JP2009506983A - ファージベクターを用いた中枢神経系への活性タンパク質の送達 - Google Patents

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Abstract

中枢神経系へと活性型でタンパク質を送達する方法は、(1)中枢神経系に送達されるべきタンパク質が線状ファージのコートタンパク質との融合タンパク質としてコードされている核酸コンストラクトを含有する1本鎖線状バクテリオファージベクターを調製し、(2)ファージゲノムとして核酸コンストラクトを組み込み、融合タンパク質がコートタンパク質として発現されるファージ粒子を調製し、(3)タンパク質が活性型で中枢神経系へと送達されるようにファージ粒子が中枢神経系に到達するような経路により、哺乳動物へとファージ粒子を送達する、段階を含む。活性型で中枢神経系へと送達されるべきタンパク質は、抗体、酵素、受容体又は別のタイプのタンパク質であり得る。本方法は幅広い診断及び治療適用がある。本発明はまた、核酸コンストラクト、送達されるべきタンパク質を含むバクテリオファージ粒子及び医薬組成物も包含する。

Description

本発明は、バクテリオファージ、特に線状バクテリオファージ由来のベクターを用いた、中枢神経系への活性タンパク質の送達のための、方法及び組成物に関する。
多くの診断又は治療適用において、活性タンパク質の中枢神経系への送達が必要とされている。中枢神経系への送達が望ましいタンパク質は、特に、酵素、抗体、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、レポータータンパク質、遺伝子発現もしくはその他の代謝プロセスを制御するタンパク質及び膜タンパク質である。適正な特異性を有するタンパク質が導入された場合、例えば、正常に機能するタンパク質の欠損又は、結合もしくは崩壊により不活性化され得る物質の望ましくない存在に関連する疾病及び状態を治療するために、中枢神経系へのこのようなタンパク質の送達を使用することができる。
しかし、中枢神経系へのタンパク質の送達は、血液脳関門(BBB)の存在によって非常に困難なものとなっている。脳の組織に血液を供する毛細血管は、血液脳関門を構成する(Goldsteinら、Scientific American 255:74−83(1986);W.M.Pardridge、Endocrin.Rev.7:314−330(1986))。脳の毛細血管を形成する内皮細胞は、身体のその他の組織で見られるものとは異なる。脳の毛細血管内皮細胞は、血液から脳への物質の受動的な動きに対して連続した壁を形成する、密着した細胞間結合により結合している。これらの細胞はまた、その他の組織において毛細血管壁を横切る幾分非選択的な輸送を可能とする飲作用小胞が少ないという点でも異なる。また、無制限の通過を可能とする細胞を通じて走る、連続的ギャップ又はチャネルも欠く。
血液脳関門は、脳の環境が一定に調節されるように機能する。ホルモン、アミノ酸及びイオンなどの血中の様々な物質レベルは、摂食及び運動などの活動によりもたらされ得る高頻度で小幅に変動している(Goldsteinら、前出)。血清組成におけるこれらの変化から血液脳関門により脳が保護されないと、神経活動を制御することができなくなる。
血流から脳を切り離すことは完全ではない。このようなことが起こったら、栄養の欠損のため、及び身体の他の部分と化学物質を交換する必要があるため、脳は適切に機能できない。毛細血管内皮細胞内に特異的な輸送系が存在することにより、正常な成長及び機能に必要とされる化合物全てを脳が制御下で受け取ることが可能となる。多くの例で、これらの輸送系は、それらの個別のリガンドの結合において、細胞に内在する膜結合受容体からなる(W.M.Pardridge、W.M.、前出)。次に、受容体−リガンド複合体を含有する小胞は、リガンドが放出される内皮細胞の脳側表面に移動する。
血液脳関門によりもたらされる問題は、脳を保護するプロセスにおいて、多くの有用性を秘める治療物質を排除することである。現在、十分に親油性である物質のみが血液脳関門に浸透することができる(Goldsteinら、前出;W.M.Pardridge、W.M.、前出)。親油性を高め、それによりその血液脳関門通過能を高めるように修飾することができる薬物がいくつかある。しかし、各薬物において個々の修飾を個別に試験しなければならず、修飾により薬物の活性が変化する可能性がある。修飾はまた、脳の毛細血管内皮細胞だけでなく、化合物が全ての細胞膜を横切る能力を増強するという非常に全般的な効果も有し得る。しかし、これは、殆どの生物学的に活性のあるタンパク質にとって、容易に実行できるものではない。このようなタンパク質は、概して、タンパク質構造の外側に、多数の、電荷を有するか又は極性のある残基を伴う構造を有し、したがって、水溶性の極性分子として輸送される。これらの二次、三次及び四次構造を大きく妨害することなく、つまり、排除するのではないにせよ、その生物学的活性を大幅に減ずることなく、これらのタンパク質を親油性を高めるように容易に修飾することができなかった。
中枢神経系にタンパク質を導入することが望まれるという状況の中でも特に、薬物中毒、とりわけコカイン中毒の治療が挙げられる。コカインは、非常に習慣性が高く、全薬物乱用の中で最も強いものである(1−3)。集中的な取り組みにもかかわらず、コカイン渇望及び中毒に対する効果的な治療は依然として達成困難である。ヘロイン中毒に対する歴史的に成功したメタドン療法とは異なり、コカイン中毒に対する実証されている薬物療法はない(4)。アゴニスト、アンタゴニスト又は抗うつ剤として作用する多くの薬物が動物モデル及びヒトの両方で評価されてきたが、効果は限られたものであった(5−11)。単独の高い効果を有する薬物がない状況で、利用可能な医薬物質は、治療に対する包括的アプローチの一部となるに違いない。
薬物療法が改良されれば、このようなプログラムの有効性が高まり、進展するならば、コカイン中毒を治療するための代替的ストラテジーが必要となることは疑いない。ある1つのこのようなストラテジーは、タンパク質を基にした治療薬を使用することであり、これにより、タンパク質がコカインに結合し、それによってその効果をブロックする、及び/又はベンゾイルエステルの加水分解を介してコカインを分解し、したがって、コカインの精神活性を低下させるように設計される(12)。過去10年にわたり、いくつかのグループが、げっ歯類モデルにおける能動的及び受動的両方の免疫付与によって、抗コカイン抗体でコカインの精神刺激効果を首尾よくブロックしたことを報告してきた。これらの結果から、抗コカイン抗体が、循環においてコカインに結合し、脳に侵入する能力を妨害することが示される(3−17)。両ストラテジーにより、ラットにおいてコカイン−誘導性の自発運動及び自己投与が低下する。コカイン中毒治療に対する異なる抗体に基づくアプローチでは、コカインに特異的な触媒抗体及びそのベンゾイルエステルの開裂を使用する(18−23)。コカイン過剰服用及び強化のげっ歯類モデルにおいて触媒抗体の効力が示されたが、しかし、報告された全ての抗体触媒に対する速度定数が不十分であり、したがって、臨床開発を行う前に、速度を改善する必要がある(24)。最後に、ヒト及びその他の哺乳動物において存在する主要なコカイン代謝酵素であるブチリルコリンエステラーゼ(BChE)(25、26)を用いているグループが、野生型又は遺伝子操作されたBChEの何れかを用いた静脈内の前処理により、コカインの行動及び生理学的効果が軽減し、その代謝を加速することができることを報告している(27−29)。これらのタンパク質に基づくアプローチの全てに共通するある欠点は、CNS内で直接作用できるものがなく、したがって、それらが首尾よく働くか否かが、酵素又は抗体と、摂取されたコカインとの間の末梢での接触にのみ依存することである。これにより、これらの酵素又は抗体の、コカイン中毒及びコカイン乱用による影響に対する治療能が大きく制限される。
したがって、中枢神経系に活性タンパク質を送達でき、タンパク質を変性させずに、又は、その生物学的活性を妨害もしくは破壊せずに、血液脳関門を通過することを可能とする、組成物及び方法の改良が必要とされている。
本発明のある態様は、活性型で中枢神経系へとタンパク質を送達する方法(該方法は、
(1)中枢神経系に送達されるべきタンパク質が線状ファージのコートタンパク質との融合タンパク質としてコードされている核酸コンストラクトを含有する1本鎖線状ファージベクターを調製し、
(2)ファージゲノムとして核酸コンストラクトを組み込み、融合タンパク質がコートタンパク質として発現されるファージ粒子を調製し、
(3)タンパク質が活性型で中枢神経系へと送達されるようにファージ粒子が中枢神経系に到達するような経路により、哺乳動物へとファージ粒子を送達する、段階を含む。)である。
通常、1本鎖線状バクテリオファージベクターは、M13、fd及びf1の群から選択されるバクテリオファージ由来である。好ましくはバクテリオファージはM13である。
通常、線状ファージベクターはファージミドである。
通常、融合タンパク質に組み込まれるコートタンパク質は、pIII、pVII、pVIII及びpIXからなる群から選択される。より一般的には、コートタンパク質はpVIIIである.
