JP2006024412A - 電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 充放電効率を向上させ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる電池を提供する。
【解決手段】 正極活物質層12Bは、組成比がLia M11-b M2b Xc である物質を含む。M1はNi,Co,Mn,Fe,Cuの少なくとも1種、M2はM1以外の金属元素および半金属元素の少なくとも1種、XはO,S,N,Pの少なくとも1種であり、0≦a<3.6、0≦b<1、1≦c≦2である。この物質はLiとの電気化学的な酸化還元反応においてM1の価数がほぼ零まで還元されるものである。電解液には1,3−ジオキソランを含む。これにより、金属状態のM1と電解液との反応を抑制し、充放電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 正極活物質層12Bは、組成比がLia M11-b M2b Xc である物質を含む。M1はNi,Co,Mn,Fe,Cuの少なくとも1種、M2はM1以外の金属元素および半金属元素の少なくとも1種、XはO,S,N,Pの少なくとも1種であり、0≦a<3.6、0≦b<1、1≦c≦2である。この物質はLiとの電気化学的な酸化還元反応においてM1の価数がほぼ零まで還元されるものである。電解液には1,3−ジオキソランを含む。これにより、金属状態のM1と電解液との反応を抑制し、充放電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、リチウム(Li)との電気化学的な酸化還元反応において金属元素の価数が1以下まで還元される物質を正極に用いた電池に関するものである。
近年の携帯用電子機器の発展、進歩は目覚しく、これに用いられる電池に対する小型化、軽量化および高容量化の要求が急激に増してきている。このような要求に応える電池としては、例えばリチウム二次電池がある。リチウム二次電池は、他の電池に比べて高容量を得ることができるが、更なる改善が望まれており、その1つに正極材料の開発がある。
リチウム二次電池の正極材料としては、例えば、Co3 O4 ,Fe2 O3 ,Ni2 O3 ,CoFe2 O4 ,リン化コバルト,窒化コバルト,バナジン酸マンガン,Li4 Ti5 O12またはLi6 Fe2 O3 などのカルコゲナイト型のものがある(例えば、特許文献1参照)。このカルコゲナイト型の材料の中には、古くから非常に大きな容量を有するものがあることが知られていた(例えば、非特許文献1参照)。しかし、従来は、リチウムが吸蔵される際に、金属元素の価数変化を小さくして結晶構造を保つように制御しており、その容量は非常に小さいものに留まっていた。カルコゲナイト型の材料はサイクル特性が悪く、大きな容量は不可逆な反応によるものと考えられていたからである。
これに対して、タラスコン(Tarascon)氏らは、カルコゲナイト型の材料をナノサイズに加工して特殊な電極構造とすることにより、リチウムを吸蔵する際に結晶構造が壊れるもの、すなわちリチウムをインターカレート(結晶内に取り込む)することができない材料でも、金属元素を酸化数がほぼ零になるまで還元させてサイクルさせていることを見出し、カルコゲナイト型の材料の大きな容量は不可逆な反応によるものではないことを証明した。
これにより、カルコゲナイト型の材料の研究が進み、近年では、ナノサイズに加工しなくても、また特殊な電極構造としなくても、サイクル特性は悪いものの可逆性を持つことが確認されている。例えば、非特許文献2〜4にはCoO,FeO,CuOおよびNiOについて報告がされており、非特許文献5にはCu3 Nについて報告がされており、非特許文献6にはCuP2 およびLi1.75Cu1.25P2 について報告がされており、非特許文献7にはFeP2 について報告がされており、非特許文献8にはMn3 O4 について報告がされており、非特許文献9にはNiSについて報告がされており、特許文献2にはFeSについて報告がされている。これらカルコゲナイト型の材料は、今後の研究により1600Wh/lもの容量を与えると予想されており、将来の電池に必要な材料と考えられている。
特開2003−77544号公報
特許第3447187号公報
エム.エム.サッカレー(M.M.Thackeray) 、ダブル.アイ.エフ.デビッド (W.I.F.David)、ジェイ.ビー.グッドイナフ(J.B.Goodenough)、"マット.レス.ブル(Mat. Res. Bull.) "、1982年、17号、p.785
ジェイ.−エム.タラスコン他( J.-M. Tarascon et.al.) 、"ジャーナル オブ パワー ソーセス(Journal of Power Sources)"、2001年、235号、p.97−98
ジェイ.−エム.タラスコン他( J.-M. Tarascon et.al.) 、"ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサイエティ(Journal of The Electrochemical Society)"、2001年、148(4)号、p.A285−A292
