(実施の形態1)
(構成)
図1から図8を参照して、本発明に基づく実施の形態1における高周波プラズマ処理装置および高周波プラズマ処理方法について説明する。
図1は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置の概略断面図である。本実施の形態におけるプラズマ処理装置は、プラズマを形成するガス雰囲気を形成するための反応容器5を備える。反応容器5は、直方体状の箱型に形成され、導電性を有する材料から形成されている部分を含む。
反応容器5には、プラズマを発生させるための反応ガスを供給するガス供給装置と、反応容器の内部を排気したり、減圧したりするためのガス排気装置とが接続されている。反応容器5には、反応ガスを導入する給気管と、ガスを排気する排気管とが接続されている。給気管および排気管には、反応容器5の内部を気密するための弁が配置されている(図示せず)。
反応容器5は、側面に形成され、電気的な絶縁性を有する透過窓16を含む。本実施の形態においては、透過窓16は、反応容器5の側面のうち互いに対向する2つの側面に形成されている。透過窓16は、平面形状が長方形になるように平板状に形成されている。透過窓16は、反応容器5の内部と外部とを、電磁的に連通するように形成されている。透過窓16は、反応容器5の内部の気密性を保てるように形成されている。すなわち、透過窓16は、電磁界を透過して、反応容器5の内部に充填される反応ガスなどのガスを通さないように形成されている。このように、反応容器5は、気密可能に形成されている。
反応容器5の内部には、プラズマを発生させるための放電電極2および対向電極3が形成されている。放電電極2および対向電極3は、それぞれが平板状に形成され、互いの主表面がほぼ平行になるように配置されている。放電電極2と対向電極3とは、互いに離れて配置されている。放電電極2および対向電極3は、導電性を有する材料から形成されている。本実施の形態においては、放電電極2および対向電極3は、平面形状がほぼ同じになるように形成されている。対向電極3は、接地されている。放電電極2および対向電極3は、反応容器5の幅方向の略中央に配置されている。
放電電極2には、給電棒7を介して、共振器4が接続されている。共振器4は、高周波電源1に接続されている。本実施の形態においては、反応容器5の上面に、貫通孔が形成され、貫通孔を通して、導電性を有する給電棒7が配置されている。この貫通孔の内部には、絶縁体15が給電棒7を取囲むように配置されている。貫通孔は、貫通孔と給電棒7との間からの高周波漏洩を低減するように小さく形成されている。
ただし、給電棒7と反応容器5との間隔が狭すぎる場合には、コンデンサの機能を有して高周波電気経路が形成されうる。この部分のコンデンサ容量は、高周波電気経路として無視できる程度に小さいことが好ましく、特に、放電電極2と対向電極3とによって定まるコンデンサ容量よりも十分に小さくなるように形成されることが好ましい。
本実施の形態においては、反応容器5に形成された貫通孔から僅かな高周波が漏洩した場合においても、電磁シールド材34および共振器4の導電性筐体によって形成された電磁シールドで覆われているため、外部に電磁波が漏洩することは無い。
絶縁体15は、反応容器5の内部の気密性を保持して、さらに、給電棒7と反応容器5との絶縁性を保つことができるように形成されている。反応容器5の上面には、電磁シールド材34を介して、共振器4が配置されている。
本実施の形態において、プラズマ処理装置は、反応容器5の外側に配置され、反応容器5の内部の高周波電界分布を制御するための電磁界制御手段を備える。電磁界制御手段は、閉空間室6、可動電磁シールド材26および支持棒27を含む。電磁界制御手段は、電磁的に反応容器と連通して、外部への高周波の漏洩を実質的に防ぐように形成された閉空間手段を含む。本実施の形態においては、閉空間手段は、閉空間室6を含む。
閉空間室6は、反応容器5の外側において、透過窓16が配置された側面に、外側に突出するように形成されている。閉空間室6は、高周波を遮断する材料で形成されている。本実施の形態においては、閉空間室6は、導電性を有する材料で形成され、外部への高周波の漏洩を防ぐように、直方体状の箱型に形成されている。
閉空間室6は、透過窓16を覆うように配置されている。閉空間室6は、透過窓16が外部から見えないように、透過窓16の平面形状よりも大きく形成されている。閉空間室6の内部は、反応容器の内部と透過窓16を介して電磁的に連通している。このように、閉空間室6は、透過窓16の部分を除いて、電磁的に密閉されている。
閉空間室6の内部には、可動電磁シールド材26が配置されている。可動電磁シールド材26は、平板状に形成され、主表面が透過窓16の主表面とほぼ平行になるように配置されている。可動電磁シールド材26には、可動電磁シールド材26の主表面に対して、軸方向が垂直になるように支持棒27が固定されている。可動電磁シールド材26は、支持棒27を動かすことによって、矢印51に示す方向に移動可能に形成されている。
支持棒27は、閉空間室6を貫通するように形成され、この貫通部は、高周波が実質的に漏れないように形成されている。たとえば、閉空間室6と、支持棒27とが摺動するように形成され、隙間から高周波が漏れないように形成されている。可動電磁シールド材26は、反応容器5の側面に形成されたそれぞれの2つの閉空間室6の内部に配置されている。それぞれの可動電磁シールド材26は、それぞれが独立して移動可能なように形成されている。
このように、本実施の形態においては、閉空間手段の内部の構成が変更できるように形成されている。また、電磁界制御手段が反応容器の側面に2つ形成され、それぞれの電磁界制御手段は、電極中心を対称軸としたときに、左右対称の構成になるように形成されている。
また、本実施の形態においては、プラズマ処理を行なっているときに、2つの可動電磁シールド材26が独立して移動するように形成されている。また、2つの可動電磁シールド材26は、それぞれが連続的に移動するように形成されている。また、本実施の形態における高周波プラズマ処理装置は、2つの可動電磁シールド材26の移動速度を個別に制御することができる可動電磁シールド材制御手段を備え、それぞれの可動電磁シールド材26の速度を個別に連続的に制御できるように形成されている。
また、本実施の形態においては、可動電磁シールド材制御手段は、2つの可動電磁シールド材26を周期的に移動させることができるように形成されている。すなわち、同じ移動を繰り返し行なえるように形成されている。本実施の形態においては、図1において、可動電磁シールド材26が、矢印51の方向の往復運動を繰り返して行なえるように形成されている。
さらに、可動電磁シールド材制御手段は、プラズマ処理が行なわれる時間が、この周期の半周期の整数倍になるように、2つの可動電磁シールド材26を移動させることができるように形成されている。すなわち、高周波電界分布が変動する周期の半分の周期(半周期)の時間が、プラズマ処理に要する時間を1以上の整数で除した時間になるようにプラズマ処理を行なうことができるように形成されている。
本実施の形態における高周波プラズマ処理装置は、自動的に上記の電磁界制御手段が駆動した後に、自動的にプラズマ処理動作を行なう自動処理制御手段を備える(図示せず)。すなわち、プラズマ処理を停止しているときに、次のプラズマ処理を行なうために、可動電磁シールド材が最適な位置に移動して、移動が完了した後に自動的にプラズマ処理が開始する自動処理制御手段を備える。
本実施の形態における高周波プラズマ処理装置は、放電電極に投入される高周波の半波長よりも放電電極の最大寸法が大きくなるように形成されている。ここで、放電電極の最大寸法とは、放電電極を平面的に見たときの取り得る端から端の直線的な長さのうち、最大の長さをいう。たとえば、放電電極の平面形状が長方形である場合には、対角の長さが最大寸法になる。
図2に、本実施の形態における共振器の内部の電気回路の説明図を示す。共振器は、導電性筐体12を備え、導電性筐体12の内部に電気回路が形成されている。共振器の電気回路は、インピーダンス整合用コイル13と、2つのインピーダンス整合用コンデンサ14a,14bとを含む。インピーダンス整合用コンデンサ14a,14bは、容量を調整できる容量可変コンデンサである。共振器は、インピーダンス整合用コンデンサ14a,14bの静電容量を調整することによって、インピーダンスを整合できるように形成されている。
導電性筐体12は、アース39に接続され、電気的に接地されている。導電性筐体12は、外部への電磁界の漏洩を防ぐ電磁シールドの機能も有している。共振器の電力入力端は高周波電源に接続され、電力出力端は放電電極に接続されている。図2に示す共振器の回路構成は、一例を示すものであり、共振器としてはインピーダンス整合が行なえるものであればよい。または、高周波電源の内部に、共振器の機能が備えられていても構わない。
(作用・効果、高周波プラズマ処理方法)
図3に、本実施の形態における高周波プラズマ処理装置の第1の状態の断面図を示す。第1の状態においては、可動電磁シールド材26が、移動可能な範囲におけるほぼ中央に配置されている。図3においては、閉空間室6の奥行の方向におけるほぼ中央の部分に配置されている。2つの可動電磁シールド材26は、放電電極2の幅方向の中点となる位置(電極中心)からそれぞれが同じ距離のみ離れるように配置されている。すなわち、放電電極2の幅方向の中央を原点として、閉空間手段の内部の構成が左右対称になるように配置されている。