通常、タンパク質は、抗体、酵素、レポータータンパク質、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質及び膜タンパク質からなる群から選択される。
通常、タンパク質は、鼻腔内送達、静脈内送達、腹腔内送達及び筋肉内送達からなる群から選択される経路により送達される。好ましくは、タンパク質は鼻腔内送達により送達される。
本発明の別の態様は、
(1)線状バクテリオファージの複製起点と、
(2)複製起点に操作可能に連結された環状1本鎖DNA分子へのコンストラクトの複製を可能にする核酸骨格と、
(3)コンストラクトの複製中に発現され得、キメラバクテリオファージ粒子に組み立てられ得るような、融合タンパク質をコードする少なくとも1個の核酸配列と、
を含有する核酸コンストラクトである。
本発明のさらに別の態様は、
(1)1本鎖DNA分子と、
(2)少なくとも1個の融合タンパク質(該融合タンパク質は、
(i)1本鎖線状バクテリオファージのコートタンパク質と、
(ii)送達されるべきタンパク質と、を含む。)と、
を含む融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子である。
本発明のさらに別の態様は、
(1)上述のような融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子と、
(b)医薬的に許容可能な担体と、
を含有する、医薬組成物である。
本発明のまた別の態様は、
(1)線状バクテリオファージのpVIIIタンパク質である第一のドメインと、
(2)哺乳動物の中枢神経系に送達されるタンパク質である第二のドメインと、
を含有する、融合タンパク質である。
本発明は、活性型で中枢神経系へとタンパク質を送達できる方法及び組成物に関する。
本発明のある態様は、活性型で中枢神経系へとタンパク質を送達する方法である。一般に、この方法は、
(1)中枢神経系に送達されるべきタンパク質が、線状ファージのコートタンパク質との融合タンパク質としてコードされている核酸コンストラクトを含有する1本鎖線状バクテリオファージベクターを調製し、
(2)ファージゲノムとして核酸コンストラクトを組み込み、融合タンパク質がコートタンパク質として発現されるファージ粒子を調製し、
(3)タンパク質が活性型で中枢神経系へと送達されるようにファージ粒子が中枢神経系に到達するような経路により、哺乳動物へとファージ粒子を送達する、段階を含む。
1本鎖線状バクテリオファージベクターは、好ましくはM13、fd及びf1の群から選択されるバクテリオファージ由来である。特に好ましい1本鎖線状ファージはM13である。しかし、M13、fd及びf1は、非常に近い近縁種である。これらの3種類のファージのゲノムは98%を超えて同一であり;相違の殆どは、コドンの3番目の位置で起こり、コードされるタンパク質の配列は変わらない。
好ましくは、線状ファージベクターはファージミドである。これらのベクターは、1本鎖線状バクテリオファージ由来の複製起点を持つ。このようなベクターは、従来の2本鎖DNAプラスミドとして、及びファージミド鎖の1つの1本鎖コピーを産生させるための鋳型としての、複製の2つの形式の長所を有する。上述の融合タンパク質をコードするDNAなどの、DNAのクローンセグメントの1本鎖コピーを含有する線状ファージ粒子を産生させるためにファージミドを使用することができる。特に適切なファージミドはpCGMT又はpCGMTの派生物である。ファージミドは、J.Sambrook&D.W.Russell、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)、v.1、pp3.42−3.49(参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。プラスミド中で外来DNAのセグメントをクローニングし、プラスミドとして増殖させることができる。しかし、ファージミドを担うEscherichia coli(大腸菌)の適切な雄株を、一般にヘルパーウイルスとして知られている適切な線状バクテリオファージで感染させる場合、ファージミドの複製形式は、入ってくるバクテリオファージによる遺伝子産物の発現及びDNA複製の開始におけるこれらの遺伝子産物の活性の結果として変化する。ヘルパーウイルスによりコードされる遺伝子IIタンパク質は、ファージミドの遺伝子間領域の特定の部位にニックを導入し、したがって、ローリングサークルDNA複製を開始する。これにより、1本の鎖のコピーが生じる。ファージミドDNAのこれらの1本鎖コピーは、子孫のバクテリオファージ粒子に封じ込められ、次に、培地中に押し出される。ポリエチレングリコールを用いて沈殿させることによりこれらの粒子を回収し、フェノール抽出などの標準的技術により1本鎖DNAを精製することができる。
したがって、ファージゲノムとして核酸コンストラクトを組み込み、融合タンパク質がコートタンパク質として発現されるファージ粒子を調製する段階は、一般に、(a)核酸コンストラクトを組み込むファージミドを用いて細菌宿主細胞を形質転換することと、(b)ヘルパーウイルスを用いた感染によりファージ粒子を産生することと、を含む。
線状バクテリオファージがM13である場合、融合タンパク質へと組み込まれるコートタンパク質は、一般にpIII、pVII、pVIII及びpIXの1つである。しかし、pVIIIは主要なコートタンパク質であり、最大で2800コピー/ファージ粒子を発現することが可能であるので、コートタンパク質としてpVIIIを使用することが通常好ましい。しかし、ある場合では、立体的制限により、pIII又はpIXなどの別のコートタンパク質を使用することが好ましいことがある。
線状バクテリオファージ又はファージミドによる、融合タンパク質などのクローニングされたタンパク質の発現は、ファージディスプレイとして知られ、このような技術は当技術分野で周知である。ファージディスプレイは、例えば、J.Sambrook&D.W.Russell、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)、v.3、pp.18.115−18.122(この参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。
発現されるべきタンパク質は、その大きさによって線状ファージのコートタンパク質との融合タンパク質に組み込まれ、続くファージディスプレイが可能となる、あらゆるタンパク質であり得る。一般に、タンパク質は単量体、ホモ二量体又はホモ多量体であるが、しかし、後述のように、いくつかのファージミド集団を使用し、ヘテロ二量体又はヘテロ多量体の1本の鎖を発現するようにそれぞれを操作することにより、ネイティブ抗体など、ヘテロ二量体又はヘテロ多量体タンパク質を発現させることが可能である。例えば、タンパク質は、重鎖又は軽鎖などの抗体分子の鎖であり得、これらは、次に、インタクトなネイティブ抗体分子を形成するように再アセンブルすることができる。しかし、通常、タンパク質が単量体であることが好ましい。
タンパク質は、以下に限定されないが、抗体、酵素、レポータータンパク質、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質又は膜タンパク質であり得る。タンパク質が抗体である場合、一般に、scFv又はFab'断片の形態である。「抗体」という用語は、単量体又は多量体であれ、4本の鎖のL構造を有するネイティブ抗体と実質的に同等な親和性及び交差反応性を有する全てのタンパク質分子を指すものとして本明細書中で使用され、したがって、scFv又はFab'断片が特別に排除されない限り、scFv又はFab'断片が含まれる。本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、さらに、触媒抗体を包含する。
中枢神経系への送達に適切な酵素には、以下に限定されないが、癌治療で用いられている、アスパラギナーゼなど、治療効果を有する酵素、コカインエステラーゼ又はブチリルコリンエステラーゼ(コカインを加水分解する。)などの、毒素又は中毒薬物として作用する分子を分解する酵素及び、テイサックス病(ヘキソサミニダーゼのαサブユニットが欠損している。)又はゴーシェ病(酵素グルコセレブロシドβ−グルコシダーゼが欠損している。)などの、突然変異又は細胞の損傷のために欠損又は低下した細胞酵素活性の代替となる酵素が含まれる。その他の酵素も送達することができる。
送達されるべきタンパク質は、野生型タンパク質であり得るか、又は部位特異的突然変異などの突然変異により修飾されたタンパク質であり得、すなわち、ムテインであり得る。これらの技術は当技術分野で周知である。
あるいは、送達されるべきタンパク質そのものが、当技術分野で公知の技術により調製された、及びさらに下記で述べる、融合タンパク質であり得る。例えば、タンパク質は、抗体とタンパク質毒素との間の融合タンパク質であり得、これを治療目的のために投与することができる。
送達の好ましい経路は鼻腔内送達である。しかし、静脈内、腹腔内又は筋肉内送達などのその他の送達経路を使用することができる。
哺乳動物は、ヒト又は社会的もしくは経済的に重要なイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス又はウサギからなる群から選択される非ヒト哺乳動物であり得る。本発明による方法は、ヒトでの使用に限定されない。
したがって、本発明による方法は、上述のような、診断又は治療目的のために使用できる。送達されるべきタンパク質がレポータータンパク質である場合、本方法は、通常は診断目的のために、又は別の治療方法もしくはプロセスの効果を監視するために使用される。送達されるべきタンパク質が、抗体、酵素、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質又は膜タンパク質など、レポータータンパク質以外である場合、本方法は一般に、送達されるべきタンパク質により影響を受ける疾病又は状態を治療するために使用される。本明細書中で使用される場合、「治療」という用語は、疾病もしくは状態の完治又は寛解を要するものではないが、疾病もしくは状態に関連する少なくとも1つの測定可能な生理的もしくは心理学的パラメーターが治療によって改善することのみ必要である。
本明細書中で使用される場合、「単離された」という用語は、例えば本発明の核酸もしくはポリペプチドなど、分子又は組成物を指すとき、分子又は組成物が、インビボ又はその天然に生じる状態で会合する、タンパク質、DNA、RNA又はその他の混入物など、少なくとも1個のその他の化合物から分離されることを意味する。したがって、核酸配列は、天然に会合している何らかの他の成分から離されている場合、単離されているとみなされる。しかし、単離されている組成物はまた、実質的に純粋でもある。単離された組成物は、均一な状態であり得る。これは、乾燥又は水溶液であり得る。例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの分析化学技術を使用して、純度及び均質性を調べることができる。
