JP2007031268A - 表面修飾炭素粒子及びその製造方法 - Google Patents

表面修飾炭素粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細且つ均一な構造をそなえた中空炭素粒子の表面に機能性分子が吸着又は結合している、新規な炭素粒子を提供する。
【解決手段】長径が40nm以上10μm以下の繊維状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、該粒子の少なくとも両端部に、炭素結晶端が露出しており、且つ、該粒子の表面に機能性分子が吸着又は結合している。
【選択図】なし

Description

本発明は表面修飾炭素粒子及びその製造方法に関する。具体的には、該粒子の表面が炭素結晶で構成されるとともに、その粒子表面に機能性分子が吸着又は結合している、新規な炭素粒子と、その製造方法に関する。
近年、新たな炭素材料として、炭素結晶壁で包囲された中空部を有する炭素粒子(以下適宜「中空炭素粒子」と略する。)の表面に、各種の機能を付与することを目的として、生体分子等の天然分子や合成分子など、各種の分子(機能性分子)を吸着又は結合させることにより、表面が修飾された炭素粒子(以下適宜「表面修飾炭素粒子」と略する。)を製造する試みがなされている。原料の中空炭素粒子としては特に、多層のグラファイト状の炭素が積み重なって構成される、カーボンナノチューブ(以下適宜「CNT」と略する。)が注目されている。
中空炭素粒子の表面に他の分子を吸着させ、固定化する方法としては、CNTに表面処理を施し、CNT粒子表面にスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基等の特定の官能基を導入した上で、得られた粒子を目的とする他の分子の溶液等に浸漬させる等により、導入した官能基に目的とする分子を吸着させ、固定化するという手法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、上述の特許文献1記載の手法では、表面処理の際にCNTが様々な部分で破壊又は切断されてしまい、CNT粒子が有する微細構造やサイズの均一性が失われてしまう不都合がある。また、特許文献1では触媒の存在下で炭素フィブリルを気相成長させているため、得られるフィブリルの末端は、触媒由来の粒子がキャップされている。しかし上述の表面処理の際に硫酸のような強酸を使用すると、切断されたCNTの端はオープンになってしまい、炭素結晶端で包囲されるような構造体を得ることはできないのが現状であった。さらに、このような処理を行っても、不活性で安定な平面であるグラフェンレイヤーの基底面で構成されているCNTの表面に均一に充分量の官能基を導入するのは困難であり、かつ手順が複雑である。
特表平11−502494号公報
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたものであり、従来公知の製造方法とは全く異なる手法を採用することで、炭素粒子の表面にたんぱく質等の機能性分子が吸着または結合しているにもかかわらず、CNTの端がオープンでなく、炭素結晶端で包囲された構造を有する新規な炭素粒子を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、該粒子の表面が炭素結晶壁で包囲され、好ましくは炭素結晶壁で包囲された中空部を有するとともに、粒子径が所定の範囲内にあり、更には特定の結晶構造を有する中空炭素粒子を原料として得られる炭素粒子に対して、その表面に目的とする機能性分子を接触させて吸着又は結合させることにより、中空炭素粒子がそなえる構造の微細性及び均一性を損なうことなく、新規な表面修飾炭素粒子が効率的に得られることを見出して、本発明の完成に到った。
即ち、本発明の趣旨は、長径が40nm以上10μm以下の繊維状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、該粒子の少なくとも両端部に、炭素結晶端が露出しており、且つ、該粒子の表面に機能性分子が吸着又は結合していることを特徴とする、炭素粒子に存する(請求項1)。
また、本発明の別の趣旨は、粒径が5nm以上100μm以下の球状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、且つ、該粒子の表面に機能性分子が吸着又は結合していることを特徴とする、炭素粒子に存する(請求項2)。
ここで、上述の球状の炭素粒子は、その外周の少なくとも一部に、炭素結晶端が露出した構造又は炭素網面のループ状構造を有することが好ましい(請求項3)。
また、上述の機能性分子は、生理活性機能を有することが好ましい(請求項4)。
また、本発明の別の趣旨は、上述の炭素粒子を製造する方法であって、長径が40nm以上10μm以下の繊維状の原料炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、該粒子の少なくとも両端部に、炭素結晶端が露出した原料炭素粒子に対して、機能性分子を接触させることにより、該原料炭素粒子の表面に前記機能性分子を吸着又は結合させることを特徴とする、炭素粒子の製造方法に存する(請求項5)。
また、本発明の別の趣旨は、上述の炭素粒子を製造する方法であって、粒径が5nm以上100μm以下の球状の原料炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成された原料炭素粒子に対して、機能性分子を接触させることにより、該原料粒子の表面に前記機能性分子を吸着又は結合させることを特徴とする、炭素粒子の製造方法に存する(請求項6)。
本発明の炭素粒子は、炭素粒子の水分散液に機能性分子を混合するだけで機能性分子を吸着させることが可能であり、操作が簡便でコスト的に有利である。また、最初の炭素粒子の性質を保持したまま表面に機能性物質を付与できるため、あらかじめデザインしたとおりの機能性炭素粒子を作製できるという有利な効果を奏する。
本発明で提案される新規な炭素粒子は、両端部が閉じており、長さが揃ったCNTである。さらには、当該炭素粒子の表面に、例えばタンパク質が吸着・結合している場合は、当該炭素粒子は溶媒に分散しやすいと考えられ、しかも、不要な触媒が含まれていないため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)担体、生体内外での診断薬、タンパク質・核酸等の分離精製用微粒子、造影剤用担体、インクジェット方式によるバイオチップ作製用の微粒子などとしての用途が期待できる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
本発明にかかる炭素粒子(これを適宜「本発明の表面修飾炭素粒子」という。)は、特定の結晶構造を有する炭素粒子の表面に、機能性分子が吸着又は結合したものである。以下の記載では説明の便宜上、まず本発明の表面修飾炭素粒子に用いられる炭素粒子(これを以下適宜「本発明の原料炭素粒子」という。)について説明した上で、それを用いた本発明の表面修飾炭素粒子について説明する。
[1.原料炭素粒子]
本発明の原料炭素粒子としては、以下の二種類が挙げられる。
(i)長径が40nm以上10μm以下の繊維状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、粒子の少なくとも両端部に、炭素結晶端が露出した構造を有するもの(以下適宜「繊維状原料炭素粒子」という。)。
(ii)粒径が5nm以上100μm以下の球状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成されているもの(以下適宜「球状原料炭素粒子」いう。)。好ましくは、粒子外周の少なくとも一部に、炭素結晶端が露出した構造又は炭素網面のループ状構造を有するもの。
なお、本明細書において、「繊維状」の粒子とは、粒子のアスペクト比が通常2以上の粒子をいい、「球状」の粒子とは、粒子のアスペクト比が通常2未満の粒子をいう。なお、このアスペクト比は当該粒子のTEM写真から長径および短径を測定することにより算出することができる。