初めに、反応容器5の内部の対向電極3の主表面に、処理を行なう被処理物としての基板8を配置する。基板8は、処理を行なう主表面が、放電電極2に向かうように配置される。次に、図示しないガス排気装置を用いて反応容器5の内部を排気する。この後に、図示しないガス供給装置を用いて、反応容器5の内部に、プラズマ処理を行なうための反応ガスを導入する。
導入する反応ガスは、プラズマ処理に応じて、適宜選定される。たとえば、基板などの表面の有機物を除去するのであれば、有機物を酸化または灰化するために反応ガスとして酸素を用いればよい。また、Siまたは酸化Siのエッチング処理を行なうのであれば、CF4、SF6などのハロゲンガスを含むガスを反応ガスとして選択する。また、Siなどの成膜を行なうのであれば、SiH4、Si2H6などのシラン系特殊材料ガス類を反応ガスとして用いてもよい。これらの反応ガスに対して、酸素、水、水素、またはその他のガスを添加してもよく、プラズマ処理を行なうためのガスを適宜導入する。
反応容器5の内部に反応性ガスを導入して、プラズマを形成するガス雰囲気を形成した後に、高周波電源1から共振器4を通して高周波電圧を放電電極2に印加する。放電電極2と対向電極3との間には、導入された反応ガスのプラズマが発生する。このプラズマにより、対向電極3の表面に配置された基板8の表面が、プラズマによって処理される。
高周波電源1から、共振器4を通して放電電極2に高周波が導入されると、電磁界の隔壁となる反応容器、閉空間室などの金属物を境界として電界分布が形成される。本実施の形態においては、反応容器5の導電性を有する部分と、閉空間室6および可動電磁シールド材26とに囲まれた部分とが電磁界の境界となって、電磁界の閉空間が形成される。
本実施の形態においては、プラズマ処理を行なっている途中に、電磁界制御手段を用いて、反応容器の内部の高周波電界分布を変化させる。すなわち、プラズマが形成されている状態で、電磁界制御手段を駆動させる。
図4に、本実施の形態における高周波プラズマ処理装置の第2の状態の断面図を示す。第2の状態においては、矢印52に示すように、可動電磁シールド材26が、図4における左側に移動している。第2の状態においては、一方の可動電磁シールド材26が透過窓16に近づいている。他方の可動電磁シールド材26が、透過窓16から遠ざかっている。2つの可動電磁シールド材26は、同じ長さのみ平行移動している。すなわち、本実施の形態においては、電磁界の閉空間の体積は変わらずに、空間形状が変化している。
図5に、本実施の形態における高周波プラズマ処理装置の第3の状態の断面図を示す。第3の状態においては、矢印53に示すように、2つの可動電磁シールド材26が、図5の向かって右側に移動している。第3の状態においては、一方の可動電磁シールド材26が透過窓16から離れるように移動している。また、他方の可動電磁シールド材26が透過窓16に近づくように移動している。2つの可動電磁シールド材26は、それぞれが同じ長さのみ平行移動している。すなわち、電磁的な閉空間の体積は変わらずに、空間形状が変化している。
本実施の形態においては、プラズマ処理を行ないながら、上記の第1の状態から第3の状態まで、連続的に変化させている。また、上記の可動電磁シールド材の移動を周期的に繰り返し行なっている。すなわち、支持棒を周期的に出し入れすることにより、2つの可動電磁シールド材を周期的に移動している。
図6に、図3に示す第1の状態における反応容器の内部および閉空間室の内部の高周波電界分布のグラフを示す。グラフは、電極中心を通って、放電電極の主表面に垂直な断面における電界強度を示す。電極中心は、図3における放電電極の幅方向の中心である。反応容器の幅方向におけるほぼ中央部分に放電電極および対向電極が配置され、それぞれの可動電磁シールド材が透過窓から等距離を開けて配置された場合には、高周波電界分布は、図6に示すように、電極中心を最大値として電極中心に対して左右対称になるような形状を有する。また、電極中心から遠ざかるに従って、電界強度が弱くなる分布になる。
図7に、図4に示す第2の状態における反応容器の内部および閉空間室の内部の高周波電界分布のグラフを示す。矢印52に示すように、高周波電界分布は、電極中心にピークがある状態から可動電磁シールド材が動いた向きに移動する。
図8に、図5に示す第3の状態における反応容器の内部および閉空間室の内部の高周波電界分布のグラフを示す。矢印53に示すように、高周波電界分布は、電極中心にピークがある状態から可動電磁シールド材が動いた向きに移動する。本実施の形態においては、プラズマ処理を行ないながら、第1の状態から第3の状態までを連続的に繰り返している。すなわち、連続的に高周波電界分布を変化させている。
基板などの被処理物に対するプラズマ処理においては、プラズマの電界強度が強いほど、多くの処理が行なわれる。すなわち、プラズマ処理速度も電界分布に対応した分布を有する。図3および図6に示す第1の状態においては、基板の表面における電極中心の位置に対して、最も多くのプラズマ処理が行なわれる。図4および図7に示す第2の状態、または、図5および図8に示す第3の状態においては、それぞれ、電極中心から離れた高周波電界分布のピークに対応する位置に対して、最も多くのプラズマ処理が行なわれる。
たとえば、電磁界制御手段が上記の第1の状態に固定され、反応容器内部の電界強度が一定であれば、基板に対する処理量に高周波電界分布に対応する分布が生じる。しかし、本実施の形態においては、プラズマ処理を行なっているときに、連続的に高周波電界分布を変更している。したがって、プラズマ処理量を基板の表面全体にわたって均一化することができ、大型の基板に対しても一様なプラズマ処理を行なうことができる。
本実施の形態においては、反応容器の内部の高周波電界分布を制御するための電磁界制御手段を備え、電磁界制御手段は、反応容器の外側に配置され、外部への高周波の漏洩を実質的に防ぐように形成された閉空間手段を含み、閉空間手段の内部の構成を変更することによって、反応容器の内部の高周波電界分布が変動するように形成されている。この構成を採用することにより、簡単な構成で、大型の被処理物に対して均一なプラズマ処理を行なうことができる。すなわち、高周波電界分布を変動させることにより、被処理物のそれぞれの位置におけるプラズマ処理量を平均化させることができる。
また、閉空間手段の内部の構成を変更するように形成されていることによって、反応容器の内部の構成物を移動したり回転したりせずに、反応容器の内部の高周波電界分布を変動させることができる。したがって、反応容器の内部の構成物の運動に起因するパーティクルの発生や、ガスの流れの乱れなどを防止することができ、均一なプラズマ処理を行なうことができる。
また、本実施の形態においては、反応容器の外側に配置された閉空間手段の内部の構成が変更可能に形成されている。反応容器は、気密性が必要なものが多く、反応容器の形状を変更することが困難であったり、複雑な機構が必要であったりするのに対して、反応容器の外部の閉空間手段は、気密性を必要としない。閉空間手段は、電磁界を遮断する電磁シールド効果が得られる程度に、電磁界が密閉できればよい。このため、閉空間手段の内部の構成を変化させることを、容易に実現することができ、容易に電磁界制御手段を形成することができる。
また、本実施の形態においては、閉空間手段は、反応容器に電磁的に連通する部分を除いて、電磁的に密閉された閉空間室を有し、閉空間室の内部に移動可能な電磁シールド材が形成されている。この構成を採用することにより、反応容器の外部の閉空間手段において、電磁波の漏洩を閉空間室で完全に防止することができる。すなわち、電磁界の遮蔽を完全に行なうことができる。したがって、電磁界の隔壁の強度を強くすることができる。さらに、電磁シールド材を移動させることによって容易に閉空間の内部の構成を変更することができ、高周波電界分布を変動させる機能と電磁界を遮蔽する機能とを分離することができる。このため、電磁界制御手段の駆動を、安全にかつ制御性よく行なうことができる。
さらに、本実施の形態においては、反応容器と、閉空間室の電磁的に連通する部分には、電気的な絶縁性を有する透過窓が配置されている。この構成を採用することにより、反応容器の内部をガス雰囲気を形成するための十分な気密性を容易に確保できるとともに、電磁的に連通する部分を有する閉空間手段を容易に形成することができる。
また、本実施の形態における電磁界制御手段は、プラズマ処理を行なっているときに、反応容器の内部の高周波電界分布を変更できるように形成されている。すなわち、本実施の形態における高周波プラズマ処理装置は、プラズマ処理を行なっているときに、可動電磁シールド材を移動できるように形成されている。この構成を採用することにより、高周波電界分布を変動させるために、プラズマ処理を中断する必要がなく、プラズマ処理を行ないながら、高周波電界分布を変化させることができる。言い換えれば、プラズマ処理を行ないながら、高周波電界分布を動的に変動させることができる。この結果、プラズマ処理とは別に高周波電界分布を変化させるための時間を別途かける必要がなく、一連のプラズマ処理の時間短縮を図ることができる。
