JP2006012551A - 電子放出素子とその作製方法及びそれを装着した装置 - Google Patents

電子放出素子とその作製方法及びそれを装着した装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 カーボンナノチューブを用いた電子放出能の高い電子放出素子、特に低電界値であっても電子放出特性が得られる電子放出素子を提供する。
【解決手段】 上記課題は電極基材に取付けられたカーボンナノチューブの起毛部が複数の凸状に形成されていることを特徴とする電子放出素子によって解決される。
【選択図】 図5

Description

本発明は、カーボンナノチューブを用いた電界放出型電子放出素子と、それを作製するためのカーボンナノチューブ集合体の表面加工方法およびその電子放出素子を装着した装置に関する。
カーボンナノチューブは、化学的気相成長法(CVD法)またはアーク放電法等によって生成され、炭素原子が六角形状に規則正しく並んだシート(以下、グラフェンシートと称す。)が、円筒形に丸まったものであり、特異な性質を有していることから新素材として注目されている。
なお、グラフェンシートの筒が一重のものを単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と称し、その直径は1〜数nm、長さは1〜数μm程度である。一方、グラフェンシートの筒が同心状に何重も重なっているものを多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と称し、その直径は数nm〜数十nmである。また、グラフェンシートが略円錐状に丸まったものをカーボンナノホーンと称し、単層または多層カーボンナノホーン(SWCNH、MWCNH)がある。本発明においては、これらをカーボンナノチューブ(以下、CNTと称す。)と総称する。また、このCNT単体をCNT繊維、該CNT繊維が集合したものをCNT集合体と称す。
このCNTの先端部は非常に高い電界電子放出特性を有しており、蛍光表示管、X線管、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の電界放出型冷陰極用材料として、実用化が検討されている。
ところで、電界放出型冷陰極素子への実用化に最も必要な技術は、CNTを基板材料に貼付けて電極とした状態において高い電子放出性を得ることである。そのためにはCNT先端部を基板面と垂直な方向へ配向させる(毛羽立たせる)ことが必要であり、そのための方法が数多く提案されている。
アーク放電、CVD法等によりCNTはほとんどの場合単体で生成されるため、これを用いたCNT電極素子の製作は、CNT繊維を導電性ペースト材料に混ぜて、陰極基板にスクリーン印刷等により成膜する方法が一般的である。この状態ではほとんど電子放出を得られないため、例えば、特許文献1に記載されているように成膜後に球状粉末を散布、除去することで凹凸を付け凸部においてCNTを垂直に配向させる方法が提案されている。
また、導電性ペーストに埋もれた状態のCNT先端をレーザ照射、プラズマ、エッチング等で露出させる方法が特許文献2に提案されている。例えばレーザ照射は、YAGレーザを用い、約1.1Jの条件で0.6〜0.7msの間隔でパルス照射することによって行っている。
特開2000−311590号公報 特開2000−36243号公報
前述の方法では、得られたCNT基板の電子放出能が低いという問題があった。
本発明者らが検討したところ、従来の導電性ペースト材料に混ぜて成膜する方法は、カーボンナノチューブ繊維をペースト材料に均一に分布させることが難しく、カーボンナノチューブ繊維を一様かつ高い密度で基板へ成膜させることが難しいことがわかった。さらに、成膜したままではカーボンナノチューブ繊維が基板面とほとんどが平行に近い(寝た)状態でペースト材料のなかに埋め込まれる。
このような状態では、どのような表面処理を施しても、基板に対しカーボンナノチューブが垂直方向に配向したカーボンナノチューブ先端部を露出させた状態を得ることは確率的に低く、高い電子放出特性を得ることは本質的に困難であった。
そこで、本発明者らはカーボンナノチューブを高密度で全面に一様に起毛させるべく種々検討を行ったが、その結果判明したのは、カーボンナノチューブ基板面の全面で一様に、かつ同程度に、かつ密にカーボンナノチューブ繊維が基板に対して垂直方向に配向した電極では、電極面内に一様に電界がかかるため電界が集中せず、そのためにエミッション電流を流すのに高電界値を要するとともに、高い電子放出特性を得ることは本質的に困難であるということであった。
