JP2006013976A - 軟磁性体及びそれを用いたアンテナ装置 - Google Patents

Abstract

【課題】 非接触ＩＣカード、リーダライタ等を用いた無線通信システムにおいて、アンテナ背後に軟磁性体を配置することで金属等の良導体による影響を軽減してアンテナ特性の向上、通信距離の向上を図る。
【解決手段】 通信対象側に電磁波を放射するアンテナを設けたアンテナ基板５と、そのアンテナを制御する回路基板１０とを少なくとも有するアンテナ装置であって、軟磁性体２０が、電磁波の放射方向の反対側における前記アンテナと回路基板１０との間に配置されている。前記軟磁性体２０は、ＭＨｚ帯の通信周波数における複素比透磁率と厚さの関数ｆの値が２００以上である。
【選択図】図１

Description

本発明は、ＲＦＩＤタグ、非接触ＩＣカード等を用いた無線通信システムにおいて、金属等の良導体の影響を軽減するためにアンテナ背後に配置される軟磁性体及び該軟磁性体を用いたアンテナ装置に関する。

近年、ＲＦＩＤ技術を用いた無線通信システムが注目されている。この通信システムは一般に、各種データを記憶可能なデータキャリアと、このデータキャリアに対して非接触で情報の読み書き（リード／ライト）を行なうリーダライタとで構成される。データキャリアは、その形状や大きさ等に応じてＲＦＩＤタグ（無線ＩＣタグ）、非接触ＩＣカード等と呼ばれる（以下では、総称して非接触ＩＣカードと呼ぶ）。この非接触ＩＣカードに利用される無線周波数帯としては、１３５ｋＨｚ以下の帯域、１３.５６ＭＨｚ帯、及び２.４５ＧＨｚ帯等がある。この非接触ＩＣカードは、使用者にとって取り扱いが容易であること等から、最近では交通機関の自動改札機等、各種入退出管理に利用されている。またその他にも、電子マネーや物品管理等への応用も検討されている。

これら、非接触ＩＣカード、リーダライタは、一般にループ状のアンテナが内蔵されており、リーダライタのアンテナが発する電磁波を介して、電磁誘導により非接触ＩＣカードに電力が供給され、データのリード／ライトが行なわれる。

これらアンテナの周囲が金属等良導体により構成されている場合（例えば、非接触ＩＣカードが金属製の物品に装着されている場合、リーダライタの回路基板がアンテナのすぐ近傍にある場合）、通信用電力の一部が良導体表面に発生する渦電流等の影響で損失するため、通信距離が短くなるという問題があった。

この対策として、下記特許文献１では、数１００ｋＨｚ以下で通信が行なわれるシステムにおいて、比透磁率の高い軟磁性体を、リーダライタの背面に装着することで、リーダライタのアンテナ特性を改善することが提案されている。

また、下記特許文献２では、非接触ＩＣカードにおいて、アンテナと物品との間に軟磁性部材を挿入することにより、非接触ＩＣカードのアンテナ特性を改善することが提案されている。

特開平９−２８４０３８号公報 特開２００２−２９０１３１号公報

上記特許文献１の従来技術では、数１００ｋＨｚ以下の低周波帯域しか考慮しておらず、挿入する軟磁性体も実効比透磁率が１００以上のものとしている。これは、最近使用されているＭＨｚ帯の通信周波数、例えば１３.５６ＭＨｚ帯等の高周波に対応したものとはなっていない。さらに、後で詳細に述べるが、本発明者等の研究の成果により、アンテナ特性は、比透磁率の実部の上昇に伴い対数的に上昇していくこと、並びに、挿入する軟磁性体は比透磁率の実部だけでなく、虚部にも大きく依存することが分かった。これにより、挿入する軟磁性体に用いる軟磁性材料は複素比透磁率の実部、虚部両方の関係が重要であることが分かった。特に、実際の使用を考えると、挿入する軟磁性体は取り扱いの容易さから、樹脂に軟磁性材料の粉末、フレーク等を混合、分散した複合磁性体が使用される場合が多い。複合磁性体を使用した場合、特許文献１に記載の数１００ｋＨｚ以下の通信では複素比透磁率の虚部は問題を生じないが、１３.５６ＭＨｚ帯の通信で使用しようとした場合、複合磁性体はＭＨｚ帯で透磁率の虚部が大きくなるため、考慮が必要である。

