JP2006055004A - 生体触媒を用いたカルボン酸(アンモニウム)の製造方法 - Google Patents

生体触媒を用いたカルボン酸(アンモニウム)の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造するに当たり、実用的な反応時間での高蓄積濃度の達成及びまたは実用的なリアクターサイズでの大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造を実用的なレベルの触媒コストと製品品質で達成できる工業的カルボン酸(アンモニウム)の製造法を提供すること
【解決手段】 ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、アクリル酸アンモニウム最高蓄積濃度が30重量%を越えること。
【選択図】 なし

Description

本発明は,ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてカルボン酸(アンモニウム)を製造する実用的な工業的方法を提供する。
酵素活性を有する生体触媒を利用して目的の化合物を合成する方法は、反応条件が穏和であるため反応プロセスが簡略化できること、あるいは副生成物が少なく高純度の反応生成物を取得できる等の利点があるため、近年、様々な化合物の製造に用いられている。カルボン酸(アンモニウム)の製造においても、ニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)に変換する酵素であるニトリラーゼが見いだされて以来、そのニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてカルボン酸アンモニウムを製造する方法あるいはは得られたカルボン酸アンモニウムを加熱処理することによって、アンモニウム塩をアンモニアとして分別回収し、カルボン酸を製造する方法がいくつか検討されている。
それらの例の中で、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒として微生物菌体及びまたはその処理物をそのまま用いる方法としては、Arthrobacter属等を用いて2−アミノ酸を製造する方法(特許文献1参照)や、Acinetobacter属等を用いてアミノ酸を製造する方法(特許文献2、特許文献4〜7、特許文献12、特許文献24、特許文献32参照)或いはα-置換カルボン酸を製造する方法(特許文献15参照)或いは光学活性カルボン酸を製造する方法(特許文献17参照)或いは不飽和有機酸を製造する方法(特許文献27参照)或いはイブプロフェンを製造する方法(非特許文献10参照)や、Arthrobacter属等を用いてのα-ヒドロキシ酸を製造する方法(特許文献3参照)や、Rhodococcus属等を用いての2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を製造する方法(特許文献8参照)或いはアクリル酸(アンモニウム)を製造する方法(特許文献9〜10、特許文献13〜14、特許文献33〜34、特許文献25、非特許文献2、非特許文献7、非特許文献9参照)或いはニコチン酸を製造する方法(非特許文献14参照)や、Pseudomonas属等を用いてα-ヒドロキシ酸を製造する方法(特許文献16、特許文献18、特許文献21参照)や、Alcaligenes属等を用いて光学活性α-置換カルボン酸を製造する方法(特許文献19〜20、特許文献22参照)或いはモノカルボン酸を製造する方法(特許文献26、特許文献31参照)や、Agrobacterium属等を用いてニコチン酸を製造する方法(特許文献23参照)や、Corynebacterium属等を用いて有機酸を製造する方法(特許文献28〜29参照)や、Comamonas属等を用いて5-シアノ吉草酸を製造する方法(非特許文献5〜6参照)等が開示されている。
しかしながら、前述の従来の技術では必ずしも工業的に満足できるニトリラーゼ初期比活性を有しておらず、リアクターサイズが非常に大きくなる等の問題を抱えており、更なるニトリラーゼ初期比活性の向上が求められていた。更に、工業的にカルボン酸(アンモニウム)を製造する場合、経済的理由から高い生成物蓄積濃度が必要となるが、特に40重量%以上のような高濃度カルボン酸アンモニウムを製造する場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が高いにも拘らず、反応が進行し反応生成物の蓄積濃度が上がるにつれて、生成物阻害及びまたは失活、或いは高生成物蓄積濃度で初めて顕著となる基質阻害及びまたは失活のため、結果的に反応初期から反応終了時に至る時間平均のニトリラーゼ比活性が低くなり、実用的な反応時間での高蓄積濃度の達成及びまたは実用的なリアクターサイズでの大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造ができるレベルではなかった。また、この解決法として大量の生体触媒を用いて短時間に生成物の高蓄積濃度を達成する方法が考えられるが、その場合、乾燥生体触媒重量当たりの生産量(=生体触媒の生産能力)が低いので触媒コストが非常に高く、とても実用的なものとは言えなかった。また、そのように大量の生体触媒を用いると、後の精製工程に多大な負荷をかけ、品質の低下或いは精製コストの上昇を招き、益々工業的には不利なもとなる。
一方、生体触媒として、微生物菌体等から精製したニトリラーゼ酵素含有液を用いる方法についても数多く開示されており、Acinetobacter属等由来のニトリラーゼを用いて酸性糖誘導体を製造する方法(特許文献11参照)或いはイブプロフェンを製造する方法(非特許文献8参照)や、Acidovorax属等由来のニトリラーゼを用いてカルボン酸を製造する方法(特許文献30参照)や、Pseudomonas属等由来のニトリラーゼを用いてエナンチオ選択的にヒドロキシカルボン酸を製造する方法(非特許文献1参照)或いは脂肪族及び芳香族カルボン酸(アンモニウム)を製造する方法(非特許文献3参照)や、Rhodococcus属由来のニトリラーゼを用いてカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法(非特許文献4、非特許文献12参照)や、Alcaligenes属由来のニトリラーゼを用いる方法(非特許文献11参照)や、Fusarium属由来のニトリラーゼを用いる方法(非特許文献13参照)等が知られている。
