したがって、塩基のミスマッチを識別するために熱的にストリンジェントな洗浄に依存しないDNA検出方法が必要とされている。
本発明は米国国立衛生研究所(NIH)助成番号GM10265、陸軍研究所(ARO)助成番号DAAG55−0967−1−0133、AFSOR(DURINT)、およびDARPA(BAA 01−07)の下で政府支援によって完成されたものである。政府は本発明に関し一定の権利を有する。
本願は、係属中の国際出願第PCT/US97/12783号(1997年7月21日出願)の一部継続出願である、出願番号第09/240,755号(1999年1月29
日出願、放棄)の一部継続出願である、出願番号第09/344,667号(1999年6月25日出願、現米国特許第6,361,944号)の一部継続出願である、出願番号第09/603,830号(2000年6月26日出願)の一部継続出願である、出願番号第09/760,500号(2001年1月12日出願)の一部係属出願である、第09/820,279号(2001年3月28日出願)の一部継続出願である、第09/927,777号(2001年8月10日出願)の一部継続出願である、係属中の出願番号第10/008,978号(2001年12月7日出願)の一部継続出願である。上記の各文献は引用により本願に組み込まれる。仮出願番号第60/031,809号(1996年7月29日出願)、第60/176,409号(2000年1月13日出願)、第60/192,699号(2000年3月28日出願)、第60/200,161号(2000年4月26日出願)、第60/213,906号(2000年6月26日出願)、第60/224,631号(2000年8月11日出願)、第60/254,392号(2000年12月8日出願)、第60/254,418号(2000年12月8日出願)、第60/255,235号(2000年12月11日出願)、第60/255,236号(2000年12月11日出願)、第60/282,640号(2001年4月9日出願)、および第60/327,864号(2001年10月8日出願)の利益も主張する。上記の各文献の開示は引用により本願に組み込まれる。
本発明は、核酸を検出する方法を提供する。1実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させたある種類のナノ粒子(ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体)を核酸と接触させるステップを含む。核酸は少なくとも2つの部分を有し、各ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、該核酸の少なくとも2つの部分の配列に相補的な配列を有している。接触は、核酸とナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸のハイブリダイズによって、検出可能な変化が生じる。
別の実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を核酸と接触させるステップを含む。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有する。接触は、核酸とナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で起こり、このハイブリダイゼーションによって生じた検出可能な変化を観察する。
さらなる実施形態では、方法は、第1種類のナノ粒子を付着させた基板を提供するステップを含む。第1種類のナノ粒子にはオリゴヌクレオチドが付着しており、該オリゴヌクレオチドは核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。基板を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸を有効にハイブリダイズさせる条件下で核酸と接触させる。その後、オリゴヌクレオチドが付着した第2種類のナノ粒子を提供する。該オリゴヌクレオチドは核酸の配列の1または複数の他の部分に相補的な配列を有する。基板に結び付けられた核酸を、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で、第2種類のナノ粒子オリゴヌクレオチドと接触させる。検出可能な変化はこの時点で観察可能となる。方法は、少なくとも2つの部分を有する選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドを提供するステップをさらに含む。該2つの部分の、第1部分は、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に相補的である。結合オリゴヌクレオチドを、結合オリゴヌクレオチドをナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに有効にハイブリダイズさせる条件下で、基板に結び付けられた第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と接触させる。その後、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた第3種類のナノ粒子を、結合オリゴヌクレオチドをナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに有効にハイブリダイズさせる条件下で、基板に結び付けられた結合オリゴヌクレオチドと接触させる。最後に、そのようなハ
イブリダイゼーションによって生じた検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、方法は、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた基板と核酸を接触させるステップを含む。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。その後、基板に結び付けられた核酸を、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた第1種類のナノ粒子と接触させる。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。次に、基板に結び付けられた第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を、オリゴヌクレオチドを付着させた第2種類のナノ粒子と接触させる。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも1つの部分に相補的な配列を有する。接触は、第1および第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。最後に、そのようなハイブリダイゼーションによって生じた検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、方法は、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた基板と核酸を接触させるステップを含む。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。その後、基板に結び付けられた核酸を、核酸の配列の一部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたリポソームと接触させる。接触は、リポソーム上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。次に、基板に結び付けられたリポソーム−オリゴヌクレオチド共役体を、少なくとも第1種類のオリゴヌクレオチドを付着させた第1種類のナノ粒子と接触させる。第1種類のオリゴヌクレオチドの、ナノ粒子に付着していない端部には、疎水基が付いている。接触は、疎水的相互作用の結果としてナノ粒子上のオリゴヌクレオチドがリポソームに有効に付着する条件下で起こる。検出可能な変化はこの時点で観察可能となる。方法は、リポソームに結び付けられた第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を、オリゴヌクレオチドを付着させた第2種類のナノ粒子と接触させるステップをさらに含み得る。第1種類のナノ粒子には、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも1つの部分に相補的な配列を有する第2種類のオリゴヌクレオチドが付着する。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子上の第2種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に相補的な配列を有する。接触は、第1および第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。その後、検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた基板と、検出する核酸を接触させるステップを含む。オリゴヌクレオチドは、該核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドを該核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。次に、基板に結び付けられた核酸を、該核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたある種類のナノ粒子と接触させる。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを前記核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。その後、基板を銀染料と接触させて検出可能な変化を生成し、その検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、方法は、第1種類のナノ粒子を付着させた基板を提供するステップを含む。ナノ粒子には、検出する核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。その後、核酸を、該核酸とナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で、基板に付けられたナノ粒子と接触させる。次に、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少な
くとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。最後に、基板に結び付けられた核酸を、該核酸と凝集体プローブ上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で、凝集体プローブと接触させ、検出可能な変化を観察する。
さらなる実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた基板を提供するステップを含む。オリゴヌクレオチドは、検出する核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類ナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、前記核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するそれにオリゴヌクレオチドが付着している。核酸、基板および凝集体プローブを、凝集体プローブ上のオリゴヌクレオチドおよび基板上のオリゴヌクレオチドと核酸とを有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、検出可能な変化を観察する。
さらなる実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた基板を提供するステップを含む。オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類ナノ粒子の少なくとも1種類には、検出する核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。少なくとも2種類のオリゴヌクレオチドを付着させたある種類のナノ粒子を提供する。第1種類のオリゴヌクレオチドは前記核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有し、第2種類のオリゴヌクレオチドは、基板に付着したオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に相補的な配列を有する。核酸、凝集体プローブ、ナノ粒子および基板を、凝集体プローブ上およびナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸を有効にハイブリダイズさせ、かつナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを基板上のオリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、方法は、検出する核酸を、オリゴヌクレオチドを付着させた基板と接触させるステップを含む。オリゴヌクレオチドは、前記核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドを前記核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。基板に結び付けられた核酸を、前記核酸の配列の一部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたリポソームと接触させる。接触は、リポソーム上のオリゴヌクレオチドを前記核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、ナノ粒子に付着しない端部に疎水基が付いたオリゴヌクレオチドが付着する。基板に結び付けられたリポソームを、疎水的相互作用の結果として凝集体プローブ上のオリゴヌクレオチドがリポソームに付着するのに有効な条件下で、凝集体プローブと接触させ、検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた基板を提供するステップを含む。該オリゴヌクレオチドは、検出する核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。少なくとも2種類のナノ粒子を含むコアプローブを提供する。各種類のナノ粒子には、他の種類のナノ粒子の少なくとも1つの上のオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドが付着している。凝集体プローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。次に、2種類のオリゴヌクレオチドを付着したある種類のナノ粒子を提供する。第1種類のオリゴヌクレオ
チドは、該核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有する。第2種類のオリゴヌクレオチドは、コアプローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類に付着したオリゴヌクレオチドの配列の一部分に相補的な配列を有する。核酸、ナノ粒子、基板およびコアプローブを、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとおよび基板上のオリゴヌクレオチドと該核酸を有効にハイブリダイズさせ、かつコアプローブ上のオリゴヌクレオチドをナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、検出可能な変化を観察する。
方法の別の実施形態は、検出する核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた基板を提供するステップを含む。少なくとも2種類のナノ粒子を含むコアプローブを提供する。各種類のナノ粒子には、少なくとも1つの他の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドが付着している。凝集体プローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。前記核酸の配列の第2部分に相補的な配列と、コアプローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類に付着したオリゴヌクレオチドの配列の一部分に相補的な配列とを含む、ある種類の連結オリゴヌクレオチドを提供する。核酸、連結オリゴヌクレオチド、基板およびコアプローブを、連結オリゴヌクレオチドおよび基板上のオリゴヌクレオチドを前記核酸と有効にハイブリダイズさせ、かつコアプローブ上のオリゴヌクレオチドを連結オリゴヌクレオチド上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を提供するステップと、1または複数の種類の結合オリゴヌクレオチドを提供するステップを含む。各結合オリゴヌクレオチドは2つの部分を有しており、1つの部分の配列は、核酸の複数の部分の1つの配列に相補的である。また、もう1つの部分の配列は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的である。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と結合オリゴヌクレオチドを、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを結合オリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させる。核酸と結合オリゴヌクレオチドを、結合オリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させる。その後、検出可能な変化を観察する。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を、核酸との接触に先立って、結合オリゴヌクレオチドと接触させてもよいし、または3つすべてを同時に接触させてもよい。
別の実施形態では、方法は、核酸をオリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類の粒子と接触させるステップを含む。第1種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有し、該粒子に付けられない端部にエネルギー供与体分子を有する。第2種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有し、該粒子に付けられない端部にエネルギー受容体分子を有する。接触は、粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。また、そのようなハイブリダイゼーションによって生じた検出可能な変化を観察する。エネルギー供与体および受容体分子は蛍光分子であってよい。
さらなる実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させたある種類のマイクロスフェアを提供するステップを含む。オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有し、蛍光分子で標識される。核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた、検出可能な変化を生成するある種類のナノ粒子を提供する。核酸を、ラテックスマイクロスフェア上およびナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズさせる条件下でマイクロスフェアおよびナノ粒子と接触させ、その後、蛍光の変化、別の検出可能な変化またはその両方を観察する。
別の実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた第1種類の金属ナノ粒子または半導体ナノ粒子を提供するステップを含む。オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有し、蛍光分子で標識される。オリゴヌクレオチドを付着させた第2種類の金属ナノ粒子または半導体ナノ粒子も提供する。該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有し、蛍光分子で同様に標識される。核酸を、核酸と該2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で、2種類のナノ粒子と接触させ、その後、蛍光の変化を観察する。
さらなる実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチドを付着させたある種類の粒子を提供するステップを含む。該オリゴヌクレオチドは第1部分と第2部分を有し、両部分は、核酸の配列の一部分に相補的である。第1部分と第2部分を含むある種類のプローブオリゴヌクレオチドも提供する。該第1部分は、粒子に付着させたオリゴヌクレオチドの該第1部分に相補的な配列を有し、また、両部分は核酸の配列の一部分に相補的である。またプローブオリゴヌクレオチドは、その一端を、リポーター分子で標識される。その後、粒子およびプローブオリゴヌクレオチドを、粒子上のオリゴヌクレオチドをプローブオリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズさせてサテライトプローブを生成する条件下で接触させる。その後、サテライトプローブを、プローブオリゴヌクレオチドと核酸を有効にハイブリダイズさせる条件下で核酸と接触させる。粒子は除去し、リポーター分子を検出する。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、核酸を、オリゴヌクレオチドを付着させた基板と核酸を接触させることにより検出する。該オリゴヌクレオチドは核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。該オリゴヌクレオチドは、基板に置かれた一対の電極の間に配置される。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。その後、基板に結び付けられた核酸をある種類のナノ粒子と接触させる。ナノ粒子は、電気を伝導可能な材料で形成されている。ナノ粒子には1または複数の種類のオリゴヌクレオチドが付着しており、該1または複数の種類オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有する。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こる。核酸が存在する場合、導電率の変化を検出することが可能である。好ましい実施形態では、基板上には、1つの核酸中の複数の部分の検出、複数の異なる核酸の検出、またはその両方の検出を可能にするようアレイ状に複数対の電極が配置されている。アレイ中の各電極対は、2つの電極間に、基板に付着されたある種類のオリゴヌクレオチドを有するだろう。
本発明は、方法が基板上で行われる、核酸の検出方法をさらに提供する。該方法は、光学式スキャナで核酸の存在、量またはその両方を検出するステップを含む。
本発明は、核酸を検出するためのキットをさらに提供する。1実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を入れた少なくとも1つの容器を含む。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有する。
代わりに、キットは少なくとも2つの容器を含んでもよい。第1容器には、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着されたナノ粒子が入る。第2容器には、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子が入る。
さらなる実施形態では、キットは少なくとも1つの容器を含む。該容器には、オリゴヌクレオチドを付着させた金属ナノ粒子または半導体ナノ粒子が入っている。オリゴヌクレオチドは核酸の一部分に相補的な配列を有し、ナノ粒子に付着されないオリゴヌクレオチ
ドの端部には蛍光分子が付いている。
さらに別の実施形態では、キットは基板を含む。基板にはナノ粒子が付着し、該ナノ粒子には、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットはさらに、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた、第1容器も含む。キットは、少なくとも2つの部分を有する選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドを入れた第2容器もさらに含む。2つの部分のうちの第1部分は、第1容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも1つの部分に相補的である。キットはさらに、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた第3容器も含む。
別の実施形態では、キットは、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた基板と、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を入れた第1容器と、第1容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を入れた第2容器とを含む。
さらに別の実施形態では、キットは、基板と、ナノ粒子を入れた第1容器と、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する第1種類のオリゴヌクレオチドを入れた第2容器と、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有する第2種類のオリゴヌクレオチドを入れた第3容器と、第2種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する第3の種類のオリゴヌクレオチドを入れた第4容器とを含む。
さらなる実施形態では、キットは、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させた基板を含む。キットはまた、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着させたリポソームを入れた第1容器と、少なくとも第1種類のオリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた第2容器とを有する。第1種類のオリゴヌクレオチドは、疎水的相互作用によりナノ粒子をリポソームに付着できるように、そのナノ粒子に付着されない端部に疎水基を有する。キットは、第1種類のナノ粒子に付着された第2種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも1つの部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着された第2種類のナノ粒子を入れた第3容器をさらに含み得る。第1種類のナノ粒子に付着された第2種類のオリゴヌクレオチドは、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。
別の実施形態では、キットは、ナノ粒子を付着させた基板を含む。ナノ粒子には、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットはまた、凝集体プローブを入れた第1容器も含む。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む。凝集体プローブのナノ粒子は、その各々に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
さらに別の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させた基板を含む。オリゴヌクレオチドは核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する。キットはさらに、凝集体プローブを入れた第1容器を含む。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドが付着した少なくとも2種類のナノ粒子を含む。凝集体プローブのナノ粒子は、その各々に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
さらなる実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させた基板と、凝集体プローブを入れた第1容器とを含む。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドが付着した少なくとも2種類のナノ粒子を含む。凝集体プローブのナノ粒子は、その各々に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも1種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットはまた、ナノ粒子を入れた第2容器も含む。該ナノ粒子には、少なくとも2種類のオリゴヌクレオチドが付着している。第1種類のオリゴヌクレオチドは核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有する。第2種類のオリゴヌクレオチドは基板に付着したオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に相補的な配列を有する。
別の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドが付着した基板を含む。オリゴヌクレオチドは核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する。キットはまた、オリゴヌクレオチドが付着したリポソームを入れた第1容器も含む。オリゴヌクレオチドは核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有する。キットはさらに、オリゴヌクレオチドが付着した少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを入れた、第2容器も含む。凝集体プローブのナノ粒子は、その各々に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、ナノ粒子に付着しない端部に疎水基を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
さらなる実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた第1容器を含み得る。キットはまた、1または複数の追加の容器も含み、各容器には結合オリゴヌクレオチドを入れる。各結合オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に相補的な配列を有する第1部分と、検出する核酸の一部分の配列に相補的な配列を有する第2部分とを有する。各配列が検出する核酸の配列の一部分に相補的である限り、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列は異なっていてもよい。別の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させた1種類のナノ粒子と、1または複数の種類の結合オリゴヌクレオチドとを入れた容器を含む。該1または複数の種類の結合オリゴヌクレオチドの各々は、少なくとも2つの部分を含む配列を有している。第1部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的であり、そのため、容器内で結合オリゴヌクレオチドはナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。第2部分は、核酸の一部分の配列に相補的である。
別の実施形態では、キットは、2種類の粒子を入れた1または2つの容器を含み得る。第1種類の粒子には、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着している。オリゴヌクレオチドは、その粒子に付着しない端部が、エネルギー供与体で標識される。第2種類の粒子には、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。オリゴヌクレオチドは、その粒子に付着しない端部が、エネルギー受容体で標識される。エネルギー供与体と受容体は蛍光分子であってよい。
さらなる実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた第1容器を含む。キットはまた、各容器に結合オリゴヌクレオチドを入れた、1または複数の追加の容器も含む。各結合オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に相補的な配列を有する第1部分と、検出する核酸の部分の配列に相補的な配列を有する第2部分とを有する。各配列が検出する核酸の配列の部分に相補的である限り、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列は異なっていてもよい。さらに別の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させた1種類のナノ粒子と、1または複数の種類の結合オリゴヌクレオチドとを入れた容器を含む。該1または複数の
種類の結合オリゴヌクレオチドの各々は、少なくとも2つの部分を含む配列を有する。その第1部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的であり、そのため、容器内で結合オリゴヌクレオチドはナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。第2部分は、核酸の一部分の配列に相補的である。
別の代替実施形態では、キットは少なくとも3つの容器を含む。第1容器にはナノ粒子が入っている。第2容器は、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する第1のオリゴヌクレオチドが入っている。第3容器には、核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有する第2のオリゴヌクレオチドが入っている。キットはさらに、少なくとも2つの部分(第1部分は第2のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも1つの部分に相補的)を有する選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドを入れた第4容器と、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを入れた第5の容器も含む。
別の実施形態では、キットは2種類の粒子を入れた1または2つの容器を含む。第1種類の粒子には、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有し、かつナノ粒子に付着しない端部にエネルギー供与体分子が付いた、オリゴヌクレオチドが付着している。第2種類の粒子には、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有し、かつナノ粒子に付着しない端部にエネルギー受容体分子が付いた、オリゴヌクレオチドが付着している。エネルギー供与体と受容体は蛍光分子であってよい。
さらなる実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させたある種類のマイクロスフェアを入れた第1容器を含む。該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有し、蛍光分子で標識される。オリゴヌクレオチドを付着させたある種類のナノ粒子を入れた第2容器を含む。該オリゴヌクレオチドは、キットは、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有する。
別の実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドを付着させた第1種類の金属ナノ粒子または半導体ナノ粒子を入れた第1容器を含む。該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有し、蛍光分子で標識される。キットはまた、オリゴヌクレオチドを付着させた第2種類の金属ナノ粒子または半導体ナノ粒子を入れた第2容器を含む。該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有し、蛍光分子で標識される。
別の実施形態では、キットは、凝集体プローブを入れた容器を含む。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む。凝集体プローブのナノ粒子は、その各々に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、核酸の配列の一部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
さらなる実施形態では、キットは、凝集体プローブを入れた容器を含む。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む。凝集体プローブのナノ粒子は、その各々に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの前記少なくとも2種類のナノ粒子の少なくとも1種類には、ナノ粒子に付着しない端部に疎水基が付いた、オリゴヌクレオチドが付着している。
さらなる実施形態では、キットは、サテライトプローブを入れた容器を含む。サテライトプローブは、オリゴヌクレオチドが付着した粒子を含む。オリゴヌクレオチドは第1部分と第2部分を有し、両部分は核酸の配列の部分に相補的な配列を有する。サテライトプ
ローブは、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするプローブオリゴヌクレオチドも含む。プローブオリゴヌクレオチドは第1部分と第2部分を有する。該第1部分は、粒子に付着したオリゴヌクレオチドの第1部分の配列に相補的な配列を有する。また、両部分は、核酸の配列の部分に相補的な配列を有する。プローブオリゴヌクレオチドはさらに、その一端にリポーター分子を有する。
別の実施形態では、キットはコアプローブを入れた容器を含む。コアプローブは、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む。コアプローブのナノ粒子は、該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。
さらに別の実施形態では、キットは、少なくとも1対の電極が付着された基板であって、該電極間で基板に対してオリゴヌクレオチドが付着された基板を含む。オリゴヌクレオチドは、検出する核酸の配列の第1部分に相補的な配列を有する。
本発明はさらに、サテライトプローブ、凝集体プローブおよびコアプローブを提供する。
本発明はさらに、ナノ粒子を付着させた基板を提供する。該ナノ粒子には、核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着され得る。
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドを付着させた金属または半導体ナノ粒子を提供する。オリゴヌクレオチドはナノ粒子に付着しない端部が蛍光分子で標識される。
本発明はさらに、ナノファブリケーションの方法を提供する。方法は、選択配列を有する少なくとも1種類の連結オリゴヌクレオチドを提供するステップであって、各種類の連結オリゴヌクレオチドの配列が少なくとも2つの部分を有するステップを含む。方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた1または複数の種類のナノ粒子を提供するステップであって、各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが連結オリゴヌクレオチドの配列の部分に相補的な配列を有するステップをさらに含む。連結オリゴヌクレオチドとナノ粒子を、所望のナノ材料かナノ構造が形成されるように、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを連結オリゴヌクレオチドに有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させる。
本発明は、ナノファブリケーションの別の方法を提供する。方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を提供するステップを含む。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。第1および第2種類のナノ粒子を、所望のナノ材料かナノ構造が形成されるように、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを互いに有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させる。
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子から構成されたナノ材料またはナノ構造であって、該ナノ粒子がオリゴヌクレオチドコネクタによって一緒に纏められたナノ材料またはナノ構造を提供する。
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子を含む組成物を提供する。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分か連結オリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分か連結オリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた第1容器とオリゴ
ヌクレオチドを付着させたナノ粒子を入れた第2容器を含む容器のアセンブリを提供する。第1容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドは、第2容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。第2容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドは、第1容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。
本発明はさらに、複数の異なるオリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を提供する。
本発明は、少なくとも2つの部分を有する選択核酸を他の核酸から分離する方法をさらに提供する。方法は、オリゴヌクレオチドを付着させた1または複数の種類のナノ粒子を提供するステップであって、該1または複数のナノ粒子の各々の上のオリゴヌクレオチドは選択核酸の前記少なくとも2つの部分のうちの1つの配列に相補的な配列を有するステップを含む。選択核酸および他の核酸を、選択核酸とハイブリダイズしたナノ粒子が凝集して沈降するように、選択核酸とナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを有効にハイブリダイズさせる条件下で、ナノ粒子と接触させる。
さらに、本発明は、ユニークなナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を作製する方法を提供する。第1のそのような方法は、安定したナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を生成するために荷電ナノ粒子へオリゴヌクレオチドを結合させるステップを含む。そうするために、ナノ粒子に結合可能な官能基を有する部分が共有結合で結び付いているオリゴヌクレオチドを、少なくともオリゴヌクレオチドの一部が該官能基によってナノ粒子に結び付けられるのに十分な時間、ナノ粒子と水中で接触させる。次に、少なくとも1つの塩を水に加えて、塩溶液を作製する。塩溶液のイオン強度は、オリゴヌクレオチドの互いに対する静電斥力と、正に帯電したナノ粒子に対する負に帯電したオリゴヌクレオチドの静電引力か、負に帯電したナノ粒子に対する正に帯電したオリゴヌクレオチドの静電引力かの一方とを少なくとも部分的に克服するのに十分な強度でなければならない、塩を加えた後、オリゴヌクレオチドとナノ粒子を、追加オリゴヌクレオチドがナノ粒子に結合して安定したナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を生成するのに十分な追加期間、塩溶液中でインキュベートされる。本発明はさらに、安定したナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体、核酸を検出かつ分離するための該共役体の使用方法、該共役体を含むキット、該共役体を使用したナノファブリケーションの方法、ならびに、該共役体を含むナノ材料およびナノ構造を包含する。
本発明は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を生成するためにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させる別の方法を提供する。方法は、ある種類の認識オリゴヌクレオチドとある種類の希釈剤オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを提供するステップを含む。オリゴヌクレオチドとナノ粒子を、該ある種類のオリゴヌクレオチドの各々の少なくとも一部がナノ粒子と結合して共役体を生成するのに有効な条件下で接触させる。本発明はさらに、該方法によって生成されたナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体、核酸を検出かつ分離するために該共役体を使用する方法、該共役体を含むキット、該共役体を使用したナノファブリケーションの方法、ならびに、該共役体を含むナノ材料およびナノ構造を包含する。「認識オリゴヌクレオチド」とは、核酸またはオリゴヌクレオチド標的の配列の少なくとも一部分に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドである。「希釈剤オリゴヌクレオチド」は、認識オリゴヌクレオチドがナノ粒子に結び付けられる能力または、認識オリゴヌクレオチドがその標的に結び付く能力に干渉しない任意の配列を有し得る。
本発明は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を生成するためにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させるさらに別の方法を提供する。方法は、少なくとも1種類の認識オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを提供するステップを含む。認識オリゴヌクレオチドは認識部分とスペーサー部分を含む。認識オリゴヌクレオチドの認識部分は、核酸またはオリゴヌクレオチド標的の配列の少なくとも1部分に相補的な配列を有する。認
識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分は、スペーサー部分がナノ粒子に結合可能であるように設計される。ナノ粒子に認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分が結合した結果、認識部分はナノ粒子の表面から離れ、その標的とのハイブリダイズのためによりアクセス可能とある。共役体を生成するために、少なくとも認識オリゴヌクレオチドの一部がナノ粒子に結合するのに有効な条件下で、認識オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドとナノ粒子を接触させる。本発明はさらに、この方法によって生成されたナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体、核酸を検出かつ分離するために該共役体を使用する方法、該共役体を含むキット、該共役体を使用したナノファブリケーションの方法、ならびに、該共役体を含むナノ材料およびナノ構造を包含する。
本発明は、環式ジスルフィドを含むリンカーによって、ナノ粒子にオリゴヌクレオチドを付着させる方法を含む。適切な環式ジスルフィドは、その環内に2つの硫黄原子を含めた5つまたは6つの原子を有する。適切な環式ジスルフィドは市販されている。環式のジスルフィドの還元形も使用することが可能である。好ましくは、リンカーは、環式ジスルフィドに付着された炭化水素部分をさらに含む。適切な炭化水素は市販されており、(例えば付表に記述されるように)環式ジスルフィドに取り付けられる。好ましくは、炭化水素部分はステロイド残基である。リンカーがオリゴヌクレオチドに付けられ、オリゴヌクレオチドリンカーが本明細書に記載したようにナノ粒子に付着される。
本発明は、さらに、抗体抗原結合のような特異的結合相互作用を利用する新規なナノ粒子プローブ、そのようなプローブの調製方法および使用方法、ならびにそのようなプローブを含むキットに関する。
1実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子を検体と接触させることを含む、検体を検出する方法を提供する。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、前記検体の特異的結合補体に結び付けられた第2のオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、検体と、ナノ粒子共役体に結び付けられた特異的結合補体とを有効に特異的結合相互作用させる条件下で起こる。検体とプローブ間の特異的結合相互作用の結果、検出可能な変化が観察され得る。
本発明の別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子の検体との接触を提供することを含む。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、リンカーオリゴヌクレオチドの第1部分に結合する。リンカーオリゴヌクレオチドの第2部分は、ハイブリダイゼーションの結果、前記検体の特異的結合補体に結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、検体とナノ粒子共役体とを有効に特異的結合相互作用させる条件下で起こり、検出可能な変化が観察され得る。
別の実施形態では、検体を検出する方法は、第1のオリゴヌクレオチドを結び付けた検体を提供し、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドを、第1種類のナノ粒子と接触させることを含む。接触は、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドが第1種類のナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして、ナノ粒子検体共役体を形成するのに有効な条件下で起こる。上記方法はさらに、ナノ粒子検体を、オリゴヌクレオチドが結び付けられた第2種類のナノ粒子と接触させることを含む。第2種類のナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、前記検体の特異的結合補体が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。検体に結合したオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的な配列を有する。接触は、検体と、第2種類のナノ粒子共役体に結合された特異的結合補体とを有効に特異的結合相互作用させる条件下で起こり、検出可能な変化が、特異的結合相互作用の結果として観察され得る。
さらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けた検体、2つの部分を有するオリゴヌクレオチドリンカー、およびオリゴヌクレオチドが取り付けられた第1種類のナノ粒子を提供することを含む。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドはリンカーオリゴヌクレオチドの配列の第1部分に相補的な配列を有する。第1種類のナノ粒子に結合するオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、リンカーオリゴヌクレオチドの第2部分に相補的な配列を有する。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチド、ナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチド、およびリンカーオリゴヌクレオチドは、リンカーヌクレオチドと、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドおよび第1種類のナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドとが有効にハイブリダイズしてナノ粒子検体共役体を生成する条件下で接触させる。上記方法はさらに、検体共役体を、オリゴヌクレオチドを結び付けた第2種類のナノ粒子共役体と接触させることを含む。第2種類のナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、ナノ粒子検体共役体と、第2種類のナノ粒子の特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で起こる。特異的結合相互作用の結果として、検出可能な変化が観察され得る。
別の実施形態では、検体を検出する方法は、検体を結び付けた支持体を提供することを含む。上記方法はさらに、支持体に結び付けられた検体をナノ粒子と接触させることを含む。オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられた第2のオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、検体と、ナノ粒子共役体に結び付けられた特異的結合補体との特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で起こる。この時点で検出可能な変化が観察され得る。
別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けた支持体と、オリゴヌクレオチドを結び付けた検体とを提供することを含む。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、支持体に結び付けられたリンカーオリゴヌクレオチドに相補的な配列を有する。方法はさらに、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドとを、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと検体に結び付けられたオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で接触させることを含む。その後、オリゴヌクレオチドを結び付けたある種類のナノ粒子が与えられる。ナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられた第2のオリゴヌクレオチドに結合する。最後に、支持体に結び付けられた検体と、ナノ粒子共役体に結び付けられた特異的結合補体とを、支持体に結び付けられた検体とナノ粒子に結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で接触させ、検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けた支持体と、配列が少なくとも2つの部分を有するリンカーオリゴヌクレオチドとを提供することを含む。支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、リンカーオリゴヌクレオチドの第1部分に相補的な配列を有する。その後、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドを、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドとリンカーオリゴヌクレオチドの第1部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下でリンカーオリゴヌクレオチドと接触させる。次に、オリゴヌクレオチドを結び付けた検体を提供する。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、リンカーオリゴヌクレオチドの第2部分に相補的な配列を有する。その後、支持体に結び付けられたリンカーオリゴヌクレオチドを、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドとリンカーオリゴヌクレオチドの第2部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに
有効な条件下で接触させる。その後、オリゴヌクレオチドを結び付けたある種類のナノ粒子共役体を提供する。ナノ粒子共役体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。その後、支持体に結び付けた検体を、支持体に結び付けた検体と、ナノ粒子に結び付けた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で接触させ、検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けた支持体を、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと接触させることを含む。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの配列は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの配列と相補的である。接触は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。その後、オリゴヌクレオチドを取り付けたある種類のナノ粒子を提供する。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分が、ハイブリダイゼーションの結果、リンカーオリゴヌクレオチドの第1部分に結合する。さらにはリンカーオリゴヌクレオチドの第2部分が、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられたオリゴヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドに結合する。次に、支持体に結び付けられた検体を、支持体に結び付けられた検体とナノ粒子に結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下でナノ粒子で接触させる。その後、検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、検体を検出する方法は、検体を結び付けた支持体を提供することを含む。支持体を、オリゴヌクレオチドを結び付けた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブと接触させる。凝集体プローブのナノ粒子は、それらに付けられたオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの少なくとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、ハイブリダイゼーションの結果として検体の特異的結合補体が結び付けられる第2のオリゴヌクレオチドに結合するいくつかのオリゴヌクレオチドが取り付けられる。接触は、支持体に結び付けられた検体と、凝集体プローブに結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で起こる。この時点で検出可能な変化が観察され得る。
別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けた支持体を、オリゴヌクレオチドを結び付けた検体と接触させることを含む。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。接触は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。次に、オリゴヌクレオチドを結び付けた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、それらに付けられたオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの少なくとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、ハイブリダイゼーションの結果として検体の特異的結合補体が結び付けられた第2のオリゴヌクレオチドに結合するオリゴヌクレオチドが取り付けられる。接触は、支持体に結び付けられた検体と凝集体プローブに結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で起こる。その後、検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを結び付けた支持体を、第2のリンカーオリゴヌクレオチドの配列が少なくとも2つの部分を有するリンカーオリゴヌクレオチドと接触させることを提供することを含む。接触は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドとリンカーオリゴヌクレオチドの第1部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。その後、オリゴヌクレオチドを