ジェイ.−エム.タラスコン他( J.-M. Tarascon et.al.) 、"ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサイエティ(Journal of The Electrochemical Society)"、2001年、149(5)号、p.A627−A634
ジェイ.−エム.タラスコン他( J.-M. Tarascon et.al.) 、"ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサイエティ(Journal of The Electrochemical Society)"、2003年、150(9)号、p.A1273−A1280
ケ ワン* ( Ke Wang * ) 、ジュン ヤン(Jun Yang)、ジンジャイン シー(Jingying Xie)バオフェン ワン(Baofeng Wang)、ゾンシェン ウェン(Zhongsheng Wen)、"エレクトロケミストリー コミュニケーションズ(Electrochemistry Communications) "、2003年、5巻、p.480
ディー.シー.シー.シルバ(D.C.C.Silva) 、オー.クロス二アー(O. Crosnier) 、ジー.オウブラード(G. Ouvrard)、ジェイ.グリーダン(J. Greedan)、エイ.サファ−セファット(A. Safa-Sefat) 、エル.エフ.ナザラ.(L. F. Nazara.)、"エレクトロケミカル アンド ソリッド−ステイト レターズ(Electrochemical and Solid-State Letters) "、2003年、 6(8)号、p.A162−A165
エム.エム.サッカレー(M.M.Thackeray) 、ダブル.アイ.エフ.デビッド (W.I.F.David)、ピー.ジー.ブルース(P.G.Bruce) 、ジェイ.ビー.グッドイナフ(J.B.Goodenough)、"マット.レス.ブル(Mat. Res. Bull.) "、1983年、18号、p.461
"ジェイ.アロイズ アンド コンパウンズ(J. Alloys and Compounds) "2003年、351巻、p.273
しかしながら、これらの材料を電極に用いた場合、充放電効率、特に初期の充放電効率が悪く、サイクル劣化が激しいという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、充放電効率を向上させ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる電池を提供することにある。
本発明による電池は、正極および負極と共に電解液を備えたものであって、正極は、リチウムと第1元素と第2元素と第3元素とのうちの少なくとも第1元素と第3元素とを含む物質を含有し、第1元素はニッケル(Ni),コバルト(Co),マンガン(Mn),鉄(Fe)および銅(Cu)からなる群のうちの少なくとも1種よりなり、第2元素は第1元素以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種よりなり、第3元素は酸素(O),硫黄(S),窒素(N)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種よりなり、第1元素は、リチウムとの電気化学的な酸化還元反応において価数が1以下まで還元され、電解液は、1,3−ジオキソランを含むものである。
本発明の電池によれば、電解液に1,3−ジオキソランを含むようにしたので、正極に上述したような物質を用いても、充放電効率を向上させることができ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
特に、電解液に更に三級アミンを含むようにすれば、または電解液における電解質塩の含有量を0.6mol/kg以上1.4mol/kg以下とするようにすれば、または正極集電体のうち正極活物質層が設けられている面を粗面処理するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆるコイン型といわれるものであり、外装缶11内に収容された円板状の正極12と、外装カップ13内に収容された円板状の負極14とが、セパレータ15を介して積層されたものである。セパレータ15には液状の電解質である電解液が含浸されており、外装缶11および外装カップ13の周縁部はガスケット16を介してかしめられることにより密閉されている。外装缶11および外装カップ13は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(Al)などの金属によりそれぞれ構成されている。
正極12は、例えば、正極集電体12Aと、正極集電体12Aに設けられた正極活物質層12Bとを有している。
正極集電体12Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔,ステンレス箔あるいはアルミニウム箔などの金属箔により構成されている。中でも銅箔を用いるようにすれば、充放電効率を向上させることができるので好ましい。なお、正極集電体12Aを銅箔により構成するのではなく、他の金属箔の表面に銅の被膜を形成し、正極活物質層12Bが設けられている面を銅により構成するようにしても、同様の効果を得ることができるので好ましい。
