JP2012503674A - 抗癌剤との補助的治療薬としての下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(pacap)及びpacap類似体の使用 - Google Patents

抗癌剤との補助的治療薬としての下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(pacap)及びpacap類似体の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされるヒト又は他の哺乳動物の生体器官、例えば、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、及び胃腸管の1つ又は複数に対する傷害を治療、管理又は予防するための方法及び組成物に関する。本発明の方法は、様々なアイソフォームの全てを含めたPACAP/VIP受容体の1つ又は複数に対する活性を有する、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、天然ヒト血管作動性腸管ペプチド(VIP)、それらのアゴニスト、類似体、断片、及び誘導体を含めた、1つ又は複数の下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)様化合物の有効量の投与からなる。本発明はまた、癌化学療法を受けているヒト又は他の哺乳動物の生体器官に対する傷害の治療、管理又は予防に有用な、単独での、又は1つ若しくは複数の他の予防剤/治療剤と組み合わせた本発明の1つ又は複数のPACAP様化合物の医薬組成物を提供する。1つ又は複数のPACAP様化合物と1つ又は複数の抗癌剤との併用療法は、血液癌の治療において用いることができる。

Description

本発明は、1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされるヒト又は他の哺乳動物の生体器官、例えば、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、及び胃腸管の1つ又は複数に対する傷害を治療、管理、又は予防するための方法及び組成物に関する。本発明の方法は、様々なアイソフォームの全てを含めたPACAP/VIP受容体の1つ又は複数に対する活性を有する、天然ヒトPACAP38、ヒトPACAP27、天然ヒト血管作動性腸管ペプチド(VIP)、それらのアゴニスト、類似体、断片、及び誘導体を含めた、1つ又は複数の下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)様化合物の有効量の投与を含む。本発明はまた、癌化学療法を受けているヒト又は他の哺乳動物の生体器官に対する傷害の治療、管理若しくは予防に有用な、単独での、又は1つ若しくは複数の他の予防剤/治療剤と組み合わせた本発明の1つ又は複数のPACAP様化合物の医薬組成物を提供する。1つ又は複数のPACAP様化合物と1つ又は複数の抗癌剤との併用療法は、特に血液癌の治療において用いることができる。
癌は、工業先進国における第一の死亡原因である。化学療法は、播種性癌及び転移性腫瘍に好ましい治療である。化学療法はまた、手術若しくは放射線療法では限局性腫瘍が完全には根絶されなかったときに、又は手術若しくは放射線療法との補助的治療として多く用いられている。最も一般的に用いられている癌治療薬の最大耐容量は、ヒト又は他の哺乳動物の1つ又は複数の主要な生体器官に対するその毒性作用によって制限される。例えば、シスプラチンによる癌化学療法の用量制限毒性は腎毒性であり(Kintzel,Drug Saf.24:19−38頁,2001年)、ブレオマイシンによる癌化学療法の用量制限毒性は肺毒性であり(Chandler,Clin.Chest Med.11:21−30頁,1990年)、及びドキソルビシンによる癌化学療法の用量制限毒性は心毒性である(Takemuraら,Prog.Cardiovasc.Dis.49:330−352頁,2007年)。癌治療薬の最大耐容量を増加させるため、従ってその治療有効性を増加させるため、いくつかの方策が用いられている。
例えば、抗癌剤を腫瘍細胞の内部に選択的に送達するため、癌治療薬が、腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体と(Wuら,Nat.Biotechnol.23:1137−1146頁,2005年)、又は特定の腫瘍型において高度に発現する受容体を含む生物活性ペプチドと(Reubi,Endocr.Rev.24:389−427頁,2003年)コンジュゲート化されている。癌治療薬の効力を高める代替的な方策は、正常組織を抗癌剤の細胞毒性効果から選択的に保護することである(Hogle,Semin.Oncol.Nurs.23:213−224頁,2007年)。
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)は、ラット下垂体前葉細胞培養物においてアデニル酸シクラーゼ活性を刺激するその能力に基づき、ヒツジ(羊)視床下部から単離された(Miyataら,Biochem.Biophys.Res.Commun.164:567−574頁,1989年)。PACAPは、38個(PACAP38;配列番号1)又は27個(PACAP27;配列番号2)のアミノ酸を有するα−アミド化ペプチドとして存在する。双方のペプチドともN末端の27アミノ酸が同じであり、同じプロホルモンから合成される。PACAP38の配列はあらゆる哺乳動物において同一であり、鳥類及び両生類オルソログとは1個のアミノ酸のみが異なる(Vaudryら,Pharmacol.Rev.52:269−324頁,2000年)。PACAPはセクレチン/血管作動性腸管ペプチド(VIP)/成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)ファミリーのメンバーであり、PACAP27はVIP(配列番号3)と68%の配列同一性を有する。PACAPは脳及び精巣に豊富であり、しかし膵臓、副腎、胸腺、脾臓、リンパ節、及び十二指腸粘膜を含む他の器官におけるレベルが著しく高い(Vaudryら,Pharmacol.Rev.52:269−324頁,2000年)。PACAPはプレプロホルモンとして合成され、主にプロホルモン転換酵素1、プロホルモン転換酵素2及びプロホルモン転換酵素4によるプロセシングを受ける(Liら,Neuroendocrinology 69:217−226頁,1999年及びLiら,Endocrinology 141:3723−3730頁,2000年)。[125I]−PACAP38の静脈内注射後のラット血流中における半減期は、5〜6分である(Banksら,J.Pharmacol.Exp.Ther.267:690−696頁,1993年)。セクレチン/VIP/GHRHファミリーのメンバーは、主にアミノジペプチダーゼ、特にジペプチジルペプチダーゼIVによって血漿中で分解される(Zhuら,J.Biol.Chem.278:22418−2223頁,2003年)。
PAC受容体と称されるPACAP特異的受容体が、いくつかの脊椎動物種からクローニングされている(Arimura,Jpn J.Physiol.48:301−331頁,1998年及びVaudryら,2000年)。これは、7個の推定上の膜貫通ドメインを含むGタンパク質共役受容体であり、複数のシグナル伝達経路と共役する糖タンパク質受容体のファミリーに属する(Segreら,Trends Endocrinol.Metab.4:309−314頁,1993年)。PACAPはPAC受容体に高親和性で結合するのみならず、VIP1(VPAC)受容体及びVIP2(VPAC)受容体にも、VIPと同等又はそれ以上の親和性で結合する。他方で、VIPがPAC受容体に結合するときの親和性は、PACAPの場合の1,000分の1である(Arimura,1998年)。ラットPAC受容体のうち少なくとも10個のスプライス変異体がクローニングされており、各変異体は、異なる組み合わせのシグナル伝達経路と共役する(Vaudryら,2000年)。二次メッセンジャーとしては、アデニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼC、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ、及びカルシウムが挙げられる。PACAP/VIP受容体は、種々の細胞型のGαs及び/又はGαiと共役することができる。PACAP/VIP受容体は、副腎髄質及び交感神経節内のカテコールアミン含有細胞、中枢神経系のミクログリア、星状細胞及びある種のニューロン、並びに免疫系のT及びBリンパ球、マクロファージ及び樹状細胞を含め、多くの異なる種類の正常細胞及び癌細胞において発現する(Vaudryら,Pharmacol.Rev.52:269−324頁,2000年)。PACAPは、副腎髄質からのカテコールアミン分泌の強力な刺激因子であり(Watanabeら,Am.J.Physiol.269:E903−E909頁,1995年)、且つ活性化マクロファージからの腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン(IL)−6及びIL−12の分泌の強力な阻害因子である(Ganeaら,Crit.Rev.Oral Biol.Med.13:229−237頁,2002年)。PACAPはまた、C6膠芽腫細胞(Dufesら,J.Mol.Neurosci.21:91−102頁,2003年)、AR4−2J膵癌細胞(Buscailら,Gastroenterology 103:1002−1008頁,1992年)及びMCF−7乳癌細胞(Leytonら,Breast Cancer Res.Treat.56:177−186頁,1999年)の増殖も刺激するが、しかしHEL骨髄性白血病細胞(Hayezら,J.Neuroimmunol.149:167−181頁,2004年)、SW403結腸腺癌細胞(Lelievreら,Cell Signal.10:13−26頁,1998年)及び多発性骨髄腫細胞(Liら,Regul.Pept.145:24−32,2008;図2を参照)の増殖は阻害する。
PACAPは新規下垂体刺激性因子のスクリーニング中に単離されたが、これは間もなく、多面発現性のペプチドであることが明らかとなった(Arimura,Jpn J.Physiol.48:301−331頁,1998年;Vaudryら,Pharmacol.Rev.52:269−324頁,2000年)。いくつかの研究機関が、単離直後のPACAPの極めて強力な神経保護/神経栄養特性について調査した。PACAP及びVIPの細胞保護作用については、あらゆる他の主要な生体器官と比べて、神経系では一層広範囲に研究されている。様々なインビトロモデルでPACAPにより保護された細胞型としては、小脳顆粒細胞、後根神経節細胞、交感神経節細胞、中脳ドーパミン作動性ニューロン、及び前脳基底部コリン作動性ニューロンが挙げられる(Arimura、上記;Vaudryら、上記)。PACAPはまた、ラット海馬ニューロン/グリア共培養物において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のエンベロープ糖タンパク質であるgp120によって誘導されるニューロン死も防止した。用量反応曲線は二峰性で、ピークは10−13M及び10−10Mにあった(Arimuraら,Ann.N.Y.Acad.Sci.739:228−243頁,1994年)。重要な意味を持つこの研究の知見はKongら(Neuroscience 91:493−500頁,1999年)により確認されており、そこではマウス皮質ニューロン/グリア初代共培養物における神経毒としてリポ多糖(LPS)が使用された。10−12Mにおける神経保護作用は、培養培地中の亜硝酸塩蓄積の著しい減少と相関していた。ニューロン/グリア共培養物における低用量(フェムトモル濃度)のPACAPの神経保護作用は、MAPキナーゼ阻害薬のPD98059によって消失したが、高用量(ナノモル濃度)のPACAPの神経保護作用はPD98059の影響を受けなかった(Liら,J.Mol.Neurosci.27:91−106頁,2005年)。しかしながら、ナノモル濃度用量のPACAPの神経保護作用は、プロテインキナーゼA阻害薬のRp−cAMPによって消失した。
脳における神経保護にペプチドを使用することの欠点として、それが血液脳関門を通って輸送され難いこと、及びシステマチックな(systematic)投与後のその循環中での半減期が短いことが挙げられる。しかしながら、PACAP38は、飽和性の機構によって血液から脳に輸送されることが示されている(Banksら,J.Pharmacol.Exp.Ther.267:690−696頁,1993年)。従って、心発作及び脳卒中の一般的な生体内前臨床モデルにおいて、神経保護薬としてのPACAP38を試験した。ラットの四血管閉塞を用いて、脳についての心発作の転帰(一過性全前脳虚血)をモデル化した。前脳への血流を15分間にわたり遮断した(Uchidaら,Brain Res.736:280−286頁,1996年)。植込み型Alzet浸透圧ミニポンプを使用して、四血管閉塞開始後24時間を始点として6日間にわたりPACAP38を16pmol/時間又は160pmol/時間の用量で静脈内投与した。PACAP処置ラット及び媒体処置ラットを閉塞後7日目に屠殺し、海馬のCA1野内の錐体細胞数を計数した。15分間の閉塞に伴い、媒体注入ラットでは7日後にCA1内の錐体細胞数が大幅に減少した。閉塞後7日目における錐体細胞数の減少は、PACAP38を連続静脈内注入したラットでは、双方の用量とも大幅に反転した(Uchidaら、上記)。6日間にわたり連続注入したラットにおいて、これらの低用量では明らかな副作用はなかった。ラットの中大脳動脈閉塞(MCAO)を用いて、脳卒中(一過性局所脳虚血)をモデル化した。腔内フィラメント技法を用いて、中大脳動脈を2時間にわたり閉塞した(Reglodiら,Stroke 31:1411−1417頁,2000年)。植込み型Alzet浸透圧ミニポンプを使用して、一過性MCAOの開始後4時間、8時間又は12時間のいずれかを始点として閉塞後48時間まで、PACAP38を160pmol/時間の用量で静脈内投与した。一過性MCAOの開始後4、8又は12時間を始点としてPACAP38を連続静脈内注入した結果、MCAO開始後48時間で梗塞体積がそれぞれ約51%、22%又は12%減少した。MCAO開始の4時間後に処置を開始したときの梗塞体積の減少は、高度に有意であった(P<0.01)。連続静脈内注入による血漿グルコースレベル、血液ガス又は血圧の変化はないものと思われた(Reglodiら、上記)。これらの観察は、脳内のPACAP濃度の少しの変化によって、神経細胞の傷害に対する易傷性が変わり得ることを示唆している。PACAPはまた、脊髄傷害(Chenら,Neurosci.Lett.384:117−121頁,2005年)及びパーキンソン病(Regloediら,Behav.Brain Res.151:303−312頁,2004年)を含めた、神経変性疾患についての他の一般的な生体内前臨床モデルにおいても有効であることが、他の研究機関によって示されている。
神経系における低濃度のPACAPの神経保護作用は間接的であり、おそらくは少なくとも4つの異なる機序によって媒介されるものと思われる。(1)PACAPは強力な抗炎症性ペプチドである。PACAPは、活性化マクロファージにおいて誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導を阻害し、活性化マクロファージにおいて炎症誘発性サイトカインTNF−α、IL−6及びIL−12の産生を阻害し、及び活性化マクロファージにおいて抗炎症性サイトカインIL−10の産生を刺激することが示されている(Ganea & Delgado,2002年)。PACAPは、炎症過程の内因性対抗制御因子であるため、おそらくは炎症カスケードにおける複数の段階で炎症を阻害するものと思われる(Martinezら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:1053−1058頁,2002年)。PACAPはまた、神経系内の常在性マクロファージ様細胞である活性化小グリア細胞の、極めて強力な不活化因子でもある(Kongら,1999年;Delgadoら,2002年)。(2)フェムトモル濃度(10−15M)のPACAPは、マウスニューロン/グリア共培養物における活性依存性神経栄養因子のmRNAレベルを増加させる(Davidら,Society for Neuroscience(33rd Annual Meeting),New Orleans,Louisiana,#38.1,2003年(要約))。さらに、反応グリア細胞に対するPAC受容体の数は、傷害後に増加する(Uchidaら,1996年)。Brennemanら(Neuropeptides 36:271−280頁,2002年)は、フェムトモル濃度のPACAPが星状細胞培養物においてRANTESの放出を刺激し、RANTESの免疫中和によりニューロン/グリア共培養物におけるPACAPの神経保護作用が低下することを過去に示している。(3)Yangら(J.Pharmacol.Exp.Ther.319:595−603頁,2006年)は、フェムトモル濃度のPACAPが中脳ニューロン/グリア共培養物における小グリア細胞のNADPHオキシダーゼ活性及び細胞外スーパーオキシドレベルを阻害することを示している。(4)Figiel及びEngele(J.Neurosci.20:3596−3605頁,2000年)は、PACAPがグルタミン酸輸送体GLT−1及びGLASTの発現を増加させ、星状細胞におけるグルタミン酸代謝酵素グルタミンシンテターゼの活性を増加させることを報告している。これらのPACAPの効果は、グルタミン酸作動性神経伝達を低下させることが予想され得る。Wuら(Neurobiol.Aging 27:377−386頁,2006年)は、3つの異なるアルツハイマー病マウスモデルの皮質におけるPACAPのmRNAレベルが低下することを報告した。
Aubertら(2008年)は、PACAP38が細胞培養物中及び小脳切片中の小脳顆粒細胞を抗癌剤シスプラチンの毒性副作用から保護することを報告している。この論文では生体内実験は報告されていないが、これは、PACAP38の脳への輸送が飽和性であることに起因して(Banksら,1993年)、標準的な非経口投与経路で10−7Mという高い濃度を実現することができなかったためと推測される。加えて、シスプラチン誘導性の小脳毒性は、臨床上は重大な腫瘍学的問題ではない。しかしながら、小脳の損傷は、シタラビン又は5−フルオロウラシルによる癌化学療法の臨床的に重大な副作用である。この執筆者らはまた、PACAP38が、腫瘍細胞系のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をシスプラチンの細胞毒性効果から保護しないことも主張している。この後者の結論は、未知の場所に異所性の導入遺伝子を有する非ヒト異型卵巣癌細胞系を使用した否定的結果に基づいている。加えて、Gupta(Biochem.Biophys.Res.Commun.153:598−605頁,1988年)は、CHO細胞が、同等のヒト細胞と比べて10倍超高い多剤耐性輸送体活性を有することを示している。CHO細胞は、哺乳動物タンパク質の組換え産生に一般的に使用されるが、卵巣癌研究用の細胞系として用いられることは(あったにしても)まれである。ほとんどのヒト卵巣癌生検標本が1つ又は複数のPACAP/VIP受容体を発現するが、親のCHO細胞系は、PAC、VPAC、又はVPAC受容体を発現しない。PACAPが固形腫瘍をシスプラチンから保護しないであろうとするAubertら(2008年)による示唆は、関連する既刊文献及び我々の新規の実験(図13及び図14)と整合しない。Okaら(Amer.J.Pathol.155:1893−1900頁,1999年)が、PACAPはHP75ヒト下垂体腺腫細胞を、形質転換成長因子−β1による治療によって引き起こされるアポトーシス細胞死から保護することを報告したとともに、最近になって、PACAPは、PC−3アンドロゲン非依存性のヒト前立腺癌細胞(Gutierrez−Canas,I.ら Br.J.Pharmacol.139:1050−1058頁,2003年)及びCRL−2768ラットシュワン腫細胞(Castorina,A.ら Brain Res.1241:29−35頁,2008年)を、血清枯渇によって引き起こされるアポトーシス細胞死から保護することが示されている。一層関連があるものとして、Onoueら(FEBS J.275:5542−5551頁,2008年)は、PACAPがRIN−m5Fインスリノーマ細胞を、抗癌剤ストレプトゾトシンによって引き起こされるアポトーシス細胞死から保護することを示している。加えて、PACAP/VIP受容体アンタゴニストのPACAP(6〜38)は、ヌードマウスにおけるPC−3ヒト前立腺癌細胞(Leytonら,Cancer Lett 125:131−139頁,1998年)、NCI−H838ヒト非小細胞肺癌細胞(Ziaら,Cancer Res 55:4886−4891頁,1995年)及びMCF−7ヒト乳癌細胞(Leytonら,1999)の異種移植片の成長を阻害した。
神経系に比べると、腎臓、心臓、胃腸管、及び肺におけるPACAP及びVIPの細胞保護特性については、はるかに狭い範囲でしか研究されていない。PACAPは、虚血/再灌流(Rieraら,Transplantation 72:1217−1223頁,2001年;Szakalyら,J.Mol.Neurosci.36:89−96頁,2008年)、広く使用されている抗生物質ゲンタマイシン(Liら,2008年)及び軽鎖免疫グロブリンの過剰負荷(Liら,2008年)によって引き起こされる傷害から腎臓を保護することが示されている。腎毒性は、(限定はされないが)シスプラチン及びカルボプラチンを含む多くの抗癌剤についての用量制限因子となる。
PACAPはまた、心臓(Sanoら,Regul.Pept.109:107−113頁,2002年;Gaszら,Peptides 27:87−94頁,2006年)及び胃腸管の小腸(Ferenczら,J.Mol.Neurosci.37:168−176頁,2008年)を、虚血/酸化的ストレスから保護することも示されている。VIPは、肺を虚血/低温保存によって引きこされる傷害から保護することが示されている(Alessandrini,Acta Biomed.Ateneo.Parmense.65:59−73頁,1994年)。ドキソルビシンによる癌化学療法の用量制限毒性は心毒性であり(Takemura及びFujiwara,2007年)、一方、ブレオマイシンによる癌化学療法の用量制限毒性は肺毒性である(Chandler,1990年)。胃腸の副作用は、ほとんどの抗癌剤で非常によく見られる。
