JP2006183220A - 繊維状炭素粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 炭素結晶壁で包囲された中空部内に有機化合物や金属等の各種の材料が含まれた構造を有する繊維状炭素粒子を効率的に製造する。
【解決手段】 炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有し、長径が40nm以上、10μm以下の範囲である繊維状炭素粒子を原料として、これを少なくとも液化可能物質前駆体を含む液体に接触させる。
【選択図】 図3
【解決手段】 炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有し、長径が40nm以上、10μm以下の範囲である繊維状炭素粒子を原料として、これを少なくとも液化可能物質前駆体を含む液体に接触させる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、繊維状炭素粒子及びその製造方法に関する。具体的には、炭素結晶壁で包囲された中空部を有するとともに、この中空部内に他の材料を含む、新規な繊維状炭素粒子及びその製造方法に関する。
従来、中空部を有する炭素粒子に、金属等の無機物質や各種の有機化合物など、炭素以外の材料を含有させることにより、新たな炭素材料を製造する試みがなされている。炭素粒子としては、特に、多層のグラファイト状の炭素が積み重なって構成される、カーボンナノチューブ(以下適宜「CNT」と略する。)が注目されている。
例えば、非特許文献1には、金属と炭素を同時にアーク放電で蒸発させて、金属を含有するCNTを製造する方法が開示されている。含有される金属の具体例としては、希土類元素の一部(Y、Gd)、3d遷移金属元素の一部(Mn、Cr、Ni)、銅(Cu)、半導体・半金属元素の一部(Ge、Sb、S、Se)が挙げられる。
しかしながら、この非特許文献1記載の技術によれば、CNT内に取り込むことができる材料は金属に限られており、そのCNT内への取り込み量も、一部の金属(Mn、Cu、Sb、S、Se)を除いて極めて少ない。また、得られるCNTの結晶構造も限定されてしまう上に、CNTの製造段階で金属を加える必要があるため、予め別の方法で製造されたCNTを用いることはできず、方法の汎用性にも欠ける。更に、アーク放電を用いて製造を行なうため、大量生産には不適である。
また、非特許文献2には、CNTの端部を化学反応により破壊し、鉛やビスマスなどの低融点金属又は金属塩の溶融酸を毛管作用によって吸い込ませる方法が開示されている。この技術は、具体的には乾式法と湿式法とに分けられる。
乾式法は、多層CNTの表面に鉛、ビスマスなどの低融点金属を蒸着した後、これを空気中で金属の融点以上の温度に加熱する(例えば鉛の場合、400℃、30分)ことにより、CNTの先端を腐食させ、融解した金属を内部に吸引させるという方法である。
しかしながら、この乾式法においても、CNT内に取り込むことができる材料は金属に限られている。また、取り込まれる金属も純粋な金属ではなく、酸化しているものと考えられる上に、その取り込み量もCNTに対して1重量%以下と、極めて少量である。更に、極めて過酷な条件下で反応を行なわねばならないため、製造時の安全性や効率の面でも課題がある。
一方、湿式法は、硝酸ニッケル等の金属塩を含む硝酸溶液中でCNTを熱処理(140℃、4.5時間、溶液を還流)することにより、CNTの先端を腐食させ、金属を内部に吸引させるという方法である。同様にして、U酸化物、Co酸化物、Fe酸化物、Sn酸化物等の微粒子をCNTに取り込ませることができる。湿式法によれば、取り込まれる金属の量を、CNTに対して50重量%程度まで高めることができる。
しかしながら、この湿式法においても、CNT内に取り込むことができる材料は、金属の酸化物に限定されている。また、やはり反応条件が過酷であるため、製造時の安全性や製造効率の面でも課題がある。
更に、この非特許文献2記載の技術によれば、乾式法・湿式法ともに、CNTの一部が破壊されてしまうため、取り込んだ材料(金属酸化物粒子)の周囲が炭素結晶壁により包囲されておらず、外部に開放された状態となってしまう。よって、取り込んだ材料の安定性が低いものと考えられる。
「カーボンナノチューブの基礎」、コロナ社、齋藤弥八、坂東俊治共著、2001年4月20日、p.139〜141
「カーボンナノチューブの基礎」、コロナ社、齋藤弥八、坂東俊治共著、2001年4月20日、p.141〜144
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたもので、その目的は、炭素結晶壁で包囲された中空部内に有機化合物や金属等の各種の材料が含まれた構造を有する繊維状炭素粒子と、この炭素粒子を効率的に製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、炭素結晶壁で包囲された中空部を有するとともに、粒子径が所定の範囲内にある繊維状炭素粒子を原料として、これを液化可能物質前駆体を含む液体に接触させることにより、その中空部内に液化可能物質が含まれた繊維状炭素粒子を効率的に製造できることを見出して、本発明の完成に到った。
即ち、本発明の趣旨は、炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有する繊維状炭素粒子であって、該粒子の少なくとも両端部に炭素結晶端が露出した構造を備え、該粒子の長径が40nm以上、10μm以下の範囲であるとともに、該中空部内に液化可能物質が含まれていることを特徴とする、繊維状炭素粒子に存する(請求項1)。
また、本発明の別の趣旨は、炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有し、長径が40nm以上、10μm以下の範囲である繊維状炭素粒子を原料として、少なくとも液化可能物質前駆体を含む液体に接触させることにより、該中空部内に上記液化可能物質が含まれた繊維状炭素粒子を製造することを特徴とする、繊維状炭素粒子の製造方法に存する(請求項2)。
ここで、原料として、少なくとも両端部に炭素結晶端が露出した構造を備えた繊維状炭素粒子を用いるが好ましい(請求項3)。
また、本発明の別の趣旨は、上述の繊維状炭素粒子の製造方法により得られることを特徴とする、繊維状炭素粒子に存する(請求項4)。
本発明によれば、炭素結晶壁で包囲された中空部内に、有機化合物や金属等の各種の材料が含まれた構造を有する繊維状炭素粒子を、効率的に製造することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明するが、この発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば、種々に変更して実施することができる。
本発明の繊維状炭素粒子の製造方法は、炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有し、長径が40nm以上、10μm以下の範囲である繊維状炭素粒子(以下、適宜「原料繊維状炭素粒子」という。)を原料として、これを少なくとも液化可能物質前駆体を含む液体(以下、適宜「原料液体」という。)に接触させることにより、中空部内に液化可能物質が含まれた繊維状炭素粒子(以下、適宜「目的繊維状炭素粒子」という。)を製造するものである。
以下の記載では、説明の便宜上、先ず、原料繊維状炭素粒子及び原料液体について説明した上で、それらを用いて目的繊維状炭素粒子を製造する方法(本発明に係る繊維状炭素粒子の製造方法)について説明し、更に、得られる目的繊維状炭素粒子(本発明に係る繊維状炭素粒子)について説明する。
