微小電子機械システム(MEMS)は、微小製作技法を使用して、電気装置および機械装置を同じシリコン基板上において統合する。電気構成要素は、集積回路プロセスを使用して製作され、一方、機械構成要素は、集積回路プロセスと共存可能である微小機械加工プロセスを使用して製作される。この組合せにより、標準的な製造プロセスを使用して、全システムをチップ上に製作することが可能になる。
MEMSの1つの一般的な応用分野は、センサ装置の設計および製造である。装置の機械部分は、感知能力を提供し、一方、電気部分は、機械部分によって得られる情報を処理する。MEMSセンサの一例は、MEMSジャイロスコープである。
あるタイプのMEMSジャイロスコープは、振動要素を使用して、コリオリ加速度の検出により角速度を感知する。振動要素は、基板と平行のX軸(駆動面)において振動運動する。振動要素が運動状態になった後、振動要素は、基板に垂直なZ軸(入力面)の回りに回転する基板によって誘起される角速度を検出することができる。コリオリ加速度は、X軸およびZ軸の両方に垂直であるY軸(感知面)において生じる。コリオリ加速度は、基板の角速度に比例する振幅を有するコリオリ運動を生成する。
装置の始動時間は、電力を加えた後に使用可能な出力を生成するのに必要な時間である。始動時間は、装置を開始するのに必要な複数ステップの累積時間に依存する。駆動電子機器が振動要素の振動運動を検出および増幅するのにかかる時間は、MEMSジャイロスコープの始動時間に影響を与える。
通常のMEMSジャイロスコープは、開始するのに1秒から2秒かかる。より迅速な始動時間を必要とするMEMSジャイロスコープの応用分野がある。たとえば、1つまたは複数のMEMSジャイロスコープを含むいくつかの慣性測定ユニット(IMU)は、1秒以下の始動時間を必要とすることがある。
図1は、例示的な実施形態による微小電子機械システム(MEMS)ジャイロスコープ100の平面図を示す。図1は、MEMSジャイロスコープ100を音叉ジャイロスコープとして示すが、角速度感知ジャイロスコープなど、回転を検出するためにコリオリ加速度を使用する他のMEMS振動ジャイロスコープを使用することも可能である。MEMSジャイロスコープ100は、基板上に形成することが可能であり、少なくとも1つのプルーフマス102a、102b、複数の支持梁104、少なくとも1つの交差梁106a、106b、少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108b、少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110b、少なくとも1つの感知プレート112a、112b、および少なくとも1つのアンカ114a、114bを含むことが可能である。
少なくとも1つのプルーフマス102a、102bは、MEMSジャイロスコープシステムにおいて使用するのに適した任意のマスとすることが可能である。好ましい実施形態では、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bは、シリコンのプレートである。微小機械加工技法と共存可能な他の材料を使用することも可能である。図1は、2つのプルーフマスを示すが、1つまたは複数のプルーフマスを使用することが可能である。
少なくとも1つのプルーフマス102a、102bは、少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bと少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bとのほぼ間に配置されることが可能である。少なくとも1つのプルーフマス102a、120bは、少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bおよび少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bの両方に向かって延びる複数のコム状電極を含むことが可能である。少なくとも1つのプルーフマス102a、102bは、図1では10の電極を有するように示されているが、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bの上の電極の数は、10より多い、または少ないとすることが可能である。
少なくとも1つのプルーフマス102a、102bは、複数の支持梁104によって、少なくとも1つの感知プレート112a、112bより上に支持することが可能である。図1では、8つの支持梁104が示されているが、使用される支持梁の数は、8より多い、または少ないとすることが可能である。複数の支持梁104は、シリコンウエハから微小機械加工された梁とすることが可能である。複数の支持梁104は、ばねとして作用することが可能であり、これにより、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bが、駆動面(X軸)内および感知面(Y軸)内において移動することが可能になる(軸の情報については図1参照)。