確かにこれらの中には非常に高い初期反応ニトリラーゼ比活性を有しているものも存在するが、生成物を高濃度にまで蓄積した場合の時間平均の比活性が高いものはなく、また生成物を高濃度にまで蓄積できるものは無かった。
また、本発明者らは既に、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造するに当たり、該生体触媒由来の不純物を低減できる高純度カルボン酸(アンモニウム)の製造法として、製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒重量を1/2000以下にする方法を見出している。(特許文献35参照)しかしながら、実用的な反応時間での高蓄積濃度の達成及びまたは実用的なリアクターサイズでの大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造に関しては不十分であった。
つまり、工業的に充分な生産性を有するために必要な、実用的な反応時間で高蓄積濃度を達成できる及びまたは実用的なリアクターサイズで大量のカルボン酸(アンモニウム)を製造できる、実質的に高いニトリラーゼ比活性を有する生体触媒を用いた工業的なカルボン酸(アンモニウム)の製造方法がないのが実状である。
特再WO02/008439号公報 特再WO01/048234号公報 特開2002−034584号公報 特開2001−299378号公報 特開2001−275692号公報 特開2001−269190号公報 特開2001−258586号公報 特開2001−054380号公報 特開2000−501611号公報 特表2000−501610号公報 特開平11−180971号公報 特開平09−140391号公報 特開平09−028382号公報 特開平08−173152号公報 特開平06−303991号公報 特開平05−192189号公報 特開平05−076390号公報 特開平04−218385号公報 特開平03−224496号公報 特開平04−144697号公報 特開平04−218385号公報 特開平03−277292号公報 特開平03−280892号公報 特開平03−280895号公報 特開平03−251192号公報 特開平01−132392号公報 特開昭61−162191号公報 特開昭61−162191号公報 特開昭61−040795号公報 WO200272856 A2 WO200281659 A1 WO200148234 WO9721827 WO9721805 特願2003−101199号 Journal of American Chemical Society,124,9024-9025(2002) Biotechnology Letters,23(2),95-101(2001) Canadian Journal of Microbiology,45(10),811-815(1999) Biochemical and Biophysical Research Communications,253(3),662-666(1998) D Industrial Chemical Library,8,189-199(1996) Industrial Chemistry Library,8(Root of Organic Development),189-200(1996) FEMS Microbiology Letters,120(3),217-224(1994) Agricultural and Biological Chemistry,55(6),1459-1466 (1991) Agricultural and Biological Chemistry,34(3),322-324(1990) Applied and Environmental Microbiology,56(10),3125-3129(1990) European Journal of Biochemistry,194(3),765-772 (1990) European Journal of Biochemistry, 182(2),349-356(1989) Biotechnology and Applied Biochemistry,11(6),581-601(1989) バイオサイエンスとインダストリー,46(8),3516-3518(1988)
本発明の課題は、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造するに当たり、実用的な反応時間での高蓄積濃度の達成及びまたは実用的なリアクターサイズでの大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造を実用的なレベルの触媒コストと製品品質で達成できる工業的カルボン酸(アンモニウム)の製造法を提供することに有る。
本発明者らはニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸アンモニウムを製造するに当たり、実用的な反応時間で高蓄積濃度を達成でき、また、実用的なリアクターサイズで大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造を実用的なレベルの触媒コストと製品品質で達成できる、工業的カルボン酸(アンモニウム)の製造法について鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに本発明で用いる生体触媒が、以下の3つの条件の内、少なくとも1つの条件を満たせばよいことを発見し本発明を完成するに至った。即ち以下の条件である。
(1)下記(a)と(b)、2つの条件を同時に満たす生体触媒
(a)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が30g- アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
(b)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、アク リル酸アンモニウム最高蓄積濃度が30重量%を越えること。
(2)下記(c)と(d)、2つの条件を同時に満たす生体触媒
