JP2006010775A - プラスチック光ファイバプリフォームの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 プリフォームのコア重合生成における体積減少によるクラッドのロスを減少させる。
【解決手段】 アウターコアが備えられたクラッド12の一方の端部に延長部材51をつなげ、アウターコアの中にインナーコア用モノマーをドーパント等とともに注入し重合させてインナーコアを生成する。注入前には、予め、重合前のインナーコア用モノマーの体積と重合後に得られる重合体との体積比を求めておき、重合後にはクラッド内がコアで満たされるようにインナーコア用モノマーの注入量が決定される。このようにして得られたプラスチック光ファイバプリフォームは、クラッドの中がコアで満たされており、ロス部がなく、無駄なくプラスチック光ファイバを製造することができる。得られる光ファイバは良好な伝送特性を有する。
【選択図】 図5
【解決手段】 アウターコアが備えられたクラッド12の一方の端部に延長部材51をつなげ、アウターコアの中にインナーコア用モノマーをドーパント等とともに注入し重合させてインナーコアを生成する。注入前には、予め、重合前のインナーコア用モノマーの体積と重合後に得られる重合体との体積比を求めておき、重合後にはクラッド内がコアで満たされるようにインナーコア用モノマーの注入量が決定される。このようにして得られたプラスチック光ファイバプリフォームは、クラッドの中がコアで満たされており、ロス部がなく、無駄なくプラスチック光ファイバを製造することができる。得られる光ファイバは良好な伝送特性を有する。
【選択図】 図5
Description
本発明は、光ファイバプリフォーム及びその製造方法に関し、特に詳しくはプラスチック光ファイバに用いることができるプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法とこれにより得られるプラスチック光ファイバプリフォームとに関するものである。
光伝送体等の光学用途においては、プラスチック系材料は、石英系材料に比べて、一般には成型加工性、部材の軽量化、低コスト化、可撓性、耐衝撃性等における優位性を有している。例えばプラスチック光ファイバ(POF)は、石英系光ファイバと較べると、光の伝送損失が大きいために長距離の光伝送には光伝送には向いていないが、上記のプラスチックの性質により、光ファイバのコア部を数10μm以上とするようないわゆる大口径化を図ることができる。この大口径化により、光ファイバの分岐や接続に用いる各種周辺部品や機器の、光ファイバとの接続精度を上げる必要がなくなる。そのため、POFは、周辺部品や機器との接続容易性、端末加工容易性、高精度の調芯が不要になるメリットを有する。その他にもPOFは、上記のようなコネクタ部分の低コスト化の他に、上記のプラスチックの性質により、人体への突き刺し災害等の危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性や易敷設性や耐振動性、そして低価格等のメリットがある。これにより、POFは、家庭や、車載用途に注目されているだけでなく、高速データ処理装置の内部配線や、DVI(digital Video Interface)リンクなどの極短距離かつ大容量のケーブルとしても、利用が検討されている。
POFは、コア部とクラッド部とから構成され、クラッド部は外殻部分であり、コア部はクラッドの中を満たす芯部分であってクラッド部よりも屈折率が高いものとなっている。そして、高い伝送容量を有する光ファイバとして、屈折率分布型POFが最近注目されており、これは中心から外側に向かって屈折率の高低分布を有するコア部を備えたPOFである。この屈折率分布型POFの製法の一つは、界面ゲル重合法を利用するものであり、この方法では、まず、光ファイバ母材(プリフォーム)を作製し、その後、このプリフォームを溶融延伸する。
プリフォームの作製においては、クラッド用パイプの中にコア部を生成するための重合性化合物を入れて、クラッド用パイプの内部で界面ゲル重合を行いコア部を形成する。界面ゲル重合により形成されたコア部には、含有される屈折率調整剤等の濃度分布があり、これにより、コア部には屈折率の分布が生じる。このようにして得られたプリフォームを、所定の温度で延伸することにより、屈折率分布型プラスチック光ファイバが得られる。(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、特許文献1等の屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法によると、クラッド部の中にコア部を形成したときにはクラッドの端部にコアを形成することができず、製造ロスとなってしまうという問題がある。これは、図11に示すように、図11の二点破線で示されたA線のようにクラッド部となるパイプ102の中を満たすまで重合性化合物を注入しても、これを重合すると体積が減少してしまい、実線で示されるB線のように、コア部103はクラッド部102の側端部を満たさぬ状態で生成される。そして、界面ゲル重合によりコア部103を生成した際には、そのコア部103は径方向の中央に向かうにつれて窪んだ形で生成されることが多く、少なくともその窪みの底部とクラッド端までの長さLの分だけはクラッド部102はロスとなってしまいPOFにはならない。さらに、コア部103が生成された部分であっても、その窪みの近傍付近は屈折率がランダムな状態となり、屈折率分布型のものとはならないという問題がある。そしてこのような問題は、クラッド部やコア部を複層にして外側から順に段階的に生成させる場合も同様に見られるものである。
そこで、本発明は、管状の第1部材の中に、重合性化合物を注入してこれを重合させて第2部材を生成させた際に生じる体積減少や屈折率のばらつきによる第1部材の製造ロスを減少させるプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法を提供することを目的とするとともに、この製造方法により得られ、良好伝送を有するプラスチック光ファイバを製造することができるプラスチック光ファイバプリフォームを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、管状である第1部材の中にこの第1部材とは異なる屈折率を有する第2部材を生成するための重合性化合物を注入してから、この重合性化合物を重合させるプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法において、第1部材を延長するための延長用部材をこの第1部材の一方の端部につなげた後に、第1部材の容積よりも大きな体積の前記重合性化合物を注入することを特徴として構成されている。
また、本発明では、前記第2部材は前記第1部材よりも屈折率が高いことが好ましく、前記延長用部材が管状であることが好ましい。そして、この延長用部材と前記端部とが、接着または密着によりつなげられることが好ましい。
前記重合により得られる重合物が前記第1部材の中を満たすように、前記重合性化合物の注入量を決定することが好ましく、前記重合性化合物に対する前記重合物の体積比を予め求めて前記注入量が決定されて、得られた重合物が前記第1部材の中を満たすことが好ましい。そして、前記重合が、界面ゲル重合法を用いて行われることが好ましい。
