JP2006036922A - 樹脂用特性調整剤及びそれを用いた特性調整化樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 樹脂の特性を改善する樹脂用特性調整剤であって、該樹脂用特性調整剤は、保持材と、該保持材の表面に埋め込まれた特性調整成分とから構成され、該樹脂用特性調整剤の表面に、該保持材と該特性調整成分が共に露出し、かつ該特性調整成分の露出部各々の面積は、該特性調整成分と特性調整される該樹脂との相互作用を回避させる面積である樹脂用特性調整剤。
【選択図】 なし
Description
樹脂の比誘電率の調整は、樹脂と、その樹脂とは比誘電率が異なる材料(誘電率調整剤)とを混合して行っている。接触的混合方法としては、誘電率調整剤を樹脂に均一溶解する方法、誘電率調整剤を樹脂に分散混合させる方法等がある。しかし、これらの方法では、求める比誘電率の調整は可能であるが、他の特性が低下するという問題がある。例えば、均一溶解(相溶化)する場合、樹脂の反応速度(例えば硬化速度)の低下、或いは上昇をまねき、反応制御が困難となる等の化学的特性の面で、加えて耐熱性(ガラス転移温度、熱に対する寸法安定性を含む等)、誘電正接、接着性、機械的強度等の物理特性の面で、樹脂から元来予期される特性の性能が低下し、樹脂に誘電率調整剤を接触的混合させた場合には、所望の性能すべてが得られないという問題があった。粒子分散の場合においても同様な問題があった(特許文献1)。
また、樹脂に非接触的混合させる場合には、樹脂と中空材とを混合する方法が、樹脂に発泡剤を混合して、樹脂の硬化物内に空隙を設ける方法(空隙配設)、誘電率調整剤を樹脂に不活性なコーティング材料で被覆して混合する方法(被覆混合)が挙げられる。しかし、空隙配設の場合には、機械的強度の点で問題があった。また、被覆混合の場合は、樹脂製コーティング材料では特性調整される樹脂との分散性が悪く、均質に特性調整するのが困難であり、またセラミックス製コーティング材料では機械的強度が不十分であると共に、樹脂の加工が困難であるという問題があった。
そのため、樹脂について、特定の特性のみを調整でき、かつ他の特性の性能が特性調整に伴う悪影響を蒙るのを回避する、樹脂用特性調整剤が求められている。
本発明は、樹脂の特性を改善する樹脂用特性調整剤であって、その表面に保持材と特性調整成分とが露出し、かつ該特性調整成分の露出部各々の面積は、該特性調整成分と特性調整される該樹脂との相互作用を回避させる面積である樹脂用特性調整剤に関する。特性調整成分の各露出点面積が、8.0×106 nm2以下であることが好ましい。特性調整成分は、充填、含浸(表面処理含む)等の埋め込み、打ち込み、粒成長等の方法で保持材に埋め込むことができる。
本発明によれば、樹脂用特性調整剤は、多孔性物質内に特性調整成分を埋め込むため、特性調整成分を、多孔性物質の細孔内に充填し、固定化して構成される。樹脂用特性調整剤(多孔性物質)外部の樹脂と、特性調整成分とは、特性調整成分と特性調整される樹脂との相互作用を回避させる面積内で接触するため、樹脂の特性を調整しながらも、樹脂の他の特性(耐熱性(ガラス転移温度、熱に対する寸法安定性を含む等)、誘電正接、接着性、機械的強度)の性能は維持される。特性調整成分と特性調整される樹脂との相互作用を回避させる面積内で接触するということは、微視的な見地からは特性調整成分と特性調整される樹脂の一部とは接点で各々接触しており、特性調整成分とその接触している特性調整される樹脂とは相互作用、例えば反応している状態であるが、巨視的な見地、つまり全体として捉えると、特性調整される樹脂に悪い影響を与えておらず、相互作用は全体としてほとんど回避されている状態である。
多孔性物質の材質、形状、平均細孔径、吸油量、平均粒径が異なる、2種類以上の多孔性物質を用いることができる。
また、保持材(多孔性物質)に埋め込む際の取扱い性を考慮すると、特性調整成分は、加圧又は加熱により流動性を有することが好ましく、すなわち溶剤を用いずに流動性を得られることが好ましい。これは、溶剤のような揮発性物質を用いて流動性を得ると、加熱・乾燥時、或いは貯蔵時に溶剤が揮発する場合があるので、特性調整成分の固定及び充填の制御を考慮すると、溶剤を用いないことが好ましい。
加熱により流動性を得る場合、流動点又は融点の温度は、保持材(多孔性物質)の機械的強度が維持される温度範囲であることが好ましい。製造環境等を考慮すると、融点は、100〜200℃であることが好ましい。
流動点以上の粘度が10000ポイズ(1kPa・s)以下であるとさらに好ましい。
