペプチドと呼び、それ以上の長さを持つものはタンパク質あるいはポリペプチドと呼ばれることが多い。30残基以下のものは短鎖ペプチドと呼ばれることもある。本明細書では、短鎖ペプチド、ペプチド、タンパク質、及びポリペプチドの用語を特に区別せず、相互に読み替えることができる語として用いる。
通常(天然)ペプチドは、20種類のタンパク質性アミノ酸で構成される。これに対し、通常ペプチド中には存在しない部分構造を含むペプチドを、特殊ペプチド(異常ペプチド:nonstandard peptide)または非天然ペプチド(unnatural peptide)またはペプチドミメティク(peptidomimetic)またはペプチドアナログ等と呼ぶ。天然に存在する特殊ペプチドの例としては、抗生物質であるバンコマイシンや免疫抑制剤として用いられるシクロスポリンAなどが知られている。本明細書では、20種類のタンパク質性アミノ酸以外のアミノ酸やヒドロキシ酸を含む任意の分子であってリボソームにより翻訳合成されるものを特殊ペプチドまたは非天然ペプチドまたはペプチドアナログと呼ぶ。
タンパク質性アミノ酸
タンパク質性アミノ酸または天然アミノ酸とは、通常の翻訳で使用されるα-アミノカルボン酸(または置換型α-アミノカルボン酸)である、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、及びグルタミン酸(Glu)の20種類のアミノ酸を指す。
特殊アミノ酸、特殊ペプチド
本明細書においてアミノ酸にはタンパク質性アミノ酸と特殊アミノ酸の両方が含まれ、ペプチドには特殊ペプチド(または非天然ペプチドまたはペプチドアナログ)も含まれる。
「特殊アミノ酸」とは、天然の翻訳で使用される20種類のタンパク質性アミノ酸とは構造の異なるアミノ酸全般を指し、ヒドロキシ酸も一部含む。つまり、タンパク質性アミノ酸の側鎖構造の一部が化学的に変更・修飾された非タンパク質性アミノ酸や人工アミノ酸、D体アミノ酸、N-メチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸、β(beta)-アミノ酸、γ(gamma)-アミノ酸、δ(delta)-アミノ酸、アミノ酸骨格上のアミノ基やカルボキシル基が置換された構造を有する誘導体等が全て含まれる。特殊アミノ酸が導入されたペプチド、あるいは上記「特殊ペプチド」には、これらの様々な特殊アミノ酸を構成要素とする重合体が含まれる。特殊ペプチドは、その構成要素の一部または全部が特殊アミノ酸であることができる。したがって、特殊ペプチドは、主鎖骨格として通常のアミド結合とは異なる構造も有し得るものである。例えば、アミノ酸とヒドロキシ酸から構成されるデプシペプチド、ヒドロキシ酸が連続して縮合したポリエステル、N-メチルペプチド、N-末端に様々なアシル基(アセチル基、ピログルタミン酸、脂肪酸など)を有するペプチドも、特殊ペプチドに含まれる。また、特殊ペプチドには環状ペプチドも含まれる。翻訳合成された直鎖状のペプチドを分子内反応によって環状化させる手法が公知である(Goto et al., ACS Chem. Biol., 2008, 3, 120-129、WO2008/117833「環状ペプチド化合物の合成方法」)。例えば、N末にクロロアセチル基を有する特殊アミノ酸を配置し、ペプチド鎖中又はC末にシステインを配置したペプチド配列を翻訳合成して得られる、チオエーテル結合で環化した環状ペプチドはその一例である。これ以外にも、結合形成が可能な官能基の様々な組み合わせに応じて、多様な構造で環化することができる。
翻訳
翻訳とは、一般的には塩基配列からなるmRNAの情報を読み取ってリボソーム上でアミノ酸配列に変換することをいい、実質的にはタンパク質(ペプチド)生合成と同義である。翻訳反応は核酸を鋳型としてペプチドを合成する反応であるため、鋳型となるcDNAまたはmRNAの配列を変えることで様々な配列を持つペプチドを合成できる。翻訳産物は、リボソームにより合成されるペプチド(ペプチド、タンパク質、ペプチドアナログ、特殊ペプチドを含む)である。
無細胞翻訳は試験管内で人工的に翻訳反応を行う技術であり、in vitroタンパク質合成とも称される。無細胞翻訳系(cell-free translation system)は、翻訳合成のための方法及び物(溶液状の混合物またはキット)の両方を含む概念であるが、この語が請求項で使用される場合は翻訳に使用される「物」の発明を意味することとする。転写−リンカー結合−翻訳カップリング反応系とリンカー結合−翻訳カップリング反応系も、同様に物の発明として記載される。
アニーリング、ハイブリダイゼーション
アニーリングとは、一般的には、変性して1本鎖になったDNAが適当な条件下で相補的塩基対形成により二本鎖分子になることである。本明細書では、DNAに限らず、核酸塩基を側鎖に持つ構造の1本鎖が相補的塩基対同士で会合して二本鎖となることをいう。相補的塩基対形成は、ハイブリダイゼーションまたは相補的塩基対合ともいい、相補的な組み合わせの核酸塩基が水素結合により対合することである。ハイブリダイゼーションは1本鎖DNAまたはRNAが相補的塩基対形成によってハイブリッド(雑種二本鎖核酸分子)を形成することをいう。本明細書では、リンカー塩基配列とmRNAの相補的配列部分がアニーリングにより二本鎖を形成する。相補的塩基対合は、塩と温度の許容条件下でのポリヌクレオチド(RNAまたはDNA、または核酸塩基を側鎖に持つ他の直鎖分子)の自然な結合であり、2種の一本鎖分子間での相補性は、「部分的」であってもよく、その場合、核酸配列のうちのいくつかの塩基のみが結合し、相補的塩基対の比率を数値で示すことができる。2種の一本鎖分子間に完全な相補性が存在する場合、その相補性は「完全」(100%)である。相補性の度合いは、ハイブリダイゼーションの効率と強度に有意な影響を及ぼす。2種の核酸分子がハイブリダイズするか否かを決定するためには、当業者に周知の様々な方法を利用することができる。典型的には、相補的塩基対となる核酸の塩基の組合わせは、アデニン(A)とチミン(T)またはウラシル(U)、及び、グアニン(G)とシトシン(C)である。チミン(T)とウラシル(U)は、ポリヌクレオチドのそれぞれの型(DNAあるいはRNA)により、交換可能に使用され得る。さらに、G−Uなどのいわゆる非ワトソン−クリック塩基対も熱力学的に安定な塩基対として存在するので、そのような組合せも相補的という場合がある。