さらに本発明は以上の製造方法により製造されたことを特徴とするプラスチック光ファイバプリフォームを含んで構成されている。
本発明のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法は、予め形成された管状の第1部材の中に、重合性化合物を注入してこれを重合させて第2部材を生成させたときに、前記重合性化合物の重合による体積減少と、第2部材の上部における屈折率のばらつきとによる第1部材の製造ロスを減少させることができる。またこの製造方法により得られるプラスチック光ファイバプリフォームからは良好な伝送特性を有するPOFを製造することができる。
本発明の実施の形態について図を引用しながら説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。図1は、POF及び光ファイバーケーブルの製造工程図である。それぞれの工程については後で詳細に説明するものとし、ここでは工程の流れについてのみ説明する。まず、クラッド作成工程11により、管形状のクラッド12を作成する。クラッド12は、後で生成するプリフォーム21の外殻部分をなす部分である。
次に、クラッド12の中にコアを生成させるが、本実施形態では2重構造のコアを生成させ、以降の説明においては、外側、つまりクラッド12の内面と接して生成される部分をアウターコアと称し、内側、つまりアウターコアの中に生成される部分をインナーコアと称する。まず、アウターコアを生成させるための重合性化合物(以降、アウターコア用モノマーと称する。)を延長されたクラッド12の中に入れる第1注入工程13と、注入されたアウターコア用モノマーを重合させて、断面円形の中央が空洞となるようにアウターコアを生成するためのアウターコア重合工程15がある。
そして、クラッド12に管状部材をつなげてクラッドを延長するクラッド延長工程16がある。その後、インナーコアを生成させるための重合性化合物(以降、インナーコア用モノマーと称する。)をアウターコアの中に入れる第2注入工程17と、インナーコアを生成するためのインナーコア重合工程20がある。このようにしてPOFのプリフォーム21が得られる。なお本実施形態では、アウターコアとインナーコアとをそれぞれ形成する重合性化合物は、アウターコア用モノマー、インナーコア用モノマーとして説明をするが、本発明では単量体に限定されるものではなく、2量体や3量体等の他、後で詳細に説明する各種の重合体を形成するための重合性化合物を含んでいる。
プリフォーム21は、延伸工程22により延伸されて、POF(plastic optical fiber)25となる。この延伸工程16では、円柱状のプリフォーム15が、加熱されて、長手方向に延伸される。なお、プリフォーム21は、POF25とされなくとも、この状態のままでも光伝送体としての機能を有する。そして、POF25は、その外周を被覆材により被覆される被覆工程26を経る。なお、後で詳細に述べるが、被覆工程26では、通常は、一次被覆が実施された後に二次被覆が実施され、被覆工程を経たPOF25はプラスチック光ファイバ心線またはプラスチック光ファイバコード(ともに、plastic optical code)と称する。本発明においては、このファイバ心線が1本のままであり、必要に応じてさらに被覆を施されたものをシングルファイバケーブルと称し、一方、ファイバ心線がテンションメンバ等とともに複数本組み合わされてさらなる被覆材を被されたものをマルチファイバケーブルと称することとし、プラスチック光ケーブル27(plastic optical cable)とは、これらのシングルファイバケーブルとマルチファイバケーブルとの両方を含む。
次に、本実施形態としてのPOF25及びその製造方法を、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、プリフォーム21の断面図であり、図3はプリフォーム21の断面円形の径方向における屈折率を示す図である。図2に示すプリフォーム21は、外殻部であるクラッド12と、コア31とを有し、コア31は上記のように、クラッド12の内面に接するアウターコア32と、アウターコア32の内部のインナーコア33とを有している。クラッド12は、外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっている。クラッド12は、本実施形態ではポリフッ化ビニリデン(以降、PVDFと称する。)としており、溶融押出成型により得られたものである。ただし、クラッド12は、例えば回転重合により得られるPMMAであってもよいし、後に詳細に述べるような他の材料であってもよい。
アウターコア32は、クラッド12と同様に外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっている。本実施形態にて用いたアウターコア用モノマーはMMA(メチルメタクリレート)であり、これによって生成されたアウターコア32の材料はPMMAである。
図3において、横軸はプリフォーム21の断面径方向を示し、縦軸は屈折率を示す。屈折率は、上方向が高い値であることを意味している。横軸の符号(A)で示される範囲は、図2におけるクラッド12の屈折率であり、符号(B)で示される範囲は図2におけるアウターコア32の屈折率であり、符号(C)で示される範囲は図2におけるインナーコア33の屈折率である。
インナーコア33は、図3に示されるように、アウターコア32との境界から中心に向けて屈折率が連続的に高くなっている。クラッド12はアウターコア32よりも屈折率が低く、アウターコア32はインナーコア33よりも屈折率が低い。そして、本実施形態においては、製造されたプリフォーム21のインナーコア33の屈折率が、図3に示すように、断面円形の径の外側から中心に向けて連続的に屈折率が高くなるように、インナーコア33の生成方法として後述のような界面ゲル重合法を適用している。なお、断面円形の径方向において、屈折率の最大値と最小値との差が0.001以上0.3以下であることが好ましい。本実施形態のインナーコア用モノマーはMMAであり、重合後のアウターコア32とインナーコア33とは主成分がPMMAとなる。したがって、図2では両者の境界は、説明の便宜上示されてはいるが、得られたプリフォーム21では、図2のように明確でない場合もある。
次に、プリフォーム21の製造方法について詳細に説明する。本実施形態においては、クラッド12は、上記のようにPVDFを主成分としているので溶融押出にて作製している。溶融押出は、市販の溶融押出成型機を用いて実施している。
得られたクラッド12の片端部を所定の材料で栓をして塞いだあとに、アウターコア形成用モノマーをクラッド12の中に注入して、他方の端部を栓で塞いだ後、回転重合によりアウターコア32を生成する。図4は、回転重合装置の概略図である。回転重合装置35は、回転制御部36と重合部37とを備えており、回転制御部36は、モータ41と、モータ41の駆動を制御するコントローラ(図示なし)を備えた台42とを有する。また、重合部37は、重合器44と、重合器44をセットして回転する回転軸45と、回転する重合器44を支持するための支持部材46と、支持部材46が取り付けられている台47とを備える。そして重合器44は、クラッド12を中に装填するための重合器本体44aと、回転軸に重合器本体44aをセットするための取付け部材44bとを有している。なお、図示はしないが、重合部37は、重合器44内部の温度を制御するために、例えばオイルバス中にセットされており、このオイルバスのオイルは温度コントローラにより温度調整されるものとなっている。
