JP2006020410A - 並列駆動電源装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡易構成で高精度電流バランス制御が可能な並列駆動電源装置を提供する。
【解決手段】 DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流をカレントトランス21の巻線21A,21Bに流し、これらの電流による各磁界が互いに打ち消し合うようにDC−DCコンバータ1A,1Bの出力を制御する。具体的には、磁性コア21CのBH曲線の非線形特性から生ずる交番励磁電流ipの正負ピークのアンバランスを検出器23により検出し、そのアンバランスがなくなるように制御部24が各DC−DCコンバータ1A,1Bを制御する。また、発振器22に温度補償機能をもたせる。具体的には、温度センサ25を設け、環境温度による磁性コア21CのBH曲線変化に合わせて交番磁束密度Baの振幅を変化させ、この振幅が常にBH曲線の線形領域幅とほぼ等しくなるように調整する。アンバランス検出不感帯の発生や差分電流検出値のばらつきを抑制できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数の直流電圧源を負荷に並列接続して構成される並列駆動電源装置に関する。
従来より、スイッチング電源(DC−DCコンバータ等の直流電圧源)を負荷に対して複数並列に接続して構成した並列駆動電源装置が知られている。このような並列駆動手法は、複数の直流電圧源の各々に負荷を分散して、それぞれの寿命を延ばすことを目的とする場合や、電源装置の高出力化を図る場合に有効である。この種の並列駆動電源装置では、安定した運転を担保する上で、電流バランス(負荷分担比)を如何に制御するかが重要な問題である。
一般に、スイッチング電源を並列運転する手法の一つとして、例えば特許文献1に開示されているように、相間リアクトルを用いて出力電流のアンバランス抑制を行う方法がある。ところが、この手法は高周波電流に対しては効果があるものの、直流電流や低周波電流には効果が薄いという問題がある。そこで、電流検出手段であるシャント抵抗やカレントトランス(CT)によってスイッチ電流を検出して互いの出力電流が一致するように出力電圧を補正することにより電流バランス制御を行う手法が提案されている(特許文献2,特許文献3)。
特開平11−299252号公報 特開平11−18415号公報 特公平6-26473号公報
なお、スイッチング電源においては、カレントトランスによって検出したスイッチ電流に基づいて間接的に出力電流情報を得る手法が一般的であるが、このほか、コアの磁気飽和特性を利用した高精度直流電流センサ等を利用して直接的に出力電流を検出する手法(特許文献4,特許文献5,特許文献6)もある。
特開1995−55846号公報 特開2002−022774号公報 国際公開WO00/22447号公報
しかしながら、上記の特許文献2,特許文献3のように、スイッチング電源内に設けられたスイッチ電流検出手段を用いて出力電流バランス制御する場合には、カレントトランスの結合度のばらつきや、シャント抵抗の抵抗値、平滑チョークのインダクタンス値、さらにスイッチング素子等の回路定数のばらつきが問題となる。これらの要素のばらつきが存在すると、各スイッチング電源の電流検出値にばらつきが生じ、制御系がそれを補正するように動作する結果、電流バランス制御の精度が落ち、並列運転制御しているスイッチング電源の負荷分担比に定常偏差(負荷分担比の設計値からのずれ)を発生させてしまう。
また、上記の特許文献4,特許文献5,特許文献6に示された高精度直流電流センサ等を利用して直接的に出力電流を検出して制御を行った場合には、電流バランス制御の精度を確保できる可能性があるものの、この種の直流電流センサは、一般に高価である上、回路構成が複雑になることから、低コスト化の妨げになる。
また、上記の各手法では、各スイッチング電源のスイッチング電流または出力電流を電流検出手段により検出して制御回路上で演算や判定等を行い、出力電圧の電圧指令値あるいはフィードバック値に補正を加えることで電流バランス制御を行うようにしていることから並列台数分(n台)の電流検出手段が必要になる。したがって、この点でも、回路構成が複雑になるという問題があった。
さらに、上記の各手法では、スイッチング電源の使用環境温度に関する配慮がなされていないことから、環境温度が変動すると電流バランス制御の精度が低下する可能性もある。
本発明はかかる問題に鑑みてなされたもので、その目的は、使用環境温度にかかわらず簡単な構成で高精度の電流バランス制御を行うことができる並列駆動電源装置を提供することにある。
本発明の第1の並列駆動電源装置は、各出力端が負荷に共通接続され、それぞれが入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、複数の直流電圧変換器の入力側に共通に設けられたカレントトランスと、複数の直流電圧変換器およびカレントトランスを制御する制御手段とを備えたものである。カレントトランスは、複数の直流電圧変換器のうち第1群の直流電圧変換器に入力される第1の直流電流が流れる第1の導線と、複数の直流電圧変換器のうち第1群の直流電圧変換器を除く第2群の直流電圧変換器に入力される第2の直流電流が流れる第2の導線と、交番励磁電流が流れる第3の導線と、第1、第2の直流電流および交番励磁電流によってそれぞれ生ずる磁束を収容する磁性コアとを含んでいる。制御手段は、交番電圧を生成して第3の導線に印加することによりこの第3の導線に交番励磁電流を流し磁気コアの内部に正負両側の振幅が等しい交番磁束密度を生じさせる交番電圧印加回路と、交番励磁電流を検出する電流検出回路と、電流検出手段による検出結果に基づき第1および第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する変換器制御回路とを含んでいる。加えて、この並列駆動電源装置は、環境温度に応じて交番磁束密度の振幅が変化するように構成されている。
ここで、「直流電圧変換器」とは、直流電圧を変換して出力する、いわゆるDC−DC(直流−直流)コンバータを意味する。「複数の直流電圧変換器」とは、文字通り、2以上の直流電圧変換器を意味する。「第1群の直流電圧変換器」は、1または2以上の直流電圧変換器を意味し、同様に、「第2群の直流電圧変換器」もまた1または2以上の直流電圧変換器を意味する。「第1の直流電流」は、第1群の直流電圧変換器に供給される直流電流の合計値を意味し、「第2の直流電流」は、第2群の直流電圧変換器に供給される直流電流の合計値を意味する。「第1の導線」、「第2の導線」および「第3の導線」は、いずれも、直線状に延びる導線(例えば短冊状の板状導体も含む)であってもよいし、コイル状に形成された巻線であってもよい。「交番電圧」とは、時間軸に沿って電圧値が正負に変化する電圧波形をいう。「交番励磁電流」とは、時間軸に沿って電流値が正負に変化する電流波形をいう。「交番磁束密度」とは、時間軸に沿って磁束密度の値が正負に変化する波形をいう。「環境温度」には、外部からの熱によるもののみならず、並列駆動電源装置自身の発熱によるものも含まれる。
本発明の第1の並列駆動電源装置では、磁気コアの内部に正負両側の振幅が等しい交番磁束密度を生じさせるための交番電圧が交番電圧印加回路によって第3の導線に印加される。第3の導線には、印加された交番電圧に応じて交番励磁電流が流れ、電流検出回路によって検出される。そして、変換器制御回路により、電流検出手段による検出結果に基づき、第1群の直流電圧変換器に入力される第1の直流電流および第2群の直流電圧変換器に入力される第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器に対する制御が行われる。具体的には、交番磁束密度は、正負両側の振幅が等しいことから、第1および第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁界が互いに打ち消し合っている状態(すなわち、第1の磁界と第2の磁界とが重畳された結果としての直流バイアス磁界が0の状態)では、第3の巻線に流れる交番励磁電流の振幅は正負両側で等しくなる。一方、第1および第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁界が互いに打ち消し合っていない状態(すなわち、直流バイアス磁界が0でない状態)では、第3の巻線に流れる交番励磁電流の振幅は正負両側で異なる。したがって、電流検出手段による検出結果に基づき、交番励磁電流の振幅が正負両側で等しくなるように制御を行うことにより、第1群および第2群の直流電圧変換器にそれぞれ入力される直流電流のバランスをとることができる。ここで、第3の導線に印加される交番磁束密度は、その振幅が環境温度に応じて変化するようになっていることから、環境温度の変化に伴って磁気コアの磁気特性(すなわち、磁化曲線)が変化しても、これに追随して交番磁束密度の振幅を適正に変化させることが可能である。