また、電磁界制御手段は、高周波電界分布を連続的に変更できるように形成されている。本実施の形態においては、プラズマ処理を行なっているときに、連続的に可動電磁シールド材を移動できるように形成されている。この構成を採用することにより、不連続的に段階的に高周波電界分布を変動させる場合に比べて、高周波電界分布の所定時間における処理量が均一になる。すなわち、プラズマ処理量の所定時間における平均化が容易になって、高周波電界分布の時間積分の制御性が向上する。
また、共振器から放電電極までのインピーダンスが不連続的に変動する場合には、瞬間的にインピーダンス整合を行なうことが困難であるため、プラズマ処理中に、インピーダンスの不整合が生じて、安定したプラズマ処理を行なうことができずに、不均一なプラズマ処理になる可能性がある。しかし、高周波電界分布を連続的に変化させることによって、高周波電源に接続された共振器から放電電極までのインピーダンスが連続的に変化するため、共振器におけるインピーダンス整合を容易に行なうことができ、安定したプラズマ処理を行なうことができる。
また、電磁界制御手段は、高周波電界分布の変化の速度を制御できるように形成されている。本実施の形態においては、可動電磁シールド材の移動速度を制御できるように形成されている。この構成を採用することにより、それぞれの時点での高周波電界分布に関する情報を基に、高周波電界分布を変動させる速度を最適化することができ、高周波電界分布の変動を最適な割合で加速または減速することができる。このため、それぞれの高周波電界分布におけるプラズマ処理時間をより高精度に制御することができ、より均一なプラズマ処理を行なうことができる。
また、電磁界制御手段は、高周波電界分布を繰返して、周期的に変動させることができるように形成されている。本実施の形態においては、2つの可動電磁シールド材26を、周期的に移動させることができるように形成されている。すなわち、第1の状態、第2の状態および第3の状態を、周期的に繰返すことができるように形成されている。この構成を採用することにより、所定の時間におけるプラズマ処理量を均一にすることができる。すなわち、プラズマ処理量の時間平均化を容易に行なうことができる。たとえば、一時的に高周波電界分布の変化の速度が速くなっていたとしても、時間平均化を行なうことによって、プラズマ処理量の均一化を図ることができる。
さらに、電磁界制御手段は、プラズマ処理が行なわれている間に、半周期の整数倍になるように、反応容器の内部の高周波電界分布を変動させることができるように形成されている。本実施の形態においては、プラズマ処理が行なわれる時間が、2つの可動電磁シールド材が、往復運動において往路または復路にかかる時間の整数倍になるように形成されている。
たとえば、プラズマ処理が可動電磁シールド材が第2の状態から始まった場合に、プラズマ処理の終了時には、可動電磁シールド材が第2の状態または第3の状態の位置になるように移動が行なわれる。この構成を採用することにより、プラズマ処理が周期的に繰返して行なわれ、かつ、半周期の途中でプラズマ処理が終了することがないため、均一なプラズマ処理を行なうことができる。
本実施の形態における高周波プラズマ処理装置は、自動的に可動電磁シールド材が移動した後、自動的にプラズマ処理動作を実施する機能を有する。本実施の形態においては、プラズマ処理を行ないながら電磁界制御手段を駆動しているが、後述するように、プラズマ処理を一時停止した状態で電磁界制御手段を駆動して、形成される高周波電界分布が異なる状態にして、プラズマ処理を再開してもよい。上記の構成を採用することにより、所望のプラズマ処理を複数の工程に分割して処理を行なうときに、高周波電界分布を変化させて繰り返し行なうプラズマ処理を自動的に行なうことができる。
また、本実施の形態においては、放電電極は、放電面の最大寸法が、反応容器の内部に導入される高周波の半波長よりも大きくなるように形成されている。本実施の形態においては、放電電極の平面形状の長方形の対角の長さが、導入される高周波の半波長よりも長くなるように形成されている。この構成の高周波プラズマ処理装置においては、放電電極の放電面領域に形成される高周波電界分布は正負が反転し得る。このため、被処理物の表面における高周波電界分布の電界強度の変化は大きくなり、プラズマ処理中に高周波電界分布を変動させることによって、極めて均一性の高いプラズマ処理を行なうことができる。すなわち、プラズマ処理中に高周波電界分布を変動させない静的なプラズマ処理に比べて、高周波電界分布を変動させる動的なプラズマ処理を行なうことによって、プラズマ処理の均一性を飛躍的に向上させることができる。
本実施の形態においては、電磁的に反応容器と連通して、外部への高周波の漏洩を実質的に防ぐ機能を有する閉空間手段を反応容器の外側に形成して、閉空間手段の構成を変更することによって、反応容器の内部の高周波電界分布を変動させながら処理を行なっている。すなわち、プラズマ処理を行なうと同時に、高周波電界分布を変動させている。プラズマ処理方法としては、特にこの形態に限られず、複数回のプラズマ処理工程を含み、それぞれのプラズマ処理工程において、閉空間手段の構成を変更することによって、それぞれの高周波電界分布のプラズマによって処理を行なっても構わない。
たとえば、本実施の形態においては、プラズマ処理中に可動電磁シールド材が移動しているが、1つのプラズマ処理を行なった後に、プラズマを一度消滅させ、電磁シールド材を移動させた後に、再度同じ反応ガスのプラズマを形成して、プラズマ処理を継続しても構わない。たとえば、1つのプラズマ処理を3つの工程に分割して、それぞれの工程において、本実施の形態における第1の状態から第3の状態のプラズマ処理を順次行なってもよい。この方法を採用することによっても、均一なプラズマ処理を行なうことができる。
または、本実施の形態においては、基板の表面を均一に処理する場合を例に挙げて説明したが、電磁界制御手段を駆動する速度を不規則にしたり、特定の高周波電界分布のみの処理を行なったりして、必要に応じて特定の位置におけるプラズマ処理を多く行なうことができる。すなわち、分布を有するプラズマ処理を行なうことができる。
本実施の形態においては、反応容器の両側の側方に配置された可動電磁シールド材を、同じ速度で移動させたが、特にこの形態に限られず、互いに異なる速度で可動電磁シールド材を移動させても構わない。または、一方の可動電磁シールド材のみを移動させても構わない。また、移動している途中に一方の可動電磁シールド材を一時停止させるなどの不規則な動きを含んでいても構わない。
さらには、本実施の形態においては、電極中心に対して、対称になるように2つの電磁界制御手段が形成されているが、特にこの形態に限られず、電極中心に対して非対称に電磁界制御手段が形成されていても構わない。または、電磁界制御手段は、1つのみであっても、3個以上形成されていても構わない。
また、反応容器と電磁界制御手段とが電磁的に連通する部分に形成された透過窓としては、反応容器の内側から外側に向けて電磁界を遮断することがないように形成されていることが好ましい。高周波電磁界を効率よく透過させるため、透過窓の最大寸法は、高周波の周波数に対応する波長に対して、少なくとも0.1倍以上であることが好ましい。さらに好ましくは、0.3倍以上である。この構成を採用することにより、透過窓を透過する際の電磁界の遮断を抑制することができる。たとえば、反応容器の内部を観察するためのビューポートは、絶縁材料であるサファイアなどによって形成されるが、これらは使用する高周波の波長に対して、十分に小さくなるように形成されている。透過窓としては、このような電磁界の遮断を行なうことがなく、電磁界を透過できるように十分大きく形成されていることが好ましい。
また、本実施の形態においては、透過窓や可動電磁シールド材は、平板状に形成されているが、特にこの形態に限られず、任意の形状を採用することができる。
また、本実施の形態においては、プラズマ処理方法として、1つの同じ反応性ガスを導入して、複数回のプラズマ処理を行なったが、特にこの形態に限られず、それぞれのプラズマ処理の工程において、異なる反応性ガスを導入してもよい。すなわち、1つのプラズマ処理を終了した後に、排気装置によって排気して、異なる反応性ガスを反応容器の内部に導入して、同一の基板に対して異なるプラズマ処理を行なっても構わない。
また、複数にプラズマ処理を分割した場合、プラズマ処理の処理時間は、それぞれの工程において、同じである必要はなく、所望とするプラズマ処理分布(たとえば均一化を行なう処理)に応じて、変更しても構わない。または、それぞれの工程において、放電電極に印加する高周波の電圧を変化させても構わない。
(実施の形態2)
(構成)
図9から図13を参照して、本発明に基づく実施の形態2における高周波プラズマ処理装置および高周波プラズマ処理方法について説明する。
高周波プラズマ処理装置が、反応容器、放電電極、対向電極を含むことは、実施の形態1における高周波プラズマ処理装置と同様である。本実施の形態においては、電磁界制御手段に含まれる閉空間手段の構成が、実施の形態1における高周波プラズマ処理装置と異なる。本実施の形態においては、反応容器の側面のうち、互いに対向する側面に、2つの閉空間手段が形成されている。
