JP2006012694A - 固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超少量触媒金属担持電極と高分子電解質膜とを重ねた積層体を金属板で挟んだのちに加圧するという従来の接合方法では、積層体に圧力および熱を均一に加えることができなかった。このため、高分子電解質膜と電極とが均一に接合されず、電極の電流分布に偏りが生じ、燃料電池の出力が低下するという問題があった。
【解決手段】炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に触媒金属が担持された燃料電池用電極を高分子電解質膜に接合する固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法において、前記高分子電解質膜と前記燃料電池用電極と多孔度が30%以上60%以下の柔軟性黒鉛シートを順に積層し、この積層体の積層方向に加圧する工程を経ることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電解質として高分子電解質を用いた固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法に関するものである。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、エネルギー変換効率が高いことおよび環境負荷が低いことによって、電気自動車用または家庭用コージェネレーションシステム用電源として最も有力な候補である。そのPEFCに用いられる高分子電解質膜/電極接合体は、アノード、カソードおよびそれらの電極を隔てる高分子電解質膜で構成される。高分子電解質膜/電極接合体は、電極と高分子電解質膜とを加熱圧接で接合することによって製造される。この高分子電解質膜/電極接合体を備える燃料電池は、たとえば、アノ−ドには燃料として水素、カソ−ドには酸化剤として酸素を供給することによって、電力を発生させることができる。
燃料電池用電極には、たとえば特許文献1や特許文献2で開示されている、触媒金属が炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に担持されたものがある。この電極は、超少量触媒金属担持電極といわれており、つぎの手順で作製される。
最初に、炭素質材料と高分子電解質の溶液とを混合する。その混合物を電極基材に塗布したあとに乾燥することによって、白金未担持電極を形成する。つぎに、この白金未担持電極を触媒金属の陽イオンを含んだ溶液に浸漬することによって、その電極に含まれる高分子電解質のプロトン伝導経路に陽イオンを吸着させる。最後に、その陽イオンを化学的に還元することによって、触媒金属が陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素質材料表面との接面に担持される。
この超少量触媒金属担持電極と高分子電解質膜とを積層し、加熱・加圧して接合した高分子電解質膜/電極接合体として、固体高分子形燃料電池に使用されていた。
特開2000−12041号公報 特開2001−167770号公報
高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極との接合状態は、圧力および熱に著しく影響される。このことは、超少量触媒金属担持電極が、触媒金属の陽イオンの吸着およびそのイオンの化学的な還元という特殊な作製方法を経て作製されるため、超少量触媒金属担持電極に含まれる陽イオン交換樹脂が、圧力や熱によって硬化したことに起因すると推察される。
さらに、高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極とが均一に接合されない場合には、その電極の電流分布に偏りが生じるので、燃料電池の出力が低下した。つまり、その接合状態は超少量触媒金属担持電極を備えたPEFCの出力に大きく影響した。これは、超少量触媒金属担持電極では、触媒金属が炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に担持されているという、特殊な構造を形成していることに起因するものと推察される。
従来の接合方法では、超少量触媒金属担持電極と高分子電解質膜とを重ねた積層体を金属板で挟んだのちに加圧していたので、その積層体に圧力および熱を均一に加えることができなかった。このために、高分子電解質膜と電極とが均一に接合されず、その結果、電極の電流分布に偏りが生じるので、燃料電池の出力が低下するという問題があった。