(c)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が 30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
(d)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、乾燥 生体触媒重量当たりの最高生産量(=生産能力)が500g-アクリル酸アンモニウム/g- 乾燥生体触媒以上を達成できること。
(3)下記(e)と(f)、2つの条件を同時に満たす生体触媒
(e)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が30g- アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
(f)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、アク リル酸アンモニウム蓄積濃度40重量%になるまでの時間平均のニトリラーゼ比活性 が25g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
また、更に本発明においては、カルボン酸アンモニウムの蓄積濃度が低い段階では、例えば30重量%未満においては、該ニトリル化合物の定常濃度を2重量%以下にコントロールすればよいが、反応の進行につれて該カルボン酸アンモニウム蓄積濃度が増大して、例えば30重量%以上では、該ニトリル化合物定常濃度が1重量%よりも大きい場合、急激に現れる生成物阻害及びまたは失活、或いは高生成物蓄積濃度で初めて顕著となる基質阻害及びまたは失活のため、ニトリラーゼ比活性が急激に低下する事実を発見した。更にこの時点でニトリル化合物の定常的なフィードをストップし、やがてニトリル化合物濃度が1重量%以下まで低下してくると再びニトリラーゼ比活性が増加し、反応を継続できる事実を発見した。
即ち、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造するに当たり、該カルボン酸アンモニウムの蓄積濃度が低い間、例えば30重量%未満では該ニトリル化合物の定常濃度を2重量%以下にコントロールし、該カルボン酸アンモニウムの蓄積濃度が増大してニトリラーゼ比活性が急激に低下する時あるいはその前後、例えばその急激に低下する時の濃度の±10重量%、好ましくは±5重量%の時点で、例えば、該カルボン酸アンモニウム蓄積濃度が30重量%以上では該ニトリル化合物濃度を1重量%以下に低下させることによって、実用的な反応時間で高蓄積濃度を達成できること、また実用的なリアクターサイズで大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造を実用的なレベルの触媒コストと製品品質で達成できることを発見し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に記載する通りの構成を有する。
[1] ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ 比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上で あること。
2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造す る場合、アクリル酸アンモニウム最高蓄積濃度が30重量%を越える こと。
[2] ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ 比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上で あること。
2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造す る場合、乾燥生体触媒重量当たりの最高生産量(=生産能力)が500g -アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上を達成できること 。
[3] ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ 比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上で あること。
2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、アクリル酸アンモニウム蓄積濃度40重量%になるまでの時間平均のニトリラーゼ比活性が25gアクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
[4] ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該カルボン酸アンモニウム蓄積濃度が増大する間は、該ニトリル化合物濃度を2重量%以下にコントロールし、ニトリラーゼ比活性が急激に低下する時あるいはその前後では、該ニトリル化合物濃度を1重量%以下に低下させることを特徴とする[1]〜[3]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[5] 生体触媒が微生物菌体及びまたはその処理物及びまたはそのニトリラーゼ酵素の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[4]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[6] 生体触媒が微生物菌体及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[5]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[7] 生体触媒がグラム陰性菌及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[6]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[8] 生体触媒がAcinetobacter属及びまたはAlcaligenes属の中から選ばれる少なくとも1種の菌体及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[7]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[9] 生体触媒がAcinetobacter属及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[8]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[10] 生体触媒がAcinetobacter sp.AK226及びまたはAcinetobacter sp.AK227の中から選ばれる少なくとも1種の菌体及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[9]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
