本発明の目的は、いままで知られたロータリースプール型やスライドスプール型とは異なる新しい形式として、それぞれの短所が補完されたベーンスプール型方向切換弁を提供し、合わせてそのベーンスプール型方向切換弁を利用し、スプール作動のためのパイロット弁をメイン弁と一体に構成して構造が簡単で漏れ箇所及び不良要因が少なくて低コスト普及化に有利な電磁パイロット切換弁及び冷凍サイクル用4方向制御弁を提供することである。
このような目的を達成する本発明によるベーンスプール型方向切換弁は、スプール軸とこのスプール軸の一側に延びた弁部及びその他側に延びたベーン部を有するベーンスプールを具備し、そのベーンスプールのスプール軸を回転自在に支持する軸支持部と、この軸支持部一側に拡張されて前記ベーンスプールの弁部を気密な状態で回転移動させる収納する弁室と、前記軸支持部の他側に拡張されて前記ベーンスプールのベーン部を気密な状態で回転移動可能に収納する弁室とよりなるチャンバが形成されており、このチャンバの弁室を経由して流体を流通させるための複数のメインポート及び前記チャンバのベーン室両側にそれぞれパイロット流体を出入させるための2つのベーンポートを有する弁本体を具備し、前記ベーンスプールが前記ベーンポートを出入するパイロット流体の圧力により回転揺動するようにパイロット作動式で構成されたことを特徴とする。
望ましくは、前記のようなベーンスプール型方向切換弁は、前述した弁本体のメインポートのうちの一つから供給される流体の一部をとって前記ベーンポートに対してその流体の流れを切換する電磁式パイロット弁を一つまたは二つ含む電磁パイロット作動式で構成されうる。
一方、前記目的を達成する本発明による冷凍サイクル用4方向制御弁は、スプール軸とこのスプール軸の一側に延びた弁部及びその他側に延びたベーン部を有するベーンスプール、このベーンスプールのスプール軸を回転自在に支持する軸支持部と、この軸支持部の一側に拡張されて前記ベーンスプールの弁部を気密な状態で回転移動可能に収納する弁室と、前記軸支持部の他側に拡張されて前記ベーンスプールのベーン部を気密な状態で回転移動可能に収納する弁室とよりなるチャンバと、このチャンバの弁室を経由して冷媒を流通させるための複数のメインポート及び前記チャンバのベーン室両側にそれぞれパイロット冷媒を出入させるための2つのベーンポートを有する弁本体、この弁本体を固着状態で収納してその周囲を密閉するようになっており、前記メインポートと通じる冷媒接続管が付いている弁ケーシング、前記複数のメインポートのうちの一つから供給される冷媒の一部をとって前記ベーンポートに対してその冷媒の流れを切換するパイロット弁手段が備えられたことを特徴とする。
以下、添付された図面を参照して詳細に説明する。
発明を実施するための最良の態様
以下、添付した図面を参照しながら本発明の望ましい実施例を詳細に説明する。便宜上図面には相互同一または対応する部分について同じ参照番号を使用した。
図1ないし図7bは、本発明によるベーンスプール型方向切換弁を空圧用2位置4ポートパイロット作動式で構成した実施例を示したものである。外観を示した図1を参照すれば、弁本体1は本体ブロック2とこの上面にボルト要素で締結される本体蓋部3とよりなっている。4つのメインポートのうち供給ポートP及び排気ポートRは本体蓋部3に、負荷ポートA及びBは本体ブロック2の前面に形成されている。そして、スプール作動のためにパイロットとして作用させる流体を出入させるためのベーンポート36a、36bが本体蓋部3に形成されている。前記排気ポートRを除外した供給ポートPと負荷ポートA及びBそしてベーンポート36a、36bには空圧回路との連結のためのホース用フィッテング6、7a、7b、8a、8bが螺合される。図面において排気ポートRは開放されているが、通常消音器(図示せず)を結合させて使用する。この排気ポートRは油圧用である場合のドレインポートのようなものである。本実施例は実質的にドレインと連結できるように消音器の代わりにドレイン接続のためのフィッテングを設置することによって油圧用としても使われうる。
図2の分解図を参照すれば、弁本体1の本体ブロック2にチャンバ30が形成されているが、そこにベーンスプール10を収納させた後、本体蓋部3を覆ってボルトで締結することによって組立てられる。
ベーンスプール10は図5及び図6に図示されたように、スプール軸17とこのスプール軸17の一側に延びた扇形の弁部18及びその反対側に延びた平板形のベーン部19よりなり、スプール軸17の上端面から弁部18先端面につながって各面に開口されたグルーブ20を有することによって別途の流路を提供するように設計されたものである。このベーンスプール10のスプール軸17上端部と下端部の付近、弁部18の表面及びベーン部19のエッジはそれぞれゴム被膜22、23、24で被覆されることにより、弁本体のチャンバ30内の各部との気密を維持しながら円滑な摺動摩擦が可能に配慮された。
