JP2006008501A - 繊維状炭素微粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は繊維状炭素微粒子およびその製造方法に関する。
2次元に発達した黒鉛炭素構造が円筒状に巻いた形状のカーボンナノチューブは、導電性フィラーとしての用途の他、種々の用途への応用が期待されている。斯かるカーボンナノチューブの製法としては、アーク放電法、気相法(CVD法)等が知られている(特許文献1及び2参照)。
ところで、従来公知のカーボンナノチューブは、媒体に分散して使用する場合、分散性が十分ではない。
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、その目的は、媒体への分散性が改良された新規な構造の繊維状炭素微粒子およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の炭素化手段の採用により、従来存在しなかった新規な構造を備えた繊維状炭素微粒子が得られることを知得し、本発明の完成に到った。
すなわち、本発明の第1の要旨は、短径が5nm以上5μm以下の繊維状炭素微粒子であって、下記の式(I)で定義される表面粗度が7.0%以上の凹凸構造を表面に有することを特徴とする繊維状炭素微粒子に存する。
本発明の第2の要旨は、炭素結晶壁で包囲されている単一の中空部が形成された繊維状炭素微粒子であって、繊維状炭素微粒子の少なくとも両端部は炭素結晶端が露出した構造を備え、繊維状炭素微粒子の長径が40nm以上10μm以下で短径が5nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする繊維状炭素微粒子に存する。
本発明の第3の要旨は、上記の繊維状炭素微粒子の集合体であって、以下の方法で調製された分散液について、調製後24時間静置して測定した以下の式(II)で表される粒径分布指標Aが0.1〜20であることを特徴とする繊維状炭素微粒子集合体に存する。
<分散液の調製>
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
本発明の第4の要旨は、分散媒中に第3の要旨に係る繊維状炭素微粒子が分散して成ることを特徴とする繊維状炭素微粒子の分散体に存する。
本発明の第5の要旨は、短径が5nm以上5μm以下の範囲から選択される所定長さの繊維状炭素前駆体粒子を原料とし、当該原料の原形型内で原料を炭素化することを特徴とする第1の要旨に係る繊維状炭素微粒子の製造方法に存する。
本発明の第6の要旨は、長径が40nm以上10μm以下で且つ短径が5nm以上5μm以下の範囲から選択される所定長さの繊維状炭素前駆体粒子を原料とし、当該原料の原形型内で原料を炭素化することを特徴とする第2の要旨に係る繊維状炭素微粒子の製造方法に存する。
本発明の繊維状炭素微粒子は、分散性が優れ、取り扱いが容易であり、他の材料への配合の際に分散媒中で凝集なく均一に分散することが出来、その結果、導電性、電界放出などの電気的特性を均質に発現させることが出来る。
以下、本発明を詳細に説明するが、この発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば、種々に変更して実施することが出来る。
<本発明に係る繊維状炭素微粒子の製造方法>
先ず、説明の便宜上、本発明に係る繊維状炭素微粒子の製造方法について説明する。
先ず、説明の便宜上、本発明に係る繊維状炭素微粒子の製造方法について説明する。
本発明においては、所定長さの繊維状炭素前駆体粒子を原料とし、当該原料の原形型内で原料を炭素化する。本発明は2つの製造方法を包含するが、両者は繊維状炭素前駆体粒子の規定の仕方が異なるのみである。すなわち、第1の方法では、繊維状炭素前駆体粒子の短径の長さのみが規定され、第2の方法では、短径および長径の両者の長さが規定されている。そして、第2の方法で規定される長径は、第1の方法における好ましい態様である。従って、以下の説明は、繊維状炭素前駆体粒子に関する説明を除き、第1及び第2の方法の両者に適用される。そして、以下の繊維状炭素前駆体粒子に関する説明は、第1の方法の態様についてなされてが、短径と共に長径も規定されているとの条件で第2の方法にも適用される。
本発明においては、短径が5nm以上5μm以下の範囲にある繊維状炭素前駆体微粒子を原料として使用する。本発明の好ましい態様において、長径は40nm以上1000μm以下に規定される。長径は、好ましくは40nm以上100μm以下、更に好ましくは40nm以上10μm以下の範囲である。繊維状とは、アスペクト比が通常2以上のものをいう。繊維状炭素前駆体粒子および本発明に係る繊維状炭素微粒子の形状は、走査型または透過型の電子顕微鏡による観察で確認することが出来る。
炭素前駆体に使用される材料は、特に制限されないが、結晶性の炭素構造を誘導する観点からは液相炭素化が容易な材料が好ましい。その具体例としては、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、フェノール樹脂、レーヨン、ピッチ等が挙げられる。これらの中では、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマーが好ましい。その理由は、これらの材料が炭素化する段階で結晶の制御が容易な液相過程を有するためである。結晶性の制御は、例えば、炭素化のための温度条件を変化させるといった簡単な操作で可能である。なお、液相炭素化とは、固体がガラス転移温度Tgにおける流動状態よりも高い流動状態を経て、熱化学反応が液相中で進行し、分子の移動や配向が比較的起こり易い炭素化過程をいう。
通常、有機ポリマー材料を不活性ガス雰囲気中で炭素化して炭素化生成物を得る場合、炭素化歩留まりの高いポリマーが前駆体として使用される。しかしながら、本発明では原形型内で炭素化するため、一般の有機物の炭素化に比べて熱分解消失が制御される。従って、本発明においては、前述した種類以外のポリマーからも目的の炭素化物を高い歩留まりで誘導することが出来る。
本発明においては、炭素前駆体に易熱分解性ポリマーを含有させるのが好ましい。易熱分解性ポリマーは、通常、不活性な雰囲気下で、常圧で、500℃以上に加熱したときに分解する。易熱分解性ポリマーは、炭素前駆体の炭素化の加熱過程で炭素前駆体(液相炭素化可能材料)の塑性変形を容易にし、更に、高温域では熱分解してガスとなり、その圧力によって炭素前駆体を内部から拡張し、中空粒子の形成を促進する機能を有する。ガス圧によって拡張された炭素前駆体は、粒子の外表面に塗布された後述の耐熱性材料の壁に押しつけられ、その場で炭素化が進行し且つ結晶化が促進する。易熱分解性ポリマーの使用割合は、余りに多い場合は形成される炭素結晶壁が損傷する恐れがあるため、炭素前駆体と易熱分解性ポリマーの合計量に対する割合として、通常2〜70重量%、好ましくは2〜50重量%である。
上記の様な易熱分解性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。炭素前駆体に易熱分解性ポリマーを含有させる方法としては、単なる溶融混合やそれぞれの構成モノマーを任意の組成比で共重合する方法や組成を偏在させるためのシード重合する方法などが挙げられる。
繊維状炭素前駆体粒子は、例えば液相炭素化可能材料の粒子(被延伸粒子)を他のマトリックスポリマーに分散させて延伸した後、マトリックスポリマーを分離除去することにより得られる。マトリックスポリマーとしては、液相炭素化可能材料がポリビニルアルコール以外のときは、延伸後の分離除去の容易性、被延伸粒子の分散性などを考慮してポリビニルアルコールが好適に使用される。そして、繊維状炭素前駆体粒子の長さは、上記の延伸操作の倍率により調節することが出来る。また、被延伸粒子の直径は通常10nm以上2μm以下である。なお、被延伸粒子の直径は、通常、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察などで確認できる。
