以下、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の一実施形態について図1乃至図16を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の概略構成を模式的に示す図である。図2は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の概略構成を示す正面図である。図3は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の台座の概略構成を示す(a)は平面図、(b)は正面図である。図4は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の台座の固定部によって送電鉄塔の脚部を利用して台座を固定した状態を説明する斜視図である。図5は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の台座を模式的に示す図であり、(a)は台座を構成する部材を分解した状態を、(b)は台座を構成する部材の組み付け方を示す図である。図6は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の柱状体の概略構成を示す正面図である。図7は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の柱状体の構造を、一部を分解して示す斜視図である。図8は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の柱状体の上端部に設けられたスプロケット支持梁の構造を示す平面図である。
図9は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の枠体の概略構造を示す斜視図である。図10は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の枠体の概略構造を示す平面図である。図11(a)は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の枠体を高さ方向に延長した状態、(b)は、短縮した状態を模式的に説明する図である。図12は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の枠体の概略構造を模式的に示した図である。図13は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の台座に取り付けられた駆動機の概略構成を示す正面図である。図14は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置の駆動機構の概略構成を模式的に説明する図である。図15は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置を送電鉄塔に設置手順を説明する図である。図16及び図17は、本発明を適用してなる鉄塔迫上げ装置を用いて行う送電鉄塔嵩上げ工法の手順を説明する図である。
本実施形態の鉄塔迫上げ装置1は、図1及び図2に示すように、台座3、台座3に固定された4角柱状の柱状体5、柱状体5に案内されて上下に移動する枠体7、枠体7に取り付けられたアーム部9、枠体7を上下に移動させるための駆動機11や索状部材であるチェーン13、そして、駆動機11の動作を制御する制御部15などを備えている。鉄塔迫上げ装置1は、送電鉄塔17を設置した地盤に台座3を設置することで、送電鉄塔17の4本の支柱17a間に囲まれた空間つまり送電鉄塔17内の空間に設置される。
台座3は、図3に示すように、2本のI形鋼またはH形鋼などの棒状の鋼材を平行に組んで形成した梁状部材を2つ用いて十字状に組んだものである。したがって、中心部3aから4本の腕部3bが伸びた状態になっている。台座3の中心部3aには、各腕部3bに対応する位置に、各々、柱状体5を取り付けるための取り付け部材3cが設けられている。また、台座3の中心部3aの取り付け部材3cよりも中心側には、各腕部3bに対応する位置つまり各取り付け部材3cに対応する位置に、各々、チェーン13がかけられる滑車状部材であるスプロケット19が取り付けられている。さらに、台座3の各腕部3bつまり取り付け部材3cよりも外側には、各腕部3bに対応する位置つまり各取り付け部材3cに対応する位置に、各々、チェーン13がかけられる滑車状部材であるスプロケット21が取り付けられている。そして、台座3の各腕部3bのスプロケット21の外側には、各々、駆動機11が設置されている。
台座3の各腕部3bの駆動機11よりも外側の部分は、図3及び図4に示すように、2本のI形鋼またはH形鋼などの棒状の鋼材が平行に間隔を置いて延在した状態となっており、台座3を送電鉄塔17の支柱17aの既存の脚部17bに固定するための固定部3dとなっている。台座3の固定部3dには、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材間に、台座3を既設の送電鉄塔17の支柱17aの脚部17bに固定するための固定部材23が設けられている。