結び付けた検体を提供する。検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、リンカーオリゴヌクレオチドの第2部分と相補的な配列を有する。次に、支持体に結び付けられたリンカーオリゴヌクレオチドを、支持体に結び付けられたリンカーオリゴヌクレオチドの第2部分と検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で接触させる。次に、オリゴヌクレオチドを結び付けた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、それらに取り付けられたオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの少なくとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、ハイブリダイゼーションの結果として検体の特異的結合補体が結び付けられた第2のオリゴヌクレオチドに結合するオリゴヌクレオチドが取り付けられる。次に支持体に結び付けられた検体を、支持体に結び付けられた検体と、凝集体プローブに結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で凝集体プローブと接触させる。この時点で検出可能な変化を観察し得る。
さらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドを、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの配列に相補的な検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと接触させることを含む。接触は、検体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。次に、オリゴヌクレオチドを結び付けた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、それらに取り付けたオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの少なくとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類では、オリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイゼーションの結果としてリンカーオリゴヌクレオチドの第1部分に結び付けられる。第2リンカーオリゴヌクレオチドの第2部分が、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。その後、支持体に結び付けられた検体を、支持体に結び付けられた検体と、凝集体プローブに結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で凝集体プローブと接触させる。その後、検出可能な変化を観察する。
さらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、検体を結び付けた支持体を、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子共役体と接触させることを含む。ナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体が結び付けられた第2のオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、支持体に結び付けられた検体とナノ粒子共役体に結び付けられた特異的結合補体の間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で起こる。その後、基板を銀染料と接触させて検出可能を生成し、その検出可能な変化を観察する。
本発明のさらに別の実施形態では、検体を検出する方法は、多価検体を、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子プローブと接触させることを含む。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、ハイブリダイゼーションの結果、レポーターオリゴヌクレオチドの第1部分に結び付けられる。レポーターオリゴヌクレオチドの第2部分は、ハイブリダイゼーションの結果、検体に対する特異的結合補体が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、検体とナノ粒子プローブの間の特異的結合相互作用を許容し、ナノ粒子を凝集させるのに有効な条件下で起こる。その後、凝集物を分離し、凝集物をデハイブリダイズし、かつレポーターオリゴヌクレオチドを放出するのに有効な条件に供する。その後、レポーターオリゴヌクレオチドを分離する。検体の検出は、DNAチップのような従来の手段によりレポーターオリゴヌクレオチドの存在を確認することで起こる。
本発明は、(i)核酸、(ii)オリゴヌクレオチドを結び付けた1または複数の種類のナノ粒子、および(iii)各々にオリゴヌクレオチドが結び付けられた2つ以上のビオチン分子に対して、特異的結合相互作用により結び付けられたストレプトアビジンまたはアビジンを含む複合体、を提供することを含む、核酸を検出する方法を提供する。核酸の配列は、少なくとも2つの部分を有する。ナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分に相補的な配列を有する一方、ビオチンに結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分に相補的な配列を有する。その後、核酸を、ナノ粒子、複合体および核酸のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下でナノ粒子共役体および複合体と接触させる。続く凝集より生じる検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、(i)核酸、(ii)オリゴヌクレオチドを結び付けた1または複数の種類のナノ粒子、(iii)ビオチンに結び付けられたオリゴヌクレオチド、および(iv)ストレプトアビジンまたはアビジン、を提供することを含む、核酸を検出する方法を提供する。核酸の配列は少なくとも2つの部分を有する。ナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分に相補的な配列を有する一方、ビオチンに結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分に相補的な配列を有する。その後、核酸を、核酸とナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドおよびビオチンに取り付けられたオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下でナノ粒子共役体およびビオチンに結び付けられたオリゴヌクレオチドと接触させる。続く凝集より生じる検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、核酸を検出する方法は、オリゴヌクレオチドを取り付けた第1種類のナノ粒子を核酸と接触させることを含む。核酸の配列は少なくとも2つの部分を有する。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸の第1部分に相補的な配列を有する。接触は、ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドと核酸の第1部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。その後、sbpメンバー(例えばビオチン)を結び付けたオリゴヌクレオチドを提供する。sbpメンバーに結び付けられるオリゴヌクレオチドの配列は、核酸の配列の第2部分に相補的な配列を有する。その後、sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドを、sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドと核酸の第2部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で、第1種類のナノ粒子に結び付けられた核酸に接触させる。その後、オリゴヌクレオチドを結び付けた第2種類のナノ粒子共役体を提供する。第2種類のナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、検体の特異的結合補体(例えばストレプトアビジンまたはアビジン)が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。接触は、第1種類のナノ粒子に結び付けられたsbpメンバー(例えばビオチン)と、第2種類のナノ粒子に結び付けられたsbp補体(例えばストレプトアビジンまたはアビジン)との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で起こる。検出可能な変化が生じ得る。
別の実施形態では、核酸を検出する方法は、オリゴヌクレオチドが結び付けられた支持体を、配列が少なくとも2つの部分を有する核酸と接触させることを含む。支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分に相補的な配列を有する。接触は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと核酸の第1部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。次に、sbpメンバー(例えばビオチン)が結び付けられたオリゴヌクレオチドを提供する。sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分に相補的な配列を有する。次に、支持体に結び付けられた核酸を、sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドと核酸の第2部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で、sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドと接触させる。その後、オリゴヌクレオチドを結び付けたある種類のナノ粒子共役体を提供する。ナノ粒子共役体に結び付けられたオリゴヌクレオチドの
少なくとも一部分は、ハイブリダイゼーションの結果、sbpメンバーの特異的結合補体(例えばストレプトアビジンまたはアビジン)が結び付けられたオリゴヌクレオチドに結合する。その後、支持体に結び付けられたsbpメンバーを、支持体に結び付けられたsbpメンバーとナノ粒子に結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で、ナノ粒子と接触させ、検出可能な変化を観察する。
別の実施形態では、核酸を検出する方法は、核酸を、オリゴヌクレオチドを取り付けたナノ粒子共役体と接触させることを含む。核酸の配列は少なくとも2つの部分を有する。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸の第1部分に相補的な配列を有する。接触は、ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドの核酸の第1部分とのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。その後、sbpメンバー(例えばストレプトアビジン)を有するオリゴヌクレオチドを提供する。sbpメンバーが結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分に相補的な配列を有する。その後、sbpメンバーを有するオリゴヌクレオチドを、sbpメンバーを有するオリゴヌクレオチドと核酸との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で、ナノ粒子に結び付けられた核酸と接触させる。次に、sbpメンバーに対する特異的結合補体(例えばビオチン)を結び付けた支持体を提供する。その後、支持体を、sbpメンバーとsb補体の間に特異的結合相互作用が生じることを許容するのに有効な条件下で、ナノ粒子を結び付けたsbpメンバーと接触させる。検出可能な出来事を観察し得る。
別の実施形態では、核酸を検出する方法は、オリゴヌクレオチドが結び付けられた支持体と核酸を接触させることを提供することを含む。核酸の配列は少なくとも2つの部分を有し、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分と相補的な配列を有する。接触は、支持体に結び付けられたオリゴヌクレオチドと核酸の第1部分との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。その後、sbpメンバー(例えばビオチン)に結び付けられたオリゴヌクレオチドを提供する。sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分と相補的な配列を有する。その後、支持体に結び付けられた核酸を、支持体に結び付けられた核酸の第2部分と、sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で、オリゴヌクレオチドと接触させる。次にオリゴヌクレオチドを結び付けた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブを提供する。凝集体プローブのナノ粒子は、それらに取り付けられたオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの少なくとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、ハイブリダイゼーションの結果としてsbpメンバーの補体(例えばストレプトアビジン)が結び付けられる第2のオリゴヌクレオチドに結合するオリゴヌクレオチドが取り付けられる。その後、支持体に結び付けられたsbpメンバーを、支持体に結び付けられたsbpメンバーと凝集体に結び付けられた特異的結合補体との間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で凝集体プローブと接触させる。この時点で検出可能な変化を観察し得る。
別の実施形態では、核酸を検出する方法は、核酸を、オリゴヌクレオチドを結び付けた少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブと接触させることを含む。核酸は2つの部分を有する。凝集体プローブのナノ粒子は、それらに付けられたオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果、互いに結び付けられる。凝集体プローブの少なくとも2種類のナノ粒子のうちの少なくとも1種類には、ハイブリダイゼーションの結果核酸の第1部分に結合されるいくつかのオリゴヌクレオチドが取り付けられる。その後、sbpメンバー(例えばストレプトアビジン)を有するオリゴヌクレオチドを提供する。sbpメンバーが結び付けられたオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分に相補的な配列を有する。その後、sbpメンバーを有するオリゴヌクレオチドを、sbpメンバーを有するオ
リゴヌクレオチドとプローブに取り付けられた核酸との間のハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で、凝集体プローブに結び付けられた核酸と接触させる。次に、sbpメンバーに対する特異的結合補体(例えばビオチン)を結び付けた支持体を提供する。その後、支持体を、凝集体プローブに結び付けられたsbpメンバーと支持体に結び付けられたsb補体との間に特異的結合相互作用が生じるのを許容するのに有効な条件下で、凝集体プローブに結び付けられたsbpメンバーと接触させる。検出可能な出来事を観察し得る。
本発明はさらに、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−sbpメンバー共役体(ナノ粒子sbp共役体)および同共役体を含む組成物をさらに提供する。ナノ粒子sbp共役体には、オリゴヌクレオチドが結び付けられ、同オリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、共有結合によって特異的結合対(sbp)メンバーが結合された第1のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。ナノ粒子に付けられたオリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的な配列を有する。
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドが結び付けられたナノ粒子共役体と、sbpメンバーが結び付けられたオリゴヌクレオチドとを提供することと、ナノ粒子に取り付けたオリゴヌクレオチドを、sbpメンバーに結び付けたオリゴヌクレオチドと接触させることを含む、ナノプローブsbp共役体の製造方法も提供する。ナノ粒子に結び付けられたオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、sbpメンバーに結び付けられたオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの第1のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で起こる。
本発明はさらに、検体を検出するためのキットを提供する。1実施形態では、キットは少なくとも1つの容器を備える。容器はオリゴヌクレオチドが結び付けられたナノ粒子を含むナノ粒子sbp共役体を入れる。オリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、共有結合により特異的結合対(sbp)メンバーが結合された第1のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。ナノ粒子に取り付けられたオリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的な配列を有する。キットは、検出可能な変化を観察するための基質をさらに備えてもよい。
本発明の別の実施形態では、キットは少なくとも2つの容器を備える。第1の容器は、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子を含む。オリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、第1のオリゴヌクレオチドの一部分に相補的な配列を有する。第2の容器は、sbpメンバーが共有結合された第1のオリゴヌクレオチドを含む。キットは、検出可能な変化を観察するための基質をさらに備えてもよい。
本発明のさらに別の実施形態では、キットは少なくとも2つの容器を備える。第1の容器は、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子を含む。オリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、第1のオリゴヌクレオチドの一部分に相補的な配列を有する。第2の容器は、sbpメンバーを共有結合するのに使用できる部分を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む。キットは、検出可能な変化を観察するための基質をさらに備えてもよい。
本発明のさらに別の実施形態では、キットは少なくとも3つの容器を備える。第1の容器は、オリゴヌクレオチドを結び付けたナノ粒子を含む。第2の容器は、少なくとも2つの部分を有するリンカーオリゴヌクレオチドを含む。第3の容器は、sbpメンバーを共有結合するのに使用できる部分を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドの少なくとも一部分は、リンカーオリゴヌクレオチドの第1部分に相補的な配列を有する。第1のオリゴヌクレオチドは、リンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも第2の
部分に相補的な配列を有する。キットは、検出可能な変化を観察するための基質をさらに備えてもよい。
本発明は、さらにナノファブリケーションの方法を提供する。この方法は、各種類の連結オリゴヌクレオチドの配列が少なくとも2つの部分を有する、選択配列を有する少なくとも1種類の連結オリゴヌクレオチドを提供することを含む。上記方法はさらに、各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが連結オリゴヌクレオチドの配列の第1部分に相補的な配列を有する、オリゴヌクレオチドが取り付けられた1または複数の種類のナノ粒子を提供することを含む。上記方法はさらに、各分子に第1のオリゴヌクレオチドが結び付けられ、該第1のオリゴヌクレオチドは連結オリゴヌクレオチドの配列の第2部分に相補的な配列を有する2つ以上のビオチン分子に結び付けられたストレプトアビジンまたはアビジン境界より構成された複合体を提供することを含む。連結オリゴヌクレオチド、複合体およびナノ粒子を、所望のナノ材料またはナノ構造を形成するよう、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドおよびビオチンに結び付けられた第1のオリゴヌクレオチドの連結オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で接触させる。
本発明は、別のナノファブリケーション方法を提供する。この方法は、(a)オリゴヌクレオチドを取り付けた少なくとも2種類のナノ粒子と、(b)各種類の連結オリゴヌクレオチドの配列が少なくとも2つの部分を有する、選択配列を有する少なくとも2種類の連結オリゴヌクレオチドと、(c)各分子に第1のオリゴヌクレオチドが結び付けられた2以上のビオチン分子に結び付けられたストレプトアビジンまたはアビジンより構成された複合体とを提供することを含む。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列と連結オリゴヌクレオチドの配列の第1部分に相補的な配列とを有する。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体上のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列と連結オリゴヌクレオチドの配列の第2部分に相補的な配列とを有する。第1および第2種類のナノ粒子、連結オリゴヌクレオチド、および複合体を、所望のナノ材料またはナノ構造を形成するよう、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの互いに対するおよび連結オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションならびに連結オリゴヌクレオチドに対する複合体のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で接触させる。
本発明はまた、さらに別のナノファブリケーション方法を提供する。この方法は、(a)各種類の連結オリゴヌクレオチドの配列が少なくとも2つの部分を有する、選択配列を有する少なくとも1種類の連結オリゴヌクレオチド、(b)各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが連結オリゴヌクレオチドの配列の第1部分に相補的な配列を有する、オリゴヌクレオチドが取り付けられた1または複数の種類のナノ粒子、(c)連結オリゴヌクレオチドの配列の第2部分に相補的な配列を有する第1のオリゴヌクレオチドが結び付けられたビオチン、および(d)ストレプトアビジンまたはアビジンを提供することを含む。連結オリゴヌクレオチド、ビオチン、共役体、ナノ粒子を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとビオチンに結び付けられた第1オリゴヌクレオチドの連結オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で接触させる。その後、生じた複合体を、所望のナノ材料またはナノ構造を形成するよう、ビオチンとストレプトアビジンまたはアビジンの間の特異的結合相互作用を許容するのに有効な条件下で、ストレプトアビジンまたはアビジンと接触させる。
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドコネクタとsbp相互作用によってナノ粒子がひとまとめにされた、オリゴヌクレオチドを取り付けたナノ粒子から構成されたナノ材料またはナノ構造を提供する。
本発明はさらに、少なくとも2つの部分を有する選択標的核酸を、他の核酸から分離する方法を提供する。この方法は、(a)各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが選択核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する、オリゴヌクレオチドを取り付けた1または複数の種類のナノ粒子、および(b)各分子に第1のオリゴヌクレオチドが結び付けられ、第1のオリゴヌクレオチドが選択核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有する、2つ以上のビオチン分子に結び付けられたストレプトアビジンまたはアビジンより構成された複合体、を提供することを含む。選択核酸および他の核酸を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドおよび複合体の第1のオリゴヌクレオチドの選択核酸とのハイブリダイゼーションして、選択核酸にハイブリダイズした選択核酸と複合体が凝集して沈降するのに有効な条件下でナノ粒子と接触させる。
本発明はさらに、少なくとも2つの部分を有する選択標的酸を、他の核酸から分離する方法を提供する。この方法は、(a)各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが選択核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有する、オリゴヌクレオチドを取り付けた1または複数の種類のナノ粒子、(b)第1のオリゴヌクレオチドが選択核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有する、第1のオリゴヌクレオチドを結び付けたビオチン、および(c)ストレプトアビジンまたはアビジンを提供することを含む。選択された核酸および他の核酸を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドおよびビオチン構築物の第1のオリゴヌクレオチドの選択核酸とのハイブリダイゼーションを許容するのに有効な条件下で、ナノ粒子およびビオチン構築物と接触させる。得られた複合体を、ビオチンとストレプトアビジンまたはアビジンとの間の特異的結合相互作用および得られた選択核酸複合体の後の凝集および沈降を許容するのに有効な条件下で、ストレプトアビジンまたはアビジンと接触させる。
本発明は、生体分子に結び付けられたナノ粒子プローブを、捕獲された標的分子を有する電極表面から/へ能動的に移動および濃縮する方法または捕獲された標的に溶液中で結び付けられているナノ粒子プローブのセットを、対象表面へ能動的に移動および濃縮する方法も提供する。
本発明の別の目的は、電極表面へのナノ粒子の移動を加速する方法であって、特異的結合対の荷電第1メンバーに結び付けられたナノ粒子と、特異的結合対の第2のメンバーを有する電極表面とを提供するステップと、ナノ粒子と電極表面を、特異的結合対の第1メンバーと第2メンバー間の結合を可能にするのに有効な条件下で接触させるステップと、電極表面へのナノ粒子の移動を加速し、結合対の第1メンバーと第2メンバー間の結合を促進するよう、ナノ粒子を電界にかけるステップと、から成る方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、電極表面に結び付けられた、少なくとも2つの部分を有する核酸を検出する方法であって、オリゴヌクレオチドを付着させた1または複数の種類のナノ粒子を提供するステップであって、1または複数の種類のナノ粒子の各々の上のオリゴヌクレオチドが核酸の少なくとも2つの部分のうちの1つの配列に相補的な配列を有するステップと、核酸とナノ粒子を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で接触させるステップと、ナノ粒子の電極表面への移動を加速するためにナノ粒子を電界にかけるステップと、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とのハイブリダイゼーションによって生じた検出可能な変化を観察するステップと、から成る方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、表面に結び付けられた少なくとも2つの部分を有する核酸を検出する方法であって、核酸をオリゴヌクレオチドを付着させた少なくとも2種類のナノ粒子と接触させるステップであって、第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは核酸の第1部分の配列に相補的な配列を有し、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチド
は核酸の第2部分の配列に相補的な配列を有し、接触が、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸と有効にハイブリダイズさせる条件下で起こるステップと、ナノ粒子の表面への移動を加速させるためにナノ粒子を電界にかけるステップと、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とのハイブリダイゼーションによって生じた検出可能な変化を観察するステップと、から成る方法を提供することである。接触条件は凍結と解凍、ならびに加熱を含んでいてもよい。検出可能な変化は固体表面上で観察されてよく、肉眼で観察可能な色の変化を含み得る。
本発明はさらに、多色標識の方法について提供し、オリゴヌクレオチドで官能化した異なる大きさのナノ粒子プローブを使用するDNAアレイの画像化について記載している。異なる大きさ(たとえば直径50nmおよび100nm)の金ナノ粒子は(その表面プラズモン共鳴が異なるために)異なる色の光を散乱するので、同一のアレイにハイブリダイズした異なるDNA標的を標識するためにこれらを使用することが可能である。アレイの表面に結合している粒子のみを検出し、アレイ上方の溶液中に浮遊している粒子は検出しないエバネセント導波技法を使用して、温度の上昇とともに標的がアレイ要素から融解して離れる際に、ナノ粒子で標識したアレイから配列情報および融解プロファイルを実時間で得ることが可能である。ナノ粒子で標識したアレイの配列選択性が、フルオロフォアで標識したアレイの配列選択性より有意に高いことが観察された。ナノ粒子で標識したアレイのほうが選択性が高いのは、アレイ表面からナノ粒子プローブが解離する温度の範囲が本質的に狭いことに起因している。
この多色標識の発明の1態様では、試料中の、少なくとも2つの部分を有する核酸を検出する方法が提供される。この方法は、(a)検出する核酸配列の第1の部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板を提供する工程と、(b)前記核酸配列の第2の部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが結合した、散乱光で検出可能なナノ粒子プローブを提供する工程であって、(i)オリゴヌクレオチドの一部がナノ粒子に結合するのに十分な時間、オリゴヌクレオチドを第1水溶液中でナノ粒子と接触させること、(ii)少なくとも1種の塩を該水溶液に加えて第2水溶液を作製すること、および(iii)追加のオリゴヌクレオチドがナノ粒子に結合するのに十分な追加の時間、該オリゴヌクレオチドとナノ粒子を第2水溶液中で接触させることからなる段階的成熟プロセスで該オリゴヌクレオチドを該ナノ粒子に付着させることを特徴とする工程と、(c)前記核酸、基板および凝集プローブを、前記核酸とナノ粒子プローブ上のオリゴヌクレオチド、ならびに前記核酸と基板上のオリゴヌクレオチドとがハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させて、基板に結合した光散乱複合体を形成させる工程と、(d)前記複合体から散乱光を生じさせるのに有効な条件下で光散乱複合体に光を照射する工程と、(e)前記条件下で、前記複合体によって散乱された光を核酸の存在の尺度として検出する工程とからなる。基板は、(a)流動性試料の屈折率より大きい屈折率を有する光透過性の要素、(b)受光縁部、および(c)オリゴヌクレオチドが結合した表面からなる導波路である。
本発明の多色標識の別の態様では、試料中の、それぞれ少なくとも2つの部分を有する2種以上の核酸を検出する方法が提供される。この方法は、(a)2つ以上のオリゴヌクレオチド種が付着した基板を提供する工程であって、それぞれのオリゴヌクレオチド種が基板上の異なる場所に付着し、それぞれのオリゴヌクレオチド種が、検出しようとする核酸のうちの1つの配列の第1の部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、(b)検出しようとする前記核酸のうち1つの配列の第2の部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドがそれぞれ結合した、散乱光で検出可能な2種以上のナノ粒子プローブを提供する工程であって、(i)オリゴヌクレオチドの一部がナノ粒子に結合するのに十分な時間、オリゴヌクレオチドを第1水溶液中でナノ粒子と接触させること、(ii)少なくとも1種の塩を水溶液に加えて第2水溶液を作製すること、および(iii)追加の
オリゴヌクレオチドがナノ粒子に結合するのに十分な追加の時間、該オリゴヌクレオチドとナノ粒子を第2水溶液中で接触させることからなる段階的成熟プロセスで該オリゴヌクレオチドを該ナノ粒子に付着させることを特徴とする工程と、(c)前記核酸、基板およびナノ粒子プローブを、前記核酸とナノ粒子プローブ上のオリゴヌクレオチド、ならびに前記核酸と基板上のオリゴヌクレオチドとがハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させて、基板に結合した光散乱複合体を形成させる工程と、(d)前記複合体から散乱光を生じさせるのに有効な条件下で光散乱複合体に光を照射する工程と、(e)前記条件下で、前記複合体によって散乱された光を1種または複数種の核酸の存在の尺度として検出する工程とからなる。基板は、(a)流動性試料の屈折率より大きい屈折率を有する光透過性の要素、(b)受光縁部、および(c)オリゴヌクレオチドが結合した表面からなる導波路である。
本発明はまた、本発明のナノ粒子共役体の、塩濃度依存的なハイブリダイゼーションの挙動を利用することによって、核酸検出の選択性を高める方法も提供する。ナノ粒子オリゴヌクレオチド共役体の融解特性の特異な塩依存性を使用して、ミスマッチの識別において熱的にストリンジェントな洗浄を省くことが可能であり、これは、手持ち型(hand−held)のDNA検出システムを開発することに向けての重要な1歩である。したがって、本発明の1実施形態では、核酸を検出する方法が提供される。この方法は、核酸配列の第1の部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが結合した基板を提供する工程と、少なくとも一部が該核酸の第2の部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが結合した、ナノ粒子などの標識を提供する工程と、標識と複合体形成した試験基板を形成するために、該基板、核酸、および標識を、該基板に結合したオリゴヌクレオチドと該核酸との間、および該核酸と該標識に結合したオリゴヌクレオチドとの間でハイブリダイズさせるのに有効な条件下で接触させる工程と、該試験基板を、非特異的に結合した標識を実質的に除去するのに有効な塩濃度を有する塩水溶液と接触させる工程と、検出可能な変化を観察する工程とからなる。
本発明の別の実施形態では、少なくとも2つの部分を有する核酸を検出する方法は、(a)核酸を、オリゴヌクレオチドが付着した基板と、該基板上のオリゴヌクレオチドと前記核酸がハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドが1対の電極の間に配置され、前記核酸の配列の第1の部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、(b)基板に結合した前記核酸をナノ粒子など第1のタイプの標識と接触させる工程であって、該標識が電気を通し得る材料から作製され、該標識に1種または複数種のオリゴヌクレオチドが付着しており、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドが前記核酸の配列の第2の部分に相補的な配列を有するとともに、該標識上のオリゴヌクレオチドと前記核酸とがハイブリダイズするのに有効な条件下で実施して標識と複合体形成した試験基板を形成させることを特徴とする工程と、(c)該試験基板を、非特異的に結合した標識を十分に除去するのに有効な塩濃度を有する塩水溶液と接触させる工程と、(d)前記電極の電気特性の変化を検出する工程とからなる。
本明細書に使用する場合、「オリゴヌクレオチド種」とは、同じ配列を有する複数のオリゴヌクレオチド分子を表す。オリゴヌクレオチドが付着している、ある「種の」ナノ粒子、共役体、粒子、ラテックスミクロスフェアなどは、同種類のオリゴヌクレオチドが付着している複数の上記物質を指す。また、「オリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子」は、「ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体」、または、本発明の検出法の場合には、「ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブ」、「ナノ粒子プローブ」もしくは単に「プローブ」と称されることもある。
用語「検体」とは、薬物、代謝産物、農薬、汚染物質およびその他同種のものを含む、検出すべき化合物または組成物のことを指す。被検体は、特異的結合対(sbp)のメン
バーから構成することができ、通常は抗原またはハプテンである、一価(モノエピトープ)または多価(ポリエピトープ)リガンドであり、単一の化合物または少なくとも1つの共通エピトープまたは決定基を共有する複数の化合物である。検体は、最近のような細胞またはA、B、Dなどの血液群抗原またはHLA抗原を担持する細胞のような細胞の一部であってもよいし、微生物(例えば細菌、真菌類、原生動物、ウイルス)であってもよい。
多価リガンド検体は、通常、ポリ(アミノ酸)つまりポリペプチド、タンパク質、多糖、核酸、およびそれらの組み合わせである。そのような組み合わせには、細菌、ウイルス、染色体、遺伝子、ミトコンドリア、核、細胞膜およびその他同種のものの構成要素が含まれる。
大部分は、本発明を適用することができるポリエピトープリガンド検体は、少なくとも約5,000、より一般的には少なくとも約10,000の分子量を有する。ポリ(アミノ酸)の分類では、問題のポリ(アミノ酸)は一般に約5,000〜5,000,000の分子量であり、より一般的には約20,000〜1,000,000の分子量であり、とりわけ問題のホルモンでは、分子量は一般に約5,000〜60,000に及ぶ。
同様の構造的特徴を有するタンパク質、特定の生物学的機能を有するタンパク質、特定の微生物に関する(特に疾病を引き起こす微生物)タンパク質等のファミリーに関して、様々のタンパク質を考慮することができる。そのようなタンパク質としては、例えば、免疫グロブリン、サイトカイン、酵素、ホルモン、癌抗原、栄養学的マーカー、組織特異抗原などが含まれる。
タンパク質、血液凝固因子、タンパク質ホルモン、抗原性多糖、微生物、および本発明で問題となる他の病原体が、特に米国特許第4,650,770号に開示されている。その開示全体が引用により本明細書に組み込まれる。
モノエピトープリガンド検体は、一般に約100〜2,000、より一般的には約125〜1,000の分子量であろう。
そのような検体は、ホストからの体液等のサンプルに直接見出される分子であり得る。サンプルは、直接検査してもよいし、または検体をより容易に検出できるようにするために予め処理してもよい。更に、問題の検体は、問題の検体に相補的な特異的結合対メンバー等の、問題の検体の存在を証明する作用物質の検出により、決定することができる。作用物質の存在は、問題の検体がサンプル中に存在するときにのみ検出される。したがって、検体の存在を証明する作用物質は、アッセイで検出される検体となる。体液は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、およびその他同種のものであってよい。
用語「特異的結合対(sbp)メンバー」とは、2つの異なる分子の一方であって、他方の分子の特定の空間的および極性の組織に特異的に結合しそれゆえ該組織に相補的と定義されるある領域を表面上または空洞内に有する分子のことを指す。この特異的結合対メンバーは、リガンドおよび受容体(アンチリガンド)とも称される。これらは通常、抗原−抗体のような免疫学的な対であり、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモン受容体、核酸二本鎖、IgG−プロテインA、DNA−DNA、DNA−RNA等のポリヌクレオチド対のような他の特異的結合は免疫学的な対ではないが、通常本発明およびsbpメンバーの定義に含まれる。
用語「リガンド」は、それに対する受容体が当然存在するか、それに対する受容体を調製することができる、任意の有機化合物のことを指す。用語「リガンド」はさらに、通常
100を超える分子量を有し、受容体に対する類似リガンドと競合できる修飾リガンドであり、通常は有機ラジカルまたは検体類似体である、リガンド類似体も含む。修飾により、リガンド類似体を別の分子とつなぐ手段が提供される。リガンド類似体は、通常、リガンドをハブまたは表漆器に連結する結合と水素の置換以上にリガンドとは異なるが、必ずしもその必要はない。リガンド類似体はリガンドと類似の様式で受容体に結合することができる。リガンド類似体は、例えば、抗体のイディオタイプに対してリガンドに向けられた抗体であり得る。
用語「受容体」または「アンチリガンド」とは、例えば、分子の特定の空間的および極性の組織(例えばエピトープまたは抗原決定基)を認識することができる任意の化合物または組成物のことを指す。例となる受容体には、天然受容体、例えばチロキシン結合性グロブリン、抗体、酵素、Fabフラグメント、レクチン、核酸、アビジン、プロテインA、バースター(barstar)、補体成分Clq、およびその他同種のものが含まれる。アビジンには、卵白アビジンや、ストレプトアビジンのような他の供給源から得られたビオチン結合タンパク質が含まれる。
用語「特異的結合」とは、2つの異なる分子の1つが、他の分子の認識が本質的により少ないのに比べて、もう1つの分子を特異的に認識することを指す。一般に、分子は、分子間の特定の認識を生じさせる領域を、それらの表面上にまたは空洞内で有する。特異的結合の典型例は、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド相互作用等である。
用語「非特異的結合」とは、特定の表面構造から比較的独立した、分子間の非共有結合のことを指す。非特異的結合は、分子間の疎水的相互作用を含むいくつかの要因によって起こり得る。
用語「抗体」とは、もう1つの分子の特定の空間的および極性の組織に特異的に結合し、それゆえ該組織に相補的と定義される、免疫グロブリンのことを指す。抗体は、モノクローナルであってもポリクローナルであってもよく、ホストの免疫や血清の収集のような当該技術分野で周知の技術により(ポリクローナル)、または連続的なハイブリッド細胞系の調製と分泌タンパク質の収集により(モノクローナル)、または天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列またはその変異配列をクローニングおよび発現することにより、調製することができる。抗体には完全な免疫グロブリンまたはその断片が含まれ、免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgMのような様々なクラスとアイソタイプが含まれる。その断片には、Fab、Fv、およびF(ab’)sub.2、Fab’等が含まれる。さらに、免疫グロブリンまたはそのフラグメントの凝集体、ポリマー、および共役体も、特定の分子に対する結合親和性を維持する限り、適宜使用することができる。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の実施に有用なナノ粒子としては、金属(例えば、金、銀、銅および白金)、半導体(例えば、CdSe、CdS、およびCdSまたはZnSでコートしたCdSe)ならびに磁性(例えば、強磁性)コロイド材料が挙げられる。本発明の実施に有用な他のナノ粒子には、ZnS、ZnO、TiO2、AgI、AgBr、HgI2、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2S3、In2Se3、Cd3P2、Cd3As2、InAs、およびGaAsが含まれる。ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5〜約150nm(平均直径)、より好ましくは約5〜約50nm、最も好ましくは約10〜約30nmである。ナノ粒子はロッドであってもよい。
金属、半導体および磁気ナノ粒子の調製法は当該技術分野において周知である。例えば、Schmid,G.(編),Clusters and Colloids(VCH,Weinheim,1994年);Hayat,M.A.(編),Colloidal Gold:Principles,Methods,and Applications(Academic Press,San Diego,1991年);Massart,R.,IEEE Transactions On Magnetics,第17巻,1247ページ(1981年);Ahmadi,T.S.ら,Science,第272巻,1924ページ(1996年);Henglein,A.ら,J.Phys.Chem.,第99巻,14129ページ(1995年);Curtis,A.C.ら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,第27巻,1530ページ(1988年)参照。
ZnS、ZnO、TiO2、AgI、AgBr、HgI2、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2S3、In2Se3、Cd3P2、Cd3As2、InAs、およびGaAsナノ粒子の調製法も当該技術分野において公知である。例えば、Weller,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,第32巻,41ページ(1993年);Henglein,Top.Curr.Chem.,第143巻,113ページ(1988年);Henglein,Chem.Rev.,第89巻,1861ページ(1989年);Brus,Appl.Phys.A.,第53巻,465ページ(1991年);Bahncmann,Photochemical Conversion and Storage of Solar Energy(PelizettiおよびSchiavelo編、1991年),251ページ;WangおよびHerron,J.Phys.Chem.,第95巻,525ページ(1991年);Olshavskyら,J.Am.Chem.Soc.,第112巻,9438ページ(1990年);Ushidaら,J.Phys.Chem.,第95巻,5382ページ(1992年)参照。
適当なナノ粒子は、例えば、テッド・ペラ社(Ted Pella,Inc.)(金)、アマーシャム社(Amersham Corporation)(金)およびナノプローブス社(Nanoprobes,Inc.)(金)からも市販されている。
核酸の検出に用いるのに好ましいのは金ナノ粒子である。金コロイド粒子は、美しい色を発するバンドに対して高い吸光係数を有する。これらの印象的な色は、粒度、濃度、粒子間間隔や、凝集体の凝集度および形状(幾何学)に応じて変化し、それが、これらの材料を比色アッセイ用に特に魅力的なものとしている。例えば、金ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドおよび核酸とがハイブリダイズすると直ぐに、肉眼にも見える変色が生じる(例えば、実施例参照)。
金ナノ粒子は、上記に挙げたのと同じ理由で、また、それらの安定性、電子顕微鏡検査による画像化の容易さや、十分に特性決定されたチオール官能基による修飾(以下参照)などの理由から、ナノファブリケーションに用いるのにも特に好ましい。また、半導体ナノ粒子も、それらの固有の電子特性および発光特性のゆえにナノファブリケーション用に好ましい。
オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させるために、ナノ粒子もしくはオリゴヌクレオチドまたは両者を官能化する。そのような方法は当該技術分野では公知である。例えば、3′末端または5′末端がアルカンチオールにより官能化されたオリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子に容易に付着する。Whitesides,Proceedings of the Robert A.Welch Foundation 39th Conference On Chemical Research Nanophase Chemistry,Houston,TX,109−121ページ(1995年)参照。さら
に、Mucicら,Chem.Commun.,555−557ページ(1996年)(平らな金表面に3′チオールDNAを付着させる方法を記載している;この方法は、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させるのに用い得る)参照。アルカンチオール法は、オリゴヌクレオチドを、他の金属、半導体および磁性コロイドや、上記にリストした他のナノ粒子に付着させるのにも用い得る。オリゴヌクレオチドを固体表面に付着させるための他の官能基には、ホスホロチオエート基(例えば、オリゴヌクレオチド−ホスホロチオエートを金表面に結合させることに関しては、米国特許第5,472,881号参照)、置換アルキルシロキサン(例えば、シリカおよびガラス表面へのオリゴヌクレオチドの結合に関しては、Burwell,Chemical Technology,第4巻,370−377ページ(1974年)ならびにMatteucciおよびCaruthers,J.Am.Chem.Soc.,第103巻,3185−3191ページ(1981年)、アミノアルキルシロキサンおよび類似のメルカプトアルキルシロキサンの結合に関しては、Grabarら,Anal.Chem.,第67巻,735−745ページ参照)が含まれる。オリゴヌクレオチドを固体表面に付着させるには、5′チオヌクレオシドまたは3′チオヌクレオシドを末端基とするオリゴヌクレオチドを用いてもよい。以下の参考文献はオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させるのに用い得る他の方法を記載している:Nuzzoら,J.Am.Chem.Soc.,第109巻,2358ページ(1987年)(金上のジスルフィド);AllaraおよびNuzzo,Langmuir,第1巻,45ページ(1985年)(アルミニウム上のカルボン酸);AllaraおよびTompkins,J.Colloid Interface Sci.,第49巻,410−421ページ(1974年)(銅上のカルボン酸);Iler,The Chemistry Of Siica,第6章,(Wiley,1979年)(シリカ上のカルボン酸);Timmons and Zisman,J.Phys.Chem.,第69巻,984−990ページ(1965年)(白金上のカルボン酸);SoriagaおよびHubbard,J.Am.Chem.Soc.,第104巻,3937ページ(1982年)(白金上の芳香環化合物);Hubbard,Acc.Chem.Res.,第13巻,177ページ(1980年)(白金上のスルホラン、スルホキシドおよび他の官能化溶剤);Hickmanら,J.Am.Chem.Soc.,第111巻,7271ページ(1989年)(白金上のイソニトリル);MaozおよびSagiv,Langmuir,第3巻,1045ページ(1987年)(シリカ上のシラン);MaozおよびSagiv,Langmuir,第3巻,1034ページ(1987年)(シリカ上のシラン);Wassermanら,Langmuir,第5巻,1074ページ(1989年)(シリカ上のシラン);EltekovaおよびEltekov,Langmuir,第3巻,951ページ(1987年)(二酸化チタンおよびシリカ上の芳香族カルボン酸、アルデヒド、アルコールおよびメトキシ基);Lecら,J.Phys.Chem.,第92巻,2597ページ(1988年)(金属上の硬質ホスフェート)。
環式ジスルフィドで官能化されたオリゴヌクレオチドは本発明の範囲内にある。環式ジスルフィドは、好ましくは、その環の中に2つの硫黄原子を含めて5または6つの原子を有している。適切な環式ジスルフィドは市販されているか、既知の方法によって合成される。環式ジスルフィドの還元形も使用することができる。
好ましくは、リンカーは、環式ジスルフィドに付けられた炭化水素部分をさらに含む。適切な炭化水素は市販されており、環式ジスルフィドに付けられる。好ましくは炭化水素部分はステロイド残基である。環式ジスルフィドに付けられたステロイド残基を含むリンカーを使用して調製されたオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体は、期せずしてアルカンチオールまたは非環式ジスルフィドをリンカーとして使用して調製した共役体と比較して、チオール(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)溶液中で使用されるジチオスレイトール)に対して著しく安定であることが分かった。確かに、本発明のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体は300倍安定していることがわかった。この予期しなかった安定性は
、恐らく各オリゴヌクレオチドが、1つの硫黄原子ではなく、2つの硫黄原子によってナノ粒子に固定されているという事実による。詳しく説明すると、環式ジスルフィドの2つの隣接した硫黄原子が、オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体の安定化に有効なキレート化効果を有することが考えられる。リンカーの大きな疎水性ステロイド残基も、ナノ粒子の表面への水溶性分子の接近からナノ粒子を遮ることにより、共役体の安定性に寄与するように思われる。
以上を考慮すると、両方の硫黄原子がナノ粒子に同時にくっ付くことができるように、環式ジスルフィドの2つの硫黄原子は好ましくは十分に接近しなければならない。より好ましくは、2つの硫黄原子は互いに隣接する。また、炭化水素部分は、ナノ粒子の表面を遮る大きな疎水性表面を示すように大きくなくてはならない。
環式ジスルフィドリンカーを使用したオリゴヌクレオチド−環式ナノ粒子共役体は、核酸検出用の診断アッセイや本明細書に記載したナノファブリケーションの方法において、プローブとして使用され得る。本発明のそのような共役体は、それを使用した診断アッセイの感度を向上させることが期せずして分かった。特に、環式ジスルフィドに付けられたステロイド残基を含むリンカーを使用して調製されたオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体を使用したアッセイは、約10倍アルカンチオールまたは非環式ジスルフィドをリンカーとして使用して調製された共役体を使用したアッセイよりも10倍感度が高いと分かった。
上記のチオールに対する本発明のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体の驚くべき安定性は、それらをPCR溶液中で直接使用することを可能にする。したがって、PCRによって増幅されるDNA標的に対してプローブとして加えられた本発明のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子は、30または40回のPCRの加熱−冷却サイクルを受け、チューブを開かなくてもなおアンプリコンを検出することができる。PCR後にプローブ追加のためにサンプルチューブを開くと、後のテストに使用する機器の汚染による深刻な問題が起こる可能性がある。
最後に、本発明は、本発明のある種類のオリゴヌクレオチド環式ジスルフィドリンカーが入った容器または本発明のある種類のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体が入った容器を含むキットを提供する。該キットは、核酸検出またはナノファブリケーションに有効な他の試薬や品目をさらに含んでもよい。
各ナノ粒子には多数のオリゴヌクレオチドが付着する。その結果、各ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、相補的配列を有する多数のオリゴヌクレオチドまたは核酸に結合し得る。
本発明の実施に際して、規定配列を有するオリゴヌクレオチドが様々な目的に使用される。予め決定した配列を有するオリゴヌクレオチドを調製する方法は周知である。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989年)およびF.Eckstein(編)Oligonucleotides and Analogues,第1版(Oxford University Press,New York,1991年)参照。オリゴヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドの合成には、共に固相合成法が好ましい(周知のDNA合成法は、RNAの合成にも有用である)。オリゴリボヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドは、酵素的に調製することもできる。
本発明は核酸検出法を提供する。これらの方法はまた、どの種類の核酸をも検出し得るし、例えば、病気の診断や核酸の配列決定にも用い得る。本発明の方法により検出し得る
核酸の例としては、遺伝子(例えば、特定の疾患に関与する遺伝子)、ウイルスRNAおよびDNA、細菌DNA、菌類DNA、cDNA、mRNA、RNAおよびDNAフラグメント、オリゴヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、一本鎖および二本鎖核酸、天然および合成核酸などがある。例えば、核酸検出法の用途例には、ウイルス性疾患(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスおよびエプスタイン−バー・ウイルス)、細菌性疾患(例えば、結核、ライム病、H.ピロリ、大腸菌感染症、レジオネラ感染症、マイコプラズマ感染症、サルモネラ感染症)性的伝染病(例えば、淋病)、遺伝性疾患(例えば、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血)、ならびにガン(例えば、ガン発症に関与する遺伝子)の診断および/またはモニター用;法医学用;DNA配列決定用;親子鑑定テスト用;細胞系確認用;遺伝子療法のモニター用;ならびに他の多くの目的が含まれる。
肉眼による変色の観察に基づく核酸検出法は、安価、高速、簡単、強靭(試薬が安定している)であり、特殊化装置または高価な装置を必要とせず、かつ計器による計測がほとんど不要である。これらの点から、上記方法は、例えば、DNA配列決定における研究および解析実験において、特定病原体の存在を検出する分野において、治療薬の処方を支援するために感染症の迅速な同定を必要とする医院において、また費用のかからない最前線のスクリーニングをするために家庭や保険センターにおいて用いるのに特に適している。
検出すべき核酸は、公知方法で単離することもできるし、細胞、組織試料、生物流体(例えば、唾液、尿、血液、血清)、PCR成分を含有する溶液、大過剰量のオリゴヌクレオチドまたは高分子量DNAを含有する溶液、および当該技術分野においても既知の他の試料中で直接検出することもできる。例えば、Sambrookら,Molecular
Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989年)ならびにB.D.HamesおよびS.J.Higgins編,Gene Probes 1(IRL Press,New York,1995年)参照。ハイブリダイズ用プローブを用いて検出するための核酸の調製法は当該技術分野では周知である。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989年)ならびにB.D.HamesおよびS.J.Higgins編;Gene Probes 1(IRL Press,New York,1995年)参照。
核酸が少量で存在する場合、当該技術分野において公知の方法を用い得る。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989年)ならびにB.D.HamesおよびS.J.Higgins編,Gene Probes 1(IRL Press,New York,1995年)参照。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅が好ましい。
本発明の1つの核酸検出法は、核酸とオリゴヌクレオチドが付着している1つ以上の種類のナノ粒子とを接触させるステップを含む。検出すべき核酸は少なくとも2つの部分を有している。これらの部分の長さと、もしあれば、それらの間隔は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズしたときに検出可能な変化が生じるように選択される。これらの長さと間隔は、経験的に決定可能であり、用いられる粒子の種類およびそのサイズ、ならびにアッセイに用いられる溶液中に存在する電解質の種類(当該技術分野では公知のように、ある種の電解質は、核酸のコンホメーションに影響を与える)に依存するであろう。
また、核酸を他の核酸の存在下に検出しようとする場合、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが結合すべき核酸部分は、核酸の検出を特異的にするのに十分なユニーク配列を含む
ように選択しなければならない。そのようにするためのガイドラインは当該技術分野では周知である。
核酸は、1種類のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体を用いればすむように互いに十分に近接した反復配列を含んでいることがあるが、このようなことはめったに起こらない。一般に、核酸の選択した複数の部分は異なる配列を有し、好ましくは異なるナノ粒子に付着している、該選択部分は、2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを担持するナノ粒子と接触することになろう。核酸を検出するための系の1つの例が図2に示されている。図で分るように、第1ナノ粒子に付着している第1オリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA中の標的配列の第1部分に対して相補的な配列を有している。第2ナノ粒子に付着している第2オリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA中の標的配列の第2部分に対して相補的な配列を有している。DNAの追加部分は対応ナノ粒子の標的となり得る。図17参照。核酸のいくつかの部分を標的とすると、検出可能な変化の大きさが増大する。
ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と核酸との接触ステップは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸の標的配列とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。これらのハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野では周知であり、用いられる特定の系に合わせて容易に最適化し得る。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989年)参照。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いるのが好ましい。
検出すべき核酸とナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を含有する溶液を凍結解凍することにより、ハイブリダイゼーションをより高速にすることができる。溶液は、ドライアイス−アルコール浴中に凍結させるのに十分な時間(一般に、100μlの溶液の場合、約1分)入れる方法などの任意の慣用法で凍結し得る。溶液は、熱変性温度より低い温度で解凍しなければないが、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と核酸とのほとんどの組合せに対しては、室温が好都合であろう。溶液の解凍後、ハイブリダイゼーションが完了し、溶液解凍後に検出可能な変化が観察される。
検出すべき核酸およびナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を含有する溶液を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと標的核酸とで形成された複合体の解離温度(Tm)より低い温度まで温めて、ハイブリダイゼーション速度を増大させることもできる。あるいは、解離温度(Tm)以上に加熱し、溶液を冷却することにより、高速ハイブリダイゼーションを達成することもできる。
ハイブリダイゼーションの速度は、塩濃度を(例えば、0.1Mから0.3M NaClに)高めることにより、増大させることも可能である。
ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とがハイブリダイズすると生じる検出可能な変化は、変色、ナノ粒子凝集体の形成、または凝集したナノ粒子の沈殿であり得る。変色は、肉眼または分光分析により観察し得る。ナノ粒子凝集体の形成は、電子顕微鏡検査または比濁分析によって観察し得る。凝集したナノ粒子の沈殿は、肉眼でも顕微鏡検査によっても観察し得る。好ましいのは、肉眼で観察し得る変化である。特に好ましいのは、肉眼で観察し得る変色である。
肉眼による変色の観察は、対照的な色を背景にするとより容易に実施し得る。例えば、金ナノ粒子を用いる場合、変色の観察は、(シリカまたはアルミナTLCプレート、濾紙、セルロイドメンブレン、およびナイロンメンブレン、好ましくはC−18シリカTLCプレートなどの)固体白色表面上にハイブリダイゼーション溶液をスポットし、スポットを乾燥させることにより容易になる。初めは、スポットは、(ハイブリダイゼーション不在下のピンク/赤色から、ハイブリダイゼーション存在下の紫がかった赤/紫色の範囲の
)ハイブリダイゼーション溶液の色を呈する。室温下または80℃(温度は重要ではない)下に乾燥させたとき、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体がスポットする前に標的核酸とハイブリダイズして結合していると、青色スポットが生じる。(例えば、標的核酸が存在しないために)ハイブリダイゼーションが起こらないと、スポットはピンク色である。青色スポットとピンク色スポットは安定であり、のちに冷却しても、加熱しても、経時的にも、変化しない。それらのスポットはテストの便利な永久記録を提供する。変色を観察するのに、(ハイブリダイズしたナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とハイブリダイズしていないものの分離などの)他のステップは不要である。
アッセイ結果を容易に視覚化するための代替法は、液体を吸引してフィルターに通過させながら、標的核酸にハイブリダイズしたナノ粒子プローブ試料をガラス繊維フィルター(例えば、サイズが13nmの金ナノ粒子と共に用いる場合には、細孔サイズ0.7μm、グレードFG75のホウケイ酸塩ミクロファイバーフィルター)に対してスポットする方法である。その後、(フィルターの細孔より大きいために保持された)ナノ粒子プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションにより生成した凝集体を含む観察可能なスポットを残して、過剰なハイブリダイズしていないプローブをフィルターに通して水で洗い流す。この技術は、過剰なナノ粒子プローブを使用し得るので、高い感度を提供し得る。残念ながら、ナノ粒子プローブは、試みた他の多くの固体表面(シリカスライド、逆相プレート、ナイロン、ニトロセルロース、セルロースおよび他のメンブレン)には粘着するために、これらの表面は使用できない。
図2に示されている検出系の重要な側面は、検出可能な変化を得るステップが、2つの異なるオリゴヌクレオチドと核酸中の所与の標的配列との協同ハイブリダイゼーションによって決まることである。2つのオリゴヌクレオチドのいずれにおける誤対合も、粒子間の結合を不安定にするであろう。塩基対における誤対合が、長いオリゴヌクレオチドプローブの結合よりも短いオリゴヌクレオチドプローブの結合に対してはるかに大きな不安定化作用を及ぼすことは周知である。図2に示されている系の利点は、この系が、長い標的配列およびプローブ(図2に示されている実施例では18塩基対)に関連する塩基識別を利用するにも拘わらず、短いオリゴヌクレオチドプローブ(図2に示されている実施例では9塩基対)に特徴的な感度を有することである。
核酸の標的配列は、図2のように連続的なこともあるし、図3に示されているように、標的配列の2つの部分がナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと相補的ではない第3部分によって分離されていることもある。後者の場合、溶液中で遊離すると共にこの第3部分の配列に対して相補的な配列を有する、フィラー(filler、充填)オリゴヌクレオチドを用いるというオプションもある(図3参照)。フィラーオリゴヌクレオチドが核酸の第3部分とハイブリダイズすると、二本鎖セグメントができ、それによってナノ粒子間の平均間隔が変化し、その結果、色が変わる。図3に示されている系は、検出法の感度を高め得る。
核酸検出法の実施態様のなかには基板を利用するものもある。基板を用いることにより、検出可能な変化(シグナル)を増幅し、アッセイの感度を高めることができる。
検出可能な変化を観察し得る任意の基板を用いてよい。適当な基板としては、透明固体表面(例えば、ガラス、石英、プラスチックおよび他のポリマー類)、不透明固体表面(例えば、TLCシリカプレート、濾紙、ガラス繊維フィルター、セルロイドメンブレン、ナイロンメンブレンなどの白色固体表面)、および導電性固体表面(例えば、インジウム−スズ−オキシド(ITO))が挙げられる。基板は、任意の形状または厚さであってよいが、一般的には、平坦で薄い。好ましいのは、ガラス(例えば、ガラス製スライド)またはプラスチック(例えば、マイクロタイタープレートのウエル)などの透明な基板である。
1つの実施態様において、オリゴヌクレオチドを基板に付着させる。オリゴヌクレオチドは、例えば、Chriseyら,Nucleic Acids Res.,第24巻,3031−3039ページ(1996年);Chriseyら,Nucleic Acids Res.,第24巻,3040−3047ページ(1996年);Mucicら,Chem.Commun.,第555巻(1996年);ZimmermannおよびCox,Nucleic Acids Res.,第22巻,492ページ(1994年);Bottomleyら,J.Vac.Sci.Technol.A,第10巻,591ページ(1992年);およびHegnerら,FEBS Lett.,第336巻,452ページ(1993年)に記載のように、基板に付着させることができる。
基板に付着しているオリゴヌクレオチドは、検出すべき核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。核酸と基板とを、基板上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。このようにして、核酸は基板と結合した状態になる。結合しなかった核酸は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を加える前に基板から洗い流すのが好ましい。
次いで、基板に結合した核酸と、オリゴヌクレオチドが付着している第1種類のナノ粒子とを接触させる。オリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有しており、接触ステップは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。このようにして、第1種類のナノ粒子は基板に結合した状態になる。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を基板に結合させた後、基板を洗浄して、結合していないナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体および核酸を除去する。
第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、すべて同じ配列を有してもよいし、検出すべき核酸の異なる部分とハイブリダイズする異なる配列を有してもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを用いる場合、各ナノ粒子に、すべての異なるオリゴヌクレオチドが付着してもよいが、異なるオリゴヌクレオチドが異なるナノ粒子に付着するのが好ましい。図17は、核酸の複数の部分にハイブリダイズするように設計されたナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の使用を示している。代わりに、各第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは複数の異なる配列を有していてもよいが、そのうちの少なくとも1つは、検出すべき核酸の一部とハイブリダイズしなければならない(図25B参照)。
最後に、基板に結合した第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と、オリゴヌクレオチドが付着している第2種類のナノ粒子とを接触させる。該オリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドの少なくとも一部の配列に対して相補的な配列を有しており、接触ステップは、第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。ナノ粒子を結合させ後、結合しなかったナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を除去するために基板を洗浄するのが好ましい。
ハイブリダイゼーションの組合せにより、検出可能な変化が生じる。検出可能な変化は上述のものと同じであるが、但し、多重ハイブリダイゼーションにより、検出可能な変化が増幅される。特に、各第1種類のナノ粒子には、(同一または異なる配列を有する)複数のオリゴヌクレオチドが付着しているので、各第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、複数の第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体にハイブリダイズし得る。また、第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、検出すべき核酸の2つ以上の部分にハイブリダイズし得る。多重ハイブリダイゼーションにより得られる増幅は、変化を初めて検出し得るものとしたり、または検出可能な変化の大きさを増大させたりし得る。この増幅によって、アッセイの感度が高められ、少量の核酸の検出が可能になる
。
所望の場合には、第1および第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を連続付加して、追加のナノ粒子層を堆積することができる。この方法で、標的核酸1分子当たりの固定化ナノ粒子の数を増加させると同時に、対応するシグナル強度を増強させることができる。
また、互いに直接ハイブリダイズするように設計された第1および第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の代わりに、連結オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの結果としてナノ粒子を共に結合させる働きをするオリゴヌクレオチドを担持するナノ粒子を用いてもよい。
ナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの調製法ならびにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる方法は上記に説明されている。ハイブリダイゼーション条件は当該技術分野では周知であり、用いられる特定の系に合わせて容易に最適化し得る(上記参照)。
この核酸(検体DNA)検出法の1つの実施例が図13Aに示されている。図に示されているように、ハイブリダイゼーションの組合せにより、ナノ粒子凝集体が検体DNAを介して基板に結合している暗色領域が生じる。これらの暗色領域は、周囲光を使って肉眼で、好ましくは白い背景を背に基板を見れば容易に観察し得る。図13Aから容易に分るように、この方法は、検出可能な変化を増幅させる手段を提供する。
この核酸検出法の別の実施例が図25Bに示されている。図13Aに示されている実施例と同じように、ハイブリダイゼーションの組合せにより、ナノ粒子凝集体が検体DNAを介して基板に結合している暗色領域ができ、これは肉眼で観察することができる。
別の実施態様では、ナノ粒子を基板に付着させる。ナノ粒子は、例えば、Grabarら,Analyt.Chem.,第67巻,73−743ページ(1995年);Bethellら,J.Electroanal.Chem.,第409巻,137ページ(1996年);Barら,Langmuir,第12巻,1172ページ(1996年);Colvinら,J.Am.Chem.Soc.,第114巻,5221ページ(1992年)に記載のように基板に付着させることができる。
ナノ粒子を基板に付着させた後、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる。これは、溶液中でオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させるための上記方法と同じ方法で達成し得る。ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。
基板と核酸とを、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。このようにして、核酸は基板に結合した状態になる。結合しなかった核酸は、さらにナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を加える前に基板から洗い流すのが好ましい。
次いで、オリゴヌクレオチドが付着している第2種類のナノ粒子を用意する。これらのオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有しており、基板に結合した核酸と第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とを、第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。このようにして、第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は基板と結合した状態になる。ナノ粒子を結合させた後、結合しなかったナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と核酸を基板から洗い流す。この時点で、ある変化(
例えば、変色)を検出し得る。
第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドはすべて同じ配列を有してもよいし、検出すべき核酸の異なる部分とハイブリダイズする異なる配列を有してもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを用いる場合、各ナノ粒子に、すべての異なるオリゴヌクレオチドが付着してもよいが、異なるオリゴヌクレオチドが異なるナノ粒子に付着するのが好ましい。図17を参照されたい。
次いで、第1部分が第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部の配列と相補的である少なくとも2つの部分を含む選択された配列を有する結合オリゴヌクレオチドと、基板に結合した第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とを、結合オリゴヌクレオチドとナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。このようにして、結合オリゴヌクレオチドは基板と結合した状態になる。結合オリゴヌクレオチドを結合させた後、結合しなかった結合オリゴヌクレオチドを基板から洗い流す。
最後に、オリゴヌクレオチドが付着している第3種類のナノ粒子を用意する。これらのオリゴヌクレオチドは、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列に対して相補的な配列を有している。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と、基板に結合した結合オリゴヌクレオチドとを、結合オリゴヌクレオチドとナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。ナノ粒子を結合させた後、結合しなかったナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を基板から洗い流す。
ハイブリダイゼーションの組合せにより、検出可能な変化が生じる。検出可能な変化は上述のものと同じであるが、但し、多重ハイブリダイゼーションにより、検出可能な変化が増幅される。特に、各第2種類のナノ粒子には、(同一または異なる配列を有する)多数のオリゴヌクレオチドが付着するので、各第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、(結合オリゴヌクレオチドを介して)複数の第3種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体にハイブリダイズし得る。また、第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、検出すべき核酸の2つ以上の部分にハイブリダイズし得る。多重ハイブリダイゼーションによりもたらされる増幅は、変化を初めて検出可能なものとしたり、または検出可能な変化の大きさを増大させたりし得る。この増幅により、アッセイの感度が高められ、少量の核酸の検出が可能になる。
所望の場合には、結合オリゴヌクレオチドと第2および第3種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とを連続付加して、追加のナノ粒子層を堆積することができる。このようにして、標的核酸1分子当たりの固定化ナノ粒子の数をさらに増強させると同時に、対応するシグナル強度を増強させることができる。
また、結合オリゴヌクレオチドの使用を排除することも可能であり、第2および第3種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、直接互いにハイブリダイズするように設計し得る。
ナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの調製法ならびにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる方法は上記に説明されている。ハイブリダイゼーション条件は当該技術分野では周知であり、用いられる特定の系に合わせて容易に最適化し得る(上記参照)。
この核酸(検体DNA)検出法の1つの実施例が図13Bに示されている。その図に示されているように、ハイブリダイゼーションの組合せにより、ナノ粒子凝集体が検体DNAを介して基板に結合している暗色領域が生じる。これらの暗色領域は、上述したように
肉眼で容易に観察し得る。図13Bから分るように、本発明の方法のこの実施態様は、検出可能な変化を増幅させる別の手段を提供する。
別の増幅計画はリポソームの使用である。この計画では、オリゴヌクレオチドを基板に付着させる。適当な基板は上述のものであり、オリゴヌクレオチドは上述のように基板に付着させることができる。例えば、基板がガラスの場合、これは、ホスホリルまたはカルボン酸基を介してオリゴヌクレオチドを基板表面上のアミノアルキル基に縮合させることにより達成し得る(関連化学に関しては、Grabarら,Anal.Chem.,第67巻,735−743ページ(1995年)参照)。
基板に付着したオリゴヌクレオチドは、検出すべき核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。核酸と基板とを、基板上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。このようにして、核酸は基板と結合した状態になる。結合しなかった核酸は、この系の追加成分を加える前に基板から洗い流すのが好ましい。
次いで、基板に結合した核酸をオリゴヌクレオチドが付着しているリポソームと接触させる。オリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有しており、接触ステップは、リポソーム上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。このようにして、リポソームは基板と結合した状態になる。リポソームを基板に結合させた後、基板を洗浄して、結合しなかったリポソームと核酸を除去する。
リポソーム上のオリゴヌクレオチドはすべて同じ配列を有してもよいし、検出すべき核酸の異なる部分とハイブリダイズする異なる配列を有してもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを用いる場合、各リポソームに、すべての異なるオリゴヌクレオチドが付着するか、異なるオリゴヌクレオチドが異なるナノ粒子に付着し得る。
オリゴヌクレオチド−リポソーム共役体を調製するために、オリゴヌクレオチドを、コレステリルなどの疎水基に結合させ(Letsingerら,J.Am.Chem.Soc.,第115巻,7535−7536ページ(1993年)参照)、疎水基−オリゴヌクレオチド共役体をリポソーム溶液と混合して、疎水基−オリゴヌクレオチド共役体が膜に固定化された状態のリポソームを形成する(Zhangら,Tetrahedron Lett.,第37巻,6243−6246ページ(1996年)参照)。リポソーム表面上での疎水基−オリゴヌクレオチド共役体の充填は、混合物中の疎水基−オリゴヌクレオチド共役体とリポソームの比率を調節することにより制御し得る。コレステリル側基の疎水性相互作用によって付着しているオリゴヌクレオチドを担持するリポソームは、ニトロセルロース膜上に固体化されたポリヌクレオチドを標的とするのに有効であることが認められた(同上)。リポソーム膜内に固定化されたフルオレセイン基をレポーター基として用いた。フルオレセイン基は効果的な働きをしたが、(例えば、リポソーム表面上の)高局所濃度領域のフルオレセイン由来のシグナルが自己消光により弱められるという事実により感度が制限される。
リポソームは当該技術分野で周知の方法により調製される。Zhangら,Tetrahedron Lett.,第37巻,6243ページ(1996年)参照。一般にリポソームの大きさは、サイズ(直径)が、後続ステップで用いられるナノ粒子の約5〜50倍である。例えば、直径約13nmのナノ粒子には、直径約100nmのリポソームを用いるのが好ましい。
基板に結合したリポソームと、少なくとも1つの第1種類のオリゴヌクレオチドが付着
している第1種類のナノ粒子とを接触させる。第1種類のオリゴヌクレオチドのナノ粒子に付着していない末端には疎水基が付着しており、接触ステップは、疎水性相互作用の結果として、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドをリポソームに付着させるのに有効な条件下に行う。この時点で、検出可能な変化を観察し得る。
この方法はさらに、リポソームに結合した第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とオリゴヌクレオチドが付着している第2種類のナノ粒子とを接触させるステップを含む。第1種類のナノ粒子には、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しており、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子上の第2種類のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部の配列に対して相補的な配列を有している。接触ステップは、第1および第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。このハイブリダイゼーションは、一般に、穏和な温度(例えば、5〜60℃)下に実施され、したがって、室温下にハイブリダイゼーションを導き得る条件(例えば、0.3〜1.0M NaCl)が用いられる。ハイブリダイゼーション後、結合しなかったナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を基板から洗い流す。
ハイブリダイゼーションの組合せにより、検出可能な変化が生じる。検出可能な変化は上述のものと同じであるが、但し、多重ハイブリダイゼーションにより、検出可能な変化が増幅される。特に、各リポソームには、(同一または異なる配列を有する)複数のオリゴヌクレオチドが付着しているので、各リポソームは、複数の第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体にハイブリダイズし得る。同様に、各第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体には、多重オリゴヌクレオチドが付着しているので、各第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、複数の第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とハイブリダイズし得る。また、リポソームは、検出すべき核酸の2つ以上の部分にハイブリダイズし得る。多重ハイブリダイゼーションによりもたらされる増幅は、変化を初めて検出し得るものとしたり、または検出可能な変化の大きさを増大させたりし得る。この増幅により、アッセイの感度が高められ、少量の核酸の検出が可能になる。
所望の場合には、第1および第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を連続付加して、追加のナノ粒子層を堆積することができる。この方法で、標的核酸1分子当たりの固定化ナノ粒子の数をさらに増加させると同時に、対応するシグナル強度を増強させることができる。
また、互いに直接ハイブリダイズするように設計された第2および第3種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の代わりに、結合オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの結果としてナノ粒子を結合させる働きをするオリゴヌクレオチドを担持するナノ粒子を用いてもよい。
ナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの調製法ならびにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる方法は上記に説明されている。ナノ粒子と結合させるために一方の末端を官能化した、他方の末端に疎水基を有するかまたは有さないオリゴヌクレオチド混合物を、第1種類のナノ粒子上に用いてもよい。平均的なナノ粒子に結合したこれらのオリゴヌクレオチドの相対比は、混合物中の2種のオリゴヌクレオチドの濃度比によって制御される。ハイブリダイゼーション条件は当該技術分野では周知であり、用いられる特定の系に合わせて容易に最適化し得る(上記参照)。
この核酸検出法の1つの例が図18に示されている。第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体とリポソームとのハイブリダイゼーションにより、検出可能な変化が生じ得る。金ナノ粒子の場合、ピンク/赤色が観察され得るし、ナノ粒子が互いに十分に近接
していれば、紫/青色が観察され得る。第2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と第1種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体がハイブリダイズすると、検出可能な変化が生じる。金ナノ粒子の場合、紫/青色が観察されるであろう。これらの変色はいずれも肉眼で観察し得る。
基板を利用するさらに他の実施態様では、「凝集体プローブ」を用い得る。凝集体プローブは、相補的オリゴヌクレオチド(aおよびa′)が付着している2種類のナノ粒子をハイブリダイズさせて(図28Aに示されている)コアを形成することにより調製し得る。各種類のナノ粒子には、複数のオリゴヌクレオチドが付着しているので、各種類のナノ粒子は、複数の他の種類のナノ粒子にハイブリダイズし得る。ゆえに、コアは両種類の多数のナノ粒子を含む凝集体である。次いで、コアに、少なくとも2種類のオリゴヌクレオチドが付着している第3種類のナノ粒子でキャップ形成する。第1種類のオリゴヌクレオチドは、検出すべき核酸の一部の配列b′に対して相補的な配列bを有している。第2種類のオリゴヌクレオチドは、第3種類のナノ粒子がコアの外側のナノ粒子にハイブリダイズするように配列aまたはa′を有している。凝集体プローブは、2つの種類のナノ粒子を利用して調製することもできる(図28B参照)。各種類のナノ粒子には、少なくとも2種類のオリゴヌクレオチドが付着している。2つの種類のナノ粒子それぞれの上に存在する第1種類のオリゴヌクレオチドは、検出すべき核酸の一部の配列b′に対して相補的な配列bを有している。第1種類のナノ粒子上の第2種類のオリゴヌクレオチドは、2つの種類のナノ粒子が互いにハイブリダイズして凝集体プローブを形成するように第2種類のナノ粒子上の第2種類のオリゴヌクレオチドの配列a′に対して相補的な配列aを有している(図28B参照)。各種類のナノ粒子には、複数のオリゴヌクレオチドが付着しているので、各種類のナノ粒子は、複数の他の種類のナノ粒子とハイブリダイズして、両種類の多数のナノ粒子を含む凝集体を形成するであろう。
凝集体プローブは、基板上で実施される上記の任意のアッセイ形式における核酸の検出にも利用可能であり、それによって、検出可能な変化を得たり増強したりするために個別のナノ粒子層を堆積する必要がなくなる。検出可能な変化をさらにもっと増強するために、2つの種類の凝集体プローブを用いて凝集体プローブ層を堆積することができ、第1種類の凝集体プローブには、他方の種類の凝集体プローブ上のオリゴヌクレオチドと相補的なオリゴヌクレオチドが付着している。特に、凝集体プローブを図28Bに示されているように調製すると、凝集体プローブは、互いにハイブリダイズして多重層を形成し得る。凝集体プローブを利用するいくつかの可能なアッセイ形式が図28C−Dに示されている。例えば、配列cを含む1種類のオリゴヌクレオチドを基板に付着させる(図28C参照)。配列cは、検出すべき核酸の一部の配列c′と相補的である。標的核酸を加え、基板に付着しているオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた後、凝集体プローブを加え、配列b′を有する標的核酸部分にハイブリダイズさせると、検出可能な変化が生じる。あるいは、先ず、溶液中で標的核酸を凝集体プローブとハイブリダイズさせ、その後、基板上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせてもよいし、標的核酸を凝集体プローブと基板上のオリゴヌクレオチドとに同時にハイブリダイズさせてもよい。別の実施態様では、溶液中で、標的核酸を凝集体プローブおよび別の種類のナノ粒子と反応させる(図28D参照)。この追加種類のナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドのなかには、それらが標的核酸の配列c′にハイブリダイズするように配列cを有しているものがあるし、この追加種類のナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドのなかには、それらが基板に付着している配列d′を有するオリゴヌクレオチドにのちにハイブリダイズし得るように配列dを含んでいるものもある。
コア自体も核酸検出用のプローブとして用い得る。1つの可能なアッセイ形式が図28Eに示されている。この図に示されているように、配列bを含む1種類のオリゴヌクレオチドを基板に付着させる。配列bは、検出すべき核酸の一部の配列b′と相補的である。
標的核酸を基板と接触させ、基板に付着しているオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。次いで、別の種類のナノ粒子を加える。この追加種類のナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドのなかには、ナノ粒子が基板に結合している標的核酸とハイブリダイズするように標的核酸の配列c′に対して相補的な配列cを有するものがある。また、追加種類のナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドのなかには、コアプローブ上の配列aおよびa′に対して相補的な配列aまたはa′を含むものがある。コアプローブを加え、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。各コアプローブは、コアを含むナノ粒子に付着している配列aおよびa′を有しているので、コアプローブは、互いにハイブリダイズして、基板に付着した多重層を形成して、検出可能な変化を大きく増強させることができる。代替実施態様では、標的核酸を基板と接触させる前に溶液中で追加種類のナノ粒子と接触させるか、標的核酸、ナノ粒子、および基板をすべて同時に接触させ得る。さらに別の実施態様では、追加種類のナノ粒子を、配列cと配列aまたはa′を共に含む連結オリゴヌクレオチドに置き換え得る。
基板を用いると、複数の初期種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体またはオリゴヌクレオチドを、1つの標的核酸中の複数の部分を検出するため、多数の異なる核酸を検出するため、またはその両方の目的のために、基板にアレイ状に付着させることができる。例えば、1つの基板に、各スポットが標的核酸の一部に結合するように設計された、異なる種類のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体を含む幾列ものスポットを設け得る。1種以上の核酸を含有する試料を各スポットに加え、適切なオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体、オリゴヌクレオチド−リポソーム共役体、凝集体プローブ、コアプローブおよび結合オリゴヌクレオチドを用いて、上述の方法の1つでアッセイの残りの部分を実施する。
最後に、基板を用いると、検出可能な変化を生成させたり、銀染色法によって検出可能な変化を強化したりことができる。銀染色法は、銀の還元を触媒する任意の種類のナノ粒子と共に用い得る。好ましいのは、貴金属(例えば、金および銀)製ナノ粒子である。Bassellら,J.Cell Biol.,第126巻,863−876ページ(1994年);Braun−Howlandら,Biotechniques,第13巻,928−931ページ(1992年)参照。核酸の検出に用いられているナノ粒子が銀の還元を触媒しない場合、還元を触媒させるために、銀イオンと核酸との複合体を形成させ得る。Braunら,Nature,第391巻,775ページ(1998年)参照。また、核酸上のリン酸基と反応し得る銀染料は公知である。
銀染色法を用いて、上述のものを含めた基板上で実施される任意のアッセイにおける検出可能な変化を生成または増強することができる。特に、銀染色法は、図25Aに示されているものなどの単1種類のナノ粒子を用いるアッセイの感度を著しく増強させることが判明しており、そのために、ナノ粒子層、凝集体ブローブおよびコアプローブを使わなくてすむことが多い。
基板上で実施される核酸検出アッセイにおいて、検出可能な変化は、光学式スキャナを用いて観察し得る。適当なスキャナには、反射モードで操作し得るコンピュータに文書をスキャンするのに用いられるもの(例えば、平台型スキャナ)、この機能を果たし得るか、または同種類の光学を利用する他のデバイス、任意の種類のグレースケール感受性測定デバイス、および本発明にしたがって基板をスキャンするように改変された標準型スキャナ(例えば、基板用容器を含むように改変された平台型スキャナ)(現在までのところ、透過モードで操作するスキャナを用いるのは不可能であることが判明している)が含まれる。スキャナの解像度は、基板上の反応領域をスキャナの1ピクセルより大きくするのに十分大きくなければならない。スキャナは、任意の基板と共に用い得るが、但し、アッセイによって生じた検出可能な変化は、基板を背景にして観察しなければならない(例えば
、銀染色法によって生成したようなグレースポットは、白を背景にすると観察し得るが、灰色を背景にすると観察できない)。スキャナは、白黒スキャナでもよいが、カラースキャナが好ましい。スキャナは、文書をコンピュータにスキャンするのに使用されるタイプの標準型カラースキャナが最も好ましい。そのようなスキャナは安価であり、容易に購入し得る。例えば、Epson Expression 636(600×600dpi)、UMAX Astra 1200(300×300dpi)、またはMicrotec
1600(1600×1600dpi)を用い得る。スキャナは、基板をスキャンして得た画像をプロセスするためのソフトウエアをロードしたコンピュータにつなぐ。ソフトウエアは、容易に購入し得る、Adobe Photoshop 5.1およびCorel Photopaint 8.0などの標準ソフトウエアであってよい。グレースケール測定値計算ソフトウエアを用いることにより、アッセイ結果の定量手段が得られる。このソフトウエアで、カラースポットの色数を得ることもできるし、核酸の存在、核酸の量、またはその両方を定量するために観察することができるスキャン画像(例えば、プリントアウト)を生成することができる。また、実施例5に記載したようなアッセイを初めとするアッセイの感度は、陰性結果を表す色(実施例5では赤色)を陽性結果を表す色(実施例5では青色)から減色して改良することができる。コンピュータは、容易に購入し得る標準パーソナルコンピュータであってよい。このように、標準ソフトウエアがロードされている標準コンピュータにつないだ標準スキャナを用いることにより、アッセイを基板上で実施する際に核酸を検出かつ定量する便利かつ容易で安価な手段が得られる。スキャン画像および計算結果は、その後の参照および使用のために結果の記録を維持するべくコンピュータに記憶させることができる。もちろん、所望の場合には、より精密な機器やソフトウエアを使用することが可能である。
任意の核酸用アッセイに用い得るナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体が、図17D−Eに示されている。この「万能プローブ」(universal probe)には、単一配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。これらのオリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの部分を含む配列を有する結合オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし得る。第1部分は、ナノ粒子上の少なくとも一部の配列と相補的である。第2部分は、検出すべき核酸の一部の配列と相補的である。同一の第1部分と異なる第2部分を有する複数の結合オリゴヌクレオチドを用いることができ、その場合、「万能プローブ」は、結合オリゴヌクレオチドとハイブリダイズした後、検出すべき核酸の多重部分または異なる核酸標的に結合し得る。
本発明の他の多くの実施態様において、検出可能な変化は、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子、またはその両方を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと標的核酸とがハイブリダイズすると検出可能な変化を生成する分子(例えば、蛍光分子および染料)で標識することにより生じる。例えば、金属および半導体ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドの、ナノ粒子に付着していない末端には、蛍光分子が付着され得る。金属および半導体ナノ粒子は、公知の蛍光消光物質であり、その消光効果の大きさは、ナノ粒子と蛍光分子との間隔に依存する。ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズしていない状態では、ナノ粒子と相互作用し、その結果、有意な消光が観察される。蛍光分子は、標的核酸とハイブリダイズすると、ナノ粒子から間隔が離れた状態になり、それによって、蛍光の消光が減少する。図20A参照。オリゴヌクレオチドが長くなるにつれ、少なくとも変化の増大がもはや観察し得ない程遠くに蛍光基がナノ粒子表面から離れて移動するまで、蛍光の変化は大きくなる筈である。オリゴヌクレオチドの有用な長さは経験的に決定し得る。蛍光標識オリゴヌクレオチドが付着している金属および半導体ナノ粒子は、溶液中または基板上で実施されるものを含めた上述のいずれのアッセイ形式にも用い得る。
オリゴヌクレオチドを蛍光分子で標識する方法および蛍光を測定する方法は当該技術分
野では周知である。適当な蛍光分子も当該技術分野では周知であり、それにはフルオレセイン、ローダミンおよびテキサスレッドが含まれる。オリゴヌクレオチドは上述のようにナノ粒子に付着するであろう。
さらに別の実施態様においては、2つの異なる粒子に付着している2つの種類の蛍光標識オリゴヌクレオチドを用い得る。適当な粒子としては、(ポリスチレン粒子、ポリビニル粒子、アクリレートおよびメタクリレート粒子などの)ポリマー粒子、ガラス粒子、ラテックス粒子、セファロースビーズおよび当該技術分野では周知の他の同様な粒子が挙げられる。そのような粒子にオリゴヌクレオチドを付着させる方法は当該技術分野では周知である。Chriseyら,Nucleic Acids Research,第24巻,3031−3039ページ(1996年)(ガラス)およびCharreyreら,Langmuir,第13巻,3103−3110ページ(1997年),Fahyら,Nucleic Acids Research,第21巻,1819−1826ページ(1993年),Elaissariら,J.Colloid Interface Sci.,第202巻,251−260ページ(1998年),Kolarovaら,Biotechniques,第20巻,196−198ページ(1996年)およびWolfら,Nucleic Acids Research,第15巻,2911−2926ページ(1987年)(ポリマー/ラテックス)参照。特に、多様な官能基がこれらの粒子上に対して利用可能であり、そのような粒子に組み込むことができる。官能基には、カルボン酸、アルデヒド、アミノ基、シアノ基、エチレン基、ヒドロキシル基、メルカプト基などがある。金属および半導体ナノ粒子を含めたナノ粒子を用いてもよい。
2種の発蛍光団は、供与体および受容体としてdおよびaと称される。そのような組合せに有用な種々の蛍光分子は当該技術分野では周知であり、例えば、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes)から入手できる。魅力的な組合せは、供与体としてのフルオレセインと、受容体としてのテキサスレッドである。dおよびaが付着している2つの種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を標的核酸と混合し、蛍光光度計で蛍光を測定する。dを励起する波長の光で混合物を励起させ、混合物をa由来の蛍光についてモニターする。ハイブリダイズすると、dとaは近接するであろう(図20B参照)。非金属、非半導体粒子の場合、ハイブリダイゼーションは、蛍光がdのものからaのものにシフトすること、またはaの蛍光に加えてdの蛍光が出現することによって示されるであろう。ハイブリダイゼーションがない場合、発蛍光団は離れ過ぎていて有意なエネルギー伝達が起こらず、dの蛍光のみが観察されるであろう。金属および半導体ナノ粒子の場合、ハイブリダイゼーションの欠如は、dまたはaに帰因する消光による蛍光の欠如によって示されるであろう(上記参照)。ハイブリダイゼーションはaに帰因する蛍光の増大により示される。
受容体および供与体蛍光分子で標識されたオリゴヌクレオチドが付着している上述の粒子およびナノ粒子は、溶液中および基板上で実施されるものを含めた上述のアッセイ形式に使用し得る。溶液形式の場合、オリゴヌクレオチド配列は、図15A−Gに示されているように標的核酸に結合するように好ましくは選択する。図13A−Bおよび図18に示されている形式では、結合オリゴヌクレオチドを使って、2つのナノ粒子上の受容体および供与体蛍光分子を近接させ得る。また、図13Aに示されている形式では、基板に付着しているオリゴヌクレオチドはdで標識し得る。さらに、蛍光分子以外の他の標識、例えば、ハイブリダイズすると検出可能なシグナルを生成するかまたは検出可能なシグナルに変化をもたらす化学発光分子を用いてもよい。
本発明の検出法の別の実施態様は、(図21に示されている)蛍光および変色の検出を利用する極めて感度の高い系である。この系は、蛍光分子で標識したオリゴヌクレオチドを付着させたラテックスミクロスフェアと、オリゴヌクレオチドを付着させた金ナノ粒子
とを用いる。オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体は、上述のように調製し得る。オリゴヌクレオチドをラテックスミクロスフェアに付着させる方法(例えば、Charreyreら,Langmuir,第13巻,3103−3110ページ(1997年);Elaissariら,J.Clloiod Interface Sci.,第202巻,251−260ページ(1998年)参照)は、オリゴヌクレオチドを蛍光分子で標識する方法(上記参照)と同様に周知である。ラテックスミクロスフェア上のオリゴヌクレオチドと金ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、標的核酸の配列の異なる部分とハイブリダイズし得るが互いにはハイブリダイズし得ない配列を有している。ラテックスミクロスフェアおよび金ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を含む標的核酸と2つのプローブを接触させると、網目構造が形成される(図21参照)。金ナノ粒子の消光特性のために、ラテックスミクロスフェアに付着しているオリゴヌクレオチドの蛍光は、この網目構造の一部の間で消光される。実際、金ナノ粒子は極めて大きい吸収係数を有しているために、1つの金ナノ粒子が多くの発蛍光団分子を消光し得る。したがって、核酸および2種の粒子を含有する溶液の蛍光をモニターして結果を検出することが可能であり、蛍光の減少または排除は陽性結果を示す。しかし、アッセイ結果は、溶液の小滴を微孔質材料上に並べて検出するのが好ましい(図21参照)。微孔質材料は、金ナノ粒子のピンク/赤色を検出できる透明またはカラー(例えば、白)でなければならない。また、微孔質材料は、微孔質材料を洗浄したときに、金ナノ粒子が細孔を通過し得る程大きく、かつ微孔質材料表面上のラテックスミクロスフェアを保持するのに十分な程小さい細孔サイズをも有していなければならない。したがって、そのような微孔質材料を用いる場合、ラテックスミクロスフェアのサイズ(直径)は、金ナノ粒子のサイズ(直径)より大きくなければならない。また、微孔質材料は生物媒体に対して不活性でなければならない。多くの適当な微孔質材料は当該技術分野では公知であり、そのような材料としては、種々のフィルターや膜、例えば、改質ポリフッ化ビニリデン(ミリポア社(Millipore Corp.)から市販されているDuraporeTMメンブレンフィルターなどのPVDF)や、(ミクロン・セパレーションズ社(Micron Separations Inc.)から市販されているAcetatePlusTMメンブレンフィルターなどの)純粋酢酸セルロースが挙げられる。そのような微孔質材料は、標的核酸と2種のプローブからなる網目構造を保持し、陽性結果(標的核酸の存在)は、(金ナノ粒子の存在に帰する)赤/ピンク色と、(金ナノ粒子による蛍光の消光に帰する)蛍光の欠如によって証明される(図21参照)。陰性結果(標的核酸の不在)は、微孔質材料を洗浄したときに金ナノ粒子が微孔質材料の細孔を通過し(したがって、蛍光の消光が起こらない)、かつ白色ラテックスミクロスフェアがその上に捕捉されるために、白色および蛍光によって証明される(図21参照)。さらに、陽性結果の場合、蛍光および変色は温度の関数として観察し得る。例えば、温度を上昇させて行くと、デハイブリダイゼーション温度に達すると同時に蛍光が観察されるであろう。したがって、温度の関数として色または蛍光を見れば、オリゴヌクレオチドプローブと標的核酸との相補性の程度についての情報を得ることができる。上述のように、この検出法は高感度を示す。長さ24塩基の3fmol(フェムトモル)の一本鎖標的核酸と、長さ24塩基の20fmolの二本鎖標的核酸という少量が、肉眼で検出された。この方法は、その使用法も極めて簡単である。蛍光は、ただUVランプで溶液または微孔質材料を照明するだけで生成させることができ、蛍光シグナルおよび比色シグナルは肉眼でモニターし得る。代わりに、より定量的な結果を得るために、蛍光光度計を前面モード(front−face mode)を用いて、短経路長で溶液の蛍光を測定してもよい。
上記実施態様は、特に、ラテックスミクロスフェアおよび金ナノ粒子に関連して説明した。これらの粒子の代わりに、上述の他の特性を有すると共にオリゴヌクレオチドを付着させ得る任意の他のミクロスフェアまたはナノ粒子を用いてもよい。多くの適当な粒子およびナノ粒子が、それらにオリゴヌクレオチドを付着させる方法と共に上述されている。さらに、他の測定可能な特性を有するミクロスフェアおよびナノ粒子も用い得る。例えば
、ポリマーを蛍光、色または電気化学的活性などの任意の所望特性を有するように改質し得るポリマー改質粒子およびナノ粒子を用いてもよい。Watsonら,J.Am.Chem.Soc.,第121巻,462−463ページ(1999年)(ポリマー改質金ナノ粒子)。また、磁性粒子、ポリマーコート磁性粒子、および半導体粒子も使用し得る。Chanら,Science,第281巻,2016ページ(1998年);Bruchezら,Science,第281巻,2013ページ(1998年);Kolarovaら,Biotechniques,第20巻,196−198ページ(1996年)参照。
さらに別の実施態様において、蛍光分子で標識したオリゴヌクレオチドが付着している金属または半導体ナノ粒子を含む2つのプローブを用いる(図22に示されている)。オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体は、上述のように調製しかつ蛍光分子で標識し得る。2つの種類のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体上のオリゴヌクレオチドは、標的核酸の配列の異なる部分とハイブリダイズし得るが互いにはハイブリダイズし得ない配列を有している。ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を含む標的核酸を2つのプローブと接触させると、網目構造が形成される(図22参照)。金属または半導体ナノ粒子の消光特性のために、ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドの蛍光は、この網目構造の一部の間で消光される。したがって、核酸および2つのプローブを含有する溶液の蛍光をモニターして結果を検出することが可能であり、蛍光の減少または排除は陽性結果を示す。しかし、アッセイ結果は、溶液の小滴を微孔質材料上に並べて検出するのが好ましい(図22参照)。微孔質材料は、洗浄したときに、ナノ粒子がその細孔を通過し得る程大きくかつその表面上に網目構造を保持するのに十分な程小さい細孔サイズを有していなければならない(図22参照)。多くの適当な微孔質材料が当該技術分野では公知であり、そのような材料には上述のものが含まれる。そのような微孔質材料は、標的核酸と2つのプローブとからなる網目構造を保持し、陽性結果(標的核酸の存在)は、(金属または半導体ナノ粒子による蛍光の消光に起因する)蛍光の欠如によって証明される(図22参照)。陰性結果(標的核酸の不在)は、微孔質材料を洗浄したときにナノ粒子が微孔質材料の細孔を通過する(したがって、蛍光の消光が起こらない)ために、蛍光によって証明される(図22参照)。結合しなかったプローブが検出領域から洗い流されるので、バックグラウンド蛍光は低い。さらに、陽性結果の場合、蛍光の変化は温度の関数として観察され得る。例えば、温度を上昇させて行くと、デハイブリダイゼーション温度に達すると同時に蛍光が観察されるであろう。したがって、温度の関数として蛍光を見れば、オリゴヌクレオチドプローブと標的核酸との相補性度についての情報を得ることができる。蛍光は、UVランプで溶液または微孔質材料を照明するだけで生成させることができ、蛍光シグナルは肉眼でモニターし得る。代わりに、より定量的な結果を得るために、蛍光光度計を前面モードで用いて、短経路長で溶液の蛍光を測定してもよい。
さらに別の実施態様では、「サテライトプローブ」を用いる(図24参照)。サテライトプローブは、核酸用アッセイにおける検出に用い得る1種または数種の物性(例えば、濃色、蛍光消光能、磁性)を有する中心粒子を含んでいる。適当な粒子としては、ナノ粒子や上述の他の粒子などがある。粒子には、オリゴヌクレオチド(すべて同じ配列を有する)が付着している(図24参照)。粒子にオリゴヌクレオチドを付着させる方法は上記に説明されている。オリゴヌクレオチドは、少なくとも第1部分と第2部分を含んでおり、これらの部分はどちらも標的核酸の配列の部分と相補的である(図24参照)。サテライトプローブはさらに、プローブオリゴヌクレオチドを含んでいる。各プローブオリゴヌクレオチドは、少なくとも第1部分と第2部分を有している(図24参照)。プローブオリゴヌクレオチドの第1部分の配列は、中心粒子上に固定化されているオリゴヌクレオチドの第1部分の配列と相補的である(図24参照)。その結果、中心粒子とプローブオリゴヌクレオチドとを接触させると、中心粒子上のオリゴヌクレオチドは、プローブオリゴヌクレオチドとハイブリダイズしてサテライトプローブを形成する(図24参照)。プロ
ーブオリゴヌクレオチドの第1および第2部分は共に、標的核酸の配列の部分と相補的である(図24参照)。各プローブオリゴヌクレオチドは、以下に詳細に説明するように、レポーター分子で標識されている(図24参照)。プローブオリゴヌクレオチドと標的との間のハイブリダイゼーションオーバーラップの量(ハイブリダイズしている部分の長さ)は、プローブオリゴヌクレオチドと粒子に付着しているオリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションオーバーラップと同じかそれより大きい(図24参照)。したがって、デハイブリダイゼーションおよびリハイブリダイゼーションをもたらす温度循環により、プローブオリゴヌクレオチドの中心粒子から標的への移動が促進される。次いで、標的にハイブリダイズしたプローブオリゴヌクレオチドから粒子を分離し、レポーター分子を検出する。
サテライトプローブは種々の検出法に用い得る。例えば、中心粒子が磁性コアを有し、かつ周囲のプローブオリゴヌクレオチドに付着している発蛍光団の蛍光を消光し得る材料で被覆されている場合、この系は、核酸用のin situ蛍光光度検出計画に用い得る。官能化ポリマーコート磁性粒子(Fe3O4)は、ディナール社(Dynal)(DynabeadsTM)およびバングス・ラボラトリーズ社(Bangs Laboratories)(EstaporTM)を含めたいくつかの調製業者から入手可能であり、シリカコート磁性Fe3O4ナノ粒子は、十分に開発されたシリカ表面化学(Chriseyら,Nucleic Acids Research,第24巻,3031−3039ページ(1996年))を用いて改質し(Liuら,Chem.Mater.,第10巻,3936−3940ページ(1998年)、磁性プローブとしても用い得る。さらに、染料分子、4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)−アゾ)安息香酸(DABCYL)は、オリゴヌクレオチドに付加された多様な発蛍光団に対して有能な蛍光消光物質であることが証明されている(Tyagiら,Nature Biotech.,第16巻,49−53ページ(1998年))。市販のDABCYLスクシンイミジルエステル(分子プローブ)は、第一級アルキルアミノ基と反応すると極めて安定なアミド結合を形成する。このように、任意の磁性粒子または第一級アルキルアミノ基でポリマーコートされた磁性粒子は、両オリゴヌクレオチドに加えてこれらの消光物質分子を用いて改質し得る。あるいは、DABCYL消光物質は、アルキルアミノ改質表面の代わりに、表面結合オリゴヌクレオチドに直接付着させてもよい。プローブオリゴヌクレオチドを含むサテライトプローブを標的と接触させる。デハイブリダイゼーションおよび再ハイブリダイゼーションを起こすように温度を循環させ、それによって、プローブオリゴヌクレオチドを中心粒子から標的に移動させる。磁場を印加、粒子を溶液から除去し、標的にハイブリダイズした溶液中に残留するプローブオリゴヌクレオチドの蛍光を測定することにより検出が達成される。
この方法は、染料コーティングを有する磁性粒子と共に、磁気ナノ粒子上の染料とは異なる光学特性を有するか、または磁気ナノ粒子上の染料の光学特性を摂動させる染料で標識したプローブオリゴヌクレオチドを用いて比色アッセイにも応用することができる。粒子およびプローブオリゴヌクレオチドが共に溶液中に存在する場合、この溶液は、2種の染料の組合せに由来する1つの色を呈するであろう。しかし、標的核酸の存在下に温度を循環させると、プローブオリゴヌクレオチドは、サテライトプローブから標的に移動するであろう。一旦これが起こると、磁場の印加により、標的にハイブリダイズした、単一染料で標識されたプローブオリゴヌクレオチドを残して、染料コート磁性粒子が溶液から除去される。この系は、標的レベルまたは色の濃さに応じて、比色計または肉眼で追うことができる。
また、この方法は、オリゴヌクレオチド−磁性粒子共役体と共に、レドックス活性分子が付着しているプローブオリゴヌクレオチドを用いることにより、電気化学アッセイにも応用することもできる。十分に研究が進んだレドックス活性フェロセン誘導体などの任意
の改質可能なレドックス活性種を用い得る。標準ホスホロアミダイト化学を用いて、フェロセン誘導体化ホスホロアミダイトを直接オリゴヌクレオチドに付着させることができる。Mucicら,Chem.Commun.,第555巻(1996年);Eckstein編,Oligonucleotides and Analogues,第1版,Oxford University,New York,NY(1991年)。フェロセニルホスホロアミダイトは、6−ブロモヘキシルフェロセンから2段階合成法で調製する。通常の調製においては、6−ブロモヘキシルフェロセンを水性HMPA溶液中120℃で6時間攪拌して、6−ヒドロキシヘキシルフェロセンを生成する。精製後、6−ヒドロキシヘキシルフェロセンをN,N−ジイソプロピルエチルアミンおよびβ−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスホラミドのTHF溶液に加えてフェロセニルホスホロアミダイトを生成する。ポリマーが電気化学活性フェロセン分子を含有するオリゴヌクレオチド改質ポリマーコート金ナノ粒子を利用してもよい。Watsonら,J.Am.Chem.Soc.,第121巻,462−463ページ(1999年)。アミノ修飾オリゴヌクレオチドと反応させるために、このポリマーにアミノ反応性部位のコポリマー(例えば、無水物)を組み込んでもよい。Mollerら,Bioconjugate Chem.,第6巻,174−178ページ(1995年)。標的の存在下に温度を循環させると、レドックス活性プローブオリゴヌクレオチドは、サテライトプローブから標的に移動するであろう。一旦これが起こると、磁場の印加により、標的核酸にハイブリダイズしたレドックス活性プローブオリゴヌクレオチドを残して、磁性粒子が溶液から除去されるであろう。次いで、レッドクス活性分子を調べることができるサイクリックボルタンメトリーまたは任意の電気化学的技術により標的の量を定量し得る。
