JP2005529837A - 標的酵素プロドラッグ療法 - Google Patents

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シェレンバーガー、ヴォルカー
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ジェネンコー・インターナショナル・インク
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Abstract

本発明は類似の条件下で標的に結合する対応するプレ標的酵素よりも改善された標的に結合する標的酵素を提供し、標的酵素を作成する方法、病気を治療する際の標的酵素の使用方法、及び標的酵素を含んだ医薬組成物を提供する。

Description

発明の詳細な説明
関連出願の引用
本出願は、米国特許法第119条(e)の米国仮出願番号第60/255,774号(出願日:2000年12月14日、Schellenbergerら)、米国仮出願番号第60/279,609号(出願日:2001年3月28日、Schellenbergerら)、及び米国仮出願国内整理番号GC684−2P(出願日:2001年10月26日、Schellenbergerら)に基づく優先権を主張するものである。またそれらの記載の全体は本明細書に組み込まれる。
発明の背景
標的部分に結合または融合する酵素は診断用及び治療用の使用で多く用いられている。例えば、ほとんどの同種薬物検出免疫測定は薬物代謝物に結合した酵素を利用する。例えば、Rubinsteinら、Biochem.Biophys,Res.Commun.47:846(1972)を参照されたい。つい最近では、Legendreらが同種免疫測定法の最新版について説明している。Legendreら、Nat.Biotechnol.17:67(1999)。
治療の分野では、抗体−酵素の結合について研究及び説明されてきた。しかしながら、これらの研究からいくつかの欠陥が明らかになった。これらの欠陥としては、腫瘍への遅い伝播、循環からの遅いクリアランス;他の組織への非特異的結合;免疫反応の誘発;生成、結合または発現の困難性;及びターゲッティングと触媒機能間の必要なカップリングが挙げられる。
使用されている方法の1つの種類として、抗体標的酵素プロドラッグ療法がある(ADEPT)。ADEPT及び類似の手段は制癌剤の選択性を高めるために設計された多段階の方法である。例えば、Philpottら、J Immunol 111:921(1973)、Bagshaweら、Curr Opin Immunol 11:579(1999)、Niculescu−Duvazら、Anticancer Drug Des 14:517(1999)、Chari Adv Drug Deliv Rev 31:89(1998)、Syrigos&Epenetos Anticancer Res 19:605(1999)、Sherwood、Advanced Drug Del.Rev.22:269(1996)及びNiculescu−Duvaz&Springer、Advenced Drug Del.Rev.26:151(1997)を参照されたい。抗体−酵素結合の免疫原性は、しかしながら、既存のADEPT手段において主要な制限となるものである。
既存のADEPT法の他の制限となるものは、循環中における抗体−酵素結合の半減期が長いことである。一般的に抗体は循環中半減期が長く、この性質は抗体−酵素結合が有するものである。抗体−酵素結合は、プロドラッグが他の組織中での薬の活性を阻止するために投与される前に、体の非腫瘍部位から除去されなければならない。現在では、過剰の抗体−酵素結合を除去する好ましい方法は、通常は抗体−酵素結合の酵素部分を標的とする第2の抗体を投与することである。Kerrら、Bioconjug Chem 4:353(1993)を参照されたい。
ADEPTの短所に対して、対象の標的部位においてプロドラッグを特異的に活性化させるための他の方法が開発されてきた。遺伝子標的酵素プロドラッグ療法(GDEPT)では、酵素を活性化するプロドラッグをエンコードする遺伝子が腫瘍に運ばれる。最近の論評では、Niculescu−Duvazら、Anticancer Drug Des 14:517(1999)を参照されたい。しかしながら、GDEPTの有用性は、必要とする遺伝子を治療すべき腫瘍に取り込むために安全で効果的な方法が開発される必要性により厳しく制限される。他の方法において、抗腫瘍剤は終末的にターゲティング剤に結合する。この技術の論評は、Torchilin、Eur J Pharm Sci 11 Suppl 2:S81(2000)及びFrankelら、Clin Cancer Res 6:326(2000)を参照されたい。これらの手段はADEPTと同じ短所をいくつか有する。特に、これらの治療剤は免疫原性を有し得る。そして、標的成分の結合サイズ、酵素及びリンカー(もし使用されているのであれば)により対象の循環中それら治療剤の半減期が非常に長くなる原因となり得る。
従って、比較的作成し易く、標的に対して高親和性をもって結合し、標的に結合した場合及び対象中で利用する場合には触媒活性を示し、速い拡散、低免疫原性及び速いクリアランスの物理学的特性を有するような標的酵素の必要性が当業界に依然として残っている。本発明はこれら及びその他の要求を満たすものである。
発明の概要
本発明は、プレ標的酵素が低い親和力で結合する標的に結合し、その間触媒活性を有する標的酵素の驚くべき生成について説明し、治療、診断及びその他の使用へのその応用、及びそのような標的酵素を作成する方法について説明するものである。本発明の標的酵素は該酵素の欠くことのできない部分である標的部位を含む。
第1の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない、及び
iv)変異耐性配列はプレ標的酵素のタンパク質結合ドメイン中にはない。
第2の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、
iii)標的に結合する標的酵素の触媒活性は約60%より大きい。例えば、類似の条件下で標的に結合しない標的酵素の触媒活性は60%〜165%である、及び
iv)変異耐性配列はプレ標的酵素のタンパク質結合ドメイン中にはない。
第3の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、
iii)標的に結合しない標的酵素の触媒活性は、プレ標的酵素の触媒活性より25%大きい、及び
iv)変異耐性配列はプレ標的酵素のタンパク質結合ドメイン中にはない。
本発明の第4の態様において、第3の態様の標的酵素は標的に対して親和性を有し、少なくとも390nMである。
本発明の第5の態様において、第3の態様の標的酵素は標的に結合する間触媒活性を有し、類似の条件下で標的に結合しない標的酵素の触媒活性より35%大きい。
第6の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、少なくとも6.5nMであり、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、及び
iii)変異耐性配列はプレ標的酵素のタンパク質結合ドメイン中にはない。
第7の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は3つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、及び
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。
第8の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は少なくとも2つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、及び
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、
iii)標的に結合しない標的酵素の触媒活性は、プレ標的酵素の触媒活性より25%大きい。
第9の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、及び
iii)標的はモノクローナル抗体ではない。
第10の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、及び
iii)標的に結合する標的酵素の触媒活性は、約60%より大きい。例えば、標的に結合しない標的酵素の触媒活性は、60%〜165%の間である。
第11の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。例えば、類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する、及び
iii)標的に対する標的酵素の親和力は少なくとも6.5nMである。
第12の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は少なくとも390nMであり、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも少なくとも100倍大きい、及び
iii)標的に結合しない標的酵素の触媒活性は、類似の条件下でプレ標的酵素の触媒活性よりも25%大きい。
第13の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列が対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも少なくとも100倍大きい、
iii)標的に結合しない標的酵素の触媒活性は、類似の条件下でプレ標的酵素の触媒活性よりも25%大きい、及び
iv)標的に結合する標的酵素の触媒活性は、類似の条件下で標的に結合しない標的酵素の触媒活性より35%大きい。
第14の態様において、本発明は標的酵素(TE)及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤、触媒活性を示し以下を含有する前記TEを含有する医薬組成物を提供する:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は各変異配列が、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなくTEに結合する、
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない、及び
iv)変異耐性配列はプレ標的酵素のタンパク質結合ドメイン中にはない。
第15の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;
b)第一の標的に結合する第一の標的部位;及び
c)第二の標的に結合する第二の標的部位、
ここで、
i)各標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、及び
ii)第一及び第二の標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で第一及び第二の標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい、
第一の標的及び第二の標的は同一または異なるものであってもよい。少なくとも1つの標的部位は2または3の変異配列を含む。
第16の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の2つの変異配列を含み、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きく、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第17の態様において、本発明は触媒活性を示す標的酵素を提供し、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は3つの変異配列を含み、ここで各変異配列は対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。
第18の態様において、本発明は以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)類似の条件下で、標的はプレ標的β−ラクタマーゼ酵素に結合しないで標的β−ラクタマーゼ酵素に結合する、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第19の態様において、本発明は以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)類似の条件下で、標的はプレ標的β−ラクタマーゼ酵素に結合しないで標的β−ラクタマーゼ酵素に結合する、及び
iii)標的に結合する標的β−ラクタマーゼ酵素の触媒活性は、類似の条件下で標的に結合しない標的β−ラクタマーゼの触媒活性の60%〜165%である。
第20の態様において、本発明は以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)類似の条件下で、標的はプレ標的β−ラクタマーゼ酵素に結合しないで標的β−ラクタマーゼ酵素に結合する、及び
iii)標的に結合しない標的β−ラクタマーゼ酵素の触媒活性は、プレ標的β−ラクタマーゼの触媒活性より25%大きい。
第21の本発明の態様において、第16の態様の標的酵素は少なくとも390nMの標的に対する親和力を有する。
第22の本発明の態様において、第16の態様の標的酵素は標的に結合する間触媒活性を有し、類似の条件下で標的に結合しない標的酵素の触媒活性より35%大きい。
第23の態様において、本発明は以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)類似の条件下で、標的はプレ標的β−ラクタマーゼ酵素に結合しないで標的β−ラクタマーゼ酵素に結合する、及び
iii)標的対する標的β−ラクタマーゼの親和力は、少なくとも6.5nMであり、プレ標的β−ラクタマーゼ酵素は類似の条件下で標的に結合しない。
第24の態様において、本発明は触媒活性を示し以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は3つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり、及び
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きい。
第25の態様において、本発明は触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きい、及び
iii)標的に結合しない標的β−ラクタマーゼ酵素の触媒活性は、プレ標的β−ラクタマーゼ酵素の触媒活性より25%大きい。
第26の態様において、本発明は触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きい、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第27の態様において、本発明は触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位、及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きい、及び
iii)標的に結合する標的β−ラクタマーゼ酵素の触媒活性は約60%より大きい。例えば、標的に結合しない標的β−ラクタマーゼ酵素の触媒活性の60%〜165%である。
第28の態様において、本発明は触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位、及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きい、及び
iii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は少なくとも6.5nMであり、類似の条件下でプレ標的β−ラクタマーゼ酵素は標的に結合しない。
第29の本発明の態様は、標的β−ラクタマーゼ酵素及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤、以下を含有する前記酵素を含有する医薬組成物である:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)類似の条件下で、標的はプレ標的β−ラクタマーゼ酵素に結合しないで標的β−ラクタマーゼ酵素に結合する、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第30の本発明の態様は、触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素である:
a)基質認識部位;
b)第一の標的に結合する第一の標的部位;
c)第二の標的に結合する第二の標的部位;及び
d)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)各標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、及び
ii)第一及び第二の標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で第一及び第二の標的に対するプレ標的酵素の親和力より大きい。
第一の標的及び第二の標的は同一または異なるものであってもよい。少なくとも1つの標的部位は2または3の変異配列を含む。
第31の本発明の態様は、触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素である:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は3つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来である、及び
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きい。
第32の本発明の態様は、触媒活性を示す以下を含む標的β−ラクタマーゼ酵素である:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位;及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり、
ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力より大きく、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第33の本発明の態様において、基質認識部位及び標識部位は同じドメイン内にある。
第34の本発明の態様において、標識部位は2つの変異配列を含む。
第35の本発明の態様において、標識酵素は2または3の標識部位を含む。
第36の本発明の態様において、変異耐性配列は約1〜約50アミノ酸残基からなる。
第37の本発明の態様において、変異耐性配列は溶媒到達可能なループ(solvent accessible loop)である。
第38の本発明の態様において、変異耐性配列は、β−ラクタマーゼ酵素のループA、ループB、ループC、ループD及びループEからなる群から選択されるいずれかである。
第39の本発明の態様において、変異配列は0〜約50アミノ酸残基からなる。
第40の本発明の態様において、変異配列は対応するプレ標的酵素の変異耐性配列に関連してアミノ酸の欠失、付加または置換を含む。
第41の本発明の態様において、標的酵素は、糸球体ろ過を通して哺乳類宿主の循環からその除去を可能とする分子量を有する。
第42の本発明の態様において、標的酵素は約45,000ドルトンよりも少ない分子量を有する。
第43の本発明の態様において、標的酵素は約5nM以下のKで標的に結合する。
第44の本発明の態様において、標的酵素は約1nM以下のKで標的に結合する。
第45の本発明の態様において、標的酵素は標的に結合している間、類似の条件下のプレ標的酵素の触媒活性と比較して、約1、5、10、20、50、75%またはそれ以上の触媒活性を示す。
第46の本発明の態様において、プレ標識酵素はプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、β−ラクタマーゼ、アスパラギナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、キナーゼ、フォトファターゼ(photophatases)、トランスフェラーゼ、アルドラーゼ及びレダクターゼからなる群から選択されるいずれかである。
第47の本発明の態様において、標的酵素はトリプシン、ヒトトリプシンであるプロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤に耐性を有するプロテアーゼ、α2−マクログロブリンを開裂しないプロテアーゼ、H57Aトリプシン突然変異体、タバコ・エッチ・ウイルス(tobacco etch virus)プロテアーゼ活性を有するプロテアーゼ、またはカルボキシペプチダーゼである。
第48の本発明の態様において、プレ標的酵素はヒト酵素である。
第49の本発明の態様において、プレ標的酵素は非ヒト酵素である。
第50の本発明の態様において、標的酵素は修飾を有し、非修飾標的酵素の免疫反応に比例して増加した宿主免疫反応を有する。
第51の本発明の態様において、標的酵素は修飾を有し、非修飾標的酵素の免疫反応に比例して減少した宿主免疫反応を有する。
第52の本発明の態様において、標的はタンパク質、細胞特異的タンパク質、細胞関連分子、細胞表面分子、レセプター、正常細胞、異常細胞、感染細胞、癌細胞、正常組織、病変組織、感染組織、癌組織、正常臓器、病変臓器、感染臓器、癌臓器、感染部位、腫瘍または腫瘍脈管構造である。
第53の態様において、本発明は標的酵素をエンコードする核酸を提供する。
第54の態様において、本発明は標的酵素をエンコードする核酸を含有するプラスミドを提供する。
第55の態様において、本発明は標的酵素をエンコードする核酸を含有する発現ベクターを提供する。
第56の態様において、本発明は標的酵素をエンコードする核酸を含有する発現ベクターを含む細胞を提供する。
第57の本発明の態様において、第38の態様の細胞は大腸菌細胞である。
第58の態様において、本発明は標的細胞及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤を含有する組成物を提供する。
第59の態様において、本発明は標的酵素を作成する以下を含む方法を提供する:
a)触媒活性を有する酵素の変異耐性配列を修飾し、それによって修飾酵素を生成する工程;及び
b)類似の条件下で非修飾酵素の親和力より大きな親和力をもって標的に結合する修飾酵素をa)から選択する工程。例えば、標的は、類似の条件下でプレ標識酵素ではなく標的酵素に結合し、標的に結合する間触媒活性を有する。
ここで、標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第60の態様において、本発明は標的酵素を作成する以下を含む方法を提供する:
a)触媒活性を有する酵素の変異耐性配列を修飾し、それによって修飾酵素を生成する工程;
b)類似の条件下で非修飾酵素の親和力より大きな親和力をもって標的に結合する修飾酵素をa)から同定する工程。例えば、標的は、類似の条件下でプレ標識酵素ではなく標的酵素に結合し、標的に結合する間触媒活性を有する、
c)類似の条件下で標的に対する非修飾酵素の親和力よりも、少なくとも100倍大きな親和力をもって標的に結合する修飾酵素を同定するために必要に応じてa)及びb)のサイクルを繰り返す工程、
ここで、再度サイクルa)で修飾された酵素は前記サイクルb)を用いて同定した。
第61の態様において、本発明は標的酵素を作成する以下を含む方法を提供する:
a)酵素の変異耐性領域を修飾することにより修飾酵素ライブラリーを作成する工程。ここで、前記酵素は基質認識部位を含有し、触媒活性を有する。従って、修飾酵素の多様性が生み出される;及び
b)類似の条件下で、標的に対するプレ修飾酵素の親和力より大きな親和力をもって標的に結合し、標的に結合している間触媒活性を有する修飾酵素を修飾酵素ライブラリーから選択する工程、
ここで、標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
第62の態様において、本発明は標的酵素を作成する以下を含む方法を提供する:
a)酵素の変異耐性領域を修飾することにより修飾酵素ライブラリーを作成する工程。ここで、前記酵素は基質認識部位を含有し、触媒活性を有する。従って、修飾酵素の多様性が生じる、
b)標的に対するプレ修飾酵素の親和力より大きな親和力をもって標的に結合し、標的に結合している間触媒活性を有する修飾酵素を修飾酵素ライブラリーから同定する工程、
c)標的に対する非修飾酵素の親和力よりも、少なくとも100倍大きな親和力をもって標的に結合する修飾酵素を同定するために必要に応じてa)及びb)のサイクルを繰り返す工程、
ここで、再度サイクルa)で修飾された酵素は前記サイクルb)を用いて同定した。
これらの方法の修飾において、該方法はさらに工程a)と工程b)の間に、触媒活性を有する修飾酵素を選択する工程を含むことができる。これらの方法の他の修飾においては、該方法はさらに工程a)と工程b)の間に、類似の条件下で標的に対するプレ修飾酵素の親和力より大きな親和力をもって標的に結合する修飾酵素を選択する工程を含む。
第63の本発明の態様において、第62の実施態様のプレ標的酵素は第一及び第二の変異耐性配列を含み、第一の変異耐性配列はa)において修飾される。
第64の本発明の態様において、第63の態様の方法はさらに以下を含む:
d)酵素の第二の変異耐性配列を修飾する工程;
e)第二の標的に結合する修飾酵素を選択する工程。
第65の本発明の態様において、第64の態様のe)で選択される修飾酵素は、標的分子に結合している間、触媒活性を示す。
第66の本発明の態様において、第61の態様のプレ標的酵素は第一、第二及び第三の変異耐性配列を含有し、第一の変異耐性配列はa)において修飾される。
第67の本発明の態様において、第61の態様のプレ標的酵素は第一、第二及び第三の変異耐性配列を含有し、第一及び第二の変異耐性配列はa)において修飾される。次に、例えば第一及び/または第二の標的に結合する修飾酵素が選択され得る。
第68の本発明の態様において、酵素は第一、第二及び第三の変異耐性配列を含有し、第一、第二及び第三の変異耐性配列はa)において修飾される。次に、第一、第二及び/または第三の標的に結合する修飾酵素が選択され得る。
第69の態様において、本発明は標的酵素を作成する方法を提供し、以下を含む:
a)修飾酵素が酵素の修飾された第一の変異耐性配列及び修飾された第二の変異耐性配列を含むようにエンコードする組換え核酸分子が形成されるように、修飾された第二の変異耐性配列を有する標的酵素をエンコードする核酸分子を用いて、修飾された第一の変異耐性配列を有する標的酵素をエンコードする核酸分子の組換え工程;
b)修飾酵素を生成するように組換え核酸を発現する工程;及び
c)標的に結合し、前記標的に結合している間触媒活性を示す修飾酵素を選択する工程。
第70の態様において、本発明は標的酵素を作成する方法を提供し、以下を含む:
a)修飾された第二の変異耐性配列を有する標的酵素をエンコードする核酸分子を用いて、修飾された第一の変異耐性配列を有する標的酵素をエンコードする核酸分子の組換え工程、及び修飾酵素が酵素の修飾された第一の変異耐性配列、修飾された第二の変異耐性配列及び第三の変異耐性配列を含むようにエンコードする組換え核酸分子が形成されるように、修飾された第三の変異耐性配列を有する標的酵素をエンコードする核酸分子の組換え工程;
b)修飾酵素を生成するように組換え核酸を発現する工程;及び
c)標的に結合し、前記標的に結合している間触媒活性を示す修飾酵素を選択する工程。
第71の本発明の態様は、標的酵素を作成する方法であり、以下を含む:
a)酵素の変異耐性配列を修飾することにより修飾酵素ライブラリーを生成する工程。ここで、前記酵素は基質認識部位を含有し、触媒活性を有する。従って、修飾酵素の多様性が生じる;及び
b)修飾酵素ライブラリーから、プレ標的酵素の標的に対する親和力より大きな親和力をもって標的に結合する第一及び第二の修飾酵素を選択する工程;
c)第一の修飾酵素をエンコードする核酸及び第二の修飾酵素をエンコードする核酸を組換えして、組換え核酸が第三の修飾酵素をエンコードするように形成される工程;及び
d)類似の条件下でプレ標的酵素の標的に対する親和力よりも大きな親和力をもって標的に結合するため、及び標的に結合している間の触媒活性のために、第三の修飾酵素を分析する工程。
この方法はさらに、工程b)において、プレ修飾酵素の標的に対する親和力よりも大きな親和力をもって標的に結合し、触媒活性を有する第一及び第二の修飾酵素を含むことができる。
第72の本発明の態様は、標的酵素を作成する方法であり、以下を含む:
a)酵素の変異耐性配列を修飾することにより修飾酵素ライブラリーを生成する工程。ここで、前記酵素は基質認識部位を含有し、触媒活性を有する。従って、修飾酵素の多様性が生じる;
b)プレ標的酵素の標的に対する親和力よりも大きな親和力をもって標的に結合し、標的に結合している間触媒活性を有する修飾酵素ライブラリーから修飾酵素を同定する工程、