また、正極集電体12Aのうち正極活物質層12Bが設けられている面は、粗面処理がされていることが好ましく、その表面粗さは、JIS規格B0601に規定される算術平均粗さRaで0.5μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、1μm以上50μm以下の範囲内であればより好ましい。充放電効率をより向上させることができるからである。粗面加工は、例えば、電解めっき処理あるいは化学めっき処理などの化学的方法、またはサンドブラスト処理などの物理的研磨処理により行われる。
正極活物質層12Bは、例えば、正極活物質として、リチウムと第1元素M1と第2元素M2と第3元素Xとのうちの少なくとも第1元素M1と第3元素Xとを含み、それらの組成比が例えば化1に示した範囲内である物質を含有している。
(化1)
Lia M11-b M2b Xc
(式中、M1は第1元素を表し、ニッケル,コバルト,マンガン,鉄および銅からなる群のうちの少なくとも1種よりなる。M2は第2元素を表し、第1元素M1以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種よりなる。Xは第3元素を表し、酸素,硫黄,窒素およびリンからなる群のうちの少なくとも1種よりなる。a,bおよびcはモル比であり、それぞれ0≦a<3.6、0≦b<1、1≦c≦2の範囲内の値である。)
Lia M11-b M2b Xc
(式中、M1は第1元素を表し、ニッケル,コバルト,マンガン,鉄および銅からなる群のうちの少なくとも1種よりなる。M2は第2元素を表し、第1元素M1以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種よりなる。Xは第3元素を表し、酸素,硫黄,窒素およびリンからなる群のうちの少なくとも1種よりなる。a,bおよびcはモル比であり、それぞれ0≦a<3.6、0≦b<1、1≦c≦2の範囲内の値である。)
この物質は、リチウムとの電気化学的な酸化還元反応において第1元素M1の価数が1以下、ほぼ零まで還元され、金属状態の第1元素M1が存在するものである。第2元素M2は、第1元素M1と同様に、リチウムとの電気化学的な酸化還元反応において価数が1以下、ほぼ零まで還元されるものもあるが、種類および第1元素M1との組み合わせにより、反応に寄与せず価数が変化しないものもある。
すなわち、この物質は、例えば化2に示したような反応機構を有している。なお、化2は、第1元素M1が酸化された状態(左側)と、還元された状態(右側)とを代表して示したものであり、その反応の途中においては他の形態を示す場合もある。
(化2)
aLi+M11-b M2b Xc ⇔ (1−b)M1+Lia M2b Xc
aLi+M11-b M2b Xc ⇔ (1−b)M1+dM2+Lia M2b-d Xc
aLi+M11-b M2b Xc ⇔ (1−b)M1+bM2+Lia Xc
(式中、dは0<d<bの範囲内の値である。)
(化2)
aLi+M11-b M2b Xc ⇔ (1−b)M1+Lia M2b Xc
aLi+M11-b M2b Xc ⇔ (1−b)M1+dM2+Lia M2b-d Xc
aLi+M11-b M2b Xc ⇔ (1−b)M1+bM2+Lia Xc
(式中、dは0<d<bの範囲内の値である。)
よって、この物質はリチウムを含まない場合には第1元素M1と第3元素Xとの化合物、または第1元素M1と第2元素M2と第3元素Xとの化合物として存在する。また、リチウムを含む場合には、リチウムと第3元素Xとの化合物相またはリチウムと第2元素M2と第3元素Xとの化合物相と、第1元素M1の金属相とが混在した状態となっており、第2元素M2の金属相が存在する場合もある。更に、反応の途中においては、第1元素M1と第3元素Xとの化合物相、第1元素M1と第2元素M2と第3元素Xとの化合物相、リチウムと第1元素M1と第3元素Xとの化合物相、またはリチウムと第1元素M1と第2元素M2と第3元素Xとの化合物相が混在している場合もある。
但し、第1元素M1の金属相および第2元素M2の金属相の大きさは非常に小さく数nm程度である考えられており、各相を明確に区別することは難しいので、リチウムを含む場合、リチウムと第1元素M1と第3元素Xとの化合物またはリチウムと第1元素M1と第2元素M2と第3元素Xとの化合物と見ることもできる。
このような物質は、例えば非特許文献1〜9および特許文献2に挙げたように従来より知られており、CoO,FeO,CuO,NiO,Fe2 O3 ,Co3 O4 ,Li2 CoO,Cu3 N,CuP2 ,Li0.75Cu1.25P2 ,FeP2 ,Nix Mg6-x MnO8 ,LiNiVO4 ,Co2 SnO4 ,FeS,Mn3 O4 あるいはNiSなどが代表的なものである。なお、第3元素Xの組成比cは、リチウム,第1元素M1または第2元素M2と化合物を形成する場合の化学量論組成に限るものではなく、化学量論組成からずれていてもよい。
また、正極活物質層12Bは、必要に応じて、カーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダを共に含んでおり、更に他の正極活物質を含んでいてもよい。
