JP2006002202A - 透明導電性薄膜製造用スパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 スパッタリングターゲットの強度を向上させることができ、スパッタリングターゲットの割れがなく、高密度のスパッタリングターゲットを製造することが可能な透明導電性薄膜製造用スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】 比表面積が1m2/g以上20m2/g以下である酸化インジウム粉末に、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)およびタングステン(W)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の金属粉末または酸化物粉末を混合し、得られた混合粉末を使用して、ホットプレスを行う。好ましくは、酸化インジウム粉末の比表面積が、15m2/g以下であり、さらに好ましくは、6m2/g以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、太陽電池などに用いられる低抵抗の透明導電性薄膜を、スパッタリング法で製造する際に使用されるスパッタリングターゲットおよびその製造方法に関する。
透明導電性薄膜は、高い導電性と高い透過率を有し、太陽電池や液晶表示素子、その他、各種の受光素子の電極などに利用されるほか、自動車窓ガラスや建築用の熱線反射板、帯電防止膜、防曇用の透明発熱体としても利用されている。
特に、錫をドーパントとして含む酸化インジウム膜、すなわちIn23−Sn系膜は、ITO(Indium Tin Oxide)膜と称され、低抵抗の透明導電性薄膜が容易に得られることから、よく用いられている。
しかしながら、前記ITO膜は、キャリア濃度が非常に高いため、赤外波長領域での透過率が低いという問題点を有する。これに対して、例えば特開2002−256424号公報には、赤外波長領域での透過率の低下が非常に少なく、しかもITO膜と同等の低抵抗を有する透明導電性薄膜を、酸化インジウムを主成分として、酸化タングステンを0.1〜10質量%含むスパッタリングターゲットから製造できることが示されている。
これらの透明導電性薄膜の製造方法としては、特開昭59−204625号公報に記載されているようにスパッタリング法がよく用いられる。スパッタリングターゲットとして使用される焼結体は、相対密度が95%以上であることが好ましい。スパッタリングターゲットの相対密度が95%未満であると、長時間、スパッタリングした場合、エロージョン近傍に突起物(ノジュール)が発生して、成膜中にアーキングが起きやすくなる。このように、成膜中にアーキングが発生すると、膜質が悪化して、低抵抗の透明導電性薄膜が製造できない。ノジュールおよびアーキングの生じやすさは、本発明者の実験によると、焼結体であるスパッタリングターゲットの相対密度と密接に関連があり、スパッタリングターゲットの相対密度を95%以上にすることで、ノジュールおよびアーキングの発生を効果的に抑制できる。
ITOスパッタリングターゲットの製造に用いられる常圧焼結法を、前記酸化インジウムを主成分として、酸化タングステンを0.1〜10質量%含むスパッタリングターゲットの製造に用いても、該ターゲットの密度が上がり難く、95%以上の密度を有する製品を、安定に生産することが困難である。
また、ホットプレス法を用いた場合には、前記スパッタリングターゲットの密度は上がるものの、スパッタリングターゲットが割れやすいという問題がある。この対策として、ホットプレス中の圧力を低下させれば、スパッタリングターゲットの割れは抑制されるものの、スパッタリングターゲットの密度が低下するという問題があり、高密度の製品を安定に生産することが困難である。
特開昭59−204625号公報
特開2002−256424号公報
本発明の目的は、スパッタリングターゲットの強度を向上させることができ、スパッタリングターゲットの割れがなく、高密度のスパッタリングターゲットを製造することが可能な透明導電性薄膜製造用スパッタリングターゲットの製造方法を提供することである。
