JP2006014543A - 移動体の制動装置 - Google Patents

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正浩 長洲
Yutaka Sato
佐藤  裕
Hideaki Kitabayashi
英朗 北林
Hiroyuki Akiyama
弘之 秋山
Masahiko Horiuchi
雅彦 堀内
Katsushi Hashimoto
克史 橋本
Hitoshi Shiraishi
仁史 白石
Koji Fuchigami
耕司 渕上
Katsuji Takada
勝治 高田
Kenichi Kumabe
憲一 隈部
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Abstract

【課題】 電気ブレーキ制御装置と空気ブレーキ制御装置が並列に接続されたブレーキ装置において、滑走発生時のエネルギー効率を向上するとともに、減速力の低下を防止する。
【解決手段】 滑走検知信号SSが生じたとき、電気ブレーキ制御装置(電制)3と空気ブレーキ制御装置(空制)4のいずれか一方例えば空制4の減速力A4を保持しつつ、他方例えば電制3の減速力A3を、滑走検知毎に予定の減少率で低減し、滑走防止制御を行う。また、列車制御装置1からの総合減速力指令B0も、aづつ滑走検知毎にステップ状に低減させる。さらに、滑走が発生していない車輪のブレーキを独立して制御している空制4では、低減分aに見合う減速力の増加を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鉄道車両や自動車などの移動体の制動装置の改良に関する。
鉄道車両は、インバータ技術の進展とともにモータ制御のインバータ化が進んでいる。インバータを使用すると容易にモータをブレーキ装置として使用することができ、制動力を電気エネルギーとして取り出せることから、モータを使用した電気ブレーキが幅広く使われている。電気ブレーキで取り出した電気エネルギーは、同一架線内の他の鉄道車両で使用することになるが、他の車両も減速中などのように、同時に発電している場合などは、電気ブレーキを使用することができない。また、急な減速や停止状態を保つことは、電気ブレーキだけでは困難であることから、鉄道車両では空気ブレーキも併用される。つまり、鉄道車両は、電気ブレーキと空気ブレーキで制動される構成となっている。
通常のブレーキは、電気ブレーキだけとしつつ、ブレーキ力が不足するときは、特許文献1に開示されているように、空気ブレーキで補うことが行われているが、車輪が滑走した場合などは、次のような問題が発生する。鉄道車両は、鉄でできた車輪とレールの接触で走行していることから、滑りやすい構造となっている。特に、雨天時などレールが濡れているときには、摩擦力が一層低下して滑走が頻発する。滑走を放置すると車輪の不均一な摩耗が発生して、乗り心地の悪化や脱線などの問題が発生するため、滑走を防止する滑走防止制御が行われている。滑走防止制御を電気ブレーキと空気ブレーキで同時に実施すると、互いの制御が干渉することになり、制御が不安定になる。そこで、従来は、電気ブレーキを止め、その分を空気ブレーキに上乗せし、滑走が発生すると空気ブレーキの制動力を低下させ、滑走が止まると再び増加させる制御を繰り返す。
特開平5−199604号公報(段落0002ほか)
従来のように、滑走時に電気ブレーキを停止して空気ブレーキだけでブレーキ操作をすると、電力回生ができないためにエネルギーの無駄が発生する。また、空気ブレーキの負荷が増加するためにブレーキパッドの摩耗が激しくなるなどの問題が発生する。
駆動モータの速度制御性を向上するとともに、回生ブレーキを可能にするため、インバータが用いられている。一般的に、このインバータは高価であることから、1つのインバータで複数のモータを同時に駆動する構成が採られている。さらに、1台のモータは、通常1つの軸を駆動する構成となっていることから、1つの軸で滑走が発生し、電気ブレーキを停止すると、インバータに連なる他の軸の電気ブレーキ力も同時に失われることになり、大きなエネルギーロスを発生する。
また、従来のブレーキ制御では、滑走を長時間に亘って発生させてしまうことがあった。
