JP2006028504A - インクジェット印刷用インクセット - Google Patents

Abstract

【課題】
ペンの性能及び／又は信頼性を犠牲とせずに、より多くの色を生成し得る、インクジェット印刷用インクセットを提供する。
【解決手段】
本発明のインクジェット印刷用インクセットは、第１の明度値を有するシアンインク（１０２）、第２の明度値を有するマゼンタインク（１０４）、及び第３の明度値を有するブルーインク（１０６）を含んで成り、前記シアンインクと前記マゼンタインクとは、混合して、第３の明度値のおよそ２倍の第４の明度値を有する複合ブルーを構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、概して、インクジェット印刷に関し、より詳細には、ブルーインクを追加したインクジェット印刷用インクセットに関する。

関連出願に対する相互参照
本出願は、米国特許出願第１０／８９１７６０に関連する。

インクジェット印刷システムは、印刷ヘッドと、当該印刷ヘッドに液体インクを供給するインク供給源を具備する。印刷ヘッドは、複数のオリフィス、即ちノズルを通して、紙などの印刷媒体の方に、当該印刷媒体上に印刷できるようにインク滴を射出する。典型的に、ノズルは、１つ又は複数のアレイとして配列されており、それによって、印刷ヘッドと印刷媒体が互いに相対して移動する際に、適切に順序立てられたノズルからのインク射出によって文字や画像を印刷媒体上に印刷することができる。

一般に、インクジェットインクは、染料系あるいは顔料系インクのどちらかである。典型的に、両方とも、染料及び／又は顔料を含有するインクビヒクルとして調製される。染料系インクジェットインクは、一般に、インクビヒクルに溶解する着色剤を用いる。顔料系インクジェットインクは、一般に、インクビヒクルに不溶性であるものの、小粒子形態でインクビヒクルに懸濁あるいは分散する着色剤を用いる。

インクジェットインクの（視覚で）感知されるカラー品質は、当分野で周知の、ＭｕｎｓｅｌｌあるいはＣＩＥＬＡＢのような、幾つかの色空間系のうちの何れか１つを用いて特性評価することができる。Ｍｕｎｓｅｌｌ色空間に関しては、所与の色を、３つの語、即ち、色相（Ｈｕｅ（Ｈ））、色値（Ｖａｌｕｅ（Ｖ））、及び彩度（Ｃｈｒｏｍａ（Ｃ））を用いて定義する。ＣＩＥＬＡＢ色空間に関しては、色を、３つの語、Ｌ^＊、ａ^＊、及びｂ^＊を用いて定義する。ＣＩＥＬＡＢ系では、Ｌ^＊は、色の明度を定義するものであり、０（ブラック）から１００（ホワイト）の範囲にある。さらに、語ａ^＊及びｂ^＊は、色の色相及び彩度を定義するために用いられ、ａ^＊は、負の数（グリーン）から正の数（レッド）の範囲にあり、ｂ^＊は、負の数（ブルー）から正の数（イエロー）の範囲にある。さらに、その他のｈ°（色相角）及びＣ^＊（彩度）という語も、当業者に周知のように、所与の色を記述するために用いられる。従って、ＭｕｎｓｅｌｌのＨ、Ｖ、及びＣ値、又はＣＩＥＬＡＢのＬ^＊、ａ^＊、及びｂ^＊値を用いて、特定のインクセットが生成し得る色空間の容積（その色空間容積が大きいほど、インクセットは、より多くの色を生成することができる）を計算することができる。

インクジェットインクの望ましい特性として、良好な耐沈殿性（ｃｒｕｓｔｉｎｇ ｒｅｓｉｓｔａｎｃｅ）、十分な安定性、適切な粘度、適切な表面張力、カラー間のブリードが少ないこと、速い乾燥時間、印刷ヘッドの各部品に対し有害な反応をしないこと、インクビヒクル中において染料の溶解度が高いこと、消費者への安全性、裏抜けの少ないこと、高い色飽和、良好なドットゲイン、及び適切なカラー特性が挙げられる。さらに、印刷画像の耐久性（例えば、耐光性及び耐水性）もまた、印刷されたインクジェット画像の品質に寄与する。

