JP2006016467A - キラリティー制御物質およびキラリティー制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、新規なキラリティー制御物質を提供し、またこのキラリティー制御物質を用いる新規なキラリティー制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のキラリティー制御物質は、ポリイミド前駆体(化1)から生成されるポリイミドである。
【化1】
(A=50〜100%、B=50〜0%)
キラルな高分子膜とキラル分子(キラル構造)とのキラル認識を用いることによって、キラルな高分子膜上でラセミ体内の片側のキラリティーをキラル反転させ、キラリティーの偏りを得ることでき、キラリティーを制御することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明のキラリティー制御物質は、ポリイミド前駆体(化1)から生成されるポリイミドである。
【化1】
(A=50〜100%、B=50〜0%)
キラルな高分子膜とキラル分子(キラル構造)とのキラル認識を用いることによって、キラルな高分子膜上でラセミ体内の片側のキラリティーをキラル反転させ、キラリティーの偏りを得ることでき、キラリティーを制御することができる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、キラリティー制御物質に関する。
また、本発明は、このキラリティー制御物質を用いるキラリティー制御方法に関する。
また、本発明は、このキラリティー制御物質を用いるキラリティー制御方法に関する。
キラル物質はその旋光性に応じてL体とD体に区別される。L体とD体で同じ性質を示すこともあれば、全く異なる性質を示す場合もある。パスツールが初めてラセミ体の酒石酸を分割することに成功して以来、ラセミ体から片側のキラル分子を取り出すこと、いわゆるキラル分割は注目を集め、現在も研究が行われている。
従来の技術として、片側のキラル分子のみを得る方法としては、キラルドーパントを用いる方法、不斉反応、ラセミ体をカラムなどで分割する方法、などが挙げられる。また、ラセミ体に偏光照射する手法では、片側のキラル分子を逆のキラリティーに反転させ、系のキラリティーに偏りを持たせることが出来る(例えば、非特許文献1〜4参照。)。
なお、発明者は、本発明に関連する技術内容を開示している(例えば、非特許文献5参照。)。
K. S. Burnham and G. B. Schuster: J. Am. Chem. Soc 121 (1999) 10245 A. Alexakis, C. Benhaim and S. Rosset, M.Humam: J. Am. Chem. Soc 124 (2002) 5262 M.Shapiro and E.Frishman: Phy. Rev.Lett 84 (2000) 1669 J. Thisayukta, H. Takezoe and J. Watanabe: Jpn. J. Appl. Phys. 40 (2001) 3227 第51回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集 No.3 1422
K. S. Burnham and G. B. Schuster: J. Am. Chem. Soc 121 (1999) 10245 A. Alexakis, C. Benhaim and S. Rosset, M.Humam: J. Am. Chem. Soc 124 (2002) 5262 M.Shapiro and E.Frishman: Phy. Rev.Lett 84 (2000) 1669 J. Thisayukta, H. Takezoe and J. Watanabe: Jpn. J. Appl. Phys. 40 (2001) 3227 第51回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集 No.3 1422
従来、不斉反応は片側のキラル分子を選択的に合成する手法であり、ラセミ体の分子から、片側のキラル分子のみを得ることは出来ていない。ラセミ体をカラムなどで分割する方法は分割工程で発生する時間、コストが問題の一つとされている。また、キラルドーパントを添加する方法では、バルク自身がすでにキラルであるので、キラル分子合成の際に出る時間、コストが問題であるのは勿論、光学純度を上げるためには、かなりのキラルドーパントの量を必要とする。ラセミ体に偏光照射する手法では、ごく限られた分子でのみ、光学純度を非常に上げることが出来るが、一般的にはラセミ体から得られる光学純度は非常に低い値であり、汎用性に劣るという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規なキラリティー制御物質を提供することを目的とする。
また、本発明は、このキラリティー制御物質を用いる新規なキラリティー制御方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このキラリティー制御物質を用いる新規なキラリティー制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のキラリティー制御物質は、キラル分子を有する基体化合物を含むことを特徴とする。