本発明はかかる問題を解決するためになされたもので、カーボンナノチューブを用いた電子放出能の高い電子放出素子、特に低電界値であっても電子放出特性が得られる電子放出素子を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を進めた結果、電子放出源であるカーボンナノチューブの起毛の有無や程度を電極面内で不均一にする事で、電界の集中を起き易くして電極間に印加する電界が低い電界値でもエミッション電流が流れることを見出した。
すなわち、カーボンナノチューブを電子放出源とする電極においては、電極表面のカーボンナノチューブを起毛させることが良好な電界放出を得るために必要不可欠である。しかしながら、電極表面のカーボンナノチューブの起毛が全面で一様な場合には、逆に電界の集中が起き難くなり、所定のエミッション電流を流すのに要する電圧が高くなる。そこで、電子放出源であるカーボンナノチューブの起毛の有無や程度を電極面内で不均一にし、電界放出を行う部分と行わない部分を設け、その形状効果により、電界放出を行う部分でより一層電界集中を起こさせることにより、トータルで考えた場合、電極間に印加する電界が低い電界値でもエミッション電流が得られる電子放出源を得ることができる。
本発明は、かかる知見に基いてなされたものであり、電極基材に取付けられたカーボンナノチューブの起毛部が複数の凸状に形成されていることを特徴とする電子放出素子とカーボンナノチューブが付着している電極基材上にレーザビームで部分的に照射することを特徴とする請求項1または2記載の電子放出素子の製造方法を提供するものである。
なお本発明書に於いては、導電性基板材料と導電性基板材料に堆積しているカーボンナノチューブを含む堆積物が一体となったものを電極という。
また、導電性基板のカーボンナノチューブ堆積面の法線方向へカーボンナノチューブの端部が配向したものと配向しないものとを含む状態や、法線方向へカーボンナノチューブの端部が配向したものの中でも電極間に電界を印加した際にカーボンナノチューブの起毛の長さが長いものや短いものが混在する状態を、カーボンナノチューブの起毛の有無や程度が電極面内で不均一な状態という。
本発明により、以下のような顕著な効果が得られる。
1)電極面内でカーボンナノチューブの起毛の有無や程度を不均一にする事で低い電界値で電子放出特性が得られる。
2)カーボンナノチューブの起毛の有無や程度を不均一にするには、複雑な工程と時間が必要な熱処理や化学処理ではなく、レーザ照射などの電磁波という安価な装置で、カーボンナノチューブ集合体基板を任意形状に高電子放出特性を得る表面加工法が得られる。また電子放出特性値もコントロール可能である。
3)照射前のカーボンナノチューブ集合体基板は、毛羽立ちが必要なくスプレーによる塗布や押付ける方法等の容易な方法にて簡単に製作できる。さらに、ナノポリへドロン等のカーボンナノチューブ以外の混入した不純物はレーザ照射により飛散、蒸発して除去することが可能である。
4)また、毛羽立ち状況と領域を制御できるため、電子放出特性の悪い個所に照射して特性を発揮させる追加工処理が可能である。
本発明の電子放出素子は、カソード側に配置される導電性基板材料の表面にカーボンナノチューブを有し、アノードと前記カソードの間に電界を印加することにより前記カーボンナノチューブから電子を放出するものであって、カーボンナノチューブの起毛の有無や程度が電極面内で不均一であることを特徴としている。
本発明で使用されるカーボンナノチューブ集合体は特に限定されるものではなく、化学的気相成長法、アーク放電法等如何なる方法で得られたものであってもよい。
電極基板は導電性のものである。これは、ステンレス鋼やFe−Ni系合金等のNi合金、Al、Cu、W、Ti、CO、Cr、MO、Nb、Mn、Si等の金属およびその合金製のもののほか、ガラスやセラミック等の表面に金属や導電性半導体を蒸着等により被着させたもの等がある。半導体の例としては、導電性の良好なITO(錫ドープ酸化インジウム)、ZnO、SnO2、TiO2などのn型酸化物半導体等を挙げることができる。基板の形状や大きさは基板の用途等に応じて定まるが、通常は、基本形状が円形、4角形、長方形等の板状、等である。
カーボンナノチューブ集合体を付着させる面は鏡面加工あるいは脱脂処理、酸化膜除去たとえば熱処理イオンボンバート等の前処理を施すことができる。
