JP2006046188A - スクロール式流体機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】 固定スクロールと可動スクロールの軸方向圧接面の潤滑不良を防止する。
【解決手段】
固定スクロール(22)と可動スクロール(23)が接触する軸方向圧接面に潤滑油を導入するための油導入路(51)が可動スクロール(23)に形成され、該油導入路(51)の一端が閉塞部材(60)で閉塞された構成のスクロール式流体機械において、可動スクロール(23)と閉塞部材(60)の接触面に、可動スクロール(23)及び閉塞部材(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)を形成する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、スクロール式流体機械に関し、特に、第1スクロールと第2スクロールが接触する軸方向圧接面に潤滑油を導入するための油導入路の構造に関するものである。
従来より、スクロール式流体機械の一例として、冷凍サイクルで冷媒を圧縮するスクロール圧縮機が用いられている。スクロール圧縮機は、ケーシング内に、固定側鏡板に渦巻き状の固定側ラップが突設された固定スクロール(第1スクロール)と、可動側鏡板に渦巻き状の可動側ラップが突設された可動スクロール(第2スクロール)とを有する圧縮機構を備えている。固定スクロールはハウジング(固定部材)を介してケーシングに固定され、可動スクロールは駆動軸の偏心軸部に連結されている。
上記圧縮機構では、固定側ラップと可動側ラップが互いに噛合するとともに、固定側鏡板と可動側鏡板とが軸方向に圧接するように構成され、両ラップ間に圧縮室が形成されている。そして、可動スクロールが固定スクロールに対して自転防止機構(オルダムリング)を介することにより自転することなく公転のみを行うことで、上記圧縮室の容積を減少させてその内部で冷媒を圧縮するように構成されている。
このスクロール圧縮機においては、固定側鏡板と可動側鏡板との軸方向圧接面に潤滑油が供給される(例えば特許文献1参照)。図4は、この特許文献1のスクロール圧縮機における潤滑油の供給構造の要部を示している。このスクロール圧縮機では、ケーシング内の潤滑油を、駆動軸(100)の下端に設けた給油ポンプ(図示せず)によって、駆動軸(100)の主給油路(101)と可動スクロール(110)の油導入路(111)とを介して上記軸方向圧接面(120)に供給するようにしている。
上記油導入路(111)は、可動スクロール(110)の外周面から内周側に向かって所定深さで形成された本体通路(112)と、上記主給油路(101)から本体通路(112)に連通する第1連通路(113)と、上記本体通路(112)から軸方向圧接面(120)に連通する第2連通路(114)とから構成されている。この油導入路(111)の本体通路(112)は、外周端が座付きの閉塞部材(130)により閉塞されている。上記閉塞部材(130)は、上記本体通路(112)の外周端にねじ込むことにより固定されている。
特開2004−060532号公報
しかし、上記構成では、上記閉塞部材(130)を設けているにもかかわらず、油導入路(111)の本体通路(112)と閉塞部材(130)の隙間から潤滑油が漏れて、軸方向圧接面(120)が潤滑不良になるおそれがあった。また、この潤滑不良を防止するために、例えば閉塞部材(130)の座面径を拡大すると、可動スクロール(110)の鏡板(110a)の厚さも厚くすることが必要になり、可動スクロール(110)の質量が増加してしまう。
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、可動スクロール(第2スクロール)の質量増加を防止しながら、油導入路からの油の漏れを防止して、軸方向圧接面の潤滑不良を防止することである。
本発明は、第2スクロール(23)と閉塞部材(60)との接触面に、第2スクロール(23)及び閉塞部材(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)を形成するようにしたものである。