本発明の目的は、超少量触媒金属担持電極と高分子電解質膜とを均一に接合することにより、得られた高分子電解質膜/超少量触媒金属担持電極接合体を用いた固体高分子形燃料電池の出力を向上させることにある。
請求項1の発明は、炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に触媒金属が担持された燃料電池用電極を高分子電解質膜に接合する固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法において、前記高分子電解質膜と前記燃料電池用電極と多孔度が30%以上60%以下の柔軟性黒鉛シートを順に積層し、この積層体の積層方向に加圧する工程を経ることを特徴とする。
請求項2の発明は、上記固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法において、積層体に加える圧力が20kg/cm以上250kg/cm以下であることを特徴とする。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法では、高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極と多孔度が30%以上60%以下の柔軟性黒鉛シートを順に積層し、この積層体の積層方向に加圧することによって、高分子電解質膜/超少量触媒金属担持電極に加わる圧力および熱の分布が均一になり、高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極とを均一に接合することが可能になった。
さらに、本発明の製造方法では、高分子電解質膜と電極とを接合するときに最適な圧力を加えることによって、高分子電解質膜/超少量触媒金属担持電極の接合状態がより均一になることに加えて、柔軟性黒鉛シートおよび電極が過剰につぶされることがなくなるので、電極の電流分布の偏りが著しく低減された。その結果、この高分子電解質膜/超少量触媒金属担持電極接合体を備える固体高分子形燃料電池の出力が向上した。
本発明の固体高分子形燃料電池用高分子電解質膜/超少量触媒金属担持電極接合体(以下では単に「膜/電極接合体」と略す)の製造方法を図1の模式図を用いて説明する。図1において、11は柔軟性黒鉛シート、12は超少量触媒金属担持電極、13は高分子電解質膜、14は高分子シート、15はプレス機の加圧面である。
最初に、プレス機の加圧面15の間に、高分子電解質膜13と超少量触媒金属担持電極12と高分子シート14と柔軟性黒鉛シート11とを図1のように配置する。高分子シート14は、柔軟性黒鉛シート11と超少量触媒金属担持電極12との付着を防止する。
柔軟性黒鉛シートの多孔度は30%以上60%以下であることが必要である。この範囲の多孔度の柔軟性黒鉛シートは、加圧によって、高分子電解質膜および超少量触媒金属担持電極の積層体あるいは加圧面の微小な凹凸の形状に応じて変形するので、その積層体に圧力を均一に伝達することができる。
一方、多孔度が30%未満の柔軟性黒鉛シートは、その形状に応じた変形が不十分であるので、積層体に圧力を均一に加えることが困難になる。一方、多孔度が60%より大きいものは、加圧によって柔軟性黒鉛シートが破損するので、加圧面の圧力を積層体に加えることが困難になる。
さらに、柔軟性黒鉛シート内には気泡が多数含まれるので、積層体に熱を均一に加えることが困難になる。つまり、多孔度が30%未満あるいは60%より大きい柔軟性黒鉛シートでは、加圧面と積層体との間に圧力と熱とが均一に加えられないので、超少量触媒金属担持電極と高分子電解質膜とが接合されない。
本発明で用いる柔軟性黒鉛シートには、鱗片状黒鉛などを膨張させたのちにシート状に成形させたものを用いることができるが、その黒鉛の形状は鱗片状に限定されるものではない。
柔軟性黒鉛シートの厚さ方向の熱伝導率は、1W/m・K以上であることが好ましい。厚さ方向の熱伝導率がこの範囲の場合では、加熱する際にその積層体に熱を均一に加えることができるので、高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極とを均一に接合することができる。厚さ方向の熱伝導率が1W/m・K未満である場合では、その積層体に熱を均一に加えることが困難になるので、高分子電解質膜と電極とを接合することができない。
柔軟性黒鉛シートの厚みは、0.5mm以上10mm以下が好ましい。さらに、厚みが1mm以上5mm以下の場合は、圧力分布および熱分布が良好なのでとくに好ましい。0.5mm未満では、機械的強度が低減するので、操作性が低下することに加えて、均一な圧力の伝達が妨げられる。逆に、10mmより厚いものでは、熱の伝達に時間がかかるため不利である。