ライブラリー
ライブラリーは、複数の分子(例えば、複数の核酸、翻訳産物、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体、翻訳産物/リンカー/mRNA-cDNA複合体分子)の集団を意味する。本発明におけるライブラリーは、所望の機能や性質を持つペプチド、タンパク質、ペプチドアナログを創製することを目的として、可能性のある遺伝子を大規模に準備し、その中から狙った表現型を有するものを選択するためのものであるから、多数の候補分子を含むライブラリーを用いることが好ましい。ライブラリーの多様性は、例えば1011個、典型的には1012〜1013個、好ましくは1015個の異なる遺伝子配列であることができる。
選択(セレクション)
選択(セレクション)とは、ある分子をライブラリー中の他の分子から実質的に分離することを意味する。進化分子工学では、遺伝子ライブラリーの翻訳産物としてペプチドライブラリー(ペプチドと核酸が対応付けされた分子の集団)を得て、このペプチドライブラリーから、所望の機能や性質を持つものを適切なスクリーニング系で選択する。選択された各ペプチド分子には、その遺伝子である核酸がタグのように付加されている。選択された対応付け分子の核酸部分のPCR増幅により核酸ライブラリーを調製して、狙った表現型を有するクローンが多く含まれるバイアスのかかったライブラリーを得た後に、再度同じような選択実験を行う。この選択−増幅操作を繰返すことで、世代の経過とともに所望の表現型を有する分子がライブラリー中で濃縮(富化:enrich)されていく。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
本実施例では、まず、従来型のmRNA提示法で使用されるライゲーションによる翻訳産物−Pu-リンカー/mRNA複合体と、アニーリングによる翻訳産物−Pu-リンカー/mRNA複合体の安定性を比較した。また、ランダムペプチドを翻訳産物とするライブラリーの形成効率も比較した。次に、モデル翻訳産物としてのT7-タグペプチド (T7-peptide)を、ランダムDNAプールから選択的に濃縮できることを確認した。さらに、実際に機能性ペプチドの選択実験を行い、TRAPシステムを利用するセレクションの有用性を実証した。
実施例1:ペプチド−Pu-リンカー/mRNA複合体の安定性
本実施例の方法では、リンカーとmRNAの結合は非共有結合によるものである。ペプチド−リンカー/mRNA複合体の形成とペプチドアプタマー選択過程の間に、このリンカーを介するペプチドとmRNAの結合が解離して他の無関係なmRNAと入れ替わってしまわないか確認するため、T7-ペプチドプルダウンアッセイを実施した。
このアッセイのスキームを図2aに示す。T7- peptide をコードするmRNAとランダム配列のペプチドをコードするmRNA(これらのmRNAは同じPu-リンカーアニーリング配列を3´-UTRに持つ)のPu−リンカー/mRNA複合体を1:10の比率で混合し、この鋳型mRNA混合物を用いた翻訳及び逆転写(RT)の後、T7-peptide−Pu-リンカー/mRNA/cDNA複合体を抗T7抗体固定化ビーズを用いて選択的に回収した。
選択された複合体のcDNAを増幅し、電気泳動を使用して分析した結果を図2bに示す。レーン 1-4 はDNA T7のmRNAから合成されたマーカー、ランダムmRNA、及びT7- mRNAとランダムmRNA の1:1 または 1:10 の混合物を含む。レーン 5-10では、T7- mRNAとランダムmRNA の1:10 の混合物を翻訳液に加えた。UAGコドンをPheに割り当てた (レーン 5-7) または 空とした(レーン 8-10) 翻訳反応液中で反応を実施した。また、次のタイプの mRNA鋳型を反応に用いた: レーン5 と 8, Li13-タイプの mRNA; レーン 6 と 9, An13-タイプのmRNA; レーン 7 と 10, An21-タイプのmRNA。
まず、従来型のmRNA提示法(図1c、Li13)で使用されるライゲーションによるペプチド-Pu-リンカー/mRNA複合体と、ライゲーションによらない13merのアニーリングによるペプチド-Pu-リンカー/mRNA複合体(図1c、An13)の安定性を比較した。結果を図2bのレーン5−7に示す。
この実験では、UAGコドンにPheを指定するように、フレキシザイムによりアミノアシル化されたPhe-tRNACUA を使用している。ライゲーションによるPu-リンカー/mRNA複合体(Li13)を使用したペプチドの選択では、T7-cDNAが主に回収されているが、13merのアニーリングによるペプチド-Pu-リンカー/mRNA複合体(An13)では、かなりの量のランダム-cDNA が混在していた。この実験結果は、Li13の複合体は安定であるが、an13の複合体は不安定であることを示している。そこで、Pu-リンカー DNAとmRNAの間の二本鎖形成をより安定化させることを目指し、塩基対の数を13から21-merに増加したAn21-タイプのPu-リンカー/mRNAを調製した(図1b)。しかしながら、この改良によっても、回収されたcDNAの内のT7-cDNAの割合「T7-cDNA/(T7-cDNA+ランダムcDNA)」は34%から40%に変化しただけであった(図2b、レーン6と7の比較)。この結果は、翻訳反応、RT、又はT7ペプチドプルダウン過程のいずれかの間に、ペプチド-Pu-リンカーの半分以上がmRNAから解離してしまったことを示す。データは示さないが、Pu-リンカー DNA/mRNA二本鎖はRTおよびT7ペプチドプルダウン過程の間では安定であることから、解離は翻訳反応の間に起こっていることが予想された。そこで本発明者らは、翻訳反応を担うリボソームのヘリカーゼ活性が解離を引き起こしていると仮説を立て、以下の実験を行った。
