JP2006017177A - 合成樹脂製の冠形保持器 - Google Patents

Abstract

【課題】環状母体５の円周数箇所に軸方向一方に突出する仕切り部７を設けかつ各仕切り部７の間に径方向から見て略Ｃ字形の玉収容用のポケット６を有する合成樹脂製の冠形保持器４において、玉軸受に使用している状況で軸受外に外れにくくする。
【解決手段】各ポケット６を構成する内壁面（各仕切り部７および抜け止め部８の内側面）の径方向に沿う形状を球面とする。前記内壁面において各ポケット６の中心Ｐから軸方向両方へ所定量ｗ１，ｗ２広げた範囲に該当する領域に、軸方向に沿う平坦部９を径方向に形成することによって、各ポケット７内における玉３の軸方向での変位許容量Δ１を円周方向での変位許容量Δ２より大きく設定した。
【選択図】図２

Description

本発明は、玉軸受に用いられる合成樹脂製の冠形保持器に関する。

従来の玉軸受に用いる合成樹脂製の冠形保持器は、環状母体の円周数箇所に軸方向一方に突出する仕切り部を設けかつ各仕切り部の間に径方向から見て略Ｃ字形の玉収容用のポケットを有する構成である（例えば特許文献１参照。）。ポケットは、径方向ならびに軸方向一方へ向けて開放されている。仕切り部の内側面、つまりポケットを構成する内壁面は、球面形状になっている。
実開平５−３４３１７号（図２、図３参照）

上記従来の冠形保持器は、深溝型玉軸受に使用している状態で、内輪が軸とともに傾いたとき、１８０度対向する二箇所で一方が軸方向一方へ、他方が軸方向他方へ変位することになり、内外輪間に配置されている玉から冠形保持器が外れやすくなる。

本発明は、合成樹脂製の冠形保持器において、玉軸受に使用している状況で軸受から外れにくくすることを解決すべき課題としている。

本発明の合成樹脂製の冠形保持器は、環状母体の円周数箇所に軸方向一方に突出する仕切り部を設けかつ各仕切り部の間に径方向から見て略Ｃ字形の玉収容用のポケットを有するもので、前記各ポケットを構成する内壁面の径方向に沿う形状を球面とし、かつ、前記内壁面において各ポケットの中心から軸方向両方へ所定量広げた範囲に該当する領域に、軸方向に沿う平坦部を径方向に形成することによって、各ポケット内における玉の軸方向での変位許容量を円周方向での変位許容量より大きく設定したことを特徴としている。

本発明によると、ポケットを構成する内壁面に平坦部を設けたことによって、玉軸受に組み込んで使用する状況において、軸方向すきまが大きくなるので、冠形保持器の傾き許容角度を大きくできる。これにより、冠形保持器のポケットを構成する内壁面と玉とが干渉しにくくなり、冠形保持器が玉群から押される現象が発生しにくくなる。そのため、冠形保持器が軸受から外れることを抑制または防止できるようになる。

好ましくは、前記平坦部の軸方向幅をＲＢ、玉軸受の各玉のピッチ円直径をＰＣＤ、玉軸受の傾き角度をαとしたとき、（１／２）×ＰＣＤ×ｔａｎα≦ＲＢ≦ＰＣＤ×ｔａｎαの関係を満たすものとすることができる。この場合、玉軸受が傾き角αまで傾いたときに、平坦部の存在によって冠形保持器が玉に対し軸方向に大きく変位することが可能になり、冠形保持器が玉から一層押されにくくなる。

本発明の合成樹脂製の冠形保持器によると、玉軸受に組み込んで使用する状況で、軌道輪の傾きといったミスアライメントが発生しても、軸受から外れにくくなる。

以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。

まず、図４および図５を参照して、合成樹脂製の冠形保持器の使用対象となる深溝玉軸受を説明する。図４は、図１の冠形保持器を用いた深溝玉軸受を一部切欠いて示す斜視図、図５は、図４の深溝玉軸受の断面図である。

深溝玉軸受は、外輪１と内輪２との対向間に多数の玉３を介装し、この多数の玉３を合成樹脂製の冠形保持器４で円周方向略等間隔に保持させた構成である。

図１から図３を参照して、合成樹脂製の冠形保持器を詳細に説明する。図１は、冠形保持器の最良の実施形態を示す斜視図、図２は、図１の冠形保持器の一部を展開して径方向から見た図、図３は、図１の冠形保持器の断面図である。

冠形保持器４は、合成樹脂を成形して製作されるものであり、環状母体５の円周ほぼ等配の数箇所に、玉３を嵌入保持するポケット６が設けられている。このポケット６は、径方向から見て略Ｃ字形状になっており、径方向ならびに軸方向一方へ向けて開放されている。

環状母体５の円周数箇所に軸方向一方に突出する仕切り部７が設けられており、各仕切り部７の間にポケット６が存在している。この仕切り部７の先端側には、抜け止め部８が二股状に設けられている。抜け止め部８の間の凹みには、グリース等の潤滑剤が貯溜される。

