JP2006007327A - 摩擦攪拌接合方法とその接合装置およびその摩擦接合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 母材接合部の表裏両面側から裏面押圧部材1と表面押圧部材2を摺動回転させながら加熱を行うとともに、少なくとも一の押圧部材とともに回転する攪拌部材3により攪拌させながら両押圧部材と攪拌部材からなる回転工具を所定方向に移動させて行う摩擦攪拌接合方法において、 両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、攪拌部材を回転軸方向に移動させた後若しくは移動途中に攪拌部材を回転させるか若しくは攪拌部材を回転軸方向に移動させ攪拌部材の移動に同期して裏面押圧部材と表面押圧部材が母材押圧面より離間させる。
【選択図】 図1
Description
かかる工具によれば、接合面の両面において摩擦発熱させることが出来、裏面側の接合不良が生じないのみならず、裏当金が不要になるが、一方ではピン軸と上下一対のショルダ間隔が固定されているために、被接合部材の変形や肉厚の変動があると、これを吸収することができず、円滑な摩擦攪拌接合ができない。
又工具間隔が一定の場合母材表面に凹凸を有する場合にこれに追従させるために、表面倣いを行うことができない。
又工具が一体ものの場合にピン軸の上下両側にショルダが位置するために、ショルダ径より大きな穴を接合終端に設けねば、工具を取り外しが出来ない。
かかる技術は、上側ショルダとして機能する回転筒に攪拌ピン軸を固設し、その先端にストッパ部を固設するとともに、該ストッパ部を介して短円柱状の下側ショルダ部材を設け、この下側ショルダと前記ストッパ部との間にコイルスプリングが配設されている。つまり、このコイルスプリングが、下面ショルダを常時被接合部材の下面側に付勢し、下面ショルダは、攪拌ピンの軸線に沿って移動可能に構成されているものである。
しかもコイルスプリングの押し付け力には上限があり、基本的に上側ショルダとして機能する回転筒の押し付け力より大きくすることができない。
一方前記摩擦入熱が過大すぎて接合物の温度が軟化温度以上に上がりすぎると、材料の強度が低くなり、工具を挟み込むことで発生するせん断力に耐え切れず、材料がねじ切られてしまう恐れもあった。
特に、接合過程(製造過程)において、母材は長尺ものの型板を接合する場合に、型板同士の熱膨脹やクランプ治具による変形等により、接合部に生じるギャップ(隙間)が異なることを考慮すると、ギャップに変動があると、搬送速度が一定でもギャップや接合部の厚さの変動により負荷の変動も生じやすく、円滑な接合加工が出来ないのみならず、負荷が課題になると工具破損が生じる恐れがある。
かかる技術は、摩擦撹拌接合装置の接合工具よりも進行方向前方に設けたCCDカメラで、接合される隙間を常時撮影し、摩擦撹拌接合開始点からの前進距離を常時計測し、上記CCDカメラで撮影した隙間(ギャップ)映像を画像処理し、画像中の隙間(ギャップ)の中心線の基準線に対する横方向へのずれ量を演算し、当該演算値を基準値と比較する、摩擦撹拌接合における継ぎ手不良検知方法である。
しかしながら、接合線上方よりCCDカメラより接合線を撮像する方法では、接合線金傍のクランプ冶具等の存在故にカメラ等では監視は難しく、開先幅(ギャップ)や接合部側近を精度よく検出出来ない。
特にボビンツールを用いた接合方法においては、ボビンツールの下部ショルダ側は、接合中外部からは監視できないし、又ピン軸においても接合部内に埋没した状態では仮にピンが折れても表面上は同じような状態である。このため工具の破損を検出し、破損時には接合を停止する必要があるが、現状の技術ではその課題を解決するものは少ない。
しかしながら接合終端部で、工具間隔が一定のボビンツール型工具で、回転をとめた場合、まだ軟化領域にある接合部とねじ溝を有するピン軸との間にが固着、言い換えればねじ溝に材料軟化部が侵入した状態で固着して両者を分離することができなくなる。
このため、ボビンツールを用いた回転工具においては接合終端位置で、接合材料の一部を切断して、切削加工や化学的な方法で回転工具と接合母材を分離する必要があった。
そしてこのプラグを用いた摩擦攪拌接合法による閉塞方法は、Welding & Metal Fabrication、September 2000P7-8(非特許文献1)に開示されているように、図11(b)に示すように、30〜50°とテーパ角度の大きいプラグ穴70とテーパプラグ60の組み合わせにより接合しているが、ジュラルミンのように接合材がアルミ合金の場合は、プラグ側ではなく、接合材の板側終端側が変形しやすいために、テーパ穴終端に凹部を持たせた密閉式の裏当て板750を当てている。
この安定性を高めるために接合面における接触厚を多くすると接合時に排出される余肉量が多くなり、特に密閉型の裏当てで接合を行うとその余肉量が裏当て凹部にたまってプラグの押圧を妨げ、結果的に余肉により接合部に荷重がかからず未接合となるためにプラグ形状の管理が難しい。
具体的には本発明の目的は、接合完了時に、回転工具と材料の溶着や固着を防止する摩擦攪拌接合方法とその装置を提供することにある。
又前記ピン軸を回転軸方向に移動させた後若しくは移動途中に前記ピン軸を回転させれば遠心力によりピン軸に残存付着して接合残も除去できる。
そして前記ピン軸の回転を接合部の温度が軟化点以下に低下するまで継続させれば、ピン軸と接合部との溶着が完全に防止出来る。
前記攪拌部材を回転軸方向に移動可能に構成するとともに、該移動ストロークが攪拌部材と接合部位間が離脱可能なストローク量であることを特徴とする。