c)非修飾酵素の標的に対する親和力よりも、少なくとも100倍大きな親和力をもって標的に結合する修飾酵素を同定するために必要に応じてa)及びb)のサイクルを繰り返す工程、
ここで、再度サイクルa)で修飾された酵素は前記サイクルb)を用いて同定した。
第73の本発明の態様は、標的酵素及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤を含有する医薬組成物である。該標的酵素はプロドラッグから生成物に転換させる触媒活性を示し、以下を含有する:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位;
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来である変異配列を含有し、
ii)標的は、類似の条件下でプレ標的酵素ではなく標的酵素に結合する;及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体でない。
第74の本発明の態様は、プロドラッグを生成物に転換させる触媒活性を示す標的酵素であり、以下を含有する:
a)基質認識部位;及び
b)第一の標的に結合する第一の標的部位;及び
c)第二の標的に結合する第二の標的部位、
ここで、
i)各標的部位は対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)標的酵素の第一及び第二の標的に対する親和力は、類似の条件下でプレ標的酵素の第一及び第二の標的に対する親和力よりも大きい。
第一の標的及び第二の標的は同一または異なるものであってもよい。少なくとも1つの標的部位は2または3の変異配列を含む。
第75の本発明の態様は、プロドラッグを生成物に変換する触媒活性を示す標的酵素であり、以下を含有する:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の2つの変異配列を含み、
ii)標的酵素の標的に対する親和力は、類似の条件下でプレ標的酵素の標的に対する親和力よりも大きい;及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体でない。
第76の本発明の態様は、プロドラッグを生成物に変換する触媒活性を示す標的酵素であり、以下を含有する:
a)基質認識部位;及び
b)標的に結合する標的部位、
ここで、
i)標的部位は3つの変異配列を含有し、各変異配列は対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来である;及び
ii)標的酵素の標的に対する親和力は、類似の条件下でプレ標的酵素の標的に対する親和力よりも大きい。
第77の本発明の態様は、プロドラッグを生成物に変換する触媒活性を示す標的β−ラクタマーゼ酵素であり、以下を含む:
a)基質認識部位;及び
b)第一の標的に結合する第一の標的部位;
c)第二の標的に結合する第二の標的部位;及び
d)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)各標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、及び
ii)標的酵素の第一及び第二の標的に対する親和力は、類似の条件下でプレ標的酵素の第一及び第二の標的に対する親和力よりも大きい。
第78の本発明の態様は、プロドラッグを生成物に変換する触媒活性を示す標的β−ラクタマーゼ酵素であり、以下を含む:
a)プロドラッグ認識部位;
b)標的に結合する標的部位、及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は3つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来である;及び
ii)標的β−ラクタマーゼ酵素の標的に対する親和力は、類似の条件下でプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の標的に対する親和力より大きい。
第79の本発明の態様は、プロドラッグを生成物に変換する触媒活性を示すβ−ラクタマーゼ酵素であり、以下を含む:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位、及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は2つの変異配列を含み、各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来である、
ii)標的β−ラクタマーゼ酵素の標的に対する親和力はプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の標的に対する親和力より大きい、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体でない。
第80の本発明の態様は、標的β−ラクタマーゼ酵素及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤を含有する医薬組成物であり、該酵素はプロドラッグを生成物に変換する触媒活性を示し、以下を含有する:
a)基質認識部位;
b)標的に結合する標的部位、及び
c)基質認識部位における配列KTXS、
ここで、
i)標的部位は、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
ii)標的は、類似の条件下でプレ標的β−ラクタマーゼ酵素ではなく標的β−ラクタマーゼ酵素に結合する、及び
iii)標的は単離したモノクローナル抗体でない。
第81の態様は、本発明は改善を必要とする対象の病気の症状の改善方法を提供し、以下を含む
a)標的酵素が標的に結合可能な十分な時間で、治療のため効果的な量の標的酵素を該対象に投与する工程;及び
b)病気の症状の改善に十分な量の該プロドラッグを活性薬剤に変換させるために、所定の量のプロドラッグを該対象に投与する工程。
第82の態様は、本発明は改善を必要とする対象の病気の症状の改善方法を提供し、以下を含む
a)標的酵素が標的に結合可能な十分な時間で、β−ラクタマーゼ触媒活性を有する治療のため効果的な量の標的酵素を該対象に投与する工程;及び
b)病気の症状の改善に十分な量の該プロドラッグを活性薬剤に変換させるために、所定の量のプロドラッグを該対象に投与する工程。
第83の本発明の態様において、プロドラッグがセファロスポリンである。
第84の本発明の態様において、第81の態様の病気が細胞増殖異常、癌、自己免疫疾患または感染症である。
第85の本発明の態様において、第81の態様の活性薬剤が化学療法薬である。
第86の本発明の態様において、第81の態様の標的酵素が全身投与性である。
第87の本発明の態様において、第81の態様の標的が細胞表面分子または腫瘍細胞表面分子である。
第88の本発明の態様において、標的酵素は修飾を有し、対応する非修飾標的酵素の免疫反応と比較して減少した宿主免疫反応を有する。
本発明の組成物及び方法は、従来利用可能であった組成物及び方法に利点を与えるものである。本発明の標的酵素は抗体または抗体断片に結合または融合した類似の酵素よりも小さく、従って、対象に投与した場合、標的に結合しない標的酵素はより素早く、より完全に対象の系から除去され、より安全でより効き目のある適当なプロドラッグの投与を可能とする。さらに、それらのサイズの減少により、免疫原性をより小さくし、標的部位へのより多くの接触を可能とする。標的酵素を作成するための本発明の方法は従来の公知の方法より優れている。なぜなら、1つの特徴として、単離ペプチドまたはより大きなタンパク質若しくはポリペプチドの一部として標的に対して結合するペプチドのプレ選択の必要性というよりもむしろ、本発明は酵素との関連で標的に対する酵素中の変異配列の結合の選択を可能としているからである。
本発明の詳細な説明
別に定めていない場合、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を持つ。全ての引例は全目的において参考として組み込まれる。ここに記載される方法及び物質に類似または同等のいずれの方法及び物質も本発明を実施または試験する際に用いることができるが、好ましい方法及び物質を記載した。本発明の目的のために、次の用語を以下に定義する。
一本鎖核酸配列は、特に示さない限り、5’から3’に記載する。特に示さない限り、各二本鎖核酸配列の先端ストランドは5’から3’に記載し、末端ストランドは3’から5’に記載する。全ペプチド配列は、特に示さない限り、N末端からC末端を記載する。標準的なアミノ酸及び核酸の一文字略記を、特に示さない限り、全体にわたって使用する。アミノ酸配列中、“X”はいずれのアミノ酸残基によっても、好ましくは天然アミノ酸残基によって占有され得る位置を示す。
“標的酵素”の語は、触媒活性を示す酵素であって、基質認識部位を含み、及び1つ以上の標的部位を含み、各標識部位が1つ以上の変異配列を含むように、かつ類似の条件下で対応するプレ標的酵素が標的に結合するよりも高い親和力をもって結合するようにプレ標的から修飾される酵素を指す。本発明の標的酵素は、類似の条件下で対応するプレ標的酵素が結合しない標的に結合する修飾酵素を含む。また、本発明の標的酵素は、類似の条件下で対応するプレ標的酵素よりも約10倍、10倍、10倍、10倍、10倍またはそれより高い親和力をもって標的に結合する修飾酵素を含む。本発明の標的酵素はポリペプチドまたは(例えば、ヒスチジンタグタンパク質または融合タンパク質中において)プレ標的酵素のN−またはC−末端に結合するその他の標的結合分子からなる標的部位を有する酵素、モノクローナル抗体のみが標的である標的酵素、またはプレ標的酵素によって触媒反応を起こした基質に対するプレ標的酵素の結合を増加または最適化することにより作成される標的酵素を含まない。しかしながら、本発明の標的酵素は、さらにポリペプチド、またはN−若しくはC−末端に結合するその他の標的分子を含むように修飾されることができる。また、標的酵素は、標的酵素によって触媒作用を及ぼした基質に対する結合を変化または最適化するためにさらに修飾されることもできる。
“プレ標的酵素”の語は、触媒活性を有し、基質認識部位及び変異耐性配列を含有するタンパク質を指す。タンパク質は、例えば、天然、修飾、人工、キメラまたは融合タンパク質であってもよい。
“標的(ターゲット)”の語は、結合させることができるタンパク質の構成要素をいう。
“標的部位”の語は、標的に結合する標的酵素の一部分をいう。標的部位は1つ以上の変異配列を含有する。それは、他のタンパク質から複製され、標的酵素に導入されたドメインと結合するタンパク質から完全に成るわけではなく、プレ標的酵素のタンパク質結合ドメイン中の変異配列から完全に成るわけでもなく、完全に基質認識部位から成り立つわけでもない。
“変異配列”の語は、プレ標的酵素の変異耐性配列と同一ではないが、それに由来する1つ以上の連続するアミノ酸残基をいう。変異配列は変異耐性配列に由来し、ここで該変異配列は該変異耐性配列の挿入、欠失、置換または1つ以上のアミノ酸残基の置換によりそれに対応する変異耐性配列と異なる。従って、変異配列は対応する変異耐性配列との配列同一性が0%以上であるが100%より少なく、該変異耐性配列より短くも長くもなることができ、または同じ長さになることができる。
“変異耐性配列”の語は、酵素の触媒活性を不活性化させることなく、異なる配列に修飾されることができる酵素中の1つ以上の連続アミノ酸残基をいう。変異耐性配列は、例えば、1つ以上の異なるアミノ酸残基によって置換されることができる1つ以上のアミノ酸残基、または1つ以上のアミノ酸残基の挿入により分割されることができる2つのアミノ酸残基となり得る。
“基質認識部位”の語は、酵素によって触媒反応を起こした基質に接触する酵素のアミノ酸残基をいう。
“タンパク質結合ドメイン”の語は、第2のタンパク質の1つ以上のアミノ酸残基に接触するタンパク質のアミノ酸残基をいい、該タンパク質結合ドメインは基質認識部位ではない。
“変異配列のレパートリー”は、多数の変異配列をいい、各変異配列はプレ標的酵素の同じ配列を修飾するために使用することができる。
“組換え体ライブラリー”は、同じプレ標的酵素由来である多数のタンパク質である。組換え体ライブラリーの構成要員は同じ定常断片を共有するが、異なる変異配列の組合わせを含む。
他に示さない限り“タンパク質”の語は、ここでは“ペプチド”及び“ポリペプチド”の語と置換え可能に用いられ、ペプチド結合で結合したアミノ酸残基を2つ以上含有する分子をいう。
“細胞”、“細胞株”及び“細胞培養”の語は、置換え可能に用いることができ、このようなすべての記載は子孫を含む。従って、“形質転換体(transformants)”または“形質転換細胞”は、一次形質転換細胞及び転写の数に関係なく細胞由来の培養物を含む。全ての子孫が、意図的または無意図的な突然変異により、DNAの内容まで正確に同一であるとは限らない。最初に形質転換された細胞中スクリーニングされたものと同じ機能性を有する突然変異体である子孫は、形質転換体の定義に含まれる。細胞は原核細胞であっても真核細胞であってもよい。
“制御配列”とは、特定の宿主生物中動作可能に連結したコード配列の発現のために必要なDNA配列をいう。原核生物に適した制御配列は、例えばプロモーター、任意のオペレーター配列、リボソーム結合部位、陽性逆調節成分(positive retroregulatory elements)(例えば、引例によって組み込まれる米国特許第4,666,848を参照)及び可能な他の配列を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られる。
“発現クローン”とは、動作可能な連結中に所望のコード配列及び制御配列を含むDNA配列をいい、従って、これらの配列を用いて形質転換された宿主はエンコードされたタンパク質を生成することができる。“発現系”とは、発現クローンを用いて形質転換された宿主をいう。形質転換をもたらすために、発現クローンはベクター上に含まれてもよい;しかしながら関連DNAは宿主染色体に組み込まれることもできる。
“遺伝子”とは、タンパク質、ポリペプチドまたは前駆体の生成のために必要な制御及びコード配列を含んだDNA配列をいう。
“動作可能な結合”とは、制御配列がコード配列によってエンコードされたタンパク質の発現を促進するために機能するようなコード配列の位置決めをいう。従って、制御配列に“動作可能に結合する”コード配列とは、コード配列が制御配列の指示を受けて発現することができる構成をいう。
ここで用いられる“オリゴヌクレオチド”の語は、2以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含んだ分子として定義される。正確な大きさは多くの因子によって決まり、言い換えると最終的な機能またはオリゴヌクレオチドの使用によって決まる。オリゴヌクレオチドは適当な方法で調製することができ、例えば、適当な配列のクローニングや制限、及びNarangら、1979年、Meth.Enzymol.68:90−99のリン酸トリエステル法;Brownら、1979年、Meth.Enzymol.68:109−151のリン酸ジエステル法;Beaucageら、1981、Tetrahedron Lett.22:1859−1862のジエチルホスホラミダイト法;及び米国特許第4,458,066号の固体担体法のような方法による直接化学合成を含む。合成方法の概説は、引例として組み込まれるGoodchild、1990年、Bioconjugate Chemistry 1(3):165−187に記載されている。
ここで用いられる“プライマー”の語は、プライマー伸長法が開始される条件下に置いたときに、合成の開始点として振舞うことができるオリゴヌクレオチドをいう。核酸らせん構造に相補的なプライマー伸長物質の合成は、適当な緩衝液中適当な温度で、必須の4つの異なるヌクレオシド・トリホスフェード及びDNAポリメラーゼの存在下で開始される。“緩衝液”は、所望のpHに調節された、共同因子(2価金属イオンなど)及び塩(適当なイオン強度を与えるため)を含む。
遺伝子配列(同等なものとして、コード鎖のサブ配列)の非コード鎖(non−coding strand)をハイブリダイズするプライマーはここでは“上流”または“前方(forward)”プライマーと呼ぶ。遺伝子配列のコード鎖をハイブリダイズするプライマーはここでは“下流”または“逆方向”プライマーと呼ぶ。
“制限エンドヌクレアーゼ”及び“制限酵素”とは、特定のヌクレオチド配列またはその近くのDNA二本鎖を切断する、一般的には細菌性起源の酵素をいう。
類似の側鎖を持つアミノ酸残基の系統群は当業界で定義されてきた。これらの系統群は基本的な側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電されていない極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン)、非極性側鎖(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン)、β−分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。標準の3文字または1文字のアミノ酸略記をここでは用いる。
ここで用いられるように、アミノ酸配列中の“点変異”は単一のアミノ酸置換、単一のアミノ酸挿入または単一のアミノ酸欠失のいずれかをいう。点変異は、エンコードするDNA中の適当なコドン変化によりアミノ酸配列に導入されるのが好ましい。配列中の個々のアミノ酸はここではANとして表され、Aは配列中のアミノ酸のための標準1文字記号であり、Nは配列中の位置である。アミノ酸配列内の突然変異はここでは、A、NAとして表され、Aは非変異タンパク質配列中のアミノ酸を表す標準1文字記号であり、Aは変異タンパク質配列中のアミノ酸を表す標準1文字記号である。さらに、Nはアミノ酸配列中の位置である。例えば、G46D変異体はアミノ酸46位置におけるグリシンからアスパラギン酸への変化を表す。アミノ酸の位置は変異を包含する領域を生じたタンパク質の全長配列に基づいて番号がつけられる。DNA配列中の点変異及びヌクレオチドの表示は類似している。
ここで用いられるように、“キメラ”タンパク質とは、アミノ酸配列が少なくとも2つの異なるタンパク質由来であるアミノ酸配列の融合結果物を表すタンパク質をいう。キメラタンパク質は、アミノ酸配列の直接操作によって生成されるものではなく、むしろ、キメラアミノ酸配列をエンコードするキメラ遺伝子から発現されることが好ましい。
“宿主免疫反応”とは、免疫原性物質との接触に対する宿主生物の免疫系の反応をいう。宿主免疫反応の具体的側面は例えば、抗体生成の増加、T細胞活性化、単球活性化または顆粒球活性化が挙げられる。これらの各側面は標準的なin vivoまたはin vitroの方法を用いて検出及び/または測定することができる。
“Ab”または“抗体”とは、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、免疫グロブリンまたは抗体の全体または標的抗原に結合する免疫グロブリン分子の機能断片をいう。そのような機能性があるとされている例は、完全な抗体分子、抗体断片を含み、例えばFv、1本鎖Fv、相補性決定領域(CDR)、V(L鎖可変領域)、V(H鎖可変領域)及びこれらの組合わせ、または標的抗原に結合できる免疫グロブリンペプチドのその他の機能部分である。
“dox”及び“ドキソルビシン”は公知の薬物であり、及びその誘導体をいう。誘導体は、限定されないが、リンカーまたはプロドラッグのプロ部分への結合、効能の増加、結合の増加、毒性の減少等のような多様な目的のために作られる。ドキソルビシンのためのCAS登録番号は25316409である。分子式はC2729NO11・HCl、分子量は580ドルトンである。
“PEG”及び“ポリエチレングリコール”は公知の化合物であり、一般式(CO)・HOである。PEGのCAS番号は25322−68−3である。当業界で周知のとおり、PEGは異なる分子量の混合物として一般的に提供される。例えば、PEG−8000は8000ドルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールの混合物である。
“プロドラッグ”とは、1つ以上の酵素的に触媒作用を及ぼす工程によってプロドラッグと比較して増加した薬理活性を持つ活性化合物へと変化させられる化合物をいう。プロドラッグはプロ部分または不活性部分及び薬物または活性薬物を含むことができる。任意的に、プロドラッグはリンカーを含むこともできる。例えば、プロドラッグは酵素によって開裂され、活性薬物を放出することができる。さらに具体的な例としては、標的酵素によりプロドラッグが開裂することで、活性薬物が標的酵素に結合する標的付近に放出される。“プロ部分”及び“不活性部分”とは、そのプロドラッグが変化した後も不活性であるプロドラッグの部分をいう。例えば、プロドラッグがペプチドにより活性薬物に橋かけするPEG分子を含有する場合、プロ部分はペプチドリンカー部分があってもなくても、PEG部分である。“リンカー”とは、プロドラッグのプロ部分とプロドラッグの活性部分の接続手段をいう。一般的には、必須ではないが、リンカーは薬物とプロ部分を結合するいかなる成分であってもよいが標的酵素によってペプチド開裂可能なものである。“薬物”及び“活性薬物”とは、プロドラッグの活性部分をいう。標的酵素による開裂後、活性薬物は標的の腫瘍、細胞、病原菌またはその他の病原体上で治療的に働く。他の例としては、プロドラッグは活性酵素に化学的に修飾され、例えば酸化、還元、リン酸化、脱ホスホリル化、ある成分の付加などによって修飾される。別の例としては、プロドラッグは酵素によって中間化合物に変化させられる。中間化合物は自然発生的に、他のタンパク質または対象中の分子との接触、対象に対する1つ以上の天然酵素の接触、または対象に対して投与された1つ以上の付加的活性酵素との接触のいずれかによって活性薬物に変化する。
“血清アルブミン”の語は、血液タンパク質と同じものとして一般的に知られる。“BSA”とはウシ血清アルブミンであり、“HSA”とはヒト血清アルブミンである。
“基質補助触媒(Substrate−assisted catalysts)”及び“SAC”とは、基質が酵素突然変異体と一緒になってその触媒作用を補助するように修飾触媒基またはその均等物を提供する基質に対して酵素が触媒選択性を有するように修飾される工程をいう。“SAC標的酵素”とは、標的細胞、腫瘍、病原菌またはその他の病気を引き起こす要因に対してさらに修飾されたSAC中で使用される酵素をいう。“SACプロドラッグ”とは、その一部が、一般的にはリンカーが、SAC中で使用される基質であるプロドラッグをいう。
“定常断片(constant segment)”とは、高相同性(80%より大きい相同性)を組換え体ライブラリーのすべての構成員の間で共有しているプレ標的酵素の配列の一部分をいう。
“%配列ホモロジー”の語はここでは、“%ホモロジー”、“%配列同一性”及び“%同一性”の語と置換え可能であり、配列アラインメントプログラムを用いて位置調節した場合の2つ以上のペプチド配列間のアミノ酸配列同一性のレベルをいう。例えば、ここで用いられるように、80%ホモロジーとは確立したアルゴリズムによって同定される80%配列同一性と同じであることを意味し、従って、所定の配列の相同物は所定の配列の長さにわたって80%より大きな配列同一性を有する。配列同一性のレベルの典型的な例は、限定されないが、60、70、80、85、90、95、98%またはそれ以上の所定の配列に対する配列同一性を含む。
2つの配列間の同一性を決定するため使用することができる典型的なコンピュータープログラムとしては、限定されないが、BLAST関連プログラム、例えば、BLASTN、BLASTX、及びTBLASTX、BLASTP及びTBLASTNであり、インターネット上で公に入手可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)。Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−10(特に公開された初期設定値、すなわちパラメーターw=4、t=17を参照)、及びAltschul et al.,1997年、Nucleic Acids Res.,25:3389−3402も参照されたい。配列検索は、GenBankのタンパク質配列及びその他の公共のデータベース中のアミノ酸配列に関連する所定のアミノ酸配列を評価する場合には、一般的にBLASTPプログラムを用いて行う。BLASTXプログラムはGenBankのタンパク質配列及びその他の公共のデータベース中のアミノ酸配列に対するすべての読み取りフレーム中で翻訳された核酸配列を検索するために用いるのが好ましい。BLASTP及びBLASTXの両方とも11.0のギャップオープンペナルティ及び1.0のギャップ延長ペナルティ(extended gap penalty)の初期値パラメーターを用いて実行し、BLOSUM−62マトリックスを利用する。Altschul et al.,1997を参照されたい。
2つ以上の配列間の“%同一性”を決定するために選択された配列の好ましいアラインメントは例えば、MacVectorのバージョン6.5のCLUSTAL−Wプログラムを用いて実行し、10.0のギャップオープンペナルティ等の初期値パラメーター及びBLOMSUM30類似マトリックスを用いて操作する。
“ヒット密度(Hit density)”とは、ライブラリー中の有用なクローンの割合である。
“ハパキソマー(Hapaxomer)”とは、固有の末端を生じる制限エンドヌクレアーゼである。Berger,S.L.Anal Biochem222:1(1994)を参照されたい。
標的酵素
本発明の標的酵素は、触媒活性を示し、基質認識部位を含有しプレ標的酵素から修飾されて1つ以上の標的部位を含んだ酵素であり、各標的部位は1つ以上の変異配列を含み、さらに類似の条件下で対応するプレ標的酵素が標的に結合するよりも高い親和力をもって標的に結合する。実施形態の1つにおいては、本発明の標的酵素はプレ標的酵素の変異耐性配列の位置においてのみ対応するプレ標的酵素と異なる。
本発明の標的酵素は、類似の条件下で対応するプレ標的酵素が結合しない標的に対して結合する修飾酵素を含む。例えば本発明は、対応するプレ標的β−ラクタマーゼがストレプタビジン(streptavidin)に結合しないような条件下で、ストレプタビジンに結合する標的β−ラクタマーゼ酵素を提供する。本発明の標的酵素は、さらに、対応するプレ標的酵素よりも類似の条件下で約10倍、10倍、10倍、10倍、10倍またはそれ以上の高い親和力をもって標的に対して結合する修飾酵素を含む。本発明の標的酵素はポリペプチドまたはプレ標的酵素のN−またはC−末端に対して結合するその他の標的結合分子(例えば、ヒスチジンのタグタンパク質や融合タンパク質中)からなる標的部位を1つしか持たない酵素、標的がモノクローナル抗体のみである標的酵素、またはプレ標的酵素により触媒反応を及ぼした基質に対するプレ標的酵素の結合を増加または最適化することによって作られた標的酵素は含まない。しかしながら、本発明の標的酵素をポリペプチドまたはN−またはC−末端に対して結合するその他の標的分子を含むようにさらに修飾することができる。標的酵素をさらに、標的酵素により触媒反応を及ぼした基質に対する結合を変化または最適化させるために修飾することができる。
本発明の標的酵素は1つ以上の標的部位を含み、例えば2、3、4、5、6、7、9、10またはそれ以上の標的部位であり、各部位は1つ以上の変異配列を含み、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10またはそれ以上の変異配列を含む。標的酵素中の標的部位の存在は、類似の条件下で、標的に結合する対応するプレ標的酵素よりも高い親和力をもって標的酵素が標的に結合することを可能にする。
標的酵素は、例えば、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下または約1nM以下のKで標的に結合できる。
より好ましい実施形態は、各変異配列は隣接の変異配列から酵素の一次配列中の1つ以上の定常断片によって隔てられている。しかし、折り畳みタンパク質中のその他の各変異配列にはそれぞれ接近している。この配列は組換え部位を定常断片に導入することができるので組換えを簡単にする。さらに、このような配列は異なる可変断片間の直接的な相互反応の機会を減少させる。
変異耐性配列は、例えば、単一アミノ酸であってもよく、または約100、90、80、70、60、50、40、30、20、10または5つより少ないアミノ酸残基の長さの配列としてもよい。変異耐性配列は折り畳みタンパク質のループであってもよく、例えば、溶媒が接近可能なループである。
変異配列は例えば、0〜約50のアミノ酸残基であってもよい。好ましい実施形態は、変異配列が約0〜約20、0〜約14、0〜10、または3〜20の範囲のアミノ酸残基の長さである。“0”アミノ酸残基とは、変異耐性配列が取り除かれた状態をいう。
標的酵素の標的部位は単にプレ標的酵素の基質認識部位のみから成るものではない。好ましくは、標的部位はプレ標的酵素の三次構造中の触媒部位と重複しない。従って、1つの実施形態では、標的部位はプレ標的酵素の触媒部位から少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8または9オングストロームである。