[11] 生体触媒がAcinetobacter sp.AK226及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする[1]〜[10]記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
本発明は、ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造するに当たり、実用的な反応時間での高蓄積濃度の達成及びまたは実用的なリアクターサイズでの大量のカルボン酸(アンモニウム)の製造を実用的なレベルの触媒コストと製品品質で達成できるカルボン酸(アンモニウム)の製造法を提供できる。
本発明で言うニトリラーゼ活性を有する生体触媒とは、ニトリル基をカルボン酸(アンモニウム)基へ直接変換する能力を有する、生体由来のニトリラーゼ酵素を保有している触媒であれば如何なる形態のものでも良い。該ニトリラーゼ酵素の由来生体としては、微生物・動植物細胞等が挙げられるが、重量当たりの酵素発現量や取り扱いの容易性から、微生物菌体を使用することが好ましい。
微生物種としては、多くのものが知られているが、例えばニトリラーゼ高活性を有するものとして、Rhodococcus属、Acinetobacter属、Alcaligenes属、Psudomonas属、Corynebacterium属等が挙げられる。本発明においてはこれらの中でも、特にグラム陰性菌であるAcinetobacter属、Alcaligenes属が好ましく、更に好ましくはAcinetobacter属が好ましい。
具体的には、Acinetobacter sp.AK226 (FERM BP-08590)、Acinetobacter sp.AK227(FERM BP-08591)である。これらの菌株は特開2001−299378、特開平11−180971、特開平06−303991、特開昭63−209592、特公昭63−2596号公報等に記載されている。
また例えば、天然の或いは人為的に改良したニトリラーゼ遺伝子を遺伝子工学的手法によって組み込んだ微生物、あるいはそこから取り出したニトリラーゼ酵素であっても構わないが、ニトリラーゼの発現量が少ない微生物或いはニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)への変換活性の低いニトリラーゼを発現した微生物を少量用いてカルボン酸(アンモニウム)を製造するには、より多くの反応時間を要するため、可能な限りニトリラーゼを高発現した微生物、及びまたは変換活性の高いニトリラーゼを発現した微生物、或いはそこから取り出したニトリラーゼ酵素を用いることが望ましい。
生体触媒の形態としては、微生物・動植物細胞等をそのまま用いても構わないし、或いは該微生物・動植物細胞等そのもの、または破砕等の処理をしたもの、または該微生物・動植物細胞等から必要なニトリラーゼ酵素を取り出したものを一般的な包括法、架橋法、担体結合法等で固定化したものを用いても良い。尚、固定化する際の固定化担体の例としては、ガラスビーズ、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カラギーナン、アルギン酸、光架橋樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
微生物・動植物細胞等をそのまま用いる場合、水(蒸留水及びまたはイオン交換水)のみに懸濁させても構わないが、通常、浸透圧の関係から無機塩のバッファー液に懸濁させて使用する。また、固定化したものを用いる場合にも、通常、浸透圧の関係からバッファー液に懸濁させて使用する。この時のバッファー液濃度は、反応液中の不純物低減の観点からは低ければ低いほど良いが、生体触媒の安定性、比活性の維持という観点からは、通常0.1M未満であり、好ましくは0.01〜0.08M、より好ましくは0.02〜0.06Mである。
本発明で言う反応初期のニトリラーゼ比活性は、本発明にとって非常に重要なファクターである。元来、該反応初期のニトリラーゼ比活性とは反応条件及びまたは反応基質等によって大きく変わるものであるが、本発明における該反応初期のニトリラーゼ比活性とは、基質にアクリロニトリルを用い、反応温度30℃、pH=7.0の反応条件で、生体触媒懸濁液にアクリロニトリルを添加することで反応を開始する方法で、反応開始から5分におけるアクリル酸アンモニウム生産重量を使用乾燥生体触媒重量で除し、更に反応時間(5分=1/12時間)で除することにより得られる乾燥生体触媒重量当たり、1時間当たりのアクリル酸アンモニウム生産重量と定義する。本発明においては、該初期比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒重量/Hr以上であることが必須であり、好ましくは40g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒重量/Hr以上、より好ましくは50g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒重量/Hr以上、更に好ましくは60g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒重量/Hr以上、最も好ましくは70g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒重量/Hr以上がよい。