「核酸」又は「核酸配列」という用語は、1本又は2本鎖形態及びコーディング又は非コーディング(例えば「アンチセンス」)形態を含む、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指す。この用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。この用語はまた、合成骨格を有する核酸様構造も包含する。本発明により提供されるDNA骨格類似体には、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホールアミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート及びペプチド核酸(PNAs)が含まれる;Oligonucleotides and Analogues,a Practical Approach,F.Eckstein編、IRL Press at Oxford University Press(1991);Antisense Strategies,Annals of the New York Academy of Sciences,Volume 600,Baserga及びDenhardt(NYAS1992);Milligan(1993)J.Med.Chem.36:1923−1937;Antisense Research and Applications(2993、CRC Press)。PNAsは、N−(2−アミノエチル)グリシンユニットなどの非イオン性骨格を含有する。ホスホロチオエート結合は、例えば、米国特許第6,031,092号;同第6,001,982号;同第5,684,148号により述べられている;また、WO97/03211;WO96/39154;Mata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189−197も参照のこと。この用語に包含されるその他の合成骨格には、メチルホスホネート結合又は、メチルホスホネート及びホスホジエステル結合が含まれる(例えば、米国特許第5,962,674号;Strauss−Soukup(1997)Biochemistry 36:8692−8698)及びベンジルホスホネート結合(例えば、米国特許第5,532,226号;Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153−156を参照。)。
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」という用語には、送達されるべきタンパク質と実質的に相同である構造及び活性を有する「保存的変異体(conservative variants)」が含まれる。このような保存的変異体は、変化が実質的にタンパク質の(保存的変異体の)構造及び/又は活性(例えば、抗体活性、酵素活性又は受容体活性)を変化させないような、修飾されたアミノ酸配列を有する(保存的変異体)。これらは、保存的に修飾されたアミノ酸配列の変異体(すなわち、タンパク質活性に対して重要ではないアミノ酸残基のアミノ酸置換、付加又は欠失、又は、重要なアミノ酸の置換でさえも実質的に構造及び/又は活性を変化させないような、同様の特性(例えば、酸性、塩基性、正もしくは負荷電、極性もしくは非極性など)を有する残基によるアミノ酸置換を含む。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換の一覧は当技術分野で周知である。例えば、保存的置換を選択するための一例となるガイドラインには(元の残基に続いて代表的な置換):Ala/Gly又はSer;Arg/Lys;Asn/Gln又はHis;Asp/Glu;Cys/Ser;Gln/Asn;Gly/Asp;Gly/Ala又はPro;His/Asn又はGln;Ile/Leu又はVal;Leu/Ile又はVal;Lys/Arg又はGln又はGlu;Met/Leu又はTyr又はIle;Phe/Met又はLeu又はTyr;Ser/Thr;Thr/Ser;Trp/Tyr;Tyr/Trp又はPhe;Val/Ile又はLeuが含まれる。その他の例となるガイドラインは、次の6つの群を使用するが、それぞれ、互いに対し保存的置換であるアミノ酸を含有する:(1)アラニン(A又はAla)、セリン(S又はSer)、スレオニン(T又はThr);(2)アスパラギン酸(D又はAsp)、グルタミン酸(E又はGlu);(3)アスパラギン(N又はAsn)、グルタミン(Q又はGln);(4)アルギニン(R又はArg)、リジン(K又はLys);(5)イソロイシン(I又はIle)、ロイシン(L又はLeu)、メチオニン(M又はMet)、バリン(V又はVal);及び(6)フェニルアラニン(F又はPhe)、チロシン(Y又はTyr)、トリプトファン(W又はTrp);(例えば、Creighton(1984)Proteins、W.H.Freeman and Company;Schulz及びSchimer(1979)Principles of Protein Structure,Springer−Verlagも参照。)。当業者にとって当然のことながら、上記で挙げた置換は、それだけが唯一可能な保存的置換というわけではない。例えば、ある目的のために、それらが正又は負であろうと、全ての荷電アミノ酸を互いに保存的置換とみなし得る。さらに、1個のアミノ酸又はコードされる配列における少ない割合のアミノ酸を変化、付加又は欠失させる、個々の置換、欠失又は付加もまた、送達されるべきタンパク質の三次元構造及び機能がこのような変化により保存される場合、「保存的に修飾された変異体」とみなすことができる。
関心のあるタンパク質をコードする核酸の単離及び線状ファージのコートタンパク質との適切な融合の生成のための技術は当技術分野で周知である。RNA、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルス又はこれらのハイブリッドであれ、様々な源から核酸配列を単離し、遺伝子操作し、増幅し、及び/又は組み換え発現し得る。昆虫及び細菌細胞に加え、例えば哺乳動物、酵母又は植物細胞発現系を含め、何らかの組み換え発現系を使用することができる。あるいは、例えばBelousov(1997)Nucleic.Acids Res.25:3440−3444;Frenkel(1995)Free Radic.Biol.Med.19:373−380;Blommers(1994)Biochemistry 33:7886−7896;Narang(1979)Meth.Enzymol.68:90;Brown(1979)Meth.Enzymol.68:109;Beaucage(1981)Tetra.Lett.22:1859;米国特許第4,458,066号で述べられているような周知の化学合成技術により、インビトロでこれらの核酸を合成することができる。
例えば配列において突然変異を生じさせること、サブクローニング、プローブ標識、配列決定、ハイブリダイゼーションなどの核酸の操作のための技術は科学及び特許文献中に詳しく記載されている(例えば、J.Sambrook&D.W.Russell、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.W.Ausubel編、John Wiley & Sons,Inc.,New York 1997);「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I.Theory and Nucleic Acid Preparation、(Tijssen編、Elsevier,N.Y.1993)」を参照。)。
したがって、本発明の別の態様は、
(1)線状バクテリオファージの複製起点と、
(2)複製起点に操作可能に連結された環状1本鎖DNA分子への核酸コンストラクトの複製を可能にする核酸骨格と、
(3)核酸コンストラクトの複製中に融合タンパク質が発現され得、キメラバクテリオファージ粒子に組み立てられ得るような、融合タンパク質をコードする少なくとも1個の核酸配列と、
を含有する核酸コンストラクトである。
融合タンパク質は、一般に、抗体活性、酵素活性、レポータータンパク質活性、受容体タンパク質活性、受容体タンパク質に対するリガンド活性、制御タンパク質活性及び膜タンパク質活性からなる群から選択される活性を有する少なくとも1個のドメインを含む。
当技術分野で周知であるように、ベクターに核酸コンストラクトを組み込み、適切な宿主細胞を形質転換するために使用することもできる。これは、上述のように、ファージミドベクターの基礎である。ベクターを用いて形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞もまた本発明の範囲内である。通常、宿主細胞は、線状細菌ファージ粒子を産生することができる細菌宿主細胞である。細菌宿主細胞を含む宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションする方法は当技術分野で周知であり、例えば、B.R.Glick&JJ.Pasternak、「Molecular Biotechnology:Principles and Applications of Recombinant DNA」(第二版、ASM Press、Washington、1998)、pp.74−75(この参照により本明細書中に組み込む。)で述べられている。
核酸配列にコードされる融合タンパク質は上述のとおりである。通常、線状バクテリオファージはM13である。
本発明のさらに別の態様は、融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子である。一般に、本バクテリオファージ粒子は、
(1)1本鎖DNA分子と、
(2)少なくとも1個の融合タンパク質(該融合タンパク質は、
(a)1本鎖線状バクテリオファージのコートタンパク質と、
(b)送達されるべきタンパク質と、を含む。)と、
を含む。
融合タンパク質を提示するこのバクテリオファージ粒子において、融合タンパク質は上述のとおりである。バクテリオファージがM13である場合、コートタンパク質は好ましくは主要なコートタンパク質である、pVIIIである。
本発明のさらに別の態様は、
(1)上述のような融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子と、
(2)医薬的に許容可能な担体と、
を含有する、医薬組成物である。
以下に限定されないが、ヒト血清アルブミン、イオン交換体、アルミナ、レシチン又は、リン酸、グリシン、ソルビン酸もしくはソルビン酸カリウムなどの緩衝物質を含む当技術分野で一般に公知のものから、医薬的に許容可能な担体を選択することができる。その他の担体を使用することができ、当技術分野で公知である。
