JP2005529931A - 膜相互作用の可逆的改質 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2002年5月24に出願した米国仮出願番号60/383,298号に基づく優先権を主張する。
(背景)
投与に関する種々の方法及びルートは、ペプチド、ホルモン、蛋白、酵素などの医薬品、低分子薬物及び生物学的活性化合物をその作用部位へと送達すべく開発されてきた。非経口的な投与ルートには、血管内(静脈、動脈)、筋内、実質内、経皮、皮下、腫瘍内、腹腔内及びリンパ内を含み、ニードルやカテーテルを使用する。血液循環系は、医薬品の全身的な分布を提供する。ポリエチレングリコールやその他の親水性ポリマーは、血液成分との相互作用を防止し、且つ、細網内皮系によるオプソニン化、ファゴサイトーシス及び取り込み(uptake)を阻止することにより、医薬品の防御性を提供すべく、且つ、血流へと医薬品の循環時間を増加すべく使用されてきた。例えば、アデノシンデアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼの欠損症の患者の処置において、この酵素の循環時間及び持続性を増加すべく、ポリエチレングリコールにて共有的に改質されてきた。投与後の医薬品の制御された放出は、著しく発達している。
好適実施例において、アミンを有する分子を置換無水マレイン酸及びこの誘導体で改質する工程に付いて述べており、この改質の分解は、pH7未満で加速される。この改質の分解において、この分子におけるアミンは、再生される。この分子は、この分子が他の化合物又は送達剤とリンクし、この分子の活性を変化させ、或いは、この分子を不活化すべく、この分子の細胞膜との相互作用を変化すべく改質されてもよい。好適な置換無水マレイン酸は、無水マレイン酸二置換体である。
アミンを有する化合物を可逆的に改質するのに有用な無水マレイン酸誘導体について述べている。また、生物学的活性化合物の可逆的不活化、架橋、又はその他の改質する方法についても述べている。上述の分子及び方法は、その他の可逆的改質方法に対して、幾つかの有意な進歩を与えている。第1に、ジスルフィド含有架橋剤などの多くの可逆的試薬とは異なり、この無水マレイン酸誘導体の分解は、改質されていない当初のアミンを再生する。第2に、緩徐に酸性の生理的条件において、上述の無水物は、非常に急速に分解され;分解される他の不安定結合に必要な数時間又は数日などと比べて、数分で分解される。それにもかかわらず、本願の方法を用いると、アミン含有化合物の改質は、直接的で容易である。さらに、in vivo又はin vitroでのこの改質の回復は、本質的に一方向である。この特徴は、この改質が、膜活性化合物を可逆的に阻害するのに使用される際、特に有用である。一度、この改質が分解されると、上記の膜活性化合物は、局所のpHが酸性でない場合であっても、活性を保持している。逆に、陽イオン性脂質などの膜を活性化及び崩壊すべくプロトン化に依拠する多くの化合物は、pHが上昇しても、潜在的に不活化される。
(機能性置換基)
機能性置換基は、細胞標的化シグナル、核局在化シグナル、エンドソーム又はその他の細胞内ベシクルの内容物の放出を促進する化合物(放出シグナル)、細胞透過性化合物及びその他の、化合物又は複合体の挙動又は相互作用を変化させる化合物を含む。機能性置換基は、反応性置換基、他の分子又は種々の他のR置換基との非共有性相互作用を提供する分子を含んでもよい。
細胞標的化シグナルは、生物学的活性化合物の細胞への関連付けを促進する種々のシグナルである。これらシグナルは、薬物や核酸などの生物学的活性化合物を改質可能であり、且つ、これらを細胞の位置(例えば、組織)又は、培養又は個体全体における細胞内の位置(例えば核)などへ方向付けてもよい。このシグナルは、化合物の細胞表面への結合性及び/又は細胞内画分の関連付けを増加してもよい。外来遺伝子の細胞内又は組織配置の改質により、生物学的活性化合物の機能を促進してもよい。細胞標的化シグナルは、限定しないが、タンパク質、ペプチド、脂質、ステロイド、糖、炭化水素、(非発現の)ポリ核酸又は合成化合物であってもよい。リガンドなどの細胞標的化は、受容体への細胞結合性を増加する。種々のリガンドは、薬物及び遺伝子を細胞又は特定の細胞性受容体へと標的化すべく使用されている。このリガンドは、細胞膜内、細胞膜上、又は細胞近傍の標的を検索してもよい。リガンドの受容体への結合は、典型的にエンドサイトーシスにより開始する。