本発明のさらに別の実施態様において、核酸は、核酸とオリゴヌクレオチドが付着している基板とを接触させて検出する。オリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。オリゴヌクレオチドは、基板上に配置されている1対の電極間に配置されている。基板は、導電体ではない材料(例えば、ガラス、石英、ポリマー、プラスチック)製でなければならない。電極は、任意の標準材料(例えば、金、白金、酸化スズなどの金属)製であってよい。電極は、慣用のミクロファブリケーション技術を用いて作製することができる。例えば、Introduction To Microlithography(L.F.Thompsonら編,ACS,Washington,D.C.,1983年)参照。基板の上には、単一の核酸の多重部分、複数の異なる核酸、またはその両方を検出できるように複数の電極対をアレイ状に配置し得る。電極アレイは、(例えば、アブテック・サイエンティフィック社、バージニア州リッチモンド所在(Abbtech Scientific,Inc.,Richmond,Virginia)から)購入することもできるし、慣用のミクロファブリケーション技術を用いて作製することもできる。例えば、Introduction To Microlithography(L.F.Thompsonら編,ACS,Washington,D.C.1983年)参照。アレイを作製するのに適したフォトマスクは、(例えば、フォトロニクス社、カリフォルニア州ミルピタス所在(Photronics,Milpitas,CA)から)購入し得る。各アレイ電極対は、2つの電極間で基板に付着したある種類のオリゴヌクレオチドを有している。接触ステップは、基板上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。次いで、基板に結合した核酸をある種類のナノ粒子と接触させる。ナノ粒子は導電性でなければならない。そのようなナノ粒子としては、金ナノ粒子のように金属でできたナノ粒子や、半導体材料製でできたナノ粒子が含まれる。ナノ粒子には、少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドが核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有する、1つ以上の種類のオリゴヌクレオチドが付着しているであろう。接触ステップは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。核酸が存在する場合、電極間の回路は、ナノ粒子が基板の電極間に付着するために閉鎖するはずであり、導電率の変化が検出される。1種類のナノ粒子が結合すると、回路の閉鎖は起こらず、この状況は、もっと狭い電極間間隔
を用いるか、もっと大きいナノ粒子を用いるか、または回路を閉鎖する別の材料を用いる(但し、ナノ粒子が基板の電極間に結合した場合のみ)ことにより対応し得る。例えば、金ナノ粒子を用いる場合、基板を(上述のように)銀染料と接触させて銀を電極間に堆積させることにより回路を閉鎖し、導電率の検出可能な変化を生成させる。1種類のナノ粒子の付加が十分ではない場合に回路を閉鎖させる別の方法は、基板に結合している第1種類のナノ粒子を、第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している第2種類のナノ粒子と接触させる方法である。接触ステップは、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせるのに有効な条件下に行う。必要または所望なら、回路の閉鎖に十分な数のナノ粒子が基板に付着するまで、第1および第2種類のナノ粒子を交互に加えて、追加のナノ粒子層を堆積することができる。個々のナノ粒子層を堆積する別の代替法は、凝集体プローブの使用である(上記参照)。
本明細書中で論じるように、回路を閉じることによって電極間の電気的接触を確立することが当分野で知られている任意の他の材料、例えば、銀、金、他の電導性材料、または電気を通しうる材料の局所的増大を触媒し得る任意のスキームもしくは材料などを使用してよい。閉回路の存在は、伝導率の検出可能な変化など、電極の電気特性の変化等の任意の適切な手段によって検出することが可能である。
本発明はさらに、核酸を検出するためのキットも提供する。キットは、1つの実施態様において、少なくとも1つの容器を含み、この容器は、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を保持している。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有している。容器はさらに、核酸の第3部分に対して相補的な配列を有するフィラーオリゴヌクレオチドを含むこともあり、この第3部分は、第1部分と第2部分の間に配置されている。フィラーオリゴヌクレオチドは別個の容器中に入れておいてもよい。
第2の実施態様において、キットは少なくとも2つの容器を含む。第1容器は、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子を保持している。第2容器は、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子を保持している。キットはさらに、核酸の第3部分に対して相補的な配列を有するフィラーオリゴヌクレオチドが入った第3容器を含むこともあり、第3部分は第1部分と第2部分の間に配置されている。
別の代替実施態様において、キットは、別々の容器に入ったオリゴヌクレオチドとナノ粒子を有し、オリゴヌクレオチドは核酸検出アッセイの実施前にナノ粒子に付着させる必要がある。オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子は、オリゴヌクレオチドがナノ粒子に付着し得るように官能化させ得る。あるいは、オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子は、キット中に官能基を有さない状態で供給してもよいが、その場合、オリゴヌクレオチドはアッセイの実施前に官能化しなければならない。
別の実施態様において、キットは、少なくとも1つの容器を含む。容器は、オリゴヌクレオチドが付着している金属または半導体ナノ粒子を保持している。オリゴヌクレオチドは核酸の一部に対して相補的な配列を有しており、オリゴヌクレオチドのナノ粒子には付着していない末端には蛍光分子が付着している。
さらに別の実施態様において、キットは基板を含み、基板にはナノ粒子が付着している。ナノ粒子には、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットはさらに、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有す
るオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子が入った第1容器を含んでいる。オリゴヌクレオチドは、同一または異なる配列を有していてよいが、各オリゴヌクレオチドは、核酸の一部に対して相補的な配列を有している。キットはさらに、少なくとも2つの部分を含む選択された配列を有する結合オリゴヌクレオチドが入った第2容器を含んでおり、選択配列の第1部分は、第1容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部と相補的である。また、キットは、結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子が入った第3容器を含む。
別の実施態様において、キットは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している基板を含んでいる。キットはさらに、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子が入った第1容器を含んでいる。オリゴヌクレオチドは、同一または異なる配列を有していてよいが、各オリゴヌクレオチドは核酸の一部に対して相補的な配列を有している。キットはさらに、第1容器中のナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドの少なくとも一部に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子が入った第2容器を含んでいる。
さらに別の実施態様において、キットは、別々の容器に入った基板、オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子を有していてよい。基板、オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子は、核酸検出アッセイを実施する前に互いに適切に付着させなければならない。基板、オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子は、この付着を促進するために官能化し得る。あるいは、基板、オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子は、キット中に官能基を有さない状態で提供してもよいが、その場合、アッセイ実施前に官能化しなければならない。
さらなる実施態様において、キットは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している基板を含んでいる。また、キットは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着しているリポソームが入った第1容器と、少なくとも第1種類のオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子が入った第2容器を含んでおり、第1種類のオリゴヌクレオチドのナノ粒子に付着していない末端には、ナノ粒子が疎水性相互作用によりリポソームに付着し得るように、コレステリル基が付着されている。キットは、さらに、オリゴヌクレオチドが付着している第2種類のナノ粒子が入った第3容器を含んでおり、オリゴヌクレオチドは第1種類のナノ粒子に付着している第2種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部に対して相補的な配列を有している。第1種類のナノ粒子に付着している第2種類のオリゴヌクレオチドは、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有している。
別の実施態様において、キットは、ナノ粒子が付着している基板を含み得る。ナノ粒子には、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットはさらに、凝集体プローブが入った第1容器を含んでいる。凝集したプローブは、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を含んでいる。凝集体プローブのナノ粒子は、それぞれに付着しているオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果として互いに結合している。凝集体プローブの少なくとも1種類のナノ粒子には、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
さらに別の実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着している基板を含み得る。オリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。キットはさらに、凝集体プローブが入った第1容器を含んでいる。凝集体プローブは
、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を含んでいる。凝集体プローブのナノ粒子は、それぞれに付着しているオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果として互いに結合している。凝集体プローブの少なくとも1種類のナノ粒子には、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
追加実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着している基板と、凝集体プローブが入った第1容器とを含んでいる。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を含んでいる。凝集体プローブのナノ粒子は、それぞれに付着しているオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果として互いに結合している。凝集体プローブの少なくとも1種類のナノ粒子には、核酸配列の第1部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットはさらに、ナノ粒子が入った第2容器を含んでいる。ナノ粒子には、少なくとも2種類のオリゴヌクレオチドが付着している。第1種類のオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有している。第2種類のオリゴヌクレオチドは、基板に付着しているオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部に対して相補的な配列を有している。
別の実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着している基板を含んでいる。オリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有している。キットはさらに、オリゴヌクレオチドが付着しているリポソームが入った第1容器を含んでいる。オリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有している。キットはさらに、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を含む凝集体プローブが入った第2容器を含んでいる。凝集体プローブのナノ粒子は、それぞれに付着しているオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果として互いに結合している。凝集体プローブの少なくとも1種類のナノ粒子には、ナノ粒子に付着していない末端に疎水基が付いたオリゴヌクレオチドが付着している。
さらなる実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子が入った第1容器を含み得る。キットはさらに、1つ以上の追加の容器を含んでおり、各容器は、結合オリゴヌクレオチドを保持している。各結合オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部に対して相補的な配列を有する第1部分と、検出すべき核酸の一部の配列に対して相補的な配列を有する第2部分とを有している。結合オリゴヌクレオチドの第2部分の配列は、各配列が検出すべき核酸の配列の一部と相補的である限り異なっていてもよい。別の実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着している1つの種類のナノ粒子と、1つ以上の種類の結合オリゴヌクレオチドとが入った容器を含んでいる。各種類の結合オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの部分を含む配列を有している。第1部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列と相補的であり、それによって結合オリゴヌクレオチドは、容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする。第2部分は、核酸の一部の配列と相補的である。
別の実施態様において、キットは、2つの種類の粒子が入った1つ以上の容器を含み得る。第1種類の粒子には、核酸の第1部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。オリゴヌクレオチドの粒子に付着していない方の末端はエネルギー供与体で標識されている。第2種類の粒子には、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。オリゴヌクレオチドの粒子に付着していない方の末端はエネルギー受容体で標識されている。エネルギー供与体および受容体は蛍光分子であってよい。
さらなる実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着しているある種類のラテックスミクロスフェアが入った第1容器を含んでいる。オリゴヌクレオチドは、核酸
の第1部分の配列に対して相補的な配列を有しており、蛍光分子で標識されている。キットはさらに、オリゴヌクレオチドが付着しているある種類の金ナノ粒子が入った第2容器を含んでいる。これらのオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有している。
別の実施態様において、キットは、オリゴヌクレオチドが付着している第1種類の金属または半導体ナノ粒子が入った第1容器を含んでいる。オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1部分に対して相補的な配列を有し、蛍光分子で標識されている。キットはさらに、オリゴヌクレオチドが付着している第2種類の金属または半導体ナノ粒子が入った第2容器を含んでいる。これらのオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分の配列に対して相補的な配列を有しており、蛍光分子で標識されている。
さらなる実施態様において、キットは、サテライトプローブが入った容器を含んでいる。サテライトプローブは、オリゴヌクレオチドが付着している粒子を含んでいる。オリゴヌクレオチドは第1部分と第2部分を有しており、どちらの部分も核酸の配列の一部に対して相補的な配列を有している。サテライトプローブはさらに、ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたプローブオリゴヌクレオチドを含んでいる。プローブオリゴヌクレオチドは第1部分と第2部分を有している。第1部分は、ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドの第1部分の配列に対して相補的な配列を有しており、両部分とも、核酸の配列の一部に対して相補的な配列を有している。また、プローブオリゴヌクレオチドの一方の末端には、レポーター分子が付着している。
別の実施態様において、キットは、凝集体プローブが入った容器を含んでいる。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を含んでいる。凝集体プローブのナノ粒子は、それぞれに付着しているオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果として互いに結合している。凝集体プローブの少なくとも1種類のナノ粒子には、核酸の配列の一部に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。
追加実施態様において、キットは、凝集体プローブが入った容器を含み得る。凝集体プローブは、オリゴヌクレオチドが付着している少なくとも2種類のナノ粒子を含んでいる。凝集体プローブのナノ粒子は、それぞれに付着しているオリゴヌクレオチドの一部がハイブリダイズした結果として互いに結合している。凝集体プローブの少なくとも1種類のナノ粒子には、ナノ粒子に付着していない方の末端に疎水基が付いたオリゴヌクレオチドが付着している。
さらに別の実施態様において、本発明は、基板の電極間にオリゴヌクレオチドが付着された、少なくとも1対の電極が配置されている基板を含む。好ましい実施態様において、基板には、単一核酸の複数の部分の検出、複数の異なる核酸の検出またはその両方を可能にするように、複数の電極対がアレイ状に付着されている。
キットはさらに、核酸の検出に有用な他の試薬および品目を含み得る。試薬には、PCR試薬、銀染色法用試薬、ハイブリダイゼーション試薬、緩衝剤などが含まれ得る。キットの一部として提供され得る他の品目には、TLCシリカプレートなどの(ハイブリダイゼーションを視覚化するための)固体表面、微孔質材料、シリンジ、ピペット、キュベット、容器、および(ハイブリダイゼーションおよびデハイブリダイゼーション温度を制御するための)サーモサイクラーが含まれる。キットには、ヌクレオチドまたはナノ粒子を官能化する試薬を含めてもよい。
凝集したナノ粒子の沈殿は、選択された核酸を他の核酸から分離する手段を提供する。
この分離は、核酸精製における1ステップとして用い得る。ハイブリダイゼーション条件は核酸検出に関して上述したとおりである。ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを核酸に結合させる温度がTm(オリゴヌクレオチドの半分をその相補鎖に結合させる温度)より低い場合、凝集体を沈殿させるのに十分な時間が必要である。(例えば、Tmにより測定した)ハイブリダイゼーション温度は、塩の種類(NaClまたはMgCl2)およびその濃度に応じて異なる。塩の組成および濃度は、核酸の不在下にコロイドの凝集を誘発させることなく都合の良い作業温度でナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とのハイブリダイゼーションを促進するように選択される。
本発明はさらに、ナノファブリケーション法を提供する。この方法は、選択された配列を有する少なくとも1種類の連結オリゴヌクレオチドを用意するステップを含む。ナノファブリケーションに用いられる連結オリゴヌクレオチドは、任意の所望配列を含んでいてよく、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。連結オリゴヌクレオチドはさらに、塩基、糖、または主鎖部分に化学修飾を含み得る。連結オリゴヌクレオチド用に選択される配列や、それらの長さおよび鎖の数は、得られるナノ材料もしくはナノ構造、またはナノ材料もしくはナノ構造の部分の剛性もしくは可撓性に寄与するであろう。単1種類の連結オリゴヌクレオチドに加えて、2つ以上の異なる種類の連結オリゴヌクレオチドを用いることも考えられる。異なる連結オリゴヌクレオチドの使用数およびそれらの長さは、得られるナノ材料およびナノ構造の形状、細孔サイズおよび他の構造的特徴に寄与するであろう。
連結オリゴヌクレオチドの配列は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに結合させるための第1部分と第2部分を有するであろう。連結オリゴヌクレオチドの第1、第2またはそれ以上の結合部分は、同一または異なる配列を有し得る。
連結オリゴヌクレオチドの結合部分がすべて同じ配列を有している場合、ナノ材料またはナノ構造の形成には、相補的配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している単1種類のナノ粒子だけしか使わなくてよい。連結オリゴヌクレオチドの2つ以上の結合部分が異なる配列を有している場合、2つ以上のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を使わなければならない。例えば、図17参照。各ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、連結オリゴヌクレオチドの配列の2つ以上の結合部分の1つに対して相補的な配列を有しているであろう。結合部分の数、配列および長さと、もしあれば、それらの間の間隔は、得られるナノ材料およびナノ構造の構造特性および物性に寄与するであろう。連結オリゴヌクレオチドが2つの以上の部分を含む場合、結合部分の配列は、結合ヌクレオチドの1つの部分を別の部分に結合するのを回避するために互いに対して相補的でないように選択する必要がある。
連結オリゴヌクレオチドとナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を、ナノ粒子がオリゴヌクレオチドコネクタを介して纏まっている所望のナノ材料またはナノ構造が形成されるように、ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドと連結オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。これらのハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野では周知であり、特定のナノファブリケーション計画に合わせて最適化し得る(上記参照)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が好ましい。
さらに本発明は別のナノファブリケーション法を提供する。この方法は、少なくとも2種類のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を与えるステップを含む。第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有している。第2種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有している。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を、ナノ粒子がオリゴヌクレオチドコネクタを介して纏まっ
ている所望のナノ材料またはナノ構造が形成されるように、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドを互いにハイブリダイズさせるのに有効な条件下に接触させる。この場合も、これらのハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野では周知であり、特定のナノファブリケーション計画に合わせて最適化し得る。
本発明のどちらのナノファブリケーション法においても、1つ以上の異なる種類のオリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子の使用が想定される。ナノ粒子に付着している異なるオリゴヌクレオチドの数や、1つ以上のオリゴヌクレオチドの長さおよび配列は、得られるナノ材料およびナノ構造の剛性および構造特徴に寄与するであろう。
また、ナノ粒子のサイズ、形状および化学組成も、得られるナノ材料およびナノ構造の特性に寄与するであろう。これらの特性には、光学特性、光電子特性、電気化学特性、電子特性、種々の溶液中での安定性、細孔およびチャンネルサイズの変化、フィルターとしての役割を果たす間の生物活性分子の分離能などが含まれる。異なるサイズ、形状および/または化学組成を有するナノ粒子混合物の使用に加えて、均一なサイズ、形状および化学組成を有するナノ粒子の使用も想定される。
いずれのファブリケーション法においても、得られるナノ材料またはナノ構造中のナノ粒子は、オリゴヌクレオチドコネクタを介して結合する。オリゴヌクレオチドコネクタの配列、長さおよび鎖の数や、存在する異なるオリゴヌクレオチドコネクタの数は、ナノ材料またはナノ構造の剛性および構造特性に寄与するであろう。オリゴヌクレオチドコネクタが部分的に二本鎖である場合、その剛性は、核酸検出法に関連して上述したフィラーオリゴヌクレオチドを用いることによって増強し得る。完全二本鎖オリゴヌクレオチドコネクタの剛性は、完全二本鎖オリゴヌクレオチドコネクタに結合して三本鎖オリゴにコネクタを形成するように相補的配列を有する1つ以上の強化オリゴヌクレオチドを用いて増強し得る。デオキシクアノシン(deoxyquanosine)またはデオキシシチジン四重鎖をベースとする四本鎖オリゴヌクレオチドコネクタの使用も想定される。
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションに基づいてナノ粒子を組織化するための様々な系のいくつかが図面に示されている。単純な系(図1)では、一方のナノ粒子セットは規定配列を有するオリゴヌクレオチドを有し、別のナノ粒子セットはそれに相補的配列を有するオリゴヌクレオチドを有している。2種のナノ粒子−オリゴヌクレオチドセットをハイブリダイゼーション条件下に混合すると、2つの種類のナノ粒子が、ナノ粒子を選択された間隔で配置するスペーサーとしての働きをする二本鎖オリゴヌクレオチドコネクタを介して結合する。
ナノ粒子を間隔を置いて配置するための魅力的な系は、図2に示されているような1つの自由連結オリゴヌクレオチドの添加を伴う。この連結オリゴヌクレオチドの配列は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに結合させるための少なくとも第1部分と第2部分を有するであろう。この系は、基本的には核酸検出法に利用されるものと同じであるが、但し、添加される連結オリゴヌクレオチドの長さは、ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドを合わせた長さに等しくなるように選択し得る。図3に示されている関連系は、用いられるナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体セットを変更する必要なく、ナノ粒子間の間隔を要求通りに調節する便利な手段を提供する。
ナノ粒子間に規定間隔を創出するためのさらに精巧な計画が図4に示されている。この場合、オーバーハング末端を含むDNAまたはRNAの二本鎖セグメントが連結オリゴヌクレオチドとして用いられている。連結オリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングセグメントとナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより、ナノ粒子間に多重二本鎖オリゴヌクレオチド架橋が得られる。
より剛性のナノ材料およびナノ構造またはその部分は、ナノ粒子間に三本鎖オリゴヌクレオチドコネクタを用いることによって調製し得る。三本鎖を生成させる際には、ピリミジン:プリン:ピリミジンモチーフ(Moser,H.E.およびDervan,P.B.,Science,第238巻,645−650ページ(1987))またはプリン:プリン:ピリミジンモチーフ(Pilch,D.S.ら,Biochemistry,第30巻,6081−6087ページ(1991年))のいずれかを利用し得る。ピリミジン:プリン:ピリミジンモチーフを用いた三本鎖コネクタの調製によるナノ粒子組織化の1つの例が図10に示されている。図10に示されている系において、1つのナノ粒子セットをピリミジンヌクレオチドを含む規定鎖と結合させ、他のセットをプリンヌクレオチドを含む相補的オリゴヌクレオチドと結合させる。オリゴヌクレオチドの付着は、ナノ粒子がハイブリダイゼーション時に形成された二本鎖オリゴヌクレオチドによって分離されるように設計する。次いで、この系に、ナノ粒子を混合する前、混合と同時、または混合直後に、ナノ粒子に結合しているピリミジン鎖の配向と反対配向の自由ピリミジンオリゴヌクレオチドを加える。この系中の第3の鎖は、フーグスティーン型塩基対を介して保持されているので、三本鎖は比較的熱に不安定である。二本鎖の幅にわたる共有結合架橋は三本鎖複合体を安定化することが知られている(Salunke,M.,Wu,T.,Letsinger,R.L.,J.Am.Chem.Soc.,第114巻,8768−8772ページ(1992年);Letsinger,R.L.およびWu,t.,J.Am.Chem.Soc.,第117巻,7323−7328ページ(1995年);Prakash,G.およびKool,J.Am.Chem.Soc.,第114巻,3523−3527ページ(1992年))。
ナノ材料およびナノ構造を構築するためには、オリゴヌクレオチド成分のハイブリダイゼーションによるナノ材料またはナノ構造の形成後に、集合体を共有結合架橋により適切な場所で「ロック」するのが望ましい場合がある。これは、オリゴヌクレオチドに、不可逆反応を始動させる官能基を組み込むことによって達成し得る。このための官能基の1つの例は、スチルベンジカルボン酸基である。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド内で整列している2つのスチルベンジカルボキサミド基に紫外光(340nm)を照射すると容易に架橋が達成されることが証明された(Lewis,F.D.ら,J.Am.Chem.Soc.,第117巻,8785−8792ページ(1995年))。
代わりに、メルカプトアルキル基を介してナノ粒子の3′位に保持されているオリゴヌクレオチドの5′−O−トシル基を、メルカプトアルキル基を介してナノ粒子に保持されているオリゴヌクレオチドの3′末端のチオホスホリル基で、置換する方法を用いてもよい。両オリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、それによってチオホスホリル基をトシル基に近接させるオリゴヌクレオチドの存在下では、トシル基はチオホスホリル基で置換され、両末端が2つの異なるナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドが生成する。この種類の置換反応に関しては、Herrleinら,J.Am.Chem.Soc.,第177巻,10151−10152ページ(1995年)を参照されたい。チオホスホリルオリゴヌクレオチドが、メルカプトアルキル−オリゴヌクレオチドの金ナノ粒子への付着に用いられる条件下では金ナノ粒子と反応しないという事実から、メルカプト基を介してナノ粒子に結合し、カップリング反応に利用できる末端チオホスホリル基を含む金ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の調製が可能になる。
集合したナノ粒子系を適切な場所でロックするための関連カップリング反応は、GryaznovおよびLetsinger,J.Am.Chem.Soc.,第115巻,3808ページに記載のように、末端ブロモアセチルアミノヌクレオシドのブロミドの末端チオホスホリル−オリゴヌクレオチドによる置換を利用する。この反応は、上述のトシラートの置換と同じように進行するが、反応速度がもっと速い。チオホスホリル基を末端基
とするオリゴヌクレオチドを担持するナノ粒子は上述のように調製する。ブロモアセチルアミノ基を末端基とするオリゴヌクレオチドを担持するナノ粒子を調製するためには、先ず、一方の末端がアミノヌクレオシド(例えば、5′−アミノ−5′−デオキシチミジンまたは3′−アミノ−3′−デオキシチミジン)を末端基とし、他方の末端がメルカプトアルキル基を末端基とするオリゴヌクレオチドを作製する。次いで、このオリゴヌクレオチド分子をメルカプト基を介してナノ粒子に固定し、次いで、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体をブロモアセチルアシル化剤と反応させてN−ブロモアセチルアミノ誘導体に転化させる。
集合体を適切な場所でロックするための第4のカップリング計画は、チオホスホリル基を末端基とするオリゴヌクレオチドを担持するナノ粒子の酸化を利用する。三ヨウ化カリウム、フェリシアン化カリウム(GryaznovおよびLetsinger,Nucleic Acids Research,第21巻,1403ページ)または酸素などの穏和な酸化剤が好ましい。
さらに、ナノ材料およびナノ構造の特性は、連続オリゴヌクレオチド鎖に、オリゴヌクレオチド鎖に共有結合付加されて適切な場所に保持された有機および無機官能基を組み込むことにより変性させ得る。多様な主鎖、塩基および糖修飾が周知である(例えば、Uhlmann,E.およびPeyman,A.,Chemical Reviews,第90巻,544−584ページ(1990年)参照)。また、オリゴヌクレオチド鎖は、ヌクレオチド塩基がポリペプチド主鎖によって保持されている「ペプチド核酸」鎖(PNA)で置換し得る(Wittung,P.ら,Nature,第367巻,561−563ページ(1994年)参照)。
上記から分るように、本発明のナノファブリケーション法は極めて用途が広い。連結オリゴヌクレオチドの長さ、配列および鎖の数や、ナノ粒子に付着させるオリゴヌクレオチドの長さ、配列および数、ナノ粒子のサイズ、形状および化学組成、用いられる異なる連結オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子の数および種類、オリゴヌクレオチドコネクタの鎖の数を変えることにより、多岐にわたる構造および特性を有するナノ材料およびナノ構造を調製することができる。これらの構造および特性は、オリゴヌクレオチドコネクタを架橋したり、オリゴヌクレオチドを官能化したり、オリゴヌクレオチドの主鎖、塩基または糖を修飾したり、またはペプチド核酸を用いたりしてさらに変えることができる。
本発明のナノファブリケーション法によって調製し得るナノ材料およびナノ構造には、ナノスケール機械装置、分離膜、バイオフィルターおよびバイオチップなどがある。本発明のナノ材料およびナノ構造は、化学センサーとして、コンピュータに、薬剤送出用に、タンパク質工学用に、また、生合成/ナノ構造ファブリケーション/他の構造の指定集合体の鋳型として、使用可能であると想定される。他の可能な用途に関しては、一般に、Seemanら,New J.Chem.,第17巻,739ページ(1993年)を参照されたい。本発明のナノファブリケーション法によって調製し得るナノ材料およびナノ構造としてはさらに電子デバイスを挙げることができる。核酸が電子を移動させ得るかどうかについてはかなり議論されてきた。以下の実施例21に示されているように、DNAを介して集合したナノ粒子は電気を伝導する(DNAコネクタは半導体として機能する)。
最後に、本発明は、いくつかの独特なナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体調製法を提供する。最初のそのような方法において、オリゴヌクレオチドを荷電ナノ粒子に結合させて安定なナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を生成する。荷電ナノ粒子には、金ナノ粒子などの金属製ナノ粒子が含まれる。
上記方法は、ナノ粒子に結合し得る官能基を含む部分が共有結合しているオリゴヌクレ
オチドを用意するステップを含む。そのような部分と官能基は、オリゴヌクレオチドとナノ粒子との結合(すなわち、化学吸着または共有結合)に関して上述したものである。例えば、5′または3′末端にアルカンチオール、アルカンジスルフィド、または環式ジスルフィドが共有結合しているオリゴヌクレオチドを、金ナノ粒子を含めた種々のナノ粒子に結合させることができる。
水中でオリゴヌクレオチドとナノ粒子とを、少なくとも一部のオリゴヌクレオチドを官能基を介してナノ粒子に結合させるのに十分な時間接触させる。そのような時間は経験的に決定し得る。例えば、約12〜24時間で良好な結果が得られることが判明した。他の適当なオリゴヌクレオチド結合条件も経験的に決定し得る。例えば、約12〜20nMのナノ粒子濃度および室温下のインキュベーションによって良好な結果が得られる。
次いで、少なくとも1種の塩を水に添加して塩溶液をつくる。塩は任意の水溶性塩であってよい。例えば、塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、2種以上のこれらの塩の組合せ、またはリン酸緩衝液中のこれらの塩の1種であってよい。塩は、濃縮溶液として添加するのが好ましいが、固体として添加してもよい。塩は、水に一度に添加してもよいし、経時的に漸進的に添加してもよい。「経時的に漸進的に」とは、塩を少なくとも2つの部分に分けて一定の時間間隔を置いて添加することを意味する。適当な時間間隔は経験的に決定し得る。
塩溶液のイオン強度は、オリゴヌクレオチドの互いからの静電斥力と、正に帯電したナノ粒子に対する負に帯電したオリゴヌクレオチドの静電引力、または負に帯電したナノ粒子からの負に帯電したオリゴヌクレオチドの静電斥力とを少なくとも部分的に克服するのに十分でなければならない。経時的に漸進的に塩を添加することにより静電引力および静電斥力を漸進的に減少させると、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの表面密度が最も高くなることが判明した。各塩または塩の組合せに適したイオン強度は経験的に決定し得る。塩化ナトリウムの濃度は経時的に漸進的に増大させるのが好ましく、リン酸緩衝液中約0.1M〜約1.0Mの塩化ナトリウム最終濃度が良好な結果を生じることが判明した。
塩を添加した後、塩溶液中で、オリゴヌクレオチドとナノ粒子を、追加のオリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させて安定なナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を生成するのに十分な追加時間インキュベートする。以下に詳細に説明するように、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの表面密度が増加すると、共役体が安定化することが判明した。このインキュベーションの時間は経験的に決定し得る。合計約24〜48(好ましくは40時間)のインキュベーション時間で良好な結果が得られることが分った(これは、合計インキュベーション時間である。上述のように、塩濃度は、この合計時間にわたって漸進的に増大させ得る)。塩溶液中でのこの第2インキュベーション時間は、本明細書では「熟成」ステップと称する。この「熟成」ステップに適した他の条件は経験的に決定し得る。例えば、室温下のインキュベーションおよびpH7.0で良好な結果が得られる。
「熟成」ステップを用いて生成した共役体は、「熟成」ステップを用いずに生成したものよりかなり安定度が高いことが分った。上述のように、この安定性の向上は、「熟成」ステップによって達成されるナノ粒子表面上のオリゴヌクレオチド密度の増加によるものである。「熟成」ステップにより達成される表面密度は、ナノ粒子のサイズおよび種類、ならびにオリゴヌクレオチドの長さ、配列および濃度に依存するであろう。ナノ粒子を安定化するのに適した表面密度および所望のナノ粒子とオリゴヌクレオチドの組合せを得るのに必要な条件は、経験的に決定し得る。一般に、安定なナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を得るためには、少なくとも10pmol/cm2の表面密度が適当であろう。表面密度は少なくとも15pmol/cm2が好ましい。共役体のオリゴヌクレオチドが核
酸およびオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズする能力は表面密度が高すぎると低下するので、表面密度は約35〜40pmol/cm2以下が好ましい。
本明細書に使用する場合、「安定な」とは、共役体生成後少なくとも6ヶ月間に、大多数のオリゴヌクレオチドがナノ粒子に付着したままであり、オリゴヌクレオチドが、核酸検出法およびナノファブリケーション法において遭遇する標準条件下に核酸およびオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズし得ることを意味する。
この方法で調製されたナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、それらの安定性の他に、他の優れた特性を示す。例えば、本願の実施例5、7および19を参照されたい。特に、共役体の表面密度が高いため、共役体は、標的核酸またはオリゴヌクレオチドの存在下では、大きな凝集体として集合するであろう。凝集体が生成し、解離する温度範囲は予想外に極めて狭いことが判明したが、この固有の特徴は、重要な実用的成果をもたらす。特に、これは、本発明の検出法の選択性および感度を高める。この共役体を用いて、1塩基誤対合および20fmol程度の小さい標的を検出することができる。これらの特徴はもともとは溶液中で実施したアッセイで発見されたものであるが、これらの共役体を用いることの利点は、1種類のみの共役体しか使用しないアッセイを含めた、基板上で実施するアッセイにも及ぶことが判明した。
ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体のハイブリダイゼーション効率を、認識部分とスペーサー部分を含む認識オリゴヌクレオチドの使用によって劇的に増加させることができることがわかっている。「認識オリゴヌクレオチド」とは、核酸またはオリゴヌクレオチド標的の配列の少なくとも一部分に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドである。この実施形態では、認識オリゴヌクレオチドは認識部分およびスペーサー部分を含み、認識部分が核酸またはオリゴヌクレオチド標的にハイブリダイズする。認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分は、該スペーサー部分がナノ粒子に結合できるように設計される。例えば、スペーサー部分には、ナノ粒子に結合可能な官能基を含む部分が、共有結合によって結び付けられる。これらは上述したのと同じ部分および官能基である。ナノ粒子に対して認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分が結合した結果、認識部分はナノ粒子の表面から遠ざかり、その標的とのハイブリダイゼーションのためによりアクセス可能となる。認識部分のナノ粒子からのよい離間性を提供するスペーサー部分の長さと配列は、経験的に決定することが可能である。少なくとも約10ヌクレオチド、好ましくは10〜30ヌクレオチドを含むスペーサー部分が、好結果を与えることがわかった。スペーサー部分は、認識オリゴヌクレオチドの、ナノ粒子への結合能もしくは核酸またはオリゴヌクレオチド標的への結合能に干渉しない、任意の配列を有してよい。例えば、スペーサー部分は、認識オリゴヌクレオチドの配列や認識オリゴヌクレオチドの核酸またはオリゴヌクレオチド標的の配列に対し、互い相補的な配列を有するべきではない。好ましくは、スペーサー部分のヌクレオチドの塩基は、すべてアデニン、すべてのチミン、すべてシチジン、またはすべてグアニンであり、そうでなければ上述のような問題が起こる可能性がある。より好ましくは、塩基はすべてアデニンまたはすべてのチミンである。好ましくは、塩基はすべてチミンである。
所望のレベルのハイブリダイゼーションを与えるために、認識オリゴヌクレオチドに加えての希釈剤オリゴヌクレオチドの使用が、共役体を要求に合わせて作製する(あつらえる)手段を提供することがさらに知られている。希釈剤オリゴヌクレオチドと認識オリゴヌクレオチドは、共役体を調製するためにナノ粒子に接触させた時の溶液中の比とほぼ同じ比率でナノ粒子に付くことが分かった。したがって、共役体が所望の数のハイブリダイゼーション事象に参与するように、ナノ粒子に結び付けられた希釈剤オリゴヌクレオチド対認識オリゴヌクレオチドの比を制御することができる。希釈剤オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドの、ナノ粒子への結合能もしくは核酸またはオリゴヌクレオチド
標的への結合能に干渉しない、任意の配列を有してよい。例えば、希釈剤オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドの配列や認識オリゴヌクレオチドの核酸またはオリゴヌクレオチド標的の配列に対し、互い相補的な配列を有するべきではない。希釈剤オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドがその核酸またはオリゴヌクレオチド標的に結合できるように、認識オリゴヌクレオチドよりも短い長さを好ましくは有する。認識オリゴヌクレオチドがスペーサー部分を含む場合、希釈剤オリゴヌクレオチドは、最も好ましくはスペーサー部分とほぼ同じ長さである。このように、希釈剤オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドの認識部分の核酸またはオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズする能力に干渉しない。さらにより好ましくは、希釈剤オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分の配列と同じ配列を有する。
タンパク質受容体及びその他の特異的結合対メンバーは、オリゴヌクレオチドにより機能化し、オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子に固定化されて、DNAよりむしろタンパク質受容体が指図する分子認識特性を備える以外に、オリゴヌクレオチド修飾粒子の高度安定性を呈する新しい分類のハイブリッド粒子(ナノ粒子−受容体共役体)を生成することができる。或いは、受容体修飾オリゴヌクレオチドを備えた多重受容体結合部位を有するタンパク質を機能化し、それにより先に論じた本来のナノ材料組立スキームにおいて、タンパク質受容体複合体を無機ナノ粒子の1つの代わりに部分構造の1つとして用いることができる。検体の検出戦略におけるこれらの新規なナノ粒子−受容体共役体の使用は、ターゲットの同定及びタンパク質−タンパク質相互作用のスクリーニングをはじめとする多数の方法で評価されてきた。
本発明の1つの実施形態において、広範囲の水性塩濃度で安定しており、長期の貯蔵寿命を有し、水溶性が低いタンパク質だけでなく水溶性が高いタンパク質の使用も可能な、新規なハイブリッド粒子又はナノ粒子受容体共役体が提供される。プローブシステム(図47の代表的構造IIを参照)を用いて、表面の別個の部位に固定化したタンパク質のアレイをスクリーニングすることができる(図48)。タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び小分子(図49では、A及びBがタンパク質、ペプチド、炭水化物、糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、合成ポリマー、合成オリゴマー、又は小分子、或いはそれらのいずれかの組み合わせ)など特異的結合対メンバーの組合わせを含む非常に様々な特異的結合反応を研究するために、プローブの構築及び適用のための同様の原理を適応することができる。基本的概念は、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドに「受容体ユニット」(図49ではA)を結合させることである。その後、ハイブリダイゼーションにより、そのシステムの水溶性を高め凝集に関わるコロイドを安定化させる作用があるナノ粒子マトリックス周辺のオリゴヌクレオチドのシースを含有するナノ粒子プローブが生成する。その後、プローブII’を用いて、固体表面に固定化したターゲット(B)にインターロゲートする。AのBへの結合は、固体表面に結合したナノ粒子の検出によりモニタリングする(例えば比色法、蛍光法、銀染色などによる)。このスキームは、Aをオリゴヌクレオチドに共役でき、Bを表面に固定化できるいずれの分子でも用いることができる。
本発明の実施例を図47に示しており、ここではIは、金表面に強固に連結した(例えば、硫黄−金結合による)多数のオリゴヌクレオチドを含む金ナノ粒子であり、1は、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を備えた側基オリゴヌクレオチドを含有するタンパク質である。表面密度の高いオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を構築するための手順は、本明細書に記載している。例えば、実施例3及びC.A.Mirkinら,Nature,第382巻,607−609ページ(1996年);R.Elghanianら,Science,第277巻,1078−1081ページ(1997年);J.J.Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.第120巻,1959−1964ページ(1998年)を参照されたい。オリ
ゴヌクレオチドをタンパク質に共役させるための方法は周知であり、1つの方法の詳細は、E.R.Hendricksonら,Nucleic Acids Research,第23巻,522−529ページ(1995年)に記載されている。ナノ粒子に共役したオリゴヌクレオチド、及びオリゴヌクレオチド−タンパク質共役体を、共にハイブリダイゼーションの条件下におくと、1つ以上のオリゴヌクレオチド−タンパク質共役体分子が、ハイブリダイゼーションにより所定のナノ粒子に結合して、ナノ粒子タンパク質共役体を生成する。図47及び50(a)を参照されたい。ナノ粒子受容体共役体の別の実施形態は、図50(b)に示されており、そこでは連結オリゴヌクレオチドの使用を必要とし、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド構造物及びオリゴヌクレオチド−タンパク質共役体を共にハイブリダイゼーションの条件下におく。この実施形態において、リンカーオリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチド(a)に相補的な1つのセグメント(a’)、及び受容体に結合したオリゴヌクレオチド(b)に相補的な別のセグメント(b’)を有する。
得られたナノ粒子−タンパク質複合体は、遠心分離又はゲル濾過により非結合のタンパク質から分離することができ、抗原などのターゲット検体のためのプローブとして用いることができる。図51は、ナノ粒子−タンパク質共役体をプローブとして使用し得る複数の代表的検出スキームを示している。ナノ粒子−タンパク質共役体は、ターゲット検体を同定すること、支持体上に整列して固定化した薬物など分子のライブラリをスクリーニングすること(図51(a))、又は組織化学的適用においては細胞若しくは組織内の検体の存在を同定すること、をはじめとする非常に様々な適用例を有する。そのプローブは、検体、例えばタンパク質又は薬物が多重結合部位を有する場合も、スポットテストにおいて用いることができる。
これらの検査から得られる金プローブ−受容体−リガンドターゲットの組み合わせは、視覚的(例えばスポットテスト、凝集体の形成、又は銀染色)、又はいずれか公知の手順により観察することができる。例えば、ナノ粒子−タンパク質共役体システムを用いて、ナノ粒子/DNA/タンパク質複合材料の凝集特性に依存する、核酸のための比色テストを開発することができる(図52(A))。典型的実験において、ターゲット核酸(3)を含むか或いは含まない4種のビオチン−オリゴヌクレオチド共役体(1−STV)及び金ナノ粒子DNA共役体(2−Au)に結合したストレプトアビジンを含む複合体の溶液を調製した。ターゲット核酸の配列は、2つの部分を有する。複合体に結合したオリゴヌクレオチドは、核酸の第1部分に相補的であるが、ナノ粒子の結合したオリゴヌクレオチドは、核酸の第2部分に相補的である。その溶液を、53℃で30分間加熱し、その後溶液の一部3LをC18逆相薄層クロマトグラフィープレートにスポットした。ターゲット核酸を含む溶液は、青色のスポットを示し、ターゲットを含まない溶液は、赤色のスポットを示した。この結果及びシャープな融解曲線により、上記スポットテスト(図52(B))中の金ナノ粒子プローブの1つを、金プローブよりも簡単に調製されるストレプトアビジン/DNA共役体により置換し得ることを実証している。
52(a)に示したシステムを用いて、先に論じた新規な3次元ナノ材料又はアセンブリを調製することもできる。図52(a)の簡単な変形例において、図52(c)に示すように、連結オリゴヌクレオチドは用いられず、複合体に結合したオリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドに相補的である。
これらの新しいナノ粒子−タンパク質プローブ(II)は、独特の特徴を有しており、それにより過去に記載されたナノ粒子タンパク質共役体をしのぐ重要な利点が提供される。特に、ナノ粒子の表面の高密度オリゴヌクレオチドは、ポリアニオンのシースとして機能して、非常に広範囲の溶解度にわたって水中のナノ粒子−タンパク質共役体の溶解度及び安定性を高め、非常に広範囲の塩濃度にわたって水中のナノ粒子−タンパク質共役体の
安定性を高める。更に、オリゴヌクレオチド−オリゴヌクレオチド結合の可逆性は、ターゲットと共に形成された複合体を特徴づけるための格別な手法を提供する。加えて、ナノ粒子−タンパク質は、非特異的結合に対してより抵抗性がある(図53参照)。
好ましいナノ粒子−タンパク質複合体は、金ナノ粒子を基にしているが、非常に様々なその他の材料(例えば、銀、プラチナ、金及び銀の混合物、磁気粒子、半導体、量子点)を基にしたその他の粒子を用いてもよく、粒子サイズは、上記のように2〜100nmの範囲であってよい。米国特許出願第09/344,667号明細書及びPCT出願WO第98/04740号は両者とも、引用により完全に本明細書に援用されており、適切なナノ粒子と、それらにオリゴヌクレオチドを結合させる方法とを記載している。
別の実施形態において、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−タンパク質複合体(II)は、滑面に固定化したタンパク質など特異的ターゲット分子を検出する際のプローブとして使用される。例えば図48、49、51、及び54を参照されたい。この目的のために、多数の異なるタンパク質を、異なる別個のスポットにガラススライド上のアレイとして固定化してもよい。多数の連結方法が用いられてもよい。当該技術で周知の1つの方法は、そのガラスを3−アミノプロピルトリエトキシシランと、その後1,4−フェニレンジイソチオシアネートとで処理することである。この配列は、1つ以上のアミノ基を含有する物質に結合させるために用い得る側基のイソチオシアネート基を保持する表面を生成する。アミノ基を含有するターゲットは、この修飾した表面に直接固定化することができる。その他の物質では、アミノアルキル基をターゲットにつないで、必要な反応基を提供することができる。表面上のターゲットの固定化、残余のイソチオシアネート基の不活性化、及び洗浄の後、表面をIIのコロイド溶液に暴露する。タンパク質を固定化するための別の方法は、結合したアルデヒド基を有するガラススライド上にタンパク質を「プリント」して、タンパク質チップを生成することを含む。G.MacBeathら,Science,第289巻,1760−1763ページ(2000年);Nature,2000年,405巻,837ページ;及びAnal.Biochem.,第278巻,123ページは全て、引用により完全に援用されている。タンパク質上のアミノ基は、反応してタンパク質の3次構造を有意に破壊することなく共有結合を形成し、それによりタンパク質は、受容体及びその他のターゲット分子とも反応することができる。或いは、特異的ターゲット分子又は検体は、オリゴヌクレオチドに結合して、検体に結合したオリゴヌクレオチドが支持体に結合したオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド−検体共役体を形成する。オリゴヌクレオチドにタンパク質及びその他の物質を共有結合させる方法は多数ある。1つの方法は、チオール修飾オリゴヌクレオチドとストレプトアビジンとを結合させるためのSMPB(スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート)の使用を含む。Nucleic Acids Research,1994年,第22巻,5530ページは、引用により完全に援用されている。支持体に結合したオリゴヌクレオチドを、ハイブリダイゼーション条件下で検体に結合したオリゴヌクレオチドと接触させることにより、検体を支持体と結合させてもよい。
その後、プローブを支持体と接触させる。タンパク質−タンパク質特異的結合相互作用が生じるのに十分な時間を経た後、過剰のナノ粒子共役体を洗い流して、ナノ粒子を検出する。金属性ナノ粒子は、色により又は銀染色による灰色のスポットとして、直接検出してもよい。こうして、特異的タンパク質/受容体結合相互作用を、ガラススライド上でいずれか1つの存在を指示する方法として活用してもよい(図54)。典型的な実験において、本明細書に記載した高DNA密度金ナノ粒子プローブにハイブリダイズさせたビオチン化DNAに結合したストレプトアビジンを含有する溶液にガラススライドを暴露させることにより、ガラススライドの一部に、相補的DNAを含むハイブリダイズさせたビオチン化DNAをプローブし得る。プローブは、ビオチンを含むスライドの一部に結合する。複合化したプローブに関連するシグナルは、銀強化溶液で処理することにより更に発色す
ることができる(図54参照)。
上に示したように、有用なII型のプローブは、機能的認識要素として非常に多様な物質を用いて作製することができる。図49,50に示すプローブの合成及び適用例のスキームは、タンパク質−タンパク質相互作用を研究するために図48に表したものと全く類似している。図49の一般例として、共役プローブをII’と呼称し、受容体ユニットをAと呼称し、固体表面に固定化されたターゲットをBと呼称する。図48のシステム及び本明細書に記載の変形例は、図49に示した一般的システムの特別な例である。
場合により、非金属ナノ粒子から構築されるII型のオリゴヌクレオチド−ナノ粒子プローブを用いることが好ましい場合もある。本来蛍光性のナノ粒子を基にしたII型プローブは、それらの蛍光により観察することができる。その他のナノ粒子は、オリゴヌクレオチドのシースが添加される前、又は後のいずれかに粒子に蛍光標識を付加することにより、蛍光性にしてもよい。
本発明の別の実施形態において、新規なタンパク質検出方法が提供される。連結DNAを特異的タンパク質のマーカとして用い得る場合には、タンパク質結合分子を、連結オリゴヌクレオチドにより、金ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体に接続する。図55は、レポータDNAとして連結オリゴヌクレオチドを利用するタンパク質検出方法を記載している。この方法において、オリゴヌクレオチドは、各タンパク質粒子が異なるオリゴヌクレオチド配列を有するような方法でタンパク質結合分子により修飾され、その後タンパク質−オリゴヌクレオチド共役体が、ハイブリダイゼーションの結果Au粒子上に固定化される。例えば、ビオチン化DNAは、金ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体上に固定化されて、ビオチンナノ粒子共役体を生成することができる。ストレプトアビジンの存在において、ビオチン修飾ナノ粒子は、凝集体を形成し、その凝集体は、その他の粒子から容易に分離することができる。その凝集体は、その後DNAデハイブリダイゼーションにより解離され、レポータDNAがAu粒子及びタンパク質から単離される。各タンパク質結合分子は固有のDNA配列を有しているため、タンパク質は、DNAチップの使用など確立されたDNA検出方法により同定することができる。一旦レポータDNAが単離されると、レポータDNAはPCRにより増幅され得るため、検出限界は非常に低くなり得る。
これらのナノ粒子−オリゴヌクレオチド−受容体共役体システムの全てに共通する特徴は、試験される成分、例えば図49の受容体A及びBの相互作用のためのシグナルが、Bに結合するAと、オリゴヌクレオチドa’によるオリゴヌクレオチドaの相互作用の両者に基づいて決まることである。オリゴヌクレオチド二本鎖セグメントの解離温度は、相補鎖の長さ及び配列、並びに塩濃度を制御することにより変えることができるため、研究者の意図に従って、オリゴヌクレオチド二本鎖がテストされる成分よりも低温又は高温で解離されるようにシステムを設計することが多くの場合可能である。ここに論じたように、他のナノ粒子に、又はガラス表面に連結するオリゴヌクレオチドとのオリゴヌクレオチド金ナノ粒子プローブのハイブリダイゼーションにより形成した複合体は、通常は狭い温度範囲で解離する。我々の知る限りでは、そのようなシャープな融解推移は、このサイズのオリゴヌクレオチドに由来する複合体としては前例がない。この特性により、ナノ粒子及びオリゴヌクレオチドを基にしたその他のプローブをはじめとするその他のプローブシステムとは別の、図47におけるこれらのナノ粒子オリゴヌクレオチドプローブが設定される。従って、観察されたシグナルがオリゴヌクレオチド二本鎖の解離を反映するようにIV型(図48)又はV型(図54)のシステムを設計すれば、解離推移が極めてシャープになる。この特徴により、IV型及びV型の複合体を特徴づけるための特定の寸法が提供される。或いは、AとBとの相互作用の強度に関する情報を得るために、A−B複合体の初期解離を好適化するシステムを設計することもできる。
