JP2006040734A - 放電用電極 - Google Patents

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哲司 柴田
Yoshiyuki Nakazono
佳幸 中園
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典幸 田口
Koji Sawada
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Abstract

【課題】 耐久性が高くて長時間連続して放電を安定して発生させることができる放電用電極を提供する。
【解決手段】 収納凹部1を有するカバー材2をセラミック焼結体で形成する。収納凹部1に電極3を設けると共に収納凹部1内の面に電極3の表面を密着させる。セラミック焼結体はセラミックの溶射コーティング層に比べて、空隙率を小さくして緻密にすることができ、このセラミック焼結体のカバー材2で電極3を被覆することにより、放電時に絶縁破壊が起こりにくくなってカバー材2の損傷を防止することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、グロー放電などの放電を発生するために用いられる放電用電極に関するものである。
従来より、対向配置された電極間に電圧を印加することにより放電を発生させ、この放電により生成されるプラズマを被処理物に供給することにより、被処理物の表面をクリーニングしたり改質したりすることが行なわれている。上記電極としてはその表面をセラミック誘電体の溶射コーティング層で被覆したものが用いられており、これにより、絶縁耐圧を向上させてアーク放電を抑制し、放電の均一性を高めるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、セラミック誘電体の溶射コーティング層は、セラミックの粉体の堆積により形成されるものであるので、微視的には非常にポーラスで均一性が低いものであり、グロー放電を長時間連続的に発生させると、アーク放電などの絶縁破壊が起こりやすく、耐久性が低いという問題があった。また、溶射皮膜の重なり部分に発生する界面により、絶縁破壊電圧が低下するという問題もあった。そこで、特許文献1の発明では溶射コーティング層の表面に樹脂被覆を施しているが、放電により樹脂被覆から不純物が生じて被処理物を汚染する場合もあった。
また、誘電体層として、粉体のガラス質材料を金属電極にスプレーなどで塗布した後、熱溶着して被覆する方法の提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法によっても誘電体層の皮膜に微小なピンホールが発生しやすく、アーク放電が発生しやすい欠点があった。
また、ガラスやセラミックなどの固体誘電体平板を金属に配設する方法も提案されているが(例えば、特許文献3参照)、対向する金属むき出しの部分間でアーク放電が発生しやすいという問題があった。
特開平2003−117384号公報 特開2001−102197号公報 特開平4−358076号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、耐久性が高くて長時間連続して放電を安定して発生させることができる放電用電極を提供することを目的とするものである。
本発明は、図1に示すように収納凹部1を有するカバー材2をセラミック焼結体で形成し、収納凹部1に電極3を設けると共に収納凹部1内の面に電極3の表面を密着させて成ることを特徴とするものである。
本発明にあっては、収納凹部1内の面と電極3の表面とをロウ付けすることが好ましい。
また、本発明にあっては、収納凹部1の開口を樹脂封止材4で封止するのが好ましい。
セラミック焼結体はセラミックの溶射コーティング層に比べて、空隙率を小さくして緻密にすることができ、このセラミック焼結体の一体のカバー材2で電極3を被覆することにより、放電時に絶縁破壊が起こりにくくなってカバー材2の損傷を防止することができ、耐久性を向上させることができると共に長時間連続して放電を安定して発生させることができるものである。また、電極3をカバー材2の収納凹部1に収納して設けることによって、電極3の放電面のみを被覆する場合に比べて、電極3の露出面積を小さくすることができ、電極3からの異常放電を少なくして効率よく安定して放電を発生させることができるものである。さらに、収納凹部1内の面に電極3の表面を密着させることにより、収納凹部1内の面と電極3の表面との間で放電が起こらないようにすることができ、電極3の劣化を少なくすることができるものである。