本発明の第1の並列駆動電源装置では、電流検出手段により検出された交番励磁電流の正負両側の振幅が等しくなるように、変換器制御回路によって第1群および第2群の直流電圧変換器を制御することが好ましい。交番磁束密度の振幅は、環境温度の上昇に応じて減少するようになっていることが好ましい。交番磁束密度の振幅を可変にするには、例えば温度センサを設け、この温度センサにより検出された環境温度に基づいて、交番電圧印加回路によって交番電圧の周波数、ピーク電圧値およびデューティー比のうちの少なくとも1つを変化させるように構成することが可能である。ここで、「デューティー比」とは、交番電圧の半周期期間に対する電圧が正(または負)の期間の比である。
本発明の第1の並列駆動電源装置では、磁性コアをトロイダルコアとして構成すると共に第1の直流電流と第2の直流電流とが互いに逆向きにトロイダルコアを貫いて流れるように構成することが可能である。あるいは、磁性コアを、2つのトロイダル部を互いに連結してなる8の字状のコアとして構成すると共に、第1の直流電流と第2の直流電流とが互いに同じ向きに各トロイダル部をそれぞれ貫いて流れるように構成することも可能である。さらに、第1、第2および第3の導線を、それぞれ、磁性コアに巻設された第1、第2および第3の巻線として構成するようにしてもよい。ここで、「巻線」とは、文字通りコイル状に巻き回した導線を意味する。この場合、第1の巻線と第2の巻線との巻数比を、第2群の直流電圧変換器と第1群の直流電圧変換器との負荷分担比に等しく設定するのが好ましい。なお、負荷分担比は、例えば、第1群の直流電圧変換器の定格出力と第2群の直流電圧変換器の定格出力とに基づいて設定することが好ましい。
なお、本発明の第1の並列駆動電源装置の一部を変形して、カレントトランスが、複数の直流電圧変換器のうちの一部の直流電圧変換器に入力される第1の直流電流が流れる第1の導線と、複数の直流電圧変換器の全体に入力される第2の直流電流が流れる第2の導線と、交番励磁電流が流れる第3の導線と、第1、第2の直流電流および交番励磁電流によってそれぞれ生ずる磁束を収容する磁性コアとを含むようにしてもよい。この場合には、変換器制御回路により、電流検出手段による検出結果に基づき、複数の直流電圧変換器のうちの一部の直流電圧変換器に入力される第1の直流電流および複数の直流電圧変換器の全体に入力される第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように複数の直流電圧変換器に対する制御が行われる。具体的には、第3の導線を流れる交番励磁電流の振幅が正負両側で等しくなるように制御が行われ、一部の直流電圧変換器に入力される第1の直流電流と複数の直流電圧変換器の全体に入力される第2の直流電流との間でバランスがとられる。その結果、一部の直流電圧変換器に入力される直流電流とそれ以外の直流電圧変換器に入力される直流電流との間でバランスがとられる。ここで、第3の導線に印加される交番磁束密度は、その振幅が環境温度に応じて変化するようになっていることから、環境温度の変化に伴って磁気コアの磁気特性が変化しても、これに追随して交番磁束密度の振幅を適正に変化させることが可能である。
本発明の第2の並列駆動電源装置は、各出力端が負荷に共通接続されそれぞれが入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、複数の直流電圧変換器の出力側に共通に設けられたカレントトランスと、複数の直流電圧変換器およびカレントトランスを制御する制御手段とを備えたものである。カレントトランスは、複数の直流電圧変換器のうち第1群の直流電圧変換器から出力される第1の直流電流が流れる第1の導線と、複数の直流電圧変換器のうち第1群の直流電圧変換器を除く第2群の直流電圧変換器から出力される第2の直流電流が流れる第2の導線と、交番励磁電流が流れる第3の導線と、第1、第2の直流電流および交番励磁電流によってそれぞれ生ずる磁束を収容する磁性コアとを含んでいる。制御手段は、交番電圧を生成して第3の導線に印加することによりこの第3の導線に交番励磁電流を流し磁気コアの内部に正負両側の振幅が等しい交番磁束密度を生じさせる交番電圧印加回路と、交番励磁電流を検出する電流検出回路と、電流検出手段による検出結果に基づき第1および第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する変換器制御回路とを含んでいる。加えて、この並列駆動電源装置は、環境温度に応じて交番磁束密度の振幅が変化するように構成されている。
本発明の第2の並列駆動電源装置では、変換器制御回路により、電流検出手段による検出結果に基づき、第1群の直流電圧変換器から出力される第1の直流電流および第2群の直流電圧変換器から出力される第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器に対する制御が行われる。具体的には、第3の導線を流れる交番励磁電流の振幅が正負両側で等しくなるように制御が行われ、第1群および第2群の直流電圧変換器からそれぞれ出力される直流電流のバランスがとられる。ここで、第3の導線に印加される交番磁束密度は、その振幅が環境温度に応じて変化するようになっていることから、環境温度の変化に伴って磁気コアの磁気特性(すなわち、磁化曲線)が変化しても、これに追随して交番磁束密度の振幅を適正に変化させることが可能である。
なお、本発明の第2の並列駆動電源装置の一部を変形して、カレントトランスが、複数の直流電圧変換器のうちの一部の直流電圧変換器から出力される第1の直流電流が流れる第1の導線と、複数の直流電圧変換器の全体から出力される第2の直流電流が流れる第2の導線と、交番励磁電流が流れる第3の導線と、第1、第2の直流電流および交番励磁電流によってそれぞれ生ずる磁束を収容する磁性コアとを含むようにしてもよい。この場合には、変換器制御回路により、電流検出手段による検出結果に基づき、複数の直流電圧変換器のうちの一部の直流電圧変換器から出力される第1の直流電流および複数の直流電圧変換器の全体から出力される第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように複数の直流電圧変換器に対する制御が行われる。具体的には、第3の導線を流れる交番励磁電流の振幅が正負両側で等しくなるように制御が行われ、一部の直流電圧変換器から出力される第1の直流電流と複数の直流電圧変換器の全体から出力される第2の直流電流との間でバランスがとられる。その結果、一部の直流電圧変換器から出力される直流電流とそれ以外の直流電圧変換器から出力される直流電流との間でバランスがとられる。ここで、第3の導線に印加される交番磁束密度は、その振幅が環境温度に応じて変化するようになっていることから、環境温度の変化に伴って磁気コアの磁気特性が変化しても、これに追随して交番磁束密度の振幅を適正に変化させることが可能である。
本発明の並列駆動電源装置によれば、交番電圧印加回路によって印加された交番電圧に応じて第3の導線に流れる交番励磁電流を検出し、この検出結果に基づき、第1群の直流電圧変換器に関する入力電流(または出力電流)および第2群の直流電圧変換器に関する入力電流(または出力電流)によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うように第1群および第2群の直流電圧変換器に対する制御を行うと共に、第3の導線に印加される交番磁束密度の振幅が環境温度に応じて変化するようにしたので、環境温度の変化に伴って磁気コアの磁気特性(すなわち、磁化曲線)が変化しても、これに追随して交番磁束密度の振幅を適正に変化させることができ、その結果、使用環境温度にかかわらず簡単な構成で高精度の電流バランス制御を行うことが可能である。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る並列駆動電源装置の構成を表すものである。この装置は、直流電圧源としての2つのDC−DCコンバータ1A,1Bと、バランス制御回路2とを備えた入力電流バランス方式の並列駆動電源装置として構成されている。DC−DCコンバータ1A、1Bの入力端子はバランス制御回路2を介してバッテリ4に並列に接続され、出力端子は負荷5の入力端子に並列に接続されている。
DC−DCコンバータ1A,1Bは、いずれも、バッテリ4からの第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して負荷5に供給するためのものであり、例えば図2に示したように構成される。図2に示した回路は、入力端子に接続された入力側平滑コンデンサ10と、1次側巻線11Aおよび2次側巻線11B,11Cを有する電力変換トランス11と、この電力変換トランスの1次側巻線に接続され入力直流電圧(第1の直流電圧)をスイッチングするスイッチング素子12A〜12Dと、これらのスイッチング素子12A〜12Dのスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路13と、スイッチング素子12A〜12Dのスイッチング動作に伴って電力変換トランス11の2次側巻線11B,11Cに現れる電圧を整流する整流素子14A,14Bと、整流された電圧を平滑化して第2の直流電圧として出力する平滑回路を構成するチョークコイル15Aおよび平滑コンデンサ15Bとを含んで構成されている。このような構成のDC−DCコンバータ1A,1Bでは、バッテリ4からの第1の直流電圧をスイッチング素子12A〜12Dによってパルス電圧に変換して電力変換トランス11の1次側に印加すると共に、電力変換トランス11の2次側に現れたパルス電圧を、整流素子14A,14B、チョークコイル15Aおよび平滑コンデンサ15Bによって整流平滑化して第2の直流電圧を得るようになっている。