また、特許文献２の従来技術では、透磁率と厚さの積が大きいのが好ましいと記載されているが、特許文献１と同様に、透磁率の虚部に関する記載が無いため、非接触ＩＣカードに使用される軟磁性部材の選択法の指針を正しく表現していない。

本発明は、上記の点に鑑み、非接触ＩＣカード、リーダライタ等を用いた無線通信システムにおいて、アンテナ背後に配置されることで金属等の良導体による影響を軽減してアンテナ特性の向上、ひいては通信距離の向上を図ることのできるアンテナ装置用軟磁性体を提供することを目的とする。

また、本発明は、非接触ＩＣカード、リーダライタ等を用いた無線通信システムにおいて、アンテナ背後に前記軟磁性体を配置することで金属等の良導体による影響を軽減し、アンテナ特性の向上、ひいては通信距離の向上が可能なアンテナ装置を提供することをもう１つの目的とする。

本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。

上記目的を達成するために、本発明に係るアンテナ装置用軟磁性体は、通信対象側に電磁波を放射するか又は通信対象側からの電磁波を受信するアンテナの背後に配置されるものであって、
ＭＨｚ帯の通信周波数における複素比透磁率と厚さの関数ｆを下記式（１）で表したとき、
前記関数ｆの値が２００以上であることを特徴としている。

また、前記アンテナ装置用軟磁性体において、前記関数ｆの値を３１６以上に設定することがいっそう好ましい。

また、前記アンテナ装置用軟磁性体において、前記通信周波数における複素比透磁率の実部は３００以下でもよい。

また、前記アンテナ装置用軟磁性体において、軟磁性体の厚さは０.５ｍｍ以下で、前記関数ｆの条件を満たすのがいっそう好ましい。

前記アンテナがループ状である場合、前記アンテナ装置用軟磁性体は前記アンテナの内周部に対応した穴を設けて中空形状としてもよい。

前記アンテナ装置用軟磁性体は、アモルファス合金、パーマロイ、電磁鋼、ケイ素鋼、センダスト合金、Ｆｅ−Ａｌ合金又は軟磁性フェライトのいずれかの軟磁性材料を含むことができる。

前記アンテナ装置用軟磁性体が、軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークと結合材との複合材であってもよいし、あるいは、軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークを含む塗料の塗膜であってもよい。さらに、軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークの圧粉体であってもよい。

本発明に係るアンテナ装置は、通信対象側に電磁波を放射するアンテナと、該アンテナを制御する回路基板とを少なくとも有するものにおいて、
前記アンテナ装置用軟磁性体が、電磁波の放射方向の反対側における前記アンテナと回路基板との間に配置されていることを特徴としている。

また、本発明に係るもう１つのアンテナ装置は、固有の情報が記憶されるＩＣチップと、該ＩＣチップと電気的に接続されたアンテナとを少なくとも有するものにおいて、
前記アンテナ装置用軟磁性体が、電磁波の放射方向の反対側における前記アンテナと前記ＩＣチップが取り付けられる物品との間に配置されていることを特徴としている。

前記アンテナ装置において、前記アンテナが前記軟磁性体の表面に直接形成されていてもよいし、又は前記アンテナと前記軟磁性体が互いに接することなく間隔を空けて配置されていてもよい。

前記軟磁性体が装着された状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されているとよい。

また、前記アンテナ装置が回路基板を有する場合、前記軟磁性体と前記回路基板が配置された状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されているとよい。

また、前記アンテナ装置が物品に取り付けるべきＩＣチップを有する場合、前記軟磁性体及び前記ＩＣチップが物品に取り付けられた状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されているとよい。