モータ41により回転する回転軸45により重合器44は回転し、この際には重合器44はオイルバスにより温度制御されるので、重合器本体44aに装填されたクラッドの中のアウターコア用モノマーの重合温度が制御されるものとなっている。
アウターコア用モノマーのクラッドの中への注入時における温度が所定の値となるように、アウターコア用モノマーについては予め加熱等による温度調整を実施することが好ましい。アウターコア用モノマーをMMAとするときには、このMMAとともに、所定量の例えば重合開始剤や連鎖移動剤(分子量調整剤)等をクラッドに入れる。
アウターコア用モノマーの重合に際しては、クラッドの内部を減圧等により脱気することが好ましく、そして、クラッドの他方の端部である注入口を所定の材料により栓をして塞ぎ、周知の方法に従い、重合器44の内部で予備重合をし、その後クラッドの長手方向を水平状態にして、クラッドの断面円形の中心が回転中心軸となるように回転させながら重合を進めるとアウターコアが生成する。
ただし、クラッドとアウターコアとは、上記の材料と作製方法とにより作製されたものに限定されず、用いる材料に応じて適宜公知の方法を用いて作製することができる。例えば、クラッドとアウターコアとを、本実施形態と同じ材料を用いた場合であっても、同時一体押出成型により得ることができる。
アウターコアが形成されたクラッドを、回転重合装置35から取り出し、所定温度に設定された恒温槽等の加熱手段により所定時間の加熱処理をする。
また、アウターコアが形成されたクラッドを、所定時間減圧下におくことがより好ましく、本実施形態においてもこの減圧処理を実施した。クラッドやアウターコアの内部及び表面に水や空気が含まれていると、インナーコア用モノマーの重合時等に加熱されて体積膨張したりするなどして、クラッドやアウターコアの各内部やこれらの界面、あるいはアウターコアの内面に歪みやひび割れ等が発生したり、あるいはクラッドとアウターコアとの各内部の分子密度がばらついてしまうという現象が発生することが多いが、減圧処理によりこのような現象を抑制することができる。また、この減圧処理は上記加熱処理と同時に実施してもよい。
次に、クラッドを以下の方法により延長してからインナーコアを生成する。図5は、クラッドの延長方法を説明するものであり、アウターコアが形成されたクラッドの断面図である。クラッド12は、注入口とは反対側の端部の栓50ははずされずに、アウターコア用モノマーの注入口となった一方の側端部は栓がはずされて延長部材51が取り付けられる。延長部材51は管状のガラスであり、接着剤によりクラッド12につなげられている。延長部材51の内径と外径とは、それぞれクラッド12の内径と外径とにそれぞれ概ね等しいものとされている。
そして、アウターコア32の中に、インナーコア用モノマー52を注入するが、このとき、クラッド12の高さを超えて延長部材51における所定位置Aにまで注入する。この所定位置Aは以下のように求められる。まず、アウターコア32の容積、つまり、クラッド12の中をすべてコアで満たすようにインナーコアを生成すべき体積を求めておく。そして、インナーコア用モノマー52の重合前と重合後との体積比を求めておく。これらの値により、クラッド12の中をすべてコアで満たすためのインナーコア用モノマー52の必要量が求めることができ、これをすべてアウターコア32の中に注入したときの液面が図5における上記位置Aとなる。そして、インナーコア用モノマー52を、例えば後で詳細に述べるような界面重合をした後には、インナーコアの高さ(これを、図5においては、符号Bの2点破線で示す。)の最も低いところであってもクラッド12の高さよりも高くなりクラッド12の中はすべてコアで満たされることになる。
さらに、別の実施形態としてのクラッドの延長方法を図6と図7を用いて説明する。図6はクラッドへの延長部材の取り付け時、図7は接続後を示し、ともに延長部材とクラッドとのつなぎ箇所における断面図である。図6及び図7においては、図5に示した前実施形態と同様の部材については図5と同じ符号を付して説明を略す。前実施形態と同様に、クラッド12の一方の栓を取った端部に延長部材55が取り付けられる。延長部材55は、ポリマーが管状に成型されたものであり、図6に示すようにクラッド12をその内側にはめ込む。延長部材55の素材であるポリマーは熱により収縮する性質を有しており、クラッド12をはめ込んだ状態で所定時間、所定温度で加熱して、収縮させることにより、図7に示すようにクラッド12と十分に密着させる。このように延長部材55を用いてクラッド12を延長することにより、クラッド12の本来の高さを超えて延長部材55における高さAにまでインナーコア用モノマー52を注入することができるようになる。
本実施形態では、図7に示すように加熱収縮後の延長部材55の内径はクラッド12の内径より大きいが、この延長部材55の使用目的はインナーコア用モノマー52の注入量を従来法よりも増加させることにあるので、両者の内径の違いは問題にはならない。このように、クラッド12の内部をすべてコアで満たすために必要な量のインナーコア用モノマー52を入れるために用いる延長部材は、その内径と外径とが、必ずしもクラッド12の内径と外径とに等しいものである必要はなく、インナーコア用モノマー52の注入量を所定量増加させるために必要な内容積を確保するサイズを有していればよい。したがって、容積確保の点からは、延長部材の形状についても、上記に挙げた2つの実施様態は最も好ましい例示であって、必ずしも断面円形が長手方向に一様な管状でなくともよい。また、クラッド12に延長部材をつなぐ方法は、図5に示した前実施形態のように接着剤による方法であってもよいし、図6及び図7に示した実施形態のように加熱により収縮するものをクラッド12にはめ込み、加熱処理によりクラッド12に密着させる方法でもよく、さらに他の方法としては、インナーコアの原料が外部に漏れないように、クラッド12と延長部材との接合部をシールテープや熱収縮チューブ等により両者を固定する方法等が挙げられる。なお、延長部材を冷却する等して、延長部材に入れた重合性組成物の重合反応の進行を遅らせ、これにより、延長部材中に入った重合性化合物が、クラッド内部でのコアの重合時における体積収縮分を補填するようにすることもできる。
上記ふたつの実施形態においては、クラッド延長工程16(図1参照)はアウターコア重合工程15と第2注入工程17(図1参照)との間に実施されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1注入工程13(図1参照)の前に実施してもよい。また、アウターコア用モノマーが重合する際にも、インナーコア用モノマーの重合するときと同様に大きな体積収縮がみられるときには、クラッド延長工程16を第1注入工程13の前に実施しておくことが効果的であり、これによりアウターコアをクラッドの内面全体に生成させることができる。したがって、本発明によるとクラッド内部はコアで満たされた状態となり、従来発生していたロスを著しく減少させることができる。また、クラッドやコアを、軽水素を重水素で置き換えたポリマー、例えばPMMA−d8とした場合には、これらの原料コストがもともと大きいために、本発明によるコスト低減効果は大きい。