本体ブロック2のチャンバ30は前記のようなベーンスプール10の各部に対応して、図4に図示されたように、軸支持部31とこの軸支持部の一側に拡張された弁室32及びその反対側に拡張されたベーン室33よりなっている。ここで弁室32及びベーン室33の外郭側壁面は軸支持部31の中心を同心円とする円周面で形成されたものである。軸支持部31に挟まれた棒状のシール部材34a、34bは、スプール軸17に軸線方向に接して気密を維持することによって弁室32とベーン室33とをそれぞれ密閉された空間で区切る。弁室32はベーンスプールの弁部18を180゜より小さな範囲、望ましくは90゜以内の範囲で指定された2位置に回転移動させるように形成された。この弁室32の外郭側壁面には同一高さで円周方向に間隔をおいて負荷ポートA及びBが貫通されている。本体蓋部3側の供給ポートPはその弁室32に直接通じ、排気ポートRは前述したベーンスプールのスプール軸17上端面のグルーブ20の開口部と通じる位置に貫通されている(図3参照)。ベーン室33は、前述したベーンスプールのベーン部19を弁室32の指定された位置に対応した角度範囲に移動させるためにパイロット流体の圧力を作用させるためのものであって、その角度範囲の両端に対向する位置に固定ベーン35a、35bを有している。前述した本体蓋部3を貫通した2個のベーンポート36a、36bはそのベーン室33の両側にそれぞれ通じてベーン部19を挟んで両側でそれぞれ流体を出入させうる。
本体蓋部3には前述した本体ブロックのチャンバ30の開口部に対応してその周囲を密閉するためのシール45が介在され、前述したメインポートのうち供給ポートPを本体ブロックのチャンバ内の弁室32に通じるように連結する供給孔46と、ベーンスプールのスプール軸17の上端部を支持しながらそこに開口されたグルーブ20をメインポートのうち排気ポートRと通じるように連結する排気孔47が形成されている。
上記のように実施された方向切換弁はパイロット作動式であって、その作動状態を図7a及び図7bに表した。パイロットとして作用させる流体は通常主回路または別途の回路から取られ、その流体を前記ベーンポート36a、36bのうちいずれか一側を通じてベーン室33に供給し、同時に他側に排気状態に置くことによってベーンスプール10を作動(回転揺動)させることができる。すなわち、一側のベーンポート36bを通じて弁本体内チャンバのベーン室33の一側にパイロット流体が供給され、他側のベーンポート36aが排気または回収可能な状態になれば、その一側に流入されるパイロット流体の圧力が作用して図7aに示したように、スプールのベーン部19が一側の固定ベーン35bより離れて反対側の固定ベーン35aに着いて阻止されるまで逆時計回り方向に回転移動する。この時、その反対側に残留していた流体はそちらのベーンポート36aを通じて外部に排気または回収される。このようにベーンスプール10が逆時計回り方向に回転するにつれて弁部18が逆時計回り方向の終端地点に置かれれば、チャンバ内の弁室32の壁面を貫通した2つの負荷ポートのうち一側の負荷ポートAは開放されて供給ポートPと通じ、他側の負荷ポートBはベーンスプールの弁部18により弁室32内の空間とは遮断されながらそこに形成されたグルーブ20を通じて排気ポートRと連結される。逆に、前記一側のベーンポート36bが開放されると同時に他側のベーンポート36aにパイロット流体が供給されれば、図7bのように、ベーンスプールが時計回り方向に回転してその弁部18により負荷ポートAはスプールのグルーブ20を通じて排気ポートRと連結され、負荷ポートBは供給ポートPと通じる。一方、前記二つのベーンポート36a、36bが共に閉鎖または開放されれば、ベーン室33内のベーンスプールのベーン部19を介した両側の空間に作用するパイロット流体の圧力が対等でベーンスプール10は揺動せず、したがって現在の状態に維持される。
この実施例において、メインポートの数や位置は使用用途によって適切に変更でき、ベーンスプール10のグルーブ20もかならずしも必要なものではない。例えば、排気ポートRを密封した状態で供給ポートPと負荷ポートA及びBだけの3ポート弁として活用できることはもちろんである。これはこの実施例だけでなく以後の実施例でも同様である。