固定部材23は、送電鉄塔17の支柱17aの脚部17bに固定するための脚部固定部23a、脚部固定部23aが上面に設けられ、台座3の固定部3dとなる2本の棒状の鋼材間に位置する基部23bで形成されている。台座3の固定部3dとなる2本の棒状の鋼材の各々の側面部分には、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材の延在方向に並べて複数の固定孔3hが穿設されている。そして、固定部材23は、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材の固定孔3hが穿設されている面に対向する固定部材23の基部23bの面に向けて固定部3dの固定孔3hに挿通された図示していない複数のボルトなどを螺合することで固定部3dに固定されている。
台座3は、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材間に送電鉄塔17の脚部17bを挟んだ状態に設置され、固定部材23の基部23bを送電鉄塔17の脚部17bにボルトなどによって固定することで固定される。このように本実施形態の台座3では、固定部3dに固定部材23を固定するための複数の固定孔3hが穿設されており、この固定孔3hに挿通したボルトなどによって固定部3dに固定部材23が固定されているので、固定部3dの延在方向に固定部材23の固定位置を調整できる。したがって、送電鉄塔17の支柱17aの脚部17bの根開きに応じて固定部材23の位置を調整でき、様々な規格、大きさの鉄塔の既設の脚部を利用して台座3を固定することができる。
さらに、台座3の固定部3dの固定部材23よりも外側には、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材を跨いだ状態で仮基礎部材24が設けられている。仮基礎部材24は、鉄塔迫上げ装置1で迫り上げた鉄塔を仮置きするためのものである。仮基礎部材24は、送電鉄塔17の支柱17aの新たに形成した部分の下端部17cを固定するための仮基礎部24a、仮基礎部24aが上面に設けられ、台座3の固定部3dとなる2本の棒状の鋼材に跨った状態の基部24bで形成されている。
台座3の固定部3dとなる2本の棒状の鋼材の各々の上面部分には、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材の延在方向に並べて複数の固定孔3iが穿設されている。そして、仮基礎部材24は、基部24bが固定部3dとなる2本の棒状の鋼材の固定孔3iが穿設されている面上に固定部3dとなる2本の棒状の鋼材を跨いだ状態で載置され、固定部3dの固定孔3iに挿通された図示していない複数のボルトなどを螺合することで固定部3dに固定されている。仮基礎部材24は、送電鉄塔17の支柱17aの新しく形成された部分の下端部17cを仮基礎部24aにボルトなどによって固定することで送電鉄塔17を仮置きできる。
このように本実施形態の台座3では、固定部3dに仮基礎部材24を固定するための複数の固定孔3iが穿設されており、この固定孔3iに挿通したボルトなどによって固定部3dに仮基礎部材24が固定されているので、固定部3dの延在方向に仮基礎部材24の固定位置を調整できる。したがって、送電鉄塔17の支柱17aの新しく形成した部分の下端部17cの根開きに応じて仮基礎部材24の位置を調整でき、様々な規格、大きさの鉄塔を台座3に仮置きすることができる。なお、送電鉄塔17の嵩上げが終了した後の新しい脚部17dや脚部17dを支持する図示していない基礎は、台座3の固定部3dの固定部材23及び仮基礎部材24よりも外側の部分に設置される。
このような本実施形態の台座3は、図5に示すように、軽量化して搬送し易くするため、また、送電鉄塔17内に搬入し易くするため、腕部3bと中心部3aとなる部分を含む平行に組まれた2本の棒状の鋼材からなる2本の梁状部材3e、3fと、固定部3dとを組み立てることによって形成する構造となっている。梁状部材3eは、中心部3aとなる部分の上側が欠き取られた状態に、梁状部材3fは、中心部3aとなる部分の下側が欠き取られた状態になっており、梁状部材3eの中心部3aとなる部分と梁状部材3fの中心部3aとなる部分とは互いに嵌合可能になっている。さらに、梁状部材3e、3fの両端部にはフランジ3gによって固定部3dを連結可能になっている。このように、台座3は、梁状部材3e、3fを中心部3aとなる部分を嵌合させてボルトなどで固定することで十字状に組み付け、さらに、各腕部3bの端部に設けられたフランジ3gによって固定部3dをボルトなどで固定することで組み立てられる。
柱状体5は、図1及び図6に示すように、山形鋼などの棒状の鋼材をトラス構造様に組んで4角柱状に形成したものである。このため、柱状体5の内部は空洞になっており、作業者が中に入ることが可能である。柱状体5は、図6に示すように、上端部5a、中間部5b、5c、5d、脚部5eの上下方向に5つのユニットを組み付けた構成となっている。さらに、柱状体5の上端部5a、中間部5b、5c、5d、脚部5eの各ユニットは、図7に示すように、山形鋼などの棒状の鋼材をトラス構造様に組んでL字状に形成した部材25を4つ組み付けることで形成されている。したがって、柱状体5は、L字状に形成した部材25を送電鉄塔17内に搬入して脚部5eを形成し、脚部5e上にL字状に形成した部材25を組んで中間部5dを、同様に、中間部5d上に中間部5cを、中間部5c上に中間部5bを、中間部5b上に上端部5aを各々溶接することなどで組み立てられている。なお、図7では、中間部5b、5c、5dに相当する部分を示しているが、上端部5aや脚部5eも同様の構造となっている。