特に、繊維状炭素前駆体粒子の長径および短径が一定であり、より形状が均一に揃った
前駆体粒子を使用する場合は、その製法として以下の方法が例示できる。先ず、炭素前駆体となる液相炭素化可能な材料であって、略均一な粒径をもつ粒子(被延伸粒子)を他のマトリックスポリマーに分散させる。次いで、得られた分散体を糸状またはフィルム状の形態で所定の倍率で延伸した後、マトリックスポリマーを分離除去する。斯かる方法により、形状が均一に揃った前駆体粒子が粒子群として得られる。均一な粒径をもつ粒子(被延伸粒子)は、材質が有機ポリマーの場合は、乳化重合またはソープフリー重合によるエマルジョン粒子として合成が可能である。
前駆体粒子を使用する場合は、その製法として以下の方法が例示できる。先ず、炭素前駆体となる液相炭素化可能な材料であって、略均一な粒径をもつ粒子(被延伸粒子)を他のマトリックスポリマーに分散させる。次いで、得られた分散体を糸状またはフィルム状の形態で所定の倍率で延伸した後、マトリックスポリマーを分離除去する。斯かる方法により、形状が均一に揃った前駆体粒子が粒子群として得られる。均一な粒径をもつ粒子(被延伸粒子)は、材質が有機ポリマーの場合は、乳化重合またはソープフリー重合によるエマルジョン粒子として合成が可能である。
繊維状炭素前駆体粒子の延伸方法としては、特に限定されないが、例えば、前駆体原料の溶液または熱による溶融液を紡糸する方法が挙げられる。斯かる方法により、一定の径の繊維を得ることが出来る。繊維の直径は、繊維状炭素前駆体粒子の短径に相当するが、紡糸のノズルの径および曳き出し速度を調整することにより、所望の短径相当の直径を有する繊維を得ることが出来る。紡糸方法としては、乾式紡糸法、湿式紡糸法、溶融紡糸法、電気紡糸法などが挙げられる。そして、切断、グラインド等の方法で繊維を処理することにより、長径に相当する長さに調節できる。この様にして、所望の短径と長径を有する繊維状炭素前駆体粒子を得ることが出来る。
本発明の繊維状炭素微粒子の製造方法は、上記の繊維状炭素前駆体粒子を原料とし、当該原料の原形型内で原料を炭素化することを特徴とする。本発明の好ましい態様においては、耐熱性材料で原料を被覆することにより当該原料の原形型を形成する方法が挙げられる。
前記の耐熱性材料としては、原料が炭素化する温度域未満の温度で自身の熱変形により原料の形状に影響を与えないことが必要である。好適な材料の物性として、50〜500℃の温度域における線熱収縮率および線熱収縮率が30%以下の特性を有することが挙げられる。また、100〜500℃の範囲で明確なガラス転移点(Tg)を持たないことが
好ましい。更に、加熱による炭素化後に簡便な方法で除去できる物質であることが好ましい。
好ましい。更に、加熱による炭素化後に簡便な方法で除去できる物質であることが好ましい。
上記の特性を一般に満たす耐熱性材料としては無機酸化物が好ましい。具体的には、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、In2O、ZnO、PbO、Y2O3、BaO等の無機酸化物およびこれらの無機酸化物の混合物が挙げられる。これらの中では、所望の炭素微粒子の純度および金属不純物の制御の観点から、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2が好ましく、特に、前駆体粒子の炭素化反応と結晶化を安定に進行させる観点からSiO2が更に好ましい。
原料の被覆方法としては、上記の無機酸化物の金属アルコキシド等を原料としたゾルゲル法による被覆、硝酸塩またはオキシ塩化物塩などの可溶性の無機化合物の溶液を繊維状炭素前駆体粒子に被覆する方法などが挙げられる。原形型を作製する他の方法として、繊維状炭素粒子に例えば水ガラスの様な無機系化合物の溶液を塗布して乾燥させる被覆法が挙げられる。
金属アルコキシドを使用してゾルゲル法により繊維状前駆体粒子の被覆を行う方法は、ゲル化後に得られる原形型が微多孔性の材質であるため、その多孔性の形状を基にして炭素化物の表面に均一な凹凸形状を付与できる効果がある。
SiO2を被覆する具体的な作製方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、先ず、メタノール、エタノール等のアルコール類の溶液にアルコキシシラン類を加えた後に水を加え、室温で数時間撹拌して加水分解してシリケートゾル溶液を調製する。このゾル溶液調製の際に、ゾルの安定性と反応性を制御する上で適当なpHに調節するのが一般的
であり、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、アンモニア等を触媒として加えることが出来る。次いで、ゾル溶液に繊維状炭素前駆体粒子を混合し、室温ないし40℃で数時間ないし数日静置してゲル化に至らせ、繊維状炭素前駆体粒子を分散させたシリカゲルを得る。また、斯かる方法の他、繊維状炭素前駆体粒子にシリケートゾル溶液をスプレー塗布する方法なども挙げられる。
であり、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、アンモニア等を触媒として加えることが出来る。次いで、ゾル溶液に繊維状炭素前駆体粒子を混合し、室温ないし40℃で数時間ないし数日静置してゲル化に至らせ、繊維状炭素前駆体粒子を分散させたシリカゲルを得る。また、斯かる方法の他、繊維状炭素前駆体粒子にシリケートゾル溶液をスプレー塗布する方法なども挙げられる。
使用可能なアルコキシシランの具体例としては、テトラアルコキシシラン類であるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、これらそれぞれのオリゴマーの他、アルキルトリアルコキシシラン類であるメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が例示できる。ゲル化のプロセス条件および繊維状炭素前駆体粒子への被覆時の粒子の分散性に応じ、2種類以上のアルコキシシランを併用してもよい。
上記の被覆方法においては、シリカゲルで表面形状を規定された繊維状炭素前駆体粒子を真空乾燥するか、または、繊維状炭素前駆体が熱変形しない範囲に加熱することにより、シリカゲル中の化学構造であるシロキサン結合の密度を高めておくことが、被覆成分の耐熱性を高めておく上で有効である。
炭素化は、耐熱性材料で表面が被覆された炭素前駆体を、窒素、アルゴン等の当該前駆体と加熱時に反応する物質が存在しない雰囲気で、所定時間加熱して行なう。加熱時の雰囲気は、フロー系でも、密閉系でも構わないが、フロー系の方が好ましい。加熱時の圧力は、加圧下でも減圧下でも構わないが、通常、常圧下で行なう。常圧下の場合の加熱温度は、通常500℃以上、好ましくは800℃以上である。加熱は、継続的に所定温度まで上げていっても、段階的に所定温度に上げていくのでも構わない。加熱時間は、加熱温度などにより異なるが、所定の加熱温度に到達した後、通常0.5〜2時間である。
炭素化後、表面の耐熱性材料は除去されるが、その方法としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液やフッ酸で溶解する方法が挙げられる。工業的に安全な方法として、アルカリ水溶液で溶解する方法が好ましい。通常、耐圧密閉容器中で150℃に加熱して溶解し、残った炭素微粒子を固液分離して回収する等の方法が挙げられる。炭素前駆体にポリアクリロニトリルを使用した場合、上記の方法で得られる炭素微粒子の収率は、通常30重量%以上、多くの場合35〜45重量%の範囲である。
本発明の製造方法によれば、特定の表面形状をもつ繊維状炭素微粒子を均一な形状の粒子群として得ることが出来、更に、最終生成物の繊維状炭素微粒子を前駆体の段階で設計することが出来る利点がある。
炭前駆体が液相炭素化する過程において、炭素前駆体と原形型との界面で炭素化物表面に凹凸形状が形成される。すなわち、炭素化物の表面の凹凸形状は、炭素前駆体が昇温過程で軟化した際に原形型の表面にもつ形状を反映させながら炭素化することにより得られる。