また、充填する特性調整成分は単一でも、2種類以上用いてもよい。熱硬化性であることが好ましい。あるいは誘電率調整成分が、リン酸エステル又はポリオレフィンであることが好ましい。リン酸エステルとしては、例えば〔(CH3)2C6H3〕2P(O)OC6H4OP(O)〔C6H3(CH3)2〕が挙げられる。
特性調整成分の充填が終了した多孔性物質は、特性調整成分として使用する前に多孔性物質外部に残る特性調整成分を除去するために、溶剤等で洗浄してもよい。
また、特性調整成分を充填する前に特性調整成分の充填性を高めるために、オリゴマー又はシランカップリング剤等で多孔性物質の細孔表面を処理してもよい。特性調整成分を充填した誘電率調整剤は、分散性を高めるために、オリゴマー又はシランカップリン剤等で表面処理してもよく、粉砕等の処理を行って粒径を小さくしてもよい。
その際には、樹脂用特性調整剤の分散性を向上するために、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、三本ロール、ナノマイザー等既知の混練方法により分散することができ、樹脂用特性調整剤を粉砕し粒径を小さくすることができる。
このように、本発明の樹脂用特性調整剤は、樹脂と樹脂用特性調整剤と物理的に混合するのみで、その機能を発揮するため、従来の製造工程を変更する必要がなく、取扱いが容易である。
撹拌装置、コンデンサー及び温度計を備えたガラスフラスコに、ジメトキシジメチルシラン20g、テトラメトキシシラン25g及びメタノール105gを配合した溶液を導入し、その後酢酸0.60g及び蒸留水17.8gを添加して、50℃で8時間撹拌した。シロキサン単位の重合度が30であるシロキサン系表面処理剤を合成した。得られたシロキサン系表面処理剤は、水酸基と反応する末端管能基としてメトキシ基及びシラノール基を有するものである。
(1)多孔性物質として多孔質シリカ1[吸油量150ml/100g、表面の平均細孔径5〜15nm、比重:2.2、平均粒径2.1μm、鈴木油脂工業株式会社製ゴッドボールE-2C(商品名)]と充填する特性調整成分として縮合リン酸エステル[融点95℃、大八化学工業株式会社製PX−200(商品名)]を用い、多孔質シリカ1 200重量部、縮合リン酸エステル(PX−200)600重量部を温度計、冷却管、減圧装置、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに取り、撹拌しながら4つ口セパラブルフラスコ内を減圧した。4つ口セパラブルフラスコ内の圧力が10mmHg(1.3kPa)以下まで下がった事を確認後、内部温度が120℃になるように4つ口セパラブルフラスコを加熱し、温度を保持したまま5時間加熱撹拌して液状の縮合リン酸エステルを多孔質シリカ1内に充填した。
得られた低誘電率化剤1において、多孔質シリカ1(充填)が100%であることを、多孔質シリカ1(充填)と多孔質シリカ(未充填)について顕微鏡観察して確認した。試料は、日立製作所製、FB2000A、加速電圧30kV、イオン源Gaを用いて、任意の断面を集束イオンビーム(FIB)加工により切り出し(FIB加工後試料)、FIB加工後表面を清浄にするため、日立製作所製、E3200、加速電圧4kVを用いて、イオンミリング処理した(イオンミリング処理後試料)。イオンミリング処理後試料は、多孔質シリカ(未充填)は細孔が確認されるが、多孔質シリカ1(充填)では隙間なく充填されていること(細孔容積100%充填)が明らかである。FIB加工後試料及びイオンミリング処理後試料をSEM(日立製作所製、型番S−4700、加速電圧5.0kV、倍率:10万倍)で観察した。
図1に、多孔質シリカ1(充填)と多孔質シリカ(未充填)について、FIB加工後試料及びイオンミリング処理後試料の断面観察SEM写真を示す。
誘電率調整剤1 150重量部
樹脂
・ビフェニル系エポキシ樹脂、NC3000−H
(日本化薬株式会社社製、商品名) 110重量部
・ 熱硬化剤ジシアンジアミド
(日本カーバイド株式会社製、商品名) 4重量部
・ 熱硬化剤ノボラックフェノール樹脂、HP-850
(日立化成工業株式会社製、商品名) 20重量部
・イミダゾール、2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名2PZ) 0.5重量部
・溶剤 メチルエチルケトン 150重量部
(6)次に、銅箔を剥がした後、180℃−120分の硬化条件で樹脂フィルムを硬化した。
