JP2006011309A - 着色光ファイバ素線 - Google Patents

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Abstract

【課題】水中に長期浸漬しても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、光伝送損失が増加しない、耐水性に優れた着色光ファイバ素線を提供する。
【解決手段】裸光ファイバ(1)の外周に少なくとも1つの被覆層を有する光ファイバ素線(10)の外周に着色層(4)を有する着色光ファイバ素線(20)であって、前記裸光ファイバ(1)に接する前記被覆層、前記着色層(4)に接する前記被覆層、及び前記着色層(4)が紫外線硬化樹脂からなり、前記着色層(4)を構成する紫外線硬化樹脂の硬化前の波長300〜450nmの光に対する透過度平均値が0.05〜0.55である着色光ファイバ素線(20)。
【選択図】図1

Description

本発明は水中に長期浸漬しても光伝送損失が増加しない、耐水性に優れた着色光ファイバ素線に関する。
着色光ファイバ素線は、一般的には、裸光ファイバ表面にソフト材と呼ばれる樹脂組成物からなる柔軟なプライマリ層と、その外側に、ハード材と呼ばれる樹脂組成物からなる剛性の高いセカンダリ層を有する光ファイバ素線の外周に、顔料を有する樹脂組成物からなる着色層を有する構造を持つ。
従来、着色光ファイバ素線は、水中に長期間浸漬されると、裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離し、該着色光ファイバ素線は長手方向に不均一なマイクロベンドを受け、光伝送損失が大きく増加するという問題があった。
これに関して、特許文献1では、裸光ファイバとプライマリ層界面の密着力を高く調整することにより改善が試みられているが十分ではない。
特開平9−5587号公報
本発明は、水中に長期浸漬しても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、光伝送損失が増加しない、耐水性に優れた着色光ファイバ素線を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、水中浸漬された裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離する現象は、着色層を構成する紫外線硬化樹脂の硬化前の透過度平均値が関係しており、この透過度平均値をある範囲に限定することにより、前記の問題が解決し得ることを見出し、本発明に至った。
これは、光ファイバ素線の製造工程において、一度、紫外線硬化された紫外線硬化樹脂からなるプライマリ層が、後の着色工程において、着色層を透過した紫外線で再度硬化されるため、一度紫外線硬化されてある程度の架橋構造が完成したプライマリ層のマトリクスが、再度の紫外線照射により未反応の残留物が再度架橋することとなり、マトリクス内部により大きい歪が生じることが関与していると考えられる。
本発明の着色光ファイバ素線は、裸光ファイバの外周に少なくとも1つの被覆層を有する光ファイバ素線の外周に着色層を有する着色光ファイバ素線であって、前記裸光ファイバに接する前記被覆層、前記着色層に接する前記被覆層、及び前記着色層が紫外線硬化樹脂からなり、前記着色層を構成する紫外線硬化樹脂の硬化前の波長300〜450nmの光に対する透過度平均値が0.05〜0.55であることを特徴とする。
本発明の着色光ファイバ素線は、着色層の硬化が十分で、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、長期信頼性の高い耐水特性を有するという優れた効果を奏する。
以下、本発明の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明をする。
図1は、本発明の着色光ファイバ素線の好ましい一実施態様の横断面図である。本発明の着色光ファイバ素線20は、裸光ファイバ1の外周に、緩衝層である柔軟なプライマリ層2と、その外側に、強度保持層である剛性の高いセカンダリ層3を有する光ファイバ素線10の外周に、識別が可能な着色層4を有する構造である。
本発明に用いられる裸光ファイバ1は特に限定されないが、石英系シングルモード、石英系マルチモード、石英系ステップインデックス、石英系分散シフト、多成分系、プラスティック系、プラスティッククラッド系等を用いることができる。