既知のインクジェットインクは、上述の特性のうち１つ又は複数を有するものがある。しかしながら、１つの特性を改善させると、多くの場合、別の特性が悪化してしまうため、上述の特性全てを有するインクはほとんどない。従って、他の特性が悪化することを最小限に抑えつつ、諸特性を改善したインク調合物を開発しようとする努力が続けられている。しかしながら、ペンの性能及び／又は信頼性を犠牲とせずに、インクジェットインクの画像品質及び耐光性をさらに改善させるという課題が依然として残っている。

本発明の一態様では、インクジェット印刷用のインクセットが提供される。当該インクセットは、第１明度値を有するシアンインク、第２明度値を有するマゼンタインク、第３明度値を有するブルーインクを含んで成り、ここで、前記シアンインクと前記マゼンタインクとが混ざり合って、第３明度値の約２倍の第４明度値を有する複合ブルーインクが形成される。

以下の詳細な説明では、本発明を実施し得る特定の実施形態を図解方式で示すところの添付の図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、その他の実施形態も利用することができ、構造上又は論理上の変更もなし得ることを理解されたい。それ故、以下の詳細な説明は、本発明の範囲を制限するものと理解されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。

図１に、インクジェット印刷システム１０の一部に関する一実施形態を示す。インクジェット印刷システム１０は、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２、インク供給アセンブリ１４、キャリッジアセンブリ１６、媒体搬送アセンブリ１８、及び電子コントローラ２０を備える。インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２は、複数のオリフィス、即ちノズル１３を通してインク滴を射出する、１つ又は複数の印刷ヘッドを具備する。

一実施形態では、インク滴は、印刷媒体１９のような媒体の方に向けられ、印刷媒体１９上に印刷することができる。ノズル１３は、１つ又は複数のカラム（ｃｏｌｕｍｎ）又はアレイとして配置されており、その結果、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２と印刷媒体１９とが互いに相対して移動する際に、適切に順序立てられたノズル１３からのインクの射出によって、文字、記号、及び／又はその他のグラフ若しくは画像が印刷媒体１９上に印刷されるようになっている。

印刷媒体１９には、紙、厚紙、封筒、ラベル、透明物、マイラー（Ｍｙｌａｒ）等のような任意の種の適切なシート材料が包含され得る。印刷媒体１９には、カットシート材料、又は連続形態、又は未印刷紙からなる連続ロールのような連続巻取り印刷媒体が包含され得る。

インク供給アセンブリ１４は、インクをインクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２に供給するものであり、インクを格納するための容器１５を備える。従って、一実施形態では、インクは、容器１５からインクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２へと流れる。一実施形態では、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２とインク供給アセンブリ１４とは、破線３０で示すように、インクジェット印刷カートリッジ又はペンとして一緒に収容されている。他の実施形態では、インク供給アセンブリ１４とインクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２とは分離されており、供給チューブのようなインターフェース接続を介して、インクがインクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２に供給される。いずれの実施形態においても、インク供給アセンブリ１４の容器１５は、取り外したり、交換したり、及び／又は再充填したりすることができる。

キャリッジアセンブリ１６は、媒体搬送アセンブリ１８に対してインクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２を位置決めする。媒体搬送アセンブリ１８は、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２に対して印刷媒体１９を位置決めする。従って、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２がインク滴を投下（射出）する印刷領域１７は、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２と印刷媒体１９との間の領域において、ノズル１３に近接して画定される。一実施形態では、印刷時、印刷媒体１９は、媒体搬送アセンブリ１８によって、印刷領域１７を通って前方に進められる。

電子コントローラ２０は、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２、キャリッジアセンブリ１６、及び媒体搬送アセンブリ１８と接続されている。電子コントローラ２０は、コンピュータなどのホストシステムからデータ２１を受信するものであり、一時的にデータ２１を格納するためのメモリを含むことができる。データ２１は、電子的な情報伝達経路、あるいは赤外線、光学的、又はその他の情報伝達経路に沿って、インクジェット印刷システム１０に送ることができる。データ２１は、例えば、印刷すべき画像、グラフ、又はパターンを表す。従って、データ２１は、インクジェット印刷システム１０に対する印刷ジョブを構成し、１つ又は複数の印刷ジョブ命令及び／又は命令パラメータを含む。

