JP2006002263A - ポリケトン繊維コードおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1) 主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成されたポリケトン繊維を含む撚糸コードであって、該コードの撚り縮み率が式、撚り縮み率≦1.8×10-4×K+1.3×10-8×K2 (ただし、式中のKは撚り係数で、K=Y×D0.5 で表され、Yは繊維コード1mあたりの撚り数(T/m)、Dは繊維コードの総繊度(dtex)である。)を満足するポリケトン繊維コード。(2) 主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成されたポリケトン繊維を撚糸してポリケトン繊維コードを製造する際に、該ポリケトン繊維の撚糸時張力を0.08〜0.7cN/dtexにするポリケトン繊維コードの製造方法。
【選択図】 なし
Description
ここで、撚糸コードとは、糸1本またはそれ以上引きそろえて撚りを加え(これを下撚りという)、これをさらに2本以上引きそろえて下撚りと反対方向に撚り(これを上撚りという)を掛けたコードをいう。
工業材料、12月号、第5ページ、1997年
このような不均一な撚り構造は、撚り縮み率で定量化することができる。撚り縮み率は(撚糸後のコード長/撚糸前の繊維長)×100で表される値であり、不均一な構造を有する撚糸では、例えば390T/mの場合、この値は10より大きくなる。このような撚り縮み率の大きいコードを補強材として使用すると、材料中で力がコード全体に伝わらず、特定の部位に集中するために耐疲労性が低下し易いという問題があった。
すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
撚り縮み率≦1.8×10-4×K+1.3×10-8×K2 …(1)
(ただし、式中のKは撚り係数で、K=Y×D0.5 で表され、Yは繊維コード1mあたりの撚り数(T/m)、Dは繊維コードの総繊度(dtex)である。)
(2)前記ポリケトン繊維を構成するポリケトンの極限粘度が0.5〜10dl/gであり、かつ前記撚糸コードのコード伸度4%時の強度が2.3〜20cN/dtexであることを特徴とする(1)に記載のポリケトン繊維コード。
(3)前記式(1) の撚り係数Kが1000〜30000であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン繊維コード。
(4)前記ポリケトン繊維コードが、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス樹脂により処理されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリケトン繊維コード。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリケトン繊維コードを用いた繊維強化複合材料。
(7)主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成されたポリケトン繊維を下撚りして巻きとり後、該下撚り糸を2本以上合わせ、上撚りしてポリケトン繊維コードを製造する際に、該下撚りと上撚りにおけるポリケトン繊維の撚糸時張力を0.08〜0.7cN/dtexにすることを特徴とするポリケトン繊維コードの製造方法。
(8)主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成された複数本のポリケトン繊維を別々に撚糸し、得られた下撚り糸を巻き取ることなく互いに撚り合わてポリケトン繊維コードを製造する際に、該ポリケトン繊維の撚糸時張力を0.08〜0.7cN/dtexにすることを特徴とするポリケトン繊維コードの製造方法。
−R−C− …(2)
‖
O
ただし、式中のRはエチレン以外の1〜30の有機基であり、例えばプロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。またRは2種以上であってもよく、例えば、プロピレンと1−フェニルエチレンが混在していてもよい。高強度、高弾性率が達成可能で、高温での安定性が優れるという点から、1−オキソトリメチレン単位は全繰り返し単位の97モル%以上であるのが好ましく、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。なお、式(2) でRがエチレン(−CH2 CH2 −)である場合に1−オキソトリメチレン単位となる。
また、これらのポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。
撚り縮み率≦1.8×10-4×K+1.3×10-8×K2 …(1)
撚り縮み率≦1.70×10-4×K+1.22×10-8×K2 …(3)
ただし、式中のKは撚り係数と呼ばれ、K=Y×D0.5 で示される。ここで、Yは繊維コード1mあたりの撚り数(T/m)、Dは繊維コードの総繊度(dtex)である。この総繊度は、撚糸に用いた全ポリケトン繊維の繊度の和である。例えば、1660dtexのポリケトン繊維を3本撚り合わせた場合、撚糸物の総表示繊度は4980dtex(1660×3)となる。複数のポリケトン繊維を撚り合わせ、下撚り、上撚り等の多段の撚りを加えた場合、最後に加えた撚りの回数を撚り数Yとして撚り係数を算出する。通常、Kは、撚り数Yが20〜500T/m、耐疲労性の観点から好ましくは100〜450T/m、総繊度Dが50〜300000dtexから算出される値である。
撚り縮み率が式(1) の右辺の値を超えると、繊維強化材料の補強材として使用した場合、力が繊維全体に伝達されず、特定の部位に力が集中するため、耐疲労性が低下する。