柱状体5を構成する脚部5eは、図3及び図6に示すように、台座3の取り付け部材3cに、ボルトなどによって取り付けられ固定される。柱状体5を構成する上端部5a上には、図1、図2及び図6に示すように、チェーン13がかけられる滑車状部材であるスプロケット27を回転可能に指示するスプロケット支持梁29が設けられている。スプロケット支持梁29は、図8に示すように、柱状体5の対角線方向に張り出した十字状に鋼材で形成した部材であり、スプロケット27は、各腕部29aに2つずつ支持されている。
枠体7は、図2、図9及び図10に示すように、鋼管などからなる4本の棒状の鋼材7aを方形に配し、これら4本の棒状の鋼材7aの両端に、各々、柱状体5を挿通可能な略正方形の枠状の鋼材7bを固定したかご様のものである。枠体7を構成する棒状の鋼材7a間つまり枠体7の側面となる部分には、トラス状に山形鋼などの鋼材7cが取り付けられている。上側の枠状の鋼材7bの上面、そして、下側の枠状の鋼材7bの下面には、各々、4つの角部にチェーン13をかける滑車状部材であるスプロケット31を取り付けるための取り付け片7dが突設されている。なお、図9及び図10ではスプロケット31は図示されていない。
枠体7を構成する棒状の鋼材7aは、図2及び図9に示すように、複数の棒状の鋼材を、連結部となるフランジ7eをボルト留めすることなどによって連結した構造となっている。図2では、1箇所のフランジ7eで連結した状態を、図9では、3箇所のフランジ7eで連結した状態を示している。したがって、枠体7は、図11に示すように、フランジ7eによって適宜の数の棒状の鋼材を挿入したり、外したりすることで、枠体7の上下方向の長さ、つまり、枠体7の高さを調整できる。
また、枠体7の上端部と下端部の角部分の内面には、図10及び図12に示すように、柱状体5の外面の各角部分に当接するローラ32が設けられている。したがって、枠体7には、ローラ32が上端部と下端部に各々8箇所、計16箇所設けられており、柱状体5に当接したローラ32が回転することにより、枠体7は柱状体5に案内されて上下動が行なえる。また、枠体7に作用する力は、ローラ32を介して柱状体5に伝達される。
アーム部9は、図2、図9及び図10に示すように、枠体7の上側の枠状の鋼材7b側つまり枠体7の上端部側の4つの角部分と、枠体7の下側の枠状の鋼材7b側つまり枠体7の下端部側の4つの角部分とに計8箇所設けられている。1つのアーム部9は、鋼管などを加工して形成した3本の棒状部材9a、9b、9cを有している。アーム部9の棒状部材9a、9bは、一端部が枠体7の枠状の鋼材7bの隣り合う辺の中央部分に、水平方向の平面内で棒状部材9a、9bが回動可能に取り付けられている。一方、棒状部材9cは、一端部が枠体7の棒状の鋼材7aに垂直方向の平面内で回動可能に取り付けられている。棒状部材9a、9b、9cの他端部は、1つの把持具33に取り付けられている。このとき、棒状部材9a、9bは、水平方向の平面内で回動可能に、棒状部材9cは、垂直方向の平面内で回動可能に把持具33に取り付けられている。
このように、アーム部9は、枠体7に各々回動可能に取り付けられ、把持具33を頂点とする三角錐を形成する3本の棒状部材9a、9b、9cによって形成されている。そして、3本の棒状部材9a、9b、9cによって形成されたアーム部9は、枠体7の角部分から張り出した状態となっている。さらに、本実施形態では、図9及び図10に示すように、上端部側の4つのアーム部9の把持具33間、そして、下端部側の4つのアーム部9の把持具33間に、各々、アーム部9の強度を増大するため、鋼管などを加工して形成した水平梁部材35が取り付けられている。水平梁部材35は、両端部が水平方向の平面内で回動可能に把持具33に取り付けられている。
アーム部9の3本の棒状部材9a、9b、9c、さらに、水平梁部材35は、全て、各々の部材の長さを調節するための伸縮部となるねじジャッキ部37を有している。ねじジャッキ部37は、ねじ部分の回転により棒状の部材の長さを伸縮させる機構である。したがって、アーム部9は、アーム部9を構成する3本の棒状部材9a、9b、9cが、各々、水平方向または垂直方向に回動可能で、さらに、ねじジャッキ部37によって長さが調節可能であることにより、把持具33の位置を、送電鉄塔17の支柱17aを把持可能な位置に調整できるようになっている。また、水平梁部材35は、把持具33間の間隔に合わせてねじジャッキ部37によって長さが調整できる。なお、伸縮部は、水平梁部材35の長さを調整できれば、ねじジャッキ部37のような構造に限らず、対向するフランジ間に取り付けたボルトとナットなどを組み合わせた構造など、様々な構造にできる。
さらに、棒状部材9a、9b、9cは、図2及び図10に示すように、2本の棒状の部材を、連結部となるフランジ39をボルトなどによって連結した構造となっている。図2及び図10では、各アーム部9の棒状部材9a、9b及び枠体7の上端部側の棒状部材9cは、1箇所のフランジ39で連結し、枠体7の下端部側の棒状部材9cは2箇所のフランジ39で連結した状態を示している。したがって、アーム部9の各棒状部材9a、9b、9cは、適宜の数の棒状の部材を挿入したり、外したりすることで、枠体7から送電鉄塔17の支柱17aまでの距離に応じて長さを変えることができるようになっている。