上述のように、鼻腔内送達、静脈内送達、腹腔内送達又は筋肉内送達用に、医薬組成物を処方することができる。通常、鼻腔内送達が好ましい。
本発明のさらに別の態様は、
(1)線状バクテリオファージのpVIIIタンパク質である第一のドメインと、
(2)哺乳動物の中枢神経系に送達可能なタンパク質である第二のドメインと、
を含有する、融合タンパク質である。
ある選択肢において、リンカーなしで1つのポリペプチド中で発現されるように、第一のドメイン及び第二のドメインが連結される。別の選択肢において、融合タンパク質は、第一のドメインと第二のドメインとの間にさらにリンカーを含有する。融合タンパク質に対する適切なリンカーは当技術分野で周知であり、ここでさらに述べる必要はない。このようなリンカーは、通常、ランダムコイル構造を通常とる、短いオリゴペプチド領域を含む。リンカーは通常、約15アミノ酸残基未満、より一般的には約4から10アミノ酸残基からなる。
本発明を次の実施例により説明する。これらの実施例は、説明目的でのみ含まれ、本発明を限定することを意図するものではない。
中枢神経系への抗コカイン抗体の送達
コカインは、非常に習慣性が高く、全薬物乱用の中で最も強いものである(1−3)。集中的な取り組みにもかかわらず、コカイン渇望及び中毒に対する効果的な治療は依然として達成困難である。ヘロイン中毒に対する歴史的に成功したメタドン療法とは異なり、コカイン中毒に対する実証されている薬物療法はない(4)。アゴニスト、アンタゴニスト又は抗うつ剤として作用する多くの薬物が動物モデル及びヒトの両方で評価されてきたが、効果は限られたものであった(5−11)。単独の高い効果を有する薬物がない状況で、利用可能な医薬物質は、治療に対する包括的アプローチの一部となるに違いない。
薬物療法が改良されれば、このようなプログラムの有効性が高まり、進展するならば、コカイン中毒を治療するための代替的ストラテジーが必要となることは疑いない。ある1つのこのようなストラテジーは、タンパク質を基とした治療薬を使用することであり、これにより、タンパク質がコカインに結合し、それによってその効果をブロックする、及び/又はベンゾイルエステルの加水分解を介してコカインを分解し、したがって、コカインの精神活性を低下させるように設計される(12)。過去10年にわたり、いくつかのグループが、げっ歯類モデルにおける能動的及び受動的両方の免疫付与によって、抗コカイン抗体でコカインの精神刺激効果を首尾よくブロックしたことを報告してきた。これらの結果から、抗コカイン抗体が、循環においてコカインに結合し、コカインが脳に侵入する能力を妨害することが示される(3−17)。両ストラテジーにより、ラットにおいてコカイン−誘導性の自発運動及び自己投与が低下する。コカイン中毒治療に対する異なる抗体に基づくアプローチでは、コカインに特異的な触媒抗体及びそのベンゾイルエステルの開裂を使用する(18−23)。コカイン過剰服用及び強化のげっ歯類モデルにおいて触媒抗体の効力が示されたが、しかし、報告された全ての抗体触媒に対する速度定数は不十分であり、したがって、臨床開発を行う前に、速度を改善する必要がある(24)。最後に、ヒト及びその他の哺乳動物の血漿中に存在する主要なコカイン代謝酵素であるブチリルコリンエステラーゼ(BChE)(25、26)を用いているグループが、野生型又は遺伝子操作BChEの何れかを用いた静脈内の前処理により、コカインの行動及び生理学的効果が軽減し、その代謝を加速することができることを報告している(27−29)。これらのタンパク質に基づくアプローチの全てに共通するある欠点は、CNS内で直接作用できるものがなく、したがって、それらが首尾よく働くか否かが、酵素又は抗体と、摂取されたコカインとの間の末梢での接触にのみ依存することである。
バクテリオファージは、細菌に感染するウイルスであり、真核細胞に対して本質的な親和性を欠くという点で動物及び植物ウイルスとは区別される(30)。細菌培養において、高いタイターで線状バクテリオファージfdを産生させることができるので、産生が単純かつ経済的となる。さらに、ファージは、極端なpH及びヌクレアーゼもしくはタンパク質分解酵素での処理など、様々な厳しい条件に対して非常に安定である(30)。しかし、おそらく、最も重要な意義は、線状ファージの遺伝学的な柔軟性である。1985年に、Smithは、タンパク質提示系において遺伝子型及び表現型を物理的に連結させる方法を報告し、この技術はファージディスプレイとして知られるようになっている(31);これにより、幅広い様々なタンパク質、抗体及びペプチドをファージコート上で提示することができるようになっている(図1)。
インビトロでの適用に対する線状ファージディスプレイの長所は、ランダムなペプチドライブラリを提示するファージがマウスに静脈内注射され、続いて、内部器官からレスキューされ、このことから、ファージの完全性が損なわれないことが示されたこと(32、33);及び、線状ファージがCNSに浸透したことを示す報告(34)で説明されている。この後者の研究において、Solomon及び共同研究者らは、鼻腔内投与を介して、ファージディスプレイされた抗β−アミロイド抗体をマウスの脳に送達することができた。この業績は、次の知見を与えるので重要である:(1)線状ファージはCNSにアクセスすることができる。(2)ファージは、外来タンパク質をその表面に提示することができ、さらに、CNSに浸透することができる。(3)複数回、目に見える毒性効果なく、同一動物にバクテリオファージを注入することができる。
以前、抗コカイン抗体によるコカインの封鎖により、薬物の精神運動及び強化作用を抑制できることが示された(13−15)。これらの研究から、GNC92H2と呼ばれるマウスモノクローナル抗体がコカインに対して優れた親和性及び特異性を有することが分かった(K=40nM及びベンゾイルエクゴニンK=1.4μM)(35)。幅広い様々な抗原に対する高親和性抗体の選択のために、線状ファージコートタンパク質、pIII、pVII及びpIX上で抗体ライブラリを提示できることもまた分かった(36、37)。本明細書中で、発明者らは、薬物乱用治療のさらなる様式として、コカインの結合に対して高い特異性があるだけでなく、CNSにアクセスして直接CNS内で作用できるように設計されているファージディスプレイタンパク質(GNC92H2−pVIII)の治療薬としての可能性を詳述する。
材料及び方法
ファージディスプレイベクターの調製
この研究で使用した、ファージディスプレイベクター、pCGMT−p8は、ファージミドpCGMT(38)由来であった。pCGMTにおいてコートタンパク質III(pIII)遺伝子のC末端をコードするDNA配列を、主要なコートタンパク質VIII(pVIII)遺伝子で置換した。本ベクターはまた、2箇所のSfiI制限部位のある、1本鎖(scFv)遺伝子に対するクローニング部位も含有する。PCR法を用いて、scFv抗体、GNC92H2及びRCA6028に対する遺伝子を増幅した。PCR反応産物をアガロースゲルで精製し、回収し(Qiagen)、制限酵素SfiI(New England Biolabs)で消化し、pCGMT−p8にライゲーションした。DNA配列決定を行って新しいコンストラクトを確認した。
scFv GNC92H2を提示するファージ粒子の調製及び精製
E.コリTG1細胞(Stratagene)に対して、適切なscFv抗体をコードするファージミドを用いて形質転換を行った。抗生物質カルベニシリン(100μg/mL)存在下で2YTブロス 2x0.5L中でE.コリ TG1培養増殖を行った。600nm(OD600)の波長での光学密度が0.8となった時点で、細胞に対してVCSM13ヘルパーファージ(Stratagene)(1012pfu/mL)0.5mLを感染させた。室温で30分間インキュベートした後、培養物を30℃にて2時間増殖させた。次に、70μg/mLの最終濃度になるようにカナマイシン/IPTGを添加し、培養物を30℃にて一晩増殖させた。一晩増殖させた後、細菌細胞を遠心により除去し、NaCl(3% w/v)及びポリエチレングリコール(PEG)8000(4% w/v)を用いた沈殿により、ファージ粒子を上清から回収した。滅菌済みのエンドトキシン不含PBS(Invitrogen)中でファージペレットを再懸濁し、再び再沈殿させた。4mL PBS中のペレットの再懸濁後、発熱物質不含の0.45μm酢酸セルロースフィルターに通してファージ溶液をろ過し、残存する細菌細胞を除去した。ファージ調製物のタイター、すなわち、標準的プロトコールに従い、コロニー形成単位(cfu)の数を調べた(39)。
ファージディスプレイされたタンパク質の親和性測定
リガンドとして[H]−コカイン、ファージscFv GNC92H2−pVIIIを用いて平衡透析を行った;ヘルパーファージVCS M13及びRCA6028−pVIIIもまた測定し、対照として使用した。96ウェルマイクロタイタープレート(80μL/ウェル)においてファージ試料を連続希釈した。次に、ウェル(12/試料)にさらなるPBS中の[H]−コカイン80μLを満たした(2nM/ウェル)。PBSのみを含有する12ウェルの第二のプレートを2倍、用意した(160μL/ウェル)。液を満たしたウェル側でこの2枚のプレートを向かい合わせにしっかりと密着させて連結し、透析膜で分けた(カットオフ6000−8000Da)。プレートを垂直に振盪器に装着し、室温にて24時間高振動数で振盪し、その後、これらを慎重に離した。膜を捨て、各ウェルから100μLをシンチレーションバイアルに移した。5mLシンチレーション液を各バイアルに添加し、各試料に対して5分間、放射能をカウントした。各血清試料に対してこの実験を2回繰り返した。ファージ粒子の各希釈液に対して、反対側のウェル間のDPM(線量/分)の差異の平均を求めた。1.006x10−1cm−1のモル吸光改変係数及び改変ファージに対する3722塩基のゲノムサイズを用いて分光光学的にファージ粒子数を求めた(A266nm−A320nm)。
動物
着荷時の体重200から225gのオスのWistarラット(n=16;Charles River Breeding Laboratories)を湿度及び温度調節(22℃)された飼育ケースで、自由に餌及び水を摂取することができるようにして、12時間の明暗サイクル下(午後10時に照明点灯)で2群に分けて飼育した。行動学的手順は全て、明るいサイクル中に行った。行動試験前に、実験者が各ラットのハンドリングを10分間行った。National Institutes of Health Guide of the Care and Use of Laboratory Animalsを厳守して全ての手順を行った。
鼻腔内ファージ投与プロトコール
生理食塩水中で希釈したペントバルビタール(ナトリウム塩、Sigma)60mg/kgボーラスi.p.注入で動物に麻酔をかけた。ラットを仰臥させ、嗅上皮における外因性物質の存在量が最大となるように頭を置いた。サイラスティックチューブによりHamiltonマイクロシリンジ(100μL)を用いて、PBS中で希釈したGNC92H2−pVIII(wt1.0x1014pfu/mL)(50μL/鼻孔)を15から30分間にわたり鼻腔内(i.n.)投与した。i.n.投与中、反対側の鼻孔を閉じて、注入物質の自然な吸引を誘導した。対照動物には、ファージ/scRCA6028−pVIII、RCA60、リシンに結合する1本鎖抗体50μLを投与した。3連続日にわたり、1日2回、注入を行った。