本発明の目的は、滑走発生時に、エネルギー効率の低下を抑制しつつ、速やかな再粘着を実現することにある。
本発明の特徴とするところは、動輪に並列的に減速力を与える2つの独立した減速制御装置を備えた移動体の制動装置において、動輪の滑走を検知したとき、一方の減速制御装置への減速力指令を保持するとともに、他方の減速制御装置への減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する手段を備えたことである。
本発明の一実施形態においては、滑走が発生した場合、電空いずれのブレーキも停止させずに、滑走を検知する毎に、いずれか一方のブレーキ力を低下させる。具体的には、電気ブレーキ制御装置と空気ブレーキ制御装置は、ともに列車制御装置につながり、電気ブレーキ装置と空気ブレーキ装置は、車両の車軸に並列的に作用する。このような構成において、滑走が発生した場合、滑走発生軸につながる電気ブレーキあるいは空気ブレーキのうちのいずれか一方の減速力を低減する滑走防止制御を実行する。
また、本発明の一実施形態においては、上記滑走防止制御に加えて、列車制御装置からの総合減速力指令を、滑走検知情報毎に低減させ、この低減分で、電気あるいは空気ブレーキ装置のいずれか一方の減速力指令を低下させる。
本発明の望ましい実施形態においては、制御する車軸数が比較的多く制御単位が大きい電気ブレーキ制御装置と、制御する車軸数が比較的少ない空気ブレーキ制動装置を備えた移動体の制動装置において、滑走を検知し、制御単位が大きい電気ブレーキ制御装置の減速力を低減し、同時に、非滑走軸に接続される空気ブレーキ制御装置の減速力を、低減分と同量だけ増加させる。
本発明によれば、滑走発生時に、電気ブレーキを止める確率を低減し、エネルギー効率の低下を抑制しつつ、速やかな再粘着を実現できる。
本発明の望ましい実施形態によれば、1つのブレーキ制御装置に複数の車軸がつながる場合であっても、滑走軸で低減した減速力を非滑走軸で補うことにより、総合の減速力の低下を軽減することができる。
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明を適用できる鉄道列車(移動体)のブレーキシステム構成の概要図である。列車制御装置1には、車両駆動装置2が接続されている。この車両駆動装置2は、制御原理が異なる電気ブレーキ制御装置3と空気ブレーキ制御装置4を含んで構成されている。これらの電気ブレーキ制御装置3と空気ブレーキ制御装置4は、ともに車輪(動輪)5に作用しブレーキをかける。
実際の車輪5(動輪)の構成は、1つの車軸の左右両端に2つの車輪が繋がっており、図1の車輪5は、その1つのみを示している。通常、電気ブレーキ制御装置3は、インバータとモータなどで構成され、モータは歯車、車軸などを通して車輪5に連結されている。そして、回転方向とは逆向きのトルクがモータに発生するようにインバータを制御して、ブレーキ制御が行われる。空気ブレーキ制御装置4は、車輪の回転を止める空気の圧力を制御してブレーキ制御動作が行われる。尚、ここでは空気を利用したブレーキ装置を示したが、他の原理を利用した装置でも良い。
列車制御装置1からは、電気ブレーキ制御装置3へ減速力指令B3を出力するとともに、空気ブレーキ制御装置4へ減速力指令B4を出力する統括制御装置を構成している。各ブレーキ制御装置は、各装置が実際に出力している減速力A3とA4を列車制御装置1へ送る。通常のブレーキ動作は、電気ブレーキ制御装置3の減速力A3と、空気ブレーキ制御装置4の減速力A4の和A0=A3+A4が希望の減速力となるように、列車制御装置1で制御される。以下、電気ブレーキ制御装置3を電制、空気ブレーキ制御装置4を空制と略称する。
図2は、鉄道車両のブレーキ装置の具体的な構成例を示すブロック図で、1つの車両6内のブレーキシステムの構成を示している。同図では、1つの電気ブレーキ制御装置(電制)3と1つの空気ブレーキ制御装置(空制)4が、4つの車軸51〜54のそれぞれに減速力を作用させるように接続されている。また、電制3と空制4は、列車制御装置1へ接続されている。本構成では、1つの電制3あるいは1つの空制4によって4つの車軸に連結された車輪51〜54が同時に制御される。