PACAPの肝保護特性は、これまで系統的に調査されたことがない。カルムスチンによる癌化学療法の用量制限毒性は、通常骨髄抑制であるが、時に肝毒性又は腎毒性が、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。
天然PACAPは、少なくとも4つの異なる研究機関の研究者らにより正常なヒトボランティアに対し(Chioderaら,Neuroendocrinology 64:242−246頁,1996年;Filipssonら,J.Clin.Endocrinol.Metab.82:3093−3098頁,1997年;Dobererら,Eur.J.Clin.Invest.37:665−672頁,2007年;Murckら,Am.J.Physiol.292:E853−E857頁,2007年)、及び米国FDA承認済みプロトコルに基づき多発性骨髄腫患者に対し、既に投与されている(Liら,Peptides 28:1891−1895頁,2007年)。報告された有害作用は、一過性の潮紅のみであった。
既刊文献は、PACAP様ペプチドが、虚血/再灌流傷害を含めた極めて広範囲にわたる傷害からニューロン(神経上皮細胞)を保護できることを示している。既刊文献はまた、PACAP様ペプチドが、腎、肺及び胃腸の上皮細胞を虚血/再灌流に起因する傷害から保護できることも示している。PACAP様ペプチドが、腎、肺及び胃腸の上皮細胞を一般的に用いられているあらゆる癌化学療法薬から保護することができるかどうかについては、これまで調査されていない。既刊文献は、PACAP様ペプチドがほとんどの上皮癌細胞の増殖及び生存を促進することを示唆している。従って、既刊文献から、ほとんどの固形上皮性腫瘍に対する癌化学療法薬について、それと併せた補助的治療としてPACAP様ペプチドの非経口投与を用いることはできないことが示唆される。
PACAP様ペプチドは、ほとんどの正常な造血細胞の増殖を阻害することが示されている(例えば、Ottawayら,J.Immunol.132:417−423頁,1984年;Boudardら,J.Neurosci.Res.29:29−41頁,1991年;Tatsunoら,Endocrinology 128:728−734頁,1991年;Trejterら,Histol.Histopathol.16:155−158頁,2001年)。PACAP様ペプチドはまた、HEL骨髄性白血病細胞の増殖を阻害することも示されている(Hayezら、2004年)。PACAP様ペプチドはまた、多発性骨髄腫細胞の増殖もまた阻害する(Liら、2008年)。
本明細書における参考文献の引用又は考察は、かかる参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものとして解釈されてはならない。
本発明者は、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、天然ヒト血管作動性腸管ペプチド(VIP)、並びにそれらの類似体、断片、及び誘導体が、及びPACAP/VIP受容体の1つ又は複数のアゴニストを含め、一般的に使用される癌化学療法薬によって引き起こされる傷害から主要な生体器官を保護するのに極めて有効であることを見出した。このように、本発明者は、PACAP様ペプチド及び化合物が、癌化学療法薬による治療を受けている対象に投与されるとき、細胞保護性補助薬剤として用いられ得ることを特定した。
従って、本発明は、1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされるヒト又は他の哺乳動物の生体器官、例えば、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、虫垂、及び結腸)、副腎、胸腺、脾臓、及びリンパ節)に対する傷害を、治療、管理、予防、及び抑制する方法に関する。この方法は、1つ又は複数の抗癌剤による治療を受けている対象(例えば、ヒト又は他の哺乳動物)において、病変を引き起こす細胞表現型(例えば、1つ又は複数の生体器官、例えば、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、虫垂、及び結腸)、副腎、胸腺、脾臓、及びリンパ節に対する傷害から生じる病理学的状態)を抑制するため、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、VIP、それらのアゴニスト、類似体、断片、又は誘導体を含むPACAP様化合物であって、1つ又は複数のPACAP/VIP受容体における活性を有し得るPACAP様化合物の有効量を投与することを含む。抗癌剤は、1つ又は複数の生体器官に対して直接的又は間接的に傷害を引き起こし得る。
PACAP様化合物は、1つ又は複数の抗癌剤による治療の前、その治療の後、又はその治療と実質的に同時に対象に投与されてもよい。ある実施形態において、対象は癌(例えば、上皮細胞癌、又は多発性骨髄腫などの血液癌)を有する。本発明の別の実施形態において、PACAP様化合物は、抗癌剤に対して用量制限毒性を有する器官に直接的又は間接的に送達される。好ましい実施形態において、器官は、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸(例えば、十二指腸粘膜)、大腸、虫垂、及び結腸)、乳房、卵巣、精巣、副腎、胸腺、脾臓、又はリンパ節である。
別の実施形態において、PACAP様化合物は、1つ又は複数の抗癌剤による治療の少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55分前又は後に、対象に1回以上投与される。別の実施形態において、PACAP様化合物は、1つ又は複数の抗癌剤による治療の少なくとも1、2、5、10、15、20、24、36、48、又は60時間前又は後に、対象に1回以上投与される。さらに別の実施形態において、PACAP様化合物は、1つ又は複数の抗癌剤による治療の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、32、36、40、44、48、又は52週間前又は後に、対象に1回以上投与される。
例えば、肺毒性は、通常、精巣癌治療を受けている対象においてブレオマイシンの非経口用量を制限する。従って、この方法は、ブレオマイシンによる精巣癌治療を受けている対象において、PACAP様化合物(例えば、PACAP様ペプチド)をエアロゾルとして肺に投与することを含む。別の例において、中枢神経系又は胃腸の用量制限毒性を有する癌化学療法薬が使用されるとき、PACAP様細胞保護性補助薬剤は、脳又は胃腸管に、それぞれ鼻腔内投与又は経口投与によって選択的に送達され得る。当業者は、PACAP様ペプチドの生体器官への送達に他の多くの方策を用い得ることを認識するであろう。
本発明者はまた、PACAP様化合物が、特に造血器癌又は血液癌細胞に対して、特定の抗癌剤との相加的抗癌作用を有し得ることも示している。従って、本発明の別の実施形態において、PACAP様化合物は、リンパ性又は骨髄性の癌を含む造血器癌又は血液癌に対して1つ又は複数の抗癌剤で治療を受けている対象に投与されてもよい。好ましい実施形態において、造血器癌又は血液癌は、白血病(例えば、リンパ性又は骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、又は赤白血病)、リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫又はマントル細胞リンパ腫)、又は形質細胞異常増殖症(例えば、多発性骨髄腫又はワルデンシュトレームマクログロブリン血症)である。
特定の実施形態において、PACAP様化合物は、天然に存在するPACAPペプチドの誘導体であってもよい。ある実施形態において、この誘導体は、N−アセチル誘導体であり得る。別の実施形態において、この誘導体は、プロピルアミド誘導体(例えば、Lys38−プロピルアミド誘導体)であり得る。さらに別の実施形態において、PACAP様化合物は、約4キロダルトン〜約40キロダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールポリマーに連結される。さらに別の実施形態において、PACAP様化合物は、それに隣接して1つ又は複数のタンパク質分解酵素のアミノ酸コンセンサス配列が配置される。
特定の実施形態において、PACAP様化合物は、天然に存在するPACAPペプチドの類似体であってもよい。本発明に係るPACAPのコンホメーション類似体の一例はマキサジランであり、これは2個のジスルフィド架橋を有する61アミノ酸ペプチドであり、吸血性のスナバエであるルツォミヤ・ロンギパルピス(Lutzomyia longipalpis)の唾液腺中で天然に合成される。マキサジランは、PACAPとの明らかな線形アミノ酸配列同一性は有しないが、PAC受容体に対して高親和性で選択的に結合する(Tatsuno,I.ら Brain Res.889:138−148頁,2001年;Lerner,E.A.ら Peptides 28:1651−1654頁,2007年)。中南米各地のスナバエによって作られるマキサジランのアミノ酸配列には、20%より多くの違いがあり得る。しかしながら、これらの生物活性オルソログ内でのシステイン残基の相対位置は不変であり、これらの生物活性オルソログの全てが同様の予測二次構造を有する。いくつかの天然に存在するマキサジランのアミノ酸配列が、Lanzaroら(Lanzaro,G.C.ら Insect.Mol.Biol.8:267−275頁,1999年)によって記載されている。天然に存在するマキサジランのアミノ酸配列は、配列番号70として示す。従って、PACAPのコンホメーション類似体の線形類似体、例えばマキサジランの線形類似体(Reddy,V.B.ら J.Biol.Chem.281:16197−16201頁,2006年)は、PACAP/VIP受容体に結合し、それを刺激するものと予想される。当業者は、人工のコンビナトリアルケミストリー又はファージディスプレイ技術によってPACAPの別のコンホメーション類似体を作成し得ることを認識するであろう。
本発明のPACAP様化合物は、正常細胞又は細胞外液から精製するか、組換え分子生物学的方法により合成するか、又は(最も一般的実施形態においては)ペプチド化学的方法により合成することができる。
PACAP様化合物の効力、特に、ニューロン、心筋細胞、肝実質細胞、並びに肺、腎及び胃腸の上皮細胞の保護及び/又はレスキューにおけるその効力は、化合物が投与されるときの濃度に依存し得る。本発明者は、本発明の組成物のほぼ有効濃度範囲内に有効性のピークがあり、その範囲未満では、本組成物の有効性は著しい程度にまで低下することを発見した。好ましい実施形態において、本発明のPACAP様化合物の濃度は、細胞培養培地においても、又は対象の間質腔若しくは血液においても約10−13M〜約10−6Mであり、これは治療による有害な副作用のリスクを最小限に抑えて対象を治療することが可能な濃度である(Reglodiら,2000年;Liら,2007年)。好ましい実施形態において、PACAP様化合物の濃度は約10−9Mである。この発見により、本発明の組成物を低濃度で使用して、ニューロン、心筋細胞、肝実質細胞、並びに肺、腎及び胃腸の上皮細胞の実質的な保護及びレスキューを提供することが可能となる。特定の実施形態において、本発明の組成物はこれらの細胞を傷害又は死から保護する。
本発明の方法において、器官に対する傷害は、(限定はされないが)例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、サリドマイド、レナリドマイド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、フルダラビン、5−アザシチジン、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ボルテゾミブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセルを含めた、1つ又は複数の一般的に使用される抗癌剤による治療に起因し得る。
本発明の方法において、PACAP様化合物は、対象への抗癌剤の投与前又は投与後に対象に投与することができる。或いは、PACAP様化合物と抗癌剤とは、対象に実質的に同時に(例えば、互いの1分間、2分間、5分間、20分間、1時間、2時間、5時間、1日間、1週間、1ヶ月間、又は1年間以内に、又はそれ以上で)投与されてもよい。一実施形態において、PACAP様化合物は、抗癌剤により器官に傷害が生じた後に投与される。別の実施形態において、PACAP様化合物は、抗癌剤により器官に傷害が生じる前に投与される。
本発明のPACAP様化合物は、1つ又は複数の抗癌剤による治療によって引き起こされた対象の器官の1つ又は複数に対する傷害の治療、管理、軽減、抑制、又は予防に最適な濃度を実現するため、血流中へと静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、又はその他に投与されてもよい。PACAP様化合物は、1μg〜1グラム(例えば、1〜2500μg)の用量で対象に投与されてもよい。好ましい実施形態において、PACAP様化合物は100〜1000μgの用量で対象に投与されてもよい。より好ましい実施形態において、PACAP様化合物は約500μgの用量で対象に投与されてもよい。
本発明のPACAP様化合物は、静脈内注入により1pmol/kg体重/時間〜1200pmol/kg体重/時間の速度で対象に投与されてもよい。好ましい実施形態において、静脈内注入の速度は1〜100pmol/kg体重/時間である。別の好ましい実施形態において、静脈内注入の速度は100〜200pmol/kg体重/時間である。さらに別の好ましい実施形態において、静脈内注入の速度は200〜600pmol/kg体重/時間である。PACAP様化合物の静脈内注入は、1〜12時間又はそれ以上(例えば、24、36、又は48時間又はそれ以上)にわたってもよい。PACAP様化合物の投与は、1時間、1日間、1週間、1ヶ月間、又は1年間のコースのうちに1回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12回又はそれ以上)繰り返されてもよい。本発明の組成物の静脈内投与は、ボーラス投与、持続注入、又はボーラス投与と、その直後の持続注入であってもよい。好ましい実施形態において、対象は、血液系悪性腫瘍に対して1つ又は複数の化学療法薬による治療を受けており、PACAP様補助薬剤は、ボーラス投与(任意の血清結合タンパク質を飽和させるため)と、その直後の持続注入で投与される。
本発明のPACAP様化合物は、吸入により、又は鼻腔内に投与されてもよく、これによりそれぞれ肺(Dobererら,2007年)、又は脳(Nonaka,N.ら J.Pharmacol.Exp.Ther.325:513−519頁,2008年)に選択的に到達させることができる。
本発明のPACAP様化合物は、時間依存性の(Gazzaniga,A.ら Expert Opin.Drug Deliv.3:583−597頁,2006年)、又はpH依存性の(Gallardo,D.ら Pharm.Dev.Technol.13:413−423頁,2008年)製剤で経口投与されてもよく、これによりそれぞれ胃腸管の種々のレベル又は胃腸管の傷害領域に選択的に到達させることができる。
本発明のPACAP様化合物は、哺乳動物ペプチドに天然に存在する20アミノ酸の一部のみ又は全てを含む1つ又は複数のPACAP様化合物をコードするウイルスベクターを用いて投与されてもよい。
本発明のPACAP様化合物は、哺乳動物ペプチドに天然に存在する20アミノ酸の一部のみ又は全てを含む1つ又は複数のPACAP様化合物をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド配列をトランスフェクトされた細胞を用いて投与されてもよい。
本発明のPACAP様化合物は、制御放出性の(Kost,J.ら Adv.Drug Deliv.Rev.46:125−148頁,2001年)、又は持続放出性の(Hutchinson,F.G.ら J.Control Release 13:279−294頁,1990年)製剤で投与されてもよい。ある実施形態において、対象は、血液系悪性腫瘍の治療として1つ又は複数の化学療法剤又は抗癌剤を投与される。
本発明のPACAP様化合物は、リポソーム(Sethi,V.ら Methods Enzymol.391:377−395頁,2005年)又は微粒子(Almeida,A.J.ら Adv.Drug Deliv.Rev.59:478−490頁,2007年)にカプセル化した後に投与されてもよい。
本発明のPACAP様化合物は、デンドリマーにカプセル化した後に経皮投与されてもよい(Grayson,S.Mら Chem.Rev.101:3819−3868頁,2001年)。ある実施形態において、対象は、血液系悪性腫瘍の治療として1つ又は複数の化学療法剤又は抗癌剤で治療される。
本発明のPACAP様化合物は、アミホスチン、デクスラゾキサン、メスナ、パリフェルミン(ヒトケラチノサイト成長因子)、及びN−アセチルシステインなどの、異なる作用機序を有する他の細胞保護性補助薬剤と併せて投与されてもよく、これにより相加又は相乗作用が得られる。
本発明のPACAP様化合物は、対象(例えば、ヒト患者)に投与するため、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせて製剤化されてもよく、又は塩形態で製剤化されてもよい。
本発明のPACAP様化合物は、コンジュゲート化されていない抗癌剤と、モノクローナル抗体又は1つ若しくは複数の生物活性ペプチドと可逆的にコンジュゲート化された抗癌剤との双方によって引き起こされるヒト又は他の哺乳動物の1つ又は複数の生体器官に対する傷害を、治療、管理、軽減、抑制、又は予防するために使用されてもよい。
本発明のPACAP様化合物は、1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされる遅発性二次性癌の発生率、特に遅発性二次性白血病の発生率を低下させるために使用されてもよい。
本発明の組成物は、特定の癌細胞、例えば造血器癌又は血液癌細胞の治療における抗癌剤の効力を直接亢進させるために使用されてもよい。本発明の組成物は、癌、特に造血器癌又は血液癌に対する標準的な治療レジメンに加えて使用されてもよく、又は(限定はされないが)CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、Oncovin、及びプレドニゾン)、COP(シクロホスファミド、Oncovin及びプレドニゾン)、COPP(シクロホスファミド、Oncovin、プロカルバジン、及びプレドニゾン)、MOPP(メクロレタミン、Oncovin、プロカルバジン、及びプレドニゾン)、及びVAD(ビンクリスチン、アドリアマイシン及びデキサメタゾン)を含めた、標準的なグルココルチコイド含有レジメンの1つにおけるグルココルチコイドの代替として使用されてもよい。