一実施形態では、電子コントローラ２０は、ノズル１３からのインク滴射出のタイミングの制御をはじめとする、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２の制御を実施することができる。従って、電子コントローラ２０は、印刷媒体１９上に文字、記号、及び／又はその他のグラフ又は画像を形成するところの、射出インク滴のパターンを画定する。よって、タイミング制御及び射出インク滴のパターンは、印刷ジョブ命令及び／又は命令パラメータによって決定される。一実施形態では、電子コントローラ２０の一部を形成する論理回路及び駆動回路は、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２に配設されている。他の実施形態では、電子コントローラ２０の一部を形成する論理回路及び駆動回路は、インクジェット印刷ヘッドアセンブリ１２とは別個に配設される。

図２に、インクジェット印刷システム１０に用いるインクセット１００の一実施形態を示す。一実施形態では、インクセット１００は、ライトシアン（ｃ）インク１０２、ライトマゼンタ（ｍ）インク１０４、及びブルー（Ｂ）インク１０６を含む。一実施形態では、ライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、及びブルーインク１０６は、染料系インクであり、高品質の画像生成を可能にすべく、広い色域を作り出し且つ所望の明度を有するように調合されている。本発明に従って調合されたインクを用いることで、カラー精度及び耐久性といった所望の諸特性を満足するカラーアピアランスを有する画像を生成することができる。

一実施形態では、インクセット１００は、単一のインクジェットペンによって、又は各インクに関し別個のチャンバを備えるカートリッジによって、もたらされる。従って、一実施形態では、インクセット１００は、３チャンバインクジェットペン、即ちライトシアンインク１０２用チャンバ、ライトマゼンタインク１０４用チャンバ、及びブルーインク１０６用チャンバを含んで成るカートリッジによってもたらされる。他の実施形態では、インクセット１００は、各インクに関し個別の、即ち別個のインクジェットペン又はカートリッジによってもたらされる。従って、一実施形態では、インクセット１００は、ライトシアンインク１０２を含むインクジェットペン、ライトマゼンタインク１０４を含むインクジェットペン、及びブルーインク１０６を含むインクジェットペンによって供給される。

図３に、インクジェット印刷システム１０用の、インクセット１１０に関する他の実施形態を示す。一実施形態では、インクセット１１０は、上述のインクセット１００を構成するライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、及びブルーインク１０６と共に、シアン（Ｃ）インク１１２、マゼンタ（Ｍ）インク１１４、及びイエロー（Ｙ）インク１１６を含む。従って、ライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、ブルーインク１０６、シアンインク１１２、マゼンタインク１１４、及びイエローインク１１６によって、６インク印刷システム（ｃｍＢＣＭＹ）が形成される。

一実施形態では、ライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、及びブルーインク１０６と同様に、インクセット１１０を構成するシアンインク１１２、マゼンタインク１１４、及びイエローインク１１６は染料系インクであり、高品質の画像生成を可能にすべく、広い色域を作り出し且つ所望の明度を有するように調合されている。加えて、インクセット１００に関連して上述したのと同様に、インクセット１１０のシアンインク１１２、マゼンタインク１１４、及びイエローインク１１６は、単一のインクジェットペンによって、又は各インクに関し別個のチャンバを備えるカートリッジによって、与えることができる。

一実施形態では、インクセット１００のライトインクとインクセット１１０の対応インク、即ち、インクセット１００及び１１０の、ライトシアンインク１０２とシアンインク１１２及びライトマゼンタインク１０４とマゼンタインク１１４はそれぞれ、染料含量が異なる。例えば、一実施形態では、インクセット１００のライトシアンインク１０２の染料含量は約０．１ｗｔ％〜約２．０ｗｔ％であり、インクセット１００のライトマゼンタインク１０４の染料含量は約０．１ｗｔ％〜約２．０ｗｔ％である。それに対し、インクセット１１０のシアンインク１１２の染料含量は約２．０ｗｔ％〜約１０．０ｗｔ％であり、インクセット１１０のマゼンタインク１１４の染料含量は約２．０ｗｔ％〜約１０．０ｗｔ％である。

一実施形態では、インクセット１００のライトインク、即ちライトシアンインク１０２及びライトマゼンタインク１０４と、インクセット１１０の対応するインク、即ちシアンインク１１２及びマゼンタインク１１４とは、印刷明度値が異なる。一実施形態では、明度値は、ＣＩＥＬＡＢ色空間系で定義されるようなＬ^＊値である。ＣＩＥＬＡＢ色空間系は、１９７６年にＩｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ｃｏｍｍｉｔｔｅｅ ｏｎ Ｉｌｌｕｍｉｎａｔｉｏｎ、即ちＣＩＥ（Ｃｏｍｍｉｓｓｉｏｎ Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌｅ ｄｅ‘Ｌ’Ｅｃｌａｉｒａｇｅ）によって発布された基準に基づいている。当該基準によれば、Ｌ^＊値１００とは、理想散乱した完全白色反射体に概ね等しい。従って、ＣＩＥＬＡＢ系に関しては、Ｌ^＊が色の明度を定め、それは０（ブラック）〜１００（ホワイト）の範囲の値をとる。