この場合前記ピン軸に、該ピン軸最大径より小なる移動軸が連接され、前記ピン軸の移動により接合部内に移動軸が位置可能に構成されているのがよく、具体的には前記ピン軸をネジ状軸で形成されている場合に、該ネジ状軸に、ネジ外径より小なる移動軸が連接され、前記ピン軸の移動により接合部内に移動軸が位置可能に構成されていることを特徴とする。そして更に具体的には前記ピン軸と裏面ショルダが一体的に連接されているとともに、前記移動軸が表面ショルダの軸穴内に挿設され、前記軸穴径(a1’)とピン軸の最大径(a1)と移動軸径(b1)の関係が下記式の関係にあるのがよい。
(a1’)≧(a1)>(b1)
上記の処置で穴は広がるが、アルミの熱膨張係数が工具の材質である工具鋼よりも大きいため、温度が下がった後、アルミが収縮し焼きばめのようになる可能性があるため、接合後板の温度が下がるまで、工具の回転を保持し、収縮した穴をねじ軸状ピンで削り取ることができる。
さらに確実に工具を抜くため、ピン軸部に径の細い移動軸部分を軸端に連接しておき、接合完了後、ピン軸をその移動軸位置まで移動させることで、容易にピン軸部を抜くことができる。
前記両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、前記攪拌部材を回転軸方向に移動させ、攪拌部材と接合部との溶着を防止して形成された摩擦接合体が得られ、更に具体的には前記両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、前記裏面押圧部材と表面押圧部材とを母材押圧面より離間させるとともに、前記攪拌部材の回転を接合部の温度が軟化点以下に低下するまで継続させて、攪拌部材と接合部との溶着を防止して形成された摩擦接合体が得られる。
そしてかかる技術(以下第1の技術という)は、前記両ショルダ間間隔変位を可変に構成している装置に適用するのが好ましく、この場合は接合開始位置で、前記ショルダ間間隔を接合部への摩擦荷重が少なくとも増加する方向に変位させるアクチュエータと前記ショルダと接合部間の荷重を検知する手段とが存在していることが必要である。
更に前記荷重増加後回転工具を接合線に沿って移動させる前に、その接合開始位置で前記荷重検知手段に基づいて、荷重一定で所定時間保持して接合開始部の均熱化を図るように前記アクチュエータを制御する制御手段が存在することも有効である。
このような装置の場合に前記ショルダ間間隔変位を可変としながら荷重増加をさせる制御手段を、前記両ショルダの回転駆動を行う前記機械主軸のトルク値及びその回転数を入力一定条件として、前記間隔変位を可変とし、荷重制御が行われるように構成することにより安定した制御が可能となる。
すなわち摩擦入熱による熱エネルギは、ショルダの回転数、回転トルク、挟持荷重(間隔変位)の3つの変数により制御可能であるが、回転数と回転トルクを変数とすると、変動時に生じるバイブレーションによりリニアな制御が困難であり、又ショルダの回転数、回転トルクは機械主軸側に設けたモータに依存し、且つ一定に制御することも容易である。
このため前記間隔変位を一の変数として可変に構成すればリニアな制御が容易である。
即ちコイルバネを用いたのでは、コイルスプリングの押し付け力によってその荷重が規定され、その押付力を制御できないのみならず、コイルスプリングの押し付け力には上限があり、リニアな制御が困難である。
又空圧力を用いても緩衝作用が働き、同様にセンシングがよいリニアな制御が困難である。
この場合は、両アクチュエータの荷重偏差に基づいて裏面側ショルダの荷重制御が行われ精度よい制御が可能となる。
前記ショルダ間間隔変位を可変としながら接合部への摩擦荷重を変化させるアクチュエータと前記ショルダと接合部間の荷重を検知する手段とが存在し、前記アクチュエータが裏面側ショルダを軸変位させる第一のアクチュエータと、表面側ショルダを軸変位させる第二のアクチュエータとであって、それぞれのアクチュエータが同一ベース上に設けられ、両アクチュエータの荷重偏差に基づいて裏面側ショルダの荷重制御が行われることを第2の技術とし、又前記ショルダ間間隔変位を可変としながら接合部への摩擦荷重を変化させるアクチュエータと前記ショルダと接合部間の荷重を検知する手段とが存在し、前記アクチュエータが裏面側ショルダを軸変位させる第一のアクチュエータであって該アクチュータが、表面側ショルダを軸変位させる移動ベース上に搭載され、前記第一のアクチュエータの荷重検知手段に基づいて荷重制御を行うことを第3の技術とする。
そこで本第3の技術は、この接合部に印加するショルダの荷重を、接合部を挟み込む入熱用荷重Pcと材料表面を押さえつける倣い用荷重Psに分離して、夫々独立のアクチュエータで制御することで、工具の接合部表面倣い、接合部にかかる入熱量を精度よく制御して安定した品質を得ることが可能である。
この場合に図1(A)に示すように、表面側ショルダのベース上に、裏面側ショルダを駆動するアクチュエータを設けた場合には表面側の第二のアクチュエータの荷重P1は倣い用荷重Psに、裏面側の第1のアクチュエータの荷重P2は入熱用荷重Pcに対応する。これに対して、図1(B)のように同一ベース上に第1及び第二のアクチュエータを設けた場合は、倣い用荷重Psは第1のアクチュエータの荷重P1と第二のアクチュエータP2の偏差量が、入熱用荷重PcはP1より偏差成分を取り除いた値が対応する。
一方工具間距離を接合部板厚に追従させない場合は、板厚の0.1mm程度の変動でも、約5%の荷重が変化し、板厚変化以上に入熱が変化する。特に、工具間距離よりも板厚が薄くなった場合には、工具と材料がまったく接触しなくなるため、発熱がまったくなくなり、欠陥が生じたり、工具の破損が起こる。
従ってショルダ間間隔を可変にして荷重制御により接合加工を安定して行うことが理解できる。