バランス制御回路2は、互いに直列に接続された第1および第2の導線21A,21B(以下、巻線21A,21Bという。)と、これらの巻線21A,21Bが巻回された磁性コア21Cと、磁性コア21Cに巻回された巻線21Dとを有するカレントトランス(CT)21と、巻線21Dの両端間に直列に接続された発振器(OSC)22および検出器(DET)23と、入力端が検出器23に接続され出力端がDC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13(図2)に接続された制御部24と、カレントトランス21の近傍に設けられた温度センサ25とを備えている。
磁性コア21Cは、例えば図3に示したように、トロイダル形状をなしている。この例では、巻線21A,21Bは、磁性コア21Cの中空部を貫通する直線状導体として形成されている。したがって、この場合の巻線21A,21Bの実質的な巻数Ns1,Ns2はともに1回であると言える。但し、後述するように(図15参照)、巻数Ns1,Ns2は2以上でもよいし、また、互いに異なる数であってもよい。
巻線21A,21Bの各一端(相互接続端)はバッテリ4のプラス端子に共通接続され、各他端はそれぞれ、DC−DCコンバータ1A,1Bのプラス側入力端子に接続されている。DC−DCコンバータ1A,1Bのマイナス側入力端子はバッテリ4のマイナス端子に共通接続されている。
バッテリ4からの直流電流I(=I1+I2)は2つに分流されて分流電流I1,I2となり、これらの各分流電流が巻線21A,21Bをそれぞれ流れてDC−DCコンバータ1A,1Bに供給されるものとする。このとき、巻線21Aを流れる直流電流I1と巻線21Bを流れる直流電流I2とは、互いに反平行になっており、この結果、直流電流I1,I2によって、互いに逆向きの方向(言い換えると、互いに打ち消し合う向き)に磁束F1,F2がそれぞれ生じ、磁性コア21Cに収容されるようになっている。なお、磁束F1(F2)の密度は、巻線21A(21B)の巻数Ns1(Ns2)と直流電流I1(I2)との積Ns1×I1(Ns2×I2)に比例する。
巻線21Dには、発振器22から交番電圧Va(後述)が印加されるようになっており、これに応じて交番励磁電流ipが流れるようになっている。巻線21Dの巻数Npや交番励磁電流ipは、直流電流I1,I2によって生ずる磁束F1,F2の密度(∝Ns1×I1,Ns2×I2)に応じて適切な値に設定される。
なお、以下の説明では、このような構成のカレントトランス21を、適宜、図4のように略記するものとする。ここでは、巻線21Dを流れる交番励磁電流ipを省略している。
温度センサ25は、この並列駆動電源装置の環境温度を検出するためのもので、例えばサーミスタ等を用いて構成可能である。
図5は、カレントトランス21、発振器22、検出器23および制御部24の回路構成の一例を表すものである。
発振器22は、4つのスイッチング素子221〜224と、スイッチング制御部225とを含んで構成される。スイッチング素子221,222の各一端は直流電源Vccに共通接続され、スイッチング素子221,222の各他端は、それぞれ、スイッチング素子223,224の各一端に接続されている。スイッチング素子221,223の相互接続点は、カレントトランス21の巻線21Dの一端に接続され、スイッチング素子222,224の相互接続点は、巻線21Dの他端に接続されている。これらのスイッチング素子221〜224は、スイッチング制御部225からの制御信号によりオンオフ動作するようになっている。具体的には、スイッチング素子221,224がともにオンでスイッチング素子222,223がともにオフとなる第1の状態、または、スイッチング素子221,224がともにオフでスイッチング素子222,223がともにオンとなる第2の状態のいずれかをとるようになっている。第1の状態では、直流電源Vccからスイッチング素子221、巻線21D、スイッチング素子224という順で交番励磁電流ipが流れる。一方、第2の状態では、直流電源Vccからスイッチング素子222、巻線21D、スイッチング素子223という順で交番励磁電流ipが流れる。すなわち、スイッチング素子221〜224のオンオフ動作によって、巻線21Dに交番電圧Va(図6(A)参照)が印加され、この結果、第1の状態と第2の状態とでは巻線21Dに互いに逆向きの電流が流れ、カレントトランス21に、図6(B)に示したような正負両側の振幅が等しい磁束密度変化(交番磁束密度Ba)を生じさせるようになっている。なお、図5は、第1の状態を示している。
検出器23は、2つの抵抗器231,232を含んでいる。抵抗器231,232の各一端はスイッチング素子223,224の各他端に接続される一方、各他端はともに接地されている。第1の状態では抵抗器232に交番励磁電流ipが流れ、第2の状態では抵抗器231に交番励磁電流ipが流れる。この結果、抵抗器231,232の各一端(電源端、すなわち、接地端と反対側)には、それぞれ、交番励磁電流ipに応じた電圧が現れるようになっている。
制御部24は、ピークホールド部241,242と、コンパレータ243,244とを含んでいる。ピークホールド部241,242の各一端(入力端)は、検出器23の2つの抵抗器231,232における各電源端(接地端と反対側)にそれぞれ接続されている。ピークホールド部241の他端(出力端)は、コンパレータ243のマイナス側入力端とコンパレータ244のプラス側入力端とに接続されている。一方、ピークホールド部242の他端(出力端)は、コンパレータ243のプラス側入力端とコンパレータ244のマイナス側入力端とに接続されている。ピークホールド部241,242は、それぞれ、抵抗器231,232の各電源端に現れたピーク電圧値V1,V2を一旦保持した上でコンパレータ243,244に供給するようになっている。コンパレータ243は、ピークホールド部241,242が保持するピーク電圧V1,V2の差分ΔVA(=V1−V2)に応じた制御電圧VAを出力し、コンパレータ244は、ピークホールド部242,241が保持するピーク電圧V2,V1の差分ΔVB(=V2−V1)に応じた制御電圧VBを出力するようになっている。これらの制御電圧VA,VBは、それぞれ、DC−DCコンバータ1A,1Bの各スイッチング制御回路13(図2)に入力される。スイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBに応じて、各DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正し,両者が所望の電流バランス(ここでは、1:1)となるように出力電圧を調整するようになっている。結局、DC−DCコンバータ1A,1Bは、それぞれ、カレントトランス21の巻線21Dを流れる交番励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値との差分に応じて制御されるようになっている。
次に、図6〜図14を参照して、以上のような構成の並列駆動電源装置の動作を説明する。ここで、図6は、発振器22から出力される交番電圧Vaと、カレントトランス21の磁性コア21Cに現れる交番磁束密度Baとの関係の一例を表し、図7は、交番電圧Vaと交番磁束密度Baとの関係の他の例を表すものである。図8は、カレントトランス21の磁気飽和特性およびこれを利用した電流アンバランス検出原理を表すものであり、より具体的には、カレントトランス21の磁性コア21Cにおける磁界Hと磁束密度Bとの関係を表す磁化曲線(BH曲線)およびヒステリシス曲線、ならびに、発振器22からの交番電圧Vaによって磁性コア21Cに現れる交番磁束密度Ba(Ba1,Ba2)と交番励磁電流ip(HAC1 ,HAC2)との関係を示すものである。図9は、カレントトランス21における飽和磁束密度Bsの温度依存性を示す図である。図10は、環境温度の変化に応じて交番磁束密度Baの振幅を変化させることをしない場合の一例(比較例)を示す図である。図11は、環境温度の変化に応じて交番磁束密度Baの振幅を変化させる場合に用いられるいくつかの手法を示す図である。図12は、環境温度の変化に応じて交番磁束密度Baの振幅を変化させる様子を示す図である。図13および図14は、交番磁束密度Baの振幅を変化させるための手法を具体的に示す図である。
本実施の形態では、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1である場合について説明する。この場合、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2の比は1:1である。