一実施形態では、インクセット１００のライトインクは、インクセット１１０の対応するインクよりも高い印刷明度を有する。より詳細には、ライトシアンインク１０２及びライトマゼンタインク１０４の明度値が、シアンインク１１２及びマゼンタインク１１４の明度値より高くなるように、インクセット１００はライトシアンインク１０２及びライトマゼンタインク１０４はそれぞれの明度値を有し、インクセット１１０のシアンインク１１２及びマゼンタインク１１４はそれぞれの明度値を有する。例えば、一実施形態では、ライトシアンインク１０２及びライトマゼンタインク１０４の明度Ｌ^＊値は、それぞれ約６０〜約８５であり、そしてシアンインク１１２及びマゼンタインク１１４の明度Ｌ^＊値は、それぞれ約３５〜約５５である。

一実施形態では、インクセット１００のライトシアンインク１０２とライトマゼンタインク１０４とは、混合して、印刷媒体１９上において複合ブルーを生成する。従って、複合ブルーは、或る印刷明度値を有する。一実施形態では、ブルーインク１０６の明度値が、ライトシアンインク１０２とライトマゼンタインク１０４とによって生成された複合ブルーの明度値の約半分となるように、ライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、及び／又はブルーインク１０６の調合物が選択される。逆に言えば、ライトシアンインク１０２とライトマゼンタインク１０４とによって生成された複合ブルーの明度値は、ブルーインク１０６の明度値の約２倍である。このように、インクセット１００のライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、及びブルーインク１０６を用いることで、広範な明度値を印刷することができる。

一実施形態では、上述の６インク印刷システム（ｃｍＢＣＭＹ）において用いる際、インクセット１００のブルーインク１０６は、インクセット１１０のイエローインク１１６と混合されて、印刷媒体１９上においてブラックを生成する。従って、ブラックインクを含む別個のインクジェットペンあるいはインクジェットペンのチャンバを印刷システムから除外することができ、それによって印刷システムの汎用性を高めることができる。

図４に、インクジェット印刷システム１０用のインクセット１２０に関する、他の実施形態を示す。一実施形態では、インクセット１２０は、上述のインクセット１００を構成するライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、及びブルーインク１０６と、上述のインクセット１１０を構成するシアンインク１１２、マゼンタインク１１４、及びイエローインク１１６とに加え、さらにライトグレー（ｇ）インク１２２、ミディアムグレー（Ｇ）インク１２４、及びブラック（ｚ）インク１２６を含む。従って、ライトシアンインク１０２、ライトマゼンタインク１０４、ブルーインク１０６、シアンインク１１２、マゼンタインク１１４、イエローインク１１６、ライトグレーインク１２２、ミディアムグレーインク１２４、及びブラックインク１２６による９インク印刷システム（ｃｍＢＣＭＹｇＧｚ）を構成する。

一実施形態では、ライトグレーインク１２２、ミディアムグレーンク１２４、及びブラックインク１２６は、染料系インクであり、高品質の画像生成を可能にすべく、広い色域を作り出し且つ所望の明度を有するように調合されている。加えて、インクセット１００及びインクセット１１０に関連して上述したのと同様に、インクセット１２０を構成するライトグレーインク１２２、ミディアムグレーンク１２４、及びブラックインク１２６は、単一のインクジェットペンあるいは各インクに関し別個のチャンバを備えるカートリッジによって与えることができ、又は各インクに関し個々の、即ち別個のインクジェットペンあるいはカートリッジによって与えることができる。

一実施形態では、インクセット１２０のライトグレーインク１２２、ミディアムグレーンク１２４、及びブラックインク１２６は、印刷明度値が異なる。より詳細には、一実施形態では、ライトグレーインク１２２は、ミディアムグレーンク１２４の明度値より高い明度値を有し、且つミディアムグレーインク１２４は、ブラックインク１２６の明度値より高い明度値を有する。一実施形態では、明度値は、上述のように、ＣＩＥＬＡＢ色空間系のＬ^＊値である。例えば、一実施形態では、ライトグレーインク１２２の明度Ｌ^＊値は約５０〜約７０であり、ミディアムグレーンク１２４の明度Ｌ^＊値は約２５〜約５０であり、そしてブラックインク１２６の明度Ｌ^＊値は約０〜約５である。