上述の通り、本発明の標的酵素は触媒活性を示す。一般的に、標的酵素の触媒活性は対応するプレ標的酵素の触媒活性に相当する。従って、標的酵素の触媒活性は質的に対応するプレ標的酵素の触媒活性である。いったん標的酵素が発生すると、しかしながら、その触媒活性はさらに修飾されることができる(例えば、最適化または変化させる)。
いかなる酵素も本発明の目的のためにプレ標的酵素として働くことができる。一の実施形態において、対応するプレ標的酵素は標的酵素に持たせたい触媒活性を有するものから選択される。好ましい実施形態は、プレ標的酵素は基質を所望の生成物に変化させるものから選択する。より好ましい実施形態は、基質は生成物が有する性質を欠く。さらに好ましい実施形態は、該性質は化学的または物理的性質である。他のより好ましい実施形態は、基質は対象中の生成物が原因である効果の原因とはならない。さらに別の実施形態は、基質は異常細胞、病変組織または罹病器官の栄養となる。さらに別の実施形態は、該効果は生理学上の効果である。さらに別の好ましい実施形態は、生理学的効果は細胞の死である。最も好ましい実施形態は、基質はプロドラッグであり、生成物は活性薬物である。
1つの実施形態において、標的酵素は治療的投与のために用いられ、例えば、標的酵素プロドラッグ治療用途の一部としてである。分子量約45,000ドルトン以下の巨大分子が腎臓の糸球体ろ過により血液の循環から急速に取り除かれることは公知である。Greenwald et al.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 17:101(2000)を参照されたい。従って、1つの側面において、本発明は糸球体ろ過により哺乳類宿主の血液循環から除去されることが可能である分子量を有する標的酵素を提供する。より短い循環半減期を持つことに加えて、より小さい標的酵素は例えば腫瘤のような特定の型の標的における抗体−酵素結合よりも素早く拡散することが知られている。in vivoの適用において、標的酵素は好ましくは比較的小さいサイズで、好ましくは約45kDよりも小さく、特定の高い活性を有し、生理学関連条件下(例えば、約25〜40℃及びpH約5.5〜約7.5)で高活性であり、治療対象内において阻害因子、酵素基質、または内生酵素系から受ける障害が最小限である。
他の側面においては、標的酵素は分子量が5kDより大きく、しかし10kD、15kD、20kD、25kD、30kD、35kD、40kD、45kD、50kD、55kD、または60kD、75kD、100kD、150kD、200kD、250kD、300kD、350kD、400kD、450kDまたは500kDより小さい。
いくつかの実施形態において、酵素は異常な生理学的状態の異常細胞中で高活性であることが好ましい。例えば、より低いpHの癌細胞中である。特に関心があるのは、活性化プロドラッグの治療研究に用いることができる酵素である。活性の異なる触媒形態を持つ多数の酵素はプロドラッグの活性化に用いられてきた。例えば、Melton&Knox Enzyme−prodrug strategies for cancer therapy(1999)及びBagshawe et al.,Curr Opin Immunol 11:579(1999)を参照されたい。これらの酵素は利用可能に修飾でき、例えば、これら酵素のプロドラッグを活性化する能力を維持しつつターゲティング能力をタンパク質に組み込む本発明の方法である。別の実施形態においては、代謝産物から毒物を発生する酵素は標的部位を含むように修飾される。ここで使用される語としての標的酵素ではないが、Christofidou―Solomidou et al.,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 278:L794(2000)は、例えば、免疫標的酵素としてグルコース由来の過酸化水素を発生するブドウ糖酸化酵素の使用を記載している。
本発明の標的酵素を作成するために使用することができるプレ標的酵素の種類の例としては、限定されないが、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、β−ラクタマーゼ、アスパラギナーゼ、酸化酵素、加水分解酵素、リアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、アルドラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転移酵素、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、ヌクレオチダーゼ、ラッカーゼ、還元酵素、及び類似物が挙げられる。例えば、2001年9月12日に出願された同時係属中の米国特許出願番号第09/954,385号を参照されたい。また、その全体は引例として組み込まれる。従って、本発明の標的酵素は、例えば、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、β−ラクタマーゼ、アスパラギナーゼ、酸化酵素、加水分解酵素、リアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、アルドラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転移酵素、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、ヌクレオチダーゼ、ラッカーゼまたは還元酵素活性、または類似物を示すことができる。使用できる酵素の好ましい例は、下記に記載するプロドラッグを活性化できるものである。
本発明の標的酵素を作成するために使用できる具体的なプレ標的酵素の例は、限定されないが、クラスA、B、CまたはDβ−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(Benito et al.,FEMS Microbiol.Lett.123:107(1994)参照)、フィブロネクチン、ブドウ糖酸化酵素、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(Napolitano et al.,Chem.Biol.3:359(1996)を参照)及び、組織プラスミノゲン活性化因子(Smith et al.,J.Biol.Chem.270:30486(1995)参照)が挙げられる。
好ましい実施形態においては、標的酵素はラッカーゼではない。より好ましい実施形態においては、標的酵素はビリルビン酸化酵素ではない。他の好ましい実施形態においては、標的酵素はフェノール酸化酵素ではない。別のより好ましい実施形態においては、標的酵素はカテコール酸化酵素ではない。より好ましい実施形態においては、標的酵素は、電子供与体がフェノール成分で電子受容体が分子酸素または過酸化水素である触媒酸化還元反応を起こすことができない。
好ましい実施形態において、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性と著しく異なるものではない。すなわち、変異配列は酵素の触媒活性を著しく増加または減少させたりしない。他の好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約1%〜約100%である。変異配列は、実際、プレ標的酵素の100%の触媒活性よりも大きい触媒活性、例えば約125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%または500%までの触媒活性を示す標的酵素を結果として生じることができると考えられる。より好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約10%〜約100%である。より好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約20%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約30%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約40%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約50%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約60%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約70%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約80%〜約100%である。さらに好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性はプレ標的酵素の触媒活性の約90%〜約100%である。
他の好ましい実施形態は、標的酵素の触媒活性は標的の結合によっては著しく影響を受けない。すなわち、標的に結合している標的酵素は標的に結合していない標的酵素と大体同じ触媒活性を有する。別の好ましい実施形態は、標的に結合している標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約10%〜約500%である。より好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約20%〜約450%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約30%〜約400%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約40%〜約350%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約50%〜約300%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約60%〜約250%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約70%〜約200%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約80%〜約150%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約90%〜約125%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約95%〜約110%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約60%〜約165%である。さらに好ましい実施形態は、標的に結合する標的酵素の触媒活性は標的に結合していない標的酵素の触媒活性の約100%である。
本発明の他の側面は、標的に結合している間、プレ標的酵素の触媒活性に比較して例えば約1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、500%、750%、1,000%、1,500%、2,000%、2,500%または5,000%大きい触媒活性を示す標的酵素を提供する。
プレ標的酵素
標的酵素を作成するために用いられるプレ標的酵素は、触媒活性及び1つ以上の変異耐性配列を有し、類似の条件下で標的酵素が結合する標的に特異的に結合しない、いかなる酵素、酵素断片または酵素誘導体であってもよい。酵素中の変異耐性配列を同定する方法は以下に教示する。プレ標的酵素は例えば、1つより多くの活性を有することができる。例えば、プレ標的酵素は1つより多くの触媒活性を有し、または1つ以上の触媒活性及び1つ以上の結合活性を有することができる。好ましい実施形態としては、プレ標的酵素は天然酵素である。他の好ましい実施形態は、変異体であるか、そうでなければ遺伝学的に改変されたタンパク質である。別の好ましい実施形態としては、キメラまたは融合タンパク質である。別の好ましい実施形態としては、人為的に作られた酵素である。
1つの実施形態において、プレ標的酵素は、該プレ標的酵素由来の標的酵素の活性に影響を与えるために用いることができる刺激に対して応答性がより良く、または悪くなるように修飾または進化させられたものを選択する。好ましい実施形態としては、刺激は制御できるものであり、酵素の活性の制御を可能とするものである。特に好ましい実施形態は、刺激はpHである。多くの固形癌は健康な組織と比較して体内のpHを低減させ、この違いはプレ標的酵素由来の標的酵素を活性化させるために腫瘍部位に選択的に利用できる。別の好ましい実施形態は、酵素は温度の上昇または減少により活性化される。様々な組織間のそのような温度の違いは自然に起こり、または例えばマイクロ波を用いて引き起こすこともできる。温度及びpHは、プレ標的酵素を活性化させるために選択的に用いることができる単に刺激の例示として与えたものである。
プレ標的酵素の供給源
1つの実施形態において、プレ標的酵素は自然源の酵素由来のものであり、限定されないが、細菌、古細菌、植物、菌類または動物が挙げられる。好ましい実施形態においては、プレ標的酵素は標的酵素が使われる予定の種由来の酵素である。他の好ましい実施形態は、プレ標的酵素は哺乳動物酵素または哺乳動物酵素の触媒活性断片である。さらに好ましい実施形態は、プレ標的酵素は霊長類酵素または霊長類酵素の触媒活性断片である。最も好ましい実施形態は、プレ標的酵素はヒト酵素またはヒト酵素の触媒活性断片である。別の最も好ましい実施形態は、プレ標的酵素は遺伝学的に改変または修飾されたヒト酵素またはヒト酵素の触媒活性断片である。他の最も好ましい実施形態は、プレ標的酵素はヒト酵素の全てまたは一部を含んだ融合またはキメラタンパク質である。
1つの実施形態において、プレ標的酵素はラッカーゼではない。例えば、1つの実施形態において、プレ標的酵素はビリルビン酸化酵素、フェノール酸化酵素、カテコール酸化酵素ではなく、または電子供与体がフェノール化合物であり、電子受容体が分子酸素または過酸化水素である触媒酸化還元反応を可能とする酵素ではない。
慢性的ADEPTプロトコルの存在に対する重大な障害は抗体−酵素結合が対象の免疫反応を誘い出すということである。そのような反応は繰り返しの治療を妨げる。なぜなら、皮肉なことに、免疫系は抗体−酵素結合を該結合が標的に到達する前に血液循環から取り除いてしまうからである。最近になって、ヒトまたはヒト化抗体の生成において著しい進展が見られる。しかしながら、抗体−酵素結合中の抗体に対して結合する酵素の免疫原性の問題は克服されていない。
ヒト対象を標的とする標的酵素を開発するためのプレ標的酵素としてのヒト酵素の使用は、標的酵素に対する免疫反応の危険性を大いに減少させる。しかしながら、ヒト酵素の使用はそれ自身の問題を発生させる。具体的には、天然ヒト酵素によって活性化されたプロドラッグは血液循環を通して至る所に存在するであろうプロドラッグの活性化剤として全身的に投与することは一般的にはできず、所望の標的活性は開始されないであろう。従って、プロドラッグの全身投与を望む場合、天然ヒト酵素によって活性化されないか、活性化がゆっくりであるプロドラッグを使用すべきである。
好ましい実施形態において、プロドラッグは天然ヒト酵素によって活性化されないか、ゆっくりと活性化されるように、しかし例えば、組織分配、半減期または毒性のような好ましい薬理学的特性は有するように設計される。特に好ましい実施形態は、ヒトプレ標的酵素は選択的にプロドラッグを活性化するために修飾される。この修飾は構造に基づく設計、指向性進化(directed evolution)及び化学的修飾の組合わせを用いて達成できる。当業者に評価されるように、修飾は新しい免疫学的エピトープを標的酵素に取り込むリスクを最小限にする方法でなされるべきである。エピトープの導入を避けつつ、酵素が所望の触媒特性を生じるような修飾を選択することを可能とする、エピトープの存在に関して修飾酵素を試験するための利用可能な方法がある。例えば、米国特許第5,750,356号、国際公開WO99/53038号、WO98/5296号、及びWO99/61916を参照されたい。これらはその全体が引例として組み込まれる。
他の好ましい実施形態は、ヒト対象に使用するための標的酵素は非ヒト調達源のプレ標的酵素由来である。好ましい実施形態は、プレ標的酵素はヒト対象中で免疫原性とはならない。より好ましい実施形態は、プレ標的酵素はヒト対象中で免疫反応を引き出さないように“ヒト化”されたものである。
下記により詳しく記載されるように、1つの側面において本発明は標的酵素及び標的酵素の基質であるプロドラッグを対象に対して投与する工程を含んだ対象を治療する方法を提供する。本発明のこの側面において有用であるプレ標的酵素は、限定されないが、リン酸塩含有プロドラッグをフリードラッグ(free drug)に変化させるのに有用であるアルカリ・ホスファターゼ、硫酸塩含有プロドラッグをフリーラッグに変化させるのに有用であるアリールスルファターゼ、非毒性5−フルオロサイトシンを抗癌剤に変化させるのに有用であるシトシン・デアミナーセ、5−フルオロウラシル、ペプチド含有プロドラッグをフリードラッグに変化させるのに有用であるセリンプロテアーゼ、サーモリシン、ズブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)のようなプロテアーゼ、Dアミノ酸置換体を含んだプロドラッグを変化させるのに有用であるDアラニルカルボキシペプチダーゼ、グリコシル化プロドラッグをフリードラッグに変化させるのに有用であるβ−ガラクトシダーゼのような糖質分裂酵素及びノイラミニダーゼ、β−ラクタム含有誘導薬物(drug derivatized)をフリードラッグに変化させるのに有用であるβ−ラクタマーゼ、及びフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基を用いてそれぞれ、誘導された薬物をアミン窒素においてフリードラッグに変化させるのに有用であるペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼのようなペニシリンアミダーゼが挙げられる。あるいは、アブザイムとしても当業界に知られる、酵素活性を有する抗体は本発明のプロドラッグを活性フリー薬物に変化させるために使用することができる(R.J.Massey,Nature,328,pp.457−458(1987))。
下記の詳細な記載は特定のものを表しているが、本発明の標的酵素の種類を限定するものではない。ここで以下に教示されるように、他に関係のあるいかなる酵素または酵素の種類も下記に記すように標的酵素を生成するために類似の形態で利用することができる。
β−ラクタマーゼ
1つの実施形態において、本発明は標的β−ラクタマーゼ(BLA)酵素を提供する。好ましい実施形態において、標的BLA酵素は基質認識部位及び標的に結合する標的部位を含み、標的部位は1つ以上の変異耐性配列由来の1つ以上の変異配列を含む。
さらに好ましい実施形態は、変異耐性配列は下記に定義されるループA、ループB、ループC、ループD及びループEから成る群より選択される。
他の好ましい実施形態は、標的BLA酵素は以下の実施例に記載する分析法を用いたニトロセフィンに対して約0.01U/pmolより大きい特異的活性を持つ。より好ましい実施形態は、特異的活性は約0.1U/pmolより大きい。最も好ましい実施形態は、特異的活性は1U/pmolより大きい。好ましくは、これらの特異的活性は標的に結合するときの標的BLAの特異的活性をいう。
BLA酵素はグラム陰性及びグラム陽性細菌中の両方に広く分布している。BLAは周知である。BLA配列の代表的な例を図1に表す。BLA酵素は特異性において多様であるが、β−ラクタムを加水分解して置換β−アミノ酸を生成する共通点を有する。従って、これらはβ−ラクタムを含有する抗生物質に対して耐性を与える。BLA酵素は哺乳類にとって内生ではないので、阻害因子、酵素基質または内在酵素系から受ける妨害は最小限となる(プロテアーゼとは異なる、下記参照)。従って、特に治療上の投与として適している。さらに、BLA酵素はサイズが小さいので(エンテロバクター・クロアカ由来のBLAは43kDのモノマー;大腸菌由来のBLAは30kDのモノマー)、及び基質に対して高い特異的活性を持ち、中性pH及び37℃において最適な活性を有するので本発明の治療方法に適している。Melton et al.,Enzyme−Prodrug Strategies for Cancer Therapy、Kluwer Academic/Plenum Publishers、New York(1999)を参照されたい。
β−ラクタマーゼはその配列に基づいて4つのクラスに分割される。Thomson et al.,2000、Microbes and Infection 2:1225−35を参照されたい。セリンβ−ラクタマーゼは3つのクラスに再分割される:A(ペニシリナーゼ)、C(セファロスポリナーゼ)及びD(オキサシリナーゼ)。クラスBβ−ラクタマーゼは亜鉛含有または金属βラクタマーゼである。いかなるクラスのBLAも本発明の標的酵素を生成するために利用できる。
1つの実施形態において、本発明は基質認識部位に配列YXNを含む標的β−ラクタマーゼを提供する(全体にわたって、“X”は任意のアミノ酸残基である)。他の実施形態において、標的βラクタマーゼはその活性部位に配列RLYANASIを含む。別の実施形態は、標的β−ラクタマーゼは配列RLYANASIと1、2または3つのアミノ酸残基において異なる配列をその活性部位に含む。好ましくは、その違いが保存アミノ酸残基の置換である。しかしながら、挿入、欠失及び非保存アミノ酸置換も含まれる。
1つの実施形態において、本発明はその基質認識部位に配列KTXSを含む標的β−ラクタマーゼを提供する。他の実施形態において、標的β−ラクタマーゼはその活性部位に配列VHKTGSTGを含む。別の実施形態において、標的β−ラクタマーゼは1、2または3つのアミノ酸残基が配列VHKTGSTGと異なる配列をその活性部位に含む。好ましくは、この違いは保存アミノ酸残基の置換である。しかしながら、挿入、欠失及び非保存アミノ酸置換も含まれる。
1つの実施形態において、本発明はその基質認識部位に配列YXN及びKTXSを含んだ標的β−ラクタマーゼを提供する。他の実施形態において、標的β−ラクタマーゼは配列VHKTGSTG及びRLYANASIをその活性部位に含む。別の実施形態においては、標的β−ラクタマーゼは1、2または3つのアミノ酸残基において配列VHKTGSTG及びRLYANASIと異なる配列をその活性部位に含む。好ましくは、この違いは保存アミノ酸残基の置換である。しかしながら、挿入、欠失及び非保存アミノ酸置換も含まれる。
1つの実施形態において、本発明の標的酵素に対応するプレ標的酵素は図1のアミノ酸配列を含むβ−ラクタマーゼである。このような実施形態において、本発明の標的β−ラクタマーゼは図1に表される配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上の割合で等しい(しかし100%ではない)。ある実施形態では、標的β−ラクタマーゼ酵素のアミノ酸配列は酵素の変異耐性配列内においてのみ図1に表されるアミノ酸配列と異なる。
他の実施形態において、β−ラクタマーゼプレ標的酵素のアミノ酸配列は50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上の割合で図1の配列と等しく、本発明の標的酵素は限定されないが、この配列に由来する。このような実施形態において、標的酵素は酵素の変異耐性配列内においてのみβ−ラクタマーゼプレ標的酵素と異なる。
別の実施形態において、プレ標的酵素をエンコードする核酸は、極めてストリンジェントな条件下で図1のアミノ酸配列をエンコードする核酸に対して相補的な核酸をハイブリダイズする。極めてストリンジェントな条件は、例えば、65℃で0.5M NaHPO、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、DNAをろ過制限して(filter−bound)、68℃で0.1xSSC/0.1%SDS中で洗浄する(Ausubel et al.,eds.,1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates,Inc.,及びJohn Wiley&Sons,Inc.、New York、p2.10.3)。他の極めてストリンジェントな条件は、例えば、Current Protocols in Molecular Biologyの2.10.1〜16頁及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Sambrook et al.(編集)、Cold Spring Harbor Laboratory出版、1989、9.47〜57頁に記載されている。他の実施形態は、プレ標的酵素をエンコードする核酸は適度にストリンジェントな条件下で図1のアミノ酸配列をエンコードする核酸に相補的な核酸をハイブリダイズする。適度にストリンジェントな条件とは、例えば、42℃で0.2xSSC/0.1%SDS中洗浄することである(Ausubel et al.,1989、supra)。他の適度にストリンジェントな条件とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Ausubel et al.(編集)、Green Publishing Associates,Inc.,及びJohn Wiley&Sons,Inc.1989、2.10.1〜16頁及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Sambrook et al.(編集)、Cold Spring Harbor Laboratory出版、1989、9.47〜57頁に記載されている。
好ましい実施形態において、本発明は対象に標的BLA酵素を投与することによって対象を処理する方法及びBLAにより活性薬物に変化させられるプロドラッグを提供する。この実施形態に適当なプロドラッグの例は、例えばMelton et al.、Enzyme−Prodrug Strategies for Cancer Therapy、Kluwer Academic/Plenum出版社、New York(1999)、Bagshaw et al.,Current Opinion in Immunology 11:579−83(1999)及びKerr et al.、Bioconjugate Chem.9:255−59(1998)に記載されている。
プロテアーゼ
好ましい実施形態において、プロテアーゼはプレ標的酵素として選択される。プロテアーゼの利点はペプチドがプロドラッグとして使用できる点である。特に好ましい実施形態は、プレ標的酵素はヒトトリプシンである。酵素がヒト由来であるので、免疫反応を引き起こさない。また、45,000ドルトンよりも小さいので、非結合酵素はグロミュラーろ過(glomular filtration)によって血液循環から取り除かれる。任意で、トリプシンは天然基質上で活性しないように修飾される。従って、全身投与が可能である。
ペプチド−薬物結合は腫瘍部位で前立腺特異抗原(PSA)によって特異的に開裂されることが最近報告された。DeFeo−Jones et al.、Nat Med 6:1248(2000)を参照されたい。この報告では腫瘍部位におけるペプチドプロドラッグの活性化は抗癌剤の選択性を増加させるために有効な方法であることを示している。しかしながら、この手段は他の組織中の実測よりも高濃度で病変組織中に特定のプロテアーゼが既に存在する場合の腫瘍及びその他の疾病の治療に限られる。本発明は、腫瘍またはその他の標的を認識して結合できる、外因性の標的プロテアーゼまたはその他の酵素を添加することが可能である。従って、選択的にプロドラッグを活性化させるプロテアーゼまたはその他の酵素を用いて標的の修飾が可能である。この方法により天然の内在酵素の性質に頼る代わりに適当な力学的特性を有する酵素を選択することが可能となる。
プロテアーゼから標的酵素を作成するために2つの障害を克服すべきである:酵素は血液またはその他の関連組織中の化合物によって不可逆的に不活性化されてはならず、かつ酵素は血液またはその他の関連組織中のペプチドまたはタンパク質に対する損傷を最小限にするために十分選択性を有さなければならない。ほとんどの用途において、標的酵素は血液循環中に投与され、次第に血液循環を通じて標的組織に分散される。血液は多数のプロテアーゼ阻害因子を含んでいることが知られる。Travis&Salvesen、Annu.Rev Biochem 52:655(1983)を参照されたい。従って、血液または病変組織中にあるプロテアーゼ阻害因子の存在下でも活性を維持している修飾酵素は用いることができる。血液中の1つの重要な阻害因子はα2−マクログロブリンである。この血清タンパク質は、酵素がいわゆる阻害因子の餌場(bait region)を開裂することができる限り、その活性のメカニズムに関係なくプロテアーゼを阻害する。例えば、Sottrup−Jensen et al.、J Biol Chem 264:15781(1989)を参照されたい。しかしながら、少なくとも1つの例外がある。過度に選択性を有するタバコ・エッチ・ウイルス由来のプロテアーゼはα2−マクログロブリンを開裂せず、そのためそれによって阻害されない。従って、標的酵素を修飾してタバコ・エッチ・ウイルスプロテアーゼに類似した触媒部位を含むようにすることは可能である。あるいは、タバコ・エッチ・ウイルスの部位と類似した触媒部位を持つ酵素を見つけてもよい。この実施形態において、プロドラッグのペプチドリンカーは、その他の類似の選択性酵素の同定を簡単にするために、α2−マクログロブリンの餌場とは全く異なるように、かつタバコ・エッチ・ウイルスプロテアーゼの基質とはより類似したものとなるように設計する。