また、水平梁部材35は、図10に示すように、ねじジャッキ部37から端部までの長さが長い方の部分が、内管35aと、内管35aを移動可能に挿入した外管35bとからなる2重管構造になっている。そして、水平梁部材35の内管35aと外管35bの各々には、図示していないが、延在方向に沿って適宜の間隔で複数の貫通穴が穿設されている。そして、内管35aと外管35bに形成された複数の貫通穴から、水平梁部材35が必要な長さになる貫通穴を選択して位置を合わせ、この貫通穴に棒材を挿入したり、ボルトをねじ込んだりすることで、アーム部9の各棒状部材9a、9b、9cの長さを変えたときの把持具33間の間隔に合わせ、水平梁部材35の長さを変えることができるようになっている。
把持具33は、図2及び図10に示すように、送電鉄塔17の支柱17aを挟持する2つの部材33a、33bで形成されている。把持具33の部材33aには、アーム部9の各棒状部材9a、9b、9cの端部が各々回動可能に連結されており、把持具33の部材33bには、水平梁部材35の端部が回動可能に連結されている。把持具33の部材33aは送電鉄塔17の支柱17aに対して送電鉄塔17の内側から当接させ、把持具33の部材33bは支柱17aに対して送電鉄塔17の内側から当接させ、この状態で、把持具33の部材33aと33bとをボルトなどで締め付けることで、送電鉄塔17の支柱17aを把持具33の部材33aと33bとで挟み込み、把持具33で支柱17aを把持する。このように、把持具33は、把持具33の部材33a、33bの内面と送電鉄塔17の支柱17aの外面との摩擦により送電鉄塔17の支柱17aに固定される。
なお、図2及び図10では、山形鋼で形成された送電鉄塔17を把持する場合を例として記載しているため、把持具33は、支柱17aとなる山形鋼に対応する形状に形成されている。もし、迫上げる送電鉄塔の支柱が鋼管の場合には、把持具としては、支柱となっている鋼管の外面に当接した状態で、この支柱となっている鋼管外面を囲む筒状に形成されたものを用いる。
台座3に設置された駆動機11は、図13に示すように、サーボモータ11a、ディスク11bやカップリング11cなどを含むディスクブレーキ11d、減速機11e、スプロケット11f、出力軸補強治具11gなどで構成されている。滑車状部材であるスプロケット11fには、チェーン13がかけられ、サーボモータ11aの回転によってスプロケット11fが回転することによりチェーン13を動かし枠体7を移動させる。減速機11eの出力軸には、衝撃荷重が作用した場合でも減速機11eが破損しないように出力軸補強治具11gが設置されている。
チェーン13は、図2及び図14に示すように、一端が柱状体5の上端部に設けられたスプロケット支持梁29の腕部29aの先端部分に固定されている。チェーン13の他端は、カウンターウエイト40に連結されている。チェーン13は、スプロケット支持梁29の腕部29aの先端部分に固定された端部側から、一旦枠体7に向けて下降して、枠体7の上端部側の取り付け片7dに取り付けられたスプロケット31にかけられる。枠体7の上端部側のスプロケット31のかけられたチェーン13は、再びスプロケット支持梁29の腕部29aに向けて折り返して上昇し、スプロケット支持梁29の腕部29aに設けられた2つのスプロケット27にかけられる。2つのスプロケット27にかけられたチェーン13は、台座3に向かって下降し、台座3の中心部3aに設けられたスプロケット19にかけられる。
スプロケット19にかけられたチェーン13は、台座3の上面に沿って駆動機11に向かい、駆動機11のスプロケット11fにかけられる。駆動機11のスプロケット11fにかけられたチェーン13は、台座3の中心部3aに向けて折り返し台座3の腕部3bに設けられたスプロケット21にかけられる。スプロケット21にかけられたチェーン13は、枠体7に向けて上昇し、枠体7の下端部側の取り付け片7dに取り付けられたスプロケット31にかけられる。枠体7の下端部側のスプロケット31にかけられたチェーン13は、再び台座3に向けて下降し、端部が台座3上に位置するカウンターウエイト40に連結される。
このように、チェーン13が、スプロケット支持梁29の腕部29aから、枠体7の上端部側のスプロケット31で折り返した状態で枠体7を吊り下げているため、チェーン13にかかる荷重を低減し、枠体7を引き上げるのに要する力を低減している。また、チェーン13の一端がカウンターウエイト40に連結されていることにより、チェーン13の弛みを除去している。
本実施形態の鉄塔迫上げ装置1では、図1及び図2に示すように、枠体7の上端部側のスプロケット31は、荷重計であるロードセル41を介して枠体7の上端部側の取り付け片7dに取り付けられている。したがって、ロードセル41によって枠体7を吊るしているチェーン13にかかる荷重を検出できる。さらに、鉄塔迫上げ装置1によって迫上げる送電鉄塔17の1本の支柱17aには、傾斜計43が取り付けられている。また、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1では、枠体7の4つの角部にスプロケット31が設けられ、各々のスプロケット31にチェーン13がかけられている。したがって、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1は、4台の駆動機11と4本のチェーン13などを有し、枠体7は、枠体7の角部4箇所各々で、個別に動くチェーン13によって吊るされている。
このように、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1では、4組の駆動機11及びチェーン13などが枠体7を上下動させる駆動機構を、そして、ロードセル41及び傾斜計43が送電鉄塔17の傾きに対応する情報を検出する検出手段を構成している。そして、制御部15は、図1に示すように、駆動機構の駆動機11の動作を制御し、さらに、検出手段であるロードセル41及び傾斜計43からの情報により駆動機11の動作を個別に制御する。したがって、制御部15と、駆動機11、ロードセル41及び傾斜計43とは、各々、配線45によって電気的に接続されている。
