JP2005538942A - 成体の神経幹又は前駆体細胞に関するpacap、vip及びマキサディランの機能的役割及び治療への使用可能性 - Google Patents

成体の神経幹又は前駆体細胞に関するpacap、vip及びマキサディランの機能的役割及び治療への使用可能性 Download PDF

Info

Publication number
JP2005538942A
JP2005538942A JP2004500899A JP2004500899A JP2005538942A JP 2005538942 A JP2005538942 A JP 2005538942A JP 2004500899 A JP2004500899 A JP 2004500899A JP 2004500899 A JP2004500899 A JP 2004500899A JP 2005538942 A JP2005538942 A JP 2005538942A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pacap
nsc
cells
maxadilan
cell
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2004500899A
Other languages
English (en)
Inventor
メルセル,アレックス
パトローネ,セザーレ
ロンホルム,ハリエット
ヴィクストロム,リリアン
Original Assignee
ニューロノヴァ アーベー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ニューロノヴァ アーベー filed Critical ニューロノヴァ アーベー
Publication of JP2005538942A publication Critical patent/JP2005538942A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/1767Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from invertebrates
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/18Growth factors; Growth regulators
    • A61K38/1808Epidermal growth factor [EGF] urogastrone
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/18Growth factors; Growth regulators
    • A61K38/1858Platelet-derived growth factor [PDGF]
    • A61K38/1866Vascular endothelial growth factor [VEGF]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/22Hormones
    • A61K38/2278Vasoactive intestinal peptide [VIP]; Related peptides (e.g. Exendin)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia

Abstract

【解決手段】
本発明は、一般的には、CNS障害の治療に有用な子孫を産生するために、中枢神経系細胞に作用する方法に関する。より具体的には、本発明は、前記障害をもつ患者に対し、PACAP、マキサディラン又はVIPのシグナル伝達を通じて、中枢神経系細胞の増殖、移動、分化及び生存を調節する試薬を曝露することを含んでいる。これらの方法は、障害の少なくとも1つの症状を低減するのに有用である。