以下の説明では、繊維状原料炭素粒子と球状原料炭素粒子との間で共通の特性についてはまとめて説明し、異なる特性についてのみ個別に説明を行なう。その際、繊維状原料炭素粒子と球状原料炭素粒子とを特に区別せずに指す場合には、単に「原料炭素粒子」と呼ぶものとする。
<1−1.原料炭素粒子>
まず、繊維状原料炭素粒子について説明する。図1は本発明の繊維状原料炭素粒子の好ましい構造を説明するための模式的な説明図である。
図1に示す繊維状原料炭素粒子は、炭素結晶壁2で包囲されている単一の中空部3が形成された繊維状炭素粒子1であって、繊維状炭素粒子1の少なくとも両端部10は炭素結晶端が露出した構造を備え、繊維状炭素粒子1の長径が40nm以上10μm以下の範囲であることを特徴とする。ここで「端部」とは、粒子の長手方向に関して、先端縁を起点として粒子表面に沿って長径数値の10%以内の領域を意味する。
なお、従来公知のカーボンナノチューブ(CNT)は通常、合成時の金属触媒粒子で一端がターミネートされた構造となっている。これに対し、本発明における繊維状原料炭素粒子1は、炭素結晶壁2で包囲されて内部に単一の中空部3が形成された構造を有する。すなわち本発明における繊維状原料炭素粒子1は端部が閉じた構造を有し、従来のCNTと異なる。
本発明における繊維状原料炭素粒子1においては、中空部3が更に非晶質炭素壁で複数に分割されていることがある。また、本発明における繊維状原料炭素粒子における中空とは、空気が存在する場合のみならず、液体や他の固体が充填されている場合を排除するものではない。
本発明における繊維状原料炭素粒子1の少なくとも両端部10は、炭素結晶端が露出した構造を備えている。代表的には図1(a)に示す様に繊維状炭素粒子1の全体において炭素結晶端が露出した構造と、図1(b)に示す様に両端部においてのみ炭素結晶端が露出した構造とが存在する。これらの構造又は両者の構造が適当割合で寄与した構造は、後述の炭素化過程(0094段落に記載)で生じる炭素ラジカルに及ぼす被覆材料(0097段落に記載)の表面官能基の効果を制御することにより得ることが出来る。そして、露出した炭素結晶端には炭素以外の元素である酸素、窒素、水素が付与されているため、極性サイトとなっている。このため、例えば本製法で作製したCNTを水系溶媒に入れた場合には、その極性サイトに対して水和が起こり、炭素粒子の分散安定性に寄与すると考えられる。また、この極性サイトは炭素粒子に電荷を付与することとなり、炭素粒子と反対の電荷を部分的にでも持つタンパク質分子や合成高分子が、容易に炭素粒子表面に吸着するなどの利点を有する。
本発明における繊維状原料炭素粒子1は、長径が40nm以上10μm以下の範囲であるが、長径に対する短径の比であるアスペクト比は、電界放出特性、導電特性、樹脂等の異種固体への混合・分散特性の観点から通常2以上、好ましくは3以上である。そしてその上限は材料としての加工時のハンドリングの観点から、通常2000以下、好ましくは1000以下、更に好ましく800以下の範囲である。
次に、球状原料炭素粒子について説明する。本発明の球状原料炭素粒子はその粒径が通常5nm以上、100μm以下の範囲である。ここで「球状」とは、アスペクト比が2以下の場合を指す。
続いて、本発明の原料炭素粒子(繊維状原料炭素粒子及び球状原料炭素粒子)に概ね共通の特性について説明する。
本発明の原料炭素粒子の炭素含有率は、必ずしも100重量%である必要はないが、化学的な安定性の観点から、元素分析値による値として通常70重量%以上、好ましくは75重量%以上である。
通常、本発明の原料炭素粒子は結晶性である。ここでいう結晶性は、必ずしも、いわゆる黒鉛状に制御されたものである必要はなく、小山ら(「工業材料」第30巻、第7号、p109〜115)に示される様な乱層黒鉛であってもよい。結晶性の目安としてのX線回折の反射ピークから求める結晶学的特性は、次の様に示される。すなわち、出力源がCuKαであるX線の回折角度2θが25°以上(好ましくは25.5°以上)にピークを示し、半値幅が7.0°以下(好ましくは6.5°以下、更に好ましくは5.0°以下)である。そして、(002)ピークの回折角からBraggの式で算出される炭素網目平均面間距離d(002)は3.6Å以下(好ましくは3.49Å以下)である。なお、この結晶性の定義は、本発明の原料炭素粒子のみならず、それを用いて得られる本発明の表面修飾炭素粒子の「結晶」という語にも同様に適用される。
本発明の原料炭素粒子は、その外周の少なくとも一部が、炭素結晶端が露出した構造又は炭素網面のループ状構造を有することが好ましい。ただし、結晶構造が同心円状である球状粒子はこれには当てはまらない。図2は、本発明の原料炭素粒子の外周における、炭素結晶端が露出した構造、及び、炭素網面のループ状構造の一例を説明するための図である。具体的に、図2は原料炭素粒子の外周表面の部分断面を拡大して模式的に示す図であり(図中、左側が炭素粒子内側、右側が炭素粒子外側に当たる。)、炭素結晶の方向を曲線によって模式的に示している。図中符号aで表わされる、炭素網面の粒子表面側末端が閉じていない構造が、粒子表面に炭素結晶端が露出した構造(以下、適宜「結晶端露出構造」と略す。)に相当し、図中符号bで表わされる、炭素網面の粒子表面側の末端同士が結合している構造が、粒子表面における炭素網面のループ状構造(以下、適宜「ループ状構造」と略す。)に相当する。なお、ループ状構造は通常、炭素網面20層までで形成される。粒子の表面形状(結晶端露出構造、ループ状構造)は80万倍のTEM写真によって確認できる。本発明の原料炭素粒子において、これらの結晶端露出構造及びループ状構造は、原料炭素粒子の外周の少なくとも一部に存在していれば良い。具体的には、これらの結晶端露出構造及びループ状構造を合わせて、原料炭素粒子の外周全表面積の通常10%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上を占めていることが望ましい。なお、炭素繊維業界では、一般に、結晶端露出構造を加熱すると、結晶端に付着している原子などがとれてループ状になるといわれている。
本発明の原料炭素粒子は、該粒子の表面が炭素結晶で構成されていることを特徴とする。中でも、該粒子の表面全部が炭素結晶で構成されていることが好ましい。ここで「表面が炭素結晶で構成されている」とは、端部においても一定以上の径の空孔を有していないことを意味する。具体的にはTEM写真によって観察した場合に、その孔径が通常数十nm以上、好ましくは数nm以上、更に好ましくは1nm以上の空孔が存在しなければ良い。
また、本発明のさらに好ましい態様は、粒子の構造が、その外周部が炭素結晶壁で包囲されている中空部を有するものを使用することである。ここで、外周部が炭素結晶壁で包囲されているとは、中空部に通じる一定以上の径の空孔を有していないことを指す。具体的には、TEM写真によって観察した場合に、その孔径が通常数十nm以上、好ましくは数nm以上、更に好ましくは1nm以上の空孔が存在しなければ良い。また、中空部ではなく、内部に非晶質成分が存在しているか否かは、倍率80万倍以上のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。なお、水の様に、中空である場合と同様のコントラストを示す場合も中空に含まれることとする。炭素結晶面の積層方向は、10〜80万倍のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。
本発明の原料炭素粒子における炭素結晶壁で包囲されている中空部は、1つでも、複数(炭素結晶壁で包囲されている中空部が形成され且つ当該中空部が更に炭素結晶壁で複数に分割された構造)でもよいが、1つの方が好ましい。なお、少なくとも1つの中空部の長径は原料炭素粒子の径の通常5%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上の範囲である。また、当該中空部が更に非晶質炭素壁で複数に分割されていてもよい。なお、本発明の原料炭素粒子における「中空」とは、空気が存在する場合のみならず、内部まで炭素が充填されていなければよく、当該中空部に液体や他の固体が充填されていてもよい。