ラット脳における線状ファージの検出及び同定
神経組織において、ファージの導入、残存及びクリアランスの時間枠を確かめるために、ファージ注入計画を通じて、時間連続的に、試験日及び試験後に脳試料を得た。この目的のために、ファージ注入開始後第2、3、4、8、10、13、15及び17日に脳を回収した。ハロセン吸入薬を用いて動物に深く麻酔をかけ、速やかに断首した。小脳から嗅結節まで脳を回収し、すぐに微細で均一な状態になるまですり潰し、PBS 3mL(pH7.4)で洗浄し、PBS 3mL(pH7.4)中で室温にて1時間インキュベートした。インキュベート時間後、試験管を1000rpmで卓上GS−6遠心器(Beckman)中で沈降させた。E.コリTG1細胞に対して室温にて1時間、上清の連続希釈液を用いて感染させ、カルベニシリン(100μg/mL)を含有するLuria Bertani(LB)ブロスLB)寒天プレート上に播種した。翌日コロニーをカウントし、連続希釈を基にして、タイターを計算した。陽性のファージ粒子を同定するため、ならびに抗体遺伝子の存在を確認するために、Protein and Nucleic Acid Core Facility of The Scrips Research InstituteにおいてDNA配列決定を用いて第4日及び第7日にファージ粒子から単離したファージミドを分析した。
ラット血清中の抗線状ファージ抗体の検出
ファージ注入後、第28日に、血清IgG測定のために、頸静脈から血液を採取した。pVIIIにおいてscFv GNC92H2又はRCA6028を提示する線状ファージ粒子で96ウェルマイクロタイタープレート(NuncMaxiSorp)を4℃にて一晩被覆した。ウェルを5回洗浄し、周囲温度にて1時間、PBS(pH7.4)中の5%(w/v)Blot−QuickBlocker(Oncogene)でブロッキングした。続く洗浄後、ラット血清(連続希釈したもの)をウェルに添加し、室温にて1時間インキュベートした。プレートを繰り返し洗浄した後、ブロッキング溶液中で1:5000希釈した、ヤギ−抗ラットIgG−HRP(Pierce)及びヤギ−抗ラットIgM−HRP(Pierce)を添加し、その後、周囲温度で1時間インキュベートした。プレートをよく洗浄し、製造者の説明書(Pierce)に従い、HRP基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及び過酸化水素)を添加した。Thermomax ELISAプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmの波長で呈色反応を読み取った。
行動学手順
16ワイヤケージのバンク(各ケージ20cm高x25cm幅x36cm長、床上で長軸2cmを横切る2本の水平赤外線ビーム付き)において、自発運動を測定した。10分ごとに、コンピュータにより、トータルのフォトセルビーム中断及び横断、フォトセルビームを遮断し、その後すぐに他のフォトセルビームを遮断した回数を記録し;白色ノイズ発生器によりバックグラウンドノイズを与えた。
ファージ治療計画前に、各ラットをフォトセルケージに一晩慣らし、薬物注入前に、ラットを90分間フォトセルケージに再び慣らした。免疫前の薬物反応(ベースライン)を求めるために、食塩水中で混合した15mg/kgコカインHCl(ボーラス1mL/kg)のi.p.注入を動物に対して行い、90分のセッション中、これらの運動反応を測定した。自発運動スコアに基づき、ランキング順で動物を実験群又は対照群に振り分けた。
既に述べられているように、常同的行為(スニフィング及び立ち上がり)を10分ごとに10秒間評価した(40)。次のようにして、データを分割表にまとめた:(1)各反応カテゴリーに対して、及び各10分間隔で、特定のカテゴリーを示すラット数を表に記入した。(2)次に、尤度比法により各分割表中の不均一度を計算した(統計解析を参照のこと)。
実験日に、動物に対して等張食塩水(ボーラス1mL/kg)のi.p.注入を行い、薬物注入前に90分間慣らした。上述のように、慣らし中及び試験セッション中に自発運動を測定した。実験計画は、2x3被験者間計画から構成され、ここで、2種類の異なるファージ注入物及び3種類のコカイン用量を投与した。RCA6028−pVIII又はGNC92H2−pVIII、抗コカインmAb−提示ファージの何れかを動物に投与した。コカインの用量は、10、15及び30mg/kg i.p.の範囲であった。全実験において、動物に対して、ファージ注入開始から4日目(最後のファージ処置後翌日)に、それらのコカインの対応用量を投与した。3連続日の間、動物にコカイン投与を行った。
統計解析
群内因子、時間で反復測定を行い二因子分散分析(ANOVA)(群x時間)に対して自発運動に対する10分間の総平均を求めることにより、自発運動データを解析した。Newman−Keuls帰納的検定を用いて、主要な治療効果に対する個々の平均比較を解析した。尤度比法、「情報解析」(41、42)により、常同的行為データを解析した。
結果
コカインに対するGNC92H2−pVIII親和性の確認
トリチウム標識コカイン及びファージの連続希釈物を用い、平衡透析に基づく放射性免疫アッセイを用いて、コカインに対するGNC92H2−pVIIIの親和性を調べた。GNC92H2−pVIIIのコカイン結合能をVCS M13ヘルパーファージとRCA6028−pVIIIとの間で比較した;後者の2種類のファージコンストラクトは、理論的に、コカインに結合しないと予想される。図2で示されるように、ファージGNC92H2−pVIIIは、明確にコカインと結合し、一方で、対照ファージは結合しない。この結合曲線に基づき、発明者らは、各ファージ粒子上で提示されるscFv 92H2抗体数に依存して、ファージGNC92H2−pVIIIのKd−avgが50nMから5μMの間であると推定した。
図2において、[H]−コカイン及びファージの連続希釈物を用いた平衡透析を使用して調べた場合の、コカインに対するファージディスプレイGNC92H2−pVIIIの親和性を示す(GNC92H2−pVIII(●)、RCA6028−pVIII(□)及びVCS M13(△))。
全身的コカインに対する精神運動反応
実験終了時の動物の平均体重は、365±42g(n=16)であった。フォトセルケージ慣らし手順の結果、食塩水注入後、一貫した活動パターンが得られた:一時的な覚醒(20分未満)に続いて、通常、低レベルの歩行が見られた。コカイン注入前処置ベースライン値は、(RCA6028−pVIII)523±98.6;(GNC92H2−pVIII)594±121.5であった。ファージの鼻腔内投与は、鼻孔あたり平均注入時間20分を要した。組織吻側の無菌布(tissue rostral drape)の湿り気の度合いにより、突発的な動きのくしゃみによる流出を監視した。湿り気が多い場合は、新たに投与した。図3は、鼻腔内ファージ投与計画後のコカインに対する精神運動反応を示す。10mg/kgという低用量で、コカインは、群間での有意な運動の差異を誘発した(図3a上、RCA6028−pVIII、513±94.29;GNC92H2−pVIII、317.25±78.95;F(1、14)=5.3、P<0.05)。処置x時間相互作用の有意性は見られなかった。しかし、単純効果解析から、セッションでの20分において、RCA6028−pVIII群とGNC92H2−pVIII群との間の有意差が明らかとなった(F(1,8)=6.826、P<0.05)。この時間依存的効果は、この投与において動物が示す常同症レベルで反映されていた(図3a下、2I^=76.2、df=1、9)。異なる群において、コカイン15mg/kgの結果、両精神運動測定において非常に顕著な差が見られた(自発運動:図3b上、RCA6028−pVIII、1064.375±213.52;GNC92H2−pVIII、550.125±135.89;F(1、14)=6.875、P<0.05;処置x時間相互作用の有意な主要効果について、F(1、8)=4.268、P<0.001;常同症:図3b下、2I^=82.2、df=1、9;P<0.05]。単純主要効果解析によると、群間の差異は、セッションの10分から40分の時点でより大きかった(時間10−20:F(1、8)=7.27、P<0.017;時間20−30:F(1、8)=9.03、P<0.009;時間30−40:F(1、8)=4.18、P<0.05)。より高用量のコカイン(30mg/kg)投与群は、自発運動カテゴリーにおいて、前者の群に対して、対照的な行動パターンを示した(図3c上)。全体のANOVA検定統計は有意にならなかったが、処置x時間相互作用主効果があり[F(1、8)=4.81;P<0.001]、セッションの最初の10分間で単純な主効果となった[時間0−10でF(1、8)=4.12、P<0.05;時間10−20で限界効果[F(1、8)=3.996、P<0.06]。最後に、図3c下で示されるように、この群での常同症測定において劇的な差異が観察された(2I^=91.7、df=1、9;P<0.01)。
図3において、GNC92H2−pVIII(●)又はRCA6028−pVIII(□)での鼻腔免疫付与後のコカインi.p.注入後の自発運動(横断;上及び常同的行為(スニフィング及びリーチング、下)を示す。この図は、鼻腔免疫付与後の10(a)、15(b)及び30(c)mg/kgコカイン投与に対する反応を示す。上の値は、16匹の動物の平均±SEMを表す(n=8)。、P<0.05ANOVA、群間の有意差。下のデータは、観察された行動の発生率のパーセンテージを表す。、P<0.05。
続くコカイン投与の結果、群として有意差はないが、一部の動物において持続的な抑制効果が見られた。図4は、2−withinx2−被験者間計画における、全体としての平均活動のパターンを示す(90分セッション)(内部因子において、時間(90分)、コカイン投与日(1又は4)であり、コカイン用量(10、15又は30mg/kg)及び処置(RCA6028−pVIII又はGNC92H2−pVIII)は被験者間因子である。)。この実験で得られた有意性は、ファージ注入後の日数に関して、時間依存的であった(コカイン投与第1日=注入後第4日;コカイン投与第4日=注入後第7日)。図4において明らかとなるように、及び図3と相補うように、薬物の用量10及び15mg/kgに対して、コカイン投与第1日でのみ、ファージ処置により、精神運動効果が有意に阻害された(a及びhの最も左のカラム)が、30mg/kg(最も右のカラム)では阻害されなかった:(第1日/10mg/kg、RCA6028−pVIII:513.75±94.29;GNC92H2−pVIII:317.25±78.95;第1日/15mg/kg、RCA6028−pVIII:1064.38±213.52;GNC92H2−pVIII:550.13±213.52;第1日/30mg/kg、RCA6028−pVIII:675.1±222.74、GNC92H2−pVIII:778.25±225.71;コカイン投与第4日[第4日/10mg/kg、RCA6028−pVIII:592.64±82.51;GNC92H2−pVIII:622.41±105.43;第4日/15mg/kg、RCA6028−pVIII:862.25±235.28;GNC92H2−pVIII:1391.38±255.25;第4日/30mg/kg、RCA6028−pVIII:592.25±299.5、GNC92H2−pVIII:839.75±235.77]。