一実施形態では、インクセット１００のブルーインク１０６は、比較的高い彩度を有するように選択される。彩度とは、所与の色の相対的な鮮やかさ（カラフルネス、ｃｏｌｏｒｆｕｌｎｅｓｓ）を意味する。より詳細には、当分野では、彩度は、同一条件で照射された白色領域の明るさとの比において判断される、或る領域の鮮やかさとして知られている。ＣＩＥＬＡＢ系では、彩度（Ｃ^＊）は、下式によって定義される。

Ｃ^＊＝（ａ^＊２＋ｂ^＊２）

式中、ａ^＊は、負の数（グリーン）から正の数（レッド）までの範囲にあり、ｂ^＊は、負の数（ブルー）から正の数（イエロー）までの範囲にある。さらに、ＣＩＥＬＡＢ系において、色相又は色相角（ｈ°）は、下式によって定義される。

ｈ°＝ｔａｎ^−１ｂ^＊／ａ^＊

一実施形態では、以下に記載するように、ブルーインク１０６の調合物は、ブルーインク１０６の彩度Ｃ^＊値が約６０〜約９０となるように選択される。１つの典型的な実施形態においては、ブルーインク１０６の彩度Ｃ^＊値は、約８０である。さらに、ブルーインク１０６の明度Ｌ^＊値は約２５〜約３５であり、ブルーインク１０６の色相ｈ°値は約２７０〜約２９０である。１つの典型的な実施形態においては、ブルーインク１０６の明度Ｌ^＊値は約２７であり、ブルーインク１０６の色相ｈ°値は約２８８である。

一実施形態では、インクセット１００のブルーインク１０６は、インクビヒクル中に、フタロシアニン染料とローダミンマゼンタ染料との混合物を含有する。インクビヒクルは当分野で周知であり、それは、選択された１つ又は複数の染料等の着色剤をその中に入れることでインクを形成し得るところの、媒体（ビヒクル）を意味する。多様なインクビヒクルを多様な量にて、本発明のインク調合物に用いることができる。当該インクビヒクルは、例えば、溶媒、緩衝剤、殺生物剤、粘度修正剤、表面活性剤（界面活性剤）、塩、金属キレート化剤、及び水などの成分をはじめとする、種々の構成成分からなる混合物から構成することができる。

一実施形態では、ブルーインク１０６の調合物は、選択した染料の重量パーセントで規定される。例えば、一実施形態では、フタロシアニン染料の量は、インク調合物の約２ｗｔ％〜約４ｗｔ％である。さらに、ローダミンマゼンタ染料の量は、インク調合物の約１ｗｔ％〜約２ｗｔ％である。１つの典型的な実施形態では、フタロシアニン染料の量は、インク調合物の約３．５ｗｔ％である。さらに、ローダミンマゼンタ染料の量は、インク調合物の約１．５ｗｔ％である。

一実施形態では、ブルーインク１０６のフタロシアニン染料は、比較的青みを帯びた色相を有するシアン染料である。ブルーインク１０６に適するフタロシアニン染料の例として、以下の構造を有するＤｉｒｅｃｔ Ｂｌｕｅ １９９（ＤＢ１９９）が挙げられる。

式中、平均的に２〜６個のＲ基がＨ以外であるという条件付で、各Ｒ基は、個々独立して、Ｈ、ＳＯ_３Ｈ、ＳＯ_２ＮＨ_２、又はＳＯ_２ＮＨ−アルキル−ＯＨ_２である。一実施形態では、当該フタロシアニン染料は、スルホンアミン、スルホンアミド、及び硫酸塩といった基による置換の程度を調整することで当該シアン染料の凝集度が高められた、スルホン化染料である。１つの典型的な実施形態においては、フタロシアニン染料はＤＢ１９９である。

