JP2005514417A - アクリル酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

少なくとも1種の安定剤の存在下に塔中でアクリル酸以外に少なくとも1種の別の凝縮可能な成分を含有する熱い気体混合物の分別凝縮のための方法であり、その際、少なくとも1種の安定剤を少なくとも部分的に溶融液として供給する。

Description

本発明はアクリル酸を含有する熱い気体混合物を分別凝縮する方法に関する。
DE−A19740253および2002年8月5日の出願番号10235847.8を有するドイツ特許出願から、アクリル酸を製造するための接触気相酸化からの反応混合物を分離作用のある内部構造物を有する塔の下方から供給し、かつ凝縮可能な成分を冷却することにより凝縮させることによって該混合物を分別凝縮することができることが公知である。
後者の方法(図1)では有利には次の方法で塔を安定化する:
上方の塔領域を水溶性フェノール化合物、有利にはヒドロキノンモノメチルエーテルにより安定化する。安定剤は酸性水中の溶液として返送流またはクエンチング循環流に添加する。
残りの塔領域をアクリル酸中のフェノチアジン0.1〜1質量%の溶液で安定化し、その際、添加はアクリル酸濃度が5〜15%であるか、または水濃度が80〜95%である塔領域へ行う。添加量は、アクリル酸フラクション(中沸点フラクション、流7)中のフェノチアジン含有率が10〜1000ppm、有利には50〜500ppmとなるように計量する。
ここに記載されている方法の欠点は、低沸点フラクションとして生じ、溶剤として使用される酸性水中で、水溶性フェノール化合物、特にヒドロキノンモノメチルエーテルが限定的に溶解するにすぎないことである。このことにより大量の安定剤溶液が必要となる。
さらに、効果的であるが、しかし水溶性がほとんどない安定剤のフェノチアジンを、上方の塔領域における高い水濃度により該領域に供給することができないことが欠点である。フェノチアジンのための通例の溶剤として酸性水またはアクリル酸のみが考えられる。その他の溶剤は異物を系に導入し、従って望ましくない。フェノチアジンは酸性水中で実質的に不溶性である。溶剤としてのアクリル酸によって、このために使用されるアクリル酸は酸性水により失われる。
ところで本発明は、フェノチアジンを用いてアクリル酸を製造する際に、高い水濃度が存在する領域においても安定化することができる方法を開発するという課題に基づいている。
前記課題は本発明により、アクリル酸以外に少なくとも1種の別の凝縮可能な成分を含有する熱い気体混合物を、少なくとも1種の安定剤の存在下に塔中で分別凝縮する方法において、少なくとも1種の安定剤を少なくとも部分的に溶融液として供給することにより解決されることが判明した。
本発明による方法は一般に次のとおりに実施される:
熱い気体混合物として、C−アルカン、−アルケン、−アルカノールおよび/または−アルカナールおよび/またはこれらの中間体を公知の方法によりアクリル酸へと接触気相酸化する際に生じる反応混合物のような気体混合物が適切である。アクリル酸を製造するために特に有利にはプロペン、プロパンおよびアクロレインを使用する。しかしまたアクリル酸のための出発化合物として、本来のC−出発化合物が気相酸化の間に初めて中間的に形成される化合物を使用することもできる。アクリル酸を直接プロパンから製造することができる。原料としてプロパンを使用する場合、プロパンを公知の方法により接触酸化的脱水素、均一系による酸化的脱水素または接触脱水素によりプロペン−/プロパン−混合物へと反応させることができる。適切なプロペン−/プロパン−混合物はラフィネートプロペン(プロペン約70%およびプロパン約30%)または分解プロペン(プロペン約95%およびプロパン約5%)である。プロペン−/プロパン−混合物をアクリル酸の製造のために使用する場合、プロパンは希釈ガスおよび/または反応体として作用する。アクリル酸を製造する場合、通常、選択された反応条件下で不活性ガス、たとえば窒素(N)、CO、飽和C〜C−炭化水素および/または水蒸気により出発ガスを希釈し、かつ酸素(O)または酸素含有ガスを含有する混合物中で高めた温度(通常200〜450℃)ならびに場合により高めた圧力で遷移金属(たとえばMo、V、Wおよび/またはFeを含有する)混合酸化物触媒に通過させ、かつ酸化によりアクリル酸へと変換する。この反応はたとえば1段または多段で実施する。
生じる反応ガス混合物は所望の酸以外に、未反応のアクロレインおよび/またはプロペン、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、酢酸、プロピオン酸、ホルムアルデヒド、その他のアルデヒドおよびマレイン酸もしくは無水マレイン酸のような副成分を含有する。反応ガス混合物は通常、そのつど全反応ガス混合物に対してアクリル酸1〜30質量%、プロペン0.01〜1質量%およびアクロレイン0.05〜1質量%、酸素0.05〜10質量%、酢酸0.01〜3質量%、プロピオン酸0.01〜2質量%、ホルムアルデヒド0.05〜1質量%、その他のアルデヒド0.05〜2質量%、マレイン酸および無水マレイン酸0.01〜0.5質量%ならびに残分として不活性希釈ガスを含有する。不活性希釈ガスとして特に飽和C〜C−炭化水素、たとえばメタンおよび/またはプロパン、さらに水蒸気、酸化炭素および窒素が含有されている。従ってこのような気体混合物は目的成分であり、主として中沸点フラクションとして凝縮するアクリル酸以外に、高沸点および低沸点範囲のその他の化合物ならびに凝縮することができない成分を含有している。中沸点フラクションは実質的に、標準圧力でアクリル酸の場合、たとえば120℃〜180℃の温度範囲の沸点、特に有価生成物の沸点の±10℃の範囲の沸点、つまりアクリル酸の場合、約131〜151℃の沸点を有する成分を含む。
反応ガス混合物の冷却はたとえば当業者に自体公知であり、かつ熱交換器により間接的に、またはたとえばクエンチングにより直接的に、有利には直接的な冷却により行うことができ、熱交換器には何の制限もない。
これは図1〜5に示されているように塔の塔底領域でも、塔から分離された別の装置IV中でも行うことができる。この場合、導管1からの200〜400℃の温度を有する凝縮すべき熱い気体混合物をクエンチングIV中で通常は100〜180℃の温度に冷却し、かつ導管2を介して塔の塔底領域I.aに供給する。導管3を介して冷却媒体(I.aからの気化されなかった高沸点フラクション)を熱い気体混合物の冷却のためにクエンチングIVに返送する。