また、収納凹部1内の面と電極3の表面とをロウ付けすることにより、樹脂接着剤で接着する場合に比べて、熱劣化などを少なくすることができ、耐久性をより向上させることができるものである。
また、収納凹部1の開口を樹脂封止材4で封止するので、樹脂封止材4で収納凹部1の開口を閉塞することにより電極3の露出面積をさらに小さくすることができ、電極3からの異常放電をより少なくして効率よく安定して放電を発生させることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図2に示すように、本発明の放電用電極Aは、セラミック焼結体で形成されるカバー材2と、金属導体で形成される電極3と、樹脂封止材4とを備えて形成されている。
カバー材2を形成するためのセラミック焼結体は、セラミックの粉体材料を焼結することにより形成されるものであり、このセラミックの粉体材料としては、例えば、アルミナ、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、チタン酸バリウムなどの公知のものを単独で用いたりあるいは複数種類併用したりすることができる。また、セラミックの粉体材料の粒径は、例えば0.1〜1000μmにすることができるが、これに限定されるものではない。
カバー材2は断面略コ字状で横長の箱型に形成されており、カバー材2の内側空間は収納凹部1として形成されている。この収納凹部1はカバー材2の背面に開口させている。また、カバー材2の厚み(肉厚)は、例えば0.01〜10mmにすることができる。尚、カバー材2の形状や大きさなどは適宜設計変更可能である。
上記のような収納凹部1を有するカバー材2を形成するにあたっては、各種の方法を採用することができる。例えば、セラミックの粉体材料を角材形状などの所望の形状に成形した後、焼成してセラミック焼結体のカバー素材を形成し、このカバー素材に切削加工などの三次元加工を施して収納凹部1を形成することにより、カバー材2とすることができる。また、セラミックの粉体材料をカバー材2の形状に成形した後、焼成することによりセラミック焼結体のカバー材2を形成することができる。セラミックの粉体材料を成形するにあたっては、鋳込み成形法、塑性成形法、加圧成形法、射出成形法、テープ成形法、低温等方圧圧密成形法、ゲル化による成形法などを例示することができる。また、焼成工程での温度は、使用するセラミックの粉体材料の種類などによって異なるが、例えば500〜2500℃にすることができる。尚、カバー材2の形成にあたっては、成形と焼成とを同時に行なうホットプレス法や高温等方圧圧密成形法などを用いても良い。
電極3は銅、アルミニウム、真鍮、耐食性の高いステンレス鋼(SUS304など)、チタン、金、銀、銀パラジウム、タングステン、モリブデン、クロム、コバール、42アロイなどの導電性の金属材料を用いて形成することができる。電極3の大きさや形状は収納凹部1に嵌り込み可能であれば、特に限定されるものではないが、収納凹部1内の面と電極3の表面との間の隙間をできる限り少なくするように、収納凹部1の形状と電極3の形状を整合させるのが好ましい。
樹脂封止材4はエポキシ樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂(テフロン(登録商標))、ピーク樹脂などの絶縁性を有する樹脂を用いた横長の成形品であって、その正面に封入突条5を全長に亘って設けて断面略凸形状に形成されている。