高分子シートは、柔軟性黒鉛シートと積層体との付着を防止できるものおよび耐熱性があるものが好ましい。たとえば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)シート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはポリイミドフィルムなどを用いることができる。
本発明に用いる超少量触媒金属担持電極は、炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に触媒金属が担持されたものである。この超少量触媒金属担持電極としては、炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に担持された触媒金属量の全触媒金属担持量に対する割合が50質量%以上であるものが好ましく、さらに、その割合が80質量%以上のものが、触媒の利用率がさらに高くなることから特に好ましい。
本発明に用いる超少量触媒金属担持電極に備えられる触媒金属は、粒子径が3.0nm以下の粒子状のものが好ましく、とくに0.5nm以上2.0nm以下の粒子状のものが好ましい。
超少量触媒金属担持電極に備えられる触媒金属としては、電気化学的な酸素の還元反応、水素の酸化反応に対する触媒活性が高い、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、オスニウムなどの白金族金属が好ましい。さらに、白金族金属を含む合金、とくに白金とルテニウムとを含む合金は耐CO被毒性の高いことから好ましい。
さらにマグネシウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀またはタングステンとからなる群より選ばれた少なくとも一つの元素と白金族金属とを含む合金は、白金族金属使用量を低減できることと、耐CO被毒性や酸素の還元反応に対して高い活性が得られることが期待できることから好ましい。
超少量触媒金属担持電極では、含まれる触媒金属量が0.1mg/cm以下、さらには、白金族金属元素量が0.05mg/cm以下であることが単位重量あたりの触媒活性が高いことから好ましい。
本発明に用いられる超少量触媒金属担持電極はつぎの手順で作製される。最初に、炭素質材料と高分子電解質の溶液とを混合する。その混合物を電極基材に塗布したあとに、乾燥することによって、白金未担持電極を形成する。つぎに、この白金未担持電極を触媒金属の陽イオンを含んだ溶液に浸漬することによって、その電極に含まれる高分子電解質のプロトン伝導経路に陽イオンを吸着させる。最後に、吸着した陽イオンを化学的に還元することによって、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素質材料表面との接面に触媒金属が選択的に担持される。この電極と高分子電解質膜との接合状態は、圧力および熱に著しく影響される。
つぎに、図1のように配置した柔軟性黒鉛シート11、超少量触媒金属担持電極12、高分子電解質膜13および高分子シート14に圧力を加えた状態で加熱する。この操作を加熱圧接という。その熱は、プレス機の加圧面15から伝達される。その高分子電解質膜には、特に限定されず、周知のもの、たとえばスルホン酸基をもつフッ素樹脂系イオン交換膜、またはスチレン−ジビニルベンゼン系のスルホン酸形陽イオン交換膜を用いることができる。
高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極との積層体に加える圧力が20kg/cm以上250kg/cm以下である場合には、高分子電解質膜と電極との接合状態が均一になるので、その膜/電極接合体を備える固体高分子形燃料電池の出力が高くなることが研究の結果からわかった。
積層体に加える圧力が20kg/cm未満の場合では、積層体に加わる圧力が弱いので、高分子電解質膜と電極とを均一に接合することができない。一方、積層体に加える圧力が250kg/cmより大きい場合では、高分子電解質膜と電極とが過度の応力を受けることによって超少量触媒金属担持電極あるいは高分子電解質膜が破損することに加えて、接合後の電極の多孔度が著しく減少するという問題があった。この破損と減少とによって、その膜/電極接合体を備えるPEFCの寿命特性と出力特性とが低下するので、過度の接合圧は好ましくない。