また、本発明で言うアクリル酸アンモニウム最高蓄積濃度は、本発明にとって非常に重要なファクターである。元来、該最高蓄積濃度とは反応条件によって大きく変わるものであるが、本発明においては、基質にアクリロニトリルを用い、反応温度30℃、pH=7.0の反応条件で、生体触媒懸濁液にアクリロニトリルを連続的或いは間欠的に添加することで反応を開始し、反応中の反応液中のアクリロニトリル定常濃度を1重量%以下にコントロールすることで行う。ここで言う最高蓄積濃度とは、前記一定条件において反応を進行させた場合、該生体触媒が蓄積し得る最高のアクリル酸アンモニウム重量濃度のことを指し、蓄積濃度の増加に伴い現れる生成物阻害及びまたは失活、或いは高生成物蓄積濃度で初めて顕著となる基質阻害及びまたは失活の影響を受けながらも到達することの出来る生成物蓄積濃度のことである。本最高蓄積濃度は30重量%を越えることが必須であり、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上がよい。
また、本発明で言う乾燥生体触媒重量当たりの最高生産量(=生産能力)は、本発明にとって非常に重要なファクターである。元来、該生産能力とは反応条件によって大きく変わるものであるが、本発明においては、基質にアクリロニトリルを用い、反応温度30℃、pH=7.0の反応条件で、生体触媒懸濁液にアクリロニトリルを連続的或いは間欠的に添加することで反応を開始し、反応中の反応液中のアクリロニトリル定常濃度を1重量%以下にコントロールすることで行う。ここで言う生産能力とは、前記一定条件において反応を行い、生成物蓄積濃度の増加に伴い現れる生成物阻害及びまたは失活、或いは高生成物蓄積濃度で初めて顕著となる基質阻害及びまたは失活により反応が完全に停止した時点までのアクリル酸アンモニウムの生産重量を使用乾燥生体触媒重量で除することにより得られる、乾燥生体触媒重量当たりのアクリル酸アンモニウム生産重量のことである。本生産能力は500g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上であることが必須であり、好ましくは1000g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、より好ましくは2000g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、更に好ましくは3000g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、より更に好ましくは4000g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、最も好ましくは5000g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上がよい。
また、本発明で言うアクリル酸アンモニウム蓄積濃度40重量%になるまでの時間平均のニトリラーゼ比活性は、本発明にとって非常に重要なファクターである。元来、該時間平均のニトリラーゼ比活性とは反応条件によって大きく変わるものであるが、本発明においては、基質にアクリロニトリルを用い、反応温度30℃、pH=7.0の反応条件で、生体触媒懸濁液にアクリロニトリルを連続的或いは間欠的に添加することで反応を開始し、反応中の反応液中のアクリロニトリル定常濃度を1重量%以下にコントロールすることで行う。ここで言う時間平均のニトリラーゼ比活性とは、前記一定条件において反応を行い、生成物蓄積濃度の増加に伴い現れる生成物阻害及びまたは失活、或いは高生成物蓄積濃度で初めて顕著となる基質阻害及びまたは失活により反応が完全に停止した時点までのアクリル酸アンモニウムの生産重量を使用乾燥生体触媒重量で除し、更に反応時間で除することにより得られる、乾燥生体触媒重量当たり、1時間当たりのアクリル酸アンモニウム生産重量のことである。本時間平均のニトリラーゼ比活性は25g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であることが必須であり、好ましくは30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上、より好ましくは40g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、更に好ましくは50g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、より更に好ましくは60g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上、最も好ましくは70g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上がよい。
本発明に使用する生体触媒は、前記反応初期のニトリラーゼ比活性の要件を満足するとともに、前記アクリル酸アンモニウム最高蓄積濃度の要件を満足することが重要であるが、さらに同時に前記最高生産量の要件を満足することがより好ましい。更には、これらの要件に加えて、同時に前記時間平均のニトリナーゼ比活性の要件を満足することが最も好ましい。
製造されるカルボン酸アンモニウムの反応液中の最終濃度は通常20重量%以上であるが、経済的な理由から高濃度である程良く、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上がよい。
カルボン酸(アンモニウム)を製造する反応方法は、固定床、移動層、流動層、撹拌槽等、いずれでもよく、また連続反応でも半回分反応でもよいが、特に固定化されていない微生物菌体を用いる場合、反応の容易性から攪拌槽を用いた半回分反応がよい。その場合、反応効率の観点から、適切な攪拌を行うのがよい。
また、半回分反応を行う場合、生体触媒は1バッチ使い捨てでもよいし、繰り返し反応を行ってもよい。但し、繰り返し反応を行う場合、該生体触媒をカルボン酸アンモニウム高濃度から低濃度へ急激に変化させるため、浸透圧の影響等で比活性が低下する場合があるので注意を要する。