Pu-リンカー DNA/mRNA二本鎖部位よりも前でリボソームを停止させてヘリカーゼ活性の影響を低減することを意図して、mRNA上で当該部位の直前にUAGコドンを配置し、Phe-tRNAAsn-E2 CUAを翻訳反応液(translation mixture)から抜いて、UAGを空白コドンとした(図1b)。
その結果、回収されたcDNAの内のT7-cDNAの割合「T7-cDNA/(T7-cDNA+ランダムcDNA)」は、An13-タイプの複合体では34%から63%に、An21-タイプの複合体では40%から73%に上昇した(図2b、それぞれ、レーン6と9、レーン7と10の比較)。この結果は、T7-ペプチド−Pu-リンカーがT7-mRNAから解離してしまうことの主要な原因が、リボソームのヘリカーゼ活性であることを示唆している。本実験において、Pu-リンカー DNA/mRNA二本鎖の長さを延長すること、及び二本鎖部位の直前に空白コドンを挿入することにより、T7-ペプチド−Pu-リンカー/mRNA複合体が安定化することが分かった。
実施例2:ランダム配列ペプチド−Pu-リンカー/mRNA複合体の形成の効率
ランダムライブラリーからのペプチド選択では、ペプチドとmRNAが連結した複合体の形成効率がライブラリーの多様性を決定する。複合体形成の効率を評価するために、ビオチン化Phe(図3a)が結合した開始tRNAfMet CAUを、Metを除いた翻訳系に加えて、N末端がビオチン標識されたペプチドを合成した(図3b)。これにより、ストレプトアビジンを固定化したビーズ(SA-bead)を用いて、ビオチン化ペプチドを提示するmRNAのみを選択的に回収できる。
回収された複合体を定量した結果を図3cに示す。cDNA複合体の回収は、回収されたcDNAの量を反応液中でmRNA/Pu-リンカー(1 μM)量の理論値で割ることにより計算した。エラーバーは3回の実験から計算された標準偏差を示す。UAGコドンをPheに割り当てた(第1、3列)または空とした(第2、4-6 列)翻訳液中で反応を実施した。次のタイプの鋳型を反応に用いた:1-2列目はLi13-タイプのmRNA; 3-4列目はAn21-タイプのmRNA; 5列目はAn21-タイプの DNA; 6列目は37°Cでのインキュベーション無しでAn21-タイプのDNA 鋳型。
従来のmRNA提示法のPu-リンカーと、アニーリングでmRNAを補足するPu-リンカーによる、ランダム配列ペプチド−Pu-リンカー/mRNA複合体の形成の効率を比較するため、Li13タイプまたはAn21タイプのPu-リンカー/mRNA複合体を鋳型として翻訳系に加えた。リアルタイムPCRで、ビオチンプルダウンアッセイにより回収されたcDNAを定量した。Li13タイプのmRNAでは、UAGコドンがPheに割り当てられた反応系、もしくは空きコドンの反応系において、その回収率は7%で変わらなかった(図3c、1列目と2列目)。しかし、An21タイプのmRNAでは、UAGコドンがPheに割り当てられた反応系で4%であり、空きコドンの反応系では11%であった(図3c、3列目と4列目)。これは、UAGコドンがPheに割り当てられた反応系では、ピューロマイシンが新生ペプチドを攻撃する前に、リボソームがAn21タイプのPu-リンカー/mRNA複合体中のPu-リンカーDNA/mRNA二本鎖を解離させていることを示す。さらに、二本鎖部位の直前に空きコドンを配置することで、リボソームを空きコドンで停止させ、リボソームによるPu-リンカー/mRNA複合体中のPu-リンカーDNA/mRNA二本鎖の解離を抑制していると考えられる。Li13タイプのmRNAの回収率がAn21タイプのmRNAよりも悪いのは(図3c、2列目と4列目)、適切にライゲーションしたLi13タイプのPu-リンカー/mRNAの量が少ないためと考えられる。
次に、鋳型としてmRNAの代わりにDNAを用いてAn21タイプのPu-リンカー/mRNA複合体形成の効率を評価した。
セレクションのスピードを加速するには、各ラウンドで、増幅された鋳型DNAを精製する必要がないことが望ましい。そこで、転写カップル型の翻訳反応液の組成を最適化するための検討を行った。逆転写及び増幅されたDNAを含むPCR混合物を精製することなくそのまま転写・翻訳反応液に加えて、得られたmRNAをRTリアルタイムPCRにより定量した。転写・翻訳反応液は、solAとsolCを混合(後述の表2と3を参照)することにより調製された。RT-PCR反応後のランダム-DNAを含有するクルードな溶液5%(v/v)を加えて、37℃で20分間、転写・翻訳反応(1μL)を行った。各時点のmRNAの量を図7に示す。1μMのT7 RNA ポリメラーゼを含有する反応液中で、5-10分間のインキュベーション後に、十分な量のmRNA (<1 pmol/μL) の生成が確認された。
この反応液にAn21タイプのランダムDNAを鋳型として加えて、ビオチンプルダウンアッセイを行った。その結果、mRNAを用いた場合に比べて回収率は約半分になったが、この回収率は従来のmRNA提示法と同程度である(図3c、2、4、5列目)。このことは、転写−リンカー結合−翻訳カップリング反応系であるTRAP システムが実用に堪える提示効率を持つことを示している。これらの結果より、第一ラウンドのセレクションではAn21タイプのランダムmRNAを用いてライブラリーの多様性を確保し、その後のラウンドでは増幅されたDNAを鋳型とすることでセレクションのスピードを加速することにした。 このように、アニーリングで捕捉するリンカーを使用し、第二ラウンド以降では増幅されたDNAを鋳型とする転写-翻訳カップリング系(TRAPシステム)を用いるセレクションをFlexible Display法と呼ぶことにした。