なお、鉄塔迫上げ装置1には、送電鉄塔17から、垂直荷重、水平荷重、転倒モーメントなどが作用する。このため、これらの荷重に対する鉄塔迫上げ装置1及び送電鉄塔17を含む全体モデルを用いた立体解析により、鉄塔迫上げ装置1及び送電鉄塔17の各部の応力伝達を確認し、鉄塔迫上げ装置1を構成する台座3、柱状体5、枠体7、アーム部9、把持具33などを形成する各部材は、各々、想定した外力作用時の部材応力度が材料の許容応力度に対して十分な裕度を確保するように設計され、材料が選択されている。
このような構成の本実施形態の鉄塔迫上げ装置1を用いた送電鉄塔の嵩上げ工法と本発明の特徴部などについて説明する。まず、送電鉄塔17の各脚部17bを覆った状態となっている送電鉄塔17の図示していない基礎の柱体部となっているコンクリートを削り取って除去する。そして、図5に示すような鉄塔迫上げ装置1の台座3の梁状部材3e、3fと、固定部3dを、嵩上げを行う送電鉄塔17内に搬入して組み立て、図2及び図15(a)に示すように、送電鉄塔17の対角線上に位置する支柱17aの脚部17b間に台座3の腕部3bが延在した状態に台座3を設置する。
設置した台座3の固定部3dとなる2本の棒状の鋼材間に送電鉄塔17の脚部17bを挟んだ状態で、図4に示すように、固定部3dとなる2本の棒状の鋼材間に固定部材23を挿入し、固定部材23の脚部固定部23aと送電鉄塔17の各脚部17bとをボルトなどで連結した後、固定部材23を、その近傍に位置する固定孔3hに挿通したボルトなどで固定することにより、台座3を既設の送電鉄塔17の各脚部17bを利用して固定する。
さらに、本実施形態では、台座3の各固定部3dの固定部材23よりも外側の部分に、送電鉄塔17を迫り上げ、嵩上げのために新しく形成した送電鉄塔17の部分の支柱17aの下端部17cに対応する位置に、仮基礎部材24を固定孔3iに挿通したボルトなどで固定しておく。
台座3を固定した後、送電鉄塔17内に図6及び図7に示すような柱状体5を構成する脚部5eの部材25、中間部5dの部材25、中間部5cの部材25、中間部5bの部材25、上端部5aの部材25、スプロケット支持梁29などを順次搬入し、固定した台座3の中心部3aに、図2及び図15(b)に示すように、柱状体5を組み上げる。柱状体5を組み上げた後、台座3の所定の位置に4台の駆動機11を設置する。この後、図2及び図15(c)に示すように、柱状体5を囲む状態に枠体7を組み立て、さらに、枠体7の上端部及び下端部の各々の4つの角部つまり計8つの角部に、各々、アーム部9を取り付ける。
アーム部9を取り付けるとき、アーム部9の各棒状部材9a、9b、9cの延在方向及び長さを調整して各棒状部材9a、9b、9cの先端部分に位置する把持具33の位置を調整し、把持具33が送電鉄塔17の支柱17aを把持できるようにする。さらに、水平梁部材35も長さを調整し把持具33間に設置する。そして、把持具33の部材33aと33bとで送電鉄塔17の支柱17aを挟み込んだ状態で、部材33aと33bとをボルトなどで締め付けることで、把持具33で支柱17aを把持し、把持具33を支柱17aに固定する。把持具33を支柱17aに固定した後、図2及び図14に示すように、チェーン13を、枠体7の上端部側と下端部側に設けたスプロケット31や、その他のスプロケット19、21、27、さらに、駆動機11のスプロケット11fなどにかけて設置する。
そして、図1に示すように、制御部15と、駆動機11、枠体7の上端部側のスプロケット31を取り付けたロードセル41や送電鉄塔17の支柱17aに設置した傾斜計43などとを、配線45によって接続する。さらに、制御部15に、上昇速度や、上昇位置つまり迫り上げ高さなどの制御情報などを入力して設定を行う。
このように鉄塔迫上げ装置1の設置が完了したら、図16(a)に示すように、送電鉄塔17の既存の脚部17bと支柱17aとの連結を外し、制御部15の開始スイッチをオンすることなどで4台の駆動機11を作動させ、枠体7を柱状体5に沿って上昇させることで、送電鉄塔17の迫り上げを開始する。送電鉄塔17を迫り上げているとき、制御部15が有する表示板で、上昇速度、送電鉄塔17の傾き、送電鉄塔17の4本の支柱17a毎の荷重つまり鉄塔迫上げ装置1の枠体7の上端部側に取り付けられた各ロードセル41で検出した荷重の差などを確認する。
なお、送電鉄塔17から鉄塔迫上げ装置1には、垂直荷重V、水平荷重H、転倒モーメントMが作用する。転倒モーメントMは、送電鉄塔17の支柱17aの延在方向の力に置き換えられる。このため、鉄塔迫上げ装置1に作用する垂直荷重は、垂直荷重Vに転倒モーメントMの垂直荷重成分を加算した荷重値となる。したがって、各ロードセル41で検出した荷重の差は、転倒モーメントMを反映した値となっている。
ところで、送電鉄塔17を迫り上げているとき、転倒モーメントMにより送電鉄塔17の迫り上げ中に送電鉄塔17が傾いたとしても、このときの鉄塔迫上げ装置1への作用外力は、把持具33及びアーム部9から枠体7へ、枠体7から柱状体5の外面に当接するローラ32を介して柱状体5へ、さらに、柱状体5から台座3へ、そして、台座3から地盤へと伝達される。また、鉄塔迫上げ装置1の各部材は、想定した外力作用時の部材応力度が材料の許容応力度に対して十分な裕度を確保するように設計され、また、材料が選択されている。このため、送電鉄塔17を迫り上げているときに送電鉄塔17が傾いたとしても、鉄塔迫上げ装置1は送電鉄塔17を支持することができ、問題はない。