図1において、バッテリ4から出力された直流電流は、2系統に分流する。各分流電流I1,I2は、バランス制御回路2におけるカレントトランス21の巻線21A,21Bをそれぞれ経由して、DC−DCコンバータ1A,1Bの各入力端に供給される。DC−DCコンバータ1A,1Bは、それぞれ、バッテリ4からの直流入力電圧を電圧変換し、得られた各直流出力電圧を負荷5に共通に印加する。
バランス制御回路2のカレントトランス21では、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2によって互いに逆向きの磁束F1,F2(図3)が生じる。このとき、分流電流I1,I2が互いに等しい大きさであれば、磁束F1,F2が互いに完全に打ち消し合うので、磁性コア21C内における直流バイアス磁界HDC1は0となる(図8(A)参照)。
一方、バランス制御回路2の発振器22は、スイッチング素子221〜224をオンオフ動作させることにより、例えば図6(A)に示したような波形の交番電圧Vaを生成し、カレントトランス21の巻線21Dに印加する。これにより、磁性コア21Cには、図6(B)に示したような波形の磁束密度変化(交番磁束密度Ba)が生ずる。なお、この交番磁束密度Baの振幅は、後述するように、交番電圧Vaの周波数、ピーク電圧値、デューティー比等によって変化させることができる。例えば、図7(A)に示したように、交番電圧Vaの周波数を変化させることにより、交番磁束密度Baの振幅をB1(図6(B))からB2(図7(B))へと小さくすることが可能である。
ここで、仮に、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2が同じ大きさであったとすると、上記したように、磁性コア21C内の直流バイアス磁界はHDC1 (=0)となる。このため、図8(A)に示したように、交番電圧Vaに基づく交番磁束密度Ba1は、B=0を中心としたものとなり、このときのヒステリシス曲線は符号Cbで示したもののようになる。この場合、ヒステリシス曲線Cbは原点を中心として回転対称であるため、交番磁束密度Ba1に基づく磁界HAC1 の波形は、直流バイアス磁界HDC1 (=0)を中心として正負方向に同じ振幅(正側ピーク幅ΔHP1=負側ピーク幅ΔHN1)をもつものとなる。したがって、検出器23によって検出される交番励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは互いに等しくなり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBはともに0となる。すなわち、巻線21A,21Bをそれぞれ経由してDC−DCコンバータ1A,1Bに流れ込む分流電流I1,I2は同じ大きさを保ち、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比は1:1を維持する。
一方、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2にアンバランスが生じると、分流電流I1,I2によって生ずる磁束F1,F2が完全には打ち消し合わず、磁性コア21C内に直流バイアス磁界が存在することになる。例えば、直流バイアス磁界がプラス側にシフトしてHDC2 (>0)になったとする。この場合には、図8(B)に示したように、交番電圧Vaに基づく交番磁束密度Ba2は、上記の図8(A)に示した交番磁束密度Ba1よりも正の飽和領域に近づいた位置を中心としたものとなり、このときのヒステリシス曲線は符号Cuで示したもののようになる。この場合、BH曲線が線形からやや外れてきているため、交番磁束密度Ba2に基づく磁界HAC2 の波形は、直流バイアス磁界HDC2 を中心として、正負方向に多少異なる振幅(正側ピーク幅ΔHP2>負側ピーク幅ΔHN2)をもつものとなる。このため、検出器23によって検出される交番励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは異なる値となり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBは、一方が正の値で他方が負の値となる。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBの符号および大きさに応じて、巻線21A,21Bをそれぞれ経由してDC−DCコンバータ1A,1Bに流れ込む分流電流I1,I2が同じ大きさとなるように(すなわち、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1に近づくように)、スイッチング制御を行う。具体的には、スイッチングのデューティー比を変化させたりすることで、DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正する。こうして、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1を維持するように制御が行われる。
一方、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2のアンバランスが逆極性になり、磁性コア21C内の直流バイアス磁界がマイナス側にシフトすると、図示は省略するが、交番電圧Vaに基づく交番磁束密度Baは、負の飽和領域に近づいた位置を中心としたものとなり、交番電圧Vaに基づく磁界の波形は、負の直流バイアス磁界を中心として、正負方向に大きく異なる振幅(正側ピーク幅<負側ピーク幅)をもつものとなる。このため、検出器23によって検出される交番励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは互いに異なる値となり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBは、一方が負の値で他方が正の値となる。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBの符号および大きさに応じて、巻線21A,21Bをそれぞれ経由してDC−DCコンバータ1A,1Bに流れ込む分流電流I1,I2が同じ大きさとなるようにスイッチング制御を行う。こうして、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1を維持するように制御が行われる。
次に、発振器22からの交番電圧Vaによる交番磁束密度Baの振幅ΔBについて考察する。
図8(A)に示したように、発振器22からの交番電圧Vaの振幅は、それによる交番磁束密度Baの振幅ΔBが磁性コア21CのBH曲線のうちの線形領域の幅と等しくなるように設定することが好ましい。これは、DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流(分流電流I1,I2)のアンバランス検出原理が、カレントトランス21における磁性コア21Cの磁界の強さHと磁束密度Bの関係における非線形性を利用したものだからである。以下、この点について詳述する。
制御回路の占有面積や素子定格を考慮すれば、カレントトランス21の巻線21Dに流す交番励磁電流ipをできるだけ小さくすること、すなわち、発振器22からの交番電圧Vaの振幅を小さくして交番磁束密度Baの振幅ΔBを小さくすることが好ましい。ところが、このようにすると、磁性コア21CのBH曲線において、分流電流I1,I2によって生ずる直流バイアス磁界が小さい領域では、交番励磁電流ipによって生ずる磁界のヒステリシス曲線全体がBH曲線の線形領域内に留まる可能性がある。このため、分流電流I1,I2の電流バランスが崩れているにもかかわらず、交番励磁電流ipの波形ピーク値が正側と負側で等しくなる。したがって、交番励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値との差分に着目した検出原理を利用する方法では、分流電流I1,I2の差を検出することができず、電流バランス検出における不感帯が生じる。このことは、並列運転システムにおける電流バランス制御に定常偏差を生じさせる要因となる。また、例えば負荷急変などによって電流バランスが崩れた場合に、そのアンバランスを検出するまでに遅延が生じるため、電流バランス制御の負荷応答性が悪化する。
そこで、本実施の形態では、図8(A)に示したように、発振器22からの交番電圧Vaによる交番磁束密度Baの振幅ΔBが磁性コア21CのBH曲線のうちの線形領域の幅とほぼ等しくなるように設定する。この場合には、図8(B)に示したように、分流電流I1,I2により生ずる直流バイアス磁界HDC2 が小さい場合でも、ヒステリシス曲線Cuは直ちにBH曲線のうちの非線形領域へ踏み込むため、交番励磁電流ipの波形が正側と負側で変化してその正側ピーク値と負側ピーク値との間に差分が生じ、分流電流I1,I2の間で電流バランスが崩れたことを直ちに検出することができる。したがって、電流バランス制御の感度が向上して定常偏差を低減することができると共に、負荷応答特性も改善することができる。
次に、カレントトランス21の温度依存特性について考察する。