また、本発明の原料炭素粒子における炭素結晶壁の厚さは、中空部における他の物質の担持容量の観点から、原料炭素粒子の中心から壁外周までの距離(半径)に対する割合として、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
本発明の原料炭素粒子は、内部の中空部に通じる大きな径の孔を有さないため、例えば中空部に薬剤等を包有させてDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)用途等に用いた場合に、アルミナメンブレン法(Advanced Materials, 2003年, Vol.15, No.2, p.164-167)により得られる炭素粒子と比べ、薬剤の放出速度をより遅めに制御することが可能である。更に、粒子外周に、炭素結晶端が露出した構造又は炭素網面のループ状構造を有する粒子の場合には、炭素結晶端が同心円状である場合に比べ、炭素結晶層間に他原子をインターカレートすることや、これを電界放出させることが容易であると考えられ、例えば電界放射ディスプレイに応用したり、Li等を加えることによりリチウム電池の作製等に応用できるものと期待される。なお、CNT(カーボンナノチューブ)の電子放出は、五員環から優先的に電界放出が生じることが知られている(「カーボンナノチューブの基礎と応用」、齋藤理一郎・篠原久典、培風館、2004年、p.159〜169)。
加えて、本発明の原料炭素粒子は、結晶性から期待される導電特性と共に、形状が揃っており、取り扱い易いという利点を有するが、更に、従来の炭素材料にない良好な分散性、特に水及び極性溶媒に高度に分散する特性を付与することも可能である。従って、本発明の原料炭素粒子は、上記の特性を活かして各種ポリマーの導電付与材の目的で複合材料として使用される他、良好な分散性を下に帯電防止層を形成する塗布液として各種の用途が期待される。特に、表面エネルギーの高いガラス基材、PETフィルム、PVAフィルム等に対しては、微小な粒子サイズと均一性から、透明導電膜の導電フィラーとして有効である。また、カプセル構造を活かし、生体内での診断試薬、モニター試薬の支持材料の分野で好適に利用される材料である。
本発明の原料炭素粒子の表面特性は、製造時の原形型の表面特性又は製造後の後処理などにより制御可能である。特に、本発明の構造を有する炭素粒子を製造する一例として挙げた方法(原形型としてSiO2を使用する場合)を採用する場合に分散性が向上すると期待される。その原因としては、炭素粒子の表面に水酸基やカルボニル基などが存在していることによるものと推定される。
ハイパーフラーレン等の結晶構造を有する中空炭素粒子は、粒径及び形状が不均一であり、溶媒分散が困難である等の課題がある。また、各種テンプレート法などで作製した粒径及び形状が揃った中空炭素粒子は、結晶構造ではなくアモルファス構造となっており、導電性、電界放出性などの電気的特性に劣っている。これに対し、本発明の原料炭素粒子は、炭素結晶壁で包囲されている中空部を有している。すなわち、本発明の原料炭素粒子は、粒径及び形状が揃っており、かつ、溶媒への高い分散性を有しており、更に、結晶構造を有している。そのため、本発明の原料炭素粒子は、従来の炭素粒子と異なる。
本発明の原料炭素粒子は、適度な分散性を有していることが好ましい。具体的には、以下の方法で調製された分散液について、調製後24時間静置して測定した以下の式(I)で表される粒径分布指標が通常0.1以上、また、20以下の範囲である。
<分散液の調製>
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
Figure 2007031268
上記の分散液の調製に使用する分散媒としては、原料炭素粒子の表面特性などに応じ、原料炭素粒子に対して不活性で且つ適切な分散媒を選択することが望ましい。本発明において、分散媒の選定は次の様に行なう。すなわち、上記の分散液の調製の場合と同一要領で分散液を調製し、調製後24時間静置し、分散液の上から1cmの位置と下から1cmの位置との間の中央部の分散液について目視観察した際、二次凝集粒子が実質的に存在せずに均一な分散状態が得られる分散媒を選択することが望ましい。選定対象となり得る分散媒としては、後述の分散媒が挙げられるが、本発明の原料炭素粒子の場合、適切な分散媒としては、例えば水を使用することができる。
粒径分布指標は、粒度分布計による動的光散乱法にて測定可能である。粒径分布指標は通常0.1以上、好ましくは0.3以上、また、通常20以下、好ましくは10以下の範囲である。
また、通常、本発明の原料炭素粒子は、カーボンブラックのアグリゲートの様な凝集も二次凝集(物理的凝集)もしていない。斯かる特性は分散性向上に対してプラスに作用し、物理的凝集しているカーボンブラックと大きく異なる。
<1−2.原料炭素粒子の分散体>
本発明の原料炭素粒子は、後述の目的分子を結合又は吸着させる際に、乾燥した状態で用いてもよいが、各種の分散媒に分散させ、分散体の状態として使用してもよい。
分散媒としては特に限定されず、極性溶媒又は非極性溶媒の何れでもよい。極性溶媒としては水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等カーボネート類などが挙げられる。非極性溶媒としては、各種のアルカン類、芳香族類及びこれらの混合物などが挙げられる。これらの中では、親和性が高く分散性が良好であるとの観点から、極性溶媒が好ましく、水及びアルコール類が更に好ましい。
分散媒中の原料炭素粒子の割合は通常0.1重量%以上、また、通常10重量%以下の範囲であり、分散媒中への原料炭素粒子の分散には、機械的な撹拌の他、ペイントシェイカー等の機械的な振盪方法、超音波照射などの手段を採用することができる。また、必要に応じ界面活性剤を使用してもよい。
本発明の原料炭素粒子の分散体は次の様な特徴を有する。すなわち、粒径が揃っているため、分散溶媒中での粒子の沈降速度が一定であり、経時的に安定で、均一な懸濁液を得ることが可能である。また、特に分散媒が極性溶媒で原料炭素粒子の表面に親水性基が存在する場合は、一層良好に分散され、凝集体が形成され難い。
本発明の原料炭素粒子の分散体における分散粒径は、粒度分布計による動的光散乱法又はレーザー回折散乱法にて測定可能である。具体的には、前記の方法で分散を行った後、24時間静置した後の分散液について測定する。ここで、測定レンジ以上のサイズである200μm以上の粒子又は凝集物を除いた粒子について平均粒径を分散粒径とする。なお、200μm以上の粒子は、動的光散乱及びレーザー回折法の何れの方法でも一般に測定検知能力の範囲外であり、光学顕微鏡にてその存在を確認することができる。
本発明の原料炭素粒子の分散体においては通常、100個以上の粒子を観察した場合、全測定粒子の90体積%以上が60μm以下の粒径又は凝集サイズであることが好ましく、30μm以下の粒径又は凝集サイズであることが更に好ましい。
<1−3.その他>
以上説明した本発明の原料炭素粒子が、その表面に機能性分子を吸着又は結合させることができる理由は明らかではないが、次のように推測される。即ち、本発明の原料炭素粒子は、水に容易に分散させることができるが、これは、従来知られている通常のCNT等の中空炭素粒子とは異なり、その表面に−OH基(水酸基)等の官能基を比較的多く有しているためであると考えられる。これらの官能基の存在によって、例えば上記特許文献1記載の手法の様に特別な表面処理等を行なうことなく、粒子の表面に他の分子を容易に吸着又は結合させ、固定化することができるものと推測される。
[2.表面修飾炭素粒子]
本発明に係る表面修飾炭素粒子は、上述の原料炭素粒子の表面に、機能性分子が吸着又は結合し、固定化されたものである。