Description

<関連出願>
この出願は、2002年5月3日に出願された米国出願番号第60/377,734号、2002年7月2日に出願された米国出願番号第60/393,264号及び2002年11月15日に出願された米国出願番号第60/426,827号の優先権を主張する。これら出願の内容は、引用を以て本願への記載加入とする。
<発明の分野>
本発明は、一般的には、損傷又は欠失したニューロン若しくは他の中枢神経系(CNS)細胞タイプの代替となる子孫を作るために、成人の神経幹細胞及び神経前駆体細胞に影響を及ぼす方法に関するものである。より具体的には、本発明は、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性ポリペプチド(PACAP)、マキサディラン(Maxadilan)又はVIPのシグナル伝達を調節(modulation)することにより、中枢神経系細胞の分化、増殖、生存及び移動を調節する試薬を、疾病に罹患した患者に投与する方法を含んでいる。これらの方法は、神経障害の少なくとも一つの症状を低減するのに有用である。
この明細書では、技術の内容や状況を説明するのに、様々な特許、公開特許出願及び科学文献を引用している。これらの開示は、引用を以て本明細書への記載加入とする。
ここ数年の間に、神経幹細胞は、成体の哺乳類の脳に存在することが知られるようになった。この概念は特に重要であるが、それは、成人の脳の再生能力はごく限られたものであると考えられていたからである。さらにまた、組織修復のために成人の幹細胞を使用できると、胚細胞研究に関連する倫理的問題を解消するのに役立つことができる。ニューロンやグリアの発生は、成人の脳の中で観察することはできるが、生体外及び生体内でのヒトの神経幹細胞の刺激についての知識は非常に限られている。
新しいニューロンが成体の哺乳類の脳で生まれていたという最初の提案は、1960年代に行われた研究からもたらされたものである[Altman and Das 1965;Altman and Das 1967]。しかしながら、さらなる30年が経過すると、技術的手法が改良され、哺乳類のCNS内での神経発生(neurogenesis)は胚形成時期及び周産期に制限されるという定説が覆された[Momma,Johansson et al.2000; Kuhn and Svendsen 1999参照]。神経の疾病及び損傷に対するこれまでの治療は、存在するニューロンの生存を維持することに焦点があてられていたが、今では、神経障害及び疾病の治療に神経発生の利用可能性が検討されている。
新しいニューロンのソース(source)は、神経幹細胞(NSC)である。この神経幹細胞は、側脳室をライニングする上衣及び/又は副脳室領域(subventricular zone:SVZ)の中にあり[Doetsch,Caille et al.1999;Johansson Momma et al.1999]、また、海馬の歯状回の中にある[Gage,Kempermann et al.1998]。最近の研究によると、成人のCNS内部の幾つかの追加位置に、NSCの存在可能性が明らかにされている[Palmer,Markakis et al.1999]。NSCの非対称性分裂により、その数は維持されるが、急速分裂する前駆体又は前駆体細胞の集団が発生する[Johansson, Momma et al.1999]。前駆体は、分化する細胞タイプと、最終的に脳の中で占める位置に関して、それらの増殖及び致死(fate)の程度を表すキュー(cues)の範囲に反応する。
成体の脳室系のNSCは、神経管をライニングする胚の脳室領域の幹細胞の対応物(counterparts)である可能性があり、その子孫の移動により、CNSを分化ニューロン及びグリアとして形成する[Jacobson 1991]。NSCは、成体の側脳室壁(LVW)の中で生存して、神経前駆体を発生させる。この神経前駆体は、吻側移動路(rostral migratory stream)を下って嗅球へ移動し、該嗅球にて、顆粒細胞及び糸球体周辺のニューロンに分化する[Lois and Alvarez-Buylla 1993]。嗅球では、相当数のニューロンの死が起こるため、失われたニューロンを継続的に代替する必要があり、LVWに由来する移動性前駆体によって満たされる必要がある[Biebl,Cooper et al.2000]。嗅球ニューロンの集団の再構成を継続させることの他に、脳の他の場所で失われたニューロンが、LVWの前駆体で置き換えられることが強く示唆されており、前記前駆体は、適当な神経突起を有する喪失ニューロンの表現型及び正しい標的細胞タイプを有するシナプスの中に分化する[Snyder,Yoon et al.1997;Magavi,Leavitt et al.2000]。
NSCの増殖と分化の調節に関する外部シグナルを識別するために、生体外の培養技術が確立されてきた[Johansson, Momma et al.1999; Johansson,Svensson et al.1999]。マイトジェンEGF及び塩基性FGFは、脳室壁及び海馬から単離された神経前駆体の培養を大いに増大させることができる[McKay 1997; Johansson,Svensson et al.1999]。分裂する前駆体は、未分化状態のままで、ニューロスフェア(neurospheres)として知られる大きな球体の細胞に成長する。血清を加え、マイトジェンを中止すると、前駆体は、ニューロン、星状細胞、乏突起膠細胞の3種類の細胞系への分化が誘発される[Doetsch,Caille et al.1999;Johansson, Momma et al.1999]。特異的成長因子を適用すると、各細胞タイプの比率は、何らかの形で歪められる。例えば、CNTFは、星状細胞が死に至るように神経前駆体に作用し[Johe,Hazel et al.1996;Rajan and McKay 1998]、甲状腺ホルモン及びトリヨードチロニン(T3)は乏突起膠細胞分化を促進することを示した[Johe,Hazel et al.1996]。PDGFによる神経前駆体の神経分化が増すことも知られている[Johe,Hazel et al.1996;Williams,Park et al.1997]。
神経前駆体細胞を増大させる能力やそれらの細胞の運命を操作する能力もまた、特異的細胞タイプが失われた神経疾病の移植治療に密接な関係を有する。その最も顕著な例は、パーキンソン病(PD)であり、これは、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性(degeneration)によって特徴づけられる。PD患者に対する従来の移植治療では、黒質のドーパミン作動性ニューロンが最終分化を行なっているときに腹側中脳から採取した胎生組織を使用していた[Herman and Abrous 1994]。細胞は、線条体に移植され、宿主の線条体ニューロンの正常なシナプス標的とシナプス接合を形成し、ドーパミンターン代謝を回復して、正常レベルまで放出し、患者に対して機能的利益がもたらされる[Hermann and Abrous 1994][Bjorklund and Lindvall 2000参照]。胎生細胞の移植は、ドナー細胞の不足によって妨げられる。しかし、生体外でNSCの増殖及び操作を行なうことにより、例えばPDのドーパミン作動性細胞のように、神経変性疾患に対する移植対処用に特徴づけられた一連の細胞を提供できる可能性がある。この目的の場合、神経細胞タイプの増殖や分化を支配する因子や経路を特定することは必須事項であろう。
結局のところ、これら増殖因子及び分化因子を特定することは、神経疾病及び障害の治療に対して内因性の神経発生に刺激を与えることを考察することになるようである。EGFと塩基性FGFの両方を脳室内に注入すると、脳室壁の細胞集団を増殖することが知られており、また、EGFの場合は、近傍の線条体柔組織に前駆体の移動が促進される[Craig,Tropepe et al.1996; Kuhn,Winkler et al.1997]。前駆体は、大部分はグリア系に分化し、ニューロンの発生を減少させる[Kuhn,Winkler et al.1997]。最近の研究によると、BDNFを成体ラットの脳室内に注入すると、嗅求、吻側移動路及び柔組織構造(例えば、線条体、隔膜、視床、視床下部)の中で新たに発生したニューロンの数の増加を刺激することが判ってきた[Pencea,Bingaman et al.2001]。これらの研究によれば、LVWのSVZ内の前駆体の増殖が刺激され、それらの系統(lineage)のニューロン及びグリアの運命が操作可能でることを示している。現在、生体内の神経発生に影響を及ぼすことがわかっている因子の数は、少なく、しかもそれらの効果は、所望通りのものでないか、又は限定されたものである。
それゆえ、神経前駆体の増殖と所望神経細胞タイプへの分化を通じて、神経幹細胞の活性を選択的に刺激することのできる他の因子を特定する(identify)ことが、長い間要請されている。この活性は、生体内における神経発生の刺激及び移植療法のための細胞の培養の両方にとって有益であろう。本発明は、PACAP、マキサディラン、VIPの役割を明らかにすると共に、生体内外での神経幹細胞の増殖、分化、生存及び移動において、それらのシグナル伝達経路を明らかにするものである。
<発明の要旨>
本発明は、一般的には、損傷又は欠失したニューロン若しくは他の中枢神経系細胞タイプの代替となる子孫(progeny)を作るために、中枢神経系細胞に影響を及ぼす方法に関するものである。
本発明の目的は、神経系障害の症状を緩和する方法を提供することであり、神経系の疾病又は障害をもつ患者に対して、生体内の神経幹細胞又は神経前駆体細胞の活性を調節するために、PACAP、マキサディラン、VIP又はそれらの組合せを投与することを含んでいる。本明細書において、障害(disorder)と疾病(disease)は同じ意味である。
本発明の他の目的は、神経幹細胞又は神経前駆体細胞におけるPACAPレセプター、マキサディランレセプター、VIPレセプター又はそれらの組合せを調節する方法を提供することであり、レセプターを発現する細胞を、外因性試薬、抗体又はアフィボディに曝露する(exposing)ことを含んでおり、それによって、神経幹細胞又は神経前駆体細胞の増殖、分化、生存を誘起又は抑制するものである。
本発明のさらなる目的は、哺乳類の中枢神経系の疾病又は障害の治療において、それら疾病又は障害の症状を緩和する方法を提供することであり、PACAP、マキサディラン、VIP、PACAPレセプター作用剤、マキサディランレセプター作用剤又はVIPレセプター作用剤を哺乳類に投与することを含んでいる。
本発明のさらに他の目的は、哺乳類の神経組織にある神経幹細胞又は神経前駆体細胞の増殖、移動、分化、生存を、その位置にて誘起する方法を提供することであり、細胞の増殖、移動、分化、生存を調節するために、治療上有効な量のPACAP、マキサディラン、VIPを神経組織に投与することを含んでいる。
本発明の他の目的は、患者の所望される標的組織の中の神経幹細胞又は神経前駆体細胞の成長を促進する方法を提供することであり、患者に対して、治療上有効的な量の発現ベクターを投与することを含んでおり、発現ベクターとして、PACAP、マキサディラン又はVIP遺伝子を含んでいる。
本発明の他の目的は、中枢神経系の病気や障害をもつ患者の神経発生を促進する方法を提供することであり、PACAP、マキサディラン、VIP、PACAPレセプター作用剤、マキサディランレセプター作用剤又はVIPレセプター作用剤を注入することを含んでいる。
本発明のさらなる目的は、中枢神経系の病気や障害をもつ患者の症状を緩和する方法を提供することであり、PACAP、マキサディラン、VIP、PACAPレセプター作用剤、マキサディランレセプター作用剤又はVIPレセプター作用剤の注入によって神経発生を促進することを含んでいる。
本発明の他の目的は、ヒトの神経幹細胞又はヒトの神経前駆体細胞に対してリッチ化される(enriched)細胞集団を作る方法を提供することであり、(a)神経幹細胞又は神経前駆体細胞を含む集団を、PACAPレセプター、マキサディランレセプター又はVIPレセプターのデターミナント(determinant)を識別する試薬と接触させ;(b)前記ステップ(a)の細胞の表面上で、試薬とデターミナントが接触している細胞を選択して、中枢神経系幹細胞に対して高度にリッチ化される集団を作ることを含んでいる。本発明の一実施例において、試薬は、可溶性レセプター、小分子、ペプチド、抗体及びアフィボディから成る群から選択される。本発明の他の実施例において、可溶性レセプターは、PACAP、マキサディラン又はVIPレセプターである。
本発明のさらなる目的は、前述の方法によって作成された細胞集団を含む細胞を生体外で培養することであり、前記細胞集団は、レセプターを発現する細胞の中でリッチ化され、前記レセプターは、PACAPレセプター、マキサディランレセプター又はVIPレセプターから成る群から選択される。
本発明の1つの目的は、中枢神経系の病気又は障害の症状を緩和する方法を提供することであり、前記病気又は障害の治療を必要とする哺乳類に対し、前記細胞集団を投与することを含んでいる。本発明のさらなる目的には、前述のヒトの神経幹細胞又は神経前駆体細胞で移植されたヒト以外の哺乳類が含まれる。本発明の好ましい実施例において、ヒト以外の哺乳類は、ラット、マウス、ウサギ、馬、羊、豚及びテンジクネズミを含む群から選択される。
本発明の他の目的は、患者の中枢神経系の病気又は障害の症状を緩和する方法を提供することであり、患者の脊髄の中に、胎生又は成体組織から単離された神経幹細胞又は神経前駆体細胞の集団群、並びにPACAP、マキサディラン、VIP、PACAPレセプター作用剤、マキサディランレセプター作用剤又はVIPレセプター作用剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含んでいる。
本発明の他の目的は、本発明は、哺乳類の標的細胞において、遺伝子の送達及び発現の方法を提供することであり、ウイルスベクターを標的細胞に導入するステップを含んでおり、前記ウイルスベクターは、PACAP、マキサディラン、VIP、PACAPレセプター、マキサディランレセプター又はVIPレセプターをエンコードする核酸を含む少なくとも1つの挿入部位を有しており、前記核酸の遺伝子は、宿主の中で発現能力を有するプロモータに対して操作可能に結合されている。本発明の一実施例において、ウイルスベクターは、非細胞溶解性(non-lytic)ウイルスベクターである。
本発明の他の目的は、哺乳類の標的細胞に遺伝子を送達(delivery)及び発現する方法を提供することであり、(a)PACAP、マキサディラン又はVIPに対して、PACAPレセプター、マキサディランレセプター又はVIPレセプターをエンコードする核酸配列の単離された核酸断片を準備し、(b)標的細胞の中で発現能力を有するプロモータに対して操作可能に結合された前記の単離された核酸断片を挿入するための挿入部位を少なくとも1つ有するウイルスベクターを選択し、(c)単離された核酸断片を前記挿入位置に挿入し、(d)標的細胞にベクターを導入し、遺伝子が検出可能なレベルで発現されることを含んでいる。本発明の一実施例において、ウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、イリドウイルス、コロナウイルス、トガウイルス、カリシウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス及びピコルナウイルスから成る群から選択される。本発明の他の実施例において、ポックスウイルスは痘疹である。本発明の他の実施例において、ウイルスは、遺伝子操作されるか、又は宿主の中で無毒化されるよう選択された菌株(strain)である。
本発明のさらなる目的は、患者の中枢神経系の病気や障害の症状を緩和する方法を提供することであり、(a)神経幹細胞又は神経前駆体細胞の集団を準備し、(b)PACAP、マキサディラン又はVIPからなる混合物を含む溶液の中で、神経幹細胞又は神経前駆体細胞を懸濁して、細胞懸濁液を調製し、(c)前記症状を緩和させるために、前記細胞懸濁液を、患者の中枢神経系の注入部位に送達するステップを含んでいる。本発明の方法の一実施例において、細胞懸濁液を送達するステップの前に、注入部位に成長因子を所定時間注入するステップをさらに有している。本発明の他の実施例において、前記方法は、送達ステップの後、注入部位に成長因子を注入するステップをさらに有している。
本発明のさらなる目的は、ヒトの神経幹細胞又はヒトの神経前駆体細胞にリッチ化される細胞集団を移植する方法を提供することであり、(a)神経幹細胞又は神経前駆体細胞を含む集団を、デターミナントを識別する試薬と接触させ;(b)前記ステップ(a)の細胞の表面上で、試薬とデターミナントが接触している細胞を選択して、中枢神経系幹細胞に対して高度にリッチ化される集団を調製し、(c)前記ステップ(b)で選択された細胞を、ヒト以外の哺乳類に移植するステップを含んでいる。
本発明のさらなる目的は、神経幹細胞又は神経前駆体細胞の表面で、PACAP、マキサディラン若しくはVIPのレセプター、又はPACAP、マキサディラン若しくはVIPのリガンドを調節する方法を提供することであり、前記レセプター又はリガンドを発現する細胞を、外因性の試薬、抗体又はアフィボディに曝露するステップを含んでおりさらし、それによって、神経幹細胞又は神経前駆体細胞の増殖、分化又は生存を誘起するものである。本発明の一実施例において、神経幹細胞又は神経前駆体細胞は、胎児の脳、成人の脳、神経細胞培養又はニューロスフェアに由来している。
本発明のさらなる目的は、単離されたPACAP、マキサディラン又はVIPのレセプター調整剤化合物の候補について、神経幹細胞又は神経前駆体細胞の活性を調節する能力を有するかどうかを判定する方法を提供することであり、(a)単離された候補化合物を、ヒト以外の哺乳類に投与し、(b)候補化合物が、ヒト以外の哺乳類の神経幹細胞又は神経前駆体細胞の活性を調節する作用を有するかどうかを判定するステップを含んでいる。本発明の一実施例において、判定するステップは、ヒト以外の哺乳類の神経への影響を、ヒト以外の哺乳類で候補化合物を投与していない対照(control)と比較することを含んでいる。本発明のさらなる実施例において、化合物は、ペプチド、小分子及びレセプター作用剤から選択される。神経幹細胞又は神経前駆体細胞の活性は、増殖、分化、移動又は生存に関するものである。
〈発明の詳細な説明〉
ある試薬が、生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)において、神経幹細胞及び/又は神経前駆体細胞の分化、泳動、増殖及び生存を調節する能力を有することを発見した。本明細書に記載される「調節(modulate)」という語は、神経幹細胞(neural stem cell)(NSC)又は神経前駆体細胞(neural progenitor cell)(NPC)の活性の分化、泳動、増殖及び生存を変化させることができるような影響を及ぼすことを意味する。脱分化多能性細胞は、培養物の中で1年以上増殖することができるので、この明細書の中に記載される本発明は、神経前駆体をほぼ無制限に供給し得るものである。
本明細書を通じて、「神経幹細胞」(NSC)という語は、「neural progenitor cell」「neuronal progenitor cell」「neural precursor cell」及び「neuronal precursor cell」(ここでは、全てNPCと称する)を含んでいる。NSCとNPCは、単一の細胞又は複数の細胞(例えば、細胞集団)の両方を含む。これらの細胞は、細胞の能力によって特定することができる。その能力として、細胞増殖を連続的に行なうこと、自らの正確なコピーを再生すること(自己再生)、大量の局部的(regional)細胞子孫を生成すること、損傷又は病気に反応して新細胞を作り出すことが挙げられる。NPCsという語は、神経細胞(例えば、神経前駆体又は成熟ニューロン)、又はグリア細胞(例えば、グリア前駆体、成熟アストロサイト、成熟オリゴデンドロサイト)の子孫を生成することができる細胞を意味する。典型的には、その細胞は、神経系統を特徴づける表現型マーカーの一部を発現する。また、それら細胞は、インビトロで自己培養される場合に、何らかの方法で脱分化又は再プログラミングされなければ、通常、他の胚性生殖層の子孫を生成しない。ここで用いられる「ニューロスフェア(neurosphere)」という語は、NSCからなる細胞の球体を意味する。
ここで用いられる「試薬(reagent)」という語は、化学的及び生物学的にレセプターを活性化する能力を有する任意の物質を意味しており、レセプターには、ペプチド、小分子、抗体(又はその断片)、アフィボディ(affibodies)、及びレセプターを二量化若しくは多量体化するか、又は細胞外ドメインの活性化の必要性の代わりとなる任意の分子が含まれる。一実施例では、試薬は小分子である。
ここで用いられる「抗体」又は「免疫グロブリン」という語は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体と、それらの機能性誘導体(functional derivatives)(即ち、人工抗体(engineered antibody))の両方を意味する。抗体は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEなどあらゆるクラスの全免疫グロブリン(whole immunoglobulin)、複抗原若しくは多抗原又はエピトープ特異性をもつハイブリッド抗原、例えば、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab1等、ハイブリッド断片を含む断片であってよい。なお、前記の範囲は、無傷の免疫グロブリン分子だけではなく、当該技術分野で知られた技術によって作製され、所望の抗体結合特異性を維持する免疫グロブリン分子(例えば、単鎖Fv構造、ダイアボディ(diabody)及び融合構造)の断片及び誘導体を意図的に含んでいる。「アフィボディ(affibody)」(米国特許第5,831,012号)という語は、所望される如何なる標的分子にも結合するように設計されることができる非常に特異的な親和性蛋白質を意味する。これらの抗体ミミックは、所望の特性(特異性及び親和性)を有するように製造することはできるし、その一方で、非常に強固であり、pH及び高温条件を含む広範囲の分析条件に耐えることができる。特異性結合特性を、各捕捉蛋白質に組み込むことにより、対応する標的蛋白質に対して非常に高い特異性と所望の親和性が与えられる。それゆえ、特異的標的蛋白質は、それに対応する捕捉蛋白質のみと結合する。小サイズ(58個のアミノ酸のみ)、高溶解性、多機能構造へのさらなる工学的処理の容易性、すぐれた折り畳み性(folding)、システインの不存在、安定な足場(scaffold)を有するものが、低コストの細菌発現システム(bacterial expression systems)を用いて大量に作成されるので、様々な生命科学分野において、アフィボディは、Fab又は単鎖Fv(scFv)断片のような抗体又は抗体断片よりもすぐれた捕獲分子となり得る。なお、抗体という語は、人工抗体を含む。
ここで、「人工抗体(engineered antibody)」という語は、生化学的に又は組み換えられて生成される抗体の機能性誘導体の全てを含む。蛋白質は、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)又は相補性決定領域(CDR)を具えているならば、抗体の機能性誘導体である。なお、相補性決定領域(CDR)とは、他のCDR(同じポリペプチド鎖上又は異なるポリペプチド鎖上にある)と結合すると、ABSを形成するCDRである。人工抗体という語は、少なくとも、組換え抗体、標識抗体(tagged antibodies, labeled antibodies)、Fv断片、Fab断片、組換えられた(天然物に対するという意味)多量体抗体、単鎖抗体、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)と、4価の多量体(2つのダイアボディの二量体)、5価の多量体(ダイアボディとトリアボディの二量体)と、6価の多量体(2つのトリアボディの二量体)、その他、抗体の7価以上の多量体形態を含んでいる。
「組換え核酸(recombinant nucleic acid)」又は「組換え技術で作られた核酸」という語は、天然又は内因性ソースから分離されるか、又は天然発生的なフランキングヌクレオチド若しくはインターナルヌクレオチドの追加、削除又は変更による化学的若しくは酵素的に修飾されたDNA又はRNAの如き核酸を意味する。フランキング(flanking)ヌクレオチドは、記述されたヌクレオチドの配列又はサブ配列の上流又は下流に位置するヌクレオチドであり、インターナルヌクレオチドは、記述された配列又はサブ配列の内部で発生するヌクレオチドである。
「組換え手段」という語は、蛋白質を単離する技術を意味し、同定され、発現ベクターに挿入された蛋白質をコード化するcDNA配列である。ベクターは、次に、細胞の中に導入されて、その細胞は蛋白質を発現する。また、組換え手段は、PPCの発現、蛋白質の構成的な(constitutive)発現、又は蛋白質の誘導的な(inducible)発現のために、異なるソースから1つのベクターへの暗号化DNA又はプロモータDNAのライゲーションを含む。
「プロモータ」という語は、mRNAを生成するために構造遺伝子の転写を指令するDNA配列を意味する。一般的には、プロモータは、遺伝子の5'領域の中で、構造遺伝子の開始コドンに近接した位置に配置される。プロモータが誘導性プロモータである場合、転写速度は、誘発剤に反応して増加する。一方、プロモータが構成的プロモータである場合、転写速度は、誘発剤では調節されない。
「エンハンサー」という語は、プロモータ要素を意味する。エンハンサーは、転写の開始部位に対するエンハンサーの距離又は向きには関係なく、特定遺伝子がmRNAに転写される効果を向上させることができる。
「相補的DNA(cDNA)」は、逆転写酵素(enzyme reverse transcriptase)によってmRNAテンプレートから形成される一本鎖(single-stranded)DNA分子を意味する。一般的には、mRNAの一部に相補的なプライマーが、逆転写の開始のために用いられる。また、当該技術分野の専門家であれば、「cDNA」という語は、このような一本鎖DNA分子とその相補体とから構成される二本鎖DNA分子を意味する語としても用いるであろう。
「発現(expression)」は、ポリペプチドが構造遺伝子から生成されるプロセスを意味する。該プロセスは、mRNAへの遺伝子の転写と、前記mRNAのポリペプチドへの翻訳を含んでいる。
「クローニングベクター」は、プラスミド、コスミド、ファージミド、又はバクテリオファージのように、宿主細胞内で自ら複製する能力を有し、遺伝子操作のために細胞の変換に用いられるDNA分子を意味する。クローニングベクターは、一般的には、1又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含んでおり、該部位では、外来DNA配列は、ベクターの本質的生物学的機能を損なうことなく決定できるように挿入されることができる。これは、クローニングベクターで変換された細胞の同定及び選択に用いるのに適したマーカー遺伝子(marker gene)と同様である。マーカー遺伝子は、一般的には、テトラサイクリン耐性及びアンピシリン耐性をもたらす遺伝子を含んでいる。
「発現ベクター」は、外来蛋白質をエンコードして、組換え宿主内でその外来蛋白質の発現をもたらす外来蛋白質をエンコードするクローンされた構造遺伝子を具えるDNA分子を意味する。一般的に、クローン化遺伝子の発現は、プロモータ及びエンハンサー配列のような調節性配列に制御されて配置される(即ち、それら動作的にリンクされている)。プロモータ配列は、構成的又は誘導的の何れかである。
「組換え宿主」は、クローニングベクター又は発現ベクターのどちらかを含む原核細胞又は真核細胞を意味する。この語はまた、宿主細胞の染色体又はゲノム内にクローン化遺伝子を含むように遺伝子操作された原核細胞又は真核細胞を含むことを意味する。宿主細胞は、単細胞生物に限定されない。哺乳動物、昆虫及び植物のような多細胞有機体もまた、本発明において宿主細胞と考えられる。適当な宿主の例として、"MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUUAL, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)"を参照することができる。
本発明に関連する様々な文法形態の中での「治療(treating)」という語は、病気状態、病気の進行、病原体(例えば、バクテリア又はウイルス)又はその他異常状態の有害効果を、防止したり、治癒させたり、取り除いたり、弱めたり、緩和したり、少なくしたり、抑制したり、又は阻止することを意味する。
「組換え蛋白質」「組換えによって生成された蛋白質」という語は、蛋白質を発現できる内因的複製を有しない非天然細胞を用いて生成されたペプチド又は蛋白質を意味する。細胞が蛋白質を産生するのは、適当な核酸配列の導入によって遺伝子組換えが行なわれているためである。組換え蛋白質は、蛋白質及び該蛋白質を生成する細胞に通常関係する他の亜細胞要素と一緒には存在しないであろう。
特異的なケースとして、薬剤の「治療上有効な量」は、治療の必要上患者の症状を改善するのに十分な量、又は、病気及び合併症を少なくとも部分的に阻むのに十分な量として決定される。このような使用に対する有効量は、病気の重症度及び患者の健康の全身状態に依存する。投与については、投薬量に応じて、1回又は複数回の投与が行われ、頻度は、患者が耐え得る程度によって決められる。
本発明の蛋白質、抗体又は抗体結合部位(ABS)に関して用いられる「結合特異性」「〜に特異的に結合する」又は「〜と特異的に免疫反応する」という語は、蛋白質及びその他生物製剤の異種集団(heterogeneous population)が存在する状況下で、蛋白質又は炭水化物の存在を決定する結合反応を意味する。結合を判定するのに、様々な免疫学的検定が用いられる。例えば、蛋白質又は炭水化物と特異的に免疫反応する抗体を選択するために、固相ELISA免疫学的検定が一般的に用いられる。特異的免疫反応性を求めるために用いられる免疫学的検定のフォーマット及び条件について記載された文献がある[Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publication, New York (1988)参照]。
「核酸の暗号化(encoding)」又は「核酸配列の暗号化」という語は、特異的蛋白質又はペプチドの発現を指令する核酸を意味する。核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖と、蛋白質に転写されるそのRNA配列の両方を含んでいる。核酸配列は、核酸の全長配列と、その全長配列に由来する短い配列を含んでいる。特定の核酸配列が、特異的宿主の中でコドンの優先選択(codon preference)をもたらすために導入される1又は複数の天然配列の縮重コドンを含むことは理解される。核酸は、単一鎖又は二本鎖のどちらかの形態のセンス鎖とアンチセンス鎖の両方を含んでいる。
「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」は、様々に製剤の調合物を意味する。非経口調合物は知られており、本発明で好適に用いられる。治療的に有効な量の抗毒素(immunotoxins)を含む調合物は、滅菌溶液若しくは懸濁液のような液体か、又は凍結乾燥(lyophilized)の形態であり、選択的に、安定剤又は賦形剤(excipients)を含んでいる。凍結乾燥された組成物は、例えば、注射用水、生理食塩水、0.3%グリシン等の適当な希釈剤によって、宿主体重1kg当たり、約0.01mg乃至10mg以上の濃度に再構成される。
本発明の好ましい試薬は、例えばPACAPペプチドであるPACAP38及びPACAP27のようなペプチドのVIP/セクレチン/グルカゴンファミリーのメンバーを含んでおり、これらは、同一の27−aaN末端を共有しており、プリプロPACAP[Arimura 1998; Vaudry, Gonzalez et al. 2000]と称される176−aa前駆体(precursor)から作製されることもできる。血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide; VIP)は、28−アミノ酸ペプチドであり、中枢神経系(central nervous system; CNS)及び幾つかの末梢器官で様々な作用を有する(Gressens 1999)。VIPは、特異的に結合することが可能であり、VIPR1及び2に対する結合性(affinity)は高いが、ADCYAP1R1への結合性は10〜1000倍低い[Jaworski and Proctor 2000]。
本発明は、PACAPの作用をインビボで調節し、ドラッグスクリーニングを行なうためのPACAP及びマキサディランペプチドを治療のために投与する方法を提供する。一実施例では、上記コンパウンドが神経組織に投与される。好ましい実施例において、前記神経組織は、胎児又は成人の脳である。さらに他の実施例では、神経細胞又は神経由来細胞を含む集団は、神経細胞培養又はニューロスフェアから得られる。
本発明に含まれるレセプターの一つは、ADCYAP1R1で、VIP/セクレチン/グルカゴンファミリーのメンバーであり、全てのアイソフォーム(isoforms)と共に含まれる[Jaworski and Proctor 2000](実施例7を参照)。
<PACAPレセプター及びそれらのリガンド>
神経発生及び神経分化における神経ペプチドの役割は明らかになっている。特に、明確な機能データは未だに不十分であるが、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)及び血管作動性腸管ペプチド(VIP)がこれらのプロセスにて潜在的な役割を有していることが最近明らかにされた[Tyrrell and Landis 1994; Jaworski and Proctor 2000; Hansel, Eipper et al. 2001; Hansel, May et al. 2001]。PACAPは、ペプチドのVIP/セクレチン/グルカゴンファミリーのメンバーであり、PACAP38とPACAP27の2種類のアミド化形態として存在し、同一の27−aa N末端を共有している。或いはまた、プリプロPACAPと称される176−aa前駆体の処理によって得られる[Arimura 1998; Vaudry, Gonzalez et al. 2000]。PACAP38の主要構造は、原索動物から哺乳類への進化の過程で有意的に保存されており、そのペプチドは脊椎動物門全体に重要な作用を有することを示唆している[Arimura 1998; Vaudry, Gonzalez et al. 2000]。 ショウジョウバエについて、エタノール感受性の嗅覚に関する学習及び修正の障害を含む記憶突然変異体(memory-mutant)の健忘症(amnesiac)における最近の分子クローニング及びトランスジェニックレスキュー(transgenic rescue)実験では、健忘症遺伝子が、脊椎動物のPACAPに相同性の神経ペプチドをエンコードすることが示されている[Feany and Quinn 1995; Moore, DeZazzo et al. 1998]。さらにまた、哺乳類のPACAPは、ショウジョウバエの神経のcAMPとRas/Raf信号伝達経路の両方に作用して、特異的神経集団における健忘症の神経調節的役割(ショウジョウバエのPACAP)を示す[Zhong 1995]。哺乳類では、PACAPは神経要素に存在し、1つのPACAP-特異性(ADCYAP1R1)レセプターと、VIP(VIPR1及びVIPR2)と共有する2つのレセプターの3種類のヘプタヘリカル(heptahelical)G蛋白連結型レセプターを介して、多面性神経ペプチドとして作用する。結合性は低いが、VIPはまた、ADCYAP1R1を結合できることを強調することは重要である[Jaworski and Proctor]。
PACAPは、神経における幾つかの異なるシグナル伝達系を刺激して、アデニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼC及びマイトジェン活性蛋白質キナーゼを活性化させ、カルシウムを移動させる[Hashimoto, Ishihara et al. 1993; Arimura 1998; Vaudry, Gonzalez et al. 2000]。組織化学的研究により、PACAPの免疫活性が、ドーパミン(DA)系及びセロトニン(5-HT)系を含む中枢神経系(CNS)の幾つかの領域で観察されており、側座核、視床下部、扁桃体、黒質及び背側縫線核に非常に集中していることが明らかにされた[Ghatei, Takahashi et al. 1993; Masuo, Suzuki et al. 1993; Piggins, Stamp ete al. 1996]。ADCYAP1R1はまた、中間皮質辺縁(mesocorticolimbic)系及び黒質線状体DA系の両系とさらに5-HT系の標的領域の全体に発現される[Hashimoto, Nogi et al. 1996]。VIPR1とVIPR2もまた、これらの系の中で発現される[Usdin, Bonnner et al. 1994]。これらの組織化学的研究は、PACAP神経と、DA及び5-HT神経との機能的関係を示唆する。薬理学的研究では、PACAPが、中脳DA神経[Takei, Skoglosa et al. 1998]、皮質神経[Morio, Tatsuno et al, 1996]、小脳顆粒細胞[Villalba, Bockaert et al. 1997]及びその他の神経[Arimura 1998; Vaudry, Gonzalez et al. 2000]に対し、神経分化誘導作用と神経防護作用を有することが明らかにされている。PACAPは、側坐核のチロシン水酸化酵素活性を増加させ[Moser, Scholz et al. 1999]、星状細胞におけるインターロイキン-6の生成を促進する[Gottschall, Tasuno et al. 1994]。PACAPはまた、海馬のシナプス可塑性に関与している[Gottschall, Tasuno et al. 1994]。
特に興味深いのは、ADCYAP1R1は、全ての中枢神経軸を通じて、脳室帯(ventricular zone)が非常に高いレベルにある時に発現されることであ。増殖帯(proliferative zone)における胚エンリッチメント(enrichment)に加えて、ADCYAP1R1の発現は、成人の中枢神経系、具体的には、脳室下帯の神経発生の領域及び海馬の歯状回(dentate gyrus)で維持され[Jaworski and Proctor 2000]、成人の神経発生におけるPACAPの極めて重要な役割を示唆している。さらに、VIPは、神経発生の際に増殖を刺激することが明らかにされており[Gressens, Paindaveine et al. 1997]、CNSの異なる発達段階で増殖と分化を調節するために、神経ペプチドは両方とも、それらのレセプターを介して、重要な役割を有することを示唆している。
PACAPとVIPの経路が、原理的には、細胞内のcAMPレベルの上昇によって調節されることを、生化学的及び分子的観点から観察することは興味深いことである。これは、cAMPと該cAMP応答因子を結合する蛋白質(cAMP response element-binding protein; CREB)が、海馬の歯状回における生体内神経発生に貢献する重要な役割を果たすことを示す最近のデータ[Nakagawa, Km et al. 2002]と一致する。しかしながら、近年、PKCはCREBを活性化することも明らかにされている。PACAPが、RAP1のようなcAMPの下流エフェクターを介してPKC信号経路に漏話(crosstalk)することができ、CREB転写因子のさらなる活性化をもたらす[Vaudry, Stork et al. 2002]ことは興味深いことである。
<マキサディランは特異性ADCYAP1R1の作用物質である>
マキサディランは、ニューワールドサシチョウバエ(New Workd sand fly)、ルッツォミアロングパルピス(Lutzomyia longipalpis)の唾液腺抽出物から単離され、血管拡張能力特性を有する63アミノ酸ペプチドである[Lermer, Ribeiro et al. 1991)]。PACAPは、ADCYAP1R1とVIPR1&2の両方に結合できるのに対し、マキサディランはADCYAP1R1だけに特異的に結合することは、研究によって明らかにされている[Moro and Lerner 1997]。
<試薬の調製>
患者を治療する試薬は、広く知られた組換え技術により、作成され、精製されて、調合される。
本発明の試薬及び個々の骨格部又はそれらの類似体(analog)及び誘導体は、化学的に合成されることができる。当該技術分野では、ペプチド合成装置を用いた合成を含み、様々な蛋白質の合成方法がある。それらの文献として、例えば、「Peptide Chemistry, A Practical Textbook, Bodasnsky, Ed. Springer-Verlag, 1988; Merrifield, Science 232: 241-247 (1986)」「Barany, et al, Intl. J. Peptide Protein Res. 30: 705-739 (1987); Kent, Ann. Rev. Biochem. 57:957-989 (1998)」及び「Kaiser, et al, Sience 243: 187-198 (1989)」を参照することができる。ぺプチドは、標準のペプチド精製技術を用いて、化学前駆体又はその他の化学物質が実質的に含まないように精製される。「化学的前駆体又はその他の化学物質を実質的に含まない」という語は、ペプチドの合成に関係する化学的前駆体又はその他の化学物質から分離されたペプチドの調製物を含んでいる。一実施例では、「化学的前駆体又はその他の化学物質が実質的に含まない」という語は、化学的前駆体又は非ペプチド化学物質が約30%(乾燥重量)より少ないペプチドの調製物を含んでいる。化学的前駆体又は非ペプチド化学物質は好適には約20%より少なく、化学的前駆体又は非ペプチド化学物質は、さらに好適には、が約10%より少なく、化学的前駆体又は非ペプチド化学物質は、最も好ましくは約5%よりも少ない。
ペプチドの化学合成により、D-アミノ酸及び他の小さな有機分子を含む被修飾アミノ酸又は人工アミノ酸の含有が促進される。ぺプチド内の1又は2以上のL-アミノ酸を、対応するD-アミノ酸アイソフォームと置き換えることを利用して、酵素加水分解に対するペプチドの抵抗性を増加させ、生物学的に活性なペプチドの特性、例えば、レセプター結合、機能的能力(functional potency)又は作用の持続性等のうちの少なくとも1つを向上させる[Doherty, et al., 1993. J. Med Chem. 36: 2585-2594; Kirby, et al., 1993, J. Med Chem. 36: 3802-3808; Morita, et al., 1994, FEBS Lett. 353: 84-88; Wang, et al., 1993, Int. J. Pept. Protein Res. 42:392-399; Fauchere and Thinuieau, 1992, Adv. Drug Res. 23: 127-159をを参照]。