以上のように、延長部材を用いてクラッド12を延長してから、アウターコア32の中にインナーコア用モノマーを注入する。本実施形態においてはインナーコア用モノマーにMMAを用いており、この第2注入工程においては、重合開始剤、連鎖移動剤、および適宜屈折率調整剤(ドーパント)等がインナーコア用モノマーとともに注入される。これらは、例えば注入前にインナーコア用モノマーと予め混合し、この混合液を所定の濾過手段で濾過した後、アウターコアの中に注入される。このように、注入前には濾過工程を設けて、その濾液を注入に供することが好ましい。重合開始剤や連鎖移動剤、ドーパントの各添加量については、後述する。なお、ドーパントを用いずに、例えばインナーコア用モノマーを2種以上用いる等によっても、コア31(図2参照)の断面の径方向における屈折率を変化させることもできる。本実施形態においては、ドーパントとして、高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与しない低分子化合物としての硫化ジフェニルを用い、これを添加することによりコアの径方向における屈折率を変化させている。
本実施形態においては、インナーコア用モノマーの重合は、界面ゲル重合法により実施しており、図8に示すような重合装置60により行う。なお、図8においては、図5で示した延長部材51を用いてクラッドを延長させた場合を図示しているが、図6及び図7で示した延長部材55を用いた場合もこれと同様であるので図示及び説明は略す。重合装置60は、重合容器61と、圧力計64と、圧力コントローラ65との他に、温度計67と温度コントローラ68とを備えている。さらに、重合容器61には、不活性ガスとしての窒素を供給する窒素供給元71が備えられている。そして、重合容器61は容器本体61aと蓋61bとを有しており、容器本体61aと蓋61bとは、ネジ(図示せず)で固定される。ただし、本発明は、重合装置の構造には依存せず、図2に示される重合装置60とは異なるものを用いてもよい。
圧力計64は、重合容器61の内部の圧力を検知する。圧力コントローラ65は、圧力計64の検知結果に応じて、窒素供給元71からの窒素供給量を調節して、重合容器61の内部の圧力を制御する。また、温度計67は、重合容器61の内部の温度を検知する。容器本体61aには加熱線(図示なし)が備えられており、温度コントローラ68は、温度計67の検知結果に応じて、加熱線を流れる電流を制御する。これにより、重合容器61の内部の温度は制御される。なお供給されるガスは不活性ガスであれば窒素に限定されず、ヘリウムやアルゴン等でもよい。このガス供給により、重合容器61の内部空気は窒素に置換される。重合容器61は、容器本体61aと蓋61bとがネジ留めされることにより、内部の圧力と、内部への窒素の供給量とを精巧に制御することが可能となっている。
延長部材51を備えたクラッド12は、インナーコア用モノマー及び重合開始剤、連鎖移動剤、ドーパント等の混合物が注入された状態で、治具としてのガラス管72に挿入されて、容器本体61aに入れられる。このとき、ガラス管72は、垂直に静置される。なお、インナーコア用モノマー等が注入された状態のクラッド12は、ガラス管72に挿入される前、あるいは、挿入された状態で、脱気処理を施されることが好ましい。この脱気処理方法としては、簡便さならびに効果の点で、減圧チャンバ等による減圧処理が好ましく、本実施形態では5分間実施している。また、この減圧処理において超音波を作用させることがさらに好ましい。減圧処理は、減圧チャンバ等で30分以上行うことがより好ましい。
クラッド12が挿入されたガラス管72が容器本体61aにセットされ、蓋61bが容器本体61aにネジ留めされると、窒素供給元71から重合容器61の内部へ窒素が供給されるとともに、バルブV1を開状態とすることにより重合容器61の内部の空気が出されて、重合容器61の内部の空気は窒素に置換される。窒素置換した後、重合容器61の内部圧力は、所定の値となるように圧力コントローラ65により制御される。そして、コア用モノマーの重合は、温度コントローラ68により加熱された状態で行う。重合は所定の温度下で所定の時間行う。重合反応中における圧力は、圧力コントローラ65により所定値となるように制御されており、常圧より高くすることが好ましい。
インナーコア用モノマーが重合を開始すると、アウターコアの内壁がインナーコア用モノマーにより膨潤し、重合初期段階では膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっており、そのため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。そして、重合は、アウターコアの内面から開始し、クラッド12の断面円形の中心に向かって進行する。このとき、膨潤層の内部へは、分子体積の小さい化合物ほど優先的に入り込むため、重合の進行と共に、共存する他の化合物と比べて分子体積の大きなドーパントが膨潤層から前記中心方向へと押し出される。この結果、形成されたインナーコアの中心部は、高屈折率のドーパントの濃度が高くなり、図3に示したように、断面円形の径方向における中心に向かって屈折率が徐々に高くなったプリフォームを得ることができる。
なお、本実施形態においては、アウターコアとインナーコアとは、ともにPMMAとからなり、上記のように膨潤層を形成しながらプリフォームが作成されることから、アウターコアとインナーコアとは明確な境界を有するものではない。つまり、図2では説明の便宜上クラッドとコアとの境界を示しているが、このように、アウターコアとインナーコアとの材料の互いの親和性、または膨潤層形成の有無等の製造条件に応じて、得られたプリフォームにおけるアウターコアとインナーコアとの境界の明確度は異なったものとなる。
また、このインナーコア重合工程においては、インナーコア用モノマーが注入されたクラッド12を、図8に示すようにガラス管72等の治具により支持して重合容器61にセットすることが好ましい。前記治具は、クラッド12の挿入が可能な中空部を有する管形状であることが特に好ましい。そして、加圧下で重合が進むに従い、インナーコアとなる領域が収縮しようとする力を徐々に増していくが、これに応じてクラッド12が微小な範囲で寸法変化することができるように、前記治具は、クラッド12の外面を固定等せずにクラッド12を支持することが好ましい。例えば、クラッド12が治具に固定されて支持されている場合には、重合中のインナーコアの収縮に対してクラッド12が応じることができずに、インナーコアの中央部に空隙が発生し易くなってしまう。このような理由により、治具が管状である場合には、前記クラッド12の外径より大きい内径を有することが好ましい。前記管状治具の内径は、前記クラッド12の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましく、本実施形態では9%だけ大きい径を有しているものとした。ただし、前記クラッド12を垂直に立てることができ、クラッドの寸法変化に応じてこれを支持するものであれば好ましく用いられ、管状である必要はない。