本発明において「機能性分子」とは、原料炭素粒子に生理活性を付与することを目的として使用される分子を広く指すものである。よって、その種類は特に制限されない。例えば、(生体分子等の)天然分子でも合成分子でも良く、親水性分子でも疎水性分子でも良く、有機分子でも無機分子でも良く、高分子でも低分子でも良い。但し、従来の炭素粒子は疎水性が高く、生体分子や親水性分子を吸着させるのが困難であった点や、上述のように、本発明の原料炭素粒子が表面に水酸基を有していると推測される点から、機能性分子としては生体分子や親水性分子が好ましい。
具体例としては、以下のものが挙げられる。
即ち、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインG、プロテインA,プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼなどのタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、ビオチンなどのビタミン、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、薬剤、脂質、無機物質、若しくはこれらの融合体、又はウイルス、若しくは細胞を構成する分子等を指すが、これらに限定されるものではなく、極性を有する官能基であればここで言う極性基に属する。
本明細書において、原料炭素粒子の表面に機能性分子が「吸着又は結合」しているとは、原料炭素粒子の表面に機能性分子が何らかの形態で固定化されていることを広く指すものである。結合の種類としては、共有結合、イオン結合、金属結合、キレート結合等が挙げられ、また、吸着の種類としては、化学吸着と物理吸着とが挙げられるが、何れであっても良い。ただし、炭素粒子表面に直接生理活性物質を吸着または結合する場合だけではなく、ポリエチレングリコールなどの合成高分子をスペーサーとして結合してから、その末端などに生理活性物質を結合したようなものも、ここで言う「吸着又は結合」に含まれる。さらに、炭素粒子表面を高分子電解質などで被覆した後に、上記の生理活性物質を吸着・結合したものも含まれる。高分子電解質の例としては、ポリアクリル酸とその共重合体、ポリエチレンイミンなどのポリアニオン、ポリカチオン等があるが、これに限定されるものではない。なお、原料炭素粒子の表面に機能性分子が「吸着又は結合」しているか否かは、後述の様に、表面修飾炭素粒子を洗浄した場合に、その表面修飾炭素粒子が機能性分子に由来する機能を維持しているか否かを調べることにより確認することができる。
原料炭素粒子の表面に機能性分子を吸着又は結合させる手法は特に制限されないが、例としては、(i)原料炭素粒子の表面に機能性分子を接触させる手法、(ii)原料炭素粒子の表面を活性化し、それに機能性分子を接触させる手法などが挙げられる。(i)は主に原料炭素粒子の表面に機能性分子を吸着させて固定化する際に有効であり、(ii)は主に原料炭素粒子の表面に機能性分子を共有結合等の様式により結合させ、固定化する上で有効であるが、特に制限されるものではない。
上述の(i)原料炭素粒子の表面に機能性分子を接触させる手法において、接触の手順は特に制限されないが、通常は原料炭素粒子及び機能性分子をともに溶媒中に溶解又は分散させることにより行なう。
溶媒の種類は特に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない(即ち、原料炭素粒子や機能性分子に好ましからぬ作用をひき起したり、原料炭素粒子に対する機能性分子の吸着や結合を阻害したりするおそれのない)溶媒であって、原料炭素粒子及び機能性分子を共に好適に溶解又は分散させることができるものであれば、任意の溶媒を使用することが可能である。例としては、水、有機溶媒(アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、芳香族系溶媒類(トルエン、キシレンなど)、複素環系溶媒類(テトラヒドロフランなど)等)などが挙げられる。概して、機能性分子として有機物質を用いる場合には水又は極性有機溶媒が、無機物質を用いる場合には非極性有機溶媒が用いられる。これらの溶媒は一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。また、原料炭素粒子及び機能性分子をそれぞれ別の溶媒に溶解又は分散させてから、これらを混合してもよい。この場合、原料炭素粒子を好適に溶解又は分散させる一種又は二種以上の溶媒、及び、機能性分子を好適に溶解又は分散させる一種又は二種以上の溶媒を、互いに溶解し得る組み合わせで選択すればよい。タンパク質等の生体分子を用いる場合は、水系溶媒が好ましい。なお、溶媒中には、原料炭素粒子及び機能性粒子の他の成分(例えば不純物等)が存在していても良い。また、分散剤等の各種の添加剤などを溶媒中に別途加えても良い。
原料炭素粒子、機能性粒子、溶媒の使用比率も特に制限されないが、原料炭素粒子と機能性分子とが共に溶媒中に溶解又は分散した状態において、溶媒中における原料炭素粒子の濃度が、通常0.01mg/ml以上、好ましくは0.05mg/ml以上の範囲となり、また、溶媒中における機能性分子の濃度が、通常0.01mg/ml以上、好ましくは0.05mg/ml以上の範囲となるようにする。原料炭素粒子又は機能性分子の濃度が低過ぎると、原料炭素粒子と機能性分子とが溶媒中において十分に接触せず、原料炭素粒子に機能性分子が十分に吸着されないおそれがある。
原料炭素粒子及び機能性分子を溶媒に溶解又は分散させる手順は特に制限されず、溶媒に原料炭素粒子を溶解又は分散させてから、これに機能性分子を加えて混合しても良く、溶媒に機能性分子を溶解又は分散させてから、これに原料炭素粒子を加えて混合しても良い。また、上述のように、原料炭素粒子及び機能性分子をそれぞれ別の溶媒に溶解又は分散させてから、これらの溶液又は分散液を混合しても良い。これらの混合は任意の手法で行なえばよいが、通常は反応容器中で、攪拌を加えながら混合する。混合は空気雰囲気下で行なっても良く、必要に応じて不活性雰囲気下で行なっても良い。
原料炭素粒子と機能性分子とを溶媒中で接触させる際の条件は、本発明の趣旨を逸脱しない(即ち、原料炭素粒子や機能性分子に好ましからぬ作用をひき起したり、原料炭素粒子に対する機能性分子の吸着や結合を阻害したりするおそれのない)限り、特に制限されない。具体的に、接触時の温度は通常−10℃以上、好ましくは0℃以上、また、通常700℃以下、好ましくは300℃以下の範囲である。また、接触時の圧力は通常は常圧であるが、必要に応じて原料炭素粒子が損傷を受けない程度に加圧又は減圧してもよい。接触の時間も他の条件に応じて決定すればよいが、通常は1分以上、好ましくは10分以上、また、通常は100時間以下、好ましくは10時間以下の範囲である。
一方、(ii)原料炭素粒子の表面を活性化した後、それに機能性分子を接触させる手法において、活性化の手法は特に制限されない。原料炭素粒子の表面に対して、目的とする機能性分子が吸着又は結合し易くなるよう、適切な活性化の手法を適宜選択すればよい。例としては、原料炭素粒子の表面に存在する水酸基のトシル化、シアノジンブロマイドによる活性化等の手法が挙げられる。原料炭素粒子の表面に存在する水酸基をトシル化する場合、その手法は特に制限されないが、例えば、塩化p−トルエンスルホニルとピリジンとの混合液を原料炭素粒子の表面に接触させればよい。
活性化の後、活性化された原料炭素粒子に機能性分子を接触させる。接触の手法は制限されず、通常は上述の(i)と同様、活性化された原料炭素粒子と機能性分子とを溶媒中に溶解又は分散させ、互いに接触させることにより行なえばよい。溶媒の種類や組み合わせ、溶媒と原料炭素粒子及び機能性分子との使用比率、混合・接触の手法やその温度、圧力、時間などは、何れも上述の(i)の記載において説明した通りであるが、更に、前段の活性化工程により得られた原料炭素粒子の活性化状態を損なうことのないよう、個々の条件を適切に選択することが望ましい。