また、カーボンナノチューブの起毛部を複数の凸状に形成する手段として、基板に予め適当な深さと適当な幅と適当な形状の凸凹を施す方法も有効である。基板に凸凹があることにより基板上に堆積したカーボンナノチューブの中には、基板の法線方向に向くカーボンナノチューブと、基板の法線方向と直角な方向を向くカーボンナノチューブが存在する。この結果としてカーボンナノチューブの起毛の有無や程度が電極面内で不均一となり、起毛した領域に有効に電界を集中させることが出来、低い印加電圧により高い放出特性を得ることが可能となる。
本発明の電子放出素子はカーボンナノチューブの起毛部が複数の凸状に形成されていることを特徴としているが、この凸状は点状、線状等のいずれであってもよい。点状の例としては散点状を、線状の例としては平行線状、格子状、網の目状等を挙げることができる。カーボンナノチューブが起毛した領域を、概ね点状あるいは線状にある間隔を置いて配置することにより、起毛した領域に有効に電界を集中させることが出来、低い印加電圧により高い電子放出特性を得ることが可能となる。ここで起毛させる領域の幅は、1μmから100μm、望ましくは10μmから30μm程度が良く、概ね線状の起毛領域のピッチは1μmから1000μm、望ましくは10μmから500μm、特に望ましくは50μmから200μmの間隔で配置することにより、概ね線状の起毛領域に有効に電界集中を起こすことができる。凸状部の高さは1〜100μm程度、通常1〜10μm程度である。
本発明の電子放出源の製造方法は以下のとおりである。複数のカーボンナノチューブが絡み合って一体化して生成されたカーボンナノチューブ集合体の層を電極基板上に生成させる。このとき、カーボンナノチューブは基板面に垂直な方向へ配向させる必要はなく、むしろ全体的にはカーボンナノチューブの軸方向が基板と平行方向に配向した(寝た)状態で均一なものが良い。
このような方法は特に制限されないが、例えば、カーボンナノチューブを分散媒中に分散させてスプレー等で散布する方法(スプレー堆積法)、シート状(テープ状を含む。)のカーボンナノチューブ集合体をアルコール等の液体で貼り付ける方法を利用できる。
カーボンナノチューブ集合体に導電性微粒子を混合させることにより、カーボンナノチューブを導電性微粒子の表面に付着させることによって、基板表面に対して比較的平行な部分と起毛した部分を有した電子放出源を得ることが出来、この結果として、起毛した領域に有効に電界を集中させることが出来、低い印加電圧により高い電子放出特性を得ることが可能となる。導電性微粒子として、金属や導電性化合物、黒鉛などが利用できる。また、微粒子のサイズは、100nmから10μm程度のものが良く、望ましくは1μm程度のものが良い。
スプレー堆積法に用いる分散媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、純水等を用いることができる。分散媒に分散させるカーボンナノチューブの濃度としては、要はこれを均一に散布できる程度でよく、例えば0.05〜0.5mg/cm3程度が適当である。カーボンナノチューブを投入した分散媒は、超音波処理するなどして均一に分散させてから散布するのがよい。散布はスプレー等を用いて常温で行えばよく、その後は放置して自然乾燥すればよい。
基板との付着力はファンデルワールス力によるものと考えられ、状態を維持するのに十分なものである。
さらに、これらの方法ではカーボンナノチューブ集合体の基板への付着が不充分な場合には、カーボンナノチューブ集合体を導電性接着剤やろう材で基板に接着接合させることもできる。その場合でも接着剤やろう材がカーボンナノチューブ集合体の表面まで滲み出てこないようにする必要がある。
カーボンナノチューブを基板にろう付するために用いるろう材は低い融点の金属(合金を含む。)や金属化合物であり、かつ、CNT及び基板に濡れ性のよいものである。ろう材の融点は、CNTの分解、ダメージを与えない150〜800℃のものがよい。
ろう材料の例としては、基板がステンレススチールの場合には、インジウム、インジウム系はんだ等を用いることができる。
ろう付けを行う場合には、ろう材をまず基板材のろう付け面に付着させる。
ろう材の基板面への付着は、均一に行うため、蒸着が好ましいが、その他の付着手段、例えば粉末ろう材の散布、懸濁液や溶液の吹付けあるいはその他の手段による塗布、箔等にしての貼着等、如何なる手段によってもよい。ただし、ろう材の膜厚は、CNTの膜厚以下が必要である。例えば0.1〜100μm程度、通常1〜10μm程度でよい。