ここで、キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)であることを特徴とする。
ここで、キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)であることを特徴とする。
本発明のキラリティー制御方法は、キラル分子を有する基体化合物を用いることを特徴とする。
ここで、キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)であることを特徴とする。
ここで、キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)であることを特徴とする。
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明は、キラル分子を有する基体化合物を含むので、新規なキラリティー制御物質を提供することができる。
本発明は、キラル分子を有する基体化合物を含むので、新規なキラリティー制御物質を提供することができる。
本発明は、キラル分子を有する基体化合物を用いることにより、新規なキラリティー制御方法を提供することができる。
以下、キラリティー制御物質およびキラリティー制御方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
キラリティー制御物質は、キラル分子を有する基体化合物を含むものである。ここで、キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)である。
不斉炭素を有する分子としては、特定のものに限定されず、不斉炭素を有する分子の全てが該当する。
キラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)としては、円偏光照射により光反転する化合物、対称バナナ型化合物、非対称バナナ型化合物、またはW字型化合物などの中から選ばれる1種、または2種以上の混合物を挙げることができる。
基体化合物としては、有機化合物、無機化合物などを挙げることができる。
有機化合物としては、ポリマーすなわち、ポリイミド、ポリシリコン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネ−ト、ポリエチレンテレフタラート、ポリアクリロニトリル、ポリアミドや低分子化合物であるビナフトールなどを挙げることができる。
無機化合物としては、金属酸化物などを挙げることができる。
基体化合物の形状は、薄膜、粒子、糸状体、板状体などの形状を採用することができる。
キラル分子と基体化合物の結合は、共有結合、イオン結合、水素結合、金属結合、配位結合などの結合のいずれであってもよい。
キラル分子は、基体化合物の側鎖として存在してもよいし、基体化合物中の一部として存在してもよい。
上述のキラル分子を有する基体化合物を用いることにより、液晶のキラリティーを制御することができる。
制御できる液晶としては、円偏光照射により光反転する液晶、対称バナナ型液晶、非対称バナナ型化合物、W型化合物などを挙げることができる。
バナナ型液晶としては、以下の化3〜化13の液晶を挙げることができる。
化学名:1,3-phenylene-bis[4-[4-n-alkoxyphenyliminomethyl]-benzoate][1,3-フェニレン−ビス〔4-[4-n-アルコキシオキシフェニルイミノメチル]-ベンゾエート〕]
T. Sekine, T. Niori, M. Sone, J. Watanabe, S. W. Choi, Y. Takanishi and H. Takezoe: Jpn. J. Appl. Phy 6455, 36, 1997
化学名:2,7-naphthalene-bis[4-[4-n-alkoxyphenyliminomethyl]-benzoate][1,3-ナフタレン−ビス〔4-[4-n-アルキルオキシフェニルイミノメチル]-ベンゾエート〕]
J. Thisayukta, Y. Nakayama, S, Kawauchi, H. Takezoeand J. Watanabe: J. Am. Chem. Soc. 7441, 122, 2000
J. Svobada, V. Novotna, V. Kozmik, M. Glogarova, W. Weissflog, S. Diele, and G. Pelzl: J. Mater. Chem2104 13 2003
化学名:2,7-naphthalene-bis[4-[4-n-alkylthiophenyliminomethyl]-benzoate][1,3-ナフタレン−ビス〔4-[4-n-アルキルチオフェニルイミノメチル]-ベンゾエート〕]
G. Heppke, D. D. Parghi, and H. Sawade: Liq Cryst 313 27 2000
M. W. Schroder, G. Pelzl, U. Dunemann and W. Weissflog: Liq Cryst 633 31 2004
Veena Prasad: Liq Cryst 1115 28 2001
Veena Prasad: Liq Cryst 1115 28 2001
化学名:
N,N’-bis[2-hydroxy-5-(4’-n-tetradecylphenylazo)-benzylidene]-1,3-diamino-4-nitrobenzene
V. S. Rao, M. K. Paul, I.Miyake, Y. Takanishi, K. Ishikawa and H. Takezoe: J. Mater. Chem. 2880 13 2003
円偏光照射により光反転する液晶としては、化14〜27の液晶を挙げることができる。なお、化14〜26の液晶については、「液晶 第八巻 第一号 2004」に掲載されている。
A.Salama and W.J.Meath: J. Chem. Phy. 106 181997
制御できる液晶としては、そのほか、分子構造にねじれが導入された液晶などを挙げることができる。
液晶のキラリティーを制御する方法において、反応装置としては種々なものを採用することができる。容器の内壁面にキラリティー制御物質の膜を形成した装置、キラリティー制御物質の膜を形成した基板2枚で挟み込んだ装置などを採用することができる。
このように、キラリティー制御物質を反応場とすることで、新規な反応場としての利用が期待される。
このように、キラリティー制御物質を反応場とすることで、新規な反応場としての利用が期待される。
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、キラル分子を有する基体化合物を含むので、新規なキラリティー制御物質を提供することができる。
また、本発明を実施するための最良の形態によれば、キラル分子を有する基体化合物を用いることにより、新規なキラリティー制御方法を提供することができる。
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
最初に、本実施例に用いた液晶の組成について説明する。液晶は、屈曲構造の分子を含んでいる。ここで、屈曲構造の分子は化28に示すP14−O−PIMB(化学名:1,3-phenylene-bis〔4-(4-n-tetradecyloxyphenyliminomethyl)-benzoate〕(1,3−フェニレン−ビス〔4−(4−n−テトラデシルオキシフェニルイミノメチル)−ベンゾエート〕)を用いた。
なお、P14−O−PIMBの相系列は、B4 140 B2 170 Isoで表せる。具体的にはIso(等方液体)相−B2相転移温度が170℃、B2相−B4相転移温度が140℃となる。ここで、B2,B4相はそれぞれ液晶相の1つである。B4相はP14−O−PIMBの最も低い温度領域で現れる。現在CD測定やAFM測定などにより、B4相はバナナ液晶分子の捩れ規制力によって螺旋構造をとると考えられていて、その掌性は系にキラリティーをもたらす。
また掌性は左右ほぼ等確率(ラセミ体)であることが確認されている。互いに逆符号のキラリティーを持つキラルドメインは、偏光顕微鏡下において、顕微鏡の偏光子と検光子の透過容易軸を直交させた状態(クロスニコル)では同一に見えるが、クロスニコルから検光子を数度ずらすとそのキラルドメインの旋光性の違いから異なって見える。また、検光子を時計回りにずらした状態下のテクスチャーは反時計回りに同じだけずらすとキラルドメインの色が反転することが知られている(J. Thisayukta, H. Takezoeand J. Watanabe: Jpn. J. Appl. Phys. 40 (2001) 3227 ; J. Thisayukta, H.Niwano, H.Takezoe and J. Watanabe: J.Matter.Chem.11 (2001) 2717)。
本実施例で用いるポリイミド前駆体(日産化学工業社製)について説明する。ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は次式(化29)により合成される。すなわち、原料となるジアミンとテトラカルボン酸二無水物を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中、室温で混合撹拌することにより合成する。
合成されたポリイミド前駆体は、次式(化30)に示すような化学構造を有している。キラル分子を側鎖として有している。ここで、A=50%、B=50%、平均分子量(Mn)=63045、分散度(Mw/Mn)=1.70である。このポリイミド前駆体をNMPに溶解して用いた。
なお、AとBの割合は、A=50〜100%、B=50〜0%の範囲にあることが好ましい。
また、平均分子量(Mn)は、5000〜100000の範囲にあることが好ましい。
液晶は通常セルと呼ばれる2枚のガラス基板からなるものに注入して使用される。本実施例では2枚のガラスを基板として用いた。これにポリイミド前駆体(化30)溶液を3500rpmで1分間、続けて4000rpmで30秒間スピンコートすることで塗布した。次に、230℃でイミド化を行い、キラルポリイミドを形成した。さらにこれを可動なステージに乗せ、800rpmの回転ローラに取り付けたベルベット布で軽くこすりラビング処理した。2枚のガラス基板のラビング処理した方向を平行にし、ラビング処理した面を対向させた。2枚のガラス基板の間に厚さ2μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚挟んで側面をエポキシ樹脂で固定し、セル厚2μmのセルを作製した。