プロテアーゼは深刻で生死にかかわる病気のための治療に使用されてきた。例えば、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)は、血栓の“構造的”成分であるフィブリンを有する複合体を形成し、フィブリン網を分解し、凝血塊を溶解するプラスミンにプラスミノゲンを変化させる天然のプロテアーゼである。プラスミン濃度の増加は血液の循環中ではなくてむしろ凝血塊において主として激しく起こるので、全身性副作用は減少する。ストレプトキナーゼの場合、細菌プロテアーゼ投与はアナフィラキシー反応の危険性を増加させ、または繰り返し投与における血栓溶解効果の減少の原因となる免疫反応を結果として生じる。
本発明の1つの実施形態は、a)血液循環系のプロテアーゼ阻害因子を避け、かつb)選択的にプロテアーゼを例えば腫瘍細胞、病原体に感染した細胞または炎症反応が起きている細胞などの目的の標的に運搬する治療用標的プロテアーゼ系に関する。治療用標的プロテアーゼ系は原則的に血流中では不活性であるが、標的において特異的に活性化し、十分な生物活性を示す。従って、優先的に標的を攻撃し、その他の細胞及び組織には穏やかである。該系はモジュール式になっているので、融合タンパク質または共役標的タンパク質の構築または発現は必要とされない。原則として、同じ標的剤はいくつかの異なる生物活性分子または異なる特異性の酵素を修飾するために用いることができる。これは例えばHIV感染のような、異なる抗原型を生じる病原体の突然変異の場合に重要かもしれない。このような系は例えば、同位体標識タンパク質を用いた抗原提示を観測または小さい分子フルオロフォア(fluorophore)の活性化及び例えば同じ酵素系を用いたプロドラッグの活性化のような病気治療のいずれの判断においても有用である。
標的細胞または組織特異的細胞型の細胞質ゾル中へ放出侵入する酵素阻害因子を用いた細胞障害性酵素の標的運搬は、血液中のプロテアーゼ阻害因子の生理学的防御メカニズムをバイパスし、有用な治療的投与を可能とする。この標的阻害因子は同時に、酵素を標的に結合する機能を有し、または細胞から取り除く機能を有する。本治療システムの柔軟性は、放出酵素の触媒特性に起因してナノモル投与量またはそれ以下で効果的となるように形式を整えることができる。さらに、本モジュール的方法は、もし血液で直接発現すれば有害である他の細胞障害性の酵素の運搬に応用することができる。
小N末端チモーゲンペプチドが単に早期活性化を防止する哺乳類プロテアーゼとは対照的に、細胞外細菌プロテアーゼは成熟プロテアーゼドメインの適切な折り畳みのために必要なN末端プロ領域(Pro)を用いて合成される。Proは折り畳み触媒として振舞うので、Proに融合した細胞特異的標的ドメインの最初の投与により細胞障害性細菌プロテアーゼを体内のいかなる活性部位に選択的に運搬することも可能となる。血液またはその他のプロ標的結合組織からのクリアランス後、変性プロテアーゼ(成熟)ドメインを追加投与することにより選択的折り畳み及び標的部位における活性を生じる。通常のプロテアーゼ阻害因子機能は変性プロテアーゼによっては活性化されないので、本システムはヒト血液中投与によるプロテアーゼの通常の用途における重大な障害を克服する。さらに、変化した機能を引き起こす配列多様性及び低免疫原性、折り畳み速度の増加のような性能面(Wang et al.Biochemistry 37:3165(1998)を参照)または基質特異性の変化を生じる多数の公知の技術により酵素活性を高めることができる。これらの技術としては特定部位の突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、位置特異的突然変異誘発、DNAシャッフリング法及びそれらの組合わせが挙げられる。
患者の血液または組織中のペプチドまたはタンパク質の加水分解を最小限に抑えるために、使用される標的プロテアーゼまたはプレ標的プロテアーゼはプロドラッグに対してその選択性を増加させ、かつ内生タンパク質に対しての選択性を減少させるために修飾されることができる。この実施形態の例は下記の触媒作用に役立つ基質の使用である。
標的
本発明の標的酵素に結合する標的はタンパク質が結合できるいかなる基質または化合物であってもよい。1つの実施形態において、標的は表面である。好ましい実施形態は、表面は生物の表面である。より好ましい実施形態は、生物の表面は臓器の表面である。他のより好ましい実施形態は、生物の表面は組織の表面である。別のより好ましい実施形態は、生物の表面は細胞の表面である。別のより好ましい実施形態は、生物の表面は病変臓器、組織、細胞の表面である。別のより好ましい実施形態は、生物の表面はウイルスまたは病原体の表面である。別の好ましい実施形態は、表面は非生物の表面である。より好ましい実施形態は、非生物の表面は医療装置の表面である。さらにより好ましい実施形態は、医療装置は治療装置である。さらに他のより好ましい実施形態は、治療装置は埋め込み治療装置である。他のより好ましい実施形態は、医療装置は診断装置である。さらにより好ましい実施形態は、診断装置はウェルまたはトレイである。
他の実施形態は、標的は分子である。より好ましい実施形態は、分子は有機分子である。さらに好ましい実施形態は、分子は生物学的分子である。さらに好ましい実施形態は、生物学的分子は細胞会合分子である。さらに好ましい実施形態は、細胞会合分子は細胞の外側表面と会合している。さらに好ましい実施形態は、細胞会合分子は細胞の外側表面と会合しているタンパク質である。さらに好ましい実施形態は、タンパク質は受容体である。さらに好ましい実施形態は、細胞会合分子は対象中のある種類の細胞に対して特異的である。さらに好ましい実施形態は、その細胞の種類は異常細胞である。さらに好ましい実施形態は、異常細胞は癌細胞である。さらに好ましい実施形態は、異常細胞は感染細胞である。本発明に従う標的として働くことができる他の分子は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、核酸、糖質、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、有害物質、代謝産物、阻害因子、薬物、色素、栄養物及び成長因子が挙げられる。
別の実施形態は、標的は非生物学的物質である。好ましい実施形態は、非生物学的物質は繊維である。より好ましい実施形態は、繊維は天然繊維である。さらに好ましい実施形態は、繊維は綿である。他のより好ましい実施形態は、繊維は絹である。別のより好ましい実施形態は、繊維は羊毛である。別のより好ましい実施形態は、繊維は非天然繊維である。より好ましい実施形態は、繊維はナイロンである。他のより好ましい実施形態は、繊維はレーヨンである。さらに好ましい実施形態は、繊維はポリエステルである。別の好ましい実施形態は、非生物学的物質はプラスチックである。他の好ましい実施形態は、非生物学的物質はセラミックである。別の好ましい実施形態は、非生物学的物質は金属である。別の好ましい実施形態は、非生物学的物質はゴムである。
1つの実施形態において、標的はシミではない。より好ましい実施形態は、標的は着色化合物ではない。例えば、標的はポルフィリン由来化合物(例えば、血液中のヘムまたは植物染色液中のクロロフィル)、タンニンまたはポリフェノール(例えば、茶着色物、ワイン着色物または桃着色物)、カロチノイド及びカロチノイド誘導体(例えば、トマト着色物(リコピン(cycopene)、赤)、マンゴー着色物(カロチン、オレンジ・イエロー)及びパプリカ着色物)、酸化カロチノイド、キサントフィル、アントシアニン(例えば、果物及び花着色物)、メイラード反応生成物(例えば、炭水化物及びタンパク質を料理油で加熱することにより生成されるイエロー・ブラウン物質)、染料(例えば、直接青色染料、酸性青色染料、反応青色染料及び反応黒色染料)は含まない。
細胞または組織の採取源はヒト、動物、細菌、菌類、ウイルス及び植物が挙げられる。組織は複合体標的であり、単細胞型、細胞の型の集まり、または一般的には特定の種類の細胞の集合体である。組織は原型または修飾されていてもよい。ヒト組織の一般的な種類は限定されないが、上皮、結合組織、神経組織及び筋肉組織が挙げられる。
好ましいヒト標的細胞としては、造血細胞、癌細胞及びレトロウイルス媒体変換細胞(retroviral−mediated transduced cells)が挙げられる。造血細胞は造血幹細胞(HSCs)、赤血球、好中球、単球、血小板、肥満細胞、好酸球、好塩基球、B及びT細胞、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞が包含される。特に好ましいHSCsの表面抗原発現側面はCD34Thy−1、及び好ましくはCD34Thy−1Linである。Linは少なくとも1つの血統特異的マーカーの発現の欠如に基づいて選択される細胞集団をいう。HSCsを単離及び選択する方法は当業界で公知であり、米国特許第5,061,620号、5,677,136号、及び5,750,397号に言及されている。
限定するものではないが、本発明に含まれるタンパク質及び化学的標的の例はケモカイン及びサイトカイン及びそれらの受容体が含まれる。ここで用いられるサイトカインは細胞上に多様な効果を発揮する多数の因子のいずれかであり、例えば成長、増殖などを含む。限定するものではないが例としては、インターロイキン(IL)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、及びIL−16;溶解IL−2受容体;溶解IL−6受容体;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);幹細胞因子(SCF);白血病抑制因子(LIF);インターフェロン;オンコスタチンM(oncostatin M(OM));免疫グロブリン超分子群;腫瘍壊死因子(TNF)分子群、特にTNF−α;TGFβ;及びIL−1α;及び血管内皮増殖因子(VEGF)分子群、特にVEGF(当業界ではVEGF−Aともいう)、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。サイトカインはアムジェン(Amgen)(サウザンドオークス、カリフォルニア州)、イミュネックス(Immunex)(シアトル、ワシントン州)及びジェネンテック(Genentech)(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)などの市販の供給メーカーから入手可能である。特に好ましいのはVEGF及びTNF−αである。TNF−αに対する抗体は、その受容体を用いた際のTNF−αの遮断相互作用は敗血症ショック、関節リウマチまたはその他の炎症性疾患のようないくつかの疾病状態においてTNF−αの過剰発現の調節に有用であることを示す。VEGFは血管形成誘導因子、血管透過性メディエータ及び内皮細胞特異的マイトジェンである。VEGFは腫瘍にも関係する。VEGF分子群及びそれらの受容体の標的部分は大きな治療上の用途となる可能性があり、例えば遮断VEGFは卵巣過剰刺激症候群(OHSS)における治療に有用となるかもしれない。N.Ferrara et al.、(1999)Nat.Med.5:1359及びGerber et al.、(1999)Nat.Med.5:623を参照されたい。その他の好ましい標的はT細胞受容体のような細胞表面受容体である。
ケモカインは細胞トラフィッキング及び炎症疾患において重要な役割を果たす小さいタンパク質群である。ケモカイン群の構成要員は限定されないが、IL−8、ストロマ細胞由来因子−1(SDF−1)、血小板因子4、好中球活性化因子−2(NAP−2)及び単球遊走因子−1(MCP−1)などがある。
その他のタンパク質及び化学的標的としては以下が挙げられる:溶解ヒト白血球抗原(HLA、クラスI及び/またはクラスII及び非古典的クラスI HLA(E、F及びG))のような免疫調節タンパク質;溶解TまたはB細胞表面タンパク質のような表面タンパク質;ヒト血清アルブミン;プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン及びプロスタサイクリンのようなアラキドン酸代謝産物;IgE、自己免疫のための自己(auto)または同種異系抗体、または同種(allo)または外来免疫(xenoimmunity)、Ig Fc受容体またはFc受容体結合因子;Gタンパク質結合受容体;細胞表面炭水化物;血管新生因子;接着分子;カルシウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム及び鉄のようなイオン;プリオン及びチューブリンのような微小繊維タンパク質;プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、加水分解酵素、スルファターゼ、シクラーゼ、転移酵素、アミノ基転移酵素、カルボキシラーゼ、デカルボキシラーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ及びそれらの天然担体または類似体のような酵素;卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、チロキシン(T4及びT3)、アポリポタンパク質、低比重リポタンパク質(LDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)、コルチゾール、アルドステロン、エストリオール、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びその硫酸塩(DHEA−S)のようなホルモン及びそれらに対応する受容体;レニン、シンスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、バソプレシン及び抗利尿ホルモン(AD)、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、LHRH、甲状腺刺激ホルモン成長因子(THRH)、血管活性腸管ペプチド(VIP)、ブラジキニン及び対応するプロホルモンのようなペプチドホルモン;アドレナリン及び代謝産物のようなカテコールアミン;AdF(atrionatriutic factor)、ビタミンA、B、C、D、E及びK、及びセロトニンを含む補因子;プロトロンビン、トロンビン、フィブリン、フィブリノゲン、第VIII因子、第IX因子、第XI因子及びフォン・ヴィレブランド因子のような凝固因子;プラスミン、補体活性因子、LDL及びそれらの配位子、及び尿酸のようなプラスミノゲン因子;ヒルジン、ヒルログ(hirulog)、ヘメンチン(hementin)、ヘプリン(hepurin)及びプラスミノゲン活性化因子(TPA)のような凝固物を調節する化合物;遺伝子治療のための核酸;酵素抑制因子である化合物;及び炎症因子のような配位子に結合する化合物。
非ヒト由来標的は限定されないが、以下を含む;薬物、特に大麻、ヘロイン及びその他の麻酔剤、フェンシクリジン(PCP)、バルビツール酸系催眠薬、コカイン及びその誘導体及びベンゾジアゼピンのような誤用されがちな薬物;水銀、鉛のような重金属、ヒ素及び放射性化合物などの毒素;パラセタモール、ジゴキシン及びフリーラジカルのような化学療法薬;リポ多糖類(LPS)及びその他のグラム陰性、ブドウ球菌毒素、毒素A、破傷風毒素、ジフテリア毒素及び百日咳毒素のような細菌毒素;植物及び海洋毒素;ヘビ及びアエロバクチン(aerobactins)または病原菌のようなその他の毒、毒性因子;肝炎、サイトメガロ・ウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス(HSV、1、2及び6型)、EBウイルス(EBV)、水疱瘡ウイルス(VZV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、−2)及びその他のレトロウイルス、アデノウイルス、ロタウイスル、インフルエンザ、ライノウイルス、パルボウイルス、風疹、はしか、小児麻痺、パラミキソウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス及びピコルナウイルス、プリオン、プラスモジウム組織因子のような感染性ウイルス、赤痢アメーバ、フィラリア、ジアルジア、カラアザール及びトキソプラズマような原生動物;敗血症の原因である細菌、グラム陰性細菌及び大腸菌、アシネトバクター、シュードモナス、プロテウス及びクレブシエラ菌、さらにブドウ球菌、連鎖球菌、髄膜炎菌、及びリコバクテリア(llycobacteria)、クラミジア、レジオネラ及び嫌気性菌などのグラム陽性細菌のような院内感染;カンジダ、ニューモシスティス、アスペルギルス及びマイコプラズマなどの菌類。
1つの側面において、標的は以下のような酵素を含む;プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、酸化酵素、加水分解酵素、スルファターゼ、セルラーゼ、シクラーゼ、転移酵素、アミノ基転移酵素、カルボキシラーゼ、デカルボキシラーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ及びそれらの天然担体または類似体。特に好ましい酵素は、加水分解酵素、特にα/β加水分解酵素;ズブチリシンのようなセリンプロテアーゼ、及びキモトリプシンセリンプロテアーゼ;セルラーゼ及びリパーゼが挙げられる。
他の側面において、標的は繊維上またはセラミック、ガラス、シリカ、木、紙、金属及び合金、並びに生きている組織、肌のようなその他の表面物質上のシミである。シミは限定されないが、以下の汚れの群から選択できる;ポルフィリン由来汚れ、タンニン由来汚れ、カロチノイド色素由来汚れ、アントシアニン色素由来汚れ、土汚れ、油汚れ、及び人体由来汚れ。特にシミは血液由来汚れまたはクロロフィル由来汚れであってもよい。さらに具体的には、シミは草、パプリカ、茶由来汚れ、またはワイン、トマト及びベリーなどの果物または野菜由来汚れであってもよい。特に好ましいシミは人体汚れ、及びより具体的にはシミは衿汚れをいう。
特に本発明の好ましい標的は、具体的に腫瘍細胞と関連する標的を含む。例えば、米国特許第6,261,535号を参照されたい。その全体は引例として本明細書に組み込まれる。
基質援助触媒法(SAC)
SACの概念はCarter et al.、Science 237:394(1987)及び米国特許第5,472,855号及び第5,371,190号に最初に記載された。これらの著者はズブチリシンの変異体を用いたが、同じ原理が他の酵素にも応用できることが後になって示された。例えば、Corey et al.、Biochemistry 34:11521(1995)(トリプシン)、Dall‘Acqua et al.、Protein Eng 12:981(1999)(エラスターゼ)及びDall‘Acqua et al.、Protein Sci 9:1(2000)を参照されたい。
簡単に言えば、基質援助触媒法では、基質の官能基は酵素によって触媒作用に寄与する。この方法は特定の基質に対して高い選択性を有する酵素を生成するために活用できる。SACの用途の例としては、腫瘍組織または感染因子への結合である。従って、SAC酵素の固有の高い触媒作用選択性と高い結合選択性を組み合わせることができる。そのような標的SAC酵素は多様な病気を治療するために利用できる。
高い選択性のおかげで、SAC酵素は他の酵素よりも阻害作用が少ない傾向にある。例えば、トリプシンのH57A変異体はタンパク質中のHis−Arg、His−Lys、Arg−His及びLys−His結合に対して高い選択性を有する。Corey et al.、Biochemistry 34:11521(1995)及びSottrup−Jensen et al.、J Biol Chem 264:15781(1989)を参照されたい。この基質はα2−マクログロブリンの餌場に似ていないので、H57A変異体はα2−マクログロブリンによる阻害作用に耐性を有するはずである。
SAC酵素の活性は非常に狭い基質の範囲に限定される。上記の理由により、特定のプロテアーゼにおいては、SAC酵素は他の酵素よりも治療剤として適切なものとなる。プロテアーゼは患者に投与されると、血液中及びその他の組織中の多数の他のタンパク質に接触する。これらすべてのタンパク質はプロテアーゼにとって基質となる可能性がある。標的に対して非常に狭い選択性を有するSACプロテアーゼの使用はその他のタンパク質の加水分解を最小限に抑えるであろう。
1つの好ましい実施形態において、SAC酵素はプロドラッグを活性化させるために用いられる。プロドラッグはSAC酵素に受け入れられる狭い基質領域に適合するように設計してよい。図2はSACトリプシンのために設計されたプロドラッグの例を示す。
酵素の活性部位はタンパク質工学技術またはプロドラッグ中の開裂可能な結合を認識するための進化により修飾することができる。これにより、その通常基質に対する結果酵素の特異性が同時に減少されるであろう追加の利益を有する。このような進化した酵素の例は図3に示す。
SACが有用である標的は、SACプロテアーゼによる開裂のための露出した受容体ループ、信号伝達分子等を同定するための構造ゲノム手段を用いて同定できる。
標的酵素プロドラッグ療法
好ましい実施形態において、本発明は標的酵素及びプロドラッグを投与することにより対象を治療する方法を提供し、ここで標的酵素はプロドラッグを活性薬物に変化させる対象の一部分に特異的に局在する。酵素/プロドラッグ/活性薬物の組合わせの例は例えば、Bagshawe et al.、Current Opinions in Immunology、11:579−83(1999);Wilman、“Prodrugs InCancer Chemotherapy”、Biochemical Society Transactions、14、pp.375−82(615th Meeting,Belfast 1986)及びV.J.Stella et al.、“Prodrugs:A Chemical Approach To Targeted Drug Delivery”、Directed Drug Delivery、R.Borchardt et al.(編集)、pp.247−67(Humana Press 1985)に記載されている。1つの実施形態において、プロドラッグはペプチドである。プロドラッグとしてのペプチドの例は、Trouet et al.、Proc Natl Acad Sci USA 79:626(1982)及びUmemoto et al.、Int J Cancer 43:677(1989)に記載されている。これら及びその他の調査により、ペプチドは血液中で十分に安定であるということが示されている。ペプチド由来プロドラッグのその他の利点は、それらのアミノ酸配列は半減期、組織分布及び活性薬物に対する低毒性のような適当な薬理学的特性の付与を選択できるということである。ペプチド由来プロドラッグの調査の大部分は、比較的非特異的であるプロドラッグの活性、例えばリソソーム酵素に基づいている。最近になって、ペプチド−薬物結合は前立腺特異抗原(PSA)によって腫瘍部位で特異的に開裂されることが報告された。DeFeo−Jones et al.、Nat Med 6:1248(2000)を参照されたい。この報告は、ペプチドプロドラッグの腫瘍部位における活性は抗癌剤の選択性を増加させるために効果的な方法であるということを示している。
プロドラッグは1つより多くの工程で活性薬物に変換されてもよい。例えば、プロドラッグは標的酵素によって活性薬物の前駆体に変換されてもよい。前駆体は、例えば1つ以上の追加標的酵素の触媒活性、対象に投与される1つ以上の非標的酵素の触媒活性、対象中または対象の標的部位に自然に存在する1つ以上の酵素の触媒活性(例えば、プロテアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼまたはポリメラーゼ)、対象に投与される薬物、または酵素的な触媒作用を有さない化学的工程(例えば、酸化、加水分解、異性化、エピマー化)によって活性薬物に変換されることができる。
薬物
既存の薬物のプログラムに問題があるとわかった後に、プロドラッグ関連の研究の大部分は発展する。特に抗癌剤は非常に低い治療指数によって一般的に特徴付けられる。これらの薬物を毒性の減少されたプロドラッグに変換させ、次に病変組織中で選択的に活性化させることによって、薬物の治療指数は著しく減少する。例えば、Melton et al.、Enzyme−prodrug strategies for cancer therapy(1999)、及びNiculescu−Duvaz et al.、Anticancer Drug Des 14:517(1999)を参照されたい。
本発明により、たとえ天然酵素にとって弱い基質の構造であっても適合させるために酵素の特異性を発展させることが当業者に可能となる。従って、該薬物が別の方法ではプロドラッグ設計を施すことができなくても、プロドラッグを設計できる。
Curnis et al.、Nat Biotechnol 18:1185(2000)は腫瘍脈管構造に対して選択的に標的を定め、強い抗腫瘍効果を示すときの、サイトカインTNFαを示している。他の方法では、TNFαの全身運搬はその毒性により阻害される。他のサイトカインは類似の限定を有するものと考えられる。本発明は標的酵素によって選択的に病変組織において活性化されるサイトカイン基プロドラッグの設計を可能とするものである。
標的剤(たいていの場合、抗体または抗体断片)に結合した毒素を用いて多数の研究が行われてきた。例えば、Torchilin、Eur J Pharm Sci 11 Suppl 2:S81(2000)及びFrankel et al.、Clin Cancer Res 6:326(2000)を参照されたい。上記の代わりとして、これらの毒素をプロドラッグに変換し、それから選択的に病変組織に放出する。
プロドラッグ
本発明のプロドラッグは限定されないが、リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、任意で置換フェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意で置換フェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及びより活性な細胞障害性フリードラッグ(cytotoxic free drug)へと結合酵素により変換されることができるその他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられる。本発明の使用のためにプロドラッグ形態へと誘導体化できる細胞毒(cytotoxic drugs)の例としては、限定されないが、エトポシド、テンポシド(temposide)、アドリアマイシン、ダウノマイシン、カルミノマイシン(carminomycin)、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、シスプラチナ及びシスプラチナ類似体、ブレオマイシン、エスペラマイシン(esperamicins)(米国特許第4,675,187号を参照)、5−フルオロウラシル、メルファラン、その他のナイトロジェンマスタード及びそれらの誘導体が挙げられる。例えば、米国特許第4,975,278号を参照されたい。
本発明の1つの実施形態は、プレ標的酵素は、エピポドフィル−ロトキシングルコシド(etoposide−lotoxin glucosides)の4’−リン酸塩誘導体を活性抗癌剤に変換させるアルカリホスファターゼ(AP)である。このような誘導体としてはエトポシド−4’−リン酸塩、エトポシド−4’−チオリン酸塩及びテニポシド−4’−リン酸塩が挙げられる。本発明の他の実施形態はこれらグルコシドのリン酸塩誘導体を含むことができ、リン酸塩部分はグルコシド上の他のヒドロキシル基に位置する。より好ましい実施形態によると、しかしながら、本発明でプロドラッグとして使用されるリン酸塩誘導体はエトポシド−4’−リン酸塩またはエトポシド−4’−チオリン酸塩である。標的APは活性抗腫瘍剤を放出しながら、リン酸基をプロドラッグから取り除く。本実施形態のマイトマイシンリン酸プロドラッグはマイトマイシンCまたはポルフィロマイシン(porfiromycin)のN−C1−8アルキルリン酸誘導体、または薬学的に許容できるそれらの塩であってもよい。Nは親薬物のマイトサン核(mitosane nucleus)の7位置へ結合する窒素原子をいう。より好ましい実施形態によると、使用される誘導体は7−(2’−アミノエチルホスフェイト)マイトマイシン(“MOP”)である。または、MOP化合物は9a−メトキシ−7−[[(ホス−ホノオキシ(phonooxy)エチル]アミノ]マイトサン2ナトリウム塩と称される。本発明の他の実施形態は、プロドラッグとしてのN−アルキルマイトマイシンホスホロチオエートの使用を含んでもよい。
さらに本発明の別の実施形態においては、ペニシリンアミダーゼ酵素は新規なアドリアマイシンプロドラッグを活性抗腫瘍薬物であるアドリアマイシンへ変換するプレ標的酵素として使用できる。好ましい実施形態は、ペニシリンアミダーゼはフェノキシアセチルアミド結合を加水分解するフザリウム属オキシスポラム(Fusarium oxysporum)から単離されたペニシリンVアミダーゼ(“PVA”)である。利用できるプロドラッグはアミダーゼにより加水分解されて有効な抗腫瘍剤であるアドリアマイシンを放出する、N−(p−ヒドロキシフェノキシアセチル)アドリアマイシン(“APO”)であってもよい。