負極14は、例えば、負極集電体14Aと、負極集電体14Aに設けられた負極活物質層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層14Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料、リチウム金属、あるいはリチウム合金のうちのいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンなどのバインダと共に構成されている。リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属化合物,スズ,スズ合金,ケイ素,ケイ素合金あるいは導電性ポリマが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。炭素材料としては、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などが挙げられ、金属化合物としてはスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物(Li4 Ti5 O12),酸化タングステン(WO2 ),酸化ニオブ(Nb2 O5 )あるいは酸化スズ(SnO)などの酸化物が挙げられ、導電性ポリマとしてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。中でも、炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。
セパレータ15は、正極12と負極14とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていても良い。
電解液は、溶媒に電解質塩を溶解させたものであり、電解質塩が電離することによりイオン伝導性を示すようになっている。溶媒としては、1,3−ジオキソランを含むことが好ましい。この二次電池では、正極12が還元時に金属状態の第1元素M1を含んでおり、非常に酸化されやすい状態となっているので、耐還元性に優れた1,3−ジオキソランを用いることにより、副反応を抑制し、充放電効率を向上させることができると考えられるからである。溶媒には1,3−ジオキソランを単独で用いてもよいが、他の1種または2種以上の溶媒と混合して用いてもよい。
他の溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、γーブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、あるいはN−メチルホルムアニリドなどの非水溶媒が挙げられる。
中でも、25℃における粘度が1.2mPa・s以下の低粘度溶媒を混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を向上させることができるからである。このような低粘度溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタンあるいは1,2−ジエトキシエタンなどの鎖状エーテル、炭酸ジメチル,炭酸ジエチルあるいは炭酸ジプロピルなどの鎖状炭酸エステル、またはN−メチルホルムアニリドが挙げられる。
電解質塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),四フッ化ホウ素リチウム(LiBF4 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )あるいはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
電解液における電解質塩の含有量は、0.6mol/kg以上1.4mol/kg以下であることが好ましい。電解質塩の含有量がこれよりも多いと正極12において金属状態の第1元素M1が酸化されやすくなり、充放電効率が低下してしまうからであり、含有量がこれよりも少ないと、イオン伝導性が低くなり、抵抗が増して、充放電効率およびサイクル特性が低下してしまうからである。
電解液は、更に、添加剤として化3に示した三級アミンを含むことが好ましい。正極12における金属状態の第1元素M1の酸化をより抑制することができ、高温保存特性を向上させることができるからである。この三級アミンの電解液における含有量は、0.1質量%以上15質量%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲において高い効果を得ることができるからである。
(化3)
N[−(CH2 )n CH3 ]3
(式中、nは1以上3以下の整数である。)
N[−(CH2 )n CH3 ]3
(式中、nは1以上3以下の整数である。)
この二次電池は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と、必要に応じて導電剤およびバインダとを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状としたのち、正極集電体12Aに塗布して溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層12Bを形成し、正極12とする。
次いで、例えば、負極活物質と、必要に応じてバインダとを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状としたのち、負極集電体14Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層14Bを形成し、負極14とする。また例えば、負極集電体14Aに蒸着あるいはめっきなどにより負極活物質層14Bを形成し、負極14とする。