共有結合架橋(covalernt cross-links)のプチド配列への導入により、立体配座的及び領域特異的(topographically)にペプチドのバックボーンを制御することができる。この方策は、試薬のペプチド類似体の能力、選択性及び安定性を高めるのに用いることができる。その他に幾つかの方法を用いて、ペプチド配列に立体配座的制御を導入に成功し、それらの能力、レセプター選択性及び生物学的半減期を向上させたものがある。それら方法の中には、(i)Cα-メチルアミノ酸を用いるもの(例えば、Rose, et al., Adv. Protein Chem. 37: 1-109 (1985); Prasad and Balaram, CRC Crit. Rev. Biochem. 16: 307-1348 (1984)を参照)、(ii)Nα-メチルアミノ酸を用いるもの(例えば、Aubry, et al., Int. Pept. Protein Res., 18: 195-202 (1981); Manavalan and Momany, Biopolymers 19: 1943-1973 (1980)を参照)、(iii)α,β-不飽和アミノ酸を用いるもの(例えば,Bach and Gierasch, Biopolymers 25: 5175-S192 (1986); Singh, et al., Biopolymers 26: 819-829 (1987)を参照)がある。これらアミノ酸及びその他多くのアミノ酸類似体は、商業的に入手可能であり、又は容易に作製できる。さらに、C-末端の酸をアミドで置き換えることにより、ペプチドの溶解性及びクリアランスが向上する。
或いはまた、組換えペプチドの発現及び精製に関して当該技術分野で広く知られた方法を用いて、試薬を得ることもできる。蛋白質試薬をエンコードするDNA分子を作製することができる。DNA配列は知られており、又は公知のコドンを利用して蛋白質配列から推定することもできる[例えば、Old and Primrose, Prionciples of Genen Manipulation 3rd ed., Brackwell Scientific Publications, 1985; Wada et al., Nucleic Acids Res. 20: 2111-2118 (1992)を参照」。DNA分子は、好適には、例えばプラスミドのような適当なクローニングベクターへのクローニングを促進する制限酵素の認識部位の如き追加配列を含んでいる。核酸は、DNA、RNA又はそれらの組合せであってよい。試薬をエンコードする核酸を、当該技術分野で知られている任意の方法により(例えば、配列の3'末端及び5'末端にハイブリダイゼーション可能な(hybridizable)合成プライマーを用いたPCR増幅により、及び/又は、所定の遺伝子配列に特異性のオリゴヌクレオチド配列等を用いて、cDNA若しくはゲノムライブラリーからクローニングすることにより)得られる。核酸はまた、化学合成によって作ることもできる。
適当な転写/翻訳制御信号及び試薬コーディング(reagent-coding)配列を具えるキメラ遺伝子を含む発現ベクターを構成するために、核酸断片のベクターへの挿入に関連する技術分野で知られた任意の方法を用いることができる。本発明では、発現ベクター内のプロモーター/エンハンサーに、植物、動物、昆虫、又は菌の調節配列を用いることができる。
宿主細胞は、どんな原核細胞又は真核細胞であってもよい。例えば、ぺプチドは、大腸菌のようなバクテリア細胞、昆虫細胞、菌細胞、又は哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はCOS細胞)の中で発現されることができる。適当な宿主細胞として、その他にも、当該技術分野の通常の知識を有する者に知られたものがある。一実施例では、試薬をエンコードする核酸は、哺乳類の発現ベクターを用いて、哺乳類細胞の中で発現される。哺乳類の発現ベクターの例としては、pCDM8[Seed (1987) Nature 329:840]及びpMT2PC[Kaufman et al. (1987) EMBO J6: 187-195]がある。
宿主細胞は、培養でペプチドを生成するのに使用することができる。それ故、本発明はまた、本発明の宿主細胞を用いてペプチドを生成する方法を提供するものである。本発明の方法の一実施例では、ペプチドを生成するために、適当な培地(medium)の中で、本発明の宿主細胞を培養する工程を含んでいる(ペプチドをエンコードする組換え発現ベクターが導入される)。この方法は、培地又は宿主細胞からペプチドを単離する工程を含んでいる[Ausubel et al., (Eds). In: Current Protocols in Molecular Biology. J. Wiley and Sons, New York, NY. 1998を参照]。
「単離された(isolated)」若しくは「精製された(purified)」組換えペプチド、又はその生物学的活性部分は、そのペプチドが由来する細胞源又は組織源からの細胞物質又はその他の汚染をもたらす蛋白質を実質的に含んでいない。「細胞物質を実質的に含まない」という語に含まれる調製物において、ペプチドは、単離されるか又は組換え技術で生成される細胞の細胞成分から分離されている。一実施例において、「細胞物質を実質的に含まない」という語は、所望のペプチド以外のペプチド(ここでは「汚染をもたらす蛋白質(contaminating protein)」と称す)が30%未満(乾燥重量)の調製物を含んでおり、該調製物について、汚染をもたらす蛋白質は、より好適には20%未満であり、さらに好適には10%未満であり、最も好適には5%未満である。ペプチド又はその生物学的活性部分が組換え技術で生成される場合、培地(culture medium)を実質的に含まないことが好ましく、培地は、例えば、ペプチド調製物の体積の約20%未満であり、より好ましくは10%未満であり、最も好ましくは5%未満である。
本発明はまた、作用物質(ミメティクス)又は拮抗物質(antagonists)として機能する試薬の様々な変異体に関する。試薬の変異体は、突然変異生成、例えば不連続な点突然変異によって生成されることができる。試薬の作用物質は、試薬の天然発生的形態の生物学的活性と略同じ活性又はそれら活性のサブセットを維持することができる。試薬の拮抗物質は、例えばレセプターに競争的に結合することによって、試薬の天然発生的形態の1又は2以上の生物学的活性を阻害することができる。従って、特異的な生物活性効果は、制限された機能を持つ変異体で処理することによって引き出されることができる。一実施例では、試薬の天然発生的形態の生物学的活性のサブセットを有する変異体で対象者を治療すると、試薬の天然発生的形態を用いて治療した対象者よりも副作用が少なくなる。
類似体、変異体又は誘導試薬は機能的に活性であるのが好ましい。本明細書で用いられる「機能的活性(functionally active)」は、完全長さの試薬について1又は2以上の公知の機能的特質を示す種(species)を意味する。「変異体(variant)」は、天然発生的試薬とは異なり、その本質的特性を保持する試薬を意味する。一般的に、変異体は、天然発生的試薬とは全体として極めて類似し、多くの領域で同一である。
作用物質(ミメティクス)又は拮抗物質として機能する試薬の変異体は、ぺプチド作用物質又は拮抗物質の活性に対する試薬の突然変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定されることができる。一実施例では、変異体の多様な(variegated)ライブラリーが、核酸レベルでのコンビナトリアルな突然変異によって生成され、多様な遺伝子ライブラリーによってエンコードされる。変異体の多様なライブラリーは、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列の中に酵素的にライゲーションすることによって作成されることができる。その結果、潜在的配列(potential sequences)の縮重セット(degenerate set)は、個々のペプチドとして、或いは又、配列のセットを含むより大きな融合蛋白質(例えば、ファージディスプレイ用)のセットとして発現可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的変異体のライブラリーを作製するために様々な方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置の中で実行されることができ、合成遺伝子はその次に適当な発現ベクターにライゲーションされる。遺伝子の縮重セットを用いることにより、潜在的配列の所望の組合せをエンコードする配列の全てを、単一の混合物として提供することができる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当該技術分野で知られている[例えば、Narang (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1984) Annu Rev Biochem 53:323; Itakura et al. (1984) Science 198:1056; Ike et al. (1983) Nucl. Acids Res 11:477を参照]。
試薬又は個々の部分(moieties)の誘導体及び類似体は、当該技術分野で知られた様々な方法で作られる。例えば、ポリペプチド配列は、当該技術分野で知られた任意の方法によって修飾されることができる[例えば、Sambrook, et al., 1990. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., (Cold Spring Harbor Laboratory Press; Cold Spring Harbor, NYを参照]。修飾(modifications)には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミノ化、公知の保護/封鎖基(ptotecting/blocking groups)による誘導体化、抗体分子又はその他の細胞試薬への連鎖(linkage)等が含まれる。当該技術分野で知られた数多くの化学的修飾法のどれを用いることもでき、限定するものでない例として、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的化学切断(chemical cleavage)、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、ツニカマイシンの存在下での代謝合成等を挙げられる。
誘導体又は類似体は、完全な長さであるが、以下に記載されるように、誘導体又は類似体が修飾核酸又はアミノ酸を含む場合には、完全な長さでなくてもよい。試薬の誘導体又は類似体として、限定するものではないが、様々な実施例の中で、アミノ酸が30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、好適には95%以上が同一の領域を含む分子を挙げることができる。なお、比較される同一性とは、(i)同一サイズのアミノ酸配列、(ii)当該技術分野で公知のコンピュータホモロジープログラム(例えば、ウィスコンシンGCGソフトウェア)によって整列された配列、(iii)ストリンジェント(この条件が好ましい)、中程度のストリンジェント、又はストリンジェントでない条件下で、前記ペプチドをエンコードする配列にハイブリダイゼーションが可能な核酸、に関してである[例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley and Sons, New York, NY, 1993を参照]。
試薬の誘導体は、機能的に等価な分子になるように、置換、付加又は削除によってそれらの配列を変更することによって作られることができる。試薬内の1又は2以上のアミノ酸残基は、極性及び正味電荷が同じである別のアミノ酸で置換されることができ、暗黙的変更(silent alteration)の結果となる。その配列内でのアミノ酸の保存的置換(conservative substitutes)は、そのアミノ酸が属する類の中の他のメンバーから選択されることができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンがある。極性のアミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンがある。正帯電の(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンがある。負帯電の(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸がある。
試薬は、CNS障害の病状に関与する任意の座位、例えば、病気の原因である神経細胞不足の任意の座位に対して局部的に投与されることができる。例えば、試薬は、脳の脳室、黒質、線条体、青斑核(locus ceruleous)、マイネルトの基底核、中脳脚橋核、大脳皮質、脊髄及び網膜に局所的に投与されることができる。
神経幹細胞及びそれら子孫の増殖、分化、生存又は移動が生体内で引き起こされるようにするには、宿主に対し、試薬を単独で又は他の試薬と共に投与することにより、又は、細胞の増殖と分化を引き起こす試薬を含む薬学的組成物を投与することによって行なうことができる。薬学的組成物は、阻害作用を妨げる任意の物質、及び/又は、神経幹細胞及び幹細胞の子孫の増殖、分化、移動及び/又は生存を促進する任意の物質を含んでいる。このように生体内でこれら細胞の操作と修飾を行なうことにより、負傷又は疾病による細胞の損失を内生的に補うことができるので、外来細胞(foreign cells)を患者に移植する必要性が無くなる。
<抗体>
本発明は、試薬として用いられる抗体を含んでいる。本明細書で用いられる「抗体」という語は、免疫グロブリン分子、及び該免疫グロブリン(Ig)分子の免疫活性部を意味し、免疫グロブリン分子とは、例えば、抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子である。このような抗体として、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fab、Fab'及びF(ab')2 断片、及び、Fab発現ライブラリーがあるが、これらに限定されるものではない。一般的に、ヒトから得られる抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのどれかのクラスに属しており、これら類は、分子にある重鎖の性質によって互いに区別される。クラスの中には、IgG1、IgG2などのサブクラスを有するものもある。また、ヒトでは、軽鎖がカッパ鎖又はラムダ鎖の場合がある。ここでの抗体の意味は、このようなクラス、サブクラス及びヒトの抗体種の種類に関する全てが含まれる。
本発明の単離された蛋白質は、抗原、又は抗原の一部又は断片として作用することを目的とするもので、ポリクローナル及びモノクローナル抗体調製物を生成するための一般的な技術を用いて、免疫特異的に抗原に結合する抗体を生成するためのイムノゲンとして用いられることができる。完全長さの蛋白質が用いられるが、もう1つの方法として、本発明では、抗原の抗原性ペプチド断片をイムノゲンとして使用に供することもできる。抗原性ペプチド断片は、完全長さの蛋白質のアミノ酸配列のアミノ酸残基を6以上有し、そのエピトープを含んでいるので、ペプチドに対して産生された抗体が、完全長さの蛋白質又は前記エピトープを含む任意の断片と複合した特異的免疫を生成する。抗原性ペプチドは、10以上のアミノ酸残基、又は15以上のアミノ酸残基、又は20以上のアミノ酸残基、又は30以上のアミノ酸残基を有することが好ましい。抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、その表面上にある蛋白質領域であり、通常、これらは親水性の領域である。
本発明の幾つかの実施例において、抗原性ペプチドに含まれるエピトープの少なくとも1つは、PACAP、マキサディラン、VIPの領域、又は、蛋白質の表面の上、例えば疎水性領域に配置されるPACAP、マキサディラン、VIPのレセプターである。ヒトの疎水性分析を行なうと、それらの蛋白質配列は、ペプチドのどの領域が具体的に親水性であるかを示すので、抗体作製を標的にするのに有用な表面の残基をエンコードできる可能性がある。抗体作製を標的にする手段として、親水性及び疎水性の領域を示すハイドロパシープロット(hydropathy plot)を、当該技術分野で広く知られた任意の方法によって作成することができる。そのような方法として、例えば、カイトドリトル法又はホップウッズ法があり、フーリエ変換が行なわれる場合と行われない場合がある[Hopp and Woods, 1981, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 78: 3824-3828; Kyte and Doolittle 1982, J. Mol. Biol. 157: 105-142を参照]。これら文献は全て、引用を以て本願への記載加入とする。抗原性蛋白質、又はその誘導体、断片、類似体若しくは同族体(homologs)の中の1又は2以上のドメインに対して特異的な抗体についても、ここで提供される。
「エピトープ(epitope)」という語は、免疫グロブリン又はT細胞レセプターに特異的結合を行なうことができる全ての蛋白質決定基を含んでいる。エピトープ決定基は、通常は、アミノ酸又は糖側鎖のような化学的に活性界面を有するグループの分子から構成され、特異的な荷電特性だけでなく、特異的な三次元構造特性を有している。PACAP、マキサディラン、VIP、又はリガンド若しくはレセプターポリペプチド又はこれらの断片は、少なくとも1つの抗原性エピトープを含んでいる。本発明の抗PACAP、抗マキサディラン、抗VIP又は抗蛋白質A抗体は、平衡結合定数(KD)が、(KD)≦1μM、望ましくは(KD)≦100nM、より望ましくは、(KD)≦10nM、最も望ましくは、(KD)≦100pMから約1pMであるときに、抗原体に特異的結合をすると言われている。この平衡結合定数は、当業者に知られた放射性リガンド結合アッセイ又は同様なアッセイによって測定されることができる。
本発明の蛋白質又はその誘導体、断片、類似体、同族体若しくは相同分子種(orthologs)に対するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を産生するのに、当該分野で知られた様々な手法を用いることができる[例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow E,and Lane D,1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照。この文献は引用をもって本願への記載加入とする]。これらの抗体の幾つかについて、以下で説明する。
<ポリクローナル抗体>
ポリクローナル抗体は、種々の適当な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス又はその他の哺乳動物)に、天然蛋白質、その人工変異体、又は、前述の誘導体を1又は複数注射することによって免疫化させることにより産生することができる。適当な免疫原生剤(immunogenic preparation)として、例えば、天然由来免疫原生蛋白質、免疫原生蛋白質が化学的に合成されたポリペプチド、又は、組換え発現免疫原生蛋白質(recombinantly expressed immunogenic protein)がある。さらに、蛋白質は、免疫化される哺乳動物中で免疫原生であることを知られている第2の蛋白質に共役結合され(conjugated)てもよい。そのような免疫原生蛋白質として、限定されるものではないが、スカシ貝ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシン阻害剤を例示できる。製剤には、さらに、アジュバント(adjuvant)を含むことができる。免疫反応を増大させるために用いられる種々のアジュバントとして、限定されるものではないが、フロイント(完全及び不完全)、ミネラルジェル(例えば水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、ジニトロフェノール等)、BCG(Bacille Calmette-Guerin)、コリネ菌パルヴムのように人に利用できるアジュバント、又は、同様な免疫刺激因子が挙げられる。使用可能なアジュバントの更なる例として、MPL−TDMアジュバント(モノフォスフォリル脂質A(monophosphoryl Lipid A)、合成トリハロースジコリノミコレート(synthetic trehalose dicorynomycolate))が挙げられる。
免疫原生蛋白質に対するポリクローナル抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離されることができ、さらに、主として免疫血清のIgGフラクションを提供する蛋白質A又は蛋白質Gを用いたアフィニティプロマトグラフィのような公知の技術で精製することができる。その後で、又は前記技術に代えて、求められる免疫グロブリンの標的である特異的抗原又はそのエピトープは、カラム上で固定化され、イムノアフィニティクロマトグラフィによって免疫特異性抗体が精製される。免疫グロブリンの精製については、例えば、D.Wilkinson[The Scientist,published by The Scientist,Inc.,Philadelphia PA,Vol.14,No.8(April 17,2000),pp.25-28]によって説明されている。
<モノクローナル抗体>
ここで用いられる「モノクローナル抗体」(MAb)又は「モノクローナル抗体組成物」という語は、固有の軽鎖遺伝子産生物及び固有の重鎖遺伝子産生物からなる抗体分子の1分子種だけを含む抗体分子の集団を意味する。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDRs)は、集団の分子全てにおいて同じである。MAbsは、抗原結合部位に対して固有の結合親和性によって特徴づけられる抗原の特異的エピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含んでいる。
モノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載されたハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、又はその他適当な宿主動物は、一般的には、リンパ球を引き出す免疫剤で免疫化され、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生又は産生することができる。リンパ球はまた、生体外で免疫化されることもできる。
免疫剤は、一般的には、蛋白質抗原、その断片又はその融合蛋白質を含んでいる。なお、一般的には、ヒト起源の細胞が所望される場合は、末梢血リンパ球が用いられ、ヒト以外の哺乳動物起源の細胞が所望される場合、脾臓細胞又はリンパ節細胞が用いられる。リンパ球は、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて不死化細胞株で融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59-103]。不死化細胞株は、通常は、トランスフォームされた哺乳動物の細胞であり、特に、齧歯動物、牛及びヒトの骨髄腫細胞である。通常は、ラットやマウスの骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、望ましくは融合されていない不死化細胞の成長又は生存を阻害する1又は複数の物質を含む適当な培地の中で培養されることができる。例えば、親細胞が酵母ヒポキサンチングアニンフォスフォシボシルトランスファーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培地には、一般的には、HGPRT欠損細胞(HGPRT-deficient cells)の成長を防止するヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン("HAT培地")が含むことになるであろう。
好適な不死化細胞株は、効果的に融合し、選択された抗体産生細胞によって抗体の安定した高レベル発現をサポートし、HAT培地のような培地に感受性(sensitive)を有する細胞株である。より好適な不死化細胞株は、ハツカネズミの骨髄腫株であり、これは、Salk institute Cell Distribution Center,San Diego,California及びAmerican Type Culture Collection,Nanassas,Virginiaから入手することができる。ヒト骨髄腫細胞株及びマウス・ヒトのヘテロミエローマ細胞株については、ヒトモノクローナル抗体の産生に記載されている[Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984); Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51-63]。
ハイブリドーマ細胞が培養される培地の評価は、抗原に対するモノクローナル抗体の存在を調べることによって行なわれる。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法、又は、放射性免疫測定法(RIA)や酵素標識免疫定量法(ELISA)のようなインビトロ結合試験によって求められることが望ましい。そのような技術及び試験は、当該技術分野で知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、the Scatchard analysis of Munson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)によって決定することができる。モノクローナル抗体の治療への適用においては、標的抗原に対して高い特異度及び高い結合親和性を有する抗体を特定することが目的であり、特に重要である。
所望のハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈法によってサブクローン化され、標準的な手法[Goding,1986]によって成長させることができる。この目的のための適当な培地として、例えば、Dulbecco's Modified Eagle's MediumやRPMI-1640 mediumが挙げられる。一方、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物の腹水のような生体内で成長させることができる。
サブクローンが分泌したモノクローナル抗体は、蛋白質Aセファローズ(protein A-Sepharose)、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又は、親和性クロマトグラフィのように、これまで行われている免疫グロブリン精製法により、培地又は腹水液から単離され又は精製されることができる。
モノクローナル抗体は、米国特許第4,516,567号に記載されているような組換えDNA法によって作製することもできる。本発明のモノクローナル抗体をエンコードするDNAは、従来の手法(例えば、ハツカネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をエンコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)を用いて簡単に単離及び配列することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましいソースとして供される。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターに置き換えられ、通常は免疫グロブリン蛋白質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞の中でモノクローナル抗体の合成が行われる。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖の定常ドメインに対するコード配列を、同種ハツカネズミの配列に置き換えたり[米国特許第4,816,567号; Morrison,Nature 368,812-13(1994)]、非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列の全部又は一部を免疫グロブリンのコード配列に共有結合(covalently joining)することによって、修飾されることができる。そのようは非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインと置き換えたり、本発明の抗体の抗原結合部位の可変ドメインと置き換えて、キメラ二価抗体を作製することもできる。
<ヒト化(humanized)抗体>
本発明の蛋白質抗原に対する抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体をさらに含むことができる。これら抗体は、投与された免疫グロブリンに対してヒトによる免疫反応を引き起こすことがないので、ヒトに投与するのに適している。ヒト化された形態の抗体は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(Fv,Fab,Fab',F(ab')2や抗体の他の抗原結合配列)であり、主としてヒト免疫グロブリンの配列から構成され、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含んでいる。ヒト化は、ウインターらの方法[Jones et al.,Nature,321:522-525(1986); Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988); Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988)]により、齧歯類CDRs又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置き換えることによって行なうことができる[米国特許第5,225,539号も参照]。なお、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基(residues)は、対応する非ヒト残基と置き換えられる。ヒト化された抗体は、受容体抗体の中にも、また、インポートされたCDR又はフレームワーク配列のどちらにも見られない残基を含むこともできる。一般的に、ヒト化された抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの略全部を含んでおり、ここでは、CDR領域の全部又は略全部が非ヒト免疫グロブリンの可変ドメインに対応しており、フレームワーク領域の全部又は略全部は、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列の可変ドメインである。ヒト化された抗体は、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を選択的に含んでおり、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域である[Jones et al.,1986; Riechmann et al.,1988; and Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)]。
<ヒト抗体>
完全な(fully)ヒト抗体は、本質的には、CDRsを含む軽鎖及び重鎖の両鎖の完全配列(entire sequence)がヒト遺伝子に由来する抗体分子に関する。この明細書では、そのような抗体を「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」と称している。ヒトのモノクローナル抗体は、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法[Kozbor,et al.,1983 Immunol Today 4:72参照]、及び、ヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ法[Cole,et al.,1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96参照]によって作製することができる。ヒトのモノクローナル抗体は、本発明の実施に利用されることができ、ヒトのハイブリドーマを用いることにより[Cote,et al.,1983.Proc Natl Acad Sci USA 80:2026-2030参照]、また、ヒトB細胞を、生体外でエプステインバーウィルスでトランスフォームすることにより[Cole,et al.,1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96参照]、産生することができる。
さらにまた、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー[Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991); Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)]を含む追加の手法を用いて産生することもできる。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位を、例えばマウス等のトランスジェニック動物(内因性免疫グロブリン遺伝子は部分的に又は完全に不活性になっている)に導入することによって作製されることができる。挑戦のために、ヒトの抗体産生を観察してみると、遺伝子再構成、組立て、及び抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトに見られるものと非常に似ている。この方法は、例えば米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号の他、Marks et al.[Bio/Technology 10,779-783(1992)]、Lonberg et al.[Nature 368 856-859(1994))、Morrison(Nature 368,812-13(1994)]、Fishwild et al.[Nature Biotechnology 14,845-51(1996)]、Neuberger[Nature Biotechnology 14,826(1996)]及びLonberg and Huszar[Intern.Rev.Immunol.13 65-93(1995)]に記載されている。
ヒト抗体は、さらにまた、抗原による挑戦に応答して、動物の内因性抗体よりもむしろ完全なヒト抗体を産生することができるように修飾されたヒト以外のトランスジェニック動物を用いて産生されることができる[PCT公報WO94/02602号参照]。非ヒト宿主中で重鎖及び軽鎖の免疫グロブリンをエンコードする内因性遺伝子が無能力化され(incapacitated)、ヒトの重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをエンコードする活性座位は、宿主のゲノムの中に挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必須ヒトDNA断片を含む酵母人工染色体を用いて組み入れられることができる。所望される修飾を全て行なうことのできる動物は、修飾の全補体(full complement)よりも少ない中間トランスジェニック動物を異種交配することにより、子孫として得られる。そのような非ヒト動物の望ましい具体例はマウスであり、Xenomouse(商標名)と称され、これについては、PCT公報第WO96/33735号及びWO96/34096号に記載されている。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体の調製物として、対象のイムノゲンで免疫化した後、動物から直接得られることができるし、或いはまた、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのような動物由来の不死化B細胞をから得られることができる。さらにまた、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをエンコードする遺伝子は、抗体を直接得るために回復又は発現されるか、又は、例えば、単鎖Fv分子のような抗体の類似体を得るためにさらに修飾される。
非ヒト宿主がマウスである宿主の産生方法において、内因性免疫グロブリン重鎖の発現が不足する例が、米国特許第5,939,598号に記載されている。この方法は、座位の再構成を防止し、再構成された免疫グロブリンの重鎖座位の転写の形成を防止するために、胚幹細胞内の少なくとも1つの内因性重鎖座位からJセグメント遺伝子を削除することを含んでおり、削除は、選択可能なマーカーをエンコードする遺伝子を含む標的ベクターによって行われ、前記胚幹細胞より、その体細胞及び生殖細胞が、選択可能なマーカーをエンコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスが産生される。
ヒト抗体のように所望の抗体を産生する方法は、米国特許第5,916,771号に開示されている。該特許は、培養中の第1の哺乳動物の宿主細胞に重鎖をエンコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入すること、及び、別の哺乳動物の宿主細胞に軽鎖をエンコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入すること、及び2種類の細胞を融合してハイブリッド細胞を形成することを含んでいる。ハイブリッド細胞は、重鎖と軽鎖を含む抗体を発現する。
この手法をさらに改良し、臨床的に重要なエピトープをイムノゲンの上で同定する方法、及び、これに関連して、高い親和性にて重要なエピトープへ免疫特異的に(immunospecifically)結合する抗体を選択する方法が、PCT公報WO99/53049号に開示されている。
<FAB断片及び単鎖抗体>
本発明の技術は、本発明の抗原性蛋白質の産生に特異的な単鎖抗体の産生に適用することができる[米国特許第4,946,778号参照]。さらにまた、本発明の方法は、Fab発現ライブラリーの構築に適用することができ[Huse,et al.,1989 Science 246:1275-1281参照]、蛋白質、又はその誘導体、断片、類似体若しくは同族体に対して特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速且つ効果的に確認することができる。蛋白質抗原に対するイディオタイプを含む抗体断片は、当該技術分野で知られる手法によって産生することができる。それら断片として、限定するものではないが、(i)抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab')2、(ii)F(ab')2断片のジスルフィド結合を減じることによって生じるFab断片、(iii)パパイン及び還元剤(reducing agent)で抗体分子を処理することにより生じるFab断片、及び、(iv)FV断片、を挙げることができる。
<二重特異性抗体>
二重特異性抗体は、モノクローナルであり、望ましくは、2以上の異なる抗原に対して結合特異性を有するヒト又はヒト化された抗体である。この場合、結合特異性の1つは、本発明の抗原性蛋白質に対するものである。第2の結合標的は、他のどんな抗原でもよいが、細胞表面蛋白質又はレセプター又はレセプターのサブユニットであることが有利である。
二重特異性抗体を作る方法は、当該技術分野で知られている。これまで、二重特異性抗体の組換え作成は、2組の免疫グロブリン重鎖と軽鎖を共同発現させることによって行われており、2つの重鎖は、異なる特異性を有している[Milstein and Cuello,Nature,305:537-5398(1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖をランダムに組み合わせることによって行われ、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadromas))は、異なる抗体分子からなる10種類の潜在的混合物(potential mixture)を作り、そのただ1つだけが正しい二重特異性抗体を有している。正しい分子の精製は、通常、親和性クロマトグラフィによって行なうことができる。同様の手法は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829号、及び、Traunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体−抗原結合サイト)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合される。融合は、好適には、ヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの間で行われる。第1の重鎖定常領域(CH1)は、少なくとも1つの融合の中に存在する軽鎖結合に必要なサイトを含むことが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をエンコードするDNAsは、所望により免疫グロブリン軽鎖と共に、分離発現ベクターに挿入され、適当な宿主有機体へ同時にトランスフェクトされる(co-transfected)。二重特異性抗体の発生について、さらに詳しくは、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照することができる。
WO96/27011号に記載された他の方法によると、一対の抗体分子間の界面は、再組換え細胞用培地から再生されたヘテロダイマーの割合が最大となるように作製されることができる。望ましい境界面は、抗体の定常領域のCH3領域の少なくとも一部を含んでいる。この方法では、第1の抗体分子の境界面から、1又は複数の小さいアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシンやトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同一又は同様の大きさの代償性「キャビティ」は、大きなアミノ酸側鎖を小さなアミノ酸(例えば、アラニンやスレオニン)で置き換えることにより、第2の抗体分子の境界面に作られる。これにより、ホモダイマーのような他の不要な最終産生物と比べて、ヘテロダイマーの収率を向上させる機構が提供される。
二重特異性抗体は、完全長さの抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')2二重特異性抗体)として調製されることができる。抗体断片から二重特異性抗体を生成する技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合により調製することができる。Brennan et al.[Science 229:81(1985)]は、無傷抗体が蛋白質分解によってり分割され、F(ab')2断片が生成される方法を開示している。これらの断片は、ジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、近隣のジチオールを安定化させ、分子間のジスルフィド形成を阻止する。生成されたFab'断片は、次に、チオニトロベンゾネート(TNB)誘導体に変換される。Fab'-TNB誘導体の1つは、メルカプトエチラミンで還元することにより、Fab'チオールに再変換され、等モル量の他のFab'-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的不動化剤として使用されることができる。