[1.原料繊維状炭素粒子]
原料繊維状炭素粒子は、その長径が40nm以上、10μm以下の範囲である。また、長径に対する短径の比であるアスペクト比は、電界放出特性、導電特性、樹脂等の異種固体への混合・分散特性の観点から、通常2以上、好ましくは3以上である。そして、その上限は、材料としての加工時のハンドリングの観点から、通常2000以下、好ましくは1000以下、更に好ましく800以下の範囲である。
原料繊維状炭素粒子は、その長径が40nm以上、10μm以下の範囲である。また、長径に対する短径の比であるアスペクト比は、電界放出特性、導電特性、樹脂等の異種固体への混合・分散特性の観点から、通常2以上、好ましくは3以上である。そして、その上限は、材料としての加工時のハンドリングの観点から、通常2000以下、好ましくは1000以下、更に好ましく800以下の範囲である。
また、原料繊維状炭素粒子は、外周部が炭素結晶壁で包囲されている中空部を有する。ここで、「外周部が炭素結晶壁で包囲されている」とは、中空部に通じる一定以上の径の空孔を有していないことを指す。具体的には、目的繊維状炭素粒子とした状態において、中空部に含まれる液化可能物質の粒子のうち、少なくとも1番大きい粒子よりも大きい径の空孔を有していなければよい。よって、その空孔径は併用する液化可能物質の粒子径との兼ね合いによって決定されるが、一般的には、透過型電子顕微鏡(以下、適宜「TEM」という。)により80万倍の倍率で観察した場合に、中空部に通じる空孔の存在が確認されなければ良い。特に、TEM写真によって観察した場合に、その孔径が通常数十nm以上、中でも数nm以上、更には1nm以上の空孔が存在しないことが好ましい。また、中空部ではなく、内部に非晶質成分が存在しているか否かは、倍率80万倍以上のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。なお、水の様に、中空である場合と同様のコントラストを示す場合も中空に含まれることとする。炭素結晶面の積層方向は、10〜80万倍のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。
原料繊維状炭素粒子は以上の条件を満たすものであれば、他の条件は特に制限されないが、本発明では特に、以下の手法により得られる特定の繊維状炭素粒子(以下、適宜「特定繊維状炭素粒子」という。)を原料繊維状炭素粒子として用いることが好ましい。
<特定繊維状炭素粒子の製造方法>
特定繊維状炭素粒子の原料としては、繊維状の含炭素粒子(以下、適宜「前駆体繊維状粒子」或いは単に「前駆体粒子」という。)を使用する。ここで「繊維状」とは、粒子のアスペクト比が通常2以上のものをいう。前駆体繊維状粒子の粒径は通常40nm以上、10μm以下の範囲から選択される。原料の前駆体繊維状粒子の粒径及び形状は、それを確認可能な倍率、例えば、粒径が数百nmの場合、倍率5万倍以上のTEM(透過型電子顕微鏡)の観察像で確認できるが、簡便的にはSEM(走査型電子顕微鏡)を使用してもよい。この点は、後述の原料炭素粒子及び目的炭素粒子の粒径及び形状についても同様である。
特定繊維状炭素粒子の原料としては、繊維状の含炭素粒子(以下、適宜「前駆体繊維状粒子」或いは単に「前駆体粒子」という。)を使用する。ここで「繊維状」とは、粒子のアスペクト比が通常2以上のものをいう。前駆体繊維状粒子の粒径は通常40nm以上、10μm以下の範囲から選択される。原料の前駆体繊維状粒子の粒径及び形状は、それを確認可能な倍率、例えば、粒径が数百nmの場合、倍率5万倍以上のTEM(透過型電子顕微鏡)の観察像で確認できるが、簡便的にはSEM(走査型電子顕微鏡)を使用してもよい。この点は、後述の原料炭素粒子及び目的炭素粒子の粒径及び形状についても同様である。
上記の前駆体繊維状粒子の材料(前駆体物質)としては、耐熱性材料で被覆して炭素化可能な材料であれば特に制限されないが、液相炭素化が可能な材料又は易熱分解ポリマー含有物質が好ましい。
液相炭素化が可能な材料としては、具体的には、ピッチ、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、フェノール樹脂、レーヨン等が挙げられ、これらのうち、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマーが好ましい。
易熱分解性ポリマーは、通常、不活性な雰囲気下で、常圧で、500℃以上に加熱した際に分解するポリマーのことをいう。具体的には、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、これらのうち、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。これらのポリマーは、通常、炭素粒子の製造原料として使用されていないが、本発明の製造方法では、耐熱性材料で被覆して炭素化するため、予想に反して、炭素粒子化できるものと考えられる。
前駆体繊維状粒子は、液相炭素化が可能な材料と易熱分解ポリマーの何れか一方のみを含んでいても構わないが、両方を含んでいるものが好ましい。また、特定繊維状炭素粒子の優れた性能を大幅に妨げなければ、液相炭素化が可能な材料又は易熱分解ポリマー以外の物質を含んでいてもよい。
前駆体繊維状粒子が液相炭素化が可能な材料と易熱分解ポリマーの両方を含んでいる場合、易熱分解性ポリマーは、前駆体繊維状粒子を炭素化させる加熱過程での液相炭素化可能材料の塑性変形を容易にし、更に、高温域では熱分解してガスとなり、その圧力によって前駆体繊維状粒子を内部から拡張し、中空粒子の形成を促進する機能を有すると推定され、ガス圧によって拡張された前駆体繊維状粒子は、粒子の外表面に塗布された後述の耐熱性材料の壁に押しつけられ、その場で炭素化が進行し且つ結晶化が促進されると考えられる。
前駆体繊維状粒子に易熱分解性ポリマーを含有させる方法としては、それぞれの構成モノマーを任意の組成比で共重合する方法や組成を偏在させるためのシード重合方法などが挙げられる。
ここで説明する特定繊維状炭素粒子の製造方法は、上記の前駆体粒子を原料とし、当該原料をその形状を維持するように原形型で被覆した状態で炭素化することを特徴とする。そして、本発明の好ましい態様においては、耐熱性材料で原料を被覆することにより当該原料の原形型を形成する。
上記の耐熱性材料は、前駆体粒子が炭素化する温度域以下の温度で、自身の熱変形などにより前駆体粒子の形状に影響を与えない必要がある。好適な耐熱性材料としては、50〜500℃の温度域における線熱収縮率が30%以下である材料がよく、また、100〜500℃の範囲で明確なガラス転移点(Tg)を持たない材料が好ましい。また、加熱による炭素化後に簡便な方法で除去できる材料が好ましい。
上記の特性を満たす耐熱性材料としては、一般的に無機酸化物が好ましい。具体的には、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、In2O、ZnO、PbO、Y2O3、BaO、これらの混合物などが挙げられる。これらの中では、製造される特定繊維状炭素粒子の純度及び金属不純物の制御の観点から、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2が好ましく、前駆体粒子の炭素化反応と結晶化を安定に進行させる観点から、SiO2が更に好ましい。
前駆体粒子の被覆方法としては、上記の無機酸化物の金属アルコキシド等を原料としたゾルゲル法による被覆方法、硝酸塩又はオキシ塩化物塩などの溶媒可溶性の無機化合物の溶液による被覆方法などが挙げられる。
特に、金属アルコキシドの加水分解により得たゾル溶液を前駆体粒子に塗布する方法、又は、当該加水分解液中に前駆体粒子を分散させた後に乾燥させて前駆体粒子の周囲をゲル化もしくは固化する方法は、ゲルの均一化工程を安定制御する上で好ましい。