第1の発明は、互いに噛合するとともに軸方向に圧接する第1スクロール(22)と第2スクロール(23)とを有するスクロール機構(20)と、油溜まり(18)に連通する主給油路(34)と、該主給油路(34)から両スクロール(22,23)の軸方向圧接面(50)に潤滑油を導入するように第2スクロール(23)に形成された油導入路(51)とを備え、上記油導入路(51)が、第2スクロール(23)の外周面から径方向内側に向かって所定深さで形成された本体通路(52)と、上記主給油路(34)と本体通路(52)とに連通する第1連通路(53)と、該本体通路(52)から上記軸方向圧接面(50)に連通する第2連通路(54)とを備え、さらに上記本体通路(52)の外周端に螺合する閉塞部材(60)を備えたスクロール式流体機械を前提としている。
そして、このスクロール式流体機械は、上記第2スクロール(23)と閉塞部材(60)の接触面に、上記第2スクロール(23)及び閉塞部材(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)が形成されていることを特徴としている。ここで言う「接触面」は、例えば第2スクロール(23)の本体通路(52)と閉塞部材(60)とが螺合する箇所の接触面(螺合面)や、閉塞部材(60)が座部(62)を有する場合には第2スクロール(23)と座部(62)との接触面などを含む用語である。また、例えば、第1スクロール(22)を固定スクロールとし、第2スクロール(23)を可動スクロールとすることができる。
この第1の発明では、油溜まり(18)から主給油路(34)と油導入路(51)とを介して両スクロール(22,23)の軸方向圧接面(50)に潤滑油が供給される。
ここで、上記油導入路(51)には閉塞部材(60)が螺合しており、上記第2スクロール(23)と閉塞部材(60)の接触面には、上記第2スクロール(23)及び閉塞部材(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)が形成されている。したがって、上記コーティング層(70)が第2スクロール(23)と閉塞部材(60)の間で押し潰され、高いシール性能を得ることができる。
第2の発明は、第1の発明のスクロール式流体機械において、第2スクロール(23)を駆動する駆動軸(31)を備え、主給油路(34)が駆動軸(31)に形成され、潤滑油を給油手段(35)によって両スクロール(22,23)の軸方向圧接面(50)に導入することを特徴としている。
この第2の発明では、油溜まり(18)の潤滑油は、給油手段(35)によって、該駆動軸(31)に形成された主給油路(34)を通って第2スクロール(23)の油導入路(51)に導入された後、両スクロール(22,23)の軸方向圧接面(50)に供給される。
第3の発明は、第1または第2の発明のスクロール式流体機械において、閉塞部材(60)が、第2スクロール(23)の外周面に当接する座部(62)を有することを特徴としている。
この第3の発明では、閉塞部材(60)の座部(62)が第2スクロール(23)の外周面に当接する。この当接面に上記コーティング層(70)を形成しておけば、閉塞部材(60)の座部(62)と第2スクロール(23)の外周面との間でコーティング層(70)が押し潰され、高いシール性能を得ることができる。
第4の発明は、第1から第3のいずれか1の発明のスクロール式流体機械において、第2スクロール(23)の全体にコーティング層(70)が形成されていることを特徴としている。
この第4の発明では、可動スクロール(23)と閉塞部材(60)との接触面にだけコーティング層(70)を形成するのではなく、第2スクロール(23)の全体にコーティング層(70)を形成することで、コーティング層(70)を容易に形成しつつ、高いシール性能を得ることができる。
第5の発明は、第1から第4のいずれか1の発明のスクロール式流体機械において、コーティング層(70)がリューブライト処理により形成されたものであることを特徴としている。
この第5の発明では、第2スクロール(23)と閉塞部材(60)との接触面にリューブライト処理をしてコーティング層(燐酸マンガン皮膜)(70)を形成することによって、第2スクロール(23)と閉塞部材(60)との間のシール性を高めることができる。