特別な実施態様ではI.aおよびI.bからの高沸点フラクションをクエンチングに返送する(図2、流3および流3a)。この場合、特に有利には熱交換器を使用せずに、I.bからの高沸点フラクションを装置IVに直接供給する(図2、流3a)。
循環流III/IVからの冷却媒体の一部、通常は側方流中の凝縮液100質量%に対して0.5〜5質量%はプロセスから排出することができる(流4)。この流はアクリル酸を製造する場合に通常、次の組成を有する:
アクリル酸10〜40質量%、
ジアクリル酸10〜40質量%、
マレイン酸/無水マレイン酸5〜15質量%、
安息香酸1〜3質量%、
フタル酸/無水フタル酸2〜6質量%、
安定剤、ポリマーのアクリル酸、アクリル酸の高分子マイケル付加生成物(トリアクリル酸、テトラアクリル酸など):残分。
この場合、排出とは廃棄処分、たとえば燃焼を意味していてもよく、または排出流をたとえば高沸点物質の分解の目的のために、たとえば熱によりおよび/または触媒により処理することができ、これらの分離された分解生成物をふたたび任意の箇所で本発明によるプロセスへ供給することができる。
クエンチング装置IVとして従来技術においてこの目的のために公知の全ての装置(たとえば噴霧水、ベンチュリースクラバー、泡鐘塔または噴霧される表面を有するその他の装置)を使用することができ、その際、有利にはベンチュリースクラバーまたは噴霧冷却器を使用する。
クエンチング液の間接的な冷却または加熱のために全ての通例の伝熱媒体または熱交換器が適切である。有利なものとして管束熱交換器、プレート式熱交換器および空気冷却器が挙げられる。クエンチング液の温度は熱交換器IIIを出た後に通常は70〜200℃、しばしば100〜150℃である。適切な冷却媒体は相応する空気冷却器の場合には空気であり、かつその他の冷却装置の場合には冷却液、特に水である。
分離タスクに依存して熱交換器IIIを省略する可能性もまた存在する(図3および図4)。
内部構造物を備えた蒸留塔の下方領域Iaに導入される冷却された生成物ガス混合物は、分別凝縮により1つまたは複数の低沸点、中沸点および高沸点のフラクションに分離され、これらをそれぞれの塔区間で側方排出部を介して留去する。
塔中で支配的な運転圧力は通常、0.5〜5バール(絶対)、しばしば0.5〜3バール(絶対)および多くの場合0.5〜2バール(絶対)である。
塔の内部構造物として原則として全ての通例の内部構造物、特にトレー、パッキングおよび/または充填体が考えられる。トレーの中で、泡鐘トレー、多孔板トレー、バルブ型トレー、トールマントレーおよび/またはデュアル・フロー・トレーが有利である。一般に棚段塔の場合、分離トレーの総数は20〜80、有利には50〜80である。
さらに塔に付加的な冷却サイクルを追加する可能性が存在する。このために塔から捕集トレーにより液体を取り出し、この液体を適切な熱交換器により冷却し、かつ冷却した液体を塔の取り出し箇所の上方にふたたび供給する(図には示されていない)。
当然のことながら熱交換器/冷却クエンチングシステムIII/IV中でも適切な希釈剤を使用することができる。適切な希釈剤は、標準圧力で180℃〜320℃の沸点または沸点範囲を有する反応条件下で不活性の極性溶剤である。エチルヘキサン酸、ジフェニルエーテル、ノニルフェノール、ジブチルホルムアミドが有利である。希釈剤は排出された高沸点フラクション(流4)の蒸留による後処理の際に回収し、かつ返送することができる。場合により高沸点フラクションに熱交換器/クエンチングシステムIII/IV中で市販の分散助剤を添加することができる。アニオン性、カチオン性および非イオン性の分散助剤が適切である。
一番下の塔領域(Ia、高沸点物質の排出部の下方の領域)で高沸点物質は実質的に凝縮しない。(ただし場合により冷却ブリッジを除く)。
排出されたクエンチング液(流4)は有利には熱および/または触媒により分解することができ、その際、再分解可能な有価生成物、たとえばオリゴマーのアクリル酸を公知の方法でアクリル酸へと分解することができる。分解生成物を有利にはふたたびクエンチングまたは塔に供給する。
有利には排出されるクエンチング液(流4)を熱処理する。熱処理は多くの場合、170℃〜190℃および圧力300〜900ミリバールで実施する。滞留時間は一般に1〜10時間である。分離される分解生成物は有利にはふたたびクエンチングまたは塔に供給する。滞留時間は有利には分解残留物の粘度により制御されるので、分解残留物は排出温度でポンプ輸送可能なままである。特に有利には分解残留物を周期的に排出し、かつ適切な希釈剤、たとえばメタノール10〜30%を用いて希釈する。希釈した分解残留物の流動点は通常、20〜50℃である。
側留で中沸点物質として取り出された粗製アクリル酸(流5)はアクリル酸以外に通常はさらに、そのつど粗製アクリル酸の質量に対して
低級カルボン酸、たとえば酢酸0.1〜2質量%、
水0.5〜5質量%、
低分子アルデヒド0.05〜1質量%、
マレイン酸および/またはその無水物0.01〜1質量%、
安定剤1〜500ppm
を含有する。
中沸点フラクションとして取り出した粗製アクリル酸(流5)は直接エステル化するか、またはさらに精製する目的のために結晶化に供給することができ、その際、この場合には生じる母液を有利には再度返送流として塔に供給する(中沸点フラクションの排出部の下方、流6)。
このような結晶化は通常、溶剤を添加しないで、特に有機溶剤を添加しないで実施される。使用すべき結晶化法には制限はない。結晶化は連続的に、または不連続的に、一段または多段でほぼ任意の純度まで実施することができる。必要な場合には結晶化の前に結晶化により精製すべき粗製アクリル酸に水を添加することができる(含有されているアクリル酸の量に対して10質量%まで、またはそれ以上、有利には5質量%まで)。このような添加により粗製アクリル酸中に副生成物として含有されている低級カルボン酸、たとえば酢酸の分離が容易になる。というのも、該カルボン酸は水が存在する場合にアクリル酸結晶中にわずかに組み込まれるからである。さらに水の存在により結晶器中のスケール形成が低減する。
分離タスクに依存して中沸点フラクションとして取り出される粗製アクリル酸の一部を付加的な返送流として塔区間I.bにおいて使用する(流6)可能性も生じる。