一方、テーパ形状の板厚を持った部材の接合では、入熱一定の条件では、板厚が厚いときには、入熱不足になりやすい。荷重一定に制御した場合、上下の工具の位置から板厚を知ることが可能で、板厚変化に応じて、荷重一定のまま、接合速度や回転数を変化させればよい。たとえば、2219-T87材の6mm材の適正な接合条件は、荷重8kN、回転数400rpm、送り速度400mm/minであり、8mm材では接合速度が300mm/minであるから、6mmから8mmに変化するテーパー部では工具位置から算出した板厚変化に応じて、接合速度を変化させることで健全な接合部を得ることが可能である。
そして前記摩擦入熱保持時間の制御は、ショルダ間間隔変位を可変としながら荷重一定に制御しつつ予め設定した固定時間に基づいて行う第1の時間制御、接合部の温度検知信号に基づいて行われる第2の時間制御、若しくはショルダ間間隔変位の間隔変位量に基づいて行われる第3の制御のいずれか1若しくは複数の組み合わせで構成するのがよい。
そして前記予熱工程は、前記両ショルダ間間隔変位を可変として接合部への荷重増加を行う工程であるのがよい。
攪拌部材として機能するピン軸によって攪拌される接合部全体の温度が均熱に軟化温度領域まで上昇していないと、材料の流動が悪いため接合できないのみならず、ピン軸の破損につながる。
即ち接合開始位置で工具回転後、荷重を増加させて予熱し軟化温度領域に到達後、直ちに接合線に沿って工具を移動させると、接合部全体が均等に軟化していないため、ピンが破損して、材料が接合できない。
一方予熱時間や保持時間が無用に長く、接合部が、軟化温度領域を超え部分溶融点以上になると、材料の強度が低くなり、工具を挟み込むことで発生するせん断力に耐え切れず、材料がねじ切られて穴があいてしまう恐れがある。
前記保持時間による入熱の制御方法としては、時間による制御も可能であるが、材料の軟化に伴い、荷重一定の制御を行った場合、材料が軟化するため、工具間距離が短くなる。従って材料の軟化の具合を、工具間距離の減少量で把握して、予熱が完了したと判断することも可能である。
時間による制御では、工具や材料の表面状況が異なり、摩擦係数が変化した場合には、発熱量が変化して、材料の軟化の程度が時間だけでは制御できないが、工具間距離の変化を含めて、均熱の完了を判断することでより、安定した施工が可能となり、そしてこの技術も曲面若しくは直面状もしくは円周面状のシングルスキンやダブルスキンパネル等の摩擦接合体に適用するのがよい。
この場合前記制御回路は、摩擦入熱保持時間を固定若しくは可変に設定し、接合部の軟化温度以上であって部分溶融温度以下の範囲に時間制御可能に構成されているのがよく、更に前記摩擦入熱保持時間の制御が、ショルダの回転トルク信号、接合部への温度検知信号、若しくはショルダ間間隔変位の間隔変位量検知信号の少なくとも一の検知信号に基づいて行われることも有効である。
この場合、接合部もしくはその周囲温度が、軟化温度以上であって部分溶融温度以下の範囲にあることを検知する非接触温度センサを設け、該センサの検知信号に基づいて摩擦入熱保持時間を可変に構成してもよい。
そしてかかる技術を効果的に達成する装置として、裏面ショルダと表面ショルダ間の間隔変位が変位可能な一または複数のアクチュエータを設け、該アクチュエータに基づいて前記接合部の板厚変化に追従させて裏面ショルダと表面ショルダ間の間隔変位させるとともに、その変位検出値に応じて、裏面ショルダと表面ショルダの回転数、接合方向への工具送り速度を変化させて、接合部の入熱量を制御する制御回路を具えたことを特徴とする摩擦攪拌接合装置を提案する。
勿論第一のアクチュエータ及び第二のアクチュエータがいずれも送りねじ若しくは油圧により駆動されている方がより好ましいことは言うまでもない。
表面倣いを行うには、倣い用荷重Psが無負荷となることで、接合する材料を表裏の工具でバランス良く挟むことが可能であり、材料にうねりがある場合でも基本的には安定して接合することが可能である。
ボビンツールからなる回転工具を用いた摩擦攪拌接合の場合に、表面側ショルダは機械主軸側に連結されているために熱容量が大きく言い換えれば奪熱量が大きく、一方、裏面側ショルダ機械首位軸と離れているために、熱容量が少ないこともあり奪熱量が小さい。
このため、両ショルダの押圧荷重の制御でその荷重がゼロとなるようにバランスさせて摩擦入熱を行った場合に、接合部裏面側の入熱が多いため、工具のあたり面の温度が表面よりも高くなるため、僅かに裏面側ショルダが接合部下面側に食い込んだ状態になる。
表面側ショルダと接合部との押圧関係を示す表面荷重を接合荷重の1/10程度若しくはそれ以下の圧縮荷重になるように制御することで、食い込み量がほぼ上下で同じ接合部を得ることが可能である。
そして前記判別手段は、ショルダ間の間隔変位が所定値以下になるごとに警報を出すとともに記録する第一の判別手段と接合動作を停止する第二の判別手段のいずれか一若しくは両者の組み合わせで構成されるのが好ましい。
この場合工具の破損は、前記ショルダの駆動トルク、前記裏面ショルダの荷重変動、前記ショルダ間の間隔変位、接合線上の工具送り負荷の変動をもとに検出するのが好ましい。
ボビンツールはプローブ型の回転工具と異なり、上下のショルダで接合部を挟んで接合を行うため、工具を回転する主軸に高いトルク(2219-T87材6mmの場合、約60Nm)が発生する。(プローブ型工具ではトルク変化は小さい)回転工具のピン軸が折れた場合には、材料が挟まれなくなるため、主軸のトルクは急激に減少する。また、前記ピン軸の破損にともない、下側ショルダを引っ張り一定荷重に制御使用としたアクチュエータは、荷重がなくなるため、ショルダ間隔が短くなるように動作する。この二つの物理現象でピン軸の破損を検出できる。
ピン軸等の工具破損を検知した際には、該破損したピン軸等の工具で、未接合部を傷つけることがないように、接合方向への移動を停止するとともに、少なくとも表面ショルダを駆動している駆動軸を接合部から離れる方向に移動させることで、接合できていない部分の表面を表面ショルダがでこすったりして、傷つけることを防止出来る。