リガンドは、アシオログライコプロテイン又はガラクトース残基をもちいることにより、アシアログライコプロテイン受容体に標的化する試薬を含む。インスリン、EGF又はトランスフェリンなどの他のタンパク質をこの標的化に用いてもよい。RGD配列を有するペプチドは、種々の細胞の標的化に用いられてもよい。細胞上のチオール、スルフヒドリル又はジスルフィド基と反応する化学置換基は、種々のタイプの細胞を標的化すべく使用されてもよい。葉酸又はその他のビタミンは、標的化に使用されてもよい。他の標的化群は、脂質、脂肪酸、コレステロール、ダンシル化合物及びアムフォテリシン誘導体などの膜と相互作用する分子を含む。加えて、細胞を結合すべくウィルス性タンパク質を用いてもよい。
核局在化シグナルは、細胞周期の中間状態において、医薬品を、核近傍及び/又は核へと移行する標的化を促進する。かかる核移行シグナルは、SV40ラージT抗原NLSや、ヌクレオプラスミンNLSなどのタンパク質又はペプチドであってもよい。これらの核局在化シグナルNLS受容体(カリオフェリンα)などの種々の核移行因子と相互作用し、その後、カリオフェリンβと相互作用する。この核移行タンパク質は、それ自体、NLSとして機能する。なぜなら、これらは、核孔又は核へと標的化されているからである。例えば、カリオフェリンβ自体は、DNAを核孔複合体へと標的化可能である。種々のペプチドは、上記のSV40T抗原に由来している。その他のNLSペプチドは、hnRNP A1タンパク質、ヌクレオプラスミン、c−mycなどに由来している。多くの生物学的活性化合物、特に、多くの電荷を有する化合物は、生物学的膜と架橋することができない。これら化合物を細胞へと導入すべく、細胞は、エンドサイトーシスにより取り込まなければならず、つまり、エンドソームへと取り込まなければならず、或いは、化合物の架橋を可能とすべく、細胞膜を破壊しなければならない。エンドソームによる導入の場合、エンドソームの膜は、エンドソームの外側へと動き且つ、細胞質へと動くことを可能とすべく崩壊されなければならない。細胞への侵入経路は、細胞膜の破壊を要求する。膜構造の変化を可能とする化合物は、膜活性化合物と称する。構造におけるこの変化は、膜上の一つ以上の効果を誘導する化合物により示されてもよく、この効果は:低分子の透過性、ポアの形成、膜の融合及び/又は分裂を可能とする変更、大分子の透過性、膜の溶解若しくは崩壊又は膜位相の移行を可能とする変更からなる群から選択される。この変更は、赤血球の溶解(溶血)、リポソームの漏出、リポソームの融合、細胞融合、細胞溶解及びエンドソームによる放出からなる群から選択された少なくとも一つのアッセイにおける化合物の活性により機能的に規定されてもよい。膜活性薬剤の例は、膜の活性が赤血球由来のヘムを放出(溶血)する能力により示される、蜂の毒ペプチドであるメリチン(mellitin)である。
膜活性ペプチドは、ペプチドの膜活性化合物である。多くの天然由来の膜活性ペプチドがあり、これらには、限定されないが:セクロピン(cecropin)(昆虫)、マガイニン(magainin)(ハチ)、CPF1、PGLa、ボンビニンBLP−1(これら全ては、両性類由来である)、セミナルプラスミン(ウシ)、インドリシジン、バクテネシン(これら二つは、ウシ好中球由来)、タキプレシン(カニ)、プロテグリン(ブタ白血球)、及びディフェンシン(ヒト、ウサギ、ウシ、カビ類及び植物由来)、グラミシディンA及びフラミシディンC(bacillus brebis)、ニシン(lactococcus lactis由来のランティバイオティクス)、アンドロクトニン(サソリ)、カルディオトキシンI(コブラ)、サエリン(カエルであるlitoria splendida)及びダーマセプティン(カエル)及びこれらに類するペプチドを含む。ウィルス由来ペプチドもまた、膜活性を有することが示されており、限定しないが:ヘマグルティニンサブユニットHA−2(インフルエンザ)、E1(セムリキ森林熱ウイルス)、F1(センダイ及びハシカウィルス)、gp41(HIV)、gp32(SIV)、vp1(ライノウィルス、ポリオウィルス及びコクサッキーウィルス)並びにこれらに類するものを含む。メリティンは、高度に細胞毒性を有し、且つ、溶血性膜活性ペプチドである、ハチ毒の26残基のペプチド成分
膜活性ポリマーは、膜活性を有するポリマーである。
膜活性両親媒性物質は、親水部分及び疎水部分を有する両親媒性の膜活性化合物である。かかる化合物の例は、ドデシルアミン及びドデシルサルフェートなどの界面活性剤又は洗剤が挙げられる。
