JP2006034188A - 魚節の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 凍結状態又は半凍結状態の原料魚11を全身のまま低温水蒸気を用いて低温加熱処理してから高温水蒸気を用いて高温加熱処理することで原料魚11の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した原料魚11を解体処理してから焙乾処理を行なう。ここで、低温加熱処理は温度が90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下加熱して行ない、高温加熱処理は100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて6分以上で60分以下加熱して行なうことが好ましい。
【選択図】 図1
Description
しかし、解凍処理時に原料魚の温度が高くなり過ぎると(例えば、0℃を超えると)旨み成分(イノシン酸等)が溶出するという問題があった。また、頭、ひれ、及び内臓等を取り除いているため、長時間の煮熟時に切り口から煮熟槽中に旨み成分が溶出するという問題もある。そこで、特許文献1に記載されているように、原料魚を凍結あるいは半凍結状態で解体処理を行ない、過熱水蒸気により連続的に蛋白変性を行なってから焙乾する方法が開示されている。
原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行なうので、処理時間を短縮することができる。原料魚を解体せずに蛋白変性させるので、切り口から旨み成分が流出したり、魚肉に高温水蒸気が直接触れることがない。また、蛋白変性が完了した後に原料魚の解体処理を行なうので、解体が容易になると共に頭、ひれ、及び内臓等も焙乾することができる。
低温水蒸気と高温水蒸気を交互に使用して加熱するので、高温水蒸気を原料魚に当てる際に魚表面が水で覆われた状態にすることができ、高温水蒸気を原料魚の表面に当てても原料魚を焦がさないでその温度を効率的に上昇させることができる。また、原料魚を解体せずに蛋白変性させるので、切り口から旨み成分が流出したり、魚肉に高温水蒸気が直接触れることがない。また、蛋白変性が完了した後に原料魚の解体処理を行なうので、解体が容易になると共に頭、ひれ、及び内臓等も焙乾することができる。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る魚節の製造方法に適用する魚節の製造装置の説明図、図2は同魚節の製造装置に装入する原料魚の状態を示す説明図である。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る魚節の製造方法を適用する魚節の製造装置10は、原料魚の一例であり凍結又は半凍結状態で頭、ひれ、及び内臓を備えた鰹11を、例えば金網等の通気性部材で構成された載置部12を備えたトレイ13に載せて移送するチェーンコンベア14と、チェーンコンベア14を内側で通過させトレイ13に載せられ移送中の鰹11に対して上下から水蒸気を噴出して解凍から蛋白変性までを連続して行なう加熱室15を有している。以下、これらについて詳細に説明する。なお、原料魚としては、鰹11を使用したが、鯖、鰺、又は鰯を使用することもできる。
加熱室15は、駆動車輪17から従車輪18に向けて移動するベルト部16の周囲を囲むように配置された筒状の外壁部19と、外壁部19の上流側の端部に設けられベルト部16が進入する開口部20を備えた入側壁部材21と、外壁部19の下流側の端部に設けられベルト部16が退出する開口部22を備えた出側壁部材23を有している。また、加熱室15は、外壁部19の長手方向に直交するように隙間を設けて配置され、ベルト部16が通過可能な開口部24が形成された、例えば5枚の仕切壁25を有している。
ここで、水蒸気供給手段33には、隙間を開けてベルト部16を上下から挟むように上部噴出器34と下部噴出器35が設けられ、上、下部噴出器34、35のベルト部16に対向する面にはそれぞれ水蒸気を噴出する水蒸気噴出部36が複数設けられている。更に、水蒸気供給手段33には、上、下部噴出器34、35に高温水蒸気の一例である過熱水蒸気を供給する水蒸気過熱器37が設けられ、各水蒸気過熱器37には低温水蒸気の一例である飽和水蒸気が水蒸気発生器38(例えば、ボイラー)より供給されるようになっている。
そして、上部噴出器34の水蒸気噴出部36から噴出した水蒸気はトレイ13に載せられた鰹11の上面に当たり鰹11の上面側を加熱することができる。また、下部噴出器35の水蒸気噴出部36から噴出した水蒸気はベルト部16、次いでトレイ13の載置部12を通過して鰹11の下面に当たり鰹11の下面側を加熱することができる。このため、解凍又は半解凍状態の鰹11を載せたトレイ13をベルト部16に載置して加熱室15内を移動させると、鰹11には移動中に周囲から水蒸気が吹き付けられて徐々に温度が上昇し、加熱室15内を移動する間に解凍から蛋白変性までを連続的に行なうことができる。
第1の実施の形態に係る魚節の製造方法は、常圧下で、凍結状態又は半凍結状態の鰹11を全身のまま低温水蒸気として温度が90℃以上で100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下の時間加熱する低温加熱処理の工程と、低温加熱処理の工程が終了した鰹11を高温水蒸気として100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて6分以上で60分以下の時間加熱する高温加熱処理の工程を有している。