続いて、外装カップ13の中央部に負極14およびセパレータ15をこの順に置き、セパレータ15の上から電解液を注ぎ、正極12を入れた外装缶11を被せてガスケット16を介してかしめる。これにより、図1に示した二次電池が形成される。
この二次電池では、放電を行うと、例えば、負極14からリチウムイオンが離脱するかまたはリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極活物質層12Bと反応する。充電を行うと、例えば、正極活物質層12Bからリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極14に吸蔵されるかまたはリチウム金属となって析出する。その際、正極活物質層12Bでは、上述した物質においてリチウムとの酸化還元反応が起こり、完全放電時には第1元素M1の価数が1以下のほぼ零まで還元されて、金属状態の第1元素M1が存在する。本実施の形態では、電解液に1,3−ジオキソランを用いているので、電解液と金属状態の第1元素M1との反応が抑制される。
このように本実施の形態によれば、電解液に1,3−ジオキソランを含むようにしたので、正極12に上述したような物質を用いても、金属状態の第1元素M1と電解液との反応を抑制することができ、充放電効率を向上させることができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
特に、電解液に更に化3に示した三級アミンを含むようにすれば、金属状態の第1元素M1と電解液との反応をより抑制することができ、高温保存特性を向上させることができる。
また、電解液における電解質塩の含有量を0.6mol/kg以上1.4mol/kg以下の範囲内とするようにすれば、高いイオン伝導性を得ることができると共に、金属状態の第1元素M1と電解液との反応を抑制することができ、充放電効率をより向上させることができる。
更に、正極集電体12Aのうち正極活物質層12Bが設けられている面を粗面処理するようにすれば、または正極集電体12Aのうち正極活物質層12Bが設けられている面を銅により構成するようにすれば、充放電効率をより向上させることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−6)
図1に示したようなコイン型の電池を作製した。まず、正極活物質として市販のCo3 O4 粉末(アルドリッチ(Aldrich )社製)を用い、このCo3 O4 粉末と、バインダであるポリフッ化ビニリデンとを、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンを用いて混合し、ペースト状の正極合剤とした。Co3 O4 粉末とバインダとの割合は、質量比でCo3 O4 :バインダ=9:1とした。次いで、この正極合剤を電解銅箔よりなる正極集電体12Aに塗布し、乾燥させて正極活物質層12Bを形成し、直径16mmの円板状に打ち抜いて正極12とした。
図1に示したようなコイン型の電池を作製した。まず、正極活物質として市販のCo3 O4 粉末(アルドリッチ(Aldrich )社製)を用い、このCo3 O4 粉末と、バインダであるポリフッ化ビニリデンとを、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンを用いて混合し、ペースト状の正極合剤とした。Co3 O4 粉末とバインダとの割合は、質量比でCo3 O4 :バインダ=9:1とした。次いで、この正極合剤を電解銅箔よりなる正極集電体12Aに塗布し、乾燥させて正極活物質層12Bを形成し、直径16mmの円板状に打ち抜いて正極12とした。
また、リチウム金属板を直径15mmの円板状に打ち抜いて負極14とした。次いで、外装カップ13に負極14およびセパレータ15を置き、セパレータ15の上から電解液を注ぎ、正極12を入れた外装缶11を被せてガスケット16を介してかしめた。電解液には、溶媒に電解質塩としてLiPF6 を1mol/kgの含有量で溶解させたものを用いた。その際、実施例1−1〜1−6で溶媒の組成を表1に示したように変化させた。具体的には、実施例1−1〜1−5では1,3−ジオキソラン(DOL)と、炭酸エチレン(EC),炭酸プロピレン(PC),炭酸ジメチル(DMC),炭酸ジエチル(DEC)またはジメトキシエタン(DME)とを1:1の質量比で混合したものを用い、実施例1−6では1,3−ジオキソランのみを用いた。
作製した実施例1−1〜1−6の二次電池について、充放電試験を行い、3サイクル目の放電容量を調べた。充放電は、23℃において、1.0mA/cm2 の定電流で電池電圧が0.9Vに達するまで定電流放電を行い、次いで、1.0mA/cm2 の定電流で電池電圧が3.0に達するまで定電流充電を行ったのち、3.0Vの定電圧で電流が0.1mA/cm2 以下となるまで定電圧充電を行った。その結果を表1に示す。