両親媒性化合物は、は、親水性を有しつつ、他方では疎水性を有する分子である。疎水性なる用語は、定性的な意味合いにおいて、その化学残基が水を排除する性質を有していることを示す。炭化水素は、疎水基である。親水性なる用語は、定性的な意味合いにおいて、その化学残基が水になじむ性質を有していることを示す。典型的に、かかる化学的置換基は、水溶性であり、水素結合や水のアクセプターである。親水性置換基の例は、以下の化学残基を有する化合物を含む:炭水化物、ポリオキシエチレン、オリゴヌクレオチド並びにアミン、アミド、アルコキシアミド、カルボン酸、イオウ又は水酸基を有する置換基である。
陽イオン性取り込み(import)ペプチド(ペプチドトランスロケーションドメイン、メンブレントランスロケーションペプチド、アルギニンリッチモチーフ、細胞透過性ペプチド及びペプトイド分子トランスポーターなどとも称される)細胞透過性化合物は、生物学的膜を通過することが可能な化合物である。加えて、これらは、膜を横切って結合される分子の輸送が可能である。細胞透過性化合物は、膜活性化合物の別の形態である。典型的にアルギニン及びリジンリッチな陽イオン取り込みペプチドの例は、TAT(配列番号1)、VP22ペプチド及びANTpペプチド(配列番号2)を含む。しかしながら、細胞透過性化合物は、厳密にはペプチドではない。アミン又はグラニジウム基がリッチな短く、ペプチドではないポリマーもまた、生物学的膜を移行する分子を運ぶことができる。膜活性ペプチドと同様に、陽イオン性取り込みペプチドは、厳密なアミノ酸配列に関する要求性よりも、その活性により規定される。
膜透過性分子は、細胞膜二重層を通過することが可能な分子である。この二重層を介してこれら分子の移動は、さらなるタンパク質、化合物又は化学品を必要としない。事実、電荷を有し或いは高い極性の分子に対する細胞膜の不透過性の特徴ゆえ、細胞質に到達する必要のある多くの低分子薬物は、膜透過性である。薬物設計は、水溶性と膜透過性とで均衡を取る必要がある。しかしながら、特定の薬物、例えば、抗がん剤であるドキソルビシンに関して、特異的でない膜透過性は、標的化されていない細胞において負の非特異的効果をもたらす。係る薬物の膜透過特性を可逆的に不活化する能力は、毒性を軽減しつつ、薬物の効果を向上すべく使用されてもよい。
反応性置換基は、他の置換基と共有結合を形成し得る置換基である。共有結合を形成する反応性得置換基は:イソチオシアネート、イソシアネート、アクリルアジド、酸ハライド、O−アシル尿素、N−ヒドロキシコハク酸エステル、サクシイミド、エステル、チオエステル、アミド、尿素、スルフォニルクロライド、アルデヒド、ケトン、エーテル、エポキシド、カーボネート、アルキルハライド、イミドエステル、カルボキシレート、アルキルフォスフェート、アリルハライド(例えば、ジフルオロジニトロベンゼン)及び無水物からなる群から選択されてもよい。
CDMは、ジメチル無水マレイン酸二置換体のカルボン酸を有する誘導体である。CDMは、ジメチルオキソフルタレート及びトリエチル−2−フォスフォノプロイオネートとのHorner−Emmons反応の後に、刊行済みの方法(図3)に従って、そのエステル基の鹸化を介して合成される[Naganawaら、1994年]。カルボキシレートを有する置換基の添加により、電荷及びこの化合物の水溶性が増加する。cis−無水アコニット酸は、同様のカルボン酸基を有しているが、第二のRの位置への二置換体を有していない。
PMOsは、モルフォリノサブユニットから合成され、そのそれぞれは、6員環のモルフォリノ環に結合された一般的な塩基の一つを有している。このサブユニットは、非イオン性のフォスフォロジアミデート内部サブユニットリンケージにより結合される。PMOsは、立体障害機構によりその効果を発揮し、且つ、標的のRNAの翻訳又はスプライシングを阻害すべく使用されてもよい。PEG及びデキストランと同様に、オリゴヌクレオチドは、流動相エンドサイトーシスにより吸収され、細胞膜を直接横切って拡散することができない。
架橋は、二機能性試薬(クロスリンカー)にて、二つ以上の分子を結合することを参照している。二機能性試薬は、二つの反応性末端を有する分子である。この反応性末端は、ホモ二機能性分子として同一であってもよく、或いは、ヘテロ二機能性分子として異なっていてもよい。この結合は、共有結合であってもよく、或いは、安定な非共有結合であってもよい。