また、本発明において、ポリケトン繊維コードを構成するポリケトンの極限粘度は0.5〜10dl/gであることが好ましく、より好ましくは2〜10dl/g、特に好ましくは2.3〜5dl/gである。この極限粘度が0.5dl/g未満では分子量が低すぎて耐疲労性が低下する場合がある。一方、極限粘度が10dl/gを超えると、強度が低くなる場合がある。
さらに、本発明のポリケトン繊維コードは、耐疲労性、剛性向上の点から、コード伸度が4%のときの強度が2.3〜20cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは2.5〜20cN/dtex、さらに好ましくは3〜20cN/dtexである。コード伸度4%時の強度は、コードの弾性率を示す尺度であり、この値が高いほど、撚糸にゆるみがなく、均質な撚糸が達成される。
以下、ハロゲン化亜鉛水溶液を溶剤とした湿式紡糸法を例にして、ポリケトン繊維の製造法について説明する。
溶剤に用いるハロゲン化亜鉛化合物としては、溶解性、溶媒のコスト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛が好ましい。また必要に応じて、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を60重量%以下で含んでいてもよく、ドープの溶解性、熱安定性、紡糸性の観点から塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの金属塩を5〜30重量%含有したドープが好ましい。このポリケトンドープを紡糸口金より吐出し、必要に応じてエアーギャップ部を経て凝固浴を通して糸状物とする。凝固浴の組成は、メタノール、アセトン等の有機溶剤、水、有機物水溶液、無機物水溶液等どのようなものであってもよいが、水を含んだ溶液が好ましい。このようにして得た糸状物を必要に応じては金属塩を洗浄し、乾燥、延伸を行う。延伸は、通常融点以下の温度で行われ、延伸倍率はトータルで10倍以上、特に15倍以上の熱延伸を行うことが好ましく、延伸温度を徐々に高くしていく多段延伸法が好適に用いられる。
撚糸方法は、リング撚糸機を用いてポリケトン繊維を一旦下撚りした後、巻きとり、得られた下撚り糸を2本以上合わせて上撚りする方法であっても、直撚糸機を用いて2本のポリケトン繊維を別々に撚糸し、得られた下撚り糸を巻き取ることなく、その後互いに撚り合わせる方法であってもよい。
撚糸数についても単糸繊度や総繊度によって変化するため特に制限はなく、加工条件、使用環境に応じて任意に撚糸数を選定すればよい。例えば、単糸繊度が0.01〜10dtex、総繊度が30〜100000dtexであるポリケトンマルチフィラメントからなる撚糸コードの場合には、K=Y×D0.5 で表される撚り係数Kが1000〜30000の範囲で撚糸されたものが、強度発現、耐疲労性の観点から好ましい。ここでYは撚糸コード1mあたりの撚り数(T/m)、Dは撚糸コードの総繊度(dtex)である。
以上の方法で得られたポリケトン繊維は、高強度、高弾性率および高撚糸強力利用率の優れた力学物性を有し、これを撚糸物とした際には原糸の強度を高いレベルで維持し、耐疲労性に優れるため、高強度繊維材料として有用である。特に、タイヤコードやホース、ベルト等のゴム補強材料、ロープ、ネット、漁網等の繊維を強撚して用いる産業資材用分野において極めて有用である。
1)極限粘度:極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求めた。
[η]=lim(T−t)/(t・C)
C→0
定義式中のtおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよび該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。また、Cは上記100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
2)強度、伸度、弾性率:JIS−L−1013に準じて測定した。
3)コードの撚り縮み率:JIS−L−1017に準じて測定した。
4)撚糸強力利用率:下記式により算出した。
(撚糸後の撚糸強度/撚糸前の原糸強度)×100(%)
ポリケトン繊維コードを、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(レゾルシン22部、30重量%ホルマリン水溶液30重量部、水酸化ナトリウム10重量%水溶液、水570重量部、ビニルピリジンラテックス41重量部)で処理し、RFL処理コードとした。このコードを天然ゴム70%、SBR15%、カーボンブラック15%配合の未加硫ゴム中に25本/インチで上下2層に配列し、加硫を行い(加硫条件:135℃、35kg/cm2 、40分)、厚さ8mmのベルトを得た。
このベルトを用いてJIS−L1017−2.1(ファイアストン法)に従い、圧縮・曲げ疲労試験を行った(荷重:50kg、ベルト走向速度:100rpm、試験回数:20000回、圧縮率85%)。試験後、圧縮側のコードを取り出し、疲労試験前のコードに対する強度保持率(%)を耐疲労性とした。
6)撚糸時張力:
繊維が実際に撚りを受ける部分の張力をSHIMPO社製の張力計DT−01(張力10N以下)またはDT−05(張力1kg以上)を用いて測定した。