CNTの基板へのろう付けは、この状態でCNTを基板面に密着させて加熱する。
CNTの基板面への密着は、CNTが前記のスプレー堆積法により基板等に付着されたものあるいは膜状、シート状等の成形品であればこれを基板面に押付ければよい。
加熱は、ろう材およびCNTが酸化変質しない雰囲気がよく、これはろう材が安定でありかつCNTが変質や分解しない温度と時間であれば大気中でもよい。必要により、真空(減圧)あるいは、N2、He、Ar等の不活性ガス雰囲気が用いられる。
このカーボンナノチューブ集合体は層厚では1〜1000μm程度、通常1〜500μm程度、特に1〜100μm程度である。
基板に付着させたカーボンナノチューブを起毛する方法として、レーザ照射などを含む電磁波を照射する方法がある。カーボンナノチューブ集合体の層表面にレーザーや電子ビームなどの電磁波を照射すると、前記電磁波のエネルギーはカーボンナノチューブ層に吸収され、基板と平行か塊の状態で、お互いが密着して存在しているカーボンナノチューブ集合体は、ほぐされて浮上がり、毛羽立った状態となる。これは電磁波によるカーボンナノチューブの振動、共鳴やカーボンナノチューブの急激な温度上昇による蒸発が引き起こす急激な膨張圧力や気流により、カーボンナノチューブ集合体が解きほぐされ、さらにはカーボンナノチューブ端部が基板上方へ向くと考えられる。
以上により、前記電磁波照射によりカーボンナノチューブ繊維が解きほぐされたりカーボンナノチューブ端部が毛羽立った状態となるため、高い電子放出特性が得られる。
さらに、このカーボンナノチューブ集合体の層表面に前記電磁波を照射する際に、適当なパワー分布や、適当な照射時間や回数、適当なビーム形状を与えるように前記電磁波を照射することなどによって、適当な間隔でカーボンナノチューブ繊維が解きほぐされたりカーボンナノチューブ端部が毛羽立った状態となるため、より電界集中が起こり易く、非常に高い電子放出特性が得られる。
照射するレーザのエネルギー密度は10〜3000mJ/cm2、好ましくは100〜1000mJ/cm2、より好ましくは200〜500mJ/cm2の範囲で、CNT集合体の性質(単層、多層、長さ、密度、純度)やCNT集合体膜の条件(膜厚、密度等)により最適値と照射回数を調整する。エネルギー密度が低いとCNT膜には何の変化もなく照射効果もなくなる。逆にエネルギー密度が高すぎるとCNTが多く飛散するようになる。レーザのエネルギー照射時間(1回のレーザパルス時間)の関係としては、図3に示す領域である。さらに照射するレーザのパワー密度としては107〜108W/cm2範囲が好ましい。レーザ波長の影響としては、短波長ほど光子エネルギーが高く、低い強度で効果を得ることができると考えられる。ただし380nm以下の紫外領域では光子エネルギーが炭素間の結合エネルギーを超え、カーボンナノチューブが分解、損傷する可能性が高くなる。また波長が長くなるほど光子エネルギーのCNTへの吸収率が低くなるため効果が悪くなり、ビームのスポット径も広がるため赤外波長域は適さない。以上より、波長範囲としては380nm超1100nm以下、より好ましくは450nm超680nm以下が最適な波長であると考えられる。
レーザの照射は、円形ビームをレンズで集束させてスポット状に照射してもよく、シリンドリカルレンズや特殊レンズを用いてビームをライン状にして照射してもよい。
本発明でレーザが照射されるCNT集合体基板の構造を図1に模式的に示す。
図1(A)のCNT集合体基板は基板11の上にCNT集合体10を直接付着させたものであり、図1(B)ではろう材や導電性接着剤等の中間材12を介して付着させたものである。これにレーザを照射している状態を図2に模式的に示す。図2(A)では、レーザ発振器21から発せられる円形ビームをレンズ22で集束させてCNT集合体基板にスポット照射する方法であり、ビームを走査あるいは基板を移動させることにより、スポットあるいはライン状の任意の加工が可能である。図2(B)では、レーザビームをライン状に照射しており、ビームを走査あるいは基板を移動させることにより、ライン状あるいは面状に加工することができる。
本発明では、基板上に露出状態で付着させたカーボンナノチューブ集合体にレーザを照射することによって、カーボンナノチューブを毛羽立たせ、電子放出特性を向上させることができる。すなわち、レーザを照射したところを局部的に起毛することができるので、レーザを部分的に照射することによってカーボンナノチューブの起毛部を複数の凸状に形成することができる。また、この起毛部を複数の凸状にする方法としては、前述の基材表面に凸凹を設け、あるいは導電性微粒子を混合してもよく、これらのいずれか2つまたは全てを組合せることによって、複合効果により、より性能の高い電子放出源を製造することができる。