重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるインナーコア用モノマーによって適宜決定される。加圧度が大きすぎると、インナーコア用モノマー中に加圧気体が溶解したり、または、コア用モノマーに存在する溶存気体が脱離せず、加熱による延伸工程22(図1参照)でこれが気泡となるという問題がある。一方、加圧度が小さすぎると、インナーコア重合時の体積収縮に対して、密度均一化の応答性が低くなり、空隙や気泡が発生しやすいという問題がある。本実施形態では、0.01MPa〜1.0MPa程度が好ましい範囲であった。このように、インナーコア重合時の圧力を制御することにより、プリフォームのコアあるいは延伸後に得られるPOFのコアに、空隙や気泡が発生することを抑制することができる。
インナーコア用モノマーの重合は加熱下でなされることが好ましい。その温度は、インナーコア用モノマーの種類等に応じて決定されるものであり、主にその重合速度と変質温度とを考慮して決定される。例えば、インナーコア用モノマーの主成分として、典型的なメタクリレート系低分子化合物を用いた場合には、その温度は50℃〜150℃とすることが好ましく、80℃〜140℃とすることがさらに好ましい。また、重合時間は、4時間〜48時間であることが好ましいが、これもコア用モノマーの種類等に応じて決定される。
また、本実施形態では、上記のように加圧下で加熱重合を実施した後、さらに、所定条件での熱処理をして重合を進め、さらに、この重合完了後には、加圧したまま所定の冷却速度で冷却する。
冷却後、延長部材をクラッドから取り外し、コアおよびクラッドがプラスチックからなり、かつコアがアウターコアとインナーコアとの2重構造である、円柱状の光伝送体であるプリフォームを作製することができ、得られたプリフォームは延伸工程に供される。なお、インナーコア用モノマーの重合収縮による体積減少分を予め求めておくことにより、延長部材内に生成するインナーコアの体積を最小限に抑えることができ、インナーコアのロスを最小限にとどめることができる。また、インナーコアを延長部材内に生成させて延長部材を取り外し、次の延伸工程において延長部材が取り外された部分のインナーコアをプリフォームの把持部として使用してプリフォームを延伸することもできるし、あるいは、生成するインナーコアの量に関わらず、延長部材をクラッドに取り付けたまま、この延長部材を次工程の前記把持部として利用することもできる。したがって、この延長部材の除去の要否または除去のタイミングは、POFの製造装置及び方法等に応じて決定するとよい。そして、公知の各種延伸方法により、所望の直径、例えば200μm以上1000μm以下のPOFを得ることができる。なお、本実施形態におけるPOFでは、光はアウターコアとクラッドとの界面で反射してアウターコアとインナーコアとの両方を通過することもあるが、また、インナーコア内のみを通過することもある。
上記実施形態では、第1部材としてのクラッドの中に第2部材としてのコアを形成し、そのコアをアウターコアとインナーコアとの2重構造とした場合を説明したが、これ以外の構造を有するプリフォームを製造する場合でも本発明は適用される。図9には、別の実施形態として得られるプリフォーム81の断面図を示す。このプリフォーム81は、外殻部であるクラッド82と、クラッド82の中のコア83とを有しており、このコア83にはアウターコアとインナーコアとの区別がない。そして、これらのクラッド82とコア83とは、延伸によりPOFとされた際に、それぞれ、POFのクラッドとコアとになる。また、アウターコアのみからなる中空管の中空部にインナーコアを形成させて円柱状としてから、アウターコアの外周部に管状のクラッドを付与する場合には、アウターコアを延長部材により延長してインナーコア用モノマーを注入する等して、本発明を適用することができる。
クラッド82は、外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっており、一方の端部はふさがれている。クラッド82は、本実施形態ではポリメチルメタクリレート(以降、PMMAと称する)としており、回転重合法により製造している。クラッド82は、このように、重合性化合物を重合した重合体からなる。以下の説明においては、このクラッド12を形成するための上記重合性化合物をクラッド用モノマーと称し、クラッド用モノマーを重合して生成した重合体をクラッド形成ポリマーと称することとする。本実施形態におけるクラッド82の製造は、MMAからPMMAを生成するときのように、重合反応を行いながら管状に形成する回転重合法でおこなう場合もあるし、先に述べた第1の実施形態のようにポリマーを溶融押出成型により管状に形成する場合もある。
そして、このクラッド82の中にコアを生成するための重合性化合物(以降、これをコア用モノマーと称する。)を注入する前に、前実施形態と同様に延長部材をクラッド82の片端部にとりつけてクラッド82を延長する。この延長部材を使用することにより、生成するコアがクラッド82の中を満たすことができるに必要な量のコア用モノマーを注入することができる。そして、コア用モノマーは前実施形態のインナーコア重合時と同様に界面ゲル重合法により重合してコアを生成する。
コアを生成してから延長部材を取り外されて得られるプリフォーム81は、注入時にとりつけた片側端部の栓の厚みを除くクラッド長手方向全体に以下のような屈折率を有する。図10には得られたプリフォーム81の断面における屈折率を示す。図10においては、横軸はプリフォームの断面径方向を示し、縦軸は屈折率を示す。屈折率は、上方向が高い値であることを意味している。横軸の符号(D)で示される範囲は、図9におけるクラッド82の屈折率であり、符号(E)で示される範囲は図9におけるコアの屈折率である。コアは、図9に示されるように、クラッドとの境界から中心に向けて屈折率が連続的に高くなっている。そして、クラッドの屈折率は、コアの屈折率より低くなっている。なお、断面円形の径方向において、屈折率の最大値と最小値との差が0.001以上0.3以下であることが好ましい。この構造によりプリフォームは、光伝送体としての機能を発現し、これを延伸させたものが光ファイバとなる。
以上のように、コアが中心に向けて屈折率が連続的に変化するプリフォームを長手方向に延伸して作られるPOFは、グレーデッドインデックス(GI)型POFと称される。ただし、本発明は、GI型POFの製造に限定されるものではなく、コアの屈折率が中心に向けて段階的に高くなるようなステップインデックス型POFの製造にも適用することができる。さらに、本発明は、クラッドを複層とする必要がある場合にも適用することができ、外側から内側へと順に層を生成させる際に、延長部材を例えば最外殻の層となるものに取り付けてその内壁に層を重合により生成させるとよい。
本発明においては、プリフォームを構成するクラッド及びコアの材料は、光伝送の機能を損なわない限りにおいて特に限定されるものではない。特に好ましく用いられるものとしては、有機材料として光透過性が高いものである。ただし、コアを伝送する光がコアとクラッドとの界面で全反射するように、クラッドの材料は、コアの屈折よりも低い屈折率を有するようなポリマーとする。また、光学的異方性を生じないように、非晶性のポリマーとする。さらに、コアとクラッドとは、互いに密着性に優れるポリマーとし、これらがタフネス等に示される機械的特性に優れ、耐湿熱性にも優れていることがより好ましい。