本発明の光ファイバ素線におけるプライマリ層2には、紫外線硬化樹脂が用いられる。セカンダリ層3は特に限定されないが、主に紫外線硬化型の樹脂組成物(以下、単にUV樹脂という)が用いられ、硬化速度の観点からウレタン−アクリレート系やエポキシ−アクリレート系のオリゴマーを主成分としたものが好適である。
着色層4は特に限定されないが、顔料、隠蔽材(例えばチタンホワイト)が添加されたウレタン−アクリレート系やエポキシ−アクリレート系のオリゴマーを主成分としたUV樹脂が用いられる。
本発明の光ファイバ素線は、任意の方法で作製することができる。例えば、気相軸付法(VAD)法や内付化学気相堆積法(MCVD法)等によって光ファイバ用母材を形成し
、光ファイバ母材を線引き炉によりその先端から加熱溶融して、所定の外径例えば、約100〜200μmの光ファイバの裸線に溶融紡糸する。この光ファイバは、ファイバ冷却装置により樹脂被覆に適する温度まで冷却された後、一次被覆用樹脂被覆装置を通り、一次被覆用UV樹脂を所定の厚さにその周囲に塗布され、次いで一次被覆用紫外線硬化装置に入り、紫外線照射ランプに照射され、塗布された前記UV樹脂が架橋・硬化される。続いて、一次被覆用外径測定器を通り、二次被覆用樹脂被覆装置で二次被覆用UV樹脂を塗布され、二次被覆用紫外線硬化装置に入り紫外線により塗布されたUV樹脂が架橋・硬化される。UV樹脂を被覆された光ファイバは、二次被覆用外径測定器を通り、キャプスタン又はプーリーを経て巻取り装置にてボビンに巻取られる。
一次被覆および二次被覆が施され、ボビンに巻きとられた光ファイバ素線は、別工程にて再度巻きほぐされ、着色層用樹脂被覆装置を通り、着色層用UV樹脂を所定の厚さにその周囲に塗布され、次いで着色層用紫外線硬化装置に入り、紫外線照射ランプに照射され、塗布された前記UV樹脂が架橋・硬化される(例えば特開2003−212605号公報参照)。
UV樹脂は、一般的に、不飽和基(例えばアクリロイル基)を含有するラジカル重合性オリゴマー、反応性希釈剤としての反応性モノマー、光エネルギーを吸収してラジカル等の活性種を発生する重合開始剤を基本的構成成分として含有しており、更に各種添加剤(顔料、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、レベリング剤、滑剤、酸化安定剤、老化防止剤、耐侯剤、保存安定剤、可塑剤、界面活性剤等)等が必要量配合されたものである。また、UV樹脂は主にラジカル重合性オリゴマーの種類、構造、分子量、及び反応性モノマー、重合開始剤の種類を選定することにより、及びラジカル重合性オリゴマー、反応性モノマー、重合開始剤の配合比を調整することによって、着色光ファイバ素線のプライマリ層用途、セカンダリ層用途、着色層用途として求められる各々の特性(透過度、硬化後のヤング率、硬化速度、吸水率等)のものが得られる。
例えば、本発明に用いられるUV樹脂は、プライマリ層用途としては好ましくは硬化後のヤング率が2.5MPa以下、より好ましくは1.5MPa以下であり、セカンダリ層用途としては好ましくは硬化後のヤング率が100〜2000MPa、より好ましくは400〜1000MPaであり、着色層用途としては好ましくは硬化後のヤング率が100〜3000MPa、より好ましくは200〜2000MPaである。
本発明の着色光ファイバ素線において、着色層を構成するUV樹脂の硬化前の波長300〜450nmの光に対する透過度平均値は0.05〜0.55であり、好ましくは、0.1〜0.5である。該透過度平均値が0.05未満では、着色層とセカンダリ層との界面部分の硬化が不十分になり、着色層はセカンダリ層界面から容易に剥離、欠落してしまい、識別が不可能になる。一方、該透過度平均値が0.55を超えると、着色光ファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離が起こりやすく、伝送損失の増加が大きくなりやすい。
本発明における透過度は以下の式によって表される。
T=I/I0=1/10A=1/10εcl
式中、Tは透過度を表し、Iは透過光強度を表し、I0は入射光強度を表し、Aは吸光度を表し、εは分子吸光係数を表し、cは吸収物質の濃度を表し、lは光が透過する媒体の距離を表す。