容易に理解できるように、非常に望ましいナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を、上述のすべての方法を用いて調製することができる。そうすることによって、要求に合わせたハイブリダイゼーション能力を有する安定した共役体を作製することが可能である。
上記の共役体の任意のものは、上述の核酸検出方法のいずれに使用してもよいし、好ましくは使用される。また、本発明は、上記共役体のうちの任意のものを入れた容器を含むキットも提供する。その上、該共役体は、本発明のナノファブリケーションの方法ならびに核酸分離方法のいずれに使用してもよいし、好ましくは使用される。
本発明はさらに、本発明のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の、電極表面上の相補的オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを促進するための、電界の使用にも関する。ここで、上記に論じた塩、pH、温度、カオトロピック剤、および他の要因に加えて、電界強度(特に電流レベルと電流密度)が核酸相互作用の調節のための正確に制御可能で連続的に変化するパラメータを提供することができる。核酸ハイブリダイゼーションの相互作用の促進に加えて、電界は、特異的結合対相互作用、抗体/抗原反応、細胞分離、および関連の臨床診断法のような大半の分子生物学的方法を含むがそれらに限定されないナノ粒子−荷電分子共役体に関する他の相互作用を促進するために拡張することができる。電場の適用は、選択された生物学的反応の進行や発生をモニタ(または測定)するための様々なタイプのナノ粒子に基づくバイオセンサの設計、構築、および使用を促進する。バイオセンサについては、Protein immobilization,Fundamentals & Applications, R.F.Taylor編(1991)(8章)やImmobilized Affinity Ligand Techniques,Hermansonら(1992)(5章)にかなり詳細に論じられている。米国特許第5,965,452号やそこに引用されている文献も参照されたい。
最近、Nanogenその他が、核酸相互作用の輸送、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシーを制御するための独立パラメータとして電場を使用する超小型電子技術の核酸アレイ方法および装置を開発した。それらは、マイクロファブリケーションだけでなく超小型電子技術も使用する点で、「能動的」なアレイ装置である。例えば、Edmanら、Nucleic Acid Res.,1997年、第25巻(24)、4907−14頁;米国特許第6,051,380号;第6,068,818号;第5,929,208号;第5,632,957号;第5,565,322号;第5,605,662号;第5,849,486号;第6,048,690号;第6,013,166;および第5,965,452号も参照されたい。これらのはその全体が引用により組み込まれる。これらの文献は、核酸相互作用の輸送、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシーを制御する独立パラメータとして電場を使用する超小型電子技術に基づく核酸アレイについて説明している。そのような核酸アレイは、マイクロファブリケーション技術だけでなく超小型電子技術も使用する点で、「能動的」なアレイ装置である。しかしながら、本発明に先立って、本願出願人は、ナノ粒子−第1の特異的結合対メンバー共役体と、第2の結合対メンバーとの間の相互作用、例えばナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体と、表面に結び付けられた相補的ヌクレオチドとの間の相互作用を、電場によって促進できるということが、従来技術では説明も示唆もされていないと考えている。
コンビナトリアル・オリゴヌクレオチド・アレイ(または「遺伝子チップ」)技術は、相補的アレイ要素にハイブリダイズした標的DNAの定量的検出に依存している。本発明者らは最近、オリゴヌクレオチドで官能化した直径13nmの金ナノ粒子が、標的のチップへのハイブリダイゼーションの指標として役割を果たす、遺伝子アレイにハイブリダイズしたDNA標的を検出する「走査測定(scanometric)」法を報告した[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、S
cience、200、第289巻、1757ページ]。該ナノ粒子は並外れて鋭い温度誘発性の解離(または「融解」)プロファイルでアレイ表面から解離するので、走査測定DNA検出システムの選択性は、フルオロフォア・プローブに基づいた従来のアレイ・システムの選択性より本質的に高かった(4倍)。さらに、金に促進される銀(I)の還元によってアレイに結合したナノ粒子が大きくなることにより、フラットベッド型光学スキャナを用いて、フルオロフォアで標識した遺伝子チップの共焦点蛍光イメージングで通常観察される感度の100倍の感度でアレイの白黒画像化が可能になった。この走査測定方法は、DNAミスマッチの同定における使用に優れ、1塩基多型分析[ワン、ディー.ジー.ら(Wang,D.G.et al.)、Science、1998年、第280巻、1077ページ]または遺伝子疾患の変異の同定[ハシア、ジェイ.ジー.(Hacia,J.G.)、Nat.Genet.、1999年、第21巻、42ページ]における使用が見込まれる。しかし、遺伝子発現の研究において遺伝子チップを使用することに興味を持っている研究者は、多くの場合、試験試料および参照試料中に発現されたmRNAの示差分析を行うために、さらにDNAマイクロアレイを多色標識して画像化しうることを必要としている[ブラウン、ピー.オー.(Brown,P.O.);ボートスタイン、ディー.(Botstein,D.)、Nat.Genet.、1999年、第21巻、33ページ]。
大きさおよび組成が異なる金属ナノ粒子を、その特有の表面プラズモン共鳴に応じて異なる波長の光を散乱するように設計することが可能である[ミー、ジー.(Mie,G.)、Ann.Phys.、1908年、第25巻、377ページ]。異なる大きさのナノ粒子からの散乱光は組織化学的な画像化に使用されているが[シュルツ、エス.(Schultz,S.);スミス、ディー.アール.(Smith,D.R.);モック、ジェイ.ジェイ.(Mock,J.J.);シュルツ、ディー.エー.(Schultz,D.A.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2000年、第97巻、996ページ;イゲラビデ、ジェイ.(Yguerabide,J.)、イゲラビデ、イー.イー.(Yguerabide,E.E.)、Anal.Biochem.、1998年、第262巻、157ページ]、ナノ粒子標識はアレイに基づいた検出スキームにおける多色標識には使用されていない。密なオリゴヌクレオチド層で修飾されている様々な大きさと組成の粒子を、多色使用可能で、原理的には走査測定検出システムで観察されたものと同じ選択性の利点を備えたDNA検出システムをもたらすために使用可能である。本明細書中では、DNAアレイによって捕捉された標的にハイブリダイズした、オリゴヌクレオチドで官能化した直径50および100nmのAuナノ粒子プローブによって散乱された光の画像化を使用して、1つの溶液中の2種の標的配列を同定することが可能なことを報告する。さらに、走査測定アレイ方法と同様、ナノ粒子プローブの固有の融解特性により、結合したナノ粒子からの散乱光によってDNAアレイを画像化する場合に、配列選択性が増強されることを示す。
アレイ捕捉鎖、オリゴヌクレオチドで官能化したナノ粒子標識、および検出しようとする標的のDNA配列は、3成分間サンドイッチ・アッセイで同時ハイブリダイズするよう設計されている(図61)[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]。試験オリゴヌクレオチド標的は自動固相合成によって合成し、オリゴヌクレオチド・アレイは文献の手順を使用してガラス製の顕微鏡スライド上に調製した[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ;クリシー、エル.エー.(Chrisey,L.A.);リー、ジー.ユー.(Lee,G.U.);オフェラール、シー.イー.(O’Ferrall,C.E.)、Nucl.Acids Res.、1996年、第24巻、
3031ページ]。直径50nmおよび100nmの金ナノ粒子をジチアン末端のオリゴヌクレオチドで官能化し、文献の方法によって単離した[レイノルズ、アール エー三世(Reynolds,R.A.III);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、3795ページ;レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.);エルガニアン、アール.(Elghanian,R.);ビスワナダム、ジー.(Viswanadham,G);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.)、Bioconjugate Chem.、2000年、第11巻、289ページ]。典型的な実験では、オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体およびオリゴヌクレオチド標的を、0.3M PBSのハイブリダイゼーション緩衝液[0.3MのNaCl、10nMのNaH2PO4/Na2HPO4、pH7]中、室温で2時間、DNAアレイに同時ハイブリダイズさせた[以下の実施例30および31参照]。その後、ハイブリダイズしていない標的およびナノ粒子プローブを除去するために清浄な緩衝液でアレイを洗浄した。アレイ・スライドを顕微鏡のステージに取り付け、光ファイバー照明[Darklite Illuminator(Micro Video
Instruments、マサチューセッツ州エイボン所在)]によってスライドの平面に照射した。この配置では、スライドは平面導波路として役割を果たし、内部全反射によって顕微鏡の対物レンズに光がまったく届かないように阻止する。しかし、ナノ粒子プローブが該導波路の表面に付着している場所では、エバネセント結合した光[ミュラー、ジー.ジェイ.(Mueller,G.J.)、「Multichannel Image Detectors」;タルミ、ワイ.(Talmi,Y.)編、第102回ACSシンポジウム;American Chemical Society:ワシントンDC、1979年;239−262ページ]が誘導面から散乱し、暗い背景上の明るい着色されたスポットとして画像化された。これらの実験では、50nmのAu粒子が導波路に付着している場所では緑色の光(λmax=542nm)が観察され、100nmの粒子が付着している場合は橙色の光(λmax=583nm)が同様に観察された。平面導波路に付着した大きな(≧200nm)セレニウム粒子からの散乱光を使用してDNAアレイの画像化が行われてきたが[スティンプストン、ディー.アイ.(Stimpston,D.I.);ホイヤー、ジェイ.ヴイ.(Hoijer,J.V.);シェイ、ダブリュ.(Hsieh,W.);ジョウ、シー.(Jou,C.);ゴードン、ジェイ.(Gordon,J.);セリオー、ティー.(Theriault,T.);ギャンブル、アール.(Gamble,R.);バルデシュヴィーラー、ジェイ.ディー.(Baldeschwieler,J.D.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1995年、第92巻、6379ページ]、本発明者らが本明細書中に記載するシステムの2つの特徴により同システムは以前の研究とは区別される。すなわち、i)密に官能化されたオリゴヌクレオチド−金ナノ粒子のハイブリッドに固有の鋭い融解プロファイルにより引き起こされる顕著な配列選択性、およびii)異なる粒子径および原理的には異なる粒子組成により、オリゴヌクレオチド・アレイの多色分析がもたらされるという観察である。
1つの溶液中の2種の異なるDNA標的の多色分析を行うこのシステムの潜在性を試験するために、DNA配列aで官能化した10nMの50nm粒子、DNA配列bで官能化した3.5nMの100nmのAu粒子、ならびに200nMの合成オリゴヌクレオチド標的a’c’およびb’d’の混合物を、配列cおよびdでスポットしたスライド・ガラスに曝露した(図61A)[アレイ・ハイブリダイゼーション、画像化および感度のさらなる詳細は実施例30および31で見つけることが可能である]。標的a’c’およびb’d’の両方の存在下では、配列a’c’の試験スポットで画像化された散乱緑色光および配列c’d’の試験スポットでの散乱橙色光(図62A)から実証されたように、2種の異なるナノ粒子プローブが首尾よくかつ独立して対応する相補的なスライド・スポットにハイブリダイズした。スポットから離れた場所で測定された散乱光強度が低いのは、ナ
ノ粒子のスライド表面上への非特異的結合が最小限であることを反映している。標的a’c’またはb’d’のみの存在下では、それぞれ緑色光または橙色光のみが観察される(図62B、C)。いずれの場合でも、非相補的なスポットではバックグラウンドのシグナルはほとんど観察されない。わずか1pMの標的の存在下でも、ハイブリダイズしたナノ粒子プローブによる散乱光をバックグラウンドのシグナルと識別することが可能であり[アレイ・ハイブリダイゼーション、画像化および感度のさらなる詳細は実施例30および31で見つけることが可能である]、これは、この方法が生物源由来のDNAを分析するのに十分感度が高いことを示している。標的の非存在下では、DNAで官能化した顕微鏡スライドを2種の異なるナノ粒子プローブで処理しても散乱光がまったく観察されなかったことに注意されたい(図62D)。
ナノ粒子プローブに基づいたこの新しい散乱検出システムの選択性を試験するために、本発明者らは、各要素が特定の配列部位に4種の可能なヌクレオチドのうち1種を有する捕捉鎖を備えた、4種の要素を含むモデルDNAアレイを合成した。これらのアレイを室温で、4種の要素のうち1種に相補的な標的が200nM(X=A、図61B)であり、直径50nmのナノ粒子プローブが10nMである溶液と共にインキュベートした[アレイ・ハイブリダイゼーション、画像化および感度のさらなる詳細は実施例30および31で見つけることが可能である]。その後、ハイブリダイズしていない標的およびプローブを除去するためにアレイを洗浄し、清浄なハイブリダイゼーション緩衝液に再び浸した。その後、ハイブリダイズしたナノ粒子のアレイ表面からの解離を誘発し、緩衝液の温度を次第に上昇させることによって連続的に観察した。この温度が相補DNA2重鎖またはミスマッチDNA2重鎖のどちらかの融解温度(Tm)を超えない限りは、4種のアレイ要素すべてで散乱光が観察され(図63A)、解離が起こらなかったことが示された。しかし、緩衝液の温度をさらに上昇させるにつれて、様々な塩基対の熱安定性の順にナノ粒子プローブがスライドから解離した(T:T≒C:T<G:T<A:T、図63A)。ナノ粒子のスライドからの解離を実時間で観察したので、実験が進むにつれて、最適なストリンジェンシーの温度、選択性、および標的配列をすべて容易に視覚的に決定することが可能であった。さらに、すべてのアレイ要素について定量的な融解プロファイルを作成し、実時間で各要素でのシグナル強度を測定することによって同時に比較した(図63B)。最適なストリンジェンシーの温度では(55℃、図63B中の縦線で示す)、相補的(X=A)要素におけるシグナルはG:Tの「ゆらぎ(wobble)」ミスマッチを有する要素のシグナルより5倍高い。これは、分子フルオロフォア・プローブおよび同一の配列を有するアレイについて以前に観察された配列選択性よりも有意に高い配列選択性を表す[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]。白黒の走査測定手法によって小さな(直径13nm)ナノ粒子で観察されたように[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]、フルオロフォアで標識したDNAと比べて50nm粒子プローブの選択性が高いことは、ナノ粒子がアレイ表面から解離する温度範囲が狭いことの直接の結果である。図63Bに示す曲線の1次導関数における半値全幅は、フルオロフォアで標識した同一配列のDNAでは18℃であるのに対し、5℃である[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]。ここに提示する結果は、この選択性を、同一チップ上の複数のDNA標的の多色標識と組み合わせても使用し得ることを実証している。
オリゴヌクレオチドで官能化した比較的大きいナノ粒子の散乱光に基づく、本明細書中に記載したDNAアレイ画像化法により、高感度で非常に選択性の高いDNAアレイ多色
標識の機会がもたらされる。理論的には、記載した方法は様々な組成および大きさのナノ粒子を使用して、さらに別の色に拡張可能である[リンク、エス.(Link,S.);ワン、ゼット.エル.(Wang,Z.L.);エル・サイード、エム.エー.(El−Sayed,M.A.)、J.Phys.Chem.B、1999年、第103巻、3529ページ]。さらに、より高い散乱係数を有する粒子を使用することにより、このシステムはナノ粒子走査測定システム5および導波路に基づいた蛍光アレイに匹敵する高い感度を有し得る[ブダッハ、ダブリュ.(Budach,W.);アベル、エー.ピー.(Abel,A.P.);ブルーノ、エー.イー.(Bruno,A.E.);ニューシェーファー、ディー.(Neuschaefer,D.)、Anal.Chem.、1999年、第71巻、3347ページ]。その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,599,668号は、結合事象を検出するための光学的光散乱導波方法(light
scattering optical waveguide method)を記載しているが、この特許は本発明のナノ粒子共役体の使用を開示も示唆もしていない。
本発明の方法は導波路に入射する光の散乱を検出することを含むが、この散乱は、本発明の光散乱ナノ粒子共役体がエバネセント波の侵入度の範囲内にある導波路に特異的に結合した結果である。導波路は透明なプラスチックもしくはガラスまたは任意の適切な材料でもよく、結合は一般にはオリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーションによるもの、または所望する場合は上述のような免疫学的捕捉によるものである。光散乱の検出可能なナノ粒子プローブは、上述の本発明の成熟プロセスによって調製した、金を含めた、任意の新規金属または半導体のナノ粒子から調製し得る。実時間における結合と解離を、視覚的にまたはCCDカメラおよびフレーム取り込みソフトウェアを用いるなどビデオ画像化によってモニターすることが可能である。実時間の融解曲線によって、わずか1塩基のハイブリダイゼーション・ミスマッチを識別することが可能である。
本発明を実施するにあたって、導波路は、ガラス、石英、プラスチック(ポリカーボネート、アクリル、またはポリスチレン等)などの光学的に透明な材料から作製されるべきである。導波路の反射率は、内部全反射をもたらすことが当分野で周知のように、試料流体の反射率より大きくなければならない。水性試料溶液では反射率nは約1.33であるので、導波路は一般に1.35より大きく、通常は約1.5以上である。導波路は図64および65Bに示すものなどの受光端部を含む。導波路は1片のプラスチックまたはガラスであってよく、たとえば標準的なガラス製顕微鏡スライドまたはカバー・ガラスを使用してもよい。導波路の表面を上述した任意の適切な方法によって処理し、好ましくは共有結合によってオリゴヌクレオチドを支持体に付着させてもよい。
入射光線を発生させるための光源は、可視スペクトル、紫外スペクトル、および近赤外スペクトルのエネルギーを含めたほぼ全ての電磁エネルギー源でありうる。したがって、用語「光」とは、かなり広範に解釈され、可視的に検出する実施形態以外では可視範囲に限定されない。当分野で周知のように、非可視波長はその特定の波長に最適化された検出器によって検出される。光は、単色または多色、平行または非平行、偏光または非偏光であり得る。好ましい光源には、レーザー、発光ダイオード、閃光電灯、アーク灯、白熱灯および蛍光放電灯が含まれる。導波路要素を照射するのに使用する光源は、低ワット数のヘリウム−ネオン・レーザーであり得る。以下の実施例1に記載のような携帯の使い捨て用には、光源は、ポケット懐中電灯などで使用されているものなど電池で作動する小さな白熱電球であり得る。好ましくは、光源は、光源の強度を変えるための分圧器の手段を含む。あるいは、強度を適切なレベルに調整するためにフィルタおよび/またはレンズを利用してもよい。
光散乱の程度を決定するための検出手段については以下に詳細に記載するが、手短に述べると、装置および視覚的手段の両方を含む。観察者の眼および脳によるものであれ、コ
ンピュータでデジタル化かつ処理される画像を形成するCCDカメラを含めた光検出装置によるものであれ、導波路全体にわたる光散乱事象が本質的に同時にモニター可能であることが、本発明の重要な特徴である。いずれの場合にも、複数種に官能化された表面が1つだけ使用され、エバネセント波によって同時に照射される。
本発明はまた、検出方法において標的の選択性を強化するための、塩に基づくストリンジェントな洗浄にも関する。標的核酸分析物の選択性を高めるということには、一般に、ハイブリダイゼーション条件の調整、または塩基ミスマッチ鎖もしくは非相補的な鎖から核酸2重鎖を脱ハイブリダイゼーションさせる、ハイブリダイゼーション後の工程における融解温度での熱に基づいたストリンジェントな洗浄の使用が含まれる。一般に、後の洗浄工程のストリンジェンシーが高いほど、2重鎖構造内のミスマッチは、残るとしても少なくなる。本発明のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、ハイブリダイゼーション後の熱的にストリンジェントな洗浄を必要とせずに検出システムにおいて優れた標的選択性を達成するのに利用可能な、著しい塩濃度依存性のハイブリダイゼーションの挙動を示すことが判明した。たとえば、実施例32では、本発明のオリゴヌクレオチドで修飾したナノ粒子が塩濃度勾配全体にわたって並外れて鋭い変性特性を示すことが実証されている。このような塩に基づくストリンジェントな洗浄を伴う検出システムは、手持ち型のDNA検出システムで有用であり、大量の多重鎖形成を受け入れることが可能であり、フルオロフォアに基づいたシステムと比較してより高い選択性を示すであろう。温度の代わりに塩濃度をストリンジェンシーの手段として使用することにより、ナノ粒子に基づいた検出システムにおいて熱サイクルの必要性を排除すること、およびナノ粒子プローブについては熱に基づいたストリンジェンシーよりも高い選択性をもたらすことなど、いくつかの驚くべきかつ予想外の利点がもたらされる。さらに、ストリンジェンシーの手段としての塩濃度の使用は、検出プローブが高温で不安定である場合に有用である。
したがって、本発明の1態様では、核酸を検出する方法が提供される。この方法は、核酸配列の第1の部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが結合した基板を提供する工程と、少なくとも一部が該核酸の第2の部分の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが結合した、ナノ粒子などの標識を提供する工程と、標識と複合体形成した試験基板を形成させるために、該基板、核酸、および標識を、該基板に結合したオリゴヌクレオチドと該核酸との間、および該核酸と該標識に結合したオリゴヌクレオチドとの間でハイブリダイズさせるのに有効な条件下で接触させる工程と、該試験基板を、非特異的に結合した標識を実質的に除去するのに有効な塩濃度の塩水溶液と接触させる工程と、検出可能な変化を観察する工程とからなる。固定化した捕捉プローブ、標的核酸、およびナノ粒子共役体をハイブリダイゼーション条件下で所定の時間接触させる際、適切な陽イオン強度の塩水溶液を用いたハイブリダイゼーション後の洗浄工程でストリンジェンシーを調整してもよい。
本発明の実施には、マニアティス(Maniatis)の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年およびアウスベルら(Ausubel et al.)、「Short Protocols in Molecular Biology」、第4版、(John Wiley&Sons)、1999年に記載されている洗浄溶液などの、任意の適切なストリンジェンシー洗浄溶液を利用することが可能である。代表的な塩水溶液は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、これら塩の2種以上の組合せ、これら塩のうち1種をリン酸緩衝剤に含めたもの、およびこれら塩の2種以上の組合せをリン酸緩衝剤に含めたものからなる群から選択される塩からなる。リン酸緩衝剤が好ましいが、任意の他の緩衝剤または2種以上の適切な緩衝剤の組合せを使用してもよい。適切な緩衝剤の代表的な例には、それだけには限定されないが、トリス(ヒ
ドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝剤およびTRIS−HCl緩衝剤が含まれる。
ストリンジェンシー洗浄溶液には任意の適切な濃度の塩および緩衝剤成分を使用しうる。当分野の技術者は、適切な陽イオン濃度を得るための塩溶液の調整方法を知っているであろう。たとえば、当分野の技術者は、異なる陽イオン濃度の様々な溶液を評価し、さらに図69Cに示したものと類似の解離曲線を作成してもよい(実施例32)。
代表的なストリンジェンシー溶液を実施例32に記載するが、これにはリン酸緩衝剤中の塩化ナトリウムが含まれる。塩化ナトリウム塩成分は一般に約0M〜約0.5M、好ましくは約0.005M〜約0.1Mの範囲にある。リン酸緩衝剤成分は一般に約0.01mM〜約15mMの範囲にあり、好ましくは約10mMである。ストリンジェンシー緩衝剤は任意の適切なpH、一般的には約pH7を有する。ハイブリダイゼーション後の洗浄として塩に基づいた洗浄を用いた場合、少なくとも90%以上、好ましくは少なくとも95%または97%のストリンジェンシー・レベルを達成し得る。
本発明のナノ粒子が好ましい標識であるが、塩に基づいたストリンジェンシー洗浄システムは、オリゴヌクレオチドを有する任意の他の適切に帯電した標識に拡大適用することが可能である。代表的な標識には、それだけには限定されないが、放射性同位元素、フルオレセインやテトラメチルローダミンなどの蛍光色素、アルカリペルオキシダーゼまたは西洋ワサビ・ペルオキシダーゼなどの酵素、ジゴキシゲニンのビオチンなどレポーター基、ポリアニオン・ポリマー、およびラマン色素などの分光学的標識が含まれる。
塩濃度依存性の、ハイブリダイゼーション後のストリンジェンシー条件は、溶液の陽イオン強度の調整に部分的に依存している。当分野の技術者には、オリゴヌクレオチド・プローブの長さ、使用する標識などの要因を適応させるために必要なpHや温度など他の要因を調整する方法が分かるであろう。
本発明の別の実施形態では、塩に基づいたストリンジェントな洗浄を使用して、(a)核酸を、1対の電極の間に位置し、前記核酸配列の第1の部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板と、該基板上のオリゴヌクレオチドと前記核酸とがハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させる工程と、(b)基板に結合した前記核酸をナノ粒子など第1のタイプの標識と接触させる工程であって、該標識が電気を通し得る材料から作製され、該標識に1種または複数種のオリゴヌクレオチドが付着しており、該オリゴヌクレオチドの少なくとも1種が前記核酸の配列の第2の部分に相補的な配列を有するとともに、該標識上のオリゴヌクレオチドと前記核酸とがハイブリダイズするのに有効な条件下で実施して標識と複合体形成した試験基板を形成させることを特徴とする工程と、(c)該試験基板を、非特異的に結合した標識を十分に除去するのに有効な塩濃度の塩水溶液と接触させる工程と、(d)前記電極の電気特性の変化を検出する工程とからなる方法において、少なくとも2つの部分を有する核酸を検出し得る。
本明細書中に記載するように、基板は、1つの核酸の複数の部分の検出、複数の異なる核酸の検出、またはその両方を可能にするために、アレイ内で基板上に配置された複数の電極対を含んでいてもよく、各電極対の間には基板に付着した1種類のオリゴヌクレオチドを備える。本発明のナノ粒子共役体プローブが用いられ、かつ標的核酸が存在する場合は、電極間の回路は閉じられるはずであり、あるいは銀、金、または金属など他の電導性材料、または炭素原子を含めた電気を通し得る材料の局所的強化を触媒し得る材料を含めた、本明細書中に記載する任意の適切な材料によって閉じることが可能である。閉回路の存在は、電極の電気特性の変化など任意の適切な手段によって検出することが可能である。このような変化は、それだけには限定されないが、導電率、抵抗率、電気容量、または
インピーダンスの変化を含めた任意の適切な手段によって検出することが可能である。
用語「ある」存在とは、「1つ以上の」その存在を表す。例えば、「ある特徴」とは、1つ以上の特徴または少なくとも1つの特徴を表す。したがって、本明細書においては、用語「ある」「1つ以上」および「少なくとも1つ」は互換的に用いられる。用語「含んでなる」「含む」および「有する」は互換的に用いられていることに留意されたい。
実施例1: オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子
A: 金ナノ粒子の調製
Frens,Nature Phys.Sci.,第241巻,20ページ(1973年)およびGrabar,Anal.Chem.,第67巻,735ページ(1995年)に記載のように、HAuCl4をクエン酸塩で還元して、金コロイド(直径13nm)を調製した。簡単に説明すると、すべてのガラス器を王水(3部のHCl、1部のHNO3)で洗浄し、NanopureH2Oでリンス、次いで使用前にオーブンで乾燥させた。HAuCl4およびクエン酸ナトリウムはアルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Company)から購入した。水性HAuCl4(1mM、500ml)を攪拌還流させた。次いで、38.8mMのクエン酸ナトリウム(50ml)を素早く添加した。溶液の色は薄黄色から暗紅色に変わったが、還流を15分間継続した。室温に冷ました後、赤色溶液をミクロン・セパレーションズ社(Micron Separations Inc.)の1ミクロンフィルターに通して濾過した。Auコロイドを、Hewlett Packard 8452Aダイオードアレイ分光光度計を用いたUV−可視分光法および日立 8100透過型電子顕微鏡を用いた透過型電子顕微鏡検査(TEM)により特性決定した。直径13nmの金粒子は、標的および10〜35ヌクレオチド範囲のプローブオリゴヌクレオチドと共に凝集させると目に見える変色を生じる。
B.オリゴヌクレオチドの合成
ホスホロアミダイト化学を用いる単カラムモードのMilligene Expedite DNA合成機を用いて1μmolスケールでオリゴヌクレオチドを合成した。Eckstein,F.(編),Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1991年)。すべての溶液はミリジーン社(Milligene)(DNA合成グレード)から購入した。平均カップリング効率は98〜99.8%の範囲であり、最終ジメトキシトリチル(DMT)保護基は精製を支援するためにオリゴヌクレオチドから切断しなかった。
3′−チオール−オリゴヌクレオチドを得るために、チオール修飾剤C3 S−S CPG支持体をグレン・リサーチ社(Glen Research)から購入し、自動合成機に使用した。固相支持体からの通常の切断の間(55℃で16時間)に、NH4OH溶液に0.05M ジチオトレイトール(DTT)を加えて、3′ジスルフィドをチオールに還元した。逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製する前に、過剰なDTTを酢酸エチルで抽出して除去した。
5′−チオールオリゴヌクレオチドを得るために、5′−チオール修飾剤C6−ホスホロアミダイト試薬をヴァージニア州 20166、スターリング、ファルコン・プレイス
44901所在のグレン・リサーチ社(Glen Research,44901 Falcon Place,Sterling,Va 20166)から購入した。オリゴヌクレオチドを合成し、最終DMT保護を除去した。次いで、100μmolの5′チオール変性剤C6−ホスホロアミダイトに、1mlの無水アセトニトリルを加えた。200μlのアミダイト溶液と200μlの(合成機から出来たばかりの)アクチベーターとを
混合し、まだ固相支持体上の合成オリゴヌクレオチドを含有するカラム上にシリンジで導入し、カラム中で10分間往復運動させた。次いで、支持体を無水アセトニトリルで30秒間洗浄(2×1ml)した。カラムに700μlの0.016M I2/H2O/ピリジン混合物(酸化剤溶液)を導入し、次いで、2つのシリンジを用いてカラム中で30秒間往復運動させた。次いで、支持体をCH3CN/ピリジンの1:1混合物(2×1ml)で1分間洗浄した後、無水アセトニトリル(2×1ml)で最終洗浄し、その後、カラムを窒素流で乾燥させた。精製を支援するために、トリチル保護基は除去しなかった。
0.03M Et3NH+OAc−緩衝液(TEAA)、pH7と共に、1%/分勾配の95%CH3CN/5%TEAAを用いて、Hewlett Packard ODS
ハイパーシル(hypersil)カラム(4.6×200mm、5mm粒度)を具備したDionex DX500システムで、逆相HPLCを実施した。流速は1ml/分、UV検出は260nmであった。DMT保護非修飾オリゴヌクレオチドの精製には、分取HPLC(溶離時間27分)を用いた。緩衝液を回収して蒸発させた後、80%酢酸で室温下に30分間処理してオリゴヌクレオチドからDMTを切断した。次いで、溶液を蒸発させてほぼ乾固し、水を加え、酢酸エチルを用いて切断DMTをオリゴヌクレオチド水溶液から抽出した。オリゴヌクレオチドの量は、260nmでの吸光度により定量し、最終純度を逆相HPLC(溶離時間14.5分)で評価した。
3′−チオールオリゴヌクレオチドの精製には同じプロトコルを用いたが、但し、形成されるジスルフィドの量を減少させるためにDMTを抽出した後でDTTを加えた。4℃下に5時間後、酢酸エチルを用いてDTTを抽出し、オリゴヌクレオチドをHPLC(溶離時間15分)で再精製した。
5′−チオール修飾オリゴヌクレオチドを精製するために、非修飾オリゴヌクレオチドの場合と同じ条件下に分取HPLCを実施した。精製後、無水オリゴヌクレオチド試料に、150μlの50mM AgNO3溶液を加えて、トリチル保護基を除去した。試料は、切断が起こると同時に乳白色に変わった。20分後、DTTの10mg/ml溶液200μlを加えてAgを複合体化(反応時間5分)し、試料を遠心して黄色複合体を沈殿させた。次いで、オリゴヌクレオチド溶液(<50 OD)を、(10塩基を超えるオリゴヌクレオチドの脱塩および緩衝液交換用のDNA Grade Sephadex D−25 Mediumを有する)精製用の脱塩NAP−5カラム(スウェーデンのウプサラ所在ファルマシア・バイオテク社(Pharamacia Biotech,Uppsala,Sweden))上に移した。5′−チオール修飾オリゴヌクレオチドの量を、UV−可視分光法により260nmでの吸光度を測定して定量した。10mM NaOH溶液(pH12)と共に、2%/分勾配の10mM NaOH、1M NaCl溶液を用いて、Dionex Nucleopac PA―100(4×250)カラムでイオン交換HPLCを実施して、最終純度を評価した。典型的には、約19分および25分の溶離時間で2つのピークを得た(溶離時間はオリゴヌクレオチド鎖長に依存する)。これらのピークはそれぞれチオールオリゴヌクレオチドおよびジスルフィドオリゴヌクレオチドに対応していた。
C.オリゴヌクレオチドの金ナノ粒子への付着
上記パートAに記載のように調製した17nM(150μl)Auコロイドの水溶液を、パートBに記載のように調製した3.75μM(46μl)3′−チオール−TTTGCTGAと混合し、キャップをした1ml容量Eppendorfバイアル中室温下に24時間放置した。第2コロイド溶液を3.75μM(46μl)3′−チオール−TACCGTTGと反応させた。これらのオリゴヌクレオチドは非相補的であることに留意されたい。使用直前に、等量の2種のナノ粒子溶液を合わせた。オリゴヌクレオチドは非相補的であるから、反応は起こらなかった。
オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子は高温(80℃)および高塩濃度(1M NaCl)下に何日も安定であり、粒子の成長は認められなかった。高塩濃度下に安定であることは、そのような条件が本発明の検出法およびナノファブリケーションの基礎を構成するハイブリダイゼーション反応に要求されるために重要である。
実施例2: ナノ粒子凝集体の形成
A.連結オリゴヌクレオチドの作製
実施例1のパートBに記載のように、2種(非チオール化)オリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドは以下の配列を有していた:
3′ATATGCGCGA TCTCAGCAAA(配列番号1);および
3′GATCGCGCAT ATCAACGGTA(配列番号2)。
これら2種のオリゴヌクレオチドを1M NaCl、10mM リン酸緩衝(pH7.0)溶液中で混合すると、ハイブリダイズして、12塩基対オーバーラップおよび2つの8塩基対付着末端を有する二本鎖が形成された。付着末端はそれぞれ、実施例1のパートCで調製したAuコロイドに付着しているオリゴヌクレオチドの1つの配列に対して相補的な配列を有していた。
B.ナノ粒子凝集体の形成
この実施例のパートAで作製した連結オリゴヌクレオチド(NaClで希釈後の最終濃度0.17μM)を、室温下に、実施例1のパートCで調製したナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体(NaClで希釈後の最終濃度5.1nM)に加えた。次いで、溶液をNaCl水溶液で(1Mの最終濃度に)希釈し、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適した条件である10mM リン酸、pH7で緩衝した。その直後に赤から紫への変色が観察され、続いて沈殿反応が生じた。図6参照。数時間の間に、溶液は透明になり、反応容器の底にピンクがかった灰色の沈殿物が沈殿した。図6参照。
このプロセスがオリゴヌクレオチドとコロイドを共に含むことを確認するために、沈殿物を回収し、pH7で緩衝する1M NaCl水溶液中で(振とうして)再懸濁させた。このようにして、ナノ粒子にハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドを除去する。次いで、ハイブリダイズしたオリゴデオキシリボヌクレオチドに特徴的な吸光度(260nm)および金粒子間の間隔を表す凝集コロイドに特徴的な吸光度(700nm)をモニターして、温度/時間解離実験を行った。図7参照。
温度を0〜80℃の間で1℃/分の速度で循環させながら、Peltier PTP−1 Temperature Controlled Cell Holderを用いるPerkin−Elmer Lambda2UV−可視分光光度計で260および700nmでの吸光度の変化を記録した。10mM リン酸緩衝液を用いてpH7で緩衝し、1M NaCl濃度のDNA溶液は、約1吸光度単位(OD)であった。
その結果は図8Aに示されている。温度を0℃〜(二本鎖の解離温度(Tm)(Tm=42℃)より38℃高い)80℃の間で循環させると、コロイドとオリゴヌクレオチドの両方の光学的シグナチャーの間に良好な相関が存在した。何も結合していないAuコロイドのUV−可視スペクトルははるかに温度依存度が低かった(図8B)。
ポリマーオリゴヌクレオチド−コロイド沈殿物をその融解点より高い温度で加熱すると、肉眼で見える実質的な光学的変化があった。透明溶液は、ポリマー生体材料がデハイブリダイズして水溶液に可溶である非結合コロイドを生成すると、暗紅色に変わった。図8Aの温度トレースにより証明されるように、このプロセスは可逆的であった。
対照実験において、14−T:14−A二本鎖は、可逆的Auコロイド粒子の凝集を誘発するには有効でないことが明らかにされた。別の対照実験で、付着末端に4塩基対誤対合がある連結オリゴヌクレオチド二本鎖は、(実施例1のC部に記載のように調製し、上記のように反応させた)オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子の可逆的粒子凝集を誘発しないことが判明した。第3の対照実験において、連結オリゴヌクレオチドの付着末端に対して相補的な配列を有し、ナノ粒子と反応させた非チオール化オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子を連結オリゴヌクレオチドと合わせたときに可逆凝集を生成しなかった。
重合/集合体プロセスについてのさらなる事実が沈殿物の透過型電子顕微鏡検査(TEM)研究から明らかになった。TEMは、日立 8100透過型電子顕微鏡で実施した。孔の多い炭素格子上に100μlのコロイド溶液をスポットして典型的な試料を調製した。次いで、格子を真空乾燥させ、画像を形成した。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを介して結合したAuコロイドのTEM画像は、集合した大きなAuコロイド網目構造を示した(図9A)。何も結合していないAuコロイドは、同等な条件下には凝集せずに、分散するか、または粒子成長反応を起こす。Hayat,Coloidal Gold:Principles,Methods,and Applications(Academic Press,San Diego,1991年)。今日までに実施された実験ではコロイド粒子の成長の事実は全く存在しないことに留意されたい;ハイブリダイズしたコロイドは、平均直径が13nmの著しく一定したサイズを有するようである。
TEMにより、三次元凝集体の秩序度の評価を困難にする層の重ね合わせが得られる。しかし、単層の二次元凝集体のもっと小規模の画像から、自己集合体プロセスに関するより多くの事実が得られた(図9B)。均一な粒子が約60Å離れている密集凝集体集合体が見られる。この間隔は、用いられた配列を有する剛性オリゴヌクレオチドハイブリッドを介して結合したコロイドに関して予測された95Å間隔よりいくらか短い。しかし、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと連結オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせた後で得られた二本鎖中のニックのために、これらの凝集体は剛性ハイブリッドではなく、極めて可撓性であった。これは、系オーバーラップ鎖を4つから3つに減らす(それによってニックの数を減らす)か、または二本鎖の代わりに三本鎖を用いることにより制御し得る可変要素であることに留意されたい。
実施例3: オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
実施例1に記載のように金コロイド(直径13nm)を調製した。チオール−オリゴヌクレオチド[HS(CH2)6OP(O)(O−)−オリゴヌクレオチド]も実施例1に記載のように調製した。
実施例1に記載のチオール−オリゴヌクレオチドを金ナノ粒子に付着させる方法は、満足すべき結果をもたらさない場合があることが判明した。特に、長いオリゴヌクレオチドを用いたとき、オリゴヌクレオチド−コロイド共役体は、診断系に通常存在するバックグラウンドDNA用のモデルとして用いられる大過剰の高分子量サケ精子DNAの存在下では安定でなかった。コロイドをチオール−オリゴヌクレオチドに長く暴露すると、サケ精子DNAに対して安定なオリゴヌクレオチド−コロイド共役体が生成したが、得られた共役体は、満足にハイブリダイズしていなかった。さらなる実験により、共役体が高分子DNAに対して安定でありかつ満足にハイブリダイズするように任意の長さのチオール−オリゴヌクレオチドを金コロイドに付着させる以下の手順を得た。
水中の金コロイド(17nM)の1ml溶液を水中の過剰な(3.68μM)チオール−オリゴヌクレオチド(28塩基長)と混合し、混合物を室温下に12〜24時間放置した。次いで、100μlの0.1M リン酸水素ナトリウム緩衝液、pH7.0および1
00μlの1.0M NaClを予備混合して加えた。10分後、10μlの1%水性NaN3を添加し、混合物をさらに40時間放置した。この「熟成」ステップは、チオール−オリゴヌクレオチドにより表面被覆面積を増大させて、金表面からオリゴヌクレオチド塩基を置換させるように設計された。その後のアッセイで、40時間のインキュベーション後に溶液をドライアイス浴中で凍結し、次いで室温下に解凍すると、いくらか透明度が増し、境界がよりはっきりした赤色スポットが得られた。どちらにしても、次ぎに、溶液をEppendorf Centrifuge 5414にて14,000rpmで約15分間遠心して、(260nmでの吸光度によって示されている)ほとんどのオリゴヌクレオチドと共に、(520nmでの吸光度により示されている)7〜10%の金コロイドを含有する極めて薄いピンク色の上清と、管の底に密で暗色のゼラチン質残留物を得た。上清を除去し、残留物を約200μlの緩衝液(10mM リン酸、1.0M NaCl)中に再懸濁し、再遠心した。上清溶液を除去した後、残留物を1.0mlの緩衝液(10mM リン酸、0.1M NaCl)および10μlの1%NaN3水溶液中に入れた。溶液をピペットで数回吸い込んだり、吐出したりして溶解を支援した。得られた赤色マスター溶液は、室温下に数ヶ月間放置し、シリカ薄相クロマトグラフィー(TLC)プレート(実施例4参照)上に置き、2M NaCl、10mM MgCl2、または高濃度のサケ精子DNA含有溶液を添加しても、安定であった(すなわち、赤色を保ち、凝集しなかった)。
実施例4: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体のハイブリダイゼーションの促進
実施例3に記載のように、図11に示されているオリゴヌクレオチド−金コロイド共役体IおよびIIを調製した。これら2種の共役体のハイブリダイゼーションは極めて緩慢であった。特に、水性0.1M NaClまたは10mM MgCl2+0.1M NaCl中で共役体IおよびII試料を混合し、混合物を室温下に1日放置しても、変色はほとんどまたは全く生じなかった。
2つの方法がハイブリダイゼーションを改善することが分った。最初の方法では、共役体IおよびIIの混合物(0.1M NaCl溶液中に各15nMを含有)をドライアイス−イソプロピルアルコール浴中で5分間凍結し、次いで混合物を室温下に解凍すると、より高速の結果が得られた。解凍した溶液は、青みを帯びた色を示した。標準C−18TLCシリカプレート(オールテク・アソシエイツ社(Alltech Associates))上に溶液1μlをスポットすると、直ぐに濃青色が見られた。ハイブリダイゼーションおよびその結果として起こる凍結−解凍手順により起こった変色は可逆的であった。ハイブリダイズした溶液を80℃に加熱すると、溶液は赤色に変わり、TLCプレート上にピンク色のスポットを生成した。次いで、凍結、解凍すると、系は(青色の)ハイブリダイズ状態に戻った(C−18TLCプレート上の溶液とスポット両方共)。溶液を凍結しなかった同様な実験では、C−18TLCプレート上で得られたスポットはピンク色であった。
高速結果を得る第2の方法は、共役体と標的を温める方法である。例えば、別の実験では、0.1M NaCl溶液中でオリゴヌクレオチド−金コロイド共役体とオリゴヌクレオチド標的配列とを急速に65℃に温め、20分かけて室温に冷ました。C−18シリカプレート上にスポットして、乾燥させると、ハイブリダイゼーションを示す青いスポットが得られた。それに対し、共役体と標的を室温下に1時間0.1M NaCl中でインキュベートしても、ハイブリダイゼーションを示す青色を生成しなかった。0.3M NaCl中でのハイブリダイゼーションはさらに高速である。
実施例5: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたアッセイ
図12A−Fに示されているオリゴヌクレオチド−金コロイド共役体1および2は実施例3に記載のように作製し、図12Aに示されているオリゴヌクレオチド標的3は、実施
例2に記載のように作製した。誤対合標的および欠失標的4、5、6および7は、イリノイ州シカゴ所在のノースウエスタン大学バイオテクノロジー施設(Northwestern University Biotechnology Facility,Chicago,IL)から購入した。これらのオリゴヌクレオチドを40nmolスケールで合成し、逆相C18カートリッジ(OPC)上で精製した。それらの純度は、イオン交換HPLCを実施して定量した。
ストリンジェントな温度に、急速加熱し、次いで急速に冷却して、選択的ハイブリダイゼーションを達成した。例えば、15nMの各オリゴヌクレオチド−コロイド共役体1および2と、3nmolの標的オリゴヌクレオチド3、4、5、6または7を含有する100μlの0.1M NaCl+5mM MgCl2を、74℃に加熱し、以下の表に示されている温度に冷却し、混合物をこの温度で10分間インキュベートしてハイブリダイゼーションを実施した。次いで、各反応混合物の3μl試料をC−18TLCシリカプレート上にスポットした。(5分間)乾燥させると、ハイブリダイゼーションが起こった場合には濃青色が現われた。
結果を以下の表1に示す。ピンク色のスポットは陰性テスト(すなわち、ナノ粒子がハイブリダイゼーションによって結合しなかったこと)を示し、青色のスポットは陽性テスト(すなわち、ナノ粒子が両オリゴヌクレオチド−コロイド共役体に関するハイブリダイゼーションにより近接させたこと)を示す。
表1から分るように、60℃のハイブリダイゼーションでは、完全対合標的3の場合のみ青色スポットが得られた。50℃のハイブリダイゼーションでは、標的3と6の両方で青色スポットを生成した。45℃のハイブリダイゼーションでは、標的3、5および6で青色スポットが得られた。
関連シリーズにおいて、1誤対合Tヌクレオチドを含む標的は、58℃で陽性テスト(青色)を生成し、共役体1および2は64℃で陰性テスト(赤色)を生成した。同一条件下で、完全対合標的(3)は、どちらの温度下にも陽性テストを生成したが、これは、このテストが完全対合標的と、1誤対合塩基を含む標的とを識別し得ることを示している。
異なるハイブリダイゼーション法を用いても同様な結果が得られた。特に、凍結、解凍し、次いで急速にストリンジェントな温度に温めることにより、選択的ハイブリダイゼーションが達成された。例えば、15nMの各オリゴヌクレオチド−コロイド共役体1および2と、10pmolの標的オリゴヌクレオチド3、4、5、6または7を含有する100μlの0.1M NaClを、ドライアイス−イソプロピルアルコール浴中で5分間凍結し、室温下に解凍し、次いで、急速に以下の表2に示されている温度に冷却し、混合物をこの温度で10分間インキュベートしてハイブリダイゼーションを実施した。次いで、各反応混合物の3μl試料をC−18TLCシリカプレート上にスポットした。結果を表2に示す。
これらの系の重要な特徴は、温度変化に関連する変色が極めて急激であり、かつ約1℃の温度範囲にわたって発生することである。これは、コロイド共役体が関与する融解および会合プロセスにおける高い協同性を示しており、完全対合配列と1塩基対誤対合を含むオリゴヌクレオチド標的を容易に識別し得ることを示している。
高い識別度は2つの特徴によるものと考えられる。第1に、陽性シグナルを得るには、標的上の2つの比較的短いプローブオリゴヌクレオチドセグメント(15ヌクレオチド)の整列が必要である。同等な2成分検出系において、どちらかのセグメント中に誤対合があると、もっと長いプローブ(例えば、30塩基長のオリゴヌクレオチド)中の誤対合より不安定になる。第2に、溶液中の標的オリゴヌクレオチドとナノ粒子共役体とのハイブリダイゼーションで得られた260nmでのシグナルは、DNAに基づくものではなく、ナノ粒子に基づいている。このシグナルは、多重オリゴヌクレオチド二本鎖によるポリマー網目構造として組織化されたナノ粒子集合体の解離に依存する。これによって、凝集体の解離に関して観察される温度範囲が、標準DNA熱変性と比べて狭められる。簡単に説明すると、架橋凝集体中の一部の二本鎖は、ナノ粒子を溶液中に分散させることなく解離し得る。したがって、凝集体を融解させる温度範囲は、ナノ粒子を含まない同等な系の融解に関わる温度範囲(12℃)に比べて極めて狭い(4℃)。この検出法のさらに顕著かつ有利な点は、C−18シリカプレート上で観察される比色応答(<1℃)の温度範囲である。原則的に、この3成分ナノ粒子をベースとする方法は、標的核酸とハイブリダイズしている一本鎖プローブをベースとする任意の2成分検出系よりも選択的であろう。
100μlのハイブリダイゼーション緩衝液(0.3M NaCl、10mM リン酸、pH7)中で、1nmolの標的3を含有するマスター溶液を調製した。この溶液1μ
lは、標的オリゴヌクレオチド10pmolに相当する。マスター溶液からアリコートを取り、ハイブリダイゼーション緩衝液で所望の濃度に希釈して、連続希釈を実施した。表3は、プローブ1および2と異なる量の標的3との混合物3μlを用いて得た感度を示している。凍結−解凍条件を用いてハイブリダイゼーションを実施した後、これらの溶液の3μlアリコートをC−18 TLCプレート上にスポットして、色を定量した。以下の表3において、ピンク色は陰性テストを示し、青色は陽性テストを示す。
この実験は、10fmolがこの特定の系の検出下限であることを示している。
実施例6:
ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたアッセイ
図13Bに示されているように、DNA修飾ナノ粒子を修飾透明基板上に吸着させた。この方法は、DNAハイブリダイゼーション相互作用を用いて、DNA修飾ナノ粒子をガラス製基板に付着しているナノ粒子に結合させるステップから成る。
ガラス製顕微鏡スライドはフィッシャー・サイエンティフック社(Fisher Scienfitic)から購入した。先端にダイヤモンドが付いたけがきペンを用いて、スライドを約5×15mmの部片に切断した。スライドを、50℃の4:1H2SO4:H2O溶液中に20分間浸漬して清浄した。次いで、スライドを、多量の水、次いでエタノールでリンスし、乾燥窒素流下に乾燥させた。スライド表面をチオール末端シランで官能化するために、スライドを脱気エタノール1%(質量)メルカプトプロピル−トリメトキシシラン溶液に12時間浸漬した。スライドをエタノール溶液から取り出し、エタノール、次いで水でリンスした。直径13nmの金ナノ粒子を含有する溶液(実施例1に記載の配合物)にナノ粒子を浸漬して、スライドのチオール末端表面上に吸着させた。コロイド溶液中で12時間後、スライドを取り出し、水でリンスした。得られたスライドは、吸着されたナノ粒子に帰するピンク色を有し、水性金ナノ粒子コロイド溶液と同様なUV−可視吸光度プロファイル(520nmでの表面プラズモン吸光度ピーク)を示す。図14A参照。
ガラス製スライドを、新たに精製された3′チオールオリゴヌクレオチド(3′チオール ATGCTCAACTCT[配列番号33](実施例1および3に記載のように合成)を含有する0.2OD(1.7μM)溶液中に浸漬して、DNAをナノ粒子修飾表面に付着させた。12時間浸漬させた後、スライドを取り出し、水でリンスした。
検体DNA鎖がナノ粒子を修飾表面に結合させる能力を証明するために、連結オリゴヌクレオチドを調製した。(実施例2に記載のように調製した)連結オリゴヌクレオチドは、既に基板表面上に吸着されているDNA(配列番号33)と相補的な12bp末端を有する配列を含む24bp長(5′TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG)[配列番号34]であった。次いで、基板を、連結オリゴヌクレオチド(0.4OD、1
.7μM)を含有するハイブリダイゼーション緩衝液(0.5M NaCl,10mM リン酸緩衝液pH7)溶液中に12時間浸漬した。基板を取り出し、類似緩衝液でリンスした後、基板を、基板に付着している連結オリゴヌクレオチドのハイブリダイズしていない部分と相補的なオリゴヌクレオチド(TAGGACTTACGC5′チオール[配列番号35])(実施例3に記載のように調製)で修飾された直径13nmの金ナノ粒子を含有する溶液中に浸漬した。12時間浸漬した後、基板を取り出し、ハイブリダイゼーション緩衝液でリンスした。基板の色は紫色に変わっており、520nmでのUV−可視吸光度はほぼ二倍になった(図14A)。
オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子が、連結オリゴヌクレオチドとのDNAハイブリダイゼーション相互作用によりオリゴヌクレオチド/ナノ粒子修飾表面に付着したことを確認するために、融解曲線を作成した。融解実験のために、基板を1mlのハイブリダイゼーション緩衝液を含有するキュベットに入れ、実施例2のパートBで用いたものと同じ装置を用いた。基板の温度を0.5℃/分の速度で増大させながら、ナノ粒子に帰する吸光度シグナル(520nm)をモニターした。温度が60℃を越えたときに、ナノ粒子のシグナルは劇的に低下した。図14B参照。シグナルの一次導関数は62℃の融解温度を示したが、これは、ナノ粒子を含まない溶液中でハイブリダイズした3つのDNA配列に関して見られた温度と一致する。図14B参照。
実施例7: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたアッセイ
図15A−Gに示されている検出系は、2種のプローブ1および2が相補的標的4上に末端同士で整列するように設計した。これは、2つのプローブが標的鎖上に近接して整列している実施例5に記載の系とは異なる(図12A−F参照)。
図15A−Gに示されているオリゴヌクレオチド−金ナノ粒子共役体は、実施例3に記載のように調製したが、但し、ナノ粒子は、ハイブリダイゼーション緩衝液(0.3M NaCl、10mM リン酸、pH7)に再分散させた。最終ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体濃度は、赤色のナノ粒子を生成する522nmでの表面プラズモンバンド強度の低下を測定して、13nMであると予測した。図15A−Gに示されているオリゴヌクレオチド標的は、イリノイ州エバンストン所在のノースウエスタン大学バイオテクノロジー施設(Northwestern University Biotechnology Facility,Evanston,IL)から購入した。
13nM オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体1および2を含有するハイブリダイゼーション緩衝液150μlと、60pmol(60μl)の標的4とを混合すると、溶液の色は直ぐに赤色から紫色に変化した。この変色は、金ナノ粒子の大きなオリゴヌクレオチド結合ポリマー網目構造の形成の結果として起こり、これは、ナノ粒子の表面プラズモン共鳴の赤色シフトをもたらす。溶液を2時間にわたって放置すると、大きな巨視的性質の凝集体の沈殿が観察された。懸濁凝集体を含む溶液の「融解分析」を実施した。「融解分析」を実施するために、溶液をハイブリダイゼーション緩衝液で1mlに希釈し、温度を25℃から75℃まで上昇させながら、1分/1℃の保持時間で、260nmでの凝集体の光学シグナチャーを1分間隔で記録した。53.5℃の「融解温度」(Tm)で、オリゴヌクレオチド−ナノ粒子ポリマーとしての凝集体の特性決定と一致する、特徴的な急激な転移(半値全幅、一次導関数のFW1/2=3.5℃)が観察された。これは、ナノ粒子を含まないオリゴヌクレオチドに関して観察されたもっと広幅の転移(Tm=54℃、FW1/2=〜13.5℃)に関連するTmに十分匹敵する。ナノ粒子を含む分析と類似の条件下に、ナノ粒子を含まないオリゴヌクレオチド溶液の「融解分析」を実施したが、但し、温度は10℃から80℃まで増大させた。また、溶液の各オリゴヌクレオチド成分は1.04μMであった。
系の選択性をテストするために、プローブ1と2の完全相補体4から形成された凝集体のTmを、1単塩基誤対合、欠失または挿入を含む標的から形成された凝集体のTm′と比較した(図15A−G参照)。不完全標的を含むすべての金ナノ粒子−オリゴヌクレオチド凝集体は、種々の凝集体のTm値によって証明されているように、完全相補体から形成された凝集体と比べて、有意な測定可能不安定化を示した(図15A−G参照)。不完全標的を含有する溶液は、52.5℃に保持された水浴に入れたときのそれらの色によって完全相補体を含有する溶液から容易に区別し得る。この温度は、誤対合ポリヌクレオチドのTmより高く、したがって、完全標的を含有する溶液のみがこの温度下に紫色を呈した。半相補的標的を含むプローブ溶液に関しても「融解分析」を実施した。260nmでの吸光度は極くわずかに増大したことが観察された。
次いで、ハイブリダイゼーション緩衝液中に50μlの各プローブ(13nM)を含有する溶液に、2μl(20pmol)の各オリゴヌクレオチド標的(図15A−G参照)を加えた。室温下に15分間放置した後、溶液を、温度制御水浴に移し、以下の表4に示されている温度下に5分間インキュベートした。次いで、各反応混合物の3μl試料をC−18シリカプレート上にスポットした。凝集、したがって変色を誘発させるためには両プローブを標的上で整列させる必要があることを証明するために、2回の対照実験を行った。1回目の対照実験は、標的が存在しないプローブ1とプローブ2とから構成した。2回目の対照実験は、一方のプローブ配列のみと相補的な標的3を含むプローブ1とプローブ2とから構成した(図15B参照)。結果は以下の表4に示されている。ピンク色のスポットは陰性テストを示し、青色のスポットは陽性テストを示している。
注目すべきは、肉眼で検出し得る比色変化は、1℃未満にわたって発生し、それによって、完全標的4は、誤対合(5および6)、末端欠失(7)および2種のオリゴヌクレオチドプローブが出会う標的個所での1単塩基の挿入(8)を有する標的から容易に区別し得る(表4参照)ことである。比色変化Tcは、Tmと温度では近いが、同一ではない。どちらの対照の場合も、すべての温度下に観察されたピンクがかった赤色によって証明されるように、溶液中の粒子の凝集または不安定性の徴候はなく、すべての温度下のプレートテストで陰性スポット(ピンク色)を示した(表4)。
1単塩基挿入標的8が完全相補性標的4から区別し得るという観察結果は、2種のプローブ配列を有する挿入鎖の完全相補性を考えれば、本当に注目すべきことである。8およびナノ粒子プローブから形成された凝集体の不安定化は、2つの短いプローブの使用と、完全相補性標的にハイブリダイズしたときにプローブの末端が出会う2つのチミジン塩基間の塩基の積み重ねの喪失とによるようである。同等条件(Tm=51℃)下に3塩基対挿入(CCC)を含む標的をプローブとハイブリダイズさせると、類似の結果が観察された。実施例5で上述した系において、塩基挿入を有する標的は、完全相補性標的から区別できなかった。したがって、この実施例に記載されている系は選択性の点で極めて好ましい。また、この系は、増幅技術を用いずにおよそ10fmolの実施例5に記載の系と同じ感度を示した。