複数の支持梁104は、少なくとも1つの交差梁106a、106bに接続することが可能である。少なくとも1つの交差梁106a、106bは、少なくとも1つのアンカ114a、114bに接続することが可能であり、これにより、MEMSジャイロスコープ100の支持が提供される。少なくとも1つのアンカ114a、114bは、下にある基板に接続することが可能である。2つのアンカ114a、114bが図1に示されているが、アンカの数は、2より多い、または少ないとすることが可能である。少なくとも1つのアンカ114a、114bは、支持をMEMSジャイロスコープ100に提供する任意の方式で、少なくとも1つの交差梁106a、106bに沿って位置決めすることが可能である。
少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bは、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bに向かって延びる複数のコム状電極を含むことが可能である。少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bは、図1では4つの電極を有するように示されているが、少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bの上の電極の数は、4より多い、または少ないとすることが可能である。少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108b上の電極の数は、少なくとも1つのプルーフマス102a、102b上の電極の数によって決定することが可能である。
少なくとも1つのプルーフマス102a、102bおよび少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bの複数の交互指状コム状電極は、キャパシタを形成することが可能である。少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bは、図1には示されていない駆動電子機器に接続することが可能である。駆動電子機器により、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bは、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bおよび少なくとも1つのモータ駆動コム108a、108bの複数の交互指状コム状電極によって形成されるキャパシタを使用することによって、駆動面(X軸)に沿ってほぼ音叉周波数において振動することが可能である。
少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bは、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bに向かって延びる複数のコム状電極を含むことが可能である。少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bは、図1では4つの電極を有するように示されているが、少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bの上の電極の数は、4つより多い、または少ないとすることが可能である。少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bの上の電極の数は、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bの上の電極の数によって決定することが可能である。
少なくとも1つのプルーフマス102a、120bおよび少なくとも1つのモータピックオフコム110a、110bの複数の交互指状コム状電極は、キャパシタを形成することが可能であり、これにより、MEMSジャイロスコープ100が、駆動面(X軸)における運動を感知することが可能になると考えられる。
少なくとも1つの感知プレート112a、112bは、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bと並列キャパシタを形成することが可能である。角速度が入力面(Z軸)に沿ってMEMSジャイロスコープ100に加えられ、一方、少なくとも1つのプルーフマス102a、102bが駆動面(X軸)に沿って振動している場合、コリオリ力を感知面(Y軸)において検出することが可能である。並列キャパシタを使用して、感知面(Y軸)における運動を感知することが可能である。MEMSジャイロスコープ100の出力は、静電容量の変化に比例する信号とすることが可能である。少なくとも1つの感知プレート112a、112bは、図1には示されていない感知電子機器に接続することが可能である。感知電子機器は、少なくとも1つのプルーフマス102a、120bが、少なくとも1つの感知プレート112a、112bに向かって、および/または少なくとも1つの感知プレート112a、112bから遠ざかるように移動する際に、静電容量の変化を検出することが可能である。