上述の(i),(ii)等の手法により、機能性分子が原料炭素粒子の表面に吸着又は結合された表面修飾炭素粒子が得られる。必要に応じて、得られた表面修飾炭素粒子を洗浄してもよい。洗浄に使用する液体は特に制限されず、得られた表面修飾炭素粒子に損傷を与えない範囲で適当に選択すれば良いが、通常は上述の(i)の記載において例示した各種の溶媒が用いられる。洗浄の手順も特に制限されないが、好ましくは上述の洗浄用の液体中に得られた表面修飾炭素粒子を加えて通常1分以上、24時間以下放置(適宜攪拌を加えてもよい。)した後、攪拌・振とうすることにより炭素粒子を分散させ、4℃から室温で12000rpm、10分間遠心分離を行なうか、濾過などの手法で吸着または固定化されなかった遊離の機能性分子を取り除き、表面修飾炭素粒子のみを分離して回収すればよい。通常はこの操作を3回以上行ない、遊離の機能性分子が存在しない状態まで洗浄
を行なう。
なお、表面修飾炭素粒子がその粒子表面に吸着又は結合された機能性分子を有しているか否かは、上述の手順で洗浄を行なった後も、その表面修飾炭素粒子が機能性分子に由来する機能を維持しているか否かを調べることにより、確認することができる。
本発明の表面修飾炭素粒子は、ポリマー粒子をシリカで包囲した上で液相炭化を行い、マトリックスであるシリカをアルカリで溶解・洗浄することで製造されるため、従来のCNTをはじめとする炭素粒子とは異なり、作製が終了した時点で、導入が難しいとされる官能基が炭素粒子表面に、水に分散するのに十分な量導入されている。
この理由としては、該粒子の表面が炭素結晶で構成されてはいるが、最外層のグラフェンレイヤーのエッジ(炭素網面のエッジを意味する。)がむき出しになっている部分が存在するためと思われる。このエッジの部分には、酸素、水素、窒素などの炭素元素以外の元素が存在し、極性サイトとなっている。
このため、最終生成物は炭素粒子の水分散液として得られ、改めて表面処理を施す必要が無く、従来のCNTにおいて課題となる表面処理操作によるCNTの切断などの変質を防ぐことが可能である。このためCNTの端がオープンになることは無く、両端が閉じたCNTが得られる。
そして、炭素粒子の水分散液に機能性分子を混合するだけで機能性分子を吸着させることが可能であり、操作が簡便でコスト的に有利である。また、最初の炭素粒子の性質を保持したまま表面に機能性物質を付与できるため、あらかじめデザインしたとおりの機能性炭素粒子を作製できるという有利な効果を奏する。
本発明で提案される新規な炭素粒子は、両端部が閉じており、長さが揃ったCNT表面にタンパク質が吸着・結合しているため、溶媒に分散しやすいと考えられ、しかも、不要な触媒が含まれていないため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)担体、生体内外での診断薬、タンパク質・核酸等の分離精製用微粒子、造影剤用担体、インクジェット方式によるバイオチップ作製用の微粒子などとしての用途が期待できる。
以上説明した本発明の表面修飾炭素粒子は、炭素結晶で構成され、微細で均一な構造をそなえた原料炭素粒子の表面に、機能性分子が吸着又は結合された新規な構造を有する。よって、原料炭素粒子の有する微細且つ均一な構造と、機能性分子が有する各種の機能とを兼ね備えた、新たな機能性材料として用いることができる。また、中空であるため比重が小さくなり液中で沈降することがないため、診断薬などの用途においては再分散などが必要ないため、操作の簡略化が図れる。さらに薬物などを中に詰めてDDSとして使用できる。
また、本発明の表面修飾炭素粒子は、特定の原料炭素粒子をそのまま用い、或いはその表面を活性化させた上で、その粒子の表面に機能性分子を接触させるだけで得られるため、表面処理等の作業が不要であり、効率的に製造することができる。更に、原料として用いる原料炭素粒子の構造が表面処理等によって破壊されるおそれがなく、精密な構造の設計が可能である。
本発明の表面修飾炭素粒子の用途は特に制限されないが、例えば、機能性分子として生体分子を用いることにより、生体分子の機能を炭素に付与した新しい機能性材料を作製することができる。また、炭素粒子の中空部内に各種の薬剤等を内包させ、これを生体内で徐々に放出させることにより、DDS(drug delivery system)等の用途に使用することも期待できるが、内包された薬剤の放出速度等の特性に影響を与える分子を機能性分子として用いることにより、内包薬剤の放出速度等の特性を制御することが可能となる。その他、生体内外での診断試薬、モニター試薬の支持材料、DNAチップをはじめとするバイオチップ、造影剤等の分野にも、好適に利用され得るものと期待される。
[3.原料炭素粒子の製造方法]
原料炭素粒子としては、上述の特性を満たすものであれば、他の条件は特に制限されないが、本発明では特に、特定の製造方法により得られる原料炭素粒子を用いることが好ましい。説明の便宜上、まずはこの特定の製造方法(以下適宜「本発明の原料炭素粒子の製造方法」という。)について説明する。
繊維状原料炭素粒子の材料としては、繊維状の含炭素粒子(以下適宜「繊維状前駆体粒子」という。)を使用する。繊維状前駆体粒子の粒径は、通常40nm以上、10μm以下の範囲から選択される。
一方、球状原料炭素粒子の材料としては、球状の含炭素粒子(以下適宜「球状前駆体粒子」という。また、繊維状前駆体粒子と球状前駆体粒子とを区別せずに指す場合には、単に「前駆体粒子」と呼ぶものとする。)を使用する。球状前駆体粒子の粒径は、通常5nm以上、100μm以下の範囲から選択される。
なお、前駆体粒子の粒径及び形状は、それを確認可能な倍率、例えば、粒径が数百nmの場合、5万倍以上の倍率の透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope:以下適宜「TEM」と略する。)の観察像で確認できるが、簡便的には走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:以下適宜「SEM」と略する。)を使用してもよい。この点は、後述の本発明の原料炭素粒子の粒径及び形状についても同様である。
上記の前駆体粒子の材料(前駆体物質)としては、耐熱性材料で被覆して炭素化可能な材料であれば特に制限されないが、液相炭素化が可能な材料又は易熱分解ポリマー含有物質が好ましい。なお、「液相炭素化」とは、固体がガラス転移温度Tgにおける流動状態よりも高い流動状態を経て、熱化学反応が液相中で進行し、分子の移動や配向が比較的起こり易い炭素化過程をいう。
液相炭素化が可能な材料としては、具体的には、ピッチ、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、フェノール樹脂、レーヨン等が挙げられ、これらのうち、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマーが好ましい。
易熱分解性ポリマーは、通常、不活性な雰囲気下で、常圧で、500℃以上に加熱した際に分解するポリマーのことをいう。具体的には、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、これらのうち、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。これらのポリマーは、通常は炭素粒子の製造原料として使用されてはいないが、本発明の原料炭素粒子の製造方法では耐熱性材料で被覆して炭素化するため、予想に反して炭素粒子化できるものと考えられる。
前駆体粒子は、液相炭素化が可能な材料と易熱分解ポリマーの何れか一方のみを含んでいても構わないが、両方を含んでいるものが好ましい。また、本発明の原料炭素粒子の優れた性能を大幅に妨げなければ、液相炭素化が可能な材料又は易熱分解ポリマー以外の物質を含んでいてもよい。
前駆体粒子が、液相炭素化が可能な材料と易熱分解ポリマーの両方を含んでいる場合、易熱分解性ポリマーは、前駆体粒子を炭素化させる加熱過程での液相炭素化可能材料の塑性変形を容易にし、更に、高温域では熱分解してガスとなり、その圧力によって前駆体粒子を内部から拡張し、中空粒子の形成を促進する機能を有すると推定され、ガス圧によって拡張された前駆体粒子は、粒子の外表面に塗布された後述の耐熱性材料の壁に押しつけられ、その場で炭素化が進行し且つ結晶化が促進されると考えられる。また、本発明の原料炭素粒子の製造方法において作製された中空炭素粒子の中空部分に樹脂を流し込み、耐熱性物質での包埋・焼成方法を繰り返すことにより中空部分を無くし中実炭素粒子を作製することが可能であるため、本発明は中空炭素に限定されるものではない。