塔の低沸点フラクションの冷却はたとえば熱交換器により間接的に、またはたとえばクエンチングにより直接的に、有利には直接的な冷却により行うことができ、熱交換器は当業者に自体公知であり、かつ何の制限もない。
冷却は塔から分離して別の装置(図5を参照のこと)中でも、図1に示されているように塔I.dの塔頂領域でも行うことができる。この場合、凝縮した低沸点フラクションを塔領域I.d(流7)から通常は50〜100℃の温度で冷却器IIに供給する。
凝縮した低沸点フラクションの間接的な冷却のために、全ての通例の伝熱媒体または熱交換器が適切である。管束熱交換器、プレート式熱交換器および空気冷却器が有利なものとしてあげられる。凝縮した低沸点フラクションの温度は熱交換器IIを出た後に通常、20〜60℃、しばしば20〜35℃である。適切な冷却媒体は相応する空気冷却器の場合、空気であり、かつその他の冷却装置の場合、冷却液、特に水である。
統合された熱の範囲で、低沸点フラクションの凝縮熱は当然のことながら完全に、または部分的に結晶化においてアクリル酸の結晶を溶融するために、またはアクリル酸を含有する熱い気体混合物を生じるために反応器の前で液状プロペンを気化するために利用することができる。
低沸点フラクション(流7、酸性水)は部分的に、塔頂に返送することができ(流8)、部分的に塔区間I.cのための返送流として使用することができ(流9)かつ部分的に排出する(流10)ことができる。該フラクションはアクリル酸を製造する場合、通常、
水80〜95質量%、
酢酸2〜15質量%、
アクリル酸1〜5質量%、
低級アルデヒド(たとえばアクロレイン、ホルムアルデヒド)0.05〜1質量%
からなる。
塔の塔頂に返送される低沸点フラクションの部分は通常、塔の分離作用のある内部構造物の均一な気体および液体の負荷および最適な物質分離が保証されるように制御する。有利にはいわゆる「モーダル」な温度制御を使用する:このために顕著な温度もしくは濃度の変化の範囲で3つの温度測定箇所を導入する(所属する温度T1、T2およびT3)。3つの温度測定個所から得られる値、たとえば(T1−2×T2+T3)を次いで塔の還流のための制御量として使用することができる。さらに「モーダル」な温度制御の代わりに導電性制御が可能である。
有利には低沸点物質の凝縮は、酸性水により運転される外部に存在するクエンチングV中で行うこともできる(図5)。原則としてこのクエンチングシステムは、クエンチングシステムIVに関して記載されているように構成することができる。
生成物ガス混合物の凝縮することができない成分(窒素、酸素、プロパン、プロペン、もしくはイソブタン、イソブテン、一酸化炭素、二酸化炭素など)を塔の塔頂で(流11)排出するか、または有利には、場合により精製した後に、少なくとも部分的に循環ガスとして気相酸化に返送する。特に有利であるのは流11を蒸留塔の塔頂温度に対して4〜10℃過熱することであり、このことにより排ガス導管または循環ガス導管中の可能な凝縮が回避される。
塔の塔底における温度は一般に90〜130℃であり、これに対して塔頂温度は通常、50〜100℃、しばしば60〜70℃である。
粗製アクリル酸(流5)の取り出し温度は多くの場合、80〜110℃である。粗製アクリル酸を14〜20℃に予冷し、かつ、所望の場合には、結晶化装置に供給する。このような結晶化からの母液を85〜95℃に予熱し、かつ塔に返送する(流6)。当然のことながら、この場合、流6を予熱するために流5の熱を利用することができる(統合されたエネルギー)。この場合、特に有利にはすでに予冷した流5を結晶化装置中で生じるアクリル酸の結晶を溶融するために使用する。このために使用可能な熱交換器には何の制限もない。
塔への酸性水(流8)の返送温度は通常、20〜35℃である。
分別凝縮のために使用される塔には特別な制限は存在しない。基本的に分離作用のある内部構造物を有する全ての塔が適切である。
塔は少なくとも1つの冷却装置を含む。このために、凝縮の際に放出される熱を間接的に(外部で)除去する全ての伝熱媒体または熱交換器が適切である。このために全ての通例の装置を使用することができ、その際、管束熱交換器、プレート式熱交換器および空気冷却器が有利である。適切な冷却媒体は空気冷却器の場合には相応して空気であり、かつその他の冷却装置の場合には冷却液、特に水である。冷却装置が1つだけ備えられている場合には、冷却装置はその中で低沸点フラクションを凝縮させる塔の塔頂に設置される。当業者は凝縮されるフラクションひいては成分の所望の純度に依存して必要とされる冷却装置の数を容易に決定することができ、その際、凝縮される成分の純度は実質的に塔設備の分離能、つまり塔の高さ、直径および凝縮すべき気体混合物に投入されるエネルギーにより決定される。有利には複数の冷却装置が存在する場合、該装置を塔の種々の区間に組み込む。たとえば高い割合の凝縮することができない成分以外にそれぞれ少なくとも1つの高沸点フラクション、中沸点フラクションおよび低沸点フラクションを含有する熱い気体混合物の場合、1つの冷却装置は高沸点フラクションの凝縮のために塔の下方の区間に、および1つの冷却装置は低沸点フラクションの凝縮のために塔の塔頂に備えられていてもよい。凝縮されるフラクションは塔のそのつどの区間において有利には側方排出部または捕集トレー中に案内される。高沸点、中沸点および低沸点のフラクション中の成分の数に依存してそのつど複数の側方出口が備えられていてもよい。側方出口を介して留去されるフラクションを次いでさらにたとえば蒸留もしくは抽出による分離法または結晶化により、副成分の性質および成分の所望の純度に応じてさらに生成段階を行うことができる。本発明の有利な1実施態様では1つの高沸点物質出口、1つの低沸点物質出口および1つもしくは2つの中沸点出口が想定される。
塔中に存在する圧力は凝縮することができない成分の量に依存し、かつ通常、0.5〜5バールの絶対圧力、しばしば0.5〜3バールの絶対圧力および多くの場合、0.5〜2バールの絶対圧力である。塔のための前記の運転条件、たとえば温度および圧力の設定、冷却装置の切り替えおよび配置、所望のフラクションを除去するための側方出口の配置、塔の高さおよび塔の直径の選択、塔中の分離作用のある内部構造物/トレーの数および間隔、または分離作用のある塔内部構造物の種類は当業者がその技術分野で通例の試験の範囲で分離タスクに依存して確認することができる。