上記第1の発明によれば、上記第2スクロール(23)と閉塞部材(60)の接触面に、上記第2スクロール(23)及び閉塞部材(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)を形成し、上記コーティング層(70)を第2スクロール(23)と閉塞部材(60)の間で押し潰すことで高いシール性能を得ることができる。したがって、油導入路(51)からの油の漏れを防止して、軸方向圧接面(50)の潤滑不良を防止することができる。また、閉塞部材(60)の座面径の拡大が不要のため、第2スクロール(23)の質量増加を防止することもできる。
上記第2の発明によれば、第2スクロール(23)を駆動する駆動軸(31)に主給油路(34)を形成しているため、給油手段(35)によって、油溜まり(18)の潤滑油を駆動軸(31)の主給油路(34)と第2スクロール(23)の油導入路(51)とを介して両スクロール(22,23)の軸方向接触面(50)に供給できる。したがって、簡単な構造で軸方向接触面(50)への給油を実現できる。
上記第3の発明によれば、閉塞部材(60)に、第2スクロール(23)の外周面に当接する座部(62)を設けているため、この当接面に上記コーティング層(70)を形成しておくことにより、閉塞部材(60)の座部(62)と第2スクロール(23)の外周面との間でコーティング層(70)を押し潰すことで高いシール性能を得ることができる。したがって、油導入路(51)からの油の漏れを防止して、軸方向圧接面(50)の潤滑不良を防止することができるとともに、閉塞部材(60)の座面径を拡大しなくてもよいため、第2スクロール(23)の質量増加を防止することもできる。
上記第4の発明によれば、第2スクロール(23)の全体にコーティング層(70)を形成することにより、コーティング層を容易に形成しつつ、シール性を高めることができる。
上記第5の発明によれば、第2スクロール(23)と閉塞部材(60)との接触面にリューブライト処理をしてコーティング層(燐酸マンガン皮膜)(70)を形成することによって、第2スクロール(23)と閉塞部材(60)との間のシール性を高め、軸方向圧接面(50)の潤滑不良を防止できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態は、スクロール圧縮機に関するものである。
図1は本実施形態に係るスクロール圧縮機(1)の縦断面図である。このスクロール圧縮機(1)は、冷媒が循環して冷凍サイクルの運転動作を行う図外の冷媒回路において、冷媒の圧縮行程を行う機能を持つ。
このスクロール圧縮機(1)は、縦長円筒状に形成された密閉ドーム型のケーシング(10)を有している。このケーシング(10)は、上下方向に延びる軸線を有する円筒状の胴部であるケーシング本体(11)と、その上端部に気密状に溶接されて一体接合され、上方に突出した凸面を有する椀状の上壁部(12)と、ケーシング本体(11)の下端部に気密状に溶接されて一体接合され、下方に突出した凸面を有する椀状の底壁部(13)とから構成された圧力容器であり、その内部は空洞である。
上記ケーシング(10)の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構(スクロール機構)(20)と、この圧縮機構(20)の下方に配置される駆動モータ(30)とが収容されている。この圧縮機構(20)と駆動モータ(30)とは、ケーシング(10)内を上下方向に延びるように配置される駆動軸(31)によって連結されている。
上記圧縮機構(20)は、ケーシング本体(11)に固定されるハウジング(21)と、該ハウジング(21)の上面に密着して配置される固定スクロール(第1スクロール)(22)と、これら固定スクロール(22)及びハウジング(21)間に配置され、固定スクロール(22)に噛合する可動スクロール(第2スクロール)(23)と、該可動スクロール(23)の自転防止機構であるオルダムリング(28)とを備えている。ハウジング(21)はその外周面において周方向の全体に亘ってケーシング本体(11)に圧入固定されている。つまり、ケーシング本体(11)とハウジング(21)とは全周に亘って気密状に密着されている。そして、本実施形態では、ケーシング(10)内がハウジング(21)の下方の高圧空間(16)とハウジング(21)の上方の低圧空間(17)とに区画されている。