ここで、各ポケット６を構成する内壁面（各仕切り部７および抜け止め部８の内側面）の径方向に沿う形状を球面とする。そして、前記内壁面（各仕切り部７および抜け止め部８の内側面）において各ポケット６の中心Ｐから軸方向両方へ所定量ｗ１，ｗ２広げた範囲に該当する領域に、軸方向に沿う平坦部９，９を径方向に形成をすることによって、各ポケット７内における玉３の軸方向での変位許容量Δ１を円周方向での変位許容量Δ２より大きく設定している。平坦部９，９は前記内壁面の径方向全体に設けられている。

詳しくは、ポケット６は、環状母体５側に設けられる略半円形の半円部１０と、抜け止め部８側に設けられる曲面部１１，１１と、半円部１０と曲面部１１，１１との間に設けられる二つの平坦部９，９とで囲まれて形成されている。

ここで、平坦部９，９の軸方向幅をＲＢ、深溝玉軸受の各玉３のピッチ円直径をＰＣＤ、玉軸受の傾き角度をαとしたとき、（１／２）×ＰＣＤ×ｔａｎα≦ＲＢ≦ＰＣＤ×ｔａｎαの関係を満たすものとする。なお、軸方向幅ＲＢは、ｗ１＋ｗ２である。

ＲＢが（１／２）×ＰＣＤ×ｔａｎαより小さいと、保持器が玉に対して十分に変位することができず、ＰＣＤ×ｔａｎαより大きいと、保持器が玉を安定に保持できなくなる。

このような冠形保持器４では、平坦部９，９の軸方向幅ｗ１＋ｗ２と軸方向での変位許容量Δ１とを足した分が、深溝玉軸受の玉３群に軸方向で相対的に変位可能となる。そのため、内輪２と共に冠形保持器４が傾いたときに、冠形保持器４と玉３とが干渉しにくくなり、冠形保持器４が軸受から外れにくくなる。

図６を参照して、上記冠形保持器４を用いる場合の動作を説明する。

上記冠形保持器４を図４や図５に示すように深溝玉軸受に組み込んだ状態において、図６に示すように、内輪２が図示しない軸とともに所定角度α１傾いたとき、１８０度対向する二箇所（図の上側と下側との二箇所）の玉３のうち、一方（図の上側）が矢印２０のように軸方向一方（図の右側）へ、他方（図の下側）が矢印２１のように軸方向他方（図の左側）に僅かに転がる。この玉３の僅かな転がりに伴い、冠形保持器４の１８０度対向する二箇所（図の上側と下側との二箇所）で一方（図の上側）が矢印２０のように軸方向一方（図の右側）へ、他方（図の下側）が矢印２１のように軸方向他方（図の左側）へ変位して、冠形保持器４がその中心Ｏを支点として内輪２の傾き角度α１とほぼ同じだけ傾く。

このような状況では、従来例の冠形保持器を用いる場合、外輪と内輪との間に配置されている玉から冠形保持器が外れやすくなるが、本発明の上記実施形態で説明した冠形保持器４を用いる場合、冠形保持器４のポケット６を構成する内壁面に平坦部９を設けたことによって、軸方向すきまが大きくなるから、冠形保持器４の傾き許容角度を大きくできる。これにより、冠形保持器４のポケット６を構成する内壁面と玉３とが干渉しにくくなって、冠形保持器４が玉３群から押される現象が発生しにくくなるので、冠形保持器４が軸受から外れることを抑制または防止できるようになる。

以上説明したように、本発明の冠形保持器４は、深溝玉軸受に使用した状態で傾きに対する動作安定性が向上する。

本発明に係る冠形保持器の最良の実施形態を示す斜視図 図１の冠形保持器の一部を展開して径方向から見た図 図１の冠形保持器の断面図 図１の冠形保持器を用いた深溝玉軸受を一部切欠いて示す斜視図 図４の深溝玉軸受の断面図 図５の深溝玉軸受で不具合が生じないことを説明する図

符号の説明

３…玉
４…合成樹脂製の冠形保持器
５…環状母体
６…ポケット
７…仕切り部
８…抜け止め部
９…平坦部

Claims (2)

1. 環状母体の円周数箇所に軸方向一方に突出する仕切り部を設けかつ各仕切り部の間に径方向から見て略Ｃ字形の玉収容用のポケットを有する合成樹脂製の冠形保持器であって、
   前記各ポケットを構成する内壁面の径方向に沿う形状を球面とし、
   かつ、前記内壁面において各ポケットの中心から軸方向両方へ所定量広げた範囲に該当する領域に、軸方向に沿う平坦部を径方向に形成することによって、各ポケット内における玉の軸方向での変位許容量を円周方向での変位許容量より大きく設定したことを特徴とする合成樹脂製の冠形保持器。
2. 前記平坦部の軸方向幅をＲＢ、玉軸受の各玉のピッチ円直径をＰＣＤ、玉軸受の傾き角をαとしたとき、（１／２）×ＰＣＤ×ｔａｎα≦ＲＢ≦ＰＣＤ×ｔａｎαの関係を満たすものとすることを特徴とする請求項１に記載の合成樹脂製の冠形保持器。

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