高沸点フラクションのための側方出口は、塔の一番下の捕集トレーに設置されており、該出口の構成には何の制限もない。所望の場合には複数の高沸点物質出口のために複数の捕集トレーを使用することもでき、これらは最も下の捕集トレー以外は適切なオーバーフロー装置を有していてよい。
アクリル酸の自体公知の安定剤の存在下での本発明による方法の実施態様は有利である。
本出願の意味での安定剤は、アクリル酸の重合を遅延および/または防止する化合物である。
安定剤としてたとえばフェノール化合物、アミン、ニトロ化合物、リンもしくは硫黄含有化合物、ヒドロキシルアミン、N−オキシルおよび特定の無機塩、ならびに場合によりこれらの混合物が分子酸素の存在下、または非存在下で適切である。
フェノチアジン、N−オキシルまたはフェノール化合物のような安定剤が有利である。
N−オキシル(ニトロキシルもしくはN−オキシルラジカル、少なくとも1つの>N−O・基を有する化合物)はたとえば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシルまたは3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル。
フェノール化合物はたとえばアルキルフェノール、たとえばo−、m−もしくはp−クレゾール(メチルフェノール)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチル−フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、または2,2′−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4′−オキシジフェニル、3,4−メチレンジオキシジフェノール(セサモール)、3,4−ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ピロカテキン(1,2−ジヒドロキシベンゼン)、2−(1′−メチルシクロヘキシ−1′−イル)−4,6−ジメチル−フェノール、2−もしくは4−(1′−フェニル−エチ−1′−イル)−フェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2,4,6−トリス−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール[11066−49−2]、オクチルフェノール[140−66−9]、2,6−ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールS、3,3′,5,5′−テトラブロモビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、BASF AG社のKoresin(R)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−t−ブチルピロカテキン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリエチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、6−イソプロピル−m−クレゾール、n−オクタデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオニルオキシエチル−イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)−イソシアヌレートまたはペンタエリトリット−テトラキス−[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチル−フェノール、6−s−ブチル−2,4−ジニトロフェノール、Ciba Spezialitaetchemie社のIrganox(R)565、1141、1192、1222および1425、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステル、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヘキサデシルエステル、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチルエステル、3−チア−1,5−ペンタンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)プロピオネート]、1,9−ノナンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7−ヘプタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、1,1−メタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(3′,5′−ジ−メチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシ−フェン−1−イル)メタン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェン−1−イル)メタン、ビス[3−(1′−メチルシクロヘキシ−1′−イル)−5−メチル−2−ヒドロキシ−フェン−1−イル]メタン、ビス(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチル−フェン−1−イル)メタン、1,1−ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−フェン−1−イル)エタン、ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−フェン−1−イル)スルフィド、ビス(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチル−フェン−1−イル)スルフィド、1,1−ビス(3,4−ジメチル−2−ヒドロキシ−フェン−1−イル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(5−t−ブチル−3−メチル−3−メチル2−ヒドロキシ−フェン−1−イル)−ブタン、1,3,5−トリス[1′−(3″,5″−ジ−t−ブチル−4″−ヒドロキシ−フェン−1″