図3は、鉄道車両のブレーキ装置の他の具体的な構成例を示すブロック図で、図2と同様に1つの車両6内のブレーキシステムの構成を示している。同図では、各車輪51〜54に対して、それぞれ1つの電制31〜34と、1つの空制41〜44が接続された構成例である。各車輪51〜54は、互いに他の車輪とは独立したブレーキ制御装置で制御されるので、高精度なブレーキ制御が可能である。
これらのブレーキ制御装置において、滑走が発生したときの制御について、図4〜図7を用いて具体的に説明する。
図4は、本発明の一実施例による列車制御装置1における制動制御処理フロー図であり、周期的にタイマー割り込みで起動される処理である。
列車制御装置1は、ステップ401でブレーキノッチを検知すると、ステップ402及び403でそれぞれ電制3と空制4へノッチに応じた減速力指令B3及びB4を出力する。これらの減速力指令B3、B4の配分は、予め決められた比率によるが、この実施例においては、後述するように電制の比率を大きくしている。
ここで、ステップ404において滑走を検知すると、ステップ405で電制3への減速力指令B3をaだけ減少させる。空制4に対する指令はいじらないので、これまでの減速力指令B4を保持することとなる。
以上の処理をブレーキノッチにある間、繰り返し、ステップ406でブレーキノッチの終了を検知すると今回の処理を終了する。
図5は、本発明の一実施例による電気ブレーキ制御装置(電制)3における制動制御処理フロー図であり、周期的にタイマー割り込みで起動される処理である。
電制3では、ステップ501において、列車制御装置1から電制3への減速力指令B3の有無をチェックし、無ければ今回の処理を終了する。減速力指令B3が有れば、ステップ502で、この減速力指令B3に応じた減速力A3を出力する。ここで、ステップ503で、滑走を検知すると、ステップ504において電制3の減速力A3を予定の減少率で低下させる。この結果、ステップ505で滑走の消滅(再粘着)を検知すれば、ステップ506で予定時限td1をカウントし、ステップ507でその時限の経過を確認するまで、減速力の低下を継続する。ステップ507で、時限td1の経過を確認すると、ステップ508では、減速力を再増加させる。このときの目標減速力は、元の減速力指令B3ではなく、列車制御装置1からの、aだけ低減された新たな減速力指令である。
ステップ509では、列車制御装置1からの減速力指令B3の消滅を確認し、ステップ510にて今回の処理を終了する。
空気ブレーキ制御装置(空制)4については、この実施例の制動制御に関する限り、列車制御装置1から与えられた空制4の減速力指令B4の大きさに応じて、空制の減速力A4を出力すれば足りるので、その制御処理フローは省略する。
図6は、以上の本発明の第1の実施例による制動装置の制御結果の一例を示す動作タイムチャートである。この例では、前述したように、列車制御装置1からの電制3の減速力指令B3が、空制4への減速力指令B4より大きい場合について、しかも、電制3において滑走防止制御を実行する場合を例示している。
車輪51〜54のいずれかが滑走すると、滑走検知信号SSが発生する。滑走検知の仕方としては、各車輪51〜54の回転速度や駆動モータの電流の減少から判断する方法などが従来から採用されており、どの方法を使用しても良い。また、滑走検知は、電制3、空制4、あるいは車両制御装置1のどこで実施しても良い。
まず、時刻t1で滑走を検知すると、空制4はそのままとし、電制3は、車輪の滑走を防止するために電気ブレーキの減速力A3を予定の減少率で低下させる。滑走検知信号SSが消滅しても、所定の短時間td1だけ減速力A3の低下を継続させる。この時間td1が経過し、時刻t4になると、電気ブレーキの減速力A3を再び増加させる。このように、滑走を検知したとき、一方の減速力をそのまま維持させた状態で、他方の減速力を低下させ、滑走信号がなくなった後、他方の減速力を再び増加させる制御を、滑走防止制御と呼ぶこととする。