本発明で使用されるニトリル化合物としては、ニトリラーゼの触媒作用により対応するカルボン酸(アンモニウム)に変換される限り、特に限定されない。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、サクシノニトリル、アジポニトリルのような飽和脂肪族ニトリル、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和脂肪族ニトリル、或いはベンゾニトリル、フタロジニトリルのような芳香族ニトリル、或いは3-シアノピリジン、2-シアノピリジン、4-シアノピリジンのような複素環式ニトリル、或いはグリシノニトリルのようなアミノニトリル、或いはマンデロニトリルのようなヒドロキシニトリル等が挙げられる。この内、相対的な活性の高さから、生体触媒を用いたカルボン酸(アンモニウム)の製造に適している代表的なものはプロピオニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、3-シアノピリジン、グリシノニトリルであるが、特にアクリロニトリル、3-シアノピリジンが好適である。
カルボン酸アンモニウム蓄積濃度が30重量%未満までは反応基質であるニトリル化合物の定常濃度を2重量%以下、好ましくは0.2〜1.5重量%、より好ましくは0.5〜1重量%、更に好ましくは0.7〜1重量%にコントロールし、カルボン酸アンモニウム蓄積濃度が30重量%以上では、反応基質であるニトリル化合物の定常濃度を1重量%以下、好ましくは0.1〜0.7重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%、更に好ましくは0.3〜0.5重量%にコントロールするのがよい。特に、カルボン酸アンモニウムが30重量%以上の高蓄積濃度の時、ニトリル化合物の濃度が高すぎると、生成物阻害及びまたは失活、或いは高生成物蓄積濃度で初めて顕著となる基質阻害及びまたは失活の影響が急激に大きくなり、それまで進行していた反応が停止してしまう場合がある。但し、その場合、活性が低下してきた早い段階でニトリル化合物の添加を停止する等の処置を講ずれば、活性が再び復活することがあり、ニトリル化合物濃度の制御が非常に大きな効果を現すことを示すよい例である。また、ニトリル化合物の濃度が低すぎると反応速度を低下させることとなり、効率的にカルボン酸(アンモニウム)を製造できないので不利である。以上の理由から、反応中のニトリル化合物定常濃度は2段階のタイミングで適切な範囲にコントロールすることが重要である。
製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒重量は1/500以下がよく、好ましくは1/600〜1/5000、より好ましくは1/700〜1/3000、更に好ましくは1/800〜1/1500、最も好ましくは1/1000〜1/1300である。製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒重量が多すぎると該生体触媒懸濁液由来の不純物が反応液中に多く同伴されるため精製コストが上がり、製品品質が低下するので好ましくない。逆に、製造されるカルボン酸アンモニウムに対する使用乾燥生体触媒重量が少なすぎるとリアクターボリューム当たりの生産性が低下し、大きなリアクターサイズが必要となり経済的に不利となる。
反応温度が低すぎると反応活性が低くなり、高濃度のカルボン酸アンモニウムを製造する場合、より多くの反応時間を必要とする。一方、反応温度が高すぎると生体触媒の熱による失活の影響で、目的とするカルボン酸アンモニウム濃度が高い場合、該濃度まで到達させることが困難となり、結果として新たに生体触媒の追添等の処置が必要となり触媒コストが高くなる。また、アクリロニトリルのような重合性の高い基質を用いる場合、基質の重合、或いは生成物である不飽和カルボン酸(アンモニウム)の重合の影響で目的とするカルボン酸(アンモニウム)モノマーの収率を低下させるため好ましくない。よって、通常、反応温度は氷点〜40℃がよく、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜40℃、更に好ましくは30〜35℃がよい。
反応初期に微生物を懸濁させておく反応仕込み液は、水溶液であれば特に限定されないが、通常、水が用いられる。また、浸透圧の関係で微生物の安定性を上げるという観点からバッファー液を用いてもよい。
反応液のpHは使用する生体触媒のニトリラーゼ比活性の至適pHにすることが好ましく、通常、反応液pHは6〜13がよく、好ましくは9〜11がよい。しかし、得られる製品の都合上、必要なpHが規定されるならばこの限りではなく、反応比活性の低下が極端に現れない範囲で任意に選ぶことができる。
基質が不飽和基を有し、重合性である場合、通常、反応は重合禁止剤存在下で行う。使用される重合禁止剤の種類は反応中のオリゴマー或いは低分子量ポリマーの副成を十分に抑制できるものであれば特に限定されないが、例えばハイドロキノン、p-メトキシフェノール等の通常のラジカル重合禁止剤を挙げることができる。また、重合禁止剤は原料のニトリル化合物中に添加された形でニトリル化合物に同伴して反応系に添加されてもよく、原料とは別に反応系に添加される形であってもよい。また、通常これらの重合禁止剤は酸素の存在により、その重合禁止効果が上がることが一般的に知られており、反応系内は酸素存在下であることが望ましい。
以下実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例により必ずしも限定されるものではなく、その要旨を超えない限り、様々な変更、修飾が可能である。
固定化していない生体触媒懸濁液中の乾燥生体触媒重量の測定法は、以下のごとく実施した。まず、適当な濃度の生体触媒懸濁液を適量取り、-80℃まで冷却した後、凍結乾燥機を用いて完全に乾燥し、その重量値から前記生体触媒懸濁液の濃度を算出した。既知濃度となった生体触媒懸濁液を適当な複数の濃度に希釈し、濁度計を用いて室温において濁度を測定し、該濁時計での該生体触媒の検量線を作成した。以後、該濁時計の指示値から任意の該生体触媒懸濁液の乾燥生体触媒濃度を算出した。
固定化した生体触媒の場合は、固定化する前の生体触媒懸濁液の乾燥生体触媒濃度を測定し、固定化担体と生体触媒の混合比に基づき固定化触媒中の固定化担体を除いた生体触媒自身の乾燥重量を算出した。
反応液の分析は、以下のごとく実施した。まず、基質であるニトリル化合物についてはガスクロマトグラフィー(島津GC-14B)で測定した。カラムはキャピラリーの強極性カラム(信和化工ULBON HR-20M 0.25mmI.D. × 30m 膜厚0.25μm)、検出器はFIDで検出した。次に、生成物であるカルボン酸(アンモニウム)モノマーは、高速液体クロマトグラフィーで測定した。カラムは逆相カラム(東ソーTSK-GEL ODS-80Ts)、カラム温度は40℃、移動相は10mMリン酸水溶液、検出器はUV(島津SPD-10A、210nm)で実施した。