即ち、摩擦攪拌接合開始時には接合開始位置で工具を停止させた状態で回転させて予熱する必要があるため、その後の接合線と比較して入熱が多めになり、接合開始部は欠陥を生じやすい。
また母材の縁部に近いところで接合を開始すると端部が変形するとともに、その変形が原因で欠陥が生じやすいため、接合開始位置より内側に寄せて大きく取る必要があるがこのことは接合の無駄が出やすい。
このため、本技術は、直線状の接合線を有する場合に接合開始位置を母材縁部より工具半径(A/2)より大なる距離(B>(A/2))だけ内側に設定し、接合開始後前記接合開始位置より縁部側に逆接合した後反転して順接合を行うことを特徴とする。
かかる技術によれば、接合開始点は反転した際の接合路途中に位置することになるために、接合開始部の欠陥を補修でき、その部分が製品として残ることがない。
かかる技術は直線状の接合線を有する接合線を補修接合する場合にも適用でき、この場合は補修接合開始後前記補修接合開始位置より工具半径(A/2)より大なる距離(B>(A/2))だけ逆接合した後反転して順方向に補修接合を行うことを特徴とする。これらの技術も曲面若しくは直面状もしくは円周面状のシングルスキンやダブルスキンパネル等の摩擦接合体に適用できる。
このように構成することにより、接合開始位置と接合終端位置のいずれにおいても接合路途中に位置することになるために、接合開始と接合終端位置部の欠陥を補修でき、その部分が製品として残ることがない。
(R)>(d3)>(e3)
又プラグ穴のテーパ角度が小さい場合でも裏当ての底に穴をあけて、余肉が生じた場合、下に逃がして、余肉による接合不良を抑制出来るために、接合性を改善出来る。
又裏当て部材の貫通孔端部と裏当て面との間の縁部をR状に形成するとともに、該R部の外縁直径(R)、前記プラグ穴の終端径直径(d)貫通孔の直径(e)の範囲を規定し、そして好ましくは前記テーパ状プラグ先端直径(c)を前記プラグ穴の終端径直径(d)より大に設定することにより、接合板65板下部の変形を促すことで底部の密着を改善出来る。
更に本発明は、直線状の接合線を有するスキンパネル同士の接合の際に接合終端部における接合の乱れをなくし、高品質の摩擦攪拌接合体が得られる。
更に本発明によれば、摩擦攪拌接合の終端において形成されるプラグ穴や接合中の欠陥をプラグにて封止する際にプラグ穴のプラグ径が大きくなることなく、しかもその周囲の熱的影響が広がることなくプラグ穴終端(底部)の接合が安定しうる高品質の摩擦攪拌接合が可能となる。
図1は送りモータにより駆動する送りねじを用いた摩擦攪拌接合装置の実施例、特に裏面ショルダ1と表面ショルダ2の両者を同期して回転可能にした実施例を示す要部概略図で、図中1は回転主軸4軸端に設けられた裏面ショルダで、該回転主軸4は裏面ショルダ取り付け部よりネジ状ピン軸3が形成され、更にその回転主軸4の表面ショルダ2に挿設される部位をスプライン状に構成し、スプライン19を介して表面ショルダ2が回転主軸に軸方向に摺動自在に嵌合されている。
更に回転主軸4の延在軸端側にはサーボモータ等の回転駆動部12を設けている。
これにより表面ショルダ2と裏面ショルダ1が同期して回転可能に構成される。すなわち表面ショルダ2は前記回転主軸4にスプライン19を介して、軸方向に摺動自在に連結され、回転主軸4の回転駆動部12により回転可能に構成されている。
又裏面ショルダ1が取りつけられた回転軸4の軸端には下側工具ベース9を介して「送りねじ21と送りねじ駆動モータ22、及びロードセル23が収納された」第1のアクチュエータ10が連結されており、又表面ショルダ2は軸受25が内蔵された支持収納部40を介して、「送りねじ210と送りねじ駆動モータ220及びロードセル230が収納された」第2のアクチュエータ11が連結されている。
この結果、これらのアクチュエータ11、10及び回転駆動部17は制御回路13に接続され、アクチュエータ11、10の夫々のロードセル23、230の信号に基づいて送りねじ駆動モータ22、220の回転位相を制御して例えば前記裏面側と表面側のショルダ面間にスキンパネル等の母材の接合部350を挟持した状態で、該接合面の表側にかかる表面ショルダ2面の荷重と、裏面ショルダ1面の荷重を夫々制御し得る。
更に制御回路13では、前記装置本体5を母材接合線方向に沿って移動、停止及び反転させる制御及び送りねじ駆動モータ22、220の回転位相を制御して例えば前記裏面側と表面側のショルダ面間の間隔変位、荷重さらには回転停止位置での予熱、保持時間の制御等を行っているが、その詳細は後述する。
図中15はベースプレートで、レール29により母材接合線方向に移動可能に構成されている。そしてベースプレート15の送りモータ30も制御回路13により送り移動速度を制御可能に構成されている。
図2(A)において図中15はベースプレートで、レール29により母材接合線方向に移動可能に構成されている。ベースプレート15上にはリニアガイド6により回転主軸4方向に移動自在に支持された上工具ベース7と第2のアクチュエータ11が取り付けられている。
そして上工具ベース7は第2のアクチュエータ11によって表面ショルダ2を軸方向に移動自在に構成されており、該アクチュエータ11にはロードセルが設けられていることは前記した通りである。
上工具ベース7上には摩擦攪拌接合装置本体5、リニアガイド8により回転主軸4方向に移動自在に支持された下工具ベース9及び第1のアクチュエータ10が設けられ、該アクチュエータ10にもロードセルが設けられている。
この結果、前記装置では、接合中上側の表面ショルダ2工具をベースプレート15上の第2のアクチュエータ11によって上工具ベース7を介して母材接合部350表面に押し付け、上工具ベース7上の第1のアクチュエータ10により下工具ベース9を介して下側の裏面ショルダ1工具を引張って接合しており、板厚変化に対応表面ショルダ2により表面ならいを行いながら、荷重一定制御により摩擦攪拌接合が可能となる。