図9は、本実施の形態における第1の高周波プラズマ処理装置の概略断面図である。第1の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段が、蛇腹型電磁シールド材28および可動電磁シールド材26を含む。閉空間手段は、反応容器5に形成された透過窓16を覆うように配置されている。蛇腹型電磁シールド材28は、伸縮可能なように形成され、透過窓16の主表面と垂直な方向に伸縮するように形成されている。蛇腹型電磁シールド材28は、印加される高周波を遮断できる導電性の材料で形成されている。
蛇腹型電磁シールド材28の一方の端部は、反応容器5および透過窓16に接続されている。蛇腹型電磁シールド材28の他方の端部には、可動電磁シールド材26が形成されている。可動電磁シールド材26は、平板状に形成され、蛇腹型電磁シールド材28の他方の端部の開口を完全に塞ぐように形成されている。可動電磁シールド材26は、平板状に形成され、可動電磁シールド材26の主表面に、該主表面に垂直な向きに支持棒27が接続されている。
閉空間手段は、支持棒27を矢印54の方向に移動することによって、閉空間手段の構成が変更できるように形成されている。閉空間手段は、支持棒27を移動することにより、空間形状が変化するように形成されている。すなわち、蛇腹型電磁シールド材28が伸縮することにより、閉空間手段の空間形状が変化するように形成されている。また、第1の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段の空間形状が変化することにより、閉空間手段の体積が変化するように形成されている。また、閉空間手段の電磁的な隔壁の少なくとも一部が移動するように形成されている。反応容器の側面に形成された2つの閉空間手段は、それぞれが独立に制御されるように形成されている。
図10に、本実施の形態における第2の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。第2の高周波プラズマ処理装置における閉空間手段は、電磁シールド管21および可動電磁シールド材29を含む。
反応容器5の透過窓16のまわりには、一方の端部が開口した電磁シールド管21が形成されている。電磁シールド管21は、透過窓16の外縁に沿って形成されている。電磁シールド管21は、環状に形成され、内部には電磁シールド管21の断面形状に沿う形状を有する可動電磁シールド材29が形成されている。可動電磁シールド材29は、平板状の部分と、電磁シールド管21の内面に沿って平板状の部分から突出するように形成された突出部とを含む。可動電磁シールド材29と電磁シールド管21との間には、わずかな隙間が形成されている。この隙間は、印加される高周波が外部に実質的に漏れないように十分に小さく形成されている。
可動電磁シールド材29の平板状の部分には、平板状の部分の主表面に垂直に延在するように、支持棒27が接続されている。可動電磁シールド材29は、支持棒27が、矢印55に示す方向に移動することによって、矢印55に示す方向に移動するように形成されている。このように、第2の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段の電磁的な隔壁の少なくとも一部が移動するように形成されている。また、閉空間手段の空間形状および、閉空間手段の体積が変更するように形成されている。2つの閉空間手段は、それぞれが独立して制御されるように形成されている。すなわち、2つの可動電磁シールド材29が互いに独立して移動するように形成されている。
このように、本実施の形態における第1の高周波プラズマ処理装置および第2の高周波プラズマ処理装置は、閉空間手段によって形成される電磁的な閉空間の空間形状が変更可能に形成されている。
図11に、本実施の形態における第3の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。第3の高周波プラズマ処理装置における閉空間手段は、透過窓16の外側に透過窓16を塞ぐように形成された閉空間室22と、閉空間室22に出し入れが可能な電磁シールドシャッタとを含む。
第3の高周波プラズマ処理装置においては、電磁シールドシャッタとして可動電磁シールド材30および支持棒31が形成されている。また、閉空間室22の内部に可動電磁シールド材30の出し入れが可能なように、閉空間室22に挿入口35が形成されている。可動電磁シールド材30は、支持棒31を矢印56に示す方向に移動することによって、閉空間室22への出し入れができるように形成されている。
可動電磁シールド材30は、導電性を有する材料で形成されている。可動電磁シールド材30は、板状に形成され、平面形状が透過窓16の平面形状に沿うように形成されている。さらに、可動電磁シールド材30は、平面形状が閉空間室22の断面形状に沿うように形成されている。挿入口35は、可動電磁シールド材30の形状に沿うように形成されている。可動電磁シールド材30は、透過窓16の近傍に配置されている。
可動電磁シールド材30および挿入口35は、可動電磁シールド材30がいずれの位置にあっても高周波が外部に漏れないように形成されている。本実施の形態においては、可動電磁シールド材30が完全に閉空間室22に挿入されたとき、可動電磁シールド材30の出し入れを行なっているとき、および可動電磁シールド材30を閉空間室22の内部から取出したときのいずれにおいても、可動電磁シールド材30と挿入口35との隙間が高周波の波長よりも十分に小さくなるように形成されている。
図12に、本実施の形態における第4の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。第4の高周波プラズマ処理装置の閉空間手段は、透過窓16の電磁的に反応容器5に連通する部分を除いて、電磁的に密閉された閉空間室23および閉空間室24を含む。閉空間室23および閉空間室24は、それぞれが導電性を有する材料で形成されている。閉空間室23および閉空間室24は、それぞれがシリコンオイルタンク10に接続されている。シリコンオイルタンク10の内部には、シリコンオイル9が充填されている。
閉空間室23,24は、それぞれの透過窓16を塞ぐように形成されている。閉空間室23,24は、透過窓16を覆うように形成され、投入される高周波が外部に漏れないように形成されている。閉空間室23,24の底部には、貫通口36,37が形成され、貫通口36,37には、シリコンオイルタンク10が接続されている。貫通口36,37は、高周波が外部に漏れないように、投入される高周波の波長に対して、十分に小さくなるように形成されている。
閉空間室23は、内部の空間がほぼ直方体状に形成されている。シリコンオイルタンク10のシリコンオイル9は、図示しないポンプなどのシリコンオイル供給手段によって、閉空間室23の内部に供給される。すなわち、本実施の形態における閉空間手段には、矢印57に示すように、閉空間室23の内部にシリコンオイルが充填されるように形成されている。シリコンオイル供給手段は、閉空間室23の任意の高さまでシリコンオイルを充填でき、または排出できるように形成されている。
反応容器5の側面において、閉空間室23が形成されている側と反対側には、透過窓16を塞ぐように閉空間室24が形成されている。閉空間室24は、側方に向かって直方体状に延在する部分と、該直方体状の部分から下側に向かって延びるように形成された部分とを含む。シリコンオイル9は、図示しないポンプなどのシリコンオイル供給手段によって、矢印57に示すように閉空間室24の内部に供給され、または排出される。
閉空間室23および閉空間室24に注入されるシリコンオイルの量は、それぞれが独立して制御可能なように形成されている。また、上記のシリコンオイル供給手段は、閉空間室23,24へのシリコンオイルの出し入れを連続的に徐々に行なうことができるように形成されている。また、シリコンオイル供給手段は、液体の注入の速度および排出の速度を制御できるように形成されている。
このように、第4の高周波プラズマ処理装置においては、シリコンオイルを閉空間室の内部に充填することによって、閉空間手段の内部の平均的な比透電率が変更できるように形成されている。また、第4の高周波プラズマ処理装置においては、反応容器5の両側にそれぞれ形成された閉空間手段の構成が異なる。すなわち、電極中心を通る対称軸に対して、閉空間手段が非対称になるように形成されている。
図13に、本実施の形態における第5の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。第5の高周波プラズマ処理装置における閉空間手段は、閉空間室25および可動電磁シールド材50を含む。閉空間手段は、電極中心に対して対称になるように形成されている。
閉空間室25は、透過窓16を塞ぐように形成され、反応容器5の上下方向に延在するように形成されている。閉空間室25の内部には、可動電磁シールド材50が形成されている。可動電磁シールド材50は、一方の側が開口した箱型になるように形成されている。可動電磁シールド材50は、開口した側が反応容器5に向くように、配置されている。
可動電磁シールド材50は、長手方向のほぼ中央部分が仕切り電磁シールド材38で仕切られている。仕切り電磁シールド材38は、板状に形成され、可動電磁シールド材50で囲まれる空間を2つの空間に分割するように形成されている。可動電磁シールド材50および仕切り電磁シールド材38は、導電性を有する材料で形成されている。