本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、比表面積が1m2/g以上20m2/g以下である酸化インジウム粉末に、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)およびタングステン(W)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の金属粉末または酸化物粉末を混合し、得られた混合粉末を使用して、ホットプレスを行う。
好ましくは、主成分である酸化インジウム粉末の比表面積が、15m2/g以下であり、さらに好ましくは、6m2/g以下である。
本発明は、酸化インジウムを主成分として、酸化タングステンを含み、赤外波長領域での透過率の低下が非常に少ないスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを主眼としてなされたものであるが、同様の課題を有し、酸化インジウムを主成分として、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)およびタングステン(W)からなる群より選ばれた一種以上の金属の酸化物または複合酸化物を含むスパッタリングターゲットを製造する方法としても、同様の効果が得られる。
本発明によるスパッタリングターゲットは、前記のいずれかの製造方法で作製される。
本発明により、得られるスパッタリングターゲットの強度を向上させることができ、スパッタリングターゲットの割れを抑制し、安定に生産することが可能となった。また、強度向上により、ホットプレス中の圧力を高めても、スパッタリングターゲットの割れがなく製造できるため、高密度のスパッタリングターゲットを製造することができた。さらに、成膜に際して効果的にノジュールおよびアーキングの発生を抑えることができた。
本発明者は、主成分に使用する酸化インジウム粉末の比表面積の違いにより、製造されたスパッタリングターゲットの強度について、検討を行い、比表面積の小さい酸化インジウム粉末を使用することにより、製造されたスパッタリングターゲットの強度が向上することを見出し、本発明に至った。
本発明は、主成分である酸化インジウム粉末に、比表面積が1m2/g以上20m2/g以下の酸化インジウム粉末を使用し、諸添加物(Si、Ti、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Ru、SnおよびW)を混合させて、混合粉末とする。比表面積が20m2/g以下の酸化インジウム粉末を用いることにより、スパッタリングターゲットの割れを抑制することができるが、比表面積を15m2/g以下とすることが好ましく、比表面積を6m2/g以下にすることが最も好ましい。
比表面積が6m2/g以下の酸化インジウムを使用すると、得られるスパッタリングターゲットの強度が増すため、ホットプレス中の圧力を高めてもスパッタリングターゲットの割れがなく安定に製造できる。なお、スパッタリングターゲットの強度は、実用上25N/mm2以上であれば十分である。
比表面積が20m2/gを超える酸化インジウム粉末を用いた場合にも、ホットプレスによって、スパッタリングターゲットの製造は可能であるが、得られる焼結体の表面と内部に密度のむらが生じるため割れが発生し易く、また割れを解消するためにホットプレスの圧力を下げることもできるが、得られる焼結体の密度が低くなるという問題を生ずる。
本発明により得られるスパッタリングターゲットは、ホットプレス中の圧力を高めたことにより、高密度のスパッタリングターゲットとなり、成膜に際しては効果的にノジュールおよびアーキングの発生を抑えることができる。
諸添加物(Si、Ti、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Ru、SnおよびW)を添加するのは、ITO膜と同等程度の低抵抗を有する透明導電性膜を得るためである。特にタングステンを添加したものはITO膜より赤外波長域で透過率が高くなる効果がある。本発明において、酸化インジウム粉末に対する諸添加物の添加量は0.1〜10.0質量%、望ましくは0.5〜5.0質量%であることが好ましい。これは、諸添加物の添加量が0.1質量%以下または10.0質量%以上となると、透過率の低下および抵抗値の増加を招くためである。
さらに、諸添加物(Si、Ti、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Ru、SnおよびW)の粉末も、比表面積を1〜20m2/gとすることが好ましい。これは、主成分である酸化インジウム粉末の比表面積と大きな差があると、その凝集や分散に差が発生するため焼結性に問題が生じ高密度を得られにくくなるからである。