SiO2を被覆する具体的方法としては次の方法が例示できる。すなわち、先ず、メタノール、エタノール等のアルコール類の溶液にアルコキシシラン類を加えた後、水を加え、密閉系又は還流系で、室温〜100℃で数時間攪拌することにより加水分解させ、シリケートゾル溶液を調製する。このゾル溶液調製の際に、ゾルの安定性と反応性を制御する上で適当なpHに調節するのが一般的であり、ここで、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、アンモニア等を触媒として加えてもよい。
次いで、ゾル溶液に前駆体粒子を混合し、開放系又は密閉系で、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の条件で乾燥してゲル化に至らせ、前駆体粒子を分散させたシリカゲルを得る。乾燥する時間は、乾燥温度にもよるが、通常は1時間以上、好ましくは5時間以上、また、通常は10日以下、好ましくは5日以下の範囲とする。この時間があまり長過ぎると、炭素粒子表面の結晶端の向きが制御しにくい傾向がある。また、斯かる方法の他、前駆体粒子にシリケートゾル溶液をスプレー塗布する方法なども挙げられる。
上述のアルコキシシラン類の具体例としては、テトラアルコキシシラン類であるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、これらそれぞれのオリゴマーの他、アルキルトリアルコキシシラン類であるメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が例示できる。ゲル化のプロセス条件及び被覆時の前駆体粒子の分散性などに応じ、2種類以上のアルコキシシラン類を併用してもよい。
上記のSiO2被覆において、SiO2被覆された前駆体粒子を真空乾燥、又は、熱変形しない範囲で加熱することにより、SiO2中のシロキサン結合の密度を高めることは、被覆成分の耐熱性を高める上で有効である。
次に、前駆体粒子の炭素化について説明する。前駆体粒子の炭素化は、上述の原形型で表面が被覆された前駆体粒子を、窒素、アルゴン等の加熱時に当該前駆体粒子と反応する物質が存在しない雰囲気下で、加熱して行なう。加熱時の雰囲気は、フロー系でも、密閉系でも構わないが、フロー系の方が好ましい。加熱時の圧力は、加圧下でも減圧下でも構わないが、通常、常圧下で行なう。常圧下の場合の加熱温度は、通常500℃以上、好ましくは800℃以上である。加熱は、継続的に所定温度まで上げていっても、段階的に所定温度にまで上げていっても構わない。加熱時間は、加熱温度などにより異なるが、所定の加熱温度に到達した後、通常0.5時間以上、また、通常2時間以下の範囲である。
炭素化後、通常、表面の原形型は除去する。除去方法としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液やフッ酸で溶解する方法などが挙げられる。このうち、工業的に安全なことから、アルカリ水溶液で溶解する方法が好ましい。溶解除去は、通常、耐圧密閉容器中で150℃に加熱して溶解し、残った特定繊維状炭素粒子を固液分離して回収する等の方法で行なう。前駆体にポリアクリロニトリルを使用する場合、上記の方法で得られる特定繊維状炭素粒子の収率は、通常30重量%以上、好ましくは35重量%以上、また、通常45重量%の範囲である。
以上説明した製造方法によれば、特定繊維状炭素粒子を均一な形状の粒子群として得ることができ、更に、生成物の特定繊維状炭素粒子を前駆体の段階で設計することができる利点がある。すなわち、上述の製造方法によれば、長径が40nm以上、10μm以下の前駆体繊維状粒子から実質的に同一粒径の繊維状炭素粒子(長径が40nm以上、10μm以下)を得ることができる。
また、上述の製造方法は、結晶性の高い炭素粒子を得る上でも有効な方法である。すなわち、特に、前駆体物質が液相炭素化が可能な材料である場合、炭素化過程のメソフェーズが炭素化後の生成物の結晶構造を大きく支配するが、表面を被覆している原形型の表面特性が結晶性に与える影響が大きい。ポリアクリロニトリル等の液相炭素化が可能なポリマーを前駆体とする場合、炭素化過程で生じる炭素ラジカルに及ぼす原形型の表面官能基の効果として、結晶化度と配向に対する大きな影響が挙げられる。なお、表面官能基としては、例えばシラノール基、水酸基、ケトン基、エステル基などが挙げられる。
上述の製造方法における作用効果により、得られる特定繊維状炭素粒子は、以下に述べる様に、従来存在しなかった新規な構造を有することになる。
<特定繊維状炭素粒子>
次に、上述の製造方法により得られた特定繊維状炭素粒子について説明する。図1は、本発明の原料繊維状炭素粒子として好適に用いられる、特定繊維状炭素粒子の構造を説明するための模式的説明図である。
次に、上述の製造方法により得られた特定繊維状炭素粒子について説明する。図1は、本発明の原料繊維状炭素粒子として好適に用いられる、特定繊維状炭素粒子の構造を説明するための模式的説明図である。
特定繊維状炭素粒子は、炭素結晶壁2で包囲されている単一の中空部3が形成された繊維状炭素粒子1であって、繊維状炭素粒子1の少なくとも両端部10は炭素結晶端が露出した構造を備え、繊維状炭素粒子1の長径が40nm以上10μm以下の範囲であることを特徴とする。
従来公知のカーボンナノチューブ(CNT)は長過ぎるために絡み合った状態で取得されることが多い。そのため、CNTの端部の構造は、必ずしも同定されていないが、多くの場合、合成時の金属触媒粒子で一端がターミネートされた構造となっている。これに対し、本発明における特定繊維状炭素粒子1は、炭素結晶壁2で包囲されて内部に単一の中空部3が形成された構造を有する。すなわち、本発明における特定繊維状炭素粒子1は、端部が閉じた構造を有し、従来のCNTと異なる。
また、特殊な構造を有するCNTとして、炭素結晶壁で包囲されている中空部が形成され、且つ、当該中空部が更に炭素結晶壁で複数に分割された構造のものが知られている。これに対し、本発明における特定繊維状炭素粒子1は、炭素結晶壁2で包囲されている中空部3を1つ有し、炭素結晶壁で包囲されている中空部を複数有している上記のCNTと異なる。なお、本発明における特定繊維状炭素粒子1においては、中空部3が更に非晶質炭素壁で複数に分割されていることがある。なお、本発明における特定繊維状炭素粒子における中空とは、空気が存在する場合のみならず、液体や他の固体が充填されている場合を排除するものではない。
本発明における特定繊維状炭素粒子1の少なくとも両端部10は、炭素結晶端が露出した構造を備えている。代表的には、図1(a)に示す様に、繊維状炭素粒子1の全体において炭素結晶端が露出した構造と、図1(b)に示す様に両端部においてのみ炭素結晶端が露出した構造とが存在する。これらの構造又は両者の構造が適当割合で寄与した構造は、前述した、炭素化過程で生じる炭素ラジカルに及ぼす被覆材料の表面官能基の効果を制御することにより、得ることが出来る。そして、炭素結晶端が露出した構造は、分散媒中における繊維状炭素粒子1の分散性に効果がある。
図1(a)に示す構造は、繊維の長さ方向に対して炭素結晶面が実質的に垂直に積層されて構成されている。ところで、特開平3−146716号公報には、繊維の長さ方向に対して炭素網面が実質的に垂直に積層した構造を特徴の一つとする炭素繊維が開示されている(なお、この構造は倍率80万倍のTEMの観察像で確認されている)。そして、この炭素繊維は鉄カルボニル触媒の存在下に一酸化炭素と水素との混合原料を加熱処理する方法により得られている。しかしながら、上記の炭素繊維は、実質的に中空部を有さないことを特徴としており、図1(a)に示す様な繊維状炭素粒子1と明らかに異なる。