図8ないし図15bは、本発明によるベーンスプール型方向切換弁を電磁パイロット作動式で実施したものである。この実施例の特徴は一般空圧用や油圧用と違ってパイロット弁が弁本体と一体に構成されるという点である。すなわち、外観が図示された図8を参照すれば、弁本体1は本体ブロック2とこの本体ブロック2の上面側の本体蓋部3及び本体ブロック2の下面側のパイロット弁ブラケット4よりなっている。4つのメインポートのうち供給ポートP及び排気ポートRは本体蓋部3に、負荷ポートA及びBは本体ブロック2の前面に形成されている。パイロット弁ブラケット4にはパイロット弁操作のために電気信号で駆動されるソレノイド機構5が一体に結合される。前記排気ポートRを除外した供給ポートPと負荷ポートA及びBには空圧回路を連結するためにフィッテング6、7a、7bが結合される。この実施例また前の実施例で説明されたように油圧用としても使用できることはもちろんである。
この実施例による方向切換弁は、図9及び図10を参照すれば、本体ブロック2、本体蓋部3及びパイロット弁ブラケット4よりなる弁本体1、ベーンスプール10、パイロット弁カップ11と弁シートブロック12、そしてパイロット弁カップ作動のためのソレノイド機構であるソレノイドコイル13、ステム14、プランジャー15及びバネ16で構成される。
ベーンスプール10はその基本構成が前の実施例と同一であり、本実施例のために図12に示したように、スプール軸17の下端面を貫通してグルーブ20と通じるパイロット排気案内孔21をさらに有する。
本体ブロック2はその基本構成が前記の実施例と同一であり、本実施例のために、前述したベーンポート36a、36bが本体ブロック2のベーン室の底面を貫通しており、図11に示されたように、チャンバ30の弁室32の底面を貫通するパイロット供給孔37、軸支持部31の底面中心部を貫通して前記ベーンスプール10に形成したパイロット排気案内孔21と連結されるパイロット排気孔38をさらに有している。
本体ブロック2はまた図13に示されたように、その底面上に設けられたパイロット弁室40を有している。パイロット弁室40は本体ブロックの底面に突出したリブ41に取り囲まれており、前述したパイロット弁カップ11を収容するための弁収容部42と前述した弁シートブロック12を収納するブロック収納部43とに区切られる。このパイロット弁室40のブロック収納部43には前述した2つのベーンポート36a、36b、パイロット供給孔37及びパイロット排気孔38が貫通されている。
パイロット弁室40のブロック収納部43に収納される弁シートブロック12はパイロット弁カップ11の弁シートの提供のためのものであって、図14に示されたように一側面に平坦な弁シート面44を有し、そこに負荷ポートaとb及び排気ポートrに区切られる3つのパイロットポートが形成されている。パイロットポートのうち負荷ポートa及びbはそれぞれ両側面に開口されて前述したベーンポート36a、36bとそれぞれ連結され、排気ポートrは前述したパイロット排気孔38と連結されて前述したベーンスプール10のパイロット排気案内孔21に通じ、最終的にそのベーンスプール10のグルーブ20を経由してメインポートの排気ポートRと連結される。
パイロット弁ブラケット4は、前述した本体ブロックの底面上のパイロット弁室40を形成するリブ41の形状に対応してその周囲を気密に閉じ込めるように本体ブロック2に締結されるものであって、前述したパイロット供給孔37を通じて入り込む流体が弁収容部42に円滑に流通されるように、その周囲に余裕空間部を作るリセス48及びソレノイド機構のステム14を貫通して締結できるネジ孔49を有している。
パイロット弁カップ11は前述したように3つのパイロットポートのうち隣接した2つを包囲して連結する。このパイロット弁カップ11を移動させるためのソレノイド機構のプランジャー15はパイロット弁カップ11を安定的に差し込んで支持するカップ支持溝51を有しており、ステム14内にバネ16と共に挿入される。ステム14はその先端のネジ部52によりパイロット弁ブラケット4のネジ孔49に締結される。樹脂でモールディングされたコイル13はステム14の周囲に挿入されてナット53で締結される。ソレノイド機構のプランジャー15はコイル13の励磁時に発生する電子的推力によりバネ16を押さえつつ下方に引張られ、その励磁電流が遮断されれば押えられたバネ16の弾力により復帰するようになって、パイロット弁カップ11を前述した弁シートブロック12のシート面44と接触させた状態でパイロットポートに対して移動させる。この時、パイロット弁カップ11は3つのパイロットポートのうち上側または下側に隣接した2つを閉じ込めて連結し、残りの一つを開放させる。開放されたパイロットポートには前述したパイロット供給孔37を通じて入り込む流体が供給される。