上述のように、酸化インジウム粉末および諸添加物の粉末いずれにおいても、比表面積が小さい程スパッタリングターゲットの密度は向上するが、比表面積が1m2/g未満の場合にはスパッタリングターゲットの焼結性に問題が生じ、特に焼結体中に粗大な空孔が生じやすくなるので好ましくない。
本発明では、相対密度が95%以上の高密度で、かつ、焼結体の強度が25N/mm2以上のスパッタリングターゲットを作製するため、ホットプレス法を採用する。ホットプレス法では得られた混合粉末を、ホットプレス型に入れ、不活性雰囲気中でホットプレスにより加圧成形する。本発明においては、以下に記載するホットプレスの条件が、好ましい。
・雰囲気
ホットプレス時に、ホットプレス型を用いるが、通常、ホットプレス型は黒鉛製である。従って、ホットプレス型の酸化による劣化を防止するために、不活性ガス雰囲気中または真空中で、ホットプレスを行うことが好ましい。
なお、黒鉛型は、要求されるスパッタリングターゲットのサイズにより任意に選択することができる。
・温度および圧力
ホットプレス時の温度と圧力は、得られるスパッタリングターゲットの密度に影響を及ぼす。本発明では、到達温度を750℃以上1200℃以下とし、圧力を4.9MPa以上(50kgf/cm2)、好ましくは9.8MPa以上(100kgf/cm2)とすることが好ましい。
到達温度が750℃以上1200℃の場合では、圧力を4.9MPa(50kgf/cm2)以上にすれば、得られるスパッタリングターゲットの相対密度は95%以上のものが得られるが、安定的に密度が95%以上とするためには、9.8MPa(100kgf/cm2)以上の圧力を加えることが好ましい。到達温度が750℃未満であると、製造されたスパッタリングターゲットの相対密度が95%に満たず、強度も不十分なものとなる。1200℃以上では、酸化インジウムが還元されメタル層が析出し、黒鉛型に溶着するなどの不都合が生じる。
また、本発明の透明導電性薄膜製造用スパッタリングターゲットを用いて、透明導電性薄膜を得るには、スパッタリングターゲットを加工して、ロウ材等を用いてバッキングプレートに貼り付けて、使用する。
(実施例1)
比表面積19.3m2/gのIn23粉末に、比表面積4m2/gの金属タングステン粉末を2質量%となるように調合して、樹脂製ポットに入れ、三次元混合機にて混合を行った。混合時間は、1時間とした。さらに、黒鉛製の152.4mmφ(6インチφ)のホットプレス型に、得られた混合粉末を入れ、Ar雰囲気中で、850℃×3時間のホットプレスを行なった。ホットプレス時の圧力は、14.7MPa(150kgf/cm2)、昇温速度は5℃/分とした。
得られた焼結体の密度は7.06g/cm3で、相対密度は98%であった。さらに、得られた焼結体を、40×10×5mm(長さ×幅×厚み)に切り出し、三点曲げ試験を行った。支点間距離20mm、ヘッドスピード0.5mm/分とした。その曲げ強度は、38.1N/mm2であった。
(実施例2)
In23粉末の比表面積を12m2/gとした以外は、実施例1と同様に焼結体を製造した。得られた焼結体の密度は7.06g/cm3で、相対密度は98%であった。さらに、実施例1と同様の三点曲げ試験を行ったところ、曲げ強度は、40.1N/mm2であった。
(実施例3)
In23粉末の比表面積を5.6m2/gとした以外は、実施例1と同様に焼結体を製造した。得られた焼結体の密度は7.05g/cm3で、相対密度は98%であった。さらに、実施例1と同様の三点曲げ試験を行ったところ、曲げ強度は、46.7N/mm2であった。
(実施例4)
比表面積19.3m2/gのIn23粉末に、比表面積10m2/gの酸化タングステン粉末を1質量%と比表面積4m2/gの金属ゲルマニウム粉末を1質量%となるように調合して、樹脂製ポットに入れ、三次元混合機にて混合を行った。混合時間は、1時間とした。さらに、黒鉛製の152.4mmφ(6インチφ)のホットプレス型に、得られた混合粉末を入れ、Ar雰囲気中で、900℃×3時間のホットプレスを行なった。ホットプレス時の圧力は、14.7MPa(150kgf/cm2)、昇温速度は5℃/分とした。
得られた焼結体の密度は6.75g/cm3で、相対密度は95%であった。さらに、実施例1と同様の三点曲げ試験を行ったところ、曲げ強度は、52.4N/mm2であった。