鉄塔迫上げ装置1によって送電鉄塔17が予め設定された高さまで迫り上げられると、図16(b)に示すように、制御部15は、4台の駆動機11を停止させて枠体7の上昇を止め、送電鉄塔17の迫り上げを停止する。送電鉄塔17の迫り上げを停止した後、制御部15は、送電鉄塔17の各支柱17aの移動距離、ロードセル41で検出した荷重の差、傾斜計43で検出した傾斜などに応じて4台の駆動機11を個別に動作させ、送電鉄塔17の傾きを修正し、ほぼ垂直に立った状態にする。そして、送電鉄塔17の傾きを修正した後、図16(b)から(c)に示すように、迫り上げた送電鉄塔17の裾部に鋼材を組み付けて新たに形成した部分17eを継ぎ足して行き、最初の嵩上げを行なう。
このとき、新たに形成した部分17eの支柱17aの下端部17cは、図3(b)及び図16(c)に示すように、台座3の固定部3dの設けられた仮基礎部材24に連結、固定され、これにより、最初の嵩上げを行なった送電鉄塔17が台座3の固定部3dに仮置きされた状態となる。
この状態で、鉄塔迫上げ装置1の把持具33を送電鉄塔17の支柱17aから取り外し、図16(d)に示すように、枠体7を下降させ、送電鉄塔17の支柱17aの新たに形成した部分17eの支柱17aの部分などを把持具33で把持して固定する。このとき、送電鉄塔17の最初の裾部と、新たに形成された部分17eとでは、支柱17aの傾斜や、鉄塔迫上げ装置1の枠体7から支柱17aまでの距離などが異なるが、アーム部9は、長さや方向を調整できるため、把持具33によって支柱17aの新たに形成された部分17eを把持することができる。
そして、図17(a)に示すように、送電鉄塔17の支柱17aの下端部17cと仮基礎部材24との連結を外し、制御部15の開始スイッチをオンすることなどで4台の駆動機11を作動させ、枠体7を柱状体5に沿って再度上昇させることで、送電鉄塔17の迫り上げを開始する。鉄塔迫上げ装置1によって送電鉄塔17が予め設定された高さまで迫り上げられると、図16(b)に示すように、制御部15は、4台の駆動機11を停止させて枠体7の上昇を止め、送電鉄塔17の迫り上げを停止する。
送電鉄塔17の迫り上げを停止した後、制御部15は、送電鉄塔17の各支柱17aの移動距離、ロードセル41で検出した荷重の差、傾斜計43で検出した傾斜などに応じて4台の駆動機11を個別に動作させ、送電鉄塔17の傾きを修正し、ほぼ垂直に立った状態にする。そして、送電鉄塔17の傾きを修正した後、図17(b)から(c)に示すように、迫り上げた送電鉄塔17の裾部に鋼材を組み付けて新たな裾部17fを継ぎ足して行き、新たな裾部17f用に予め形成しておいた新しい基礎17gに、新たな裾部17fの支柱17aの脚部17dを固定する。このように送電鉄塔17の新たな裾部17dを新しい基礎17gに固定した後、図17(d)に示すように、鉄塔迫上げ装置1を分解して送電鉄塔17内から搬出して除去し、送電鉄塔17の嵩上げを終了する。
なお、上記と同様の手順を繰り返すことで、さらに高く送電鉄塔17の嵩上げを行うこともでき、また、上記のように嵩上げを繰り返さず、送電鉄塔17を1回迫り上げて新たな裾部を形成して新しい基礎に固定して嵩上げ作業を終了するといった手順で行なうこともできる。
ここで、鉄塔迫上げ装置1の送電鉄塔17の迫り上げ能力の一例を示す。台座3は、図3乃至図5に示すようなもので、両側に延びる固定部3dの端間の長さが約8800mmのものを用いた。柱状体5は、図6及び図7に示すような上端部5a、中間部5b、5c、5d、脚部5eのような各ユニットで形成されたものであるが、図6と異なり4つ中間部を有する6つのユニットで形成されている。そして、柱状体5を形成する各ユニットとして、上端部が約1m、4つの中間部が各々約2m、脚部が約1.5mのものを用い、全高約10.5m、1辺が約1.4mの柱状体5を形成した。枠体7は、図9及び図10に示すようなもので、高さが約3m、1辺が約2mのものを用いた。アーム部9の棒状部材9a、9b、9cは、各々、約Φ140×4.5のものを用いた。
また、台座3、柱状体5、枠体7、アーム部9などの各部材は、設計荷重として垂直荷重V=167kN、水平荷重H=69kN、転倒モーメントM=1.37MN・mとして設計し、材料を選択した。これは、角度鉄塔、すなわち、送電線が方向を変える角に位置する66kVつまり高さ約26mの送電鉄塔を嵩上げすることを前提とし、送電線水平角度15度、送電鉄塔に対して90度の風向で設計風速17.5m/s、設計風速低減による送電線及び地線張力が最大使用張力の60%として設定した。
この結果、鉄塔迫上げ装置1の構成部材の単位重量は1.25t以下にでき、66kVの角度鉄塔を1回で5m程度が迫り上げることが可能である。さらに、角度鉄塔であることなどによる転倒モーメントM、また、垂直荷重V、水平荷重Hなどは、鉄塔迫上げ装置1で問題なく支えることができる。
迫り上げる送電鉄塔が、角度鉄塔でない場合や、角度鉄塔であっても送電線が方向を変える角度が緩い場合などには、図11(a)に示すような状態から、枠体7の4本の棒状の鋼材7aの一部をフランジ7eの連結を外すことで取り外し、枠体7の4本の棒状の鋼材7aの長さを図11(b)に示すように短くして枠体7の高さを1.5m程度に低くすることで、送電鉄塔を1回で6.5m程度まで迫り上げることが可能となる。また、チェーン13の長さを変更することなどでもさらに送電鉄塔を迫り上げ可能な高さを高くすることができる。さらに、異なる大きさの鉄塔迫上げ装置1を用いて154kVの同様の条件の角度鉄塔を迫り上げる場合、1回で8m程度までせり上げることが可能である。