また、本発明の製造方法は、比較的低い炭素化温度で炭素化物を得ることが出来、しかも、得られた炭素粒子の結晶性が高いという点で有効な方法である。すなわち、特に前駆体が液相炭素化可能材料である場合、炭素化過程のメソフェーズが炭素化後の生成物の結晶構造を大きく支配するが、表面を被覆している耐熱性材料の表面特性がこの結晶性に与える影響が大きい。ポリアクリロニトリル等の有機ポリマーを前駆体とする場合、炭素化過程で生じる炭素ラジカルに及ぼす耐熱性材料の表面官能基の効果として、結晶化度と配向に対する大きな影響が挙げられる。なお、表面官能基としては、例えば、シラノール基、水酸基、ケトン基、エステル基などが挙げられる。
耐熱性材料の表面に親水基である水酸基が多い場合は、炭素ラジカルを安定化させることから、炭素結晶のエッジ(端)となる部分を向けることになり、すなわち、炭素化後に得られる炭素粒子の結晶配向は粒子の外周に向かって結晶a軸が垂直に配向した形状を示すものとなると考えられる。また、結晶化度は、通常、被覆材を使用せずに炭素化して得られる炭素微粒子に比べて高い。
逆に、耐熱性材料表面に水酸基が少ない場合は、疎水的な表面となり、メソフェーズで形成されつつあるベンゼン環の六角網面を向け易く、炭素化生成物としては結晶端部を少なくする配向、すなわち中心から外周部に同心円状の配向を示し易くなると考えられる。
本発明の製造方法における上述の様な作用効果により、本発明の製造方法で得られる繊維状炭素微粒子は、後述する様に、従来存在しなかった新規な構造を有している。
<第1発明の繊維状炭素微粒子>
次に、第1発明の繊維状炭素微粒子について説明する。本発明の繊維状炭素微粒子は短径が5nm以上5μm以下の繊維状炭素微粒子であって、後述の式(I)で定義される表面粗度が8.0%以上の凹凸構造を有することを特徴とする。
次に、第1発明の繊維状炭素微粒子について説明する。本発明の繊維状炭素微粒子は短径が5nm以上5μm以下の繊維状炭素微粒子であって、後述の式(I)で定義される表面粗度が8.0%以上の凹凸構造を有することを特徴とする。
本発明の繊維状炭素微粒子は、形態上一方向に長い針状または楕円状の粒子である。そして、短径が5nm以上5μm以下の範囲の値を有する。短径が粒子の部位によって異なる場合は、異なる短径の中から選ばれる最大部位が上記の範囲の値を有する。長径の範囲は、特に限定されないが、他の材料に分散する際の分散性と取り扱いの容易さから均一に揃っていることが好ましい。本発明の繊維状炭素微粒子は、長径として、通常40nm以上1000μm以下の範囲、好ましくは40nm以上100μm以下の範囲、更に好ましくは40nm以上10μm以下の範囲から選択される所定の長さを有する。
本発明の繊維状炭素微粒子における、長径に対する短径の比であるアスペクト比は、電界放出特性、導電特性、樹脂等の異種固体への混合・分散特性の観点から、通常2以上、好ましくは3以上である。そして、その上限は、材料としての加工時のハンドリングの観点から、通常20000、好ましく10000、更に好ましく8000である。
本発明においては、繊維状炭素微粒子の表面の凹凸構造を表す指標として、以下の方法で測定し、以下の式(I)で定義する表面粗度を使用する。
AFM(Atomic Force Microscope)は、走査型プローブ顕微鏡の一種であり、タッピ
ングモード(Tapping Mode)においては、探針は試料表面を跳ねる様に上下に動いて表面
状態(凹凸)を測定する。なお、「Tapping Mode」は、米国Veeco社の登録商標である。
ングモード(Tapping Mode)においては、探針は試料表面を跳ねる様に上下に動いて表面
状態(凹凸)を測定する。なお、「Tapping Mode」は、米国Veeco社の登録商標である。
表面粗度の測定方法として例えばRaによる方法が知られている。この方法は、例えばフィルムの様な大きな平坦面積を有する材料に適用されるが、ナノサイズの粒子であり測定対象面が小さな曲面である本発明の繊維状炭素微粒子には適用できない。そこで、本発明においては、上記の式(I)で定義する表面粗度を使用する。
図1は炭素微粒子の二次元画像の模式的説明図、図2は炭素微粒子の外形線の解析チャートの一例、図3は、図2に示す解析チャートの拡大図である。以下、これらの図に基づいて表面粗度を算出するステップを説明する。
(1)先ず、炭素微粒子についてAFMタッピングモードによる表面の凹凸測定を行ない、得られたデータから炭素微粒子の二次元画像を作成する。図1中の、横方向の線は、探針の走査方向を意味し、走査により得られたデータ(凹凸)であり、このデータの集合を包囲する線は、炭素微粒子の外観を示す輪郭線であり、等高線は炭素微粒子の外観形状を表す。
本発明の繊維状炭素微粒子の表面の凹凸の形状の一例としては、凹凸形状の山のピークと谷の底が1nm以内の範囲で隣接し、高低差で0.1nm以上1.0nm以下の凹凸形状が粒子表面で連続して存在している形状が挙げられる。なお、この高低差は、AFMタッピングモード測定を行って得られたデータから作成された炭素微粒子の二次元画像における解析によって得られる数値である。また、AFMの表面測定を行う上での具体的な測定範囲は100nm四方以上1000nm四方以下が例示できる。
(2)次いで、上記の二次元画像上の任意の直線(L)を選択し、当該直線に対応する上記のデータから外形線を作成する(図2)。なお、図1においては、直線(L)は可能な限り平坦部から選択されている。
(3)次いで、上記の外形線上の2点間(A−B)を結ぶ仮想直線(L0)の長さが20nm以上35nm以下の範囲にある測定対象部分(S)を選択し、その2点間(A−B)の仮想直線長さをHdとし、当該2点間の実際の外形線の長さをSdとし、上記の式(I)に基づいて表面粗度を算出する。この際、測定対象部分(S)としては、仮想直線(L0)に対する外形線の振れ幅(Z)が±0.5Hdの以内の部分とする。実際は、仮想直線(L0)に対する外形線の振れ幅(Z)が±0.5Hdの以内の部分を測定対象部分(S)として選択し、上記の式(I)に基づいて表面粗度を算出する。
上記の(2)及び(3)の各画像解析における具体的な解析対象は、50nm四方以上100nm四方以下が例示できる。それぞれの解析視野におけるデータサンプリング密度は、X方向およびY方向で共に126以上1024以下の範囲であり、1画素間当たり、0.40nm以下0.10nm以上となる視野範囲と画素の設定で解析が可能である。解析対象数は、2解析視野以上、好ましくは5解析視野以上、更に好ましくは10解析視野以上とし、夫々の視野から得られる表面粗度の平均値を求める。
本発明の繊維状炭素微粒子は、上記の様にして測定される表面粗度の値が7.0%以上、好ましくは8.0%以上、更に好ましくは9.0%以上である。表面粗度の値が7.0%未満の場合は、媒体への分散性の改良効果が不十分である。なお、表面粗度の上限は、通常55%、好ましくは30%である。
本発明の繊維状炭素微粒子は、個々に所定のアスペクト比をもつ概略直線状の繊維状の
形状を有する。従って、カーボンブラック粒子の一次または二次ストラクチャー構造やコイル状または屈曲した形状の炭素ナノファイバー類とは異なる。
形状を有する。従って、カーボンブラック粒子の一次または二次ストラクチャー構造やコイル状または屈曲した形状の炭素ナノファイバー類とは異なる。
本発明の繊維状炭素微粒子は、原形型内で液相炭素化することにより製造されるため、粒子の内部に中空構造を有し、末端は閉じた構造をとっている。この中空部に液化可能な炭素材料を存在させ、上述の原形型による炭素化を繰り返し行うことにより、中空部の大きさを自由に制御できる。また、別の手段としては、炭素前駆体ポリマーの炭素化時の粘度を高くする手段、あるいは、前述の熱分解性ポリマーの使用量を減らす手段が挙げられる。粘度を高くすること、あるいは、当該前駆体ポリマーから生じる熱分解性ガスの発生を抑制することによって小さな気泡が合体して大きな気泡になることを防止し、中空部の大きさを小さくすることが出来ると考えられるからである。究極的には中空部を全てなくすことも可能である。