実施例3:T7-ペプチド−Pu-リンカー/mRNA複合体の選択的濃縮
An21タイプのリンカーを使用する系と従来のmRNA提示法(Li13タイプのリンカー)で、上述のT7ペプチドプルダウンアッセイを行って、T7-DNAの濃縮効率を比較した。
T7-mRNAとランダムmRNAのPu-リンカー/mRNA複合体を1:3000の比率で混合し、翻訳反応液に加えた。プルダウンアッセイ後、RT-PCR産物を分析した。
結果を図4に示す。プルダウンの後のサンプルのゲル上のバンド強度からT7-ペプチド鋳型の濃縮効率を計算した。レーン1-3は T7-mRNA、ランダムmRNA、及びT7-mRNAとランダムmRNAの1:3000 混合物から合成されたDNA マーカーを含む。UAGコドンをPheに割り当てた(レーン4と5)または空とした(レーン6-9)翻訳系中で、T7-mRNAとランダムmRNA(またはDNA)を1:3000の比率で混合した。次のタイプの鋳型を反応に用いた:レーン 4-5はLi13-タイプのmRNA;レーン6-7はAn21-タイプのmRNA;レーン8-9はAn21-タイプのDNA。
従来のmRNA提示法では、T7-mRNAは3700倍(図4、レーン4と5)に、An21タイプのリンカーを使用する系では、4900倍に(図4、レーン6と7)濃縮された。この結果から、mRNA鋳型を用いて、アニーリングで捕捉するリンカーを加えた翻訳系は特定のペプチドのDNA(T7-DNA)を従来型のmRNA提示法に匹敵するか、それ以上の高い効率で選択的に濃縮可能であることが明らかとなった。
DNAをT7ペプチド−Pu-リンカー/mRNA複合体の選択的濃縮の鋳型とする実験も行った。T7-DNAとランダム-DNAを、1:3000の割合で転写・翻訳反応系(TRAPシステム)に加えた。T7ペプチドのプルダウンアッセイの結果から、T7-DNAが2000倍に濃縮されたことが分かった(図4、レーン8と9)。したがって、mRNAをアニーリングで捕捉するタイプのリンカーを使用する系で、ポリペプチド−Pu-リンカー/mRNAを、mRNA鋳型からだけでなく、DNA鋳型からも生成することができ、ターゲットが固定化されるビーズを用いたプルダウン実験により特定のポリペプチドを濃縮することもできることが示された。
実施例4:HSA結合ペプチドのin vitro セレクション
Flexible Display法を使用して、環状ペプチドのライブラリーから、ヒト血清由来アルブミン(HSA)に結合するペプチアプタマーの選択をおこなった。
環状ペプチドライブラリーを作製するため、環化のための新たなアミノ酸である、N-[3-(2-クロロアセトアミド)ベンゾイル]-L-フェニルアラニン (略称ClAB-L-Phe)を合成し (図5a)、このアミノ酸にAUG開始コドンを割り当てた。
ClAB-L-PheとCysを両端に有する8−12個のランダムなアミノ酸配列からなるペプチドについてmRNAライブラリーを作製した。コードされるペプチドは、ClAB-L-PheのクロロアセチルとCysのチオール基の間で形成される分子内チオエーテル結合によって自発的に環化する(図5b)。
翻訳系内で、An21タイプのPu-リンカー/mRNA複合体上に提示された環状ペプチドのライブラリーを生成し、SAビーズに固定されたHSAに対するプルダウンアッセイに使用した。RT-PCRで増幅され、回収されたDNA産物を精製することなくTRAPシステムに直接加えて、得られた環状ペプチドライブラリーを次回のセレクションのラウンドに用いた。4回目のセレクションのラウンドでcDNAの回収が顕著に増加したので(図5c)、以後の二回のラウンドではより厳しい条件の洗浄を実施して、アフィニティの高い結合ペプチドを濃縮した。注目すべきことに、選択に要した6回のラウンドは約14時間で行われ、TRAPシステムを利用する提示法(Flexible display法)がペプチドセレクションのスピードを上げたことが実際に証明された。
さらに、同様のHSA結合環状ペプチドの選択を、従来のmRNA提示法を用いて行い(図5c)、mRNA提示法とFlexible display法によりそれぞれ選択された配列を比べた結果、最も多く得られた二つの配列は同じものであった(図5d, p1:XTYNERLFWC 及び p2:XSQWDPWAIFWC, ここで、X は ClAB-L-Pheを示す)。したがって、Flexible display法についてmRNA提示法と同等の性能が証明された。
選択されたペプチド(p1 及び p2) 並びに オリジナルのペプチドの逆転及びシャッフル配列を有する誘導体ペプチドをAn21-タイプの複合体として調製した。得られた複合体について、HSAが固定化されたSAビーズとHSAを付けていないSAビーズを用いてプルダウンを行い、回収されたcDNAの定量を行った結果、p1とp2が実際にHSAに結合することが確認できた(図5e)。さらに、得られた環状ペプチドのアミノ酸配列を組み替える(reverseまたはshuffle)とHSAへの結合活性を失うことから、このペプチドが配列依存的にHSAに結合していることがわかった(図5e)。
次に、これらのペプチドをFmoc固相合成により化学的に合成して、Bio-Layer Interferometry法(BLI法)を用いてHSAへの結合を評価した。結合アッセイを50 mM Hepes-KOH pH 7.5, 300 mM NaCl, 0.05% Tween20 及び 0.001% DMSOの条件で、30℃で実施した。アッセイの各工程は、ペプチドのHSAへの結合反応が500 s、解離反応が 500 sからなる。ペプチド溶液は次の希釈系列(p1:16, 12, 8, 2, 1 nM、及び p2:16, 12, 8, 4 nM)で作成した。