そして、本発明の放電用電極Aを形成するにあたっては、カバー材2の収納凹部1にその背面の開口から電極3を嵌め込んで収納凹部1内に電極3を収納し、この後、封入突条5を収納凹部1の開口に挿入するようにして樹脂封止材4をカバー材2の背面側に取り付けるようにする。樹脂封止材4の取り付けは接着剤等で接着して行うことができる。ここで、カバー材2の内面である収納凹部1内の面と電極3の表面(背面を除く)とは密着させるが、カバー材2や電極3の寸法精度が高くても微細な隙間が生じることがある。そこで、収納凹部1内の面と電極3の表面との密着性を高くするために、モリブデン-マンガンや活性金属を使用したロウ付けや、固相接合法により接合するのが好ましく、これにより、上記微細な隙間が埋められることになり、収納凹部1内の面と電極3の表面とを密着させることができる。ロウ材の例としてはAg−Cu−Ti系や、Ni−Ti系材料を例示できるが、ガラス剤を配合した低温ロウ材を使用することもできる。また、ロウ付けするにあたっては、ロウ材を電極3と共に収納凹部1に入れて加熱し、ロウ材を溶融させた後、冷却するようにして行なう。尚、ロウ付けの代わりに樹脂接着剤を用いて接着しても良いが、樹脂接着剤は耐熱性が低いので、ロウ付けの方が好ましい。
本発明の放電用電極Aはプラズマ発生装置に用いることができる。図1のプラズマ発生装置は、一対の放電用電極A、Aをその正面(樹脂封止材4と反対側の面)を向い合わせて対向配置すると共に電極3に高周波電源やパルス電源等の電源6を接続することによって、形成されている。そして、一対の放電用電極A、Aの間の放電空間7に上側からガスGを導入すると共に一対の放電用電極A、A間に高周波電圧やパルス電圧を印加することによって、放電空間7でグロー状の放電を発生させ、この放電により放電空間7でプラズマPを生成し、このプラズマPを放電空間7の下側開口から吹き出して被処理物の表面に供給することによって、クリーニングや表面改質などのプラズマ処理を行うことができる。尚、上記のプラズマ発生装置において、放電用電極A、A間の距離は印加する電圧の大きさやカバー材2の厚みなどに応じて適宜設定可能であるが、例えば、0.1〜50mmにすることができる。また、上記のプラズマ発生装置は、例えば、0.09〜0.12MPaの大気圧近傍の圧力下で使用することができる。また、放電空間7における電界強度が10〜1000kV/cm、電圧の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が10μs以下となるように電圧を印加するのが好ましい。さらに、プラズマ生成用のガスとしては、空気、窒素、ヘリウム、アルゴンあるいはこれらのガスにCFなどのフッ素系ガスや水素ガスなどを混合したガスなどを用いることができる。
そして、本発明の放電用電極Aは、溶射コーティング層よりも空隙率が小さくて緻密なセラミック焼結体のカバー材2で電極3を被覆するので、放電時に絶縁破壊が起こりにくくすることができ、カバー材2の損傷を防止し、耐久性を向上させ、長時間連続して放電を安定に発生させることができる。また、カバー材2の収納凹部1に電極3を嵌め込んで、その正面、上面、下面、側面を一体のカバー材2で覆うことによって、電極3の放電面(電極3、3の互いに対向する正面)のみを被覆する場合に比べて、電極3の露出面積を小さくすることができて電極3からの異常放電を少なくして効率よく安定して放電させることができる。さらに、収納凹部1内の面に電極3の表面を密着させることにより、収納凹部1内の面と電極3の表面との間で放電が起こらないようにすることができ、電極3の劣化を少なくすることができる。また、収納凹部1の開口を樹脂封止材4で封止するので、電極3の露出面積をさらに小さくすることができ、電極3からの異常放電をより少なくして効率よく安定して放電させることができる。
本発明において、カバー材2は各種の形状に形成することができる。図1のものでは収納凹部1はカバー材2の背面のみに開口させるようにしているが、例えば、図3に示すように、収納凹部1をカバー材2の背面と上面とに亘って開口させるようにしても良く、この場合、収納凹部1の上面開口を閉塞するための上部閉塞部7を樹脂封止材4に設けることができる。
また、図4に示すように、収納凹部1をカバー材2の背面と両側面とに亘って開口させるようにしても良く、この場合、収納凹部1の側面開口を閉塞するための側部閉塞部8を樹脂封止材4に設けることができる。そして、この放電用電極A、Aを一対用いて上記と同様のプラズマ生成装置を形成する場合に、図5に示すように、対向する放電用電極A、Aの側部閉塞部8、8同士あるいはその間においてカバー材2を、樹脂成形品などの連結部材9で連結することができ、対向する放電用電極A、Aの間隔を連結部材9で一定に保持することができて放電を安定化させることができる。さらに、この場合、カバー材2は電極3よりも長く形成することにより、連結部分には電界は作用せず、放電が発生しないため、連結部材9への放電による劣化が軽減され、耐久性を向上させることができる。
