JP2006045521A - シアンインク、インクセット、インクと反応液のセット、及び画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒及び貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4種の水性インクを有するインクセットに適用されるシアンインクにおいて、該シアンインク中の良溶媒及び貧溶媒の比率B1/A1が特定の範囲であり、且つ、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、且つ、前記インクセットが具備するシアンインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒及び貧溶媒の比率B/Aと前記B1/A1が特定の関係を満たすシアンインク。
【選択図】なし
Description
(1)インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させる場合には、インク滴の体積に比較して、記録媒体表面を色材で被覆することのできる面積(いわゆる、エリアファクター)が十分でない場合がある。従って、同じ画像濃度を得るために必要となるインクの付与量が多くなるという課題。
(2)インクの浸透性を高める場合には、当該インクは記録媒体の表面ばかりでなく、記録媒体の厚み方向へも浸透してしまい、記録媒体の表面近傍に高濃度で色材を分布させることができず、高画像濃度を達成できないという課題。
(3)普通紙等の記録媒体における画像濃度を向上させることを目的としてインクの色材含有量を増加した、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの少なくとも4種の水性インクを有するインクセットを用いて、各色のインクを混色させて表面光沢を有する記録媒体に画像を形成する場合には、シアンインクにより形成された画像部分においてブロンズ現象が生じるという課題。又、前記ブロンズ現象を抑制するために、前記インクセットが具備するシアンインクにおいて色材含有量を低下させると、画像のカラーバランスが悪くなるという課題。
又、本発明にかかるインクセットは、上記構成のシアンインクと、少なくとも、水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒及び該水不溶性色材に対する貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインク、の4種の水性インクを有することを特徴とする。
尚、本発明の技術要旨を思想的にまとめると、水、水不溶性色材、複数の水溶性有機溶剤を含有するシアンインクにおいて、該複数の水溶性有機溶剤が、前記水不溶性色材に対する良溶媒及び前記水不溶性色材に対する貧溶媒であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち、最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、且つ、前記貧溶媒が良溶媒よりも先行して記録媒体に浸透し、記録媒体表面近傍での良溶媒リッチとなった液媒体中の前記水不溶性色材の凝集を補助することを特徴とするシアンインクである。
ここで、本発明における画像形成のメカニズムについて例を挙げて説明する。上記で述べたように、水溶性有機溶剤及び水不溶性色材の特性を利用することで、本発明にかかる水性インクが、耐ブロンズ性が得られる程度の低い色材含有量であっても、記録媒体、特に普通紙上に印字された場合には、以下に述べるような理由によって、非常に優れた画像濃度及びカラーバランスをもたらすことが可能になると考えられる。
本発明におけるカラーバランスとは、各色によって発現可能な色再現範囲の相対的な広さの程度のことである。ここでは、カラーバランスについて図13を用いて説明する。
本発明者らは、水不溶性色材を含有するインクと、該インクと接触することによって該インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を用いて画像を形成するシステム(以後、2液システムと呼ぶこともある)について検討を行った。
上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否か、即ち、水不溶性色材、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質(後述の分散剤や界面活性剤等)との関係において決定される。従って、本発明にかかる水性インクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、使用する水不溶性色材の分散状態の安定度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、下記のような判定方法が有効であることを見出した。
・貧溶媒:上記において、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象の水溶性有機溶剤を貧溶媒として定義した。
・良溶媒:粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象の水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。
本発明においては、水溶性有機溶剤を上記した特定の構成とする以外に、ブリストウ法によって求められる、複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒である場合、上記で述べた画像形成のメカニズムを発現することができる。
本発明にかかるシアンインクは、インク成分中の水溶性有機溶剤を、使用する水不溶性色材との関連において、上記で説明した構成とすることを必須とするが、それ以外は、従来の水性インクと同様の構成とすればよい。下記に、本発明の水性インクを構成する各成分について説明する。
本発明にかかる水性インクを構成する水性媒体について説明する。前記水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である。本発明のシアンインクにおいては、先に述べた方法で、水溶性有機溶剤を、当該水不溶性色材に対する良溶媒と貧溶媒とに判別する。そして、かかる判定結果を踏まえて、水性インクにおいて少なくとも良溶媒と貧溶媒とが混在し、且つ、各水溶性有機溶剤の含有量が本発明で規定する範囲内となるように、更に、ブリストウ法によって求められる、複数の水溶性有機溶剤のKa値のうち、最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒となるように水溶性有機溶剤を選択して適宜に配合し、インクを調製することが必要となる。
本発明の好ましい態様においては、特に、下記式(I’)を満たすことが好ましい。
本発明者らの詳細な検討によれば、水性インク中に含まれる良溶媒の含有量が多い場合は、保存安定性に優れる水性インクとなるが、特に記録媒体が普通紙の場合には高い画像濃度を得ることが難しい。又、逆に水性インク中に含まれる良溶媒の含有量が少ない場合には、高い画像濃度を得ることができるが、水性インクの保存安定性が不十分になることがある。
・マゼンタインク
0.6≦(B2/A2)/(B3/A3)<1.8 (II)