可動電磁シールド材50において、仕切り電磁シールド材38で区切られた一方の空間には、固体誘電体11が配置されている。固体誘電体11は、比透電率が1よりも大きな部材である。仕切り電磁シールド材38で区切られた他方の空間には、何も充填されておらず、比透電率は1である。可動電磁シールド材50は、閉空間室25の内部を矢印58に示す方向に移動可能に形成されている。
固体誘電体11は、閉空間室25の内部において、移動可能なように形成されている。本実施の形態においては、可動電磁シールド材50が固体誘電体11とともに、矢印58に示す方向に移動するように移動手段が形成されている(図示せず)。移動手段は、反応容器の両側に配置された可動電磁シールド材50が、それぞれ独立して制御可能なように形成されている。
可動電磁シールド材50は、図13において、矢印58に示す方向のうち、可動電磁シールド材50が上側に向かって移動することにより、透過窓16の主表面全体に対して、固体誘電体11が対向するように配置される。また、可動電磁シールド材50は、図13において、矢印58に示す方向のうち、下側に向かって移動することにより、透過窓16の主表面に対して、固体誘電体11が対向せずに仕切り電磁シールド材38で仕切られた空間が対向するように形成されている。
上記以外の構成については、実施の形態1における高周波プラズマ処理装置と同様であるので、ここでは説明を繰返さない。
(作用・効果、高周波プラズマ処理方法)
本実施の形態において、図9に示す第1の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段に蛇腹型電磁シールド材が含まれる。また、図10に示す第2の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段に電磁シールド管および可動電磁シールド材が含まれる。また、図11に示す第3の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段に電磁シールドシャッタが含まれる。これらのうち、いずれかの閉空間手段を含むことによって、実施の形態1と同様に、反応容器の内部における高周波電界分布を変動させることができ、簡単な構成で大型の被処理物に対して均一なプラズマ処理を行なうことができる高周波プラズマ処理装置を提供することができる。
図9に示す第1の高周波プラズマ処理装置においては、矢印54に示す方向に、可動電磁シールド材26を動かすことによって、蛇腹型電磁シールド材28が伸縮する。蛇腹型電磁シールド材28が伸縮することにより、閉空間手段の空間形状および体積が変化して、反応容器の内部の高周波電界分布が変動する。
図10に示す第2の高周波プラズマ処理装置においては、矢印55に示す方向に、可動電磁シールド材29を移動することによって、可動電磁シールド材29および電磁シールド管21によって囲まれる閉空間手段の空間形状および体積が変化して、反応容器の内部の高周波電界分布が変動する。
第1の高周波プラズマ処理装置および第2の高周波プラズマ処理装置においては、電磁界制御手段は、閉空間手段の電磁的な隔壁の少なくとも一部が移動するように形成されている。この構成を採用することにより、容易な構造で、閉空間手段の空間形状を変化させることができる。電磁的な隔壁は、反応容器や共振器の筐体などと比べて、可動機能を付与することが容易であるため、容易にプラズマ処理装置の設計を行なえるとともに、構成が簡単になる。
さらに、電磁的な隔壁には、閉空間手段の内側となる表面部に高周波電流が流れるものの、外側の表面部に電流が流れることがなく、接地状態にすることができる。したがって、電磁的な隔壁を移動させるために電磁的な隔壁の支持手段を取付ける場合に、電気的な絶縁性などを配慮する必要がない。このように、電磁的な隔壁を移動させるための移動手段には、高周波電流が流れることを容易に排除することができ、容易な構成で閉空間手段を形成することができる。
第2の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段を形成するための部品の点数を少なくすることができ、構成をより簡単にすることができる。一方で、実施の形態1における高周波プラズマ処理装置や本実施の形態における第3のプラズマ処理装置のように、反応容器の側面に閉空間手段として閉空間室が形成されることにより、外部への高周波の漏れを確実に遮断することができる。たとえば、閉空間室が形成されることにより、可動電磁シールド材の不具合などによって可動電磁シールド材と閉空間室との間に隙間が生じても、高周波が外部に漏洩することを防止できる。
図11に示す第3の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間室22に出し入れが可能な電磁シールドシャッタが形成されている。電磁シールドシャッタを移動させることにより、閉空間手段の内部の体積を急激に変化させることができ、反応容器の内部に形成される高周波電界分布を急激に変動させることができる。
本実施の形態においては、電磁シールドシャッタが透過窓の近傍に配置されている。この構成を採用することにより、電磁的な閉空間を大きく変化させることができ、大きく高周波電界分布を変化させることができる。また、本実施の形態においては、1つの閉空間室に対して1つの電磁シールドシャッタが形成されているが、特にこの形態に限られず、1つの閉空間室に対して、複数の電磁シールドシャッタが形成されていてもよい。この構成を採用することにより、高周波電界分布を変化させる大きさを、必要に応じて適宜変更することができる。
第3の高周波プラズマ処理装置において、本実施の形態においては、電磁シールドシャッタの挿入口を十分に小さくすることにより、外部に高周波が漏洩することを防止しているが、特にこの形態に限られず、たとえば、メタルシールのゲートバルブが配置されていてもよい。
図12に示す第4の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段が閉空間室23,24を含み、閉空間室23,24にシリコンオイルタンク10が接続され、シリコンオイルを閉空間室の内部に注入および排出できるように形成されている。すなわち、電磁界制御手段は、閉空間手段の内部における平均的な比透電率が変更可能に形成されている。図13に示す第5の高周波プラズマ処理装置においては、液体の代わりに固体誘電体が配置され、固体誘電体が閉空間室25の内部を移動できるように形成されている。これらのうちいずれかの構成を採用することによっても、構成が簡単で大型の被処理物に対して均一なプラズマ処理を行なうことができる。
第4の高周波プラズマ処理装置において、シリコンオイルは、一般的に比透電率が2以上の値を有する。このシリコンオイル9を、閉空間室23および閉空間室24のうち少なくとも一方に注入することによって、閉空間室の内部の平均的な比透電率を上昇させることができる。また、注入したシリコンオイル9を閉空間室から排出することによって、上記の閉空間室の平均的な比誘電率を低下させることができる。
一般的に、比透電率が高い領域においては、高周波の波長が短くなる。このため、比透電率を上昇させることにより、実質的に電磁的な閉空間の体積を減少させることと同等の効果がある。また、逆に、電磁的な閉空間の比透電率を下げることは、電磁的な閉空間の体積を大きくすることと同様の効果がある。したがって、閉空間室23および閉空間室24のうち少なくとも一方の内部にシリコンオイルを注入または排出することによって、反応容器の内部の高周波電界分布を変動させることができる。シリコンオイルの注入または排出においては、それぞれのプラズマ処理の前に行なうほか、プラズマ処理を行なっているときに、注入または排出を行なってもよい。
第4の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段および閉空間手段の内部において、機械的に駆動される部分がないために、駆動系の動作不良による高周波の漏洩を防止することができる。本実施の形態においては、閉空間室に注入する液体としてシリコンオイルを用いたが、特にシリコンオイルに限られず、比誘電率が1よりも大きい特性を有する液体であればよい。または、閉空間室の内部に注入することによって、閉空間室の内部の平均的な比透電率が変化する液体であればよい。
また、閉空間室に液体を連続的に注入または排出することによって、反応容器の内部の高周波電界分布を連続的に変化させることができる。さらに、液体の注入の速度または排出の速度を制御することによって、高周波電界分布の変動の速度を容易に制御することができる。
図13に示す第5の高周波プラズマ処理装置においては、液体を閉空間室に注入または排出する代わりに、閉空間室25の内部に移動可能な固体誘電体11が配置されている。第5の高周波プラズマ処理装置においては、矢印58に示すように可動電磁シールド材50を移動させることによって、透過窓16の外側に形成される電磁界の閉空間の平均的な比透電率を変化させることができる。