また、本発明は例えば、アドリアマイシンプロドラッグ、N−(p−ヒドロキシフェノキシアセチル)アドリアマイシン及び実質的に同様の方法で誘導体化できるその他の関連アドリアマイシンプロドラッグの使用も含む。例えば、N−(フェノキシアセチル)アドリアマイシンの使用も本発明の範囲内である。さらに、本発明のアドリアマイシンプロドラッグはその他のアドリアマイシンのN−ヒドロキシフェノキシアセチル誘導体、例えばフェニル環の異なる位置で置換したものも、ここで記載されるヒドロキシ基以外のフェニル環上の置換を含むN−フェノキシアセチル誘導体と同様に含まれることが理解される。
さらに、本実施形態は、特定のアミダーゼがプロドラッグを活性抗腫瘍形態へと加水分解できるものに相当するように誘導体化されたその他のプロドラッグと同様に、プレ標的酵素としてのペニシリンGアミダーゼのようなその他のアミダーゼの使用も包含する。例えば、ペニシリンGアミダーゼがプレ標的酵素として使用された場合、プロドラッグはフェニルアセチルアミド基を含有すべきである(APOのフェノキシアセチルアミド基に対立するものとして)。なぜなら、ペニシリンGアミダーゼはこの型のアミド結合を加水分解するからである(例えば、A.L.Margolin et al.、Biochim.Biophys Acta.616、pp.283−89(1980)を参照)。従って、本発明の他のプロドラッグは、N−(p−ヒドロキシフェニルアセチル)アドリアマイシン、N−(フェニルアセチル)アドリアマイシン及びその他任意のアドリアマイシンの置換N−フェニルアセチル誘導体を含む。
また、本発明はフェノキシ酢酸、フェニル酢酸またはその他関連する酸のカルボキシル基を有する親薬物のアミン基を反応させることにより導かれるいかなるプロドラッグも含むことが理解される。従って、ここに記載されるアドリアマイシンプロドラッグとして実質的に同様の方法で誘導体化され、活性化されることが可能であるアドリアマイシン以外のアントラサイクリン系プロドラッグは本発明の範囲内である。例えば、本発明に従って生成でき、使用できるその他のプロドラッグとしては、ダウノマイシン及びカルミノマイシンのようなアントラサイクリンのヒドロキシフェノキシアセチルアミド誘導体、ヒドロキシフェニルアセチルアミド誘導体、フェノキシアセチルアミド誘導体及びフェニルアセチルアミド誘導体が挙げられる。また、メルファラン、マイトマイシン、アミノプテリン、ブレオマイシン及びダクチノマイシンのようなその他のアミン含有薬物はここで記載したように修飾され、本発明のプロドラッグを産出することができる。
さらに、本発明の別の好ましい実施形態は酵素の標的酵素形態である、シトシンデアミナーセ(“CD”)を含む。デアミナーゼ酵素は、抗腫瘍活性を有さない化合物である5−フルオロシトシン(“5−FC”)に触媒作用を及ぼし、有効な抗腫瘍薬である5−フルオロウラシル(“5−FU”)へと変換させる。
本発明の方法の他の実施形態は、いくつかのプロドラッグ及び単一標的酵素を用いて化学療法を組合わせた方法を提供する。この実施形態によると、すべて同じ標的酵素のための基質である多数のプロドラッグが使用される。従って、特定の標的酵素は多数のプロドラッグを細胞障害性形態へと変換し、腫瘍部位において増加した抗腫瘍活性を生じる。
他の実施形態によると、多数の異なる標的酵素が使用される。各標的酵素は代表的なプロドラッグを標的腫瘍部位において活性体のかたちに変化させるために使用できる。
さらに本発明の別の実施形態は、酵素による標的結合が多様である多数の標的酵素の使用が含まれる。すなわち、多数の標的酵素が使用され、各々異なる目的の標的に特異的に結合する。標的酵素の触媒活性は同じであっても、異なっていてもよい。この実施形態は、例えば腫瘍の表面上の多様な標的の量が不明の場合、及び十分な酵素をもって腫瘍部位に確実に標的を定めたい場合に特に有用である。腫瘍上の異なる標的を認識する多数の標的酵素の使用は、プロドラッグの変換または一連のプロドラッグのために腫瘍部位において十分な酵素を得る可能性を増加させる。さらに、この実施形態は腫瘍に対する高度な特異性を達成するために重要である。なぜなら正常組織が同じ関連抗原のすべてを有する可能性は小さいからである(I.Hellstrom et al.、“Monoclonal Antibodies To Two Determinants Of Melanoma−Antigen p97 Act Synergistically In Complement−Dependent Cytotoxicity”、J.Imminol、127(No.1)、pp.157−160(1981)参照)。
別の実施形態において、異常細胞上の多数の標的に対して結合する標的酵素が使用される。好ましい実施形態においては、標的酵素は多数の標的部位を含み、各部位は異常細胞上の異なる標的に結合する。標的酵素はすべての標的よりも少ない標的しか有さない細胞に対しては比較的弱く結合するが、すべての標的を有する細胞に対しては比較的強く結合する。
薬学的ペプチド、タンパク質または小さい分子の血液循環半減期を延ばすことがしばしば必要とされている。一般的に短い半減期(数分から数時間持続する)だと頻繁な投与だけでなく、多量の投与が治療的効果のために必要となり、最初の投与量が非常に高いのでしばしば副作用を引き起こす。このような治療上の半減期の延長は、より低量で少ない回数を可能とし、従って製造もより安く、より安全な投与の可能性がある。以前は研究者達はPEG(米国特許第5,711,944号参照)、ヒト血清アルブミン(米国特許第5,766,883号参照)またはFc断片(国際公開WO00/24782参照)に共有結合させて融合することによりタンパク質の半減期を増加させてきた。さらに、ヒト血清アルブミンに対して非特異的である薬物のターゲティングはin vivoにおけるケミカルカップリング薬物によって達成されてきた。米国特許第5,843,440号を参照されたい。さらに、制癌剤の場合、高分子量薬物は高められた浸透性及び滞留性に起因して腫瘍中の特定の場所に適用できるということが提案されてきた。従って、薬物の治療指数の向上は薬物をタンパク質またはその他の高分子量ポリマーへ結合させることによって得ることができる。
しかしながら、タンパク質及びペプチド治療剤を安定化させたり、癌治療剤のサイズを増加させたりするための従来方法はいくつかの制限を有する。これらの方法はケミカルカップリングに必要とされる特異性が欠如している。また、融合ペプチドの場合は2つの部位しか結合できないというC−及びN−末端融合の固有の制限がある。さらに、HSA結合のタンパク質生成は大きな問題となり得る。共役性融合治療剤がほとんどまたはまったく放出しないため、治療剤構築における薬理作用特性は簡単には制御できない。さらに、これらの方法のすべては、本質的にはモジュール式ではないので安定な治療剤を同定するために必要な時間と労力を実質的に増加させる。
1つの実施形態において、本発明はヒト血清アルブミン(HSA)に対して特異である治療部位を非共役的にターゲティングすることにより、治療的ペプチド、タンパク質または小さい分子を選択的に安定化させる方法を提供する。選択的ターゲティング方法を用いることにより、血清アルブミンに対して高い親和性及び高い選択性をもって選択的に結合するペプチド配列を同定できる。簡単に言えば、HSA欠乏血液は分子ライブラリー、好ましくはペプチドライブラリーを用いて培養する。HSA欠乏血液に結合しないペプチドは次に固定化HSAを用いて培養し、広範囲にわたって洗浄、それからHSA結合ペプチドが同定される。ペプチドは治療的使用のため、例えば、免疫反応、血液中のタンパク質分解の影響、生成の容易さを制限するためにさらに最適化される。目的の治療のためのこれら小さいペプチドの融合は実質的に半減期または薬物の治療指数を増加させる。さらに、ペプチド薬物結合は投薬のためにかなり簡単にできる。プロテアーゼクリップ部位はHSA標的ペプチドと薬物または治療薬間に取り込まれることができる。これらHSA標的薬物が血液中に投与された場合、薬物結合は選択的にHSAに結合し、物理的に設計された結合剤の特性(血液中のkon&koff)に基づいて、または酵素開裂または酵素活性によって放出されることができる。この方法は、例えばFc断片、α2−マクログロブリン、ステロイド及び赤血球のようなその他の長命の血液タンパク質のターゲティングにも適用できる。
癌組織の脈管構造は通常よりも高い拡散率を示す。Yuan et al.、Cancer Res 55:3752(1995)を参照されたい。さらに、腫瘍間質部分の巨大分子の拡散率は正常組織と比べて比較的高い。Jain、Cancer Res 47:3039(1987)を参照されたい。
最近の研究結果を集約した論評によれば、腫瘍の拡散率の増加は特にPEGとのカップリングに基づいて設計された巨大分子プロドラッグによって活用できるということが示されている。Greenwald et al.、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 17:101(2000)を参照されたい。しかしながら、これらのプロドラッグはその活性化をリンカーの化学的反応活性度またはどちらかといえば腫瘍部位の非特異的酵素のいずれかに頼っている。この方法はプロドラッグの巨大分子部分を開裂、放出できる腫瘍部位に対する選択的酵素のターゲティングによって著しく向上させることができる。この方法は、プロドラッグをほとんどの組織の外側に留まらせ、プロドラッグがほとんどの細胞に侵入しないようにする巨大分子のプロ部分により、プロドラッグの毒性を著しく低下させることを可能とする。さらに、関係のない組織中での薬物活性化を防ぐためにリンカー部分を非常に安定した状態になるよう設計することもできる。
好ましい実施形態において、本発明は対象に対してβ−ラクタマーゼ活性を有する標的酵素及びプロドラッグを投与することを含む対象中の状態を処理する方法を提供する。より好ましい実施形態は標的酵素は癌細胞、組織、腫瘍または器官に対して標的を定められる。さらに、より好ましい実施形態は癌はメラノーマまたは癌腫である。他のより好ましい実施形態は、プロドラッグは標的酵素によって活性薬物に変換される。より好ましい実施形態は、活性薬物はアルキル化剤である。別のより好ましい実施形態は、プロドラッグは抗癌ナイトロジェンマスタードプロドラッグである。さらに、別のより好ましい実施形態は、活性薬物はメルファランである。最も好ましい実施形態は、プロドラッグはC−Melである。Kerr et al.、Bioconjugate Chem.9:255−59(1998)を参照されたい。他の最も好ましい実施形態は、プロドラッグはビンカ・セファロスポリンまたはドキソルビシン・セファロスポリンである。Bagshawe et al.、Current Opinion in Immunology、11:579−83(1999)を参照されたい。本発明で使用できるその他のプロドラッグ/酵素の組合わせは、限定されないが、米国特許第4,975,278号及びMelton et al.、Enzyme−Prodrug Strategies for Cancer Therapy Kluwer Academic/Plenum 出版社、ニューヨーク(1999)に記載されているものが含まれる。
プロドラッグのプロ部分となる候補のリストは広範囲で多様に及び、多数であることは当業者に公知である。
核酸及び標的酵素の発現方法
他の側面において、本発明は標的酵素をエンコードする核酸を提供する。核酸は例えば、DNAまたはRNAがある。また、本発明は標的酵素をエンコードする核酸を含有するプラスミドを提供する。プラスミドは例えば、宿主細胞または有機体またはin vivoにおいて標的酵素の発現を可能にする発現プラスミドである。発現ベクターは例えば細菌細胞において標的酵素の発現を可能にする。細菌細胞は例えば大腸菌である。
遺伝情報は過剰にあるため、一般に多数のDNA配列は所定のアミノ酸配列をエンコードし、その意味では同等である。下記に記すように、発現ベクターが挿入される宿主細胞の好ましいコドンの使用に基づいて、発現ベクター中の使用のためにある同等のDNAを選択することは望ましい。本発明は標的酵素をエンコードするすべてのDNA配列を包含することを目的とする。
本発明の標的酵素の生成は組換え発現クローンを用いて実施される。組換え発現クローンの構築は、発現クローンを用いた宿主細胞の形質転換及び発現を促進させる条件下での形質転換宿主細胞の培養を当業界で公知の分子生物学的技術を用いて様々な方法で行うことができる。これらの各工程の方法は概して下記に記載する。好ましい方法は例として詳細に記載する。
実施可能な発現クローンは、発現ベクター中の適当な制御配列を用いて動作可能なリンケージ中のコード配列を位置付けることによって構築される。ベクターは宿主細胞中自発的に複製されるように、または宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるように設計することができる。結果として生じるクローンは適当な宿主を形質転換するために使用され、形質転換宿主はコード配列の発現に適切な条件下で培養される。標的細胞の再生及び精製はいくつかの例においては必要ではないが、発現標的酵素は媒体または培養細胞から単離される。
コード配列及び適当な制御配列を含む適当なクローンの構築は当業者に公知である標準の連結反応及び制限技術を用いる。一般的には、分離プラスミド、DNA配列または合成ヌクレオチドを所望の形態に開裂、修飾及び再連結させる。適当な制限部位は、通常入手可能でない場合、発現クローンの構築を容易にするためにコード配列の末端に追加することができる。
部位特異性DNA開裂は、一般的に当業界で理解され、市販の制限酵素の製品に特定される条件下において、適切な酵素(複数であってもよい)を用いて処理することにより実施される。例えば、アマシャム(Amersham)(アーリントンハイツ、イリノイ州)、ロシュ(Roche Molecular Biochemicals)(インディアナポリス、インディアナ州)、及びバイオラブ(New England Biolabs)(ビバリー、マサチューセッツ州)の製品カタログを参照されたい。一般に、約1μgのプラスミドまたはその他のDNAは約20μlの緩衝溶液中で1つの酵素単位によって開裂される。下記の例では、DNAの完全な消化を確実にするために過剰な制限酵素が使用される。特定の酵素にとって最適である温度で約1〜2時間培養することは一般的である。各培養後、タンパク質はフェノール及びクロロホルムを用いて抽出することにより取り除く。この抽出はエタノールを用いた沈殿による分留水から得たDNAのエーテル抽出及び再生に続いて行うことができる。所望により、開裂断片のサイズによる分別を標準の技術を用いてポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル電気泳動法により行ってもよい。例えば、Maxam et al.、1980、Methods in Enzymology 65:499−560を参照されたい。
一本鎖“突出(overhanging)”末端を複数有する制限酵素開裂DNA断片は、例えば4つのデオキシヌクレオシド3リン酸塩(dNTP)の存在下、50mM Tris、pH7.6、50mM NaCl、10mM MgCl、10mM DTT及び5〜10μM dNTP中、20℃〜25℃で約15〜25分間の培養時間で大腸菌DNAポリメラーゼI(クレノウ)の大きな断片を用いて処理することにより平滑末端(二本鎖末端)が作られる。クレノウ酵素は4つのdNTPが存在していたとしても、5’突出末端には入り込むが、3’突出一本鎖を分解する。所望により、選択的修復は突出末端の性質により影響を受ける限定の範囲内において1つ以上の選択dNTPを供給することにより行うことができる。クレノウ処理の後、フェノール/クロロホルムを用いて混合物を抽出し、エタノール沈殿させる。S1ヌクレアーゼを用いても類似の結果が達成される。なぜなら、S1ヌクレアーゼを用いた適当な条件下での処理は核酸の一本鎖部分の加水分解を結果として生じさせるからである。
例えば以下の標準的な条件および温度下で15〜30μlの体積中、連結反応を起こすことができる:20mM Tris−Cl、pH7.5、10mM MgCl、10mM DTT、33μg/ml BSA、10〜50mM NaCl、及び次のいずれか;0℃における40μM ATPと0.01〜0.02(Weiss)単位T4DNAリガーゼ(相補的一本鎖末端を用いた断片の連結反応)または14℃における1mM ATPと0.3〜0.6単位T4DNAリガーゼ(“平滑末端”連結反応)。相補的末端を有する断片の分子間連結反応はたいてい33〜100μg/ml総DNA濃度(5〜100nM総末端濃度)において行われる。分子間平滑末端連結反応は(たいてい20〜30倍モルの過剰リンカーを任意で使用する)1μM総末端濃度において行われる。
ベクター構築において、ベクター断片は通常、5’リン酸塩を除去し、再連結を防止し、ベクターの再構築をするために細菌性または牛小腸アルカリホスファターゼ(BAPまたはCIAP)を用いて処理される。BAP及びCIAP分解条件は当業者に周知であり、市販のBAP及びCIAP酵素にたいてい手順の記載が添付されている。核酸断片を再生するために、フェノール−クロロホルムを用いて調合液を抽出し、ホスファターゼを取り除くためにエタノール沈殿させ、DNAを精製する。または、もし適当な制限部位が利用可能であれば、不要なベクター断片の再連結反応は、連結反応前または後の制限酵素分解により抑制することができる。
プラスミド構築のための正確な連結反応は、当業者に公知の適当な方法を用いて確認できる。例えば、プラスミド構築のための正確な連結反応は大腸菌株DG101(ATCC47043)または大腸菌株DG116(ATCC53606)のような適当な宿主を連結反応混合物を用いて最初に形質転換させることにより確認できる。形質転換を成功させるためには、アンピシリン、テトラサイクリンまたはその他の抗生物質に対する耐性を有するものまたは感受性を有するものを選択するか、或いは当業界で理解されるようなプラスミド構築のやり方によるその他のマーカーを使用する。形質転換細胞から得たプラスミドは、次にClewell et al.、1969、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 62:1159の方法に従って調製し、任意でクロラムフェニコール増幅を行う。Clewell、1972、J.Bacteriol.110:667を参照されたい。または、プラスミドDNAはBethesda Research Laboratories出版 Focus (2)11頁の“塩基−酸(base−acid)”抽出法を用いて調製でき、手順12から17の工程をDNAのCsCl/臭化エチジウム超遠心分離法に置き換えることで非常に純粋なプラスミドDNAを得ることができる。さらに別の方法では、市販のプラスミドDNA分離キット、例えばHISPEED(商標)、QIAFILTER(商標)及びQIAGEN(登録商標)プラスミドDNA分離キット(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア州)は供給メーカーの提供する手順に従って使用できる。この分離DNAは例えば、制限酵素分解及び/または配列決定により、Sanger et al.、1977、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5436、さらにMessing et al.、1981、Nuc.Acids Res.9:309にも記載されているジデオキシ方法またはMaxam et al.、1980、Methods in Enzymology 65:499の方法によって分析できる。
制御配列、発現ベクター及び形質転換方法は遺伝子を発現させるために使用される宿主細胞の種類に依存する。一般的に、原核生物、酵母、昆虫または哺乳類の細胞は宿主として使用される。原核生物の宿主は一般に、組換えタンパク質の生成のために最も効果的で便利であり、従ってタンパク質の発現のために好ましい。
組換えタンパク質を発現するために最も使用される原核生物は大腸菌である。しかしながら、バチルスのような大腸菌以外の細菌株も使用できる。例えば、枯草菌、シュードモナス及びサルモネラの各種、及びその他の細菌株である。このような原核生物系において、宿主または宿主に適合性の種由来の複製部位及び制御配列を含むプラスミドベクターが一般的に使用される。
大部分の細菌プロモーターの制御下における構築の発現のために、大腸菌ストックセンター(E.coli Genetic Stock Center)GCSC#6135から得た大腸菌K12株MM294を宿主として使用できる。PRBSまたはPT7RBS制御配列を用いた発現ベクターのために、大腸菌K12株MC1000λ溶原、N53cI857SusP80、ATCC39531を使用できる。1987年4月7日、ATCC(ATCC53606)に保存された大腸菌DG116及び1985年3月29日、ATCC(ATCC53075)に保存された大腸菌KB2も有用な宿主細胞である。M13ファージ組換え体のためには、大腸菌K12株DG98(ATCC39768)のようなファージ感染しやすい大腸菌株が使用される。DG98株は1984年7月13日にATCCに保存された。
例えば、大腸菌は一般的にpBR322の誘導体を用いて形質転換されることがBolivar et al.、1977、Gene2:95に記載されている。プラスミドpBR322はアンピシリン及びテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含む。これらの薬物耐性マーカーは所望のベクターを構築する際に保存または破壊されることができ、所望の組換え体の存在を検出するために非常に役立つ。一般に使用される原核生物の制御配列、すなわち転写開始プロモーターであって任意でリボソーム結合部位配列に伴うオペレーターを有するものとしては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及びラクトース(lac)プロモーター系(Chang et al.、1977、Nature 198:1056を参照)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al.、1980、Nuc.Acids Res. 8:4057を参照)、及びλ由来Pプロモーター(Shimatake et al.、Nature 292:128を参照)、及び遺伝子Nリボソーム結合部位(NRBS)を含む。ポータブル制御系カセットが1987年12月8日に発行された米国特許第4,711,845号において開示されている。このカセットは、NRBS配列の3’の6塩基対内において開裂を可能をする少なくとも1つの制限部位を有する第三のDNA配列の上流に入れ替わりに配置されて、動作可能にNRBSに結合するPプロモーターを含む。また、Changらの欧州特許公開公報番号第196,864号(1986年10月8日公開)に記載されたホスファターゼA(phoA)系も有用である。しかしながら、原核生物に適合する利用可能ないかなるプロモーター系も本発明の発現ベクターを構築するために使用できる。
細菌に加えて、酵母菌のような真核微生物も組換え宿主細胞として使用できる。サッカロマイセス・セレヴィシエの実験株であるパン酵母は、その他の多数の株も一般に入手可能であるが、最も頻繁に使用される。2ミクロンの複製起点を用いるベクターは一般的であるが(Broach、1983、Meth.Enz.101:307参照)、酵母発現に適したその他のプラスミドベクターは公知である。例えば、Stinchcomb et al.、1979、Nature 282:39;Tschempe et al.、1980、Gene 10:157;及びClarke et al.、1983、Meth.Enz.101:300を参照されたい。酵母ベクターの制御配列は解糖酵素の合成のためのプロモーターを含む。Hess et al.、1968、J.Adv.Enzyme Reg.7:149;Holland et al.、1978、Biotechnology 17:490;及びHolland et al.、1981、J.Biol.Chem.256:1385を参照されたい。さらに当業者に公知のプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのためのプロモーター(Hitzeman et al.、1980、J.Biol.Chem.255:2073を参照)及びグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ及びグルコキナーゼのようなその他の解糖酵素のためのプロモーターを含む。成長条件によって制御される転写におけるさらなる利点を有するその他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解系酵素、及び麦芽糖やガラクトースの利用に必要な酵素(Holland、supra)のためのプロモーター領域である。
終了配列もコード配列の3’末端に位置する発現を高めるために使用できる。このようなターミネーターは酵母由来遺伝子中のコード配列に続く3’非翻訳領域中に見られる。酵母適合性プロモーター、複製の起点、及びその他の制御配列を含むいかなるベクターも酵母発現ベクターを構築する際の使用に適している。
コード配列は多細胞生物由来の真核生物の宿主細胞培地中にも発現できる。例えば、Tissue Culture、Academic Press、Cruz and Patterson、編集(1973)を参照されたい。有用な宿主細胞株はCOS−7、COS−A2、CV−1、マウス骨髄腫N51及びVERO、HeLa細胞及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のようなマウスの細胞を含む。このような細胞の発現ベクターは、例えば通常使用されるシミアンウイスル40(SV40)由来の初期及び後期プロモーター(Fiers et al.、1978、Nature 273:113参照)またはポリオーマ、アデノウイルス2、ウシ乳頭腫ウイルス(BPV)またはトリ肉腫ウイルス由来のその他のウイルス性プロモーター、または免疫グロブリンプロモーター及び熱ショックプロモーターのような哺乳類細胞に適合性のあるプロモーター及び制御配列を普通は含む。BPVベクター系を用いた哺乳類系中における発現DNAのための系は米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修飾は米国特許第4,601,978号に記載されている。哺乳類細胞宿主系の形質転換の一般的な特徴はAxelによって米国特許第4,399,216号に記載されている。“エンハンサー”領域も発現を最適化させるために重要である。これらは、一般的にはプロモーター領域の上流に見られる配列である。必要に応じて、ウイルス源(viral sources)から複製起点を得ることができる。しかしながら、染色体への組込みは真核生物のDNA複製のための代表的なメカニズムである。
植物細胞も宿主として使用でき、ノパリン・シンターゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列(Depicker et al.、1982、J.Mol.Appl.Gen.1:561参照)のような植物細胞に適合性のある制御配列は使用できる。バキュロ・ウイスルベクターによって与えられる制御系を利用した昆虫細胞を使用した発現系も記載されている。Miller et al.、Genetic Engineering(1986)、Setlow et al.、編集、Plenum Publishing、Vol.8、pp.277−97を参照されたい。昆虫細胞に基づいた発現はハスモンヨトウ近似種(Spodoptera frugipeida)において達成できる。これらの系によって組換え体酵素を作成することもできる。
使用される宿主細胞に依存して、形質転換はそのような細胞に適切な標準技術を用いて行われる。Cohen、1972、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110に記載されるように、塩化カルシウムを使用したカルシウム処理は原核細胞または細胞壁障壁を実質的に含むその他の細胞のために使用される。アグロバクテリウムツメファシエンス感染(Shaw et al.、1983、Gene23:315参照)は特定の植物細胞に使用される。哺乳類細胞には、Grahamら、1978、Virology 52:546のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。Van Solingen et al.、1977、J.Bact.130:946及びHsiao et al.、1979、Proc.Natl.Acad.Sci.USA76:3829の方法に従って酵母菌への形質転換が実施できる。例えば、エンコードされたタンパク質のアミノ酸配列を修飾しないで宿主細胞のコドン処理により適合した配列を提供するために、本発明の標的酵素をエンコードするDNAの配列を修飾することは望ましい。初期の5〜6のコドンに対するこのような修飾は発現を効果的に向上させることができる。同じアミノ酸配列をエンコードするが、発現を効果的に向上させるために修飾されたDNA配列は、本発明と同等及び含まれるものと認められる。