PACAP38(配列番号1)、PACAP27(配列番号2)、VIP(配列番号3)、[D−Ser]PACAP38(配列番号4)、[Aib]PACAP38(配列番号5)、[D−Ser,Lys38−パルミトイル]PACAP38(配列番号6)、[Aib,Lys38−パルミトイル]PACAP38(配列番号7)、[Ala22]PACAP38(配列番号8)、[Ala16,Ala17,D−Lys38]PACAP38(配列番号9)、及び[Lys34]PACAP38(配列番号10)の一次アミノ酸配列を示す。これらの化合物は全て、以下に掲載する図の1つ又は複数に示される例のなかで使用されている。 軽鎖免疫グロブリン分泌骨髄腫細胞の増殖に対するPACAP38及びPACAP38類似体の阻害効果を示す。軽鎖免疫グロブリン分泌ヒト骨髄腫細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清及び0.05mMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640倍地で培養した。骨髄腫細胞増殖に対するPACAP38及びPACAP38類似体の効果を、細胞分裂中のDNAへのブロモデオキシウリジン取込みを測定することによって評価した。骨髄腫細胞数は、PACAP様ペプチドによる処置がない場合に、24時間のインキュベーション期間中にほぼ2倍になった。各値は、4〜8つの測定の平均値±標準誤差を表す。 PACAP38の濃度変化によって生じたヒト腎近位尿細管上皮細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死の低減を示す。HK−2ヒト腎細胞を、組換え上皮成長因子及びウシ下垂体抽出物を補充したケラチノサイト無血清培地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38の用量依存性阻害効果を、24時間のシスプラチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3回の反復実験における4つの測定の平均値±標準誤差を表す。シスプラチン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01。 同等の濃度のPACAP38及び[Aib]PACAP38によって生じたヒト腎近位尿細管上皮細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死の低減を示す。HK−2ヒト腎細胞を、組換え上皮成長因子及びウシ下垂体抽出物を補充したケラチノサイト無血清培地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38の用量依存性阻害効果を、24時間のシスプラチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3回の別個の実験における4つの測定の平均値±標準偏差を表す。シスプラチン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 シスプラチンで処置したマウスにおけるヒト腎近位尿細管上皮細胞の細胞外基質成分への付着に対するPACAP38の効果を示す。96ウェルプレートのウェルを、フィブロネクチン、コラーゲンI又はコラーゲンIVに対する抗体でコーティングした。HK−2ヒト腎細胞を50μMシスプラチンで処置すると、細胞ベースの接着アッセイにより示されるとおり、インテグリン−細胞外基質相互作用が大幅に低減し、フィブロネクチン、コラーゲンI及びコラーゲンIVに対する細胞表面結合性の結合が低下した。PACAP38により、シスプラチンに曝露された細胞におけるフィブロネクチン及びコラーゲンIVとの結合低下が部分的に反転した。各値は、4つの測定の平均値±標準誤差を表す。対応するシスプラチン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01。 シスプラチンで処置したマウスにおける血清クレアチニンレベルに対するPACAP38の効果を示す。雄性C57BL/6マウスに20mg/kgのシスプラチンの単回腹腔内注射を行った。シスプラチン注射の1時間前に20ナノモルのPACAP38を腹腔内投与し、初回用量の24時間後及び48時間後に追加用量を投与した。対照群のマウスには、シスプラチン及びPACAP38の注射に関するものと同量の生理食塩水を同じスケジュールで腹腔内注射した。最後のPACAP38注射の24時間後、マウスを安楽死させた。各値は、4つの測定の平均値±標準誤差を表す。シスプラチンのみによる処置群と比較して、***p<0.001及び**p<0.01。 シスプラチンで処置したマウスにおける血中尿素窒素レベルに対するPACAP38の効果を示す。雄性C57BL/6マウスに20mg/kgのシスプラチンの単回腹腔内注射を行った。シスプラチン注射の1時間前に20ナノモルのPACAP38を腹腔内投与し、初回用量の24時間後及び48時間後に追加用量を投与した。対照群のマウスには、シスプラチン及びPACAP38の注射に関するものと同量の生理食塩水を同じスケジュールで腹腔内注射した。最後のPACAP38注射の24時間後、マウスを安楽死させた。各値は、4つの測定の平均値±標準誤差を表す。シスプラチンのみによる処置群と比較して、***p<0.001及び**p<0.01。 シスプラチンで処置したマウスの腎臓におけるTNF−α産生の産生に対するPACAP38の効果を示す。雄性C57BL/6マウスに20mg/kgのシスプラチンの単回腹腔内注射を行った。シスプラチン注射の1時間前に20ナノモルのPACAP38を腹腔内投与し、初回用量の24時間後及び48時間後に追加用量を投与した。対照群のマウスには、シスプラチン及びPACAP38の注射に関するものと同量の生理食塩水を同じスケジュールで腹腔内注射した。最後のPACAP38注射の24時間後、マウスを安楽死させた。TNF−αを各マウスの片方の腎臓から抽出し、酵素結合免疫吸着アッセイで定量した。各値は、4つの測定の平均値±標準誤差を表す。シスプラチンのみによる処置群と比較して、***p<0.001及び**p<0.01。 シスプラチンで処置したマウスにおける腎臓の形態に対するPACAP38の効果を示す。雄性C57BL/6マウスに20mg/kgのシスプラチンの単回腹腔内注射を行った。シスプラチン注射の1時間前に20ナノモルのPACAP38を腹腔内投与し、初回用量の24時間後及び48時間後に追加用量を投与した。対照群のマウスには、シスプラチン及びPACAP38の注射に関するものと同量の生理食塩水を同じスケジュールで腹腔内注射した。最後のPACAP38注射の24時間後、マウスを安楽死させ、腎臓を摘出して10%ホルマリンで固定した。固定した切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。対照マウスの腎切片は、無傷の腎尿細管上皮細胞及び良好に保たれた刷子縁膜を示す。シスプラチンで処置したマウスの腎臓は、広範囲の尿細管損傷、尿細管拡張、尿細管内デブリ、及び尿細管内カストを有した。シスプラチン及びPACAP38の双方で処置したマウスは、比較的良好に保たれた尿細管形態を有し、シスプラチン処置マウスと比較して尿細管損傷及び尿細管腔内のデブリは少なかった。尿細管損傷は、シスプラチン処置マウスにおいては外皮質に一層顕著であった。左側の顕微鏡写真は、右側の顕微鏡写真(×320)より低倍率(×160)で撮った。図5、図6、図7、及び図8に示す結果は、同じ実験から得られた。 シスプラチンで処置したマウスにおける血清クレアチニンレベルに対するPACAP38、[D−Ser]PACAP38、[D−Ser,Lys38−パルミトイル]PACAP38、及びVIPの効果を示す。雄性C57BL/6マウスに20mg/kgのシスプラチンの単回腹腔内注射を行った。シスプラチン注射の1時間前に20ナノモルのPACAP38を腹腔内投与し、初回用量の24時間後及び48時間後に追加用量を投与した。対照群のマウスには、シスプラチン及びPACAP38の注射に関するものと同量の生理食塩水を同じスケジュールで腹腔内注射した。最後のPACAP38注射の24時間後、マウスを安楽死させた。各値は、6つの測定の平均値±標準誤差を表す。シスプラチンのみによる処置群と比較して、***p<0.001及び**p<0.01。 同等の濃度のPACAP38、[D−Ser]PACAP38及び[Lys34]PACAP38によって生じたヒト腎近位尿細管上皮細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死の減少を示す。HK−2ヒト腎細胞を、組換え上皮成長因子及びウシ下垂体抽出物を補充したケラチノサイト無血清培地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38、[D−Ser]PACAP38及び[Lys34]PACAP38の用量依存性阻害効果を、24時間のシスプラチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3回の反復実験における4つの測定の平均値±標準偏差を表す。ドキソルビシン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 同等の濃度のPACAP38、[D−Ser]PACAP38及び[Lys34]PACAP38によって生じたヒト肺上皮細胞のブレオマイシン誘導性アポトーシス細胞死の減少を示す。L−132ヒト肺細胞を、10%ウシ胎仔血清を補充したイーグル最小必須培地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38、[D−Ser]PACAP38及び[Lys34]PACAP38の用量依存性阻害効果を、24時間のシスプラチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3回の反復実験における4つの測定の平均値±標準偏差を表す。ブレオマイシン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 同等の濃度のPACAP38、[D−Ser]PACAP38及び[Lys34]PACAP38によって生じた褐色細胞腫細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死の減少を示す。PC−12ラット褐色細胞腫細胞を、15%ウマ血清及び2.5%ウシ胎仔血清を補充したF−12K培地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38及びPACAP38類似体の用量依存性阻害効果を、24時間のシスプラチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、4つの測定の平均値±標準誤差を表す。シスプラチン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 同等の濃度のPACAP38及びN−アセチル[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38によって生じた乳癌細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死の減少を示す。MCF−7ヒト乳癌細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清及び0.05mMの2−メルカプトエタノールを補充したイーグル最小必須培地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38及びN−アセチル[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38の効果を、48時間のドキソルビシン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3つの測定の平均値±標準偏差を表す。ドキソルビシン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01。 同等の濃度のPACAP27及びPACAP38による白血病細胞のエトポシド誘導性アポトーシス細胞死の減少を示す。ジャーカットヒトTリンパ球白血病細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640倍地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP27及びPACAP38の効果を、48時間のエトポシド曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3つの測定の平均値±標準偏差を表す。エトポシド処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 同等の濃度のPACAP38及び[Ala16,Ala17,D−Lys38]PACAP38によって生じた軽鎖免疫グロブリン分泌多発性骨髄腫細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死の亢進を示す。軽鎖免疫グロブリン分泌ヒト骨髄腫細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清及び0.05mMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640倍地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38、及び[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38の効果を、48時間のドキソルビシン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3つの測定の平均値±標準偏差を表す。ドキソルビシン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 同等の濃度のPACAP38及び[Ala22]PACAP38によって生じた軽鎖免疫グロブリン分泌多発性骨髄腫細胞のカルムスチン誘導性アポトーシス細胞死の亢進を示す。軽鎖免疫グロブリン分泌ヒト骨髄腫細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清及び0.05mMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640倍地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38、及び[Ala22]PACAP38の効果を、48時間のカルムスチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、3つの測定の平均値±標準偏差を表す。カルムスチン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 様々な濃度のPACAP38によって生じた軽鎖免疫グロブリン分泌多発性骨髄腫細胞のビンクリスチン誘導性アポトーシス細胞死の亢進を示す。軽鎖免疫グロブリン分泌ヒト骨髄腫細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清及び0.05mMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640倍地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38の効果を、48時間のビンクリスチン曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、4つの測定の平均値±標準偏差を表す。ビンクリスチン処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 様々な濃度のPACAP38によって生じた軽鎖免疫グロブリン分泌多発性骨髄腫細胞のサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死の亢進を示す。軽鎖免疫グロブリン分泌ヒト骨髄腫細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清及び0.05mMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640倍地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38の効果を、48時間のサリドマイド曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、4つの測定の平均値±標準偏差を表す。サリドマイド処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。 同等の濃度のPACAP38、[D−Ser]PACAP38及びVIPによって生じたヒト赤白血病細胞のサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死の亢進を示す。ヒト骨髄性白血病細胞を、10%非不活化ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640倍地で培養した。アポトーシス細胞死に対するPACAP38、[D−Ser]PACAP38及びVIPの効果を、48時間のサリドマイド曝露後における細胞質中のヒストン結合DNA断片(モノ及びオリゴヌクレオソーム)を定量することによって評価した。各値は、4つの測定の平均値±標準偏差を表す。サリドマイド処置(対照)細胞と比較して、**p<0.01及びp<0.05。
配列
配列番号1〜配列番号3は、ヒト配列である。配列番号4〜配列番号66は、対応するヒト配列の修飾体である。以下は、参照により全体として本明細書に援用される添付の配列リストに提供される配列の概要である:
配列番号1は、本発明に従い用いられ得るPACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号2は、本発明に従い用いられ得るPACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号3は、本発明に従い用いられ得るVIPのアミノ酸配列である。
配列番号4は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号5は、本発明に従い用いられ得る[Aib]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号6は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Lys38−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号7は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Lys38−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号8は、本発明に従い用いられ得る[Ala22]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号9は、本発明に従い用いられ得る[Ala16,Ala17,D−Lys38]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号10は、本発明に従い用いられ得る[Lys34]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号11は、本発明に従い用いられ得る[Lys38−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号12は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala16,Ala17,D−Lys38]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号13は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Ala16,Ala17,D−Lys38]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号14は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号15は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Nle17]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号16は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Nle17]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号17は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Nle17]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号18は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala17]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号19は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Ala17]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号20は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Ala17]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号21は、本発明に従い用いられ得る[Lys36−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号22は、本発明に従い用いられ得る[Lys32−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号23は、本発明に従い用いられ得る[Lys29−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号24は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Lys36−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号25は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Lys32−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号26は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Lys29−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号27は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Lys36−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号28は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Lys32−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号29は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Lys29−パルミトイル]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号30は、本発明に従い用いられ得る[Ala14]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号31は、本発明に従い用いられ得る[Ala20]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号32は、本発明に従い用いられ得る[Ala21]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号33は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala14]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号34は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala20]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号35は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala21]