具体的には、ベースプレート15上に表面ショルダ2を駆動する第2のアクチュエータ11と上工具ベース7上とを、更に、下工具ベース9を介して裏面ショルダ1を駆動する第1のアクチュエータ10を設けた図2(A)の実施例の場合は、第2のアクチュエータ1の荷重P1は表面倣い荷重Ps(例えば50kgf)に、第1アクチュエータ2の荷重P2は摩擦入熱荷重Pc(例えば700kgf)に対応する。
そして上工具ベース7には摩擦攪拌接合装置本体5が設けられ、第2のアクチュエータ11によって表面ショルダ2を軸方向に移動自在に構成されており、該アクチュエータ11にはロードセルが設けられている。
下工具ベース9上には回転主軸4軸端に設けられた裏面ショルダ1が設けられ、第1のアクチュエータ10及びリニアガイド8により回転主軸4方向に移動自在に回転主軸4を支持するとともに該アクチュエータ10にロードセルが設けられている。
この結果、前記装置では、接合中上側の表面ショルダ2をベースプレート15上に設けた第2のアクチュエータ11によって上工具ベース7を介して母材接合部350表面に押し付け、又共通するベースプレート15上に設けた第1のアクチュエータ10により下工具ベース9を及び回転主軸4を介して下側の裏面ショルダ1工具を引張って接合しており、板厚変化に対応表面ショルダ2により表面ならいを行いながら、荷重一定制御により摩擦攪拌接合が可能となる。
そしてこのときの荷重は、材料を挟み込む摩擦入熱荷重Pcは第1のアクチュエータ10により又材料表面Psを押さえつける表面倣い荷重Psは第1のアクチュエータ10と第2のアクチュエータ11の偏差により、夫々独立に制御することが出来、表面ショルダ2工具が料表面を倣いながら、裏面ショルダ1によって接合部350にかかる入熱量を制御して安定した品質を得ることが可能である。
具体的には、ベースプレート15上に表面ショルダ2を駆動する第2のアクチュエータ11と裏面ショルダ1を駆動する第1のアクチュエータを設けた図2B)の実施例の場合は、第2のアクチュエータ1の荷重P1は(表面倣い荷重Ps+摩擦入熱荷重P2)(例えば750kgf)に、第1アクチュエータ2の荷重P2は摩擦入熱荷重Pc(例えば700kgf)に対応する。
図3は本発明が使用する接合材の硬度と温度の関係を示し、例えばロケットに使用される2219系アルミ合金では350℃前後で軟化が開始し、530〜540℃で部分溶融が始まる。一方、6000系のアルミ合金では250℃から軟化が始まる。
1)スローアップ
先ず接合開始時にスローアップを行う。
スローアップとは、工具の送りを停止した状態で、表面ショルダ2を駆動する第2のアクチュエータ11と裏面ショルダ1を駆動する第1のアクチュエータ10を制御してピン軸のねじ切り防止のため、ピン軸のねじ切りが起きない低荷重より徐々に荷重を増加して軟化点以上に加熱するものである。
具体的には図2(A)の実施例の場合は、第2のアクチュエータ11の荷重P1を表面倣い荷重Ps(例えば50kgf)に設定し、第1アクチュエータ11の荷重P2は摩擦入熱荷重Pcを(例えば0.5KN〜7KN)に増加させてスローアップを図る。
図2(B)の実施例の場合は、第2のアクチュエータの荷重P1は(表面倣い荷重Ps+摩擦入熱荷重P2)(例えば1KN〜7.5KN)に、第1アクチュエータ2の荷重P2は摩擦入熱荷重Pc(例えば0.5〜7.0KN)に荷重を増加させてスロープアップを図る。
即ち本実施例では図4に示すように、工具として表面及び裏面ショルダ1径φ20mm、ピン軸径φ10mm 材質SKD61の回転工具を用い、接合物として2219-T87アルミ合金を用いて実験を行った。
先ず比較例1として接合開始時に、工具の送りを停止した状態で、表面ショルダ2を駆動する第2のアクチュエータ11と裏面ショルダ1を駆動する第1のアクチュエータ10を制御して摩擦入熱荷重Pcを0.5KNの初期加圧力のまま入熱を行い工具を移動して接合送りを開始しようとしたが、入熱不足で工具の移動が出来ず、移動の際の負荷により工具が破損してしまった。
なお前記初期加圧力はピン軸がねじ切れない荷重、例えば1kN以下の低い荷重に設定される。そして摩擦発熱で材料表面を軟化させながら、ピン軸3がねじ切れないように荷重増加させつつ接合に必要な荷重まで荷重を増加させた後、接合を開始すればよい。
また、荷重を徐々に上げていくのは、ピンに過大なトルクがかかりねじ切れるのを防止するためであるから、工具回転主軸4のモータのトルクが一定値を超えないように工具の回転速度を制御しながら、工具間隔を短くして、接合荷重まで上昇させてもよい。
例えば図5は回転速度を50rpmから250rpmに上げながらスローアップを図っている。
図5はスローアップ、保持時間及び接合開始までの時間、速度の関係を示すグラフ図である。
接合材の肉厚例えば4mm程度と薄い場合は、工具の送りを停止した状態で、表面ショルダ2を駆動する第2のアクチュエータ11と裏面ショルダ1を駆動する第1のアクチュエータを制御して荷重をスロープアップ後ただちに接合線に沿って工具を移動させてもよいが、接合物が数mm以上と厚い場合は、図5に示すようにスローアップ後、接合材料を更に接合容易な温度領域まで均熱に軟化加熱させるため、保持時間を設けたのち、接合線に沿って工具を移動させるのがよい。
10秒間のスローアップ後保持時間を持たずに直ちに接合を開始した比較例4の場合には入熱が不足して、接合材料が十分軟化していないため、ピン軸が破損して、材料が接合できなかった。
これに対して実施例2の、10秒間のスローアップ後荷重を一定にしながら5秒の接合時間を設定した場合には、接合部350が350-450℃付近の温度、即ち「軟化点〜部分溶融点温度―50℃前後」の温度域に加熱されるため、良好な接合部350が得られることが確認できた。