前駆体粒子に易熱分解性ポリマーを含有させる方法としては、それぞれの構成モノマーを任意の組成比で共重合する方法や組成を偏在させるためのシード重合方法などが挙げられる。
繊維状前駆体粒子は、例えば液相炭素化可能材料の粒子(被延伸粒子)を他のマトリックスポリマーに分散させて延伸した後、マトリックスポリマーを分離除去することにより得られる。マトリックスポリマーとしては、液相炭素化可能材料がポリビニルアルコール以外のときは、延伸後の分離除去の容易性、被延伸粒子の分散性などを考慮してポリビニルアルコールが好適に使用される。そして、繊維状前駆体粒子の長さは、上記の延伸操作の倍率により調節することが出来る。また、被延伸粒子の直径は通常10nm以上2μm以下である。なお、被延伸粒子の直径は、通常、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察などで確認できる。
なお球状前駆体粒子の場合は、液相炭素化可能材料粒子を、延伸操作を行なわずそのまま用いる。
本発明の原料炭素粒子の製造方法は、上記の前駆体粒子を原料とし、当該原料をその形状を維持するように原形型で被覆した状態で炭素化することを特徴とする。そして、本発明の好ましい態様においては、耐熱性材料で原料を被覆することにより、当該原料の原形型を形成する。
上記の耐熱性材料は、前駆体粒子が炭素化する温度域以下の温度で、自身の熱変形などにより前駆体粒子の形状に影響を与えないことが望ましい。好適な耐熱性材料としては、50〜500℃の温度域における線熱収縮率が30%以下である材料がよく、100〜500℃の範囲で明確なガラス転移点(Tg)を持たない材料が好ましい。また、加熱による炭素化後に簡便な方法で除去できる材料が好ましい。
上記の特性を満たす耐熱性材料としては、一般的に無機酸化物が好ましい。具体的には、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、In2O、ZnO、PbO、Y23、BaO、これらの混合物などが挙げられる。これらの中では、本発明の原料炭素粒子の純度及び金属不純物の制御の観点から、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2が好ましく、前駆体粒子の炭素化反応と結晶化を安定に進行させる観点から、SiO2が更に好ましい。
前駆体粒子の被覆方法としては、上記の無機酸化物の金属アルコキシド等を原料としたゾルゲル法による被覆方法、硝酸塩又はオキシ塩化物塩などの溶媒可溶性の無機化合物の溶液による被覆方法などが挙げられる。
特に、金属アルコキシドの加水分解により得たゾル溶液を前駆体粒子に塗布する方法、又は、当該加水分解液中に前駆体粒子を分散させた後に乾燥させて前駆体粒子の周囲をゲル化もしくは固化する方法は、ゲルの均一化工程を安定制御する上で好ましい。
SiO2を被覆する具体的方法としては次の方法が例示できる。すなわち、先ず、メタノール、エタノール等のアルコール類の溶液にアルコキシシラン類を加えた後、水を加え、密閉系又は還流系で、室温〜50℃で数時間攪拌することにより加水分解させ、シリケートゾル溶液を調製する。このゾル溶液調製の際に、ゾルの安定性と反応性を制御する上で適当なpHに調節するのが一般的であり、ここで、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、アンモニア等を触媒として加えてもよい。また、シリケートだけでなく、水ガラスなどを利用しても良い。
次いで、ゾル溶液に前駆体粒子を混合し、乾燥してゲル化に至らせ、前駆体粒子を分散させたシリカゲルを得る。
上述のアルコキシシラン類の具体例としては、テトラアルコキシシラン類であるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、これらそれぞれのオリゴマーの他、アルキルトリアルコキシシラン類であるメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が例示できる。ゲル化のプロセス条件及び被覆時の前駆体粒子の分散性などに応じ、2種類以上のアルコキシシラン類を併用してもよい。
この乾燥は、開放系又は密閉系で、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の条件で行なう。乾燥する時間は、乾燥温度にもよるが、通常は数分以上、好ましくは30分以上、また、通常は10日以下、好ましくは5日以下の範囲とする。
また、斯かる方法の他、前駆体粒子にシリケートゾル溶液をスプレー塗布する方法なども挙げられる。
上記のSiO2被覆において、SiO2被覆された前駆体粒子を真空乾燥、又は、熱変形しない範囲で加熱することにより、SiO2中のシロキサン結合の密度を高めることは、被覆成分の耐熱性を高める上で有効である。
次に、前駆体粒子の炭素化(炭素化過程)について説明する。前駆体粒子の炭素化は、上述の原形型で表面が被覆された前駆体粒子を、窒素、アルゴン等の加熱時に当該前駆体粒子と反応する物質が存在しない雰囲気下で、加熱して行なう。加熱時の雰囲気は、フロー系でも、密閉系でも構わないが、フロー系の方が好ましい。加熱時の圧力は、加圧下でも減圧下でも構わないが、通常、常圧下で行なう。常圧下の場合の加熱温度は、通常500℃以上、好ましくは800℃以上である。加熱は、継続的に所定温度まで上げていっても、段階的に所定温度にまで上げていっても構わない。加熱時間は、加熱温度などにより異なるが、所定の加熱温度に到達した後、通常0.5時間以上、また、通常2時間以下の範囲である。
炭素化後、通常、表面の原形型は除去する。除去方法としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液やフッ酸で溶解する方法などが挙げられる。このうち、工業的に安全なことから、アルカリ水溶液で溶解する方法が好ましい。溶解除去は、通常、耐圧密閉容器中で150℃に加熱して溶解し、残った炭素粒子を固液分離して回収する等の方法で行う。前駆体物質としてポリアクリロニトリルを使用する場合、上記の方法で得られる原料炭素粒子の収率は、通常30重量%以上、好ましくは35重量%以上、また、通常45重量%以下の範囲である。本発明における方法を用いると、表面が酸化された炭素粒子が得られるため従来の方法と異なり、改めて酸化処理を施し炭素表面に官能基を入れる操作は不要である。このため、溶媒に対して分散性を有する炭素粒子を簡便に得る事が可能である。
本発明の原料炭素粒子の製造方法によれば、原料炭素粒子を均一な形状の粒子群として得ることができ、更に、最終生成物の原料炭素粒子を前駆体の段階で設計することができるという利点がある。すなわち、前駆体粒子として長径が40nm以上、10μm以下の繊維状前駆体粒子を用いることにより、実質的にこれと同一粒径の繊維状原料炭素粒子(長径が40nm以上、10μm以下)を得ることができる。また、前駆体粒子として、粒径5nmから100μmの球状前駆体粒子を用いることにより、実質的にこれと同一粒径の球状原料炭素粒子(粒径5nmから100μm)を得ることができる。
また、本発明の原料炭素粒子の製造方法は、結晶性の高い原料炭素粒子を得る上でも有効な方法である。すなわち、特に、前駆体物質が液相炭素化が可能な材料である場合、炭素化過程のメソフェーズが炭素化後の生成物の結晶構造を大きく支配するが、表面を被覆している原形型の表面特性が結晶性に与える影響が大きい。この際、前記の原形型の表面特性は、例えば、原形型の表面官能基{即ち、原形型の材料(被覆材料)の表面官能基}などに応じて決まる。前記の影響の具体例を挙げると、ポリアクリロニトリル等の液相炭素化が可能なポリマーを前駆体とする場合、炭素化過程で生じる炭素ラジカルに及ぼす原形型の表面官能基の効果として、結晶化度と配向に対する大きな影響が挙げられる。なお、表面官能基としては、例えば、シラノール基、水酸基、ケトン基、エステル基などが挙げられる。
