JP2006003530A - 音色変更装置、及び、音色変更装置を備えたピアノ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 複数の鍵盤41と、前記鍵盤毎に対応させて並設された複数の音高の弦33と、操作された鍵盤に対応する前記弦を打弦するハンマー64と、を備えた鍵盤楽器に使用され、打弦時に前記鍵盤楽器が発音する音色を変更するための音色変更装置111である。この音色変更装置は、音色を変更すべき音高の全ての弦に、少なくとも前記打弦時の前後に亘って当接して前記弦の振動を吸収する弾性部材115を備えている。また、前記鍵盤楽器は、前記音色変更装置を備えたピアノ1である。
【選択図】 図4
Description
上記発明によれば、譬え前記弾性部材が、自身では形状を維持できない程度に柔らかな素材であっても、当該弾性部材は、剛性を有する本体に固定されるので、その形状を所定形状に維持させることができる。従って、前記並設された弦に対して前記弾性部材を確実に当接可能となる。
また、音色変更装置を前記弾性部材の素材のみで一体成形せずに済んで、前記弦に当接しない前記本体については、安価な素材を使用可能である。よって、その製造コストを安価にできる。
また、前記対向する面と前記シート部材との間には、隙間が設けられているので、前記本体に前記弦の振動は伝達され難く、当該弦の振動は、専ら前記シート部材によって吸収される。従って、前記本体が与える音響的影響を概ね排除して、専らシート部材によって音色は変更されるので、変更後の音色の推定が容易であり、もって希望の音色へ変更し易い。
更には、並設された弦の位置が互いに多少ずれていても、この位置のばらつきを前記隙間によって吸収することができて、もって、前記シート部材を、音色の変更対象の音高の各弦に確実に当接させることができる。
上記発明によれば、前記シート部材は、その凸部が潰れることによって前記弦に面で当接することができる。従って、振動振幅が大きい弦に対しても、前記シート部材は弦から離れ難く、前記当接状態が維持され易くなる。
上記発明によれば、一つの音色変更装置によって、複数の音高の音色を一斉に変更可能となり、取り扱い易い。
上記発明によれば、押し付け力によって前記弾性部材は前記弦に押し付けられているため、振動中の弦から前記弾性部材は離れない。よって、当該弾性部材は、常に前記弦との当接状態を維持可能となり、もって、前記鍵盤楽器が打弦時に発する音色を確実に変更可能となる。
上記発明によれば、当該音色変更装置は、前記弦に載置されることによって、その弾性部材が前記弦に当接状態に配置される。従って、当該音色変更装置を容易に鍵盤楽器に取り付けることができる。
上記発明によれば、前記孔を設ける位置を調整することによって、前記音色変更装置の並設方向の重量バランスをとることができる。よって、弦の並設状態が鍵盤楽器毎に異なっていても、鍵盤楽器毎に最適な重量バランスに設定できて、鍵盤楽器毎に、前記弾性体と弦との当接状態の最適化を図ることができる。
上記発明によれば、前記重量バランスを更に容易にとることができる。
上記発明によれば、前記弾性部材は粘弾性体から形成されている。一般に、この粘弾性体は、外力が加えられて変形されると、その変形によって蓄えられる内部変形エネルギーの一部を熱に変換して消費する特性を有する。従って、弦の振動を有効に吸収可能であり、もって、前記鍵盤楽器が打弦時に発音する音色を確実に変更可能となる。
上記発明によれば、前記粘弾性体はソルボセインである。そして、このソルボセインは、人の指に似た質感をもっている。このため、あたかも人の指で弦を押さえたような状態を再現することができる結果、コントラバスの弦を指で弾いたような音色に、ピアノの音色を変更できる。よって、ピアノからコントラバスの音色を出すことが可能となり、ピアノ演奏の演出の幅を広げることができる。
上記発明によれば、鍵盤楽器が発音可能な全ての音高(例えば88ヶの音高)のうちの、一部の音高の音色が変更される。従って、例えば、これら一部の音高に対応する鍵盤を片手で弾きながら、前記音高以外の鍵盤を残るもう一方の手で弾くことによって、相異なる種類の音色を一人の奏者で奏でることができて、すなわち、一人で合奏を実施可能となる。その結果、鍵盤楽器の演出の幅を広げることができる。
上記発明によれば、高音域を鍵盤楽器本来の音色に維持しつつ、低音域の音高の音色を、例えば伴奏用の楽器の音色に変更可能である。よって、独奏でありながら、伴奏楽器を伴ったような演奏を行うことができて、独奏で可能な演出の幅を広げることができる。