例としては、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールA等を重合性化合物として用いて重合させたものとすることができる。そして、クラッド形成ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)も好ましい。これらを原料として、各々を重合させたホモポリマー、あるいはこれらのうち2種以上を組み合わせて重合させた共重合体、および上記のホモポリマーや共重合体の各種組み合わせによる混合物も例として挙げることができる。混合物を用いる場合においては、上記沸点Tbは、混合物を構成する複数の原料化合物の沸点の中で最も低い温度、もしくは共沸混合物を成すことにより沸点が下がるときには沸点下降後の温度として定義される。また、混合物を原料として得られた共重合体及びブレンドポリマーの場合には、各共重合体またはブレンドポリマーのガラス転移点を上記Tgとして定義する。そして、これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類または含フッ素ポリマーを成分として含むものが光伝送体を構成する上でより好ましい。次に、上記の例について、より詳細に示す。
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性化合物の単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率が、光伝送体に成型されたときに所定の屈折率分布を成型体のなかで有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
また、クラッドを形成する好ましいポリマーとしては、上記の各種化合物の他に以下のものを例示することができる。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とトリフルオロエチルメタクリレート(FMA)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート等のフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体を挙げることができる。また、MMAと,tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体がある。さらにはポリカーボネート(PC)、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)や、テトラフルオロエチレンパーフルオロ(アルキルビニルエーテル(PFA)ランダム共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体などを用いることもできる。また、これらのポリマーの水素原子(H)を重水素原子(D)に置換して伝送損失の低減を図ることもできる。
さらに、光学部材を近赤外光用途に用いる場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマーを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマーとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
重合させてポリマーとする場合においては、重合開始剤を使用する場合がある。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではなく、また、2種類以上を併用してもよい。
ポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
GI型POFは、伝送性能に優れているため、他の型のPOFよりも広帯域の光通信を行うことができ、高性能通信用途に好ましく用いることができる。屈折率の分布を付与する方法としては、コアとなるポリマーに、複数の重合単位を組み入れたり、それらのポリマーをさらに組合わせた共重合体を用いたり、または、ドーパントを添加する必要がある。
ドーパントは、上記のような重合性化合物とは異なる屈折率を有する化合物である。その屈折率差は0.005以上であることが好ましい。ドーパントは、これを含有するポリマーが無添加のポリマーと比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成されるポリマーとの比較において、溶解性パラメータとの差が7(cal/cm3 )1/2 以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
また、ドーパントは重合性化合物であってもよい。重合性化合物のドーパントを用いた場合には、これを共重合成分として含む共重合体が、これを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定した共存が可能で、かつ、前述のコアあるいはクラッドの原料である重合性化合物の各種重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、インナーコア用モノマーあるいはコア用モノマーにドーパントを含有させ、その重合工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コアに屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成する方法を例示しているが、それ以外にもプリフォーム形成後に屈折率調整剤を拡散させる方法も知られている(以下、屈折率の分布を有するコアを「屈折率分布型コア」と称する)。屈折率分布型コアを形成することにより、得られる光学部材は、広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、ポリマーマトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。ドーパントの、コア部における濃度および分布を調整することによって、プラスチック光ファイバの屈折率を所望の値に変化させることができる。
前述した重合開始剤や連鎖移動剤、屈折率調整剤の各添加量については、用いるインナーコア用モノマーあるいはコア用モノマーの種類等に応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、インナーコア用モノマーあるいはコア用モノマーに対して0.005〜0.050質量%となるように添加しており、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、インナーコア用モノマーあるいはコア用モノマーに対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しており、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。そして、本実施形態のように、ドーパントを添加する場合の添加率は、インナーコア用モノマーあるいはコア用モノマーに対して、1質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。