本実験によってもp1とp2はHSAへ結合することが示された(図8)。
実施例5:EF-P存在・非存在下での対応付け分子生成量の確認
以下の配列のDNAからmRNAを常法により調製した。
CTAGTAATACGACTCACTATAGGGTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGNNWNNWNNWNNWNNWNNWNNWNNWATGGGAGGTGGTTCAGGAAGTTAGGACGGGGGGCGGGAGGCGGG
(SEQ ID No.34-(NNW)8-SEQ ID No.35)
NはA/T/G/C、WはA/Tを表す。フレキシザイムにより開始ATGコドンにN-α-ビオチニル-L-フェニルアラニン、伸長ATGコドンにトリプトファンを導入してこのmRNAを翻訳した時のアミノ酸配列はNNWが終止コドンであるTAAまたはTGAでない場合は以下のようになると期待される。
Biotin-Phe-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Trp-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Ser
(Biotin-Phe-(Xaa)8-SEQ ID No.36)
ここでXaaはメチオニン、トリプトファン以外の18種類の天然型アミノ酸に相当する。
このmRNAを1.1等量のPuromycin-linker.an21と混合し、最終濃度が2μMとなるように翻訳溶液に加えて37℃で25分反応させた。この翻訳溶液は、メチオニン以外の19種類の天然型アミノ酸とそれに対応するARS、フレキシザイムで調製したN-α-ビオチニル-L-フェニルアラニン-tRNA(開始CAU)とL-トリプトファン-tRNA(伸長CAU)を含み、3 μMのEF-Pを加えた系と全く加えない系の2つの条件で翻訳した。EDTAを加え、逆転写を常法により行った後、一部をストレプトアビジンビーズ懸濁液と混合して30分撹拌した。上清を除いて3回洗浄し、0.05% Tween20を含むトリス塩酸緩衝液を加えて95℃で5分加熱して上清を取り、リアルタイムPCRでcDNAを定量した。対応付け分子の生成率として計算したcDNAの回収率は、EF-Pを加えない系で14%、加えた系で10%であった。この結果から、通常の反応系を阻害せずに、EF-Pの添加ができることが分かる。
[材料と方法]
略語
CME, シアノメチルエステル(cyanomethyl ester); MgSO4, 硫酸マグネシウム(magnesium sulfate); MgCl2, 塩化マグネシウム(magnesium chloride); DMSO, ジメチルスルホキシド(dimethyl sufoxide); Tris, トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(Tris(hydroxymethyl)aminomethane); Hepes, 2-エタンスルホン酸(2- ethansufonic acid); EDTA, エチレンジアミン四酢酸(ethylene diaminetetraacetic acid); DTT, ジチオスレイトール(dithiothreitol); KOH, 水酸化カリウム
アミノアシル-tRNAの調製
L-Phe-tRNAAsn-E2 CUA及びビオチン-L-Phe-tRNAfMet CAUは以前記載した方法で調製した。N-[3-(2-chloroacetamide)benzoyl]-L-Phe-CME (ClAB-L-Phe-CME)は、L-Pheに3-(2-chloroacetamide)benzoyl chlorideをカップリングし、以前記載した方法と同様の方法でシアノメチルエステル化を行い合成した。ClAB-L-Phe-tRNAfMet CAUは以前記載した方法と同様の方法で調製した。(H. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai et al., Nat. Methods 3 (5), 357 (2006); Y. Goto, T. Katoh, and H. Suga, Nat. Protoc. 6 (6), 779 (2011).)
T7-DNA, ランダム-DNA, T7-mRNA, 及び ランダム-mRNAの調製
鋳型DNAは、表1に示したオリゴヌクレオチドを用いて、伸長反応とPCRにより合成した。
NはA, T, G, Cのいずれかの塩基、MはA, Cのいずれかの塩基を示す。
伸長には以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ランダム-DNA :T7SD8M2.F44と、SD8NNK8CG5S4.R69 〜SD8NNK12CG5S4.R81のいずれか
T7-DNA :T7SD8M2.F44と、SD8T7G5S4.R72
PCRには以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。
T7SD8M2.F44とG5S-4an13.R36 (Li13, An13) 又はG5S-4an21.R41 (An21)
mRNAは鋳型DNAからT7 RNAポリメラーセを用いて合成した。HSA結合ペプチドの選択には、イソプロパノール沈殿で精製したmRNAを使用し、その他の実験には電気泳動で精製したmRNAを用いた。
従来型の無細胞翻訳系とTRAP システム