しかしながら、低比重の材料として利用できること、内部に所望の物質を担持させて利用できること等の理由から、粒子の構造としては中空部を有することが好ましい。その際に、担持した物を保持する機能の点から少なくとも片端部が閉じた形であることが好ましく、両端が閉じていることが更に好ましい。1つの粒子あたり中空部の数は、複数でもよいが、異物質を担持する際の制御性から、1つの方が好ましい。また、中空部が非晶質炭素壁で複数に分割されていてもよい。なお、中空部には空気が存在する場合のみならず、液体や他の固体が充填されていてもよい。
繊維状炭素微粒子における炭素含有率は、必ずしも100重量%である必要はないが、化学的な安定性の観点から、元素分析値による値として、通常70重量%以上、好ましくは75重量%以上である。他の元素は、例えば、炭素化材料の前駆体として使用される各種ポリマー中に存在する官能基に由来する酸素、窒素などである。
本発明の繊維状炭素微粒子は結晶性であることが、媒体に分散した後の性能の発現の理由で好ましい。ここでの結晶性とは、必ずしも、いわゆる黒鉛状に制御されたものである必要はなく、小山ら(「工業材料」第30巻、第7号、p109−115)に示される様な乱層黒鉛であってもよい。なお、結晶性の目安としてのX線回折の反射ピークから求める結晶学的特性は、次の様に示される。すなわち、出力源がCuKαであるX線の回折角度2θが25.0°以上(好ましくは26.0°以上)以上にピークを示し、半値幅が7.0°以下(好ましくは6.5以下、更に好ましくは5.0°以下)である。そして、002ピークの回折角からBraggの式で算出される炭素網目平均面間距離d(002)は4.30Å以下(好ましくは3.60Å以下)である。
次に、第1発明の炭素微粒子が炭素結晶壁で包囲された中空部を有している場合について説明する。図4は、本発明の繊維状炭素微粒子の構造を説明するための模式的説明図である。炭素結晶壁(2)の厚さは、中空部(3)における他の物質の担持容量の観点から、繊維状炭素微粒子(1)中心から壁外周までの距離(半径)に対する割合として、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
第1発明の繊維状炭素微粒子の少なくとも両端部は炭素結晶端が露出した構造を備えていることが好ましい。この場合、代表的には、図4(a)に示す様に、繊維状炭素微粒子(1)の全体において炭素結晶端が露出した構造と、図4(b)に示す様に両端部においてのみ炭素結晶端が露出した構造とが存在する。なお、ここで、端部とは、先端縁を起点として長手方向に直径の10%以内の長さの範囲を意味する。これらの構造または両者の構造が適当割合で寄与した構造は、前述した、炭素化過程で生じる炭素ラジカルに及ぼす被覆材料の表面官能基の効果を制御することにより、得ることが出来る。そして、炭素結晶端が露出した構造は、表面の凹凸形状と共に分散媒中における繊維状炭素微粒子の分散
性に効果がある。
性に効果がある。
炭素結晶端が露出した構造とは、炭素結晶端が表面に露出した構造または炭素網面のループ状構造が表面に存在する構造の何れでもよい。図5に基づき、本発明の繊維状炭素微粒子の外周における、炭素結晶端が表面に露出した構造の一例および炭素網面のループ構造が表面に存在する一例を説明する。図5は本発明の繊維状炭素粒子が取り得る末端部の表面の構造の種類を説明するための模式的説明図である(図中、左側が炭素微粒子内側、右側が炭素粒子外側にあたる)。図5中、符号(a)は炭素結晶端が露出した構造を表し、符号(b)は炭素微粒子表面における炭素網面のループ状構造を表す。なお、ループ状構造は、通常、炭素網面20層までで形成される。炭素微粒子の表面における結晶配向、すなわち結晶端が露出した構造または炭素網面のループ状構造の何れかで形成されていることは、80万倍のTEM写真によって確認される。これらの炭素結晶端が露出した構造およびループ状の構造は、繊維状炭素微粒子の少なくとも両末端部の外周部に存在していればよい。粒子の両端ほど曲率が大きいために結晶端露出の効果が顕著となる。繊維状炭素微粒子の外周全表面積に対する上記の構造の占める割合は、通常3%以上、好ましくは5%以上、更に好ましくは15%以上である。
炭素結晶端が露出した構造(a)は、繊維の長さ方向に対して炭素結晶面が実質的に垂直に積層されて構成されている。ところで、佐藤らによる発表(第30回炭素材料学会年会要旨集,p376)には、繊維の長さ方向に対して炭素網面が実質的に垂直に積層した構造を特徴の一つとする炭素繊維が示されている。この炭素繊維は、ポリ塩化ビニル又はポリビニルアルコールを原料にし、アノード酸化により得られるアルミナ被膜の細孔を型に液相炭素化して得られた炭素構造体である。一般に、電気化学的な製法による酸化被膜、例えば陽極酸化アルミナ被膜の細孔を型にした製法では、その被膜の構造が緻密であるため、炭素生成時の型との界面に凹凸は少なく、得られる炭素材料の表面に凹凸形状は小さく、その結果、本発明の効果の作用には至らない。
従来公知のカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバーは、長すぎたり形状がコイル状または屈曲した形状のために、絡み合った状態で取得されることが多い。個体に分散して使用する場合は、これらの材料を機械的に切断または粉砕するか、化学的に表面を処理することが一般的である。これに対し、本発明の繊維状炭素微粒子は、ある一定範囲の長さと径の形状を有する炭素前駆体を原料に、その形状を維持した一定範囲の長さと径の炭素微粒子であり、表面に特定の小さな凹凸形状を有し、従来のCNTと異なる。
ところで、炭素結晶端が露出した構造の炭素材料として、金属触媒を基に気相成長製法で得られるヘリンボン構造の炭素繊維が知られている(公開特許2003−5130)。しかしながら、この炭素繊維における結晶端の露出による凹凸は、一般に原子レベル又は炭素結晶の各層レベルの段差に過ぎず、本発明で規定する範囲より小さい。このことは後述の比較例2からも理解できる。
一般に、結晶性の炭素材料は自己凝集性が強く、カーボンブラックの様にそれ自身で凝集やストラクチャーを形成し、異種材料への高度な分散は困難である。炭素結晶はベーサル面を表面に向けた構造のものが一般的であり、これらの表面は化学的に不活性で臨界表面張力が低い。従って、炭素結晶は、異種の媒体、特に、極性の高い溶媒および親水性の物質に対する表面張力の差が大きくて親和性が低いため、これらへの分散が困難である。
これに対し、溶媒、樹脂、ペースト等に本発明の繊維状炭素微粒子を分散させる際に、ミキサー、押出機などを使用して撹拌または混練すると、本発明の繊維状炭素微粒子の表面の凹凸が物理的なアンカー効果を示し、媒体への分散性を良好にする。
また、凹凸形状として現れる表面の炭素構造にの部位においては、結晶構造上不連続な構造となって結晶エッジ(端)又は歪の大きい炭素結合が高密度で存在する。結晶エッジ及び歪の大きい炭素結合は、ポテンシャルエネルギーが大きく、化学的に活性な部位である。従って、本発明の繊維状炭素微粒子の凹凸構造は、化学的な活性な部位であり、表面張力エネルギーの高い部位としての作用を示す。その結果、本発明の繊維状炭素微粒子は、水を初めとする極性の媒体との親和性が良好であり、これらの媒体中への分散が容易である。
特に、繊維状炭素微粒子の両末端部位における粒子形状の曲率の高い部位に炭素結晶端が露出する構造を有することは、繊維状炭素微粒子の末端の尖形状効果と合わさり、媒体中での分散をより効果的に達成させる要因である。従って、この様な構造の繊維状炭素微粒子は、結晶端の露出が両末端になく、繊維形状の表面のみにしか存在しないものに比べ、分散効果が大きくて好ましい。
<第2発明の繊維状炭素微粒子>
次に、第2発明の繊維状炭素微粒子について説明する。本発明の繊維状炭素微粒子は、炭素結晶壁(2)で包囲されている単一の中空部(3)が形成された繊維状炭素微粒子(1)であって、繊維状炭素微粒子(1)の少なくとも両端部(10)は炭素結晶端が露出した構造を備え、繊維状炭素微粒子(1)の長径が40nm以上10μm以下で且つ短径が5nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする。