また、図6に示すように、本発明の放電用電極Aを複数個並べて使用することもできる。これは従来法ではピンホールなどにより電極3の接触部分でアーク放電が生じやすく適用が難しかったが、本方法ではそのような問題が発生せず、容易に幅方向に延長して処理幅を拡大することが可能となった。
尚、上記では樹脂封止材4として成形品を嵌め込む場合について説明したが、これに限らず、硬化前の樹脂を電極3及びカバー材2の背面側に充填し、この後、樹脂を硬化させて樹脂封止材4を形成しても良い。
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例)
図2に示す放電用電極Aを形成した。
カバー材2はアルミナの粉体材料を原料とするセラミック焼結体であって、外寸を長さ200mm、高さ30mm、幅30mmとし、内寸長さ198mm、高さ29mm、幅28mmとした。従って、カバー材2の厚みは1mmである。また、このカバー材2は常圧焼結法により形成した。
電極3はチタン製の金属導体であって、長さ198mm、高さ25mm、幅28mmとした。
樹脂封止材4はエポキシ樹脂製であって、長さ198mm、高さ7mm、幅30mm、封入突条5の突出寸法4mmとした。
そして、カバー材2の収納凹部1に嵌め込むと共にカバー材2及び電極3の背面側に樹脂封止材4を取り付けることによって、本発明の放電用電極Aを形成した。ここで、収納凹部1内の面(カバー材2の内面)と電極3の背面を除く全外面とをロウ付けした。
(比較例)
実施例1と同様の電極3に、セラミックの溶射コーティング層を全面に亘って形成して放電用電極Aとした。ここで、セラミックコーティング層にはアルミナを用い、プラズマ溶射法によりコーティング層を形成した。また、溶射コーティング層の厚みは1mmとした。
上記実施例と比較例の放電用電極Aを用いて図1に示すプラズマ発生装置を形成した。この時、対向配置した放電用電極A、Aの間隔は1mmとした。そして、プラズマ生成用のガスGとして窒素を用い、周波数50kHz、印加電圧12kVの正弦波の高周波電圧を放電用電極A、A間に印加することにより、グロー状の放電を発生させてプラズマPを生成した。
実施例の放電用電極Aを用いたプラズマ発生装置では、300日以上運転しても絶縁破壊は生じず、長時間連続運転しても安定して放電を維持することができたが、比較例の放電用電極Aを用いたプラズマ発生装置では100日後に溶射コーティング層に亀裂が入って絶縁破壊を起し、また、放電状態も不安定であった。従って、セラミック焼結体のカバー材2を用いた実施例の放電用電極Aは、溶射コーティング層で被覆した比較例の放電用電極Aよりも耐久性が高く、放電の安定性に優れるものであった。
本発明は、プラズマ発生装置だけでなく、放電現象を用いる各種装置に適用可能である。
本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。 同上の分解斜視図である。 同上の他例を示す分解斜視図である。 同上の他例を示す分解斜視図である。 図4の放電用電極を用いたプラズマ発生装置の一例を示す断面図である。 本発明の使用例を示す断面図である。
符号の説明
1 収納凹部
2 カバー材
3 電極
4 樹脂封止材

Claims (3)

  1. 収納凹部を有するカバー材をセラミック焼結体で形成し、収納凹部に電極を設けると共に収納凹部内の面に電極の表面を密着させて成ることを特徴とする放電用電極。
  2. 収納凹部内の面と電極の表面とをロウ付けして成ることを特徴とする請求項1に記載の放電用電極。
  3. 収納凹部の開口を樹脂封止材で封止して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電用電極。
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