加えて、迫り上げ能力としては、40t程度を得ることができ、迫り上げは、送電鉄塔の支柱の一本ごとに制御可能である。また、駆動機11の能力にもよるが、鉄塔迫上げ装置1による送電鉄塔の迫り上げ速度は、0.1−1.0m/分で可変でき、送電鉄塔の迫り上げ高さの位置決め精度は、1mm単位で制御することができる。
このように、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1は、台座3が送電鉄塔17を設置した地盤に設置し、柱状体5、枠体7、アーム部9及び把持具33、さらに、複数本のチェーン13や複数の駆動機11などの枠体7の駆動機構などが、全て、送電鉄塔17の支柱17a間の空間つまり送電鉄塔17内に位置する1つの装置によって形成されている。このため、鉄塔迫上げ装置を設置するための用地を確保する必要がなく、設置作業も容易である。さらに、送電鉄塔17を迫り上げるとき、送電鉄塔17が傾斜しても、鉄塔迫上げ装置1は送電鉄塔17を支えることができる。また、制御部15は、傾斜状態を検出するロードセル41や傾斜計43などの検出手段によって得た情報によって4台の駆動機11の動作を個別に制御できることにより、迫り上げる送電鉄塔17の傾きを修正できる。このため、支線を設置する必要がなく、支線の根枷を埋接するための用地を確保する必要もない。したがって、鉄塔迫上げ装置の使用が制限され難くなり、かつ、設置作業を容易にできる。
さらに、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1の台座3は、送電鉄塔17の支柱17aの各々の脚部17bに固定される固定部材23を設けた固定部3dを有している。このため、鉄塔迫上げ装置1は、送電鉄塔17の脚部17bを利用して固定でき、鉄塔迫上げ装置1の固定のために送電鉄塔17の基礎にアンカーボルトを打ち込んだり、または、それらの装置を固定するための基礎を形成したりする必要が無くなる。したがって、設置作業をより容易にできる。加えて、固定部材23は取り付け位置を調整できるため、様々な規格や大きさの鉄塔の根開きに対応させることができる。
さらに、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1の台座3は、固定部3dに、迫り上げた鉄塔の支柱の下端部を固定して仮置きするための仮基礎部材24が設けられている。このため、迫り上げた鉄塔を仮置きするための仮基礎を設けるため、アンカーボルトを打ち込んだり、仮基礎を形成したりする必要が無くなる。したがって、設置作業をより容易にできる。加えて、仮基礎部材24は取り付け位置を調整できるため、様々な規格や大きさの鉄塔の根開きに対応させることができる。
さらに、台座3は、2本の梁状部材3e、3fを、中心部3aで組みつけた十字状になっている。そして、十字状に組まれた2本の梁状部材3e、3fの各々の先端部分に固定部3dが設けられている。このため、台座3は、2本の梁状部材3e、3f、固定部3dとなる鋼材を別個に送電鉄塔17内に搬入できるため、台座の搬送や設置を容易にできる。
さらに、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1のアーム部9は、角錐状に集合した複数の棒状部材9a、9b、9cによって形成され、この棒状部材9a、9b、9cが集合した先端部分に把持具33が設けられている。そして、各々の棒状部材9a、9b、9cは、両端部が枠体7と把持具33に各々回動可能に連結されており、伸縮してこの棒状部材9a、9b、9cの長さを調整する伸縮部となるねじジャッキ部37を有している。したがって、各アーム部9の把持具33の位置を送電鉄塔17の支柱17aの位置に容易に対応させて把持具33で支柱17aを把持することができるため、設置作業をより容易にできる。加えて、アーム部9を形成する棒状部材9a、9b、9cは、連結部となるフランジ39によって分割可能になっているため、枠体7から送電鉄塔17の支柱17aまでの距離に応じて、アーム部9の延長、短縮が可能となる。
さらに、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1の枠体7は、枠体7の上端部のアーム部9が設けられた位置に対応する4つの角部の位置で索状部材であるチェーン13によって吊り下げられ、チェーン13及び駆動機11などからなる駆動機構は、枠体7の上端部のアーム部9の数に対応する数つまり4組設けられている。したがって、把持具33によって送電鉄塔17の支柱17a毎に駆動機構によって迫り上げた高さや位置などの状態を調整できるため、送電鉄塔の傾きをより確実に修正できる。加えて、枠体7の上端部にはチェーン13をかけるスプロケット31が設けられている。そして、チェーン13の、柱状体5の頂部となるスプロケット支持梁29に固定された部分と、柱状体5のスプロケット支持梁29に設けられたスプロケット27にかけられた部分との間の部分が、枠体7の上端部に設けられたスプロケット31にかけられていることで枠体7を吊り下げている。したがって、送電鉄塔を迫り上げるのに要する力を低減できる。