前記のように実施された切換弁は前述したソレノイドコイルの励磁電流を断続することによって作動される。そのコイルの励磁電流が遮断されていれば、図15aに示されたように、パイロット弁カップ11が上昇して弁シートブロック12に形成された3つのパイロットポートのうち上側に位置した2つ、すなわち最上端の負荷ポートaと中央の排気ポートrとがそのパイロット弁カップ11に閉じ込まれて互いに連結され、残りの最下端の負荷ポートbは前述したパイロット弁室40に露出される。これにより、その露出された負荷ポートbにパイロット用の流体が供給されてそれと連結されたベーンポート36bを通じて弁本体のチャンバ30内のベーン室33の一側に流入され、ベーン室33内のその反対側に残留していた流体はそちらのベーンポート36aとこれに連結された負荷ポートa及び排気ポートrを経由して外部に排気される。このような状態は前記励磁電流が遮断されている間に持続される。このような状態で、ベーンスプールの弁部18は前述した図7aの場合と同様に作動する。
ソレノイドコイルの励磁電流が印加されれば、図15bのようにパイロット弁カップ11が下降して弁シートブロック12に形成された3つのパイロットポートのうち下側に位置した2つ、すなわち最下端の負荷ポートbと中央の排気ポートrとがその下降したパイロット弁カップ11のカップホール50に閉じ込まれて互いに連結され、残りの最上端の負荷ポートaは前述したパイロット弁室40に露出されてそこに流体が供給される。供給される流体は一側のベーンポート36aを通じて本体ブロックのチャンバ内のベーン室33の一側に流入され、反対側に残留していた流体はベーンポート36bと負荷ポートb及び排気ポートrを経由して外部に排気される。このような状態で、ベーンスプールの弁部18は前述した図7bの場合と同様に作動される。
このような作動は、ソレノイドコイルの励磁電流を断続するにつれて断続周期で反復される。したがって、外部の作動器(図示せず)と連結されるメインポートAとBとに対する流体の流れを切換してその作動器の運動方向を変えることができる。一方、停電や非常停止によりソレノイドの励磁電流が遮断されればベーンスプールは常にノーマル状態、すなわち図15a及び図7aのような状態になる。したがって、この実施例は作動器がいずれかの作業工程を行うが、停止や非常停止後に指定された位置で指定された作業から行わせる必要がある場合に適したものである。
図16及び図17は、本発明によるベーンスプール型方向切換弁をデュアル電磁パイロット作動式で実施したものである。この実施例の特徴は、前に実施されたものとは違って二つのソレノイドを具備して、停電や非常停止にも拘らず、その停止時点で中断された作業を続けられるという点である。
この実施例による方向切換弁の本体ブロック2には2つのパイロット弁室40a、40bが形成され、その2つのパイロット弁室40a、40bに一つずつ設置される2つのパイロット弁カップ11a、11b及び各パイロット弁カップ移動のための2つのソレノイド5a、5b機構一体を具備する。
パイロット弁室40a、40bにはパイロット弁カップ11a、11bの弁シートを提供するシート面44a、44bが一体に形成されている。そこに前述した本体ブロックのチャンバ30内のベーン室33のベーンポート36a、36bがそれぞれ貫通され、それと隣接して形成された排気ポートra及びrbを有する。追加された排気ポートra及びrbはそれぞれ本体ブロック2の上面側に向かう途中でその上面側から側面につながって直ちに外部に排気される構造になっている。パイロット弁室40a、40bの各一側には、そこに本体ブロックのチャンバ30内の弁室32の両側端部にそれぞれ若干重畳させることによって自然に形成されるパイロット供給孔37a、37bがある。