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号36は、本発明に従い用いられ得る[Ala14,Ala20]PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号37は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号38は、本発明に従い用いられ得る[Aib]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号39は、本発明に従い用いられ得る[Ala22]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号40は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号41は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Nle17]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号42は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Nle17]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号43は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Nle17]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号44は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala17]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号45は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Ala17]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号46は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Ala17]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号47は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号48は、本発明に従い用いられ得る[Aib,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号49は、本発明に従い用いられ得る[Ala22,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号50は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号51は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Nle17,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号52は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Nle17,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号53は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Nle17,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号54は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala17,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号55は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Ala17,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号56は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Ala17,D−Leu27]PACAP27のアミノ酸配列である。
配列番号57は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号58は、本発明に従い用いられ得る[Aib]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号59は、本発明に従い用いられ得る[Ala22]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号60は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号61は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Nle17]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号62は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Nle17]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号63は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Nle17]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号64は、本発明に従い用いられ得る[D−Ser,Ala17]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号65は、本発明に従い用いられ得る[Aib,Ala17]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号66は、本発明に従い用いられ得る[D−Ala,Ala17]VIPのアミノ酸配列である。
配列番号67は、本発明に従い用いられ得るニワトリ(ガルス・ドメスティクス(Galus domesticus))PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号68は、本発明に従い用いられ得るカエル(ラナ・リジブンダ(Rana ridibunda))PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号69は、本発明に従い用いられ得るサケ(オンコリンクス・ネルカ(Oncorhynchus nerka))PACAP38のアミノ酸配列である。
配列番号70は、本発明に従い用いられ得る、スナバエ(ルツォミヤ・ロンギパルピス(Lutzomyia longipalpis))マキサジランの天然に存在する一変異体のアミノ酸配列である。
定義
本明細書では、アミノ酸残基を特定して以下の標準的な3文字略記を用いる:Aib、α−アミノイソ酪酸;Ala、アラニン;Arg、アルギニン;Asn、アスパラギン;Asp、アスパラギン酸;Cys、システイン;Gln、グルタミン;Glu、グルタミン酸;Gly、グリシン;His、ヒスチジン;Ile、イソロイシン;Leu、ロイシン;Lys、リジン;Met、メチオニン;Nle、ノルロイシン;Phe、フェニルアラニン;Pro、プロリン;Ser、セリン;Thr、スレオニン;Trp、トリプトファン;Tyr、チロシン;Val、バリン。
本明細書で使用されるとき、語句「天然に存在するPACAP」ペプチドとは、自然界に存在し、且つアデニル酸シクラーゼ活性を促進してPAC/VIP受容体に結合する能力を示す下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)を指す。天然に存在するPACAPペプチドの例としては、限定はされないが、ヒトPACAP27(配列番号2)、ヒトPACAP38(配列番号1)、ヒトVIP(配列番号3)、ニワトリPACAP38(配列番号67)、カエルPACAP38(配列番号68)、サケPACAP38(配列番号69)、及びスナバエマキサジラン(配列番号70)が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、語句「PACAP様化合物」とは、天然に存在するPACAPペプチド、及びそのオルソログ、パラログ、類似体、断片、若しくは誘導体である任意のペプチド若しくはペプチド模倣化合物、又はPACAP/VIP受容体アゴニストである任意の化合物を指す。PACAP様化合物の非限定的な例は、配列番号1〜70に示されるポリペプチドである。本発明の範囲内のPACAP様化合物は、配列番号1〜70に示されるポリペプチドのうちの1つ又は複数と実質的な配列同一性(この用語は以下に定義するとおり)を示す。PACAP様化合物はまた、アゴニストとしてPACAP/VIP受容体の1つ又は複数に結合する能力(以下で考察する)によるか、例えばシスプラチン処置腎上皮細胞の生存度の上昇を(例えば、PACAP様化合物で処置されていない腎上皮細胞と比べて少なくとも2%、5%、10%、20%、25%、30%だけ、又はそれ以上)促進する能力によるか、又は例えば多発性骨髄腫細胞の増殖速度の低下を(例えば、PACAP様化合物で処置されていない多発性骨髄腫細胞と比べて少なくとも2%、5%、10%、20%、25%、30%だけ、又はそれ以上)促進する能力により、同定されてもよい。
本明細書で使用されるとき、語句「PACAP/VIP受容体アゴニスト」とは、タンパク質、天然に又は合成的に翻訳後修飾されたタンパク質、ポリペプチド、天然に又は合成的に修飾されたポリペプチド、ペプチド、天然に又は合成的に修飾されたペプチド、及び大型又は小型の非ペプチド分子を含めた、PACAP/VIP受容体の1つ又は複数に結合してそれを刺激する任意の分子を指す。
用語「約」は、本明細書では、記載される値の±10%である値を意味して用いられる。
「投与」又は「投与する」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して本発明の薬剤又は組成物のある投薬量を提供する方法を意味し、ここで経路は、例えば、局所、経口、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、動脈内(intrarterial)、皮内、筋肉内、又は皮下注射、吸入、点眼、又は植込み)、経鼻、経膣、直腸内、又は舌下適用であり、かかる使用に適合した薬学的に許容可能な担体と混合される。好ましい投与方法は、様々な要因、例えば、医薬組成物の成分、潜在的な又は実際の疾患部位(例えば、傷害器官の位置)、及び疾患の重症度に応じて異なり得る。
本明細書で使用されるとき、語句「抗癌剤」とは、対象における癌細胞を死滅させるか(例えばアポトーシスを誘導することにより)、その分裂を遅延させるか(例えば、有糸分裂を妨げることにより)、又は他の方法でその有害作用を軽減するため、対象、好ましくはヒト対象に投与される任意の化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「抗癌剤」は、「化学療法薬」、「化学療法剤」、及び「癌治療薬」と同じ意味を有する。特に有用な抗癌剤クラスとしては、アルキル化剤、代謝拮抗薬、ホルモン作動薬及び拮抗薬、ニトロソウレア、並びに植物性アルカロイドが挙げられる。抗癌剤の非限定的な例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、サリドマイド、レナリドマイド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、フルダラビン、5−アザシチジン、ペントスタチン、シタラビン、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ボルテゾミブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセル、並びにこれらの誘導体及び類似体が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、語句「類似体」は、コンホメーション上の類似体と、線形配列上の類似体との双方を指す。ペプチド類似体は、哺乳動物細胞には天然に存在するが、哺乳動物ペプチドには天然に存在しない1つ又は複数のアミノ酸を含み得る。例えば(但し限定としてではなく)、ペプチド類似体は、γ−アミノ−N−酪酸(GABA)、β−アラニン、オルニチン、又はシトルリンを含み得る。ペプチドの類似体はまた、哺乳動物細胞には天然に存在しない1つ又は複数の非天然アミノ酸も含み得る。例えば(但し限定としてではなく)、ペプチドの類似体はまた、D−アラニン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、又はノルロイシンも含み得る。類似体は、そのアミノ末端及び/又はそのカルボキシル末端に1つ又は複数の天然に存在する及び/又は非天然のアミノ酸の伸長部を有し得る。アミノ末端及び/又はカルボキシル末端の伸長部は、同じペプチド及び/又は他の生物活性ペプチドの1つ又は複数の追加的なコピーを含み得る。アミノ末端及び/又はカルボキシル末端の伸長部は、伸長したペプチドを生物活性ペプチドの前駆体(プロドラッグ)として機能させるための1つ又は複数のタンパク質分解プロセシング部位を含み得る。例えば、PACAP様化合物は、アミノ末端及び/又はカルボキシル末端に、以下のタンパク質分解酵素の1つ又は複数に対する切断部位を含み得る:トリプシン、キモトリプシン、プロホルモン転換酵素(例えば、プロホルモン転換酵素1、2、4、又は7)、フューリン、キマーゼ、トロンビン、カルパイン、カテプシン(例えば、カテプシンA、B、D、G、H、又はL)、パパイン、Xa因子、IXa因子、XIa因子、レニン、キモシン、サーモリシン、カリクレイン、エラスターゼ、及びメタロプロテイナーゼ。
本明細書で使用されるとき、語句「ペプチド模倣の」とは、対応するペプチドと機能的に等価な三次元配置において重要な官能基を有するハイブリッドペプチド/有機分子及び非ペプチド有機分子の双方を指す(Marshall,G.R.Tetrahedron 49:3547−3558頁,1993年)。当業者は、公表されている構造活性研究(例えば、Igarashi,H.ら J.Pharmacol.Exp.Ther.301:37−50頁,2002年;Igarashi,H.ら J.Pharmacol.Exp.Ther.303:445−460頁,2002年;Bourgault,S.ら Peptides 29:919−932頁,2008年)に基づき、本発明のPACAP様化合物と機能的に等価なペプチド模倣化合物を合理的に設計することができる。
語句「パーセント同一性」及び「パーセント類似性」は、2つのペプチドのアミノ酸配列を比較して用いられ得る。2つのアミノ酸配列のパーセント同一性を決定するためには、最適な比較を目的として配列を整列させる(例えば、第1のアミノ酸配列の配列に、第2のアミノ酸配列と最適に整列するようにギャップを導入することができる)。次に、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。第1の配列における位置が、第2の配列の対応する位置において同じアミノ酸残基によって占められているとき、それらの分子は当該位置において同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の重複位置の数/位置の総数×100%)。最も一般的な実施形態において、2つのアミノ酸配列は同じ長さである。2つのアミノ酸配列のパーセント類似性を決定するためにもまた、最適な比較を目的として配列を整列させる。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置において同じアミノ酸残基又は保存アミノ酸のいずれかによって占められているとき、それらの分子は当該位置において類似している。2つの配列間のパーセント類似性は、アミノ酸配列において対応する位置であって、そこでそれらのアミノ酸が同一であるか、又はそれらの異なるアミノ酸が、保存された置換基である位置の数の関数である(すなわち、%類似性=同一の、又は保存された重複位置の数/位置の総数×100%)。保存的置換とは、あるアミノ酸の、類似した側鎖を有する別のアミノ酸による置換である。保存的置換は、結果として類似した物理学的及び生物学的特性を有する類似体をもたらすことが多い。以下は、哺乳動物ペプチドに天然に存在する、一般に定義されている類似アミノ酸クラスのリストである:
芳香族側鎖:フェニルアラニン≒チロシン≒トリプトファン≒ヒスチジン;
酸性側鎖:アスパラギン酸≒グルタミン酸;
塩基性側鎖:アルギニン≒リジン≒ヒスチジン;
β分岐側鎖:スレオニン≒バリン≒イソロイシン;
非極性側鎖:グリシン≒アラニン≒バリン≒ロイシン≒プロリン≒メチオニン≒フェニルアラニン≒トリプトファン;
無電荷極性側鎖:グリシン≒アスパラギン≒グルタミン≒セリン≒スレオニン≒システイン≒チロシン。
当業者は、哺乳動物細胞に天然に存在するが、哺乳動物ペプチドには天然に存在しない多くのアミノ酸、及び哺乳動物細胞には天然に存在しない多くの非天然アミノ酸により、哺乳動物ペプチドに天然に存在するアミノ酸の1つ又は複数を保存的に置換してもよいことを認識するであろう。例えば(但し限定としてではなく)、ヒドロキシプロリン、デヒドロプロリン及びピペコリン酸により、プロリンを保存的に置換することができ;サルコシン、ジアルキルグリシン及びα−アミノシクロアルカンカルボン酸により、グリシンを保存的に置換することができ;及びα−アミノイソ酪酸、ナフチルアラニン及びピリジルアラニンにより、アラニンを保存的に置換することができる。パーセント同一性及びパーセント類似性は、一方又は双方のアミノ酸配列への1つ又は複数のギャップの導入を伴わない、又は伴わない、2つの配列の最適アラインメント後に決定される。最適アラインメントの決定に使用することのできる当業者に周知のアルゴリズムは多数ある。最も一般的な実施形態において、2つのアミノ酸配列は同じ長さである。
「実質的な配列同一性」又は「実質的に同一な」とは、参照アミノ酸配列(例えば、配列番号1〜70のポリペプチドの1つ又は複数)に対して少なくとも50%、好ましくは60%、70%、75%、又は80%、より好ましくは85%、90%、95%、97%、及び最も好ましくは99%の同一性を示すペプチド又はポリペプチドを意味する。比較配列の長さは、概して、少なくとも5個の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも10個の隣接するアミノ酸、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60個又はそれ以上の隣接するアミノ酸、及び最も好ましくは完全長アミノ酸配列であり得る。好ましくは、本発明のペプチドの配列は、参照配列(例えば、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数)と少なくとも40、50、60、70、80、90、95、97、99%、又は100%同一である。配列同一性は、典型的にはBLAST(登録商標)(Basic Local Alignment Search Tool)又は中で指定するデフォルトパラメータ付きのBLAST(登録商標)2を使用して測定される(例えば、Altschulら,J Mol Biol 215:403−410頁(1990年);及びTatianaら,FEMS Microbiol Lett 174:247−250頁(1999年))。このソフトウェアプログラムは、様々な置換、欠失、及び他の修飾との一致度を割り当てることにより類似配列を照合する。保存的置換は、典型的には以下の群内での置換を含む:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。
本明細書で使用されるとき、PACAP様又はVIP様ペプチドとの関連における語句「断片」とは、PACAP様又はVIP様ペプチドと比べてアミノ酸が少ないペプチドであって、それぞれPACAP様又はVIP様ペプチド(例えば、配列番号1〜70のポリペプチドの1つ又は複数)と配列類似性又は同一性(例えば、少なくとも5〜20個又はそれ以上の隣接するアミノ酸にわたり少なくとも90%、95%、97%、99%、又は100%の配列同一性)を有する少なくとも5個の隣接するアミノ酸(例えば、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の隣接するアミノ酸)を有するペプチドを指す。
本明細書で使用されるとき、語句「誘導体」とは、そのペプチド鎖に別の分子及び/又は官能基が共有結合することによって修飾されているペプチドを指す。例えば(但し限定としてではなく)、ペプチドの誘導体は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、アシル化、アルキル化、酸化、リン酸化、硫酸化、ホルミル化、メチル化、脱メチル化、アミド化、γ−カルボキシル化、環化、ラクタム化、プレニル化、ミリストイル化、ヨウ素化、セレノイル化、リボシル化、ユビキチン化、又はヒドロキシル化によって産生され得る。誘導体化ペプチドは、ペプチド類似体であってもよい。ペプチドの誘導体は、当業者に公知の標準的な技術により容易に作製することができる。ペプチドの誘導体は、親ペプチドと同一の1つ又は複数の機能を有し得る。ペプチドの誘導体はまた、親ペプチドの1つ又は複数の機能に加え、1つ又は複数の他の機能も有し得る。例えば(但し限定としてではなく)、ペプチドの誘導体は、親ペプチドより長い半減期を有してもよく、及び/又は親ペプチドが有しない細胞保護特性若しくは細胞傷害特性を有してもよい。