次に、第2発明の繊維状炭素微粒子について説明する。本発明の繊維状炭素微粒子は、炭素結晶壁(2)で包囲されている単一の中空部(3)が形成された繊維状炭素微粒子(1)であって、繊維状炭素微粒子(1)の少なくとも両端部(10)は炭素結晶端が露出した構造を備え、繊維状炭素微粒子(1)の長径が40nm以上10μm以下で且つ短径が5nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする。
前述の様に、従来公知のカーボンナノチューブ(CNT)は長すぎるために絡み合った状態で取得されることが多い。そのため、CNTの端部の構造は、必ずしも同定されていないが、多くの場合、合成時の金属触媒粒子で一端がターミネートされた構造となっている。これに対し、本発明の繊維状炭素微粒子(1)は、炭素結晶壁(2)で包囲されて内部に単一の中空部(3)が形成された構造を有する。すなわち、本発明における繊維状炭素微粒子(1)は、端部が閉じた構造を有し、従来のCNTと異なる。なお、前述の「包囲された」とは、中空部を包囲する炭素結晶壁(2)には粒子外部から中空部に通じる一定以上の径の空孔が存在しないことを意味する。具体的には、TEM写真によって観察した場合、その孔径が通常数十nm以上、好ましくは数nm以上、更に好ましくは1nm以上の空孔が存在しなければ良い。
また、特殊な構造を有するCNTとして、炭素結晶壁で包囲されている中空部が形成され且つ当該中空部が更に炭素結晶壁で複数に分割された構造のものが知られている。これに対し、本発明における繊維状炭素微粒子(1)は、炭素結晶壁(2)で包囲されている中空部(3)を1つ有し、炭素結晶壁で包囲されている中空部を複数有している上記のCNTと異なる。なお、本発明における繊維状炭素微粒子(1)においては、中空部(3)が更に非晶質炭素壁で複数に分割されていることがある。なお、本発明における繊維状炭素微粒子における中空とは、空気が存在する場合のみならず、液体や他の固体が充填されている場合を排除するものではない。
第2発明の繊維状炭素微粒子の具体的な構造として、炭素結晶端の露出、炭素結晶壁の厚さ、当該粒子の炭素含有率、結晶性は、前述した第1発明の繊維状炭素微粒子の構造をそのまま当てはめることが出来る。
第2発明の繊維状炭素微粒子は、長径が40nm以上10μm以下で且つ短径が5nm以上5μm以下の範囲であるが、長径に対する短径の比であるアスペクト比は、電界放出特性、導電特性、樹脂等の異種固体への混合・分散特性の観点から、通常2以上、好ましくは3以上である。そして、その上限は、材料としての加工時のハンドリングの観点から
、通常2000、好ましく1000、更に好ましく800である。
、通常2000、好ましく1000、更に好ましく800である。
図4(a)に示す構造は、繊維の長さ方向に対して炭素結晶面が実質的に垂直に積層されて構成されている。ところで、特開平3−146716号公報には、繊維の長さ方向に対して炭素網面が実質的に垂直に積層した構造を特徴の一つとする炭素繊維が開示されている(なお、この構造は倍率80万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像で確認されている)。そして、この炭素繊維は鉄カルボニル触媒の存在下に一酸化炭素と水素との混合原料を加熱処理する方法により得られている。しかしながら、上記の炭素繊維は、実質的に中空部を有さないことを特徴としており、図4(a)に示す様な繊維状炭素微粒子(1)と明らかに異なる。なお、上記の様な、金属触媒による気相成長法による炭素繊維は、繊維成長における結晶の成長が一般に均質連続的であるため、第1発明の繊維状炭素微粒子で規定する様な細かな周期での表面凹凸構造を取り得ないと考えられる。
第1発明のおよび第2発明の繊維状炭素微粒子の全体の長さ及び形状は、倍率5万倍以上のTEM(透過型電子顕微鏡)の観察像で確認できる。なお、簡便法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)でもよい。内部に単一の中空部が形成された構造または中空部が存在せずに非晶質成分が存在するか否かは倍率80万倍以上のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。なお、水の様に、中空である場合と同様のコントラストを示す場合も中空に含まれることとする。両端部の構造(閉じた構造および炭素結晶面の積層方向)は10〜80万倍のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。
<繊維状炭素微粒子集合体>
次に、本発明の繊維状炭素微粒子集合体について説明する。本発明の繊維状炭素微粒子集合体は、前記の第2発明の繊維状炭素微粒子にて構成され、以下の方法で調製された分散液について、調製後24時間静置して測定した以下の式(II)で表される粒径分布指標Aが0.1〜20であることを特徴とする。
次に、本発明の繊維状炭素微粒子集合体について説明する。本発明の繊維状炭素微粒子集合体は、前記の第2発明の繊維状炭素微粒子にて構成され、以下の方法で調製された分散液について、調製後24時間静置して測定した以下の式(II)で表される粒径分布指標Aが0.1〜20であることを特徴とする。
<分散液の調製>
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
上記の分散液の調製に使用する分散媒としては、繊維状炭素微粒子の表面特性などに応じ、繊維状炭素微粒子に対して不活性で且つ適切な分散媒を選択する必要がある。本発明において、分散媒の選定は次の様に行なう。すなわち、上記の分散液の調製の場合と同一要領で分散液を調製し、調製後24時間静置し、分散液の上から1cmの位置と下から1cmの位置との間の中央部の分散液について目視観察した際、二次凝集粒子が実質的に存在せずに均一な分散状態が得られる分散媒を選択する。選定対象となり得る分散媒としては、後述の分散媒が挙げられるが、本発明に繊維状炭素微粒子の場合、適切な分散媒としては例えば水を使用することが出来る。
粒径分布指標Aは、粒度分布計による動的光散乱法にて測定可能である。粒径分布指標は、通常0.1〜20,好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10である。
<繊維状炭素微粒子の分散体>
次に、本発明に係る繊維状炭素微粒子の分散体について説明する。本発明の分散体は、分散媒中に前記の第2発明の繊維状炭素微粒子が分散して成ることを特徴とする。
次に、本発明に係る繊維状炭素微粒子の分散体について説明する。本発明の分散体は、分散媒中に前記の第2発明の繊維状炭素微粒子が分散して成ることを特徴とする。
分散媒としては、特に限定されず、極性溶媒または非極性溶媒の何れでもよい。極性溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等カーボネート類が挙げられ、非極性溶媒としては、各種のアルカン類、芳香族類およびこれらの混合物などが挙げられる。これらの中では、親和性が高く、分散性が良好であるとの観点から、水およびアルコール類が好ましい。
分散媒中の繊維状炭素微粒子の割合は、通常0.1〜10重量%であり、分散媒中への繊維状炭素微粒子の分散には、機械的な撹拌の他、ペイントシェイカー等での機械的な振盪方法、超音波照射などの手段を採用することが出来、また、界面活性剤を使用してもよい。
本発明の分散体は、次の様な特徴を有する。すなわち、繊維状炭素微粒子が揃った形状と長さを有しているため、相互に絡み合うことが少なく、巨大な凝集体を形成することがない。特に、分散媒が極性溶媒の場合は、繊維状炭素微粒子の表面に存在する親水性基により、一層良好に分散されて二次凝集を形成することがない。