さらに、Fab'断片は、大腸菌(E.coli)から直接回収したり、化学的な結合によって、二重特異性抗体が形成される。Shaleby et al.[J.Exp.Med.175:217-225(1992)]は、完全なヒト化二重特異性抗体F(ab')2分子の産生について開示している。各Fab'断片は、大腸菌から別々に分泌され、生体外で化学的に結合されて、二重特異性抗体が形成される。このように形成された二重特異性抗体は、胸部腫瘍ターゲットに対して、ヒト細胞傷害性リンパ球の酵素活性をトリガする他に、ErbB2受容体及び正常T細胞を過剰発現する細胞に結合することができた。
二重特異性抗体断片を、直接、組換え細胞培養から作り、単離する様々な方法が開示されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生される[Kostelny et al.,j.Immunol.148(5):1547-1553(1992)]。Fos蛋白質及びJun蛋白質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により、異なる2種類の抗体のFab'部分に結合された。抗体ホモダイマーは、ヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、再酸化されて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法は、抗体ホモダイマーの産生にも利用することもできる。「二重特異性抗体(diabody)」の技術については、Hollinger et al.[Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)]が記載しており、二重特異性抗体断片を作るための代替機構を明らかにしている。断片は、リンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含んでいる。なお、前記リンカーは、短すぎて、同一鎖上の2つのドメイン間で対形成(pairing)ができない。従って、1つの断片中のVLドメインとVHドメインは、他の断片の相補的なVLドメインとVHドメインとの間で対形成することを強いられ、これによって、2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)ダイマーを用いて、二重特異性抗体断片を作る他の方法も報告されている[Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)参照]。二価より多い抗体についても検討されている。例えば、三価の特異性抗体(trispecific antibodies)が調製されることができる[Tutt et al.,J.Immunol.147-60(1991)]。
例示した二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合することができ、少なくとも1つは、本発明の蛋白質抗原を起源としている。或いはまた、細胞防御機構が特定の抗原を発現する細胞へ集中されるように、免疫グロブリン分子の抗−抗原性アームは、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、又はB7)又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)のようなIgG(FcγR)に対するFc受容体のような白血球上のトリガ分子に結合するアームと結合されることができる。二重特異性抗体は、細胞傷害性剤を、特定の因子を発現する細胞に向かわせるために用いられることができる。これらの抗体は、抗原結合アームと、EOTUBE、DPTA、DOTA又はTETAのような放射性核種キレート剤を所有する。他の二重特異性抗体は、ここに記載された蛋白質抗原に結合し、組織因子(TF)にさらに結合する。
<免疫リポソーム>
ここに開示される抗体はまた、免疫リポソームとして調製されることができる。リポソームは、抗体を含んでおり、当該技術分野で公知の方法により作成されることができる[例えば、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985); Hwang et al., Proc Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980); 米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号参照]。循環時間が向上したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、フォスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-由来フォスファチヂルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いて、逆相蒸発法(reverse-phase evaporation method)によって産生することができる。リポソームは、所定孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが生産される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin et al.らに記載された文献[J.Biol.Chem.,257:286-288(1992)]のリポソームに対し、ジスルフィド相互交換反応を介して、共役結合されることができる。
<抗体治療法>
本発明の抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、及び、完全なヒト抗体があり、本発明の1つである治療剤として用いられることができる。そのような治療剤は、一般的には、被検体の疾病又は病状、特に神経疾患を治療又は防止のために用いられる。抗体の産生は、好適には、その標的抗原に対して高特異性で高親和性を有するものが被検体に投与され、一般的には、標的との結合による効果がもたらされる。この効果は2種類あり、与えられた抗体分子と、標的抗原との相互作用の特異的性質に応じて1つの効果がもたらされる。第1の場合では、抗体の投与によって、標的と、該標的が自然結合する内因性のPACAP、マキサディラン、VIPリガンドとの結合が排除又は阻止される。この場合、抗体は、標的と結合し、自然発生リガンドの結合部位をマスクするので、ここでのリガンドは、エフェクター分子として作用する。このように、レセプターは、リガンドが関与するシグナル伝達経路を媒介する。
或いはまた、前記効果は、標的分子のエフェクター結合部位への結合により、抗体が生理学的結果を引き出すものであるかもしれない。この場合、標的であるPACAP、マキサディラン又はVIPレセプターは調節の必要がある内因性リガンドを有しており、抗体を、代替エフェクターリガンドとして結合し、レセプター主体のシグナル伝達行動を開始する。
本発明の抗体の治療上有効量は、一般的には、治療目的を達成するのに必要な量に関係する。前述したように、これは、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり、標的の機能に干渉する場合と、生理学的応答を促進する場合とがある。投与に必要な量は、特異的抗原の抗体の結合親和性と、投与された抗体が、投与された被検体の自由体積から減少する速度に依存する。
<疾病及び障害>
疾病又は障害でない者のレベル又は生物学的活性と比較して異なるという点によって特徴づけられる疾病及び障害に対しては、反作用(例えば、低減又は抑制)をもたらす治療剤又はPACAP、マキサディラン又はVIPを活性化させる治療剤で治療される。活性に反作用をもたらす治療剤(therapeutics)は、治療的又は予防的目的で投与されるだろう。治療剤の例として、限定されるものではないが、(i)前記ペプチド、類似体、誘導体、断片又はそれらの同族体;(ii)前記ペプチドに対する抗体;(iii)前述のペプチドをエンコード化する核酸;(iv)相同的組換えによる前記ペプチドの内因性機能を「不能にする(knockout)」のに用いられ、機能しないアンチセンス核酸及び核酸(例えば、前記ペプチドに対するコード配列内への異種挿入による)[例えば、Capecchi,1989.Science 244:1288-1292参照];又は、(v)前記ペプチドとその結合相手との相互作用を変える調節剤(例えば、阻害剤、作用剤、拮抗剤であり、本発明の追加のペプチドミメティ又は本発明のペプチドに特異的な抗体を含む)、を挙げることができる。
疾病又は障害でない者のレベル又は生物学的活性と比較して異なるという点によって特徴づけられる疾病及び障害に対しては、活性を向上させる治療剤(例えば、作用剤)で治療される。望ましい実施例において、治療される疾病は、アルツハイマー病、脳梗塞、パーキンソン病が挙げられる。活性を亢進する治療剤は、治療的又は予防的目的で投与されるであろう。使用される治療剤は、限定されるものではないが、前記ペプチド、類似体、誘導体、断片若しくはそれらの同族体、又は生物学的利用能を向上させる作用剤を挙げることができる。
増加又は減少したレベルの検出は、ペプチド及び/又はRNAを定量化し、患者の細胞組織サンプル(例えば、生検組織から)を入手し、発現したペプチド(又は前記ペプチドのmRNAs)について、RNAレベル若しくはペプチドレベル、構造及び/又は活性を生体外で分析することによって行われる。当該技術分野で広く知られた方法として、免疫学的検定法(例えば、ウェスタンブロット分析、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動による免疫沈降法、免疫細胞化学など)、及び/又はmRNAsの発現を検知するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット法、インサイチュ・ハイブリッダイゼーションなど)に限定されるのでなく、包含するものである。
<治療方法>
本発明の他の目的は、PACAP、マキサディラン又はVIPの発現又は活性を治療の目的のために調節する方法に関するものである。一実施例において、本発明の調節方法は、細胞を、PACAP、マキサディラン又はVIPについて1又は2以上の活性を調節する製剤と接触させることを含んでいる。この蛋白質活性を調節する製剤は、例えば、核酸又はタンパク質;PACAP、マキサディラン又はVIP受容体の自然発生コグネイトリガンド(cognate ligand);ペプチド;PACAP、マキサディラン又はVIPのペプチドミミテクス、又は他の小分子など、明細書に記載されたものでよい。一実施例において、製剤は、PACAP、マキサディラン又はVIPのシグナル伝達経路の活性を刺激する。そのような刺激剤の例として、活性PACAP、マキサディラン又はVIPタンパク質の他、細胞内に導入されたPACAP、マキサディラン又はVIPをエンコードする核酸分子を挙げることができる。これらの調節方法は、生体外で(例えば、製剤を用いて細胞を培養することにより)、又は生体内で(例えば、製剤を患者に投与することにより)、行なうことができる。それゆえ、本発明は、特に、神経に関する疾病又は障害をもつ患者を治療する方法を提供するものである。一実施例において、本発明の方法は、試薬(例えば、この明細書に記載されたスクリーニングアッセイによって特定された試薬)、又はPACAP、マキサディラン又はVIPの発現及び/又は活性を調節(例えば、機能向上又は機能低下)する複数の製剤を投与することを含んでいる。他の実施例において、本発明の方法は、NSCの増殖、分化、移動及び/又は生存を調節する治療法として、PACAP、マキサディラン、VIP又は前記蛋白質をエンコードする核酸分子を投与することを含んでいる。
PACAP、マキサディラン又はVIP活性を刺激することは、PACAP、マキサディラン又はVIPが異常に機能低下する状況、及び/又は、PACAP、マキサディラン又はVIP活性の向上が有利な効果をもたらす状況において望ましい。そのような状況の例として、患者の障害が、異常な細胞の増殖及び/又は分化の特徴を有する場合(例えば、パーキンソン病及びアルツハイマー病)を挙げることができる。
<治療剤の生物学的効果の判定>
本発明の様々な実施例において、具体的な治療剤の効果、及びその投与が罹患組織の治療に有効かどうかを判断するために、生体外又は生体内で、適当な検査が行なわれる。
様々な実施例において、その治療剤が、細胞タイプに所望の効果を及ぼすかどうか判断するために、患者の障害に関する代表的な幹細胞又は新たに分化した細胞について、生体外での分析が行われる。治療に用いられる化合物は、人間の患者で試験する前に、適当な動物モデル系で試験される。この動物として、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。同様に、生体内での試験の場合にも、人間の患者に投与する前に、この技術分野で知られた任意の動物モデル系を使用することができる。
<薬学的組成物>
本発明は、中枢神経系又はその他の中枢神経系細胞タイプにおいて損傷又は欠失したニューロンの代替となる子孫を作るために、中枢神経系細胞に影響を及ぼす方法を提供するものであり、神経系疾患又は障害をもつ患者に対し、生体内でNSC又はNPC活性を調節する試薬(例えば、PACAP、マキサディラン又はVIP)を、適当な投与ルートを通じて、適当な形態で投与するものである。本発明の全ての実施例において、神経系の疾病又は障害とは、全ての疾患を含むもので、少なくとも、神経変性障害、神経幹細胞障害、神経前駆体障害、虚血性障害、神経外傷性障害、情動障害、精神神経疾患、網膜の変性疾患、網膜損傷/外傷、学習障害及び記憶障害が含まれる。本発明の一実施例において、神経系の疾病又は障害は、パーキンソン病、パーキンソン病様障害、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄虚血、虚血性脳卒中、脊髄損傷、及び癌関連の脳/脊髄損傷から成る群から選択される。本発明の更なる実施例において、神経系の疾病又は障害は、統合失調症及び他の精神病、滑脳症症候群、うつ病、双極性うつ病/障害、不安症候群/障害、恐怖症、ストレス及び関連症候群、認知機能障害、攻撃性、薬物及びアルコール中毒、脅迫神経行動症、季節気分障害、境界性人格障害、脳性麻痺、生活改善薬、多発脳梗塞性痴呆、レヴィー小体痴呆、加齢関連/老人痴呆、てんかん及び損傷関連てんかん、側頭葉てんかん、脊髄損傷、脳損傷、脳外科手術、外傷関連の脳/脊髄損傷、抗癌治療関連の脳/脊髄組織損傷、感染及び炎症関連の脳/精髄損傷、環境有害物質関連の脳/脊髄損傷、多発性硬化症、自閉症、注意力欠如障害、発作性睡眠、睡眠障害、及び認識行動又は記憶の障害から成る群から選択される。
本発明は、神経系疾患又は障害を治療する方法を提供するもので、生体内で神経幹細胞又は神経前駆体細胞の活性を調節する試薬を哺乳動物へ投与することを含んでいる。「哺乳動物」という語は、哺乳動物として分類される全ての哺乳動物を意味し、人間、牛、馬、犬、羊及び猫を含む。一実施例において、哺乳動物は人間である。
本発明は、神経変性疾患の再生治療(regenerative cure)を提供するもので、細胞が損傷又は欠失した所望神経表現型標的座の中へ、上衣細胞及び副脳室領域細胞の増殖、移動、分化及び生存を刺激することによって治療を施すものである。上衣幹細胞の生体内刺激は、適当な調合形態の試薬を、局部的に細胞へ投与することによって行われる。ニューロン新生の増加により、損傷又は欠失したニューロンが置換され、病的状態の脳機能が高められる。
中枢神経系障害の治療の治療薬として有効な薬学的組成物を提供するものである。該組成物は、例えば、本発明の試薬を含んでおり、該試薬は、単独で投与されるか、又は1種又は2種以上の追加薬剤と共に全身又は局部的に投与される。この薬剤として、保存剤、脳室壁透過性向上剤、幹細胞マイトジェン、生存因子(survival factors)、グリア系統防止剤(glial lineage preventing agents)、抗アポトーシス剤、抗ストレス剤、神経保護剤(neuroprotectants)、解熱剤がある。この薬学的組成物は、細胞(例えば、上皮細胞及び副脳室領域細胞)を刺激することによってCNS疾患を優先的に治療し、細胞が損傷又は欠失した部位を標的とする所望の神経表現型の中で増殖、移動、分化する。
CNSの疾病又は障害をもつ患者を治療する方法を、提供するものである。この方法は、試薬を含む有効量の薬学的組成物を、患者に対して投与することを含んでおり、投与は、(1)単独で、(2)脳室壁透過性向上剤と共に、(3)局部的又は全身に同時投与される薬剤と共に行われ、投与量は、0.001ng/kg/日乃至10mg/kg/日であり、好適には0.01ng/kg/日乃至5mg/kg/日であり、より好適には0.1ng/kg/日乃至1mg/kg/日であり、最も好適には0.1ng/kg/日乃至10μg/kg/日の範囲である。
本発明の薬学的組成物は、所望の投与ルートに適合するように調製される。投与ルートの例として、非経口(例えば、静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。非経口、皮内又は皮下に適用される溶液又は懸濁液は、例えば、注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶剤の如き無菌希釈剤;例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベンの如き抗菌剤;例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムの如き酸化防止剤;例えば、エチレンジアミン四酢酸の如きキレート剤;例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩の如き緩衝剤、及び、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースの如き張力調節剤のような成分を含有することができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調節されることができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器又は複数回投与できるガラス又はプラスチック製の薬瓶に入れられることができる。
注射用に適した薬学的組成物は、注射可能な無菌溶液又は分散を即時調製するための無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散及び無菌粉末を含んでいる。静脈内投与に適した担体(carrier)として、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM (BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。どの場合も、組成物は、無菌であらねばならず、注射器で取り扱える程度に流動性を有するべきである。また、製造及び保存状態では安定であらねばならず、バクテリアや菌類のような微生物の汚染から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適当な混合物を含む溶媒又は分散媒である。適当な流動性を維持するには、例えば、レシチンのようなコーティングを使用し、分散の場合は所定の粒子サイズを維持し、また界面活性剤を使用することによって行なうことができる。微生物の作用を防止するには、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって行なうことができる。多くの場合、組成物の中に、等張剤(例えば砂糖)、多価アルコール(例えば、マニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを含有することが望ましい。注入可能な組成物を長時間に亘って吸収させるには、組成物の中に、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有することが好ましい。
注射可能な無菌溶液は、所定量の活性化合物(例えば、キメラペプチド)を、前掲の1種又は2種以上の成分を含む適当な溶媒の中に加えることによって調製され、所望により、ろ過滅菌される。一般的に、分散剤は、活性化合物を、塩基性分散媒の他に、所望により前掲の成分を含む殺菌用賦形剤の中に加えることによって調製される。注射可能な殺菌溶液の調製に殺菌粉末を用いる場合、その調製は、真空乾燥及び凍結乾燥で行われ、活性成分に、前述の殺菌濾過溶液からの所望成分が加えられた粉末が生成される。
経口組成物は、一般的には、不活性希釈剤又は食用に適する担体を含んでいる。それらは、ゼラチンカプセルに入れられるか、又はタブレットに圧縮される。治療のために経口投与する場合、活性化合物は、賦形剤と共に含められ、タブレット、トローチ又はカプセルの形状で使用される。経口組成物はまた、うがい薬用として流体担体を用いて調合されることができ、流体担体の中の成分は、経口投与され、口の中でゆすいで、吐き出されるか、又は飲み込まれる。薬学的な適合性を有する結合剤及び/又は補助物質を、組成物の一部分として含められることができる。タブレット、錠剤、カプセル、トローチ等は、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンのような結合剤;例えば、でんぷん又は乳糖のような賦形剤;例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)又はコーンスターチのような崩壊剤;例えば、ステアリン酸マグネシウム又はステロテス(Sterotes)のような潤滑剤;例えば、コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;例えば、ショ糖又はサッカリンのような甘味剤;例えば、ペパーミント、サルチル酸メチル又はオレンジ香料のような香料剤、の中の任意の成分、又はこれらと同様な性質を有する任意の化合物を含むことができる。
吸入による投与の場合、その化合物は、例えば二酸化炭素のような気体の発射剤を含む加圧容器若しくはディスペンサーからのエアゾールスプレー又は噴霧器(nebulizer)の形態で供給される。
全身投与は、また経粘膜又は経皮的方法によって行なうことができる。経粘膜又は経皮投与の場合、バリアを適当に通過できるように、浸透剤が調合剤の形態で用いられる。そのような浸透剤は、当技術分野では一般的に知られており、例えば経粘膜投与の場合、洗剤、胆汁塩、フシジン酸誘導体がある。経粘膜投与は、鼻腔用スプレー又は坐薬を使用して行われることもできる。経皮投与の場合、活性化合物は、当該分野で一般的に知られているように、軟膏(ointments)、軟膏(salves)、ジェル又はクリームの中へ調製される。
化合物はまた、坐薬(例えば、カカオバターや他のグリセリドのような従来の坐薬の基剤を有する)、又は直腸送達のための滞留浣腸の形態でも調合されることができる。
一実施例において、活性化合物は担体と共に調製される。該担体は、例えば、制御された徐放製剤(released formation)のように、体部からの急速な放出を防止する化合物を保護するもので、インプラントやマイクロカプセルに入れられた送達システムがある。また、例えばエチレン酢酸ビニール、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性ポリマー、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者であれば明らかであろう。材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。リポソームの懸濁液(ウィルス抗原のモノクローナル抗体で感染細胞にターゲティングされたリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体として使用されることができる。これらは、当業者に知られた方法によって調製されることができる[例えば、米国特許第4,522,811号参照]。
投与を容易にし、投与量の均一性のために、経口組成物又は非経口組成物を用量単位で調製することが特に有利でなる。この明細書で使用される用量単位の形態は、治療される患者に対する単位投与量として適当な量で、物理的に分離した単位を意味し、各単位は、必要な薬学的担体と共に、所望の治療効果がもたらさられるようにに計算された所定量の活性化合物を含有するものである。本発明の用量単位に対する仕様は、活性化合物の特性、達成されるべき具体的な治療効果、また、個々の患者の治療のための活性化合物を調合する技術に固有の制約によって決められ、また、直接左右される。
タンパク剤をエンコードする核酸分子は、ベクターに挿入され、遺伝子治療ベクターとして使用されることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局部投与[米国特許第5,328,470号参照]、又は定位注入[Chen et al.(1994)PNAS 91:3054-3057参照]によって患者へ送達することが可能である。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、遺伝子治療ベクターを、使用が許容される希釈剤の中に含めることができるし、遺伝子送達ビークルが埋め込まれた徐放出性(slow release)マトリックを含むこともできる。或いはまた、完全な遺伝子運搬ベクターは、組み換え細胞、例えばレトロウィルスベクターから無傷状態で生成される場合、薬学的調製物は、遺伝子送達システムをもたらす1又は複数の細胞を含むことができる。
薬学的組成物は、投与の使用説明書と共に、容器、パック又はディスペンサーの中に収容される。
他の実施例において、試薬は、純度90%以上の試薬を含む組成物の中に投与される。試薬は、例えば、PACAP、マキサディラン又はVIPである。
試薬は、好適には、最大の安定性をもたらし、副作用が最少となる媒体の中で調製される。試薬に加えて、本発明の組成物は、一般的には、蛋白質担体、緩衝剤、等張塩及び安定剤を少なくとも1種以上含むことができる。
また、試薬は、ポンプ装置に連結されたカテーテルを挿入する外科手術によって投与することも可能である。ポンプ装置は、埋め込むこともできるし、体外に設置することも可能である。試薬の投与は、間欠脈動(intermittent pulses)でも、又、連続注入としても可能である。脳の分離した部位への注入装置は、当該分野では知られている[米国特許6,042,579; 5,832,932; 4,692,147参照]。
試薬を含有する組成物は、蛋白質の投与形態として知られている任意の形態で投与されることができる。試薬は、当該分野では知られた任意の方法で投与されることができ、血液脳関門を通過してもよいし、バイパスを通るものでもよい。作用因子が血液脳関門を通過可能な方法として、因子のサイズをできるだけ小さくし、より容易に通過させるための疎水性因子を供給し、蛋白質試薬又は他の薬剤を、血液脳関門を通るのに十分な浸透性を有する担体分子に共役接合することを含んでいる[米国特許第5,670,477号参照]。
試薬、誘導体及び同時投与される製剤は、投与に適した薬学的組成物の中へ含められることができる。そのような組成物は、一般的に、製剤及びを薬学的に許容される担体を含んでいる。この明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という語は、薬剤投与に適合可能であればよく、溶媒、分散剤、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含むものである。前記媒体及び作用剤を、薬学的に活性物質に対して用いることは、当該分野で広く知られている。媒体又は製剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、従来の媒体又は製剤を組成物の中に用いることはできるであろう。活性補助化合物は、組成物へ含められることが可能である。ペプチドの可溶性又はクリアランスに影響を与えるために、製剤への修飾が行われる。ペプチド分子はまた、D-アミノ酸と合成され、酵素的分解に対する抵抗性を向上させる。組成物は、可溶化剤、防腐剤、浸透促進剤の1又は2種以上と同時投与が可能である。薬学的に許容される担体の例として、乳糖、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、コーンスターチ、結晶性セルロース、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸エステル、プロピルヒドロキシ安息香酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、不活性ポリマー、水及び鉱油を挙げることができる。
例えば、組成物は、防腐剤、又は蛋白質、炭水化物及び薬学的組成物の密度を増加させる化合物等の担体を含むことができる。組成物はまた、等張塩及び酸化還元制御剤を含むことができる。
いくつかの実施例において、投与される組成物は、試薬と、脳室壁の浸透性を増加させる作用剤、例えば「脳室壁浸透性エンハンサー」の1種又は2種以上を含んでいる。そのような組成物は、注入された組成物を、脳室壁よりも深く浸透するのを助けることができる。適当な脳室壁浸透性エンハンサーの例として、例えば、リポソーム、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)、IL−s、TNFα、ポリオキシエチレン、脂肪酸のポリオキシエチレン エーテル、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、フシジン酸及びその誘導体、EDTA、ジソジウムEDTA、コール酸及び誘導体、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸 、タウロデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、グリココール酸、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、ウロスデオキシコール酸、サポニン、グリシルリジン化アンモニウム、デカメトニウム、臭化デカメトニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、及びジメチルβ-シクロデキストリン又は他のシクロデキストリンを挙げることができる。
<薬剤スクリーニング>
本発明はまた、幹細胞集団又は前駆体細胞集団を分析又は精製するために、レセプター、又はレセプター/試薬の複合体を使用する方法であって、レセプター、又はレセプター/試薬複合体に対する抗体を使用する方法を提供する。
本発明の他の目的は、幹細胞及び前駆体細胞に作用する試薬をスクリーニングする方法を提供することである。用途の中には、神経細胞への成熟を促進し、又は長時間培養中に前記細胞の増殖及び維持を促進する因子をスクリーニングするために、神経細胞(未分化のもの又は分化したもの)が用いられるものもある。例えば、投与量を変えて、培養中の細胞に加えることによって候補試薬のテストを行ない、どんな変更をすべきかについては、細胞をさらなる培養及び使用に供するために要求される基準に基づいて判定される。細胞の物理的特性は、細胞と神経突起の成長を顕微鏡で観察することによって分析される。増殖、分化及び移動について、増加レベルの発現が誘起されたかどうかは、当該分野で広く知られた技術で分析されることができ、増殖及び分化を確認することができる。そのような技術として、PT−PCR、インサイチュ・ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization)及びELISAがある。
一実施例において、未分化のニューロスフェアにおける新規なレセプター/試薬について、RT−PCR技術を用いて検査を行なった。具体的には、この未分化ニューロスフェアの中で亢進された(up-regulated)遺伝子が同定された。この明細書で用いられる「亢進(up-regulation)」という語は、利用可能なレセプター数の増加により、試薬/レセプターの相互作用を増大させるプロセスを意味する。この遺伝子の存在は、NSC機能の調節のシグナル伝達経路の媒介において潜在的役割を有することを示唆している。更に、レセプター又は該レセプターの様々な試薬の発現レベルを知ることにより、疾病の診断、又は疾病における幹細胞及び前駆体細胞の役割を判断することが可能である。遺伝子又は遺伝子産生物の遺伝子配列又はアミノ酸配列の変化を分析することにより、疾病の進行を診断又は予測することが可能である。この分析結果は、幹細胞又は前駆体細胞に基づく治療を疾病に用いることが有用かどうかを判断するのに必要な情報を提供する。
他の実施例において、インサイチュ・ ハイブリダイゼーションは、成体マウスの脳部で行なわれ、成体脳のどの細胞がこれら信号経路を発現するかが判断される。このデータは、様々な神経系疾患の治療法の選択を判断するのに役立つ。
神経細胞に対して試薬が潜在的に有する効果を調べるために、多能性幹細胞に由来するNSCの培養は、正常な神経組織から得られるが、或いはまた、CNS疾患又は障害をもつ宿主からも得られる。培養の選択は、試験される具体的な薬剤及び所望される効果によって決められる。細胞が所定ドナーの組織から入手されると、増殖誘起剤の存在下で、生体外で増殖される。
増殖要因の存在下で増殖された幹細胞の子孫の数及び性質を、何らかの状態で、増加、減少又は変化させる能力を有する様々な生物剤について、既に説明した方法によって増殖された細胞をスクリーニングされる。例えば、NSCの増殖能力を増加又は減少させる試薬をスクリーニングすることは、移植目的のために大量の細胞を発生させるのに有用であろう。これらの研究では、前駆体細胞は対象試薬の存在下でプレーティングされ、増殖と生存の程度が検査され、前駆体細胞及びその子孫について判定される。スクリーニング前に既に分化を誘起された神経系細胞をスクリーニングすることは可能である。分化の前に、試薬を前駆体細胞に適用することにより、分化プロセスにおける試薬の効果を調べることもできる。一般的には、試薬は可溶性にされて、様々な濃度で培地に加えられ、各投与量での薬剤の効果が判定される。培地は、試薬の濃度が略一定に保たれるように、数日毎に試薬が補充される。
増殖の変化の観察は、形成されるニューロスフェアの数の増加又は減少、及び/又は、ニューロスフェアのサイズの増加又は減少について行われる。増殖の変化は、増殖率を反映するものでであり、ニューロスフェア当たりの前駆体細胞の数によって判定される。
これらのスクリーニング方法を用いて、幹細胞及び前駆体細胞の増殖並びに前駆体細胞の分化に及ぼす生物剤の効果、又は分化されたCNS細胞の生存及び機能を試験することにより、CNS細胞の発生前後に及ぼす薬剤の副作用をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニン方法の他の適用例は、薬学的化合物の神経組織に対する効果を試験することである。スクリーニングを行なうのは、化合物が神経細胞に薬学的効果を有するように設計されているためであり、また、どこかで作用するように設計された化合物が、神経系に対して、予期せぬ副作用をもたらすことがあるかもしれないためである。スクリーニングは、本発明の神経前駆体細胞又は最終分化細胞を用いて行なうことができる。
細胞機能の効果は、標準的な検査法を用いて評価されることができ、神経細胞の表現型又は活性の観察、例えば、細胞培養又は適当なモデルにおけるレセプターの結合、増殖、分化、生存が観察される。
<治療的使用>
神経幹細胞は成熟脳室をライニングする組織中にあるという事実は、生体内でのこれら細胞の修飾及び操作に対して、また、CNSの異なる部位に作用する様々な神経系疾患、障害及び損傷の最終治療に対して、いくつかの利点が提供される。それゆえ、これら疾患に対する治療は、患部近傍の脳室周辺の幹細胞が、この明細書に記載の方法を用いて、生体内で操作又は修飾されるように行われる。脳室系は、殆ど全ての脳部位に存在するので、患部へのアクセスを容易に行なうことができる。試薬を含む組成物へ幹細胞を曝露することにより、幹細胞を生体内で修飾するために、脳室ひいては神経幹細胞へ組成物を投与する装置を埋め込むことは比較的容易に行なうことができる。例えば、組成物を送達するために、浸透圧ポンプに取り付けられたカニューレを用いることができる。或いはまた、組成物は直接脳室へ注入されることもできる。神経幹細胞の子孫は、負傷又は疾患によって損傷した部位に移動することができる。また、脳室は多くの脳部位に非常に近接しているため、幹細胞又はそれらの子孫により、分泌された神経剤の拡散が可能となる。
さらなる実施例において、本発明の試薬は、上述の通り、局部的又は全身に投与される薬剤と共に、局部的に投与される。そのような薬剤として、例えば、幹細胞マイトジェン、生存因子、グリア系統防止剤、抗アポトーシス剤、抗ストレス剤、神経保護剤、解熱剤又はそれらの任意の組合せの少なくとも1種を挙げることができる。
薬剤は、本発明の試薬を投与する前、投与する間、投与した後に、全身投与される。局部的投与用薬剤は、本発明の試薬を投与する前、投与する間、投与した後に投与される。
ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病、パーキンソン病、その他、主として前脳に関する神経障害の治療については、生体内で幹細胞の修飾又は操作を行なうために、試薬は、単独で、又は少なくとも1種の追加薬剤と共に前脳の脳室へ送達される。例えば、パーキンソン病は、脳、特に線条体におけるドーパミン量の不足によるものである。従って、患者自身の静止期幹細胞が生体内で分裂を開始するようにし、それらの細胞の子孫が線条体の患部でドーパミン作動性細胞へ分化するようにさせて、ドーパミン量を局部的に上昇するように作用させることが有利である。
通常、ドーパミン作動性ニューロンの細胞体は、中脳の黒質及び隣接部位に位置しており、軸索が線条体へ突出している。本発明の方法及び組成物は、パーキンソン病の治療のために、薬剤の使用及び論議されている多量の胚組織の使用の代替となるものである。ドーパミン細胞は、本発明の試薬を含む組成物を側脳室へ投与することにより、線条体で生成されることができる。
MS及び他の脱ミエリン化又はミエリン形成不全障害の治療、及び筋萎縮性側索硬化症又は他の運動ニューロン疾患の治療については、本発明の試薬は、単独で又は追加の薬剤と共に中心管(central canal)へ送達される。
脳室の直ぐ周辺のCNS組織の治療に加えて、本発明の試薬は、単独で又は追加の少なくとも1種の薬剤と共に、CNS全体を循環するように、腰椎槽へ投与されることができる。
他の実施例において、本発明の試薬を投入する前、投入する間、及び/又は投入した後に、神経保護剤を、全身又は局所的に同時投与されることができる。神経保護剤として、酸化防止剤(例えば、セレニウム、ビタミンE、ビタミンC、グルタチオン、システイン、フラボノイド、キノリン、活性減少酵素などの活性を低下させる物質)、Caチャネル調節剤、Naチャネル調節剤、グルタミン酸受容体調節剤、セロトニン受容体作動剤、リン脂質、不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERMS)、プロゲスチン、甲状腺ホルモン及び甲状腺ホルモン様化合物、サイクロスポリンA及び誘導体、サリドマイド及び誘導体、メチルキサンチン、MAO阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン摂取ブロッカー、ドーパミン作動剤、L−DOPA、ニコチン及び誘導体、及びNOシンターゼ調節剤を挙げることができる。
本発明の試薬は、IV注射の後で発熱する可能性がある[in rats; Am. J. Physiol. Regul. Integr. Comp. Physiol. 2000 278:R1275-81]。それゆえ、本発明は、cox2阻害剤のような解熱剤、インドメタシン、サリチル酸誘導体、その他の一般的な抗炎症性/抗発熱性化合物を、本発明の試薬を投与する前、投与する間、投与した後に、全身又は局所的に投与することができる。
本発明の他の実施例において、カスパーゼ阻害剤並びにアポトーシス酵素及び因子のアンチセンス調節に有用な薬剤を含む抗アポトーシス薬剤を、本発明の試薬を投与する前、投与する間、投与した後に投与することができる。
ストレス症候群はニューロンの新生を低下させるので、患者の治療に際し、例えばグルココルチコイド(例えばRU486)及びベータブロッカーなどの抗ストレス剤を、本発明の試薬を注入する前、注入する間、及び/又は注入した後に、全身又は局所的に投与することが望ましい場合もある。
試薬を投薬する形態の準備方法については、当該分野の技術者にとって既知であるか、又は自明であろう。
投与される試薬の量は、患者のサイズ(体重)及び状態に依存するが、0.5ng/kg/日乃至500ng/kg/日、体積では0.001〜10mlであろう。
治療期間及び試薬の投与期間についても 患者のサイズ及び状態、疾病の重症度の他、用いられる具体的組成物及び方法によって異なる。
CNS疾病又は障害をもつ患者の治療に対する前記方法の各々の有効性については、疾病評価の標準的な検査方法として知られた任意の方法によって判断されることができる。
<具体的な実施例>
本発明の一実施例は、神経系障害の患者に「NSC治療剤」を投与することにより、患者の神経系障害の症状を緩和させる方法に関するものである。NSC治療剤は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤又はこれらの組合せである。NSC治療剤の投与により、生体内でのNSC活性(増殖、分化、移動、又は生存)が調節され、障害の症状が緩和される。
NSC治療剤の投与は、0.001ng/kg/日乃至10mg/kg/日であってよい。この投与量は、好適には、0.01ng/kg/日乃至5mg/kg/日であり、0.1ng/kg/日乃至1mg/kg/日であり、0.1ng/kg/日乃至10μg/kg/日である。
適切な投与量を判断する別の方法として、標的組織の濃度が0.01nM〜1μMに達するように、十分なNSC治療剤を投与することもできる。監視される標的組織は、どの神経組織又はCNS組織であってもよいが、これら組織として、少なくとも、脳室壁、脳室系の壁に隣接する部位、海馬、海馬白板(alveus)、線条体、黒質(substantia nigra)、網膜、マイネルト基底核、脊髄、視床、視床下部、及び大脳皮質がある。他の適当な標的組織として、脳梗塞又は虚血性損傷によって損なわれた組織部位が挙げられる。
NSC治療剤の投与は注入によって行なうことができる。注入方法として、皮下、腹腔内、筋肉内、脳室内、柔組織内、髄膜内、頭蓋内への注入がある。他の実施例では、NSC治療剤の投与は経口によって行なうことができる。他の適当な投与手段として、口腔、鼻腔、又は直腸粘膜への投与がある。更に、NSC治療剤の投与は、ペプチド融合又はミセル送達によって行なうこともできる。
本発明の方法によって治療できる障害は、この明細書に記載した全ての障害を含むものである。これらの障害として、少なくとも、神経変性障害、NSC障害、神経前駆体細胞障害、虚血性障害、神経外傷性障害、情動障害、精神神経疾患、網膜変性疾患、網膜損傷/外傷、認識能力及び学習並びに記憶障害を挙げることができる。
本発明の他の実施例は、NSCにおけるPACAP又はマキサディランのレセプターの活性を調節する方法である。この方法は、レセプターを発現する細胞を調節剤へ曝露することを含んでおり、その結果、NSCは増殖、分化、移動、又は生存を誘起される。この実施例において、調節剤は、外因性試薬、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又は人工抗体)、アフィボディ、又はそれらの組合せである。PACAPレセプターは、調節剤による接触を標的としており、例えば、ADCYAP1R1、VIPR1、又はVIPR2である。同様に、マキサディランレセプターは、例えばADCYAP1R1である。