前記軟磁性体の前記アンテナ側の反対側の面に、さらに良導体が配置され、前記軟磁性体及び前記良導体が配置された状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されていてもよい。

前記良導体の前記軟磁性体側の反対側の面に、さらに絶縁層が配置されていてもよい。

本発明に係るアンテナ装置用軟磁性体によれば、ＭＨｚ帯（とくに数ＭＨｚ〜数１０ＭＨｚ）での通信周波数における複素比透磁率と厚さの関数ｆを前述した式（１）で表したとき、前記関数ｆの値が２００以上であるため、通信対象側に電磁波を放射するか又は通信対象側からの電磁波を受信するアンテナの背後（通信対象側の反対側）に当該アンテナ装置用軟磁性体が配置されたときに、金属等の良導体による影響を軽減できる。つまり、良導体に発生する渦電流損失を減じ、アンテナ特性の向上、通信距離の向上が可能となる。

また、本発明に係るアンテナ装置によれば、ＭＨｚ帯（とくに数ＭＨｚ〜数１０ＭＨｚ）での通信周波数における複素比透磁率と厚さの関数ｆを前述した式（１）で表したとき、前記関数ｆの値が２００以上である前記軟磁性体をアンテナの背後（通信対象側の反対側）に配置したので、金属等の良導体による影響を軽減でき、つまり、良導体に発生する渦電流損失を減じることが可能である。この結果、アンテナ特性の向上、通信距離の向上が可能となり、従来よりも優れた通信環境を実現できる。

以下、本発明を実施するための最良の形態として、軟磁性体及びそれを用いたアンテナ装置の実施の形態を図面に従って説明する。

図１は本発明の実施の形態１であって、リーダライタ１を構成する場合であり、アンテナ装置は、アンテナ基板５、回路基板１０、及び軟磁性体２０を有している。

アンテナ基板５は絶縁基板にループ状アンテナとなる良導体パターンを形成したものであり、ループ状アンテナは通信対象側（非接触ＩＣカード）に電磁波を放射し、また通信対象側からの電磁波を受信する機能を有する。

回路基板１０はアンテナ基板５に設けられたアンテナを制御するものであり、アンテナに高周波送信信号を送出する送信機及びアンテナで受信された高周波受信信号を受ける受信機を有する。この回路基板１０は大部分が金属であると考えることができ、アンテナ基板５の背後、つまり電磁波放射方向の反対側（通信対象側の反対側）に配置されている。

アンテナ装置用軟磁性体２０は一様な厚みの薄板状であり、アンテナ基板５の電磁波放射方向の反対側において、アンテナ基板５と回路基板１０の間に挿入、配置されている。ここで、通信対象との間の通信周波数がＭＨｚ帯、とくに１３.５６ＭＨｚを含む数ＭＨｚ〜数１０ＭＨｚである場合、軟磁性体２０の複素比透磁率の実部のみならず虚部の値にも考慮を払わなければならない。

本発明者等は、アンテナ装置に挿入されるアンテナ装置用軟磁性体の効果について、シミュレーションにより検討を行なっており、その結果を以下に詳述する。

図１中に記入した寸法、形状のアンテナ装置をシミュレーションモデル（解析モデル）とした。すなわち、
解析空間：２８０ｍｍ×２６０ｍｍ×２００ｍｍ
入力電力：１Ｗ
アンテナ基板：長辺５５ｍｍ×短辺３３ｍｍ×厚さ０.５ｍｍ
軟磁性体：長辺５５ｍｍ×短辺３３ｍｍ×厚さ０.２５ｍｍ〜１ｍｍ
回路基板：長辺８０ｍｍ×短辺５５ｍｍ×厚さ１ｍｍ
このシミュレーションモデルは１３.５６ＭＨｚで通信を行なう場合のアンテナ装置を想定しており、アンテナ基板５、回路基板１０のサイズ、構成は一般的なリーダライタの形状を使用している。また、本シミュレーションモデルにおいて、アンテナ装置は、背面に軟磁性体２０及び回路基板１０が配置されている状態において最適な周波数特性となるように（１３.５６ＭＨｚで最適な通信ができるように）、ループアンテナのコイルパターン（巻き数、コイル径等）及びこれと共振回路を構成するコンデンサ（アンテナ基板又は回路基板に設けられる）を調整（設定）してある。以下のアンテナ装置の特性比較に関しては、アンテナ装置中心から電磁波の放射方向１００ｍｍ上空の磁界強度で比較を行なっている。