突然変異誘発法のための多様な部位特異性プライマーが利用可能であり、公知である。例えば、引例として本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989、第2版、15章51、”Oligonucleotide−mediated mutagenesis”を参照されたい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は部位特異性突然変異誘発を行うために使用できる。他の当業界における標準技術としては、所望の変異体をエンコードする合成オリゴヌクレオチドが、突然変異を起こさせるプライマーの伸長生成物の構築のためのテンプレートとして働くpBSM13+誘導体のような、一本鎖ベクター中に含まれる相補的核酸配列の直接合成のためのプライマーとして使用される。突然変異を誘発されたDNAは宿主細菌へ形質転換され、形質転換細菌の培地は被覆(plated)、同定される。修飾ベクターの同定はニトロセルロースフィルターまたはその他の薄膜によって選択された形質転換体のDNA転写を含んでもよく、修飾配列に対して正確に一致するハイブリダイゼーションを可能とするが、本来の非突然変異誘発鎖を用いたハイブリダイゼーションを阻害する温度においてキナーゼ合成突然変異プライマーを用いてハイブリダイズした“リフト(lifts)”を含んでもよい。次にプローブを用いてハイブリダイズしたDNAを含む形質転換体は培養され(DNA配列は一般的に配列分析によって確認される)、修飾DNAのリザーバとして働く。
いったんタンパク質が組換え宿主細胞中で発現されると、タンパク質を精製することが望ましい。本発明の標的酵素を精製するために多様な精製手順が使用できる。
長期安定性のために、精製標的酵素は1つ以上の非イオン性ポリマー界面活性剤を含む緩衝器内で保存しなければならない。このような界面活性剤は一般的に、分子量約100〜250,000の範囲内であり、好ましくは約4,000〜200,000ドルトン、かつpH約3.5〜9.5、好ましくは約4〜8.5で酵素を安定化させる。このような界面活性剤の例としては、McCutcheon’s Emulsifiers&Detergents,North American edition(1983)(出版元、McCutcheon Division of MC Publishing Co.、175Rock Road、Glen Rock、NJ(USA))の295〜298頁に明記されるものを含む。その全体の記載は本明細書に引例として組み込まれる。好ましくは、界面活性剤はエトキシル酸脂肪アルコールエーテル及びラウリルエーテル、エトキシル酸アルキルフェノール、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、修飾オキシエチラート及び/またはオキシプロピラート直鎖アルコール、ポリエチレングリコールモノオレアート化合物、ポリソルベート化合物、及びフェノール脂肪アルコールエーテルを含む群から選択される。特に好ましくは、Tween20(商標)、Americas社(ウィルミントン、デラウェア州)のポリオキシエチラート(20)ソルビタンモノラウレート及びIconol(商標)NP−40、BASF Wyandotte社(パーシッパニー、ニュージャージ州)のエトキシラートアルキルフェノール(ノニル)である。
標的酵素の作成方法
本発明の1つの実施形態において、標的酵素は、プレ標的酵素の変異耐性配列を修飾し、修飾酵素が標的に結合して標的に結合中は触媒活性を有する場合にその修飾酵素を選択することにより作成される。好ましい実施形態は、相互活性の手段を用い、標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素は変異配列によってさらに修飾され、さらに標的に対する結合が増加するか、触媒活性が増加するか若しくはその他の性質において改善を示す場合には選択される。所望のすべての性質を有する酵素が得られるまで該サイクルを繰り返す。他の好ましい実施形態は、プレ標的酵素は修飾された2つ以上の変異耐性配列を有する。より好ましい実施形態は、プレ標的酵素は修飾された3つ以上の変異耐性配列を有する。さらにより好ましい実施形態は、プレ標的酵素は修飾された4つ以上の変異耐性配列を有する。
本発明の他の実施形態は、プレ標的酵素の変異耐性配列は、修飾酵素のレパートリーを形成する変異配列のレパートリーを用いて置換され、修飾酵素は修飾酵素のレパートリーが標的に結合する間触媒活性を有するものが選択される。好ましい実施形態において、相互活性手段を用い、ここで標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素はその変異配列においてさらに修飾され、標的に対する結合が増加するか、触媒活性が増加するか若しくはその他の性質において改善を示す場合にはさらに選択される。所望のすべての性質を有する酵素が得られるまで該サイクルを繰り返す。
他の実施形態において、プレ標的酵素の第一の変異耐性配列に対応する第一の変異配列はプレ標的酵素の第二の変異耐性配列に対応する第二の変異配列に組み込まれ、第一の変異配列及び第二の変異配列を含む修飾酵素を作成し、標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素が選択される。好ましい実施形態において、相互活性手段を用い、ここで標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素はその第一及び/または第二の変異配列においてさらに修飾され、標的に対する結合が増加するか、触媒活性が増加するか若しくはその他の性質の改善を示す場合にはさらに選択される。所望のすべての性質の酵素が得られるまで該サイクルを繰り返す。
別の好ましい実施形態において、プレ標的酵素の第一の変異耐性配列に対応する第一のレパートリーである変異配列はプレ標的酵素の第二の変異耐性配列に対応する第二のレパートリーである変異配列に組み込まれ、第一のレパートリーから得た変異配列及び第二のレパートリーから得た変異配列を含む修飾酵素のレパートリーを作成し、標的酵素は標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素のレパートリーから選択される。好ましい実施形態において、相互活性手段を用い、ここで標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素はその第一及び/または第二の変異配列においてさらに修飾され、標的に対する結合が増加するか、触媒活性が増加するか若しくはその他の性質の改善を示す場合にはさらに選択される。所望のすべての性質の酵素が得られるまで該サイクルを繰り返す。
別の好ましい実施形態において、プレ標的酵素の第一の変異耐性配列に対応する第一のレパートリーである変異配列はプレ標的酵素の第二の変異耐性配列に対応する第二のレパートリー及び第三の変異耐性配列に対応する第三のレパートリーである変異配列に組み込まれ、第一のレパートリーから得た変異配列、第二のレパートリーから得た変異配列及び第三のレパートリーから得た変異配列を含む修飾酵素のレパートリーを作成し、標的酵素は標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素のレパートリーから選択される。好ましい実施形態において、相互活性手段を用い、ここで標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素はその1つ以上の変異配列においてさらに修飾され、標的に対する結合が増加するか、触媒活性が増加するか若しくはその他の性質の改善を示す場合にはさらに選択される。所望のすべての性質の酵素が得られるまで該サイクルを繰り返す。
他の好ましい実施形態において、プレ標的酵素の第一の変異耐性配列に対応する第一のレパートリーである変異配列はプレ標的酵素の第二の変異耐性配列に対応する第二のレパートリー、第三の変異耐性配列に対応する第三のレパートリーである変異配列、及び第四の変異耐性配列に対応する第四のレパートリーである変異配列に組み込まれ、第一のレパートリーから得た変異配列、第二のレパートリーから得た変異配列、第三のレパートリーから得た変異配列及び第四のレパートリーから得た変異配列を含む修飾酵素のレパートリーを作成し、標的酵素は標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素のレパートリーから選択される。好ましい実施形態において、相互活性手段を用い、ここで標的に結合する間触媒活性を有する修飾酵素はその1つ以上の変異配列においてさらに修飾され、標的に対する結合が増加するか、触媒活性が増加するか若しくはその他の性質の改善を示す場合にはさらに選択される。所望のすべての性質の酵素が得られるまで該サイクルを繰り返す。
1つの修飾酵素に組み込まれることができる変異配列の数は対応するプレ標的酵素が処理する変異耐性配列の数によってのみ制限される。
1つの実施形態において、プレ標的酵素の酵素活性は少なくとも部分的に機能を有する修飾酵素を選択するために使用され、従って修飾によって比較的構造上は影響を受けない。例えば、細胞に対して抗生物質の耐性を与える修飾プレ標的酵素は、抗生物質にさらされた細胞中で発現できる。抗生物質に対する耐性は、修飾によって酵素は不活性化されないことを示している。同様に、必要な栄養を代謝する修飾プレ標的酵素はその栄養を必要とする細胞中で発現させることができる。栄養の欠乏の増加は、修飾酵素により酵素は不活性化されないことを示している。より一般的には、細胞に対して検出可能または選択可能な表現型を与えるいかなるプレ標的酵素も修飾によって不活性化されない修飾プレ標的酵素を選択するために使用できる。無細胞またはin vivo選択または検出系も使用できる。例えば、修飾プレ標的酵素によるフルオロジェニックまたはクロモジェニック基質のプロセシングである。
機能の改善(または修飾)のためにあるタンパク質酵素から他の酵素上に認識要素を移植することを提案する研究者もいる。Smith et al.、J Biol Chem 270:30486(1995)を参照されたい。しかしながら、効率的なin vivoターゲティングは分子量約15kDの単一、組換えVドメインと同じくらい小さいタンパク質では著しい効果をもって達成できないということは頻繁に示されている。ペプチドのランダムライブラリはプロテアーゼ阻害剤のような多様な骨格タンパク質上に作成されてきた。Roberts et al.、Gene 121:9(1992)及びGFPを参照されたい。さらにそのようなループライブラリのための部位はタンパク質の全体的な折り畳みに基づいて非常に制限されているということが一般的に推測されており、そのようなタンパク質の三次元モデルを得るために有用なライブラリを構築、スクリーニングすることが必要とされることが多い。米国特許第6,025,485号を参照されたい。このような置換ループの位置決めのルールは明確ではない。さらに、Fab断片のような巨大な結合断片は腫瘍ターゲティング用途において固く結合することが必要ということが頻繁に推定される。Hudson、Curr Opin Biotechnol.9(4):395(1998)を参照されたい。折り畳みタンパク質のファージ提示法は困難であることが多く、ファージ提示法によるタンパク質のために巨大なライブラリを作成することは問題が多い。
1つの実施形態において、本発明は単一酵素骨格(scaffold)上、治療的効果のために、固い結合を有する、標的酵素及び効果的な酵素であって60kDより小さく、好ましくは45kDよりも小さい酵素を生成する方法を提供する。本治療系の自由度は、標的酵素の触媒特性によりナノモル濃度またはそれより少ない投与量において効果を得るために形状を整えることができる。さらに、血液循環半減期は例えばADEPTまたはTEPT方法における迅速なクリアランスのためにカスタマイズされることができる。このうような作用物質のサイズをより小さくすることにより、大きな分子にとっては問題の多かった吸入のような新規な運搬方法を提供する。
本発明の1つの実施形態において、標的酵素の生成は以下の工程を含む。
1)腫瘍抗原または細胞表面マーカーを含む細胞特異標的に対する親和力に関して、選択ターゲティング方法を用いて(例えばファージ上に提示された)ペプチドライブラリーをスクリーニングする工程
2)固い結合を有するファージペプチドのPCR増幅及びこれらのサブライブラリーのクローンを作るために目的タンパク質にタイプII制限酵素を用いる工程
3)細胞に基づいて分析するプロドラッグ活性のような機能のために単一クローンレベル上(10〜10)で非常に小さいこれらの標的酵素ライブラリーをスクリーニングする工程。
ペプチドが提示されるpIIIファージとの関連で標的に結合するペプチド配列は酵素中のループとの関連でも標的に結合するであろうことが推測される。これはラジカル上の推測であるが、ペプチドはファージ中にフリーのアミノ末端を有し、従ってその立体構造はおそらくより多くの立体構造に適合できるので、多コピーpIII系に関連する結合活性は固い結合剤を可能とする。例えば、in vivoファージ提示によって同定されるペプチドである。Arap et al.、Science 279:377(1998)を参照されたい。機能に関してスクリーニングするために4〜5のライブラリーだけが酵素内で構築されなければならないような、適切な制限部位を有するサブライブラリーの構築を可能とするクローニング方法を発展させることができる。この方法は適当なライブラリー(図4)を導入するためにクローニングするタイプII制限酵素の使用を必要とする。本発明者は、オリゴ設計中の追加の突然変異変動性の採用はループ標的変異体の発現を向上させるであろうことを仮定している。この方法は、ファージペプチドライブラリーを用いた選択ターゲティングにおける主要な工程がPCR工程に依存して、標的がファージに結合するのを増幅し、従ってPCRプライマーは目的タンパク質に直接クローンを作成するためのターゲティング方法の一部分として設計できるという事実をうまく利用している。従って、ファージタンパク質ライブラリーを直接構築する際の問題は軽減される。
挿入及び置換において自由度の高いループは当業界に公知の基準に基づく。例えば、バチラス・レンタス由来ズブチリシン中において、ループ挿入は例えば以下のものから同定できる:1.末端β−因子を有する配列の配置、2.系統にわたる指数の保存、3.15N−HNOE相関時間、4.活性部位残基付近の基質結合溝(grooves)/裂け目(clefts)(基質結合を完全にふさがないように)。
あるいは、酵素ライブラリーは、直接または提示技術を用いて標準分子生物学手順によって生成でき、選択ターゲティング方法を用いて目的の標的に対する結合親和性をスクリーニングできる。いったん固い結合配列が同定されると、酵素は相互活性の種類における結合及び機能に関して最適化できる。
変異配列レパートリー
1つの実施形態において、レパートリー内の変異配列は1つ以上の所望の形質を持つように選択される。例えば:プレ標的酵素に対して相同性のある立体構造を取り入れた変異配列を含む標的酵素、その触媒活性を保持する変異配列を含む標的酵素、その安定性(例えばプロテアーゼ安定性)を保持する変異配列を含む標的酵素、多様な化学的特性及び/または形状を持つレパートリー内の変異配列、低免疫原性を有する変異配列、組換えライブラリーまたはライブラリー構成要素の部分的集合内の個々の変異配列の同定及び/または特定を簡単にする公知の液体クロマトグラフィー/質量分光法(LC/MS)分布を有する変異配列。
実用的にするために、タンパク質変異体のライブラリーは少なくとも1つの望ましい、特定可能な性質を有する部分を含んでいることが必要である。ライブラリーサイズを増加させることにより、所望のクローンを見つける確率を増加させることができる。しかしながら、ライブラリーのサイズは形質転換効果やスクリーニングまたは選択能力のような様々な因子により限定できる。所望のクローンを見つける確率を増加させるためのより効果的な方法はライブラリーのヒット回数、すなわちライブラリー内の有用なクローンの割合を増加させることである。
あらかじめ選択された変異配列の組換えレパートリーは組換えライブラリー内の不安定な変異体の割合を減少させる。一般的にタンパク質は、活性部位に近い残基の置換、または外側ループ内の残基より耐性の少ないタンパク質の保存中心における置換に対する耐性が多様である。しかしながら、進化的保存をほとんど示さないタンパク質の外側残基であっても、タンパク質の安定性を失わずに支障なく置換されることはない。もしタンパク質の多数の残基を同時に置換した場合、変異体の大部分は野生型タンパク質と比べて発現、分泌または触媒活性を損なってしまう。Axe、J Mol Biol 301:585(2000)を参照されたい。多数の断片を組換えすることにより、野生型タンパク質と異なり、各断片は十分に機能的またはほとんど十分に機能的なタンパク質を結果として生じ、従ってライブラリー中の不安定、非発現または不活性変異体の割合を著しく減少させる。これは特に、多様な組換え断片が正しく折り畳まれたタンパク質内で直接その他の各断片と相互作用しない場合のケースである。
さらに、組換え変異配列レパートリーにより、組換えライブラリー内の構造的及び化学的多様性にわたって制御することができる。例えば、Tyr及びAsnのような特定のアミノ酸はその他のタンパク質中における存在度と比べると、天然抗体の様々なループ中においてより豊富に含まれることが観測されている。これらとその他のアミノ酸は特に認識及び識別のために適しているということが推測されてきた。同様に、化学的及び構造的多様性を増加させるための断片中に荷電及び疎水性残基の数を増加させることにより、多様な断片中において荷電及び疎水性残基の発生量に影響を与えることができる。
一般的なランダムのライブラリーは非常に類似したクローンを多く含む。従って、もしライブラリーが所望の性質を有するクローンを含む場合、その結果類似の機能及び構造的特性を有するその他の多数のクローンが含まれていると考えられる。これは実際のところ所望のクローンの同定を混乱させる。理想的なライブラリーはまさに所望の特性を有する十分な数のクローンを含み、類似のクローンはほとんど含まない。すなわち、適切な分布を急勾配で有する。このようなライブラリーにおいて、サブライブラリーをプールしてそれらの性質を測定することにより所望のクローンを頻繁に同定できる。あらかじめ選択しておいた性質が非常に異なる変異断片を用いることにより、“なだらかでない(non−smooth)”適切な分布を有するライブラリーを作成できる。
変異配列レパートリーの生成
本発明の1つの実施形態において、レパートリーはヒトの配列に由来する。これにより免疫反応を引き出す可能性が減少する。さらに、公知の三次元構造を調べることができ、プレ標的酵素の変異耐性配列によって明確に対応させることができるすべての変異配列を合成することができる。他の実施形態において、プレ標的酵素の変異耐性配列を完全にランダム化または部分的にランダム化された配列と置換することができる。その次に、酵素機能や安定性の保持及びその他の重要な特質をスクリーニング及び選択できる。
あるいは、機能的変異体の配列を決定し、上述の1つ以上の基準を考慮した配列に基づくレパートリーの変異配列を選択できる。これによりレパートリーを作成することが可能となり、純粋でランダムな配列に依存しない。例えば、変異配列の重複を避けることができ、質量分光法では同定が難しいであろう質量は等しいが異なる構造をもつ変異配列を避けることができ、またはライブラリー中の多様性を最大限にするためにアミノ酸構成が非常に異なる変異配列を選択することができる。
酵素中の変異配列の配置
変異配列はプレ標的酵素の構造中のいかなる場所にあってもよい。特に関心のある領域は修飾及び/または修飾領域に対する標的の結合に耐えることができ、酵素の触媒活性に望ましくない影響を与えない領域である。
標的部位は1つ以上の変異配列を含むことができる。好ましい実施形態においては、標的部位は数個の変異配列を含む。より好ましい実施形態は、各変異配列が酵素の一次配列中の1つ以上の定常断片により近隣の変異配列から隔てられているが、折り畳まれたタンパク質内において他の変異配列同士がお互いに接近している。この配列は組換え部位を定常断片に導入できるように組換えを簡単にする。さらに、このような配列は異なる様々な断片間の直接の相互作用の機会を減少させる。
変異耐性配列は例えば単一アミノ酸であってもよく、または約100、90、80、70、60、50、40、30、20、10または5アミノ酸残基よりも短い配列であってもよい。変異配列は例えば、0〜約50アミノ酸残基であってもよい。好ましい実施形態は、変異配列は約0〜約20、0〜10、または3〜20アミノ酸残基の長さに及ぶ。“0”アミノ酸残基とは、変異耐性配列が取り除かれている状態をいう。
可能な変異耐性配列及び標的部位は例えば、相同性遺伝子の配列を照準して比較することにより同定できる。低保存度を示す配列領域は配列の高保存領域と比べて多様で異なる断片を提供するものと考えられる。特に関心のある領域は天然のタンパク質相同体がお互いに対して挿入または欠失を有する領域である。
可能な変異耐性配列及び標的部位も例えば、プレ標的酵素またはその相同体の公知または予想できる三次元構造に基づいて選択することができる。例えば、いくつかの相同性タンパク質の三次元構造を配置することができ、側鎖またはペプチド主鎖の立体構造上において著しい多様性を示す構造中の領域を同定することができる。あるいは、標的が適合できる溝を形成する構造の領域を同定できる(すなわち、凹状の標的部位)。他の場合において、タンパク質から離れて突き出た領域を同定するためにも都合がよい(すなわち凸状の標的部位)。
溶媒到達可能なループもまたプレ標的酵素中の可能な変異耐性配列である。溶媒到達可能なループは例えば、その配列及びプレ標的酵素の配列中のその位置に基づいて、または公知または予想できるプレ標的酵素の三次元構造を調査することにより同定できる。
β−ラクタマーゼの変異配列の配置:他の実施形態において、本発明は標的β−ラクタマーゼ(BLA)酵素を提供し、及び標的BLA酵素、特にプロドラッグとの組合わせにおける生成方法及び使用方法を提供する。BLA及び腫瘍特異抗体断片は抗癌剤の標的放出を試験した実験において有望な結果を示した。Siemers et al.、Bioconjug Chem 8:510(1997)を参照されたい。利用可能な結晶構造の綿密な調査により、変異耐性配列の候補となる多数のループが明らかになった。特に関心があるのは、決してこれのみではないが、表面に到達しやすくかつ二次構造要素の一部ではない以下のタンパク質の領域である:Q23−P26、A50−P56、G81−R105、G116−A127、P140−T146、L184−K193、Y203−S212、E241−D245、N275−A280、A294−K309。
変異配列レパートリーの構築
図9は変異配列レパートリーを生成し、それらを組み込み、酵素の標的部位を作り上げるアミノ酸配列とは異なる非常に多数の酵素変異体を生成する全体的な工程を概説したものである。結果物である酵素変異体の混合物は目的の標的に結合する変異体を同定するために探索されなければならない。これは例えばスクリーニング、質量分光法またはファージ提示により行うことができる。組換え変異配列のライブラリーを作成するための、限定されないが、以下に記載するような多くの方法が当業者に知られている。
多数の制限またはPCR断片の組立て:各変異配列レパートリーをコードする核酸の混合物を単離する。これらの核酸は例えば、PCRまたは制限酵素を含むプラスミド混合物の消化によって調製できる。好ましい実施形態において、核酸はハパキソマー(hapaxomers)を含むプラスミドの消化により生成される。それから、変異配列レパートリーを混合して、連結反応を通して完全長プラスミドを組み立てることができる。あるいは、変異配列レパートリー中の各クローン由来の個々の変異配列を単離することができ、それからライブラリーを作成するために混合することができる。この工程は多数のDNA試料の操作を必要とするが、ライブラリー中の各変異配列の比較的豊富な発生量の制御を可能とする。
不滅性(フェニックス)突然変異誘発(phoenix mutagenesis):不滅性突然変異誘発はプラスミドに突然変異を引き起こすための方法として記載されてきた。Berger et al.、Anal Biochem 214:571(1993)を参照されたい。非パリンドローム突出部、すなわちハパキソマーを生じるエンドヌクレアーゼを用いたときに、高い効果を有するプラスミドを消化及び再組立てすることができる。本発明において、変異配列レパートリーの効果的な組換えを可能にするために図5に示されるように手順を修正する。開始プラスミドは、変異耐性配列を分離する定常断片がハパキソマーによって開裂される少なくとも1つの組換え部位(縦線によって示される)を含み、各変異耐性配列が少なくとも1つの固有の制限部位(円で示される選択部位)を含むように設計される。すべての組換え部位は、結果として生じた突出部が全組換え部位間で異なる限り、同じハパキソマーによって認識できる。いったん変異配列レパートリーが生成されると、異なるレパートリーをコードするプラスミドはそれらの組換え部位において混合及び消化される。結果として生じた断片は連結(ligated)させることができる。すべての組換え部位は異なる突出部を有するので、再連結されたプラスミドのほとんどは各配列を開始プラスミドと同じ順番で含む。その次に連結生成物は選択部位において開裂することができる。結果として、1つ以上の変異耐性配列の野生型バージョン運ぶすべての連結生成物は1つ以上の線状断片内で切断される。線状DNA分子は大腸菌を非常に減少した能率を持つものに形質転換する。各変異耐性配列が変異配列レパートリーの1つから由来する連結生成物のみが循環を維持し、高い能率を持った大腸菌に形質転換する。
従来の制限酵素クローニングを用いたライブラリー生成:変異配列レパートリーを生成した後、変異配列を含む領域は1つのレパートリーからその他の従来のクローニング方法を用いたものにクローン化される。3つ以上のレパートリーを組換えは3つ以上の断片の連結を必要とする。従来の制限酵素が様々な順番で両方向に連結できる断片として用いられる場合、これは非効率である。しかしながら、多数の2断片連結を含む反復工程において変異断片を組換えすることにより、正しく組立てられたプラスミドの断片を増加させることができる。この工程を図6に示す。
その他の組換え方法:個々の変異配列レパートリーは利用可能な任意の組換え方法を用いて組換えすることができる。組換えの他の方法は、様々な変異配列レパートリーをエンコードするプラスミドを混合し、該混合物にすべての変異断片の外側に位置するプライマーを用いてPCRを行うことである。組換えは従来のPCRの間に起こることは公知である。組換えの頻度はMeyerhans et al.、Nucleic Acids Res.18:1678(1990)に記載される非常に短い伸長時間を適用することにより増加できる。
標的に結合する修飾酵素の同定
ライブラリーから異なる変異配列の組合わせを含む目的のタンパク質の混合物を生成することができる。任意で、混合物は精製できる。標的に結合するタンパク質の変異体は混合物をカラムを通過させることにより、またはその他の固定された標的を運ぶ装置により濃縮させることができる。あるいは、混合物は目的の変異体に結合させるための標的を用いて培養できる。好ましい実施形態において、混合物は固定された標的を用いてアフィニティーカラムを通過させ、次に標的に対して弱いまたは中程度の親和性を有する変異体を取り除くためにカラムを洗浄する。工程を観測するためにカラムはクロモジェニックまたはフルオロジェニック基質を含む溶液で洗浄でき、及び結合酵素の量を観測するために任意で可逆性阻害因子を含む溶液で洗浄することができる。これにより適切な洗浄時間を選択できる。
非標的にとって望ましくない親和性を有するライブラリーの成分を取り除くことが可能である。非標的は最終的なタンパク質が結合すべきでない分子または構造である。これにより高い選択性をもって標的に結合する変異体の同定が可能となる。非標的に結合する変異体の除去は該ライブラリーまたは非標的を含む質を向上させたサブライブラリーの培養により達成できる。非標的は該工程を容易にするために固定化してもよい。標的が結合因子の親和力を濃縮する間にキャリアーに結合する場合(例えば、樹脂、カラム、プラスティックまたはビーズ)、そのキャリアーは非標的を構成すると考えられる。
濃縮変異体(enriched variants)の同一性は公知の方法のいずれを用いても測定できる。例えば、同一性は質量分光法を用いて測定できる。これは結合タンパク質の溶離を必要とし、または結合物質を直接分析できる。また、結合タンパク質の同一性は液体クロマトグラフィー及び質量分光法の組合わせを用いて測定できる。後者の分析を簡単にするために、変異断片レパートリーの成分のLC/MS側面を決定することができる。MSまたはLC/MS分析はタンパク質分解または化学分解の工程に先立って行うことができ、結合変異体の同一性は分割生成物の同一性から推定される。
ランダムプーリング(貯留)による結合因子のスクリーニング:ライブラリーは多数のプールに分割できる。これらすべてのプールは結合する変異体の内容に関して分析することができる。この測定は標的タンパク質を用いて被覆されたマイクロタイタープレートを用いてELISAと同様に行うことができる。結果として、最も強い結合因子を含む集団を測定する。続いて、陽性集団はさらに分割され、後に配列を決定できる個々のクローンが同定されるまでスクリーニングできる。
部分母集団を作成する他の方法は、部分母集団のすべての構成要素が共通して1つの可変断片を有するように部分母集団を個々に構築することである。最適の結合因子を含む部分母集団を同定することにより、最適な結合変異体の可変断片の性質を自動的に決定する。このデコンボルーション(逆重畳)工程はすべての可変断片の性質が決定されるまで繰り返すことができる。このデコンボルーション方法は結合測定の処理能力が比較的低い場合に特に有用である。