前記ソレノイド5a、5bは制御回路(図示せず)により交互に作動されるが、図17は一側ソレノイド5aの信号が遮断され、他側ソレノイド5bの信号が印加された状態を示したものである。信号が遮断されたソレノイド5a側のパイロット弁室40aでは、パイロット弁カップ11aが上昇してその排気ポートraが遮断されてベーンポート36aに流体が供給されうる状態となり、信号が印加されたソレノイド機構5b側のパイロット弁室40bでは、パイロット弁カップ11bが下降してベーンポート36bが排気ポートrbと連結されて排気されうる状態となる。したがって、ベーン室33に置かれたベーンスプールのベーン部19が一側から他側に移動し、これにより弁部18の位置が切換される。ソレノイドの信号が取り替えられれば、一側パイロット弁カップ11aは下降し、他側パイロット弁カップ11bは上昇してその切換動作が逆に切換される。いずれかの時点で停電や非常停止により信号がいずれも遮断されれば、両側パイロット弁カップ11a、11bはいずれも上昇して両側の排気ポートraとrbとも遮断され、ベーンポート36a、36bはいずれも開放された状態となる。すると、両側パイロット弁室40a、40bに作用する流体の圧力が互いに対応し、したがって、メイン弁室のベーン室33内のベーンスプールのベーン部19を介して区切られた両側空間の圧力も対等になる。すなわち、そのベーン部19はいかなる位置ででも現位置で動かずに固定される。このように、停電や非常停止にも拘らず、作動器の現在の動作状態を維持することによって運転が再開される時にいずれかの作業が止めた時点からその作業を連続して行わせることができる。
次に、図18ないし図22a及び図22bは本発明によるベーンスプール型方向切換弁を利用した冷凍サイクル用4方向制御弁に関する実施例であって、弁形式は前の第2の実施例のような電磁パイロット作動式と同じものである。但し、これは高温高圧2相で存在するようになる冷媒に対する使用環境を考慮したものであって、図18に示されたように円筒形のかたい弁ケーシング130を具備する。弁ケーシング130には、その上面の供給ポートPと円周面上の2つの負荷ポートA及びBそして底面中心のドレインポートRに対応して空気調和器の各部、すなわち圧縮器及び熱交換器の各冷媒配管と接続するための冷媒接続管131、132、133、134がそれぞれ溶接されて一列にベンディングされている。ソレノイド170が弁ケーシング130の上面に設置されている。このソレノイド170は電気信号により励磁されて弁を切換するように作動されるが、その電気信号は、例えば空気調和器の冷房運転選択時には印加されずに暖房運転選択時にのみ印加されるものである。
図19の分解図を参照すれば、弁ケーシング130は、例えば黄銅などの金属をカップ状に加工したものであって、その上端のフック部135に円板状のキャップ136を被せてその縁部を溶接することによって密閉させた。この弁ケーシング130とキャップ136とは分解組立てできるように別途のシーリングと共に相互螺合される構造にすることもできる。
弁ケーシング130内に固定的に装着される弁本体140は、例えばエンジニアリングプラスチック等により射出した成形物として提供されうる。これは円筒形胴部141とこの胴部141上側のフランジ部142及びこのフランジ部142上側のブロック支持部143よりなる。胴部141は前述した弁ケーシング130の内周面よりすこし小さくしてその組立てのための挿入を容易にし、フランジ部142は弁ケーシング130の内周面にぴったりする直径にして弁ケーシング130内周面に段差があるように形成したフック部137に載置、固定させた。フランジ部142及びブロック支持部143の一側の切欠部144は、前述した供給ポートPに対応してキャップ136に接続された冷媒接続管131の端部131aを内側に貫通させて収容するためのものである。
前記弁本体140は、胴部141内部に形成された弁室150aとこの弁室150aの反対側を拡張してなったベーン室150bとよりなるチャンバ150を有する。弁室150aはその上側フランジ部142の切欠部144を貫通する供給側メインポート連結口151を通じて前述した供給ポートP側の冷媒接続管131と連通され、また、胴部141の壁面を貫通する負荷側メインポート連結口152、153を通じて前述した負荷ポートA及びB側の冷媒接続管132、133ともそれぞれ連通される。ベーン室150bは十分な空間を確保するために、その胴部141の壁面及び底面が切除されてそこに露出される弁ケーシング130の内周側壁面及び底面そしてその開口された部分両端の固定ベーン157、158により取り囲まれる。このベーン室150bには固定ベーン157、158側壁面に沿ってフランジ部142上にそれぞれ形成された2つのベーンポート154、155が貫通されている。一方、ベーン室150bのドレイン孔156は、フランジ部142の中心を貫通して後述するベーンスプール160のグルーブ164と連結させた。