(a) 軟磁性体における複素比透磁率の実部についての解析結果
前記軟磁性体２０の厚さを０.５ｍｍ、その複素比透磁率の虚部を０とし、実部を１〜５００まで変化させた場合の、アンテナ装置から１００ｍｍ上空での磁界強度の変化を図２に示す。図２より、軟磁性体の複素比透磁率の実部が増えるに伴い、アンテナ装置の特性は上がり、その特性の上がり方は対数的であることが確認できる。これより、ある程度以上は透磁率を増加させても効果の上昇は低いことが確認された。使用する磁性体の価格等を考えた場合、複素比透磁率の実部としては、３００以下までのもので十分と言える。

(b) 軟磁性体の厚さと複素比透磁率の虚部についての解析結果
前記軟磁性体２０の厚さｔを０.２５ｍｍ、０.５ｍｍ、１ｍｍとし、その複素比透磁率の実部（μｒ’）を２０、４０、６０とした場合における、虚部を変化させた場合の磁界強度を図３に示す。ここで、図３の横軸はtanδ（虚部／実部）で示している。図３より、虚部が０の場合、アンテナ装置は、軟磁性体の実部と厚さの積に比例して特性が上がることが確認された。しかし、軟磁性体における複素比透磁率の虚部の増加に対する特性の落ち込み具合は、軟磁性体が厚い程、実部が小さい程顕著に表れることが確認された。すなわち、軟磁性体を効率的に使用するためには、複素比透磁率の実部、虚部、厚さのバランスを考えることが必要であるといえる。

(c) アンテナ装置の特性を分かりやすくするため、アンテナ装置上空１００ｍｍでの磁界強度を、背面に前記軟磁性体２０が無い状態での磁界強度に対する比（以下磁界強度比［％］）で表したところ、上記関係から、軟磁性体の厚さ、複素透磁率の実部と虚部に対する磁界強度比ｆの関係を近似式で表すと下記式（１）のようになることが確認された。
ここで、上記結果と式（１）から求められる磁界強度比ｆの相関係数は０.９９と高い相関があることを確認している。

この式（１）を用いて、複素透磁率の実部を縦軸に、tanδを横軸にとった磁界強度比ｆの分布図を軟磁性体の厚さ毎に図４〜図６に示す。図４は軟磁性体の厚さｔ＝０.２５ｍｍ、図５は厚さｔ＝０.５ｍｍ、図６は厚さｔ＝１.０ｍｍの場合をそれぞれ示す。

実際の使用を考えた場合、１００ｍｍ上空における磁界強度比が高ければ高い程良いが、実用上２００％以上（軟磁性体無しに比べ６ｄＢ増加）あると軟磁性体装着によるメリットがあると言える。また、３１６％以上（軟磁性体無しに比べ１０ｄＢ増加）であればさらに良好な通信が可能となるため、より実用的である。すなわち、式（１）より導かれる値ｆが２００以上になる複素透磁率の実部、虚部、厚さを有した軟磁性体を使用することが望ましく、さらに式（１）の値ｆが３１６以上になるように設定することがいっそう望ましいことが判る。