本実施例では、このほかに、滑走が発生すると、電制3への減速力指令B3をaだけステップ状に低下させ、それまでの減速力指令B3iから、その後の減速力指令を、B3i−aに低下させている。ここで、滑走を検知した時刻t1から、減速力指令B3をaだけ低下させるまでの時間td2は、列車制御装置1での処理時間による遅延を示している。電制3の減速力指令を低下させたことにより、電制3と空制4の総合減速力指令B0はaだけ低下し、B0i−aとなる。この状態で、更に時刻t5で滑走が発生すると、電制3では、再び滑走防止制御を実行し、電気減速力A3を時刻t7まで減少させる。このとき、列車制御装置1では、滑走検知信号SSからtd2遅れて、電制3への減速力指令B3を更にaだけ低減させ、以後の指令値を、B3i−2aとしている。この間にも、空制4には如何なる変更指令も与えておらず、空制4は、空制減速力指令B4を受けたまま、空制減速力A4を発生し続ける。
このように、滑走が発生すると、電制3において、滑走信号SSが発生する毎に、減速力指令B3を低減する滑走防止制御が行われるとともに、列車制御装置1では、滑走信号SSが発生する毎に、総合の減速力指令B0をステップ状に減少させている。この総合の減速力指令の減少も、空制4には作用させず、電制3のみに作用する。したがって、上記滑走防止制御により電制減速力A3を減少させた後、再び電制減速力を回復させるときの目標減速力は、滑走の度にaづつ低下する。
このように、本実施例では、まず、動輪51〜54に回転力を与えて移動体6を加速し、動輪に減速力を与えて移動体を減速させる車両駆動装置2を備えている。これらの動輪に、並列的に減速力を与える2つの独立した減速制御装置3,4を備え、動輪の滑走を検知する滑走検知装置を備えた移動体の制動装置を前提としている。ここで、動輪の滑走を検知したとき、一方の減速制御装置4への減速力指令B4を保持するとともに、他方の減速制御装置3への減速力指令B3を、滑走検知信号の発生毎に低減する手段(減速制御装置3内)を備えている。この結果、いずれか一方の減速力を保持したままで、他方の減速制御装置を用いて滑走防止制御が行われ、電気ブレーキを停止する必要はない。したがって、エネルギー効率の低下を抑制しつつ、速やかな再粘着を実現できる。
図7は、比較例としての従来の制動装置の制御動作タイムチャートである。図7において、時刻t1で滑走が発生すると、電気ブレーキを停止させる。そして、電制3が負担していた減速力も空制4に負担させて、空制4が滑走防止制御を繰り返していた。このとき、列車制御装置1からの総合減速力指令B0は、滑走の前後で同じであるため、長期間にわたって滑走が続き、減速力の変動による乗り心地の悪化が発生していた。
図8は、本発明の第2の実施例による制動装置の制御結果の一例を示す動作タイムチャートであり、空制4の負担割合が電制3より大きい場合である。この場合は、電制3の減速力指令B3は低下させずに、空制4で滑走防止制御を実行し、滑走毎に空制4の減速力を予定の減少率で低下させている。したがって、図8では、図6に対して、電制3と空制4の役割をそっくり入替えた形である。
なお、図6と図8では、減速力の負担割合が大きい方のブレーキ装置に滑走防止制御を実行させるとともに、その減速力指令をステップ状に低下させているが、滑走防止制御を実行する装置と、滑走毎に減速力指令をステップ状に低下する装置を分けても良い。つまり、電気ブレーキで滑走防止制御を実施し、滑走毎に空制4の減速力をaづつステップ状に低下させる制御でも良い。滑走防止制御で滑走を停止させるためには、減速力を急激に半分程度まで減少させる必要があることから、減速力の負担割合が大きい方の制御装置で滑走防止制御を実行することが望ましい。
図9は、本発明の第3の実施例による制動装置の制御結果の一例を示す動作タイムチャートであり、減速力の負担割合が少ない電制3側で、滑走防止制御と段階的減速力指令の低減とを実行する場合である。さらに、滑走防止制御により、減速力の負担割合が少ない電制3の減速力A3を零まで低下させても滑走が止まらない場合の制御例である。時刻t1で滑走が発生すると、電制3は滑走防止制御により、予定の減少率で電制減速力A3を減少させる。同時に、列車制御装置1は、電制3への減速力指令B3を、滑走検知の度にaづつ低下させる。ここで、滑走防止制御により、時刻t3で電制の減速力A3が零になると、電制3では、電制零出力検知信号EZを列車制御装置1へ出力する。列車制御装置1は、滑走検知信号SSと電制零出力検知信号EZを受け取ると、電制3への減速力指令B3を零とし、同時に、空制4に滑走防止制御を実行するように指令する。その後は、空制4が、滑走防止制御を実施する。さらに、滑走が発生する場合は、滑走毎に、列車制御装置1にて、空制4への減速力指令B4をaづつステップ状に低下させる。