図4において、被験者間計画における全身性コカイン(i.p.):10(a)、15(b)及び30(c)mg/kgの漸増用量により誘発された歩行行動(横断)を示す。ファージ注入後コカイン投与第1日及び4日(最初の注入後4日及び7日)における48匹の動物の総平均活動±SEMとしてデータを表す(n=8)。、P<0.05、ANOVA、群間の有意差。
脳中で見出される線状ファージの解析
線状ファージがCNSに侵入する能力、蓄積するファージ量及びそのCNSでの滞在時間を調べるために、ファージタイター実験を行った。つまり、第1日から3日に、1x1015ファージを各ラットに1日2回鼻腔内投与した。脳をまるごと取出し、洗浄し、連続希釈し、細菌感染させた。ファージを数え、表1で報告されている全ての数は、1日当たり使用した4個の脳の総数に基づき、この総数から平均数を計算した。ファージ検出の閾値は10cfuであり;ファージは、第3日まで検出されず、一方でファージの最大レベルは第4日に見られた。ファージタイターは第7日に急激に低下したが、第13日まで維持された。DNA配列決定を用いて第4日及び7日にファージ粒子から分離されたファージミドを分析し、scFv抗体遺伝子の存在を確認したが、一方で、第17日又は免疫付与しなかったラットの脳を用いた場合同じ実験条件下で、ファージは検出されなかった。
Figure 2009506983
考察:
CNS内でのファージディスプレイ抗体による免疫付与の効率を評価するために、ラットにおいてコカインの精神刺激効果を測定した。この精神刺激効果は、脳でのドーパミン作用性ニューロンでのコカインの作用の結果として、自発運動及び常同的行為において用量依存的に上昇した。免疫付与前の薬物反応を調べるために、フォトセルケージにおいて、i.p.コカイン(15mg/kg)による処置後にオスWistarラットの試験を行った。3種類の異なるコカイン用量を選択した:10、15及び30mg/kg。これらのコカイン用量で、幅広い範囲の運動反応及び行動反応が示された。つまり、最低用量では、運動はほとんどなく、常同的行為は実質的になく、中程度の用量では、顕著な自発運動があり、ある程度の常同的行為が見られ、高用量では自発運動は小さくなったが、常同的行為はより強くなった。
1日2回、3連続日、pVIII表面上にファージディスプレイされている1本鎖抗体を動物に鼻腔内投与した(GNC92H2−pVIII及びRCA6028−pVIII(図1及び2)を含む。)。その表面上に5コピー以下しか提示できないより一般的なディスプレイ遺伝子pIIIを用いた場合に対して、pVIII遺伝子は、ファージ表面上のタンパク質濃度が概してより高くなると期待されるように、2,800コピーを含有した(39)。提示された抗体は触媒作用のものではないので、タンパク質表面濃度は、発明者らのアプローチの成功に重要な因子であると考えられ;それゆえに、コカインがその標的に到達するのを阻害する唯一の方法は、封鎖することであった。モノクローナル抗体GNC92H2は、以前、コカインに対して優れた親和力及び特異性を有することが示されており、以前に行われた受動的免疫付与行動実験において素晴らしい結果をもたらしている(13−15)。RCA6028は、RCA60(Ricinus communis Agglutinin、「リシン」)に対して優れた親和性(400nM)及び選択性を有する1本鎖抗体であり、したがって、対照とみなした(36)。
ファージ注入計画の開始後第4日に、3種類の薬物用量のうち1つで4連続日のコカイン投与を動物に対して行った。RCA6028−pVIIIに対するファージGNC92H2−pVIIIの鼻腔内投与の結果、コカインに対する反応において群間で有意な精神運動の差異が見られた(図3)。10mg/kg用量で、GNC92H2−pVIII群ではベースライン値と比較して歩行行動(横断)の30%の低下が観察されたが、対照では観察されず(図3(a)上)、この差は、セッションの最初の10分間での常同的行為測定で反映された(図3(b)下)。この用量で中程度の運動過剰が誘発されることを考えると、この歩行のある程度の差異は驚くことではない。さらに、常同的行為の欠如が観察されたことは、より低用量のコカインにおいてごく僅かにこの行動が存在することが報告されていることと一致する(43)。対して、ベースライン値に対して、GNC92H2−pVIII処置動物において自発運動が47%と著しく低下することが測定されたが、一方で、対照ではその全体的反応が11%上昇した(図3(b)上)。この定量的傾向はまた、この15mg/kg処置群により示される%常同的行為でも観察されたが、この場合、GNC92H2−pVIII群では50分であったのに対し、対照ではセッションの70分まで行動を評価した(図3(b)下)。これらの結果は、2種類の異なるコカイン共役物での両方の能動的免疫付与により(13-15)、及びmAb GNC92H2での受動的免疫付与(15)により、発明者らのグループが以前報告した結果と著しく類似している。この類似性は、おそらく、2つの主要な実験因子に依存するものである。第一に、同じコカイン用量を使用しており、したがって、過剰行動のパターンが一致する。第二に、末梢に対して中枢であるが、コカイン−ブロック機構が免疫介在性のダイナミクスに従っており、これは、親和性及びタイター克服力の同じ要素の支配下にある。このいわゆる克服力の要素は、図3(c)で示されるデータにおいて最も明らかである。30mg/kgコカイン用量において、行動プロファイルの逆転が起こり、これにより、セッションの最初の30分の間に、対照動物において、これ自身のベースライン値及びGNC92H2−pVIII処置ラットのベースライン値の両方に対して、運動レベルの低下が見られた(図3(c)上)。興味深いことに、対照において、GNC92H2−pVIII群よりも有意に長く、高いパーセンテージで常同的行為が維持されたが(図3(c)下)、これは、コカインの高用量でこの測定レベルが典型的に上昇するということを反映する(43)。したがって、対照に対するGNC92H2−pVIII処置動物において、自発運動鈍化の影響が見かけ上存在しないことは、その代わりとして、対照動物の反復性の(常同性の)行動が増え、持続するため、対照動物による歩行が低下することによって、それらの群の差が欠如することとして解釈され得る。
行動抑制の基礎を確認するため、発明者らは、動物行動実験の前、最中及び後において脳内のファージ粒子の存在を調べた(表1)。脳内でファージが観察された最初の時点は第2日であり、一方、脳内で観察されたファージの最高タイターは第4日であった。発明者らは、高ファージタイターが第5日から第7日(10)で急激に低下するが、第15日までこの数で比較的一定であり、第17日までに検出されなくなったことに注目する。したがって、続く投与第4日で、群間でどちらの運動測定にも有意差がなかった。図4は、注入計画完了後第4日でのRCA6028処置動物とGNC92H2−pVIII処置動物との間の比較分析を示す。統計的な有意差は得られなかったが、2つの高用量でのエラーバーが大きいことから、8匹のGNC92H2−pVIII処置ラットのうち3匹において過剰運動抑制が持続したことが示される(図4(b、c))。このように、行動の完全な鈍化が観察されることに対して、ファージディスプレイタンパク質の閾値が脳内になければならないことが明らかであろう。発明者らは、乱用薬物に対する触媒性タンパク質が適正な遺伝子表面に提示されれば、この量を減少させ得ると予想しており;これは、発明者らの研究室からの将来の研究の基礎となろう。
発明者らの鼻孔ワクチンの役割を理解する際に、発明者らは、潜在的な限界を調べることが重要であると感じた。CNSは、免疫学的寛容部位と考えられるが、しかし、ファージが末梢に入る可能性を除外することはできない。それ自身において、及びその表面にディスプレイされたタンパク質とともに、線状ファージは、免疫系に対して外来性の構成要素を含む。さらに、鼻孔ワクチン付与がいよいよ一般的になっており、研究が広がっている(44、45)。
喜ばしいことに、ワクチン付与動物からのラット血清のELISA分析から、ファージに対して測定可能なタイターを示さないことが示され、したがって、線状ファージ投与動物において潜在的な毒性副作用を呈さないというさらなる証拠が与えられる(32、34)。
発明者らは、コカイン乱用に対する効果的な治療を探索する持続的な努力において有望な新しいストラテジーを示した。以前のタンパク質に基づく治療が末梢の薬物−タンパク質相互作用に依存している一方で、発明者らの新しいアプローチは、治療タンパク質物質を薬物作用部位であるCNSへと直接送達する。したがって、ファージディスプレイ及び免疫薬物療法を収束させることにより、CNS内で作用するタンパク質に基づく治療剤が動物モデルにおいてコカインの効果にどのように影響し得るかを最初に研究することが可能となった。将来的な研究には、何らかの相乗的効果を得ることができるか否かを調べるために、このファージに基づくアプローチと受動もしくは能動的免疫付与プロトコールの何れかとを組み合わせることが含まれる。その他の非常に興味深いシナリオには、脳の特定領域へとファージを向かわせるためにある1つのタンパク質を用い、同時に他方のタンパク質が実際の治療機能を与え、効率的にCNSの特定領域における治療タンパク質の濃度を上昇させるという、ファージ上に関心のある2種類の異なるタンパク質をディスプレイすることが含まれる。コカイン乱用に対する、タンパク質に基づくこの新しい治療の適用はまた、CNS領域が標的となる、その他の薬物中毒症ならびに何らかの生体異物中毒に対する治療薬としても働く。しかし、この技術は、抗体にもコカイン中毒の治療にも制限されない。これは、中枢神経系へのタンパク質送達に対して普遍的な重要性を有する。
参考文献
実施例1に対して次の参考文献が使用され、また、これらは、本明細書中で参照される。
Figure 2009506983
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中枢神経系への活性コカインエステラーゼ酵素の送達