また、実際の使用を考えた場合、アンテナ装置の薄型化の観点から、軟磁性体の厚さは０.５ｍｍ以下で、上記関数ｆの値が上記条件を満たすのがいっそう望ましい。

この実施の形態１によれば、次の通りの効果を得ることができる。

（１） 通信対象（例えば、非接触ＩＣカード）側に電磁波を放射し、また通信対象側からの電磁波を受信するアンテナを形成したアンテナ基板５と、そのアンテナを制御する回路基板１０との間に、通信周波数帯（ＭＨｚ帯、とくに１３.５６ＭＨｚを含む数ＭＨｚ〜数１０ＭＨｚ）において上記式（１）の磁界強度比ｆの値が２００以上となる軟磁性体２０が配置されているため、金属面を含む回路基板１０に電磁波の放射に伴って渦電流等が発生する現象を軽減することが可能である。このため、通信用電力の損失を減じて、アンテナ感度及び通信距離の向上を図ることができる。

（２） 上記式（１）の磁界強度比ｆの値を３１６以上に設定できれば、よりいっそうのアンテナ感度及び通信距離の向上を図ることができる。

（３） 前記軟磁性体２０は、上記式（１）の磁界強度比ｆの値が２００以上（より好ましくは３１６以上）を満足させることができれば、使用する軟磁性材料に制約はなく、例えば、アモルファス合金、パーマロイ、電磁鋼、ケイ素鋼、センダスト合金、Ｆｅ−Ａｌ合金又は軟磁性フェライトの軟磁性材料自体で形成されているものや、それらの軟磁性材料を含んだ複合磁性体であってもよい。複合磁性体の例としては、軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークと結合材（プラスチック又はゴム）との複合材や、軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークを含む塗料の塗膜で構成する場合が挙げられる。さらに、軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークの圧粉体を前記軟磁性体２０として用いることもできる。

図７は本発明の実施の形態２であって、非接触ＩＣカード２を構成する場合であり、アンテナ装置は、アンテナ基板５、ＩＣチップ３０、及び軟磁性体２０を有している。そして、アンテナ装置は識別すべき物品４０に装着される。

アンテナ基板５は絶縁基板にループ状アンテナとなる良導体パターンを形成したものであり、ループ状アンテナは通信対象側（リーダライタ）からの電磁波を受信し、また通信対象側に電磁波を放射する機能を有する。

ＩＣチップ３０はアンテナ装置が取り付けられる物品４０毎に固有の情報が記憶されるものであり、ＩＣチップ３０と前記アンテナとは電気的に接続されている。

なお、その他の構成は前述した実施の形態１と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付して説明を省略する。

この実施の形態２の非接触ＩＣカード２を構成した場合にも、アンテナ基板５の電磁波放射方向の反対側において、アンテナ基板５と物品４０の間に挿入、配置する軟磁性体２０として、上記式（１）の磁界強度比ｆの値が２００以上（より好ましくは３１６以上）となるものを用いることで、前述の実施の形態１と同様の効果を得ることができる。つまり、物品４０が金属等の良導体である場合であっても、前記軟磁性体２０がアンテナ基板５と物品４０間に介在することになり、良導体である物品４０に電磁波の放射に伴って渦電流等が発生する現象を軽減することが可能であり、アンテナ感度及び通信距離の向上を図ることができる。

前記物品４０が絶縁体であれば、アンテナ基板５に設けられたループ状アンテナとコンデンサとからなる共振回路の周波数特性に物品４０の有無が影響を及ぼすことが少ないから、軟磁性体２０が装着された状態で所定の周波数特性値を得るように（具体的にはループ状アンテナとコンデンサとからなる共振回路の共振周波数がリーダライタ側の送信周波数に一致するように）、前記アンテナのコイルパターン（巻き数、コイル径等）及びコンデンサを調整（設定）すればよい。

また、前記物品４０が金属等の良導体であれば、アンテナ基板５に設けられたループ状アンテナとコンデンサとからなる共振回路の周波数特性に物品４０の有無が影響を及ぼすことがあるから、非接触ＩＣカード２が物品４０に装着された状態、つまり軟磁性体２０及びＩＣチップ３０が物品４０に取り付けられた状態で所定の周波数特性値を得るように（具体的にはループ状アンテナとコンデンサとからなる共振回路の共振周波数がリーダライタ側の送信周波数に一致するように）、前記アンテナのコイルパターン及びコンデンサを設定すればよい。