クレアチンキナーゼ(creatine kinase)、クレアチンリン酸(creatine phosphate)及び 大腸菌tRNA類は Roche Diagnostics (Tokyo, Japan)から購入した。ミオキナーゼ(myokinase)はSigma-Aldrich Japan (Tokyo, Japan)から購入した。翻訳のための化学物質、タンパク質類、及びリボソームは以前報告された論文と同様の方法で調製した(K. Josephson, M. C. T. Hartman, and J. W. Szostak, J. Am. Chem. Soc. 127 (33), 11727 (2005); Y. Shimizu, A. Inoue, Y. Tomari et al., Nat. Biotechnol. 19 (8), 751 (2001); Hiroyuki Ohashi, Yoshihiro Shimizu, Bei-Wen Ying et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 352 (1), 270 (2007). Patrick C. Reid, Yuki Goto, Takayuki Katoh et al., Methods Mol. Biol. 805, 335 (2012).)。
タンパク質性因子やリボソームのストック溶液 B (solB)中の濃度と反応液中の最終濃度を表2に記載する。
tRNAと他の小分子因子のストック溶液A (solA)中の濃度と反応液中の最終濃度を表3に記載する。
100μLのsolBと10μLの90μM T7RNAポリメラーゼを混合してsolCを作成した。
従来型の無細胞翻訳系の反応液は、solA (11%, v/v) と solB (10%, v/v) を他の溶液と混合して調製した。TRAP システム の反応液は、solA (11%, v/v), solC (11%, v/v), Pu-linker (最終濃度1.1 μM)を他の溶液と混合して調製した。
Li13- An13- An21-タイプの Pu-リンカー/mRNA複合体の調製
Li13-タイプの Pu-リンカー/mRNA 複合体は、表1のPuromycin-linker.an13とmRNAを混合し、T4 RNA リガーゼで共有結合を形成させて調製した。An13-タイプ及びAn21-タイプの Pu-linker/mRNA 複合体は、mRNA と 1.1 当量の表1のPuromycin-linker.an13または、Puromycin-linker.an21を混合して調製した。以下に記載したPu-リンカー/mRNA 複合体の濃度はmRNA濃度である。
T7-ペプチド-Pu-リンカー/mRNA/cDNA 複合体の安定性の分析
各0.25 mMの20 種のタンパク質性アミノ酸、0.1 μMのLi13-, An13- または An21-タイプの Pu-リンカー/T7-mRNA 複合体、及び対応する1 μMのPu-リンカー/ランダム-mRNA 複合体を含む翻訳反応液を使用した。別法として、UAG コドンをブランクから Pheに再割り当てするために、25 μMのPhe-tRNAAsn-E2 CUA を反応液に加えた。
翻訳と逆転写反応を以下のように実施した。翻訳反応液(2 μL) を37°C で15分間インキュベートした。50 mM EDTA (pH7.5)を1 μL添加した後、反応液(3 μL)を1 μL の 4×RT ミックスに加えた:200 mM Tris-HCl (pH 8.3), 300 mM KCl, 75 mM MgCl2, 4 mM DTT, 2 mM の各 dNTP (dATP, dTTP, dGTP, dCTP), 10 μM G5S-4.R20, 6 U ReverTraAce (TOYOBO)。 mRNA 鋳型とプライマーの最終濃度は次のとおり: 0.05 μM T7-mRNA, 0.5 μM random-mRNA, 2.5 μM G5S-4.R20。 反応液を42°C で 30 分間インキュベートした。
T7-ペプチドプルダウンを以下のように実施した。逆転写反応液をHBST (50 mM Hepes-KOH pH7.5, 300 mM NaCl, 0.05% Tween20)で10倍希釈後、希釈された反応液 (10 μL)をDynabeads Protein G (VERITAS)上に固定化された抗-T7ペプチド抗体 (MBL)と混合し、15 分間4°Cでインキュベートした。ビーズを10 μL のHBST で3回洗浄し、25 μL の0.5×PCR バッファー [5 mM Tris-HCl pH 8.4, 25 mM KCl, 0.05%(v/v) Triton X-100]中に懸濁した。 溶液を95°C で5 min加熱し、上清1 μLを19 μL の 1×PCR ミックス(1×PCR バッファー, 2 mM MgCl2, 0.25 mの各 dNTP, 0.25 μM T7SDM2.F44, 0.25 μM G5S-4.R20 及び Taq DNA ポリメラーゼ)に加えた。PCR (94°Cで20 s, 60°Cで20 s, 72°Cで30 s)で増幅された DNAを電気泳動で分析した。
ランダムペプチド-Pu-リンカー/mRNA 複合体の形成の定量
各 0.25 mMの19種の(メチオニンを除いた)タンパク質性アミノ酸、 25 μMのビオチン-Phe-tRNAfMet CAU及び Li13-タイプ または An21-タイプのPu-リンカー/ランダム-mRNA 複合体 1 μMを含有する翻訳反応液を使用した。別法として、反応液に25 μM のPhe-tRNAAsn-E2 CUA を加えて、UAG コドンをブランクから Pheに割り当てし直した。各 0.25 mMの19種の(メチオニンを除いた)タンパク質性アミノ酸、 25 μMのビオチン-Phe-tRNAfMet CAU及び 5% (v/v) ランダム-DNA RT-PCR 溶液を含有するTRAP システムの反応液も使用した。