本発明の分散体における分散粒径は、粒度分布計による動的光散乱法またはレーザー回折散乱法にて測定可能であり、どちらかの方法で、以下の分散粒径になったものは本発明に係る分散体とする。具体的には、前記の方法で分散を行った後、24時間静置した後の分散液について測定する。ここで、測定レンジ以上のサイズである200μm以上の粒子または凝集物は本発明の範囲外である。斯かるサイズの粒子は、動的光散乱およびレーザー回折法の何れの方法でも一般に測定検知能力の範囲外であり、光学顕微鏡にてその存在を確認することが出来る。
本発明の分散体においては、通常、100個以上の粒子を観察した場合、全測定粒子の90個数%以上が60μm以下の粒径または凝集サイズであることが好ましく、30μm以下の粒径または凝集サイズであることが更に好ましい。
更に、前記の式(II)によって求められる粒径分布指標Aは、通常1〜15、好ましくは1〜10である。
本発明の繊維状炭素微粒子は、従来の炭素材料にない良好な分散性、特に水および極性溶媒に高度に分散するという特長を有することから、取り扱いが容易という特長を持つ。
更に、結晶性から期待される導電特性上の利点を有する。従って、本発明の繊維状炭素
微粒子は、上記の特性を活かして各種ポリマーの導電付与材の目的で複合材料として用いられる他、良好な分散性をもとに帯電防止層を形成する塗布液として各種の用途が期待される。特に、表面エネルギーの高いガラス基材、PETフィルム、PVAフィルム等に対しては、微小な粒子サイズと均一性から、透明導電膜の導電フィラーとして有効である。更に、カプセル構造を活かし、生体内での診断試薬、モニター試薬の支持材料の分野で好適に利用される材料である。
更に、結晶性から期待される導電特性上の利点を有する。従って、本発明の繊維状炭素
微粒子は、上記の特性を活かして各種ポリマーの導電付与材の目的で複合材料として用いられる他、良好な分散性をもとに帯電防止層を形成する塗布液として各種の用途が期待される。特に、表面エネルギーの高いガラス基材、PETフィルム、PVAフィルム等に対しては、微小な粒子サイズと均一性から、透明導電膜の導電フィラーとして有効である。更に、カプセル構造を活かし、生体内での診断試薬、モニター試薬の支持材料の分野で好適に利用される材料である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<アクリロニトリルとアクリル酸メチルの共重合ポリマー微粒子の合成>
ドデシル硫酸ナトリウム0.3gを水145gに溶解し、ここにアクリロニトリル12.7g、アクリル酸メチル1.8g、メタアクリル酸0.5g、n−ブチルメルカプタン0.3gの混合物を加え、窒素ガスのフロー下で250〜300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合した。反応停止後、水を除去し、平均粒径183nmのアクリル樹脂粒子13.9gを含む懸濁液を調製した。この樹脂粒子の、元素分析(C、H、N)による窒素量から換算されるアクリロニトリル単位の割合は79.6重量%であり、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるポリスチレン(PSt)換算での重量平均分子量は4.1×104であった。
ドデシル硫酸ナトリウム0.3gを水145gに溶解し、ここにアクリロニトリル12.7g、アクリル酸メチル1.8g、メタアクリル酸0.5g、n−ブチルメルカプタン0.3gの混合物を加え、窒素ガスのフロー下で250〜300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合した。反応停止後、水を除去し、平均粒径183nmのアクリル樹脂粒子13.9gを含む懸濁液を調製した。この樹脂粒子の、元素分析(C、H、N)による窒素量から換算されるアクリロニトリル単位の割合は79.6重量%であり、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるポリスチレン(PSt)換算での重量平均分子量は4.1×104であった。
<前駆体の成形>
ポリビニルアルコール(クラレ製「クラレポバールPVA217」)15gを水100gに90℃で1時間撹拌して溶解させて室温に冷却して得た溶液に、前記の粒子懸濁液37.2g(樹脂粒子の含量3.0g)を加え、室温で5分間撹拌した。これを15cm径のシャーレー5枚に30gずつ分配し、そのまま室温で5時間静置して水分を揮発させ、PVA固形分濃度が30wt%になるまで濃縮し、ゲルを調製した。
ポリビニルアルコール(クラレ製「クラレポバールPVA217」)15gを水100gに90℃で1時間撹拌して溶解させて室温に冷却して得た溶液に、前記の粒子懸濁液37.2g(樹脂粒子の含量3.0g)を加え、室温で5分間撹拌した。これを15cm径のシャーレー5枚に30gずつ分配し、そのまま室温で5時間静置して水分を揮発させ、PVA固形分濃度が30wt%になるまで濃縮し、ゲルを調製した。
上記のゲル17.3gを90℃に加熱した200μmφの紡糸ノズルに入れ、ピストンで加圧してノズルから50〜120μm径の糸状のゲルを押し出し、アクリル樹脂粒子を含む乾燥した糸状PVAゲル2.4gを得た。
上記の糸状PVAを5cmの長さに切り揃え、糸の両端1cmずつをチャックで掴み、140℃に加熱しつつ、機械的に30cm/分の速度で18cmになるまで延伸し、延伸糸1.3gを得た。この延伸糸を水10mlに浸し、室温で20分撹拌してPVAを溶解し、延伸したアクリル粒子の懸濁液を得た。この懸濁液を20℃で180000rpmの条件下で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿のアクリル粒子を同様の方法で水洗し、延伸されたアクリル粒子のエマルジョンを得た。エマルジョン中のアクリル粒子は、走査電子顕微鏡(SEM)写真の画像観察より、短径65〜90nm、長径600〜800nmの形状を有する延伸されたポリマー粒子であった。
実施例1:
100ml容量の容器にて上記の延伸されたアクリル粒子のエマルジョン13.2g(ポリマー粒子量0.1g)とエタノール17.7gとを混合し、メチルシリケートオリゴマー(三菱化学(株)製MKSシリケート(登録商標)「MS51」)8.3gを加えて振とうした。この後、密栓して3日間静置して流動性のないゲルを得、ポリマー粒子を含むシリカゲルを作製した。このゲルをガラス皿に移し、室温10時間減圧乾燥した。
100ml容量の容器にて上記の延伸されたアクリル粒子のエマルジョン13.2g(ポリマー粒子量0.1g)とエタノール17.7gとを混合し、メチルシリケートオリゴマー(三菱化学(株)製MKSシリケート(登録商標)「MS51」)8.3gを加えて振とうした。この後、密栓して3日間静置して流動性のないゲルを得、ポリマー粒子を含むシリカゲルを作製した。このゲルをガラス皿に移し、室温10時間減圧乾燥した。
上記で得られた乾燥ゲルを電気炉にて窒素雰囲気下で室温から5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してポリマー粒子を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温にまで冷却された12時間後に試料を取り出した。これを、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液60mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解し、炭素化粒子が分散した分散液を得た。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿の炭素化粒子を同様の方法で3回水洗し、炭素粒子の分散液を得た。
上記の分散液中の任意の粒子について、以下の条件でAFMタッピングモードでスキャンし、前述の方法で画像解析を行った。その際、画像の任意の3視野を対象にした。Hdは30.08nmであり、以下の式(III)で求めた夫々の視野の表面粗度は、10.3