高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極とを圧接する際の積層体への加熱温度は、高分子電解質膜のガラス転移温度以上、膜の耐熱温度未満の範囲が好ましい。たとえば、高分子電解質膜としてナフィオン膜(デュポン社製)を用いた場合では、90℃以上、200℃以下が好ましい。高分子電解質膜のガラス転移温度未満では、高分子電解質同士の結着が弱くなるので、電極とその膜との接合強度が低下する。高分子電解質膜の耐熱温度以上の場合では、その膜が変質または分解するので好ましくない。
加熱圧接の保持時間は、圧力および熱が均一に分布するように1分以上10分以下が好ましい。保持時間が1分未満では、高分子電解質膜と電極との積層体に圧力および熱が均一に分布しないので好ましくない。保持時間が10分より長い場合では、高分子電解質膜が変質または分解するので好ましくない。
加熱圧接した積層体は、圧力を加えた状態で冷却したのちに、取り出される。冷却温度は、高分子電解質膜のガラス転移温度未満が好ましい。その温度以上で積層体を取り出した場合は、収縮によって膜が変形する。その温度が60℃以下である場合は、その積層体を室温中に取り出しても、膜の著しい変形がおこらないので好ましい。さらに、0℃以下では、高分子電解質膜中の水分が凍ることによって、その膜が変質または破損することから好ましくない。
従来の高分子電解質膜と燃料電池用電極との接合方法を図2の模式図を用いて説明する。図2において、21は超少量触媒金属担持電極、22は高分子電解質膜、23は高分子シート、24はプレス機の加圧面である。
図2に示すように、超少量触媒金属担持電極21/高分子電解質膜22積層体または超少量触媒金属担持電極21/高分子電解質膜22/超少量触媒金属担持電極21の積層体を、プレス機の加圧面24で圧力を加える。こららの積層体とプレス機の加圧面24との間には、それらの付着を防止するために高分子シート23が配置されている。この方法の場合では、その積層体とプレス機の加圧面との間の圧力および熱の伝達に偏りがあるので、高分子電解質膜と電極とを均一に接合することができない。
以下実施例を挙げて詳細に説明する。
[実施例1および比較例1]
[実施例1]
カーボン(バルカンXC−72、キャボット社製)と高分子電解質溶液(ナフィオン、5質量%溶液、アルドリッチ社製)とを用いた超少量触媒金属担持電極をつぎのとおり作製した。最初に、カーボンを粉砕機で30秒間粉砕した。このカーボン8.0gにナフィオン溶液(5質量%溶液、アルドリッチ社製)を86.4g加えたのちに、プロペラ式撹拌機を用いてカーボンとナフィオン溶液との混合物を作製した。その混合物の固形分に対するナフィオンの固形分の質量比は、35質量%であった。
つぎに、この混合物をハイブリットミキサーによって、撹拌5分および脱泡1分の条件で撹拌した。最後に、これをプロペラ式撹拌機で撹拌しながら加熱濃縮(60℃)することによって、スラリー状の混合物を調製した。濃縮後のナフィオンの濃度は6.5質量%であった。そのスラリー状の混合物を高分子シート(PTFE、厚み50μm)に塗布したのちに、自然乾燥することによってそのシート上に白金未担持電極を作製した。塗布にはスリット幅が200μmのアプリケーターを用いた。
つぎに、その電極を50mmol/Lの[Pt(NH]Clの水溶液(60℃)に24時間浸漬することによって、電極に含まれるナフィオンの−SO 基に[Pt(NH2+を吸着させた。つづいて、その電極を脱イオン水(25℃)で3回洗浄したのちに、脱イオン水(60℃)に1時間浸漬した。さらに、その電極を乾燥機(60℃)で1時間乾燥した。
最後に、ナフィオンの−SO 基に吸着した[Pt(NH2+を、0.15気圧、180℃の水素雰囲気下で6時間還元することによって、カーボンとプロトン伝導経路との接面に白金を選択的に析出させた。以上の工程を経て、超少量触媒金属担持電極(担持量0.05mg/cm)を作製した。
柔軟性黒鉛シート(カーボンフィット、日立化成社製)の多孔度は、多孔度70%および厚み5mmのものをプレス機で圧縮することによって調製し、ここで用いた柔軟性黒鉛シートの多孔度は50%であった。
10cm×10cm(100cm)の大きさに打ち抜いた超少量触媒金属担持電極および高分子電解質膜(ナフィオン112、厚み50μm、デュポン社製)の積層体と高分子シート(PTFE、厚み25μm)と柔軟性黒鉛シートとを図1で示した順序に配置したのちに、加熱圧接することによって、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合した。加圧圧接時の圧力は100kg/cmとし、加熱条件は、プレス面の温度が130℃に達したのちに、5分間保持した。