比較のために、基板として、ガラスにキラルポリイミドを成膜したもの、キラリティーを持った側鎖を持たないアキラルなポリイミド(化31)を成膜しラビング処理をしたもの、何もつけないガラスの3種類を用いたセルも作製した。
これをヒーター上で175℃程度に温めた状態で、エポキシ樹脂を塗っていない側面から175℃で等方相に溶けた結晶をスパチュラで毛細管現象により、注入する。そして175℃から約−1.0℃/min程度に徐冷しながら室温まで温度を下げることにより、キラルな相であるB4相を発生させた。
次に、本実施例にかかるキラルな高分子膜が、屈曲構造を有する液晶が示すB4相のキラリティーに偏りを与えたか否かの確認を行った。キラリティーの偏りの確認は、(a)偏光顕微鏡下での組織観察、(b)円偏光ニ色性スペクトル強度変化、(c)直接的なキラルドメインの面積測定で行った。温度は室温(25℃)で行った。
最初に、液晶の組織観察について説明する。組織観察には、偏光顕微鏡(OPTIPHOT−POL、Nikon社製)を用いた。
液晶の組織観察の結果について説明する。図1および2は、クロスニコルから検光子を2°〜3°時計回りに回転した状態下での偏光顕微鏡写真で、(a)ガラス基板のセル、(b)アキラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセル、(c)キラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセル、(d)キラルポリイミドを成膜した基板のセルのものである。写真のサイズは1.25mm×0.8mmである。
キラルポリイミドを用いた2種類のセルでは他のセルと比べてコントラストが非常に高く、(+)キラリティー、(−)キラリティーを持つドメインのバウンダリ−もはっきりと現れている。これは、一つのキラルドメインを構成する微小キラルドメインが一様に成長し、さらにドメインのサイズが大きいためであると思われる。
そのため、ドメインサイズが小さいガラス基板、アキラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板では互いに逆のキラリティーを持つドメインが細かく入り組んでしまったため、バウンダリ−は、はっきりとは見てとれず、ぼやけた様なテクスチャーになっていると思われる。
また、ラビング処理によっては、キラルドメインのサイズを大きくすることのみに起因している。
このことから、キラルポリイミドの効果は確認されたが、相観察によってどの程度のキラリティーの偏りがもたらされたのかは決定できない。
次に、円偏光ニ色性スペクトル(CDスペクトル)強度変化の測定について説明する。測定には、円二色性分散計(J-720WI、日本分光社製)を用いた。
試料ホルダーにはX-Zステージを取り付け、セルの中心からの距離を正確に定めてCDを測定出来るようにした。ビーム系は6mmとし、1つのセルに関してX-Zステージを利用し、位置を変化させて20回測定を行った。これは、ビーム系内に入るドメインの偏りは、ビームが当たるセルの位置によって様々なため、測定回数を増やし、セル全体のキラリティーの偏りを調べるために行っている。
また、円偏光ニ色性はキラル濃度と線形関係にあるため、同一波長では平均値を取ることが可能である。本実施例では、最大強度は390nm付近でまとまって観測されたため、最大強度を測定回数でプロットすること、平均値を議論することで、セル全体のキラリティーの偏りを観測している。
全ての作製されたセルには、CDスペクトルで観測できる程度大きなキラリティーを持っていない。これは塗布されたキラルポリイミドが非常に薄いためである。測定はB2相に再度昇温した後、またB4相に降温する、という温度サイクルを数回行った後の試料について行っている。温度サイクルにおいては系のキラリティーは保持されることか明らかになっており、複屈折を下げることでCDスペクトルに与える誤差を極力抑える意図がある。
円偏光ニ色性スペクトル(CDスペクトル)強度変化の測定結果について説明する。図3および4は、CDスペクトルの最大強度を測定回数でプロットしたもので、(A)ガラス基板のセル、(B)アキラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセル、(C)キラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセル、(D)キラルポリイミドを成膜した基板のセル、のものである。
(A)ガラス基板のセル、(B)アキラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセルでは、CDスペクトルの最大強度は測定毎に(+)、(−)側に現れており、CDスペクトルの平均最大強度はほとんど0に近い値となっている。平均最大強度は、(A)ガラス基板のセルでは6.4mdegであり、(B)アキラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセルでは5.3mdegであった。
このことは、セル内において、場所によってはどちらかの符号を持ったキラリティーが多く含まれている場合があるが、セル全体としては、(+)、(−)キラリティーが等量存在している、つまりラセミ体になっていることが分かる。