上記発明によれば、一般に弦の振動が小さい、前記打弦点とアグラフとの間の部分に前記弾性部材が載置されている。従って、消音しない程度に、弦の振動を減衰させることができて、もって、音量を落とさずに有効に音色を変更可能となる。
また、取り付け時には、その弾性部材は、前記弦の並設方向へ移動できないので、打弦時の弦の振動によって前記弾性部材が前記並設方向へずれてしまうことは確実に防止される。従って、演奏中に予定外の音高の音色が変化したり、逆に変更していた音高が元の音色に戻ったりするのを有効に防ぐことができる結果、当該音色変換装置は、その音色の変更安定性に優れたものとなる。
上記発明によれば、前記音色変換装置を鍵盤楽器に取り付けた際には、その弾性部材は、前記弦の長手方向へ移動できないので、打弦時の弦の振動によって前記弾性部材が前記長手方向へずれてしまうことは確実に防止される。従って、演奏中に、弦の振動の吸収度合いが変化して音量が変化してしまうことが防止される結果、当該音色変換装置は、その音量の維持安定性に優れたものとなる。
上記発明によれば、上記請求項1乃至16と同様の作用効果を奏することができる。
図1乃至図4は、本発明を適用可能な鍵盤楽器の一例としての平型ピアノ(グランドピアノ)1の説明図である。図1は前記ピアノ1の外観図であり、図2は前記ピアノ1の支柱11及び響板21の斜視図であり、図3は前記ピアノ1のフレーム31を示す上面図である。また、図4は、低音域における鍵盤41とアクション機構51の側断面図である。
図2に示すように、支柱11は、前側が開放した異形U字状の曲練支柱12と、この曲練支柱12の開放端部に両端部を掛け渡された奥框13と、この奥框13の前側に隣接配置されつつ、前記開放端部に両端部を掛け渡された中框14と、を備えている。この曲練支柱12と奥框13とで囲まれた内側空間には、補強用に、例えば4本の直支柱15が配置されている。そして、このうちの1本の直支柱15については、その両端部は曲練支柱12及び奥框13に接続されており、残る3本については、各直支柱15の一端が、それぞれに曲練支柱12の内周面に接続される一方、残る他端は、これら他端を一つに結合する要16を介して前記奥框13に接続されている。
図2に示すように、響板21は、前記内側空間の平面形状とほぼ同形の板部材であり、その周縁部が、前記曲練支柱12及び中框3の上面に貼り込まれている。この響板21の上面における後方には、前記弦33と接触して前記響板21に前記弦33の振動を伝達するための長駒(不図示)及び短駒(不図示)が配置されている。なお、長駒は高音域側の弦33の振動を伝達するためのものであり、短駒は低音域側の弦33の振動を伝達するためのものである。
フレーム31は、その外郭形状が前記響板21とほぼ同形の略枠部材であり、その内周側には、複数の弦33が、チューニングピン34とフレームピン35とを介して略水平に張設されている。そして、このフレーム31が、前記曲練支柱12及び中框14に支持されて響板21の上方に配された状態において、各弦33は、前記長駒及び短駒のいずれか一方と当接するようになっている。なお、前記複数の弦33は、前記88ヶの各音高に対応させて並設されており、弦33の太さ、長さ、弦33の本数、及び、張力のうちのいずれかの設定を異ならせることによって、各音高の音が発せられるように調整されている。
前記奥框13の下面には、図4に示す棚板17が固定されている。そして、この棚板17上には鍵盤筬42が配設されており、その上には、各音高の弦33に対応する88鍵全ての鍵盤41が、その略中央部をバランスキーピン43により上下揺動自在に支持されて配置されている。なお、各音高の弦33は、鍵盤41の上方に配設された前記フレーム31に略水平に張設されている。弦33の下方には、全ての弦33に対して共通に左右に亘って延在するサポートレール44が、鍵盤41の後端部上方に位置している。このサポートレール44には、鍵盤41に連動して動作し対応する弦33を打弦する前記アクション機構51が配設されている。また、その後方には通常弦33の自由振動を阻止し、打弦時に弦33を解放するダンパー機構101が配設されている。
図4に示すように、アクション機構51は、鍵盤41の押鍵操作によって回動されるウイペン53と、弦33を打弦するハンマーアッセンブリ61と、押鍵操作に伴いウイペン53と共に上昇し前記ハンマーアッセンブリ61を突き上げ回動させるジャック71と、打弦動作後回動復帰してくるハンマーアッセンブリ61を受け止め初期位置に復帰させるレペティションレバー81と、打弦動作時に前記ジャック71をハンマーアッセンブリ61から一時的に脱進させるレギュレチングアッセンブリ91等で構成されている。