調節剤は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、又はADCYAP1R1作用剤である。更にまた、調節剤は、患者における安定性及び有効性を向上させるためにペグ化される。ペグ化蛋白質及試薬の方法は、当該分野の専門家には広く知られており、例えば、米国特許第5,166,322号、第5,766,897号、第6,420,339号及び第6,552,170号に記載されている。
望ましい実施例において、NSCは胎児脳、成体脳、神経細胞培養又はニューロスフェアに由来する。他の望ましい実施例において、NSCは、硬膜、末梢神経又は神経節に包まれた組織に由来する。適当なNSCの他の例として、膵臓、皮膚、筋肉、成体骨髄、肝臓、臍帯組織又は臍帯血の幹細胞に由来するNSCが挙げられる。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSCの増殖、ニューロン新生、分化又は移動を刺激する方法に関する。この方法では、成体NSC細胞は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、及びADCYAP1R1作用剤に接触させて、NSC細胞の増殖、ニューロン新生、移動又は分化特性を向上させるものである。NSC細胞は、哺乳類の脳の側脳室壁に由来する。望ましい実施例では、NSCは膵臓、皮膚、筋肉、成体骨髄、肝臓、臍帯組織又は臍帯血の幹細胞に由来する。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSCの増殖及びニューロン新生を相乗的に活性化させる方法に関する。この方法では、哺乳類成体NSCは、成長因子(growth factor)及びNSC治療剤に接触させられる。2種類の試薬は哺乳類のNSC細胞の増殖を、成長因子又はNSC治療剤のどちらの場合よりも速い速度で誘導する。成長因子とNSC治療剤を組み合わせると、相乗効果を有し、成長因子効果とNSC治療剤効果の合計よりも大きくなることは、驚くべき発見である。望ましい実施例において、この方法で使用される成長因子はEGFである。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSCの増殖及びニューロン新生を同時に刺激する方法に関する。この方法では、哺乳類成体NSCは、成長因子及びNSC治療剤に接触される。2種類の試薬は哺乳類のNSC細胞の増殖を、成長因子又はNSC治療剤のどちらの場合よりも速い速度で誘導する。望ましい実施例において、この方法で使用される成長因子はVEGFである。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSCの増殖を刺激する方法に関する。この方法は、NSC治療剤を哺乳類の成体NSCに接触させることを含んでいる。NSC治療剤は、細胞内CREBのリン酸化反応の促進を誘導する。哺乳類成体NSCの増殖は、細胞内CREBリン酸化反応によって誘起される。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSCの増殖を刺激する方法に関する。この方法は、NSC治療剤を哺乳類の成体NSCに接させることを含んでいる。NSC治療剤は細胞内AP−1の転写の促進を誘導する。哺乳類成体NSCの増殖は、細胞内AP−1の転写によって誘起される。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSCの増殖を刺激する方法に関する。この方法は、NSC治療剤を哺乳類の成体NSCに接触させることを含んでいる。NSC治療剤は、細胞内蛋白質キナーゼC活性の向上を誘導する。哺乳類成体NSCの増殖は、細胞内蛋白質キナーゼC活性によって誘起される。
本発明の他の実施例は、哺乳類の成体NSC子孫の生存を、NSC細胞とNSC治療剤との接触によって刺激する方法に関する。NSC子孫の生存の増加は、(1)細胞内CREBリン酸化反応の増加、(2)細胞内AP−1転写の増加、(3)細胞内蛋白質キナーゼC活性の増加、(4)細胞内蛋白質キナーゼA活性の増加、によって特徴付けられ、予測される。哺乳類成体NSCの子孫の生存は、NSC治療剤を使用することにより、上記4つの特徴の中のどれかの特徴を刺激することによって達成される。
本発明の他の実施例は、初代(primary)成体哺乳類のNSCの増殖を刺激して、ニューロスフェアを形成する方法に関する。この方法では、成体哺乳類NSCは、NSC治療剤と接触させられ、細胞を増殖させて、ニューロスフェアが形成される。
本発明の他の実施例は、NSC治療剤を哺乳動物へ投与することにより、哺乳動物の中枢神経系障害の症状を低減する方法に関する。作用剤は、例えば、抗体、アフィボディ、小分子、ペプチド及びレセプターである。レセプターは、PACAP、マキサディラン又はADCYAP1R1に対するレセプターであってよい。望ましい実施例において、投与は局部的又は全身に行われる。投与に際しては、脳室壁透過性向上剤を含めることができる。脳室壁透過性向上剤は、NSC治療剤の投与前又は投与後に投与される。望ましい実施例において、NSC治療剤は、透過性向上剤及び薬学的に許容される担体と混合された後、投与される。望ましい実施例において、本発明の方法は、幹細胞マイトジェン、生存因子、グリア系統防止剤、抗アポトーシス剤、抗ストレス剤、神経保護剤、解熱剤、分化因子(differentiation factors)及びそれらの組合せを更に投与することによって高められる。
本発明の他の実施例は、哺乳動物の神経組織に位置するNSCのインサイチュ増殖、分化、移動又は生存を誘起する方法に関する。この方法は、治療的に有効な量のNSC治療剤を神経組織へ投与し、NSCの増殖、分化、移動、又は生存を誘起することを含んでいる。
本発明の他の実施例は、患者の所定標的組織におけるNSCの成長を促進させる方法に関する。この方法では、標的組織は、PACAP、マキサディラン、VIPR1、VIPR2又はADCYCAP1R1遺伝子をエンコードする推定遺伝子領域(open reading frame)を治療上有効な量が含まれる発現ベクターでトランスフェクトされる。発現ベクターは、推定遺伝子領域の発現を指令し、発現された蛋白質は、標的組織内のNSCの成長を促進する。この方法の利点は、標的組織の全ての細胞又は大部分の細胞がトランスフェクトされる一方、NSC細胞だけが成長を促進するようには仕向けられることである。
トランスフェクション段階は、発現ベクターを注入投与することによって行なわれる。この明細書に記載した任意の注入方法が用いられる。これらの注入方法は、少なくとも、皮下、腹腔内、筋肉内、脳室内、柔組織内、髄膜内又は頭蓋内への注入を含む。発現ベクターは、例えば、リポソ−ムの中に被包された非ウイルス性発現ベクターである。
本発明の他の実施例は、中枢神経系障害をもつ患者に、NSC治療剤を注入することによって、患者の神経発生を促進する方法に関する。
本発明の他の実施例は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、及びADCYCAP1R1作用剤を患者へ注入することにより、患者の中枢神経系障害の症状を緩和する方法に関する。
本発明の他の実施例は、ヒトNSCにリッチ化される細胞集団を生成する方法に関する。この方法は、NSCを有する細胞集団を、PACAP又はマキサディランのレセプター上で決定基と特異的に結合する試薬と接触させること含んでいる。次に、試薬と、前の段階の細胞表面上の決定基との間で接触があった細胞が選択され、中枢神経系幹細胞用に高濃縮される集団が形成される。試薬は、小分子、ペプチド、抗体又はアフィボディである。一実施例において、NSCを含む集団は、神経組織前駆体細胞から入手される。神経組織前駆体細胞は、神経組織を増加させる全ての細胞集団である。例えば、細胞集団は、哺乳類の胎児脳全体、又は哺乳類の成体脳の全体に由来する細胞集団である。更にまた、ヒトNSCは、膵臓、皮膚、筋肉、成体骨髄、肝臓、臍帯組織又は臍帯血などの組織の幹細胞に由来する。記載した方法は、ADCYAP1R1、VIPR1又はVIPR2などのレセプターを発現する細胞をリッチ化するのに有用である。
本発明の他の実施例は、前記の方法によって生成された細胞集団を含む細胞培養を生体外で行なうものである。本発明の他の実施例は、中枢神経系障害の症状を緩和させる方法に関するもので、前記症状を有する哺乳動物に対して、前記細胞を投与することを含んでいる。この方法により作られたヒトNSCを移植されたヒト以外の哺乳動物についても想定されている。ヒト以外の哺乳動物は、例えば、ラット、マウス、ウサギ、馬、羊、豚、又はテンジクネズミである。
本発明の他の実施例は、患者のCNS障害の症状を低減する方法に関するもので、胎児又は成体の組織から単離されたNSCの集団とNSC治療剤を、患者の脊髄へ投与するステップを有している。
本発明の他の実施例は、患者の中枢神経系障害の症状を低減する方法に関する。この方法では、NSC治療剤を発現するウイルスベクターが標的細胞へ注入される。発現のために、ウイルスベクターは、宿主細胞(即ち標的細胞)の中で発現可能なプロモーターに結合されたNSC治療剤をエンコードした核酸を含む少なくとも1つの挿入部位を有することもできる。NSC治療剤は、標的細胞の中で蛋白質を生成するように発現され、前記症状が低減される。望ましい実施例において、ウイスルベクターは、非細胞溶解性ウイルスベクターである。
本発明の他の実施例は、哺乳動物の標的細胞に遺伝子の送達と発現を行なう方法に関する。この方法は、NSC治療剤をエンコードする核酸分子を準備し、該分子が標的細胞で発現可能なプロモータに動作可能に連結されるように、単離された核酸分子挿入のためのウイルスベクターを選択し、単離された核酸断片を前記挿入部位へ挿入し、ベクターを標的細胞に導入し、遺伝子が検出可能なレベルで発現されるようにするものである。
ウイルスは、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス(痘疹)、イリドウイルス、コロナウイルス、トガウイルス、カリシウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス又はピコルナウイルスがある。望ましい実施例において、ウイルス株は、宿主の中で、非悪性となるように遺伝子操作される。
本発明の他の実施例は、神経系疾患の症状を緩和する方法に関するもので、NSCの集団を準備し、PACAP又はマキサディラン又はそれらの組合せを含む溶液の中にNSCを懸濁して細胞懸濁液を作り、該細胞懸濁液を患者の神経系の注射部位へ送達して、症状を緩和するステップを有している。また、細胞懸濁液を送達する前又は送達した後に、成長因子を前記注射部位へ所定時間投与するステップをさらに含めることができる。
本発明の他の実施例は、ヒトNSCにリッチ化される細胞集団を移植する方法に関するもので、NSCを含む集団を、PACAP受容体、マキサディラン受容体又はADCYAP1R1のデターミナントを識別する試薬と接触させ、前記ステップの細胞の表面上で、試薬とデターミナントが接触している細胞を選択して、中枢神経系幹細胞に対して高度にリッチ化される集団を生成し、選択された細胞をヒト以外の哺乳動物に移植することを含んでいる。
本発明の他の実施例は、NSCの表面におけるPACAPレセプター又はマキサディランレセプターを調節する方法に関するもので、レセプターを発現する細胞を、外因性試薬、抗体又はアフィボディに曝露することを含んでおり、それによって、NSCの増殖、分化、生存を誘起するものである。この実施例において、NSCは、胎児脳、成体脳、神経細胞培養又はニューロスフェアに由来するものが挙げられる。
本発明の他の実施例は、単離されたPACAP、マキサディラン又はVIPのレセプター調節剤化合物の候補の中から、NSCの活性を調節する能力を有するものを決定する方法に関するものである。前記方法において、単離された候補化合物を、ヒト以外の哺乳類に投与し、候補化合物が、ヒト以外の哺乳類のNSCの活性を調節する作用を有するかどうかを決定するステップを含んでいる。決定するステップは、ヒト以外の哺乳類の神経への影響を、ヒト以外の哺乳類で候補化合物を投与していない対照と比較することを含んでいる。NSCの活性は、増殖、分化、移動又は生存に関するものである。投与は、例えば、この明細書に記載したペプチド融合又はミセル送達を含む任意の方法を用いた注射によって行なうことができる。
本発明の他の実施例は、NSC細胞における細胞内cAMP又は細胞内アデニル酸シクラーゼ活性の量を増加させる方法に関するもので、細胞とNSC治療剤を接触させることを含んでいる。
本発明の他の実施例は、細胞内cAMP又は細胞内アデニル酸シクラーゼ活性の量を増加させる方法に関するもので、十分な量のPACAP又はマキサディランを患者へ投与することを含んでいる。
本発明はまた、細胞内アデニル酸シクラーゼ活性を促進する薬学的組成物を提供するものである。組成剤は、NSC治療剤を活性成分として含んでいる。一実施例において、NSC治療剤はペグ化される。他の実施例において、薬学的組成物は成長因子を含んでいる。成長因子として、EGF、VEGF、又はその組合せがある。薬学的組成物の形態は任意であり、少なくとも、パッチ、タブレット、カプセル、トローチ、薬包、エリクサー、軟膏、無菌態様、注入可能形態、ハップ剤、パッチ、テープ、坐薬又は無菌粉末が含まれる。薬学的組成物は、NSC治療剤の1回の投与量が例えば0.1〜2000mgである。例えば、薬学的組成物は、NSC治療剤の1回の投与量が10〜1000mgであってよい。薬学的組成物は、細胞内cAMPの向上又は神経系疾患の治療用に使われる。
本発明の他の特徴は、次の代表的な実施例に関する説明によって明らかになるであろう。なお、実施例は、本発明の例示であって、発明を制限するものではない。全ての文献、特許及び特許出願は、それらの引用を以てその全体が本願へ記載加入されるものとする。
成体マウス及びヒトNSC並びに成体マウス及びヒト脳の神経部位におけるadcyap1r1遺伝子の発現
方法
A.マウス及びヒトの培養並びにマウスのニューロスフェアの培養
生後5−6週間のマウスの側脳室の前側壁は、4.5mg/mlグルコース及び80units/mlDNaseを含有するDMEM培地にて、0.8mg/mlヒアルロニダーゼ及び0.5mg/mlトリプシンにより、37℃で20分間、酵素的に解離した。細胞は、ゆっくりと粉砕され、3種類の体積のニューロスフェア培地と混合した。培地は、20ng/mlEGF(特に明記しない限り)、100units/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含有するニューロスフェア培地(DMEM/F12、B27サプルメント、12.5 mM HEPES pH7.4)である。70μmのストレーナーを通過した後、細胞は、160×gで5分間処理し、ペレット化された。次に、上澄みを取り除いた後、細胞は、上記のとおり添加されたニューロスフェア培地で再懸濁し、培養皿にプレーティングし、37℃で培養した。ニューロスフェアは、プレーティング後およそ7日間で分裂できる状態になった。
ニューロスフェア培養を分裂させるために、ニューロスフェアを、160×gの遠心分離を5分間行なって収集した。ニューロスフェアは、HBSS(1x)にて0.5mlトリプシン/EDTAに再懸濁され、37℃で2分間培養し、解離を促進するために、ゆっくりと粉砕した。37℃でさらに3分間培養し、粉砕した後、3種類の氷入りNSPH−培地−EGFを加えて、トリプシンのさらなる活性を停止させる。細胞は、220×gで4分間処理し、ペレット化し、20ng/mlEGF及び1nM bFGFが加えられた新たなニューロスフェアの培地に再懸濁し、プレーティングし、37℃で培養した。
成人ヒトの神経幹細胞(aHNSC)の培養
側脳室の前外側壁からの生検を行なうために、成人のヒト患者から採取し、4.5mg/mlグルコースを含むDMEMにて、PDD(パパイン 2.5U/ml; ディスパーゼ 1U/ml; DnaseI 250 U/ml)により、37℃で20分間、酵素的に解離した。細胞は、ゆっくりと粉砕され、3種類の体積の培地と混合した。培地は、ヒト神経幹細胞プレーティング用培地(Human Neural Stem Cell Plating Medium;HNSCPM)(DMEM/F12;10% ウシ胎仔血清(FBS)である。細胞は、250×gで5分間処理し、ペレット化された。次に、上澄みを取り除いた後、細胞は、HNSCPMで再懸濁し、フィブロネクチンがコートされた培養皿にプレーティングし、5%CO2中、37℃で培養した。その次の日、培地がaHNSC培地(DMEM/F12;BIT9500;EGF20ng/ml;FGF20ng/ml)に変化することにより、培養の増幅展が開始した。aHNSCは、標準条件下で、トリプシン及びEDTAを使用して分割された。次に、反応を抑制するためにFBSを添加し、細胞を250×gで5分間遠心分離を行って収集した。aHNSCは、aHNSC培地に再び再プレーティングされた。
B.RT−PCR
マウスのニューロスフェア及び側脳室壁:
マウスのニューロスフェア及び側脳室壁組織におけるadcyap1r1遺伝子の発現及びそのアイソフォームの存在を、特異的に同定するために、次のプライマー対を作製した。増幅するイソフォームに応じて推定した各プライマー対のバンドサイズを次の表に示す。
Figure 2005538942
ニューロスフェアは、前述のLVWから調製された。第1分割の3日後、ニューロスフェアを採取し、製造者のインストラクションに基づいて、Qiagen[Hilden, Germany]のRNeasy Mini Kitを使用し、トータルRNAを単離した。adcyap1r1 mRNAの存在を検出するのに、ライフ テクノロジー[Gaithersburg, MD]のOne-Step RT-PCR Kitを用いた。簡単に説明すると、各反応に使用したトータルRNAは、12.5ng、アニーリング温度は55℃である。トータルRNAのゲノム汚染によって結果が偽陽性とならないように、同じ反応液中でRT-taqポリメラーゼ混合物とtaqポリメラーゼ単独とを置き換えたものを準備し、RT−PCRと平行して実験を行なった。反応物は、臭化エチジウムを含む1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動を行ない、バンドを紫外線の下で視覚化させた。所望遺伝子のPCR産生物の推定全長に対応するバンドが、クローニングベクターpGEM−Teasyの中にクローン化され、その同一性を確認するための配列が決定された。
成体ヒトの神経幹細胞
HNSC培養におけるadcyap1r1遺伝子の発現及びそのアイソフォームの存在を、特異的に同定するために、次のプライマー対を作製した。増幅するイソフォームに応じて推定した各プライマー対のバンドサイズを次の表に示す。
Figure 2005538942
aHNSCは上記に記載の通り調製され培養された。トータルRNAは、製造者のインストラクションに基づき、QiagenのRNeasy Mini Kitを使用して単離し、DNaseは、Ambion DNase I を使用し、プロトコルに基づいて処理した。adcyap1r1 mRNAの存在を検出するのに、ライフ テクノロジーのOne-Step RT-PCR Kitを用いた。簡単に説明すると、各反応に使用したトータルRNAは、50ng、アニーリング温度は55℃である。トータルRNAのゲノム汚染によって結果が偽陽性とならないように、同じ反応液中でRT-taqポリメラーゼ混合物とtaqポリメラーゼ単独とを置き換えたものを準備し、RT−PCRと平行して実験を行なった。反応物は、臭化エチジウムを含む1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動を行ない、バンドを紫外線の下で視覚化させた。所望遺伝子のPCR産生物の推定全長に対応するバンドが、クローニングベクターpGEM−Teasyの中にクローン化され、その同一性を確認するための配列が決定された。
C.放射性インサイチュ・ハイブリダイゼーションのプローブ
Figure 2005538942
組織の調製及びハイブリダイゼーション
マウスの脳、ヒトの死後の側脳室壁及び海馬組織の一部(14μm)を、−17℃のクリオスタットで切断し、顕微鏡用スライド[Superfrost Plus, BDH, UK]の上で解凍し、4%ホルムアルデヒドの中で5分間保持し、0.2MHCl中で15分間、脱蛋白質化し、0.25%無水酢酸を加え、pH8.0の0.1Mトリエタノールアミンバッファーにて20分間処理し、ハイブリダイゼーションの前にクロロホルム処理を5分間行ない、エタノール濃度を上昇系列で変化させて脱水した。adcyal1rl mRNAを検出するために、アンチセンスcRNAプローブ(公知の全てのアイソフォームに特異性)を、cDNA(上記adcyal1rl遺伝子のコード配列の塩基に対応)を含み、現在[α-35S]UTP-ラベルが付されたプラスミド(pGEM−Teasy)から転写した。プローブ(マウスの場合はPACR1、PACR1S、Hop1、ヒトの場合はPACR1)を用い、切除部を、55℃のハイブリダイゼーションバッファの中で16時間培養した。なお、前記バッファは、1mlにつき、52%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、208mMNaCl、2%の50倍デンハート溶液(1%フィコール、1%ポリビニルピロリデン、1%BSA)10mM Tris pH8.0、1mM EDTA、500ng/mlイーストtRNA、10mMジチオスレイトール(DTT)及び20x106cpmプローブを含んでいる。ハイブリダイゼーション後、0.5M NaCl中、RNase A、10μg/ml、37℃で30分間処理され、4×クエン酸緩衝液(SSC;1xSSCは0.15Mクエン酸ナトリウム、0.015Mクエン酸三ナトリウム、pH7.0)で20分間、2×SSCで10分間、1×SSCで10分間、及び0.5×SSCで10分間、室温で洗浄した。0.1×SSCでは、高ストリンジェンシー洗浄を70℃で30分間行なった。洗浄ステップは全て、1mMDTTを追加した。切除部は、エタノール濃度が上昇系列の液中で脱水し、1晩乾燥させ、頂部に自動X線撮影フィルム[Beta-max、Amersham]が積層されたカセットに3週間組み込んだ。フィルムは、コダックD−19現像液で現像され、1:3に希釈されたコダックRA−3000で定着処理され、洗浄し、乾燥した。切除部は、1:1に希釈されたコダックNTB−2核トラック乳剤に浸漬し、6週間露出し、コダックD−19の中で3分間現像し、コダックRA−3000定着剤で定着処理し、クレシルバイオレットで対比染色した。 ハイブリダイゼーションの特異性の検査は、同じプラスミドから転写したセンスプローブを用いて行なった。この条件下ではハイブリダイゼーションの兆候はなかった。乳剤に浸漬された切除部は、ニコンE600顕微鏡を用いて、手操作で分析した。
結果
図1Aは、全てが既知のマウスadcyaplrlアイソフォームに特異的なプローブを用いて、成体マウスの脳の冠状及び矢状断面におけるadcyaplrl mRNA陽性細胞を明視野観察及び暗視野観察した顕微鏡写真である。図1Aは、海馬の歯状回及び側脳室壁におけるadcyap1r1の発現を表す低倍率顕微鏡写真である。図1B及び図1Dは、側脳室壁の高倍率顕微鏡写真である。側脳室壁の副脳室領域に陽性ラベルの細胞があることに留意されるべきである。図1C及び図1Eは、海馬の歯状回の発現を示している。顆粒細胞層に高レベルのラベルがあることに留意されるべきである。略語DGは歯状回、GCLは顆粒細胞層、LVは側脳室、LVWは側脳室壁、Strは線条体、SVZは副脳室領域を表している。
図2は、全てが既知の遺伝子(A,B)アイソフォームに特異性のプローブ、及び成体マウスの脳の冠状(A,C,E)及び矢状(B,D,F)断面のhop1/2アイソフォーム(C,D)及びショートアイソフォーム(E,F)に特異的なプローブを用いて、adcyaplrl mRNAの発現を観察した低倍率顕微鏡写真である。海馬の歯状回及び側脳室の壁の両アイソフォームの発現に留意されるべきである。略語DGは歯状回、LVは側脳室を表している。
ヒトの側脳室壁(A)の副脳室領域及びヒトの海馬歯状回(B)におけるadcyaplrl mRNA陽性細胞の高倍率顕微鏡写真である。略語DGは歯状回、LVは側脳室を表している。
培養された非接着性マウスニューロスフェア(NS)、マウス側脳室壁(LVW)、脳組織の残部(ROB)(図4及び図5)、及び成体HNSC(図6)から調製されたトータルRNAについて、RT−PCRを、マウス及びヒトのadcyap1r1遺伝子に特異的なプライマー対を用いて行なった。矢印で示されたバンドは、それらが表すadcyap1r1遺伝子のアイソフォームの所望PCR生成品サイズに対応する。図4は、マウスadcyap1r1(801bp)([lane1 NS; lane2LVW; lane3ROB])である。図5は、マウスadcyap1r1ショートフォーム(330bp)及びhop1/2(413/410bp)([lane1 NS; lane2 LVW; lane3 ROB])である。図6は、ヒトadcyap1r1ショートフォーム(330bp)([lane1 NS])及びhop1/2アイソフォーム(413/410bp)([lane2])である。これらバンドの配列により、正しい生成物であることが確認された。マウスhop1及びhop2に対応するバンドの場合、両アイソフォームが同定された。逆転写酵素を使用せずに並列して行なった制御実験は、taqポリメラーゼのみであり、ゲノム汚染による偽陽性バンドを除外した。
PACAPによるAdcyaplrl刺激及びAdcyaplrl特異性作用剤、マキサディランが、生体外で成体マウスのNSCの増殖を媒介する
方法
A.マウスのニューロスフェアの培養
生後5−6週間のマウスの側脳室の前側壁は、4.5mg/mlグルコース及び80units/mlDNaseを含有するDMEM培地にて、0.8mg/mlヒアルロニダーゼ及び0.5mg/mlトリプシンにより、37℃で20分間、酵素的に解離した。細胞は、ゆっくりと粉砕され、3種類の体積のニューロスフェア培地と混合した。培地は、20ng/mlEGF(特に明記しない限り)、100units/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含有するニューロスフェア培地(DMEM/F12、B27サプルメント、12.5 mM HEPES pH7.4)である。70μmのストレーナーを通過した後、細胞は、160×gで5分間処理し、ペレット化された。次に、上澄みを取り除いた後、細胞は、上記のとおり添加されたニューロスフェア培地で再懸濁し、培養皿にプレーティングし、37℃で培養した。ニューロスフェアは、プレーティング後およそ7日間で分裂できる状態になった。
ニューロスフェア培養を分裂させるために、ニューロスフェアを、160×gの遠心分離を5分間行なって収集した。ニューロスフェアは、HBSS(1x)にて0.5mlトリプシン/EDTAに再懸濁され、37℃で2分間培養し、解離を促進するために、ゆっくりと粉砕した。37℃でさらに3分間培養し、粉砕した後、3種類の氷入りNSPH−培地−EGFを加えて、トリプシンのさらなる活性を停止させる。細胞は、220×gで4分間処理し、ペレット化し、20ng/mlEGF及び1nM bFGFが加えられた新たなニューロスフェアの培地に再懸濁し、プレーティングし、37℃で培養した。
組織を解離する化学物質について、トリプシン、ヒアルロニダーゼ及びDNaseは、SIGMAから入手し、培地(DMEM 4.5mg/mlグルコース、及びDMEM/F12)、B27サプルメント及びトリプシン/EDTAは、GIBCOから入手した。プラスチックは全て、コーニングコスター(CorningCostar)から購入した。細胞培養のEGFは、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)から入手した。
B.細胞内のATP分析
細胞内のATPレベルは、細胞数と相関関係を有することが明らかにされている[Crouch,Kozlowski et al.1993]。前述のとおり培養した継代2のマウスのニューロスフェアを、96ウエルのプレートにB27を加えたDMEM/F12に接種した。前記プレートには、単細胞(10000細胞/ウエル)が所定濃度で単細胞被測定物質に加えられている。培養3日後、スウェーデンのBioThemaのATP−SLキットを使用し、製造者のインストラクションに基づいて、細胞内のATPを測定した。PACAPとVIPは、Bachemから購入した。マキサディランの入手先は、Richard G Titus,Dept. Microbiology,Immunology and Pathology,College of Veterinary Medicine and Biological Sciences,Colorado State Univeristyである。
シグナル経路を調べる実験において、細胞は、上述のように単細胞として接種された(seeded)。PACAP、100nMを、10uM PKA阻害剤H89[Alexis-Biochemicals]又は1uM PLC阻害剤U73122[Alexis-Biochemicals]又は1uM PKC阻害剤Go6976[Sigma-Aldrich]と同時に培養した。細胞は、ATPの測定前に4日間培養した。
PACAPとEGFの組合せ効果を分析する実験において、100nMのPACAPは、3nM EGFと共に、3日間培養した。
C.チミジンの取込み
チミジンのDNAへの取込みを調べるために、ニューロスフェアを分割し、1ウエル10,000細胞入りの96ウエルプレートの中で、ニューロスフェア培地に単細胞として接種した。測定される物質は、1組に4つずつ加え、細胞を37℃で3日間培養した。3H−チミジン、10 uCi/mlが、最後の24時間に現れた。細胞は、ろ紙で集められ、放射能(radioactivity)を測した。3H−チミジン(6,7 Ci/mmol)はPerkinElmerから入手した。
D.細胞計数のためのNSCの培養
前側脳室壁を切除し、細胞を上述のように処理した。但し、EGFの代わりに、培地には、PACAP(100nM)又はVEGF(1nM)の一方又は両方が加えられている。細胞懸濁液を、24ウエルプレートのウエルの中にプレーティングした。培地には、PACAP及び/又はVEGFが2日毎にさらに加えた。培養7日後、NSCをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、トリプシン/EDTAで解離させた。1ウエル当たりの細胞数は、バーカーチャンバを用いて計数した。VEGFは、R&Dシステムズから購入した。
E.ウェスタンブロット
成体マウスのNSCとaHNSCを、実施例2(方法A)及び実施例1(方法A)に記載した要領で、調製し、培養した。培養物は、10nMPACAP、又はEGF(1nM)及びFGF(1nM)に、所定時間、曝露した。処理後、細胞は、Patrone et al.[Patrone,Andersson et al.1999]に示されるように、溶出バッファーの中で溶解させた。DNA成分は、細胞抽出物のds DNA計量用ピコグリーンキットを用いて決定した。蛋白質測定は全て、ナノオレンジキットを用いて行なった。等量の蛋白質を、勾配ゲル4−12%、Bis−Trisゲル(NuPage/Mopsバッファー)で処理し、ニトロセルロース膜に転写した。ウェスタンブロットを行ない、リン酸化CREBについては、ウサギの抗ホスホCREB(1:1000,Upstate biotechnology)、二次抗ウサギHRP抗体(1:10.000)を用いてラベル付けした。リン酸化CREB蛋白質バンド(43kD)は、ECLキット[Amersham]を用いて検出された。
F.AP−1 転写調節因子レポーターアッセイ
ベクター:AP−1のレポーター要素及び空のクローニングベクター(pTAL)をルシフェラーゼレポーターと共に含有するベクターDNAを、Promegaから購入した。ベクターを、大腸菌JM−109(Promega)の中で増殖させ、Qiagensのmaxi-prepキット[Qiagen]で精製した。濃度は、およそ1mg/mlベクターに希釈した。
トランスフェクション:過渡トランスフェクション(transient transfection)は、30,000細胞/ウエルを使用し、浮遊ニューロスフェア細胞培養及び接着ニューロスフェア細胞培養(1〜3日間の培養)に、前述のとおり接種することによって行われた。各ウエルには、0.1mgのプラスミド、0.6μgのNupheriニューロン[Biomol]及び0.6μlのFugene−6[Roche]を一時的にトランスフェクトした。プラスミドとNupherinを混合し、DMEM/F12の中で50μl/ウエルとなるまで希釈し、DMEM/F12の中で50μl/ウエルまで希釈されたFugene−6と混合する前に、15分間培養した。プラスミド、Nupherin及びFugene−6の混合物は、20分間培養した。トランスフェクション試薬100μl/ウエルを加える前に、混合物の体積を100μlに調整した。
アッセイ:次の日、一時的にトランスフェクトされた細胞は、MEK阻害剤、PD89059(Sigma-Aldrich)の存在下又は不存在下で、最終濃度が100nM/ウエルとなるように、PACAP[Bachem]が添加された。ルシフェラーゼ活性は、製造者のインストラクションに基づき、定常発光物質(steady glow)[Promega]で分析した。細胞分析はPACAPを添加した後20時間後に行なった。
結果
PACAPは、非接着(non-adherent)培養条件で成体マウスのNSC増殖を刺激する
培養中の神経幹細胞に対するPACAPの効果を調べるために、成体マウスの神経幹細胞を脳の側脳室壁から取り出し、EGFの中でニューロスフェアとして発達させた後、トリプシンを用いて酵素によって解離した。前記細胞は、非接着条件下で3日間、異なる濃度のPACAPが加えられたニューロスフェア培地で培養した。PACAP処理された細胞の数が対照細胞よりも増加しているかどうかを調べるのに、これまで細胞数との相関関係を調べるのに用いられていた細胞内ATPレベル測定方法[Crouch,Kozlowski et al.1993]が用いられた。図7Aは、細胞内のATPレベルが統計学的に有意量増加し、PACAPの投与量に応じて、細胞数が増加することを示している。PACAPの効果が増殖によるものかどうかを調べるために、トリチウム化チミジンを用いて、NSCのDNA合成を評価した。PACAP処理した全ては、対照と比べて、トリチウム化チミジンの含有量が多いほど、PACAPは、非接着条件下でNSCの増殖を促進することが観察された(図7B)。図7に示されたデータは、6通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。対照よりも有意的に増加したレベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.05,**P<0.01,***P<0.005によって決定した。
マキサディランは、非接着培養条件で成体マウスのNSC増殖を刺激する。
マキサディランは、ADCYAP1R1のみに特異的に結合する[Moro and Lerner 1997]。培養中の神経幹細胞におけるマキサディラン及びsMaxの効果を調べるために、成体マウスの神経幹細胞を脳の側脳室壁から取り出し、EGFの中でニューロスフェアとして発達させた後、トリプシンを用いて酵素によって解離した。前記細胞は、非接着条件下で3日間、異なる濃度のマキサディランが加えられたニューロスフェア培地で培養した。マキサディラン処理された細胞の数が対照細胞よりも増加しているかどうかを調べるのに、細胞内ATPレベル測定法を用いた。図8は、細胞内のATPレベルが統計学的に有意量増加し、マキサディランの投与量に応じて、細胞数が増加することを示している。このデータは、ADCYAP1R1を媒介とするマキサディランの効果により、NSCの増殖を促進することを示している。図8に示されたデータは、6通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。対照よりも有意的に増加したレベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.01,**P<0.005によって決定した。
PACAPとEGFは生体外で成体マウスのNSCを相乗的に増殖する
NSCは、PACAP又はEGF又はその両方で処理した。2つの因子のどちらも単独で、細胞内のATPレベル、それゆえ、NSCの数を増加させた。一方、両方を用いると、2つの因子間で相乗効果を示す数値のさらなる上昇があった(図9)。示されたデータは、8通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。対照よりも有意的に増加したレベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.005によって決定した。
PACAP及びVEGFは生体外で成体マウスのNSC数に追加効果を有する
LVWから、NSCを、前述の実施例2(方法A)に記載したとおり調製した。但し、EGFは、省略されるか、又は、PACAP(100nM)、VEGF(1nM)若しくはPACAP(100nM)+VEGF(1nM)と置き換えられている。NSCを7日間培養した後、細胞をトリプシンで解離し、計数した。PACAPで処理されたNSCと比べて、VEGFで処理したNSCは、細胞数の大幅な増加が観察された。しかし、PACAPをVEGFと共に用いると、細胞数にさらなる効果が観察され(図10)、その数値は、これら2つの因子間の相加効果を示している。示されたデータは、4通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。PACAP+VEGFの有意差レベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.05により決定した。
PACAPで刺激された成体マウスのNSC増殖は、PKAによっては阻害されないが、PLC及びPKC阻害剤によって阻害される
ADCYAP1R1を通じてPACAPの効果によってトリガされる細胞内経路については、十分研究されている。PACAP刺激により、ADCYAP1R1は、PLC/PKCとPKAカスケードの両方を引き出す(elicit)ことができる。PACAPのNSC培養に対する増殖効果において、これらカスケードの相対的重要性を調べるために、PLC(U73122)、PKC(Go6976)及びPKA(H89)の阻害剤を、NSC処理したPACAPに加えて、細胞内のATPを検定した。図11に示されるように、PACAPは、対照と比べて、細胞内のATPレベルを有意的に増加させ、その効果は、PKA阻害剤の存在によっても変わらない。これに対し、PLCとPKCの両阻害剤は、PACAPの効果を完全に打ち消してしまう。このデータは、PLC/PKCカスケードが、PACAPの効果を媒介する上で重要な役割を果たしていることを示している。棒は±SEMを表す。対照との有意差レベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);**P<0.01により決定した。PACAP処理との違いについての有意差レベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);**P<0.01により決定した。
PACAPは成体マウス及び成人ヒトNSCのCREBリン酸化反応を刺激する
ADCYAP1R1刺激を通じてPACAPの効果として、転写因子CREBのリン酸化をトリガすることはこれまでから知られている。非接着培養条件下で成長した成体マウス及び未分化のaHNSCが、PACAP処理の際、CREBのリン酸化を引き起こすかどうかを調べるために、PACAPを、上記細胞に15分間と240分間加えて、リン酸化形態のCREBに特異的な抗体によるウェスタンブロッティング技術を用いて分析した。図12Aに示されるように、PACAPへの曝露時間が15分間で、成体マウスのNSCにCREBのリン酸化の亢進(up-regulated)が観察されたが、240分後に、CREBのリン酸化は、基本レベルに戻った。PACAPに対するこの反応は、未分化のaHNSC場合と本質的に同じであり、15分後に、CREBのリン酸化の強力な初期亢進作用が認められたが、240分後には、リン酸化反応レベルが低下し、基本レベルより僅か超える程度になる(図12C)。
PACAPは、MEKシグナル伝達系を通じてAP−1転写を刺激する
PACAPが、非接着培養条件下で生育した成体マウスNSCにおける転写因子AP−1(c−Fos及びc−Junから成る)の発現を促進するかどうか調べるために、AP−1ルシフェラーゼレポーターベクターで成体マウスNSCをトランスフェクトし、PACAP(100nm)を加えた。図13を参照すると、AP−1の発現は、PACAPによって有意的に促進され、反応は、MEK阻害剤、PD89059(10μm)によって阻害されることを示している。ルシフェラーゼ活性は、反応促進のない細胞(対照)と比較した。示されたデータは、8通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。対照よりも有意的に増加したレベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.05によって決定した。
VIPは、成体マウスNSCの増殖を生体内で刺激する
方法
実施例2を参照(方法A及び方法B)
結果
培養中の神経幹細胞に対するVIPの効果を調べるために、成体マウスの神経幹細胞を脳の側脳室壁から取り出し、EGFの中でニューロスフェアとして発達させた後、トリプシンを用いて酵素によって解離した。前記細胞は、非接着条件下で3日間、異なる濃度のVIPが加えられたニューロスフェア培地で培養した。VIP処理された細胞の数が対照細胞よりも増加しているかどうかを調べるのに、これまで細胞数との相関関係を調べるのに用いられていた細胞内ATPレベル測定方法[Crouch,Kozlowski et al.1993]が用いられた。図14は、細胞内のATPレベルが統計学的に有意量増加し、VIPが1μM濃度のときの細胞数増加を示している。図示のデータは、6通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。対照よりも有意的に増加したレベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.005によって決定した。
PACAPは、神経幹細胞の自己再生能及び多能性特性を保持しつつ、初代成体マウスのNSCの増殖を刺激する。
方法
A.ニューロスフェアの培養の計数及び写真撮影
側脳室の前側壁を、実施例2(方法A)と同じ要領で解離し、細胞は、EGFを含有しないニューロスフェアで再懸濁された。細胞の懸濁液は24ウエルプレートに分割され、対照(添加なし)、PACAP処理された細胞及びEGF(1nM)処理された細胞が3通りずつ含まれる。PACAPの最終濃度は100nMであった。7日後、Nikon Eclipse TE300顕微鏡及びNikon Spot Insightカメラを使用して、ニューロスフェアを計数し、写真撮影した。
B.自己再生能及び多能性アッセイ
側脳室の前側壁を、実施例2(方法A)と同じ要領で解離し、細胞は、EGFを含有しないニューロスフェア培地で再懸濁された。細胞の懸濁液は24ウエルプレートに3通りづつ分割され、PACAPを最終濃度100nMになるまで加えた。7日後、マウス神経幹細胞は、実施例1(方法A)と同じ要領で、単細胞に分割された。但し、EGFは含まれていない。細胞を単細胞として再びプレートに載せ、PACAPを100nMになるまで加え、さらに7日間培養した。さらにもう一度、細胞を通過させ、ニューロスフェア培地に単細胞としてプレーティングした。ニューロスフェア培地は、ポリ−D−リジンプレートに1%ウシ胎仔血清[Gibco]及び100nMのPACAP[Bachem]が加えられている。細胞は一晩培養され、その間、細胞は、ポリ−D−リジンプレートに接着され、培地は、100nMのPACAP38を含むがウシ胎仔血清は含まないニューロスフェア培地に変更した。細胞はさらに3日間培養され、その後、PBS(Gibco)で2回洗浄し、室温で15分間4%ホルムアルデヒド(Sigma)で固定され(fixed)、PBSの0.1%トリトンX−100[Sigma]に室温で20分間浸出させた(permeabilised)。固定及び浸出後、細胞は、マウスのモノクローナル抗β−IIIチューブリン(1:1000 Promega)、ウサギの抗GFAP(a:500 Sigma)及びマウスの抗CNPasa(1:500 Sigma)でラベル付けされた。一次抗体は、抗マウスTexas-Red及び抗ウサギFITC(a:500 CVector Laborartories)で視覚化された。全ての抗体は、0.1%トリトンX−100を含むPBSで希釈された。