%、11.2%、9.8%であった(平均値:10.4%)。
%、11.2%、9.8%であった(平均値:10.4%)。
上記の分散液中の粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率:80万倍)で観察したところ、図4(b)に示す様に、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ持ち、両端部に炭素結晶端が露出した構造の粒子であった。また、外観形状は、長径800〜1000nm、短径80〜100nm、平均アスペクト比10の集合体であり、100μm以上の粒子および粒子の凝集体は視野に存在しなかった。
動的光散乱式の粒度分布測定器により、上記の粒子の水に対する分散状態を測定したところ、分布中心の粒径D50が315nm、10%体積分布の粒径D10が154nm、90%体積分布の粒径D90が2.13μm、粒径分布指標Aが6.27の値を持つ粒径分布であった。
上記の粒子の結晶化度をXRD回折における2θ=25.6°に現れたピーク解析で行ったところ、ピーク半値幅は4.5°で結晶子の面間距離は3.47Åと算出された。また、主な構成元素は、炭素、窒素、酸素であり、検出濃度は、炭素80.72重量%、窒素5.84重量%、酸素6.41重量%であった。なお、上記以外の元素として、水素は0.81重量%、ケイ素は1重量%の検出限界以下であった。
実施例2:
水21.2gとエタノール27.1gの混合液にメチルシリケートオリゴマー「MS51」を混合して分散した後、1mol/Lの塩酸を混合し、pH2の液を調製した。室温で1時間撹拌し、メチルシシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカ
ゾルを調製した。
水21.2gとエタノール27.1gの混合液にメチルシリケートオリゴマー「MS51」を混合して分散した後、1mol/Lの塩酸を混合し、pH2の液を調製した。室温で1時間撹拌し、メチルシシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカ
ゾルを調製した。
実施例1と同様に調製した延伸されたアクリル粒子のエマルジョン26.1g(ポリマー粒子量0.2g)に上記のシリカゾル78.3gを加え、振とうして混合した後、8cm径のテフロン(登録商標)製シャーレー12枚に9gずつ分配し、40℃のホットプレート上で5時間加熱して乾燥し、ポリマー粒子が分散したシリカゲルを得た。このゲルをガラス皿に移し、室温10時間減圧乾燥した。
上記で得られた乾燥ゲルを電気炉にて窒素雰囲気下で室温から5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してポリマー粒子を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温まで冷却された12時間後に試料を取り出した。これを、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液60mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解し、炭素化粒子が分散した分散液を得た。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に沈殿の炭素化粒子を同様の方法で3回水洗し、炭素粒子の分散液を得た。
上記の分散液を超音波にて3分間分散し、その中から任意の3滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、何れの滴にも100μm以上の炭素粒子およびその凝集物は観察されなかった。
上記の分散液中の任意の粒子について、実施例1と同様の条件でAFM測定した。更に、測定した画像の解析も実施例1と同様に行い、3視野について表面粗度を求めた。その結果、Hdは30.08nmであり、各視野の表面粗度は、13.1%,11.9%および21.7%であった(平均値:15.6%)。
上記の分散液中の粒子の構造をTEM(倍率80万倍)で観察したところ、図4(a)に示す様に、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ持ち、繊維の長さ方向に対して炭素網面が実質的に垂直に積層した構造の粒子であった。また、外観形状は、長径500〜700nm、短径40〜60nm、平均アスペクト比12の粒子群であった。
動的光散乱式の粒度分布測定器により、上記の粒子の水に対する分散状態を測定したところ、分布中心の粒径D50が235nm、10%体積分布粒径D10が126nm、90%体積分布粒径D90が431nm、粒径分布指標Aが1.30の値を持つ単分散の粒径分布であった。
上記の粒子の結晶化度をXRD回折における2θ=25.6°に現れたピーク解析で行ったところ、ピーク半値幅は4.1°で結晶子の面間距離は3.47Åと算出された。また、主な構成元素は、炭素、窒素、酸素であり、検出濃度は炭素85.36重量%、窒素6.52重量%、酸素6.82重量%であった。なお、上記以外の成分として、水素は0.3重量%の検出限界以下、ケイ素は1重量%の検出限界以下であった。
比較例1:
実施例1と同様に調製した延伸されたアクリル粒子のエマルジョン12.8g(ポリマー粒子量0.1g)をシリカゲルに分散させずに、24時間静置乾燥し後、実施例1と同様に炭素化を行った。以降、実施例1と同様の手順と条件で炭素化物の分散液を得た。
実施例1と同様に調製した延伸されたアクリル粒子のエマルジョン12.8g(ポリマー粒子量0.1g)をシリカゲルに分散させずに、24時間静置乾燥し後、実施例1と同様に炭素化を行った。以降、実施例1と同様の手順と条件で炭素化物の分散液を得た。
上記の分散液中の粒子の構造をTEM(倍率:80万倍)で観察したところ、繊維状炭素微粒子は全く存在しなかった。そして、形状および大きさとも様々であり、炭素結晶構造が確認できない粒子とその凝集体の群であった。特に、粒子の空洞部は確認されなかった。
上記の分散液中の粒子20mgを水10mlに混合し、超音波にて3分間分散し、その
中から任意の1滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、100μm以上の炭素粒子が多数観察された。
中から任意の1滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、100μm以上の炭素粒子が多数観察された。
また、上記の粒子の結晶化度をXRD回折における2θ=24.7°に現れたピーク解析で行ったところ、ピーク半値幅は6.7°で結晶子の面間距離は3.61Åと算出された。従って、比較例1の生成物の結晶性は低いことが分る。
比較例2:
丸底フラスコに水40mlを採り、これに、硝酸コバルト4.7g、モリブデン酸アンモニウム1.4g、硝酸マグネシウム14.5gを加え、1時間撹拌した。40℃減圧下で18時間かけて水を除去し、更に、150℃、10mmHgで30分かけて乾燥し、更に
、550℃(室温から5℃/minの速度で昇温)で6時間加熱して5.2gの固体を得た。分析の結果、この固体は、Co、Mo、MgOを夫々0.2、0.1、0.7のモル比で含有していた。これをジェットミル粉砕し、80メッシュの篩通過品を次の反応の触媒として使用した。
丸底フラスコに水40mlを採り、これに、硝酸コバルト4.7g、モリブデン酸アンモニウム1.4g、硝酸マグネシウム14.5gを加え、1時間撹拌した。40℃減圧下で18時間かけて水を除去し、更に、150℃、10mmHgで30分かけて乾燥し、更に
、550℃(室温から5℃/minの速度で昇温)で6時間加熱して5.2gの固体を得た。分析の結果、この固体は、Co、Mo、MgOを夫々0.2、0.1、0.7のモル比で含有していた。これをジェットミル粉砕し、80メッシュの篩通過品を次の反応の触媒として使用した。
石英ガラス反応管(10.2L)中の石英ガラスボートに上記の触媒0.6gを静置し