一実施形態では、ブルーインク１０６のローダミンマゼンタ染料は、紫色の色相を有する。ブルーインク１０６に適するローダミンマゼンタ染料の例として、Ａｃｉｄ Ｒｅｄ５２、Ａｃｉｄ Ｒｅｄ２８９、Ａｃｉｄ Ｒｅｄ３８８、及びそれらの混合物が挙げられる。１つの典型的な実施形態では、ブルーインク１０６のローダミンマゼンタ染料は、例えば、英国マンチェスターのアビシア社（Ａｖｅｃｉａ Ｌｉｍｉｔｅｄ）から入手可能な、Ａｃｉｄ Ｒｅｄ５２（ＡＲ５２）である。

一実施形態では、ブルーインク１０６のインク調合物はまた、金属で安定化された、又は金属化された（ｍｅｔａｌｉｚｅｄ）マゼンタ染料を含む。金属化マゼンタ染料は、例えば、光褪色に対してローダミンマゼンタ染料が安定化されるよう支援する。金属化マゼンタ染料は、金属イオン錯体を含むマゼンタ染料として定義される。キレート化によるような、金属イオンを有機化学基と錯形成させるための種々の方法は、当業者に周知である。さらに、ニッケル、銅、コバルト、及び鉄などの種々の金属イオンを用いて、金属イオン錯体を作ることができる。

一実施形態では、金属化マゼンタ染料は、銅又はニッケルを含有するアゾ染料である。一実施形態では、金属化マゼンタ染料の量は、インク調合物の約０．１ｗｔ％〜約１０ｗｔ％である。

銅又はニッケルを含有するアゾ染料に関しては、上記の基準を満足する任意の官能性染料を用いることができる。例えば、ＣＩ Ｒｅａｃｔｉｖｅ Ｒｅｄ ２３、及び沈静化された（不活性化された、ｐａｃｉｆｉｅｄ）形態のＣＩ Ｒｅａｃｔｉｖｅ Ｒｅｄ ２３がある。そのような不活性化されたＲｅａｃｔｉｖｅ Ｒｅｄ ２３の一例として、以下の構造が挙げられる。

式中、各Ｍは、Ｈ、又はＮａ^＋、Ｌｉ^＋、Ｋ^＋、ＮＨ_４ ^＋などの一価イオン、及びそれらの組合せとし得る。代替例としては、ニッケルで金属化されたナフトールアゾトリアゾール染料、及び以下の構造を有する染料が挙げられる。

式中、各Ｍは、Ｈ又はＮａ^＋、Ｌｉ^＋、Ｋ^＋、ＮＨ_４ ^＋などの一価イオン、及びそれらの組合せとし得る。上記染料は、特定の位置がＳＯ_３（又はＳＯ_３Ｍ）基で官能基化されているが、これは単なる例示に過ぎない。当業者は、その他の可溶化基又はその他の位置に関しても同様に、問題なく官能基化し得ることが分かろう。そのような修飾もまた、本願発明の範囲に包含される。上述のように、銅又はニッケルを含有するアゾ染料には、銅又はニッケルを含有する単一のアゾ染料であるか、又は一緒にブレンドされた、少なくとも２つの銅又はニッケルを含有するアゾ染料を用いることができる。

本発明の利点を評価すべく、種々のインクを調合し、そして調合したインクを評価した。即ち、明度、彩度、及び色相の値に及ぼす、各染料成分の種々の量の効果を測定した。一実施形態として、以下の組成を有する３種の異なるインク調合物を調製した。

全てのインクが同じインクビヒクルを含み且つフタロシアニン染料及びローダミンマゼンタ染料Ａｃｉｄ Ｒｅｄ ５２を含んでいたが、各インクのフタロシアニン染料とＡｃｉｄ Ｒｅｄ ５２の重量パーセントは異なるものであった。例えば、インク調合物１．１は、２．３ｗｔ％のフタロシアニン染料及び１．０ｗｔ％のＡｃｉｄ Ｒｅｄ ５２を有し、インク調合物１．２は、２．８７５ｗｔ％のフタロシアニン染料及び１．２５ｗｔ％のＡｃｉｄ Ｒｅｄ ５２を有し、そしてインク調合物１．３は、３．４５ｗｔ％のフタロシアニン染料及び１．５０ｗｔ％のＡｃｉｄ Ｒｅｄ ５２を含むものであった。

上記インク調合物の各々について、明度（Ｌ^＊）、彩度（Ｃ^＊）、及び色相（ｈ°）を測定した。結果を以下の表４に示す。表４に示すように、彩度に関しては、インク調合物１．３が高かった。