その他、コア、クラッドもしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コアもしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性化合物に添加した後、重合することによって、コア、クラッドもしくはそれらの一部に含有させることができる。
GI型POFのプリフォームの製造方法は、特許3332922号公報に記載されているように、クラッドとなる樹脂の中空管を作成し、その管内にコアを形成する樹脂組成物を注入し、塊状重合法の一種である界面ゲル重合法によりポリマーを重合することによりコアを形成する方法を例示することができる。この場合の重合条件、つまり重合温度や順号時間は、用いるモノマーや重合開始剤により異なるが、一般的に好ましい条件がある。その条件とは、例えば重合温度は、60℃以上で、かつ生成するポリマーのガラス転移点以下であることが好ましく、60℃以上150℃以下であることが好ましい。また例えば重合時間は、5〜72時間であることが好ましく、5〜48時間であることがより好ましい。不活性ガス雰囲気中で重合反応を行うことが好ましく、必要に応じて、加圧や減圧を実施してもよい。この他にも、国際公開第03/19252号パンフレット記載の重合条件を適用することにより、密度のばらつきがないコアを形成することができる。また、その他には、重合後の屈折率が異なる重合性組成物を逐次添加するコアの形成法も知られている。また、樹脂組成物は前述のように、単一の屈折率を持つ樹脂組成物に屈折率調整剤を添加するものや、屈折率の異なる樹脂を混合するもの、共重合体などが用いられる。
POFは、曲げ、耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として、通常、その表面に1層以上の保護層を被覆して使用される。
保護層形成用材料としては、具体的に以下の材料を挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的な特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを用いることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば,ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
また、保護層形成用材料としては、室温では流動性を示し、加熱することによりその流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
保護層形成用材料として、さらには、熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることもできる。熱可塑性エラストマーは、室温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化されて成形が容易である物質群である。具体的には、スチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPEなどが挙げられる。なお、前記列記したポリマーは、POFのポリマーのガラス転移温度Tg以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーを用いることもできる。
また、ポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させるものを保護層形成用材料として用いることができる。例えば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物を挙げることができる。また、国際公開第95/26374号パンフレットに記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
本発明の光伝送体は、さらに、必要に応じて上記の保護層を1次被覆層とし、外周にさらに2次(または多層)被覆層を設けても良い。1次被覆が充分な厚みを有している場合には、1次被覆の存在により熱ダメージが減少するため、2次被覆層の素材の硬化温度の制限は、1次被覆層を被覆する場合に比べて、緩くすることができる。2次被覆層には前述と同様に、難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよい。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を好ましく使うことができる。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の1次被覆層の外層に耐湿性被覆を設けてその外層にさらに被覆層として設けることが望ましい。
また、被覆層に複数の機能を付与させるために、さらに様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、前述の難燃化以外に、吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を向上させるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、プラスチック光ケーブルの形状は使用形態によって、POFまたはプラスチック光ファイバ心線を同心円上にまとめた集合型のものや、一列に並べたテープ型のもの、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなど用途に応じてその使用形態が選ばれる。
また、本発明により得られたPOFを用いた光デバイスは、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型、F05型、MU型、FC型、SC型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
本発明の製造方法によるPOFには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等が組み合わされる。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、実施例3は、実施例1に対する比較実験として行ったものである。
重合容器内に、溶融押出成形により作製した内径20mm、長さ60cmのPVDFの中空管をクラッド12としてセットした。重合器44は、充分に剛性を有する内径20mm、内部の長さ60cmのものである。水分を100ppm以下に除去したMMA120gと、重合開始剤としてのジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB、dimethyl−2,2’−azobisisobutyrate)を0.06gと、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタン0.48gとの混合物を所定温度に調整してからクラッド12に注入し、回転しながら90℃で重合を行い、クラッド12の内面にPMMAからなる層を形成してこの層をアウターコア32とした。