図5乃至図8は、本発明に係る音色変更装置111の一実施形態を説明するための図である。図5は音色変更装置111の斜視図であり、図6は、図5中のVI-VI線矢視の側面図である。また、図7は、音色変更装置111を取り付けていない状態のグランドピアノ1を、その左前方から見た斜視図であり、図8は、音色変更装置111を取り付けた状態を同方向から示す拡大斜視図である。
図5に示す音色変更装置111は、グランドピアノ1の音色を、所定範囲の音域(例えば、低音域に属する3オクターブ分の音高)について選択的にかつ一斉に変更するものであり、その概略構成は、剛性を有する長尺な本体113と、この本体113の下面を覆う弾性部材115とからなる。
以下、この音色変更装置111について詳細に説明する。
図5に示すように、前記本体113は、木製の略直方体の長尺部材であり、その長尺方向の全長は、前記所定範囲の音域(例えば、低音域に属する3オクターブ分の音高)の全ての弦33に当接可能な長さに設定されている。この長尺方向における所定位置の下面には、前後方向に貫通する溝部113aが形成されている。この溝部113aは、前記フレーム31の内側を前記前後方向に延びる前記リブ32に対する逃げであり、すなわち、リブ32に対応させて形成されている。そして、音色変更装置111を弦33に載置する際には、図8に示すように前記溝部113a内にリブ32を収めることによって、リブ32との干渉を回避している。なお、前記溝部32は、音色変更装置111の左右方向への移動を規制する係止部としても機能し、これによれば、音色変更装置111の弾性部材115は、左右方向へ移動できないので、例えば弦33の振動によって前記弾性部材115が左右の並設方向へずれてしまうことを確実に防止する。従って、前記音域の近隣の音高の音色が、演奏中に予定外に突然変化してしまったり、逆に、前記音域の両脇の音高の音色が突然ピアノ1の音色に戻ってしまったりすることを防ぐことができて、当該音色変換装置111は、その音色の変更安定性に優れたものとなっている。
前記弾性部材115は、例えば、粘弾性体から均等厚みに形成された可撓性のシート部材であり、図5及び図6に示すように、前記本体113の前面から後面にかけてU字状に渡されて前記本体113の下面を覆っている。そして、この覆った状態において、前面及び後面にビス117a止めされた前後一対のプレート117によって前記本体113に押し付け固定されている。このシート部材115の全長は、前記本体113の全長とほぼ同じであり、もって、前記溝部113aを除く本体113の全長に亘ってその下面を覆っている。
ここで、図8を参照しつつ、音色変更装置111の一使用例について説明する。なお、この使用例は一例であって、なんらこれに限るものではない。
図9は、音色変更装置111の第1変形例を示す斜視図である。前述した実施形態の音色変更装置111は、前記フレーム31のリブ32を逃げるための溝部113aを有していたが、この第1変形例の音色変更装置121は、溝部113aを有していない点で主に相違する。なお、リブ32を有していないのは、変更対象の音域が前述の実施形態とは異なり、前記リブ32とは干渉せずに、音色変更装置111を弦33に載置できるからである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
33 弦
41 鍵盤
64 ハンマー
111 音色変更装置
113 本体
115 弾性部材、シート部材
Claims (17)
- 複数の鍵盤と、前記鍵盤毎に対応させて並設された複数の音高の弦と、操作された鍵盤に対応する前記弦を打弦するハンマーと、を備えた鍵盤楽器に使用され、打弦時に前記鍵盤楽器が発音する音色を変更するための音色変更装置であって、
音色を変更すべき音高の全ての弦に、少なくとも前記打弦時の前後に亘って当接して前記弦の振動を吸収するための弾性部材を備えていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項1に記載の音色変更装置において、
剛性を有する本体を備え、
前記弾性部材は、前記本体における前記弦と対向する面を覆って該本体に固定されていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項2に記載の音色変更装置において、