本明細書で使用されるとき、語句「対象」とは、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、雌ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット等)又は霊長類(例えば、サル又はヒト)、最も好ましくはヒトを指す。特定の実施形態において、対象は家畜(例えば、ウマ、ブタ、子ヒツジ又は雌ウシ)又はペット(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、又はサル)である。他の実施形態において、対象は、家畜又はペット以外の動物(例えば、マウス、ラット又はモルモット)である。好ましい実施形態において、対象はヒトである。別の好ましい実施形態において、対象は、癌治療を受けていない(しかし、例えば診断は受けた)か、又は癌治療を受けているヒト患者である。
本明細書で使用されるとき、語句「〜と組み合わせて」とは、本発明の方法において2つ以上の治療剤又は細胞保護剤を使用することを指す。語句「〜と組み合わせて」の使用は、治療剤又は細胞保護剤を対象に投与する順序を制限するものではない。一つの治療剤又は細胞保護剤を、第2の、又は追加的な1つ又は複数の治療剤又は細胞保護剤の投与の前に、それと同時に、又はそれに続けて投与することができる。治療薬は、順番に、且つある時間間隔内に、本発明の1つ又は複数のPACAP様化合物が他の薬剤と共に作用することで、対象からの異なる反応、好ましくは、他の方法で投与された場合と比べてより大きい治療的又は細胞保護的利益を提供することができるように、対象に投与される。
本明細書で使用されるとき、語句「神経系」とは、中枢神経系(脳及び脊髄)、交感神経系、副交感神経系、及び腸管神経系を指す。
本明細書で使用されるとき、語句「造血細胞」とは、造血幹細胞に由来する細胞(癌細胞を含む)を指す。造血幹細胞に由来する生体の正常細胞としては、(限定はされないが)血球細胞、例えば、赤血球、顆粒球(好塩基球、好酸球及び好中球)、リンパ球、単球(マクロファージ、ミクログリア、脾細胞、及び樹状細胞)、及び血小板が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、語句「血液系悪性腫瘍」及び「血液癌」とは、(限定はされないが)血球細胞の癌、非間質性骨髄細胞の癌、及びリンパ節細胞の癌を含めた、造血細胞の任意の癌又は悪性腫瘍を指す。これらの癌としては、白血病、リンパ腫、及び形質細胞異常増殖症が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、語句「形質細胞異常増殖症」とは、(限定はされないが)多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、POEMS症候群、セリグマン病、及びフランクリン病を含めた、Bリンパ球系統の単クローン性新生物を指す。
哺乳動物の抗癌剤による治療の影響として生じる、ヒトなどの哺乳動物の生体器官(例えば、神経系、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸(例えば、十二指腸粘膜)、大腸、虫垂、及び結腸)、乳房、卵巣、精巣、前立腺、副腎、胸腺、脾臓、又はリンパ節)に対する傷害を「治療する」、「管理する」、「軽減する」、「抑制する」、又は「予防する」とは、本発明のPACAP様化合物を哺乳動物に投与し、それにより、抗癌剤による治療に関連した、それから生じる、又はそれから生じる可能性のある哺乳動物の1つ又は複数の生体器官に対する傷害を回復し、緩和し、又は妨げることを意味する。単に例として、PACAP様化合物の投与は、哺乳動物に投与することのできる抗癌剤の量を、臓器傷害を増加させることなく、又はそれを低減しながら(例えば、それにより哺乳動物の器官に対する傷害の軽減又は抑制、又はその予防を提供して)、通常その哺乳動物に投与される最大耐容量を少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、又は20%又はそれ以上上回って増量することを可能にすることにより、哺乳動物に対する治療をもたらす。別の治療例において、抗癌剤と組み合わせたPACAP様化合物の投与は、PACAP様化合物の投与がないときの癌細胞の増殖と比べて、癌細胞の増殖を少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%又はそれ以上低減する。別の治療例において、抗癌剤と組み合わせたPACAP様化合物の投与は、PACAP様化合物を投与されない哺乳動物と比べて、哺乳動物の癌生存率(例えば、5年生存率)を少なくとも1、2、5、10、15、20、40、60、80、又は100%又はそれ以上改善する。望ましくは、本発明の方法により、標準方法を用いて測定したときの腫瘍サイズ又は癌性細胞数が20、40、60、80、又は100%減少する。望ましくは、治療を受けた哺乳動物の少なくとも20、40、60、80、90、又は95%が、生体器官に対する傷害を示さないか、抗癌剤に対するより高い耐容性を示すか、又は腫瘍サイズ若しくは癌細胞数の減少を示す。
発明の詳細な説明
本特許出願の発明者は、1)PACAP様化合物が抗癌剤によって引き起こされる細胞傷害を保護し、及び2)PACAP様化合物が、特定の癌細胞、特に造血器癌又は血液癌細胞(例えば、赤血球、顆粒球、リンパ球、単球、及び血小板に由来する癌細胞)において抗癌作用(例えば、アポトーシスの促進)を示すことを発見した。従って、本発明は、抗癌剤の投与に起因して生じる対象の器官(例えば、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸(例えば、十二指腸粘膜)、大腸、虫垂、及び結腸)、乳房、卵巣、精巣、前立腺、副腎、胸腺、脾臓、又はリンパ節)に対する傷害を、対象にPACAP様化合物を投与することにより治療し、管理し、軽減し、抑制し、又は予防する方法を特徴とする。
本PACAP様化合物の投与は、抗癌剤に対して用量制限毒性を有する1つ又は複数の器官を標的とするとともに、1つ又は複数の器官に対する傷害を治療し、軽減し、又は抑制することにより、対象が耐容し得る抗癌剤の最大用量を増加させる。本PACAP様化合物はまた、癌、例えば造血器癌又は血液癌に対する抗癌剤の効力を増加させるために投与することもできる。
本PACAP様化合物は、対象に対し、静脈内又は動脈内に、又は本明細書に記載される他の経路により投与することができる。上皮細胞癌(例えば、乳房、卵巣、精巣、若しくは前立腺の癌、又は非小細胞肺癌)を有する対象については、PACAP様化合物は、抗癌剤の投与により生じる傷害に起因して用量制限毒性を示す1つ又は複数の生体器官(例えば、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸(例えば、十二指腸粘膜)、大腸、虫垂、及び結腸)、副腎、胸腺、脾臓、又はリンパ節)に対し、直接投与されてもよい。造血器癌又は血液癌(限定はされないが、白血病、リンパ腫及び形質細胞異常増殖症(例えば、多発性骨髄腫)を含む)を有する対象については、PACAP様化合物は、抗癌剤の投与により生じる傷害に起因して用量制限毒性を示す1つ又は複数の生体器官に対し、間接的に(例えば、静脈内投与又は本明細書に記載される他の直接的ではない経路のいずれかにより)投与されてもよい。
特に、本特許出願の発明者は、シスプラチンにより引き起こされる培養ヒト腎尿細管上皮細胞の損傷が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により劇的に低減され得ることを発見した。本特許出願の発明者はまた、マウス生体内でシスプラチンにより引き起こされる腎毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により劇的に低減され得ることも発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、シスプラチンによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対するPACAP様化合物の直接投与(例えば、腎臓への送達)又は間接投与(例えば、静脈内送達)を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒト腎尿細管上皮細胞においてドキソルビシンにより引き起こされる腎毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により劇的に低減され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、ドキソルビシンによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対するPACAP様化合物の直接投与(例えば、腎臓への送達)又は間接投与(例えば、静脈内送達)を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒト肺細胞においてブレオマイシンにより引き起こされる肺毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により劇的に低減され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、ブレオマイシンによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対する直接投与(例えば、肺への吸入)又は間接投与(例えば、静脈内送達)を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ラット褐色細胞腫細胞においてシスプラチンにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体によって低減され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、対象が抗癌剤を使用して非造血器癌又は非血液癌(例えば、神経内分泌起源の癌)の治療を受けているとき、抗癌剤に用量制限性を示す対象の生体器官に対するPACAP様化合物の直接投与を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒト乳癌細胞においてドキソルビシンにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体によって低減され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、対象が抗癌剤を使用して乳癌の治療を受けているとき、抗癌剤に用量制限性を示す対象の生体器官に対するPACAP様化合物の直接投与を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒトTリンパ球白血病細胞においてエトポシドにより引き起こされる毒性が、極めて高濃度の天然ヒトPACAP38によっても、及びおそらくはさらに高濃度の天然ヒトPACAP27又は天然ヒトVIPによっても、僅かにしか低減され得ないことを発見した。従って、PACAP38は、シスプラチン(図3)又はドキソルビシン(図11)による治療に起因する毒性に対する腎上皮細胞の細胞保護薬としては、及びブレオマイシン(図12)により引き起こされる毒性に対する肺上皮細胞の細胞保護薬としては、エトポシドにより引き起こされる毒性に対するTリンパ球白血病細胞の保護薬としての場合より約100倍強力である。ある実施形態では、本発明の方法は、白血病に対してエトポシドによる治療を受けている対象に対するPACAP様化合物の直接投与(例えば、例えば中枢神経系又は肺への直接投与)を特徴とするが、白血病患者において間接投与(例えば、静脈内送達)が必ずしも禁忌となるわけではない。
本特許出願の発明者は、培養ヒト軽鎖免疫グロブリン分泌骨髄腫細胞においてドキソルビシンにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により直接亢進され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、例えばドキソルビシンによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対するPACAP様化合物の直接又は間接投与を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒト軽鎖免疫グロブリン分泌骨髄腫細胞においてカルムスチンにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により直接亢進され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、例えばカルムスチンによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対するPACAP様化合物の直接又は間接投与を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒト軽鎖免疫グロブリン分泌骨髄腫細胞においてビンクリスチンにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により直接亢進され得ることを発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、例えばビンクリスチンによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対するPACAP様化合物の直接又は間接投与を特徴とする。
本特許出願の発明者は、培養ヒト軽鎖免疫グロブリン分泌骨髄腫細胞においてサリドマイドにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により直接亢進され得ることを発見した。本特許出願の発明者はまた、培養ヒト赤白血病細胞においてサリドマイドにより引き起こされる毒性が、天然ヒトPACAP38、天然ヒトPACAP27、並びにPACAP38又はPACAP27の類似体、断片及び誘導体(限定はされないが、配列番号1〜70に示されるポリペプチドの1つ又は複数を含む)により直接亢進され得ることも発見した。ある実施形態では、本発明の方法は、サリドマイドによる治療を受けている、又はそれによる治療を受けることになる対象に対するPACAP様化合物の直接又は間接投与を特徴とする。
本特許出願の発明者は、PACAP様化合物がある癌細胞の増殖速度を刺激するのか、又は抑制するのかと、PACAP様化合物がある癌細胞に対するある化学療法薬の抗癌活性を低減するのか、又は亢進するのかとの間には、相関があることを発見した。特に、本発明者は、PACAP様化合物が、非上皮起源のほとんどの癌(例えば、造血器癌又は血液癌)の増殖速度を抑制し、又は増殖を促進しないことを発見した。
PACAP様化合物の同定
本発明は、本発明の方法で用いるのに好適な、PACAP38、PACAP27、VIP、それらのアゴニスト、類似体、断片、又は誘導体などのPACAP様化合物について、その化合物を、1つ又は複数のPACAP/VIP受容体を含む上皮細胞、例えば、腎、肝、又は肺の上皮細胞とインキュベートし、次に、例えば化学療法剤の存在下において、病変を引き起こす細胞表現型の減少をアッセイすることにより、アッセイ及びスクリーニングする方法を提供する。上記のアッセイに代えて、又は加えて、本発明に用いられるPACAP様化合物は、その化合物を血液由来の癌細胞、例えば多発性骨髄腫細胞とインキュベートし、次に、癌細胞増殖の低減又は阻害についてアッセイすることにより同定することができる(Liら,2008年)。
例えば、本発明の方法に有用となり得るPACAP様化合物は、シスプラチン処置された腎上皮細胞の生存度の上昇を(例えば、PACAP様化合物で処置されない腎上皮細胞と比べて少なくとも2%、5%、10%、20%、25%、30%、又はそれ以上)促進する能力を示し得るとともに、多発性骨髄腫細胞の増殖速度の減少を(例えば、PACAP様化合物で処置されない多発性骨髄腫細胞と比べて少なくとも2%、5%、10%、20%、25%、30%、又はそれ以上)促進し得る。加えて、3つのPACAP/VIP受容体の各々における任意のPACAP様化合物の内因活性は、例えば3つの受容体のうちの1つのみを発現する安定にトランスフェクトされた細胞系において、サイクリックAMPの細胞内蓄積を計測することにより決定することができる(Tatsunoら,2001年)。放射性リガンド受容体結合アッセイを用いると、PACAP/VIP受容体の1つ又は複数に対する化合物の親和性を測定することができる。かかる化合物は、10−6M未満、より好ましくは10−7M、10−8M、10−9M、10−10M、10−11M、又は10−12M未満、最も好ましくは10−13M、10−14M、又は10−15M未満の解離定数で、PACAP/VIP受容体に対する結合性を示し得る。しかしながら、放射性リガンド受容体結合アッセイは受容体アゴニストと受容体アンタゴニストとを区別しない;当該技術分野において公知の他のアッセイは、PACAP/VIP受容体アゴニストをPACAP/VIP受容体アンタゴニストと区別することができる。
腎、肺及び肝の上皮細胞の生存度は、(限定はされないが)核DNAの断片化、細胞内カスパーゼ3活性又は細胞外乳酸脱水素酵素活性の定量化、及びアポトーシス(核濃縮)細胞又はトリパンブルー陽性細胞の計数を含めた、当業者に公知の様々な技法によって測定することができる。好ましい実施形態では、核DNAの断片化又はカスパーゼ3活性が測定される。
多発性骨髄腫細胞の細胞増殖は、(限定はされないが)ブロモデオキシウリジン又は[H]チミジンの核DNAへの取込みの定量化、増殖細胞核抗原を発現する細胞数の計数及び有糸分裂像の計数を含めた、当業者に公知の様々な技法によって測定することができる。好ましい実施形態では、ブロモデオキシウリジン又は[H]チミジンの核DNAへの取込みが測定される。
これらの受容体のうちの1つのみを発現する安定にトランスフェクトされた細胞系におけるサイクリックAMPの細胞内蓄積は、(限定はされないが)ラジオイムノアッセイ又は酵素結合免疫吸着アッセイを含めた、当業者に周知の公知の様々な技法によりPACAP様化合物で刺激した後に測定することができる。刺激は、氷冷20%トリフルオロ酢酸を添加することにより停止させる。cAMPを細胞から抽出し、抽出物を遠心して上清を小型のプラスチックバイアルに入れ、その上清を、cAMPレベルのアッセイ用に凍結乾燥させる。好ましい実施形態では、cAMPの細胞内レベルは酵素結合免疫吸着アッセイにより定量化される。
患者集団
本発明は、1つ又は複数の抗癌剤による治療を受けている対象(例えば、ヒト又は他の哺乳動物)の1つ又は複数の生体器官、特に、神経系(例えば、脳)、心臓、肺、腎臓、膵臓、胆嚢、胃腸管(例えば、咽頭、食道、胃、小腸(例えば、十二指腸粘膜)、大腸、虫垂、及び結腸)、肝臓、副腎、胸腺、脾臓、及びリンパ節に対する損傷又は傷害を、治療、予防、軽減、抑制、及び管理する方法を提供する。この方法は、本発明の1つ又は複数の組成物の有効量の治療的又は予防的投与に関わる。
本発明の方法は、1つ又は複数の抗癌剤の副作用を被ってきた、それを被っている、又はそれを被ることが予想される1つ又は複数の種類の癌を有する患者に対する、本発明の1つ又は複数の組成物(例えば、配列番号1〜70に示されるPACAP様ポリペプチドの1つ又は複数などのPACAP様化合物を含む組成物)の投与に関わる。好ましい実施形態において、患者は、(限定はされないが)白血病(例えば、慢性骨髄性白血病又は赤白血病)、リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫又はマントル細胞リンパ腫)、又は形質細胞異常増殖症(例えば、多発性骨髄腫又はワルデンシュトレームマクログロブリン血症)を含む血液系悪性腫瘍を治療するため、1つ又は複数の癌化学療法薬の投与を受けてきたか、それを受けているか、又はそれを受けることが予想される。これらの対象は、多数の投与経路のいずれによって組成物を投与されてもよい。
或いは、患者集団としては、上皮起源の固形腫瘍を有する、それを被ってきた、それを被っている、又はそれを被ることが予想される患者が挙げられる。これらの患者は、患者に投与される抗癌剤の1つ又は複数により傷害された(又は傷害されることが予想される)患者の器官又は組織(例えば、抗癌剤による治療に対して用量制限性を示す器官)を、本発明の組成物で直接標的化することにより治療されてもよい。ある実施形態では、本発明の組成物は、非経口投与以外の経路によりこれらの患者に投与される。
対象は、1つ又は複数の癌の治療を過去に1度以上受けたことがあっても、又はなくてもよい。対象は、1つ又は複数の癌化学療法薬に対して過去に治療不応性を示したことがあっても、又はなくてもよい。本発明の方法及び組成物は、1つ又は複数の癌、特に造血器癌又は血液癌に対する第一選択、第二選択又は非標準的治療レジメンとの補助的治療として用いられてもよい。本発明の方法及び組成物はまた、(限定はされないが)CHOP、COP、COPP、MOPP、及びVADを含めた、1つ又は複数の癌、特に造血器癌又は血液癌に対する標準的なグルココルチコイド含有レジメンの一つにおけるグルココルチコイドの代替として用いられてもよい。本発明の方法及び組成物は、1つ若しくは複数の癌化学療法薬の何らかの副作用が観察される前に用いられても、又は1つ若しくは複数の癌化学療法薬の何らかの副作用が初回若しくはそれ以降に観察された後に用いられてもよい。
併用療法
本発明はまた、本発明の1つ又は複数の組成物を1つ又は複数の他の細胞保護剤と組み合わせて投与することにより、ヒト又は他の哺乳動物の生体器官の1つ又は複数に対する傷害(例えば、例えば1つ又は複数の抗癌剤の投与によって引き起こされる、又はそれにより生じる可能性のある傷害)を、治療、管理、軽減、抑制、又は予防する方法も提供する。このような他の細胞保護剤としては、(限定はされないが)アミホスチン、デクスラゾキサン、メスナ、パリフェルミン、及びN−アセチルシステインが挙げられる。
アミホスチンは、進行性卵巣癌患者におけるシスプラチンの反復投与によって引き起こされる腎毒性を軽減するための、及び頭頸部癌患者における放射線療法によって引き起こされる口内乾燥症を軽減するための、米国Food and Drug Administration(FDA)により承認されている有機チオリン酸プロドラッグである。アミホスチンは、内皮のアルカリ性ホスファターゼにより脱リン酸化されて生物活性遊離チオール化合物を生じ、これは、フリーラジカルを除去することができる。アミホスチンの投与は、結果としてシスプラチンによる治療を受ける患者の腎機能の有意な、しかし少しの保護をもたらすが、しかし重篤な副作用を引き起こす。5つの無作為に選んだ臨床治験のメタ分析から、アミホスチンが有機白金癌剤によって引き起こされるニューロパチーを軽減することができるかどうかを判断するのに十分なデータはないことが分かった(Albersら,2007年)。アミホスチンは、ブレオマイシン誘導性肺障害を憎悪させることが報告されている(Ortizら,1999年)。