結果
PACAPは、一次(primary)成体マウスのNSCの増殖、マニューロスフェア形成及び自己再生を促進する
マイトジェンが不存在のときに、PACAPが単独で初代成体NSCの増殖を刺激するように作用するかどうかを調べるために、側脳室の前側壁を解離し、EGFを含まないか又はPACAP(100nM)と置き換えられたニューロスフェア培地に再懸濁した。NSCを7日間培養し、その後、NSCの増殖と形態を検査した。図15は、PACAPで処理されたNSCが増殖してニューロスフェアを形成し、そのサイズ(A及びB)と数(C)は、対照のものより大きいことが観察される。PACAP処理されたニューロスフェアは、PACAPが存在し、他のマイトジェンが無い場合、それらの自己再生能力を保持し、二次及び三次のニューロスフェアを産生したことを示している。複数回通過した(multiply-passaged)PACAPで処理されたニューロスフェアは、EGP処理されたニューロスフェアと比べて、関連のある差異を示さなかった。
PACAP処理によって増殖した成体マウスのNSCは、それらの多能性を保持する
PACAP処理されたNSCが、脳の神経細胞、星状細胞及び乏突起膠細胞の3種類の細胞系統に分化する能力を保持するかどうかを調べるために、ニューロスフェアを分割し、予めポリ−D−リジンで被覆されたペトリ皿上で細胞を自然発生的に分化させた。図16を参照すると、細胞は、神経細胞マーカーチューブリン(A)、星状細胞マーカーGFAP(B)及び乏突起膠細胞マーカーCNPase(C)に対して免疫反応性であり、CNSの全細胞を産生する能力を保持していることを示している。
PACAPは、成体マウスNSCに由来する細胞の生体内生存を促進する
方法
A.細胞培養
実施例2(方法A)に記載の要領にて、生後5〜6週間のマウスの側脳室の前側壁から、成体マウスNSCを培養した。
B.細胞内ATPのアッセイ
細胞内のATP量が細胞数と関連を有することは、これまで明らかにされている[Crouch, Kozlowski et al. 1993]。前述のとおり培養した継代2のマウスのニューロスフェアを、96ウエルのプレートにB27及び1%ウシ胎仔血清を加えたDMEM/F12に接種し、1晩培養した。前記プレートには、単細胞(30000細胞/ウエル)としてポリ−D−リジンがコートされている。その次の日、培地をニューロスフェア培地と取り替え、PACAPを所定濃度まで加えた。培養3日後、スウェーデンのBioThemaのATP−SLキットを使用し、製造者のインストラクションに基づいて、細胞内のATPを測定した。
写真撮影のために、プレートが24ウエルである点以外は上記と同じ密度であるプロトコルを使用した。7日後、Nikon Eclipse TE300顕微鏡及びNikon Spot Insightカメラを使用して、写真撮影した。
C.チミジンの取込み
チミジンのDNAへの取込みを調べるために、前述のとおり培養した継代2のマウスのニューロスフェアを、96ウエルのプレートにB27及び1%ウシ胎仔血清を加えたDMEM/F12に接種し、1晩培養した。前記プレートには、単細胞(30000細胞/ウエル)としてポリ−D−リジンがコートされている。その次の日、培地をニューロスフェア培地と取り替え、PACAPを所定濃度まで加えて、さらに3日間培養した。3H−チミジン、10 uCi/mlが、最後の24時間に現れた。細胞は、フィルター紙に集められ、放射能を測した。3H−チミジン(6,7 Ci/mmol)はPerkinElmerから入手した。
E.ウェスタンブロット
成体マウスのNSCとaHNSCを、実施例5(方法A及びB)及び実施例2(方法A)に夫々記載した要領で、調製し、培養した。培養物は、10nMPACAPに、所定時間、曝露した。処理後、細胞は、Patrone et al.[Patrone,Andersson et al.1999]に示されるように、溶出バッファーの中で溶解させた。DNA成分は、細胞抽出物の2本鎖DNA計量用ピコグリーンキットを用いて決定した。蛋白質測定は全て、ナノオレンジキットを用いて行なった。等量の蛋白質を、勾配ゲル4−12%、Bis−Trisゲル(NuPage/Mopsバッファー)で処理し、ニトロセルロース膜に転写した。ウェスタンブロットを行ない、リン酸化CREBについては、ウサギの抗ホスホCREB(1:1000,Upstate biotechnology)、二次抗ウサギHRP抗体(1:10.000)を用いてラベル付けした。リン酸化CREB蛋白質バンド(43kD)は、ECLキット[Amersham]を用いて検出された。
結果
PACAPは、成体マウスNSCに由来する細胞の生存をin vitroで促進する
培養中の神経幹細胞の分化に対するPACAPの効果を調べるために、成体マウスの神経幹細胞を脳の側脳室壁から取り出し、EGFの中でニューロスフェアとして発達させた後、トリプシンを用いて酵素によって解離した。前記細胞は、接着条件下で3日間、異なる濃度のPACAPが加えられたニューロスフェア培地で培養した。PACAP処理された細胞の数が対照細胞よりも増加しているかどうかを調べるのに、これまで細胞数との相関関係を調べるのに用いられていた細胞内ATPレベル測定方法[Crouch,Kozlowski et al.1993]が用いられた。図17Aは、細胞内のATPレベルが統計学的に有意量増加し、PACAPの投与量に応じて、細胞数が増加することを示している。PACAPの効果が増殖によるものかどうかを調べるために、トリチウム化チミジンを用いて、NSCのDNA合成を評価した。PACAP処理したものと対照を比較すると、トリチウム化チミジンの取込みについて実質的な違いは観察されず、PACAPは、分化するNSCに生存反応(survival reaction)を引き出すことを示している(図17B)。接着条件で成長したNSCについて、PACAP処理しなかったNSCと、100nMPACAPを用いて96時間処理したNSCの位相コントラスト像を、夫々、図C及び図Dに示している。図17A及び17Bに示されたデータは、6通りに行われた実験から得たものである。棒は±SEMを表す。対照よりも有意的に増加したレベルは、対データに対するt検定(paired Student t test);*P<0.05,**P<0.005によって決定した。
PACAPは成体マウスNSCの分化においてCREBリン酸化反応を刺激する
ADCYAP1R1刺激を通じてPACAPの効果として、転写因子CREBのリン酸化をトリガすることはこれまでから知られている。接着培養条件下で成長した成体マウス及び未分化のaHNSCが、PACAP処理の際、CREBのリン酸化を引き起こすかどうかを調べるために、PACAPを、上記細胞に15分間と240分間加えて、リン酸化形態のCREBに特異的な抗体によるウェスタンブロッティング技術を用いて分析した。図12Aに示されるように、PACAPへの曝露時間が15分間で、成体マウスのNSCに分化する際、CREBのリン酸化の亢進が観察されたが、240分後に、CREBのリン酸化は、基本レベルより僅か超える程度になった。
PACAPは、成体マウスNSCの生体外での増殖及びニューロン新生を促進する
方法
A.浸透圧ポンプの埋込み及びPACAP/BrdUの注入
生後10週間のオスのマウス(C57B1/2)に食料と水を自由に与え、12時間毎に明暗サイクルを行ない、右側脳室に、Alzetポンプ(1007D)を使用してPACAP38[Backem]を注入した。投与量は31ng/日(600nMのPACAポンプ濃度で0.5μl/hr.の割合で注入)で、3.5日間又は7日間投与した。DNAのBrdU含有量の定量化によって増殖測定できるように、ブロモデオキシウリジン(BrdU)(50mg/ml)を、注入ビークル(infusion vehicle)(1mg/mlマウス血清アルブミン[Sigma]を含有する0.9%生理食塩水)の中へ含有させた。PACAP/BrdU、又はビークル/BrdUのどちらかを3日間及び5日間注入したグループのマウスは、この時点で死亡した。PACAP/BrdU、又はビークル/BrdUのどちらかを7日間注入したグループは、さらに10日間生存することができた。割り当てられた時間の経過後死亡したマウスについて、PBSで潅流し、脳を取り除き、免疫組織化学分析を行なうための切除前に、−70℃で冷凍した。
B.免疫組織化学
クリオスタットマイクロトームを使用し、脳を14μmの冠状断面に切断した。切断部は、予め処理したスライド上で解凍し、4%(wt/vol)パラホルムアルデヒド/PBSの中で10分間固定させた。細胞核への抗BrdU抗体の接近可能性(accessibility)を向上させるために、PBSで洗浄後、切断部を37℃で30分間2M HClで処理した。切断部をPBSで洗浄し、ブロッキング溶液(blocking solution)(PBS;0.1%Tween;10%ヤギ血清)に移し、4℃で一晩保持した。一次抗体(ラット抗BrdU、Harlan Sera Labs)を、1:100でブロッキング溶液の中で、室温で90分間保持した。PBS/0.1%Tweenの中で3回×30分間洗浄した後、ビオチニル化二次抗体(ヤギ抗ラット、VectorLabs)を1:200に希釈してブロッキング溶液に加え、室温で60分間保持した。Vectastain Kit[VectorLabs]の製造者のインストラクションにより、前記Kitで処理する前に、切断部を2時間洗浄した。1時間洗浄した後、BrdU抗体複合体は、0.01%H22含有0.05%ジアミノベンジジンを使用して検出され、ヘマトキシリンで対比染色を行なった。切断部を、一連の段階的なエタノール濃度で洗浄し、その後、キシレン及び99%エタノールで洗浄し、Pertexに搭載した。切断部を、Nikon Eclipse E600顕微鏡を使用して視覚化し、Nikon Insight CCDカメラを使用して写真撮影した。
NeuNでBrdUを二重標識するための処理を連続して行なった。簡単に説明すると、4%(wt/vol)パラホルムアルデヒド/PBSに10分間固定した後、切断部を4℃のブロッキング溶液(PBS;0.1%Tween;10%ウマ血清)の中で一晩培養した。抗NeuN(マウス、Chemicon)を1:100でブロッキング溶液の中で培養した。PBS/0.1%Tweenで3回×30分間洗浄した後、FITC共役結合された二次抗体(ウマ抗マウス、Vector Laboratories, CA)を1:200で希釈して、室温の適当なブロッキング溶液の中で60分間保持した。切断部は、2時間洗浄した後、4%(wt/vol)パラホルムアルデヒド/PBSで10分間洗浄し、細胞核への抗BrdU抗体の接近可能性を高めるために、37℃で30分間2M HClで処理した。切断部をPBSで洗浄し、ブロッキング溶液(blocking solution)(PBS;0.1%Tween;10%ヤギ血清)に移し、4℃で一晩保持した。一次抗体(ラット抗BrdU、Harlan Sera Labs)を、1:100でブロッキング溶液の中で、室温で90分間保持した。PBS/0.1%Tweenの中で3回×30分間洗浄した後、Texas Red共役抗体(ヤギ抗ラット、VectorLabs)を1:200に希釈してブロッキング溶液に加え、室温で60分間保持した。切断部を2時間洗浄した後、ガラススライドの上に載せた。切断部を、Nikon Eclipse E600顕微鏡を使用して視覚化し、Nikon Insight CCDカメラを使用して写真撮影した。
C.定量化と統計分析
全てのBrdUを標識化する実験では、動物毎に3〜6切断部を分析した。海馬に関しては、切断部を、背側海馬の前部、中部及び後部に分割された断面を、顆粒細胞層(上歯側(superior blade)及び下歯側(inferior blade))全体を包含する領域で分析した。なお、前記顆粒層は、最大2細胞分の幅から門部領域(hilus region)に拡大するものとして規定された内顆粒領域(sub-granular zone)を含んでいる。解剖学的ランドマークに基づいて、対照と実験動物から同等部分が選択され、著者の1人によってコード化され、研究の間中、検査員に秘密にされていた。歯状顆粒細胞層の領域毎のBrdUラベル細胞の数は、手操作で計数された。側脳室壁に関しては、切断部は、脳梁属の後方と、前交連の終結部の前方に集められた。それらは、マウスの脳のアトラスの冠状プレート22〜29番に相当する[Paxinos, G & Franklin, KBJ. The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates, second Edition]。上記の如く、対照と実験動物の同等部分が選択され、著者の1人によってコード化され、研究の間中、検査員には秘密にされていた。BrdU陽性細胞は、側脳室壁の2×250ミクロン片に沿って計数された(図18参照)。歯状顆粒細胞層と、側脳室層の「計数された」領域(上衣細胞層及び副脳室領域を含む)の両方に関する領域測定は、細胞の計数に使用された各スライドから行われた。実験グループの平均値を対照グループの平均値と比較した。歯状脳回のBrdU計数の結果は、それぞれ個々の動物についての面積(mm2)毎のBrdU陽性細胞の平均数として表し、平均±SEMとして報告された。側脳室壁断面の分析によって作製されたデータは、2つの独立した実験から得たものである。面積(mm2)毎のBrdU陽性細胞の数は、対照グループの平均±SEMとして表した。平均値間の差異は、Student's t testによって決定した。
BrdU/NeuNの同時標識化(co-labelling)実験の全てに関して、動物毎に1〜2断面を分析した。海馬に関しては、切断部を、最大2細胞分の幅から門部領域に拡大するものとして規定された内顆粒領域を含む顆粒細胞層(上歯側及び下歯側)全体を包含する領域で分析した。解剖学的ランドマークに基づいて、対照と実験動物から同等部分が選択され、著者の1人によってコード化され、研究の間中、検査員に秘密にされていた。歯状顆粒細胞層の領域毎のBrdU/NeuNラベル細胞の数は、手操作で計数された。歯状顆粒細胞層の領域測定は、細胞の計数に使用された各スライドから行われた。実験グループの平均値を対照グループの平均値と比較した。歯状脳回のBrdU/NeuNの計数の結果は、それぞれ個々の動物について歯状回毎のBrdU/NeuN陽性細胞の平均数として表し、平均±SEMとして報告された。
結果
PACAPは、生体外で、成体マウスの副脳室領域のNSC増殖を刺激する
PACA(ポンプ濃度600nM)又はビークル(vehicle)と、BrdU(ポンプ濃度50mg/ml)とを、0.5μl/hr.の割合で3.5日間、オスの成体マウスの側脳室へ注入した。分裂細胞の核へBrdUを導入することは、細胞の増殖集団を標識する標準的方法であり、分裂幹細胞及びそれらの子孫用として広く用いられるマーカーとなる[Zhang, Zhang et al. 2001]。増殖細胞の核へ導入されたBrdUは、DAB−免疫組織化学によって検出され、全ての核はヘマトキシリンで対比染色される。側脳室の冠状断面でBrdU標識される細胞の数は、PACAP処理したマウス(図18B)の方が、ビークルで処理されたマウス(図18A)よりも、実質的に多いことが示される。データは、2つの独立した実験の代表的な領域である。定量化のために(図18C)、各動物について3〜6の切断面を採取し、囲まれた領域内を目視で計数した。BrdUの免疫反応細胞を計数し、BrdU免疫陽性ビークルで処理された動物(n=11)(ビークルに関して*p<0.05)の平均百分率±SEMとして(n=10)と表した。CCは脳梁、LVは側脳室、Strは線条体である。定量的データを参照すると、PACAP処理したものは、ビークルと比べて、側脳室壁の副脳室領域の増殖が有意的に増大することを示している。
PACAPは、生体内で、成体マウスの海馬NSC/神経前駆体細胞の増殖を刺激する
PACA(ポンプ濃度600nM)又はビークルと、BrdU(ポンプ濃度50mg/ml)とを、0.5μl/hr.の割合で3.5日間、オスの成体マウスの側脳室へ注入した。分裂細胞の核へBrdUを導入することは、細胞の増殖集団を標識する標準的方法であり、分裂幹細胞及びそれらの子孫用として広く用いられるマーカーとなる[Zhang, Zhang et al. 2001]。増殖細胞の核へ導入されたBrdUは、DAB−免疫組織化学によって検出され、全ての核はヘマトキシリンで対比染色される。同側の歯状回の冠状断面でBrdU標識される細胞の数は、PACAP処理したマウス(図19B)の方が、ビークルで処理されたマウス(図19A)よりも、実質的に多いことが示される。データは、2つの独立した実験の代表的な領域である。定量化のために(図19C)、各動物について3個の切断面を採取し、顆粒細胞層(上歯側及び下歯側)の全体を包含する領域の同側(ipsilateral)と対側(contralateral)を目視にて計数した。なお、前記細胞層は、最大2細胞分の幅から門部領域に拡大するものとして規定された内顆粒領域を含んでいる。結果は、1mm2当たりのBrdU免疫陽性細胞数(PACAP n=7)(ビークルn=8)(ビークルに関して*p<0.005)の平均百分率±SEMとして(n=10)と表されている。定量的データを参照すると、PACAP処理したものは、ビークルと比べて、同側の歯状回の増殖が有意的に増大することを示している。
PACAPは、生体内で、生体マウスの海馬神経発生を刺激する
PACA(ポンプ濃度600nM)又はビークルと、BrdU(ポンプ濃度50mg/ml)とを、0.5μl/hr.の割合で7日間、オスの成体マウスの側脳室へ注入した。これにより、マウスは、さらに10日間生存することができた。分裂細胞の核へ導入されたBrdUとNeuN染色剤は、蛍光免疫組織化学によって検出され、BioRad Radiance Confocal顕微鏡を用いて視覚化された。ニューロンの12焦点面において、二重標識された細胞が確認された。定量化のために(図20)、各動物について切断面を採取し、顆粒細胞層(上歯側及び下歯側)の全体を包含する領域の同側を目視にて計数した。なお、前記細胞層は、最大2細胞分の幅から門部領域に拡大するものとして規定された内顆粒領域を含んでいる。結果は、歯状回(PACAP n=6)(ビークルn=8)に対して、BrdU/NeuN陽性細胞の平均±SEMとして(n=10)と表されている。定量的データを参照すると、PACAP処理したものは、ビークルと比べて、同側の歯状回において神経発生の有意的な増加が示されている。
バイオポリマーの配列
本明細書の中で引用したDNAと蛋白質の配列は、次の通りである。
Figure 2005538942
Figure 2005538942
Figure 2005538942
ADCYAP1R1(ヒト)のスプライシング変異
Pantaloni, C., Brabet, P., Bilanges, B., Dumuis, A., Houssami, S., Spengler, D., Bockaert, J. and Journot, L.
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性ポリペプチド(PACAP)レセプターのN末端細胞外領域の可変スプライシングは、ホスホリパーゼC活性におけるPACAP−27及びPACAP−38のレセプター選択性及び相対親和性強度(relative potencies)を調節する。
J. Biol. Chem. 271 (36), 22146-22151 (1996)
MEDLINE 96355616
PUBMED 8703026
Pisegna, J. R. and Wank, S. A.
ヒトの下垂体アデニル酸シクラーゼ活性ポリペプチドレセプターの4つのスプライス変異について、クローニング化とシグナル伝達の特徴付け。アデニル酸シクラーゼ及びホスホリパーゼCに対する二重結合の証拠。
J. Biol. Chem. 271 (29), 17267-17274 (1996)
MEDLINE 96291878
PUBMED 8663363
Figure 2005538942
Figure 2005538942
Figure 2005538942
Figure 2005538942
Figure 2005538942
Figure 2005538942
Figure 2005538942
<参考文献>
・Altman, J. and G. Das (1965). "Autoradiographic and histological evidence of postnatal hippocampal neurogenesis in rats." J Comp Neurol 124: 319-335.
・Altman, J. and G. Das (1967). "Postnatal neurogenesis in the guinea-pig." Nature 214: 1098-1101.
・Arimura, A. (1998). "Perspectives on pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP) in the neuroendocrine, endocrine, and nervous systems." Jpn J Physiol 48(5): 301-31.
・Biebl, M., C. M. Cooper, et al. (2000). "Analysis of neurogenesis and programmed cell death reveals a self-renewing capacity in the adult rat brain." Neurosci Lett 291(1): 17-20.
・Bjorklund, A. and O. Lindvall (2000). "Cell replacement therapies for central nervous system disorders." Nat Neurosci 3(6): 537-44.
・Craig, C. G., V. Tropepe, et al. (1996). "In vivo growth factor expansion of endogenous subependyimal neural precursor cell populations in the adult mouse brain." J Neurosci 16(8): 2649-58.
・Crouch, S. P., R. Kozlowski, et al. (1993). "The use of ATP bioluminescence as a measure of cell proliferation and cytotoxicity." J Immunol Methods 160(1): 81-8.
・Doetsch, F., I. Caille, et al. (1999). "Subventricular zone astrocytes are neural stem cells in the adult mammalian brain." Cell 97(6): 703-16.
・Feany, M. B. and W. G. Quinn (1995). "A neuropeptide gene defined by the Drosophila memory mutant amnesiac." Science 268(5212): 869-73.
・Gage, F. H., G. Kempermann, et al. (1998). "Multipotent progenitor cells in the adult dentate gyrus." J Neurobiol 36(2): 249-66.
・Ghatei, M. A., K. Takahashi, et al. (1993). "Distribution, molecular characterization of pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide and its precursor encoding messenger RNA in human and rat tissues." J Endocrinol 136(1): 159-66. ・Gottschall, P. E., I. Tatsuno, et al. (1994). "Regulation of interleukin-6 (IL-6) secretion in primary cultured rat astrocytes: synergism of interleukin-1 (IL-1) and pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP)." Brain Res 637(1-2): 197-203.
・Gressens, P. (1999). "VIP neuroprotection against excitotoxic lesions of the developing mouse brain." Ann NY Acad Sci 897: 109-24.
・Gressens, P., B. Paindaveine, et al. (1997). "Growth factor properties of VIP during early brain development. Whole embryo culture and in vivo studies." Ann NY Acad Sci 814: 152-60.
・Hansel, D. E., B. A. Eipper, et al. (2001). "Regulation of olfactory neurogenesis by amidated neuropeptides." J Neurosci Res 66(1): 1-7.
・Hansel, D. E., V. May, et al. (2001). "Pituitary adenylyl cyclase-activating peptides and alpha-amidation in olfactory neurogenesis and neuronal survival in vitro." J Neurosci 21(13): 4625-36.
・Hashimoto, H., T. Ishihara, et al. (1993). "Molecular cloning and tissue distribution of a receptor for pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide." Neuron 11(2): 333-42.
・Hashimoto, H., H. Nogi, et al. (1996). "Distribution of the mRNA for a pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide receptor in the rat brain: an in situ hybridization study." J Comp Neurol 371(4): 567-77.
・Herman, J. P. and N. D. Abrous (1994). "Dopaminergic neural grafts after fifteen years: results and perspectives." Prog Neurobiol 44(1): 1-35.
・Jacobson, M. (1991). Histosenesis and morphogenesis of cortical structures. Developmental Neurobiology, Plenum Press, New York: 401-451.
・Jaworski, D. M. and M. D. Proctor (2000). "Developmental regulation of pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide and PAC(1) receptor mRNA expression in the rat central nervous system." Brain Res Dev Brain Res 120(1): 27-39.
・Johansson, C. B., S. Momma, et al. (1 999). "Identification of a neural stem cell in the adult mammalian central nervous system." Cell 96(1): 25-34.
・Johansson, C. B., M. Svensson, et al. (1999). "Neural stem cells in the adult human brain." Exp Cell Res 253(2): 733-6.
・Johe, K. K., T. G. Hazel, et al. (1996). "Single factors direct the differentiation of stem cells from the fetal and adult central nervous system." Genes Dev 10(24): 3129-40.
・Kuhn, H. G. and C. N. Svendsen (1999). "Origins, functions, and potential of adult neural stem cells." Bioessays 21(8): 625-30.
・Kuhn, H. G., J. Winkler, et al. (1997). "Epidermal growth factor and fibroblast growth factor-2 have different effects on neural progenitors in the adult rat brain." J Neurosci 17(15): 5820-9.
・Lerner, E. A., J. M. Ribeiro, et al. (1991). "Isolation of maxadilan, a potent vasodilatory peptide from the salivary glands of the sand fly Lutzomyia longipalpis." J Biol Chem 266(17): 11234-6.
・Lois, C. and A. Alvarez-Buylla (1993). "Proliferating subventricular zone cells in the adult mammalian forebrain can differentiate into neurons and glia." Proc Natl Acad Sci USA 90(5): 2074-7.
・Magavi, S. S., B. R. Leavitt, et al. (2000). "Induction of neurogenesis in the neocortex of adult mice [see comments]." Nature 405(6789): 951-5.
・Masuo, Y., N. Suzuki, et al. (1993). "Regional distribution of pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP) in the rat central nervous system as determined by sandwich-enzyme immunoassay." Brain Res 602(1): 57-63.
・McKay, R. (1997). "Stem cells in the central nervous system." Science 276(5309): 66-71.
・Momma, S., C. B. Johansson, et al. (2000). "Get to know your stem cells." Curr Opin Neurobiol 10(1): 45-9.
・Moore, M. S., J. DeZazzo, et al. (1998). "Ethanol intoxication in Drosophila: Genetic and pharmacological evidence for regulation by the cAMP signaling pathway." Cell 93(6): 997-1007.
・Morio, H., I. Tatsuno, et al. (1996). "Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide protects rat-cultured cortical neurons from glutamate-induced cytotoxicity." Brain Res 741(1-2): 82-8.
・Moro, O. and E. A. Lerner (1997). "Maxadilan, the vasodilator from sand flies, is a specific pituitary adenylate cyclase activating peptide type I receptor agonist." J Biol Chem 272(2): 966-70.
・Moser, A., J. Scholz, et al. (1999). "Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP-27) enhances tyrosine hydroxylase activity in the nucleus accumbens of the rat." Neuropeptides 33(6): 492-7.
・Nakagawa, S., J.-E. Kim, et al. (2002). "Regulation of neurogenesis in adult mouse hippocampus by cAMP and the cAMP response element-binding protein." J Neurosci 22(9): 3673-3682.
・Palmer, T. D., E. A. Markakis, et al. (1999). "Fibroblast growth factor-2 activates a latent neurogenic program in neural stem cells from diverse regions of the adult CNS." J Neurosci 19(19): 8487-97.
・Patrone, C., S. Andersson, et al. (1999). "Estrogen receptor-dependent regulation of sensory neuron survival in developing dorsal root ganglion." Proc Natl Acad Sci USA 96(19): 10905-10.
・Pencea, V., K. D. Bingaman, et al. (2001). "Infusion of Brain-Derived Neurotrophic Factor into the Lateral Ventricle of the Adult Rat Leads to New Neurons in the Parenchyma of the Striatum, Septum, Thalamus, and Hypothalamus." J Neurosci 21(17): 6706-17.
・Piggins, H. D., J. A. Stamp, et al. (1996). "Distribution of pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP) immunoreactivity in the hypothalamus and extended amygdala of the rat." J Comp Neurol 376(2): 278-94.
・Rajan, P. and R. D. McKay (1998). "Multiple routes to astrocytic differentiation in the CNS." J Neurosci 18(10): 3620-9.
・Snyder, E. Y., C. Yoon, et al. (1997). "Multipotent neural precursors can differentiate toward replacement of neurons undergoing targeted apoptotic degeneration in adult mouse neocortex." Proc Natl Acad Sci USA 94(21): 11663-8.
・Takel, N., Y. Skoglosa, et al. (1998). "Neurotrophic and neuroprotective effects of pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP) on mesencephalic dopaminergic neurons." J Neurosci Res 54(5): 698-706.
・Tyrrell, S. and S. C. Landis (1994). "The appearance of NPY and VIP in sympathetic neuroblasts and subsequent alterations in their expression." J Neurosci 14(7): 4529-47.
・Usdin, T. B., T. I. Bonner, et al. (1994). "Two receptors for vasoactive intestinal polypeptide with similar specificity and complementary distributions." Endocrinology 135(6): 2662-80.
・Vaudry, D., B. J. Gonzalez, et al. (2000). "Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide and its receptors: from structure to functions." Pharmacol Rev 52(2): 269-324.
・Vaudry, D., P. J. Stork, et al. (2002). "Signaling pathways for PC12 cell differentiation: making the right connections." Science 296(5573): 1648-9.
・Villalba, M., J. Bockaert, et al. (1997). "Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP-38) protects cerebellar granule neurons from apoptosis by activating the mitogen-activated protein kinase (MAP kinase) pathway." J Neurosci 17(1): 83-90.
・Williams, B. P., J. K. Park, et al. (1997). "A PDGF-regulated immediate early gene response initiates neuronal differentiation in ventricular zone progenitor cells." Neuron 18(4): 553-62.
・Zhang, R. L., Z. G. Zhang, et al. (2001). "Proliferation and differentiation of progenitor cells in the cortex and the subventricular zone in the adult rat after focal cerebral ischemia." Neuroscience 105(1): 33-41.
・Zhong, Y. (1995). "Mediation of PACAP-like neuropeptide transmission by coactivation of Ras/Raf and cAMP signal transduction pathways in Drosophila." Nature 375(6532): 588-92.
全てが既知のマウスadcyaplrlアイソフォームに特異的なプローブを用いて、成体マウスの脳の冠状及び矢状断面におけるadcyaplrl mRNA陽性細胞を明視野観察及び暗視野観察した顕微鏡写真である。 全てが既知の遺伝子アイソフォームに特異性のプローブ、及び成体マウスの脳の冠状及び矢状断面のhop1/2アイソフォーム及びショートアイソフォームに特異的なプローブを用いて、adcyaplrl mRNAの発現を観察した低倍率顕微鏡写真である。 ヒトの側脳室壁の副脳室領域及びヒトの海馬歯状回におけるadcyaplrl mRNA陽性細胞の高倍率顕微鏡写真である。 adcyaplrl遺伝子が、成体マウスの培養された神経幹細胞の中に発現されることを示している。 adcyaplrl遺伝子のショートアイソフォーム及びhop1/2アイソフォームが、成体マウスの培養された神経幹細胞の中に発現されることを示している。 adcyaplrl遺伝子が、成体マウスの培養された神経幹細胞の中に発現されることを示している。 PACAPは、非接着培養条件下で成体マウスのNSC増殖を活性化することを示している。 マキサディランは、非接着培養条件下で成体マウスのNSC増殖を活性化することを示している。 PACAPとEGFは、生体外で、成体マウスのNSCを相乗的に増殖させることを示している。 PACAPとVEGFは、生体外で、成体マウスのNSCの数に相加的効果を有することを示している。 成体マウスのNSC増殖におけるPACAPの刺激作用は、PKA阻害物質ではなく、PLC及びPKC阻害物質によって阻害されることを示している。 PACAPは、成体マウス及び成人ヒトのNSCにおいてCREBリン酸化反応を刺激することを示している。 PACAPは、MEKシグナル伝達経路を通じて、AP−1転写を刺激することを示している。 VIPは、生体外で成体マウスのNSC増殖を刺激することを示している。 PACAPは、生体外で初代(primary)成体マウスのNSC増殖及びニューロスフェア形成を刺激することを示している。 PACAP治療後に増殖する成体マウスのNSCは、多能性を維持して、ニューロン(β−III チュブリン(A))、星状細胞(GFAP(B))、乏突起膠細胞(CNPase(C))を形成する。 PACAPは、生体外で、成体マウスのNSCに由来する細胞の生存を促進することを示している。 PACAPは、生体内で、成体マウスの副脳室領域のNSCの増殖を刺激することを示している。 PACAPは、生体内で、成体マウスの海馬NSC/神経前駆細胞の増殖を刺激することを示している。 PACAPは、生体内で、成体マウスの海馬神経発生を刺激することを示している。