実施例1−1〜1−6に対する比較例1−1〜1−6として、溶媒の組成を表1に示したように変えて1,3−ジオキソランを用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−6と同様にして二次電池を作製し、同様にして3サイクル目の放電容量を求めた。具体的には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンと、炭酸ジメチル,炭酸ジエチルまたはジメトキシエタンとを1:1の質量比で混合した混合溶媒を用いた。その結果も表1に合わせて示す。
表1に示したように、電解液に1,3−ジオキソランを用いた実施例1−1〜1−6によれば、1,3−ジオキソランを含まない比較例1−1〜1−6に比べて、高い放電容量が得られた。すなわち、電解液に1,3−ジオキソランを含むようにすれば、放電容量を向上させることができることが分かった。
(実施例2−1〜2−4)
LiPF6 の含有量を0.5mol/kg、0.6mol/kg、1.4mol/kg、または1.5mol/kgと変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製し、放電容量を評価した。得られた結果を実施例1−5の結果と共に表2に示す。
LiPF6 の含有量を0.5mol/kg、0.6mol/kg、1.4mol/kg、または1.5mol/kgと変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製し、放電容量を評価した。得られた結果を実施例1−5の結果と共に表2に示す。
表2に示したように、電解質塩の含有量を増加させると、放電容量は向上して極大値を示したのち低下する傾向が見られた。すなわち、電解質塩の含有量は0.6mol/kg以上1.4mol/kg以下とすることが好ましいことが分かった。
(実施例3−1〜3−7,4−1〜4−7)
電解液に三級アミンのトリエチルアミン(TEA)またはトリブチルアミン(TBA)を添加したことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。トリエチルアミンまたはトリブチルアミンの電解液における含有量は、実施例3−1〜3−7,4−1〜4−7で、0.05質量%、0.1質量%、1質量%、5質量%、10質量%、15質量%または16質量%と変化させた。
電解液に三級アミンのトリエチルアミン(TEA)またはトリブチルアミン(TBA)を添加したことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。トリエチルアミンまたはトリブチルアミンの電解液における含有量は、実施例3−1〜3−7,4−1〜4−7で、0.05質量%、0.1質量%、1質量%、5質量%、10質量%、15質量%または16質量%と変化させた。
作製した実施例3−1〜3−7,4−1〜4−7の二次電池について、3サイクル目の放電容量および高温保存後の放電容量を評価した。3サイクル目の放電容量については実施例1−5と同様に評価し、高温保存後の放電容量については充電状態の二次電池を60℃の恒温槽中に7日間保存したのち、上述した条件で放電を行ったときの放電容量を評価した。また、実施例1−5の二次電池についても同様にして高温保存後の放電容量を評価した。得られた結果を表3,4に示す。
表3,4に示したように、三級アミンを添加した実施例3−1〜3−7,4−1〜4−7によれば、添加していない実施例1−5に比べて、高温保存特性を向上させることができた。また、三級アミンの含有量を増加させると、放電容量は3サイクル目も高温保存後も共に向上して極大値を示したのち低下する傾向が見られた。更に、トリエチルアミンを添加した実施例3−1〜3−7よりもトリブチルアミンを添加した実施例4−1〜4−7の方が、より高い値を得ることができた。
すなわち、電解液に更に三級アミンを含むようにすれば、高温保存特性を向上させることができ、その含有量は0.1重量%以上15重量%以下とすることが好ましいことが分かった。また、トリエチルアミンよりもトリブチルアミンの方がより高い効果を得られることも分かった。
(実施例5−1〜5−5)
正極集電体12Aとして、電解銅箔に代えて粗面処理した電解粗面銅箔を用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。正極集電体12Aの表面粗さRaは、表5に示したように、実施例5−1〜5−5で0.5μm、1μm、15μm、50μm、または55μmと変化させた。作製した実施例5−1〜5−5および実施例1−5の二次電池について、上述した条件で充放電試験を行い、10サイクル目の放電容量を調べた。得られた結果を表5に示す。
正極集電体12Aとして、電解銅箔に代えて粗面処理した電解粗面銅箔を用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。正極集電体12Aの表面粗さRaは、表5に示したように、実施例5−1〜5−5で0.5μm、1μm、15μm、50μm、または55μmと変化させた。作製した実施例5−1〜5−5および実施例1−5の二次電池について、上述した条件で充放電試験を行い、10サイクル目の放電容量を調べた。得られた結果を表5に示す。
表5に示したように、正極集電体12Aの表面粗さRaを大きくすると、放電容量は向上して極大値を示したのち低下する傾向が見られた。すなわち、正極集電体12Aを粗面処理するようにすれば放電容量を向上させることができ、表面粗さRaを0.5μm以上50μm以下、更には1μm以上50μm以下とすればより好ましいことが分かった。