コカインは、強力な興奮薬であり、全薬物の中でも最も強力であり得る。結果として、コカイン乱用は、依然として大きな社会問題及び健康問題である。死亡を含む無数の医学的問題はコカイン使用と関連することが多く、AIDSの広がりと薬物との関連に関心がもたれている(1)。コカインは、脳の快楽/報酬中枢においてドーパミントランスポーターをブロックすることにより、間接的なドーパミンアゴニストとして作用する(2)。この妨害により、シナプスにおいてドーパミンが過剰となり、快感が増幅される。多大な努力にもかかわらず、コカイン乱用に対する一般に利用可能で効果的な薬物治療はまだない(3)。ブロッカーに拮抗することが本質的に困難であることから、コカイン乱用を治療するために設計されたタンパク質に基づく治療薬の開発が行われている。あるアプローチでは(4、5)、免疫薬物療法と呼ばれるアプローチにおいて、抗コカイン抗体がコカインを封鎖し、コカインがCNSへ侵入する能力を阻止することが示されている。平行するストラテジーでは、非精神活性産物であるベンゾエート及びメチルエクゴニンを与えるために、コカインのベンゾイルエステルの加水分解に特異的な触媒抗体を利用する(図5)(6)。コカイン過剰摂取及び強化のげっ歯類モデルにおいてこの方法の可能性が明らかになっている一方、これらの抗体の速度定数は、現実性のある臨床治療となるように改善されなければならない(6a、7)。あるいは、可能性のある酵素治療薬が探索されており、これには、ヒト及びその他の哺乳動物の血漿中に存在する主要なコカイン代謝酵素であるブチリルコリンエステラーゼ(BChe)(8)及び細菌酵素、コカインエステラーゼ(cocE)(9)が含まれる。タンパク質に基づくコカイン治療の効率は、何れも、これらのタンパク質がCNSにアクセスできないことにより制限されている。したがって、この治療の成功は、タンパク質と摂取されたコカインとの間の末梢での接触に依存する。
改良された治療では、循環ならびにCNS内の両方でコカインと接触する。その表面に提示された外来タンパク質を伴う線状バクテリオファージは、様々な投与経路後にマウスのCNSに浸透することができ(例えば、静脈内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内)、明らかな毒性効果なく、複数回投与することができる(10)。さらに、バクテリオファージはまた、肺、腎臓、脾臓、肝臓及び腸を含む幅広い様々な末梢器官に拡散し得る(11)。線状バクテリオファージの遺伝子的柔軟性により、ファージディスプレイとして知られる方法において、抗体を含む幅広い様々なタンパク質ならびにペプチドをタンパク質ファージコート上に提示することができる(12)。細菌培養において、高タイターで、線状バクテリオファージfd(図1)、ならびにその近縁であるM13及びf1を産生させることができるので、産生が単純で経済的となる。ファージディスプレイコカイン結合抗体の治療可能性が示されている(13)。しかし、あらゆる伝統的な抗体薬理学では1:1化学量論が必須であるため、インビボで治療薬の意味のある濃度を得ることは困難である。しかし、別のアプローチは、コカイン治療薬として、ファージディスプレイ触媒タンパク質、つまり酵素を使用することである。したがって、この実施例では、コカイン中毒を治療するために適切な活性率を有する最初の触媒ファージディスプレイ治療薬の調製及び動態を説明する。
コカインエステラーゼは、〜65kDaの分子量の、球状で574アミノ酸である細菌酵素であり、今まで特性が調べられた中で最も効率的なコカインの加水分解のためのタンパク質触媒である(9)。この酵素の特異性速度定数(Kcat/K)は、BChEよりも10倍高く、触媒抗体15A10(14)及びGNL3A6(6a)よりもそれぞれ10倍及び10倍速い。cocEの大きさ及び触媒効率によって、これは、改良コカイン治療に対する理想的な候補となる。しかし、外来細菌酵素は、タンパク質分解及び免疫学的監視により急激に排除される。また、利用可能なタンパク質はCNSに侵入することができず、これによりその効果が限定される。一方、バクテリオファージは、血流に容易に侵入し、血液脳関門を通ることができ(11)、極端なpH及びヌクレアーゼ及びタンパク質分解酵素による処理などの様々な厳しい条件に対して安定である。さらに、線状バクテリオファージに対する免疫応答は通常遅い(11、13)。したがって、ファージ表面上でcocEを提示することにより、天然酵素の固有の欠点を克服し得、より好ましい免疫/タンパク質ダイナミクスが与えられ得る。
ファージコートのタンパク質III(pIII)及びタンパク質IX(pIX)を用いて、cocEの発現を行った。これらの〜42kDa及び〜3.7kDaタンパク質はそれぞれ、ファージの逆側の末端で3から5コピーで発現される(図1)。これらのタンパク質は、主要なコートタンパク質pVIIIと比較してcocEの大きさのタンパク質に一番適合し得るので選択した。cocE−pIIIに対してファージミドpCGMTにおいて(16)、又はcocE−pIXに対してpCGMT9において(17、18)、2つの隣接するSfiI制限部位の間でベクターpCoEにライゲーションすることにより、ファージ上でcocEを発現させた。何れかのファージミドを用いてE.コリ細胞を形質転換し、次にVCSM13ヘルパーファージを用いて感染を行った。インキュベート及び遠心後、ペレットを細菌培地で再懸濁し、28℃で培養増殖を行った。ファージ及びcocE発現の両方とも温度感受性なので、最適ファージ増殖(37℃)とcocE発現(24℃)との中間をとって、28℃を選択した。これらの条件下で、cocE−pIII及びcocE−pIXの両方が、一貫したコカイン加水分解活性を持ち、高いタイターで再現可能に増殖した(〜1011から1012cfu/mL)。
経時的に逆相HPLCによって安息香酸濃度の上昇を監視することにより、cocE−pIII及びcocE−pIXに対する加水分解速度を測定した。cocE−pIII及びcocE−pIXの両方が、標準的なミカエリス−メンテンの定常状態速度論を示した(表2)。cocE/ファージ粒子0.1−5コピーの間の平均を想定する領域として、kcat及びkcat/Kの推測値を報告する。cocE/ファージ5コピーが理論的最大値である一方、この範囲の下限は、以前の報告に基づく、より理にかなった推測値である(19)。野生型酵素の活性に基づき、ファージの10%以上がcocE1コピーの平均を示したことに注目されたい。さらに、ファージの酵素活性は、cocEが発現されているコートタンパク質に依存しなかった。したがって、つないでいるタンパク質からの、又は近くのpVIもしくはpVIIコートタンパク質アンタゴニスト効果など、ファージの局所的状態による酵素の妨害はない。しかし、両ケースにおいて、主として見かけのKが10倍低下するために、cocE−pIII及びcocE−pIXは、天然酵素よりも活性が低い。ファージ表面上での局所的現象を除外できる一方、ファージそのものにより、活性低下が引き起こされ得る。ファージ発現にはcocEに対するものよりも高い温度が必要であるため、速度パラメータの低下は、異常に折りたたまれた酵素によるものであると思われる。実際に、より高温(37℃)でのネイティブcocEの発現により、タンパク質の回収率が良くなるが、活性は低い(データは示さない。)。ネイティブ酵素と同じく、cocE−ファージはまた、コカエチレンを加水分解することもできる(9)。しかし、この基質の溶解性が非常に低いため、この反応に対する速度パラメータを求めることはできなかった。
Figure 2009506983
ネイティブファージに対して、cocE相互作用の頻度は低いと想定されるので(つまり、より低い推定値が正しい。)、cocE−ファージのkcatは、天然酵素の値に近づく。この場合、cocE−pIXは、治療に適切なkcat/K(〜104M−1−1)(6a)となり;この値はあらゆる既知の触媒抗コカイン抗体より高く、設計された突然変異BChEによって最近になってようやく得られた(20)ことは重要なことである。
インビボでのファージディスプレイされたcocEの妥当性はこの実施例では調べられていないが、実施例1とは異なり、これらの結果から、哺乳動物投与に対する適切な速度パラメータ及び薬理学的プロファイルの両方を有する、CNS及び末梢両方における触媒コカイン分解に対する有望な方法が明らかとなる。
参考文献
実施例2に対してのみ、次の参考文献を使用する。
Figure 2009506983
Figure 2009506983
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産業上の利用可能性
本発明による方法及び組成物は、方法及び組成物が中枢神経系へのタンパク質の送達に有用なものとして、産業上の利用可能性を有する。それら自身における、及びそれら自身の組成物は、組成物において含有されるタンパク質の活性ゆえに、又は、核酸コンストラクトがタンパク質を産生させるために発現されることが可能であるゆえに、産業上の利用可能性を有する。
本発明の長所
本発明による方法及び組成物は、活性タンパク質を中枢神経系へと送達するための格段に改良された方法を提供する。このような方法及び組成物は、抗体、酵素、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質及び膜タンパク質を含む、幅広い範囲のタンパク質の中枢神経系への送達を可能にする。本方法及び組成物は、血液脳関門にもかかわらずこのようなタンパク質の送達を可能とし、また、顕著な免疫反応又はその他の副作用を生じることなくこのようなタンパク質を送達することも可能とする。線状バクテリオファージを高タイターで調製することができることにより、投与のための所望のタンパク質を担う大量のバクテリオファージを速やかに調製することが可能となる。
本発明による方法及び組成物は、分解又は変性なく活性型でタンパク質を中枢神経系に送達することも可能とする。
本発明による方法及び組成物は、また、免疫反応又は毒性を生じることなくタンパク質を中枢神経系に送達することも可能とする。バクテリオファージ投与も十分に許容される。
本明細書中で具体的に開示されない何らかの要素、制限なく、本明細書により具体的に記載される本発明は、適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、限定なく、広く理解される。さらに、本明細書中で使用されている用語及び表現は、説明する用語として使用され、限定するものではなく、かかる用語及び表現又はそれらの一部の使用において、示され、記載される特徴の何らかの同等物を排除するものではなく、主張される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることを認識されたい。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意の特徴により具体的に開示されているが、本明細書中で開示される発明の変更及び変化が当業者により再分類され得、かかる変更及び変化が本明細書中で開示され本発明の範囲内にあるものとみなされることを理解されたい。本明細書中で本発明を広く包括的に説明してきた。それぞれの包括的な開示の範囲内に入る狭義の種及び亜属の種もまたこれらの発明の一部を形成する。これには、条件付きで、又はそこで具体的に備えられている削除物質であるか否かにかかわらず、属から何らかの対象を除去する消極的な限定付きで、各発明の包括的記述が含まれる。
さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュグループの観点において記載される場合、当業者にとって当然のことながら、本発明はまた、マーカッシュグループの要素のあらゆる個々の要素又は要素のサブグループの観点で、それによっても述べられる。また、上の記載は説明的なものであり限定的なものではないことも理解されたい。上の記載を検討する際、多くの実施形態が当業者にとって明らかとなろう。したがって、本発明の範囲は、上の記載によって決定されるべきでないが、代わりに、かかる特許請求の範囲に与えられる同等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきものである。特許公開物を含む全ての論文及び参考文献の開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
次の発明は、明細書、添付の特許請求の範囲及び図面を参照してより理解されるようになるものである。
線状バクテリオファージfd構造の図である(これは、M13及びf1(これらは近縁である。)と等しく適用する。)。 平衡透析により調べた場合の、pVIIIとともに抗コカイン抗体、GNC92H2を組み込む融合タンパク質(GNC92H2−pVIII)のコカインに対する親和性を示すグラフである。 コカイン10mg/kg、15mg/kg及び30mg/kgで、GNC92H2−pVIII(●)又はRCA6028−pVIII(□)を鼻腔免疫付与した後に、コカインをi.p.注射した後の、自発運動(横断;上)及び常同的行為(スニフィング及び立ち上がり;下)を示すグラフである。 コカイン10mg/kg、15mg/kg及び30mg/kgで、GNC92H2−pVIII(●)又はRCA6028−pVIII(□)を鼻腔免疫付与した後に、コカインをi.p.注射した後の、自発運動(横断;上)及び常同的行為(スニフィング及び立ち上がり;下)を示すグラフである。 被験者間計画における、全身的コカイン(i.p.):10(a)、15(b)及び30(c)mg/kgの漸増用量により誘発される歩行行動(横断)及び、融合タンパク質の一部として抗コカイン抗体を提示するファージとのファージ融合の効果を示すグラフである。 ベンゾエート及びメチルエクゴニンへとコカインのベンゾイルエステルを加水分解する触媒抗体の作用を示す図である。

Claims (45)

  1. 中枢神経系へと活性型でタンパク質を送達する方法(該方法は、
    (a)中枢神経系に送達されるべきタンパク質が線状ファージのコートタンパク質との融合タンパク質としてコードされている核酸コンストラクトを含有する、1本鎖線状ファージベクターを調製し、
    (b)ファージゲノムとして核酸コンストラクトを組み込み、融合タンパク質がコートタンパク質として発現される、ファージ粒子を調製し、
    (c)タンパク質が活性型で中枢神経系へと送達されるようにファージ粒子が中枢神経系に到達するような経路により、哺乳動物へとファージ粒子を送達する、
    段階を含む。)。
  2. 1本鎖線状バクテリオファージベクターが、M13、fd及びf1の群から選択されるバクテリオファージ由来である、請求項1に記載の方法。
  3. バクテリオファージがM13である、請求項2に記載の方法。
  4. 線状ファージベクターがファージミドである、請求項1に記載の方法。
  5. ファージミドがpCGMT又はpCGMTの派生物である、請求項4に記載の方法。
  6. ファージゲノムとして核酸コンストラクトを組み込み、融合タンパク質がコートタンパク質として発現されるファージ粒子を調製する段階が、
    (i)核酸コンストラクトを組み込むファージミドを用いて細菌宿主細胞を形質転換することと、
    (ii)ヘルパーウイルスを用いた感染によりファージ粒子を産生させることと、
    を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 融合タンパク質へと組み込まれるコートタンパク質が、pIII、pVII、pVIII及びpIXからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  8. コートタンパク質がpIIIである、請求項7に記載の方法。
  9. コートタンパク質がpVIIIである、請求項7に記載の方法。
  10. コートタンパク質がpIXである、請求項7に記載の方法。
  11. タンパク質が、単量体、ホモ二量体又はホモ多量体である、請求項1に記載の方法。
  12. タンパク質が単量体である、請求項11に記載の方法。
  13. タンパク質が、抗体、酵素、レポータータンパク質、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質及び膜タンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  14. タンパク質が酵素である、請求項13に記載の方法。
  15. 酵素がコカインを加水分解する酵素である、請求項14に記載の方法。
  16. 酵素が、細菌コカインエステラーゼ及びブチルコリンエステラーゼからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
  17. 酵素が、治療効果を有する酵素及び、欠損又は低下した細胞酵素活性の代わりとなる酵素からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
  18. タンパク質が抗体である、請求項13に記載の方法。
  19. 抗体が、scFv又はFab’抗体からなる群から選択される1本鎖抗体である、請求項18に記載の方法。
  20. 抗体がscFv抗体である、請求項19に記載の方法。
  21. タンパク質がムテインである、請求項1に記載の方法。
  22. タンパク質が融合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
  23. タンパク質が、鼻腔内送達、静脈内送達、腹腔内送達及び筋肉内送達からなる群から選択される経路により送達される、請求項1に記載の方法。
  24. タンパク質が鼻腔内送達により送達される、請求項23に記載の方法。
  25. 哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
  26. 哺乳動物が、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス又はウサギからなる群から選択される、社会的又は経済的に重要な非ヒト哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
  27. タンパク質の送達が、送達されるタンパク質により影響を受ける疾病又は状態を治療する、請求項1に記載の方法。
  28. (a)線状バクテリオファージの複製起点と、
    (b)複製起点に操作可能に連結された環状1本鎖DNA分子への核酸コンストラクトの複製を可能にする核酸骨格と、
    (c)核酸コンストラクトの複製中に発現され得、キメラバクテリオファージ粒子に組み立てられ得るような融合タンパク質をコードする少なくとも1個の核酸配列と、
    を含有する核酸コンストラクト。
  29. 線状バクテリオファージの複製起点が、M13、fd及びf1の複製起点からなる群から選択される、請求項28に記載の核酸コンストラクト。
  30. 複製起点がM13の複製起点である、請求項29に記載の核酸コンストラクト。
  31. 融合タンパク質が、抗体活性、酵素活性、レポータータンパク質活性、受容体タンパク質活性、受容体タンパク質に対するリガンド活性、制御タンパク質活性及び膜タンパク質活性からなる群から選択される活性を有する少なくとも1個のドメインを含む、請求項28に記載の核酸コンストラクト。
  32. 請求項28に記載の核酸コンストラクトを含有するベクター。
  33. 請求項32に記載のベクターを用いて形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞。
  34. (a)1本鎖DNA分子と、
    (b)少なくとも1個の融合タンパク質(該融合タンパク質は、
    (i)1本鎖線状バクテリオファージのコートタンパク質と、
    (ii)送達されるべきタンパク質と、を含む。)と、
    を含む、融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子。
  35. 1本鎖線状バクテリオファージがM13である、請求項34に記載の、融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子。
  36. コートタンパク質がpVIIIである、請求項35に記載の、融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子。
  37. 送達されるべきタンパク質が、抗体、酵素、レポータータンパク質、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質及び膜タンパク質からなる群から選択される、請求項34に記載の、融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子。
  38. (a)請求項34に記載の、融合タンパク質を提示するバクテリオファージ粒子と、
    (b)医薬的に許容可能な担体と、
    を含有する、医薬組成物。
  39. 鼻腔内送達、静脈内送達、腹腔内送達又は筋肉内送達用に処方される、請求項38に記載の医薬組成物。
  40. 鼻腔内送達用に処方される、請求項39に記載の医薬組成物。
  41. (a)線状バクテリオファージのpVIIIタンパク質である第一のドメインと、
    (b)哺乳動物の中枢神経系に送達可能なタンパク質である第二のドメインと、
    を含有する、融合タンパク質。
  42. 第一のドメイン及び第二のドメインが、リンカー無しで1個のポリペプチドの中で発現されるように連結される、請求項41に記載の融合タンパク質。
  43. 第一のドメインと第二のドメインとの間にリンカーをさらに含有する、請求項41に記載の融合タンパク質。
  44. 哺乳動物の中枢神経系に送達可能であるタンパク質が、抗体、酵素、レポータータンパク質、受容体タンパク質、受容体タンパク質に対するリガンド、制御タンパク質及び膜タンパク質からなる群から選択される、請求項41に記載の融合タンパク質。
  45. 線状バクテリオファージがM13である、請求項41に記載の融合タンパク質。
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