ベルト部16に載せられたトレイ13はベルト部16の移動と共に加熱室15に近づき、入側壁部材21に形成された開口部20から加熱処理領域26に進入する。加熱処理領域26内では上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から飽和水蒸気が噴出しているので、上部噴出器34の水蒸気噴出部36から噴出した飽和水蒸気はトレイ13に載せられた鰹11の上面に当たり鰹11の上面側を加熱する。また、下部噴出器35の水蒸気噴出部36から噴出した飽和水蒸気はベルト部16、次いでトレイ13の載置部12を通過して鰹11の下面に当たり鰹11の下面側を加熱する。加熱処理領域26を通過したトレイ13は加熱処理領域27に進入し同様に飽和水蒸気により鰹11の上下面側の加熱が行なわれる。そして、加熱処理領域28を通過し加熱処理領域29に進入して退出する時点では、鰹11の内部温度は、例えば0℃まで到達している。
蛋白変性が完了した鰹11は開口部22から排出されるので、この鰹11を放冷し、解体処理して頭、ひれ、内臓、骨、及び鱗等を取り除き、適当な寸法(厚み、幅、及び長さ)に切り分け、焙乾処理する。これによって、旨みと保存性が高まった魚節が得られる。
この場合は、低温加熱処理の時間、第1高温加熱処理の時間、及び第2高温加熱処理の時間をそれぞれ設定し、チェーンコンベア14の移送速度を選択して低温加熱処理、第1高温加熱処理、第2高温加熱処理の時間が確保できるように、低温加熱処理、第1高温加熱処理、及び第2高温加熱処理にそれぞれ使用する加熱処理領域26〜31を決める。そして、低温加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第1及び第2高温加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)をそれぞれ設定する。また、低温過熱処理に使用する飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定するようにすればよい。
第2の実施の形態に係る魚節の製造方法は、常圧下で、凍結状態又は半凍結状態の鰹11を全身のまま低温水蒸気として90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下の時間加熱する第1の前加熱処理の工程と、第1の前加熱処理の後に高温水蒸気として100℃を超え140℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上で15分以下の時間加熱する第1の後加熱処理の工程を備えた第1の加熱処理の工程と、第1の加熱処理の工程が終了した鰹11を低温水蒸気として90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下の時間加熱する第2の加熱処理の工程と、第2の加熱処理の工程が終了した鰹11を高温水蒸気として100℃を超え350℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上で15分以下の時間加熱する第3の加熱処理の工程を有している。
そして、第1の前加熱処理に使用する、例えば、加熱処理領域26の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第1の後加熱処理に使用する加熱処理領域27の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)を設定する。また、第2の加熱処理に使用する、例えば、加熱処理領域28の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第3の加熱処理に使用する、例えば加熱処理領域29〜31の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)を設定する。また、加熱処理領域26、28で噴出させる飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定する。
ベルト部16に載せられたトレイ13はベルト部16の移動と共に加熱室15に近づき、入側壁部材21に形成された開口部20から加熱処理領域26に進入する。加熱処理領域26内では鰹11の上、下面側がそれぞれ飽和水蒸気により加熱される。加熱処理領域26を通過したトレイ13は加熱処理領域27に進入し同様に過熱水蒸気により鰹11の上下面側の加熱が行なわれる。このとき、鰹11は表層部は解凍されているため表面には水膜が存在し、更に、鱗及び表皮も存在しているので、過熱水蒸気が当てられても表面が焦げることはない。そして、過熱水蒸気が当たるため、鰹11を効率的に加熱することができる。
続いて、トレイ13が加熱処理領域29内に進入すると、加熱処理領域29内では上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36からは過熱水蒸気が噴出しているので、鰹11の上下面側が加熱され、鰹11の内部温度は徐々に上昇して行く。このとき、鰹11は内部まで解凍されており、鰹11の表面には水膜、鱗、及び表皮が存在しているので、過熱水蒸気が当てられても表面が焦げることはない。加熱処理領域29を通過したトレイ13は加熱処理領域30更に加熱処理領域31に進入し、加熱処理領域31から退出する時点では、鰹11の内部は十分に加熱されて蛋白変性が完了している。
蛋白変性が完了した鰹11は放冷し、解体処理して頭、ひれ、内臓、骨、及び鱗等を取り除き、適当な寸法(厚み、幅、及び長さ)に切り分け焙乾処理する。これによって、旨みと保存性が高まった魚節が得られる。
この場合は、第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、第3の前加熱処理、及び第3の後加熱処理の時間をそれぞれ設定し、チェーンコンベア14の移送速度を選択して第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、第3の前加熱処理、及び第3の後加熱処理の時間が確保できるように、それぞれで使用する加熱処理領域26〜31を決める。そして、第1の前加熱処理と第2の加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第1の後加熱処理、第3の前加熱処理、及び第3の後加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)をそれぞれ設定する。また、第1の前加熱処理と第2の加熱処理に使用する飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定するようにすればよい。