これらの結果は、標的鎖に沿った任意の1単塩基誤対合と共に、標的鎖への任意の挿入をも検出し得ることを示している。変色を検出し得る温度範囲は極めて急勾配であり、変化は極めて狭い温度範囲にわたって生じる。この急激な変化は、標的オリゴヌクレオチド鎖を介して結合された大きなコロイド網目構造が関与する融解プロセスに大きな協同度が存在することを示している。これは、データで示されているように顕著な選択性をもたらす。
実施例8:
ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたアッセイ
「充填」二本鎖オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを含む1式の実験を行った。図16Aに示されているナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体1および2を、図16A−Cに示されているような種々の長さの標的(24、48および72塩基長)および相補的フィラーオリゴヌクレオチドと共にインキュベートした。条件は、その他の点では、実施例7に記載の通りであった。また、オリゴヌクレオチドとナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は実施例7に記載のように調製した。
予測したように、異なる反応溶液は、ハイブリダイゼーション後に、金ナノ粒子の間隔依存性光学特性による顕著に異なる光学特性を有していた。以下の表5参照。しかし、これらの溶液をC−18 TLCプレート上にスポットして、室温または80℃で乾燥させると、標的オリゴヌクレオチドの長さや金ナノ粒子間の間隔とは無関係に、青色を呈色した。表5参照。これは、固相支持体がハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体の凝集を促進するために起こると考えられる。これは、溶液をTLCプレート上にスポットすることにより、金ナノ粒子間の間隔がかなり(少なくとも72塩基)になるが、それでも比色検出が可能であることを証明している。
この実施例や他の実施例で観察された変色は、金ナノ粒子間の間隔(粒子間間隔)がナノ粒子の直径とほぼ同じかそれより小さいときに起こる。したがって、ナノ粒子のサイズ、ナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドのサイズ、およびナノ粒子を標的核酸にハイブリダイズさせるときのナノ粒子の間隔は、オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体が核酸標的とハイブリダイズして凝集体を形成するときに変色が観察可能であるかどうかに影響を与える。例えば、13nmの直径を有する金ナノ粒子は、長さが10〜35ヌクレオチドの標的配列とハイブリダイズするように設計されたナノ粒子に付着しているオリゴヌクレオチドを用いて凝集させると、変色を生じるであろう。ナノ粒子を標的核酸にハイブリダイズさせたときに変色を生じさせるのに適したナノ粒子間間隔は、結果が証明しているように、凝集の度合いに応じて異なるであろう。これらの結果はさらに、固体表面が既に凝集している試料の凝集をさらに促進し、金ナノ粒子をさらに近接させることを示している。
金ナノ粒子に関して観察された変色は、金の表面プラズモン共鳴のシフトや広がりによるものであり得る。この変色が直径が約4nm未満の金ナノ粒子に関して起こる可能性はありそうにない。というのは、核酸の特異的検出に必要なオリゴヌクレオチドの長さがナノ粒子の直径を超えるからである。
実施例9: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたアッセイ
それぞれプローブ1と2(図12A)から5μlを緩衝液(10mM リン酸、pH7)と合わせて0.1M NaClの最終濃度とし、この溶液にヒト尿1μlを添加した。この溶液を凍結、解凍し、次いでC−18 TLCプレート上にスポットしたが、青色は発生しなかった。12.5μlの各プローブと、2.5μlのヒト尿を含有する類似溶液に、0.25μl(10pmol)の標的3(図12A)を加えた。溶液を凍結、解凍し、次いでC−18 TLCプレート上にスポットすると、青色スポットが得られた。
ヒト唾液の存在下で類似実験を行った。12.5μlの各プローブ1および2と、2および2.5μlの標的3を含有する溶液を70℃に加熱した。室温に冷ました後、2.5μlの唾液溶液(水で1:10希釈したヒト唾液)を加えた。得られた溶液を凍結、解凍し、次いで、C−18 TLCプレート上にスポットした後、プローブと標的のハイブリダイゼーションを示す青色スポットが得られた。標的を加えなかった対照実験では、青色スポットは観察されなかった。
実施例10: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたアッセイ
図13Aに示されているようにアッセイを実施した。先ず、フィッシャー・サイエンティフィック社から購入したガラス製顕微鏡スライドを先端にダイヤモンドが付いたけがきペンで約5×15mmの部片に切断した。スライドを50℃の4:1のH2SO4:H2O2溶液中に20分間浸漬して清浄した。次いで、スライドを多量の水、次いでエタノールでリンスし、乾燥窒素流下に乾燥させた。改変した文献記載手順(Chriseyら,Nucleic Acids Res.,第24巻,3031−3039ページ(1996年))を用いてチオール修飾DNAをスライド上に吸着させた。先ず、スライドを、室温下に、Nanopure水中の1mM酢酸中のトリメトキシシリルプロピルジエチルトリアミン1%溶液(DETA、ペンシルベニア州ブリストル所在のユナイテッド・ケミカル・テクノロジー社(United Chemical Technology,Bristol,PA)から購入)中に20分間浸漬した。スライドを水、次いでエタノールでリンスした。乾燥窒素流で乾燥させた後、温度制御加熱ブロックを用いて120℃で5分間焼成した。スライドを冷まし、次いで、室温下に2時間、80:20メタノール:ジメトキシスルホキシド中1mMのスクシンイミジル−4−(マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB、シグマ・ケミカルズ社(Sigma Chemicals)から購入)中に浸漬した。SMPB溶液から取り出して、エタノールでリンスした後、SMPB架橋剤と結合しなかったアミン部位に以下のようにキャップ形成した。先ず、スライドを、10% 1−メチルイミダゾールを含有する8:1 THF:ピリジン溶液中に5分間浸漬した。次いで、スライドを、9:1 THF:無水酢酸溶液中に5分間浸漬した。これらのキャッピング溶液は、ヴァージニア州スターリング所在のグレン・リサーチ社から購入した。スライドをTHF、次いでエタノール、最後に水でリンスした。
修飾ガラス製スライドを、新たに精製されたオリゴヌクレオチド(3′チオールATGCTCAACTCT[配列番号33]を含有する0.2OD(1.7μM)溶液中に浸漬して、DNAを表面に付着させた。12時間浸漬した後、スライドを取り出し、水でリンスした。
検体DNA鎖がナノ粒子を修飾基板表面に結合させる能力を証明するために、連結オリゴヌクレオチドを調製した。連結オリゴヌクレオチドは、既に基板表面上に吸着されているDNAと相補的な12bp末端を含む配列を有する24bp長(5′TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG)[配列番号34]であった。次いで、基板を、連結オリゴヌクレオチド(0.4OD、1.7μM)を含有するハイブリダイゼーション緩衝液(0.5M NaCl,10mM リン酸緩衝液pH7)溶液中に12時間浸漬した。基板を取り出し、類似緩衝液でリンスした後、基板を、基板に付着している連結オリゴヌクレオチドのハイブリダイズしていない部分と相補的なオリゴヌクレオチド(TAGGACTTACGC5′チオール[配列番号35])で修飾されている直径13nmの金ナノ粒子を含有する溶液中に浸漬した。12時間浸漬した後、基板を取り出し、ハイブリダイゼーション緩衝液でリンスした。ガラス製基板の色は透明な無色から透明なピンク色に変わっていた。図19A参照。
スライドを上記のような連結オリゴヌクレオチド溶液に浸漬し、次いで、オリゴヌクレオチド(3′チオールATGCTCAACTCT[配列番号33])が付着している直径13nmの金ナノ粒子を含有する溶液に浸漬して、スライドに追加のナノ粒子層を加えた。12時間浸漬した後、上記のように、スライドをナノ粒子溶液から取り出し、リンスして、ハイブリダイゼーション溶液中に浸漬した。スライドの色は、はっきり分るほど赤色が濃くなっていた。図19A参照。最終ナノ粒子層としてオリゴヌクレオチド(TAGGACTTACGC5′チオール[配列番号35])で修飾した13nmの金ナノ粒子を用いて連結オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子浸漬手順を繰り返して最終ナノ粒子層を加えた。この場合も、色は濃くなり、520nmのUV−可視吸光度は増大した。図19A参
照。
オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子が連結オリゴヌクレオチドとのDNAハイブリダイゼーション相互作用によりオリゴヌクレオチド修飾表面に付着したことを確認するために、融解曲線を作成した。融解実験のために、スライドを、1.5mlのハイブリダイゼーション緩衝液を含有するキュベットに入れ、実施例2のパートBで用いたものと類似の装置を用いた。基板の温度を20℃から80℃まで増大させながら、1℃/1分の保持時間で、ナノ粒子に帰する吸光度シグナル(520nm)をモニターした。温度が52℃を越えたとき、ナノ粒子のシグナルは劇的に低下した。図19B参照。シグナルの一次導関数は、55℃の融解温度を示したが、これは、溶液中でハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体と連結オリゴヌクレオチドに関して見られた温度と一致する。図19B参照。
実施例11: プローブとしてナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いたポリリボヌクレオチドアッセイ
これまでの実施例は、アッセイにおける標的としてオリゴ−デオキシリボヌクレオチドを利用した。本実施例は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体をポリリボヌクレオチドアッセイにおけるプローブとして用い得ることを証明する。ポリ(rA)(0.004260単位)の溶液1μlを、5′末端のメルカプトアルキルリンカーを介してdT20(チミジレート残基を含有する20merオリゴヌクレオチド)に結合している100μLの金ナノ粒子(粒子中〜10nM)に加えて、実験を行った。結合手順は、実施例3に記載のものであった。実施例4に記載のように、ドライアイス/イソプロピルアルコール浴中で凍結し、室温下に解凍し、C18 TLCプレート上にスポットした後、ハイブリダイゼーションによるナノ粒子の凝集の特徴を示す青色スポットが観察された。標的の不在下に実施した対照実験では、青色スポットではなく、ピンク色のスポットを得た。
実施例12: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体を用いた炭疽菌保護抗原セグメントのアッセイ
多くの場合、PCRによる二本鎖DNA標的の増幅にはアッセイに十分な材料を提供することが必要である。本実施例は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体が、DNA鎖をその相補体の存在下にアッセイする(すなわち、二本鎖標的の熱デハイブリダイゼーション後に一本鎖に関してアッセイする)ために使用し得、かつPCR反応から得られたアンプリコンを認識して、特異的に結合し得ることを証明する。
炭疽菌の保護抗原セグメントの141塩基対二本鎖アンプリコンを含有するPCR溶液は海軍省(Navy)から提供された(図12に示されている配列)。このアンプリコンのアッセイは、Qiaquick Nucleotide Removal Kit(カリフォルニア州サンタ・クラリタ所在のキアゲン社(Qiagen,Inc.,Santa Clarita,CA))およびこのキット用の標準プロトコルを用いて、100μlのPCR溶液からDNAを単離して実施したが、但し、DNAの溶離は、キットで提供された緩衝液を用いるのではなく、pH8.5の10mM リン酸緩衝液を用いて実施した。次いで、Speed Vac(サバント社(Savant))上で溶離液を蒸発乾固した。この残留物に、2種の異なるオリゴヌクレオチド−ナノ粒子プローブ(図23参照)からなる2種の各溶液を等量混合して調製した5μlのマスター混合物を添加した。各オリゴヌクレオチド−ナノ粒子プローブは、実施例3に記載のように調製した。マスター混合物を形成するために合わせたプローブ溶液は、10μlの2M NaClおよび5μlのオリゴヌクレオチドブロッカー溶液(0.3M NaCl、10mM リン酸、pH7.0溶液中50pmolの各ブロッカーオリゴヌクレオチド(図23および以下参照))を、5μlの全強度(約10nM)のナノ粒子−オリゴヌクレオチド溶液に加えて調製した。アンプリコン−プローブ混合物を3分間で100℃に加熱し、次いで、ドライアイ
ス/エタノール浴中で凍結し、室温に解凍した。小アリコート(2μl)をC18 TLCプレート上にスポットし、乾燥させた。ハイブリダイゼーションを示す濃い青色のスポットを得た。
アンプリコン標的の不在下、プローブ1の不在下、プローブ2の不在下、または塩化ナトリウムの不在下に、同様な方法で対照テストを実施したが、すべて陰性、すなわち、ピンク色のスポットを得た。同様に、保護抗原セグメントの代わりに炭疽菌の致死因子セグメント由来のPCRアンプリコンを含むプローブ1および2を用いて実施したテストは陰性(ピンク色のスポット)。これらの対照により、どちらのプローブも必要不可欠であり、ハイブリダイゼーションに適した塩条件が必要であり、かつテストは特定の標的配列特異的であることが確認された。
初期二本鎖標的の第2鎖(すなわち、標的鎖と相補的な鎖)がプローブに結合するセグメントの外側の標的核酸領域に結合するのを阻止するためにオリゴヌクレオチドブロッカーを付加した(配列に関しては図23参照)。というのは、そのような結合はナノ粒子オリゴヌクレオチドプローブと標的鎖との結合に干渉するからである。この実施例では、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、プローブによって被覆されない領域の一本鎖標的と相補的であった。代替計画は、プローブオリゴヌクレオチドと競合する領域外のPCR相補鎖(標的鎖と相補的な鎖)と相補的なブロッカーオリゴヌクレオチドを用いるものである。
実施例13: PCR溶液からアンプリコンを単離しないPCRアンプリコンの直接アッセイ
実施例12に記載の手順は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブを付加する前にPCR溶液からPCRアンプリコンを分離するステップを含むものであった。多くの目的のためには、前以てポリヌクレオチド産物を単離することなく、PCR溶液中で直接アッセイを実施し得ることが望ましいであろう。そのようなアッセイ用のプロトコルが開発されており、それを以下に説明する。このプロトコルは、Amplitaq DNAポリメラーゼを含むGeneAmp PCR Reagent Kitを用い、標準条件下に誘導されたいくつかのPCR産物を使って首尾良く実施されている。
50μlのPCR試料溶液に、2種の金ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブ(それぞれ0.008A520単位)の混合物5μlを添加し、次いで、1μlのブロッカーオリゴヌクレオチド(各10pmol)と、5μlの5M NaClと、2μlの150mM MgCl2を加えた。この混合物を100℃下に2分間加熱して二本鎖標的の鎖を分離し、管を直接冷浴(例えば、ドライアイス/エタノール)に2分間浸漬し、次いで、管を取り出して、溶液を室温下に解凍した(凍結−解凍サイクルにより、プローブと標的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが容易になる)。最後に、数μlの溶液をプレート(例えば、C18 RP TLCプレート、シリカプレート、ナイロン膜など)上にスポットした。例の通り、青色はPCR溶液中の標的核酸の存在を示し、ピンク色はこの標的に関して陰性である。
実施例14: ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の集合体を用いた、デハイブリダイゼーションを行わない二本鎖オリゴヌクレオチドの直接認識
これ以前の実施例では、ナノ粒子に結合している一本鎖オリゴヌクレオチドプローブと相互作用させる一本鎖を生成するために、二本鎖標的を加熱してデハイブリダイズさせた。本実施例は、三本鎖複合体を形成し得る場合、前以て標的をデハイブリダイズさせなくても、二本鎖オリゴヌクレオチド配列がナノ粒子によって認識され得ることを証明する。
2種の異なる系、ポリA:ポリUおよびdA40:dT40を用い、100μlの緩衝液(0.1M NaCl、10mM リン酸、pH7.0)中に0.8A260単位の標
的二本鎖を含有する溶液1μlを、0.3M NaCl、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)中のAu−sdT20ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体(粒子中〜10nM;実施例11参照)のコロイド溶液100μlに加えて、テストを実施した。その後、管をドライアイス/イソプロピルアルコール浴中に浸漬して急速凍結し、管を浴から取り出して解凍して、室温(22℃)下に放置し、次いで、3μlの溶液をC18 TLCプレート上にスポットして、ナノ粒子のハイブリダイゼーションおよび凝集の特徴を示す青色のスポットを得た。
このテストの原理は、(この実施例ではピリミジンオリゴヌクレオチドを担持する)ナノ粒子プローブが、配列特異的に、二本鎖標的に沿ったプリンオリゴヌクレオチド/ピリミジンオリゴヌクレオチド部位で結合することである。各二本鎖体上の多くの結合部位が利用可能なので、結合によって、ナノ粒子凝集体が形成される。これらの結果は、ナノ粒子プローブを含む三本鎖複合体をベースとするこのアッセイが、オリゴリボヌクレオチド二本鎖標的にも、オリゴデオキシリボヌクレオチド二本鎖標的にも機能することを示している。
実施例15: 蛍光検出と比色検出とを用いるアッセイ
すべてのハイブリダイゼーション実験は、0.3M NaCl、10mM リン酸、pH7.0、緩衝液中で実施した。AcetatePlusTM濾過メンブレン(0.45μm)は、マサチューセッツ州ウエストボロ所在のミクロン・セパレ−ションズ社(Micron Separations Inc.,Westboro,MA)から購入した。アルキルアミン官能化ラテックスミクロスフェア(3.1μm)は、インディアナ州フィッシャーズ所在のバングス・ラボラトリーズ社(Bangs Laboratories,Fishers,IN)から購入した。Amino−Modifier C7 CPG固相支持体(グレン・リサーチ社)およびExpedite 8909合成機上の5′−フルオロセインホスホロアミダイト(6−FAM,グレン・リサーチ社)を使う標準ホスホロアミダイト化学(Eckstein編,Oligonucleotides and Analogues,第1版,Oxford University,New York,N.Y.,1991年)を用いて、3′末端をアルキルアミノ基で官能化した発蛍光団標識オリゴヌクレオチドを合成し、逆相HPLCで精製した。これらのオリゴヌクレオチドを、Charreyreら,Langmuir,第13巻,3103−3110ページ(1997年)に記載のようにジチオ尿素結合を生成するジイソチオシアネートカップリングを用いて、アミン官能化ラテックスミクロスフェアに付着させた。簡単に説明すると、1000倍過剰の1,4−フェニレンジチオシアネートのDMF溶液を、アミノ修飾オリゴヌクレオチドの水性ホウ酸緩衝液(0.1M、pH9.3)に加えた。数時間後、過剰な1,4−フェニレンジイソチオシアネートをブタノールで抽出し、水溶液を凍結乾燥した。活性化オリゴヌクレオチドをホウ酸緩衝液に再溶解させて、炭酸緩衝液(0.1M、pH9.3、1M NaCl)中でアミノ官能化ラテックスミクロスフェアと反応させた。12時間後、粒子を遠心分離し、緩衝塩類溶液(0.3M NaCl、10mM
リン酸、pH7.0)で3回洗浄した。5′−オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子を実施例3に記載のように調製した。
標的オリゴヌクレオチド(1〜5μl、3nM)を、3μlの発蛍光団で標識したオリゴヌクレオチド修飾ラテックスミクロスフェアプローブ溶液(3.1μm;100fM)に添加した。5分後、3μlの5′オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子プローブ溶液(13nm;8nM)を、標的およびラテックスミクロスフェアプローブを含有する溶液に加えた。さらに10分間放置した後、プローブと標的とを含有する溶液をAcetatePlusメンブレンに通じて真空濾過した。メンブレンは、比較的大きいラテックス粒子を保持し、ハイブリダイズしなかった金ナノ粒子プローブはすべて通過させた。十分な濃度の標的と、標的にハイブリダイズしたラテックスミクロスフェアおよび金ナノ粒子との存
在下、メンブレン上に赤色スポットが観察された(陽性結果)。標的オリゴヌクレオチドを含有する溶液のアリコートを等量の水に代えた対照実験を常に行った。この場合、メンブレン上には白色スポットが残された(陰性結果)。24塩基対モデル系の場合、比色計で3fmolの標的オリゴヌクレオチドを肉眼検出できた。
二本鎖標的オリゴヌクレオチド(1〜5μl、20nM)、3μlの発蛍光団標識オリゴヌクレオチド−ラテックスミクロスフェア(3.1μm;100fM)および3μlの5′−オリゴヌクレオチド−金ナノ粒子(13nm;8nM)を合わせ、3分間で100℃に加熱した。次いで、直ぐに溶液を含有する反応容器を液体N2浴に3分間に浸漬して凍結した。次いで、この溶液を室温下に解凍し、上記のように濾過した。24塩基対のモデル系に関して、比色計で、20fmolの二本鎖オリゴヌクレオチドが肉眼検出できた。
蛍光によってモニターする場合、上記検出法はメンブレンからのバックグラウンド蛍光のために困難であることが証明された。この問題は、アリコートを逆相TLCプレート上にスポットする前に過剰な金ナノ粒子プローブを除去するためにラテックスミクロスフェアを遠心して「洗浄」することによって克服された。ハイブリダイゼーション実験を上述のように実施した。プローブと標的とのハイブリダイゼーションを実施した後、溶液に10μlの緩衝液を添加し、次いで、10,000×gで2分間遠心した。上清を除去し、沈殿物の再懸濁を支援するために5μlの緩衝液を添加した。次いで、3μlアリコートを逆相TLCプレート上にスポットした。一本鎖オリゴヌクレオチドと二本鎖標的オリゴヌクレオチドのどちらに関しても、比色計により25fmolが肉眼検出できた。スポットの形成に用いた3μlアリコート中の標的の量が50fmolの低さになるまで、ハンドヘルドUVランプを用いて肉眼で蛍光スポットを視ることができた。この系を最適化することにより、もっと低量の標的核酸の検出も可能になるであろう。
実施例16: 銀染色法を用いたアッセイ
溶液中の特定のDNA配列の存在を検出するためには、一般に、オリゴヌクレオチド修飾基板上のDNAハイブリダイゼーションテストが用いられる。遺伝子情報を精査するための組合せDNA配列の有望性が増してきていることは、未来の科学に対するこれらの異種配列アッセイの重要性を物語っている。ほとんどのアッセイにおいて、発蛍光団標識標的と表面結合プローブとのハイブリダイゼーションは、蛍光顕微鏡検査またはデンシトメーター検査によりモニターされている。蛍光検出は極めて感度が良いが、その使用は、実験装置費用とほとんどの慣用基板からのバックグラウンド放射とにより制限される。さらに、1単塩基誤対合を有するものに比べ完全相補性プローブに対する標識オリゴヌクレオチド標的への選択性の方が低いために、一ヌクレオチド多形を検出するための表面ハイブリダイゼーションテストが使用できない。蛍光法の簡易性、感度および選択性が改良された検出計画によって、組合せ配列の全ての可能性を具現化することができる。本発明はそのような改良型検出計画を提供する。
例えば、3成分サンドイッチアッセイにおいて、オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子と非修飾DNA標的を、ガラス基板に付着しているオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせることができた(図25A−B参照)。ナノ粒子は、個別のもの(図25A参照)であっても、複数のナノ粒子の「ツリー」(tree)(図25B参照)であってもよい。「ツリー」は、個別のナノ粒子に比べてシグナル感度を増大させ、ハイブリダイズした金ナノ粒子の「ツリー」は、ガラス基板上の暗色領域として肉眼で観察できることが多い。「ツリー」を用いない場合、または「ツリー」によって生成されたシグナルを増幅させるためには、ハイブリダイズした金ナノ粒子を銀染色溶液で処理し得る。「ツリー」は、染色プロセスを促進し、個別ナノ粒子に比べて標的核酸の検出をより高速にする。
以下は、(図25Aに例示されている)1つの特定の系の説明である。捕獲オリゴヌクレオチド(3′−HS(CH2)3−A10ATGCTCAACTCT;配列番号43)を、実施例10に記載のように、ガラス基板上に固定した。標的オリゴヌクレオチド(5′−TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG−3′、配列番号44、各実験用に以下の表6に示されている濃度)と捕獲オリゴヌクレオチドとを、実施例10に記載のように、0.3M NaCl、10mM リン酸緩衝液中でハイブリダイズさせた。基板を同一緩衝液で2回リンスし、標的相補性DNA(5′−HS(CH2)6A10CGCATTCAGGAT、配列番号45)(実施例3に記載の配合物)で官能化した金ナノ粒子プローブを含有する溶液中に12時間浸漬した。次いで、基板を0.3M NaNO3で何回もリンスしてCl−を除去した。次いで、基板を銀染色溶液(Silver Enhancer Solution AとBの1:1混合物、シグマ・ケミカル社、#S−5020および#S−5145)で3分間現像した。グレースケール測定値を計算し得るソフトウエア(例えば、Adobe Photoshop)をロードしたコンピュータに連結した(通常、文書をコンピュータにスキャンするのに用いられる)平台型スキャナで基板をスキャンしてグレースケール測定を行った。結果を以下の表6に示す。
実施例17:
量子ドットを含む集合体
この実施例は、半導体ナノ粒子量子ドット(QD)上の合成一本鎖DNAの固定化を説明する。天然CdSe/ZeSコア/シェルQD(〜4nm)は有機媒質にのみ可溶であるために、アルキルチオールを末端基とする一本鎖DNAと直接反応しにくい。この問題は、先ず、QDに3−メルカプトプロピオン酸でキャップ形成することにより回避された。次いで、カルボン酸基を4−(ジメチルアミノ)ピリジンで脱保護して、粒子を水溶性とし、QDと、3′−プロピルチオールまたは5′−ヘキシルチオール修飾オリゴヌクレオチド配列とを反応し易くした。DNA修飾後、透析により、反応しなかったDNAから粒子を分離した。次いで、「リンカー」DNA鎖を表面結合配列とハイブリダイズさせて、長いナノ粒子集合体を生成した。TEM、UV/可視分光法および蛍光顕微鏡検査により特性決定したQD集合体は、溶液温度を制御することにより可逆的に集合させ得る。新規QD集合体およびQDと金ナノ粒子(〜13nm)間に形成された複合凝集体の温度依存性UV−可視スペクトルを得た。
A. 一般法
NANOpure超純水精製系を用いて調製したナノピュア水(18.1MΩ)を一貫
して用いた。Perkin Elmer LS 50B蛍光分光計を用いて蛍光スペクトル得た。Hp 9090a Peltier Temperature Controllerを具備したHP 8453ダイオードアレイ分光光度計を用いて融解分析を実施した。Eppendorf 5415遠心機またはBeckman Avanti 30遠心機を用いて遠心を行った。200kVで操作する日立 HF−2000電界放出TEMを用いてTEM画像を得た。
B. オリゴヌクレオチド−QD共役体の調製
半導体量子ドット(QD)の合成法は最近の数年間に大きく改良されており、ある種の材料、最も注目すべきことにはCdSeに関して、今や予備決定サイズの単分散試料を比較的容易に調製し得る。Murrayら,J.Am.Chem.Soc.,第115巻,8706ページ,1993年;Hinesら,J.Phys.Chem.,第100巻,468ページ,1996年。その結果、QDを発光ダイオード(Schlampら,J.Appl.Phys.,第82巻,5837ページ,1997年;Dabbousiら,Appl.Phys.Lett.,第66巻,1316ページ、1995年)および非放射性生物学的標識(Bruchezら,Science,第281巻,2013ページ,1998年;Chanら,Science,第281巻,2016ページ,1998年)などの多様なテクノロジーに用いるための道を開く可能性があるこれらの粒子の固有の電子特性および蛍光特性が広範囲に研究されている(Alivisatos,J.,Phys.Chem.,第100巻,13226ページ,1996年、およびその中の参考文献;Kleinら,Nature,699,1997年;Kunoら,J.Chem.Phys.,第106巻,9869ページ,1997年;Nirmalら,Nature,第383巻,802ページ,1996年参照)。しかし、多くの用途では、これらの粒子は表面上に空間的に配列されるか、または三次元物質中に組織化されることが要求されるであろう(Vossmeyerら,J.Appl.Phys.,第84巻,3664ページ,1998年)。さらに、1種以上のナノ粒子を超格子構造(Murrayら,Science,第270巻,1335ページ,1995年)中に組織化する能力があれば、新規かつ潜在的に興味深く有用な特性を有する完全に新しい種類のハイブリッド材料の構築が可能になるであろう。
DNAは、ナノスケールの構築ブロック集合体を周期的な二次元および三次元拡張構造中にプログラムするための理想的なシントンである。合成し易さ、非常に高い結合特異性およびヌクレオチド配列による実質的に無制限のプログラム可能性を含むDNAの多くの特性をQD集合体の使用に利用し得る。
DNAによるQDの修飾は、金ナノ粒子の場合よりも困難であることが証明された。高い蛍光CdSe QDを調製するための一般法によって、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)とトリオクチルホスフィン(TOP)の混合物でコートされた材料が得られる。その結果、これらのQDは、非極性溶媒にのみ可溶になり、そのため、QDを高荷電DNA鎖で直接反応により官能化するのは難しい。この難点は、初めて半導体ナノ粒子を一本鎖DNAで修飾することに成功した以下に記載の方法により克服された。他の人々は、精密な研究において、QDと二本鎖DNAとの相互作用を考えていたが、これらの研究は、拡張QD構造の集合体を誘導するDNAの配列特異的結合特性を利用しなかったことに留意されたい。Cofferら,Appl.Phys.Lett.,第69巻,3851ページ,1996年;Mahtabら,J.Am.Chem.Soc.,第148巻,7028ページ,1996年。
CdSe/ZnSコア/シェルQDの表面は有機チオールと結合するので、これらの半導体粒子を、置換反応により、アルキルチオールを末端基とするDNA鎖で修飾することが望ましかった。しかし、これらのQDは水溶性ではないので、そのような方法は妨げら
れた。最近、QDを水溶性にして、QD表面上にタンパク質構造を固定化させるための2種の異なる方法が報告された。一方は、シリカ層でコア/シェル構造を封入するステップを含み(Bruchezら,Science,第281巻,2013ページ,1998年)、他方は、粒子を安定させ、かつ水溶性とするためにメルカプト酢酸を利用する(Chanら,Science,第281巻,2016ページ,1998年)。DNAハイブリダイゼーション条件下に著しく安定したコロイドを生成する、この実施例に記載されている手順は、QD表面を不動態化するために3−メルカプトプロピオン酸を利用する。
1.0mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF;オールドリッチ社)中の(Hinesら,J.Phys.Chem.,第100巻,468ページ,1996年に記載のように調製した)〜20mgのTOP/TOPO安定化CdSe/ZnS QDの懸濁液に、シリンジを用いて、過剰な3−メルカプトプロピオン酸(0.10ml、1.15mmol;オールドリッチ社)を添加して、3−メルカプトプロピオン酸官能化QDを含有する透明な黒みがかったオレンジ色の溶液を生成した。反応は急速に起こった。後続反応のために、過剰な3−メルカプトプロピオン酸を除去せず、粒子を室温下にDMF中に保存した。
しかし、QDの特性決定のために、試料の一部から反応しなかった3−メルカプトプロピオン酸を以下のように除去して精製した。0.50ml試料を(30,000rpmで4時間)遠心し、上清を除去した。残りの溶液を〜0.3mlのDMFで洗浄し、再遠心した。このステップをさらに2回繰り返してから、FTIRスペクトルを記録した。FTIR(ポリエチレンカード、3M社):1710cm−1(s)、1472cm−1(m)、1278cm−1(w)、1189cm−1(m)、1045cm−1(w)、993cm−1(m)、946cm−1(w)、776cm−1(m)、671cm−1(m)。TOP/TOPO安定化天然QDとは異なり、3−メルカプトプロピオン酸修飾QDは、表面結合プロピオン酸に特徴的な1710cm−1のvcoバンドを示した。
3−メルカプトプロピオン酸修飾QDは水に実質的に不溶であるが、それらの溶解度は、以下のパラグラフに記載のように、表面結合メルカプトプロピオン酸部位を4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP;オールドリッチ社)で脱保護して有意に高めることができた。そうすると、QDは水に容易に分散し、オレンジ色の溶液となり、この溶液は室温下に1週間まで安定であった。
オリゴヌクレオチドをQDに付着させるために、DMF中の3−メルカプトプロピオン酸官能化粒子溶液150μl(530nmでの光学密度=21.4)を、0.4mlのDMF中のDMAP(8.0mg、0.065mmol)の溶液に添加した。オレンジ色の沈殿物が形成された。これを、遠心(3,000rpmで〜30秒)により分離し、次いで、3′プロピルチオール−または5′ヘキシルチオール−を末端基とするオリゴヌクレオチド(1.0〜2.0OD/ml;実施例1に記載のように調製;配列は以下に記載)の溶液1.0mlに溶解させた。(水に溶解した)沈殿物をIRスペクトロスコピー(ポリエチレンカード、3M社)によって特性決定した。IR(cm−1): 1647(m)、1559(s)、1462(m)、1214(w)、719(w)、478(s)。12時間放置した後、オリゴヌクレオチド含有溶液を0.15M NaClに加え、粒子をさらに12時間熟成させた。次いで、NaClの濃度を0.3Mに高め、混合物をさらに24〜40時間放置してから、100kDaメンブレン(Spectra/Por Cellulose Ester Membrane)を用いてPBS(0.3M NaCl、10mM リン酸緩衝液、pH7、0.01%アジ化ナトリウム)で透析した。透析は48時間にわたって実施し、その間に、透析浴を3回新しくした。
このようにして調製したオリゴヌクレオチド−QD共役体は、不定な水安定性を示した
。さらに、コロイドは、(〜3.2nm CdSeコアを示す;Murrayら,J.Am.Chem.Soc.,第115巻,8706ページ,1993年)546nmでの急激な[半値全幅(FWHM)=33nm]対称発光を有し、強力に蛍光性のままであった。
このプロトコルにより、2種の異なるオリゴヌクレオチド−QD共役体を調製し、PBS中に保存した。一方は、3′末端のプロピルチオール官能基と、12mer捕獲配列と、介在10塩基(すべてA)スペーサー:5′−TCTCAACTCGTAA10−(CH2)3−SH[配列番号46]とからなる22merで修飾した。他方は、5′−ヘキシルチオールを末端基とする配列と、さらに10塩基(すべてA)スペーサー、および3′−プロピルチオール配列とは非相補的な12mer捕獲配列:5′−SH−(CH2)6−A10CGCATTCAGGAT−3′[配列番号47]を用いた。
C. QD集合体の調製
ほぼ等量のこれら2種のオリゴヌクレオチド(それぞれ、200μl、OD530=0.224および0.206)を混合し、次いで、相補的な連結24mer配列(5′−TACGAGTTGAGAATCCT−GAATGCG−3′、配列番号48)の溶液6μl(60pmol)と合わせて、室温下に20〜30分以内でQD集合体を形成した(図26)。混合物を凍結(−78℃)し、ゆっくり室温まで温めると、連結が速く起こった。
生成したクラスターは、溶液から沈殿するほど大きくはなかった。しかし、クラスターは、連結しなかった粒子(30,000rpmで2〜3時間)と比べて、比較的低速で遠心(10,000rpmで10分間)することにより分離することができた。
ハイブリダイゼーション直後の蛍光の減少を、4対の試料の475nmから625nmまでの蛍光シグナル(励起波長320nm)の積分により定量した。各対は以下の方法で調製した。Eppendorf遠心管中で、3′プロピルチオールを末端基とするDNAで修飾した粒子(30μl、530nmでの光学密度=0.224)の溶液を、5′ヘキシルチオールを末端基とするDNAで修飾したQD(30μl、530nmでの光学密度=0.206)と合わせ、次いで140μlのPBSで希釈した。次いで、混合物を2つの等量部分に分け、一方には相補的「リンカー」DNA(3μl、30pmol)を、他方には、非相補的「リンカー」DNA(5′−CTACTTAGATCCGAGTGCCCACAT−3′、配列番号49)(3μl、30pmol)を加えた。次いで、全8種の試料をドライアイス/アセトン浴(−78℃)中で凍結し、その後、試料を浴から取り出し、ゆっくり室温まで温めた。ハイブリダイゼーション時の蛍光効率の変化を予測するために、「標的」(相補的「リンカー」)試料の蛍光強度を、非相補的「リンカー」を含む対応する対照試料由来の320nmでの吸光度における差を明らかにするように調整した。
結果は、QD/QD集合体が、平均して26.4±6.1%の積分蛍光強度の減少と、QD間の協同事象によると考えられる発光最大の〜2nmのレッドシフトを伴うことを示した。興味深いことには、Bawendiらは、密集QDと凍結マトリックス中で広く分離している隔離ドットの蛍光を比較したときに、類似ではあるが、わずかに大きなレッドシフトに気づいていた(Murrayら,Science,第270巻,1335ページ,1995年)。蛍光スペクトルにおけるこれらの変化は、QD間にエキシマが形成されたことを示しているのかもしれないが、そのような複合体の正確な性質は、大部分まだ類推の域を出ないものである。予測したように、「リンカー」が無いか、もしくは相補的でない場合、または2種の粒子のどちらかが不在の場合に、凝集は観察されなかった。
温度の関数として凝集体のUV−可視スペクトルを観察して、DNAの「融解」挙動をモニターした。この「融解」分析のために、QD/QD集合体を含む沈殿物を10,000rpmで10分間遠心し、7μlのPBSで洗浄、再遠心して、0.7mlのPBSに懸濁させた。温度を25℃から75℃まで上昇させながら、各測定の前に1分間の保持時間をとって、集合体のUV/可視分光シグナチャーを2℃間隔で記録した。実験を通じて均一性を確実にするために、混合物を500rpmの速度で攪拌した。次いで、600nmでの消光から温度対消光プロファイルを作製した。これらのプロファイルの一次導関数を用いて「融解」温度を決定した。
結果、図27B(Tm=57℃)は、DNAがQD表面上に固定化され、ハイブリダイゼーションが集合体プロセスに関与することを明確に証明した。DNAだけと比較したときの偏移は極めて急激(それぞれの一次導関数のFWHM:4℃対9℃)であり、これは、1粒子当たり多重DNA結合を有する凝集体構造の形成と一致する。変性により消光の増大が観察されたが、これは、集合体内の粒子がその周囲のQDによる光の吸収から防止されるスクリーニング効果のためである可能性が高い。
D. QD/金集合体の調製
DNA官能化QDが得られたので、多重種類のナノ粒子構築ブロックから作製したハイブリッド集合体の構成が実現可能になった。これらのハイブリッド集合体を作製するために、Eppendorf遠心管中で、〜17nMの3′−ヘキシルチオールで修飾した13nmの金ナノ粒子(30μl、〜5fmol;実施例3に記載のように調製)の溶液を、5′−ヘキシルチオールを末端基とするDNA修飾QD(15μl、530nmでの光学密度は0.206)と混合した。「リンカー」DNA(5μl、50pmol)を加え、混合物を−78℃に冷却し、次いで、ゆっくり室温まで温めると、赤みを帯びた紫色の沈殿物が生成した。両種類の粒子と相補的標的の不在下には、凝集挙動は観察されなかった。遠心(3,000rpmで1分間)し、上清を除去した後、沈殿物を100μlのPBSで洗浄し、再遠心した。
「融解」分析のために、洗浄した沈殿物を0.7mlのPBSに懸濁した。UV−可視分光法を用いて、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴の変化を追跡して、525nmでの温度対消光プロファイルを作製した。金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴を用いると、ハイブリダイゼーションをモニターするために、QDだけのUV−可視分光シグナチャーを用いるよりも、はるかに高感度のプローブが得られる。したがって、「融解」実験は、はるかに小さい試料(QD溶液の〜10%が必要)に関して実施し得るが、プラズモンバンドの強さによって、QD由来のUV/可視シグナルが不鮮明になる。上記の純粋QD系と同様に、急激な(一次導関数のFWHM=4.5℃)融解転移は、58℃で起こった(図27D参照)。
これらの集合体の高解像度TEM画像は、多重QDにより相互連絡された金ナノ粒子網目構造を示した(図27C)。TEM画像では金ナノ粒子よりはるかにコントラストが弱いQDは、それらの格子干渉縞によって識別し得る。QDは、高解像度TEMでかろうじて解像できるが、これらの複合体集合体の周期的構造やそれらの形成にDNAが果たす役割を明瞭に示している。
E. 要約
この実施例に記載されている結果は、QD表面へのDNAの固定化が達成され、かつ今やこれらの粒子をハイブリダイゼーション条件下にDNAと組合せて使用し得ることを最も確実に立証している。DNA官能化QDを用いて、最初のDNA誘導QD形成および混合金/QDナノ粒子構造が実証された。半導体QDをDNAで首尾良く修飾することは、材料研究にとって重要な意味を有しており、これらの固有の構築ブロックは新規かつ機能
的な多成分ナノ構造およびナノスケール材料に組み込まれるので、今や、これらのブロックの蛍光、電子、および化学特性の広範囲な研究への扉が開かれている。
実施例18: オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体の合成法およびそれらの方法により生成された共役体
A. 一般法
HAuCl4・3H2Oおよびクエン酸三ナトリウムは、ウィスコンシン州ミルウォーキー所在のオールドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company、Milwaukee,WI)から購入した。純度99.999%の金ワイヤ、およびチタンワイヤは、イリノイ州エバンストン所在のゴールドスミス社(Goldsmith Inc.,Evanston,IL)から購入した。厚さ1ミクロンの酸化物層を有するシリコンウェーハ(100)は、カリフォルニア州サンタクララ所在のシリコン・クエスト・インターナショナル社(Silicon Quest International,Santa Clara,CA)から購入した。5′−チオール修飾剤C6−ホスホロアミダイト試薬、3′−プロピルチオール修飾剤CPG、フルオレセインホスホロアミダイト、およびオリゴヌクレオチド合成に必要な他の試薬は、ヴァージニア州スターリング所在のグレン・リサーチ社から購入した。すべてのオリゴヌクレオチドは、標準ホスホロアミダイト化学(Eckstein,F.,Oligonucleotides and Analogues;第1版;Oxford University Press,New York,1991年)を用いるDNA自動合成機(エキスペダイト社(Expedite))を使って調製した。5′ヘキシルチオール修飾体のみを含むオリゴヌクレオチドを実施例1に記載のように調製した。5−(および6−)−カルボキシフルオレセイン、スクシンイミジルエステルは、オレゴン州ユージーン所在のモレキュラー・プローブス社(Molecular Probes,Eugene,OR)から購入した。NAP−5カラム(Sephadex G−25Medium、DNAグレード)は、ファルマシア・バイオテク社(Pharmacia Biotech)から購入した。すべての実験に、Barnstead NANOpure超純水系を用いて精製したナノピュアH2O(>18.0MΩ)を用いた。Auナノ粒子溶液の遠心には、Eppendorf 5415CまたはBeckman Avanti 30遠心機を用いた。高速液体クロマトグラフィーは、HPシリーズ1100HPLCを用いて実施した。
B. 物理測定
オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子溶液の電子吸収スペクトルは、Hewlett−Packard(HP)8452aダイオードアレイ分光光度計を用いて記録した。蛍光分光法は、Perkin−Elmer LS50蛍光光度計を用いて実施した。透過型電子顕微鏡検査(TEM)は、200kVで操作する日立8100透過型電子顕微鏡で実施した。ナノ粒子溶液中の金の原子濃度の定量には、誘導結合プラズマ(ICP)源を備えたAtomScan25原子分光計を用いた(金の発光は242.795nmでモニターした)。
C. 蛍光標識したアルカンチオール修飾オリゴヌクレオチドの合成および精製
5′ヘキシルチオール部分および3′フルオレセイン部分を用いて、12塩基を含むチオール修飾オリゴヌクレオチド鎖を調製した。12mer(S12F)の配列は、HS(CH2)65−CGC−ATT−CAG−GAT−3′−(CH2)6−F[配列番号50]であり、32mer(SA2012F)は同じ12mer配列とさらなる20dAスペーサー配列を5′端に有していた[配列番号51]。チオール修飾オリゴヌクレオチドは、Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.,第120巻:1959−1964ページ(1998年)に記載のように調製した。自動合成にはアミノ修飾剤C7 CPG固相支持体を用い、5′末端は、先に記載のように、ヘキシルチオールホスホロアミダイトで手で修飾した。3′アミノ、5′トリチルで保護したチオール修飾オリゴヌクレ
オチドを、254nmでDNAのUVシグナルをモニターしながら、0.03M トリエチルアンモニウムアセテート(TEAA)、pH7および1%/分勾配の95%CH3CN/5%0.03M TEAAを含むHP ODS Hypersilカラム(5mm、250×4mm)を用いて、1ml/分の流速で逆相HPLCにより精製した。5′−S−トリチル、3′アミノ修飾12塩基および32塩基オリゴヌクレオチドの保持時間はそれぞれ36分、32分であった。
凍結乾燥産物を1mlの0.1M Na2CO3に再分散させ、調製業者の指示(モレキュラー・プローブ社の文献)に従って、暗所で攪拌しながら、無水DMF中10mg/mlのフルオレセインスクシンイミジルエステル(5,6FAM−SE、モレキュラー・プローブス社)100μlを1.5時間かけて加えた。溶液を室温下にさらに15時間攪拌し、次いで、−20℃下に100%エタノールから沈殿させた。沈殿物を遠心して回収し、H2Oに溶解させ、イオン交換HPLCにより、結合産物を反応しなかったアミノを末端基とするオリゴヌクレオチドから分離した。10mM NaOH水性溶離液および1%/分勾配の1M NaCl/10mM NaOHを用いて、0.8ml/分の流速で、Dionex Nucleopac PA−100カラム(250×4mm)を操作した。5′−S−トリチル、3′フルオレセイン修飾12merおよび32merの保持時間はそれぞれ50分、49分であった。オリゴヌクレオチド産物を逆相HPLCで脱塩した。フルオレセインを末端基とするトリチルオリゴヌクレオチドのトリチル保護基の除去は、先に記載のように、(Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.,第120巻,1959−1964(1998年))、硝酸銀およびジチオトレイトール(DTT)を用いて行った。オリゴヌクレオチドの収率および純度は、アルキルチオールオリゴヌクレオチドに関して先に記載した技術(Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.,第120巻:1959−1964ページ(1998年))を用いて評価した。オリゴヌクレオチドは、チオール基のトリチル除去処理直後に使用した。
3′がプロピルチオールで5′フルオレセイン部分(HS(CH2)3−3′− (W)20−TAG−GAC−TTA−CGC−5′−(CH2)6−F、W=AまたはT)である32塩基を含むチオール修飾オリゴヌクレオチド[配列番号52]を、3′チオール修飾剤CPGを使用して自動合成装置で合成した。各オリゴヌクレオチドの5′末端を、手作業で、フルオレセインホスホロアミダイト(6−FAM(6−FAM、Glen Research)につないた。修飾オリゴヌクレオチドを、イオン交換HPLCで精製した(1M NaClの1%/分勾配、10mM NaOH;保持時間(Rt)〜48分(W=T)、Rt〜29分(W=A))。精製後、オリゴヌクレオチド溶液を逆相HPLCで脱塩した。3′チオール部分を、以前に記述された方法(Storhoffら、J.Am.Chem.Soc.120:1959−1964(1998))により、ジチオスレイトールで脱保護した。
D.フルオレセイン標識オリゴヌクレオチドの合成および精製
発蛍光団標識相補体(12′F)は、S12FおよびSA2012Fの12mer配列と相補的な12塩基3′−GCG−TAA−GTC−CTA−5′−(CH2)6−F[配列番号53]から構成した。標準法を用いてオリゴヌクレオチドを合成し、5′アルキルチオール修飾に関して上述した手順に類似のシリンジベース手順を用いて、フルオレセインホスホロアミダイト(6−FAM、グレン・リサーチ社)とCPG連結オリゴヌクレオチドの5′末端とをカップリングした。上記のような逆相HPLCを用いて精製を実施した。フルオレセイン標識オリゴヌクレオチドの保持時間は18分であった。自動合成機用のアミノ修飾剤C7 CPG固相支持体を用いて発蛍光団標識相補体、3′12F(5′−ATC−CTG−AAT−GCG−F;[配列番号54])を調製し、次いで、上記手順を用いて、5−(6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを3′アミンにカップリングした。
E.金ナノ粒子の調製および特性決定
金ナノ粒子は、実施例1に記載のように、HAuCl4をクエン酸塩で還元して調製した。得られたナノ粒子のサイズ分布の定量には、日立8100TEMを用いて実施する透過型電子顕微鏡検査(TEM)を用いた。グラフィックソフトウエア(IamgeTool)を用いてTEMネガから少なくとも250粒子を分粒した。典型的な粒子配合物の平均直径は15.7±1.2nmであった。球状ナノ粒子と密度がバルク金の密度(19.30g/cm2)と等しいと仮定して、粒子当たりの平均分子量を計算した(2.4×107g/mol)。金ナノ粒子溶液中の金原子の濃度を、ICP−AES(誘導結合プラズモン原子発光分光法)によって決定した。較正には、金原子吸着標準溶液(オールドリッチ社)を用いた。粒子溶液中の金原子濃度とTEM分析によって得た平均粒子質量とを比較して、所与の配合物中の金粒子のモル濃度、典型的には〜10nMを得た。表面プラズモン周波数(520nm)でのナノ粒子溶液のUV−可視吸光度を測定して、粒子のモル消光係数(520nmでのε)を計算すると、典型的には、直径15.7±1.2nmの粒子では4.2×108M−1cm−1であった。
F.金薄膜の調製
シリコンウェーハを〜10mm×6mm部片に切断し、50℃下にピラニア腐蝕溶液(4:1の濃H2SO4:30%H2O2)で30分清浄し、次いで、多量の水、次いでエタノールでリンスした。(警告:ピラニア腐蝕溶液は有機物質と激しく反応するので、取り扱いには厳重な注意が必要である。)Edwards FTM6石英結晶微量天秤を具備したEdwards Auto 306エバポレータ(3×10−7ミリバールの基準圧力)を用いて0.2nm/秒の速度で金属を蒸着させた。シリコンの酸化された側面を、5nmのTi接着層、次いで200nmの金でコートした。
G.5′アルキルチオールオリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
新たに脱保護したオリゴヌクレオチドをナノ粒子水溶液(粒子濃度〜10nM)に3μMの最終オリゴヌクレオチド濃度まで加えて、金ナノ粒子をフルオレセイン−アルキルチオールオリゴヌクレオチドで修飾した。24時間後、溶液をpH7(0.01M リン酸)で緩衝し、NaCl溶液を(0.1Mの最終濃度まで)加えた。これらの条件下にさらに40時間、溶液を「熟成」させた。次いで、14,000rpmで30分間遠心して、過剰な試薬を除去した。上清を除去した後、赤色の油性沈殿物を、0.3M NaCl、10mMリン酸緩衝液、pH7(PBS)で2回洗浄し、連続遠心して、再分散させ、最後に新鮮な緩衝液中に再分散させた。洗浄手順中、常に、少量(UV−可視分光法により測定して〜10%)のナノ粒子が上清と共に廃棄される。したがって、最終ナノ粒子濃度を、TEM、ICP−AES、およびUV−可視分光法(上記参照)で測定した。消光係数および粒度分布は、オリゴヌクレオチド修飾の結果として有意には変化しなかった。
H.5′アルキルチオールオリゴヌクレオチド修飾金薄膜の調製
シリコン支持金薄膜を、金ナノ粒子の場合と同じ回数および同じ緩衝条件下に、脱保護したアルキルチオール修飾オリゴヌクレオチドの蒸着溶液中に浸漬した。オリゴヌクレオチド蒸着の後、膜を0.3M PBSでよくリンスし、緩衝液中に保存した。不動態化されていないケイ素/酸化ケイ素面を残して、片面の金のみを蒸発させた。しかし、アルキルチオール修飾DNAは、PBSに浸漬した何も結合していない酸化ケイ素表面には有意に吸着しなかった。
I.ナノ粒子上に充填したアルキルチオールオリゴヌクレオチドの定量
オリゴヌクレオチドを置換するために、0.3M PBS中の発蛍光団標識オリゴヌクレオチドで修飾したナノ粒子または薄膜に、メルカプトエタノール(ME)を(12mMの最終濃度まで)添加した。間欠的に振とうしながら、室温下に18時間後、金ナノ粒子
を遠心するか、または金薄膜を除去して、置換オリゴヌクレオチドを含有する溶液を金から分離した。0.3M PBS、pH7を添加して、上清のアリコートを2倍希釈した。試料および較正標準溶液のpHとイオン強度を、これらの条件に対するフルオレセインの光学的性質の感度によるすべての測定値に関して、同じに維持するように注意した(Zhaoら,Spectrochimica Acta,45A:1113−1116ページ(1989年))。(520nmで測定した)最大蛍光を、標準線形較正曲線からの補間によりフルオレセイン−アルキルチオール修飾オリゴヌクレオチドのモル濃度に変換した。標準曲線は、同一の緩衝液および塩濃度を用いて発蛍光団標識オリゴヌクレオチドの既知濃度を用いて作製した。最後に、測定したオリゴヌクレオチドのモル濃度を元の金ナノ粒子濃度で割って、粒子当たりの平均オリゴヌクレオチド数を得た。次いで、ナノ粒子溶液中の(球状粒子を想定して)予測した粒子表面積で割って、正規表面被覆面積値を計算した。真円度の仮定条件は、計算した0.93の平均真円度に基づく。真円度因数は、Baxes,Gregory,Digital Image Processing,157ページ(1994年)から引用した(4×pi×面積)(周長×2)として計算する。
J.ハイブリダイズされた標的表面密度の定量
付着したオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション活性を測定するために、蛍光発色団で標識したオリゴヌクレオチド(表面結合オリゴヌクレオチド(12′F)に相補的)を、ハイブリダイゼーション条件(3μM 相補的オリゴヌクレオチド、0.3M PBS、pH7、24時間)下で、オリゴヌクレオチド修飾表面(金のナノ粒子または薄膜)と反応させた。ハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドは、上述したように緩衝塩溶液で2度リンスすることにより金から取り外した。その後、蛍光発色団で標識したオリゴヌクレオチドを、NaOHの添加(最終濃度〜50mM、pH11〜12、4時間)により、デハイブリダイズした。遠心によってナノ粒子溶液から12′F含有溶液を分離した後、1M HClの追加によって溶液を中和し、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの濃度とそれに対応するハイブリダイズされた標的表面密度を、蛍光分光法により測定した。
K.表面被覆面積の定量とハイブリダイゼーション
クエン酸塩安定化金ナノ粒子を12merフルオレセイン修飾アルキルチオールDNA(HS−(CH2)65′−CGC−ATT−CAG−GAT−(CH2)4−F[配列番号50])で官能化した。次いで、化学吸着していないオリゴヌクレオチドを完全に洗い流した後で、発蛍光団標識オリゴヌクレオチドを金表面から除去して表面被覆面積研究を実施し、(上記のような)蛍光分光法を用いてオリゴヌクレオチド濃度を定量した。
金表面からすべてのオリゴヌクレオチドを除去し、次いで溶液から金ナノ粒子を除去することは、いくつかの理由で、蛍光による正確な被覆面積データを得るために重要である。第1に、標識した表面結合DNAの蛍光シグナルは、金ナノ粒子への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の結果として効率的に消光される。実際、フルオレセイン修飾オリゴヌクレオチド(12〜32ヌクレオチド鎖、配列は上記に記載)が15.7±1.2nmの金ナノ粒子上に固定化され、溶液中の残留オリゴヌクレオチドが洗い流された後では、フルオレセイン修飾オリゴヌクレオチドに関して測定可能なシグナルはほとんど存在しない。第2に、金ナノ粒子は、200〜530nmの間に有意な量の光を吸収し、そのために、蛍光測定時の溶液中の金ナノ粒子の存在は、フィルターとしての役割を果たし、利用可能な励起エネルギーだけでなく放出される放射線の強度をも低下させる。フルオレセインの最大放出時には、520nmでの金表面プラズモンバンドが減少する。
メルカプトエタノール(ME)を用いて、交換反応により表面結合オリゴヌクレオチドを急速に置換させた。置換動力学を調べるために、遠心および蛍光測定の前に、オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子を、増加時間、ME(12mM)に暴露した。ナノ粒子を含まな
い溶液に関連する蛍光の強さを用いて、ナノ粒子からどの位多くのオリゴヌクレオチドが放出されるかを測定することができる。MEと交換に放出されたオリゴヌクレオチドの量は、約10時間の暴露まで増大した(図29)が、これは、完全なオリゴヌクレオチドの置換を示している。置換反応は高速であり、これは、オリゴヌクレオチド膜がMEの金表面へのアクセスをブロックし得ないためであると考えられる(Biebuyckら,Langmuir,第9巻,1766ページ(1993年))。
金ナノ粒子上のアルキルチオール修飾12merオリゴヌクレオチド(S12F)の平均オリゴヌクレオチド表面被覆面積は、34±1pmol/cm2(試料の10回の個別測定値の平均)であった。直径15.7±1.2nmの粒子の場合、これは、金粒子1個当たりおよそ159チオール結合12mer鎖に相当する。バッチ毎に粒径はわずかに異なるものの、面積が正規化された表面被覆面積は、異なるナノ粒子配合物に関して類似していた。
この方法が正確なオリゴヌクレオチド表面被覆面積を得るために有用であることを確認するために、金薄膜から発蛍光団標識オリゴヌクレオチドを置換する方法を用い、表面被覆面積データと類似の情報を得ることを目的とするが異なる技術を用いた実験と比較した。これらの実験では、金薄膜に対し、クエン酸塩安定化金ナノ粒子(上記参照)と類似のオリゴヌクレオチド修飾およびME置換手順を課した。金薄膜のオリゴヌクレオチド置換対時間曲線は、金ナノ粒子に関して測定したものと極めて類似している。これは、これらの薄膜に関して測定した典型的な表面被覆面積値が金ナノ粒子上のオリゴヌクレオチド被覆面積よりいくらか低かったにも拘わらず、薄膜の置換速度は類似していることを示唆している。本発明者らの技術によって測定した金薄膜上のオリゴヌクレオチド表面被覆面積(18±3pmol/cm2)が、既に報告されたオリゴヌクレオチド薄膜上の被覆面積の範囲内(電気化学または表面プラズモン共鳴分光法(SPRS)を用いて測定された金電極上の25塩基オリゴヌクレオチドに関しては10pmol/cm2(Steelら,Anal.Chem.,第70巻,4670−4677ページ(1998年))に含まれることは重要である。表面被覆面積の相違は、オリゴヌクレオチドの配列と長さの違いおよび薄膜の調整方法の違いによるものと考えられる。
表面結合l2merオリゴヌクレオチドを備えたナノ粒子への相補的な蛍光発色団標識されたオリゴヌクレオチド(12′F))のハイブリダイゼーションの範囲を、上述のように測定した。簡潔に説明すると、S12F修飾ナノ粒子を、12F′に3μMの濃度でハイブリダイゼーション条件(0.3M PBS、pH7)下で24時間暴露し、次に、緩衝液で入念にリンスした。やはり、蛍光測定前に金からハイブリダイズした鎖を取り外すことが必要であった。これは、高pH溶液(NaOH、pH11)中で二重鎖DNAを変性させてから遠心にかけることにより遂行した。ハイブリダイズした12′Fは、総計1.3±0.2pmol/cm2(15.7nm粒子当たり約6つの二本鎖;1粒子当たりの二本鎖の平均数は、正規化したハイブリダイズされた表面被覆範囲(pmol/cm2)に、TEMによって測定した粒度分布から求められる平均粒子表面積を掛けることにより算出した。)に達した。非特異性吸着の程度を測定するために、S12F修飾金ナノ粒子を、0.3M PBS中で、蛍光発色団標識した非相補的な12塩基オリゴヌクレオチド(12F′)に暴露した。入念なリンス(連続する遠心/再分散ステップ)とそれに続く高pH処理後、ナノ粒子上の非特異的に吸着したオリゴヌクレオチドの被覆範囲は約0.1pmol/cm2であるとわかった。金電極に関する報告値とハイブリダイゼーション結果を比較するために、類似の方法を使用して、S12F修飾金薄膜へのハイブリダイゼーションを測定した。ハイブリダイゼーション6+2pmol/cm2の程度は、金電極上の混合塩基25merに対して報告されているハイブリダイゼーション(2−6pmol/cm2)(Steelら、Anal.Chem.70:4670−4677(1998)と一致していた。