(実施例6−1〜6−6)
正極集電体12Aとして、電解銅箔に代えて、圧延ニッケル箔または粗面処理した圧延粗面ニッケル箔を用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。正極集電体12Aの表面粗さRaは、表6に示したように、実施例6−2〜6−6で0.5μm、1μm、15μm、50μm、または55μmと変化させた。作製した実施例6−1〜6−6の二次電池についても、上述した条件で充放電試験を行い、10サイクル目の放電容量を調べた。得られた結果を表6に示す。
正極集電体12Aとして、電解銅箔に代えて、圧延ニッケル箔または粗面処理した圧延粗面ニッケル箔を用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。正極集電体12Aの表面粗さRaは、表6に示したように、実施例6−2〜6−6で0.5μm、1μm、15μm、50μm、または55μmと変化させた。作製した実施例6−1〜6−6の二次電池についても、上述した条件で充放電試験を行い、10サイクル目の放電容量を調べた。得られた結果を表6に示す。
表6に示したように、実施例5−1〜5−5と同様に、正極集電体12Aの表面粗さRaを大きくすると放電容量は向上して極大値を示したのち低下する傾向が見られた。また、表6と表5とを比較すれば分かるように、ニッケル箔を用いた実施例6−1〜6−6よりも銅箔を用いた実施例1−5,5−1〜5−5の方が大きな放電容量が得られた。すなわち、正極集電体12Aには銅箔を用いた方が好ましいことが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解液をそのまま用いる場合について説明したが、電解液を高分子化合物などの保持体に保持させて、いわゆるゲル状とするようにしてもよい。
また、上記実施の形態および実施例では、コイン型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は他の構造を有する円筒型や、ボタン型あるいは角型など他の形状を有する二次電池、または巻回構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。更に、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
11…外装缶、12…正極、12A…正極集電体、12B…正極活物質層、13…外装カップ、14…負極、14A…負極集電体、14B…負極活物質層、15…セパレータ、16…ガスケット。
Claims (8)
- 正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
前記正極は、リチウム(Li)と第1元素と第2元素と第3元素とのうちの少なくとも第1元素と第3元素とを含む物質を含有し、
前記第1元素はニッケル(Ni),コバルト(Co),マンガン(Mn),鉄(Fe)および銅(Cu)からなる群のうちの少なくとも1種よりなり、前記第2元素は第1元素以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種よりなり、前記第3元素は酸素(O),硫黄(S),窒素(N)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種よりなり、
前記第1元素は、リチウムとの電気化学的な酸化還元反応において価数が1以下まで還元され、
前記電解液は、1,3−ジオキソランを含む
ことを特徴とする電池。 - 前記物質の組成比は化1に示した範囲内であることを特徴とする請求項1記載の電池。
(化1)
Lia M11-b M2b Xc
(式中、M1は第1元素、M2は第2元素、Xは第3元素をそれぞれ表す。a,bおよびcはそれぞれ0≦a<3.6、0≦b<1、1≦c≦2の範囲内の値である。) - 前記電解液は、更に、化2に示した三級アミンを含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
(化2)
N[−(CH2 )n CH3 ]3
(式中、nは1以上3以下の整数である。) - 前記三級アミンの前記電解液における含有量は、0.1質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項3記載の電池。
- 前記電解液における電解質塩の含有量は、0.6mol/kg以上1.4mol/kg以下であることを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記正極は、前記物質を含む正極活物質層と、この正極活物質層が設けられた正極集電体とを有し、
この正極集電体のうち前記正極活物質層が設けられている面は粗面処理されている
ことを特徴とする請求項1記載の電池。 - 前記正極集電体のうち前記正極活物質層が設けられている面の表面粗さは、1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項6記載の電池。
- 前記正極集電体のうち前記正極活物質層が設けられている面は、銅よりなることを特徴とする請求項6記載の電池。
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