デクスラゾキサンは、進行性乳癌女性におけるドキソルビシンによる治療によって引き起こされる心毒性の発生率及び重症度を軽減するための、米国FDAにより承認されているEDTA様化合物である。心臓における遊離鉄のキレート化が、その心保護特性に関与するものと考えられる。9つの無作為に選んだ臨床治験のメタ分析から、デクスラゾキサンによる治療の有意な心保護作用が確認されたが、アントラサイクリン抗癌剤に対する奏功率の違いについても、又は生存期間の違いについても、エビデンスは認められなかった(van Dalenら,Cochrane Database Syst.Rev.(1):CD003917,2005年)。
メスナは、シクロホスファミドによる治療によって引き起こされる出血性膀胱炎を予防するための、米国FDAにより承認されているチオール含有化合物である。
列挙した細胞保護剤のいずれもGタンパク質共役受容体を刺激せず、これらの細胞保護剤の全てが、PACAP様ペプチドの推定される細胞保護的な作用機序とは異なる作用機序を有する。従って、これらの細胞保護剤の1つ又は複数が、PACAP様ペプチドと組み合わせて投与されるとき相加効果又はさらには相乗効果を示し得る。
PACAP38、PACAP27、VIP、及び関連類似体の合成
適合しない化学物質が合わせられるまれな数例を除いては、類似体は全て、Boc化学及びフッ化水素(HF)樹脂切断を用いる改良したメリフィールド固相法により調製される。簡潔には、Me−ベンズヒドリルアミン樹脂を使用してHF切断後に直接アミドを得る。Boc除去には40%トリフルオロ酢酸(TFA)/塩化メチレンを使用するとともに、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)若しくはTBTU/DIPEA活性化又はDIC/HOBt予備活性化及び活性エステルカップリングによりカップリングを実現する。本発明者は、カイザーニンヒドリン試験によって各段階でモニタされるカップリングのうち約20%が、1時間では完了に達することができないと推定する。これらの抵抗性のカップリングのほとんど全ては、カップリング力をさらに高めるように触媒量のジメチルアミノピリジンが添加され得るジメチルホルムアミド中で対応するHOBt活性化エステルを繰り返しカップリングすることにより、l5〜30分間で完了するよう駆動することができる。CS Bio自動ペプチドシンセサイザーにより、これらの予備活性化、二重カップリング等の全てを完全に自動化し、それと同時に合成速度を増加させることが可能となる。一般的に使用される側鎖保護基は:Asp及びGlu、cHex;Ser及びThr、Bzl;Arg及びHis、トシル(又はHisについてはBom);Lys、2−Cl−Z;及びTyr、2−Br−Zである。
同時に、ペプチドは15%アニソール含有無水HFにより0℃で45分間処理することによって脱保護され、樹脂担体から切断される。過剰なHFは高速の乾燥窒素流下で速やかに除去する(約l0分間)。直鎖状ペプチドと共に、樹脂が2M酢酸により抽出され、300オングストローム細孔径(粒度10μm)のVydac C−l8又はフェニル−シリカを含有する分取クロマトグラフィーシステム(1.5又は2.5×25cmのいずれかのカラム)に直接加えられる。これらのペプチドの全てについて、2つの十分に揮発性の溶媒溶出システムの使用が成功している:約8〜20ml/分の流速での0.l%TFA中のアセトニトリル及び20%酢酸中のアセトニトリル(不溶性ペプチドに好適)の直線勾配。勾配は、Raininプログラマブル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプにより作られ、及び典型的な分離通液は、通常は1時間以内に完了し得る。
長鎖飽和脂肪酸は、PACAP38又はPACAP38類似体の1つ(例えば、配列番号5及び配列番号6)のC末端近傍にある4個のLys残基の1つの遊離ε−アミノ基に共有結合する。PACAP27及びPACAP38は、PAC、VPAC及びVPAC受容体に対して同様の親和性を有し、高親和性の受容体結合に他の11アミノ酸は必須ではないことが示唆される。脂肪酸結合により、血清中で圧倒的に最も豊富にあるタンパク質である血清アルブミンとの高親和性結合が促進され得る(Kurtzhals P.ら J.Pharm.Sci.85:304−308頁,1996年)。この方策は、セクレチン/VIP/PACAPファミリーのメンバーであるGLP−1の長時間作用型類似体を作製するために用いられている(Knudsen,L.B.ら J.Med.Chem.43:1664−1669頁,2000年)。
各精製化合物の純度は分析HPLCにより確認し、構造は、アミノ酸分析(加水分解後、HPLC前のフルオレサミンによるカラム標識)及びマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析により確認した。
治療有用性の実証
本発明のプロトコル及び組成物は、初めにインビトロで試験し、次に所望の治療的又は予防的活性について生体内前臨床モデルで試験してから、ヒトで使用され得る。例えば、特定の治療プロトコルの投与が適応とされるかどうかの判断に用いることのできるインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられ、ここでは、適切な細胞系又は患者組織試料を培養下で成長させ、プロトコルに曝露させるか、又はその他の方法でプロトコルを投与して、組織試料に対するかかるプロトコルの効果を観察する。例えば(但し限定としてではなく)、感覚ニューロン、腎若しくは肺の上皮細胞、肝実質細胞、又は心筋細胞のレスキュー;NFκB活性化の低下;B若しくはTリンパ球の生存又は増殖の低下;又はTNF−α及びIL−6産生の低下。曝露された細胞が前述の特性のうちの1つ又は複数を実証すると、それはその治療剤が患者における病態の治療に有効であることを指し示す。ニューロン、上皮細胞、肝実質細胞、及び/又はB若しくはTリンパ球のかかる生存及び/又は成長の評価には、当該技術分野において標準的な多くのアッセイを用いることができる。さらに、当業者に公知のアッセイのいずれかを用いることにより、抗癌剤によって引き起こされる1つ又は複数の生体器官に対する傷害の治療、管理又は予防についての、本明細書に開示される併用療法の予防的及び/又は治療的有用性を評価することができる。
1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされる対象の1つ又は複数の生体器官に対する傷害は、対象において、一般的に使用されるバイオマーカーによりモニタすることができる。例えば(但し限定としてではなく)、腎臓に対する傷害は、尿中のタンパク質の濃度、又は血流中のクレアチニン若しくは尿素窒素の濃度を測定することによりモニタすることができる。肝臓に対する傷害は、血流中のアラニンアミノトランスフェラーゼの酵素活性若しくは濃度、又は尿中のコンジュゲート化ビリルビンの濃度を測定することによりモニタすることができる。心臓に対する傷害は、血流中のトロポニンI又はクレアチニンキナーゼのMBアイソザイムの濃度を測定することによりモニタすることができる。膵臓のβ細胞に対する傷害は、血流中のグルタミン酸デカルボキシラーゼの活性又は濃度を測定することによりモニタすることができ、神経系に対する傷害は、血流中のニューロン特異的エノラーゼの活性又は濃度を測定することによりモニタすることができる。
1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされる対象の1つ又は複数の生体器官に対する傷害はまた、対象において、一般的に使用されるイメージング技法によりモニタすることもできる。例えば(但し限定としてではなく)、心臓に対する傷害は、心電図記録法又は連続心エコー法によりモニタすることができる。
1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされる対象の1つ又は複数の生体器官に対する傷害はまた、対象において、一般的に使用される機能検査によりモニタすることもできる。例えば(但し限定としてではなく)、腎臓に対する傷害は、シスタチンC又は125I−イオタラム酸ナトリウムクリアランスによる糸球体濾過率を測定することによりモニタすることができる。末梢神経に対する傷害は、神経伝導速度又は体制知覚を測定することによりモニタすることができる。心臓に対する傷害は、様々な運動試験でモニタすることができる。
現在利用可能なデータに基づくと、PACAP様化合物によるある癌細胞の増殖速度の低下と、PACAP様化合物による抗癌剤の治療効果の亢進との間には相関がある。癌細胞は、生検試料からか、又は好ましくは、ヒト及び他の哺乳動物由来の循環血中単核細胞から得て、マルチウェルプレートで培養することができ、及びPACAP様化合物が癌細胞を癌化学療法薬から保護し、且つ癌化学療法薬の効力を亢進し得るかどうかを判断するため、それらの増殖速度に対するPACAP様ペプチドの効果を定量化することができる。或いは、癌細胞は、一般的に使用されるマイクロアレイ技術を用いて、PACAP様化合物によるアポトーシス促進遺伝子及び抗アポトーシス遺伝子の誘導についてスクリーニングすることも可能である。これらのスクリーニング手順の目標は、抗癌レジメンへのPACAP様化合物の追加に反応して腫瘍量の低減が亢進するはずの癌を同定することである。しかしながら、PACAP様化合物を抗癌レジメンに追加することは、PACAP様化合物が腫瘍量を低減しない場合であっても、抗癌剤によって引き起こされる主要な生体器官の1つ又は複数に対する傷害の低減が、なお生存期間の増加及び/又はクオリティ・オブ・ライフの上昇をもたらし得るため、ヒト又は他の哺乳動物にとってはなお有益であり得る。或いは、PACAP様化合物を抗癌レジメンに追加することはまた、PACAP様化合物が当初の抗癌剤用量では腫瘍量を低減しない場合であっても、ヒト又は他の哺乳動物にとってはなお有益であり得る。抗癌剤によって引き起こされる1つ又は複数の生体器官に対する傷害が軽減されれば、より高用量の抗癌剤の使用が可能となるはずであり、その結果、当初の副作用の重症度を高めることなく、腫瘍量の減少が亢進されるはずである。
多発性骨髄腫の確定診断は、骨髄穿刺又は骨髄生検後、患者の約95%において行うことができる。残りの患者では、骨髄の関与はおそらくびまん性というより限局性である。PACAP様ペプチドによる補助的治療の効果は、患者が骨疼痛、疲労、及び全般的な健康状態などの症状の改善を報告することにより、主観的に判断することができる。PACAP様ペプチドによる補助的治療の効力は、全体の外観及び筋力の改善を示す理学的検査により、貧血症(ヘモグロビン及びヘマトクリットの上昇)、モノクローナルパラプロテイン(ベンスジョーンズタンパク質)の血清中及び尿中レベル、並びに血清中及び尿中β−2ミクログロブリンの低減を示す臨床検査により、及び腎機能(血中クレアチニン、尿素窒素及びシスタチンC)の改善を示す臨床検査により、客観的に判断することができる。好ましい実施形態において、モノクローナル遊離軽鎖免疫グロブリン(ベンスジョーンズタンパク質)の血清中及び尿中レベルは、PACAP様細胞保護性補助薬剤による治療コースにおいて、高感度ネフェロメトリックアッセイによりモニタされる。多くの白血病の確定診断は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの生化学的遺伝学の技法、又は蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)などの細胞遺伝学の技法を用いて行うことができる。例えば、慢性骨髄性白血病の診断は、循環中の単核細胞において、bcr−abl融合遺伝子についてのPCRを用いて、又はフィラデルフィア染色体の局在性についてのFISHを用いて行うことができる。
医薬組成物
本発明の組成物は、医薬組成物の製造に有用な原薬組成物(例えば、不純又は非無菌組成物)及び単位剤形の調製に使用することのできる非経口医薬組成物(すなわち、対象又は患者への投与に好適な組成物)を含む。かかる組成物は、本明細書に開示される予防薬剤及び/又は治療薬剤又はそれらの薬剤の組み合わせの予防上又は治療上の有効量と、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の方法に有用な1つ又は複数のPACAP様化合物の予防上又は治療上の有効量と、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、上記に考察されるとおりの追加的な治療薬をさらに含む。
特定の実施形態において、用語「薬学的に許容可能な」は、連邦政府の規制当局により承認されているか、又はU.S.Pharmacopeia若しくは他の一般に認知されている、動物において使用される、特にヒトにおいて使用される薬局方に掲載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント、又はより好ましくは、MF59C.Iアジュバント)、賦形剤、又は媒体を指す。医薬担体は、水、及びピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油などの、無菌の液体であってもよい。医薬組成物が静脈内投与される場合には、水が好ましい担体である。生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、特に注射用溶液用の液体担体として用いることができる。好適な医薬賦形剤としては、(限定はされないが)デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、及びエタノールが挙げられる。本組成物はまた、必要であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含むことができる。これらの組成物は、(限定はされないが)懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、及び持続放出製剤を含む多くの形態をとることができる。
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば、活性薬剤の数量を表示したアンプル又はサシェなどの密封容器内の乾燥した凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、個別に、又は共に混合して単位剤形で供給される。組成物が注入によって投与されることになる場合、それを医薬品等級の滅菌水又は生理食塩水を含む注入ボトルにより分注することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを、投与前に成分を混合し得るように提供することができる。
本発明の組成物は、中性形態又は塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容可能な塩としては、(限定はされないが)塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、及び酒石酸から得られるような陰イオンで形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、及びプロカインから得られるような陽イオンで形成されるものが挙げられる。
必要に応じて、溶解促進剤(例えば、サリチル酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム)、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム又はグリセリン)、等張化剤(例えば、グルコース又は転化糖)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコール)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール又はフェノール)、又は鎮痛薬(例えば、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカイン)などの添加剤が添加されてもよい。
1つ又は複数の抗癌剤によって引き起こされる、又は引き起こされる可能性のあるヒト又は他の哺乳動物の生体器官の1つ又は複数に対する傷害を治療、管理、軽減、抑制、又は予防するための、1つ又は複数のPACAP様化合物、又は他の細胞保護剤と組み合わせた1つ又は複数のPACAP様化合物の投与に用いることのできる当業者に公知の多くの異なる方法がある。例えば(但し限定としてではなく)、リポソーム、微粒子又はマイクロカプセルへのカプセル化、1つ又は複数のPACAP様ペプチドを合成するように遺伝的に改変された哺乳動物細胞からの分泌、又は様々な組換えウイルスベクターによる合成。本発明のPACAP様化合物の投与経路としては、(限定はされないが)、非経口(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、経膣、直腸、硬膜外、及び粘膜(例えば、鼻腔内、吸入、及び経口経路)が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の予防用又は治療用薬剤は、筋肉内、静脈内、骨内、又は皮下に投与される。予防用又は治療用薬剤は、任意の好都合な経路又はレジメンにより、例えば注入又はボーラス投与により投与されても、上皮又は皮膚粘膜内層を介した吸収(例えば、口腔粘膜、直腸、頬側及び舌下を含む局所、並びに腸粘膜等)により投与されてもよく、他の生物学的に活性な薬剤と組み合わせて投与されてもよい。投与は全身的であっても、又は局所的であってもよい。
特定の実施形態では、本発明の予防用又は治療用薬剤を治療が必要とされる範囲に局所的に投与することが望ましいこともある;これは、例えば、限定としてではないが、注射によるか、又はSilastic膜などの膜、若しくは繊維を含めた、多孔質、非多孔質、若しくはゼラチン質材料のインプラントを用いる局所注入によって実現され得る。
別の実施形態において、本発明の組成物は、制御放出性又は持続放出性の形で送達することができる。一実施形態において、制御又は持続放出を実現するためポンプを使用することができる。別の実施形態において、制御放出又は持続放出を実現するためポリマー材料を使用することができる。制御放出又は持続放出製剤に好適なポリマーとしては、(限定はされないが)ポリ(2−メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられる。好ましい実施形態において、制御放出又は持続放出製剤に用いられるポリマーは、不活性で、浸出性不純物を含まず、保管上安定していて、無菌で、且つ生分解性である。特定の実施形態において、制御放出性、又は持続放出性のデバイス又は製剤は、予防又は治療標的に近接して置くことができ、従ってPACAP様化合物の必要量を全身用量の一部のみに低減することができる。当業者に公知の他の多くの技法を使用して、本発明の1つ又は複数の治療剤を含む制御放出又は持続放出製剤を作製することができる。
PACAP様化合物を投与するための組成物としては、(限定はされないが)経口、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、経膣、又は非経口(皮下、経皮、筋肉内、静脈内、及び皮内を含む)投与に好適なものが挙げられる。製剤は、好都合には単位剤形で提供されてもよく、及び製薬の技術分野において公知の任意の方法により調製されてもよい。従って、本発明のPACAP様化合物並びにその生理学的に許容可能な塩及び溶媒和物は、吸入若しくは吹送(口又は鼻のいずれかを介した)によるか、又は経口、非経口若しくは粘膜(頬側、経膣、直腸、及び舌下など)経路による投与用に製剤化されてもよい。好ましい実施形態では、非経口投与が用いられる。
経口投与に対しては、本医薬組成物は、例えば、従来の手段により、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に調製された、錠剤又はカプセルの形態をとってもよい。錠剤は、当該技術分野において公知の方法によってコーティングされてもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ若しくは懸濁液の形態をとってもよく、又は使用前に水若しくは他の好適な媒体と再構成される乾燥生成物として提供されてもよい。かかる液体製剤は、従来の手段により、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は分別植物油);及び防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤と共に調製されてもよい。調製はまた、必要に応じて緩衝塩、香味料、着色料、及び甘味剤を含んでもよい。経口投与用の調製は、活性化合物の制御放出又は持続放出がもたらされるように好適に製剤化されてもよい。
本発明に従い使用される予防用又は治療用薬剤の量は、癌のタイプ、抗癌剤のタイプ、投与方法、患者の1つ又は複数の器官に対する傷害の重症度、及び患者の全般的な状態に依存し得るが、概して用量当たり約1μg〜約1gのPACAP様化合物の範囲(例えば、用量当たり1μg、2μg、5μg、7μg、10μg、20μg、50μg、70μg、100μg、200μg、500μg、700μg、1mg、2mg、5mg、7mg、10mg、20mg、50mg、70mg、100mg、200mg、500mg、700mg、又は1グラム)であり得る。PACAP様化合物の用量は、毎時間、毎日、毎週、毎月、又は毎年1回以上(例えば、毎時間、毎日、毎週、毎月、又は毎年2、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12回)患者に治療的に投与することができる。
吸入による投与に対しては、本発明に従い使用される予防用又は治療用薬剤は、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレーを呈する形態で、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適な気体の使用を伴い好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、定量を送達するバルブを提供することにより決定されてもよい。例えばインへラー又はインサフレーターに使用されるゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との混合粉体を含んで製剤化されてもよい。