以上の実施例においては、滑走防止制御については、その役目を担った電制3あるいは空制4で、独自の判断に基き滑走防止制御を実行している。
図10は、本発明の第4の実施例による制動装置の制御結果の一例を示す動作タイムチャートである。この例は、第1の実施例(図6)と同じく、列車制御装置1からの電制3の減速力指令B3が、空制4への減速力指令B4より大きく、電制3側で滑走防止制御を実行する場合につき、滑走防止制御を列車制御装置1で実行する制御例である。時刻t1で滑走が発生すると、電制3が滑走検知信号SSを列車制御装置1へ出力する。列車制御装置1は、処理遅延時間td2の後の時刻t2に、電制3への減速力指令B3をaだけ低下させて(B3i−a)とするとともに、滑走を防止するための滑走防止制御指令AS(信号猫ow”)を出力する。電気ブレーキ制御装置では、滑走防止制御指令ASに基づき減速力指令を予定の減少率で低下させる。次に、滑走検知信号SSの消滅後、td2の時間遅れで滑走防止制御指令ASが消滅(信号”High”)し、電制の減速力指令B3を再び増加させる。この増加時の目標とする最大減速力指令は(B3i−a)であり、電制の減速力は(A3−a)までしか復帰しない。これにより、再滑走の惧れを軽減している。
しかし、更に滑走が発生した場合は、列車制御装置1は、電制の減速力指令を更にaだけステップ状に低減して(B3i−2a)とするとともに、滑走防止制御指令ASを出力する。
以上の制御を、滑走が無くなるまで繰り返す。ここでは滑走検知を電気ブレーキ制御装置で実施するものとしたが、前述のように空制4あるいは列車制御装置1で実施しても良い。列車制御装置1で実施した場合は、処理時間td2を短くすることができる。
図11は、本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置の他の具体的な構成例を示すブロック図である。電気ブレーキ制御装置(電制)3と空気ブレーキ制御装置(空制)41,42で制御する車輪の制御単位が異なる構成例である。電制3は、二つの車輪51,52に接続され、1つの電制3で、2つの車輪のブレーキを制御する。一方、空制は、空制41車輪51に接続され、また空制42が車輪52に接続され、各空制は独立して各車輪のブレーキを制御する。
本構成では、ブレーキ時に電制3から車輪51と52に加わる減速力は同じになる。一方、空制は、車輪51と52を独立して制御できるので、ブレーキ時の減速力は車輪間で異なる値にすることもできる。これらの電制3と空制41,42は、それぞれ列車制御装置1へ接続され、制御情報のやり取りが行われる。なお、1つの空制が2つの車輪を同時に制御し、2つの電制が独立して2つの車輪を制御するように、電制と空制の制御単位の大きさが、逆であっても良い。
図12は、本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置の異なる具体的な構成例を示すブロック図であり、電制と空制の制御単位が異なる第2の構成例である。図では、一両内の構成を示している。電制3が四つの車輪51〜54に接続され、空制41,42がそれぞれ2つの車輪51,52及び53,54に接続されている。また、1つの電制3と2つの空制41,42は、列車制御装置1に接続され、ブレーキ制御が行われる。
図13は、本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置のさらに異なる具体的な構成例を示すブロック図であり、電制と空制の制御単位が異なる第3の構成例である。図では、一車両内のブレーキ制御装置が更に分割された構成の例である。電制31,32がそれぞれ2つづつの車輪51,52及び53,54に接続され、空制41〜44が、それぞれ1つの車輪51〜54に接続されている。
さらに、一般に、列車内の総ての車両にインバータが設置されることは少ない。したがって、電気ブレーキ制御装置は、限られた車両のみに存在する。