つぎに、冷却水をプレス機に導入することによって、プレス面を60℃まで冷却したのちに、膜/電極積層体をとりだした。最後に、この膜/電極積層体についている高分子シートをはがすことによって膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて実施例1の燃料電池A1を作製した。
[比較例1]
加熱圧接の際に柔軟性黒鉛シートを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜と超少量触媒金属担持電極と高分子シートとを、図2に示した順に積層したのちに、実施例1と同様の条件で加熱圧接することによって、比較例1の膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて比較例1の燃料電池B1を作製した。
[特性の測定]
実施例1の燃料電池A1および比較例1の燃料電池B1において、アノードガスに水素、カソードガスに空気を用い、水素の利用率を80%、空気の利用率を40%、作動温度を80℃とする測定条件で、電流密度300mA/cmでのセル電圧を測定した。その結果、セル電圧は、実施例1の燃料電池A1では0.66Vであったのに対し、比較例1の燃料電池B1では0.20Vと著しく低かった。
この結果から、固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法において、本発明のように、高分子電解質膜と燃料電池用電極と多孔度が50%の柔軟性黒鉛シートを順に積層し、この積層体の積層方向に加圧する工程を経る接合方法によって得られた膜/電極接合体を備えた実施例1の燃料電池A1の出力は高い値を示したのに対し、柔軟性黒鉛シートを用いなかった比較例1の燃料電池B1の出力は著しく低かった。
[実施例2〜4および比較例2〜5]
[実施例2]
多孔度が30%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて実施例2の燃料電池A2を作製した。
[実施例3]
多孔度が40%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて実施例3の燃料電池A3を作製した。
[実施例4]
多孔度が60%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて実施例4の燃料電池A4を作製した。
[比較例2]
多孔度が10%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて比較例2の燃料電池B2を作製した。
[比較例3]
多孔度が20%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて比較例3の燃料電池B3を作製した。
[比較例4]
多孔度が70%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて比較例4の燃料電池B4を作製した。
[比較例5]
多孔度が80%の柔軟性黒鉛シートを用いて、高分子電解質膜の両面に超少量触媒金属担持電極を接合したこと以外は実施例1と同様にして、膜/電極接合体を作製した。この膜/電極接合体を用いて比較例5の燃料電池B5を作製した。
実施例2〜4の燃料電池A2〜A4および比較例2〜5の燃料電池B2〜B5について、実施例1と同様の測定条件で、電流密度300mA/cmでのセル電圧を測定した。これらの燃料電池と実施例1の燃料電池A1とについて、加熱圧接時に用いた柔軟性黒鉛シートの多孔度と電流密度300mA/cmでのセル電圧の関係を図3に示す。
図3から多孔度が30%以上60%以下の柔軟性黒鉛シートを用いて作製した膜/電極接合体を備えた燃料電池は、多孔度が30%未満および60%より大きいの柔軟性黒鉛シートを用い場合と比べて高い出力を示した。この結果は、接合状態が良好であったことに起因するものと推察される。
多孔度が30%未満の柔軟性黒鉛シートを用い場合においてセル電圧が低かったことは、電極と高分子電解質膜とが接合された面積が小さかったためと考えられる。多孔度が60%より大きい柔軟性黒鉛シートを用い場合においてセル電圧が低かったことは、積層体に圧力および熱の分布に偏りがあったために、電極と高分子電解質膜とを接合状態が不均一になったものと考えられる。
[実施例5〜25]
[実施例5〜11]
膜/電極接合体を作製する際の加熱圧接時の圧力を10〜280kg/cmの間で変えたこと以外は実施例2と同様にして、実施例5〜11の燃料電池を作製した。圧力を10kg/cmとした場合を実施例5の燃料電池A5、20kg/cmとした場合を実施例6の燃料電池A6、50kg/cmとした場合を実施例7の燃料電池A7、150kg/cmとした場合を実施例8の燃料電池A8、200kg/cmとした場合を実施例9の燃料電池A9、250kg/cmとした場合を実施例10の燃料電池A10、280kg/cmとした場合を実施例11の燃料電池A11とした。