不安定結合は、選択的に破断されることが可能な共有結合である。つまり、この不安定結合は、他の共有結合を切断することなく、他の共有結合の存在により切断されてもよい。例えば、ジスルフィド結合は、例えば、分子ないに存在する可能性のある炭素−炭素、炭素−酸素、炭素−イオウ、炭素−窒素結合など種々の他の結合、の分解なしに、チオールの存在にて切断されることが可能である。不安定性は、また、分解可能性を意味している。
不安定リンケージは、不安定結合を有し、二つの他の置換基との間にリンク又はスペーサーを提供する化学的化合物である。リンクされるこの置換基は、生物学的活性化合物、膜活性化合物、膜活性を阻害する化合物、機能性反応性置換基、モノマー及び細胞標的化シグナルなどの化合物から選択されてもよい。上記のスペーサーグループは、化学残基を有していてもよく、この残基は、アルカン、アルケン、エステル、エーテル、グリセロール、アミド、糖類、多糖類及び酸素やイオウや窒素などのヘテロ原子からなる群から選択された残基であってもよい。上記のスペーサーは、電気的に中性であってもよく、正又は負の電荷を露出していてもよく、或いは、全体的に中性、正又は負の電荷を有しつつ、正及び負の電荷を露出していてもよい。
pH不安定性は、酸性条件下(pH<7)にて、共有結合が選択的に切断されることを参照している。つまり、このpH不安定結合は、他の共有結合を切断することなく、酸性条件下にて切断されてもよい。pH不安定性なる用語は、pHに不安定、pHに非常に不安定、及びpHに極端に不安定なリンケージ及び結合の両方を含んでいる。
生の化学的ライゲーションは、化合物のチオエステルのカルボキシレートとアミンtの間でアミド結合を形成することであって、例えば、末端のシステインのように、アミンから2又は3個の原子を隔ててチオールをも有している。
化合物の電荷、極性及びサインは、化合物が一つ以上の電子を消失しているかどうか(正電荷、正極性、正のサイン)或いは、一つ以上の電子を獲得しているかどうか(負電荷、負極性、負のサイン)を参照している。
1. 2−カルボキシエチル−3−メチル無水マレイン酸(CDM−チオエステル)の合成
CDM無水物(100mg)を10mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液に2mLの塩化オキサリルを加えた。一昼夜撹拌した後、過剰の塩化オキサリルは、ロータリーエバポレーションにより除去され、澄明な油状物質を得た。CDMの酸塩化物は、その後、10mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液に、200mgのメルカプト酢酸及び100μLのジイソプロピルエミルアミンを加えた。この溶液を1時間撹拌し、ロータリーエバポレーションにより溶媒を除去した。得た油状物質を、高い真空条件下(0.2torr)に3時間載置し、過剰のメルカプト酢酸及びジイソプロピルエチルアミンを除去した。得た産物は、水:アセトニトリル9:1の溶液に溶解し、C18逆相カラムにて、水アセトニトリル9:1に0.1%のトリフルオロ酢酸を加えた溶離的にて、アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸溶液)にて溶出するHPLCにより精製した。
環状無水物を、ポリアミンポリ−L−リジン(PLL)にて反応した。200μgのPLL、2mgのHEPEPS及び0.4mgのNaOHを含有する100μLの水に、に0.4mgCDM含有又はジメチル無水マレイン酸(アルドリッチ社)含有50μLエタノールに加え、急速に撹拌した。cic−無水アコニット酸(アルドリッチ社)に関しては、1mgの無水物、5mgのHEPES及び1mgNaOHを使用した。同様に、PLLは、二つの無水コハク酸又は無水シトラコン酸の等量に反応した。PLLと無水物との反応の後、トリニトロベンゼンスルフォン酸(TNBS)アッセイを行ったところ、PLLのεアミンは、カルボキシレートに完全に変換していた。これらポリアミンの電荷密度は、その後、陽イオン性の蛍光標識のPLLの凝集能力を検討することにより同定された。中性pHにおいて、サクシニル化されたPLLの一つの機能性等量は、PLLの凝集に必要である。同様に、シトラコニル化されたPLLの1等量及びcis−アコニチン化されたPLLの0.5等量(これは、反復単位当たり、二つのカルボン酸基を有している)は、PLLを凝集に必要である。逆に、ジメチル無水マレイン酸により改質されたPLLは、10等量を加えた場合であっても、PLLの凝集することは出来ない。同様に、CDM改質PLLの電荷密度は、二つのカルボン酸当たり一つの電荷である。無水物の離れたカルボン酸は、改質されたポリマーに電荷を加える一方、無水物のカルボン酸は、ポリアニオンに対して電荷的に貢献しないようである。