図13の向かって左側の閉空間手段に示すように、固体誘電体11と透過窓16とが対向するように、可動電磁シールド材50が配置された場合には、反応容器5の外部における電磁的な閉空間の平均的な比透電率を高くすることができる。また、図13の向かって右側の閉空間手段のように、固体誘電体11と透過窓16とが対向しないように、可動電磁シールド材50が配置されることによって、反応容器の外部の電磁的な閉空間の平均的な比透電率を1程度にすることができる。すなわち、仕切り電磁シール材で区切られた空間のうち、固体誘電体が配置されていない空間が透過窓と対向するように可動電磁シールド材を配置することにより、平均的な比透電率をほぼ1にすることができる。
このように、閉空間室の内部に移動可能な固体誘電体を配置することによって、閉空間室の内部の平均の比透電率を大きく変化させることができ、反応容器の内部の高周波電界分布を大きく変動させることができる。また、閉空間手段の平均的な比透電率を速く変化させることができ、高周波電界分布を迅速に変動させることができる。
また、閉空間室の内部に移動可能な固体誘電体を配置することによって、液体に比べて誘電損失の小さい材料、または耐熱性の高い材料を電磁界制御手段に用いることができる。この結果、電磁界制御手段における誘電損失を低減することができる。または、高周波プラズマによる加熱に対して耐性を有する電磁界制御手段を形成することができる。固体誘電体としては、たとえば、アルミナ、窒化アルミニウムなどを用いることができる。
第5の高周波プラズマ処理装置おいては、透過窓16全体に対して固体誘電体11が対向する場合と、全く対向しない場合との例を挙げて説明したが、特にこの形態に限られず、たとえば、プラズマ処理を行なっているときに、徐々に可動電磁シールド材26を移動させて、反応容器5の内部の高周波電界分布を変動させても構わない。
また、図13に示す第5の高周波プラズマ処理装置においては、2つの閉空間手段が、電極中心を対称軸として左右対称に形成されているが、特にこの形態に限られず、閉空間手段が1つであってもよいし、電極中心を軸として非対称に形成されていても構わないことは実施の形態1におけるプラズマ処理装置と同様である。
その他の作用、効果およびプラズマ処理方法については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を繰返さない。
(実施の形態3)
(構成)
図14から図17を参照して、本発明に基づく実施の形態3における高周波プラズマ処理装置および高周波プラズマ処理方法について説明する。本実施の形態における高周波プラズマ処理装置は、実施の形態1における高周波プラズマ処理装置と閉空間手段の構成が異なる。
図14に、本実施の形態における第1の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。反応容器45は、導電性の材料で形成され、一の面が開口した箱型の部分を含む。反応容器45は、対向電極が配置されている側の側壁に形成され、電気的に絶縁性を有する透過窓17を含む。本実施の形態においては、反応容器45の上部に透過窓17が形成されている。透過窓17は、反応容器45の導電性の部分に接合され、反応容器45の内部の気密性が確保されるように形成されている。
反応容器45の内部には、平板状の放電電極32と平板状の対向電極3が配置されている。放電電極32は、主表面が透過窓17の主表面に接するように、透過窓17に接合されている。
透過窓17の主表面のうち、放電電極32が配置されている側と反対側の主表面には、高周波電源と電気的に接続された伝播電極として、可動電気経路部材19が配置されている。可動電気経路部材19は、図示しない移動手段によって、矢印59に示す方向に移動できるように形成されている。可動電気経路部材19は、透過窓17の主表面に沿って移動可能なように形成されている。
可動電気経路部材19は、平板状に形成された接触部41を含む。接触部41の主表面は、透過窓17の主表面と接触している。透過窓17を挟むように、接触部41および放電電極32が配置されていることによって、接触部41と放電電極32とに挟まれる部分がコンデンサの機能を有して、高周波の電気経路が形成されている。すなわち、放電電極32には、コンデンサを介して、可動電気経路部材19から高周波が導入されている。
可動電気経路部材19は、平面視したときに、放電電極32よりも小さくなるように形成されている。すなわち、図14においては、高周波プラズマ処理装置を上側から透視したときに、放電電極32よりも可動電気経路部材19の接触部41の方が小さくなるように形成されている。
透過窓17の上方には、可動電気経路部材19に対向するように、固定電気経路部材18が形成されている。固定電気経路部材18は、平板状に形成され、延在方向が、可動電気経路部材19の移動方向とほぼ平行になるように配置されている。
図15に、可動電気経路部材19および固定電気経路部材18を側方から見たときの側面図を示す。可動電気経路部材19は、平板状に形成された対向部42を含む。固定電気経路部材18は、主表面が対向部42の主表面とほぼ平行になるように配置されている。対向部42は、固定電気経路部材18と離間するように配置されている。また、対向部42と固定電気経路部材18との間の隙間は、可動電気経路部材19が移動しても一定に保たれるように形成されている。このように、可動電気経路部材19と、固定電気経路部材18とは、容量が一定のコンデンサの機能を有するように形成されている。
図14を参照して、可動電気経路部材19と、固定電気経路部材18の周りには、外部への高周波の漏洩を防ぐように、電磁シールド材34が形成されている。電磁シールド材34の上部には、放電電極に高周波を印加するための共振器4が配置されている。共振器4は、導電性の筐体を含み、この筐体の一部が電磁シールド材34に接合されている。共振器4は、高周波電源1に接続されている。
本実施の形態において、電磁的な閉空間を形成するための閉空間手段は、電磁シールド材34および共振器4を含む。本実施の形態においては、閉空間手段の内部の構成が変化するように形成されている。
図16に、本実施の形態における第2の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。第2の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材19が透過窓17の主表面に2つ形成されている。それぞれの可動電気経路部材19は、矢印60に示すように固定電気経路部材18の主表面に平行な方向に、独立して移動可能なように形成されている。それぞれの可動電気経路部材19は、固定電気経路部材18に対して一定の間隔をあけて移動するように形成されている。その他の構成については、本実施の形態における第1の高周波プラズマ処理装置と同様である。
図17に、本実施の形態における第3の高周波プラズマ処理装置の概略断面図を示す。第3の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材20が2つ配置され、それぞれの可動電気経路部材20に、接触部41が形成されていることは、本実施の形態における第2の高周波プラズマ処理装置と同様である。それぞれの可動電気経路部材20が、矢印60に示すように、固定電気経路部材18の主表面とほぼ平行な方向に移動可能に形成されていることも、第2の高周波プラズマ処理装置と同様である。
第3の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材20が、可変コンデンサ部43を含む。可変コンデンサ部43は、平板状の2枚の電極が、互いに離れて配置されている。この2枚の電極は、電気的に絶縁性を有する絶縁部材で連結され、互いの主表面がほぼ平行な状態で、2枚の電極同士の間隔を変更できるように形成されている。
接触部41は、透過窓17の主表面と接触している。可動電気経路部材20は、矢印61に示すように、対向部44が上下方向に移動可能に形成されている。対向部44が上下方向に移動することによって、可変コンデンサ部43の2枚の電極同士の間隔が調整され、可変コンデンサ部43の静電容量を調整できるように形成されている。対向部44が矢印61に示す方向に移動する際に、対向部44の主表面と固定電気経路部材18の主表面とは、ほぼ平行になるように形成されている。
その他の構成については、実施の形態1における高周波プラズマ処理装置と同様であるので、ここでは説明を繰返さない。
(作用・効果、高周波プラズマ処理方法)
高周波電源1からの高周波は、共振器4、固定電気経路部材18および可動電気経路部材19を通って、放電電極32に導入される。
図14に示す本実施の形態における第1の高周波プラズマ処理装置においては、閉空間手段の内部の伝播電極としての可動電気経路部材19が、矢印59に示すように移動可能に形成されている。この構成を採用することにより、可動電気経路部材19の移動に伴って、放電電極32に対する高周波の導入経路を変更することができる。この結果、反応容器の内部の高周波電界分布を変動させることができ、容易な構成で均一なプラズマ処理を行なうことができる高周波プラズマ処理装置を提供することができる。
また、可動電気経路部材19は、反応容器の外部に配置されているため、反応容器の内部の構成物は動かずに、安定したプラズマを形成することができる。また、可動電気経路部材を透過窓の表面に沿って連続的に移動させることにより、高周波電界分布の変動を連続的に行なうことができる。また、可動電気経路部材の移動速度を変更することにより、高周波電界分布の変動の速度を容易に変更することができる。このように、制御性に優れ、均一なプラズマ処理を行なうことができるプラズマ処理装置を提供することができる。