Claims (65)

  1. 患者の神経系障害の症状を緩和する方法であって、
    生体内でNSC活性を調節するために、神経系障害の疾病又は障害をもつ患者に対し、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤又はそれらの組合せを投与することを含んでいる、方法。
  2. NSC活性は、増殖、分化、移動又は生存である請求項1の方法。
  3. PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤又はそれらの組合せが投与される量は、0.001ng/kg/日乃至10mg/kg/日である請求項1の方法。
  4. PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤は、標的組織の濃度が0.01nM−1μMとなるように投与される請求項1の方法。
  5. 標的組織は、脳室壁、脳室系の壁に隣接する部位、海馬、海馬白板、線条体、黒質、網膜、マイネルト基底核、脊髄、視床、視床下部及び大脳皮質からなる群から選択される請求項4の方法。
  6. PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤は注射によって投与される請求項1の方法。
  7. 注射は、皮下、腹腔内、筋肉内、脳室内、柔組織内、髄膜内又は頭蓋内へ行われる請求項6の方法。
  8. PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤は経口投与される請求項1の方法。
  9. 神経系の疾病又は障害は、神経変性障害、NSC障害、神経前駆体障害、虚血性障害、神経外傷性障害、情動障害、精神神経疾患、網膜変性疾患、網膜損傷/外傷、認識能力障害並びに学習及び記憶障害からなる群から選択される請求項1の方法。
  10. PACAPレセプター若しくはマキサディランレセプター、又はPACAP及びマキサディランのレセプターのNSCに対する作用を調節する方法であって、前記レセプターを発現する細胞を、調節剤に曝露するステップを含んでおり、前記曝露の結果、NSCにより、増殖、分化、移動又は生存が誘起される、方法。
  11. 調節剤は、外因性試薬、抗体、アフィボディ又はこれらの組合せである請求項10の方法。
  12. PACAPレセプターは、ADCYAP1R1、VIPR1又はVIPR2である請求項10の方法。
  13. マキサディランレセプターは、ADCYAP1R1である請求項10の方法。
  14. 調節剤は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される請求項11の方法。
  15. 調節剤は、ペグ化される請求項11の方法。
  16. 抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である請求項11の方法。
  17. NSCは、胎児の脳、成体の脳、神経細胞培養又はニューロスフェアに由来する請求項10の方法。
  18. NSCは、硬膜、末梢神経又は神経節に包まれた組織に由来する請求項10の方法。
  19. NSCは、膵臓、皮膚、筋肉、成体骨髄、肝臓、臍帯組織又は臍帯血からなる群から選択される組織の幹細胞に由来する請求項10の方法。
  20. 哺乳類の成体NSCの増殖又は神経発生を刺激する方法であって、哺乳類の成体NSCを含む細胞集団を、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される製剤に接触させて、接触処理されたNSCを生成するステップを含んでおり、処理されたNSC細胞は、処理されていない細胞と比べて、増殖又は神経発生がすぐれている、方法。
  21. NSCは、哺乳類の脳の側脳室壁に由来する請求項20の方法。
  22. NSCは、膵臓、皮膚、筋肉、成体骨髄、肝臓、臍帯組織又は臍帯血からなる群から選択される組織の幹細胞に由来する請求項20の方法。
  23. 処理されたNSCは、処理されていない細胞と比べて、分化、生存又は移動がすぐれている請求項20の方法。
  24. 哺乳類の成体NSCの増殖又は神経発生を相乗的に刺激する方法であって、哺乳類の成体NSCを含む細胞集団を、成長因子と製剤とに接触させるステップを含んでおり、前記製剤は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される、方法。
  25. 哺乳類の成体NSCの増殖の刺激は、成長因子による刺激又は前記製剤単独での刺激よりも大きい請求項24の方法。
  26. 哺乳類の成体NSCの増殖の刺激は、成長因子による刺激と前記製剤単独での刺激の和よりも大きい請求項24の方法。
  27. 成長因子はEGFである請求項24の方法。
  28. 哺乳類の成体NSCの増殖を刺激する方法であって、哺乳類の成体NSCを含む細胞集団を、VEGFと製剤とに接触させるステップを含んでおり、前記製剤は、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される、方法。
  29. NSCの増殖を促進する方法であって、細胞内CREBのリン酸化反応を促進するステップを含んでいる、方法。
  30. 細胞内CREBのリン酸化反応を促進するステップは、NSCを、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される製剤と接触させることを含んでいる請求項29の方法。
  31. NSCの増殖を促進する方法であって、細胞内AP−1の転写を促進するステップを含んでいる、方法。
  32. 細胞内AP−1の転写を促進するステップは、NSCを、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される製剤と接触させることを含んでいる請求項31の方法。
  33. NSCの増殖を促進する方法であって、細胞内蛋白質キナーゼCの活性を向上させるステップを含んでいる、方法。
  34. 細胞内蛋白質キナーゼCの活性を向上させるステップは、NSCを、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される製剤と接触させることを含んでいる請求項33の方法。
  35. 哺乳類の成体NSCの子孫の生存を刺激する方法であって、哺乳類の成体NSCの子孫における細胞内CREBのリン酸化反応を促進するステップを含んでいる、方法。
  36. 細胞内CREBのリン酸化反応を促進するステップは、NSCを、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される製剤と接触させることを含んでいる請求項35の方法。
  37. ニューロスフェアを形成するために、一次成体成体哺乳類NSCの増殖を刺激する方法であって、増殖NSCを生成するために、細胞を、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤からなる群から選択される製剤と接触させることを含んでいる、方法。
  38. 哺乳類の神経組織にあるNSCの増殖、分化、移動又は生存を、その位置にて促進する方法であって、細胞の増殖、分化、分化又は生存を促進するために、治療上有効な量のPACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、又はADCYAP1R1作用剤を神経組織に投与することを含んでいる、方法。
  39. 患者の所望される標的組織の中のNSCの成長を促進する方法であって、
    (a) 標的組織を、PACAP、マキサディラン、VIPR1、VIPR2又はADCYCAP1R1遺伝子をエンコードする推定遺伝子領域を治療上有効な量が含まれる発現ベクターでトランスフェクトし、
    (b) 推定遺伝子領域を発現して、標的組織に蛋白質を生成する、
    ステップを含んでいる、方法。
  40. トランスフェクトするステップは、発現ベクターを注射によって投与することを含んでいる請求項39の方法。
  41. 発現ベクターは、リポソ−ムに被包された非ウイルス性発現ベクターである請求項39の方法。
  42. 中枢神経系の障害をもつ患者の神経発生を高める方法であって、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤又はそのADCYAP1R1作用剤を、患者に注入するステップを含んでいる、方法。
  43. 注入は、脳室内、静脈内、舌下、皮下及び動脈内への注入からなる群から選択される請求項42の方法。
  44. 患者の中枢神経系障害の症状を緩和する方法であって、PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤及びADCYAP1R1作用剤を、患者に注入するステップを含んでいる、方法。
  45. ヒトのNSCに対してリッチ化される細胞集団を作る方法であって、
    (a) NSCを含む細胞集団を、PACAPレセプター、マキサディランレセプター又はADCYAP1R1のデターミナントを識別する試薬と接触させ、
    (b) 前記ステップ(a)の細胞の表面上で、試薬とデターミナントが接触している細胞を選択して、中枢神経系幹細胞に対して高度にリッチ化される集団を作る、
    ことを含んでいる方法。
  46. 試薬は、小分子、ペプチド、抗体及びアフィボディから成る群から選択される請求項45の方法。
  47. NSCを含む集団は、神経組織から得られる請求項45の方法。
  48. 細胞集団は、全哺乳類の胎児脳又は全哺乳類の成体脳に由来する請求項45の方法。
  49. ヒトのNSCsは、膵臓、皮膚、筋肉、成体骨髄、肝臓、臍帯組織又は臍帯血からなる群から選択される組織の幹細胞に由来する請求項45の方法。
  50. 生体外の細胞培養であって、請求項45の方法によって生成された細胞集団を含んでおり、前記細胞集団は、ADCYAP1R1、VIPR1及びVIPR2からなる群から選択されるレセプターを発現する細胞にリッチ化される請求項、生体外の細胞培養。
  51. 中枢神経系障害の症状を緩和する方法であって、請求項50の細胞集団を、その投与を必要とする哺乳類に対して投与することを含んでいる、方法。
  52. 患者の中枢神経系障害の症状を低減する方法であって、
    (a) 胎児又は成体の組織から単離したNSCsの集団と、
    (b) PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤又はそれらの組合せと、
    を含む組成物を、患者の脊髄へ投入するステップを有しており、これによって症状が低減される、方法。
  53. 患者の中枢神経系障害の症状を低減する方法であって、
    (a) PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤又はADCYAP1R1作用剤をエンコードする核酸であって、その遺伝子が宿主で発現能力を有するプロモータに操作可能に結合された核酸を含む挿入部位を少なくとも1つ有するウイルスベクターを、標的細胞に導入し、
    (b) 標的細胞内で蛋白質が産生されるように核酸を発現させる、
    ステップを有しており、これによって症状が低減される、方法。
  54. 患者の神経系の疾病又は障害の症状を緩和する方法であって、
    (a) NSCの集団を準備し、
    (b) PACAP、マキサディラン、PACAPレセプター作用剤、ADCYAP1R1作用剤又はそれらの組合せを含む溶液の中にNSCを懸濁させて、細胞懸濁液を生成し、
    (c) 前記細胞懸濁液を、患者の中枢神経系の注入部位に送達する、
    ステップを有しており、これによって症状が緩和される、方法。
  55. 細胞懸濁液を送達するステップの前に、成長因子を、前記注入部位に所定時間投与するステップをさらに有している請求項54の方法。
  56. 送達ステップの後、成長因子を、前記注入部位に投与するステップをさらに有している請求項54の方法。
  57. ヒトのNSCにリッチ化される細胞集団を移植する方法であって、
    (a) NSCを含む集団を、PACAPレセプター、マキサディランレセプター又はADCYAP1R1のデターミナントを識別する試薬と接触させ、
    (b) 前記ステップ(a)の細胞の表面上で、試薬と決定要素が接触している細胞を選択して、中枢神経系幹細胞に対して高度にリッチ化される集団を作り、
    (c) 前記ステップ(b)の選択された細胞を、ヒト以外の哺乳類に移植する、
    ステップを含んでいる、方法。
  58. NSCの表面で、マキサディランレセプター作用剤、PACAPレセプター作用剤又はADCYAP1R1作用剤を調節する方法であって、レセプターを発現する細胞を、外因性試薬、抗体又はアフィボディと接触させることを含んでおり、前記接触により、NSCの増殖、分化又は生存が引き起こされる、方法。
  59. NSCは、胎児の脳、成体の脳、神経細胞培養又はニューロスフェアに由来している請求項58の方法
  60. 単離されたPACAP又はマキサディランのレセプター調節剤コンパウンド候補について、NSC活性を調節する能力を有するかどうかを判定する方法であって、
    (a) 単離された候補コンパウンドを、ヒト以外の哺乳類に投与し、
    (b) 候補コンパウンドが、ヒト以外の哺乳類の中でNSC活性を調節する作用を有するかどうかを判定する、
    ステップを含んでいる、方法。
  61. 決定するステップは、ヒト以外の哺乳類の神経への影響を、ヒト以外の哺乳類で候補コンパウンドが投与されていない対照と比較することを含んでいる請求項60の方法。
  62. NSCの活性は、増殖、分化、移動又は生存である請求項60の方法。
  63. PACAP又はマキサディランレセプター調節剤は注射によって投与される請求項60の方法。
  64. 注射は、皮下、腹腔内、筋肉内、脳室内、柔組織内、髄膜内又は頭蓋内へ行われる請求項63の方法。
  65. PACAP又はマキサディランレセプター調節剤は、ペプチド融合又はミセル送達によって投与される請求項60の方法。
JP2004500899A 2002-05-03 2003-05-02 成体の神経幹又は前駆体細胞に関するpacap、vip及びマキサディランの機能的役割及び治療への使用可能性 Withdrawn JP2005538942A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US37773402P 2002-05-03 2002-05-03
US39326402P 2002-07-02 2002-07-02
US42682702P 2002-11-15 2002-11-15
PCT/IB2003/002167 WO2003092716A2 (en) 2002-05-03 2003-05-02 Therapeutic use of pacap, maxadilan, pacap receptor agonist and/or adcyap1r1 in the treatment of cns disorders