一般に、磁性コアの磁気飽和特性を利用したカレントトランスにおいては、環境温度によって透磁率μや飽和磁束密度Bs等のコアパラメータが変動するため、磁化曲線が変化してしまう。具体的には、例えば図9(A)に示したように、磁性コア21Cの飽和磁束密度Bsは、環境温度Tの上昇と共に小さくなる傾向をもつ。このため、コアの磁化曲線は、図9(B)に示したように、通常温度時の曲線COから高温時の曲線CH、あるいは低温時の曲線CLへと変化する。なお、図9(A)において、横軸は環境温度、縦軸は飽和磁束密度を示す。図9(B)において、横軸は磁界の強さ、縦軸は磁束密度を示す。
このように、磁性コア21Cの透磁率μおよび飽和磁束密度Bsが温度依存性を有することから、交番励磁電流ipの変化に着目して分流電流I1,I2のバランス検出を行うことを原理とするカレントトランス21では、環境温度によっては、バランス検出ができない不感帯が発生したり、検出器23による電流検出値にばらつきが発生することが考えられる。例えば図10に示した比較例のように、環境温度が常温状態(B)から低温状態(A)または高温状態(C)に移行すると、飽和磁束密度Bs等の増減に伴ってBH曲線が変化する。したがって、仮に交番磁束密度Baが環境温度によらず一定であったとすると、ヒステリシス曲線は温度によって大きく変化し、その結果、磁界の振幅ΔHが常温時のΔHP2(=ΔHN2)から低温状態の磁界ΔHP1(=ΔHN1)または高温状態の磁界ΔHP3(=ΔHN3)へと変化することになる。なお、図10(A),(B),(C)はいずれも直流バイアス磁界がゼロの状態を示している。
より具体的には、例えば、図10(B)に示した常温状態のときに交番磁束密度Baの振幅がBH曲線のうちの線形領域幅と等しくなるように設定したとすると、低温状態では、図10(A)に示したように、交番磁束密度Baの振幅がBH曲線のうちの線形領域幅よりも小さく、ヒステリシス曲線がBH曲線のうちの線形領域に完全に入る。このため、分流電流I1,I2のアンバランス量がわずかなときには、ヒステリシス曲線はBH曲線の線形領域内で移動するに停まるため、ΔHP1=ΔHN1の関係が崩れず、交番励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値との間に差分が生じない。したがって、検出器23によるアンバランス検出ができないことになる。
一方、高温状態では、図10(C)に示したように、交番磁束密度Baの振幅がBH曲線のうちの線形領域幅よりも大きく、ヒステリシス曲線がBH曲線のうちの非線形領域(飽和領域)にまで及ぶことになる。このため、例えば直流バイアス磁界が正の方向にわずかにずれただけでも、磁界ΔHP3≫ΔHN3となり、検出器23によって検出される差分電流が極めて大きくなる。このため、発振器22や検出器23を構成する回路素子を保護するためのリミッタ機構を設ける等の措置も必要になる。
これに対して、本実施の形態では、コア励磁回路を構成する発振器22に温度補償機能を設けるようにしている。具体的には、磁性コア21Cの近傍に温度センサ25を設けると共に、この温度センサ25からの検出温度に応じて、磁性コア21Cのヒステリシス曲線を調整する。すなわち、発振器22のスイッチング制御部225(図5)は、図11(A)に示したように、環境温度Tの上昇に応じてスイッチング素子221〜224に対するスイッチング周波数を増加させるように制御する。例えば、図6(A)および図7(A)に示したように、交番電圧Va(=Va1)を変化させずに発振周波数(スイッチング周波数)のみを1/T1から1/T2へと増加させると、交番磁束密度Baのピーク電圧は、B1(図6(B))からB2(図7(B))へと減少する。これにより、図12に示したように、交番磁束密度Baの振幅ΔBを飽和磁束密度Bsに追従して変化させ、その結果、環境温度にかかわらず、ヒステリシス曲線が磁性コア21CのBH曲線の線形領域を常にフルスイングするようにすることができる。なお、図12(A),(B),(C)はそれぞれ、低温状態、常温状態および高温状態における磁性コア21CのBH曲線、ヒステリシス曲線および交番磁束密度Baの様子を示しており、上記の比較例における図10(A),(B),(C)にそれぞれ対応する。
このように、環境温度による磁性コア21CのBH曲線変化に合わせて交番磁束密度Baの振幅ΔBを変化させ、この振幅ΔBが常にBH曲線の線形領域幅とほぼ等しくなるように調整することにより、検出器23における不感帯の発生や差分電流検出値のばらつきを抑制することができる。すなわち、例えば図12(A)に示したように、低温状態においても交番磁束密度Baの振幅ΔBがBH曲線の線形領域に完全に呑み込まれてしまうことがないため、アンバランス検出の不感帯が生ずることがない。また、図12(C)に示したように、高温状態においても、交番磁束密度Baの振幅ΔBがBH曲線の飽和領域にまで差し掛かることがないので、アンバランス時に検出器23によって検出される差分電流が極端に大きくなることを回避することができる。
なお、交番磁束密度Baの振幅ΔBは、上記のように交番電圧Vaの周波数を変えることのほか、交番電圧Vaの振幅(ピーク電圧値)やデューティー比を変化させることによっても調整することが可能である。交番電圧Vaの振幅による方法は、温度センサ25からの検出信号に応じて直流電源Vccからの供給電圧を変化させる電圧可変回路(図示せず)を設け、図11(B)および図13に示したように、環境温度Tに応じて交番電圧Vaのピーク電圧値VaをVa1(図6(A))からVa2(図13)に変更することで実現できる。一方、デューティー比による方法は、図11(C)および図14に示したように、温度センサ25により検出される環境温度Tに応じてスイッチング制御部255(図5)によるスイッチングのタイミングを変化させ、交番電圧Vaのデューティー比を、図6(A)の状態(この図では、(T1/2)/(T1/2)=1)からT1/(T1+T0)に変化させることで実現可能である。
このように、本実施の形態の並列駆動電源装置では、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流(分流電流I1,I2)をカレントトランス21の巻線21A,21Bに流し、これらの分流電流I1,I2によって生ずる磁界が互いに打ち消し合う向きとなるようにすると共に、これらの磁界が互いに打ち消し合う大きさとなるようにDC−DCコンバータ1A,1Bの出力を制御している。より具体的には、DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流を流す巻線21A,21Bをカレントトランス21の磁性コア21Cに互いに逆極性で巻設すると共に、発振器22からの交番励磁電流ipを流す巻線21Dを磁性コア21Cに巻設し、その交番励磁電流ipの正負差分に応じて各DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正することにより、所望の電流バランスとなるよう出力電圧を調整するようにしている。このため、1対のDC−DCコンバータ1A,1Bについて1つのカレントトランス21を設けるだけでよい。すなわち、従来、各DC−DCコンバータの数と同数必要であった電流検出手段の数を減らすことができ、回路構成が簡易になる。
また、本実施の形態によれば、各DC−DCコンバータへの入力電流の絶対値を検出するのではなく、カレントトランス21の磁性コア21CがもつBH曲線の非線形特性を利用して、2つの入力電流のアンバランスのみを検出するようにしているため、極めて簡単な制御回路構成となり、低コスト化に貢献できる。さらに、入力電流のアンバランスを直接的に検出するようにしているため、DC−DCコンバータの主構成部品(トランス,平滑チョーク,スイッチング素子,カレントトランス等)の定数ばらつきによる影響を受けにくい。したがって、回路構成を問わずに出力電圧制御形の電力変換器であれば、如何なる方式であっても本実施の形態の電流バランス制御を適用することが可能である。
また、本実施の形態によれば、図3に示したように、DC−DCコンバータ1A,1Bに入力される分流電流I1,I2が流れる巻線21A,21Bを、磁性コア21Cの中空部を貫通する直線状導体として形成するようにしたので、例えば、直線状導体として短冊状の金属板を使用することも可能であり、磁性コア21Cにコイルを巻回する場合に比べて、構造が極めて簡易になる。
また、本実施の形態によれば、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力側において電流バランス制御を行うようにしたので、特に、出力電流に比べて入力電流の方が小さい降圧型のDC−DCコンバータ1A,1Bについて、より好適に適用することができる。バランス制御対象である電流が小さい方が、バランス制御回路2を構成する各素子(カレントトランス21や発振器22等)の構成、サイズ、定格等が小さくて済み、小型化・小電力化が可能だからである。
さらに、本実施の形態によれば、コア励磁回路を構成する発振器22に温度補償機能を具備させ、環境温度による磁性コア21CのBH曲線変化に合わせて交番磁束密度Baの振幅ΔBを変化させ、この振幅ΔBが常にBH曲線の線形領域幅とほぼ等しくなるように調整することとしたので、以上の利点に加えて、検出器23における不感帯の発生や差分電流検出値のばらつきを抑制することができ、電流バランス制御の信頼性向上を図ることができる。