前記弾性部材は、可撓性を有するシート部材であり、
前記対向する面と前記シート部材との間には、隙間が設けられていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項3に記載の音色変更装置において、
前記シート部材における、前記弦の長手方向に関する略中央が前記弦側に向けて凸状になるように、前記隙間は設定されていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項2乃至4のいずれかに記載の音色変更装置において、
前記本体は、前記弦の並設方向に長尺な部材であり、
音色を変更すべき複数の音高の全ての弦に当接可能な長さに設定されていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の音色変更装置において、
前記音色変更装置は、振動中の弦から前記弾性部材が離れないような押し付け力で前記弦に押し付けられていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項6に記載の音色変更装置において、
前記音色変更装置は、略水平に張設された前記弦に載置されており、
該音色変更装置は、剛性を有する本体を備え、前記弾性部材は、前記本体の下面を覆って該本体に固定され、
前記本体の重量は、振動中の弦から前記弾性部材が離れないような重さに設定されていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項7に記載の音色変更装置において、
前記本体には、前記弦の並設方向に沿って複数の孔が設けられていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項8に記載の音色変更装置において、
前記複数の孔のうちの幾つかの孔には、錘が詰められていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項1乃至9のいずれかに記載の音色変更装置において、
前記弾性部材が粘弾性体から形成されていること特徴とする音色変更装置。 - 請求項10に記載の音色変更装置において、
前記鍵盤楽器がピアノであるとともに、
前記粘弾性体がソルボセイン(登録商標)であること特徴とする音色変更装置。 - 請求項1乃至11のいずれかに記載の音色変更装置において、
前記音色を変更すべき音高は、前記鍵盤楽器が発音可能な全ての音高のうちの一部の音高であることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項12に記載の音色変更装置において、
前記一部の音高は、低音域において互いに隣り合う複数の音高から構成され、前記音高よりも高音域の音高には、前記弾性部材が設けられないことを特徴とする音色変更装置。 - 請求項1乃至13のいずれかに記載の音色変更装置において、
前記鍵盤楽器は、前記弦の一端と他端とを固定して前記弦を張設するフレームを有し、
前記弦における前記一端に近い部分には、前記弦の振動を響板に伝達するための駒が配置され、前記ハンマーの打弦点は、前記弦における他端に近い部分に設定されるとともに、前記打弦点と前記他端との間には、前記弦を通す孔を有するアグラフが設けられ、
前記弦における、前記ハンマーの打弦点と前記アグラフとの間の部分に、前記弾性部材が載置されることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項14に記載の音色変更装置において、
前記フレームは閉じた枠形状であり、
該フレームの内周側には、前記弦が略水平に張設されているともに、前記弦の上方には補強用の複数のリブが掛け渡され、
前記音色変更装置は、該音色変更装置を、前記打弦点近傍の前記リブに上方から下降させて該リブに係止させるための係止部を備え、
前記リブと前記係止部との係止状態においては、前記弾性部材は、前記弦の並設方向への移動が規制されていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項15に記載の音色変更装置において、
前記係止状態においては、前記弾性部材は、前記弦の長手方向への移動が規制されていることを特徴とする音色変更装置。 - 請求項1乃至16に記載の音色変換装置を備えていることを特徴とするピアノ。
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