図８は本発明の実施の形態３であって、リーダライタや非接触ＩＣカードのアンテナ装置において、ループ状アンテナ５ａのコイルパターンが設けられたアンテナ基板５の電磁波放射方向の反対側に、ループ状アンテナ５ａの内周部に対応した穴２１を設けて中空形状とした軟磁性体２０を配置している。

なお、その他の構成は前述した実施の形態１又は２と同様であり、回路基板又はＩＣチップの図示は省略してある。

この実施の形態３の場合、ループ状アンテナ５ａのコイルパターンの幅よりも軟磁性体２０の幅を広くすることで、前述した式（１）が適用できる。そして、前述した実施の形態１又は２の作用効果に加えて、軟磁性体２０が中空形状であるため、材料費の削減及び軽量化を図ることができる。

図９は本発明の実施の形態４であって、リーダライタや非接触ＩＣカードのアンテナ装置において、アンテナが設けられたアンテナ基板５の電磁波放射方向の反対側に、軟磁性体２０を配置し、さらにその背後に金属等の良導体５０を配置した構成である。

なお、その他の構成は前述した実施の形態１又は２と同様であり、回路基板又はＩＣチップの図示は省略してある。

この実施の形態４の場合、リーダライタの回路基板や、ＩＣチップを装着すべき物品が良導体であっても、軟磁性体２０のアンテナ側の反対側の面に予め良導体５０を設けておくことで、回路基板や物品の影響を殆どなくすことができる。従って、アンテナ基板５、軟磁性体２０、及び良導体５０が配置された状態で所定の周波数特性値を得るように（具体的にはループ状アンテナとコンデンサとからなる共振回路の共振周波数が通信対象側の送信周波数に一致するように）、前記アンテナのコイルパターン及びコンデンサを設定すればよい。

図１０は本発明の実施の形態５であって、リーダライタや非接触ＩＣカードのアンテナ装置において、アンテナが設けられたアンテナ基板５の電磁波放射方向の反対側に、軟磁性体２０を配置し、さらにその背後に金属等の良導体５０を配置し、また、良導体５０の表面（軟磁性体側の反対側）に絶縁層５１が設けられている。

なお、その他の構成は前述した実施の形態１又は２と同様であり、回路基板又はＩＣチップの図示は省略してある。

この実施の形態５の場合、前述の実施の形態４の作用効果に加えて、良導体５０の表面を絶縁層５１で覆うことにより、良導体５０が直接回路基板や物品に接触して短絡状態となること等を防止することができる。

上記各実施の形態では、アンテナ基板５にループ状アンテナが設けられていて、アンテナと軟磁性体２０とが互いに接することなく、所定間隔を設けてある場合を例示したが、軟磁性体２０が複合磁性体であって表面の絶縁性が比較的高い場合には、アンテナ基板を省略して軟磁性体２０の表面に直接アンテナとなるコイルパターンを形成してもよい。

以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

本発明に係るアンテナ装置の実施の形態１を示す構成図である。 図１に記入した寸法、形状の構成をシミュレーションモデルとした場合の、複素透磁率の実部と１００ｍｍ上空での磁界強度［Ａ／ｍ］との関係を示すグラフである。 軟磁性体の厚さｔを０.２５ｍｍ、０.５ｍｍ、１ｍｍとし、その複素比透磁率の実部（μｒ’）を２０、４０、６０とした場合における、虚部を変化させた場合の磁界強度を示すグラフである。 軟磁性体の厚さｔを０.２５ｍｍとしたとき、前記式（１）の磁界強度比ｆの値が２００以上及び３１６以上となる領域を示すグラフである。 軟磁性体の厚さｔを０.５ｍｍとしたとき、前記式（１）の磁界強度比ｆの値が２００以上及び３１６以上となる領域を示すグラフである。 軟磁性体の厚さｔを１.０ｍｍとしたとき、前記式（１）の磁界強度比ｆの値が２００以上及び３１６以上となる領域を示すグラフである。 本発明の実施の形態２を示す構成図である。 本発明の実施の形態３を示す構成図である。 本発明の実施の形態４を示す構成図である。 本発明の実施の形態５を示す構成図である。