マレアメート(maleamate)の酸触媒分解率は、グリシンアラニンジペプチドを用いた評価した。CDM及びジメチルマレアミド改質されたグリシンアラニン(GA)は、400μgCDM又はジメチル無水マレイン酸含有20μLエタノールを、200μgGA、2.4mgHEPES含有44μL溶液に加えることにより合成した。この改質ペプチドをpH5の溶液に加えることにより分解を進行させた。種々の時間において、10μgのアリコートを除去し、0.5mLの0.4mMTNBS(pH9)含有100mM炭酸水素ナトリウム溶液(pH9)に加えた。マレアミド酸二置換体は、マレアミド酸一置換体は、よりも急速に分解した。時間の関数として、ln[1−(At/A0)]のプロットは、直線に回帰し、その傾きは、−kであり、これは、分解反応の反応定数であって、ここで、Atは、時間tにおける吸光度であり、A0は、改質されていないGAの吸光度である。ジメチルマレアミド酸及びCDM改質グリシンアラニンの分解に関する定数は、それぞれ、0.4/分(t1/2=1.5分)及び0.3/分(t1/2=2分)であった。cis−アコニット酸改質の回復に関する同様の分析で明らかになったのは、およその半減期が300分(5時間)という非常に緩徐な分解速度であったということである。
ミツバチ由来のメリチン(配列番号4)を、pH7.5にて、4つのリジン残基に対して2モル等量のサクシニル酸、cis−アコニット酸、ジメチルマレイン酸、シトラコン酸及びCDM無水物にてアシル化した。200μgメリチン、500μgHEPES及び100μgNaOH含有20μL水の溶液に、0.1μgCDM又はジメチル無水マレイン酸含有50μLエタノール溶液を加え、急速にボルテックスした。cis−無水アコニチン酸に関しては、250μgの無水物、1.25mgのHEPES及び250mgのNaOHを使用した。TNBSによるアミン含量の測定により明らかになったのは、これら無水物の全てにより、メリチンのアシル化が完全に起きていたということである。
ガラス製カバーストリップ上にて培養したHeLa細胞を、37℃、10分間、400μg/mL改質メリチン含有/不含の1mLDMEM中で、1mg/mLのPEG3000を用いてインキュベートした。この後、細胞を洗浄し、10%ウシ血清含有DMEM中にて、37℃、35分間インキュベートした。その後、細胞を、PBS(シグマ社)にて3回洗浄し、4℃、4%ホルムアルデヒド(シグマ社)含有PBSにて30分間固定し、PBSにて3回洗浄した。その後、カバーストリップを、蛍光顕微鏡のガラススライド上に載置した。このサンプルの画像は、Zeiss社製LSM510共焦点顕微鏡にて取得した(Zeiss、ドイツ)。CDM−メリチンを有していない場合、蛍光−PEGは、破裂した様相を呈し、これは、エンドソーム及び/又はライソソームの局在を示す。逆に、CDM−メリチンを含有する場合には、蛍光は、細胞全体に観察され、このことは、エンドソーム/ライソソームから蛍光−PEGが放出されたことを示している。cis−アコニット酸改質メリチンと共インキュベートすると、コントロールとして蛍光−PEG単独と比較できない破裂した蛍光が得られた。同様の結果は、蛍光標識10kDaデキストランをマーカー分子として用いた場合にも観察された。加えて、エンドソームの酸性化の阻害剤であるバフィロマイシンは、蛍光−PEGの放出を阻害した。
HeLa−LUC/705細胞は、安定に一体化された、スプライシングサイトが欠失した変異ルシフェラーゼ遺伝子を保持している(Gene−Tools、Philomath、OR)。この変異スプライシングサイトは、トランケートされた不活性なルシフェラーゼ蛋白をコードするmRNAを産生する。適切なフォスフォロジアミデートモルフォリノオリゴヌクレオチド(PMO、