0.6≦(B2/A2)/(B4/A4)<1.8 (III)
・イエローインク
0.6≦(B3/A3)/(B2/A2)<1.8 (IV)
0.6≦(B3/A3)/(B4/A4)<1.8 (V)
・ブラックインク
0.6≦(B4/A4)/(B2/A2)<1.8 (VI)
0.6≦(B4/A4)/(B3/A3)<1.8 (VII)
上記式(II)〜(VII)のそれぞれにおいて、最左辺の値0.6は、0.8とすることが特に好ましい。上記式(II)〜(VII)のそれぞれにおいて、最右辺の値1.8は、1.3とすることが特に好ましい。
本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材について説明する。本発明の水性インクを構成する水不溶性色材は、その分散方式にかかわらず、何れのものも用いることができる。中でも特に、顔料を用いることが好ましい。顔料は、具体的には、例えば、分散剤や界面活性剤を用いる、いわゆる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、界面活性剤分散タイプの顔料であってもよいし、顔料自体の分散性を高めて、分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した、いわゆる自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合している改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)等を用いることができる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71等
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50等
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等
C.I.ピグメントグリーン7、36等
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等
(樹脂分散型顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、分散剤を用いる樹脂分散型顔料を使用することができる。この場合には、上記に列挙したような疎水性の顔料を分散させるための界面活性剤、樹脂分散剤等の化合物が必要となる。
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することができる。水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法は、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法、転相乳化法等が挙げられる。
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、顔料自体の分散性を高め、分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型顔料を使用することができる。自己分散型顔料は、親水性基が顔料粒子表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合しているものが好ましい。例えば、顔料粒子表面に導入された親水性基が、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)からなる群から選ばれるもの等を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。その他にも、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、水中オゾン処理でカーボンブラックを酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、カーボンブラック表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散型顔料も好適に用いることができる。
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、顔料自体の分散性を高め、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散型顔料を使用することができる。前記ポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。これは、表面を改質する場合に用いる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これによって改質された顔料の親水性を適宜に調整できるためである。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを適宜に変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与することもできる。
ポリマー結合型自己分散顔料の官能基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。前記官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、官能基の種類は、前記共重合体が担持する官能基との関連において選択される。官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じる反応とすることが好ましい。このためには、官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることで、共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。又は、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることでも、前記と同様に、共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体は、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好ましい。
・第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加する工程。
・第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加する工程。
・第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
・第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加する工程。
・第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
本発明にかかる水性インクは、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分の水性インクにおける含有量は、一般には、水性インク全質量に対して0.1質量%以上20.0質量%以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3.0質量%以上10.0質量%以下の範囲である。