本発明における特定繊維状炭素粒子1は、長径が40nm以上、10μm以下の範囲であるが、長径に対する短径の比であるアスペクト比は、電界放出特性、導電特性、樹脂等の異種固体への混合・分散特性の観点から、通常2以上、好ましくは3以上である。そして、その上限は、材料としての加工時のハンドリングの観点から、通常2000以下、好ましくは1000以下、更に好ましく800以下の範囲である。
炭素結晶壁2の厚さは、中空部3における他の物質の把持容量の観点から、繊維状炭素粒子1の中心から壁外周までの距離(半径)に対する割合として、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
本発明における特定繊維状炭素粒子の炭素含有率は、必ずしも100重量%である必要はないが、化学的な安定性の観点から、元素分析値による値として、通常70重量%以上、好ましくは75重量%以上である。
通常、本発明における特定繊維状炭素粒子は結晶性である。ここでいう結晶性は、必ずしも、いわゆる黒鉛状に制御されたものである必要はなく、小山ら(「工業材料」第30巻、第7号、p109〜115)に示される様な乱層黒鉛であってもよい。結晶性の目安としてのX線回折の反射ピークから求める結晶学的特性は、次の様に示される。すなわち、出力源がCuKαであるX線の回折角度2θが25°以上(好ましくは25.5°以上)にピークを示し、半値幅が7.0°以下(好ましくは6.5以下、更に好ましくは5.0°以下)である。そして、(002)ピークの回折角からBraggの式で算出される炭素網目平均面間距離d(002)は3.6Å以下(好ましくは3.49Å以下)である。
本発明における特定繊維状炭素粒子としては、その外周の少なくとも一部が、炭素結晶端が露出した構造又は炭素網面のループ状構造を有するものが好ましい。図2は、特定繊維状炭素粒子の外周における、炭素結晶端が露出した構造、及び、炭素網面のループ状構造の一例を説明するための図である。具体的に、図2は特定繊維状炭素粒子の外周表面の部分断面を拡大して模式的に示す図であり(図中、左側が炭素粒子内側、右側が炭素粒子外側に当たる。)、炭素結晶の方向を曲線によって模式的に示している。図中符号aで表わされる、炭素網面の粒子表面側末端が閉じていない構造が、粒子表面に炭素結晶端が露出した構造(以下、適宜「結晶端露出構造」と略す。)に相当し、図中符号bで表わされる、炭素網面の粒子表面側の末端同士が結合している構造が、粒子表面における炭素網面のループ状構造(以下、適宜「ループ状構造」と略す。)に相当する。なお、ループ状構造は通常、炭素網面20層までで形成される。粒子の表面形状(結晶端露出構造、ループ状構造)は80万倍のTEM写真によって確認できる。特定繊維状炭素粒子において、これらの結晶端露出構造又はループ状構造は、特定繊維状炭素粒子の外周の少なくとも一部に存在していれば良い。具体的には、これらの結晶端露出構造及びループ状構造を合わせて、特定繊維状炭素粒子の外周全表面積の通常10%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上を占めていることが望ましい。なお、炭素繊維業界では、一般に、結晶端露出構造を加熱すると、結晶端に付着している原子などがとれてループ状になるといわれている。
本発明における特定繊維状炭素粒子は、外周部が炭素結晶壁で包囲されている中空部を有する。ここで、外周部が炭素結晶壁で包囲されているとは、中空部に通じる一定以上の径の空孔を有していないことを指す。具体的には、TEM写真によって観察した場合に、その孔径が通常数十nm以上、好ましくは数nm以上、更に好ましくは1nm以上の空孔が存在しなければ良い。また、中空部ではなく、内部に非晶質成分が存在しているか否かは、倍率80万倍以上のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。なお、水の様に、中空である場合と同様のコントラストを示す場合も中空に含まれることとする。炭素結晶面の積層方向は、10〜80万倍のTEMの観察像におけるコントラストで確認できる。
本発明における特定繊維状炭素粒子は、炭素結晶壁で包囲されている中空部を有する。中空部は1つでも、複数(炭素結晶壁で包囲されている中空部が形成され且つ当該中空部が更に炭素結晶壁で複数に分割された構造)でもよいが、1つの方が好ましい。なお、少なくとも1つの中空部の長径は、特定繊維状炭素粒子の径の通常5%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上の範囲である。また、当該中空部が更に非晶質炭素壁で複数に分割されていてもよい。なお、特定繊維状炭素粒子における中空とは、空気が存在する場合のみならず、内部まで炭素が充填されていなければよく、当該中空部に液体や他の固体が充填されていてもよい。
また、炭素結晶壁の厚さは、中空部における他の物質の担持容量の観点から、炭素粒子の中心から壁外周までの距離(半径)に対する割合として、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
また、本発明における特定繊維状炭素粒子は、結晶性から期待される導電特性と共に、形状が揃っており、取り扱い易いという利点を有するが、更に、従来の炭素材料にない良好な分散性、特に水及び極性溶媒に高度に分散する特性を付与することも可能である。従って、本発明における特定繊維状炭素粒子は、上記の特性を活かして各種ポリマーの導電付与材の目的で複合材料として使用される他、良好な分散性を下に帯電防止層を形成する塗布液として各種の用途が期待される。特に、表面エネルギーの高いガラス基材、PETフィルム、PVAフィルム等に対しては、微小な粒子サイズと均一性から、透明導電膜の導電フィラーとして有効である。また、カプセル構造を活かし、生体内での診断試薬、モニター試薬の支持材料の分野で好適に利用される材料である。
本発明における特定繊維状炭素粒子の表面特性は、製造時の原形型の表面特性又は製造後の後処理などにより、制御可能である。特に、原形型としてSiO2を使用する場合に分散性が向上すると期待され、原因としては、特定繊維状炭素粒子表面に水酸基やカルボニル基などが存在していることによるものと推定される。
ハイパーフラーレン等の結晶構造を有する中空炭素粒子は、粒径及び形状が不均一であり、溶媒分散が困難である等の問題がある。また、各種テンプレート法などで作製した粒径及び形状が揃った中空炭素粒子は、結晶構造ではなくアモルファス構造となっており、導電性、電界放出性などの電気的特性に劣っている。これに対し、本発明における特定繊維状炭素粒子は、炭素結晶壁で包囲されている中空部を有している。すなわち、特定繊維状炭素粒子は、粒径及び形状が揃っており、かつ、溶媒への高い分散性を有しており、更に、結晶構造を有している。そのため、本発明における特定繊維状炭素粒子は、従来の繊維状炭素粒子と異なる。
<特定繊維状炭素粒子の集合体>
特定繊維状炭素粒子は、集合体とした場合に適度な分散性を有していることが好ましい。具体的には、以下の方法で調製された分散液について、調製後24時間静置して測定した以下の式(I)で表される粒径分布指標が通常0.1以上、また、通常20以下の範囲である。
特定繊維状炭素粒子は、集合体とした場合に適度な分散性を有していることが好ましい。具体的には、以下の方法で調製された分散液について、調製後24時間静置して測定した以下の式(I)で表される粒径分布指標が通常0.1以上、また、通常20以下の範囲である。
(分散液の調製)
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