[生体触媒の調製]
塩化ナトリウム0.1重量%、リン酸二水素カリウム0.1重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.05重量%、硫酸第一鉄七水和物0.005重量%、硫酸アンモニウム0.1重量%、硝酸カリウム0.1重量%硫酸マンガン五水和物0.005重量%を含む培養液250mlを三角フラスコに仕込み、pHが7になるように水酸化ナトリウムで調整し、121℃で20分間滅菌した後、アセトニトリル0.5重量%を添加した。これにAcinetobacter sp.AK226を接種して30℃で振とう培養した(前培養)。同組成培養液3Lを5Lジャーファーメンターに仕込み、121℃で20分間滅菌した後、前記の前培養液を接種して30℃で通気攪拌を行った。培養開始2時間後から酢酸のフィードを開始した。PHは7になるようにリン酸及びアンモニア水でコントロールし、最終的に約1重量%のAcinetobacter sp.AK226懸濁液を得た。更に0.06Mリン酸バッファーを用いて2回洗浄を行い、最終的にリン酸バッファーに懸濁されたAcinetobacter sp.AK226懸濁液(乾燥菌体濃度10〜15重量%)を得た。
[固定化菌体触媒の調製]
Acinetobacter sp.AK226懸濁液(乾燥菌体濃度15重量%)、アクリルアミド、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、5重量%N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン水溶液、0.06Mリン酸バッファーの混合液に、2.5重量%過硫酸カリウム水溶液を混合して重合物を得た。最終的な組成は、乾燥菌体濃度3 %、0.06Mリン酸バッファー(pH=7)52 %、アクリルアミド18 %、N,N'-メチレンビスアクリルアミド1 %、5重量%N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン水溶液12 %、2.5重量%過硫酸カリウム水溶液14%(何れも重量%)とした。該重合物を約1×3×3mm角に裁断し固定化菌体を得た。この固定化菌体を0.06Mリン酸バッファー(pH=7)で洗浄し固定化菌体触媒とした。
[実施例1]
生体触媒としてAcinetobacter sp.AK226を用いて、アクリロニトリルの加水分解反応を行った。まず、0.06Mリン酸バッファーに懸濁した状態で冷蔵保存されたAcinetobacter sp.AK226(基質:アクリロニトリル、30℃、pH=7条件での比活性が100g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥菌体/Hr)を濃度が436重量ppmとなるように2LのSUS製反応器内に予め仕込まれた蒸留水1525gに懸濁させた。該SUS製反応器はジャケット付きで内温コントロールができるようになっており、内温を30℃にコントロールした。また、該反応器には攪拌装置が設置されており、反応中は攪拌回転数150rpmで攪拌した。次に原料のアクリロニトリル(和光純薬 特級品、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール40重量ppm/アクリロニトリル含む)をフィードポンプで初期比活性相当のフィードレートでフィードを開始した。因みに初期比活性は100g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥菌体/Hrであった。反応中は定期的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィーでアクリロニトリル濃度を測定し、高速液体クロマトグラフィーでアクリル酸(アンモニウム)濃度を測定した。反応中のアクリロニトリル濃度については上記ガスクロマトグラフィーの値から2重量%を越えないようにアクリロニトリルフィードをコントロールしながら反応を継続した。また、反応終了後の反応液のpHを測定したところ7.1であった。反応を22時間継続した最終結果を表1に示す。
[実施例2]
反応温度(内温)を35℃にコントロールする以外は、実施例1と同様にして反応と各種分析を行った。因みに初期比活性は122g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥菌体/Hrであった。反応終了後の反応液のpHは7.0であった。反応を16時間継続した最終結果を表1に示す。
[比較例1]
0.06Mリン酸バッファーに分散した状態で冷蔵保存されたポリアクリルアミドに包括固定化したAcinetobacter sp.AK226(基質:アクリロニトリル、30℃、pH=7条件での比活性が18g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥菌体/Hr)を乾燥菌体濃度が436重量ppmとなるように2LのSUS製反応器内に予め仕込まれた蒸留水1525gに分散させた以外は、実施例1と同様にして反応と各種分析を行った。反応終了後の反応液のpHは7.3であった。反応を87時間継続した最終結果を表1に示す。

Figure 2006055004
[実施例3]
0.06Mリン酸バッファーに懸濁した状態で冷蔵保存されたAcinetobacter sp.AK226(基質:アクリロニトリル、30℃、pH=7条件での比活性が74g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥菌体/Hr)を濃度が198重量ppmとなるように2Lのガラス製四つ口フラスコに予め仕込まれた蒸留水920gに懸濁させた。該四つ口フラスコを恒温水槽に漬けて内温を30℃にコントロールした。また、該四つ口フラスコには攪拌装置が設置されており、反応中は攪拌回転数200rpmで攪拌した。次に原料のアクリロニトリル(和光純薬 特級品、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール40重量ppm/アクリロニトリル含む)をフィードポンプで初期比活性相当のフィードレートでフィードを開始した。因みに初期比活性は74g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥菌体/Hrであった。反応中は定期的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィーでアクリロニトリル濃度を測定し、高速液体クロマトグラフィーでアクリル酸(アンモニウム)濃度を測定した。反応中のアクリロニトリル濃度については上記ガスクロマトグラフィーの値から2重量%を越えないようにアクリロニトリルフィードをコントロールしながら反応を継続した。反応開始から27時間後に反応比活性が急激に落ちたので、アクリロニトリルのフィードを停止した。暫くして反応開始から約30時間後アクリロニトリル濃度は1%以下に低下し、その後反応を38時間まで継続した。結果を図1に示す。