上記で説明したような構成成分からなる、本発明で使用する水性インクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度を1mPa・s以上15mPa・s以下、表面張力を25mN/m(dyne/cm)以上、特には、粘度を1mPa・s以上5mPa・s以下、表面張力を25mN/m(dyne/cm)以上50mN/m(dyne/cm)以下とすることが好ましい。
本発明で使用する反応液は、インク中の色材の分散状態を不安定化若しくは凝集させる反応性成分を含有する。前記反応性成分は、水性媒体中で水不溶性色材が親水性基の作用によって分散又は溶解されているインクと、前記反応液が記録媒体上で接触した際に、該水不溶性色材の分散安定性を低下させ、水不溶性色材を凝集させる。尚、本発明における、インク中の色材の分散状態が不安定化されることとは、インクと反応液を混合した際に、凝集やゲル化といった状態が引き起こされることを指す。
多価金属イオンは、具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられる。前記の多価金属イオンを反応液中に含有させる方法には、反応液中に多価金属の塩を添加する方法が挙げられる。前記塩とは、上記に挙げた多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンで構成される金属塩のことであるが、水に可溶であることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンは、例えば、Cl-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、SO4 2-、CO3 2-、CH3COO-及びHCOO-等が挙げられる。勿論、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、水性インクと反応液の反応性や着色性、更には、反応液の取り扱いの容易さ等の点から、多価金属イオンは、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が好ましく、更には、Ca2+が特に好ましい。又、陰イオンは、溶解性等の点から、NO3 -が特に好ましい。
反応液を記録媒体に付与する方法には、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法等の塗布方法が挙げられる。又、インクと同様にインクジェット記録方法を用い、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍のみに反応液を選択的に付着せしめる付与方法も可能である。本発明者らが、反応液の記録媒体への付与方法を検討した結果、ローラーコーティング法が最も優れているという見解に至った。これは、反応液の付与量が少ない場合においても、記録媒体表層部近傍における反応性成分の分布状態が他の手段よりも均一であり、更に、インク付与後のベタ部のムラ、更には裏抜け性等の画質が優れているためである。
反応液の記録媒体への浸透性は、ブリストウ法によって求められるKa値で、1.3mL・m-2・msec-1/2以上6.0mL・m-2・msec-1/2以下であることが好ましく、更には、3.0mL・m-2・msec-1/2より大きく6.0mL・m-2・msec-1/2以下であることが好ましい。又、反応液の塗布量は、0.5g/m2以上5g/m2以下であることが好ましく、更には、2.0g/m2より大きく3.0g/m2以下であることが好ましい。
本発明のシアンインクは、水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒及び該水不溶性色材に対する貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクと組み合わせて、4種の水性インクを有するインクセットとすることが好適である。
次に、本発明に好適なインクジェット記録装置の一例について以下に説明する。
以下、本発明にかかる画像形成方法について具体例を挙げて説明する。本発明にかかる画像形成方法は、ブラックインクと少なくとも1色のカラーインクとを用いて普通紙等の記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法であるが、ブラックインクによって形成される画像と、カラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成する際に、ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にカラーインクを付与する走査を行うことを特徴とする。以下に具体的な手法について説明する。
(i)前記インクセットが有する、水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を、記録媒体上に付与して付与させる工程と、
(ii)該反応液が付与された記録媒体上に、前記インクセットが有する水性インクを付与する工程と、
を有する形態とする。
本発明の水性インクを用いて画像を形成する際に用いる記録媒体は、インクを付与して記録を行う記録媒体であれば何れのものでも使用することができる。特に、本発明においては、普通紙や、少なくとも一方の面に水性インクを受容するコーティング層を持つ記録媒体等が好ましく使用される。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
(ブラック顔料分散液の調製)
比表面積が210m2/gでDBP吸油量が74ml/100gであるカーボンブラック10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型ブラック顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型ブラック顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、ブラック顔料分散液を得た。
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型シアン顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型シアン顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、シアン顔料分散液を得た。
顔料(C.I.ピグメントレッド122)10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型マゼンタ顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型マゼンタ顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、マゼンタ顔料分散液を得た。
顔料(C.I.ピグメントイエロー74)10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型イエロー顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型イエロー顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、イエロー顔料分散液を得た。