着色層を構成するUV樹脂の硬化前の透過度は、例えば以下のようにして測定することができる。石英ガラス板(例えば40mm×30mm×2mm)上に、着色層用UV樹脂を1g滴下し、スピンコーターを用いて、石英ガラス板上に、着色層用UV樹脂の5μm厚さの均一な塗布層を形成させる。この石英ガラス板上に形成された着色層用UV樹脂塗布層について、分光光度計を用いて、吸光度Aを測定する。測定波長は300nmから450nmまでで、0.2nm間隔で行う。このようにして硬化前の液状の着色層用UV樹脂の各波長での吸光度Aを測定し、着色層厚さが5μmであった場合の各波長における透過度をT(5)算出する。従って、着色光ファイバ素線の着色層厚さがt(μm)の場合の透過度T(t)はT(t)={T(5)}t/5として算出できる。
本発明では、300nmから450nmまでの紫外線を0.2nm間隔で測定された透過度を単純に算術平均したものを透過度平均値とする。
図2に、上記方法により5μm厚の未硬化の着色層を測定した透過度特性、着色層の透過度平均値Tの一例を特性図として示す。図示した例では着色層の透過度平均値Tは0.38である。
着色層の透過度平均値Tは前記着色層用UV樹脂の基本的構成成分であるラジカル重合性オリゴマーの種類、重合開始剤の種類及び添加量、並びに顔料、着色剤、隠蔽材の種類、添加量、着色層厚の影響を受ける。
また、UV樹脂は硬化後に透過度平均値Tが0.05程度大きくなるのが一般的であるため、この向上を想定して材料を選定することが好ましい。すなわち、本発明の着色光ファイバ素線としては、硬化後の着色層は波長300〜450nmの光における透過度平均値が0.1〜0.6であることが好ましい。
本発明の着色光ファイバ素線おけるプライマリ層、セカンダリ層、及び着色層の厚み(硬化後)は特に制限されないが、プライマリ層とセカンダリ層は約10〜約50μm、着色層は約0.5〜約10μmが好ましい。例えば直径約125μmの裸光ファイバを使用する場合は、着色層の外径が240〜270μm程度となるように構成されることが一般的である。なお、上記の層の厚みは硬化中に1〜50%程度縮小する場合があるため、そのような場合は厚みの縮小を想定して硬化前の樹脂層の厚みを設定することが好ましい。
次に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明する。
(着色光ファイバ素線の作製)
外径125μmの石英系シングルモード裸光ファイバ1上に、以下のプライマリ樹脂によりプライマリ層2を形成した(外径約195μm)。
[プライマリ樹脂] ポリプロピレングリコール500g(数平均分子量2000)、2,4−トリレンジイソシアネート60g、2−ヒドロキシエチルアクリレート30gから合成されたポリエーテル系ウレタンアクリレート(数平均分子量5000)を前記の重合性オリゴマー(I)とし、反応性モノマー(II)と反応させ、0.2mm厚の硬化シートとした時のヤング率が1.0MPaに調整された樹脂組成物。
更にその上に、以下のセカンダリ樹脂によりセカンダリ層3を形成し、光ファイバ素線10を得た(外径約245μm)。
[セカンダリ樹脂] ポリテトラメチレングリコールとアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールの共重合ポリエステルポリオール500g(数平均分子量850)、イソフォロンジイソシアネート246g、2−ヒドロキシエチルアクリレート137gから合成されたポリエステル系ウレタンアクリレート(数平均分子量1500)を重合性オリゴマーとし、反応性モノマー(II)と反応させ、0.2mm厚の硬化シートとした時のヤング率が600MPaに調整された樹脂組成物。
更に、セカンダリ層3上に、液状の着色層4用UV樹脂(下記表1記載)を塗布し、引き続き紫外線を照射して硬化させ、厚さ2.5〜10μmの着色層4を形成し、下記表2に示す実施例1〜9、比較例1〜4の着色光ファイバ素線20を得た(外径約250〜265μm)。
尚、光ファイバ素線、着色光ファイバ素線の線速は1500m/minであり、紫外線照射は、プライマリ層、セカンダリ層、着色層ともに酸素濃度3%以下、UV照度2000mW/cm2、UV照射量100mJ/cm2の条件で行った。また、硬化シートのヤング率は、大気中、UV照度200mW/cm2、UV照射量200mJ/cm2の条件で硬化させた0.2mm厚シートを別途作製し、これについて23℃、引張り速度1mm/minの条件で引張り試験を行い、2.5%歪時の引張り強さから算出した。