図５は、上述の高彩度のブルーインク１０６を含むインクセット１００などのｃｍＢインクセットをはじめとするインクセットを、ブルーインク１０６を含んでいないインクセットと比較した際の、色空間の一実施形態を示すものである。図から認められるように、色空間のカラーの色域、即ち容積は、当該インクセットにおけるブルーインク１０６を用いることで拡大される。

本明細書では特定の実施形態を例示し、説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の代替及び／又は等価の実施形態を、例示し、説明した特定の実施形態と置き換えることができることは、当業者に明らかであろう。本願は、本明細書に記載した特定の実施形態に関する任意の改良もしくは変更を網羅するものとする。それ故、本発明は、特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるものとする。

インクジェット印刷システムの一実施形態を示すブロック図 ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、及びブルーインクを含んで成るインクセットの一実施形態の概略図 ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ブルーインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを含んで成るインクセットの一実施形態の概略図 ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ブルーインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトグレーインク、ミディアムグレーンク、及びブラックを含んで成るインクセットの一実施形態の概略図 本発明によるインクセットの色空間の一実施形態

符号の説明

１０２ ライトシアンインク
１０４ ライトマゼンタインク
１０６ ブルーインク
１１２ シアンインク
１１４ マゼンタインク
１１６ イエローインク
１２２、１２４ グレーインク
１２６ ブラック

Claims (15)

1. インクジェット印刷用インクセットであって：
   第１明度値を有するシアンインク（１０２）と、
   第２明度値を有するマゼンタインク（１０４）と、
   第３明度値を有するブルーインク（１０６）と、
   を含んで成り、前記シアンインクと前記マゼンタインクとが混合して、第３明度値の約２倍の第４明度値を有する複合ブルーを生成する、インクセット。
2. 前記ブルーインクの彩度Ｃ^＊値が、約６０〜約９０である、請求項１に記載のインクセット。
3. 前記ブルーインクの明度Ｌ^＊値が、約２５〜約３５である、請求項１に記載のインクセット。
4. 前記ブルーインクの色相ｈ°値が、約２７０〜約２９０である、請求項１に記載のインクセット。
5. 前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記ブルーインクが、染料系インクである、請求項１に記載のインクセット。
6. 第１明度値より低い明度値を有するシアンインク（１１２）と、
   第２明度値より低い明度値を有するマゼンタインク（１１４）と、
   イエローインク（１１６）と、
   をさらに含んで成る、請求項１に記載のインクセット。
7. 前記ブルーインクと前記イエローインクとが混合してブラックインクを生成する、請求項６に記載のインクセット。
8. 第５明度値を有するグレーインク（１２２）と、
   第５明度値より低い第６明度値を有するグレーインク（１２４）と、
   ブラックインク（１２６）と、
   をさらに含んで成る、請求項１に記載のインクセット。
9. インクジェット印刷用インクセットであって：
   染料含量が約０．１ｗｔ％〜約２．０ｗｔ％であるシアンインク（１０２）と、
   染料含量が約０．１ｗｔ％〜約２．０ｗｔ％であるマゼンタインク（１０４）と、
   彩度Ｃ^＊値が約６０〜約９０であるブルーインク（１０６）と、
   を含んで成る、インクセット。
10. 前記ブルーインクの明度Ｌ^＊値が、約２５〜約３５である、請求項９に記載のインクセット。
11. 前記ブルーインクの色相ｈ°値が、約２７０〜約２９０である、請求項９に記載のインクセット。
12. 前記シアンインクと前記マゼンタインクとが混合して複合ブルーを生成し、この場合、前記ブルーインクの明度値が、前記複合ブルーの明度値の約１／２である、請求項９に記載のインクセット。
13. 染料含量が約２．０ｗｔ％〜約１０ｗｔ％であるシアンインク（１１２）と、
    染料含量が約２．０ｗｔ％〜約１０ｗｔ％であるマゼンタインク（１１４）と、
    イエローインク（１１６）と、
    をさらに含んで成る、請求項９に記載のインクセット。
14. 前記ブルーインクと前記イエローインクとが混合してブラックインクを生成する、請求項１３に記載のインクセット。
15. 第１明度値を有するグレーインク（１２２）と、
    第１明度値より低い第２明度値を有するグレーインク（１２４）と、
    ブラックインク（１２６）と、
    をさらに含んで成る、請求項９に記載のインクセット。
    

Images