[実施例12〜18]
膜/電極接合体を作製する際の加熱圧接時の圧力を30〜280kg/cmの間で変えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12〜18の燃料電池を作製した。圧力を10kg/cmとした場合を実施例12の燃料電池A12、20kg/cmとした場合を実施例13の燃料電池A13、50kg/cmとした場合を実施例14の燃料電池A14、150kg/cmとした場合を実施例15の燃料電池A15、200kg/cmとした場合を実施例16の燃料電池A16、250kg/cmとした場合を実施例17の燃料電池A17、280kg/cmとした場合を実施例18の燃料電池A18とした。
[実施例19〜25]
膜/電極接合体を作製する際の加熱圧接時の圧力を30〜280kg/cmの間で変えたこと以外は実施例4と同様にして、実施例19〜25の燃料電池を作製した。圧力を10kg/cmとした場合を実施例19の燃料電池A19、20kg/cmとした場合を実施例20の燃料電池A20、50kg/cmとした場合を実施例21の燃料電池A21、150kg/cmとした場合を実施例22の燃料電池A22、200kg/cmとした場合を実施例23の燃料電池A23、250kg/cmとした場合を実施例24の燃料電池A24、280kg/cmとした場合を実施例25の燃料電池A25とした。
実施例5〜25の燃料電池A5〜A25について、実施例1と同様の測定条件で、電流密度300mA/cmでのセル電圧を測定した。これらの燃料電池と、実施例1の燃料電池A1、実施例2の燃料電池A2および実施例4の燃料電池A4とについて、加熱圧接時の圧力と電流密度300mA/cmでのセル電圧の関係を図4に示す。図4において、記号△は柔軟性黒鉛シートの多孔度が30%の、記号○は柔軟性黒鉛シートの多孔度が50%の、記号×は柔軟性黒鉛シートの多孔度が60%の結果を示す。
図4から、高分子電解質膜と電極との積層体を圧接する際に、20kg/cm以上250kg/cm以下の圧力を加えることによって作製した膜/電極接合体を備えた燃料電池は、20kg/cm未満および250kg/cmより大きい圧力を加えた場合と比べて高い出力を示した。
この結果は、高分子電解質膜と電極との積層体を圧接する際に、20kg/cm以上250kg/cm以下の圧力を加えることによって、電極と高分子電解質膜との接合状態が良好になったことおよび電極の多孔度が適度な範囲に保たれていることに起因するものと考えられる。
加えた圧力が20kg/cm未満の場合では、電極と高分子電解質膜とを接合することができなかったので、燃料電池を作製することができなかった。加えた圧力が250kg/cmより大きい場合では、電極の空孔がつぶされることによって、電極内のガスの拡散が阻害されるので燃料電池の出力が低下したものと推察される。
本発明の膜/電極接合体の製造方法を示す模式図。 従来の高分子電解質膜と燃料電池用電極との接合方法を示す模式図。 柔軟性黒鉛シートの多孔度と電流密度300mA/cmでのセル電圧の関係を示す。 加熱圧接時の圧力と電流密度300mA/cmでのセル電圧の関係を示す図。
符号の説明
11 柔軟性黒鉛シート
12、21 超少量触媒金属担持電極
13、22 高分子電解質膜
14、23 高分子シート
15、24 プレス機の加圧面

Claims (2)

  1. 炭素材料と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に触媒金属が担持された燃料電池用電極を高分子電解質膜に接合する固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法において、前記高分子電解質膜と前記燃料電池用電極と多孔度が30%以上60%以下の柔軟性黒鉛シートを順に積層し、この積層体の積層方向に加圧する工程を経ることを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法。
  2. 積層体に加える圧力が20kg/cm以上250kg/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池用膜/電極接合体の製造方法。































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