−イル)−メチ−1′−イル]−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,1,4−トリス(5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−2′−メチル−フェン−1′−イル)ブタン、アミノフェノール、たとえばp−アミノフェノール、ニトロソフェノール、たとえばp−ニトロソフェノール、p−ニトロソ−o−クレゾール、アルコキシフェノール、たとえば2−メトキシフェノール(グアジャコール(Guajacol)、ピロカテキンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−もしくはジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)エタノン(アセトバニロン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、たとえばα−、β−、γ−、δ−およびε−トコフェロール、トコール、α−トコフェロールヒドロキノン、ならびに2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)、キノンおよびヒドロキノン、たとえばヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、4−メチルピロカテキン、t−ブチルヒドロキノン、3−メチルピロカテキン、ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、3−メチルピロカテキン、4−メチルピロカテキン、t−ブチルヒドロキノン、4−エトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエステル、p−フェノキシフェノール、2−メチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、ジエチル−1,4−シクロヘキサジオン−2,5−ジカルボキシレート、フェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ベンジル−p−ベンゾキノン、2−イソプロピル−5−メチル−p−ベンゾキノン(チモキノン)、2,6−ジイソプロピル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、エンベリン(embeline)、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、2−アミノ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ビスフェニルアミノ−1,4−ベンゾキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アニリノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、N,N−ジメチルインドアニリン、N,N−ジフェニル−p−ベンゾキノンジイミン、1,4−ベンゾキノンジオキシム、コエルリグノン(coerulignone)、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェノキノン、p−ロゾール酸(アウリン)、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジリデン−ベンゾキノンまたは2,5−ジ−t−アミルヒドロキノンである。
芳香族アミンはたとえばN,N−ジフェニルアミンであり、フェニレンジアミンはたとえばN,N′−ジアルキル−p−フェニレンジアミンであり、その際、アルキル基はそのつど相互に無関係に1〜4個の炭素原子を有しており、かつ直鎖状もしくは分枝鎖状であってよく、ヒドロキシルアミンはたとえばN,N−ジエチルヒドロキシルアミンであり、リン含有の化合物はたとえばトリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィットまたはトリエチルホスフィットであり、硫黄を含有する化合物はたとえばジフェニルスルフィドであり、かつ無機塩はたとえば銅、マンガン、セリウム、ニッケル、クロムの塩化物、ジチオカルバミン酸塩、硫酸塩、サリチル酸塩または酢酸塩である。
有利であるのはフェノチアジン、p−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテルならびに酢酸マンガン(II)、炭酸セリウム(II)または酢酸セリウム(III)であり、特に有利であるのはフェノチアジン、p−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテルである。
とりわけ有利であるのは、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびヒドロキノンモノメチルエーテルとフェノチアジンとからなる混合物である。
安定剤の添加の種類は制限されていない。添加される安定剤はそのつど単独で、または液状もしくは適切な溶剤に溶解した形で混合物として添加することができ、その際、溶剤自体が安定剤であってもよい。
安定剤はたとえば適切な調製物として塔の任意の箇所で、外部の冷却サイクルまたは適切な返送流に添加することができる。塔または外部の冷却サイクルへの直接的な添加が有利である。
複数の安定剤の混合物を使用する場合、該安定剤は相互に無関係に異なるか、または同一の前記の供給部に供給することができる。
複数の安定剤の混合物を使用する場合、該安定剤も相互に無関係に異なった溶剤中に溶解することができる。
塔中での安定剤の濃度は個々の物質に応じて1〜10000ppm、有利には10〜5000ppm、特に有利には30〜2500ppmおよびとりわけ50〜1500ppmであってよい。
塔の安定化は有利には次のとおりに行う:
上部の塔領域は少なくとも1種のフェノール化合物、有利にはヒドロキノンモノメチルエーテルにより安定化される。安定剤の添加は本発明によれば溶融液として塔区間I.cの上方部分(図1、流12)、有利には最上部のトレー上に、および/またはクエンチング循環流I.d/II(図に示されていない)に行い、その際、濃度を安定剤が供給される流に対して50〜2500ppm、有利には200〜1500ppmに調整する。