内径13mm、容量5mlのガラス容器に分散媒3mlと試料1mgを採り、蓋を被せ、手で振盪させて試料を分散させる。
上記の分散液の調製に使用する分散媒としては、特定繊維状炭素粒子の表面特性などに応じ、特定繊維状炭素粒子に対して不活性で且つ適切な分散媒を選択する必要がある。本発明において、分散媒の選定は次の様に行なう。すなわち、上記の分散液の調製の場合と同一要領で分散液を調製し、調製後24時間静置し、分散液の上から1cmの位置と下から1cmの位置との間の中央部の分散液について目視観察した際、二次凝集粒子が実質的に存在せずに均一な分散状態が得られる分散媒を選択する。選定対象となり得る分散媒としては、後述の分散媒が挙げられるが、本発明における特定繊維状炭素粒子の場合、適切な分散媒としては例えば水を使用することができる。
粒径分布指標は、粒度分布計による動的光散乱法にて測定可能である。粒径分布指標は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、また、通常20以下、好ましくは10以下の範囲である。
また、通常、本発明における特定繊維状炭素粒子は、カーボンブラックのアグリゲートの様な凝集も二次凝集(物理的凝集)もしていない。斯かる特性は、分散性向上に対してプラスに作用し、物理的凝集しているカーボンブラックと大きく異なる。
<特定繊維状炭素粒子の分散体>
なお、本発明における特定繊維状炭素粒子は、後述の原料液体と接触させる際に、乾燥した状態で用いてもよいが、各種の分散媒に分散させ、分散体の状態として使用してもよい。
なお、本発明における特定繊維状炭素粒子は、後述の原料液体と接触させる際に、乾燥した状態で用いてもよいが、各種の分散媒に分散させ、分散体の状態として使用してもよい。
分散媒の種類は特に限定されず、極性溶媒又は非極性溶媒の何れでもよい。極性溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等カーボネート類などが挙げられ、非極性溶媒としては、各種のアルカン類、芳香族類及びこれらの混合物などが挙げられる。これらの中では、親和性が高く、分散性が良好であるとの観点から、極性溶媒が好ましく、水及びアルコール類が更に好ましい。
分散媒中の特定繊維状炭素粒子の割合は、通常0.1重量%以上、また、通常10重量%以下の範囲であり、分散媒中への特定繊維状炭素粒子の分散には、機械的な撹拌の他、ペイントシェイカー等の機械的な振盪方法、超音波照射などの手段を採用することができる。また、必要に応じ界面活性剤を使用してもよい。
この分散体は次の様な特徴を有する。すなわち、粒径が揃っているため、分散溶媒中での粒子の沈降速度が一定であり、経時的に安定で、均一な懸濁液を得ることが可能である。また、特に分散媒が極性溶媒で特定繊維状炭素粒子の表面に親水性基が存在する場合は、一層良好に分散され、凝集体が形成され難い。
この分散体における分散粒径は、粒度分布計による動的光散乱法又はレーザー回折散乱法にて測定可能である。具体的には、前記の方法で分散を行った後、24時間静置した後の分散液について測定する。ここで、測定レンジ以上のサイズである200μm以上の粒子又は凝集物を除いた粒子について平均粒径を分散粒径とする。なお、200μm以上の粒子は、動的光散乱及びレーザー回折法の何れの方法でも一般に測定検知能力の範囲外であり、光学顕微鏡にてその存在を確認することができる。
この分散体においては、通常、100個以上の粒子を観察した場合、全測定粒子の90体積%以上が60μm以下の粒径又は凝集サイズであることが好ましく、30μm以下の粒径又は凝集サイズであることが更に好ましい。
[2.原料液体]
原料液体としては、少なくとも液化可能材料を含む液体を用いる。ここで「液化可能材料」とは、液化可能な物質であって、液化した状態で上述の原料繊維状炭素粒子の中空部に導入することができ、且つ、何らかの手法によって固体化し、上述の原料繊維状炭素粒子の中空部内に留まっている物質をいう。その種類は特に制限されず、有機物、無機物を問わず任意のものを使用できる。また、液化可能材料を固体化させる手法も特に制限されない。液化可能材料の分子自体を変化させる化学反応(酸化、還元、重合等)であってもよく、分子自体の変化を伴わない作用(析出、凝固、凝集等)であってもよい。
原料液体としては、少なくとも液化可能材料を含む液体を用いる。ここで「液化可能材料」とは、液化可能な物質であって、液化した状態で上述の原料繊維状炭素粒子の中空部に導入することができ、且つ、何らかの手法によって固体化し、上述の原料繊維状炭素粒子の中空部内に留まっている物質をいう。その種類は特に制限されず、有機物、無機物を問わず任意のものを使用できる。また、液化可能材料を固体化させる手法も特に制限されない。液化可能材料の分子自体を変化させる化学反応(酸化、還元、重合等)であってもよく、分子自体の変化を伴わない作用(析出、凝固、凝集等)であってもよい。
なお、以下の記載では、原料繊維状炭素粒子への取り込み前の物質を「液化可能物質前駆体」、原料繊維状炭素粒子の中空部内に留まった状態における物質を「液化可能物質」という。「液化可能物質前駆体」と「液化可能物質」とは同一の物質であっても良く、異なる物質であっても良い。液化可能材料の分子自体が化学反応によって変化する場合、「液化可能物質前駆体」と「液化可能物質」とは異なる物質となるが、液化可能材料が析出や凝固などによって固体化する場合、液化可能材料の分子自体は変化しないため、「液化可能物質前駆体」と「液化可能物質」とは同一の物質である。また、「液化可能材料」とはこれら「液化可能物質前駆体」と「液化可能物質」の双方を総称していうものとする。
原料液体としては、上述の液化可能材料を含有するものであれば、その他に制限はない。通常は、液化可能材料を何らかの溶媒に溶解させて得られる溶液を使用する。また、液化可能物質前駆体が加熱等の手段によって単独で溶融又は液化し得るものであれば、液体の状態になった液化可能材料そのものを原料液体として使用してもよい。
溶媒を用いる場合、液化可能材料を溶解して液化させることができ、且つ、原料繊維状炭素粒子に対して好ましからぬ反応を生じないもの(例えば、原料繊維状炭素粒子に損傷を与えたりしないもの)であれば、その種類は特に制限されない。例としては、水、有機溶媒(アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、芳香族系溶媒類(トルエン、キシレンなど)、複素環系溶媒類(テトラヒドロフランなど)等)などが挙げられる。概して、液化可能材料として有機物質を用いる場合には水又は極性有機溶媒が、液化可能材料として無機物質を用いる場合には非極性有機溶媒が用いられる。これらの溶媒は一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。なお、原料液体は、液化可能材料と溶媒の他の成分を含有していても良い。
溶液中における液化可能材料の濃度も特に制限されない。通常は飽和濃度以下であるが、飽和濃度を超えている場合であっても、溶解せずに残存している液化可能材料の粒子径が極めて小さく、原料繊維状炭素粒子の中空部まで浸漬して進入可能であれば、これを原料液体とすることも可能である(なお、本発明では液化可能材料がこのように極めて小さな微粒子となって残存している状態も、液化しているものとみなすものとする。原料繊維状炭素粒子の中空部まで浸漬して進入可能な粒子径は、使用する原料繊維状炭素粒子の種類によっても異なるが、通常1nm以下である。)。