入熱の制御方法としては、前記した保持時間による制御も可能であるが、材料の軟化に伴い、荷重一定の制御を行った場合、材料が軟化するため、工具間距離が短くなる。材料の軟化の具合を、工具間距離(ショルダ変位)の減少量で把握して、余熱が完了したと判断することも可能である。
時間による制御では、工具や材料の表面状況が異なり、摩擦係数が変化した場合には、発熱量が変化して、材料の軟化の程度が保持時間だけでは制御できない恐れがあるが、前記アクチュエータの変位量から、工具間距離の変化が簡単に求められるので、該アクチュエータの変位と保持時間のアンド条件を制御回路13で判断して、余熱の完了を判断することでより、安定した施工が可能となる。
すなわち、工具間隔が素材板厚に対して短すぎると、工具の負荷が高くなり、ピンが破損する。
この場合に接合部350温度は、接合部350は表面ショルダ2と裏面ショルダ1に挟まれているために直接測定できないが、せん断力が働く縁部で、300〜350度付近となるためにこの温度を測定すればよい。
次に前記スローアップとの熱保持時間を設定して均熱後後工具送りを開始するわけであるが、前記したように摩擦開始時には材料を予熱する必要があるため、接合下流部と比較して入熱が多めになり、接合開始部は欠陥を生じやすい。そのため従来はタブ板を使用して接合を行っていたが、かかる方法では接合開始位置にタブ板を強固に固定する必要があるのみならずタブ板からの移行部で欠陥が生じやすい。
そこで本実施例においては図7(a)及び(b)に示すように、次のような工夫を行っている。
即ち図7(a)及び(b)は直線状の接合線を有する場合の接合開始位置における軌跡及び補修する場合の工具軌跡を示す。
スキンパネルの接合のように接合開始始端と終端を有し、接合線が直線状の場合は、パネル始端より接合開始位置までのふち距離bを多めに取って、具体的には、直線状の接合線を有する場合に接合開始位置を母材縁部より工具半径(A/2)より大なる距離(b>(A/2))だけ内側に設定し、前記保持時間終了後、接合を開始する際に、前記接合開始位置より縁部側に逆移動して接合し(B)に示すように未接合部350の長さdが(A/2)以下になるように、略工具半径(A/2)分若しくはそれよりわずかに大なる距離だけ移動させた後反転して順移動による接合を行う。
又接合移動中の一般接合部350の接合開始部は、接合開始部より低入熱のため不完全接合部350aとなっているが、接合開始部は前記戻り動作により再接合されるため、接合スタート時に不完全接合部350aとして欠陥を生じても、反転後の再接合過程時にこれを除去出来る。
かかる技術は直線状の接合線を有する接合線を補修接合する場合にも適用でき、補修接合開始後前記補修接合開始位置より工具半径(A/2)より大なる距離(d>(A/2))だけ逆接合した後反転して順方向に補修接合を行うことにより(a)と同様な効果を有する。
そして工具を順方向に移動しながら接合を行う通常接合において本実施例では、板厚変化に対応して2つのアクチュエータ10、11を制御し、表面ショルダ2と裏面ショルダ1により材料を挟み込み摩擦入熱を行う荷重Pcと表面ショルダ2により材料表面Psを押さえつける荷重に分離して、ロードセルによる荷重検知に基づいて2つのアクチュエータ独立に制御することで、工具の表面倣いと、接合部350にかかる入熱量を制御して安定した品質を得ている。
例えば図2(A)に示すように、表面ショルダ2を移動自在に支持する上側工具ベース上に、裏面ショルダ1の下部工具を駆動する第1のアクチュエータを設けた場合にはアクチュエータ1の荷重P1はPsに、アクチュエータ2の荷重P2はPcに対応する。これに対して、図2(B)のように同一ベース上に第1及び第2のアクチュエータを設けた場合は、PsはP1とP2の偏差量が、PcはP1より偏差成分を取り除いた値が対応することは前記したとおりである。
特にアクチュエータにより工具間距離の追従は極めて重要で本実施例に示すように、油圧若しくは送りねじにより厳しく制御されないと、板厚の0.1mm程度の変動でも、約5%の荷重が変化し、板厚変化以上に入熱が変化する。
一方、テーパ形状の板厚を持った部材の接合も前記2つのアクチュエータをロードセルの荷重に基づいて制御することで荷重一定に制御される。たとえば、2219-T87材の6mm材の適正な接合条件は、荷重8kN、回転数400rpm、送り速度400mm/minであり、8mm材では接合速度が300mm/minであるから、6mmから8mmに変化するテーパー部では工具位置から算出した板厚変化に応じて、接合速度を変化させることで健全な接合部350を得ることが可能である。
さて図10(b)に示すように、表面ショルダ2は機械主軸40(図1に示す支持収納部40aに内包されている)に取り付けられており、このため裏面ショルダ1側と同一入熱でも表面ショルダ2側に奪熱され、言い換えれば裏面ショルダ1のほうが、熱容量が少ない。また、接合する対象によっては、材料にうねりがあるために図8(a)に示すように、荷重偏差をゼロとすると、工具間隔が接合材料の肉厚に追従できず、接合時に変形させてしまう。
従って荷重偏差、即ち表面荷重Psを図8のように正負を定義すると、(b)に示すように表面ショルダ2側の押圧力が強く接合材料にくみ込みすぎた場合には圧縮(+)になり、図8(c)に示すように、裏面ショルダ1側の押圧力が強い場合は引っ張り(−)になる。そこで、図8(a)に示すように両ショルダ間の荷重偏差をゼロとした場合、0.1mm程度下側工具が材料に食い込んだ状態になるために表面荷重Psが圧縮荷重状態で且つ接合荷重の1/10程度以下、具体的には7〜12%圧縮荷重になるように制御することで、食い込み量がほぼ上下で同じ接合部350を得ることが可能であることは実験により確かめられた。
そして、この場合にロードセルを用いて2つのアクチュエータ10、11を介して位置(荷重)制御すれば、板と接合装置の間隔が変化しても対応できる。