これは有利にはその中でたとえば120℃未満、有利には100℃未満、特に有利には80℃未満およびとりわけ60℃未満の低い融点を有する少なくとも1種の安定剤の溶融液が、たとえば120℃以上、有利には140℃以上、特に有利には160℃以上およびとりわけ180℃以上の高い融点を有する少なくとも1種の安定剤のための溶剤として使用される安定剤混合物である。
特に有利には、溶融液中に少なくとも1種の別の安定剤、特に有利にはフェノチアジンを溶解し、その際、溶融液に対して1〜20質量%、有利には5〜10質量%の濃度を調整する。
当然のことながら付加的に水溶性の安定剤を別々に水溶液として塔区間I.cの上部に、またはクエンチング循環流I.d/IIに供給することができる。
通常の塔領域はアクリル酸中フェノチアジンの0.1〜1.5質量%の溶液により安定化することができ、その際、添加は有利には、アクリル酸濃度が5〜20%、好ましくは12〜18%、もしくは水濃度が40〜95%、有利には40〜60%である塔領域で行う(流13)。添加量は、アクリル酸フラクション(中沸点フラクション、流5)中のフェノチアジン含有率が10〜1000ppm、有利には50〜500ppmであるように計量する。
前記の「上部の塔領域」は、アクリル酸および水が前記の濃度で存在する塔領域の上方の領域である。
安定剤溶液または安定剤溶融液はポンプにより計量供給することができる。加圧受け器は安定剤溶融液に関して有利である。従ってたとえばヒドロキノンモノメチルエーテル/フェノチアジンの溶融液を直接、溶融容器または受け器から調整弁を介して塔に圧入することができる。このために適切な気体、たとえば窒素含有ガス、たとえば窒素、空気または空気−窒素混合物を容器に装入し、かつ所望の圧力に加圧する。このために2〜10バールの圧力が有利である。特に有利には、溶融容器または受け器が充填される場合には、安定剤供給を行う緩衝容器を使用する。それぞれの容器、弁、ポンプまたは導管は、溶融液の固化を防止するために加熱することができる。
酸化反応の熱い生成物ガス混合物を100〜180℃に冷却するクエンチングIVは通常、付加的な安定化を必要とする。
液体によりほとんど濡れない塔の面は通常、安定化液が噴霧される。有利には捕集トレー上で取り出される液体(たとえば流5)の一部を捕集トレーの上方で付加的に濡らすために噴霧する。特に有利には、該面を濡らすために返送流の一部を捕集トレーの下方でその下側面に噴霧する。
フェノール化合物、特にヒドロキノンモノメチルエーテルがフェノチアジンにとって良好な溶剤であることは驚くべきであると言わなくてはならない。100℃の融点まででフェノチアジン約20%までを溶解することができる。酸性水中でのフェノチアジンのわずかな溶解度にもかかわらず、本発明による安定化は、上方の塔領域でフェノチアジンによる固体の堆積または閉塞を生じない。
本発明のもう1つの対象は、
a)少なくとも1種のフェノール化合物、
b)フェノチアジンおよび
c)場合により安定剤として作用する少なくとも1種の別の化合物
からなる溶融液である。
一般的な本発明による溶融液は次の組成を有する:
a)60〜99質量%、有利には80〜95質量%および特に有利には90〜95質量%、
b)1〜20質量%、有利には5〜15質量%および特に有利には5〜10質量%および
c)0〜20質量%、有利には0〜15質量%、特に有利には0〜5質量%およびとりわけ有利には0質量%
その際、合計は常に100質量%である。
c)が上記のN−オキシル−化合物および無機塩、特に有利にはN−オキシル−化合物から選択されている溶融液が有利である。
フェノール化合物a)が上記のフェノール化合物、特に有利にはp−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、ヒドロキノンおよびヒドロキノンモノメチルエーテルから選択されている溶融液が特に有利である。化合物a)は特にヒドロキノンモノメチルエーテルである。
本発明による溶融液の融点は通常100℃未満であり、80℃未満の融点を有する溶融液およびとりわけ有利には60℃未満の融点を有する溶融液が有利である。
さらに本発明の対象は、エチレン性不飽和化合物、たとえばスチレン、アクリルニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレンまたはクロロプレン、有利にはα,β−エチレン性不飽和カルボニル化合物、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、アクロレイン、メタクロレイン、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸メチルエステル、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレート、特に有利にはアクリル酸、メタクリル酸、アクロレインまたは無水マレイン酸、とりわけ有利にはアクリル酸およびメタクリル酸および殊にアクリル酸を製造する方法において該化合物の安定化のための本発明による溶融液の使用である。
本発明による方法により安定剤バッチを準備する際のコストの低下によるアクリル酸の後処理の改善された経済性ならびに上方の塔領域における改善された安定化が可能になり、このことはより高い収率および塔のより長い運転時間ひいてはわずかな運転停止時間につながる。
本発明のもう1つの対象は、少なくとも1種のフェノール性安定剤を含有する安定剤組成物の存在下での少なくとも1種の重合性化合物を含有する物質混合物の精留分離のための方法であり、この場合、安定剤組成物を溶融液として精留ユニットに供給する。