符号の説明

１ リーダライタ
２ 非接触ＩＣカード
５ アンテナ基板
５ａ ループ状アンテナ
１０ 回路基板
２０ 軟磁性体
２１ 穴
３０ ＩＣチップ
４０ 物品
５０ 良導体
５１ 絶縁層

Claims (18)

1. 通信対象側に電磁波を放射するか又は通信対象側からの電磁波を受信するアンテナの背後に配置されるアンテナ装置用軟磁性体であって、
   ＭＨｚ帯の通信周波数における複素比透磁率と厚さの関数ｆを下記式（１）で表したとき、
   前記関数ｆの値が２００以上であることを特徴とするアンテナ装置用軟磁性体。
2. 前記関数ｆの値が３１６以上である請求項１記載のアンテナ装置用軟磁性体。
3. 前記通信周波数における複素比透磁率の実部が３００以下である請求項１又は２記載のアンテナ装置用軟磁性体。
4. 厚さが０.５ｍｍ以下である請求項１，２又は３記載のアンテナ装置用軟磁性体。
5. 前記アンテナがループ状であって、前記アンテナの内周部に対応した穴を設けて中空形状とした請求項１，２，３又は４記載のアンテナ装置用軟磁性体。
6. アモルファス合金、パーマロイ、電磁鋼、ケイ素鋼、センダスト合金、Ｆｅ−Ａｌ合金又は軟磁性フェライトのいずれかの軟磁性材料を含む請求項１，２，３，４又は５記載のアンテナ装置用軟磁性体。
7. 軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークと結合材との複合材である請求項１，２，３，４，５又は６記載のアンテナ装置用軟磁性体。
8. 軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークを含む塗料の塗膜である請求項１，２，３，４，５又は６記載のアンテナ装置用軟磁性体。
9. 軟磁性金属又は軟磁性フェライトの粉体若しくはフレークの圧粉体である請求項１，２，３，４，５又は６記載のアンテナ装置用軟磁性体。
10. 通信対象側に電磁波を放射するアンテナと、該アンテナを制御する回路基板とを少なくとも有するアンテナ装置において、
    請求項１，２，３，４，５，６，７，８又は９記載の軟磁性体が、電磁波の放射方向の反対側における前記アンテナと回路基板との間に配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
11. 固有の情報が記憶されるＩＣチップと、該ＩＣチップと電気的に接続されたアンテナとを少なくとも有するアンテナ装置において、
    請求項１，２，３，４，５，６，７，８又は９記載の軟磁性体が、電磁波の放射方向の反対側における前記アンテナと前記ＩＣチップが取り付けられる物品との間に配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
12. 前記アンテナが前記軟磁性体の表面に直接形成されている請求項１０又は１１記載のアンテナ装置。
13. 前記アンテナと前記軟磁性体が互いに接することなく間隔を空けて配置されている請求項１０又は１１記載のアンテナ装置。
14. 前記軟磁性体が装着された状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されている請求項１０，１１，１２又は１３記載のアンテナ装置。
15. 前記軟磁性体と前記回路基板が配置された状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されている請求項１０記載のアンテナ装置。
16. 前記軟磁性体と前記ＩＣチップが前記物品に取り付けられた状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されている請求項１１記載のアンテナ装置。
17. 前記軟磁性体の前記アンテナ側の反対側の面に、さらに良導体が配置され、前記軟磁性体及び前記良導体が配置された状態で所定の周波数特性値を得るように、前記アンテナのパターン及びコンデンサが設定されている請求項１０，１１，１２又は１３記載のアンテナ装置。
18. 前記良導体の前記軟磁性体側の反対側の面に、さらに絶縁層が配置されている請求項１７記載のアンテナ装置。