この場合は前記偏差(板厚一定の場合は工具間隔)が一定値以下となった場合には、アラーム41で警報を出すとともに接合線位置に対応するポイントを記録計42に記録し、更に前記偏差が更に大きい場合は接合をやめる。また、接合後、前記記録計42を基に検査する位置を特定することも容易である。
Δa1=(a1xb1)/c1
Ex: 板厚:6mm、ギャップ1mm、工具径:20mm の場合は
Δa=6/20=0.3mmとなる。
この板厚間隔の減少を、表面ショルダ2と裏面ショルダ1それぞれを制御するアクチュエータ10、11の位置から求まる工具(両ショルダ)間距離でもとめ、工具間距離の絶対値および変動(偏差)をもとにギャップの変化を検出する。
本発明に使用する摩擦攪拌接合装置の制御信号と、制御回路と制御動作の関係を示すグラフブロック図である。
ボビンツールの場合、表面ショルダと裏面ショルダで接合材を挟んで接合を行う場合ため、該ショルダを回転する回転主軸4に高いトルクA(2219-T87材6mmの場合、約60Nm)が発生するが、図9に示すように、ピン軸3が折れた場合には、材料が挟まれなくなるため、回転主軸4のトルクAは急激に減少する。また、ピン軸3の破損にともない、裏面ショルダ1を引っ張り一定荷重に制御使用とした第1のアクチュエータ10は、ピン軸破損により荷重がなくなるため、工具間距離が短くなるように変位する。
この二つの検知信号にもとづいて制御回路8で工具の破損を検出できる。工具破損を検知した際には、工具で、未接合部350を傷つけることがないように、制御回路13で工具送り方向への移動を停止するとともに、2つのアクチュエータ10、11により図10に示すように表面ショルダ2および裏面ショルダ1を駆動している軸を板から離れる方向に移動させることで、接合できていない部分の表面を工具でこすったりして、傷つけることを防止出来る。
なお、本実施例では回転主軸4のサーボモータのトルクAおよび裏面ショルダの回転主軸Z2の荷重、変位、送りの負荷をもとに、ピン軸3の破損を検出することも可能であり、この場合も接合を停止するとともに表面ショルダ2の第2のアクチュエータ11接合材から離間する方向に移動させ、工具との溶着を防止する。
図10(a)及び(b)は接合完了時に裏面ショルダと表面ショルダとを母材押圧面より離間させピン軸の溶着を防止する概要図である。
さて前記接合完了後接合終端部でボビンツールからなる工具を除去する必要があるが、工具間隔が一定の工具で、回転をとめた場合、接合部350の材料とネジを切ったピン軸が溶着して両者を分離することができないため、接合材料の一部を切断して、切削加工や化学的な方法で工具と材料を分離する必要があり、そこで本実施例においては、接合完了時に、上下の工具間隔を開くことで、工具と材料の溶着を防止する。
工具には表面ショルダ2と裏面ショルダ1とピン軸3が有り、基本的にはピン軸3のみが回転軸方向に移動可能に構成すればよいが、ピン軸3には裏面ショルダ1も連結しているために、ピン軸3の移動は裏面ショルダ1も接合面から離脱できる。
又表面ショルダ2も接合面から離脱できれば溶着が一層防止できる。
そして前記回転は接合部350の温度が軟化点以下に低下するまで継続させれば、ピン軸3と接合部350との溶着が完全に防止出来るとともに、軟化材料を遠心力で接合部350の穴部35から排除することもできる。
なお、前記離脱を容易にするために、ピン軸自体を移動軸側に向けてテーパ状にしてもよい。
例(a2’:例10.05mm)≧(a2:例M10)>(b2:例9.8mm)
そして前記処置が完了後裏面ショルダ1下面のネジをはずしてピン軸と裏面ショルダ1をはずして工具取り外しを行う。
図11はプラグ接合の概要を示し、(a)は本発明、(b)は従来技術である。
図12はプラグ接合の観察写真を示し、(A)は本発明、(B)は従来技術である。
図13は、(a)はプラグ接合している状態を示す作用図、(B)はその接合条件を示す。
前記したようにボビンツール方式の摩擦接合の終端においては、ピン軸に対応する終端穴が開いている。この終端の穴を補修するために、図11(b)に示すように前記ストレート穴をテーパ状に削成した後、同材質のテーパプラグ60を回転治具にて前記テーパプラグ穴70を摺擦して摩擦接合により接合している。また一般の接合部においても欠陥が発生した部分にテーパ形状の穴を開けてテーパプラグを摩擦接合することにより欠陥が除去できる。
この場合に接合材がジュラルミン等のアルミ合金の場合のテーパプラグの押圧により接合板65側が変形しやすいので接合板65の背面側に裏当てを当てて変形を防止している。かかる方式の場合に押圧力を高めるために、テーパ穴のテーパ角度を30〜50°言い換えれば押圧方向に対し40〜60°とテーパ角度が大きくなり、結果的にプラグ径が増大するとともに、熱影響部が広がる。
例えば図11(b)はプラグ穴70をテーパ角度を50°に設定し、同角度テーパプラグ60を用いプラグ穴70底部側の接合板65背面に、凹陥部751を有する裏当て板750を当接して図13(B)に示すように、3000rpmの回転数で且つ60Mpaの加圧力で0.5秒摩擦接合を行った後、回転数を停止して加圧力を120Mpaに増加させて圧着を行ったところ、図12(B)の観察写真で示すように、プラグ終端の軟化部分が裏当て板750の凹陥部751底についてしまい、プラグ穴70の終端周囲に肉が完全に充てんされず特に裏当て板750と接触するナイフエッジ状部分に隙間があることが確認された。
この結果図13(a)に示すように、前記貫通孔76の存在により余肉78が生じた場合、貫通孔76側に逃がして、余肉78による接合不良を抑制出来るために、接合性を改善出来る。