(実施例5)
比表面積19.3m2/gのIn23粉末に、比表面積10m2/gの酸化タングステン粉末を1質量%と比表面積8m2/gの金属シリコン粉末を1質量%となるように調合して、樹脂製ポットに入れ、三次元混合機にて混合を行った。混合時間は、1時間とした。さらに、黒鉛製の152.4mmφ(6インチφ)のホットプレス型に、得られた混合粉末を入れ、Ar雰囲気中で、900℃×3時間のホットプレスを行なった。ホットプレス時の圧力は、14.7MPa(150kgf/cm2)、昇温速度は5℃/分とした。
得られた焼結体の密度は6.90g/cm3で、相対密度は96%であった。さらに、実施例1と同様の三点曲げ試験を行ったところ、曲げ強度は、46.5N/mm2であった。
(比較例1)
In23粉末の比表面積を0.8m2/gとした以外は、実施例1と同様に焼結体を製造した。得られた焼結体の密度は6.75g/cm3で、相対密度は94%と密度が低かった。
(比較例2)
In23粉末の比表面積を36m2/gとした以外は、実施例1と同様に焼結体を製造した。実施例1と同様にホットプレスを行ったところ、何度、繰り返しても、割れが発生した。割れた破片を実施例1と同様のサイズに切り出し同様の三点曲げ試験を行ったところ、曲げ強度は、32.3N/mm2であり、強度が実施例1から3と比較して低かった。
(比較例3)
In23粉末の比表面積を36m2/gとし、ホットプレス時の圧力を4.9MPa(50kgf/cm2)とした以外は、実施例1と同様に焼結体を製造した。比較例3は、ホットプレス時の圧力を変更した以外、比較例2と同様であるが、比較例2でホットプレス中に発生していた割れが発生しなくなった。しかし、得られた焼結体の密度は6.52g/cm3で、相対密度は91%であり、密度が低かった。
(比較例4)
In23粉末の比表面積を80.6m2/gとした以外は、実施例1と同様に焼結体を製造した。実施例1と同様にホットプレスを行ったところ、何度、繰り返しても、割れが発生した。割れた破片を実施例1と同様のサイズに切り出し同様の三点曲げ試験を行ったところ、22.1N/mm2であり、強度が実施例1から3と比較して低かった。
図1に、実施例1から3、比較例2および比較例4で得られた焼結体について、三点曲げ試験による曲げ強度と、使用した酸化インジウム粉末の比表面積との関係をグラフで示した。
酸化インジウム粉末の比表面積を20m2/g以下とすることにより、曲げ強度を高くでき、15m2/g以下とすることにより、より高く、さらに、1m2/g以上6m2/g以下とすることにより、最も高くすることが可能となった。
実施例1から3、比較例2および比較例4で得られた焼結体について、三点曲げ試験による曲げ強度と、使用した酸化インジウム粉末の比表面積との関係を示したグラフである。

Claims (5)

  1. 比表面積が1m2/g以上20m2/g以下である酸化インジウム粉末に、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)およびタングステン(W)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の金属粉末および/又は酸化物粉末を混合し、得られた混合粉末を使用して、ホットプレスを行うことによりスパッタリングターゲットを製造する方法。
  2. 酸化インジウム粉末の比表面積が、15m2/g以下である請求項1に記載のスパッタリングターゲット製造方法。
  3. 酸化インジウム粉末の比表面積が、6m2/g以下である請求項1に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 上記の少なくとも一種以上の金属粉末および/又は酸化物粉末がタングステン(W)であることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 請求項1〜4の製法にて製造されたスパッタリングターゲット。
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CN105986230B (zh) * 2014-09-10 2018-11-02 吉坤日矿日石金属株式会社 氧化物烧结体、溅射靶和薄膜以及氧化物烧结体的制造方法
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