本発明の原料炭素粒子の製造方法における上述の作用効果により、得られる原料炭素粒子は、後述する様に、従来存在しなかった新規な構造を有している。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の記載において「バッファー」とは、pH7.4、濃度10mMのHEPESバッファーを指すものとする。また、アセトンとしては、全て乾燥アセトンを使用し、水としては、全て蒸留水を使用した。なお実施例において炭素粒子とあるのは乾燥した粒子ではなく、溶媒に粒子が分散した状態の分散液を意味する。
[実施例1]
<原料炭素粒子の製造>
ドデシル硫酸ナトリウム0.32gを水145gに溶解させ、得られた溶液に、アクリロニトリル12.71g、アクリル酸メチル1.83g、メタアクリル酸0.46g、n−ブチルメルカプタン0.3gの混合物を加え、窒素ガスのフロー下、300rpmで撹拌しながら室温から昇温し、60℃において過硫酸カリウム水溶液(過硫酸カリウム0.1gを水5gに溶解させた水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合反応を行なった。反応停止後、水を除去し、動的光散乱法による粒度分布測定で平均粒径130nmのアクリル樹脂粒子12.5gを含む懸濁液を調製した。この懸濁液中の樹脂粒子について元素分析(C、H、N)を行ない、その窒素量からアクリロニトリル単位の割合を求めたところ、79.5重量%であった。また、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion chromatography:SEC)により、ポリスチレン(PSt)換算での重量平均分子量を求めたところ、40500であった。
一方、ポリビニルアルコール(クラレ製「クラレポバールPVA217」。以下適宜「PVA」という。)15gを水100gに加え、90℃で1時間攪拌して溶解させた。得られた溶液を室温に冷却した後、前記の樹脂粒子懸濁液37.2g(樹脂粒子の含量3.0g)を加え、室温で5分間攪拌した。これを15cm径のシャーレ5枚に30gずつ分配し、そのまま室温で5時間静置して水分を揮発させ、PVAの固形分濃度が30重量%になるまで濃縮し、ゲルを調製した。
上記のゲル17.3gを90℃に加熱した200μmφの紡糸ノズルに入れ、ピストンで加圧してノズルから50〜120μm径の糸状のゲルを押し出すことにより、アクリル樹脂粒子を含む乾燥した糸状PVAゲル2.4gを得た。
上記の乾燥糸状PVAゲルを5cmの長さに切り揃え、糸の両端1cmずつをチャックで掴み、140℃に加熱しつつ、機械的に30cm/分の速度で18cmになるまで延伸し、延伸糸1.3gを得た。この延伸糸を水10mlに浸し、室温で20分間攪拌してPVAを溶解し、延伸したアクリル粒子の懸濁液を得た。この懸濁液を20℃で18000rpmの条件下で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿のアクリル粒子を同様の方法で水洗し、延伸されたアクリル粒子のエマルジョンを得た。
水3.72gとエタノール4.75gの混合液に、メチルシリケートオリゴマー(三菱化学製「MS51」)5.37gを加えて分散させた後、1mol/Lの塩酸を加えてpHを3に調整した。50℃で4時間撹拌し、メチルシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカゾルを調製した。
上記のアクリル粒子エマルジョン0.52g(ポリマー粒子量0.05g)に、脱塩水1.04gと、上記のシリカゾル1.56gを加え、振とうして混合した後、密栓して50℃のオーブン中で3日間静置して流動性のないゲルを得、ポリマー粒子が分散したシリカゲルを得た。このゲルをガラス皿に移し、50℃のオーブン中で8時間乾燥した。
上記で得られた乾燥ゲルを、電気炉にて窒素雰囲気下で室温から5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してポリマー粒子を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温にまで冷却された12時間後に、得られた炭素化物を取り出した。この炭素化物を1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解して除去し、炭素粒子が分散した分散液を得た。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿中の炭素粒子を同様の方法で3回水洗し、炭素粒子の分散液を得た。
上記の分散液を超音波にて3分間分散し、その中から任意の3滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、何れの滴にも100μm以上の炭素粒子及びその凝集物は観察されなかった。
上記の分散液中の粒子の構造をTEM(倍率:80万倍)で観察したところ、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ有し、両端部に炭素結晶端が露出した構造の炭素粒子であった。また、外観形状は、長径250〜500nm、短径40〜100nmの繊維状の粒子であった。また、この粒子の集合体を8万倍で観察したところ、凝集体は視野に存在しなかった。
上記の粒子の元素分析結果は、炭素、窒素、酸素が主な構成元素であり、検出濃度は、炭素80.72重量%、窒素5.84重量%、酸素6.41重量%であった。なお、上記以外の元素として、水素0.81重量%、ケイ素は検出限界(1重量%)以下であった。
<機能性分子の吸着>
以上の手順により得られた炭素粒子(原料炭素粒子)2mgを、バッファー0.5mlに分散させた。この分散液を、ペルオキシダーゼ(機能性分子)を5mg/mlの濃度でバッファーに溶解させた溶液0.5mlと混合し、室温で1時間反応させることにより、ペルオキシダーゼを炭素粒子に吸着させた。その後、遠心分離操作(12000rpm)で炭素粒子を沈殿分離し、上澄みの遊離のペルオキシダーゼを除去した。更にバッファー1mlを加えて炭素粒子を分散させた後、遠心分離操作(12000rpm)により炭素粒子を沈殿させ、上澄み液を除去した。この一連の操作を3回繰り返すことで、遊離のペルオキシダーゼを除去し、洗浄することにより、ペルオキシダーゼが表面に吸着した炭素粒子(実施例1の表面修飾炭素粒子)を得た。
得られた実施例1の表面修飾炭素粒子を、基質であるo−フェニレンジアミン−過酸化水素水溶液に入れ、ペルオキシダーゼ酵素活性があるかどうかを調べたところ、水溶液が橙色に変化したことから、ペルオキシダーゼが炭素粒子の表面に吸着されており、また、その活性を保っていたことが分かった。
一方、比較対照として、実施例1と同様の手順で得られた表面修飾炭素粒子を、そのままo−フェニレンジアミン−過酸化水素水溶液に入れ、酵素活性があるかどうかを調べたところ、水溶液の色は変化しなかった。
[実施例2]
<原料炭素粒子の製造>
水36.4gとエタノール46.63gの混合液にメチルシリケートオリゴマー(三菱化学製「MS51」)52.62gを混合して分散した後、1mol/Lの塩酸を加え、pH2の液を調製した。室温で1時間撹拌し、メチルシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカゾルを調製した。
実施例1と同様の手順で得られたアクリル粒子のエマルジョン42.66g(ポリマー粒子量0.455g)に、上記のシリカゾル128.02gを加え、振とうして混合した後、ステンレス角型バットに移し、窒素フロー下、40℃のオーブン中で8時間乾燥させた。
上記で得られた乾燥ゲルを電気炉にて窒素雰囲気下で室温から5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してポリマー粒子を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温にまで冷却された12時間後に試料を取り出した。これを、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解し、炭素化粒子が分散した分散液を得た。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿の炭素化粒子を同様の方法で3回水洗し、炭素粒子の分散液を得た。