又裏当て部材75の貫通孔76端部と裏当て表面との間の縁部77をR状に形成するとともに、R部の外縁直径(R)を、前記プラグ穴70の終端径直径(d3)より僅かに大にし、プラグ穴70の終端ナイフエッジ部71が貫通孔76側に突出するように構成したために、該ナイフエッジ部71がR状縁部77に沿って変形しながら該ナイフエッジ部71の変形を促すことでプラグ穴70底部の密着を改善出来る。
又テーパプラグ60先端直径をプラグ穴70底部貫通孔の直径(e3)より僅かに大にしたためにテーパプラグ60は先ず、ナイフエッジ部71の上側のプラグ穴70に当接して軟化してずり落ちながら前記ナイフエッジ部71を下側に変形させることが出来、密着度が向上する。
2 表面側ショルダ
3 ネジ状ピン軸
4 回転主軸
5 ベースプレート
7 上工具ベース
9 下側工具ベース
10 第1のアクチュエータ
11 第2のアクチュエータ
12 回転駆動部
13 制御回路
23、230 ロードセル
33 非接触の温度計
60 テーパプラグ
70 プラグ穴
76 貫通孔
77 R状縁部
71 ナイフエッジ部
78 余肉
Claims (10)
- 母材接合部の表裏両面側より夫々裏面押圧部材と表面押圧部材を摺動回転させながら摩擦入熱を行うとともに、該入熱された接合部を、前記少なくとも一の押圧部材とともに回転する攪拌部材により攪拌させながら前記両押圧部材と攪拌部材からなる回転工具を所定方向に移動させて接合部の固相接合を行う摩擦攪拌接合方法において、
前記両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、前記攪拌部材を回転軸方向に移動させ、攪拌部材と接合部との溶着を防止することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。 - 前記攪拌部材を回転軸方向に移動させた後若しくは移動途中に前記攪拌部材を回転させることを特徴とする請求項1記載の摩擦攪拌接合方法。
- 前記攪拌部材の移動に同期して裏面押圧部材と表面押圧部材が母材押圧面より離間させることを特徴とする請求項1記載の摩擦攪拌接合方法。
- 母材接合部の表裏両面側より夫々裏面押圧部材と表面押圧部材を摺動回転させながら摩擦入熱を行うとともに、該入熱された接合部を、前記少なくとも一の押圧部材とともに回転する攪拌部材により攪拌させながら前記両押圧部材と攪拌部材からなる回転工具を所定方向に移動させて接合部の固相接合を行う摩擦攪拌接合方法において、
前記両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、前記裏面押圧部材と表面押圧部材とを母材押圧面より離間させるとともに、前記攪拌部材の回転を接合部の温度が軟化点以下に低下するまで継続させて、攪拌部材と接合部との溶着を防止することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。 - 母材接合部の表裏両面側より夫々摺動回転させながら摩擦入熱を行う裏面押圧部材と表面押圧部材と、前記入熱された接合部を攪拌する攪拌部材を備えた回転工具を有してなる摩擦攪拌接合装置において、
前記攪拌部材を回転軸方向に移動可能に構成するとともに、該移動ストロークが攪拌部材と接合部位間が離脱可能なストローク量であることを特徴とする摩擦攪拌接合装置。 - 前記攪拌部材に、該攪拌部材最大径より小なる移動軸が連接され、前記攪拌部材の移動により接合部内に移動軸が位置可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の摩擦攪拌接合装置。
- 前記攪拌部材をネジ状軸で形成するとともに、該ネジ状軸に、ネジ外径より小なる移動軸が連接され、前記攪拌部材の移動により接合部内に移動軸が位置可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の摩擦攪拌接合装置。
- 前記攪拌部材と裏面押圧部材が一体的に連接されているとともに、前記移動軸が表面押圧部材の軸穴内に挿設され、前記軸穴径(a1’)と攪拌部材の最大径(a1)と移動軸径(b1)の関係が下記式の関係にあることを特徴とする請求項6記載の摩擦攪拌接合装置。
(a1’)≧(a1)>(b1) - 母材接合部の表裏両面側より夫々裏面押圧部材と表面押圧部材を摺動回転させながら摩擦入熱を行うとともに、該入熱された接合部を、前記少なくとも一の押圧部材とともに回転する攪拌部材により攪拌させながら前記両押圧部材と攪拌部材からなる回転工具を所定方向に移動させて接合部の固相接合を行って形成された曲面若しくは直面状もしくは円周面状のシングルスキンやダブルスキンパネルからなる摩擦接合体において、
前記両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、前記攪拌部材を回転軸方向に移動させ、攪拌部材と接合部との溶着を防止して形成された摩擦接合体。 - 母材接合部の表裏両面側より夫々裏面押圧部材と表面押圧部材を摺動回転させながら摩擦入熱を行うとともに、該入熱された接合部を、前記少なくとも一の押圧部材とともに回転する攪拌部材により攪拌させながら前記両押圧部材と攪拌部材からなる回転工具を所定方向に移動させて接合部の固相接合を行って形成された曲面若しくは直面状もしくは円周面状のシングルスキンやダブルスキンパネルからなる摩擦接合体において、
前記両押圧部材との間隔を可変に構成された裏面押圧部材と表面押圧部材により母材接合部の表裏両面に倣いながら摩擦荷重制御を行うとともに、接合完了時に、工具荷重制御から工具位置制御に切り替えて、前記裏面押圧部材と表面押圧部材とを母材押圧面より離間させるとともに、前記攪拌部材の回転を接合部の温度が軟化点以下に低下するまで継続させて、攪拌部材と接合部との溶着を防止して形成された摩擦接合体。
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