予防用又は治療用薬剤は、注射による、例えば、ボーラス投与又は持続注入による非経口投与用に製剤化されてもよい。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプル又は多用量容器に添加防腐剤と共に提供されてもよい。本組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又は乳濁液のような形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含んでもよい。或いは、活性成分は、好適な媒体、例えば無菌パイロジェンフリー水と共に使用前に再構成される粉末形態であってもよい。本発明のPACAP様化合物は、静脈内注入により1pmol/kg体重/時間〜1200pmol/kg体重/時間の速度で対象に投与されてもよい。静脈内注入の速度はまた、1〜200pmol/kg体重/時間又は100〜200pmol/kg体重/時間であってもよい。静脈内注入の速度はまた、200〜600pmol/kg体重/時間であってもよい。PACAP様化合物の静脈内注入は、1〜12時間又はそれ以上(例えば、24、36、又は48時間又はそれ以上)にわたってもよい。PACAP様化合物の投与は、1時間、1日間、1週間、1ヶ月間、又は1年間のコースのうちに1回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12回又はそれ以上)繰り返されてもよい。
先述した製剤に加え、予防用又は治療用薬剤はまた、デポ製剤として製剤化されてもよい。かかる長時間作用型の製剤は、植込み(例えば、皮下又は筋肉内)により、又は筋肉内注射により投与されてもよい。従って、例えば、予防用又は治療用薬剤は、好適なポリマー材料若しくは疎水性材料(例えば、許容可能な油中乳濁液として)又はイオン交換樹脂と共に、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化されてもよい。
皮膚への局所投与に好適な組成物は、化合物と薬学的に許容可能な担体とを含む軟膏、クリーム、ゲル、及びペーストとして提供されてもよい。例えば(但し限定としてではなく)、好適な局所送達システムは、投与されるPACAP様化合物を含む経皮パッチである。
舌下錠は、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリエチレングリコール)、崩壊剤(例えば、デンプン又はカルボキシメチルセルロースカルシウム)、及び/又は潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルク)を使用することにより調製することができる。
担体が固形である経鼻投与に好適な製剤としては、例えば20〜500ミクロン(μm)の範囲の粒度を有する粗末が挙げられる。担体が液体である経鼻投与に好適な製剤(例えば、鼻腔内スプレー又は点鼻液)としては、活性成分の水性又は油性溶液が挙げられる。
非経口投与に好適な組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を目的の被投与者の血液と等張にする溶質を含み得る水性及び非水性滅菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量又は多用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、及び使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水を添加するだけでよいフリーズドライした(凍結乾燥した)状態で保管されてもよい。即時調合型の注射溶液及び懸濁液は、先述した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製されてもよい。上記に具体的に記載される成分に加え、本発明の製剤は、当該技術分野において当該の製剤タイプに一般的に使用される他の薬剤を含み得ることは理解されなければならない。例えば(但し限定としてではなく)、経口投与に好適なものとして、香味剤を挙げることができる。
遺伝子治療
特定の実施形態において、1つ又は複数の抗癌剤により引き起こされるヒト又は他の哺乳動物の生体器官の1つ又は複数に対する傷害を治療、管理又は予防するため、本発明の方法に有用な1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする一連の核酸が、単独で、又は好適なベクターの一部として投与される。次に、一連の核酸は対象の体内で翻訳され、予防又は治療効果を有する1つ又は複数のPACAP様ペプチドを産生する。多くの異なる遺伝子治療方法を使用して、PACAP様ペプチドの1つ又は複数を投与することができる。1つ又は複数の抗癌剤により引き起こされるヒト又は他の哺乳動物の生体器官の1つ又は複数に対する傷害を治療、管理又は予防するための本発明のPACAP様ペプチドの投与に使用することのできるいくつかの遺伝子治療方法を、以下に記載する。これらの例は、例示を目的としているに過ぎない。組換えDNA技術の当業者は、同じ目的に用いることのできる他の変形例が多く存在することを認識するであろう。
1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする核酸ポリマーは、ネイキッドDNAとして(発現ベクターとして)、又は好ましくはリポソーム若しくは微粒子にカプセル化されて投与することができる。核酸ポリマーは、1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする配列に先行するプロモーター配列、好ましくは異種プロモーター配列を含むことができる。異種プロモーター配列は、1つ又は複数のPACAP様ペプチドの構成的発現又は誘導性発現をもたらすことができる。加えて、プロモーター配列は細胞型特異的発現をもたらすことができる。リポソーム又は微粒子はまた、複合体全体が1つ又は複数の細胞型を選択的に対象とするよう、生物活性ペプチド又はモノクローナル抗体などの1つ又は複数の標的ベクターを含むこともできる。
1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする核酸ポリマーは、ウイルスベクターに組み込んだ後に投与することができる。本発明のPACAP様ペプチドの投与に用いることのできるウイルスベクターとしては、(限定はされないが)アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びポックスウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターに組み込まれた核酸ポリマーは、1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする配列に先行するプロモーター配列、好ましくは異種プロモーター配列を含むことができる。異種プロモーター配列は、1つ又は複数のPACAP様ペプチドの構成的発現又は誘導性発現(例えば、van de Loo,F.A.ら Curr.Opin.Mol.Ther.6:537−545頁,2004年)をもたらすことができる。加えて、プロモーター配列は、細胞型特異的発現(例えば、Wang,B.ら Gene Ther 15:1489−1499頁,2008年)を提供することができる。ウイルスベクターは、ウイルスベクターが1つ又は複数の細胞型を選択的に対象とするように、シュードタイプ又はクロスパッケージングされたものであってもよい(例えば、Rabinowitz,J.E.ら J.Virol.76:791−801頁,2002年)。
1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする核酸ポリマーは、哺乳動物細胞へのエクスビボトランスフェクション後に投与することができる。本発明のPACAP様ペプチドの投与に用いることのできる哺乳動物細胞、好ましくは対象自身の細胞としては、(限定はされないが)間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、及び様々な分化した哺乳動物細胞が挙げられる。組換えDNA技術の当業者は、哺乳動物細胞に核酸ポリマーをトランスフェクトする数多くの方法を周知しているであろう。トランスフェクトされた核酸ポリマーは、宿主細胞DNAに組み込まれるか、又は宿主細胞核内に翻訳コンピテントエピソーム複合体を形成することができる。ウイルスベクターに組み込まれた核酸ポリマーは、1つ又は複数のPACAP様ペプチドをコードする配列に先行するプロモーター配列、好ましくは異種プロモーター配列を含むことができる。異種プロモーター配列は、1つ又は複数のPACAP様ペプチドの構成的発現又は誘導性発現をもたらすことができる。加えて、プロモーター配列は、細胞型特異的発現をもたらすことができる。
本発明の使用をより明確にするため、以下の例を提供する。これらの例は例示を目的としているに過ぎず、いかなる形であっても本発明の使用を限定するものとして解釈されてはならない。
実施例1.PACAP及びPACAP類似体によるシスプラチン誘導性細胞毒性の低減
シスプラチン(cis−ジアンミンジクロリド白金(II)、Platinol)は、ファーストインクラスの白金ベースDNA架橋抗癌治療薬である。これは、1978年に米国FDAにより臨床使用が承認された。このクラスのアルキル化様白金ベース抗癌剤の他のメンバーとしては、(限定はされないが)カルボプラチン、オキサリプラチン及びサトラプラチンが挙げられる。シスプラチンは最も広く使用されている癌化学療法薬の一つであり、多くの多剤抗癌レジメンの基礎となっている。通常、癌化学療法におけるシスプラチンの使用については腎毒性が用量制限毒性となるが、時に感覚性ニューロパチーが、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。
ヒト腎近位尿細管上皮細胞をシスプラチンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図3)。培地にPACAP38を添加すると、結果としてヒト腎近位尿細管上皮細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死が有意に用量依存的に減少した。試験した最高用量では、PACAP38は、シスプラチンにより引き起こされるアポトーシス細胞死をほぼ完全に防止した。PACAP38及びタンパク質分解抵抗性がより高い類似体[Aib]PACAP38は、ヒト腎近位尿細管上皮細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死に対する保護薬と同様に有効であった(図4)。また、ヒト腎近位尿細管上皮細胞をシスプラチンで処置すると、結果としてこれらの細胞のフィブロネクチンベース又はコラーゲンIVベースのいずれのマトリクスに対する接着も大幅に減少した(図5)。培地にPACAP38を添加すると、ヒト腎近位上皮細胞のフィブロネクチンベース又はコラーゲンIVベースのいずれのマトリクスとの結合性に対するシスプラチンの阻害効果も、有意に反転した。
シスプラチン誘導性の腎毒性に対するPACAP38の細胞保護作用はまた、一般的なインビボモデルにおいても見られた。雄性C57BL/6マウスに20mg/kgのシスプラチンの単回腹腔内注射を行った。シスプラチン注射の1時間前に20ナノモルのPACAP38を腹腔内投与し、初回用量の24時間後及び48時間後に追加用量を投与した。対照群のマウスには、シスプラチン及びPACAP38の注射に関するものと同量の生理食塩水を同じスケジュールで腹腔内注射した。最後のPACAP38注射の24時間後、マウスを安楽死させた。シスプラチンで処置したマウスは、生理食塩水を注射した対照群と比較して、腎臓における血清クレアチニン、血中尿素窒素及びTNF−αのレベルが有意に増加した(図6、図7及び図8)。シスプラチンを注射したマウスの腎臓は、広範な尿細管損傷、尿細管拡張、尿細管内デブリ、及び尿細管内カストを示した(図9)。シスプラチンを注射したマウスをPACAP38で処置すると、腎臓における血清クレアチニン、血中尿素窒素及びTNF−αの増加が有意に低減した(図6、図7及び図8)。また、PACAPでの処置により、シスプラチンにより引き起こされる広範な組織学的損傷も減少した(図9)。PACAP38及び[D−Ser]PACAP38は、腎機能のシスプラチン誘導性の機能障害に対する細胞保護薬とほぼ同等の効力であったが、一方、[D−Ser,Lys38−パルミトイル]PACAP38及びVIPの効力は腎臓保護薬より低かった(図10)。
これらの実験は、PACAP38が、シスプラチンによる癌化学療法の用量制限毒性であるシスプラチン誘導性の腎損傷に対する強力な細胞保護薬であることを示している。従って、シスプラチンベースの癌化学療法を受けている対象を治療用量のPACAP38及び/又はPACAP類似体で前治療及び/又は後治療すると、結果としてシスプラチンの最大耐容量がより高くなるとともに、部分的な臨床的奏功頻度が増加し、及び/又は完全寛解数が増加するはずである。
実施例2.PACAP及びPACAP類似体によるドキソルビシン誘導性腎毒性の低減
アクチノバクテリアのストレプトマイセス・ペウセティウス(Streptomyces peucetius)によって作られるダウノルビシンは、最初に開発されたアントラサイクリン系抗癌治療薬であった。間もなく、ドキソルビシン(14−ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン)が開発された。現在臨床的に用いられている他のアントラサイクリン系抗癌剤としては、(限定はされないが)エピルビシン、イダルビシン及びバルルビシンが挙げられる。ドキソルビシンは、DNA及びRNAの双方の合成の強力な阻害因子であり、最も広く使用されている癌化学療法薬の一つである。これは一般に、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、並びに、乳房、膀胱、子宮、卵巣、及び肺の癌の治療に使用される。通常、癌化学療法におけるドキソルビシンの使用については心毒性が用量制限毒性となるが、時に腎毒性が、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。
ヒト腎近位尿細管上皮細胞をドキソルビシンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図11)。培地にPACAP38、[D−Ser]PACAP38又は[Lys34]PACAP38を添加すると、結果としてヒト腎近位尿細管上皮細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死が有意に用量依存的に減少した。試験した最高用量では(10−6M)、3つ全てのペプチドが、これらの上皮細胞のアポトーシス細胞死を60%超減少させた。これらの実験は、PACAP38及びPACAP類似体が、複数の抗癌剤の毒性副作用から腎臓を保護し得ることを示している(図3〜図11)。
実施例3.PACAP及びPACAP類似体によるブレオマイシン誘導性肺毒性の低減
アクチノバクテリアのストレプトマイセス・ベルチシルス(Streptomyces verticillus)によって作られるグリコペプチドのファミリーであるブレオマイシンは、1962年に開発された。ブレオマイシン(Blenoxane)は、1973年に米国FDAにより臨床使用が承認された。これはDNA鎖の破壊を生じさせ、ホジキンリンパ腫、扁平上皮癌及び精巣癌の治療に用いられる。通常、癌化学療法におけるブレオマイシンの使用については肺毒性が用量制限毒性となる。
ヒト肺上皮細胞をブレオマイシンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図12)。培地にPACAP38、[D−Ser]PACAP38又は[Lys34]PACAP38を添加すると、結果としてヒト肺上皮細胞のブレオマイシン誘導性アポトーシス細胞死が有意に用量依存的に減少した。試験した最高用量では(10−6M)、3つ全てのペプチドが、これらの上皮細胞のアポトーシス細胞死を60%超減少させた。これらの実験は、PACAP38及びPACAP類似体が、ブレオマイシンによる癌化学療法の用量制限毒性であるブレオマイシン誘導性の肺損傷に対する強力な細胞保護薬であることを示している。従って、ブレオマイシンベースの癌化学療法を受けている対象を治療用量のPACAP38及び/又はPACAP類似体で前治療及び/又は後治療すると、結果としてブレオマイシンの最大耐容量がより高くなるとともに、部分的な臨床的奏功頻度が増加し及び/又は完全寛解数が増加するはずである。
実施例4.PACAP及びPACAP類似体による褐色細胞腫細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死の低減
褐色細胞腫は、副腎髄質及び交感神経節に由来するカテコールアミン分泌腫瘍である。これらの腫瘍の約10%が、髄外を起源とする。最も危険な症候は高血圧症であり、これは致命的であり得る。通常、褐色細胞腫患者では、カテコールアミン、クロモグラニンA及びドーパミン−β−ヒドロキシラーゼの血漿濃度が高くなる。
ラット褐色細胞腫細胞をシスプラチンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図13)。培地にPACAP38、[D−Ser]PACAP38又は[Lys34]PACAP38を添加すると、結果として神経内分泌腫瘍細胞のシスプラチン誘導性アポトーシス細胞死が用量依存的に減少した。試験した最高用量では(10−6M)、3つ全てのペプチドが、これらの褐色細胞腫細胞のアポトーシス細胞死を有意に減少させた。これらの実験は、PACAP38及びPACAP類似体がシスプラチン誘導性損傷から神経内分泌腫瘍細胞を保護し得ることを示している。
実施例5.PACAP及びPACAP類似体による乳癌細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死の低減
乳癌は、世界で二番目に最も多く見られるタイプの癌である。
乳癌の有病率は、男性と比べて女性において100倍超高い。米国女性の乳癌発生率は、世界で最も高い。ドキソルビシンは、局所的な外科的療法若しくは放射線療法後の多剤アジュバントレジメンの一構成要素として、又は転移性乳癌の治療用の多剤レジメンの一構成要素として頻繁に用いられている。
ヒト乳癌細胞をドキソルビシンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図14)。培地にPACAP38又はN−アセチル[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38を添加すると、結果としてエストロゲン依存性乳癌細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死が用量依存的に減少した。試験した最高用量では(10−6M)、双方のペプチドとも、これらの乳癌細胞のアポトーシス細胞死を50%超減少させた。N−アセチル[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38は、PACAP38よりいくらか強力であるものと思われた。これらの実験は、PACAP38及びPACAP類似体がドキソルビシン誘導性損傷から乳癌細胞を保護し得ることを示している。
実施例6.PACAP27及びPACAP38による白血病細胞のエトポシド誘導性アポトーシス細胞死の低減
エトポシドは、DNA複製及び細胞増殖に不可欠な酵素であるトポイソメラーゼIIの阻害因子である。エトポシドは植物性毒素ポドフィロトキシンから誘導され、精巣癌、肺癌、リンパ腫、非リンパ性白血病、及び多形性膠芽腫の治療に用いられる。エトポシドは、臨床では多剤レジメンの一部として頻繁に用いられている。このクラスのポドフィロトキシン誘導抗癌剤の他のメンバーとしては、(限定はされないが)テニポシドが挙げられる。通常、癌化学療法におけるエトポシドの使用については骨髄抑制が用量制限毒性となるが、時に腎毒性又は膀胱毒性が、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。
白血病は、顆粒球、単球及びリンパ球を含む白血球細胞(白血球)の癌である。米国で診断される癌の約2%が、白血病である。
ヒトTリンパ球白血病細胞をエトポシドで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図15)。培地にPACAP27又はPACAP38を添加すると、結果としてヒト白血病細胞のエトポシド誘導性アポトーシス細胞死が少し減少した。これらの血液癌細胞のアポトーシス細胞死の低減が有意であったのは、試験したPACAP38の最高用量(10−6M)においてのみであり、一方、PACAP27は試験した用量のいずれにおいても有意な効果を有しなかった。これらの実験は、PACAP27及びPACAP38が、よくても、これらのヒトTリンパ球白血病細胞のエトポシド誘導性アポトーシスに対する最小限の保護効果しか有しないことを示している。
実施例7.PACAP及びPACAP類似体による骨髄腫細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死の亢進
形質細胞の悪性癌である多発性骨髄腫は、米国で6番目に多く見られる癌である。多発性骨髄腫は米国で診断される血液系悪性腫瘍の約10%を占める。多発性骨髄腫の有病率は、女性と比べて男性において僅かに高い。この疾患は、骨吸収(骨溶解)、高カルシウム血症、貧血症、血小板減少症、及び腎不全を含めた、重篤な医学的合併症を引き起こし得る。腎臓の炎症が2番目に多く起こる合併症であり、多発性骨髄腫患者のほぼ半分が発症する。この炎症の原因は、形質細胞による軽鎖免疫グロブリン(ベンスジョーンズタンパク質)の過剰産生であり、それらが凝集して、腎臓の遠位曲尿細管及び集合管にカストを形成する。形質細胞は、クローン性増殖による活性化Bリンパ球に由来する。単一の形質細胞クローンの増殖に対する正常な抑制が多発性骨髄腫患者の体内では失われ、その結果、単一のタイプの軽鎖免疫グロブリンが過剰に産生されるようになる。