ナノ粒子用システムおよび薄膜の両方に対するS12F/12F′系の表面被覆範囲およびハイブリダイゼーション値を、表7に要約する。最も顕著な結果は、ハイブリダイゼーション効率の低さである(ナノ粒子上の表面結合鎖の4%未満、薄膜上の鎖の33%がハイブリダイズ)。以前の研究では、十分に密に充填されたオリゴヌクレオチド単分子層に対して、同様に低いハイブリダイゼーションが示されていた。これは、塩基の立体的密集性の組合せ(特に金表面付近の)と静電気反発相互作用とにより、入って来るハイブリダイズ鎖への接近容易性が低いことを反映している可能性がある。
L.表面被覆範囲とハイブリダイゼーションに対するオリゴヌクレオチドスペーサーの影響
S12Fオリゴヌクレオチドの適用範囲が高いことは、ナノ粒子安定化の点から有利であるが、その低いハイブリダイゼーション効率により、本願発明者らは、ハイブリダイズする配列の周囲の立体的混雑を減少させる手段を考案するように促された。アルキルチオール基と最初の12塩基認識配列との間に20dAスペーサー配列が挿入された、オリゴヌクレオチド(32mer)を合成した。このストラテジーを、以下の2つの仮定に基づき選択した。すなわち、1)ナノ粒子表面付近の塩基は、含窒素塩基と金表面間の相互作用の弱さと、鎖間の立体密集との故に、立体的に接近不能であること、および、2)直径15.7nmの概ね球状の粒子では、概ねその表面に対して垂直な20merスペーサーユニットの端部に付着された12mer配列(Levickyら、J.Am.Chem.Soc.120:9787−9792(1998))は、表面に直接結び付けられた同じ12merから形成されたフィルムに比べてより大きな自由体積を有するフィルムにつながるだろう。
一本鎖SA2012F鎖の表面密度(15±4pmol/cm2)はSl2F(34の±1pmol/cm2)よりも低いが、同一の表面修飾を使用して32merで修飾した粒子は、12merで修飾した粒子と比較して、かなりの安定性wp示した。予想されたように、SA2012F/12F′系のハイブリダイゼーション効率」(6.6±0.2pmol/cm2、44%)は、元のS12F/12F′系のハイブリダイゼーション効率の約10倍に増大した(表7)。
M.オリゴヌクレオチド付着時の電解質濃度の効果
S12F配列を用いた研究において、塩熟成ステップが、安定したオリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子を得るのに重要であることが判明した(実施例3参照)。純水中S12Fで修飾した金ナノ粒子を不可逆的に融解し、遠心すると、黒色沈殿物が形成されたが、塩中で熟成させたものは、高イオン強度溶液中で遠心しても凝集しなかった。安定性の増大は、立体保護作用および静電保護作用をもたらす高いオリゴヌクレオチド表面被覆面積によるものと考えられる。SA2012F修飾粒子を用いて、オリゴヌクレオチド表面添加に及ぼす電解質条件の効果を調べた。図8に示すように、5′ヘキシルチオールおよび3′フルオレセイン部分を有するチオール修飾オリゴヌクレオチドを調製し、上記のように金ナノ粒子に付着させ、ナノ粒子上のこれらのオリゴヌクレオチドの表面被覆面積を上記のように定量した。結果は以下の表7に示されている。水中のオリゴヌクレオチドに48時間暴露した金ナノ粒子の最終表面被覆面積は、塩で「熟成」させるか、または実験の最後の24時間にわたって漸進的に塩濃度を増大させて(最終濃度は1.0M NaCl)調製したものと比べると、はるかに低かった(7.9±0.2pmol/cm2)(上記参照)。
合成された金ナノ粒子は、極めて低いイオン強度媒質中でさえ不可逆的に凝集することは注目に値する。確かに、金ナノ粒子は本来、塩、特にオリゴヌクレオチドなどのポリアニオンには不相溶である。安定したオリゴヌクレオチド粒子を調製するためには、この熟
成処理が必須である。したがって、粒子は、イオン強度を徐々に増大させる前に、先ず、水中のアルキルチオールオリゴヌクレオチドで修飾しなければならない。オリゴヌクレオチドは、初期には、窒素含有塩基と金との弱い相互作用を介して結合した状態で平らに横たわっていると思われる。類似の相互作用モードが薄膜に付けたオリゴヌクレオチドに関して提案されている(Herneら,J.Am.Chem.Soc.,第119巻,8916−8920ページ(1997年))。しかし、オリゴヌクレオチドと正に帯電したナノ粒子表面との相互作用は、さらに強力であると予想される(Weitzら,Surf.Sci.,第158巻,147−164ページ(1985年))。熟成ステップにおいて、高イオン強度媒質は、隣接するオリゴヌクレオチド間の電荷反発だけでなくポリアニオンオリゴヌクレオチドと正に帯電した金表面との間の引力をも効率的に遮蔽する。これにより、より多くのオリゴヌクレオチドがナノ粒子表面に結合し、それによってオリゴヌクレオチド表面被覆面積が増大する。
N.表面被覆範囲に対するオリゴヌクレオチドスペーサー配列の影響
スペーサーの配列がどのようにAuナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの被覆範囲に影響するかを調べるために、3′プロピルチオールとフルオレセイン標識12mer配列の間に20dAスペーサーおよび20dTスペーサーが挿入されたフルオレセイン修飾32mer鎖を、調製した。S3′T2012FとS3′A2012Fで修飾したナノ粒子に関する表面被覆範囲とハイブリダイゼーションの研究で最も顕著な結果は、20dAスペーサー(24±1pmol/cm2)と比較して、20dTスペーサー(35±1pmol/cm2)でより大きな表面被覆範囲が達成されたことである。ハイブリダイズした表面結合鎖のパーセンテージはST20l2merナノ粒子(79%)ではSA2012ナノ粒子(「〜94%」より低かったが、ハイブリダイズした鎖の数は匹敵していた。これらの結果は、dT豊富なオリゴヌクレオチド鎖が、dA豊富なオリゴヌクレオチドよりも低い程度でナノ粒子表面と非特異的に相互作用することを示唆している。従って、20dAスペーサーセグメントが粒子表面上で平坦に横渡ることにより金の部位をブロックする一方、20dTスペーサーセグメントは、金の表面から垂直に延びることができ、これはより高い表面被覆範囲を促す。
O.同時吸着された希釈剤オリゴヌクレオチドの影響
効率的なハイブリダイゼーションに加えて、オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子の別の重要な特性は、ハイブリダイゼーション事象の総数を調節する可能性である。これは、認識鎖の表面密度の調節により最も容易に遂行される。他の研究者は、ハイブリダイゼーションを制御するために、金電極上の修飾オリゴヌクレオチドと共に、メルカプトヘキサノールのよう同時吸着される希釈剤アルキルチオールを使用した(Steelら、Anal.Chem.70:4670−4677(1998);Herneら、J.Am.Chem.Soc.119:8916−8920(1997))。しかしながら、保護されていない金ナノ粒子の固有の低い安定性は、希釈剤分子の選択に重大な制約を提起した。チオール修飾20dA配列(SA20)[配列番号55]は、ハイブリダイゼーションに必要な高いイオン強度の緩衝液中での粒子安定性を維持し、かつ非特異的吸着から表面を保護する点で、適切していることがわかった。
ナノ粒子を、種々の認識鎖(SA2012F)対希釈剤(SA20)鎖の分子比を有する溶液を用いて修飾した。得られた粒子を、SA2012F表面密度の測定のために上述の蛍光方法で分析し、次に、12′Fとのハイブリダイゼーション効率に関してテストした。
SA2012F表面密度は、堆積溶液中のSA2012F対SA20の比率に関して直線的に増加した(図30)。これは、ナノ粒子に付けられたSA2012FとSA20の比が溶液の比を反映することを示唆しているので、面白い結果である。この結果は、溶解
度と鎖長が吸着動力学に重大な役割を果たす、短鎖アルキルまたはT官能化チオールの混合物に通常見られる結果と対照的である(Bainら、J.Am.Chem.Soc.111:7155−7164(1989);Bainら、J.Am.Chem.Soc.111:7164−7175(1989)。
個々の異なるサンプルにハイブリダイズした相補的な12Fオリゴヌクレオチドの量も、SA2012F表面被覆範囲の増加につれて直線的に増加した(図31)。この関係が良好に定義されるという事実は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体のハイブリダイゼーションの程度を予測および制御できることを示す。これは12F′のハイブリダイゼーションがより高いSA2012F被覆範囲ではより困難になり、オリゴヌクレオチド間に立体的密集と静電気反発が起こる可能性が高いことを示唆している。
P.要約
本研究は、オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子を安定化させる程度に高いが、高い割合の鎖が溶液中のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのために接近できる程度に低く、オリゴヌクレオチド被覆範囲間のバランスを達成することが重要であることを示している。それは、オリゴヌクレオチドを、高いオリゴヌクレオチド表面被覆範囲を得るためにナノ粒子に付着させたり、静電相互作用を減らすためにオリゴヌクレオチドスペーサーセグメントに付着させたり、各ナノ粒子に対するハイブリダイゼーション事象の平均数を再現可能に制御するために同時吸着鎖を付着したりしている間に、塩条件を調節させることにより達成される。鎖(スペーサー)の配列の性質が、金ナノ粒子に装填されたオリゴヌクレオチド鎖の数に影響を及ぼすことも示された。この研究は、オリゴヌクレオチドとナノ粒子の間の相互作用の理解ならびにナノ粒子−オリゴヌクレオチド検出方法の感度の最良化に関して重要な意味合いを持つ。
実施例19:
遺伝子チップアッセイ
この実施例では、オリゴヌクレオチド官能化金ナノ粒子を用いたコンビナトリアルDNAアレイの選択的が非常に高くかつ非常に高感度な分析法を説明する。非常に狭いナノ粒子−標的複合体熱解離温度範囲により、ヌクレオチド誤対合を1つ有する標的から所与のオリゴヌクレオチド配列を、非常に高い選択性で識別することができる。さらに、銀(I)のナノ粒子触媒還元に基づくシグナル増幅法と組合せると、このナノ粒子配列検出系の感度は、慣用の類似発蛍光団系の感度よりも2桁の大きさだけ優れている。
科学者が病気の遺伝的根拠を明らかにし、この新規な情報を医学診断や治療の改良に用いるにつれ、配列選択的DNA検出はますますその重要度を増している。サザンブロットやコンビナトリアルDNAチップなどの一般に用いられている異種DNA配列検出系は、標的DNAと相補的な表面結合一本鎖オリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションに基づいている。これらのアッセイの特異性も感度も、全対合配列および誤対合配列にハイブリダイズした捕獲鎖の解離特性に依存する。以下に説明するように、驚くべきことには、基板にハイブリダイズした単1種類のナノ粒子が類似の発蛍光団ベース系や非標識DNAよりも実質的に急激な融解プロファイルを示すことが発見された。さらに、ナノ粒子二本鎖の融解温度は、同一配列を有する類似の発蛍光団系の場合より11℃も高い。これら2つの観察結果を、銀(I)のナノ粒子触媒還元に基づく定量的シグナル増幅法の開発と合わせると、1単塩基誤対合選択性および類似の慣用発蛍光団ベースアッセイよりも2桁も高い感度を有する新規なチップベースDNA検出系の開発が可能になる。
3成分サンドイッチアッセイ形式(図32参照)において、透明な基板にハイブリダイズした特定のDNA配列の存在を示すために、実施例3に記載のように調製したオリゴヌクレオチドが付着している金ナノ粒子(直径13nm)を用いた。典型的な実験では、基板は、実施例10に記載のようなアミン修飾プローブオリゴヌクレオチドを用いて、フロートガラス製顕微鏡スライド(フィッシャー・サイエンティフック社)を官能化して作製した。この方法を用いて、スライドの表面全体に1種類のオリゴヌクレオチドかまたは市販のマイクロアレイヤーを用いてスポットした複数種類のオリゴヌクレオチドアレイで官能化したスライドを作製した。次いで、指示オリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子および(炭疽菌保護抗原配列をベースとする)合成30merオリゴヌクレオチド標的を
これらの基板に同時ハイブリダイズさせた(図32参照)。したがって、表面のナノ粒子の存在によって、特定の30塩基配列の検出が示された。標的濃度が高い(≧1nM)と、表面上のハイブリダイズした高密度のナノ粒子が、表面を明るいピンク色にした(図33参照)。標的濃度が低い場合、付着しているナノ粒子は、(電界放出走査電子顕微鏡検査では画像が見られたが)肉眼で見ることはできなかった。基板表面にハイブリダイズしたナノ粒子の視覚化を容易にするために、銀イオンをヒドロキノンによって触媒的に還元してスライド表面上に銀金属を形成するシグナル増幅法を用いた。この方法は、組織化学顕微鏡検査研究において、タンパク質−および抗体−結合金ナノ粒子を拡大するために用いられている(Hacker,Colloidal Gold:Principles,Methods,and Applications,M.A.Hayat編(Academic Press,San Diego,1989年),第1巻,第10章;Zehbeら,Am.J.Pathol.,第150巻,1553ページ(1997年))が、その定量的DNAハイブリダイゼーションアッセイにおける使用は新規である(Tomlinsonら,Anal.Biochem.,第171巻,217ページ(1988年))。この方法は、ナノ粒子プローブの極めて低い表面被覆面積を簡単な平台型スキャナや肉眼で視覚化し得た(図33)だけでなく、染色面積の光学密度に基づく標的ハイブリダイゼーションの定量も可能になった(図34)。重要なことには、標的の不在下、または非相補的標的の存在下には、表面の染色は観察されず、これは、ナノ粒子の表面への非特異的結合も、非特異的銀染色も起こらないことを証明している。この結果は、核酸の非常に高い感度かつ非常に選択的な検出を可能にするこれらのナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体の優れた特徴である。
さらに、本発明のオリゴヌクレオチド官能化ナノ粒子の固有のハイブリダイゼーション特性を、さらにコンビナトリアルオリゴヌクレオチドアレイ(または「遺伝子チップ」)の選択性を改良するために用い得ることが確認された(Fodor,Science,第27巻,393ページ(1997年))。オリゴヌクレオチドアレイの異なる素子にハイブリダイズした標的の相対比は、標的配列決定時のアレイの正確性を決定するであろう。この比率は、異なる捕獲鎖とDNA標的との間で形成された二本鎖のハイブリダイゼーション特性に依存する。驚くべきことには、これらのハイブリダイゼーション特性は、発蛍光団標識の代わりにナノ粒子標的を用いることにより劇的に改良される。図35に示されているように、ナノ粒子標識標的の表面結合捕獲鎖からのデハイブリダイゼーションは、同一配列を有する発蛍光団標識標的のものよりはるかに温度感受性である。発蛍光団標識標的は、極めて広範な温度範囲(一次導関数FWHM=16℃)にわたって表面捕獲鎖からデハイブリダイズしたが、同一ナノ粒子標識標的ははるかに急激に融解した(一次導関数FWHM=3℃)。これらの急勾配の解離プロファイルは、通常、ハイブリダイゼーションストリンジェンシー洗浄によって影響を受ける、チップベースの配列分析のストリンジェンシーを改善すると予想された。確かに、相補的表面プローブにハイブリダイズした標的と、(図35の水平線によって表される)特定温度下のストリンジェンシー洗浄後に、誤対合プローブにハイブリダイズした標的との比率は、発蛍光団標識よりナノ粒子標識の方がはるかに高い。これは、チップ検出形式における高選択性を意味する筈である。さらに、ナノ粒子標識は、それによって、それより低いと、二本鎖が室温下に自発融解する臨界濃度を低下させる表面二本鎖の融解温度(Tm)を上昇させることによりアレイ感度を向上させるであろう。
オリゴヌクレオチドアレイの比色指示剤としてのナノ粒子の有効性を評価するために、テストチップを合成標的でプローブし、発蛍光団指示剤とナノ粒子指示剤とで標識した。テストアレイとオリゴヌクレオチド標的は、公開されているプロトコル(Guoら,Nucl.Acids Res.,第22巻,5456ページ(1994年);Genetic Microsystems 417 Microarrayerを用いて、375μmで分離された直径175μmのスポットアレイをパターン化した)に従って作製した。
アレイは、標的の8位の4つの可能なヌクレオチド(N)それぞれに対応する4つの素子を含んでいた(図32参照)。ハイブリダイゼーション緩衝液中で、合成標的と、蛍光標識またはナノ粒子標識プローブとを段階的にアレイにハイブリダイズさせたが、各ステップの後で、35℃のストリンジェンシー緩衝液洗浄を行った。先ず、2×PBS(0.3M NaCl、10mM Na2H2PO4/Na2HPO4緩衝液、pH7)中の1nM 合成標的溶液20μlとアレイとを、室温下に4時間、ハイブリダイゼーションチャンバ(Grace Bio−Labs Cover Well PC20)中でハイブリダイズさせ、次いで、35℃下に清浄な2×PBS緩衝液で洗浄した。次いで、2×PBS中100pM オリゴヌクレオチド官能化金ナノ粒子溶液20μlとアレイとを、室温下に4時間、新鮮なハイブリダイゼーションチャンバ中でハイブリダイズさせた。アレイを35℃下に清浄な2×PBSで洗浄し、次いで、2×PBS(0.3M NaNO3、10mM NaH2PO4/Na2HPO4緩衝液、pH7)で2回洗浄した。次いで、ナノ粒子アレイを銀増幅溶液(シグマ・ケミカル社、Silver Enhanceer
Solution)中に5分間浸漬し、水で洗浄した。銀増幅により、アレイ素子はかなり暗色化し、直径200μmの素子は平台型スキャナまたは肉眼でさえ容易に見ることができた。
モデル標的およびナノ粒子標識プローブで攻撃し、銀溶液で染色したアレイは、相補的アレイ素子への選択性の高いハイブリダイゼーションを明瞭に示した(図36A)。同じ捕獲配列の重複スポットは、再現性があってばらつきのないハイブリダイゼーションシグナルを示した。ナノ粒子または銀染料によるバックグラウンド吸着は全く観察されなかった。平台型スキャナによって記録された画像グレースケール値は、清浄な顕微鏡スライドに関して観察されたものと同じであった。8位のアデニン(N=A)に対応する暗いスポットは、オリゴヌクレオチド標的が、3:1を超える比率で、誤対合鎖よりも完全相補性捕獲鎖に選択的にハイブリダイズしたことを示している。さらに、各スポットセットの総合グレースケール値は、ワトソン・クリック型塩基対、A:T>G:T>C:T>T:T(Allawiら,Biochemistry,第36巻,10581ページ(1988年))の予測安定性に従う。通常、G:T誤対合をA:T相補体から識別するのは特に難しく(Saikiら,Mutation Detection,Cottonら編(Oxford University Press,Oxford,1998年),第7章;S.Ikutaら,Nucl.Acids Res.,第15巻,797ページ(1987年))、これら2種のアレイ素子の識別は、1つのヌクレオチド誤対合の検出におけるナノ粒子標識の驚異的な分解能を証明している。ナノ粒子ベースアレイの選択性は、発蛍光団指示アレイの選択性より高く(図36B)、発蛍光団標識は8位のアデニンに対して2:1の選択性を提供したに過ぎない。
ナノ粒子標識プローブを利用するアッセイは、発蛍光団標識プローブを利用するものより感度が有意に高かった。ハイブリダイゼーションシグナルを、50fM程度の低さ(または、20μlの溶液を含有するハイブリダイゼーションチャンバの場合は、1×106総コピー数)の標的濃度のN=A要素で分解することができた。これは、通常、1pM以上の標的濃度が要求される慣用のCy3/C75発蛍光団標識アレイに比べて劇的な感度の向上を示している。表面上に固定化されたナノ粒子−標的複合体に関して観察された高融解温度がアレイの感度に寄与していることは疑いもない。ナノ粒子系の場合に発蛍光団系に比べてプローブ/標的/表面−オリゴヌクレオチド複合体の安定性が増大すると、洗浄ステップ中に失われる標的およびプローブが少なくなると考えられる。
コンビナトリアルオリゴヌクレオチドアレイの比色性ナノ粒子標識は、誤対合1つの解像、感度、コスト、使用し易さが重要な要素である一ヌクレオチド多型分析などの用途に有用であろう。さらに、全体的に最適化する必要があるこの系の感度は、ポリメラーゼ連鎖反応などの標的増幅計画を必要とせずに、オリゴヌクレオチド標的を検出するための潜
在的な方法を示している。
実施例20: ナノ粒子構造
ハイブリダイズしたDNAリンカーを媒介としたガラス支持体上への超分子重層金ナノ粒子構造の可逆的集合体を説明する。オリゴヌクレオチド官能化ナノ粒子を、相補的DNAリンカーの存在下、オリゴヌクレオチド官能化ガラス支持体に連続付着させる。DNAの独特な認識特性により、相補的リンカーの存在下にナノ粒子構造が選択的に集合する。さらに、これらの構造は、溶液の温度、pH、およびイオン強度を含めた連結二本鎖DNAのハイブリダイゼーションを媒介する外部刺激に応答して集合したり、離散したりし得る。この系は、固相支持体上にナノ粒子ベース構造を構築する極めて選択的かつ制御された方法を提供することに加えて、DNAによって連結されたナノ粒子網目構造の光学特性と融解特性とに影響を与える要素の研究を可能にする。
別の者は、いかにして、二官能価有機分子(Gittinsら,Adv.Mater.,第11巻,737ページ(1999年);Brustら,Langmuir,第14巻:5425ページ(1998年);Brightら,Langmuir,第14巻:5696ページ(1998年);Grabarら,J.Am.Chem.Soc.,第118巻:1148ページ(1996年);Freemanら,Science,第267巻:1629ページ(1995年);Schmidら,Angew.Chem.Int.Ed.Engel.,第39巻:181ページ(2000年);Marinakosら,Chem.Mater.,第10巻:1214ページ(1998年))または高分子電解質(Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.,第120巻,1959ページ(1998年);Storhoffら,J.Cluster Sci.,第8巻:179ページ(1997年);Elghanianら,Science,第277巻:1078ページ(1997年);Mirkinら,Nature 第382巻,607ページ(1996年))を使用して平面構造から単層および多層ナノ粒子材料を制御可能に構築し得るかを証明した。ナノ粒子の相互連結体としてDNAを用いることの魅力的な特徴は、DNA配列を選択することにより、粒子間間隔、粒子周期性および粒子組成を合成的にプログラムし得ることである。さらに、オリゴヌクレオチドの可逆結合特性を利用して、動構造ではなく熱力学的構造を確実に形成し得る。この方法は、固相支持体からのナノ粒子ベース構造の成長を制御する新規かつ強力な方法を提供するだけでなく、ナノ粒子凝集体サイズと、凝集体DNA相互連結構造の融解特性および光学特性との関係を評価することもできる。これら2つの物理的パラメータとそれらの材料構築物との関係は、特にバイオ検出分野におけるナノ粒子網目構造材料の利用に必須である。
多層集合体の構築に用いられる直径13nmのオリゴヌクレオチド官能化金ナノ粒子を実施例1および3に記載のように調製した。これらのナノ粒子には、それぞれナノ粒子aおよびbを生成する、5′−ヘキシルチオール−キャップオリゴヌクレオチド1(5′−HS(CH2)6O(PO2 −)O−CGCATTCAGGAT−3′[配列番号50]と、3′−プロパンチオール−キャップオリゴヌクレオチド2(3′−HS(CH2)3O(PO2 −)O−ATGCTCAACTCT−5′[配列番号59]が付着していた(図37参照)。実施例10に記載のように、ガラス製スライドを12merオリゴヌクレオチド2で官能化した。ナノ粒子層を構築するために、先ず、基板を24merリンカー3(5′−TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG−3′[配列番号60])の10nM溶液に浸漬し、室温下に4時間ハイブリダイズさせた(図37参照)。支持体を清浄な緩衝液で洗浄し、次いで、第1ナノ粒子層を付着させるために室温下に4時間、粒子aの2nM溶液とハイブリダイズさせた。同様に基板表面をリンカー3とナノ粒子bの溶液に暴露するだけで第2ナノ粒子層を第1ナノ粒子層に付着させることができた。これらのハイブリダイゼーションステップを繰り返して、各層がリンカー3を介して前の層に連結したナノ粒子aとbの多重交互層を付着させることができた。リンカーの不在下
、または非相補的オリゴヌクレオチドの存在下では、表面へのナノ粒子のハイブリダイゼーションは観察されなかった。さらに、DNAリンカーのハイブリダイゼーションを促進させる条件:中性pH、穏和な塩濃度(>0.05M NaCl)および二本鎖融解温度(Tm)を下回る温度下にのみ多層集合体が観察された。
ハイブリダイズした各ナノ粒子層は、基板をより暗紅色とし、10層がハイブリダイズした後の支持ガラス製スライドには、反射による金色が出現した。表面へのナノ粒子の連続ハイブリダイゼーションのモニターには、基板の透過UV−可視分光法を用いた(図38A)。初期ナノ粒子層の吸光度の低さは、この層がさらなる層の形成を促進するもととなったことを示唆しており、層を追加するに従って、プラズモンバンドの強度がほぼ線形に増大することが示された(各連続ナノ粒子層の形成に関して、リンカー3またはナノ粒子溶液の暴露時間を長くしたり、濃度を増大させたりしても、さらなる吸光度の増大は観察されなかった)。初期ナノ粒子層生成後に吸光度が線形に増大したことは、連続的に層を加えるに従って、表面がハイブリダイズしたナノ粒子で飽和されたことを示している(図38B)。これは、1層の場合には低いナノ粒子被覆を示すが、2層の場合にはほぼ完全な被覆を示す表面上の1つ(図39A)および2つ(図39B)のナノ粒子層の電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)画像によって支持される。多層集合体のプラズモンバンドλmaxは、5層になった後でさえ、10nm以下しかシフトしない。このシフトの検出は、金ナノ粒子凝集体の他の実験的処理(Grabarら,J.Am.Chem.Soc.,第118巻,1148ページ(1996年))および理論的処理(Quintenら,Surf.Sci.,第172巻,557ページ(1996年);Yangら,J.Chem.Phys.,第103巻:869ページ(1995年))と一致する。しかし、シフトの大きさは、λmax>570nmを示す、オリゴヌクレオチドに連結した金ナノ粒子網目構造の懸濁液に関して先に観察されたものと比較すると小さい(先の実施例参照)。これは、金ナノ粒子ベースのオリゴヌクレオチドプローブに関して観察された赤色から青色への劇的な変色を生成するには、恐らく何百または何千ものもっと多くのナノ粒子が連結する必要があることを示唆している。(Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.,第120巻,1959ページ(1998年);Storhoffら,J.Cluster Sci.,第8巻,179ページ(1997年);Elghanianら,Science,第277巻,1078ページ(1997年);Mirkinら,Nature,第382巻,607ページ(1996年))。凝集した金ナノ粒子の表面プラズモンシフトは、粒子間間隔に大きく依存することが明らかにされた(Quintenら,Surf.Sci.,第172巻:557ページ(1986年);Storhoffら,J.Am.Chem.Soc.,前掲)。オリゴヌクレオチドリンカーにより提供される大きな間隔(この系の場合8.2nm)によって、金表面プラズモンバンドに及ぼすナノ粒子凝集の累積的効果が有意に低下する。
集合したナノ粒子多層の解離特性は、層の数に大きく依存していた。多層でコートされた基板を緩衝液に懸濁し、温度を連結オリゴヌクレオチドのTmより高い温度(53℃)に上げると、ナノ粒子は、無色のガラス表面を残して、溶液中に解離した。緩衝懸濁液のpHを上下させたり(>11または<3)、塩濃度を低下させたり(0.01M NaCl未満)しても、連結したDNAをデハイブリダイズすることによりナノ粒子は解離した。多層集合体は完全に可逆性であり、ナノ粒子は、ガラス基板にハイブリダイズしたり、ガラス基板からデハイブリダイズしたりし得る(例えば、3つのサイクルは、検出可能な不可逆性ナノ粒子結合がないことが示された)。
重要なことには、表面結合ナノ粒子集合体はすべて連結オリゴヌクレオチドのTmを超える温度で解離したが、これらの転移の急激さは、支持されている凝集体のサイズに依存していた(図39D−F)。驚くべきことには、支持体からの第1ナノ粒子層の解離は、溶液中にナノ粒子を含まない同じオリゴヌクレオチド(図39C)のものより急激な転移
(図39D、一次導関数のFWHM=5℃)を示した。基板にさらにナノ粒子層がハイブリダイズするにつれ、オリゴヌクレオチド連結ナノ粒子の融解転移は、溶液中に見出された大きなナノ粒子網目構造集合体の融解転移と同等になるまで連続的に急激さを増した(図39E−F、一次導関数のFWHM=3℃)。(Gittinsら,Adv.Mater.,第11巻:737ページ(1999年);Brustら,Langmuir,第14巻:5425ページ(1998年)。)これらの実験は、最適な急激融解曲線を得るためには、3つ以上のナノ粒子と多重DNAの相互連結体が必要であることを立証している。これらの実験はさらに、この系における光学的変化が融解特性から完全に切り離されている(すなわち、凝集が小さいと、急激な転移は生じ得るが、それでも変色は生じない)ことを示している。
実施例21: 金ナノ粒子集合体の電気的性質
DNAを介した電子的移動は、過去数年にわたり化学の分野で最も広範囲に討議されている問題の1つである。(Kelleyら,Science,第283巻:375−381ページ(1999年);Turroら,JBIC、第3巻:201−209ページ(1998年);Lewisら,JBIC,第3巻:215−221ページ(1998年);Ratner,M.,Nature,第397巻,480−481ページ(1999年);Okahataら,J.Am.Chem.Soc.,第120巻,6165−6166ページ(1998年))。DNAは効率的に電子を移動させ得ると主張するものもいるが、DNAは絶縁体であると考えるものもいる。
表面上類似点の無い研究分野において、ナノ粒子をベースとした材料の電気的性質の研究に多大な努力が傾けられてきた(Terrillら,J.Am.Chem.Soc.,第117巻,12537−12548ページ(1995年);Brustら,Adv.Mater.,第7巻,795−797ページ(1995年);Bethellら,J.Electroanal.Chem.,第409巻:137−143ページ(1996年);Musickら,Chem.Mater.,第9巻:1499−1501ページ(1997年);Brustら,Langmuir,第14巻,5425−5429ページ(1998年);Collierら,Science,第277巻:1978−1981ページ(1997年))。確かに、多くのグループがナノ粒子を二次元および三次元網目構造に集合させる方法を探究し、そのような構造の電子特性を調査してきた。しかし、DNAと連結させたナノ粒子ベース材料の電気的性質については実質的に何も分っていない。
この研究において初めて、異なる長さのDNA相互連結体によって形成された金ナノ粒子集合体の電気的性質が調査された。以下に示されているように、これらのハイブリッド無機集合体は、24〜72ヌクレオチド範囲にわたるオリゴヌクレオチド粒子相互連結体長にも拘わらず、半導体として挙動する。本明細書に記載されている結果は、DNA相互共役体が、金属ナノ粒子間の絶縁バリヤを形成不要で、このため粒子の電気的性質を破壊することのない、金属ナノ粒子用の化学的に特異的な足場材料として用い得ることを示している。これらの結果は、そのようなハイブリッド集合体を電子材料として利用し得る新規な方法を示している。
この主題の中心には以下の問題がある:DNAを介して集合したナノ粒子は、それでも電気を伝導し得るか、または各粒子上に重度に添加されたDNA相互共役体は絶縁シェルとして作用し得るか、ということである(Mucic,R.C.,Synthetically Programmable Nanoparticle Assembly Uisng DNA,Thesis Ph.D.,Northwestern University(1999年))。これらの材料の導電率を、温度、オリゴヌクレオチド長および相対湿度の関数として調べた。DNAによって連結されたナノ粒子構造を、電界放出走査型電子顕微鏡検査(FE−SEM)、シンクロトロン小角X線散乱(SAXS、sy
nchrotron small angle x−ray scattering)実験、熱変性プロファイル、およびUV−可視分光法によって特性決定した。
典型的な実験(図40参照)では、クエン酸塩で安定化した13nm金ナノ粒子を、実施例1および3に記載のように、3′および5′アルカンチオールでキャップした12merオリゴヌクレオチド1(3′SH(CH2)2O(PO2 −)O−ATGCTCAACTCT5′[配列番号59])および2(5′SH(CH2)6O(PO2 −)O−CGCATTCAGGAT3′[配列番号50])で修飾した。24、48または72塩基長のDNA鎖3(5′TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG3′[配列番号60])、4(5′TACGAGTTGAGACCGTTAAGACGAGGCAATC−ATGCAATCCTGAATGCG3′[配列番号61])、および5(5′TACGAGTTGAGACCGTTAAGACGAGGCAATCATGCATATATTGGACGCTTTACGGACAACATCCTGAATGCG3′[配列番号62])をリンカーとして用いた。充填剤6(3′GGCAATTCTGCTCCGTTAGTACGT5′[配列番号63])および7(3′GGCAATTCTGCTCCGTTAGTACGTATATAACCTGCGAAATGCCTGTTG5′[配列番号64])を48塩基リンカーおよび72塩基リンカーと共に用いた。DNA修飾ナノ粒子とDNAリンカーおよび充填剤は、使用前に、0.3M NaCl、10mM リン酸(pH7)緩衝液(0.3M PBSと称される)中に貯蔵した。ナノ粒子集合体を構築するために、1で修飾した金ナノ粒子(652μl、9.7nM)と2で修飾した金ナノ粒子(652μl、9.7μM)をリンカーDNA3、4、または5(30μl、10nM)に加えた。完全に沈殿させた後、凝集体を0.3M CH3COONH4溶液で洗浄して過剰なDNAおよびNaClを除去した。
凝集体を凍結乾燥(10−3〜10−2トル)乾固してペレットを得、揮発性塩CH3COONH4を除去した。Frens法(Frens,Nature Phys.Sci.,第241巻:20−22ページ(1973年))により調製した官能化されていないクエン酸塩安定化粒子を膜として乾燥させ、比較用に用いた。得られた乾燥凝集体は曇った黄銅に似た色を有しており、非常に脆かった。FE−SEM画像は、オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子は乾燥しても無傷のままであるが、クエン酸塩安定化ナノ粒子は互いに融合したことを示した。乾燥したDNAを介して連結された凝集体が0.3M PBS緩衝液(1ml)に再分散し得、かつ優れた融解特性を示したことは重要である。そのような分散液を60℃に加熱すると、DNA相互共役体のハイブリダイゼーションが起こり、分散したナノ粒子の赤色溶液が得られた。これをFE−SEMデータと合わせると、DNA修飾金ナノ粒子は、乾燥させると、不可逆的には凝集しないことが最終的に証明された。
コンピュータ制御4プローブ技術を用いて、3種の試料(それぞれ3、4および5を介して連結された乾燥凝集体)の導電率を測定した。電気接点は、金ペーストでペレットに付着させた細い金ワイヤ(直径25および60μm)から構成した。試料を中程度の真空(10−3〜10−2トル)下に冷却し、低圧のドライヘリウムガス下に温度を増大させながら導電率を測定した。起こり得る光電子事象を排除するために、試料チャンバを光から隔離した。励起電流を100nA以下に維持し、試料全体にわたる圧力を最大20Vに制限した。驚くべきことには、3種すべてのリンカーから形成された凝集体の導電率は、室温下に10−5〜10−4S/cmの範囲であり、これらの凝集体は、類似した温度依存性挙動を示した。DNA連結凝集体の導電率は、半導体材料の特徴を示す、約190°Kまでのアレニウス挙動を示した。これは、不連続金属島状膜に認められる活性化電子ホッピング挙動に似ている(Barwinski,Thin Solid Films,第128巻:1−9ページ(1985年))。アルカンジチオールを介して連結された金ナノ粒子の網目構造は類似の温度依存性を示した(Brustら,Adv.Mater.,第7巻:795−797ページ(1995年);Bethellら.J.Electro
anal.Chem.,第409巻:137−143ページ(1996年))。電荷移動の活性化エネルギーは、方程式(1)
σ=σoexp[−Eα/kT]] (1)
を用いる1nσ対1/Tのプロットから得ることができる。3つの測定値から計算した平均活性化エネルギーは、それぞれ24、48および72merリンカーに関して、7.4±0.2meV、7.5±0.3meV、7.6±0.4meVであった。これらの計算には、50°Kから150°Kまでの導電率を用いた。
これらの種類の材料の電気的性質は粒子間間隔に依存する筈なので、シンクロトロンSAXS実験を用いて、分散した乾燥凝集体の粒子間間隔を測定した。SAXS実験は、Advanced Proton Source、Argonne National LaboratoryのDupont−Northwestern−Dow Collaborative Access Team(DND−CAT)Sector5で実施した。DNA連結凝集体およびDNA修飾コロイドの希釈物試料を0.3ミクロンビームの1.54Å放射線で照射し、散乱放射線をCCD検出器で回収した。2Dデータを循環的に平均し、散乱ベクトル量、s=2sin(θ)/λ(ここで、2θは散乱角、λは入射放射線の波長)の関数、I(s)に変換した。すべてのデータをバックグラウンド散乱および試料吸収に対して補正した。3種すべての凝集体構造を乾燥させると、粒子間間隔感受性の第1ピーク位置は、それぞれ、24mer、48merおよび72mer連結凝集体の0.063nm−1、0.048nm−1、および0.037nm−1のs値から0.087nm−1のs値へ大きく変化した。これは、乾燥させると、粒子が殆ど接触するポイントまで粒子間間隔が有意に減少したこと、およびそのような間隔は実質的にはリンカー長とは無関係であるが、溶液中での粒子間隔はリンカー長に大きく依存していたことを示している。これによって、乾燥ペレットの導電率実験における3種の異なる系に関して何故類似の活性化エネルギーが観察されたかが分る。さらに、これによって、何故、DNAの電子特性の見方とは無関係に比較的高い導電率が観察されたかも明らかになる。DNA連結材料とは異なり、乾燥させたクエン酸塩安定化金ナノ粒子膜は、金属様挙動を示した。これは、そのような粒子が互いに融合することを示したSEMデータと一致する。
190°Kを超えると、測定したDNA連結試料の導電率は非常に急な低下挙動を示した。すべての試料について、導電率は約190°Kで急激に低下し始め、およそ250°Kまで低下し続け、そこから再度増大した。この挙動を詳細に調査するために、試料を繰返し冷却、加熱しながら導電率を測定した。興味深いことには、導電率の低下は、温度が増大方向にあるときにのみ起こった。DNAは親水性であり、かつ水は潜在的にハイブリッド構造の電気的性質に影響を与え得るので、金凝集体の導電率に及ぼす相対湿度の影響を調べた。湿度を1%から10%に増大させると、抵抗が10因数増大した。導電率測定前に、試料を真空(10−6トル)下に48時間維持したときには、特有な急低下が非常に弱かったことに留意されたい。これらの観察結果から、190°Kを超えたときの導電率の非常に急な低下およびその後の増大は、粒子間間隔を(蒸発が起こるまで)一時的に増大させた水の融解およびDNAの吸湿性に関連すると推断した。この仮説と一致して、0.3M PBS緩衝液で湿らせた乾燥凝集体に関するSAXS測定値は、粒子間間隔の200%の増大(〜2nm)を示した。
これらの研究は以下の理由から重要である。先ず、これらの研究は、DNAの分子認識特性を用いれば、ナノ粒子ベース材料を、不動態化したり、それらの離散構造または電気的性質を破壊せずに集合させ得ることを証明している。これらのDNA官能化粒子を用いて三次元巨視的集合体または、さらにリトグラフィーパターン化構造(Pinerら,Science,第283巻:661−663(1999年))における電気的移動を研究しようとする場合、それらの電気的移動特性を正確に叙述することが絶対に必要である。第2に、これらの研究は、かなり長いリンカー間隔(8〜24nm)にわたって、乾燥集
合体の導電率がDNAリンカー長には実質的に無関係であることを示している。これは、これらの実験において、水を除去したり、揮発性塩を用いたりした結果であると考えられる。確かに、溶媒および塩の除去によって創出された自由体積によって、DNAが表面に圧縮され、凝集体内の粒子が近接する。第3に、DNA保護ナノ粒子を有する凝集体は半導体として挙動するが、クエン酸塩安定化粒子から形成された膜は、不可逆的粒子融合および金属様挙動を示す。最後に、これらの結果は、オリゴヌクレオチドで官能化されたナノ粒子と標的DNAとの間の配列特異的結合事象が回路の閉鎖および導電率の急激な増大(すなわち、絶縁体から半導体へ)を起こすDNA診断用途におけるこれらの材料の使用を示している(次ぎの実施例参照)。
実施例22: 金電極を用いた核酸の検出
金電極を用いた核酸検出法が図39に略図で示されている。Guoら,Nucleic
Acids Res.,第22巻,5456−5465ページ(1994年)の方法に従って、2つの金電極の間のガラス表面を、標的DNA3(5′TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG[配列番号60])と相補的な12merオリゴヌクレオチド1(3′NH2(CH2)7O(PO2 −)O−ATG−CTC−AAC−TCT[配列番号59])で修飾した。オリゴヌクレオチド2(5′SH(CH2)6O(PO2 −)O−CGC−ATT−CAG−GAT[配列番号50])を作製し、実施例1および18に記載のように13nm金ナノ粒子に付着させて、ナノ粒子aを生成した。標的DNA3とナノ粒子aをデバイスに付加した。ガラス表面の色はピンク色に変わったが、これは、標的DNA−金ナノ粒子集合体がガラス基板上に形成されたことを示している。次いで、デバイスを0.3M NaCl、10mM リン酸緩衝液中に浸漬し、40℃で1時間加熱して、非特異的に結合したDNAを除去し、次いで、実施例19に記載のような銀染色溶液で5分間処理した。電極の抵抗は67kΩであった。
比較のために、電極間に、オリゴヌクレオチド1の代わりにオリゴヌクレオチド4を付着させて対照デバイスを修飾した。オリゴヌクレオチド4は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチド2と同じ配列(5′NH2(CH2)6O(PO2 −)O−CGC−ATT−CAG−GAT[配列番号50])を有しており、ナノ粒子の結合を阻止するように標的DNA3に結合するであろう。その他の点では上記のようにテストを実施した。抵抗は、使用したマルチメーターの検出限度である40MΩより高かった。
この実験は、相補的標的DNA鎖のみがデバイスの2つの電極間にナノ粒子集合体を形成し、回路は、ナノ粒子のハイブリダイゼーションおよびその後の銀染色によって完成し得ることを示している。したがって、相補的DNAおよび非相補的DNAは、導電率を測定することにより識別し得る。この形式は、何千もの異なる核酸を同時にテストし得る何千対もの電極を用いた基板アレイ(チップ)にも適用範囲を広げ得る。
実施例23:環式ジスルフィドリンカーを用いたオリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
この実施例では、調製が簡単で、広く有用で、メルカプトヘキシルリンカーを使用して調製した金−オリゴヌクレオチド共役体よりもDTTに対して大きな安定性を示す金−オリゴヌクレオチド共役体を与える、ステロイドジスルフィド1a(図42)に基づく金表面にオリゴヌクレオチドを結合させる新しい環式ジスルフィドリンカーについて説明する。1,2−ジチアン−4,5−ジオールのエステル誘導体は金表面上で単分子層を形成することが知られているため(Nuzzoら、J.Am.Chem.Soc.105,4481−4483)、環式ジスルフィドを、アンカーユニットの反応部位として選択した。環式ジスルフィドは、両方の硫黄原子を介して立とうに表面に結合し(Ulman,A.、MRS Bulletin、6月46−51)、向上した安定性を示し得るキレート構造を与えるだろう。リンク要素としては、入手が容易で、容易に誘導退化されるケトアル
コールであり、大きな疎水性表面を備えた置換体として、金の表面への水溶性分子の接近を選別するのに役立つよう期待されるため、エピアンドロステロンを選択した(Retsingerら、J.Am.Chem.Soc.115、7535−7536―Bioconjugate Chem.9、826−830)。
先の研究に使用していたオリゴヌクレオチド−金プローブを、水性緩衝液中で末端メルカプトヘキシル基を有するオリゴヌクレオチドを金ナノ粒子と反応させることによって調製した。該プローブは、驚くほど丈夫で、100℃まで加熱した後や5℃で3年間保存した後でさえ良好に機能することが分かった。しかしながら、本願発明者らは、この共役体が、金の表面から誘導体化したオリゴヌクレオチドを取り外すことで作用するチオールを含む溶液に浸漬させた時に、ハイブリダイゼーションプローブとしての活性を失うことを見出した。この特徴は、ナノ粒子プローブが、チオールを含む溶液(例えばポリメラーゼ酵素の安定化剤としてジチオスレイトール(DTT)を含むPCR溶液)中で使用される場合に、問題を提起する。
(a)一般法
NMRスペクトルを、溶媒としてCDCl3、内部(H)標準としてTMS、外部(31P)標準としてH3PO4を使用して、500MHz(1H)および400MHz(31P;161.9MHzの獲得)Varian分光計により記録した。化学シフトはδユニットで表される。MSデータをQuattro II三重四極子質量分析計により得た。自動オリゴヌクレオチド合成を、ミリジーンExpedite DNADNA合成装置で行った。Sの分析は、Oneida研究サービスによって行われた。
(b)ステロイド−ジスルフィドケタール(1a)の調製
合成スキームは図43に示される。エピアンドロステロン(0.5g)、1,2−ジチアン−4,5ジオール(0.28g)およびp−トルエンスルホン酸(15mg)をトルエン(30mL)に溶かした溶液を、脱水条件下で7時間環流した(Dean Stark装置)。その後、トルエンを、減圧下で除去し、残留物を酢酸エチルに溶解した。この溶液を水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、シロップ条の残留物に濃縮した。これをペンタン/エーテル中に一晩静置すると、白色固体(400mg)として化合物laが得られた。Rf値(TLC、シリカプレート、溶離液としてエーテル)は0.5であった。比較として、同じ条件下でのエピアンドロステロンおよびの1,2−ジチアン−4、5−ジオールのRf値は、それぞれ0.4および0.3である。ペンタン/エーテルからの再結晶により、白い粉末(融点110〜112℃)を生じた。1H NMR、δ3.6、(1H,C3OH)3.54−3.39(2H,m ジチアン環の2OCH)、3.2−3.0(4H,m 2CH2S)、2.1−0.7(29H,m ステロイドのH);質量スペクトル(ES+) C23H36O3S2(M+H)に対する計算値425.2179、実測値425.2151 (C23H37O3S2)分析 計算値15.12、実測値15.26。
(c)ステロイド−ジスルフィドケタールホスホロアミダイト誘導体(1b)の調製
化合物1a(100mg)をTHF(3mL)に溶解し、ドライアイスアルコール浴で冷却した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(80μL)およびβ−シアノエチルクロロジイソプロピルホスホルアミダイト(80μL)を連続して加えた。その後、混合物を室温まで温め、2時間撹拌し、酢酸エチル(100mL)と混ぜ、5%NaHCO3水溶液で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、干し上がるまで濃縮した。残留物を最小量のジクロロメタンに溶かし、ヘキサンを加えて−70℃で沈降させ、真空下で乾燥させ、100mgを生成した。;31P NMR 146.02。
(d)5′修飾オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体の調製
最後の亜リン酸化工程で化合物1b(図42)を使用した以外には、従来のホスホロアミダイト化学機構を使用して5′修飾オリゴヌクレオチドIc1および1c2をCPG支持体上に構築した。生成物を、濃縮NH4OHで16時間、55℃で処理することにより支持体から外した。オリゴヌクレオチドを、Hewlett Packard ODS Hypersilカラム(4.6×200nm、5μm粒径)を備えたDionex DX500システムで、TEAA緩衝液(pH7.0)と1%/分勾配の95%CH3CN/5%0.03TEAAを1mL/分の流量で使用して、逆相HPLCにより精製した。疎水性ステロイド基の優れた特徴は、キャップされた誘導体が、キャップが外されたオリゴマーから楽に分離されることである。硫黄で誘導体化したオリゴヌクレオチドIIa、IIc1,およびIIc2(図43)を、市販の「5′−チオール−修飾試薬」(C6Glen Research)と、以前に説明されたような(Storhoff、J.J.ら、J.Am.Chem.Soc.120、1959−1964)硝酸銀によるトリチル保護基の解離とを使用して調製した。ジスルフィドIIc1の調製に関しては、「チオール−修飾C6 S−S」(Glen Research)を最後の亜リン酸化に使用し、末端のジメトキシトリチル基を80%酢酸水溶液中で解離させた。
各修飾オリゴヌクレオチドを、固定されたメルカプトヘキシル基を介したオリゴヌクレオチドの固定に使用された方法(Storhoffら(1998)J.Am.Chem.Soc.120、1959−1964)により、〜13nmの金ナノ粒子に固定化した。これは、クエン酸塩で安定化ナノ粒子(直径〜13nm)を56時間末端硫黄置換基(HS−または非環式または環式ジスルフィド)を有するオリゴヌクレオチドを含む緩衝塩溶液に浸漬してから、0.1MまでのNaCLを添加し、24時間静置することを含んでいた。ナノ粒子を遠心によってペレットにし、上澄溶液を除去した。ナノ粒子を洗浄し、緩衝液に再懸濁し、再び遠心し、0.1M NaCl、10mMリン酸塩に懸濁した。この方法により、装填プロセスに使用される過剰な硫化オリゴヌクレオチドのない、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体が得られた。
(e)ハイブリダイゼーション
ジスルフィド−ステロイドアンカーを含むナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブの一体性を評価するために、金ナノ粒子上の修飾オリゴヌクレオチドの固定により、プローブIc1、Ic2、IIc1、IIc2、およびIIIc1を作製した。与えたシリーズ中のオリゴマーは同じヌクレオチド配列を有するが、5′先端基Yの構造が異なっている。Ic1とIc2はステロイド−ジスルフィド先端基を有し;IIc1、IIc2はメルカプトヘキシル先端基を有し、IIIc1は非環式ジスルフィド先端基を有する。(dA)20鎖はハイブリダイゼーションを促進するための、金とオリゴヌクレオチド認識部分との間のスペーサーとして機能する。硫黄で誘導体化されたオリゴマーの多くは各ナノ粒子に結合する。標的オリゴヌクレオチドとのナノ粒子プローブ対のハイブリダイゼーションは3次元のネットワークの生成と、および赤から青灰色への色の変化につながる(Mucic,R.C.ら、J.Am.Chem.Soc.120、12674−12675)。
プローブのハイブリダイゼーションを、プローブに相補的な配列を含む79merオリゴヌクレオチド標的を用いて調べた。(図43)。その反応は、0.5MのNaCl、10mMリン酸塩(pH7.0)で、プローブ対Ic1、Ic2、およびIIc1、IIc2、およびIIIc1、IIIc2のコロイド溶液(各ナノ粒子プローブに関して50μLおよび1.0A520ユニット)に1μLの標的溶液(10pmolのIV)を加えることにより、室温で行った。10秒、5分、および10分目に、アリコート(3μL)を取り、C−18逆相TLCプレート上にスポットした。様々なプローブ対はすべて同じに作用した。すなわち、10秒間の反応のスポットは赤くなり(ナノ粒子が自由であること示す);10分間の反応のスポットは紺青灰色となり(ナノ粒子の凝集物の特徴);5分間の反応は、赤茶けた青色のスポットを与えた(非結合ナノ粒子と結合ナノ粒子の混合物
を示す)。オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって達成されるナノ粒子の凝集に関する以前の観察と一致して(Storhoff,J.J.ら、J.Am.Chem.Soc.120、1959−1964;Elghanian、Science、277、1078−1081;Mucic R.C.ら、J.Am.Chem.Soc.120、12674−12675;Mitchell,G.P.、J.Am.Chem.Soc.121、8122−8123)、反応は可逆的だった。凝集物を90℃(ナノ粒子を一緒にリンクするオリゴマーの解離温度を超える温度)に温め、熱いうちにスポットすると、赤いスポットが得られた。オリゴヌクレオチド標的を省略したかオリゴヌクレオチド標的がプローブに相補的でない対照実験では、すべての条件下で色が赤かった。
本願発明者が結論づけるのは、ステロイド−ジスルフィドアンカーによって生成されたナノ粒子共役体が、ハイブリダイゼーションプローブとして有効に機能することである。さらに、スポット試験によって判断されるように、様々なアンカーユニットを備えた共役体が、かなりの割合で標的オリゴヌクレオチドと反応する。この特徴は、プローブが、ナノ粒子の表面にかなりの密度のオリゴヌクレオチドを有し、5′先端基から比較的遠くに離れているヌクレオチド認識部分を有するという予想と一致している。
(f)ナノ粒子プローブとジチオスレイトールの反応
金ナノ粒子かメルカプトヘキシル−オリゴヌクレオチドを装填した金ナノ粒子のコロイド溶液へのチオールの追加は、ナノ粒子の凝集につながる。色は赤から紺青まで変化し、静置すると、暗色沈澱物が沈着する。蛍光標識したオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子の実験で実証されるように、チオールは、金表面に結び付けられたメルカプトアルキル−オリゴヌクレオチドを置換する(Mucic、R.C.(1999) Synthetic Programmable Nanoparticle Assembly Using DNA PhD論文、ノースウェスタン大学)。オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体のハイブリダイゼーションによって起こった凝集とは対照的に、そのような反応は不可逆であり、加熱しても、NaOHを加えても、凝集物を分解することはできない。
本願発明者らは、この色を、ステロイド環式ジスルフィド先端基、メルカプトヘキシル先端基、および非環式ジスルフィド先端基を用いて作製したプローブとDTTとの反応をモニタするために使用した。実験は、1μLの1M DTT溶液を、0.5M NaClおよび10mMリン酸塩(pH7.0)の100μLのナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブ溶液(ナノ粒子の2A520ユニット)に加え、次に、様々な時間に3μLのアリコートをTLCプレート上にスポットし、色を観察するにより行った。表1に示されるように、メルカプトヘキシル(IIc1とIIc2)と非環式オリゴヌクレオチド先端基(IIIc1)を備えたオリゴヌクレオチドに由来するコロイドプローブは、急速に反応した。赤青色のスポットが20秒で得られ、強い青色のスポットが5分以内に得られた。100分までに、ほとんどの金は沈殿した。対照的に、ステロイド環式ジスルフィド先端基(Ic1、Ic2)を用いて作製したプローブの反応では、40分以内に、色の変化が観察されなかった。IIc1、IIc2を用いて作製したプローブで得られたのと同じ色に達するには100分かかった。IIIc1では20秒かかった。これに基づいて、本願発明者らは、ステロイドジスルフィドプローブのDTTとの反応速度は、他のプローブの反応速度の約300分の1であると推測する、非環式ジスルフィドアンカー3cから作製したプローブは、メルカプトヘキシルアンカーから作製したプローブとほぼ同じ速度で反応する。この後者の結果は、非環式ジスルフィドの金との反応がS−S結合の開裂に関与しているという証拠を考慮すれば、驚くことではない(Zhong、C.J.Langmuir、15、518−525)。従って、非環式先端基を備えたオリゴヌクレオチドは、メルカプトヘキシル−オリゴヌクレオチド誘導体の場合のように、1つの硫黄原子によって恐らく金にリンクされるだろう。
DTTの存在下で静置した後に、IclおよびIc2から作製したプローブが実際にハイブリダイゼーションプローブとして依然として機能するかどうか確かめるために、本願発明者らは、表1の反応に使用した条件下でプローブ混合物の2つのサンプルをDTTで処理した。30分後に、1μLの79mer標的オリゴヌクレオチド溶液(10pmol)を加えた。サンプルを急速凍結し、解凍し、スポット試験によって測定した。標的を含むサンプルのスポットは青く、標的を欠く対照のスポットは赤かった。これは、ナノ粒子共役体が安定しているだけでなく、メルカプトヘキシルか線形ジスルフィドアンカー基に由来するプローブの凝集を生じさせる条件下でDTTに暴露した後でプローブとして有効であることを実証した。
(g)
結論
この環式ジスルフィドリンカーを用いて作られた金ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体は、特定のオリゴヌクレオチド配列を検出するのに有効なプローブとして機能し、従来のメルカプトヘキシル基または非環式ジスルフィドユニットを用いて作製された対応する共役体よりも、ジチオスレイトールへのはるかに大きな安定性を示す。チオール不活性化に対する高い安定性は、少なくとも一部では、2つの硫黄原子によって各オリゴヌクレオチドを金に固定することに因ると考えられる。
実施例24:単純な環式ジスルフィドリンカーを使用したオリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
この実施例では、本願発明者らは非ステロイド環式ジスルフィドリンカーと、このリンカーからオリゴヌクレオチド−ナノ粒子プローブとを調製し、ステロイド環式ジスルフィドとアルキルチオールリンカーにより調製されたプローブに対する、チオール含有溶液の存在下でのプローブ安定性を評価した。アルキルチオールアンカー基I(図44)[C.A.Mirkinら、Nature、382、607(1996);Storhoffら、J.Am.Chem.Soc.120、1959年(1998)]またはステロイド環式ジスルフィドアンカー基II(図44)[R.L.Letsingerら、Bioconjugate Chemistry、11、289(2000)]を使用して金ナノ粒子にオリゴヌクレオチドを結合することにより、DNAまたはRNAの配列を検出するためのプローブの調製方法が記載されている。プローブとしてステロイド環式ジスルフィドリンカーを使用して調製した共役体は、メルカプトエタノールやジチオスレイトール(DTT)のようなチオール化合物の存在下ではるかにより安定している点でアルキルチオールアンカーを使用して調製した共役体よりも遊離であることがわかった。検出するDNAサンプルを増幅するのに使用されるPCR溶液は、酵素を保護するために少量のDTTを含んでいるため、この特徴は重要である。PCR産物の単純かつ迅速な検出の場合、最初に増幅されたDNAを分離せずにPCR溶液中で直接試験を行えるように、DTTへの高い安定性を有するプローブを使用することが望ましい。
2つの特徴がステロイド環式アンカー(化合物1、図42)を際だたせている。すなわち、(1)環式ジスルフィド(金表面で所与オリゴヌクレオチドを保持するのに共同的に作用する2つの結合部位を原則的に与えることができる)と、(2)疎水的相互作用により金上の隣接鎖を安定させることが可能なステロイドユニット(例えばR.L.Letsingerら、J.Am.Chem.Soc.115,7535(1993)参照)である。それらの寄与の重要性を評価するために、本願発明者らは、ステロイド基を欠く環式ジスルフィド化合物IIIc(図44)によって固定された金共役体を調製し、調べた。
トランス−1,2−ジチアン−4,5−ジチオールを、トルエン中でアセトールと加熱することにより調製した化合物2aを、シアノエチルN,N−ジ−i−プロピルホスホロアミダイト試薬2bに変換した。該試薬2bは、修飾オリゴヌクレオチド2c1および2c2の合成の最終結合ステップに使用した。1つの金共役体プローブを、2c1および等モル量の2dで金コロイド溶液を処理することにより調製した。2dは金表面上の希釈剤として機能する。コンパニオンプローブを、2c2および2dから同様に作製した。これらのナノ粒子共役体は、静置と、凍結・融解との両方に関して、塩化ナトリウム溶液の0.1、0.3、0.5、0.7Mの範囲で安定していた。
(a)化合物2a、2b、2c1、2c2の調製
実施例23に記述したように化合物2aを調製した。2aの亜リン酸化とオリゴヌクレオチド2c1および2c2の合成を、実施例23や他の箇所でステロイド環式ジスルフィド誘導体に関して先に述べたように行った[R.L.Letsingerら、Bioconjugate Chemistry、11、289(2000)、この文献の開示は引用によりその全体が組み込まれる]。CPG支持体上のオリゴマーにIIIbを縮合することに関与するステップの反応時間は、10分であった。
(b)金−オリゴヌクレオチド共役体の調製
1.7μモル/mLの各オリゴヌクレオチドを含む溶液を提供するために、等モル量のオリゴヌクレオチド2c1および2dまたは2c2および2dを13nmの金コロイド(〜10nM)に加えた。該溶液を暗所で24時間保存し、その後、塩類を加えて、該溶液を0.3M NaCl、10mM リン酸塩(pH7.0)、0.01%アジ化ナトリウムとなるようにした。24時間後に、NaCl濃度を0.8Mに増大し、溶液をさらに24時間静置した。その後、凝集物を除去するためにコロイドをろ過し、溶液を遠心してナノ粒子を集める。ペレットを、ナノピュア水で洗浄し、再び遠心し、0.1M NaCl、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)、0.01%アジ化ナトリウムに再分散した。
(c)ナノ粒子プローブとジチオスレイトールの反応