上記ハウジング(21)には、その上面中央を凹陥してなるハウジング凹部(21a)と、下面中央から下方に延びるラジアル軸受部(21b)とが形成されている。そして、ハウジング(21)には、このラジアル軸受部(21b)の下端面とハウジング凹部(21a)の底面との間を貫通するラジアル軸受孔(21c)が設けられていて、このラジアル軸受孔(21c)に上記駆動軸(31)の上端部がラジアル軸受(21d)を介して回転可能に支持されている。
また、上記駆動軸(31)の下端部は、ケーシング(10)の下部に設けられている下部軸受け(19)に回転可能に支持されている。
上記ケーシング(10)の上壁部(12)には、冷媒回路の冷媒を圧縮機構(20)に導く吸入管(14)が貫通固定されている。また、ケーシング本体(11)には、ケーシング(10)内の冷媒をケーシング(10)外に吐出させる吐出管(15)が貫通固定されている。上記吸入管(14)は上記低圧空間(17)を上下方向に延び、その内端部は圧縮機構(20)の固定スクロール(22)を貫通して、後述する圧縮室(25)に連通しており、この吸入管(14)により圧縮室(25)内に冷媒が吸入されるようになっている。
上記駆動モータ(30)は、ケーシング(10)の内壁面に固定された環状のステータ(32)と、このステータ(32)の内側で回転自在に構成されたロータ(33)とを備えたモータで構成されている。上記ロータ(33)には、上記駆動軸(31)を介して圧縮機構(20)の可動スクロール(23)が連結されている。
上記駆動モータ(30)の下方の下部空間は高圧に保たれており、その下端部に相当する底壁部(13)の内底部は潤滑油が貯留される油溜まり(18)になっている。上記駆動軸(31)の内部には、油溜まり(18)に連通する主給油路(34)が形成されている。この主給油路(34)は後述する可動スクロール(23)の背面の油室(27)に連通している。そして、上記下部空間内のガス圧力により潤滑油の油面を加圧して該潤滑油を高圧にし、この高圧の潤滑油を、後述する第1空間(S1)との差圧と、駆動軸(31)の下端に設けられた給油手段である給油ポンプ(35)の作用とを利用して油室(27)に汲み上げるように構成されている。このようにして汲み上げられた潤滑油は、主給油路(34)を通して後述する圧縮機構(20)の各摺動部分及び油室(27)へ供給される。
上記固定スクロール(22)は、固定側鏡板(22a)と、この固定側鏡板(22a)の下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)の固定側ラップ(22b)とで構成されている。一方、上記可動スクロール(23)は、可動側鏡板(23a)と、この可動側鏡板(23a)の上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)の可動側ラップ(23b)とで構成されている。そして、上記固定側ラップ(22b)と可動側ラップ(23b)とは互いに噛合しており、このことにより固定スクロール(22)と可動スクロール(23)との間において、両ラップ(22b,23b)の接触部間が圧縮室(25)に形成されている。
上記可動スクロール(23)は、上記オルダムリング(28)を介してハウジング(21)に支持され、固定スクロール(22)に対して自転することなく公転する。可動側鏡板(23a)の下面の中心部には有底円筒状のボス部(23c)が突設されている。一方、上記駆動軸(31)の上端には偏心軸部(31a)が設けられ、この偏心軸部(31a)は上記可動スクロール(23)のボス部(23c)に回転可能に嵌入されている。さらに上記駆動軸(31)には、上記ハウジング(21)のラジアル軸受部(21b)の下側に、可動スクロール(23)や偏心軸部(31a)等と動的バランスを取るためのカウンタウェイト部(31b)が設けられている。このカウンタウェイト部(31b)により重さのバランスを取りながら駆動軸(31)が回転することで、アンバランスによる振動を発生することなく運転できる。そして、この可動スクロール(23)の公転に伴い、上記圧縮室(25)は、両ラップ(22b,23b)間の容積が拡大することで上記吸入管(14)より冷媒を吸入し、該容積が中心に向かって減少することで冷媒を圧縮するように構成されている。
また、上記圧縮機構(20)には、固定スクロール(22)とハウジング(21)とに亘って、ガス通路(29)が上記圧縮室(25)と高圧空間(16)とを接続するように形成されている。このガス通路(29)により、圧縮室(25)で圧縮された冷媒を高圧空間(16)に流出させるようになっている。