重合性化合物はエチレン性不飽和化合物、有利にはラジカル重合の機構によって重合することができるエチレン性不飽和化合物である。例として(メタ)アクリル酸と1〜20個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、たとえば(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、ビニル芳香族化合物、たとえばスチレン、ジビニルベンゼン、α,β−不飽和ニトリル、たとえばアクリルニトリル、メタクリルニトリル、α,β−エチレン性不飽和アルデヒド、たとえばアクロレイン、メタクロレイン、ビニルエステル、たとえばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ハロゲン化エチレン性不飽和化合物、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、共役結合した不飽和化合物、たとえばブタジエン、イソプレン、クロロプレン、モノ不飽和化合物、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソ−ブテン、環式のモノ不飽和化合物、たとえばシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロドデセン、N−ビニルホルムアミド、アリル酢酸、ビニル酢酸、3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸、ならびにこれらの水溶性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸およびイタコン酸、マレイン酸、N−ビニル−ピロリドン、N−ビニルラクタム、たとえばN−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−アルキル−カルボン酸アミドまたはN−ビニル−カルボン酸アミド、たとえばN−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミドおよびN−ビニル−N−メチルアセトアミド、ビニルエーテル、たとえばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソ−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、s−ブチルビニルエーテル、イソ−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、またはビニルホスホン酸ならびにこれらの混合物が挙げられる。
有利であるのは(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、ハロゲン化されたエチレン性不飽和化合物、モノエチレン性不飽和カルボン酸およびビニルエーテル、特に有利であるのは(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物およびモノエチレン性不飽和カルボン酸、殊に有利であるのは(メタ)アクリル酸エステルおよびモノエチレン性不飽和カルボン酸および特にモノエチレン性不飽和カルボン酸である。
重合可能な成分を含有する物質混合物は、室温(25℃)で液状の成分の少なくとも50質量%、有利には少なくとも60質量%、特に有利には少なくとも75質量%、殊に有利には少なくとも85質量%およびとりわけ少なくとも90質量%が重合性化合物からなるものである。
精留分離とはここで、ほぼ気体状の供給流の分別凝縮またはほぼ液状の供給流の蒸留を意味しうる。精留分離はたとえば1〜150の理論分離段、有利には2〜120、特に有利には5〜100、とりわけ有利には10〜80および殊に20〜50の理論分離段を有する分離塔で行うことができる。
精留ユニットは自体公知の構造であり、かつ通常の内部構造物を有する。塔の内部構造物として原則として全ての通例の内部構造物が考えられ、たとえばトレー、パッキングおよび/または充填体が考えられる。トレーの中で泡鐘トレー、多孔板トレー、バルブ型トレー、トールマントレーおよび/またはデュアル・フロー・トレーが有利であり、充填体の中でリング、ヘリックス、サドル、ラシヒリング、イントスリングまたはポールリング、ベルルサドルまたはインターロックサドル、トップ・パックなどまたはブレードが有利である。
精留ユニットは通常、通例の構造の少なくとも1つの凝縮器、たとえば直接式もしくは間接式冷却器、有利には管式もしくはプレート式熱交換器またはクエンチング冷却器を有し、蒸留ユニットはさらに、通常の構造の少なくとも1つの気化器、たとえば管束気化器、プレート式気化器、薄膜または流下膜式蒸発器を有する。
塔底および塔頂の温度および圧力は分離すべき重合性化合物に合わせて調整する。通常、蒸留温度を低下させるために低下させた圧力で作業するが、しかし易揮発性化合物の場合、精留は高めた圧力でも実施することができる。
塔頂の温度および圧力の例は以下の重合性化合物に関して次のとおりである:
Figure 2005514417
そのつどの塔底温度は理論分離段の数に依存して通常、塔頂温度よりも10〜50℃高い。
安定剤組成物は組成物の少なくとも50質量%、有利には少なくとも65質量%、特に有利には少なくとも75質量%、とりわけ有利には少なくとも90質量%および特に100質量%が安定化すべき重合性化合物の重合、有利にはラジカル重合に対する安定剤として効果がある安定剤組成物である。
このような安定剤組成物の融点は有利には0℃を上回り、かつ特に有利には25℃を上回る。このような安定剤組成物の融点はたとえば100℃未満であり、有利には80℃未満であり、かつ特に有利には60℃未満である。
安定剤組成物はたとえば少なくとも1種の上記のフェノール化合物、有利にはp−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテル、特に有利には2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテルを含有し、とりわけ有利には安定剤組成物は上記の本発明による溶融液を1種含有し、かつ殊に安定剤組成物は上記の本発明による溶融液を1種含有する。
溶融液としての安定剤組成物の供給は、接続された導管および装置、たとえば凝縮器、冷却器、蒸発器または真空装置を含む精留ユニットの任意の箇所で行うことができ、有利には塔の上半分で(分離効果のある内部構造物の数に対して)、特に有利には上三分の一で、とりわけ有利には上四分の一で、および殊には特に最上部のトレー上の上十分の一で供給を行う。もう1つの有利な実施態様では、溶融した安定剤組成物を返送流に供給し、かつ返送流と一緒に塔の上部に案内する。
本出願で使用されるppmおよびパーセントの記載は、その他の記載がない限り、質量%および質量ppmである。
本発明による方法を以下の実施例により詳細に説明する。
実施例(図5)
不均一系触媒による接触気相酸化から、次の組成を有し、270℃を有する生成物混合物(流1)が得られた:
アクリル酸11.5質量%、
酢酸0.28質量%、