以下、具体的に説明する。液化可能材料の例としては、まず、金属元素を有する材料が挙げられる。金属元素の種類は特に制限されず、各種のアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属が対象となる。また、金属元素の存在形態も特に制限されないが、例としては金属単体、金属イオン、合金、金属塩、金属錯体、金属化合物(有機、無機の何れであってもよい。)等が挙げられる。好ましい形態としては、金属の酸化物等を液化可能物質前駆体として原料繊維状炭素粒子の中空部内に導入し、これを還元反応により固体化する形態(例えば、金、銀、銅、コバルト、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらのアロイ等)や、逆に金属イオン等を液化可能物質前駆体として上記中空部内に導入し、これを酸化反応により金属酸化物として固体化する形態(例えば、酸化銀、酸化銅、酸化鉄、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等)、金属イオンを炭素結晶層間に導入して還元する形態(例えばリチウム−炭素合金等)、原料繊維状炭素粒子を無機塩水溶液に浸して焼成する形態(例えば蛍光体等)などが挙げられる。なお、これら金属元素を有する材料は、通常は水や水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)等)などの極性溶媒に溶解させた状態で原料液体として使用するが、溶媒を使用せず、金属の単体や合金(アロイ)等を熱により溶解させ、これを原料液体として使用してもよい。
液化可能材料の別の例として、有機化合物が挙げられる。有機化合物の種類は特に制限されず、薬剤、染料、錯体、フラーレン、モノマー、香料、アミノ酸、ペプチド、脂質、核酸、糖(オリゴ糖など)、ホルモン等の分子量1000以下の低分子の有機化合物などを使用することができる。中でも好ましい形態としては、モノマーを液化可能物質前駆体として原料繊維状炭素粒子の中空部内に導入し、これを重合反応させて高分子として固体化する形態(例えば、アニオン重合、カチオン重合、(リビング)ラジカル重合、重付加、重縮合)などが挙げられる。
[3.目的繊維状炭素粒子の製造方法]
目的繊維状炭素粒子の製造は、上述の原料繊維状炭素粒子と原料液体とを接触させることにより行なう。通常は、原料繊維状炭素粒子を原料液体に浸漬させ、液化した状態の液化可能材料(液化可能物質前駆体)を原料繊維状炭素粒子の中空部内に導入するとともに、化学反応(酸化、還元、重合等)やその他の手法(析出、凝固等)によって液化可能材料を固体化させる。浸漬(導入)の工程と固定化の工程は別工程として順次行なっても良いが、単一工程として同時に行なっても良い。
目的繊維状炭素粒子の製造は、上述の原料繊維状炭素粒子と原料液体とを接触させることにより行なう。通常は、原料繊維状炭素粒子を原料液体に浸漬させ、液化した状態の液化可能材料(液化可能物質前駆体)を原料繊維状炭素粒子の中空部内に導入するとともに、化学反応(酸化、還元、重合等)やその他の手法(析出、凝固等)によって液化可能材料を固体化させる。浸漬(導入)の工程と固定化の工程は別工程として順次行なっても良いが、単一工程として同時に行なっても良い。
浸漬の手順やその条件は特に制限されず、液化可能材料を液化させることができ、且つ、原料繊維状炭素粒子が損傷を受けない範囲で、繊維状炭素粒子や原料液体(特に液化可能材料)の種類などに応じて適宜選択すれば良い。具体的に、原料繊維状炭素粒子(上述のように乾燥状態でもよく、水などの分散媒に分散した状態であっても良い。)に対する原料液体の使用比率は特に制限されず、通常は原料繊維状炭素粒子を十分に浸漬させることが可能な量を用いればよい。浸漬時の温度は、通常−10℃以上、好ましくは0℃以上、また、通常700℃以下、好ましくは300℃以下の範囲である。また、浸漬時の圧力は通常は常圧であるが、必要に応じて繊維状炭素粒子が損傷を受けない程度に加圧又は減圧してもよい。浸漬の時間も他の条件に応じて決定すればよいが、通常は1分以上、好ましくは10分以上、また、通常は100時間以下、好ましくは10時間以下の範囲である。なお、浸漬の際には撹拌を加えても良い。
また、固定化の手順や条件も特に制限されない。具体的な固定化の手順やその条件は、使用する固定化の手法(酸化、還元、重合等の化学反応や、析出、凝固等)に応じて適宜選択すればよい。具体的な手順として、酸化反応や還元反応により固定化を行なう場合には、原料繊維状炭素粒子を原料液体に浸漬させた後、酸化剤又は還元剤を加える。還元剤の種類としては、例えば液化可能材料が金コロイドの場合にはクエン酸などが挙げられるが、特に限定はされない。なお、ここで原料繊維状炭素粒子は、酸化剤と接触させる前に遠心分離で精製してもよい。温度や圧力等の条件の範囲は、上記の浸漬について記載した範囲と同様であるが、詳細には固定化の手法等に応じて適宜決定すればよい。なお、浸漬時と同様、固定化の際にも撹拌を加えても良い。
上述の浸漬(導入)及び固定化の手順により、目的繊維状炭素粒子が得られる。必要に応じて、得られた目的繊維状炭素粒子を洗浄してもよい。洗浄に使用する液体は特に制限されず、得られた目的繊維状炭素粒子に損傷を与えない範囲で適当に選択すれば良いが、通常は、上述の液化可能材料を溶解させるのに用いるのと同様の溶媒が用いられる。このうち、特に水が好ましい。洗浄の手順も特に制限されないが、通常は上述の洗浄用の液体中に得られた目的繊維状炭素粒子を加えて通常1分以上、24時間以下放置(適宜攪拌を加えてもよい。)した後、遠心分離や濾過などの手法で目的繊維状炭素粒子を分離して回収すればよい。
[4.目的繊維状炭素粒子]
上述の手法により得られた目的繊維状炭素粒子(本発明に係る繊維状炭素粒子)は、使用した原料繊維状炭素粒子の形状や粒径、結晶構造等の物性を基本的にそのまま保ち、且つ、その中空部内に液化可能材料が含まれた構造を有する。即ち、炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有するとともに、粒子の長径が40nm以上、10μm以下の範囲であり、且つ、中空部内に液化可能材料が含まれた状態となる。特に、原料繊維状炭素粒子として上述の特定繊維状炭素粒子を用いた場合には、粒子の少なくとも両端部に炭素結晶端が露出した構造を備えることになる。
上述の手法により得られた目的繊維状炭素粒子(本発明に係る繊維状炭素粒子)は、使用した原料繊維状炭素粒子の形状や粒径、結晶構造等の物性を基本的にそのまま保ち、且つ、その中空部内に液化可能材料が含まれた構造を有する。即ち、炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有するとともに、粒子の長径が40nm以上、10μm以下の範囲であり、且つ、中空部内に液化可能材料が含まれた状態となる。特に、原料繊維状炭素粒子として上述の特定繊維状炭素粒子を用いた場合には、粒子の少なくとも両端部に炭素結晶端が露出した構造を備えることになる。
液化可能材料は繊維状炭素粒子の中空部内に固体化した状態で存在する。その存在形態は特に制限されないが、通常は各種形状(球状、繊維状、層状、多面体、その他の不定形体等)の粒子の状態で存在する。また、繊維状炭素粒子の中空部の体積に対する液化可能材料の体積の比率も制限されず、液化可能材料が極めて少ない状態(例えば、液化可能材料の微小な粒子が繊維状炭素粒子の中空部内に1個〜数個単位で存在する状態)から、繊維状炭素粒子の中空部内がほぼ完全に液化可能材料によって満たされている状態まで、任意の状態を取り得る。繊維状炭素粒子の中空部内に液化可能材料以外の空隙がある場合、この空隙には何も存在していなくても良く、別の物質が存在していても良い。特に水や溶媒等の液体が存在している場合には、液化可能材料はその粒子径によっては分散体やコロイドの状態で存在することもある。