〈変形例1−1〉
上記した実施の形態(図3)では、DC−DCコンバータ1A,1Bに入力される分流電流I1,I2が流れる巻線21A,21Bを、磁性コア21Cの中空部を貫通する直線状導体として形成するようにしたが、例えば図15に示したように、これらの巻線21A,21Bを文字通りのコイル形状とし、これら磁性コア21Cに巻回するようにしてもよい。なお、図15において、図3に示した各構成要素に対応する要素には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
この場合には、巻線21A,21Bの巻数を多くすることにより、磁性コア21Cにより多くの磁束を生じさせることができることから、分流電流I1,I2のアンパランス検出をより感度よく行うことができる。また、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2を互いに異ならせることにより、分流電流I1,I2が互いに異なる値となるように制御することも可能である。この場合には、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2および分流電流I1,I2を次の(1)式のように設定すればよい。
Ns1:Ns2=I2:I1 …(1)
例えば、バッテリ4からの直流電流I(=I1+I2)が150アンペアである場合において、I1=100アンペア、I2=50アンベアに設定するには、Ns1:Ns2=1:2に設定すればよい。したがって、DC−DCコンバータ1A,1Bの各定格出力に応じたバランス運転も容易に実現することができる。
なお、アンバランス検出対象電流(分流電流I1,I2)が十分が大きいのであれば、必ずしも巻線21A,21Bを磁性コア21Cに巻回する必要はなく、例えば短冊状の金属板を2枚平行に磁性コア21Cに貫通させた構成とするだけでも十分な検出感度を得ることが可能である。これは、構造が簡易となる点で有益である。
〈変形例1−2〉
また、上記した実施の形態(図3)および変形例1(図15)では、バッテリ4からの直流電流Iを分流電流I1,I2に分けたあとに、これらの各電流をそれぞれ巻線21A,21Bに流すようにしているが、本発明はこれには限定されず、例えば図16および図17に示したようにしてもよい。なお、図16は、実体構造を示し、図17は等価回路を示している。これらの図に示した例は、直流電流Iを分ける前にこれをそのまま巻線21Aに流し、かつ、一方の分流電流I1をDC−DCコンバータ1Aに直接入力すると共に、他方の分流電流I2を巻線21B経由でDC−DCコンバータ1Bに供給するようにしたものである。この場合には、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2および分流電流I1,I2を次の(1)式のように設定すればよい。
Ns1:Ns2=I2:(I1+I2) …(2)
例えば、バッテリ4からの直流電流I(=I1+I2)が150アンペアである場合において、I1=100アンペア、I2=50アンベアに設定するには、Ns1:Ns2=1:3に設定すればよい。
〈変形例1−3〉
上記した実施の形態(図3)、変形例1(図15)および変形例2(図16)では、磁性コア21Cの形状を単なるトロイダル形状としたが、本発明はこれには限定されず、例えば図18に示したように、磁性コアを、2つのトロイダル部を連結してなる8の字状(「E+I」型または「E+E」型)に形成してカレントトランス121を構成することも可能である。この場合には、磁性コア121Cにおける2つのトロイダル部で囲まれた2つの中空部K1,K2を直線状の巻線21A,21Bがそれぞれ貫くようにし、かつ、分流電流I1,I2が同じ方向に流れるようにする。さらに、磁性コア121Cの中央の連結部K3を巻線21Dが巻回するように構成する。この場合には、連結部K3において、分流電流I1,I2により生ずる磁束F1,F2が互いに打ち消し合う向きになるため、これらの磁束が合成(重畳)され、この位置に直流バイアス磁界HDCが現れる。したがって、この柱状部K3に巻設した巻線21Dに交番励磁電流ipを流すことで、上記実施の形態(図8)で説明した原理に基づいて、磁束F1,F2が互いに打ち消し合うように制御することにより、分流電流I1,I2のバランス制御を行うことができる。
本変形例によれば、特に分流電流が大電流である場合に、逆極性で巻回する場合(図3)と比べて巻線の配線長が短くなり、構造が簡単となる。よって、巻線を配設しやすいという長所がある。
〈変形例1−4〉
以上示した例では、2台のDC−DCコンバータ1A,1Bを並列運転する場合について説明したが、本発明はこれには限定されず、任意の台数のDC−DCコンバータについて電流バランス制御を行うことが可能である。図19は、例えば7台のDC−DCコンバータ1A〜1Gについて電流バランス制御を行う場合を示している。この例では、DC−DCコンバータ1A〜1Gを、第1のグループ(DC−DCコンバータ1A〜1D)と第2のグループ(DC−DCコンバータ1E〜1G)とに分け、この2つのグループに対して、1つのカレントトランス21−1を配設する。このとき、カレントトランス21−1における巻線21A,21Bの巻数比を例えば9:1に設定することにより、第1のグループへの入力電流と第2のグループへの入力電流との比を1:9(=100アンペア:900アンペア)に制御することができる。なお、図19では、バランス制御回路20(図1)のうちのカレントトランスの部分のみを示しており、他の部分(発振器22、検出器23および制御部24)は省略している。
さらに、第1のグループのうち、DC−DCコンバータ1A,1Bの組に対して1つのカレントトランス21−2を配設し、DC−DCコンバータ1B,1Cの組に対して1つのカレントトランス21−3を配設し、DC−DCコンバータ1C,1Dの組に対して1つのカレントトランス21−4を配設する。このとき、カレントトランス21−2における巻線21A,21Bの巻数比を例えば1:2に設定すれば、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流の比を2:1(=200アンペア:100アンペア)に制御することができる。また、カレントトランス21−3における巻線21A,21Bの比を例えば2:3に設定すれば、DC−DCコンバータ1B,1Cの入力電流比を3:2(=300アンペア:200アンペア)に制御することができる。また、カレントトランス21−4における巻線21A,21Bの巻数比を例えば1:1に設定すれば、DC−DCコンバータ1C,1Dへの入力電流の比を1:1(=300アンペア:300アンペア)に制御することができる。
一方、第2のグループについては、DC−DCコンバータ1E,1Fの組に対して1つのカレントトランス21−5を配設すると共に、DC−DCコンバータ1E,1FとDC−DCコンバータ1Gの組に対して1つのカレントトランス21−6を配設する。このとき、カレントトランス21−5における巻線21A,21Bの巻数比を例えば2:3に設定すれば、DC−DCコンバータ1E,1Fへの入力電流の比を3:2(=30アンペア:20アンペア)に制御することができる。また、カレントトランス21−6における巻線21A,21Bの巻数比を例えば1:1に設定すれば、DC−DCコンバータ1E,1Fへの合計入力電流とDC−DCコンバータ1Gへの入力電流との比を1:1(=50アンペア:50アンペア)に制御することができる。
このように、カレントトランス21の巻線21A,21Bの巻数比を適切に選定することにより、任意の台数nのDC−DCコンバータの並列運転を任意の負荷分担比で実現することができる。しかも、DC−DCコンバータの台数nに対して、n−1個のカレントトランス21を設けるだけでよいので、電流検出手段を削減することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
上記第1の実施の形態では、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流についての電流バランス検出を行ういわゆる入力電流バランス型の並列駆動電源装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、DC−DCコンバータ1A,1Bからの出力電流についての電流バランス検出を行ういわゆる出力電流バランス型の並列駆動電源装置として構成することも可能である。
図20は、そのような出力電流バランス型の並列駆動電源装置の一構成例を表すものである。なお、この図で、図1に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施の形態の並列駆動電源装置は、図1におけるバランス制御回路2に代えて、バランス制御回路20を備えている。このバランス制御回路20は、互いに直列に接続された巻線201A,201Bと、これらの巻線201A,201Bが巻回された磁性コア201Cと、磁性コア201Cに巻回された巻線201Dとを有するカレントトランス201と、巻線201Dの両端間に直列に接続された発振器202および検出器203と、入力端が検出器203に接続され出力端がDC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13(図2)に接続された制御部204とを備えている。巻線201A,201Bの各一端同士は負荷5に共通接続され、各他端はそれぞれ、DC−DCコンバータ1A,1Bのプラス側出力端子に接続されている。DC−DCコンバータ1A,1Bのマイナス側出力端子は負荷5のマイナス側入力端子に共通接続されている。