上記の分散液を超音波にて3分間分散し、その中から任意の3滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、何れの滴にも100μm以上の炭素粒子及びその凝集物は観察されなかった。
上記の分散液中の粒子の構造をTEM(倍率:80万倍)で観察したところ、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ有し、両端部に炭素結晶端が露出した構造の炭素粒子であった。また、外観形状は、長径500〜650nm、短径40〜90nmの繊維状の粒子であった。また、この粒子の集合体を8万倍で観察したところ、凝集体は視野に存在しなかった。
上記の粒子の元素分析結果は、炭素、窒素、酸素が主な構成元素であり、検出濃度は、炭素85.36重量%、窒素6.52重量%、酸素6.82重量%であった。なお、上記以外の元素として、水素0.3重量%、ケイ素は検出限界(1重量%)以下であった。
<原料炭素粒子の活性化>
以上の手順により得られた炭素粒子(原料炭素粒子)2mgを、アセトン1ml中に分散させた後、塩化p−トルエンスルホニル2mg及びピリジン3.5mgを加えて混合し、10分間室温で反応させることにより、原料炭素粒子の表面に存在するOH基を活性化させた。その後、1mlのアセトンを加えて洗浄し、遠心分離して上澄みを除去するという操作を2回行なった。更に、アセトン:1mM塩酸水溶液=80:20、50:50、20:80の混合溶媒各1mlずつを用い、同様の洗浄・上澄み除去の操作を、各混合溶媒につき2回ずつ行なった。更に、1mM塩酸水溶液1mlを用い、同様の洗浄・上澄み除去の操作を2回行なった。その後、4℃の1mM塩酸水溶液1mlに分散した炭素粒子を得た。
<機能性分子の結合>
上述の手順により活性化された炭素粒子(活性化炭素粒子)2mgについて、バッファー1mlを用い、上述と同様の洗浄・上澄み除去の操作を2回行なった。この活性化炭素粒子を0.5mgずつ分注し、それぞれに(a)アビジンを1.3mg/mlの濃度でバッファーに溶解させた溶液、(b)ヒドロキシポリエチレングリコールアミン(日本油脂(株)社製、商品名SUNBRIGHT HO−020PA)を5mg/mlの濃度でバッファーに溶解させた溶液、(c)ビオチンPEOアミン(PIERCE社製、商品名EZ−Link Biotin−PEO−Amine)を4mg/mlの濃度でバッファーに溶解させた溶液と混合し、室温で1時間反応させることで、炭素粒子表面にそれぞれの分子を結合させ、固定化した。その後、遠心分離を行ない、上澄み液を除去することにより、固定化されなかった遊離の分子を除去した。更に、バッファー1mlを用いて上述と同様の洗浄・上澄み除去の操作を行ない、最終的にアビジン、ヒドロキシポリエチレングリコールアミン、ビオチンPEOアミンがそれぞれ結合・固定化された炭素粒子(それぞれ実施例2(a)、実施例2(b)、実施例2(c)の表面修飾炭素粒子とする。)を得た。
なお、使用したヒドロキシポリエチレングリコールアミン及びビオチンPEOアミンの構造を、それぞれ下記の式(1)及び式(2)に示す。
Figure 2007031268
(式中、nは整数を表わす。平均分子量は約2000である。)
Figure 2007031268
アビジンは、ヒドロキシポリエチレングリコールアミンとは反応しないが、ビオチンと構造が類似しているビオチンPEOアミンとは特異的に反応して、凝集を生じる。そこで、アビジンが固定化された炭素粒子(実施例2(a)の表面修飾炭素粒子)と、ビオチンPEOアミンが固定化された炭素粒子(実施例2(c)の表面修飾炭素粒子)とを混合したところ、沈殿が生じたことから、これらの炭素粒子間で凝集が生じたことが分かった。一方、アビジンが固定化された炭素粒子(実施例2(a)の表面修飾炭素粒子)と、ヒドロキシポリエチレングリコールアミンが固定化された炭素粒子(実施例2(b)の表面修飾炭素粒子)とを混合したところ、これらの炭素粒子は分散したままであった。これにより、実施例2(a)の表面修飾炭素粒子上に固定化されたアビジンは活性を保っており、実施例2(c)の表面修飾炭素粒子上に固定化されたビオチンPEOアミンと特異的に反応することによって、炭素粒子の凝集が生じたことが示された。
本発明の表面修飾炭素粒子の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。中でも、DDS、診断試薬、DNAチップをはじめとするバイオチップ、造影剤等の分野の分野にも、好適に利用され得るものと期待される。
(a),(b)は何れも、本発明の表面修飾炭素粒子の原料となる繊維状の中空炭素粒子(繊維状原料炭素粒子)の構造を説明するための模式図である。 本発明の表面修飾炭素粒子の原料となる中空炭素粒子(原料炭素粒子)の外周における炭素結晶端が露出した構造、及び、炭素網面のループ状構造の一例を示す模式図である。
符号の説明
1:繊維状炭素微粒子
2:炭素結晶壁
3:中空部
10:繊維状炭素微粒子の端部

Claims (6)

  1. 長径が40nm以上10μm以下の繊維状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、該粒子の少なくとも両端部に、炭素結晶端が露出しており、且つ、該粒子の表面に機能性分子が吸着又は結合していることを特徴とする炭素粒子。
  2. 粒径が5nm以上100μm以下の球状の炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、且つ、該粒子の表面に機能性分子が吸着又は結合していることを特徴とする炭素粒子。
  3. 該粒子の外周の少なくとも一部に、炭素結晶端が露出した構造又は炭素網面のループ状構造を有することを特徴とする、請求項2記載の炭素粒子。
  4. 該機能性分子が生理活性機能を有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の炭素粒子。
  5. 請求項1記載の炭素粒子を製造する方法であって、
    長径が40nm以上10μm以下の繊維状の原料炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成され、該粒子の少なくとも両端部に、炭素結晶端が露出した原料炭素粒子に対して、機能性分子を接触させることにより、該原料炭素粒子の表面に前記機能性分子を吸着又は結合させることを特徴とする、炭素粒子の製造方法。
  6. 請求項2記載の炭素粒子を製造する方法であって、
    粒径が5nm以上100μm以下の球状の原料炭素粒子であって、該粒子の表面が炭素結晶で構成された原料炭素粒子に対して、機能性分子を接触させることにより、該原料粒子の表面に前記機能性分子を吸着又は結合させることを特徴とする、炭素粒子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010222239A (ja) * 2009-02-24 2010-10-07 Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America Inc 中空炭素球
JP2011230969A (ja) * 2010-04-28 2011-11-17 Toyo Univ ポリアミノ酸が施与されたカーボンナノチューブおよびその製造方法
JP2012096990A (ja) * 2011-11-02 2012-05-24 National Institute For Materials Science レドックスたんぱく質を非共有結合で結合させ機能化した生体反応性カーボンナノチューブの製法

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