図14は、本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置のさらに異なる具体的な構成例を示すブロック図であり、一方の車両には電制と空制が設置され、他方の車両には空制のみが配置された構成例である。まず、一方の車両61には、電制3と空制41,42が設置されているが、他方の車両62には、空制43,44のみが配置されている。電制3は、4つの車輪51〜54のブレーキを同時に制御するが、空制41〜44は、それぞれが2つづつの車輪51,52、53,54、55,56及び57,58のブレーキを独立して制御する構成である。これらの電制3、空制41〜44はそれぞれ列車制御装置11,12へ接続されている。これまでの実施例では説明を省略したが、各車両61,62等の列車制御装置11,12等は、図14に示すように、車両間で相互に接続されている。
図11〜14のように、電制と空制の制御単位が異なるブレーキ制御装置において、本発明では次のようにブレーキ制御が行われる。
図15は、本発明の第5の実施例による制動装置の制御結果の一例を示す動作タイムチャートである。この例では、電制の減速力指令が、空制の減速力指令より大きい場合について、電制において滑走防止制御を実行する場合を例示している。滑走軸とは、1車両内で滑走が発生した軸(車輪)、非滑走軸とは滑走が発生していない軸(車輪)を示している。
滑走が発生すると、電制3は滑走防止制御を実行するとともに、滑走検知信号を列車制御装置へ送信する。列車制御装置は、滑走検知信号SSに従って、電制3への減速力指令を初期のB3iからaだけ低減して、(B3i−a)にする。電制3は、滑走が発生していない車軸にも接続されているので、滑走軸の減速力だけでなく、非滑走軸の減速力も低下する。そこで、非滑走軸では制御単位が小さい空制4群の減速力をaだけ増加させて、初期値のB4iから(B4i+a)にする。滑走軸の減速力をaだけ低減しても、再び滑走が発生したときは、電制3で滑走防止制御を実行するとともに、電制3への減速力指令を更にaだけステップ状に低減して(B3i−2a)にする。非滑走軸では、さらに、空制4群の減速力をaだけステップ状に増加して(B4i+2a)にする。このような制御を滑走が発生しなくなるまで継続する。
以上のように、滑走が発生したとき、一方のブレーキ装置で、滑走検知毎に予定の減少率で減速力を減少させる滑走防止制御を実行するとともに、滑走検知毎に、ブレーキ制御装置への減速力指令値をステップ状に低減する。さらに、非滑走軸では滑走軸での減速力の低減分に見合う減速力を他方のブレーキ制御装置で補うのである。
これにより、滑走による非滑走軸の減速力低減を防止することができる。また、電気ブレーキ制御装置を停止することなく、ブレーキ制御ができるので、滑走が発生したときでも電力回生を停止することなく、エネルギー効率を向上できる。
なお、本実施例は、図8〜10で述べた電制と空制の制御方式であっても同様に実行可能であることは明らかであり、それら方式での詳細な説明は省略する。
以上、本発明の各実施例の制御では、滑走が発生する毎に電気ブレーキ制御装置あるいは空制のうち、いずれか一方の装置の減速力を低減する。車両の車輪と線路間の摩擦係数は線路状況に応じて変化するとともに、速度にも依存する。そのため、減速力を低減した状態を固定すると、減速力を低下しすぎてしまうことになる。そこで、減速力を最適値に戻す制御が重要となる。この方法としては、速度に依存させて増加する方法、時間で再設定する方法、運転状況に応じて設定する方法、位置情報や天候情報で再設定する方法などがある。例えば、速度に応じた方法では、最初に滑走が発生した時の速度を基準とし、速度が任意の設定値に低下した場合、滑走軸の減速力を規定の減速力に戻し、再び滑走毎に減速力を低減する等の方法がある。時間で設定する方法も同様で、滑走発生時から設定した任意時間経過した時は、規定の減速力に戻す。運行状況に応じて制御する方法は、例えば、運転手が減速から加速に変えたときに、滑走軸の減速力を規定の減速力に戻す。
以上のように、減速力指令を初期化する制御を実行することにより、減速力を低下しすぎた状態を保ち続ける問題を防止できる。尚、制御量を初期化する条件としては、速度で実施する場合は、滑走発生時の速度から速度が10%程度変化したとき、時間制御の場合は数十秒の時間間隔で実施することが望ましい。
また、これまで説明してきた実施例において、滑走発生時に低減する減速力aは、指定減速力(電制と空制が負担している減速力)の5%〜10%程度に設定することがよい。