塩濃度62重量%の塩化カルシウム/塩化亜鉛の混合塩(塩化カルシウム/塩化亜鉛の重量比は64.5/35.5)水溶液に、極限粘度7.0dl/gのポリ(1−オキソトリメチレン)を6.5重量%となるように30℃で混合し、1.3kPaまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを85℃で2時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液(相分離温度は、30℃である。)を得た。得られたポリケトン溶液を20μmのフィルターに通過させた後、直径0.15mmの穴が250個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、85℃、5m/分の速度で押し出し、エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま2℃の水である凝固浴中を通した後、5m/分の速度でネルソンロールを用いて引き上げた(凝固ドラフト=1.0)。次いでそのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、さらに1%の塩酸浴を通して5m/分の速度でネルソンロールを用いて引き上げた後、そのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、220℃のホットプレート上を通して乾燥後、5m/分で巻き取った(乾燥ドラフト=1.0)。この繊維6本合わせて225℃で7.5倍、240℃で1.5倍、250℃で1.4倍、257℃で1.35倍の4段延伸(総熱延伸倍率=17)を行い、仕上げ剤を1.6重量%付着させ、張力0.1cN/dtexで巻き取りポリケトン繊維を得た。
得られたポリケトン繊維は、総繊度1630dtex、単糸繊度1.2dtex、強度18.5cN/dtex、伸度5.1%、弾性率412cN/dtexであった。
参考例1で製造したポリケトン繊維を用い、表1に示す下撚り張力と上撚り張力に設定してポリケトン繊維コードを作製した。具体的には、カジ鉄工社製のリング撚糸機を用いて下撚りを行い、一旦巻き取った後、得られた下撚り糸を2本合わせて上撚りを行った。撚り数は上撚り、下撚りともに390T/mとした。このときの撚り係数Kは22268で式(1) の右辺値は10.5であった。
実施例1〜3では撚糸張力が適切に設定されているため、ポリケトン繊維コードの撚り縮み率が小さく上記式(1) を満足し、いずれも均質な撚り構造をし、撚糸強力利用率、耐疲労性にも優れていた。一方、撚糸張力を0.02cN/dtexと小さくした比較例1では、よりが不均一であり、撚り縮み率が高くなった。また、撚糸張力が高い比較例2では、撚りが不均一で毛羽の発生が大きかった。またいずれの比較例においても強度、弾性率、耐疲労性の低下が見られた。
参考例1で製造したポリケトン繊維を用いてアルマ社製の直撚糸機により、表2に示す条件で下撚りと上撚りを同時に行った。撚り数は上撚り、下撚りともに390T/mとした。撚り係数Kは22268で式(1) の右辺値は10.5であった。
実施例4〜6では撚糸張力が適切に設定されているため、ポリケトン繊維コードの撚り縮み率が小さく上記式(1) を満足し、いずれも均質な撚り構造をし、撚糸強力利用率、耐疲労性にも優れていた。一方、撚糸張力を0.02cN/dtexと小さくした比較例3では、よりが不均一であり、撚り縮み率が高くなった。また、撚糸張力が高い比較例4では、撚りが不均一で毛羽の発生が大きかった。またいずれの比較例においても強度、弾性率、耐疲労性の低下が見られた。
Claims (8)
- 主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成されたポリケトン繊維を含む撚糸コードであって、該コードの撚り縮み率が下記式(1) を満足することを特徴とするポリケトン繊維コード。
撚り縮み率≦1.8×10-4×K+1.3×10-8×K2 …(1)
(ただし、式中のKは撚り係数で、K=Y×D0.5 で表され、Yは繊維コード1mあたりの撚り数(T/m)、Dは繊維コードの総繊度(dtex)である。) - 前記ポリケトン繊維を構成するポリケトンの極限粘度が0.5〜10dl/gであり、かつ前記撚糸コードのコード伸度4%時の強度が2.3〜20cN/dtexであることを特徴とする請求項1に記載のポリケトン繊維コード。
- 前記式(1) の撚り係数Kが1000〜30000であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリケトン繊維コード。
- 前記ポリケトン繊維コードが、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス樹脂により処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリケトン繊維コード。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリケトン繊維コードを用いた繊維強化複合材料。
- 主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成されたポリケトン繊維を撚糸してポリケトン繊維コードを製造する際に、該ポリケトン繊維の撚糸時張力を0.08〜0.7cN/dtexにすることを特徴とするポリケトン繊維コードの製造方法。
- 主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成されたポリケトン繊維を下撚りして巻きとり後、該下撚り糸を2本以上合わせ、上撚りしてポリケトン繊維コードを製造する際に、該下撚りと上撚りにおけるポリケトン繊維の撚糸時張力を0.08〜0.7cN/dtexにすることを特徴とするポリケトン繊維コードの製造方法。
- 主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位で構成された複数本のポリケトン繊維を別々に撚糸し、得られた下撚り糸を巻き取ることなく互いに撚り合わてポリケトン繊維コードを製造する際に、該ポリケトン繊維の撚糸時張力を0.08〜0.7cN/dtexにすることを特徴とするポリケトン繊維コードの製造方法。
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