下記に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、反応液を調製した。
・硝酸マグネシウム(6水和物) 15.0質量%
・トリメチロールプロパン 25.0質量%
・アセチレノールEH 1.0質量%
(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物;川研ファインケミカル製)
・水 残量
[水溶性有機溶剤の良溶媒・貧溶媒の判定]
上記顔料分散液中の顔料に対して、良溶媒又は貧溶媒として作用する水溶性有機溶剤を選択するために以下の実験を行った。まず、上記で得られた各色の顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液を調製し、これと各水溶性有機溶剤を用いて、以下の配合比にて良溶媒・貧溶媒の判定用分散液A、判定用水分散液Bを調製した。
・各色の顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液 50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤 50部
(判定用水分散液B)
・各色の顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液 50部
・純水 50部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した良溶媒・貧溶媒の判定用分散液A10gを、透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分撹拌し、これを60℃のオーブン内に48時間静置した。その後、オーブンから取り出した分散液を測定用サンプルとして、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)を用いて測定した。60℃、48時間保存後の判定用分散液A中の顔料の平均粒径(希釈せずに測定した顔料の平均粒径)とした。一方、判定用水分散液Bは加温保存を行わずに、上記と同様に、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、判定用分散液A及び判定用水分散液B中の顔料の平均粒径が、判定用分散液Aの方が判定用水分散液Bより大きくなる水溶性有機溶剤を貧溶媒と判定し、判定用分散液Aの平均粒径が、判定用水分散液Bと同等又はそれ以下になる水溶性有機溶剤を良溶媒と判定した。
まず、各水溶性有機溶剤のKa値測定を行うにあたり、下記に示す組成を有する染料濃度0.5質量%の染料水溶液を調製した。かかる染料水溶液を使用するのは、無色透明の試料を着色することにより可視化して、Ka値の測定を容易にするためである。
・水溶性染料C.I.ダイレクトブルー199 0.5部
・純水 99.5部
次いで、この0.5質量%染料水溶液と、測定対象の各水溶性有機溶剤により、下記に示す組成を有する着色された水溶性有機溶剤の20%水溶液をそれぞれ調製した。
・上記0.5質量%染料水溶液 80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤 20部
上記で調製した各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液を測定用の試料として、動的浸透性試験装置(商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)を用い、ブリストウ法により各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液のKa値をそれぞれ求めた。
上記のようにして測定した、インクに使用しうる水溶性有機溶剤について、ブラック顔料分散液、シアン顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、イエロー顔料分散液に対して良溶媒であるか貧溶媒であるかを判別した結果と、各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液におけるKa値の測定結果を表1に示した。尚、表中の、○、×はそれぞれ良溶媒、貧溶媒を表す。
(実施例1〜5)
下記表2〜表6に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、実施例1〜5の各水性インク及びインクセットを調製した。尚、表中のB/Aは、各水性インクにおける良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときの、B/Aの値である。尚、実施例の水性インクの調製にあたっては、B/Aの値が0.5以上3.0以下となるように調整し、且つインクセットが具備する水性インクのうち、シアンインクのB/Aの値が最大となるように調整した。
下記表7及び表8に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、表7及び表8の各水性インク及びインクセットを調製した。尚、表中のB/Aは、各水性インクにおける良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときの、B/Aの値である。尚、実施例の水性インクの調製にあたっては、B/Aの値が0.5以上3.0以下となるように調整した。
下記表9〜表11に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過を行い、比較例1〜3の各水性インク及びインクセットを調製した。尚、表中のB/Aは、各水性インクにおける良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときの、B/Aの値である。
上記で調製した実施例1〜5、参考例1及び2、比較例1〜3の各インクを用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置PIXUS950i(キヤノン製)の改造機を用いた。具体的には、下記の記録媒体に、2cm×2cmの一次色のベタ部及び二次色のベタ部を含む文字の印字を行い、記録物を作製した。得られた記録物を1日放置した後、シアンのベタ部の画像濃度を測定した。画像濃度の測定には、GRETAG Spectrolino(グレタグマクベス製)を用いた。画像濃度の評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・高白色用紙SW−101(キヤノン製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
(評価基準)
AA:すべての紙で十分な画像濃度が得られる。