翻訳 (2 μL)及び逆転写 (4 μL) は上述の手順に従って実施した。ビオチン-ランダムペプチド-Pu-リンカー/mRNA/cDNA複合体を、ストレプトアビジン磁気ビーズ (SA-beads)を使用して回収し、回収されたcDNA をreal-time PCRにより定量した。逆転写されたランダム cDNAを含有する反応液を連続的に希釈して、標準として使用した。
従来型のmRNA提示法とFlexible display法の態様を使用した T7-cDNAの選択的な濃縮
各 0.25 mMの20種のタンパク質性アミノ酸、0.3 nMのLi13タイプまたはAn21タイプの Pu-リンカー/T7-mRNA 複合体、及び対応する1 μMのPu-リンカー/ランダム-mRNA複合体を含有する翻訳反応液を使用した。従来型のmRNA提示法 (Li13)のために, 25 μMのPhe-tRNAAsn-E2 CUA を加えて、UAGコドンをブランクからPheに割り当てし直した。各0.25 mMの20種のタンパク質性アミノ酸と、T7-cDNAとランダム-cDNAを1:3000 の比率で混合した5% (v/v) RT-PCR 溶液を含有するTRAPシステムの反応液も使用した。
翻訳(2 μL), 逆転写 (4 μL), T7-ペプチドプルダウンアッセイ及び電気泳動による分析は上述に従って実施した。
TRAP displayを使用したHSA-結合ペプチドのIn vitro セレクション
第1ラウンドでは、各 0.25 mMの19種のタンパク質性アミノ酸(-Met)、10 μMのClAB-L-Phe-tRNAfMet CAU、1 μMのmRNA ライブラリー、及び1.1 μM Pu-リンカー(an21)を含有する翻訳反応液 (50 μL) を37℃で 15分間インキュベートした。12.5 μL の100 mM EDTA (pH7.5)を加えた後、反応混合液をHSA 固定化 SA-ビーズ (1.6 pmol HSA)と、室温で20分間インキュベートした。ビーズを 60 μLのHBSTで3回洗浄し、5 μL の 1×RT ミックス [1 μM G5S-4.R20, 50 mM Tris-HCl pH 8.3, 75 mM KCl, 3 mM MgCl2, 10 mM DTT, 0.5 mM の各 dNTP, 5 U M-MLV (+)(Promega)] 中に懸濁した。42°Cで30分間インキュベーションした後、混合物を100 μLの1×PCR ミックス (1×PCRバッファー, 2 mM MgCl2, 0.25 mMの各dNTP, 0.25 μM T7SDM2.F44, 0.25 μM G5S-4.R41,及び Taq DNA ポリメラーゼ)に添加し、95°Cで5 分間加熱した。1 μL の混合物を回収されたcDNAの定量に使用し、残りをTaq DNA ポリメラーゼの添加後、PCR (94°C で20 s, 55°Cで20 s, 72°Cで30 s)に供した。
第2ラウンド以降では、各0.25 mMの19種の(Metを除く)タンパク質性アミノ酸、25 μMのClAB-L-Phe-tRNAfMet CAU 及び5% (v/v) PCR クルード溶液を含有するTRAP システムの反応混合液 (20 μL)を、37°Cで15 分間インキュベートした。 5 μLの100 mM EDTA (pH7.5)を加えた後、反応混合液を8.5 μL of 4×RT ミックス [200 mM Tris-HCl (pH 8.3), 300 mM KCl, 75 mM MgCl2, 4 mM DTT, 2 mM の各 dNTP, 10 μM G5S-4.R20, 6 U ReverTraAce]に加えて、42°Cで30分間インキュベートした。6 μL の100 mM EDTA (pH7.5)及び4 μLの500 mM Hepesを加えて反応を停止し、溶液を HSAを固定化したSAビーズ (1.1 pmol HSA) と混合し、25°Cで10分間インキュベートとした。60 μLのHBSTでビーズを3回洗浄後、ビーズを回収して、40 μLの1×PCR ミックスと混合し、溶液を95°Cで5分間加熱した。回収されたcDNAをreal-time PCRで定量し、PCRによるcDNA増幅を第一ラウンドと同様の方法で行った。
第3ラウンド以降は、反応液を1/4スケールに減少させた。加えて、ストレプトアビジンビーズを用いたネガティブセレクションをポジティブセレクションの前に3回実施した。第5回目と6回目のラウンドで、200 μLのHBSTによるより厳しい洗浄を37°Cで30分間、二回目の洗浄で実施した。第6回目のラウンドの後、増幅されたcDNAをクローニングして配列決定した。
クローニングされたペプチドとその誘導体のディスプレイ形体中でのHSAへの結合
p1 及び p2 のmRNA をcolony PCR産物 から合成した。p1 及び p2ペプチドの各 mRNAのreverse またはshuffled配列を、以下のように調製した。T7SD8M2.F44 を forwardプライマーとして、SD8No38revG5S4.R69, SD8No38ranG5S4.R69, SD8No41revG5S4.R75 またはSD8No41ranG5S4.R75 を reverseプライマーとして使用してDNA鋳型を調製した。伸長PCR 及び転写を、T7-mRNAの調製に用いた手法と同様の手法で実施した。フェノール/クロロホルム抽出と 2-プロパノール沈殿で mRNAを精製し、超純水に溶解した。
翻訳 (2 μL), 逆転写 (4 μL), 及びクエンチング反応(5.25μL) は上述の方法で行った。
得られた溶液の2μLをHSA固定化 SAビーズ (0.3 pmol HSA) または SA-ビーズと混合した。室温で10分間のインキュベーション後、ビーズを10 μLの HBST で3回洗浄した。第二回目の洗浄で、100 μL of HBSTを用いて37°C で 30分間のストリンジェントな洗浄を実施した。回収されたcDNAをreal-time PCRで定量した。
<210>は配列番号、<223>はその他の情報