可動電気経路部材19と放電電極32とは、絶縁性を有する透過窓17を挟むように配置されている。この構成を採用することにより、可動電気経路部材19と放電電極32との間に、コンデンサの機能を有する、いわゆる容量結合部を形成することができる。容量結合部で高周波電気経路を形成することにより、気密された反応容器の隔壁を貫通して、さらに移動可能な電極を形成する必要がなく、容易に放電電極に対する高周波の導入位置を変更することができる。
また、本実施の形態においては、可動電気経路部材19は、平面視したときに放電電極32よりも小さくなるように形成されている。特に、平面視したときに、接触部41が放電電極32よりも小さくなるように形成されている。この構成を採用することにより、伝播電極と放電電極との相対的な位置を容易に変更することができ、反応容器の内部の高周波電界分布を容易に変動させることができる。
なお、本出願人らは、電磁界シミュレーションにより、反応容器の内部の高周波電界分布は、放電電極における給電位置に依存して、大きく変化し得ることを確認している。このシミュレーション結果によれば、放電電極の放電面と反対側の面から給電を行なった場合、放電電極に対する給電位置を移動させたときに、放電電極と対向電極との間に生じる高周波電界分布のピークは、給電位置を移動した向きに移動することが分かっている。このシミュレーションの結果は、実施の形態4において詳しく説明する。
透過窓17の材質としては、高い比透電率を有する材料を用いることが好ましい。たとえば、アルミナなどの材料によって形成されることが好ましい。この構成を採用することによって、電気的に絶縁性を有する透過窓17を挟んで構成される容量結合部の静電容量を大きくすることができ、十分に小さなインピーダンスで可動電気経路部材19と放電電極32とを接続させることができる。
本実施の形態においては、固定電気経路部材と可動電気経路部材とは、所定の間隔を空けて離れていた。すなわち、コンデンサの機能を有する容量結合部が形成されていたが、特にこの形態に限られず、固定電気経路部材と可動電気経路部材とが接触していても構わない。
図16に示す第2の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材19が、2つ形成されている。この構成を採用することにより、放電電極32に対する給電経路を2つにすることができ、反応容器45の内部の高周波電界分布を多様に変化させることができる。第2の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材19が2つ形成されているが、特にこの形態に限られず、3つ以上の可動電気経路部材19が形成されていても構わない。
または、本実施の形態においては、固定電気経路部材18が1つ形成されているが、特にこの形態に限られず、たとえば、互いの主表面がほぼ平行になるように、板状の固定電気経路部材が複数形成され、それぞれの固定電気経路部材に対して、複数の可動電気経路部材が形成されていても構わない。
図17に示す第3の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材20に可変コンデンサ部43が形成されている。この構成を採用することにより、放電電極32に対するそれぞれの可動電気経路部材からの給電割合を制御することができる。すなわち、それぞれの可動電気経路部材の可変コンデンサ部の容量を変更することによって、放電電極32に対する給電の割合を変更することができる。したがって、反応容器5の内部の高周波電界分布の形状をさらに多様に変化させることができる。
本実施の形態においては、高周波電気経路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変部として、可変コンデンサ部が形成されている。この構成を採用することにより、2枚の電極間同士の距離を幾何学的に変化させるのみで、可変コンデンサ部の容量が大きく変化する。このため、容易に高周波電気経路のインピーダンスを調整することができる。
また、容量を調整できるコンデンサ部の電極同士の距離を十分に離せば、実質的に電気経路を切断することができ、急激に反応容器の内部の高周波電界分布を変化させることができる。または、必要に応じて、複数の可動電気経路部材のうち、特定の可動電気経路部材のみを電気的に接続して、他の可動電気経路部材は切断することができる。すなわち、複数の可動電気経路部材のうち、任意のものを容易に選択することができる。
第3の高周波プラズマ処理装置においては、可動電気経路部材20に、可変コンデンサ部43が形成されているが、特にこの形態に限られず、高周波電気経路のインピーダンスを調整できる機能を有していればよい。たとえば、可動電気経路部材において、コンデンサ部の代わりに、インダクタンスが可変のコイルが接続されていてもよい。
その他の作用、効果およびプラズマ処理方法については実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
(実施の形態4)
(構成)
図18から図23を参照して、本発明に基づく実施の形態4における高周波プラズマ処理装置および高周波プラズマ処理方法について説明する。
図18は、本実施の形態における高周波プラズマ処理装置の概略断面図である。本実施の形態において、反応容器46は、導電性を有する材料から形成され、箱型になるように形成されている。反応容器46の内部には、互いの主表面がほぼ平行になるように、平板状の放電電極40および平板状の対向電極3が配置されている。
反応容器46の一の面には、反応容器46を貫通するように、予備電極としての給電棒7が複数配置されている。給電棒7は、棒状に形成され、絶縁体48を介して反応容器46に固定されている。絶縁体48は、電気的に絶縁性を有する材料で形成されている。
本実施の形態においては、3本の給電棒7が放電電極40の電極中心を中心にして対称に配置されている。給電棒7は、一直線上に配置されている。
給電棒7の一方の端部は、放電電極40に接合固定されている。放電電極40は、給電棒7を介して反応容器46に固定されている。給電棒7の他方の端部は、高周波電気経路のインピーダンスを変化させるためのインピーダンス可変手段としての可変コンデンサ33に接続されている。可変コンデンサ33は、それぞれの給電棒7に対して1つずつ配置されている。複数の可変コンデンサ33は、それぞれが独立して容量を変更できるように形成されている。それぞれの可変コンデンサ33は、共振器に接続されている。すなわち、本実施の形態においては、共振器と予備電極との間に、インピーダンス可変手段が配置されている。
給電棒7および可変コンデンサ33のまわりには、電磁シールド材47が形成されている。電磁シールド材47は、板状に形成され、複数の可変コンデンサ33を取囲むように形成されている。電磁シールド材47の上部には、共振器4が配置されている。本実施の形態においては、絶縁体48は非常に薄く形成され、反応容器46の内部からの高周波の漏洩を抑制している。
その他の構成については実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を繰返さない。
(作用・効果、高周波プラズマ処理方法)
本実施の形態における電磁界制御手段は、共振器と給電棒との間の複数の高周波電気経路に、高周波電気経路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変手段が形成されている。インピーダンス可変手段としての可変コンデンサの容量を変更することによって、放電電極に対するそれぞれの給電棒の給電割合を調整することができる。すなわち、給電棒が接続された放電電極のそれぞれの位置に対する給電の大きさを変更することができる。この結果、反応容器の内部に形成される高周波電界分布を変動させることができ、簡単な構成で、大型の被処理物に対しても均一なプラズマ処理を行なうことができる高周波プラズマ処理装置を提供することができる。
また、インピーダンス可変手段によって、連続的にインピーダンスを変化させることにより、予備電極に対する高周波の給電の大きさを変化させることができ、連続的に反応容器の内部の高周波電界分布を変動させることができる。または、インピーダンス可変手段を調整することにより、高周波電界分布の分布形状を制御することができる。この結果、プラズマ処理において、高周波電界分布を変動させながら被処理物の処理を行なうことができ、均一なプラズマ処理を行なうことができる。このように、本実施の形態においては、容易に高周波電界分布を制御することができる。
本実施の形態においては、予備電極としての給電棒が3本形成されているが、特にこの形態に限られず、給電棒は複数形成されていれば構わない。また、本実施の形態においては、給電棒が一直線上に配置されているが、特にこの形態に限られず、任意の位置に給電棒が配置されても構わない。給電棒が、規則的に配置されていることによって、高周波電界分布の制御を容易に行なうことができる。
また、本実施の形態においては、すべての予備電極に対応して、インピーダンス可変手段が接続されているが、特にこの形態に限られず、少なくとも1つ以上の予備電極に対して、インピーダンス可変手段が接続されていれば構わない。