上記で調製した実施例1〜5、参考例1及び2、比較例1〜3の各インクを用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置PIXUS950i(キヤノン製)の改造機を用いた。具体的には、下記の記録媒体に、2cm×2cmの一次色のベタ部及び二次色のベタ部を含む文字の印字を行い、記録物を作製した。得られた記録物を1日放置した後、シアンのベタ部の画像濃度を測定した。画像濃度の測定には、GRETAG Spectrolino(グレタグマクベス製)を用いた。カラーバランスの評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・高白色用紙SW−101(キヤノン製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
(評価基準)
AA:全ての紙において、色再現範囲がどの色領域においても十分に広く、カラーバランスが極めて良好である。
上記で調製した実施例1〜5、参考例1及び2、比較例1〜3の各インクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、60℃のオーブンで2週間保存した後にインクの状態を観察した。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。
上記で調製した実施例1〜5、参考例1の各インクを用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF900(キヤノン製)の改造機を用いた。具体的には、記録媒体(プロフェッショナルフォトペーパーPR−101;キヤノン製)に、インクの付与量を10%duty刻みで200%dutyまで変化させて、各インク単色及び二次色で5cm×5cmのベタ画像の印字を行い、記録物を作製した。尚、プリンタドライバは、プロフォトペーパーモードを選択した。
実施例1及び比較例2の各インク及び反応液を用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJS600(キヤノン製)を、図1で示す、反応液を塗布ローラーにより記録媒体に付与する機構を有するように改造したものを用いた。具体的には、下記の記録媒体に反応液を付与し、反応液が記録媒体に定着した後に、各インクを用いて、2cm×2cmの一次色のベタ部及び二次色のベタ部を含む文字の印字を行い、記録物を作製した。尚、反応液は、塗布量が2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーの記録媒体への接触圧を調整した。得られた記録物を1日放置した後、シアンのベタ部の画像濃度を測定した。画像濃度の測定には、GRETAG Spectrolino(グレタグマクベス製)を用いた。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・高白色用紙SW−101(キヤノン製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
上記で得られた記録物における画像濃度を評価した結果、実施例1の各インクを用いた場合には、カラーバランスが良好であり、且つ、画像濃度が優れていた。又、比較例2の各インクを用いた場合には、カラーバランスが崩れていた。
2:キャリッジ
3:排紙ローラー
4:拍車
5:排紙トレイ
6:塗布ローラー
7:主搬送ローラー
8:ピンチローラー
9:ガイド軸
10:給紙ローラー
11:プラテン
12:中間ローラー
13:供給ローラー
14:フロート
15:反応液
16:給紙カセット
16A:給紙カセットの搬送面
17:給紙トレイ
18:スプリング
19:記録媒体(記録紙)
20:注入口
21:残量表示窓
22:補充タンク
23:注入機具
27:ペーパーガイド
27A:ペーパーガイドの搬送面
1300:記録媒体
1301:インク滴
1302:ドット外周
1303:ドット中心部
1304:水不溶性色材
1305:ドット
1306:水溶性有機溶剤及び水
1307:貧溶媒
Claims (7)
- 少なくとも、水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒及び該水不溶性色材に対する貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの4種の水性インクを有するインクセットに適用されるシアンインクにおいて、
該シアンインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA1、貧溶媒の含有量(質量%)をB1としたときに、B1/A1が0.5以上3.0以下であり、
且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
且つ、前記インクセットが具備するシアンインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記式(I)を満たすことを特徴とするシアンインク。
(B1/A1)/(B/A)>1 (I) - 前記シアンインクが、下記式(I’)を満たす請求項1に記載のシアンインク。
(B1/A1)/(B/A)≧1.8 (I’) - 前記シアンインクに含まれる貧溶媒の含有量(質量%)が、前記シアンインク全質量に対して4質量%以上である請求項1又は2に記載のシアンインク。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載のシアンインクと、
少なくとも、水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒及び該水不溶性色材に対する貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインク、
の4種の水性インクを有することを特徴とするインクセット。 - インクと反応液のセットであって、前記インクが請求項4に記載のインクセットが具備する少なくとも1種の水性インクであり、前記反応液が、該インクセットが具備する少なくとも1種の水性インクと接触することによって該水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させるものであることを特徴とするインクと反応液のセット。
- 請求項5に記載のインクと反応液のセットを用いて行う画像形成方法であって、
(i)前記反応液を記録媒体に付与する工程、及び
(ii)前記反応液が定着した記録媒体に、前記インクセットが具備する少なくとも1種の水性インクを付与する工程、
とを有することを特徴とする画像形成方法。 - 少なくとも、水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒及び該水不溶性色材に対する貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを用いる画像形成装置に適用されるシアンインクであって、
該シアンインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA1、貧溶媒の含有量(質量%)をB1としたときに、B1/A1が0.5以上3.0以下であり、
且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
且つ、前記画像形成装置に適用されるシアンインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記式(I)を満たすことを特徴とするシアンインク。
(B1/A1)/(B/A)>1 (I)
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