プロピオン酸27質量ppm、
無水マレイン酸0.093質量%、
アクロレイン0.1質量%、
ホルムアルデヒド0.1質量%、
フルフラール31質量ppm、
ベンズアルデヒド25質量ppm、
プロペン0.29質量%、
酸素3.8質量%、
水5.2質量%、
酸化炭素2.8質量%および残分としてN
生成物混合物(3600g/h)を噴霧冷却器(IV)中で温度121℃に冷却した。噴霧液として捕集トレーを介して分離塔から取り出した高沸点フラクション(流3)を使用した。噴霧液を伝熱油により運転される管束熱交換器(III)を介して循環させる。高沸点物質43g/hを連続的に循環流から取り出した(流4)。
高沸点物質(流4)を回収した。ここに含有されているオリゴマーのアクリル酸を不連続的に攪拌容器中で有価生成物へと再分解した(図に示されていない)。分解は190℃および圧力500ミリバールで実施した。分解残留物を25質量%のメタノールで希釈し、かつ廃棄処分した。分解蒸留液を回収し、かつ連続的にクエンチングサイクル(III/IV)に供給した。分解蒸留液34g/hを返送した。分解蒸留液はヒドロキノンモノメチルエーテル0.5〜1.0質量%を含有しており、かつそれ以上安定化する必要はなかった。
121℃の温度に冷却した生成物ガス混合物を分離塔の捕集トレーの下方(塔領域Ia)に供給した。
塔は45のデュアル・フロートレーおよび40の泡鐘トレーを有する棚段塔であった。トレー15の上のトレーはもう1つの捕集トレーとして構成されていた。該トレーを介して次の組成を有し、温度101℃を有する粗製アクリル酸1680g/hを排出した(流5):
アクリル酸97質量%、
酢酸0.6質量%、
プロピオン酸640質量ppm、
フルフラール0.4質量%、
無水マレイン酸0.14質量%、
ベンズアルデヒド550質量ppm、
水1.5質量%。
粗製アクリル酸を懸濁結晶器に供給した。
さらに粗製アクリル酸620g/hを付加的な返送流としてトレー15上に供給した。
塔頂で気体状の混合物を取り出し、かつ噴霧冷却器(V)中で分縮した。その際に生じる、実質的にアクリル酸5.5質量%、酢酸5.2質量%および水85質量%からなる酸性水482g/hを塔頂に温度30℃で返送した(流9)。酸性水114g/hを連続的に取り出した(流10)。
ヒドロキノンモノメチルエーテル中のフェノチアジン5質量%の溶液を溶融液として(温度60℃で)クエンチングサイクルに0.5g/hの量で添加した(流12)。
アクリル酸中フェノチアジン0.5質量%の溶液を18g/hの量で分離塔の47番目のトレーに供給した(流13)。
結晶器はらせん形撹拌機を有する攪拌容器(内容量3l)であった。結晶化熱を容器のダブルジャケットを介して除去した。溶液の平衡温度は9.7℃であった。結晶化の際に生じる懸濁液(固体含有率約30質量%)を2000回転/分(遠心分離器の直径300mm)および遠心分離時間1分で遠心分離器により不連続的に結晶と母液とに分離した。該結晶を引き続き溶融した(予め洗浄された)結晶(134g/h)により1分間、2000回転/分で洗浄した。母液を洗浄液とともに分離塔の15段目のトレーに返送した(流6)。
洗浄した結晶(537g/h)の分析により次の含有率が明らかになった:
アクリル酸99.7質量%、
酢酸0.14質量%、
プロピオン酸230質量ppm、
無水マレイン酸72質量ppm、
フルフラール210質量ppm、
ベンズアルデヒド28質量ppm、
水0.11質量%。
記載された分離装置は1200時間の運転時間の後でも顕著なポリマーの形成を有していなかった。
比較例
2000年10月26日の出願番号10053086.9を有するドイツの特許出願の例2に記載されいてるとおりに実施した。1200時間の運転時間後、停止し、かつポリマーの形成による明らかな堆積物が認められた。
従来技術による方法を実施するための装置の略図 本発明の1実施態様を実施するための装置の略図 本発明の1実施態様を実施するための装置の略図 本発明の1実施態様を実施するための装置の略図 本発明の1実施態様を実施するための装置の略図
符号の説明
I 蒸留塔、 II 冷却器、 III 熱交換器、 IV 噴霧冷却器、 V 噴霧冷却器

Claims (11)

  1. 少なくとも1種の安定剤の存在下に塔中でアクリル酸以外に少なくとも1種の別の凝縮可能な成分を含有する熱い気体混合物を分別凝縮する方法において、少なくとも1種の安定剤を少なくとも部分的に溶融液として供給することを特徴とする、分別凝縮の方法。
  2. 120℃より低い融点を有する少なくとも1種の安定剤の溶融液を120℃より高い融点を有する少なくとも1種の安定剤のための溶剤として使用する、請求項1記載の方法。
  3. a)少なくとも1種のフェノール化合物、
    b)フェノチアジンおよび
    c)場合により少なくとも1種の、安定剤として有効な別の化合物
    からなる溶融液。
  4. a)がp−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテルから選択されている、請求項3記載の溶融液。
  5. 組成が
    a)60〜99質量%、
    b)1〜20質量%および
    c)0〜20質量%
    であり、その際、合計は常に100質量%である、請求項3記載の溶融液。
  6. 請求項3から5までのいずれか1項記載の溶融液を上部の塔領域に、およびフェノチアジンを残りの塔領域に添加する、請求項1または2記載の方法。
  7. 熱い気体混合物を塔から分離された装置中で冷却する、請求項1または2または6記載の方法。
  8. 少なくとも1つの排出流を熱および/または触媒により処理する、請求項1、2、6または7記載の方法。
  9. 分子酸素の存在下で実施する、請求項1、2または6から8までのいずれか1項記載の方法。
  10. エチレン性不飽和化合物を該化合物の製造方法において安定化するための、請求項3から5までのいずれか1項記載の溶融液の使用。
  11. 少なくとも1種の重合性化合物を含有する物質混合物を少なくとも1種のフェノール性安定剤を含有する安定剤組成物の存在下に精留分離する方法において、安定剤組成物を溶融液として精留ユニットに供給することを特徴とする、少なくとも1種の重合性化合物を含有する物質混合物を精留分離する方法。
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