置換の研究は、20μLの2c1と2c2から得たコロイド共役体の等量混合物に、2μLの0.1M DTTを加えることにより、室温(22℃)で行った。アリコート(3μL)を定期的に取り、白いナイロン膜上にスポットした。最初、スポットは赤かった。DTTによる金からのオリゴヌクレオチド硫黄誘導体の置換により、スポット試験で青灰色のスポットを与える混合物が生じた。DTTによる置換の時間を、混合物がスポット試験で強い青灰色を与える時間として採用した。2c1および2c2に由来する共役体の混合物の場合、この時は10時間だった。
比較のために、オリゴヌクレオチド共役体を、同様にメルカプトヘキシルアンカー(化合物2、図42)およびステロイド環式ジスルフィドアンカー(化合物1、図42)を使用して、オリゴヌクレオチド配列c1およびc2(図44)から調製した。青灰色のスポットを与える時間によって測定される、単チオール誘導体(2および図42)およびステロイド環式ジスルフィドから調製した共役体の反応時間は、それぞれ5分と53時間であった。これらの値は、メルカプトアルキル誘導体、非ステロイド環式ジスルフィドおよび
ステロイド環式ジスルフィドに由来するナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体に対する相対安定性の1、〜60、〜300に対応する。結果は、環式ジスルフィドアンカーユニット自体が、これらの系でメルカプトアルキル基に対して高い安定性を与えるのに十分であることを示す。化合物1に由来するナノ粒子共役体中の大きな疎水基も、オリゴヌクレオチドのチオール置換に対して安定性を増強するのに役割を果たしているように思われる。
実施例25:オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
この実施例では、本願発明者らは、チオール含有溶液の存在下での、アルキルチオールおよびステロイド環式ジスルフィドリンカーと比較した、新しい非環式ジスルフィドリンカーであるトリチオールの安定性を評価した。比較のために、メルカプトヘキシルアンカー(化合物5、図45)およびステロイド環式ジスルフィドアンカー(化合物6、図45)を備えたオリゴヌクレオチドを調製した。
(a)5′−トリメルカプトアルキルオリゴヌクレオチドの合成および特徴付け
図47に示したように、5′−トリメルカプトアルキルチオールオリゴヌクレオチドを合成した。Tremblerホスホロアミダイト7(Glen Research社、バージニア州スターリング)(図45)およびチオール修飾剤C6 S−Sホスホロアミダイトを、CPG支持体に結合された保護オリゴマーの5′端に逐次結合した。生成物をCPGから解離し、上述のように精製した。3つのDMT基を備えたトリチオールオリゴヌクレオチドに対する保持時間は、約64分である。続いて、5′−DMT基を、80%酢酸に30分間オリゴヌクレオチドを溶解し、その後蒸発により取り外した。オリゴヌクレオチドを500μLのナノピュア水に再溶解した、溶液を酢酸エチル(3×300μL)で抽出した。溶媒の蒸発後、オリゴヌクレオチドを白色固体として得られた。DMT基がないこの5′−トリ−ジスルフィドオリゴヌクレオチドの保持時間は、逆相カラムで約35分であり、イオン交換カラムでは24分であった。これらのピークはいずれもスペクトル面積の97%以上であり、オリゴヌクレオチドが高純度であることを示している。オリゴヌクレオチド8(図45)の式量を、エレクトロスプレーMS(計算値12242.85、実測値12244.1)により得た。DNA鎖上の3つのジスルフィド基を5′モノチオールDNAに対して上述したようにトリチオール基に還元し、その後、NAP−5カラムでオリゴヌクレオチドを精製した。
(b)5′−チオールまたはジスルフィドDNA修飾金ナノ粒子の調製
ベクター研究所(カリフォルニア州Burlingame)より購入した金のナノ粒子を使用した。10mLの30nm金コロイドに、5ODのチオール修飾DNAを添加した。溶液を、徐々に0.3M NaCl/10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)(PBS)にした。その後、ナノ粒子を遠心によって沈降させた。無色の上清を除去した後、赤色の油状沈殿物を10mLの新しいPBS緩衝液に再分散した。このプロセスを繰り返すことにより、コロイドを10mLの新しいPBS緩衝液を用いて2回洗浄した。
(c)チオール−DNA修飾金ナノ粒子の安定性試験
固体のDTTを、DTT濃度が0.017Mとなるまで、様々な種類のチオールまたはジスルフィドDNAで修飾した30nm金ナノ粒子コロイドの600μL溶液に加えた。DTTがオリゴヌクレオチドを置換するにつれて、コロイドの色は赤から青に代わる。UV/VISスペクトルを時間の関数として取った。分散した30nm金粒子に関連する〜528nmの吸光度は減少し始め、700nmの広幅のバンドが伸び始めた。700nmのバンドはコロイドの凝集に関連している。図48に示されるように、1つのチオールオリゴヌクレオチド(1)で修飾した30nm金の粒子は、0.017M DTTで迅速に凝集物を形成し、1.5時間後にはコロイドが完全に青くなる。ジスルフィドオリゴヌクレオチド(4)で修飾したナノ粒子を含む溶液は、同一条件下では20時間後に青くなる。トリチオール−オリゴヌクレオチド(開裂した6)で修飾したナノ粒子では、溶液が青
くなるのに40時間かかった。
実施例26:ナノ粒子−核酸−sfpメンバー共役体を用いた検体の検出
この実施例では、ナノ粒子−ストレプトアビジンプローブを用いて検体(ビオチン)の検出を実証する(図54,56)。
(a)ナノ粒子−核酸−タンパク質共役体の調製
ナノ粒子−核酸共役体を、実施例3に記載したように調製する。これらの共役体を調製するために用いたオリゴヌクレオチド修飾因子は、以下の配列を有する:5’SH(CH2 )6 −A10−CGCATTCAGGAT3’(2)。図56に示すように、ビオチン標識オリゴヌクレオチド(1)[3’−ビオチン−TEG−A10−ATGCTCAACTCT5’]を、ビオチン TEG CPG支持体(グレン・リサーチ社(Glen Research),Sterling,Virginia;カタログ番号20−2955−01)を用いて文献の手順により調製する。ストレプトアビジン/DNA共役体を作製するために、ストレプトアビジンを20mM Tris(pH7.2)、0.2mM EDTA緩衝液中の1当量のビオチン修飾オリゴヌクレオチドと、攪拌器にて室温で2時間反応させた。異なる数のオリゴヌクレオチドと複合化したストレプトアビジンを、20mM Tris(pH7.2)及び0.5%/分 勾配の20mM Tris、1M NaClによる流速1mL/分のイオン交換HPLCで分離しながら、DNAのUVシグナルを260nM及び280nMでモニタリングした。ストレプトアビジン/ビオチン修飾オリゴヌクレオチド混合物は、45分、56分、67分、及び71分に、それぞれ1:1、2:1、3:1、及び4:1オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジン複合体に対応する4つのピークを示した。ストレプトアビジン/オリゴヌクレオチドの1:1複合体(10μM、5μL)を単離して、0.3M PBS(0.3M NaCl、10mM リン酸緩衝液、pH7)中のリンカーDNA[5’TACGAGTTGAGAATCCTGATTGCG3’](3)(10μM、5μL)と予備混合し、その後その混合物を0.3M PBS中のナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体(10nM、130μL)に添加して、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジン共役体を調製した。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド共役体、ストレプトアビジン/オリゴヌクレオチド、及びリンカーDNAを含有する溶液を、ドライアイス中で10分間凍結させ、解凍してDNAハイブリダイゼーションを促進させた。12時間後に、その溶液を1000rpmで20分間遠心分離して、上清を除去した。ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジン共役体の赤色油状沈殿物を、0.3M PBS緩衝液に再分散させた。
その後、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジン共役体を使用して、ターゲット検体、つまりガラス表面に固定化したビオチンの存在を検出した。
(b)ビオチンの検出
ビオチンは、以下の手順に従ってガラススライドに固定化した:オリゴヌクレオチド修飾ガラススライドを、過去に報告された方法(Science,2000年,第289巻,1757−1760ページ)により調製し、その後ビオチン修飾オリゴヌクレオチドを表面DNAにハイブリダイズさせた。(ビオチン修飾ガラススライドは、様々な方法により調製することができる。1つの例は、アミン修飾ガラススライドを調製し、その後表面のアミンを、アミンと反応する様々な市販のビオチン化試薬と反応させることである。)図54に示すように、固定化ビオチンガラススライドは、その後ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジンを含有する媒体(0.3M PBS中に2nM)で処理した。洗浄し銀強化溶液で処理した後、灰色又は光沢のある銀色のスポットの発現により、捕獲したプローブの存在が実証された[銀強化溶液A(カタログ番号S5020,シグマ社(Sigma Company),米国ミズーリ州セントルイス)、及び銀強化溶液B(カタログ番号S5145,シグマ社(Sigma Company))、Science,2000年,第289巻、1757ページも参照]。所望なら、オリゴヌクレオチドに
連結する蛍光標識した特異的結合対メンバーを用いて、ナノ粒子−オリゴヌクレオチド−spfプローブを調製してもよい。その後、この発蛍光団標識プローブを用いて、検体の存在を検出してもよい。
実施例27:金コロイドストレプトアビジン共役体の特異的結合の比較
この実施例において、実施例26に従って調製したナノ粒子ストレプトアビジンプローブ、及び市販のAuコロイド(20nm)/ストレプトアビジン共役体(フルネーム:金標識ストレプトアビジン標識)(シグマ社(Sigma Company),米国ミズーリ州セントルイスから購入,カタログ番号S6514)の非特異的結合を評価した。共役体を含有する市販の溶液及び本発明のプローブ(0.3M PBS中に2nM)を含有する溶液各5μlを、ガラススライド上にスポットした。20時間後に、スライドを水で洗浄して、銀強化溶液[実施例26参照]で処理した。市販の共役体は、発色の5分後に灰色のスポットを示しており、ガラス表面にAuコロイドが存在することが示されたが、実施例3のナノ粒子ストレプトアビジンプローブでは、認識できる銀色染色は示されなかった(図53)。シグナルの差は、銀色染色したスライドに第2のDNA修飾ナノ粒子を載せてそれを再染色することにより高めることができた。これにより、本発明のナノ粒子−オリゴヌクレオチド−sbp共役体が、市販のAuコロイド/ストレプトアビジン共役体よりも非特異的結合に対して抵抗性があることが実証される。
実施例28:ナノ粒子アセンブリの調製
本明細書に論じたように、特異的結合対メンバー、例えば受容体又はリガンドは、オリゴヌクレオチドにより機能化され、オリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子に固定化されて、DNAよりむしろ特異的結合対メンバーが指向する分子認識特性を備える以外に、オリゴヌクレオチド修飾粒子の高度安定性を呈する新しい分類のハイブリッド粒子を生成することができる。或いは、受容体修飾オリゴヌクレオチドを備えた多重受容体結合部位を有するタンパク質を機能化し、それにより我々の本来の材料の組立スキームにおいて、タンパク質受容体複合体を無機ナノ粒子の1つの代わりに部分構造の1つとして用いることができる。この実施例において、我々は、13nm金ナノ粒子、ストレプトアビジン、及びビオチン化DNAを用いて、新しいナノ粒子アセンブリ(図52)を調製して、得られた新しい生物無機材料の物理的及び化学的特性の幾つかを研究する。
(a)実験
オリゴヌクレオチド修飾13nm Au粒子(2−Au)及びリンカーDNA(3)を調製するための方法は、他の文献で報告されている。これらの共役体を調製するために用いるオリゴヌクレオチド修飾因子は、以下の配列を有する:5’SH(CH2 )6 −A10−CGCATTCAGGAT3’。リンカーDNA(3)は、以下の配列を有する:[5’TACGAGTTGAGAATCCTGATTGCG3’]。J.J.Storhoff,R.Elghanian,R.C.Mucic,C.A.Mirkin,R.L.Letsinger,J.Am.Chem.Soc.1998年,第120巻,1959ページを参照されたい。Au粒子(2−Au)及びリンカーDNA(3)は、使用の前に0.3M NaCl、10mMリン酸緩衝液(pH7、0.3M PBS)に保存した。ビオチン修飾DNA(2)は、ビオチン TEG CPG支持体(グレン・リサーチ社(Glen Research))を用いて合成し、文献の方法により精製した。J.J.Storhoff,R.Elghanian,R.C.Mucic,C.A.Mirkin,R.L.Letsinger,J.Am.Chem.Soc.1998年,第120巻,1959ページ;T.Brown,D.J.S.Brown,in Oligonuclieotides and Analogues(F.Eckstein編集),Oxford University Press,New York,1991年を参照されたい。ストレプトアビジンは、シグマ社(Sigma)から購入し、20mM Tris緩衝液(30M、pH7.2)に溶解した。ストレプトアビジン/DNA共役体(1−
STV)を作製するために、ストレプトアビジンを20mM Tris(pH7.2)、0.2mM EDTA緩衝液中の8当量のビオチン−オリゴヌクレオチド共役体1と攪拌器にて室温で2時間反応させた。ビオチン−オリゴヌクレオチド共役体は、配列[3−ビオチン−TEG−A10−ATGCTCAACTCT5’]を有している。DNAに対するストレプトアビジンの割合が異なる混合物(1:0.4、1:1、1:4)も、HPLC分析のために調製した。ストレプトアビジン/DNA共役体は、20mM Tris(pH7.2)及び0.5%/分 勾配の20mM Tris、1M NaClによる流速1mL/分のイオン交換HPLCで過剰のDNAから分離しながら、260nm及び280nmでDNAのUVシグナルをモニタリングした。1:0.4ストレプトアビジン/DNA混合物は、45分,56分に2つのピークを、1:1混合物は45分、56分、67分、及び71分に、それぞれ1:1、2:1、3:1、及び4:1オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジン複合体に対応する4つのピークを示した。1:4混合物は、3番目のピーク(67分)及び4番目のピーク(71分)の強度が増大することを除けば、同様の位置に4つのピークを示した。1:8ストレプトアビジン/DNA混合物のHPLCスペクトルは、2つの主なピーク、つまり1つは59分の未反応のDNAのもの、もう一方は71分の4:1オリゴヌクレオチド−ストレプトアビジン複合体のものを示した。加えて、3:1複合体にあたる67分のショルダーも存在した。精製したストレプトアビジン−ビオチン化DNA共役体は、濃縮して、限外濾過(セントリコン30)により0.3M PBSに分散させた。TEM、熱変性実験、及びSAXS測定用の凝集体は、ストレプトアビジン−オリゴヌクレオチド共役体(1−STV)、金ナノ粒子DNA共役体(2−Au)、及びリンカーDNA(3)を含有する溶液をドライアイス中で10分間凍結することにより調製し、測定する前に解凍して、ハイブリダイゼーションを促進させた。
(b)結果
本明細書に報告したナノ粒子/タンパク質アセンブリ(図52)は、3つの部分構造:4つのビオチン化オリゴヌクレオチドに複合化したストレプトアビジン(1−STV)と、オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子(2−Au)と、1に相補的な配列の半分及び2に相補的なもう半分を有するリンカーオリゴヌクレオチド(3)とに依存する(図52参照)。典型的な実験において、リンカーDNA3(10μM、21μL)を、2−Au(9.7nM、260μL)と1−STV(1.8μM、27μL)の混合物に導入するか、或いはリンカーDNA3(10μM、21μL)を、1−STV(1.8μM、27μL)と予備混合し、その後混合物を0.3M PBS中の2−Au(9.7nM、260μL)に添加した。同等の特性を備えた凝集体が、両方の方法から形成し得るが、3及び1−STVの予備混合は、凝集体の形成を促進する。13nm金ナノ粒子は、ストレプトアビジン(4nmx4nmx5nm)よりも実質的に大きいため[P.C.Weber,D.H.Ohlendorf,J.J.Wendoloski,F.R.Salemme,Science,1989年,第243巻,85ページ;N.M.Green,Methods Enzymol.1990年,第184巻,51ページ]、ストレプトアビジンに対するAuナノ粒子のモル比1:20を利用して、数個のナノ粒子を含む小さな凝集体より、又はストレプトアビジンのハイブリダイズされた層に機能化された単一の金ナノ粒子からなる構造よりどちらかといえば伸長した高分子構造の形成を好適化した。
興味深いことに、室温では、1−STV、2−Au、及び3を混合した場合、1−STV、2−Au、及び3を含有する溶液のUV−visスペクトルが安定していることが示すように、3日後でも観察可能な粒子の凝集は起こらない。しかし、溶液の温度(53℃)をDNA相互連結の融点(Tm)未満で2、3℃上昇させると、ミリサイズの凝集体の成長(図57A)と、粒子アセンブリに関連するAuプラズモン共鳴の特徴的な赤色のシフト及び低下とがもたらされた。C.A.Mirkin,R.L.Letsinger,R.C.Mucic,J.J.Storhoff,Nature 1996年,第382巻,607ページを参照されたい。透過電子顕微鏡(TEM)像(図57B)は、凝集体
内の粒子がアニーリングの前後にその物理的形状を保持していることを示していることから、粒子の融合がないことが示され、更に表面オリゴヌクレオチド層の安定した影響が実証される。粒子アセンブリを開始するための熱活性化の要件は、過去に研究されたシステム(図52b)とは相反しており、過去のシステムは、非常に類似した条件下でオリゴヌクレオチド修飾金粒子が室温でリンカーDNAを加えると数分以内に凝集体内に組込まれる2つの金ナノ粒子共役体を含んでいる。C.A.Mirkin,R.L.Letsinger,R.C.Mucic,J.J.Storhoff,Nature 1996年,第382巻,607ページを参照されたい。この特徴は、:(1)Auナノ粒子上のDNA被覆(DNA:粒子=〜110:1)に比べストレプトアビジン上のもの(DNA:ストレプトアビジン=4:1)が比較的少ないことによる、Au−STVアセンブリシステム内の低い衝突確率[L.M.Demer,C.A.Mirkin,R.C.Mucic,R.A.Reynolds,R.L.Letsinger,R.Elghanian,G.Viswanadham,Anal.Chem.2000年,第72巻,5535ページを参照]、又は(2)単一ストレプトアビジン上のDNAのほとんど又は全てが単一粒子上のDNAに結合する動力学的構造の初期形成、を原因とする可能性がある。凝集体形成は、溶液の凍結だけでなく加熱により促進することができる。R.Elghanian,J.J.Storhoff,R.C.Mucic,R.L.Letsinger,C.A.Mirkin,Science 1997年,第277巻,1078ページを参照されたい。
UV−vis分光学に基づいた融解実験を、ストレプトアビジン/ナノ粒子凝集体で実施し、それらがDNAハイブリダイゼーションにより形成されることが確認された(図58A)。加熱すると、520nmでの吸光度が最初に低下し、その結果融解曲線が一時的に下降し、その後DNA融解が起こり粒子が分散すると、その吸光度が急激に上昇する。この一時的下降という挙動は、純粋な金ナノ粒子システムで観察され、融解の前の凝集体成長、つまりある種の凝集体の「熟成」に起因させた。J.J.Storhoff,A.A.Lazarides,C.A.Mirkin,R.L.Letsinger,R.C.Mucic,G.C.Schatz,J.Am.Chem.Soc.2000年,第122巻,4640ページを参照されたい。融解の後、Auプラズモン共鳴が520nmに集中し、それは分散した13nmナノ粒子の特徴である。これらの実験により、結果的に、非特異的相互作用よりむしろ配列特異性ハイブリダイゼーションが、粒子/タンパク質アセンブリを実行すること、及びその工程が完全に可逆的であることが実証される。
Auナノ粒子/タンパク質アセンブリは、ハイブリダイゼーション誘導性アセンブリとは逆に、ストレプトアビジン/ビオチン相互作用によっても形成することができる。例えば、典型的な実験において、1(0.24mM、1.3μL)、3(10μM、32μL)、及び2−修飾ナノ粒子(Auナノ粒子濃度:9.7nM、260μL)を、0.3M
PBS緩衝液中で混合して、ビオチン修飾Au粒子を生成した。この混合物を60℃に10分間加熱し、その後室温に冷却して、ハイブリダイゼーションを促進させた。24時間後に、1、3、及び2−修飾Auナノ粒子を含有する溶液を、0.3M PBS中のストレプトアビジン(10μM、4.2μL)に添加し、50℃に加熱して、ナノ粒子凝集体を形成した。溶液の色は、凝集体の形成を示す紫色に変化し、溶液温度をTm(65℃)を超えて上昇させることにより、凝集体を2−修飾Au粒子、1−修飾ストレプトアビジン、及び3に解体することができた。小角X線散乱(SAXS)[S.J.Park,A.A.Lazarides,C.A.Mirkin,P.W.Brazis,C.R.Kannewurf,R.L.Letsinger,Angew.Chem.Int.Ed.2000年,第39巻,3845ページ;A.Guinier、F.G.,Small Angle Scattering of X−rays,Wiley,New York,1995年;B.A.Korgel,D.Fitzmaurice,Phys.Rev.B 1999年,第59巻,14191ページ]のデータを、Au及びストレプ
トアビジン部分構造(1−STV、2−Au)と2つの異なる長さのDNAリンカー(24量体(3)及び48量体)とから形成した凝集体について回収し、Au−Auアセンブリ及び同様の連結オリゴヌクレオチド(2−Au、4−Au、24量体リンカー(3)、48量体リンカー)を基にした凝集体のものと比較した(図59)。48量体リンカーは、:1及び2に相補的な12量体の付着末端を含有する5’TACGAGTTGAGACCGTTAAGACGAGGCAATCATGCAATCCTGAATGCG及び3’GGCAATTCTGCTCCGTTAGTACGTからなる2本鎖であった(2本鎖領域は下線で示す)。SAXS実験を設計するために、上記実験で用いられ、DNAハイブリダイゼーションでより高い接近容易性を提供した1,2,及び4のA10スペーサ[L.M.Demer,C.A.Mirkin,R.C.Mucic,R.A.Reynolds,R.L.Letsinger,R.Elghanian,G.Viswanadham,Anal.Chem.2000年,第72巻,5535ページを参照]を除去して、より強固なシステムを生成した。DNAにより連結された凝集体は、比較的明確な回折ピークを示し、Au−STV凝集体は、同じリンカーから形成されたAu−Au凝集体よりも小さなs値で回折ピークを呈した。これは、Au−STVシステムでのAu粒子間距離がより大きいことを示唆している。その上、Au−Au及びAu−STVアセンブリの両者でリンカーとして24量体 DNAの代わりに48量体 DNAを用いた場合、回折ピークはより小さなs値にシフトする(図59)。
対距離分布関数(pair distance distribution function )(PDDF)であるg(r)を、方程式(1)(式中、q=(4π/λ)sin(θ/2)で、ρは粒子数密度である)を用いて、SAXSパターンから計算した[A.Guinier,F.G.,Small Angle Scattering of X−rays,Wiley,New York,1955年;B.A.Korgel,D.Fitzmaurice,Phys.Rev.B 1999年,第59巻,14191ページ]。
g(r)=1+(1/2B2 Δr)Iq(s(q)−1)sin(qr)dq 方程式(1)
ここで、g(r)は、第2の粒子を選択された粒子からの距離rの関数として見出す確率を示している。PDDFから得られた最も近い近接Au粒子間距離(中心から中心までの距離)は、24量体連結Au−Au、48量体連結Au−Au、24量体連結Au−STV、及び48量体連結Au−STVアセンブリで、それぞれ19.3nm、25.4nm、28.7nm、及び40.0nmである。Au−STVシステムとAu−Auシステムの粒子間距離を比較すると、Au−STVアセンブリが予測されたAuナノ粒子/ストレプトアビジン周期性を有し、2つの成分(Auナノ粒子及びストレプトアビジン)が、強固なDNA2本鎖リンカーにより十分に分離されることが明瞭に示される。
(c)結論
この研究は、以下の理由により重要である。1)DNA依存性ナノ粒子アセンブリ(組立)法(DNA-directed nanoparticle assembly method )が、これまで研究された無機ナノ粒子に加えて、タンパク質の構造にまで拡張できることが実証される。実際にこれは、Auナノ粒子の可逆的なDNA依存性アセンブリと、DNAにより機能化されたタンパク質性構造とを実証する最初の報告である。2)ストレプトアビジンをはじめとする多くのタンパク質が、コロイド金の表面に吸着し、強力に結合した複合体を形成することは周知である。我々の実験は、ナノ粒子表面の高密度DNA層の安定した影響と、ハイブリダイゼーションを行わない場合のストレプトアビジン吸着への抵抗性を実証している。それ故、それらは、タンパク質の活性を実質的に乱さないような方法で、非常に特異的な相互作用によりナノ粒子表面のタンパク質構造を特異的に固定化する方法に向かうものである。表面に吸着されたタンパク質を備えた粒子は、免疫化学において重要な役割を演じ[M.A.Hayat,Colloidal Gold:Principles,Methods, and Applications,Academic Press, San
Diego,1991年]、タンパク質がナノ粒子表面と直接相互作用する安定したタンパク質/粒子共役体の開発により、組織化学的研究及び免疫検査のための改良ナノ粒子プローブが誘導され得る。
実施例29:電場を横切ってのナノ粒子の加速
本発明は、クエン酸で安定化されたナノ粒子や、荷電生体分子で被覆されたナノ粒子を、電場の中で移動させる方法について説明する。ナノ粒子と核酸を検出するためのナノ粒子の使用については、いずれもその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願第WO98/04740号(ノースウエスタン大学)や第WO00/33079号(ナノスフェア エルエルシー)に詳細に説明されている。生体分子で官能化したナノ粒子プローブを利用する検出技術は、プローブ分子が固定化標的を見つける能力やオリゴヌクレオチド鎖を捕獲する能力(チップの場合)に基づいている。このプロセスは、プローブの「捕獲された標的」を備えた電極表面への移動や、捕獲された標的を溶液中で有するプローブのセットのプローブの対象表面への移動を加速することができる。本発明の方法は、ナノ粒子に基づくプローブを使用する重要な生体診断用途を有する。例えば、本発明の方法は、ナノ粒子プローブまたはプローブのセットの、相補的DNAまたは相補的抗原/抗体で官能化された表面へのハイブリダイゼーションを加速するために使用することができる。
蛍光ハイブリダイゼーション検出システムにおいて、DNAなどの生体分子の電場中での標的部位に向かう能動的移動を促進するために、電場を適用するという考え方は、例えば米国特許第5,849,486号に記されている。しかしながら、そのような特許はいずれも、生体分子に結び付けられたナノ粒子の標的部位への移動を加速するために電場を適用することについては記していない。
DNA修飾ナノ粒子の輸送に対する電場の影響を調べるために、13nm金ナノ粒子を3’プロパンチオールでキャップした22mer DNAで修飾し、この修飾粒子を水中に分散した。ケースレー(Keithley)487ピコアンメータ/電圧源(Keithley Instruments社、アメリカ合衆国オハイオ州クリーヴランドオーロラロード28775所在、カタログ番号487ピコアンメータ)を使用して、2つのインジウム−スズ酸化物(ITO)電極を横切ってDC電場を適用し、電流を測定した。電極とナノ粒子の移動を例示した図式1を参照されたい。ITO被覆ガラス(Delta Technologies社、アメリカ合衆国ミネソタ州スチルウォーター所在(番号CD−50IN−CUV))を0.8×1cmに切断した。2つのインジウム−スズ酸化物被覆ガラス基板を、カソード(陰極)およびアノード(陽極)として使用した。電極をDNA修飾ナノ粒子の溶液に浸漬し、3Vの直流電場を15分間適用した(4μA)。電場の適用後、電極を水で洗浄した。正バイアスした電極(アノード)上にはピンク色が観察され、カソード上には肉眼で見える変化はなかった。アノード上でのナノ粒子の捕獲が、Ag(I)とヒドロキノンの溶液による銀を用いたシグナルの増強により確認された。いずれの電極も銀染色溶液に3分間浸漬した。アノードは黒色になり、カソードには実質的な変化はなかった。この観察は、DNA修飾粒子が、粒子上の高い負電荷のために電場によって輸送され得ることを示す。またこのことは、DNA修飾粒子の電極表面上の相補的オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを促進するために電場を利用することができることを示している。それはさらに、そのことが荷電粒子が関与する他の生体認識プロセスにまで拡張し得ることを示唆している。
実施例30: ナノ粒子プローブのサイズ選択的散乱によるオリゴヌクレオチド・アレイの2色標識
本実施例では、水性試料中の2種の異なる標的核酸配列を検出するための、本発明の2種の異なる大きさのナノ粒子オリゴヌクレオチド共役体を使用したオリゴヌクレオチド・アレイの2色標識について記載する。アレイ捕捉鎖、オリゴヌクレオチドで官能化したナ
ノ粒子標識、および検出しようとする標的のDNA配列を、3成分間サンドイッチ・アッセイで同時ハイブリダイズするよう設計した(図61)[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]。試験用オリゴヌクレオチド標的を自動固相合成によって合成し、オリゴヌクレオチド・アレイを文献の手順を使用してガラス製の顕微鏡スライド上に調製した[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ;クリシー、エル.エー.(Chrisey,L.A.);リー、ジー.ユー.(Lee,G.U.);オフェラール、シー.イー.(O’Ferrall,C.E.)、Nucl.Acids Res.、1996年、第24巻、3031ページ]。直径50nmおよび100nmの金ナノ粒子をジチアン末端のオリゴヌクレオチドで官能化し、文献の方法によって単離した[レイノルズ、アール.エー.三世(Reynolds,R.A.III);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、3795ページ;レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.);エルガニアン、アール.(Elghanian,R.);ビスワナダム、ジー.(Viswanadham,G);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.)、Bioconjugate Chem.、2000年、第11巻、289ページ]。典型的な実験では、オリゴヌクレオチド−ナノ粒子共役体およびオリゴヌクレオチド標的を、0.3M PBSのハイブリダイゼーション緩衝液[0.3MのNaCl、10nMのNaH2PO4/Na2HPO4、pH7]中、室温で2時間、DNAアレイに同時ハイブリダイズさせた[実施例30および以下の実施例31参照]。その後、ハイブリダイズしていない標的およびナノ粒子プローブを除去するために清浄な緩衝液でアレイを洗浄した。アレイ・スライドを顕微鏡のステージに取り付け、光ファイバー照明[Darklite Illuminator(Micro Video Instruments、マサチューセッツ州エイボン所在)]によってスライドの平面に光を照射した。この構成では、スライドは平面導波路として役割を果たし、内部全反射によって顕微鏡の対物レンズに光がまったく届かないように阻止する。しかし、ナノ粒子プローブが該導波路の表面に付着している場所では、エバネセント結合した光[ミュラー、ジー.ジェイ.(Mueller,G.J.)、「Multichannel Image Detectors」;タルミ、ワイ.(Talmi,Y.)編、第102回ACSシンポジウム;American Chemical Society:ワシントンDC、1979年;239−262ページ]が誘導面から散乱し、暗い背景上の明るい着色されたスポットとして画像化された。これらの実験では、50nmのAu粒子が導波路に付着している場所では緑色の光(λmax=542nm)が観察され、100nmの粒子が付着している場合は橙色の光(λmax=583nm)が同様に観察された。平面導波路に付着した大きな(≧200nm)セレニウム粒子からの散乱光を使用してDNAアレイの画像化が行われてきたが[スティンプストン、ディー.アイ.(Stimpston,D.I.);ホイヤー、ジェイ.ヴイ.(Hoijer,J.V.);シェイ、ダブリュ.(Hsieh,W.);ジョウ、シー.(Jou,C.);ゴードン、ジェイ.(Gordon,J.);セリオー、ティー.(Theriault,T.);ギャンブル、アール.(Gamble,R.);バルデシュヴィーラー、ジェイ.ディー.(Baldeschwieler,J.D.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1995年、第92巻、6379ページ]、本発明者らが本明細書中に記載するシステムの2つの特徴により同システムは以前の研究とは区別される。すなわち、i)密に官能化されたオリゴヌクレオチド−金ナノ粒子のハイブリッドに固有の鋭い融解プロファイルにより引き起こされる顕著な配列選択性、およびii)異なる粒子径および原理的には異なる粒子組成により、オリゴヌクレオチド・アレイの多色分析がもたらされるという観察である。
A.全般的な実験方法
自動オリゴヌクレオチド合成は、Expedite(商標)8909核酸合成機(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスター・シティー所在)で、標準的なホスホルアミダイト化学を使用して行った。オリゴヌクレオチドの合成に必要な試薬はすべてバージニア州スターリング(Sterling)所在のグレン・リサーチ(Glen Research)から購入した。すべての実験で、Barnstead(アイオワ州ドゥビューク(Dubuque)所在)のNANOpure(登録商標)water systemで精製したナノピュア水(18.1MΩ)を用いた。UV−Visスペクトルは、Hewlett−Packard(カリフォルニア州パロ・アルト所在)の8452Aダイオード・アレイ分光光度計で測定した。HPLCは、ヒューレット・パッカード(Hewlett−Packard)のSeries 1100HPLCを使用して行った。
B.5’−ステロイド・ジスルフィド・オリゴヌクレオチドで修飾したAuナノ粒子の調製
直径50nmおよび100nmの金ナノ粒子の水溶液(英国所在のBritish BioCell International)を、受け取ったままの状態で使用した(製品データ、50nm Au:70fM;100nm Au:9.3fM)。10mLの金コロイド溶液に、文献の手順[レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.);エルガニアン、アール.(Elghanian,R.);ビスワナダム、ジー.(Viswanadham,G.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.)、Bioconjugate Chem.、2000年、第11巻、289ページ]を使用して水中に調製した5’−ステロイド・ジスルフィドで修飾したオリゴヌクレオチド1.5nmolを加えた。一定分量の2MのNaCl溶液および0.1MのNaH2PO4/Na2HPO4、pH7緩衝溶液を4時間毎に加えることによって、溶液を徐々に0.3M NaCl、10mM NaH2PO4/Na2HPO4、pH7緩衝液(0.3MのPBS)にした。48時間後、該粒子溶液を超遠心機(Avanti(登録商標)30、Beckman Instruments、カリフォルニア州フラートン(Fullerton)所在)で遠心分離し(50nmの金ナノ粒子は5000rpmで10分間、100nmの金ナノ粒子は2500rpmで10分間)、暗赤色の油状沈殿物の上に無色の上清を得た。無色の上清を取り除き、暗赤色の油状沈殿物を新しい0.3M PBS緩衝液(50nmおよび100nmの金コロイドに7mLおよび4mL)に再分散させた。遠心分離および再分散を2回繰り返した。生成したナノ粒子溶液の最終濃度は、測定した520nmでのその可視吸光度および非修飾粒子について発表されている吸光係数の値[イグエラビデ、ジェイ.(Yguerabide,J.)およびイグエラビデ、イー.イー.(Yguerabide,E.E.)、Anal.Biochem.、1998年、第262巻、137ページ](50nmのAuナノ粒子:ε520=4.4×1010M−1cm−1;100nmのAuナノ粒子:ε5201.6×1011M−1cm−1)から推定した。以下に記載する実験では、直径50nmおよび100nmの、ステロイド・ジスルフィド・オリゴヌクレオチドで修飾したAuナノ粒子の濃度はそれぞれ30nMおよび3.5nMとした。
C.DNAマイクロアレイの製作
クリシーら[クリシー、エル.エー.(Chrisey,L.A.);リー、ジー.ユー.(Lee,G.U.);オフェラール、シー.イー.(O’Ferrall,C.E.)、Nucl.Acids Res.、1996年、第24巻、3031ページ]が発表した手順を改変した手順を使用して、ガラス製顕微鏡スライド(Fisher Scientific、ニュージャージー州スプリングフィールド所在)を、チオール修飾したオリゴヌクレオチドを結合する能力を有する反応性マレイミド基で官能化した。まずスラ
イドをピラニア溶液(3:1の濃H2SO4:30%H2O2)で15分間洗浄し、大量のナノピュア水ですすいだ。注意:ピラニア溶液は反応性が高く、慎重に使用すべきである。その後、スライドを1mMの酢酸中の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)の1%(v/v)溶液に30分間浸した。APSで修飾したスライドをナノピュア水およびエタノールで十分にすすぎ、N2下で乾燥させ、120〜130℃で20分間焼いた。冷却後、シラン化されたスライドをすぐに4:1のエタノール:DMSO中のスクシンイミジル4−[マレミドフェニル]−ブチレート(SMPB)の2mM溶液で処理した。スライドを終夜SMPB溶液に浸し、エタノールですすぎ、N2下で乾燥させた。次いでスライドを1:1:4の無水酢酸:ピリジン:DMFに2時間浸し、水で洗浄してN2下で乾燥させた。その後、SMPBで修飾したスライドをロボット・マイクロアレイヤー(microarrayer)(GMS417、Genetic Microsystems Inc、マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn)所在)に装填し、直径150μmのスポット用ピンを使用して、3’−チオール修飾された捕捉オリゴヌクレオチドの1mM溶液(文献[ストルホッフ、ジェイ.ジェイ.(Storhoff,J.J.);エルガニアン、アール.(Elghanian,R.);ミューシック、アール.シー.(Mucic,R.C.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、J.Am.Chem.Soc.、1998年、第120巻、1959ページ]の手順により合成)をスポットした。スポットした後、スライドを湿潤チャンバ(Hybaid US、マサチューセッツ州フランクリン(Franklin)所在)に入れ、一晩静置した。スライドを水ですすぎ、N2下で乾燥させた後、エタノール中の2%(w/v)メルカプトヘキサンに1時間浸した。スライドを溶液から取り出し、大量のエタノールですすぎ、N2下で乾燥させた。
D.ナノ粒子プローブを用いた2種のオリゴヌクレオチド標的の2色標識
100μLのハイブリダイゼーション・ウェル(Grace BioLabs、オレゴン州ベンド(Bend)所在)を、チオールで修飾した配列cおよびdのオリゴヌクレオチドをスポットしたオリゴヌクレオチド・アレイに取り付けた(配列は図62の説明を参照)。該ウェルを、0.3MのPBS緩衝溶液(0.3MのNaCl、10mMのNaH2PO4/Na2HPO4、pH7)で調製した10nMのオリゴヌクレオチド配列aで官能化した直径50nmの金ナノ粒子、3.5nMのオリゴヌクレオチド配列bで官能化した直径100nmの金ナノ粒子、ならびに200nMのオリゴヌクレオチド標的a’c’および/またはb’d’で満たした。ウェルをカバー・ガラスで覆った後、スライド・アセンブリを2時間室温で振盪し、ハイブリダイゼーション・ウェルを取り外し、アレイを清浄な0.15MのPBS緩衝液(0.15MのNaCl、10mMのNaH2PO4/Na2HPO4、pH7)で3回洗浄した。新しいハイブリダイゼーション・ウェルをスライドに取り付けて新しい0.15M PBS緩衝液を満たし、該スライド・アセンブリを画像化するために図64に示すように倒立顕微鏡(Axiovert(登録商標)100A、Carl Zeiss、ドイツ国イェナ所在)上の光ファイバー照明(Darklite Illuminator、Micro Video Instruments、マサチューセッツ州エイボン所在)に装着した。強度40%に設定した200Wのハロゲン光源(Fiber−Lite(登録商標)PL−750、Dolan−Jenner、マサチューセッツ州ローレンス所在)を照射し、画像化の前に少なくとも15分間平衡化させた。画像はPenguin600CLデジタルカメラ(Pixera、カリフォルニア州ロス・ガトス所在)で取り込んだ。
E.オリゴヌクレオチドで官能化した表面に結合した粒子の分光分析
まず、アレイをスポットするかわりにスライド全体を1mMの3’−チオール修飾された捕捉オリゴヌクレオチドcまたはdに浸す以外はDNAマイクロアレイの製作について上述した方法を用いて、スライド・ガラスの表面全体をDNA配列cまたはdのどちらか
で官能化した。その後、上記の2色アレイ画像化実験で記載したように、捕捉鎖cを有するスライドを、100μLの0.3M PBS緩衝溶液で調製した10nMのオリゴヌクレオチド配列aで官能化した直径50nmの金ナノ粒子および200nMのオリゴヌクレオチド標的a’c’に曝露した。同様に、次いで捕捉鎖dを有するスライドを、100μLの0.3M PBS緩衝溶液で調製した3.5nMのオリゴヌクレオチド配列bで官能化した直径100nmの金ナノ粒子および200nMのオリゴヌクレオチド標的b’d’に曝露した。これらのスライドを新しい緩衝液で洗浄し、上述のように光ファイバー照明に装着した。顕微鏡の対物レンズを光ファイバー分光器(USB2000、Ocean Optics,Inc.、フロリダ州デューンディン(Dunedin)所在)への入力に置き換え、スライドに結合した50nmおよび100nmのAu粒子についてスペクトルを記録した。これらのスペクトルを図66に示す。50nmの粒子では、λmax=542nm、散乱ピークの半値全幅(FWHM)は86nmであり、100nmの粒子では、λmax=583nm、FWHM=114nmである。
F.結論
1溶液中の2種の異なるDNA標的の多色分析を行うこのシステムの潜在性を試験するために、DNA配列aで官能化した10nMの50nm粒子、DNA配列bで官能化した3.5nMの100nmのAu粒子、ならびに200nMの合成オリゴヌクレオチド標的a’c’およびb’d’の混合物を、配列cおよびdをスポットしたスライド・ガラスに曝露した(図61A)[アレイ・ハイブリダイゼーション、画像化および感度のさらなる詳細は実施例30および31で見つけることが可能である]。標的a’c’およびb’d’の両方の存在下では、配列a’c’の試験スポットで画像化された散乱緑色光および配列c’d’の試験スポットの散乱橙色光(図62A)から実証されたように、2種の異なるナノ粒子プローブが首尾よくかつ独立して対応する相補的なスライド・スポットにハイブリダイズした。スポットから離れた場所で測定された散乱光強度が低いのは、ナノ粒子のスライド表面上への非特異的結合が最小限であることを反映している。標的a’c’またはb’d’のみの存在下では、それぞれ緑色光または橙色光のみが観察される(図62B、C)。どちらの場合も、非相補的なスポットではバックグラウンドシグナルはほとんど観察されない。わずか1pMの標的の存在下でも、ハイブリダイズしたナノ粒子プローブによる散乱光をバックグラウンドのシグナルと識別することが可能であり[アレイ・ハイブリダイゼーション、画像化および感度のさらなる詳細は実施例30および31で見つけることが可能である]、これは、この方法が生物源由来のDNAを分析するのに十分感度が高いことを示している。標的の非存在下では、DNAで官能化した顕微鏡スライドを2種の異なるナノ粒子プローブで処理しても散乱光がまったく観察されなかったことに注意されたい(図62D)。
実施例31: アレイ配列の選択性/融解実験
この実施例では、実施例30に記載した本発明の散乱検出方法の選択性を評価するためにモデルDNAアレイを調製した。ナノ粒子プローブに基づいたこの新しい散乱検出システムの選択性を試験するために、本発明者らは、各要素が特定の配列部位に4種の可能なヌクレオチドのうち1種を有する捕捉鎖を備えた、4種の要素を含むモデルDNAアレイを合成した。これらのアレイを室温で、4種の要素のうち1種に相補的な標的が200nM(X=A、図61B)であり、直径50nmのナノ粒子プローブが10nMである溶液と共にインキュベートした。その後、ハイブリダイズしていない標的およびプローブを除去するためにアレイを洗浄し、清浄なハイブリダイゼーション緩衝液に再び浸した。その後、ハイブリダイズしたナノ粒子のアレイ表面からの解離を誘発し、緩衝液の温度を次第に上昇させることによって連続的に観察した。この温度が相補DNA2重鎖またはミスマッチDNA2重鎖のどちらかの融解温度(Tm)を超えない限りは、4種のアレイ要素すべてで散乱光が観察され(図63A)、解離が起こらなかったことが示された。しかし、緩衝液の温度をさらに上昇させるにつれて、様々な塩基対の熱安定性の順にナノ粒子プロ
ーブがスライドから解離した(T:T≒C:T<G:T<A:T、図63A)。ナノ粒子のスライドからの解離を実時間で観察したので、実験が進むにつれて、最適なストリンジェンシーの温度、選択性、および標的配列をすべて容易に視覚的に決定することが可能であった。さらに、すべてのアレイ要素について定量的な融解プロファイルを作成し、実時間で各要素でのシグナル強度を測定することによって同時に比較した(図63B)。最適なストリンジェンシーの温度では(55℃、図63B中の縦線で示す)、相補的(X=A)要素におけるシグナルはG:Tの「ゆらぎ(wobble)」ミスマッチを有する要素のシグナルより5倍高い。これは、分子フルオロフォア・プローブおよび同一の配列を有するアレイについて以前に観察された配列選択性よりも有意に高い配列選択性を表す[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]。白黒の走査測定手法によって小さな(直径13nm)ナノ粒子で観察されたように[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]、フルオロフォアで標識したDNAと比べて50nm粒子プローブの選択性が高いことは、ナノ粒子がアレイ表面から解離する温度範囲が狭いことの直接の結果である。図63Bに示す曲線の1次導関数における半値全幅は、フルオロフォアで標識した同一配列のDNAでは18℃であるのに対し、5℃である[タトン、ティー.エー.(Taton,T.A.);ミルキン、シー.エー.(Mirkin,C.A.);レツィンガー、アール.エル.(Letsinger,R.L.)、Science、200、第289巻、1757ページ]。ここに提示する結果は、この選択性を、同一チップ上の複数のDNA標的の多色標識と組み合わせても使用し得ることを実証している。
A.アレイの選択性の測定
まず、図61Bに示す4種のチオール修飾オリゴヌクレオチド配列でスポットすることによってオリゴヌクレオチド・アレイを製作した。100μL容のハイブリダイゼーション・ウェルをアレイに取り付けて、0.3MのPBS緩衝液で調製した、10nMのオリゴヌクレオチドで官能化した直径50nmの金ナノ粒子プローブおよび200nMの8位にチミジンを有する30塩基長のオリゴヌクレオチド標的(X=Aのチップ配列に相補的、図61B)で満たした。このスライド・アセンブリを2時間室温で震盪し、ハイブリダイゼーション・ウェルを取り外し、アレイを清浄な0.15MのPBS緩衝液で3回洗浄した。新しいハイブリダイゼーション・ウェルをスライドに取り付けて、新しい0.15MのPBS緩衝液および小さな攪拌子(2mm×7mm、Fisher Scientific)を入れた。図65A(上面図)およびS2B(側面図)に示すように、スライドを温度制御ステージ台(BS60、Instec Inc.、コロラド州ボールダー所在)および小型磁気攪拌機(Telemodul Mini、H+P Labortechnik、ドイツ国ミュンヘン所在)を備えた倒立顕微鏡上に装着した。該アセンブリを0.5℃/分の速度で25℃から75℃までの温度傾斜に供し、各温度で3分間維持した。上述のように画像を取り込み、画像処理ソフトウェア(Adobe Photoshop(登録商標)5.0、Adobe Systems、カリフォルニア州サンノゼ所在)を使用して解析した。各アレイ要素のシグナル強度は、アレイ・スポット内の円形領域を選択し、選択されたピクセルについてPhotoshop(登録商標)により与えられる光度値を平均することによって定量した。
B.アレイの感度の測定
選択性の実験で上述したように、アレイを調製して50nmのナノ粒子プローブ(0.3MのPBS中10nM)およびオリゴヌクレオチド標的と共にインキュベートしたが、ただし標的濃度を1μMから10fMまで変化させた。スライド・アセンブリを2時間室温で震盪し、ハイブリダイゼーション・ウェルを取り外し、アレイを清浄な0.15Mの
PBS緩衝液で3回洗浄した。新しいハイブリダイゼーション・ウェルをスライドに取り付けて、新しい0.15MのPBS緩衝液で満たし、このスライド・アセンブリをシグナルの定量のために光ファイバー照明に装着した。得られたデータを図67に示す。バックグラウンドから統計的に(>2σ)識別することが可能な最も低い濃度は1pMである。
C.結論
オリゴヌクレオチドで官能化した比較的大きいナノ粒子の散乱光に基づく、本実施例および上記実施例30に記載したDNAアレイ画像化技法により、高感度で非常に選択性の高いDNAアレイ多色標識の機会がもたらされる。理論的には、記載した方法は様々な組成および大きさのナノ粒子を使用して、さらに別の色に拡張可能である[リンク、エス.(Link,S.);ワン、ゼット.エル.(Wang,Z.L.);エル・サイード、エム.エー.(El−Sayed,M.A.)、J.Phys.Chem.B、1999年、第103巻、3529ページ]。さらに、より高い散乱係数を有する粒子を使用することにより、このシステムはナノ粒子走査測定システム5および導波路に基づいた蛍光アレイに匹敵する高い感度を有し得る[ブダッハ、ダブリュ.(Budach,W.);アベル、エー.ピー.(Abel,A.P.);ブルーノ、エー.イー.(Bruno,A.E.);ニューシェーファー、ディー.(Neuschaefer,D.)、Anal.Chem.、1999年、第71巻、3347ページ]。
実施例32: ナノ粒子プローブおよび塩に基づくストリンジェントな洗浄を使用したアッセイに基づくDNAの電気的検出
この実施例では、ミスマッチ鎖が関与する結合事象を完全に相補的な認識要素に基づく結合事象から区別するため、ハイブリダイズした粒子の融解特性についての特異な塩依存性と、熱的にストリンジェントな洗浄の代わりに塩に基づくストリンジェントな洗浄を使用することとを評価するために、モデルDNAアレイを調製した。
A.微小電極の調製
典型的な実験では、20μmの間隙を有する微小電極(5nm Ti上の60nm Au)を、1000オングストロームのSiO2コーティングを有するSiウェハの標準的なフォトリソグラフィーによって調製した(図68C)。文献の方法を使用して(ティー.エー.タトン(T.A.Taton)、シー.エー.ミルキン(C.A.Mirkin)、アール.エル.レツィンガー(R.L.Letsinger)、Science、第289巻、1757ページ、2000年;エル.エー.クリシー(L.A.Chrisey)、ジー.ユー.リー(G.U.Lee)、シー.イー.オフェラール(C.E.O’Ferrall)、Nucl.Acids Res.、第24巻、3031−3039ページ、1996年)、スクシンイミジル4−[マレミドフェニル]−ブチレート(SMPB、Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス所在)を用いてチップ全体の露出しているSiO2を修飾した。0.3M NaCl、10mM リン酸緩衝液(pH7)(0.3MのPBS)溶液で調製した適切なアルキルチオール修飾オリゴヌクレオチド(1mM)を手動ピペット操作により電極の間隙にスポットすることによって、活性化した表面に捕捉オリゴヌクレオチド鎖を固定化した。本研究で使用したすべてのオリゴヌクレオチドは自動固相合成(ジェイ.ジェイ.ストルホッフ(J.J.Storhoff)、アール.エルガニアン(R.Elghanian)、アール.シー.ミューシック(R.C.Mucic)、シー.エー.ミルキン(C.A.Mirkin)、アール.エル.レツィンガー(R.L.Letsinger)、J.Am.Chem.Soc.、第120巻、1959−1964ページ、1998年;エフ.エックスタイン(F.Eckstein)、「Oligonucleotides and Analogues」(ニューヨーク所在のOxford University Press、第1版、1991年))によって調製したが、捕捉DNA鎖、標的DNA鎖、およびプローブDNA鎖の配列を図68Bに示す。このDNAチップ・アレイは、合成27塩基オリゴヌクレオチド
標的(炭疽菌致死因子の配列に基づく)において、相補的な対A:T(X=A)と、3種の一塩基ミスマッチT:T(X=T)、C:T(X=C)、またはG:T(X=G)との識別を評価するために設計された(エス.イクタ(S.Ikuta)、ケー.タカギ(K.Takagi)、アール.ビー.ウォリス(R.B.Wallace)、ケー.イタクラ(K.Itakura)、Nucl.Acids Res.、第15巻、797ページ、1987年)。捕捉オリゴヌクレオチドを電極の間隙にスポットした後、チップを湿潤チャンバに24時間保管し、SMPBとアルキルチオールでキャップされたDNAとの結合反応を行わせた。その後、チップを水で洗浄し、エタノール中の2%メルカプトヘキサノールに2時間浸して、Au電極を含めたチップを不動態化させた。最後に、DNAで官能化したチップをエタノールおよび水で洗浄し、その後、N2流下で乾燥させた。
B.塩ストリンジェンシー洗浄後のアレイの選択性の測定
アレイの検出能力を評価するために、チップを0.3M PBSに溶解した標的DNA(10nM)で4時間処理し、その後、0.3M PBS溶液ですすいだ。その後、チップを0.3M PBSに溶解したナノ粒子プローブ(2nM)で2時間処理した。塩化物イオンを除去するためにDNAチップを10mMのリン酸緩衝液(pH7)に溶解した0.3MのNaNO3ですすぎ、次いでAgNO3およびハイドロキノンから成る銀染色増感溶液(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス所在)で処理した。溶液中に銀の粒状物が形成されるのを避けるために、銀染色増感溶液を2または3分間毎に交換した。チップを銀染色増感溶液で処理する毎に、チップを水ですすぎ、N2で乾燥させ、Fluke189マルチメーター(Fluke、ワシントン州エバレット(Everett)所在)を使用して電極の間隙の抵抗値を測定した。銀染色増感溶液で3分間処理した後、4種の異なるオリゴヌクレオチド捕捉鎖を有する間隙は500MΩより大きい間隙の抵抗を示すが、この値は実験に使用したマルチメーターの限界である(図69A)。ストリンジェンシー洗浄なしでは、銀染色増感溶液への曝露時間の増加とともに間隙の抵抗が低下する。別の実験で、電極の間隙と同じ方法で処理したインジウム・スズ酸化物(ITO)表面の、銀の堆積前後における電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)画像により、銀染色増感溶液への曝露時間の増加とともに銀の堆積が増加することが示される(図70A〜D)。興味深いことに、粒子はすべて異なる増大速度を示す。実際、増感溶液に9分間曝露した後でさえ、一部の粒子は大きさおよび形状に関して影響を受けずにいる。これは、ナノ粒子が銀の堆積を開始させるが、堆積した銀は、粒子を均一に増大させて該粒子を結果的に電気的に短絡させるプロセスよりも、むしろ銀の還元をさらに触媒して最終的に回路の閉鎖を引き起こすことを示している。粒子は複合物質であり、個別に考慮した場合、わずかに異なるレベルでオリゴヌクレオチドが官能化されているはずであり、したがって、ハイドロキノンによるAg+からAgへの還元を促進するその能力に関して異なる活性を有しているに違いない。標的DNAが存在しない場合、40分間の銀染色増感の後でさえも検出可能なシグナルがなかった。この検出方法を使用して、システムを最適化する労力を伴わずに500fMの濃度の標的が検出された。共焦点顕微鏡、上記のオリゴヌクレオチド鎖、およびCy3で修飾したプローブを利用する、蛍光に基づいた従来のシステムの検出限界は〜5pMである(ティー.エー.タトン(T.A.Taton、シー.エー.ミルキン(C.A.Mirkin)、アール.エル.レツィンガー(R.L.Letsinger)、Science、第289巻、1757ページ、2000年)。
標的の選択性を高める従来の方法は、非相補的な鎖から形成されたDNA2重鎖の脱ハイブリダイゼーションをもたらす温度の緩衝溶液で、DNAチップ・アレイを洗浄することである(ジー.エイチ.ケラー(G.H.Keller)、エム.エム.マナック(M.M.Manak)、DNA Probes(ニューヨーク所在のStocktonton Press、1989年))。ナノ粒子に基づいた他のDNA検出方法が、オリゴヌクレオチドで修飾したプローブと相補的オリゴヌクレオチドとから形成された2重鎖構造
に関連する鋭い融解転移によって並外れて高い特異性を示すことが既に示されている(ティー.エー.タトン(T.A.Taton)、シー.エー.ミルキン(C.A.Mirkin)、アール.エル.レツィンガー(R.L.Letsinger)、Science、289、1757、2000年。したがって、本明細書中で報告したシステムでは、適切な温度のストリンジェンシー溶液で洗浄した場合、完全に相補的な捕捉鎖で修飾した間隙と非相補的な鎖で修飾した間隙との間に抵抗の差があることが期待できるかもしれない。実際、銀染色増感溶液で処理する前にチップを50℃の0.3M PBSで洗浄した場合、相補的な捕捉鎖を有する間隙の抵抗は3〜15分間の範囲のAg染色増感時間に伴って減少するが、単一塩基のミスマッチを有する3つの間隙すべてが、20分間の増感時間の後でさえも500MΩより大きい抵抗を示す。言い換えると、本実験において相補的な鎖は非相補的な鎖より少なくとも105倍大きいシグナルをもたらす。この値は、比較対象とする蛍光に基づいた手法で観察される選択性の比(2.6:1)、また以前に報告された走査測定手法(11:1)(ティー.エー.タトン(T.A.Taton)、シー.エー.ミルキン(C.A.Mirkin)、アール.エル.レツィンガー(R.L.Letsinger)、Science、第289巻、1757ページ、2000年)と比べた場合でも、優れた選択性のレベルである。
注目すべきは、オリゴヌクレオチドで修飾したナノ粒子が塩濃度勾配全体にわたって並外れて鋭い変性特性を示すことが判明したことである(図69C)。実際、相補的な捕捉鎖/標的鎖/プローブ複合体およびG−Tミスマッチを有する捕捉鎖/標的/プローブ複合体でそれぞれ官能化した2つのガラス製キュベットの520nmでの吸光度を溶液のNa+濃度の関数として調査することによって、ミスマッチを有するオリゴヌクレオチドを相補的な標的から容易に区別することが可能である。注目すべきは、温度の変化を使用する場合(図69C、差込図)に対し、塩濃度の変化を使用するほうがより良好に2本の鎖の識別が得られる。したがって、チップを適切な陽イオン濃度の緩衝溶液で洗浄することによって、ミスマッチを有するDNA上のナノ粒子プローブを選択的に脱ハイブリダイズさせることが可能である。室温の0.01M PBSを用いてチップをストリンジェンシー洗浄した後、完全に相補的なDNA(X=A)を有する間隙の抵抗は銀の堆積に伴って有意に低下するが、ミスマッチ鎖(X=T、G、またはC)で官能化した3種すべての間隙では、20分間の増感時間の後でさえも絶縁状態のままである。2重鎖のすべてを変性させるためにDNAチップを水で洗浄する対照実験では、40分間の銀染色増感の後に4種のDNA鎖すべてについて検出可能なシグナルは存在しなかった。
C.結論
結論として、高感度でかつ特異性が非常に高い、電気的アレイに基づいた新しいDNA検出方法が発見され、該方法により、洗浄緩衝溶液の塩濃度の調整に基づくストリンジェンシーがこの新規な検出様式において温度に基づいたストリンジェンシー様式に置き換わり得るだけでなく、ナノ粒子プローブを用いる場合は、より優れていることが実証された。実際、温度の代わりに塩濃度をストリンジェンシー手段として使用することは、少なくとも次のような理由で重要である。すなわち、塩濃度の使用はナノ粒子に基づいた検出システムにおいて熱サイクルの必要性を排除するという全般的な方法を示していること;塩濃度の使用はナノ粒子プローブにおいて熱に基づいたストリンジェンシーより高い選択性をもたらすこと;および塩濃度の使用は検出プローブが高い温度で不安定である場合に有用であることである。最後に、このシステムは従来の微小電極に基づいているので、本実施例で使用した4対より多い電極対のアレイを使用することによる大量の多重鎖形成に有用である。これらをまとめると、本発明は、単一ヌクレオチド多型をスクリーニングするための、携帯可能な、現場(point−of−site)でのDNA検出方法に有用である。またこのシステムの感度は完全に最適化されてはいないが、既に共焦点蛍光顕微鏡に基づいた蛍光を用いる類似の手法より優れている。間隙の大きさを小さくすれば回路を閉じるのに必要な粒子の数が少なくなり、このシステムの感度は劇的に向上するであろう
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本明細書に引用した特許、特許出願および参考文献はすべて、引用によりその全体が組み込まれる。