上記可動側鏡板(23a)の背面側(下面側)には、上記可動スクロール(23)のボス部(23c)と上記駆動軸(31)の偏心軸部(31a)との間に、上記油室(27)が区画されており、この油室(27)に上記主給油路(34)からの高圧油が供給されるようになっている。
そして、上記ハウジング(21)におけるハウジング凹部(21a)の外周には、スプリング(図示せず)によって可動側鏡板(23a)の背面(下面)に圧接するシール部材(24)が設けられている。このシール部材(24)によって、ハウジング(21)と固定スクロール(22)との間の空間が、シール部材(24)の外径側に位置する低圧の第1空間(S1)と、その内径側に位置する高圧の第2空間(S2)とに区画されている。
上記第2空間(S2)には図示しない通路により高圧ガスが導入されて高圧に保たれており、この高圧ガスの圧力と上記油室(27)の高圧油の圧力とにより可動スクロール(23)を固定スクロール(22)に向かって押圧する軸方向の押付力が生じている。このようにして、第2空間(S2)が可動側鏡板(23a)の背面(下面)に押付力を作用させる高圧空間を構成している。
上記固定スクロール(22)及び可動スクロール(23)の鏡板(22a,23a)同士は外周部分で互いに圧接した状態で摺接可能となっており、これらの摺接面(軸方向圧接面)間でスラスト軸受面(50)が構成されている。
可動スクロール(23)の拡大断面図である図2に示すように、可動側鏡板(23a)には、上記主給油路(34)から両スクロールの軸方向圧接面(50)に潤滑油を導入する油導入路(51)が形成されている。この油導入路(51)は、可動スクロール(23)の外周面から径方向内側に向かって所定深さで形成された本体通路(52)と、上記油室(27)を介して上記主給油路(34)と本体通路(52)とに連通する第1連通路(53)と、該本体通路(52)から上記軸方向圧接面(50)に連通する第2連通路(54)とを備えている。そして、上記本体通路(52)には閉塞部材としてのスパイラルシャフト(60)が螺合している。
スパイラルシャフト(60)の装着部の拡大断面図である図3に示すように、スパイラルシャフト(60)は、油導入路(51)の径方向外側端部に形成されている雌ねじ部(55)に螺合する雄ねじ部(61)と、可動スクロール(23)の外周面に接するように雄ねじ部(61)に連続して形成された座部(頭部)(62)と、油導入路(51)の本体通路(52)内に延在する流量制限部(63)とを備え、この流量制限部(63)に油通路となるらせん溝(64)が形成されている。
上記スパイラルシャフト(60)は、可動スクロール(23)と線膨張係数の差が小さい材料により形成されている。これにより、熱変形によるねじのゆるみを防止することが可能となる。
以上の構成により、油溜まり(18)の潤滑油は、主給油路(34)から油室(27)に汲み上げられた後、第1連通路(53)から油導入路(51)の本体通路(52)内に入り、さらにこの本体通路(52)内においてスパイラルシャフト(60)のらせん溝(64)を通って第2連通路(54)から固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の軸方向圧接面(50)に供給される。
ここで、本実施形態では、固定スクロール(22)と可動スクロール(23)には、全面にリューブライト処理が施されている。リューブライト処理は、コーティング層として燐酸マンガン皮膜(70)を形成する表面処理で、素材の全面に均一で剥離しにくく、耐摩耗性の高い皮膜が形成される処理である。これにより、固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の動作が安定する。
一方、リューブライト処理によって形成される燐酸マンガン皮膜(70)は、可動スクロール(23)及びスパイラルシャフト(60)が鉄系材料で形成されるのに対して、これら材料よりも硬度が低い特性を有している。したがって、可動スクロール(23)にスパイラルシャフト(60)をねじ込んだときに、リューブライト処理の皮膜(70)を螺合面で押し潰すとともに、該皮膜(70)を可動スクロール(23)の外周面でスパイラルシャフト(60)の座部(62)が押し潰し、高いシール効果を得ることができる。