さらに、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1では、検出手段として、枠体7を吊るしているチェーン13にかかる荷重を検出する荷重計であるロードセル41を設けている。これにより、枠体7を吊るしている各チェーン13にかかる荷重を検出できるため、各チェーン13にかかる荷重の差に基づいて送電鉄塔の傾きを確実に修正することができる。加えて、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1では、検出手段として、送電鉄塔17の傾きに対応する情報を検出する傾斜計43も有している。このため、送電鉄塔の実際の傾きを検出することで、送電鉄塔の傾きをより確実に修正できる。
さらに、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1の枠体7は、枠体7の上下方向に延在する4本の棒状の鋼材7aが、これらの棒状の鋼材7aに設けられた連結部となるフランジ7dによって分割可能になっている。このため、迫り上げる送電鉄塔が角度鉄塔であるか否かといった条件などに応じて、枠体7を高さ方向つまり移動方向に延長、短縮できる。また、枠体7を高さ方向に延長、短縮することによって、鉄塔迫上げ装置によって迫り上げ可能な高さを増大できる。
ところで、従来の油圧式のシリンダやジャッキでは、その長さによってストローク長さ、つまり、一工程あたりで施工可能な長さが決定され、制限されることから、所望の高さに鉄塔を迫り上げることができない場合がある。しかし、本実施形態の鉄塔迫り上げ装置1では、柱状体5の高さや枠体7の高さの調整などにより、所望の高さに鉄塔を迫り上げることが可能となる。
加えて、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1の柱状体5は、四角い筒状になっており、横断面がL字状の4つの部材25を組み付けることで形成されている。このため、柱状体5の送電鉄塔17内への搬入や設置を容易にできる。
また、本実施形態では、枠体7を吊るしているチェーン13にかかる荷重を検出する位置にロードセル41を設けている。しかし、ロードセル41は、図17に示すように、アーム部9を構成する棒状部材のうち、上下方向に延在する棒状部材9cに設けた構成にすることもできる。このような構成にすると、送電鉄塔17が傾くことによって枠体7に作用する転倒モーメントの検出精度を向上できる。したがって、送電鉄塔の傾きを修正するための制御部15による駆動機11の動作の制御精度が向上する。なお、枠体7の上端部側と下端部側の両方のアーム部9の棒状部材9cに作用する転倒モーメントの割合が明らかである場合などは、図17に示すように枠体7の上端部側と下端部側の両方のアーム部9の棒状部材9cに設置するだけでなく、上端部側のアーム部9の棒状部材9cのみにロードセル41を設置した構成にすることもできる。
また、本実施形態では、アーム部9は3本の棒状部材9a、9b、9cにより三角錐状に形成したが、4本以上の棒状部材で形成することもできる。ただし、アーム部9を3本の棒状部材9a、9b、9cで形成すれば、最低限の棒状部材の数で把持具33の位置を必要な状態に調整できる。したがって、装置構成を簡素化する上では、本実施形態のように、アーム部は3本の棒状部材で形成することが望ましい。
また、本実施形態では、送電鉄塔の傾きに対応する情報を検出する検出手段として、荷重計であるロードセル41と傾斜計43を備えている。しかし、ロードセル41と傾斜計43のいずれか一方を備えた構成などにすることもできる。ただし、送電鉄塔の傾きを修正するための駆動機の制御精度を向上する上では、ロードセル41と傾斜計43の両方を備えていることが望ましい。また、本実施形態では、荷重計としてロードセル41を設けたが、ロードセル41と同様の機能が得られれば荷重計としてはロードセル以外の様々な荷重計を用いることができる。
また、本実施形態では、駆動機11を台座3に設置しているが、駆動機の大きさなどによっては、柱状体5の頂部に設置することなどもできる。ただし、設置作業を容易にするうえでは、駆動機を吊り上げる作業などをなくすため、駆動機は台座に設置した方が有利である。さらに、チェーン13の取り回しは、本実施形態のような状態に限らず、駆動機の設置位置や、枠体7を吊り下げる位置などに応じて適宜変更できる。また、迫り上げる送電鉄塔の重量によっては、チェーン13を枠体7の上端部側に設けたスプロケット31で折り返さず、チェーン13の端部を直接枠体7の上端部に連結することなどもできる。
また、本実施形態では、索状部材としてチェーン13を、滑車状部材としてチェーン13に対応するスプロケット11f、19、21、27、31を用いている。しかし、索状部材として、迫り上げる鉄塔の重量などに応じ、ワイヤやベルトなど様々な索状部材を用いることができ、このとき、滑車状部材としては、用いる索状部材の形態などに応じ、金車や滑車などの滑車状部材を適宜用いることができる。
また、本実施形態では、送電鉄塔を迫り上げる場合を例として説明を行ったが、本発明の鉄塔迫上げ装置は、送電鉄塔に限らず、配電線が河川や道路を跨ぐ箇所などに用いられる塔高のある配電鉄塔や、携帯電話やPHSなどの基地局などに設置される鉄塔など、様々な鉄塔の迫り上げに用いることができる。
また、本発明の鉄塔迫上げ装置は、本実施形態の鉄塔迫上げ装置1のような構造、形状、材料などに限らず、本実施形態で示したような役割の台座、柱状体、枠体、駆動機構、検出手段、制御部を備えていれば、様々な構造、形状、材料などで形成できる。