さらに、滑走検知の度にステップ状に低減した減速力指令は、連続的に低下させても同様の効果を奏することができる。
以上の実施例によれば、走行時に発生する滑走時のエネルギー利用効率の悪化を防止しつつ、速やかな再粘着を実現し、減速力の低下を防止することが可能となる。
これまでの実施例では、鉄道車両を例として説明してきたが、本発明は鉄道車両に限定されるものではない。例えば自動車に応用することも可能である。近年の自動車は、エンジンとインバータ制御されたモータで駆動するハイブリッド化が進んでいる。ハイブリッド自動車では、モータでブレーキをかけることで、ブレーキ時のエネルギーを電気エネルギーとして回収している。したがって、自動車のブレーキ装置も油圧式のブレーキとモータによる電気ブレーキが並列に接続された構成となる。モータ力は機構部品を通して4輪に直接配分されているが、油圧ブレーキ制御装置の減速力は、ブレーキ故障時の安全性を高める目的で、2系統の油圧ブレーキとなっている。各油圧式ブレーキ装置は、4輪の内の2輪を独立して制御する。このように、自動車のブレーキシステムも鉄道車両と同様、電気ブレーキ装置と油圧ブレーキ装置の両方で制御される構成となり、本実施例で説明してきた発明を問題なく適用することが可能である。
鉄道車両はもとより、今後の自動車のブレーキ装置は、機構の異なる二種類のブレーキ制御装置が並列に接続された構成となりつつある。このような、ブレーキ制御装置では、2つの制御装置が相互干渉しないブレーキ制御方法が必須である。特に、雨天時など滑走が発生しやすいときは、制御方法が複雑になる。
本発明を適用できる鉄道列車のブレーキシステム構成の概要図。 鉄道車両のブレーキ装置の具体的な構成例を示すブロック図。 鉄道車両のブレーキ装置の他の具体的な構成例を示すブロック図。 本発明の一実施例による列車制御装置1における制動制御処理フロー図。 本発明の一実施例による電気ブレーキ制御装置(電制)3における制動制御処理フロー図。 本発明の第1の実施例による制御結果の一例を示す動作タイムチャート。 比較例の制動装置の制御動作タイムチャート。 本発明の第2の実施例による制御結果の一例を示す動作タイムチャート。 本発明の第3の実施例による制御結果の一例を示す動作タイムチャート。 本発明の第4の実施例による制御結果の一例を示す動作タイムチャート。 本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置の制御単位の異なる第1の具体的な構成例を示すブロック図。 本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置の制御単位の異なる第2の具体的な構成例を示すブロック図。 本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置の制御単位の異なる第3の具体的な構成例を示すブロック図。 本発明を適用できる鉄道列車のブレーキ装置の制御単位の異なる第4の具体的な構成例を示すブロック図。 本発明の第5の実施例による制御結果の一例を示す動作タイムチャート。
符号の説明
1…列車制御装置、2…車両駆動装置、3…電気ブレーキ制御装置(電制)、4…空気ブレーキ制御装置(空制)、5…車輪(車軸)、6…車両、SS…滑走検知信号、B3…電気ブレーキ制御装置への減速力指令、B4…空気ブレーキ制御装置への減速力指令、B0…総合減速力指令、A3…電気ブレーキの減速力、A4…空気ブレーキの減速力。

Claims (16)

  1. 動輪に回転力を与えて移動体を加速し、前記動輪に減速力を与えて前記移動体を減速させる車両駆動装置と、前記動輪に並列的に減速力を与える2つの独立した減速制御装置と、前記動輪の滑走を検知する滑走検知装置を備えた移動体の制動装置において、前記動輪の滑走を検知したとき、一方の前記減速制御装置への減速力指令を保持するとともに、他方の前記減速制御装置への減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  2. 2以上の動輪に回転力を与えて移動体を加速し、前記動輪に減速力を与えて前記移動体を減速させる車両駆動装置と、前記各動輪にそれぞれ減速力を与える制御単位の小さな2以上の独立した減速制御装置と、これよりも多数の動輪に同一の減速力を与える制御単位の大きな減速制御装置と、前記動輪の滑走を検知する滑走検知装置を備えた移動体の制動装置において、前記動輪の滑走を検知したとき、制御単位の異なる前記2つの減速制御装置の一方への減速力指令を保持するとともに、他方の前記減速制御装置への減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  3. 請求項1又は2において、前記減速制御装置の前記一方は空気ブレーキ制御装置であり、前記他方は電気ブレーキ制御装置であることを特徴とする移動体の制動装置。