但し、本発明においては、液化可能材料の少なくとも一部は、繊維状炭素粒子の中空部内に包有された状態となっていることが必要である。具体的には、繊維状炭素粒子の中空部内に存在する液化可能材料の粒子のうち最大の粒子の径が、中空部に通じる最大の空孔の径よりも大きければ良い。通常は、透過型電子顕微鏡(以下、適宜「TEM」という。)により80万倍の倍率で観察した場合に、中空部に通じる空孔の存在が確認されず、且つ、液化可能材料の粒子が一つ以上存在していることが確認されれば良い。特に、通常1nm以上、中でも数nm以上、更には数十nm以上の径を有する液化可能材料の粒子が存在することが好ましい。
以上の特徴を備えた本発明の繊維状炭素粒子は、内部の中空部に通じる大きな径の孔を有さず、且つ、その中空部内に液化可能材料を包有するので、その性質を生かして各種の用途に使用できるものと期待される。一例として、中空部に薬剤等を包有させて徐放剤とし、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)用途等に用いた場合に、アルミナメンブレン法(Advanced Materials、2003年、Vol.15、No.2、p.164〜167等に記載の方法)により得られる炭素粒子と比べ、薬剤の放出速度をより遅めに制御することが可能である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<繊維状炭素粒子の製造>
ドデシル硫酸ナトリウム0.32gを水(以降も含め、水は全て蒸留水を使用した。)145gに溶解させ、得られた溶液に、アクリロニトリル12.71g、アクリル酸メチル1.83g、メタアクリル酸0.46g、n−ブチルメルカプタン0.3gの混合物を加え、窒素ガスのフロー下で300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合した。反応停止後、水を除去し、動的光散乱法による粒度分布測定で平均粒径130nmのアクリル樹脂粒子12.5gを含む懸濁液を調製した。この懸濁液中の樹脂粒子について元素分析(C、H、N)を行ない、その窒素量からアクリロニトリル単位の割合を求めたところ、79.5重量%であった。また、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、ポリスチレン(PSt)換算での重量平均分子量を求めたところ、40500であった。
<繊維状炭素粒子の製造>
ドデシル硫酸ナトリウム0.32gを水(以降も含め、水は全て蒸留水を使用した。)145gに溶解させ、得られた溶液に、アクリロニトリル12.71g、アクリル酸メチル1.83g、メタアクリル酸0.46g、n−ブチルメルカプタン0.3gの混合物を加え、窒素ガスのフロー下で300rpmで撹拌しながら、室温から昇温し、60℃で過硫酸カリウム水溶液(0.1gを水5gで溶解した水溶液)を加えて重合を開始し、70℃で3時間重合した。反応停止後、水を除去し、動的光散乱法による粒度分布測定で平均粒径130nmのアクリル樹脂粒子12.5gを含む懸濁液を調製した。この懸濁液中の樹脂粒子について元素分析(C、H、N)を行ない、その窒素量からアクリロニトリル単位の割合を求めたところ、79.5重量%であった。また、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、ポリスチレン(PSt)換算での重量平均分子量を求めたところ、40500であった。
一方、ポリビニルアルコール(クラレ製「クラレポバールPVA217」。以下適宜「PVA」という。)15gを水100gに加え、90℃で1時間攪拌して溶解させた。得られた溶液を室温に冷却した後、前記の樹脂粒子懸濁液37.2g(樹脂粒子の含量3.0g)を加え、室温で5分間攪拌した。これを15cm径のシャーレ5枚に30gずつ分配し、そのまま室温で5時間静置して水分を揮発させ、PVAの固形分濃度が30重量%になるまで濃縮し、ゲルを調製した。
上記のゲル17.3gを90℃に加熱した200μmφの紡糸ノズルに入れ、ピストンで加圧してノズルから50〜120μm径の糸状のゲルを押し出すことにより、アクリル樹脂粒子を含む乾燥した糸状PVAゲル2.4gを得た。
上記の乾燥糸状PVAゲルを5cmの長さに切り揃え、糸の両端1cmずつをチャックで掴み、140℃に加熱しつつ、機械的に30cm/分の速度で18cmになるまで延伸し、延伸糸1.3gを得た。この延伸糸を水10mlに浸し、室温で20分間攪拌してPVAを溶解し、延伸したアクリル粒子の懸濁液を得た。この懸濁液を20℃で18000rpmの条件下で遠心分離し、上澄み液を除去し、さらに、沈殿のアクリル粒子を同様の方法で水洗し、延伸されたアクリル粒子のエマルジョンを得た。
水3.72gとエタノール4.75gの混合液に、メチルシリケートオリゴマー(三菱化学製「MS51」)5.37gを加えて分散させた後、1mol/Lの塩酸を加えてpHを3に調整した。50℃で4時間撹拌し、メチルシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカゾルを調製した。
上記のアクリル粒子エマルジョン0.52g(ポリマー粒子量0.05g)に、脱塩水1.04gと、上記のシリカゾル1.56gを加え、振とうして混合した後、密栓して50℃のオーブン中で3日間静置して流動性のないゲルを得、ポリマー粒子が分散したシリカゲルを得た。このゲルをガラス皿に移し、50℃のオーブン中で8時間乾燥した。
上記で得られた乾燥ゲルを、電気炉にて窒素雰囲気下で室温から5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してポリマー粒子を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温にまで冷却された12時間後に、得られた炭素化物を取り出した。この炭素化物を1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解して除去し、炭素化粒子が分散した分散液を得た。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿中の炭素化粒子を同様の方法で3回水洗し、炭素粒子の分散液を得た。
上記の分散液を超音波にて3分間分散し、その中から任意の3滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、何れの滴にも100μm以上の炭素粒子及びその凝集物は観察されなかった。
上記の分散液中の粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率:80万倍)で観察したところ、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ有し、両端部に炭素結晶端が露出した構造の炭素粒子であった。また、外観形状は、長径250〜500nm、短径40〜100nmの繊維状の粒子であった。また、この粒子の集合体を8万倍で観察したところ、凝集体は視野に存在しなかった。
上記の粒子の元素分析結果は、炭素、窒素、酸素が主な構成元素であり、検出濃度は、炭素80.72重量%、窒素5.84重量%、酸素6.41重量%であった。なお、上記以外の元素として、水素0.81重量%、ケイ素は検出限界(1重量%)以下であった。
<金コロイドの内包>
上記の手順により作製した繊維状炭素粒子1.6mgを水5mlに分散させた後、0.29重量%クエン酸ナトリウム3mlと0.5mol/lテトラクロロ金(III)酸水溶液0.5mlとを加えて混合し、室温にて12時間撹拌した。続いて、温度を60℃に上げて2時間反応させることにより、金コロイドを作製した。ここで、反応液の色が金色から赤紫色へと変化したことにより、金コロイドの生成を確認した(なお、この色の変化は、炭素粒子の内部に取り込まれずに反応液中に残存した遊離の金コロイドによるものと考えられる。)。その後、遠心分離によって遊離の金コロイドを炭素粒子と分離して除去し、得られた炭素粒子を水で3回洗浄することにより、中空部内に液化可能物質として金コロイドを含有する繊維状炭素粒子(以下、適宜「金コロイド/炭素複合粒子」という。)の分散液を得た。