in vivoにて、生物学的活性物質を細胞へと送達するために、可逆的に改質された膜活性化合物は、送達される分子に複合化されなければならない。PMOをCDM改質メリチンにて結合すべく、アミド結合を形成すべくチオエステル及びN−末端システイン基を反応する生の化学的ライゲーションに基づくカップリング技術を開発した。この工程の有益性は、アミドへと変換される(CDMの)酸が、チオエステルとして前活性化されてもよいということである。このチオエステル自体、N−ヒドロキシサクシニミヂルエステルなどの活性化エステルと比較して相対的に安定であるが、N−末端システイン基と急速且つ選択的にカップルする。この反応混合物は、他のアミン及び他のチオールを含有していてもよいが、安定なアミドを形成すべく、アミノ末端システインのみがカップルする(アミンの2〜3の結合のうちのチオール)。
0.5mモルのアミン改質PMO(配列番号6、Gene Tools、Philomath、OR)を、1nモルCDM−チオエステル含有500mgHEPES緩衝液(pH7.9)と反応した。改質されたPMOは、その後、10μg/mLPEI−Cys、1mMジチオスレイトール及び5mMHEPES緩衝液pH7.5含有50μL溶液に加えられた。メリチンは、3重量等量HEPES塩基存在下0.5重量等量のCDMチオエステルと反応することにより改質された。1時間のコンジュゲーションの後、CDM−チオエステル改質メリチンは、PEI−Cys−PMO複合体に加え、最終濃度を80μg/mLメリチンとした。同様の条件を、シトラコン酸−メリチン又はアコニチン酸−メリチンのPEI−Cys−PMOへの結合に利用した。
陽イオン性取り込みペプチドであるシステイン−TAT(CGRKKKRQRRR、配列番号7)を、蛍光テキサスレッドにて標識した。この改質は、このペプチドの取り込み特性に影響を与えず、且つ、内在化に関して視覚的アッセイを提供する。1mgシステイン改質TAT(配列番号7)(10mg/mL)及び10mMHEPES緩衝液pH7.5の溶液に、0.2mgのテキサスレッドC5ブロモアセタミド(モレキュラープローブ)含有500μLエタノール溶液に加えた。室温にて一昼夜反応した後、スピードエバポレーションにより、エタノールを除去し、標識ペプチドを得た。
CDM及びCDM−チオエステルの簡便な合成を示す。CDM及びその誘導体の合成に関する簡便性は、他の酸分解性材料を簡便に製造することを可能とする。特に、ポリエチレングリコール(PEG)は、CDMの酸塩化物を介して、CDMにコンジュゲートされてもよい。2−プロピオニック−3−メチル無水マレイン酸(30mg、0.16mモル)含有5mL塩化メチレン溶液に、塩化オキサリル(200mg、10等量)及びジメチルホルムアミド(1μL)を加えた。一昼夜反応させ、過剰量の塩化オキサリル及び塩化メチレンを、ロータリーエバポレーターにより除去し、酸塩化物である澄明な油状物質を得た。この酸塩化物を、1mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液に、平均分子量5,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(815mg、1等量)及びピリジン(20μL、1.5等量)含有10mL塩化メチレン溶液に加えた。その後、この溶液を一昼夜撹拌した。その後、溶媒を除去し、得た固形物を8.15mLの水に溶解した。一方、Garman及びKalindjianは、PEG含有無水マレイン酸を、2−ブロモメチル−3−メチル無水マレイン酸を用いて合成した[Garman及びKalindjian、2000年]。この合成を再現すべく試みたが不成功に終わり、この中間体は、「高収率及び高品質にて調製することは困難である」と報告した[Greenwaldら、2000年]。合成における困難性は、酸分解性PEG誘導体の合成に対するCDMの貢献度が重要であるものとしている。Cy3Label IT標識プラスミッドDNAは、1.2倍の過剰電荷を有するポリ−L−リジン(分子量52,000)を有する粒子へとコンパクトにされた。その後、この粒子は、非反応性ポリエチレングリコール(分子量5000)又はアミン反応性CDM−PEGにて、ポリ−L−リジンのアミンに対して0.5モル等量にて反応された。50μgのDNAを含有する粒子は、20g以下のオスICRマウスの尾静脈から注射された。1時間後、採血し、Cy3蛍光物が血液循環中に存在することが確認された。その後、このマウスを屠殺し、肝臓、肺、腎臓及び脾臓を採取し、凍結切片作成のため、凍結し、得たスライスは、Cy3蛍光物に関して検討された。見出されたのは、PEG−CDM改質は、非改質PLL−DNA粒子に対して、循環時間を劇的に増加させたということである。非反応性ポリエチレングリコールにて処置された蛍光粒子にて注射された動物は、1時間目において、血液循環中に蛍光物が見出されず、極小量の蛍光物が、肝臓、腎臓又は脾臓に見出され、大部分の蛍光物が肺に残存していることが見出された。CDM−PEGにて処置された蛍光粒子を注射された動物では、非常に高いレベルの蛍光物が、1時間目において、血液循環中に見出され、肝臓、腎臓及び脾臓に拡散した高レベルの蛍光物が見出されたが、肺にはほとんど見出されなかった。