図2は、MEMSジャイロスコープシステム200の平面図を示す。MEMSジャイロスコープシステム200は、MEMSジャイロスコープ216および駆動電子機器218を含むことが可能である。MEMSジャイロスコープシステムは、感知電子機器、システム電力源、および他の通常の動作電子機器をも含むことが可能である。これらは、簡単化のために図2では示されていない。MEMSジャイロスコープ216は、図1に示したMEMSジャイロスコープ100とほぼ同じとすることが可能である。駆動電子機器218は、少なくとも1つのプルーフマス202a、202bを振動させる少なくとも1つのモータ駆動コム208a、208bに駆動電圧を提供することができる電子装置の任意の組合せとすることが可能である。
MEMSジャイロスコープシステム200を開始するために、システム電力源は、電力をMEMSジャイロスコープ216に提供することが可能である。システム電力源は、通常のMEMSジャイロスコープに給電するために使用される任意の電力源とすることが可能である。たとえば、システム電力源は、少なくとも1つのMEMSジャイロスコープを含むアビオニクスシステムの電力源とすることが可能である。システム電力源は、システムの応用分野に基づいて、電力を提供することが可能である。システム電力源は、通常、5から1000ボルトの範囲の電力を提供する。しかし、この実施形態は、その範囲に限定されるものではない。
駆動電子機器218は、少なくとも1つのプルーフマス202a、202bを振動させる少なくとも1つのモータ駆動コム208a、208bに駆動電圧を印加することが可能である。駆動電子機器218は、少なくとも1つのプルーフマス202a、202bのほぼ音叉周波数を追尾することが可能である。音叉周波数を追尾するのにかかる時間は、MEMSジャイロスコープシステム200の始動時間に影響を与える可能性がある。代替として、高分解能品質ファクタQを有するMEMSジャイロスコープシステム200では、駆動電子機器218は、音叉周波数を見つけることができない可能性があり、MEMSジャイロスコープシステム200は、開始されない可能性がある。
MEMSジャイロスコープシステム200の始動時間を改善するために、雑音を駆動電子機器218に注入することが可能である。雑音は、システム電力源がMEMSジャイロスコープ216に適用された後であるが、MEMSジャイロスコープ216が全電力に到達するかなり前に、駆動電子機器218に注入することが可能である。MEMSジャイロスコープ216が全電力に到達する前に雑音を注入することによって、MEMSジャイロスコープ216の始動時間を短縮することが可能である。駆動電子機器218が音叉周波数を追尾した後、雑音の注入を中止することが可能である。
図3は、雑音源300の概略図である。好ましい実施形態では、雑音源300を使用して、雑音を提供することが可能である。しかし、雑音源300は、雑音を生成することが可能である回路の単なる一例である。電子回路の多くの異なる組合せが、雑音を生成することができる可能性があり、またこの実施形態において使用することも可能である。雑音源300は、白色雑音に限定される帯域幅を提供することが可能である。少なくとも1つのプルーフマス202a、202bの音叉周波数は、注入雑音の帯域幅内にほぼあることが好ましい。たとえば、雑音の帯域幅は、音叉周波数をほぼ中心とすることが可能であり、ほぼ+/−1000ヘルツの幅とすることが可能である。上述した帯域幅特性を有する雑音を注入するように雑音源300を設計することによって、駆動電子機器218は、音叉周波数をより迅速に追尾することが可能であり、また、MEMSジャイロスコープシステム200を開始するのに失敗する回数を大きく低減することが可能である。
多くの応用分野では、雑音源300を提供するために、駆動電子機器218において利用可能な予備回路を使用することが可能であると考えられる。白色雑音が好ましい可能性があるが、ガウス雑音も、MEMSジャイロスコープの始動時間を短縮することができる可能性がある。さらに、狭帯域雑音を駆動電子機器218に注入することも可能である。
雑音を駆動電子機器218に注入することにより、駆動電子機器218が音叉周波数を追尾するのにかかる時間を大きく低減することが可能である。始動時間が1秒から2秒である通常のMEMSジャイロスコープについて、始動時間を1秒以下に短縮することが可能である。この始動時間は、始動時間が1秒以下であることを必要とするMEMSジャイロスコープの応用分野に有利な可能性がある。たとえば、1つまたは複数のMEMSジャイロスコープを含むいくつかの慣性測定ユニット(IMU)は、1秒以下の始動時間を必要とする可能性がある。
示した実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではないことを理解されたい。本発明を示すために、MEMS音叉ジャイロスコープを使用したが、本発明は、回転を検出するためにコリオリ加速度を使用する他のMEMS振動ジャイロスコープにも適用される。請求項は、特に断りがない限り、記述される順序または要素に限定されると読み取られるべきではない。したがって、添付の請求項およびその等価物の範囲および精神の範囲内にあるすべての実施形態は、本発明として主張される。
排他的な特性または権利が主張される本発明の実施形態は、以下のように確定される。