DC−DCコンバータ1A,1Bからの各出力電流I1,I2はそれぞれ巻線201A,21Bを流れたのちに合流し、負荷5に供給されるようになっている。カレントトランス201、発振器202および検出器203は、それぞれ、上記第1の実施の形態におけるバランス制御回路2のカレントトランス21、発振器22および検出器23と同様の構成および機能を有するものである。
本実施の形態の並列駆動電源装置は、次のように動作する。その基本原理は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、DC−DCコンバータ1A,1Bからの各出力電流は、バランス制御回路20におけるカレントトランス201の巻線201A,201Bを流れ、これにより、磁性コア21Cの内部に互いに打ち消し合う方向の2つの磁界が生じ、その重畳(合成)結果として、直流バイアス磁界が生ずる。一方、発振器202からの交番励磁電流ipは巻線201Dを流れるが、磁性コア201CがもつBH曲線の非線形特性に起因して、交番励磁電流ipの正負振幅には、巻線201A,201Bを流れる出力電流により生じた直流バイアス磁界に応じた差分(電流アンバランス)が生ずる。検出器203は、この電流アンバランスを検出して、制御部204に検出結果を入力する。制御部204はこの検出結果に応じて、DC−DCコンバータ1A,1Bに対して制御電圧VA,VBを入力する。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13(図2)は、出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正することにより、所望の電流バランスとなるよう出力電圧を調整する。
このように、本実施の形態の並列駆動電源装置によれば、各DC−DCコンバータからの出力電流の絶対値を検出するのではなく、カレントトランス201の磁性コア201CがもつBH曲線の非線形特性を利用して、2つの出力電流のアンバランスのみを検出するようにしているため、上記第1の実施の形態の場合と同様に、極めて簡単な制御回路構成となる。さらに、電流アンバランスを直接的に検出するようにしているため、DC−DCコンバータの主構成部品(トランス,平滑チョーク,スイッチング素子,カレントトランス等)の定数ばらつきによる影響を受けにくい。
とりわけ、本実施の形態によれば、入力側ではなく出力側で電流バランス制御を行うようにしたので、DC−DCコンバータ自身の機差(DC−DCコンバータ1A,1B自身がもつ様々な不安定要因)の影響を受けることがなく、より高い精度の並列運転バランス制御を実現することができる。
また、本実施の形態においても、上記第1の実施の形態の場合と同様に、環境温度による磁性コア201CのBH曲線変化に合わせて交番磁束密度Baの振幅ΔBを変化させ、この振幅ΔBが常にBH曲線の線形領域幅とほぼ等しくなるように調整することにより、検出器203における不感帯の発生や差分電流検出値のばらつきを抑制することができる。すなわち、上記の図12(A)に示したように、低温状態においても交番磁束密度Baの振幅ΔBがBH曲線の線形領域に完全に呑み込まれてしまうことがないため、アンバランス検出の不感帯が生ずることがない。また、図12(C)に示したように、高温状態においても、交番磁束密度Baの振幅ΔBがBH曲線の飽和領域にまで差し掛かることがないので、アンバランス時に検出器203によって検出される差分電流が極端に大きくなることを回避することができる。
なお、上記のように交番電圧の周波数を変えることのほか、交番電圧の振幅(ピーク電圧値)やデューティー比を変えることによっても交番磁束密度の振幅を調整可能であることは、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
このように、本実施の形態においても、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流(分流電流I1,I2)をカレントトランス201の巻線201A,201Bに流し、これらの分流電流I1,I2によって生ずる磁界が互いに打ち消し合う向きとなるようにすると共に、これらの磁界が互いに打ち消し合う大きさとなるようにDC−DCコンバータ1A,1Bの出力を制御している。より具体的には、DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流を流す巻線201A,201Bをカレントトランス201の磁性コア201Cに互いに逆極性で巻設すると共に、発振器202からの交番励磁電流ipを流す巻線201Dを磁性コア201Cに巻設し、その交番励磁電流ipの正負差分に応じて各DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正することにより、所望の電流バランスとなるよう出力電圧を調整するようにしている。このため、1対のDC−DCコンバータ1A,1Bについて1つのカレントトランス201を設けるだけでよい。すなわち、従来、各DC−DCコンバータの数と同数必要であった電流検出手段の数を減らすことができ、回路構成が簡易になる。さらに、コア励磁回路を構成する発振器202に温度補償機能を具備させ、環境温度による磁性コア21CのBH曲線変化に合わせて交番磁束密度Baの振幅ΔBを変化させ、この振幅ΔBが常にBH曲線の線形領域幅とほぼ等しくなるように調整することとしたので、以上の利点に加えて、検出器203における不感帯の発生や差分電流検出値のばらつきを抑制することができ、電流バランス制御の信頼性向上を図ることができる。
〈変形例2−1〉
図20に示した例では、2台のDC−DCコンバータ1A,1Bを並列運転する場合について説明したが、本発明はこれには限定されず、任意の台数のDC−DCコンバータについて出力電流に基づくバランス制御を行うことが可能である。図21は、例えば7台のDC−DCコンバータ1A〜1Gについて電流バランス制御を行う場合を示している。この例では、DC−DCコンバータ1A〜1Gを、第1のグループ(DC−DCコンバータ1A〜1D)と第2のグループ(DC−DCコンバータ1E〜1G)とに分け、この2つのグループに対して、1つのカレントトランス201−1を配設する。第1のグループについては、DC−DCコンバータ1A,1Bの組に対して1つのカレントトランス201−2を配設し、DC−DCコンバータ1B,1Cの組に対して1つのカレントトランス201−3を配設し、DC−DCコンバータ1C,1Dの組に対して1つのカレントトランス201−4を配設する。第2のグループについては、DC−DCコンバータ1E,1Fの組に対して1つのカレントトランス201−5を配設すると共に、DC−DCコンバータ1E,1FとDC−DCコンバータ1Gの組に対して1つのカレントトランス201−6を配設する。このとき、各カレントトランス201−1〜201−6における巻線21A,21Bの巻数比をそれぞれ適切な値に設定することにより、各DC−DCコンバータの出力電流を、所望の負荷分担比に応じた値に制御することができる。
このように、カレントトランス21の巻線21A,21Bの巻数比を適切に選定することにより、任意の台数nのDC−DCコンバータの並列運転を任意の負荷分担比で実現することができる。
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば上記第2の実施の形態で説明した出力電流バランス形の並列駆動電源装置の場合においても、バランス制御回路2に関して変形例1−1〜1−4と同様の変形を行うことは可能である。
また、上記各実施の形態および変形例では、温度センサ25によって環境温度を検出し、温度変化による磁性コア21CのBH曲線変化に応じて交番磁束密度Baの振幅ΔBを調整するようにしたが、本発明はこれには限定されない。例えば、温度変化による磁性コア21CのBH曲線変化に応じて交番磁束密度Baの振幅ΔBが自然に変化するような温度特性をもつようにバランス制御回路20を構成することによっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合には、温度センサ25、スイッチング制御部225の温度依存動作機能、および電圧可変回路が不要なので、回路構成が簡易で済む。
また、上記各実施の形態および変形例では、入力側のバッテリ4が1台(共通)の場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、DC−DCコンバータ1A,1Bのそれぞれに対応させてバッテリを別々に設け、個別に電力供給を行うようにしてもよい。この場合においても、図1の場合と同様に、1つのカレントトランス21を用いて構成したバランス制御回路2によって、DC−DCコンバータ1A,1Bの並列運転におけるバランス制御を行うことができる。これは、入力電流バランス形および出力電流バランス形のいずれの場合においても適用される。