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005538942A true JP2005538942A (ja) 2005-12-22

Family

ID=29407800

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004500899A Withdrawn JP2005538942A (ja) 2002-05-03 2003-05-02 成体の神経幹又は前駆体細胞に関するpacap、vip及びマキサディランの機能的役割及び治療への使用可能性

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20040038888A1 (ja)
EP (1) EP1507551A2 (ja)
JP (1) JP2005538942A (ja)
AU (1) AU2003228050A1 (ja)
CA (1) CA2485216A1 (ja)
WO (1) WO2003092716A2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012503674A (ja) * 2008-09-25 2012-02-09 ジ アドミニストレーターズ オブ ザ トゥレーン エデュケーショナル ファンド 抗癌剤との補助的治療薬としての下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(pacap)及びpacap類似体の使用
US9006181B2 (en) 2004-07-21 2015-04-14 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Treatment of renal dysfunction and multiple myeloma using PACAP compounds

Families Citing this family (31)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1423509A2 (en) * 2001-08-30 2004-06-02 Stem Cell Therapeutics Inc. Differentiation of neural stem cells and therapeutic use thereof
EP1430114B1 (en) * 2001-09-14 2012-01-18 Stem Cell Therapeutics Inc. Prolactin induced increase in neural stem cell numbers and therapeutical use thereof
AR036402A1 (es) * 2001-09-18 2004-09-08 Stem Cell Therapeutics Inc Efecto de la hormona de crecimiento y de igf-1 sobre celulas madre neuronales.
US20040014662A1 (en) * 2002-05-08 2004-01-22 Per Lindquist Modulation of neural stem cells and neural progenitor cells
US7368115B2 (en) 2002-07-31 2008-05-06 Stem Cell Therapeutics Inc. Method of enhancing neural stem cell proliferation, differentiation, and survival using pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP)
US8524665B2 (en) 2003-05-13 2013-09-03 The Mclean Hospital Corporation Use of secretin in treatments of disorders associated with the amygdala
AU2004271804B2 (en) * 2003-09-12 2011-01-06 Newron Sweden Ab Treatment of disorders of the nervous system
WO2005077404A1 (en) 2004-02-13 2005-08-25 Stem Cell Therapeutics Corp. Use of luteinizing hormone (lh) and chorionic gonadotropin (hcg) for proliferation of neural stem cells and neurogenesis
US20050287665A1 (en) * 2004-06-23 2005-12-29 Henrich Cheng Method for inducing neural differentiation
US20080175829A1 (en) * 2004-06-23 2008-07-24 Henrich Cheng Method for inducing neural differentiation
JP2006306770A (ja) * 2005-04-27 2006-11-09 Nidek Co Ltd 眼疾患治療剤
AU2006297041A1 (en) 2005-09-27 2007-04-05 Stem Cell Therapeutics Corp. Oligodendrocyte precursor cell proliferation regulated by prolactin
WO2007106986A1 (en) * 2006-03-17 2007-09-27 Stem Cell Therapeutics Corp. Dosing regimes for lh or hcg and epo for treatment of neurological disorders
BRPI1010639A2 (pt) * 2009-05-13 2016-03-15 Protein Delivery Solutions Llc sistema farmacêutico para distribuição transmembrana
US8916517B2 (en) 2009-11-02 2014-12-23 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Analogs of pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP) and methods for their use
WO2011136233A1 (ja) * 2010-04-26 2011-11-03 学校法人慶應義塾 神経幹細胞の自己複製促進剤およびその使用方法
WO2011162558A2 (ko) * 2010-06-24 2011-12-29 (주)지노믹트리 아데닐레이트 싸이클라제 활성화 폴리펩타이드 1 (뇌하수체)의 유전자를 함유하는 자궁경부암세포의 증식 억제용 재조합벡터 및 자궁경부암 치료용 약학 조성물
ITMI20110583A1 (it) 2011-04-08 2012-10-09 Hmfra Hungary Ltd Liability Company Preparazioni oftalmiche a base di pacap (pituitary adenylate cyclase activating polypeptide) al fine di ripristinare la normale funzione visiva nel glaucoma in fase precoce
EP2831222B1 (en) * 2012-03-27 2018-12-26 Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University Neuronal culture medium and method for producing in vivo-like and enhanced synaptogenesis neuron model
KR102390107B1 (ko) 2013-05-30 2022-04-25 그라함 에이치. 크리시 국부 신경 자극
US11229789B2 (en) 2013-05-30 2022-01-25 Neurostim Oab, Inc. Neuro activator with controller
WO2015023890A1 (en) * 2013-08-14 2015-02-19 The Arizona Board Of Regents On Behalf Of The University Of Arizona Glycosylated pacap/vip analogues with enhanced cns penetration for treatment of neurodegenerative diseases
US11077301B2 (en) 2015-02-21 2021-08-03 NeurostimOAB, Inc. Topical nerve stimulator and sensor for bladder control
WO2016168768A2 (en) 2015-04-16 2016-10-20 Alder Biopharmaceuticals, Inc. Anti-pacap antibodies and uses thereof
US10202435B2 (en) 2016-04-15 2019-02-12 Alder Biopharmaceuticals, Inc. Anti-PACAP antibodies and uses thereof
JP7183164B2 (ja) * 2017-01-05 2022-12-05 ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア Pac1受容体作動薬(maxcap)及びその用途
AR111842A1 (es) 2017-06-02 2019-08-21 Amgen Inc Antagonistas de péptido pac1
US20200282019A1 (en) * 2017-07-25 2020-09-10 Dignity Health Methods of treating neurodegenerative diseases
EP3706856A4 (en) 2017-11-07 2021-08-18 Neurostim Oab, Inc. NON-INVASIVE NERVOUS ACTIVATOR WITH ADAPTIVE CIRCUIT
CN114126704A (zh) 2019-06-26 2022-03-01 神经科学技术有限责任公司 具有自适应电路的非侵入性神经激活器
JP2023506713A (ja) 2019-12-16 2023-02-20 ニューロスティム テクノロジーズ エルエルシー 昇圧電荷送達を用いた非侵襲性神経アクティベータ

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5972883A (en) * 1993-03-16 1999-10-26 Yeda Research And Development Co. Ltd. Method for the treatment of neurodegenerative diseases by administering VIP, an analogue, fragment or a conjugate thereof
WO1996009318A1 (en) * 1994-09-22 1996-03-28 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Method and pharmaceutical composition for prevention and treatment of brain damage
US6680295B1 (en) * 1994-09-22 2004-01-20 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Method and pharmaceutical composition for prevention and treatment of brain damage
CZ2001253A3 (cs) * 1998-07-20 2001-11-14 Societe De Conseils De Recherches Et D'application Peptidové analogy PACAP
US6242563B1 (en) * 1998-07-20 2001-06-05 Societe De Conseils De Recherches Et D'applications Scientifiques, Sas Peptide analogues
EP1423509A2 (en) * 2001-08-30 2004-06-02 Stem Cell Therapeutics Inc. Differentiation of neural stem cells and therapeutic use thereof
US6969702B2 (en) * 2002-11-20 2005-11-29 Neuronova Ab Compounds and methods for increasing neurogenesis

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9006181B2 (en) 2004-07-21 2015-04-14 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Treatment of renal dysfunction and multiple myeloma using PACAP compounds
JP2012503674A (ja) * 2008-09-25 2012-02-09 ジ アドミニストレーターズ オブ ザ トゥレーン エデュケーショナル ファンド 抗癌剤との補助的治療薬としての下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(pacap)及びpacap類似体の使用

Also Published As

Publication number Publication date
US20040038888A1 (en) 2004-02-26
EP1507551A2 (en) 2005-02-23
CA2485216A1 (en) 2003-11-13
AU2003228050A1 (en) 2003-11-17
WO2003092716A3 (en) 2004-07-01
WO2003092716A2 (en) 2003-11-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2005538942A (ja) 成体の神経幹又は前駆体細胞に関するpacap、vip及びマキサディランの機能的役割及び治療への使用可能性
US8318704B2 (en) Modulation of neural stem cells and neural progenitor cells
US7981863B2 (en) Treatment of Parkinson's disease with PDGF
JP5421194B2 (ja) 神経発生を増大させるための組成物および方法
US20030165485A1 (en) Functional role and potential therapeutic use of Reelin, Gas6 and Protein S in relation to adult neural stem or progenitor cells
Kaoru et al. Molecular characterization of the intercalated cell masses of the amygdala: implications for the relationship with the striatum
Decressac et al. Neuropeptide Y stimulates proliferation, migration and differentiation of neural precursors from the subventricular zone in adult mice
AU2002334327A1 (en) Treatment of central nervous system disorders by use of PDGF or VEGF
US20050003998A1 (en) Therapeutic use of selective LXR modulators
JP2004511209A (ja) 細胞の脱分化及び組織の再生のための組成物及び方法
JP2006509497A (ja) 神経発生に関する方法および物質
US20080031870A1 (en) Method of proliferation in neurogenic regions
De la Mano et al. Role of interleukin-1β in the control of neuroepithelial proliferation and differentiation of the spinal cord during development
AU738192B2 (en) Neuronal rescue agent
AU2006203260B2 (en) Treatment of Central Nervous System Disorders by Use of PDGF or VEGF
US20030060398A1 (en) Neuronal rescue agent
Woodhoo Signals that control embryonic Schwann cell development and myelination

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20060704