[比較例2]
反応中に比活性が低下してきた時点でアクリロニトリルフィードを停止せず、継続すること以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、アクリル酸アンモニウム濃度が35重量%付近でストップし、しばらくサンプリング、分析を継続したが、実施例4のごとく再び活性が戻ることはなかった。
本発明法によれば、初期比活性が高いだけではなく、高カルボン酸(アンモニウム)蓄積濃度と該蓄積濃度になるまでの時間平均の比活性が高い生体触媒を用いることにより、任意のニトリル化合物から工業的に有用なカルボン酸(アンモニウム)を実用的なリアクターサイズ、反応時間、触媒コストで生産することができる。
実施例3における反応時間に対する基質アクリロニトリル濃度と生成するアクリル酸アンモニウム濃度の変化を示す。

Claims (11)

  1. ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
    1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
    2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、アクリル酸アンモニウム最高蓄積濃度が30重量%を越えること。
  2. ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
    1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
    2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、乾燥生体触媒重量当たりの最高生産量(=生産能力)が500g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒以上を達成できること。
  3. ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該生体触媒が以下の特徴を同時に有する前記カルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
    1)基質にアクリロニトリルを用いた場合、反応初期のニトリラーゼ比活性が30g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
    2)アクリロニトリルと水を用いてアクリル酸アンモニウムを製造する場合、アクリル酸アンモニウム蓄積濃度40重量%になるまでの時間平均のニトリラーゼ比活性が25g-アクリル酸アンモニウム/g-乾燥生体触媒/Hr以上であること。
  4. ニトリラーゼ活性を有する生体触媒を用いてニトリル化合物からカルボン酸(アンモニウム)を製造する方法であって、該カルボン酸アンモニウム蓄積濃度が増大する間は該ニトリル化合物濃度を2重量%以下にコントロールし、ニトリラーゼ比活性が急激に低下する時あるいはその前後では、該ニトリル化合物濃度を1重量%以下に低下させることを特徴とする請求項1〜3記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  5. 生体触媒が微生物菌体及びまたはその処理物及びまたはそのニトリラーゼ酵素の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜4記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  6. 生体触媒が微生物菌体及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜5記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  7. 生体触媒がグラム陰性菌及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜6記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  8. 生体触媒がAcinetobacter属及びまたはAlcaligenes属の中から選ばれる少なくとも1種の菌体及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜7記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  9. 生体触媒がAcinetobacter属及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜8記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  10. 生体触媒がAcinetobacter sp.AK226及びまたはAcinetobacter sp.AK227の中から選ばれる少なくとも1種の菌体及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜9記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
  11. 生体触媒がAcinetobacter sp.AK226及びまたはその処理物の、固定化物及びまたは懸濁液であることを特徴とする請求項1〜10記載のカルボン酸(アンモニウム)の製造方法。
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