本発明の電子放出素子は、電子放出特性等が特に良好であるため、これを装着させることにより電子放出特性等に優れた電気機器または電子機器が得られる。
アーク放電法を用いて生成した高純度カーボンナノチューブ1mgをメチルアルコール10mlに加え、超音波を照射して分散させた。
基板にはφ10mm×10mmLの円柱のSUS304板を用いた。
上記のカーボンナノチューブ分散液をスプレーノズルを用いて基板に散布し、自然乾燥させた。カーボンナノチューブの膜厚は約5μmであった。
図4はレーザ照射前の本発明に係る図1に示す状態のカーボンナノチューブ集合体基板表面を上から見た走査型電子顕微鏡写真である。多層カーボンナノチューブ集合体がテープ状となったものをステンレス基板に圧着したもので、カーボンナノチューブ同士は密着し基板面と平行方向に寝た状態であることが観察される。
このカーボンナノチューブ集合体が付着している基板上に、波長532nm、エネルギー密度300〜500mJ/cm2のYAGレーザをライン状にして100μmの照射間隔で照射した。このカーボンナノチューブ集合体基板表面を上から見た電子顕微鏡写真を図5に示す。照射により、カーボンナノチューブが毛羽立ち上に伸びている所と、照射位置の間に位置するためにカーボンナノチューブが毛羽立っていない所が存在する。すなわち、密着して絡み合っていたカーボンナノチューブ繊維が適当な間隔のレーザ照射によって適当な不均一さで解きほぐされる。このようにカーボンナノチューブが立った状態が全面に適当な不均一さを有しているため、非常に高い電子放出特性が得られる。
前記レーザ未照射と、前記レーザ照射時に、レーザーをライン状にして、照射間隔を10μm、100μm、500μmの各々とした際のカーボンナノチューブ集合体基板の電子放出特性を調べた結果を図6に示す。レーザ照射前にはほとんど電子放出が得られていないが、照射間隔100μmで照射後には5kV/mmの電界強度にて電流密度9×10-3A/cm2が得られている。この値は非常に高い特性であり、図5の電子顕微鏡写真に示したように多くのカーボンナノチューブ繊維の端部が表面に毛羽立って、かつ適度な不均一である効果と考えられる。ただし、上記のライン状レーザーの照射間隔は、常に100μmが最適なわけではなく、カーボンナノチューブ層の膜厚やカーボンナノチューブ自体の長さ、太さ、純度、先端形状などの要因によって最適な値が異なるが、概ね線状の起毛領域のピッチは、10μmから500μm、望ましくは50μmから200μmの間隔で配置することにより、大きな特性向上が見られた。
以上より、本発明に係るカーボンナノチューブ集合体接合基板を電子放出源として用いる場合、放出特性が高くかつ揃った任意の面積、形状の電極が可能なため、種々の電気機器または電子装置に設置することができる。
特に、VFDやFEDなどは一様かつ高密度の大断面積電極が求められるため、容易に製造が可能となる。さらに高放出特性のため省電力、電源小型化(低電圧化が可能)等もができる。
カーボンナノチューブ集合体が付着している基板の構造を模式的に示す断面図である。 この基板にレーザを照射している状態を模式的に示した図である。 レーザ照射パワー密度とレーザパルス長の関係を示すグラフである。 レーザ照射前のCNT表面の電子顕微鏡写真である。 このレーザ照射後のCNT表面の電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例で得られたCNT集合体基板の電子放出能を示すグラフである。
符号の説明
10…カーボンナノチューブ集合体
11…基板
12…接着剤等
21…レーザ
22…レンズ
23…カーボンナノチューブ基板

Claims (4)

  1. 電極基材に取付けられたカーボンナノチューブの起毛部が複数の凸状に形成されていることを特徴とする電子放出素子
  2. 凸状が線状であり、各凸等の頂部間の間隔が10〜500μmである請求項1記載の電子放出素子
  3. カーボンナノチューブが付着している電極基材上にレーザビームで部分的に照射することを特徴とする請求項1または2記載の電子放出素子の製造方法
  4. 請求項1または2記載の電子放出素子を装着した電気機器または電子機器
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