骨髄腫細胞増殖に対するPACAP38及びPACAP38類似体の効果を、細胞分裂中のDNAへのブロモデオキシウリジン取込みを測定することによって評価した。骨髄腫細胞数は、PACAP様ペプチドによる処置がない場合に、24時間のインキュベーション期間中にほぼ2倍になった。培地にPACAP38、[D−Ser]PACAP38又は[Aib]PACAP38を添加すると、結果として100ピコモル濃度より低い濃度で軽鎖免疫グロブリン分泌ヒト骨髄腫細胞の増殖速度が50%抑制された(図2)。PACAP38はまた、軽鎖免疫グロブリンの過剰負荷から腎臓を直接保護し得るとともに、多発性骨髄腫患者の骨吸収を阻害することも期待され得る(Liら,2008年)。従って、PACAP及びPACAP類似体は、多発性骨髄腫患者にとって有用な単剤療法薬となる可能性がある。
ヒト骨髄腫細胞をドキソルビシンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図16)。培地にPACAP38又は[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38を添加すると、結果としてヒト骨髄腫細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死に対する二相性の用量反応効果が生じた。試験した最低用量(10−8M)では、双方のペプチドともこれらの悪性形質細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死を減少させた。しかしながら、試験した最高用量では(10−6M)、PACAP38によりこれらの悪性形質細胞のドキソルビシン誘導性アポトーシス細胞死が有意に亢進した一方、[Ala16,17,D−Lys38]PACAP38は、ドキソルビシン誘導性アポトーシスの少しの、しかし有意ではない亢進をもたらした。
実施例8.PACAP及びPACAP類似体による骨髄腫細胞のカルムスチン誘導性アポトーシス細胞死の亢進
カルムスチン(α−クロロ−ニトロソウレア)は、神経膠腫、髄芽腫、星状細胞腫、多発性骨髄腫、並びにホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫の治療に用いられるマスタードガス関連のアルキル化抗癌治療薬である。このクラスのニトロソウレア抗癌剤の他のメンバーとしては、(限定はされないが)ロムスチン、セムスチン及びストレプトゾトシンが挙げられる。通常、癌化学療法におけるカルムスチンの使用については骨髄抑制が用量制限毒性となるが、時に肝毒性又は肺毒性が、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。
ヒト骨髄腫細胞をカルムスチンで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図17)。培地にPACAP38又は[Ala22]PACAP38を添加すると、結果としてヒト骨髄腫細胞のカルムスチン誘導性アポトーシス細胞死が亢進した。試験した最高用量では(10−6M)、双方のペプチドとも、これらの悪性形質細胞のカルムスチン誘導性アポトーシス細胞死を有意に亢進した。PACAP38は、ヒト骨髄腫細胞のカルムスチン誘導性アポトーシス細胞死のエンハンサーとして、[Ala22]PACAP38より強力であるものと思われた。
実施例9.PACAP38による骨髄腫細胞のビンクリスチン誘導性及びサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死の亢進
ビンクリスチン(Oncovin)は、(限定はされないが)ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、白血病、乳癌、神経芽細胞腫、並びに多発性骨髄腫を含めた、多くの異なる癌の治療に用いられるビンカアルカロイド系抗癌治療薬である。ビンクリスチンは、1963年に米国FDAにより抗癌剤としての使用が承認された。このクラスのビンカアルカロイド系抗癌剤の他のメンバーとしては、(限定はされないが)ビンブラスチン及びビノレルビンが挙げられる。通常、癌化学療法におけるビンクリスチンの使用については末梢神経障害が用量制限毒性となるが、時に骨髄抑制又は悪心が、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。サリドマイドは、当初1950年代後半及び1960年代前半に鎮静薬/催眠薬として市販され、重篤な先天性異常を引き起こしたため使用対象から除外された。サリドマイドは後にハンセン病治療薬として開発され、1998年に米国FDAにより癩性結節性紅斑の治療用として承認された。2006年、米国FDAは多発性骨髄腫の治療用としてサリドマイド(Thalomid)のデキサメタゾンとの併用を承認した。このクラスの抗癌剤の他のメンバーとしては、(限定はされないが)2005年に米国FDAにより多発性骨髄腫の治療用として承認されたレナリドマイド(CC−5013、Revlimid)、及び臨床実験中のCC−4047(Actimid)が挙げられる。通常、癌化学療法におけるサリドマイドの使用については末梢神経障害が用量制限毒性となるが、時に深部静脈血栓症、腎毒性、又は低血圧症が、一部の患者の治療に用いられ得る用量を制限することもある。
ヒト骨髄腫細胞をビンクリスチン又はサリドマイドのいずれかで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が大幅に増加した(図18及び図19)。培地にPACAP38を添加すると、結果としてヒト骨髄腫細胞のビンクリスチン誘導性及びサリドマイド誘導性の双方のアポトーシス細胞死が用量依存的に亢進した。PACAP38は、これらの悪性形質細胞のビンクリスチン誘導性及びサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死を、それぞれ10−9M及び10−8Mという低い用量で有意に亢進した。
実施例10.PACAP38及びPACAP類似体による赤白血病細胞のサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死の亢進
骨髄増殖性疾患は、(限定はされないが)骨髄線維症、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、及び本態性血小板増加症を含む骨髄性癌の多様な一群である。赤白血病は、まれな形態の骨髄性白血病である。骨髄増殖性疾患の治療に一般的に使用される薬物としては、(限定はされないが)ブスルファン、ヒドロキシウレア、ドキソルビシン、イダルビシン、シタラビン、サリドマイド、レナリドマイド、ビンクリスチン、及びメシル酸イマチニブ(ST1571、Gleevec)が挙げられる。
ヒト赤白血病細胞をサリドマイドで処置したところ、結果としてアポトーシス細胞死が有意に増加した(図20)。培地にPACAP38、[D−Ser]PACAP38又はVIPを添加すると、結果としてヒト赤白血病細胞のサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死が用量依存的に亢進した。PACAP38はこれらの悪性骨髄性細胞のサリドマイド誘導性アポトーシス細胞死を、10−8Mという低い用量で有意に亢進した。
上記の例は、PACAP及びPACAP類似体が、いくつかの異なるクラスの一般的に使用される癌化学療法薬の毒性作用から多くのタイプの細胞及び生体器官を強力に保護することを示している(図3〜図12)。しかしながら、上記の例はまた、PACAP及びPACAP類似体が、インビトロで同じ抗癌剤から褐色細胞腫及び乳癌細胞などの非造血器癌細胞を保護することも示している(図13及び図14)。後者の観察は、PACAP/VIP受容体アンタゴニストであるPACAP(6〜38)が、固形腫瘍としてのヒト前立腺癌細胞、ヒト乳癌細胞及びヒト非小細胞肺癌細胞などの非造血器癌細胞の異種移植片の成長を、生体内で阻害するという他から発表されている報告と一致する。他方で、上記の例は、PACAP及びPACAP類似体が、リンパ性(図16〜図19)及び骨髄性(図20)の双方の癌細胞を含む造血器癌細胞に対するいくつかの抗癌剤のインビトロでの治療効果を亢進したことを示しており、多くの一般的に使用される血液系悪性腫瘍治療用の癌化学療法薬と組み合わせる有用な補助療法薬となり得る。上記の例は、PACAP様化合物がある癌細胞の増殖速度を刺激するのか、又は阻害するのか(図2)と、PACAP様化合物がある化学療法薬のある癌細胞に対する抗癌活性を低減するのか、又は亢進するのか(図16〜図20)との間に相関があることを示している。
均等物
当業者は、ルーチンを超えない実験を用いて、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、又はそれを確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
本明細書に記載される全ての刊行物、特許及び特許出願は、本明細書において、個々の刊行物、特許及び特許出願ごとに参照によって本明細書に援用されることが具体的に示されたのと同じ程度に、参照により本明細書中に援用される。
他の実施形態は特許請求の範囲にある。

Claims (70)

  1. 対象にPACAP様化合物の有効量を投与することを含む、抗癌剤による治療を受けている対象の器官に対する傷害を治療、軽減、又は抑制する方法であって、前記PACAP様化合物が前記傷害を治療、軽減、又は抑制する、方法。
  2. 前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記PACAP様化合物がPACAP/VIP受容体との結合能を有する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記PACAP様化合物が、配列番号1〜70からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記PACAP様化合物がN−アセチル基を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記PACAP様化合物がアミド化されていない、請求項4に記載の方法。
  7. 前記PACAP様化合物が、配列番号1、4〜36、及び67〜69からなる群から選択される化合物のLys38−プロピルアミド誘導体である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記PACAP様化合物がN−アセチル基をさらに含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記PACAP様化合物が、配列番号2及び37〜56からなる群から選択される化合物のLeu27−プロピルアミド誘導体である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記PACAP様化合物がN−アセチル基をさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記PACAP様化合物が、配列番号3及び57〜66からなる群から選択される化合物のAsn28−プロピルアミド誘導体である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記PACAP様化合物がN−アセチル基をさらに含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記PACAP様化合物が、約4キロダルトン〜約40キロダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
  14. 前記PACAP様化合物が、1つ又は複数のタンパク質分解酵素のアミノ酸コンセンサス配列に隣接して配置される、請求項6に記載の方法。
  15. 前記PACAP様化合物が、配列番号1〜70からなる群から選択される化合物のペプチド模倣類似体である、請求項1に記載の方法。
  16. 前記PACAP様化合物が、配列番号70又はその節足動物オルソログである、請求項15に記載の方法。
  17. 前記ペプチド模倣類似体が線形類似体である、請求項15に記載の方法。
  18. 前記PACAP様化合物が、前記対象の血液中で10−14M〜10−6Mの濃度を実現するように投与される、請求項1に記載の方法。
  19. 前記PACAP様化合物が、前記対象の血液中で約10−9Mの濃度を実現するように投与される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記PACAP様化合物が、1μg〜1グラムの用量で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  21. 前記PACAP様化合物が、100〜5000μgの用量で前記対象に投与される、請求項20に記載の方法。
  22. 前記PACAP様化合物が、約500μgの用量で前記対象に投与される、請求項21に記載の方法。
  23. 前記PACAP様化合物が、静脈内注入により1pmol/kg体重/時間〜1200pmol/kg体重/時間の速度で投与される、請求項1に記載の方法。
  24. 前記静脈内注入による投与が1〜24時間にわたる、請求項23に記載の方法。
  25. 前記器官に対する前記傷害が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、サリドマイド、レナリドマイド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、フルダラビン、5−アザシチジン、ペントスタチン、シタラビン、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ボルテゾミブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセルからなる群から選択される抗癌剤による前記対象の治療に起因する、請求項1に記載の方法。
  26. 前記器官が、神経系、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胆嚢、胃腸管、副腎、胸腺、脾臓、リンパ節、乳房、卵巣、精巣、又は前立腺である、請求項1に記載の方法。
  27. 前記器官が神経系であり、前記抗癌剤が、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ボルテゾミブ、マイタンシノイド、パクリタキセル、ドセタキセル、イホスファミド、サリドマイド、オキサリプラチン、シスプラチン、クロラムブシル、ブスルファン、5−フルオロウラシル、ペントスタチン、シタラビン、5−アザシチジン、又はフルダラビンである、請求項25に記載の方法。
  28. 前記器官が心臓であり、前記抗癌剤が、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、マイトマイシンC、又はビンクリスチンである、請求項25に記載の方法。
  29. 前記器官が肺であり、前記抗癌剤が、ブレオマイシン、シクロホスファミド、サリドマイド、メトトレキサート、ブスルファン、マイトマイシンC、イリノテカン、又はフルダラビンである、請求項25に記載の方法。
  30. 前記器官が腎臓であり、前記抗癌剤が、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、イホスファミド、メトトレキサート、ペントスタチン、5−アザシチジン、ドキソルビシン、ヒドロキシウレア、エトポシド、テニポシド、又はマイトマイシンCである、請求項25に記載の方法。
  31. 前記器官が肝臓であり、前記抗癌剤が、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、シタラビン、ゲムシタビン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレア、レナリドマイド、カリケアマイシン、又はクロラムブシルである、請求項25に記載の方法。
  32. 前記器官が胃腸管であり、前記抗癌剤が、メトトレキサート、カルムスチン、メルファラン、エトポシド、テニポシド、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シタラビン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレア、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、トポテカン、イリノテカン、クロラムブシル、マイタンシノイド、パクリタキセル、又はシスプラチンである、請求項25に記載の方法。
  33. 前記器官が卵巣であり、前記抗癌剤が、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、マイタンシノイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、パクリタキセル、又はドセタキセルである、請求項25に記載の方法。
  34. 前記器官が精巣であり、前記抗癌剤が、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ブスルファン、メルファラン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、マイタンシノイド、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、メトトレキサート、パクリタキセル、又はドセタキセルである、請求項25に記載の方法。
  35. 前記PACAP様化合物が、前記対象に対して1日1回以上腹腔内注射により投与される、請求項1に記載の方法。
  36. 前記PACAP様化合物が、前記対象に対して1週間に1回以上皮下注射により投与される、請求項1に記載の方法。
  37. 前記PACAP様化合物が、前記対象に対して1週間に1回以上筋肉内注射により投与される、請求項1に記載の方法。
  38. 前記PACAP様化合物が、前記対象に対して1日1回以上鼻腔内投与される、請求項1に記載の方法。
  39. 前記PACAP様化合物が、前記対象に対して1日1回以上エアロゾルとして投与される、請求項1に記載の方法。
  40. 前記PACAP様化合物が、前記対象に対して1日1回以上、時間依存性又はpH依存性の製剤で経口投与される、請求項1に記載の方法。
  41. 前記対象が、前記PACAP様化合物をコードするウイルスベクターを投与される、請求項1に記載の方法。
  42. 前記対象が、前記PACAP様化合物をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド配列がトランスフェクトされた細胞を投与される、請求項1に記載の方法。
  43. 前記PACAP様化合物が、制御放出製剤又は持続放出製剤として投与される、請求項1に記載の方法。
  44. 前記PACAP様化合物が、リポソーム又は微粒子にカプセル化した後に投与される、請求項1に記載の方法。
  45. 前記PACAP様化合物が、デンドリマーにカプセル化した後に経皮投与される、請求項1に記載の方法。
  46. 前記PACAP様化合物が、1つ又は複数の細胞保護性補助薬剤と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
  47. 前記1つ又は複数の細胞保護性補助薬剤が、アミホスチン、デクスラゾキサン、メスナ、パリフェルミン、又はN−アセチルシステインである、請求項46に記載の方法。
  48. 前記抗癌剤が、モノクローナル抗体又は1つ又は複数の生物活性ペプチドとの可逆的コンジュゲート形成により癌細胞を選択的に標的とする、請求項1に記載の方法。
  49. 前記PACAP様化合物が、前記抗癌剤によって引き起こされる遅発性二次性癌の発生率を低下させる、請求項1に記載の方法。
  50. 前記遅発性二次性癌が、遅発性二次性白血病である、請求項49に記載の方法。
  51. 前記PACAP様化合物が、前記抗癌剤と組み合わせて投与されたときに相加的な抗癌作用を有する、請求項1に記載の方法。
  52. 前記対象が上皮細胞癌を有する、請求項1に記載の方法。
  53. 前記器官が、前記抗癌剤に対する用量制限毒性を有し、及び前記PACAP様化合物が、前記対象の前記器官に送達される、請求項52に記載の方法。
  54. 前記PACAP様化合物が、前記対象の中枢神経系に送達される、請求項53に記載の方法。
  55. 前記PACAP様化合物が、前記対象の肺に送達される、請求項53に記載の方法。
  56. 前記PACAP様化合物が、前記対象の胃腸管に送達される、請求項53に記載の方法。
  57. 前記対象が造血器癌を有する、請求項1に記載の方法。
  58. 前記造血器癌がリンパ性癌である、請求項57に記載の方法。
  59. 前記造血器癌が骨髄性癌である、請求項57に記載の方法。
  60. 前記造血器癌がリンパ性又は骨髄性白血病である、請求項57に記載の方法。
  61. 前記造血器癌がB細胞又はT細胞リンパ腫である、請求項57に記載の方法。
  62. 前記造血器癌が形質細胞異常増殖症である、請求項57に記載の方法。
  63. 前記造血器癌が多発性骨髄腫である、請求項57に記載の方法。
  64. 前記PACAP様化合物が、前記抗癌剤の投与前に前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  65. 前記PACAP様化合物と前記抗癌剤とが、実質的に同時に前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  66. 前記PACAP様化合物が、前記抗癌剤の投与後に前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  67. 前記PACAP様化合物が、前記傷害より前に前記対象に投与される、請求項66に記載の方法。
  68. 前記PACAP様化合物が、前記傷害より後に前記対象に投与される、請求項66に記載の方法。
  69. 前記対象が上皮細胞癌を有し、前記PACAP様化合物を投与することにより前記上皮癌細胞の増殖が抑制される、請求項1に記載の方法。
  70. 前記上皮細胞癌が、乳癌、前立腺癌、又は卵巣癌ではない、請求項69に記載の方法。
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