  4. 請求項1又は2において、前記減速制御装置の前記一方は電気ブレーキ制御装置であり、前記他方は空気ブレーキ制御装置であることを特徴とする移動体の制動装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する手段は、予定の減少率で低下させる手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する手段は、滑走検知信号の発生に応動して、予定の減少率で前記減速力指令を低下させるとともに、前記滑走検知信号の消滅後まで前記低下を継続させる手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、2つの独立した前記減速制御装置への総合の減速力指令を与えるとともに、この総合の減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  8. 請求項7において、滑走消滅後に低減された後の前記総合の減速力指令に基いて低減された目標に向って、他方の前記減速制御装置の減速力指令を再増加させる手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  9. 請求項1〜8のいずれかにおいて、一方の前記減速制御装置は比較的小さい減速力を受け持つブレーキ制御装置であり、他方の前記減速制御装置は比較的大きな減速力を受け持つブレーキ制御装置であることを特徴とする移動体の制動装置。
  10. 請求項1〜9のいずれかにおいて、滑走毎に他方の前記減速制御装置への減速力指令を低減する手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  11. 請求項10において、他方の前記減速制御装置は、一方の前記減速制御装置に比較して、大きな減速力を負担する減速制御装置であることを特徴とする移動体の制動装置。
  12. 請求項1〜11のいずれかにおいて、減速力の負担割合が大きい他方の前記減速制御装置の減速力指令を、滑走を検知する度に予定の減少率で減少させる手段と、減速力の負担割合が少ない一方の前記減速制御装置の減速力指令を、滑走毎に増大する手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  13. 請求項2において、滑走を検知する毎に、前記制御単位の大きい減速制御装置からの減速力指令を低減し、滑走が発生していない車軸につながる一方の前記減速制御装置の減速力指令を、滑走検知毎に増加させる手段を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
  14. 請求項13において、制御単位が大きい制御装置での減速力の低減量と、制御単位が小さい制御装置での減速力の増加量をほぼ同等としたことを特徴とする移動体の制動装置。
  15. 請求項2〜14のいずれかにおいて、制御単位が大きい制御装置は、電気的な力で制御されるブレーキ制御装置であり、制御単位の小さい制御装置は、空気あるいは油の圧力で制御されるブレーキ制御装置であることを特徴とする移動体の制動装置。
  16. 請求項1〜15のいずれかにおいて、各減速制御装置にそれぞれ異なる減速力指令を与えるとともに、滑走検知時に、一方の前記減速制御装置への減速力指令を保持するとともに、他方の前記減速制御装置への減速力指令を、滑走を検知する毎に低減する統括制御装置を備えたことを特徴とする移動体の制動装置。
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