このような弁本体140の胴部141にはその内側弁室150aとベーン室150b間の部分が直径方向に切欠されており、その切欠された部分にシールブロック145、146が挿入されている。シールブロック145、146は各内側端部には後述するベーンスプール160のスプール軸161との間に気密を維持し、またその外側端部には前述した弁ケーシング130の内周面との間に気密を維持することによって弁室150aとベーン室150bとをそれぞれ密閉された空間で区切る。また胴部141の外周面上の負荷側メインポート連結口152、153周囲に半埋め込み状態に設置されたシール環147、148は、弁ケーシング130内周面を貫通した負荷ポートA及びB周囲に密着されて気密を維持する。これらシールブロック145、146及びシール環147、148は機械的特性に優れて気密性が高い材質として、例えばテフロン系樹脂を使用する。
ベーンスプール160は円筒形のスプール軸161とこのスプール軸161の一側に延びて前述した弁室150aに収容される弁部162、そしてその反対側に延びて前述したベーン室150bに収容されるベーン部163よりなり、その弁部162の先端面からスプール軸161の下端面につながって各面に開口されたグルーブ164を有する。このグルーブ164は弁部162の端部で前述した弁本体140の負荷側メインポート連結口152、153のうちの一つを通じて負荷ポートAまたはBと連通され、スプール軸161の下端で前述した弁ケーシング130底面のドレインポートRと直接連通される。またこのベーンスプール160のスプール軸161上端には、前述した弁本体140のドレイン孔156をそのグルーブ164に連結するためのドレイン連結口165が貫通されている。
このようなベーンスプール160のスプール軸161上端及び下端には、前述した弁本体140のフランジ部142を貫通するドレイン孔165周囲と弁ケーシング130底面のドレインポートR周囲とを密閉するためのテフロン系樹脂剤のシーリング166、167が結合され、弁部162の端部には弁室150a側内周壁面との気密を維持するように、そしてベーン部163周囲にはベーン室150b側天井と弁ケーシング130の内周側壁面及びその底面との気密を維持するようにテフロン系樹脂剤のシールメンバー168、169がそれぞれ結合されている。
次に、パイロット弁手段として、弁本体140のフランジ部142上のブロック支持部143に取り囲まれたパイロット弁室149が設けられており、前述したソレノイド170、ステム171、プランジャー172、パイロット弁カップ175及び弁シートブロック180が備えられている。ソレノイド170はステム171周囲に挟まれてネジ177により固定される。ステム171はその端部がキャップ136を貫通する形でそのキャップ136上に立てられて溶接により固着される。プランジャー172は、ステム171内部にバネ174と共に挿入されてバネオフセット方式で常時ノーマル位置に突出していてソレノイド170の励磁時にその電子的推力により切換位置に引張られる。パイロット弁カップ175はプランジャー172端部に形成したカップ支持溝173に載置され、弁シートブロック180のシート面181に密着された状態で摺動するようにそのプランジャー172により移動される。
前述した弁本体140のブロック支持部143内側のパイロット弁室149に装着される弁シートブロック180は例えば、黄銅などの金属を加工してなったものであって、平坦なシート面181に上下方向に、すなわちプランジャー172の移動方向に間隔をおいて開口された3つのパイロットポート182、183、184を有している。3つのパイロットポート182、183、184のうち隣接する2つの間隔は前述したパイロット弁カップ175の直径よりは小さく、その上側から下側までの距離は大きい。すなわち、パイロット弁カップ175がノーマル位置にある時はその下側に隣接した2つのパイロットポート183、184がパイロット弁カップ175に閉じ込まれて互いに連結され、最上側のパイロットポート182は露出され(図21a参照)、切換位置ではその上側に隣接した2つのパイロットポート182、184がパイロット弁カップ175に閉じ込まれて互いに連結され、最下側のパイロットポート183は露出されることである。この弁シートブロック180のパイロットポート182、183、184のうち上下両側に位置した2つのパイロットポート182、183は前述した弁本体140に形成されている2つのベーンポート154、155とそれぞれ連通され、中央のパイロットポート184は前述したドレイン孔156と連通される。
一方、図4で説明されなかった符号138は、弁ケーシング130に弁本体140を組立てる時にその組立て位置を案内するための凹溝である。