また、上記各実施の形態および変形例では、入力側直流電圧源がバッテリ4である場合として説明したが、入力側直流電圧源はDC−DCコンバータやAC−DCコンバータ(交流−直流変換器)であってもよい。
また、上記実施の形態では、バランス制御回路20の発振器22の出力波形が矩形波であるものとして説明したが(図6参照)、正負方向の振幅が同じであれば、正弦波や鋸波等であってもよい。
本発明の第1の実施の形態に係る並列駆動電源装置の全体構成を表すブロック図である。 図1に示した並列駆動電源装置におけるDC−DCコンバータの一構成例を表す回路図である。 図1に示した並列駆動電源装置におけるカレントトランスの構成を簡略化して表す斜視図である。 図3に示したカレントトランスの略記法を表す図である。 図1に示した並列駆動電源装置におけるバランス制御回路の構成を表す回路図である。 図5に示したバランス制御回路における発振器の出力波形(交番電圧波形)とカレントトランスにおける磁性コアの交番磁束密度の変化との関係を説明するための波形図である。 図5に示したバランス制御回路における発振器の出力波形とカレントトランスにおける磁性コアの交番磁束密度との関係を説明するための他の波形図である。 図5に示したバランス制御回路の作用を説明するためのカレントトランス磁化特性図である。 カレントトランスにおける飽和磁束密度の温度依存性を示す特性図である。 環境温度の変化にかかわらず交番磁束密度の振幅が一定である場合の一例(比較例)を示すカレントトランス磁化特性図である。 環境温度の変化に応じて交番磁束密度の振幅を変化させるために用いられるいくつかの手法を示す図である。 環境温度の変化に応じて交番磁束密度の振幅を変化させるようにした場合の一例を示すカレントトランス磁化特性図である。 交番電圧のピーク電圧値を変化させて交番磁束密度の振幅を変化させるようにした具体例を示す波形図である。 交番電圧のデューティー比を変化させて交番磁束密度の振幅を変化させるようにした具体例を示す波形図である。 カレントトランスの一変形例を示す簡略化斜視図である。 カレントトランスの他の変形例を示す簡略化斜視図である。 図16に示したカレントトランスの等価回路図である。 カレントトランスのさらに他の変形例を示す簡略化斜視図である。 図1に示した並列駆動電源装置の変形例を表すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態に係る並列駆動電源装置の全体構成を表すブロック図である。 図20に示した並列駆動電源装置の変形例を表すブロック図である。
符号の説明
1A〜1G…DC−DCコンバータ、2,20…バランス制御回路、4…バッテリ、5…負荷、13…スイッチング制御回路、21,21−1〜21−6,121,201,201−1〜201−6…カレントトランス、21A,21B、21D,201A,201B、201D…巻線、21C,121C,201C…磁性コア、22,202…発振器、23,203…検出器、24,204…制御部、25…温度センサ、225…スイッチング制御部、ip…交番励磁電流、I1,I2…分流電流、VA,VB…制御電圧、Bs…飽和磁束密度、Ba…交番磁束密度、Vcc…直流電源、Va…交番電圧、ΔB…交番磁束密度の振幅、F1,F2…磁束。

Claims (9)

  1. 各出力端が負荷に共通接続され、それぞれが入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、
    前記複数の直流電圧変換器の入力側に共通に設けられたカレントトランスと、
    前記複数の直流電圧変換器および前記カレントトランスを制御する制御手段と
    を備え、
    前記カレントトランスは、
    前記複数の直流電圧変換器のうち、第1群の直流電圧変換器に入力される第1の直流電流が流れる第1の導線と、
    前記複数の直流電圧変換器のうち、前記第1群の直流電圧変換器を除く第2群の直流電圧変換器に入力される第2の直流電流が流れる第2の導線と、
    交番励磁電流が流れる第3の導線と、
    前記第1、第2の直流電流および前記交番励磁電流によってそれぞれ生ずる磁束を収容する磁性コアと
    を含み、
    前記制御手段は、
    交番電圧を生成して前記第3の導線に印加することにより、この第3の導線に前記交番励磁電流を流し、前記磁気コアの内部に正負両側の振幅が等しい交番磁束密度を生じさせる交番電圧印加回路と、
    前記交番励磁電流を検出する電流検出回路と、
    前記電流検出手段による検出結果に基づき、前記第1および第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する変換器制御回路と
    を含み、
    環境温度に応じて前記交番磁束密度の振幅が変化するように構成されている
    ことを特徴とする並列駆動電源装置。
  2. 前記変換器制御回路は、前記電流検出手段により検出された前記交番励磁電流の正負両側の振幅が等しくなるように前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する
    ことを特徴とする請求項1記載の並列駆動電源装置。
  3. 環境温度の上昇に応じて前記交番磁束密度の振幅が減少するように構成されている
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の並列駆動電源装置。
  4. 前記制御手段は、前記環境温度を検出する温度センサを含み、
    前記交番電圧印加回路は、前記温度センサにより検出された環境温度に基づいて、前記交番電圧の周波数、ピーク電圧値およびデューティー比のうちの少なくとも1つを変化させることにより、前記交番磁束密度の振幅を変化させる
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の並列駆動電源装置。
  5. 前記磁性コアがトロイダルコアであり、
    前記第1の直流電流と前記第2の直流電流とが、互いに逆向きに前記トロイダルコアを貫いて流れる
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の並列駆動電源装置。
  6. 前記磁性コアが、2つのトロイダル部を互いに連結してなる8の字状のコアであり、
    前記第1の直流電流と前記第2の直流電流とが、互いに同じ向きに、各トロイダル部をそれぞれ貫いて流れる
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の並列駆動電源装置。
  7. 前記第1、第2および第3の導線は、それぞれ、前記磁性コアに巻設された第1、第2および第3の巻線として構成されている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の並列駆動電源装置。
  8. 前記第1の巻線の巻数と前記第2の巻線の巻数との比である巻数比が、前記第2群の直流電圧変換器の合計定格出力電流と前記第1群の直流電圧変換器の合計定格出力電流との比である負荷分担比に等しく設定されている
    ことを特徴とする請求項7に記載の並列駆動電源装置。
  9. 各出力端が負荷に共通接続され、それぞれが入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、
    前記複数の直流電圧変換器の出力側に共通に設けられたカレントトランスと、
    前記複数の直流電圧変換器および前記カレントトランスを制御する制御手段と
    を備え、
    前記カレントトランスは、
    前記複数の直流電圧変換器のうち、第1群の直流電圧変換器から出力される第1の直流電流が流れる第1の導線と、
    前記複数の直流電圧変換器のうち、前記第1群の直流電圧変換器を除く第2群の直流電圧変換器から出力される第2の直流電流が流れる第2の導線と、
    交番励磁電流が流れる第3の導線と、
    前記第1、第2の直流電流および前記交番励磁電流によってそれぞれ生ずる磁束を収容する磁性コアと
    を含み、
    前記制御手段は、
    交番電圧を生成して前記第3の導線に印加することにより、この第3の導線に前記交番励磁電流を流し、前記磁気コアの内部に正負両側の振幅が等しい交番磁束密度を生じさせる交番電圧印加回路と、
    前記交番励磁電流を検出する電流検出回路と、
    前記電流検出手段による検出結果に基づき、前記第1および第2の直流電流によってそれぞれ生ずる磁束が互いに打ち消し合うこととなるように前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する変換器制御回路と
    を含み、
    環境温度に応じて前記交番磁束密度の振幅が変化するように構成されている
    ことを特徴とする並列駆動電源装置。

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