、反応管中を窒素ガスでパージした後に600℃に加熱し、1時間水素ガスを導入して触媒表面を還元した。この後、導入ガスを一酸化炭素と水素をそれぞれ0.9L/minと
0.1L/minの組成に変更し、6時間流し続けて触媒表面に炭素物を析出させた。反
応終了後、収量19.4gの炭素が析出した生成物を回収した(収量には回収した触媒重量含む)。
、反応管中を窒素ガスでパージした後に600℃に加熱し、1時間水素ガスを導入して触媒表面を還元した。この後、導入ガスを一酸化炭素と水素をそれぞれ0.9L/minと
0.1L/minの組成に変更し、6時間流し続けて触媒表面に炭素物を析出させた。反
応終了後、収量19.4gの炭素が析出した生成物を回収した(収量には回収した触媒重量含む)。
上記の炭素生成物の構造をTEM(倍率80万倍)で観察したところ、両端が閉じた炭素結晶層が配向してなる壁に囲まれた空洞構造を持つカプセル状の炭素微粒子は存在せず、直径20〜40nmの繊維円筒状の構造を持つ、すなわち中央部が中空でグラフェン積層構造を壁に持つ繊維状のカーボンナノチューブ構造を主成分とするものであった。また、結晶層は何れの部位でも長軸に平行でないヘリンボン構造であった。この炭素生成物以外の構造としては、結晶性を持たない、直径50〜500nm、長さが何れも100nm以上の炭素繊維、触媒金属粒子を中心に持ちそれから2方向以上に放射状に成長したと見られる結晶性炭素ファイバーの集合体、これらが絡まって存在する集合体であった。
上記の炭素化物8mgをエタノール400μLに入れ、超音波で5分間分散させた。そして、この液中の炭素化物ついて、実施例1と同様の条件でAFM測定した。AFM測定では直径20nm〜40nmの繊維形状の単一に分離した固体を画像で選んで測定対象とした。更に、測定した画像の解析は実施例1と同様に行い、任意の3視野について表面粗度を求めた。その結果、Hdは30.08nm、各視野の表面粗度は、5.4%、3.9%、5.5%(平均値4.93%)であり、実施例に比べて表面粗度は小さかった。
上記の炭素化物20mgを水10mlに混合し、超音波にて3分間分散し、その中から
任意の1滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、100μm以上の炭素粒子が多数観察された。
任意の1滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、100μm以上の炭素粒子が多数観察された。
比較例3:
20重量%硫酸中、10℃、20V、2時間の条件下、アルミニウム板を陽極酸化することにより、細孔径33nm、厚さ70μmの陽極酸化被膜を作製した。この被膜上に、プロピレンガス)存在下(窒素中1.2体積%)、800℃、2時間の条件でCVD蒸着を行うことにより炭素膜を蒸着し、炭素/陽極酸化被膜を作製した。次に、この複合膜に
アセトニトリルガス存在下(窒素中4.2体積%)、で800℃、5時間の条件でCVD蒸着を行うことにより、2層目の炭素膜を蒸着し、炭素/炭素/陽極酸化被膜を作製した。
20重量%硫酸中、10℃、20V、2時間の条件下、アルミニウム板を陽極酸化することにより、細孔径33nm、厚さ70μmの陽極酸化被膜を作製した。この被膜上に、プロピレンガス)存在下(窒素中1.2体積%)、800℃、2時間の条件でCVD蒸着を行うことにより炭素膜を蒸着し、炭素/陽極酸化被膜を作製した。次に、この複合膜に
アセトニトリルガス存在下(窒素中4.2体積%)、で800℃、5時間の条件でCVD蒸着を行うことにより、2層目の炭素膜を蒸着し、炭素/炭素/陽極酸化被膜を作製した。
上記の複合被膜を10モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液中、150℃、6時間処理して基盤である陽極酸化被膜とアルミニウム板を除去することにより、繊維状の炭素生成物を得た。炭素生成物は、TEM観察像(倍率40万倍)及びSEM観察像(倍率2万倍)の観察により、径が30nmで中空構造で一端が開放した形状であり、長さ70μmで均一に揃ったカーボンナノチューブであることを確認した。この炭素化物2mgをエタノール100μLに入れ、超音波で5分間分散させた。この液中の炭素化物ついて、実施例1と同様の条件でAFM測定した。測定した画像の解析は実施例1と同様に行い、任意の3視野について表面粗度を求めた。その結果、Hdは25.05nm、各視野の表面粗度は、4.30%、4.41%、4.44%(平均値4.38%)であり、陽極酸化によるアルミナ被膜上に生成したカーボンナノチューブの表面粗度は実施例に比べて小さかった。
1:繊維状炭素微粒子
2:炭素結晶壁
3:中空部
10:繊維状炭素微粒子の端部
a:炭素結晶端が露出した構造
b:炭素微粒子表面における炭素網面のループ状構造
2:炭素結晶壁
3:中空部
10:繊維状炭素微粒子の端部
a:炭素結晶端が露出した構造
b:炭素微粒子表面における炭素網面のループ状構造
Claims (13)
- 繊維状炭素微粒子の長径が40nm以上10μm以下である請求項1に記載の繊維状炭素微粒子。
- 結晶性の炭素構造で形成されている請求項1又は2に記載の繊維状炭素微粒子。
- 炭素結晶壁で包囲されている単一の中空部が形成されている請求項1〜3の何れか記載の繊維状炭素微粒子。
- 少なくとも両端部は炭素結晶端が露出した構造を備えている請求項1〜4の何れかに記載の繊維状炭素微粒子。
- 炭素結晶壁で包囲されている単一の中空部が形成された繊維状炭素微粒子であって、繊維状炭素微粒子の少なくとも両端部は炭素結晶端が露出した構造を備え、繊維状炭素微粒子の長径が40nm以上10μm以下で且つ短径が5nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする繊維状炭素微粒子。
- 分散媒中に請求項7に記載の繊維状炭素微粒子が分散して成ることを特徴とする繊維状炭素微粒子の分散体。
- 短径が5nm以上5μm以下の範囲から選択される所定長さの繊維状炭素前駆体粒子を原料とし、当該原料の原形型内で原料を炭素化することを特徴とする請求項1に記載の繊維状炭素微粒子の製造方法。
- 長径が40nm以上10μm以下で且つ短径が5nm以上5μm以下の範囲から選択される所定長さの繊維状炭素前駆体粒子を原料とし、当該原料の原形型内で原料を炭素化することを特徴とする請求項6に記載の繊維状炭素微粒子の製造方法。
- ゾルゲル反応により耐熱性材料で原料を被覆することにより当該原料の原形型を形成する請求項9又は10に記載の製造方法。
- 炭素前駆体が液相炭素化可能材料である請求項9〜11の何れかに記載の製造方法。
- 炭素前駆体が易熱分解性ポリマーを含有する請求項9〜11の何れかに記載の製造方法。
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---|---|---|---|---|
KR100743046B1 (ko) * | 2006-06-22 | 2007-07-30 | 주식회사 체시스 | 엑슬 빔 파이프의 가공좌면 가공장치 |
JP2012236150A (ja) * | 2011-05-12 | 2012-12-06 | Seiko Epson Corp | ナノ粒子の製造方法 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004067485A (ja) * | 2002-08-09 | 2004-03-04 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | カーボンナノチューブの導電性改善方法 |
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2005
- 2005-05-20 JP JP2005148399A patent/JP2006008501A/ja active Pending
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