原料魚として、長さ400mm、幅100mm、厚さ70mm前後で、重量が1.3〜1.6kgの凍結状態の鰹を使用した。また、鰹の解凍と蛋白変性には、第1〜第6加熱処理領域を備えた加熱室を使用した。実施例1〜8として、表1に記載した水蒸気の温度と加熱処理時間で鰹の解凍と蛋白変性を行ない、蛋白変性が完了した鰹を放冷した後、解体処理して頭、ひれ、内臓、骨、及び鱗等を取り除き、切り分けて焙乾処理を行ない、鰹節を製造した。
ここで、加熱に使用した水蒸気の温度は、上、下噴出器の各噴出口から噴出する際の水蒸気の温度であり、噴出口と鰹の表面までの距離は40mm前後になるように調整した。また、比較例1として、100℃の飽和水蒸気を用いて解凍から蛋白変性を行ない、解体処理して焙乾処理を行なって鰹節を製造した。更に、比較例2として、150℃の過熱水蒸気を用いて解凍から蛋白変性を行ない、解体処理して焙乾処理を行なって鰹節を製造した。
実施例1〜6及び8では、鰹節に亀裂及び変色は存在せず、出汁の旨みは強くなっていた。また、実施例7では、鰹節に亀裂及び変色は存在せず、出汁の旨みは大変強くなっていた。一方、比較例1では、亀裂の発生はなかったが、部分的に変色しており、出汁の旨みは弱くなった。また、比較例2では、亀裂が多数発生し、変色も激しくなり、出汁の旨みは弱く水っぽい状態であった。
例えば、鰹の解凍と蛋白変性には6つの加熱処理領域を備えた加熱室を使用したが、過熱条件に応じて加熱処理領域の数を5以下としても、7以上にしてもよい。
また、第2の実施の形態では、凍結状態又は半凍結状態の鰹を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を1回行なう第1の加熱処理を行なってから第2の加熱処理、更に第3の加熱処理を行なったが、第1の加熱処理として凍結状態又は半凍結状態の鰹を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を複数回繰り返すようにしてもよい。これによって、鰹の解凍を素早く行なうことができる。
Claims (7)
- 凍結状態又は半凍結状態の原料魚を全身のまま低温水蒸気を用いて低温加熱処理してから高温水蒸気を用いて高温加熱処理することで前記原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した前記原料魚を解体処理してから焙乾処理を行なうことを特徴とする魚節の製造方法。
- 請求項1記載の魚節の製造方法において、前記低温加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記高温加熱処理では100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて6分以上かつ60分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
- 請求項1記載の魚節の製造方法において、前記低温加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記高温加熱処理では100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱した後、140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
- 凍結状態又は半凍結状態の原料魚を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を1又は複数回繰り返す第1の加熱処理を行なってから低温水蒸気で加熱する第2の加熱処理を行ない、次いで高温水蒸気で加熱する第3の加熱処理を行なうことで前記原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した前記原料魚を解体処理してから焙乾処理を行なうことを特徴とする魚節の製造方法。
- 請求項4記載の魚節の製造方法において、前記第1の加熱処理の加熱操作では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱してから100℃を超え140℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上かつ15分以下加熱し、前記第2の加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記第3の加熱処理では100℃を超え350℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上かつ15分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
- 請求項4記載の魚節の製造方法において、前記第1の加熱処理の加熱操作では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱してから100℃を超え140℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上かつ15分以下加熱し、前記第2の加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記第3加熱処理では100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱した後、140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の魚節の製造方法において、前記原料魚は鰹、鯖、鰺、及び鰯のいずれか1であることを特徴とする魚節の製造方法。
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