ファージまたはその他の提示:タンパク質ライブラリーがファージ、細胞またはリボソーム上で発現される多様な方法が説明されてきた。これらの方法は、すべてのライブラリーの構成要素が結合変異体の配列同定を簡単にすることができるエンコードのDNAを運ぶという共通点を有する。
本発明の1つの実施形態において、標的β−ラクタマーゼはファージミドベクターpCB04中にβ−ラクタマーゼ変異体の大きな集団をクローニングすることにより作成される。プラスミドは次にエレクロロポレーションを用いてXL−1青色細胞中に取り込むことができる。M13K07のようなヘルパーファージを用いた重複感染後、XL−1青色細胞は表面上にβ−ラクタマーゼ−pIII(ファージマイナーコートタンパク質(phage minor coat protein))融合タンパク質を含む感染ファージ粒子及びファージ粒子の内側に対応するpCB04プラスミドを生成する。
次にファージライブラリーは標的のための特異的結合因子を選択するために使用できる。バイオパンニング法は文献中にすでに記載されている(Bardas et al.、Phage Display:A laboratory mannual Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001))。簡単に述べると、ファージライブラリーは最初に非標的(対象の標的以外のいずれか)を用いて培養し、非標的に対する結合因子を消耗して使い尽くさせる。該消耗工程の後に、生じたライブラリーを標的を用いて培養する。非結合ファージ粒子は緩衝液を用いて洗い流し、結合ファージ粒子は酸溶出またはプロテアーゼ消化のいずれかによって再生させる(Ward et al.、J Immunol Methods、1996、189:73−82、Smith、Science、1985 228:p.1315−7、Smith et al.、J Biol Chem、1994 269:32788−95、Clackson、et al.、Nature、1991 352:624−28)。ファージ溶出は、ライブラリーを増幅させるためのヘルパーファージ重複感染に続いて、未使用のXL−1青色細胞を感染させるために使用する。第2のライブラリーはバイオパンニングの第2回目に使用される。同じ工程を特異的結合ファージクローンが同定されるまで複数回繰り返すことができる。
いったんライブラリーが結合因子で濃縮されると、(形質転換またはトランスフェクションによって)TOP10細胞(インビトロジェン社(Invitrogen))のような非許容性宿主中に転写されることができる。非許容性宿主において、ラクタマーゼの翻訳はHis6配列の後に停止するであろう。結果として生じた濃縮ライブラリーは、目的の標的に親和性を有する個々のクローンを同定するために高い処理能力のスクリーニングを行うことができる。
標的酵素を用いた方法
以下より、本発明の標的酵素が多くの用途を有することは当業者に明らかである。例えば、該酵素は特定のマーカーを運ぶ組織(例えば、抗原または受容体)中へプロドラッグを標的を定めて放出するという用途が可能である。あるいは、該酵素は、酵素−抗体結合に似ているが増加した安定性及び拡散性及び低コスト性を有する分析用試薬に含まれることができる。また、酵素は表面触媒としても使用でき、例えば標的ラッカーゼである。その他の用途は例えば、化合物の標的生成(例えばグルコース由来のH)及び化合物の標的破壊(例えば、特定組織由来の代謝産物または信号分子)を含む。
医薬組成物
ここに記載される標的酵素、それらをエンコードする核酸、及びプロドラッグ(またはここでは“活性化合物”ともいう)は投与に適したかたちで医薬組成物に組み込まれることができる。このような組成物は一般的には活性化合物及び薬学的に許容できるキャリアーを含む。ここで使用される“薬学的に許容できるキャリアー”という言葉はいかなる及びすべての溶媒、分散媒体、被覆、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤及び医薬的投与に適合するその類似物を含むことを意図する。このような薬理活性を有する物質に関する媒体及び試薬の使用は当業界に公知である。従来の媒体または試薬が活性化合物に非適合性である範囲を除いて、組成物中でのそれらの使用が検討される。補助的な活性化合物もまた組成物中に組み込むことができる。
本発明は標的酵素、プロドラッグ(またはその対応活性薬物)または目的の核酸の発現または活性を調節するための医薬組成物の調製方法を含む。このような方法は目的の活性化合物の発現または活性を調節する物質を含む薬学的に許容できるキャリアーを構築することを含む。このような組成物はさらに追加の活性剤を含むことができる。従って、本発明はさらに標的酵素、プロドラッグ(またはその対応活性薬物)または目的の核酸及び1つ以上の追加の活性化合物の発現または活性を調節する物質を含む薬学的に許容できるキャリアーを構築することにより医薬組成物を調製するための方法をさらに含む。
本発明の医薬組成物は意図する投与法に適合するように構築される。投与法の例としては、例えば静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜及び直腸投与のような非経口投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下投与のために使用される溶液または懸濁液は以下の化合物を含むことができる:注射のための水などの殺菌希釈剤、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン4酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液及び塩化ナトリウムまたはD−グルコースのような弾力の調節剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基を用いて調節できる。該非経口製剤はアンプル、使い捨て注射器、ガラス性製またはプラスティック製の複数回投与水薬瓶に入れることができる。
注射使用に適した医薬組成物は、消毒溶液(水溶性の)または分散液及び消毒注射溶液または分散液の即時調製のための消毒粉末を含む。静脈内投与のために、適切なキャリアーは生理食塩水、静菌性の水、Cremophor EL(商標)(BASF;パーシッパニー、ニュージャージー州)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。いかなる場合においても、該組成物は殺菌されなければならず、容易に注射できる(syringability)程度に流動性を持っているべきである。また、製造及び保存条件下において安定でなければならず、細菌や菌類のような微生物の汚染作用を避けるように保存されなければならない。該キャリアーは例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール及びその類似物)及びそれらの適当な混合物を含んだ溶媒または分散溶媒であってもよい。適当な流動性は例えば、レシチンのような被覆剤の使用により、分散させる場合には必要な粒子径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持できる。微生物作用の防止は様々な抗菌及び抗真菌剤によって達成できる。例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及びその類似物である。多くの場合において、等張剤を含むことは好ましい。例えば、組成物中のマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムのような多価アルコールや糖である。注射組成物をゆっくりと吸収させるには吸収を遅らせる物質を組成物中に含むことにより達成できる。例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンである。
殺菌注射溶液は、必要に応じてろ過滅菌法の後に、上に列挙した成分の1つまたは組合わせを含んだ適当な溶媒中に活性化合物を必要量含むことにより調製できる。一般的に、分散液は基本的な分散媒体及び上に列挙したその他の必要な成分を含有する殺菌賦形剤中に活性化合物を含むことにより調製する。殺菌注射溶液の調製のための殺菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥、及び活性成分に加えて前もってろ過滅菌されたその溶液から得られる必要な添加成分の粉末を生じる凍結乾燥である。
経口組成物は一般に不活性希釈剤または食用キャリアーを含む。それらはゼラチンカプセルに入れるか、またはタブレット中に圧縮することができる。経口治療投与の目的で、活性化合物は賦形剤と組み合わせることができ、タブレット、トローチまたはカプセルの形態で使用できる。また、経口組成物は口腔洗浄液としての使用のために流動性キャリアーを用いて調製することもでき、流動性キャリアー中の該化合物は経口的に適用でき、口をゆすいで(swished)吐き出すか、または飲み込む。
薬学的に適合性のある結合剤及び/または補助添加物質は組成物の一部として含むことができる。タブレット、錠剤、カプセル、トローチ及びその類似物は以下の成分または類似の性質を持つ化合物のいずれも含むことができる:マイクロクリスタリン・セルロース、トラガカント・ゴムまたはゼラチンのような結合剤;澱粉または乳糖のような賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはサッカリンのような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素ような流動促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、メチルサリチル酸(ウインターグリーン油)またはオレンジ香料のような香料添加剤。
吸入による投与では、化合物は加圧容器または適当な高圧ガス(例えば、炭酸ガスまたはネブライザーのようなガス)を含むディスペンサーからのエアゾールスプレーの形態で運ばれる。
全身性投与は経粘膜または経皮手段で行ってもよい。経粘膜または経皮投与では、浸透すべき防壁にとって適切な浸透剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は一般的に公知であり、例えば経粘膜投与では、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与はスプレー式点鼻薬または座剤の使用によって達成できる。経皮投与のために、活性化合物は当業界に公知の軟膏、塗り薬、ゲルまたはクリームに処方される。
該化合物は直腸運搬のために座剤(例えば、カカアバター及びその他のグリセリドのような従来の座薬基剤を用いて)または停留浣腸の形状でも調製できる。
1つの実施形態において、活性化合物は体内からの素早い排出に対抗して該化合物を保護するキャリアーを用いて調製される。例えば、インプラント及びマイクロカプセル・デリバリーシステムを含む制御放出製剤などである。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸のような生体分解性の、生体適合性ポリマーは使用できる。このような製剤の調整方法は当業者に明らかである。また、材料はアルザ社(Alza Corporation)及びノバ社(Nova Pharmaceutical,Inc.)から市販で手に入れることができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を含む感染細胞に標的を定められたリポソームを含む)も薬学的に許容できるキャリアーとして使用できる。これらは例えば、米国特許第4,522,811号に記載される当業者に公知の方法に従って調製できる。
投与を簡単にするために服用単位形態で設計及び服用量を均一にすることは経口または非経口の製剤設計において特に都合がよい。ここで用いられる服用単位形態とは、治療されるべき対象に対する統一の服用量として適応させた物理的に個別の単位をいう;各単位は必要な医薬キャリアーに関連して所望の治療的効果を得るために算出された所定量の活性化合物を含む。本発明の服用単位形態の詳細は、活性化合物固有の特性及び達成したい特定の治療効果及び個人治療のためのそのような活性化合物の調合技術に固有の制限に直接依存して決定される。
ここで定義されるように、治療に効果的な標的酵素の量(すなわち有効量)とは対象中に所望の治療効果を得るため対象に投与される標的酵素の量である。標的酵素プロドラッグ治療用途の一部として使用される標的酵素の場合、治療に効果的な標的酵素の量は、治療すべき病気の症状が改善されるように十分なプロドラッグを活性薬物に変換できるのに満足な量をいう。
一般に、対象に運ばれる標的酵素の量は多数の要因に依存する。例えば、投与手段、標的酵素の活性、所望の細胞に特異的に標的を定められる度合い、対象の組織または器官、対象から非特異的に結合する標的酵素が取り除かれるために必要な時間の長さ、所望の治療効果、対象の体重、対象の年齢、対象の身体全体の健康状態、対象の性別、対象の食習慣、標的酵素に対する対象の免疫反応、対象に施される他の薬剤または治療、病気の重症度、及び過去または将来に施される治療経過である。
プロドラッグも投与する用途で、治療に効果的な服用量の決定に影響するその他の要因は、例えば、投与されるプロドラッグの量、プロドラッグ及びその対応する活性薬物の活性、プロドラッグ及び活性薬物の副作用または毒性が挙げられる。
対象の標的酵素/質量の質量の範囲の例は、例えば、体重約0.001〜30mg/kg、体重約0.01〜25mg/kg、体重約0.1〜20mg/kg及び体重約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kgである。
例としては特に、対象は体重約0.1〜20mg/kgの範囲で、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、さらにより好ましくは約4、5または6週間の間で一週間につき1回、標的酵素を用いて治療を受ける。標的酵素の効果的服用量は特定の治療過程の間、増加または減少させてもよいということもまた理解されるであろう。服用量の変化はここに記載される診断検査の結果から明らかにすることができる。
1つの実施形態において、標的酵素の投与は全身性である。他の実施形態において、標的酵素の投与は結合させるために標的上またはその近くにする。
本発明の他の実施形態において、プロドラッグもまた対象に投与される。プロドラッグの適切な投与量は医者、獣医または研究者の通常の知識の範囲内において多数の要因に依存することが理解される。プロドラッグの適切な投与量は例えば、効果的な標的酵素の投与量に影響する要因と同じく上述の要因に依存する。典型的な投与量としては、対象または試料の重量kg当たりmgまたはμgのプロドラッグ量である(例えば、kg当たり約1μg〜約500mg、kg当たり約100μg〜約5mg、またはkg当たり約1μg〜約50μg)。さらに、プロドラッグの適切な投与量は所望の治療効果に関するプロドラッグの効能に依存することも理解される。1つ以上のこれらのプロドラッグが動物(例えばヒト)に投与される場合、医者、獣医または研究者は、例えば比較的低い投与量を最初に処方し、続いて適切な反応が得られるまで投与量を増加して処方できる。
考慮すべき別の重要な要因は、プロドラッグの投与のタイミングである。好ましくは、標的酵素が対象に投与され、それからプロドラッグが投与される。より好ましくは、標的酵素の投与とプロドラッグの投与の間の時間は、プロドラッグが標的に結合することにより標的部位に蓄積できるのに十分な時間であり、対象の体内の非標的部分から非結合標的酵素が除去されるのに十分な時間である。最も好ましくは、対象の体内における標的に結合する標的酵素と非結合の標的酵素の割合は、プロドラッグが投与された時に、その最大値または最大値に近い値である。標的酵素の投与後この部位に到達するために必要な時間は除去時間と呼ばれる。除去時間は、例えば、検知可能な標的酵素(例えば、放射性同位体でラベル付けした、または蛍光ラベルの標的酵素)を対象対して投与し、標的部位における酵素の量と非標的制御部位における酵素の量を間隔をおいて同時測定することにより実験用システムを用いて決定または概算できる。いくつかのプロドラッグ、特に対応する活性薬物が高い毒性を有するものは、対象の系中での非結合の標的酵素のレベルが特定の基準値以下であることを確認することはより重要である。これも上述の通り実験的に確認できる。
1つの実施形態において、プロドラッグの投与は全身性投与である。他の実施形態において、プロドラッグの投与は結合のために標的上またはその近くにされる。
本医薬組成物は容器、包装、ディスペンサーまたは投与の説明書とともにキットに含めることができる。
実施例
以下の実施例は説明の目的のためにのみ示すものであって、いかなる場合においても本発明を限定するものとして解釈されるものではない。
実施例1:β−ラクタマーゼ(BLA)中の可変ループの選出
本実施例は、β−ラクタマーゼ中の変異耐性配列は変異配列レパートリーを用いて同定及び置換できるということを示す。
エンテロバクター・クロアカ(E.cloacae)(pdb登録番号1BLS)のp99 β−ラクタマーゼは20アミノ酸残基のプロ配列が削除されている図1に示されるような配列を有する。この構造は、表面上に現れて明確な二次構造を含まない残基を同定するために手動で調べ、これらの残基は太字で示した。活性部位残基は*で印をつけた。アミノ酸残基116−127、及び295−306におけるループは活性部位の近傍にある。該構造をクローン相同体1GCE(69%相同性)と比較し、1.5Åにおいて構造上分散はなかった。該構造は遠縁相同体(リモートホモログ)1PTE(20%相同性)とも比較した。構造上保存されない領域はイタリック体で記した。この相同体に基づいて様々な挿入及び欠失が可能となる。
ループ・モデリング:腫瘍抗原ペプチドに対する様々な抗体のループ(1SM3)はp99上に表した。これは2つの分子のトポロジーが異なることが原因でうまくいかなかった。p99をそれから可能性のある多様なループ及び適切に離れた距離に基づくループ挿入部位や1SM3重鎖の構造モチーフに関して調べた。抗体CDRはすべてβシート間のストランドの結合を形成する。1SM3.H中の該3つのループ間の距離は4〜9Å及び6〜10Åであり、測定が行われる場所に依存する。
以下のループはp99中の可能な変異耐性配列として採取した(図1参照)。
ループA:Y34とK37残基の間。1SM3のCDR2由来の14残基のうち12残基のモデルを表した。該モデルは5〜12残基がこの領域の中に設計されたことを示している。
ループB:N302とS311の間。1SM3の伸長CDR1由来の10残基のうち9残基のモデルを表した。該モデルは7〜10残基がこの領域の中に設計されたことを示している(すなわち、結果的に最小のループ長さ変化)。297〜302残基(埋没した側鎖を持つ298は除く)も反応して変化しやすいものとして示した。
ループC:P330とQ333残基の間。1SM3のCDR3由来の7残基のうち6残基のモデルを表した。該モデルは5〜8残基がこの領域の中に設計されたことを示している。
2つのその他の伸長領域はループA、B及びCと同じ反応して変化しやすい側面を有する:E241とL248間のループD、M273とA280間のループEである。6〜10残基がこれらの領域の中に設計されたことを示している。
ループA、B及びCは相互に活性(〜8−10Å)、A、C及びDは相互に活性(Dへの挿入はなく、14Å)、及びB、C及びEは相互に活性する(Dへの挿入はなく、10Å)。279〜309残基は相同体(ジペプチダーゼ)構造1PTE中で除去される。
合成BLA遺伝子の構築:プラスミドpK1841は、PCRに基づく方法を用いてlacZ遺伝子を除去し、EcoRI及びSalI制限部位を導入することによりpK184から構築した(Jobling et al.(1990)Nucleic Acids Res 18:5315−6を参照)。pK184部分はプライマーを用いて増幅した:
Figure 2005529837
各プライマー(25μM)のうち2μlと、10μlのpfu緩衝液×10、3μlのdNTP(10mM)、2μlのpK184、2μlのpfu TURBO(商標)及び80μlのHOを混合した(すべての試薬及び酵素はStratagene社製、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)。該反応は16回繰り返し、各サイクルは95℃で30秒、55℃で1分、及び68℃で6分から成る。それから、1μlのDpnI(ロシュ社製)をPCR生成物に添加してテンプレートDNAを消化した。5μlの生成混合物を50μlの化学的コンピテントTOP10細胞(Invitrogen社製)を形質転換させるために使用し、形質転換はLA+50ppm Kanプレート上で行った。プレートは37℃で一晩中培養した。8つのコロニーを採取し、プラスミドをキアゲン・ミニプレップキット(Qiagen社、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて単離した。単離したプラスミドは1.2%アガロースeゲル(Invitrogen社)上、pK184を用いて並列に流した。それらのうち2つはシーケンシングにより確認した。これらをpK1841と名付けた。
pTDS004(図7)はpPCRSCRIPT(商標)(Aptagen社、ハーンダン、バージニア州)由来の合成AmpC遺伝子をpK1841中にサブクローニングすることにより構築する。合成AmpC遺伝子はE.クロアカ P99ampC遺伝子のアミノ酸配列をエンコードするが、可変ループの間に特有の制限部位を持つ。特に、タイプIIS酵素は非パリンドローム突出部を生成するものを選択した。アミノ酸変化は引き起こさなかった。
分離した領域において、pK1841の各2μgとpPCRSCRIPT(商標)−AmpCは20単位のEcoRI及びSalI(ロシュ)を用いて50μl中37℃で2時間消化させた。消化は1.2%e−ゲルで行い、pK1841由来の2.1kb断片及びpPCRSCRIPT(商標)−AmpC遺伝子由来の1.2kb断片はキアゲンゲル精製キットを用いてゲル精製した。100μgの消化されたベクターpK1841は、タカラリガーゼ(Panvera社、マディソン、ウィスコンシン州)を用いて、16℃で一晩中、pPCRSCRIPT(商標)−AmpC由来の120ngを挿入して連結させた。5μlの連結混合物を50μlの化学的コンピテントTOP10細胞(Invitrogen社)を形質転換させるために用い、LA+50ppm Kan及びLA+50ppm Kan+0.5ppmセフォタキシム(CTX、Sigma、セントルイス、ミズーリ州)上でプレートした。プレートは37℃で一晩中培養させた。コロニー6つをLA+50ppm Kanプレートから採取し、プラスミドをキアゲンミニプレップキットを用いて単離した。HindIII及びBamHIをプラスミドを消化するために用い、どのコロニーが正しいプラスミド構築を有するかを決定した。標準的な消化は20μl体積中0.2μgのプラスミド及び2.5単位の各酵素を用いて行い、37℃で1時間培養した。正しいプラスミドは2.3kbのバンド及び1kb断片をe−ゲル上に生じた。2つの明らかに正しいプラスミドをシーケンシングにより確認し、pTDS004と名付けた。
pTDS004はPlacプロモーター及び配列をコードするampCの前方に天然のampCプロモーターを含む。実験対照のため、E.クロアカampCの野生型ヌクレオチド配列を運ぶ同等のプラスミドを構築した。LB媒体において成長する場合、両プラスミドを運搬する株は同じくらいの量のニトロセフィン活性を生成し、これは該合成遺伝子配列は十分に機能的であることを示している。
生成物の集団中の非変異ベクターの割合を最小限にしながら個々のループのランダム化を可能とする、2ステップのクローニング方法を開発した。最初の工程では、少なくとも1つの停止コドン及び2つのBbsI部位を含むスタファー(詰め込み)配列を導入した。使用するスタファー配列は制限部位を与えるべきであり、かつ例えば、フレームシフトまたは停止コドンによって遺伝子の不活性化を導くべきである。次の工程では、該スタファーをBbsIで切断し、部分的にランダム化されたオリゴヌクレオチドを含む合成カセットを挿入した。該工程は図8に示した。また、この理論はループA、B、C及びDを修飾するために使用した。すべての場合において、10〜10の形質転換体が得られた。
オリゴヌクレオチド:以下のオリゴヌクレオチドは各ループを修飾するために使用した。標準のヌクレオチド略記に加えて、Nは等モルのA、C、G及びTの混合物を意味;Dは等モルのA、G及びTの混合物を意味;Hは等モルのA、C及びTの混合物を意味;Sは等モルのC及びGの混合物を意味する。
Figure 2005529837
Figure 2005529837
Figure 2005529837
Figure 2005529837
Figure 2005529837
ライブラリーは以下のように構築した。
pME20P(一次ライブラリー)の構築
プラスミドpTDS004は酵素DraIII及びEcoRVを用いて切断し、ベクター断片(3266bp)は1%アガロースゲルからゲル精製した。クローニングのためのBbsI部位を含む2つの相補的オリゴ(下記のLA_Stuf1及びLA_Stuf2)は一緒にアニールさせた。いったんアニールさせると、オリゴはDraIII及びEcoRV(ブラント)末端に適合する末端を持つ。12.5μgの各オリゴを混合し、体積をTris pH8.5の50μlまで増やした。混合物をヒートブロック中95℃で5分間加熱し、それからヒートブロックを停止して該混合物を室温まで冷ました。
オリゴヌクレオチド配列:
Figure 2005529837
ゲル精製ベクター(3.2kb)は、ベクター:挿入部のモル比1:5の割合でアニールされた挿入部(約84bp)に連結した。90ngのベクター及び9.5ngの挿入部を用いた(合計99.5ng)。ベクター及び挿入部の混合物は10μlとなり、Tris pH8.5、10μlのタカラソリーションI(Panvera、マディソン、ウィスコンシン州)を加えて用い、該混合物はMJリサーチPCR機(ウォルサム、マサチューセッツ州)中16℃で4時間アニールさせた。ベクターのみの実験対照を3.2kb断片及び10μl以下のTris pH8.5を用い、10μlのタカラソリーションIを加えて同じ方法で用意した。連結領域はDNAクリーン&濃縮キット(Zymo Research社、オレンジ、カリフォルニア州)を用いて精製した。DNAは、毎回6μlの水を用いて(合計10〜12μl)2回転でカラムから溶出させた。5μlの精製連結反応は50μlのTop10エレクトロコンピテントセル(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)中に形質転換させて、250μlSOC中で1時間再生させた。同じことを実験対照のために行った。形質転換の半分は大LA+50ppm Kanプレート上、もう半分はLA+0.5ppmCTX上にプレートした。挿入部は遺伝子を分裂させるので、CTX上でのコロニーの成長は見込めなかった。プレートは37℃で一晩中培養させた。4つのコロニーをLA+50ppm Kanプレートから採取し、5mlLB+50ppm Kan中で一晩成長させた。ミニプレップDNAは培養物から作成した。各クローン由来の純粋なDNAは、正しい構成を同定するためにBbsI(挿入部に2部位含む)を用いて消化させた。8つのコロニーすべてが目的の挿入部を含んでおり、1つはシーケンシングにより確認し、この構成をpME17とした。
ライブラリー構築
2.5μgのpME17を、10μlのBbsIを用いて100μl反応物中、1つの3267bp断片及び1つの75bp断片を作成しながら20倍過剰消化させた。3.2kb断片は1%アガロースゲルからキアゲン精製キットを用いてゲル精製させた。アニールされたオリゴヌクレオチドの挿入部のライブラリーは上述の通りに厳密に調製した。
オリゴヌクレオチド配列:
Figure 2005529837
100ng連結反応は96ngのベクター(3.2kb)及び12ng挿入部(約90bp)を用いてベクター:挿入部モル比、1:5で行った。DNAは一緒に混合し、Tris pH8.5を用いて10μlとした。また、ベクター単一の実験対照は挿入部の容積にTrisを置き換えて組み立てた。10μlのタカラソリーションIを加え、MJリサーチ機内16℃で一晩中反応を培養させた。連結反応はDNAクリーン&濃縮キットを用いて一晩中行い、DNAは毎回6μl(10〜12)で2回転で溶出させた。5μl(約27ng)の各精製連結反応は50μlのTop10エレクトロコンピテントセル中に形質転換され、250μlSOC中1時間で再生させた。両ライブラリー及び実験対照のための形質転換は不希釈(形質転換体積50μlまたは1/6)、LA+50ppm Kanプレート及びLA+0.5ppmCTX大プレート上の両方における1/10希釈及び1/100希釈でプレートした。形質転換混合物はプレートにつき10〜15ガラス玉を用いて広げた。プレートは37℃で一晩中培養した。単位形成したコロニーの得られた総数はLA(50ppm kan)で2.6×10、LA(0.5ppm CTX)で2.5×10であった。1つの形質転換は約30,000の活性コロニーを(LA+50ppm kanと0.5ppm CTXプレート上で)産出したので、この工程を拡大して4つの形質転換を行った。約100,000コロニーをKanとCTXプレート上で得た。4つの形質転換から結果として生じた22のLA+50ppm Kanと0.5ppm CTXプレートをプレートにつき2mlのLB+50ppmKanとセルスクレーパーを用いて廃棄した。多様性の合計は2.0E+05であった。各プレートから廃棄したコロニーを貯留して、総体積36mlを再生させた。光学濃度をOD600で測定し、15mlの50%グリセロールを最終グリセロール濃度15%となるように貯留したコロニーに加えた。2mlのアリコートを−80℃で凍結させた。