上記の手順により作製した繊維状炭素粒子1.6mgを水5mlに分散させた後、0.29重量%クエン酸ナトリウム3mlと0.5mol/lテトラクロロ金(III)酸水溶液0.5mlとを加えて混合し、室温にて12時間撹拌した。続いて、温度を60℃に上げて2時間反応させることにより、金コロイドを作製した。ここで、反応液の色が金色から赤紫色へと変化したことにより、金コロイドの生成を確認した(なお、この色の変化は、炭素粒子の内部に取り込まれずに反応液中に残存した遊離の金コロイドによるものと考えられる。)。その後、遠心分離によって遊離の金コロイドを炭素粒子と分離して除去し、得られた炭素粒子を水で3回洗浄することにより、中空部内に液化可能物質として金コロイドを含有する繊維状炭素粒子(以下、適宜「金コロイド/炭素複合粒子」という。)の分散液を得た。
上記の分散液中の金コロイド/炭素複合粒子の構造をTEM(倍率80万倍)で観察したところ、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ有し、両端部に炭素結晶端が露出した構造の炭素粒子であり、具体的には、上述の図1(b)に示すパラレル構造の繊維状炭素粒子であって、その中空部の内部に粒径1〜10nmの金コロイドを含有していた。
[実施例2]
<繊維状炭素粒子の製造>
水36.4gとエタノール46.63gの混合液にメチルシリケートオリゴマー(三菱化学製「MS51」)52.62gを混合して分散した後、1mol/Lの塩酸を加え、pH2の液を調製した。室温で1時間撹拌し、メチルシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカゾルを調製した。
<繊維状炭素粒子の製造>
水36.4gとエタノール46.63gの混合液にメチルシリケートオリゴマー(三菱化学製「MS51」)52.62gを混合して分散した後、1mol/Lの塩酸を加え、pH2の液を調製した。室温で1時間撹拌し、メチルシリケートオリゴマーを加水分解し、均一な溶液としてシリカゾルを調製した。
実施例1と同様の手順で得られたアクリル粒子のエマルジョン42.66g(ポリマー粒子量0.455g)に、上記のシリカゾル128.02gを加え、振とうして混合した後、ステンレス角型バットに移し、窒素フロー下、40℃のオーブン中で8時間乾燥させた。
上記で得られた乾燥ゲルを電気炉にて窒素雰囲気下で室温から5℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持してポリマー粒子を炭素化した。その後、加熱を停止し、電気炉が室温にまで冷却された12時間後に試料を取り出した。これを、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mlに混合し、耐圧容器に入れ、オーブン中170℃で6時間加熱してシリカゲルを溶解し、炭素化粒子が分散した分散液を得た。この分散液を18000rpmの条件で遠心分離し、上澄み液を除去し、更に、沈殿の炭素化粒子を同様の方法で3回水洗し、炭素粒子の分散液を得た。
上記の分散液を超音波にて3分間分散し、その中から任意の3滴をガラス板に採り、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察したところ、何れの滴にも100μm以上の炭素粒子及びその凝集物は観察されなかった。
上記の分散液中の粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率:80万倍)で観察したところ、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ有し、両端部に炭素結晶端が露出した構造の炭素粒子であった。また、外観形状は、長径500〜650nm、短径40〜90nmの繊維状の粒子であった。また、この粒子の集合体を8万倍で観察したところ、凝集体は視野に存在しなかった。
上記の粒子の元素分析結果は、炭素、窒素、酸素が主な構成元素であり、検出濃度は、炭素85.36重量%、窒素6.52重量%、酸素6.82重量%であった。なお、上記以外の元素として、水素0.3重量%、ケイ素は検出限界(1重量%)以下であった。
<金コロイドの内包>
上記の手順により得られた繊維状炭素粒子を用いて、実施例1と同様の手順により、金コロイド/炭素複合粒子の分散液を得た。
上記の手順により得られた繊維状炭素粒子を用いて、実施例1と同様の手順により、金コロイド/炭素複合粒子の分散液を得た。
上記の分散液中の金コロイド/炭素複合粒子の構造をTEM(倍率80万倍)で観察した。得られたTEM写真を図3に示す。その結果、上記の分散液中の金コロイド/炭素複合粒子は、粒子内部に炭素結晶壁で包囲された中空部を1つ有し、両端部に炭素結晶端が露出した構造の炭素粒子であり、具体的には、上述の図1(a)に示すバーチャル構造の繊維状炭素粒子であって、その中空部の内部に粒径1〜10nmの金コロイドを含有していた。
本発明の繊維状炭素粒子の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。中でも、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)、インクジェットプリンタ等の潤滑剤、電界放射ディスプレイ、リチウム電池材料等の分野において、特に好適に応用できるものと期待される。また、各種ポリマーの導電付与材、帯電防止層等の塗布液、透明導電膜の導電フィラー、生体内での診断試薬、モニター試薬の支持材料等の分野にも、好適に利用され得るものと記載される。
Claims (4)
- 炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有する繊維状炭素粒子であって、該粒子の少なくとも両端部に炭素結晶端が露出した構造を備え、該粒子の長径が40nm以上、10μm以下の範囲であるとともに、該中空部内に液化可能物質が含まれている
ことを特徴とする、繊維状炭素粒子。 - 炭素結晶壁で包囲された単一の中空部を有し、長径が40nm以上、10μm以下の範囲である繊維状炭素粒子を原料として、少なくとも液化可能物質前駆体を含む液体に接触させることにより、該中空部内に上記液化可能物質が含まれた繊維状炭素粒子を製造する
ことを特徴とする、繊維状炭素粒子の製造方法。 - 原料として、少なくとも両端部に炭素結晶端が露出した構造を備えた繊維状炭素粒子を用いる
ことを特徴とする、請求項2記載の繊維状炭素粒子の製造方法。 - 請求項2又は請求項3に記載の繊維状炭素粒子の製造方法により得られる
ことを特徴とする、繊維状炭素粒子。
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---|---|---|---|---|
CN113428866A (zh) * | 2021-06-23 | 2021-09-24 | 王海龙 | 一种毛线团状SiOx/C及其制备方法和应用 |
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2004
- 2004-12-28 JP JP2004380909A patent/JP2006183220A/ja active Pending
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