ドキソルビシン(Dox)含有50mMのHEPES緩衝液pH7.9の溶液に、3等量のCDMアダクト(例えば、CDM又はPEG−CDMなどのCDMポリマーコンジュゲート)を加えた。改質されたDOXは、その後、組織培養中の細胞に加えられ、或いは、in vivoに注入された。
ストレプトアビジンは、6モル等量のサクシニミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート(Pierce社製のSMCC)の反応によりマレイミド基にて反応された。肝臓標的化ペプチドである
Claims (19)
- 化合物の脂質膜との相互作用を変化させるように、アミン含有化合物を可逆的に改質する方法であって:
前記化合物の前記アミンに置換無水マレイン酸を共有的に結合することを有する方法。 - 前記置換無水マレイン酸は、無水マレイン酸二置換体からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記無水マレイン酸二置換体は、負荷電した無水マレイン酸二置換体であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 前記無水マレイン酸二置換体は、2−プロピオニック−3−メチル無水マレイン酸からなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 前記置換無水マレイン酸は、二機能性無水マレイン酸からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記置換無水マレイン酸は、チオエステル置換無水マレイン酸からなることを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 前記置換無水マレイン酸は、CDM−チオエステルからなることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記置換無水マレイン酸は、CDM−チオエステルからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記化合物は、膜活性化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記膜活性化合物の改質は、前記化合物の膜活性を不活化することを特徴とする請求項9に記載の方法。
- 前記膜活性化合物は、メリチンからなることを特徴とする請求項9に記載の方法。
- 前記化合物は、細胞透過性化合物からなることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記細胞透過性化合物は、アルギニンリッチなペプチドからなることを特徴とする請求項12に記載の方法。
- 前記細胞透過性化合物は、TATペプチドからなることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記化合物は、細胞透過性薬物からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記化合物の改質は、前記化合物の正電荷を減弱することからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記化合物の改質は、前記化合物の電荷を反転することからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記改質は、前記化合物の毒性を軽減することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 分子を細胞に送達する方法であって:
化合物の脂質膜への相互作用を変化させるように、アミン含有膜活性化合物を、該化合物の前記アミンに置換無水マレイン酸を共有的に結合することにより可逆的に改質し、
前記分子を前記の改質された化合物に関連付け、且つ
前記化合物を前記細胞に送達する、
ことからなることを特徴とする方法。
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