一方、キラルポリイミドを基板に用いたセルでは全ての測定で(+)側に最大強度が偏っている。これは、セル内にキラリティーの偏りが存在している事を意味する。平均最大強度は、(C)キラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセルでは289mdegであり、(D)キラルポリイミドを成膜した基板のセルでは74mdegであった。
(C)キラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセル、(D)キラルポリイミドを成膜した基板のセルを比較すると、平均最大強度に大きな差が見られた。ラビング処理によって液晶の組織観察において、ドメインサイズのみに差が見られているため、ドメインサイズを上げることで、より大きなキラリティーの偏りが得られることが分かる。
図5はアキラルポリイミドとキラルポリイミドのNMP溶媒中でのCDスペクトルと示している。キラルポリイミドは(+)キラリティーを持っており液晶相のキラリティーが偏った符号と一致している。このことから、キラルポリイミド膜と液晶相のキラル分子(キラル構造)とのキラル認識によってキラリティーの偏りがおきていることが示唆される。
最後に直接的なキラルドメインの面積測定について説明する。X-Yステージにセルを乗せ、位置を変化させながら液晶の組織観察写真(1.25mm×0.8mm)を70枚撮影した。この写真を、Photoshop(Adobe社製)を用いて二階転調を行い二つのキラルドメインを白、黒に変換する。このとき、二階転調の際に出る誤差を最小限にするため、逆の転調のものを用意する。すなわち、片側のキラルドメインを白と黒の二種類に転調する。これを葉面積計算ソフトであるImage−J(アメリカ国立衛生研究所(National Institute for Health :NIH))を用いて白色の部分を計算することによって、ドメインの面積を計算した。
直接的なキラルドメインの面積測定の結果について説明する。キラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセルにおいて、計算の結果(+):(−)は55:45となった。
この値の妥当性をCDスペクトルの最大強度から議論する。ビームサイズを相観察の写真のサイズとほぼ同一な1mmとして50回CDスペクトルを測定したところ、得られた最大強度は1600mdegであった。この値を単一のキラルドメインのみ(光学純度100%)から発せられた値であると仮定すると、計算結果である(+):(−)は55:45のキラリティーの偏りでは160mdegが予想される。実験値はこの値を超えていなければならず、図4から(C)キラルポリイミドを成膜し、ラビング処理した基板のセルの平均最大強度は254mdegであり、予想の値を超え矛盾が生じていない。
また直接的なキラルドメインの面積測定の際に撮った70枚の写真で最もキラリティーが偏っていた場所では(+):(−)は75:25であり、光学純度は50%であった。ビームサイズを1mmとした時の最大強度1600mdegが、光学純度50%から求められる値であると仮定した場合、計算結果である(+):(−)は55:45のキラリティーの偏りでは320mdegが予想され、この値は実験値に近い値となっており、計算された(+):(−)は55:45(光学純度10%)は妥当な値ということが出来る。
以上のことから、本実施例によれば、キラルな高分子膜とキラル分子(キラル構造)とのキラル認識を用いることによって、キラルな高分子膜上でラセミ体内の片側のキラリティーをキラル反転させ、キラリティーの偏りを得ることでき、キラリティーを制御することができる。これにより、キラル分割工程で発生する時間、コストを削減することが可能となる。
Claims (8)
- キラル分子を有する基体化合物を含む
ことを特徴とするキラリティー制御物質。 - キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)である
ことを特徴とする請求項1記載のキラリティー制御物質。 - キラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)は、円偏光照射により光反転する化合物、対称バナナ型化合物、非対称バナナ型化合物、またはW字型化合物の中から選ばれる1種、または2種以上の混合物である
ことを特徴とする請求項2記載のキラリティー制御物質。 - キラル分子を有する基体化合物は、ポリイミド前駆体(化1)から生成されるポリイミドである
ことを特徴とする請求項1記載のキラリティー制御物質。 - キラル分子を有する基体化合物を用いる
ことを特徴とするキラリティー制御方法。 - キラル分子は、不斉炭素を有する分子、またはキラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)である
ことを特徴とする請求項5記載のキラリティー制御方法。 - キラリティーを発現する分子(不斉炭素を有する分子を除く)は、円偏光照射により光反転する化合物、対称バナナ型化合物、非対称バナナ型化合物、またはW字型化合物の中から選ばれる1種、または2種以上の混合物である
ことを特徴とする請求項6記載のキラリティー制御方法。 - キラル分子を有する基体化合物は、ポリイミド前駆体(化2)から生成されるポリイミドである
ことを特徴とする請求項5記載のキラリティー制御方法。
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