<210> 1
<223> T7SD8M2.F44

<210> 2
<223> G5S-4an21.R41

<210> 3
<223> G5S-4an13.R36

<210> 4
<223> G5S-4.R20

<210> 5
<223> Biotin-DNA

<210> 6
<223> Competitor DNA

<210> 7
<223> Puromycin-linker.an13

<210> 8
<223> Puromycin-linker.an21

<210> 9
<223> SD8-NNK

<210> 10
<223> NNK-CG5S4

<210> 11
<223> SD8T7G5S4.R72

<210> 12
<223> SD8No38revG5S4.R69

<210> 13
<223> SD8No38ranG5S4.R69

<210> 14
<223> SD8No41revG5S4.R75

<210> 15
<223> SD8No41ranG5S4.R75

<210> 16
<223> C+GGGGGS spacer

<210> 17
<223> C + spacer pepide

<210> 18
<223> An21 mRNA annealing sequence

<210> 19
<223> spacer and annealing sequence

<210> 20
<223> stop and annealing sequence to An13

<210> 21
<223> p1

<210> 22
<223> p2

<210> 23
<223> p3

<210> 24
<223> p4

<210> 25
<223> p5

<210> 26
<223> p6

<210> 27
<223> p7

<210> 28
<223> p8

<210> 29
<223> p9

<210> 30
<223> Reversed p1

<210> 31
<223> Shuffled p1

<210> 32
<223> Reversed p2

<210> 33
<223> Shuffled p2

<210> 34
<223> 5'-SD-AUG (Ex.5)

<210> 35
<223> AUG-spacer-an21 (Ex.5)

<210> 36
<223> spacer (Ex.5)

Claims (17)

  1. 鋳型DNAライブラリーを加えることで、鋳型DNAライブラリーのmRNAへの転写、mRNAとリンカーとの結合、mRNAの翻訳、翻訳産物との結合を介して、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程を反応系中で自動的に行うことを可能にする、転写−リンカー結合−翻訳反応カップリング反応系であって、転写に必要な因子、翻訳に必要な因子、及びリンカーを含む、前記反応系。
  2. 鋳型DNAライブラリーのmRNAへの転写、mRNAとリンカーとの結合、mRNAの翻訳、翻訳産物との結合を介して、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体を形成させる工程が1時間以内で完了することができる、請求項1の反応系。
  3. 反応系がEF-Pを含む、請求項1または2の反応系。
  4. リンカーは、翻訳系中でmRNAと複合体を形成する部分を持ち、当該部分のリンカーの塩基配列がmRNAの3´末端非翻訳領域の配列とアニーリングし、mRNAとリンカーは、共有結合および/または非共有結合を介して結合する、請求項1〜3のいずれかに記載の反応系。
  5. リンカーと各mRNAが非共有結合により結合する、請求項4の反応系。
  6. mRNAと複合体を形成する部分のリンカー塩基配列の3´側の最初の10塩基とmRNAの3´末端非翻訳領域の配列の相補性が50%以上である、請求項4または5の反応系。
  7. リンカーは翻訳産物と結合可能な求核剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の反応系。
  8. ライブラリー中の各DNAが転写酵素のプロモータ配列を含み、反応系が転写酵素を0.1μM以上含む、請求項1〜7のいずれかに記載の反応系。
  9. 鋳型DNAライブラリーを請求項1〜8のいずれかに記載された反応系に加えることにより、翻訳産物のライブラリーを作製する方法。
  10. 所望の機能を持つ翻訳産物をコードする核酸ライブラリーを作製する方法であって、
    (ア)鋳型核酸ライブラリーを請求項1〜8のいずれかに記載された反応系に加えることにより、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体のライブラリーを作製し、
    (イ)翻訳産物/リンカー/mRNA複合体のライブラリーから、所望の機能を持つ翻訳産物を選択し、
    (ウ)選択された所望の機能を持つ翻訳産物に結合しているmRNAまたはcDNAを増幅して核酸ライブラリーを得ること
    を含む、前記方法。
  11. 所望の機能を持つ翻訳産物は、標的に結合する翻訳産物である、請求項10の方法。
  12. 標的に結合する翻訳産物をコードするDNAを得る方法であって、
    (ア)鋳型DNAライブラリーを請求項1〜8のいずれかに記載された反応系に加えることにより、翻訳産物/リンカー/mRNA複合体のライブラリーを作製し、
    (イ)翻訳産物/リンカー/mRNA複合体のmRNA部分の逆転写を行って翻訳産物/リンカー/mRNA-cDNA複合体のライブラリーを得て、
    (ウ)翻訳産物/リンカー/mRNA-cDNA複合体のライブラリーから、標的に結合する翻訳産物を選択し、
    (エ)選択された翻訳産物に結合しているcDNAを増幅すること、
    を含む、前記方法。
  13. 前記(エ)の工程が、翻訳産物/リンカー/mRNA-cDNA複合体からcDNAを回収し、回収されたcDNAをPCRにより増幅することを含み、
    得られたPCR産物を、精製しないでそのまま鋳型DNAライブラリーとして使用してさらに(ア)〜(エ)の工程が実施される、請求項12の方法。
  14. (ア)〜(エ)の工程が3時間以内で実行できる、請求項12または13に記載の方法。
  15. (ア)〜(エ)の工程を複数回繰り返すことを含む、請求項12または13に記載の方法。
  16. (ア)〜(エ)の工程を1日で2回またはそれ以上の回数繰り返すことのできる、請求項15の方法。
  17. 機械操作により自動化される、請求項10〜16のいずれかに記載の方法。
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