前記のように実施された4方向制御弁の動作を説明すれば、図20で、供給ポートP側の冷媒接続管131を通じて供給される流体(冷媒)は大部分供給側ポート連結口151を通じて弁室150aに流入される一方、その一部が弁ケーシング130の内周面間に設けられた隙間に沿って弁本体140のフランジ部142上側空間に流入されて、その空間に露出された弁シートブロック180の2つのパイロットポート182、183のうちの一つを通じてベーン室150bのいずれか一側に流入される。
前述したソレノイド170が励磁されていない状態ではそのプランジャー172がバネ174により下方に突出しており、この時、パイロット弁カップ175は弁シートブロック180のシート面181上のノーマル位置に置かれるようになる。パイロット弁カップ175がノーマル位置に置かれれば、図21aに図示されたように、弁シートブロック180の3つのパイロットポート182、183、184のうち下側2つのパイロットポート183、184はパイロット弁カップ175に閉じ込まれて互いに連通され、最上側パイロットポート182は露出される。したがって、前述した供給ポートPから供給される流体の一部がその露出された最上側パイロットポート182とこれに連結された一側ベーンポート154とを通じて前述したベーン室150bに移動する。
このように一側ベーンポート154を通じてベーン室150bに入力される流体はベーンスプール160のベーン部163を一側固定ベーン157位置から他側固定ベーン158側に加圧する圧力として作用し、これによりベーンスプール160全体は時計回り方向に回転する。
ベーンスプール160が時計回り方向に回転すれば、図22aに示されたように、2つの負荷ポートA及びBのうち一側負荷ポートAが弁室150aを通じて供給ポートPと連通される一方、他側負荷ポートBはベーンスプール160のグルーブ164を通じてドレインポートRと連結される。すなわち、周知のような空気調和器の冷房運転が行われる状態になる。
ベーンスプール160が時計回り方向に回転する過程で、ベーン室150b内のベーン部163の時計回り方向側に残留していた流体はそこに形成されている他側ベーンポート155を通じて抜け出るが、図21aに図示されたように、そのベーンポート155に連結されたパイロットポート183とパイロット弁カップ175及びパイロットポート184を経由し、次いで図20に示されたように、弁本体140のドレイン孔156とベーンスプール160のドレイン連結口165とを順次経由してベーンスプール160のグルーブ164側に引導され、そのグルーブ164と連結されたドレインポートRを通じてドレインされる。
次に、前述したソレノイド170を励磁させれば、プランジャー172はそのソレノイド170の励磁による電子的推力により上方に引張られ、この時は図21bに示されたようにパイロット弁カップ175が弁シートブロック180のシート面181上の切換位置に置かれる。このようにパイロット弁カップ175が切換位置に置かれれば、弁シートブロック180に形成されている3つのパイロットポート182、183、184のうち上側2つのパイロットポート182、184がパイロット弁カップ175により相互連通され、最下側パイロットポート183が露出される。したがって、前述した供給ポートPから供給される流体の一部がその露出された最下側パイロットポート183に流入され、それと連結されているベーンポート155を通じて前述したベーン室150bの他側に流体が入力される。
このように他側ベーンポート155を通じてベーン室150bに入力される流体はベーンスプール160のベーン部163を他側固定ベーン158の位置から一側固定ベーン157側に加圧する圧力として作用し、これによりベーンスプール160全体が逆時計回り方向に回転する。
ベーンスプール160が逆時計回り方向に回転すれば、図22bに示されたように、2つの負荷ポートA及びBのうち他側負荷ポートBが弁室150aを通じて供給ポートPと連通される一方、一側負荷ポートAはベーンスプール160のグルーブ164を通じてドレインポートRと連結されて、周知のような空気調和器の暖房運転が行われる状態になる。
ベーンスプール160が逆時計回り方向に回転する過程で、ベーン室150b内のベーン部163の逆時計回り方向側に残留していた流体はそこに形成されている一側ベーンポート154を通じて抜け出るが、図21aに図示されたように、そのベーンポート154に連結されたパイロットポート182とパイロット弁カップ175及びパイロットポート184を経由し、次いで図20に示されたように、弁本体140のドレイン孔156とベーンスプール160のドレイン連結口165とを順次経由してベーンスプール160のグルーブ164側に引導され、そのグルーブ164と連結されたドレインポートRを通じてドレインされる。