また、本実施の形態においてはインピーダンス可変手段として、容量を変更することができる可変コンデンサが配置されているが、特にこの形態に限られず、高周波電気経路のインピーダンスを調整することができればよい。たとえば、可変コンデンサの代わりに、インダクタンスが可変の可変コイルが配置されていても構わない。
以下に、電磁界シミュレーションにより得られた、放電電極に対する給電位置を変化させることによって変化する反応容器の内部の高周波電界分布について説明する。このシミュレーションは、実施の形態3における高周波プラズマ処理装置および実施の形態4における高周波プラズマ処理装置に対応する。
行なった電磁界シミュレーションの条件は次の通りである。シミュレータとしては、高周波3次元電磁界シミュレータHFSS(High-Frequency Structure Simulator、ver.8.5.04、アンソフト・ジャパン株式会社製)を用いた。図19に、電磁界シミュレータにおける電極のモデル形状の斜視図を示す。放電電極40と対向電極3とは、それぞれの主表面の平面形状が、正方形になるように形成されている。放電電極40と対向電極3とは、互いの主表面同士がほぼ平行になるように配置された平行平板型電極である。それぞれの電極の大きさは、1200×1200×50mmとしている。放電電極40と対向電極3との電極間の距離は、30mmとしている。高周波の周波数は、108.5MHzである。
放電電極40の主表面には、一定の間隔をあけて給電棒7が9個形成されている。給電棒7は、棒状に形成され、給電棒7の軸方向に沿って高周波が給電されるように形成されている。給電棒7は、断面の円形の直径が50mmになるような円柱状に形成されている。給電棒7は、放電電極40の平面形状である正方形の重心位置(すなわち電極中心)を中心点70としたときに、中心点70を原点(0,0)として等間隔に配置されている。
図19においては、X方向およびY方向を放電電極40の1辺と平行な方向になるように形成した座標系において、X方向に300mmおよびY方向に300mmの間隔をあけて、給電棒7が等間隔に配置されている。給電棒7は、放電電極40の主表面のうち、対向電極3に向かう側と反対側の面に接続されている。
実施の形態4におけるインピーダンス可変手段は、放電電極40からほぼ100mm離れた位置に配置されるように設定した。また、給電棒7、放電電極40および対向電極3は、電気的に導電性を有する導体に設定して、シミュレーションを行なっている。
図20に、給電位置を、A点(X=300mm,Y=0mm)、B点(X=0mm,Y=0mm)、C点(X=−300mm、Y=0mm)と設定した場合に、それぞれの一点に対して給電を行なった場合の、X方向の高周波電界分布を示す。この高周波電界分布は、中心点(原点)を通って、X方向に平行な断面におけるそれぞれの分布である。それぞれの高周波電界分布は、最高値が1となるように規格化されている。
横軸が、中心点(原点)からのX方向の距離であり、縦軸は電界強度である。図20に示すように、給電位置が中心点であるB点である場合には、電界は、中心点を境界にして、左右対称になるように形成されている。これに対して、給電位置を原点からずらすと、A点またはC点のグラフに示すように、ずらす位置に対応して高周波電界分布のピークも移動することがわかる。すなわち、放電電極における給電位置を移動すると、高周波電界分布のピークも給電位置の移動に追従して移動することがわかる。
このように、放電電極への給電位置を変化させることによって、電界分布を変動させることができる。すなわち、実施の形態3においては、可動電気経路部材を移動させることにより、高周波電界分布を変化させることができ、実施の形態4においては、可変コンデンサ部の容量を変化させたり、可変コンデンサ部において一部の電気経路を切断したりすることにより、高周波電界分布を変化させることができる。
図21に、本シミュレータのモデルにおいて、9点の給電位置から、同位相で同時に均一に給電を行なった場合(ケース1)と、9点のそれぞれの位置から個別に順に給電を行なって電界強度の総和を計算した場合(ケース2)との高周波電界分布を示す。
図21に示すように、ケース1に比べてケース2の方が、高周波電界分布の均一性が高いことがわかる。すなわち、ケース1よりもケース2の方が、直線に近い形状を有していることが分かる。したがって、放電電極に対する給電位置を複数箇所形成した場合、たとえば、高周波電気経路を分岐させて複数の給電位置に対して同時に給電を行なう(ケース1)よりも、給電を行なう位置を順に変更して給電を行なった方(ケース2)が、全体の高周波電界分布を均一化できることが分かる。
電界強度の時間積分値は、概ねプラズマ処理量に対応するため、給電位置を順次変更して、高周波電界分布を変動させてプラズマ処理を行なうと、プラズマ処理量が平均化されて、均一なプラズマ処理を行なうことができる。
前述のように、プラズマ処理を行なっている際に、連続的に高周波電界分布を変動させながらプラズマ処理を行なうことによって生じるプラズマ処理の均一化の効果は、放電電極の放電面の最大寸法が、反応容器の内部に導入される高周波の半波長よりも大きい場合において特に顕著になる。これは、放電電極と対向電極との間に形成される高周波電界分布が、反転することに起因すると考えられる。次に、考えられる理由について高周波電界分布を仮想的に形成したグラフを用いて説明する。
図22は、放電電極における一方向に等間隔をあけて、A点からF点まで給電位置を変化させて順次プラズマ処理を行なった場合の高周波電界分布の断面図である。この高周波は、高周波の半波長よりも電極の大きさの方が大きくなっている。高周波の半波長よりも電極の大きさが大きいため、放電電極と対向電極の間においては、電界が正になる領域と、電界が負になる領域とを有している。
A点からF点までの全ての点に対して、同時に給電を行なった場合には、正の電界の成分と負の電界の成分とが、互いに打消し合うことになる。たとえば、図22の向かって右方において、A点における給電の電界成分は負の値を有するが、F点における給電の電界成分は正の値を有するため、互いに打消される。これらの打消しの効果を考慮した総和が、すべての位置から給電を行なった場合の高周波電界分布になる。この高周波電界分布を図22に、実線で示してある。
図22の実線に示すように、足し合わせた高周波電界分布は、電極中心を中心軸としてほぼ山型の形状を有する。A点およびF点などは、電極の両端において強い電界強度を有するが、互いに打消されて電極の両端における電界強度は小さくなる。なお、高周波電界分布の非対称性が強調され、高周波電界分布は大きいままである。図22の実線に示す高周波電界分布で、プラズマ処理を行なえば、足し合わせた高周波電界分布に応じてプラズマ処理分布が生じることになる。すなわち電極中心付近のプラズマ処理量が多くなり、電極の両端に向かうにつれて、プラズマ処理量が少なくなる。
次に、それぞれの給電位置に対して、順次給電を行なった場合におけるプラズマ処理について検討する。プラズマ処理の処理量は、ある瞬間における電界の正または負に依存せずに、絶対値である電界強度に依存する。
図23に、A点からF点までのそれぞれの給電位置に対して、個別に給電を行なっていた場合の電界強度の分布を示す。さらに、A点からF点まで行なった給電を足し合わせて規格化した高周波電界強度分布を実線にて示している。この高周波電界強度分布は、たとえば、A点、B点、C点…と、順次給電位置をずらしながら、プラズマ処理を行なった場合のプラズマ処理分布に対応する。図22における足し合わせた高周波電界分布と比較すると、図23における足し合わせた高周波電界強度分布は、放電電極の位置にあまり依存せず、均一なプラズマ処理を行なえることがわかる。
すなわち、ある瞬間における電界分布が正負反転する程度、換言すれば、高周波の半波長よりも電極の大きさが大きくなる程度であれば、特に顕著に高周波電界分布の影響が大きくなり、プラズマ処理の均一化を行なう際に、高周波電界分布を変動させる動的な処理を行なうことが有用になる。
なお、本シミュレーションにおいては、放電電極に対する給電位置を変動させて、高周波電界分布を変動させたが、特にこの形態に限られず、実施の形態1から実施の形態3に示したように、高周波電界分布を変動させても構わない。または、それぞれの実施の形態における電磁界制御手段を組合せても構わない。
その他の作用、効果、およびプラズマ処理方法については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 高周波電源、2,32,40 放電電極、3 対向電極、4 共振器、5,45,46 反応容器、6,22〜25 閉空間室、7 給電棒、8 基板(被処理物)、9 シリコンオイル、10 シリコンオイルタンク、11 固体誘電体、12 導電性筐体、13 インピーダンス整合用コイル、14a,14b インピーダンス整合用コンデンサ、15,48 絶縁体、16,17 透過窓、18 固定電気経路部材、19,20 可動電気経路部材、21 電磁シールド管、26,29,30,50 可動電磁シールド材、27,31 支持棒、28 蛇腹型電磁シールド材、33 可変コンデンサ、34,47 電磁シールド材、35 挿入口、36,37 貫通口、38 仕切り電磁シールド材、39 アース、41 接触部、42,44 対向部、43 可変コンデンサ部、51〜61 矢印、70 中心点。