アウターコア32を有するクラッド12の片側端部に、ガラス製の延長部材51を接着剤によりつなげて、その後、4×102 Paで2時間保持した。その後、水分を100ppm以下に除去したMMA72gと、重合開始剤としてのPBD12μlと、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタン0.198gと、ドーパントとしてのDPSとの混合物を所定の温度に調整してアウターコア32に注入した。MMAの注入量については、重合後の体積収縮を見込んで、クラッド管に充填することができる量の120%となるようにした。DPSはMMAに対して7重量%とした。その後、このクラッド12は、ガラス管52内に挿入され、重合容器61にセットされた。なお、ガラス管52は、クラッド12の外径に対し9%だけ広い内径をもつものである。ガラス管52は、重合容器51に垂直に静置した。その後、重合容器61内を窒素置換した後、0.05Mpa加圧し、100℃で48時間加熱重合した。その後、120℃で、24時間、加熱重合および熱処理を行った。重合完了後、加圧量を0.05Mpaに保持したまま0.01℃/分の冷却速度にてこれを冷却して降温した後に、プリフォーム21を得た。そして得られたプリフォーム21の延長部材側の側端部における断面の、径方向における屈折率を測定した後、このプリフォーム21を延伸してPOF25を得た。
得られたプリフォーム21のインナーコア33は、クラッド12の内部を満たしていた。そしてこのプリフォーム21の側端部の径方向における屈折率は、その長手方向の中央部の径方向における屈折率と同様の数値分布を示していた。そして、得られたPOFは外径が500μmの外径を有し、長さは705mである。さらに、得られたPOFの伝送損失値を測定したところ、波長650nmにて170dB/kmであった。
アウターコア32を有するクラッド12の片側端部に、熱収縮するポリマー製の延長部材55を加熱によりつなげて、その後、4×102 Paで2時間保持した。その後、水分を100ppm以下に除去したMMA72gと、重合開始剤としてのPBD12μlと、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタン0.198gと、ドーパントとしてのDPSとの混合物を所定の温度に調整してアウターコア32に注入した。DPSは、用いたMMAに対して7重量%とした。その他の条件は実施例1と同様にして実施した。
得られたプリフォーム21のインナーコア33は、クラッド12の内部を満たしていた。そしてこのプリフォーム21の側端部の径方向における屈折率は、その長手方向の中央部の径方向における屈折率と同様の数値分布を示していた。そして、得られたPOFは外径が500μmの外径を有し、長さは730mである。さらに、得られたPOFの伝送損失値を測定したところ、波長650nmにて177dB/kmであった。
延長部材51をクラッド12につなげることなく、アウターコア32の中に、所定の温度に調整された以下の混合物を注入した。混合物は、水分を100ppm以下に除去したMMA60gと、重合開始剤としてのPBD10μlと、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタン0.165gと、ドーパントとしてのDPSとの混合物である。DPSは、用いたMMAに対して7重量%とした。他の条件は実施例1と同様にして実施した。
得られたプリフォーム21において、インナーコア33は、クラッド12の側端より15cm窪んだ状態で形成された。そしてこのインナーコア33の側端部近傍にあたるプリフォーム21の径方向における屈折率を測定したところ、そのグラフ曲線は図10のような連続して変化した山形形状ではなく、部分的に歪んだ分布形状となった。そして、得られたPOFは外径が500μmの外径を有し、長さは520mである。さらに、得られたPOFの伝送損失値を測定したところ、波長650nmにて173dB/kmであった。
以上の実施例1〜3により、予め形成された管状の第1部材の中に、重合性化合物を注入してこれを重合させて第2部材を生成させたときに、本発明のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法によると、前記重合性化合物の重合による体積減少と第2部材の上部における屈折率のばらつきとに起因する第1部材の製造ロスを減少させることができることがわかる。
12 クラッド
16 クラッド延長工程
17 第2注入工程
20 インナーコア重合工程
21 プリフォーム
31 コア
32 アウターコア
33 インナーコア
40 重合装置
41 重合容器
51 延長部材
52 インナーコア用モノマー
55 延長部材
16 クラッド延長工程
17 第2注入工程
20 インナーコア重合工程
21 プリフォーム
31 コア
32 アウターコア
33 インナーコア
40 重合装置
41 重合容器
51 延長部材
52 インナーコア用モノマー
55 延長部材
Claims (8)
- 管状である第1部材の中に前記第1部材とは異なる屈折率を有する第2部材を生成するための重合性化合物を注入してから、前記重合性化合物を重合させるプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法において、
前記第1部材を延長するための延長用部材を前記第1部材の一方の端部につなげた後に、前記第1部材の容積よりも大きな体積の前記重合性化合物を前記注入することを特徴とするプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。 - 前記第2部材は前記第1部材よりも屈折率が高いことを特徴とする請求項1記載のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。
- 前記延長用部材が管状であることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。
- 前記延長用部材と前記端部とが、接着または密着することを特徴する請求項1ないし3いずれかひとつ記載のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。
- 前記重合により得られる重合物が前記第1部材の中を満たすように、前記重合性化合物の注入量を決定することを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。
- 前記重合性化合物に対する前記重合物の体積比を予め求めることにより、前記前記重合性化合物の注入量を決定することを特徴とする請求項5記載のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。
- 界面ゲル重合法を用いて前記重合することを特徴とする請求項1ないし6いずれかひとつ記載のプラスチック光ファイバプリフォームの製造方法。
- 請求項1ないし7いずれかひとつ記載の製造方法により製造されたことを特徴とするプラスチック光ファイバプリフォーム。
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-
2004
- 2004-06-22 JP JP2004184017A patent/JP2006010775A/ja active Pending
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