着色層4には、顔料、隠蔽材が未添加の状態で0.2mm硬化シートのヤング率が800MPa、及び1400MPaの二種類のウレタンアクリレート系UV樹脂に、顔料、隠蔽材(チタンホワイト)を添加したものを用い、顔料の添加量を調整して種々の透過度平均値とした着色層用UV樹脂を調製した。顔料としては、黒:カーボンブラック(東海カーボン社製、#8300、商品名)、赤:キナクリドン(CAS−No.980−26−7)、青:フタロシアニン(CAS−No.574−93−6)を用いた。各着色層用UV樹脂について表1に示す。
Figure 2006011309
硬化前の着色層の波長領域300〜450nmにおける透過度平均値Tは、以下のようにして求めた。まず、着色光ファイバ素線の着色層用の硬化前の液状UV樹脂を石英ガラス板(40mm×30mm×2mm)上に1g滴下し、スピンコーターを用いて、石英ガラス板上に、着色層用UV樹脂の5μm厚さの均一な塗布層を形成させ、薄層UV樹脂試料を作製した。この石英ガラス板上に形成された着色層用UV樹脂塗布層について、分光光度計(HITACHI U−3410、商品名、日立計測器サービス(株)社製)を用いて吸光度Aを測定した。測定波長は300nmから450nmまでで、0.2nm間隔で行った。測定された各波長の吸光度Aの値から前記式より着色光ファイバ素線の着色層と同じ厚みである5μmの値に換算し、更に前記式により各波長の透過度を算出した。その際、300nmから450nmまで0.2nm間隔で測定された各波長の透過度を単純に算術平均したものを透過度平均値とした。
(着色光ファイバ素線の評価)
作製した着色光ファイバ素線20の温水浸漬後における裸光ファイバとプライマリ層間の剥離の有無、温水浸漬後のロス増について判定し、また、着色層のセカンダリ層との界面付近の硬化度の指標として、スポンジたわしで10回しごいた後の着色層の剥離の有無(着色層の硬化が不十分のとき着色層がセカンダリ層表面から剥離する)について判定した。結果を表2に示す。
着色光ファイバ素線20の温水浸漬後における剥離の有無は、約1mの着色光ファイバ素線20を60℃のイオン交換水中に30日間浸漬後、光学顕微鏡を用いて透過光で100倍程度の倍率で裸光ファイバ1とプライマリ層2との界面を観察することによって判定した。剥離が全く無い場合を◎、極微小剥離(問題ないレベル)が存在する場合を○、剥離が有る場合を×として表2に示した。
着色光ファイバ素線20の温水浸漬後のロス増は、1km束取りした着色光ファイバ素線20を60℃のイオン交換水中に30日間浸漬させた後にOTDR(光時間領域反射測定器:Optical Time Domain Reflectometer)を用いて測定した。測定の際の波長は1550nmであった。ロス増は小さいほうが良く、0.05db/km以下が実用レベルである。
着色層4のセカンダリ層3との界面付近の硬化度の指標としての、着色光ファイバ素線20の着色層4の剥離の有無は、製造後の約30cmの着色光ファイバ素線20につき、スポンジたわしを用いて10回しごいた後、着色層4がセカンダリ層3表面から剥離したかどうか観察することによって判定した。剥離が全く無い場合を◎、微小剥離(問題ないレベル)が存在する場合を○、剥離が有る場合を×として表2に示した。
Figure 2006011309
表2から明らかなように、着色層の硬化前の透過度平均値が0.55を超える比較例1及び2は、温水浸漬後に剥離があり、伝送損失の増加が大きかった。また、着色層の硬化前の透過度平均値が0.05未満の比較例3及び4は、着色層とセカンダリ層との界面部分の硬化が不十分で、着色層がセカンダリ層界面から剥離してしまった。これに対し、本発明の光ファイバ素線である実施例1〜9は着色層4がセカンダリ層3表面から剥離せず、着色層4の硬化が十分であり、60℃のイオン交換水中に30日間浸漬後でも、裸光ファイバ1とプライマリ層2との界面が部分的に剥離することがなく、ロス増が小さいことがわかった。
本発明の着色光ファイバ素線の好ましい一実施態様の横断面図である。 透過度の一例を示す特性図である。
符号の説明
1 裸光ファイバ
2 プライマリ層
3 セカンダリ層
4 着色層
10 光ファイバ素線
20 着色光ファイバ素線

Claims (1)

  1. 裸光ファイバの外周に少なくとも1つの被覆層を有する光ファイバ素線の外周に着色層を有する着色光ファイバ素線であって、前記裸光ファイバに接する前記被覆層、前記着色層に接する前記被覆層、及び前記着色層が紫外線硬化樹脂からなり、前記着色層を構成する紫外線硬化樹脂の硬化前の波長300〜450nmの光に対する透過度平均値が0.05〜0.55であることを特徴とする着色光ファイバ素線。
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