−運転動作−
次に、このスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
駆動モータ(30)を起動すると、ステータ(32)に対してロータ(33)が回転し、それによって駆動軸(31)が回転する。駆動軸(31)が回転すると、圧縮機構(20)の可動スクロール(23)が固定スクロール(22)に対して自転せずに公転のみ行う。このことにより、低圧の冷媒が吸入管(14)を通して圧縮室(25)の周縁側から圧縮室(25)に吸引され、この冷媒が圧縮室(25)の容積変化に伴って圧縮される。そして、圧縮された冷媒は、高圧となって圧縮室(25)から吐出され、ガス通路(29)を通して高圧空間(16)へ流出する。
そして、高圧空間(16)の冷媒は、吐出管(15)に流入してケーシング(10)外に吐出される。ケーシング(10)外に吐出された冷媒は、冷媒回路を循環した後、再度吸入管(14)を通って圧縮機(1)に吸入されて圧縮され、このような冷媒の循環が繰り返される。
一方、ケーシング(10)における底壁部(13)の油溜まり(18)に貯留された油は、下部空間内のガス圧により加圧されている。この高圧となった油は、低圧空間である第1空間(S1)との差圧と、給油ポンプ(35)との作用により、主給油路(34)を通して軸受の各摺動部分と油室(27)へ供給される。
このとき、第2空間(S2)に導かれた高圧ガスの圧力と油室(27)での高圧油の圧力とにより可動スクロール(23)が固定スクロール(22)に向かって所定の押付力で押圧される。この押付力が圧縮室(25)での冷媒の圧縮により可動スクロール(23)に発生した軸方向の力である可動スクロール(23)と固定スクロール(22)を離反させる力に対抗するものとなる。これによって両スクロール(23,22)は、適正間隔を保ち、運転できる。
上記油室(27)の油の一部は、可動側鏡板(23a)内の油導入路(51)を介して固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の軸方向圧接面(50)に供給される。このことにより、上記軸方向圧接面(50)の潤滑が行われる。
−実施形態の効果−
この実施形態によれば、固定スクロール(22)と可動スクロール(23)にリューブライト処理を施すことによって、上記可動スクロール(23)とスパイラルシャフト(60)の接触面に、該可動スクロール(23)及びスパイラルシャフト(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)として燐酸マンガン皮膜を形成している。したがって、上記コーティング層(70)を、可動スクロール(23)とスパイラルシャフト(60)の螺合面と、可動スクロール(23)の外周面とスパイラルシャフト(60)の座部(62)との間で押し潰すことで高いシール性能を得ることができる。このため、油導入路(51)からの油の漏れを防止して、軸方向圧接面(50)の潤滑不良を防止することができる。また、スパイラルシャフト(60)の座面径の拡大を不要にできるため、可動側鏡板(23a)の厚さを増やす必要がなく、可動スクロール(23)の質量が増加するのを防止することもできる。さらに、コーティング層(70)は、可動スクロール(23)の全面にリューブライト処理をすることによって容易に形成することができる。
また、可動スクロール(23)を駆動する駆動軸(31)に給油ポンプ(35)を設け、主給油路(34)を駆動軸(31)に形成しているため、油溜まり(18)の潤滑油を駆動軸(31)と可動スクロール(23)の油導入路(51)とを介して両スクロール(22,23)の軸方向接触面(50)に供給できる。したがって、簡単な構造で軸方向接触面(50)への給油を実現できる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、リューブライト処理をすることによって燐酸マンガン皮膜を可動スクロール(23)とスパイラルシャフト(60)の間に形成しているが、可動スクロール(23)及びスパイラルシャフト(60)よりも硬度の低い皮膜であれば、燐酸マンガン皮膜以外のコーティング層(70)を形成してもよい。