pAL16P(一次ライブラリー)の構築
pTDS004BS、Bループスタファープラスミドの構築:
pTDS004BSはpME14、Aループスタファーと同じ方法を用いて構築し、以下の修飾を含む:
NheI及びBamHIはpTDS004を切断するために用いて、3246bp断片はゲル精製した。
2つの相補的なスタファーオリゴは(各74bp):
Figure 2005529837
pAL16Pの構築(Bループライブラリー)
2つのオリゴヌクレオチドを用いてpAL16Pを構築する方法は、挿入のために用いられる相補的2つのオリゴヌクレオチドが以下のものであるという点を除いて、pME20Pの構成と同じである。
Figure 2005529837
単位形成をする得られたコロニーの総数は、LA(50ppm kan)で4.7×10、及びLA(0.5ppm CTX)で3.1×10である。
pAL16Pの構築のため、挿入領域に3つのオリゴが含まれる方法も試験した。3つのオリゴは以下のものである。
Figure 2005529837
オリゴのLA_anneal1及びLB_anneal2はオリゴLB_All6−1の末端を用いてアニールできる。アニーリング反応において、LB_anneal1及びLB_anneal2の1.5倍をLB_All6−1と比例して用いた。
連結反応後、クレノウ断片及びdNTPを連結混合物に加え、プラスミド上42bpギャップを37℃で2時間満たした。この方法は結果として2つのオリゴしか挿入のために使われない手順と比較すると約2倍多くの形質転換体を生じた。
生じたライブラリーを0.5ppm CTXを含むLAプレート上で成長させ、BLA活性を示す変異体を選択した。96個のクローンをランダムに選択し、DNAシーケンシングを行った。89個のクローンが解釈可能な配列を持っていた。87個のクローンはライブラリー中にあると予想できる配列を示した。2個のクローンは配列決定のミスであると思われるフレーム移動を有した。
下記の配列はpAL16Pライブラリーから得た10個の配列の例を示す。Bループの14のランダム位置は太字で強調している。配列の第一行目は野生型BLAの配列を表す。
Figure 2005529837
pAL18Pの構築(Bループのフォーカスライブラリー)
pAL18Pは14個のアミノ酸XZXZXZKZXZXZXZを含むBループライブラリーである。ここでXはF、I、V、S、T、A、Y、NまたはDを表し、ZはV、A、E、G、L、P、QまたはRを表す。pAL18Pの構築は同じスタファープラスミドpTDS004BSを用いて始めるpAL16Pと似ている。しかしながら、合成挿入部は以下の3つのオリゴヌクレオチドが包含される。
Figure 2005529837
Figure 2005529837
連結反応の間、切断ベクターと比較して5倍を超えるオリゴヌクレオチドLB_6K7を使用し、切断ベクターと比較して7.5倍を超えるオリゴヌクレオチドLB_anneal1及びLB_anneal2を使用した。
連結反応後、クレノウ(ロシュ社)及びdNTP(ロシュ社)を製造元の推奨する濃度においてプラスミドの42bpギャップを埋めるために37℃で2時間の間加えた。続いて該DNAを精製し、ライブラリーpME20Pで記載されているようにTOP10セル中へ形質転換した。活性クローンの総数はLA+0.5ppm CTX上で2.4e5である。
pME27Pの構築(組換えライブラリー)
2mlの凍結pME20Pライブラリーを1Lフラスコ中100mlのLB+50ppm Kan中で成長させ、37℃で4時間振った。pAL16Pライブラリーと同じことを行った。DNAをキアゲン・ミニプレップキットを用いて精製し、各ライブラリーの5μgをBglI及びDraIIIを同時に用いて37℃で一晩中消化させた。消化により2つのバンドが生成し、1つは2.6kb、もう1つは660bpである。2.6kb断片をループBライブラリーから取り、660bp断片をループAライブラリーから取った。
第二の消化を、線状DNAから可能性のあるバックグラウンドを除去しながら、不完全な消化の場合660bp断片内に位置する酵素を用いてループBライブラリー上で行った。MluI及びSphIの両方を37℃で一晩中消化及び培養したものに加えた。消化は1%ゲル上で行い、ループAライブラリーからの660bp断片及びループBライブラリーからの2.6kb断片をキアゲンゲル精製キットを用いてゲル精製した。DNAは50μlの水で溶出させた。ループAライブラリー由来の660bpバンド及びループBライブラリー由来の2.6kbバンドを用いて、該2つの断片はベクター:挿入部の比1:4で一緒に連結させた。145ngの2640bp断片及び36.25ngの660bp断片を混合し、体積をTris pH8.5を含めて10μlとした。ベクターのみの実験対照(2.6kb断片)は同じ方法で組み立て、Trisを挿入部の体積で置換した。10μlのタカラソリューションIを各混合物に加え、MJ PCR機中16℃で一晩中連結反応を培養させた。DNAクリーン&濃縮キットを用いて連結反応を一晩中行い精製した。DNAを毎回8μl(14〜16μl)で2回転行い溶出させた。5μlの両ライブラリー及び制御連結反応は50μlのTOP10エレクトロコンピテントセル中に形質転換され、250μlSOC中で再生し、37℃で1時間振った。両形質転換は50μl(形質転換1/6)をそのまま、大LA+10ppmKan及びLA+0.5ppm CTX上の10−1及び10−2でプレートし、37℃で一晩中培養した。単位形成した得られたコロニーの総数はLA(50ppm kan)で6×10及びLA(0.5ppm CTX)で6.6×10であった。
pME30Pの構築(再組換えライブラリー)
pME27Pに関して記載したように該組換えは結果として、CTXに対して耐性を有しない著しい数のクローンを生じ、組換え体のいくつかは十分に機能を有する酵素を生じないということを示した。従って、pME27Pをコードするプラスミド混合物は開裂され、再連結してpME27に含まれる変異配列間における新規な組合わせを生じた。再組換えの工程は、消化後にプラスミド断片を精製する必要がないので非常に効果的であり、損失を防ぎ、制限断片間のモル比は厳密に1対1であり完全な再連結に有利に働く。この実施例は2つの変異断片レパートリーを再組換えするが、該工程は変異断片の数がより多い場合に適用できる。
1mlの凍結pME27Pライブラリーを解凍し、2つの250mlLB+10ppm Kan培地間で1L振とうフラスコ中、37℃、4〜5時間で成長させた。培養物は遠沈させ、キアゲンマキシプレップを用いて小球状にして純粋なライブラリーDNAを得た。250ngのライブラリーDNAをDraIII及びBglI(pME27Pを作成するために同じ酵素を用いた)を用いて20μl反応器中で消化した。また、実験対照も同じ量のDNAを用いて組み立てたが、リガーゼは加えなかった。両消化を37℃で一晩中培養して行った。5μlの反応を消化を確実にするために1.2%アガロースe−ゲル上で行い、それから酵素を65℃で20分間、熱不活性化させた。15μlの消化を維持するため、15μlのタカラリガーゼソリューションIを1つの消化物に加え、15μlTris pH8.5を実験対照に加えた。反応はMJ PCR機中16℃で一晩中培養させて行った。連結反応をNheI及びEcoRVを用いた消化によりさらに一晩中行った。なぜならこれらの部位はAまたはBのライブラリー断片のいずれかまたは両方がベクター中に存在する場合、破壊されるべきだからである。この工程は野生型バックグラウンドを取り除く。連結は37℃、3.5時間で消化された。連結はDNAクリーン&濃縮キットを用いて精製した。DNAは毎回8μl(14〜16μl)、2回転で溶出させた。ライブラリー及び実験対照は両方とも5μl(22ng)〜50μlのTOP10エレクトロコンピテントセルを加えることにより形質転換させ、250μlSOC中1時間で再生させた。また、100μl(形質転換の1/6)の10−1及び10−2希釈物を大LA+0.2ppmCTX上にプレートした。20μl(1/30)は小LA+10ppmKanプレート上にプレートした。すべてのプレートは37℃で一晩中培養した。残存する形質転換は50%グリセロールを用いて−80℃で冷凍した。単位形成した得られたコロニーの総数はLA(50ppm kan)で1.5×10、及びLA(0.5ppm CTX)で1.6×10であった。
ループA、BまたはDの修飾は、セフォタキシム(5〜50%)に対してさらに耐性を与える大きい変異体の断片を生じた。ループCの修飾は不活性変異体を生じた。表1はループライブラリーのいくつかをリストしたものである。
Figure 2005529837
(a)本ライブラリーは制限された多様性を含む。8個のみの異なるアミノ酸を可能とする位置もあれば、9個のアミノ酸を可能とする位置もある。7位置はリジンのみである。本ライブラリーは質量分光法により濃縮クローンのシーケンシングを容易にする。
(b)2つのライブラリー、pAL16P及びpME20Pを組換えした。本ライブラリーは22位置においてお互いが異なる変異体を含む。
(c)機能β−ラクタマーゼ遺伝子を持つ総クローンの比率はランダムクローンを単離し、ctx−寒天上の成長を試験することにより、またはベクターの存在を選択する抗生物質を含む寒天上及び同じ抗生物質及びctxを含む寒天上並列にライブラリーをプレートすることのいずれかにより決定した。
(d)このカラムはランダム化変異耐性配列(ループA、B、D)示し、どのくらいの位置がランダム化されたかを示す(以下のループ表示の数により示される)。
(e)本ライブラリーはpME27P由来のループA及びBを再組換えさせることにより作成した。
ほとんどのライブラリーから得られる96個のクローンは突然変異誘発手段を有効にするため、及びオリゴヌクレオチド合成、クローニング手段及び抗生物質選択に起因するバイアスを同定するために配列を定めた。500より多い様々なライブラリー由来のクローンの配列を定めた。そして、50〜95%の配列は予想したランダム化理論に一致することが観察された。
組換え変異耐性配列A及びBレパートリーは6〜33%の機能遺伝子を生じた。10個の変異体をこの集団からランダムに単離し、10中9個の変異体はA及びB位置の両方において変異配列を含むということを確認した。これは、いくつかの変異配列を含む変異体のライブラリーの作成を達成したという証拠である。
実施例2:BLAの発現及び精製
この実施例は、本発明に従って生成されるミリグラム量の標的β−ラクタマーゼ(BLA)分子が発現、精製できることを示す。
酵素生成物をライブラリーpAL14P及びpME20Pから選択した10BLA変異体より分析した。変異体のいくつかは37℃において低いBLA生成率という結果であった。これはタンパク質分解による劣化に起因する可能性がある。すべてのクローンは、変異体が25℃で成長するとき、野生型株と比較して少なくとも50%の活性を生じた。従って、ctx耐性を与えるほとんどの変異体はさらなる分析のために十分な酵素を生成することができ、所望のターゲティング特性を同定できる。
実施例3:ストレプトアビジン−結合BLA変異体の親和性濃縮
この実施例は、本発明の方法は触媒活性を保持する標的β−ラクタマーゼ酵素を作成するために使用できることを示す。
試料の調製
ライブラリー作成:Terrific Broth(12g/lバクトトリプトン、24g/lバクトイーストエキス、4mlグリセロール、17mM KHPO及び72mM KHPO)と50ppmカナマイシンで満たした250mlフラスコをpAL16P1ライブラリーの冷凍貯蔵物の断片を用いて培養し、直列に1/26及び1/676で希釈し、280rpmで振とうしながら25℃で成長させた。固定相の開始において適当な収穫時間を確かめるために多数の希釈を行った。光学濃度は600nm、18時間で測定した(測定値23.8)。残存物(〜21ml)を7krpm(〜4k重力)、20分間遠心することにより収穫し、上澄み部分を静かに移した。ペレットを4ml緩衝液A(20%スクロース(m/v)、200mMトリエタノールアミン、100mM EDTA、pH=7)中で再懸濁させ、ペリプラスム画分の浸透圧衝撃を始めるために4℃で20分間回転させた。試料を7krpmで再度遠心し、上澄み部分を静かに移した。ペレットを4ml緩衝液B(20mMトリエタノールアミン、0.5M NaCl、pH=7)中で再懸濁させ、20分間回転させた。上澄み部分を収集した。
野生型β−ラクタマーゼを同じ手段を用いて生成した。
ライブラリー精製:親和性に基づく精製法を用いた。選択した樹脂はβ−ラクタマーゼの活性部位に特異的である。
5mlカラムのp−アミノフェニルボロン酸は、14cm、20ml max bedポリプロピレンBIO−RAD(商標)カラム(Bio−Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、Cat.No.732−1010)を用いてアガロース樹脂に結合した(シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州、Cat.No.A8530)。
カラムは供給微孔性フリットを用いて3.5ml以下まで満たすように詰めた。カラムは10ml、1M NaCl、0.5Mソルビトール、pH=7で調節し、それから10ml、0.5Mホウ酸塩、pH=7、最後に10ml、20mMトリエタノールアミン、0.5M NaCl、pH=7を用いて調節した。カラムをこの緩衝液中で貯蔵した。流動体リザーバ−を精製に先立って流出させた。
3.5mlのペリプラスム生成物をカラムに取り込み、完全に流出させた。カラムを3.5ml、20mMトリエタノールアミンで洗浄し、0.5M NaCl、pH=7詰め込み緩衝液を完全に流出させた。結合タンパク質を3.5ml 0.5Mホウ酸塩で溶出させ、フラクションを収集した。カラムは同じ緩衝液を大量に追加することにより修整した。最終的に、5mlより多くの20mMトリエタノールアミン、0.5M NaCl、pH=7詰め込み緩衝液をカラムを通して流し、その後貯蔵した。
収集したフラクションの各濃度は溶出フラクション中で決定され、β−ラクタマーゼ活性をニトロセフィン基質(Oxoid BR0063A)を用いて標準手順中で測定した:PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を含んだ基質溶液;1.25g/l n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、100mg/l ニトロセフィン及び1g/l DMSO(ジメチルスルホキシド)を用いた。反応は25℃で、ウェル当たり210μlの総容積を含むマイクロタイター・プレート中で観測した。486nmの吸光度を分子素子(サニーベール、カリフォルニア州)プレートリーダーを用いて観測した。該評価をBLAの精製試料を用いて280nmにおけるその吸光度を基準として較正した。この評価において、活性の1単位は1mO.D.280/分の速度を生じるBLA活性の量として定義される。E.クロアカ由来の野生型BLAを3.6U/ngタンパク質の特異的活性を有する。
該ライブラリー及び精製野生型β−ラクタマーゼ系統はPAGEゲル上を視覚的に精製されるように流した。総収量は100μg以下の精製ライブラリーであった。
該ライブラリーはそれから、ストレプトアビジン、すなわち野生型β−ラクタマーゼに結合しない分子に結合させるために実験した。
装置:付属品を含むAmersham Pharmacia(アマシャム・ファルマシア) HiTrap ストレプトアビジン HP、1ml カラム(Cat.No.17−5112−01)を2つ用いた。マルチチャンネル・ヘッドを有するRainin(レイニン)DYNAMAX(商標)蠕動ポンプ(RP−1)(レイニン、エメリービル、カリフォルニア州)を所望の流速のために適切な計測Raininチューブを有する両カラムを操作するために用いた。2つのファルマシア循環フラクションコレクター(Frac−100)を試料収集のために用いた。
方法:クロマトグラフィー器具は、試料注入とカラム負荷間の遅れが最小になるように及び無視できるポストカラムのデッドスペースが最小となるように構築した。バルブを試料負荷と流れとの間に切り換えのために挿入した。500μl、21mg/lの精製pAL16P1ライブラリー及びWTβ−ラクタマーゼの両ストックを約1ml/分、総負荷量10.5μgで、同じシリンジから得た流出緩衝液500μlを含む試料の次に流出ラインに注入した。該バルブを系の流量1ml/時間以下で切り換えた(この系では1.89rpm)。1mlのフラクションを各時間毎に収集した。フラクションはニトロセフィン基質を用いてβ−ラクタマーゼ活性を分析した。300μlの最初の10個のフラクションは0.4×1〜1.7e−5で直列的に希釈した。180μlの試料を20μl基質(リン酸緩衝生理食塩水中の0.125%n−オクチル−β−D−グルコピラノシド中1.8mg/ml(3.5mM))を用いて分析した。試料の最初のフラクション9つは検知可能な活性を有さなかった。
結果:活性値はカラムに詰め込んだ試料の活性と比較して計算し、表2に示した。
Figure 2005529837
これらの結果は、pAL16P1にエンコードされる修飾β−ラクタマーゼ酵素のライブラリーが野生型β−ラクタマーゼと異なり、標的、ストレプトアビジンに結合し、野生型β−ラクタマーゼよりも遅いフラクション中で溶出され、依然として触媒活性を保有している標的酵素を含むということを示す。
β−ラクタマーゼファージライブラリーの構築
以下の実施例は、変異耐性配列内で修飾されたBLA酵素を含んだBLAファージライブラリーの順調な作成について記載する。
p99β−ラクタマーゼをエンコードする遺伝子はpCB04WTを作成するためにファージミドベクターpCB04中にサブクローン化した。図10を参照されたい。pCB04はPCB04−BL14ライブラリーを以下のように作成するために使用した。
Bループスタファー断片を含んだ合成BLA遺伝子をpCB04中SpeIとAvaI部位間にクローン化させた。該クローンはBbsIを用いて消化し、該ベクター断片をゲル電気泳動法により精製した。該ライブラリーをpAL16Pライブラリーのために上述したように作成した。次に連結DNAを精製し、XL−1F’青色細胞を形質転換させるために使用した。
形質転換細胞の断片は5mg/mlのCMPまたは5mg/mlの+0.1mg/mlのCTXのいずれかを含む寒天プレート上にプレートした。活性クローンの比率はpAL16Pライブラリーの比率と類似していた。ライブラリーの多様性は5mg/mlのCMP+0.1mg/mlのCTXプレート上の活性クローンの総数に基づいて計算した。
形質転換細胞の残りは5mg/mlCMP、10mg/mlテトラサイクリン、及び0.1mg/mlCTXの存在下、37℃、6時間で振とうしながら培養した。細胞密度は分光計(OD600)により決定した。細胞はそれからM13K07ヘルパーファージ(Invitrogen)を10回以上用いて感染させ、37℃、30分間で振とうしないで培養した。総培養容積は未使用のLB媒体を含んで250mlにした。また、最終的な抗生物質濃度も5mg/mlCMP、10mg/mlテトラサイクリン及び0.1mg/mlCTXに調節した。培地を23℃、48時間振とうさせながら培養した。ファージ調製及び続いて滴定をBarbas et al.、Phage Display:A Laboratory Manual,2001、Cold Spring Harbor Laboratory Pressの手順を用いて行った。
ここに引用されるすべての刊行物はその全体が本明細書に組み込まれる。
当業者は日常的な実験を用いるだけで、ここに記載される本発明の具体的な実施形態に対して多くの同等物を認識または確認することができる。このような実施形態は以下の請求項に含まれることを意図する。
図1はエンテロバクター・クロアカ(E.cloacae)のp99 β−ラクタマーゼの配列を示すものである。 トリプシン触媒に補助される基質によって活性薬物に変換されるプロドラッグの一例の概略図を示すものである。 プロドラッグ由来の5−フルオロウラシルに特異的に作用して発展したトリプシン触媒に補助される基質の一例の概略図を示すものである。 標的ループライブラリーの作成のための図式を示すものである。 不滅性(フェニックス)突然変異誘発を用いて標的酵素を作成するための図式を示すものである。 反復組み立てを用いて標的酵素を作成するための図式を示すものである。 プラスミドpTDS004の図式を示すものである。 プレ標的酵素の変異耐性配列を修飾するための理論体系を示すものである。 プレ選択レパートリーのランダム組換えのための理論体系を示すものである。 プラスミドpCBO4WTの図式を示すものである。

Claims (29)

  1. 標的酵素(TE)及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤を含有する医薬組成物であって、前記TEはプロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示し以下を含有する:
    a)基質認識部位;及び
    b)標的に結合する標的部位、
    ここで、
    i)標的部位は各変異配列が、標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、
    ii)類似の条件下で、標的はプレ標的酵素ではなくTEに結合する、及び
    iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
  2. プロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示す標的酵素であって、以下を含む:
    a)基質認識部位;
    b)第一の標的に結合する第一の標的部位;及び
    c)第二の標的に結合する第二の標的部位、
    ここで、
    i)各標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、及び
    ii)第一及び第二の標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で第一及び第二の標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。
  3. 第一の標的及び第二の標的が異なる、請求項2に記載の標的酵素。
  4. 第一の標的及び第二の標的が同一である、請求項2に記載の標的酵素。
  5. 少なくとも1つの標的部位が2つの変異配列を含む、請求項2に記載の標的酵素。
  6. 少なくとも1つの標的部位が3つの変異配列を含む、請求項5に記載の標的酵素。
  7. プロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示す標的酵素であって、以下を含む:
    a)基質認識部位;及び
    b)標的に結合する標的部位、
    ここで、
    i)標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の2つの変異配列を含み、
    ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きく、及び
    iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
  8. プロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示す標的酵素であって、以下を含む:
    a)基質認識部位;及び
    b)標的に結合する標的部位、
    ここで、
    i)標的部位は3つの変異配列を含み、ここで各変異配列は対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
    ii)標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。
  9. プロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示す標的β−ラクタマーゼ酵素であって、以下を含む:
    a)基質認識部位;
    b)第一の標的に結合する第一の標的部位;
    c)第二の標的に結合する第二の標的部位;及び
    d)基質認識部位における配列KTXS、
    ここで、
    i)各標的部位は、対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来の変異配列を含み、及び
    ii)第一及び第二の標的に対する標的酵素の親和力は、類似の条件下で第一及び第二の標的に対するプレ標的酵素の親和力よりも大きい。
  10. プロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示す標的β−ラクタマーゼ酵素であって、以下を含む:
    a)プロドラッグ認識部位;
    b)標的に結合する標的部位、及び
    c)基質認識部位における配列KTXS、
    ここで、
    i)標的部位は3つの変異配列を含み、ここで各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり;及び
    ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、類似の条件下で標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力よりも大きい。
  11. プロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示す標的β−ラクタマーゼ酵素であって、以下を含む:
    a)基質認識部位;
    b)標的に結合する標的部位、及び
    c)基質認識部位における配列KTXS、
    ここで、
    i)標的部位は2つの変異配列を含み、ここで各変異配列は対応するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の変異耐性配列由来であり、
    ii)標的に対する標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力は、標的に対するプレ標的β−ラクタマーゼ酵素の親和力よりも大きく、及び
    iii)標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
  12. 標的β−ラクタマーゼ酵素及び薬学的に許容し得るキャリアー、賦形剤または希釈剤を含有する医薬組成物であって、前記酵素はプロドラッグを生成物に変換させる触媒活性を示し以下を含有する:
    a)基質認識部位;
    b)標的に結合する標的部位;及び
    c)基質認識部位における配列KTXS、
    ここで、
    i)標的部位は1つの変異配列を含み、該変異配列は標的に結合しない対応するプレ標的酵素の変異耐性配列由来であり、
    ii)該標的は標的β−ラクタマーゼ酵素に結合するが、類似の条件下でプレ標的β−ラクタマーゼ酵素には結合せず、
    iii)該標的は単離したモノクローナル抗体ではない。
  13. 標的酵素が基質認識部位を通してプロドラッグに結合する、請求項1、2または7〜12のいずれかに記載の標的酵素。
  14. 標的酵素がプロドラッグを開裂する、請求項13に記載の医薬組成物。
  15. 症状の改善が必要な対象における病気の症状の改善方法であって、以下を含む、
    a)標的酵素が標的に結合可能な十分な時間をもって、治療に効果的な量の請求項1、2または7〜12のいずれかに記載の標的酵素を該対象に投与する工程;及び
    b)病気の症状を改善するために、十分な量の前記プロドラッグが活性薬物に変換される量の前記プロドラッグを前記対象に投与する工程。
  16. 標的酵素が活性薬物を放出するために前記プロドラッグを開裂する、請求項15に記載の方法。
  17. 標的酵素の分子量が約45,000ドルトンより少ない、請求項15に記載の方法。
  18. 標的酵素がプロドラッグに直接的には作用しない、請求項15に記載の方法。
  19. 標的酵素がβ−ラクタマーゼである、請求項15に記載の方法。
  20. 標的酵素がプロテアーゼである、請求項15に記載の方法。
  21. 病気が細胞増殖異常、自己免疫疾患または感染症である、請求項15に記載の方法。
  22. 細胞増殖異常が癌である、請求項21に記載の方法。
  23. プロドラッグがセファロスポリンである、請求項13に記載の方法。
  24. 薬物が化学療法薬物である、請求項13に記載の方法。
  25. 標的酵素が修飾を有し、対応する非修飾標的酵素の免疫反応と比較して減少した宿主免疫反応を有する、請求項13に記載の方法。
  26. 標的酵素が約45,000ドルトンより少ない、請求項13に記載の方法。
  27. 標的酵素が全身性投与される、請求項13に記載の方法。
  28. 標的が細胞表面分子である、請求項13に記載の方法。
  29. 細胞表面分子が腫瘍細胞表面分子である、請求項28に記載の方法。
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