実施例1において、多孔質シリカ1を、多孔質シリカ2[吸油量330ml/100g、表面の平均細孔径10nm、比重:2.2、平均粒径2.6μm、富士シリシア化学株式会社製SYLYSIA310P(商品名)]とし、配合量を100重量部とし、縮合リン酸エステルの配合量は1200重量部とし、冷却後に4つ口セパラブルフラスコに投入するエチルメチルケトンの量を2600重量とした以外は、実施例1と同様にして、誘電率調整剤2を作製した(100%充填)。
実施例1において、多孔質シリカ1を、多孔質シリカ3[吸油量80ml/100g、表面の平均細孔径17mm、比重:2.2、平均粒径3.1μm、旭ガラス株式会社製L−31−C(商品名)]とし、配合量を200重量部とし、縮合リン酸エステルの配合量は400重量部とし、冷却後に4つ口セパラブルフラスコに投入するエチルメチルケトンの量を1200重量とした以外は、実施例1と同様にして、誘電率調整剤3を作製した(100%充填)。
実施例1の誘電率調整剤と同重量と計算される無孔質シリカとリン酸エステルを、下記の組成で配合し、樹脂組成物を作製した。この時のエポキシに対する熱硬化剤の当量は1.0当量とした。この樹脂組成物を銅箔上に塗工し、100℃−10分乾燥して膜厚100±3μmの樹脂フィルムを作製した。
縮合リン酸エステルリン酸エステル、PX−200
(大八化学工業株式会社製、商品名) 91重量部
無孔質シリカ、SO−25R、平均粒径0.5μm
(株式会社アドマテックス製、商品名) 9重量部
樹脂
・ビフェニル系エポキシ樹脂、NC3000−H
(日本化薬株式会社社製、商品名) 110重量部
・熱硬化剤ジシアンジアミド
(日本カーバイド株式会社製) 4重量部
・熱硬化剤ノボラックフェノール樹脂、HP-850
(日立化成工業株式会社製、商品名) 20重量部
・イミダゾール、2−フェニルイミダゾール
(四国化成工業株式会社製、商品名2PZ) 0.5重量部
・溶剤 メチルエチルケトン 150重量部
(5)次に、銅箔を剥がした後、180℃−120分の硬化条件で樹脂フィルムを硬化した。
比較例1において、縮合リン酸エステルを除き、その他は比較例1と同様にして行った。
誘電率:作製した樹脂フィルムを、RFインピーダンス/マテリアルアナライザ(アジレントテクノロジー社製、HP 4291B)を用いて1GHzでの誘電率を測定した。
ガラス転移温度:また、樹脂フィルムから試験片を切出して熱機械分析装置(マックサイエンス株式会社製TMA−4000)を用いて昇温;5℃/minの条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明の誘電率調整剤を含む特性調整化樹脂組成物を用いた実施例1〜3では、誘電率が3.4未満に低誘電率化された。そして、ガラス転移温度は150℃以上であるので、ガラス転移温度、熱に対する寸法安定性は維持された。
一方、本発明の誘電率調整剤を含まない比較樹脂組成物を用いた比較例1については、比較例1ではガラス転移温度、誘電率は悪影響を受けた。
Claims (10)
- 樹脂の特性を改善する樹脂用特性調整剤であって、
該樹脂用特性調整剤は、保持材と、該保持材の表面に埋め込まれた特性調整成分とから構成され、該樹脂用特性調整剤の表面に、該保持材と該特性調整成分が共に露出し、かつ
該特性調整成分の露出部各々の面積は、該特性調整成分と特性調整される該樹脂との相互作用を回避させる面積である樹脂用特性調整剤。 - 特性調整成分の各露出点面積が、8.0×106 nm2以下である、請求項1又は2記載の樹脂用特性調整剤。
- 多孔性物質と、該多孔性物質内に埋め込まれた特性調整成分とで構成される樹脂用特性調整剤。
- 多孔性物質の表面の平均細孔径が、0.5〜1000nmである、請求項3記載の樹脂用特性調整剤。
- 多孔性物質の平均粒径が、0.1〜100μmである、請求項3又は4記載の樹脂用特性調整剤。
- 特性調整成分が、多孔性物質内に、多孔性物質の細孔容積に対して1以上〜100未満容積%埋め込まれている、請求項3〜5のいずれか1項記載の樹脂用特性調整剤。
- 多孔性物質の細孔容積が、吸油量に換算して10〜700ml/100gである、請求項3〜6のいずれか1項記載の樹脂用特性調整剤。
- 多孔性物質が、多孔質シリカである、請求項3〜7のいずれか1項記載の樹脂用特性調整剤。
- 特性調整成分が、誘電率調整成分である、請求項1〜8のいずれか1項記載の樹脂用特性調整剤。
- 樹脂と、請求項1〜9のいずれか1項記載の樹脂用特性調整剤とを混合分散させた、特性を調整された樹脂組成物。
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