また、可動スクロール(23)の全体にコーティング層(70)を形成しなくても、少なくとも可動スクロール(23)とスパイラルシャフト(60)の接触面にコーティング層(70)を形成すればよい。例えば、可動スクロール(23)とスパイラルシャフト(60)の螺合面や、可動スクロール(23)の外周面とスパイラルシャフト(60)の座部(62)の接触面において、可動スクロール(23)側かスパイラルシャフト(60)側のいずれか一方にコーティング層(70)を形成しておけばよい。
また、上記実施形態では、給油手段として駆動軸(31)の下端に給油ポンプ(35)を設け、この給油ポンプ(35)による強制給油方式を採用した例について説明したが、油溜まり(18)を高圧にする一方で、固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の軸方向圧接面(50)を低圧にして、その差圧による給油を行う方式(差圧給油方式)の給油手段を採用してもよい。
以上説明したように、本発明は、固定スクロールと可動スクロールが接触する軸方向圧接面に潤滑油を導入するための油導入路が可動スクロールに形成され、該油導入路の一端が閉塞部材で閉塞された構成のスクロール式流体機械について有用である。
本発明の実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 可動スクロールの拡大断面図である。 スパイラルシャフトの装着部の拡大断面図である。 従来のスクロール圧縮機における潤滑油の供給構造を示す要部断面図である。
符号の説明
(1) スクロール圧縮機(スクロール式流体機械)
(10) ケーシング
(18) 油溜まり
(20) 圧縮機構(スクロール機構)
(22) 固定スクロール(第1スクロール)
(23) 可動スクロール(第2スクロール)
(30) 駆動モータ
(31) 駆動軸
(34) 主給油路
(35) 給油ポンプ(給油手段)
(50) スラスト軸受け面(軸方向圧接面)
(51) 油導入路
(52) 本体通路
(53) 第1連通路
(54) 第2連通路
(60) スパイラルシャフト(閉塞部材)
(62) 座部
(70) コーティング層

Claims (5)

  1. 互いに噛合するとともに軸方向に圧接する第1スクロール(22)と第2スクロール(23)とを有するスクロール機構(20)と、油溜まり(18)に連通する主給油路(34)と、該主給油路(34)から両スクロール(22,23)の軸方向圧接面(50)に潤滑油を導入するように第2スクロール(23)に形成された油導入路(51)とを備え、
    上記油導入路(51)が、第2スクロール(23)の外周面から径方向内側に向かって所定深さで形成された本体通路(52)と、上記主給油路(34)と本体通路(52)とに連通する第1連通路(53)と、該本体通路(52)から上記軸方向圧接面(50)に連通する第2連通路(54)とを備え、
    上記本体通路(52)の外周端に螺合する閉塞部材(60)を備えたスクロール式流体機械であって、
    上記第2スクロール(23)と閉塞部材(60)の接触面には、上記第2スクロール(23)及び閉塞部材(60)よりも硬度の低いコーティング層(70)が形成されていることを特徴とするスクロール式流体機械。
  2. 請求項1に記載のスクロール式流体機械において、
    第2スクロール(23)を駆動する駆動軸(31)を備え、主給油路(34)が駆動軸(31)に形成され、潤滑油を給油手段(35)によって両スクロール(22,23)の軸方向圧接面(50)に導入することを特徴とするスクロール式流体機械。
  3. 請求項1または2に記載のスクロール式流体機械において、
    閉塞部材(60)が第2スクロール(23)の外周面に当接する座部(62)を有することを特徴とするスクロール式流体機械。
  4. 請求項1から3のいずれか1に記載のスクロール式流体機械において、
    第2スクロール(23)の全体にコーティング層(70)が形成されていることを特徴とするスクロール式流体機械。
  5. 請求項1から4のいずれか1に記載のスクロール式流体機械において、
    コーティング層(70)がリューブライト処理により形成されたものであることを特徴とするスクロール式流体機械。
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