JP2005510236A - 並列薬剤送達と細胞構造の電気穿孔法を併合した方法及びその使用 - Google Patents

並列薬剤送達と細胞構造の電気穿孔法を併合した方法及びその使用 Download PDF

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Abstract

細胞構造へ及び/又は細胞構造中への薬剤の並列送達方法が開示されており、ここにおいて電解質で満たされた管の少なくとも2つが対電極と共に提供され、管は電圧又は電流発生器に接続され、前記薬剤は管に収容された電解質溶液中へ導入され、この管は細胞構造に近接して設置され、それから、結果として細胞構造の電気穿孔が生じる細胞構造に集束された電場の印加によって形成された穴を通して前記細胞構造へ及び前記構造中へ管を通過して薬剤が移送される。本方法の異なる用途、例えば薬物や遺伝子といった細胞−不浸透性溶液を細胞構造中へ又は細胞構造の外側へ移送するために本方法を使用することも開示されている。

Description

本発明は、高度に空間的に分離された電気穿孔方法及び、細胞、細胞様構造又は細胞の集団のような細胞構造中への1つ又はいくつかの異なる化合物の並列送達方法に関する。望ましくは、電圧発生装置に接続された少なくとも2つの電解質で満たされたキャピラリ(EFC)、直線配列のEFC又は二次元マトリックス配列のEFCが、連続的又は並列的方法或いはそれらの組み合わせにおいて、例えば、複合染料、薬物、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び生体分子の、単細胞又は細胞の集団の細胞質中への送達と電気穿孔とを併合した道具として使用される。本発明はまたこれらの方法の使用に関する。特に、本発明は細胞内化学反応に作用する薬物の迅速なスクリーニング方法、及び細胞内蛋白質を同定し検出する方法に関する。
細胞内化学反応における薬物作用を迅速且つ確実に調べる方法は現在大きな需要がある。そのようなプロトコルとしては、細胞小器官に結合した受容体と細胞質内酵素とに夫々相互作用するリガンド及び基質をスクリーニングすることが挙げられる。また、細胞内の全ての蛋白質の特性決定及び検出を可能とする方法は、とりわけプロテオミクスの範囲において極めて価値があるであろう。非常に特異的な酵素基質及び蛋白質プローブは細胞中の特定の構成要素を検出することを可能にするので役に立つ。(Tsien RY,Annu.Rev.Biochem.1998,67,509−44)。例えば、基質−生成物転換ステップにおけるライトスイッチとして採用されることが可能な役に立つ多種多様な基質がある。また、特定の蛋白質−蛋白質相互作用は、蛋白質スプライシング(protein splicing)に連結する蛍光指示薬の使用によって同定されることが可能である(Ozawa T,Nogami S,Sato M,Ohya Y,Umezawa Y,Anal.Chem.2000,72,5151−57)。これらのプローブ及び指示薬は役に立つが、これらのプローブ及び指示薬の利用におけるこれまでの主な難関は、それらを細胞内部へ導入することである。細胞に含有されることが重要な薬物及び生体分子を包含する生物学的及び医学的用途のためのその他の多くの化合物のみならず、これらのプローブ及び指示薬の多くは、極性である。極性溶質は細胞−非浸透性であり、生体膜を通過することができない。
その上、DNA−蛋白質、蛋白質−蛋白質及びはるかに多くの細胞内相互作用を検出することを可能とする方法は、多くの分野で価値のある道具であろう。同様に、ウィルス、細菌、抗体及びコロイド粒子を細胞へ導入することは生物科学の多くの分野で重要であると思われる。しかしながら、細胞原形質膜バリヤの存在により、これは外部溶液に対して物理的境界として作用し、外因性化合物及び粒子が入ることを防止するので、これら全ての化合物及び粒子を細胞の細胞質へ移送することは困難である。細胞膜はパルス状の電場によって浸透性を有することが可能となると長い間認識されていた(例えばZimmermann,U.Biochim.Biophys Acta,694,227−277(1982)参照)。この技術は電気穿孔と呼ばれている。電解質で満たされたキャピラリ(EFC)を通過して印加された電圧がキャピラリ出口にて電場を創出することは、キャピラリ電気泳動(CE)における電気化学検出の研究から知られている(Lu,W.;Cassidy,M.Anal.Chem.1994,66,200−204)。EFCの先端におけるこの電場は接地電位(ground potential)に対して働きかけるものであり、電気穿孔に使用されることが可能である。電気穿孔を達成するこのEFCはまた所定の薬剤を細胞に送達する。EFCルーメンの対称軸に沿った電場の規模は、溶液中へ伸張する場合:
Figure 2005510236
で与えられることが示される。ここでZはEFCの先端からの微小距離であり、z/a,ここでzはEFC先端からの距離であり、aはEFCルーメン半径である。Ψはボルトに印加された電位であり、LcはEFCの長さである。この方程式はキャピラリ外側の円柱軸に沿った電位降下を見出すために積分されることが可能である。
Figure 2005510236
膜貫通型電圧は、従って、上記の方程式(2)を使用することによってこの磁界から概算されることが可能である。
発明者らは均質な電解質溶液を含む単一のEFCを用いた電気穿孔法の概念を以前に実証している(K.Nolkrantz,R.I.D.Karlsson,C.Farre,A.Brederlau,C.Brennan,P.S.Eriksson,S.G.Weber,M.Sandberg,O.Orwar Anal.Chem.,(2001)73,4469−4477;WO9924110)。
発明の要旨
ここに開示されていることは、迅速な並列送達を可能とする技術における実質的な改良であり、これは2つ望ましくは複数のEFCを用いた一つ以上の細胞構造へ及び細胞構造中へ一つ以上の薬剤、例えば吸収薬剤(internalizing agent)を、組み合わせ方法において連続して送達することと共に達成され得る。本発明はまた本技術のいくつかの用途に関するものである。
本発明は、細胞内化学反応に作用する薬物の迅速なスクリーニングを可能とする高度に空間的に分離された技術に関し、細胞内蛋白質の同定及び検出のための技術に関し、そして本発明は電場すなわち所謂電気穿孔によってリン脂質二重層膜の透過性化に基づく。
多数の細胞不−浸透性薬剤の迅速な細胞内送達は、薬剤ローディング剤が追加されたEFCを少なくとも2つ使用することに基づいて達成される。EFCを横断して印加されるパルス状の電圧又は電流のような電圧又は電流は、EFC末端の外側に電場を生じさせその結果細胞膜に穴形成を引き起こす。更に、この電圧又は電流は、例えばEFCに収容された電解質の電気浸透流を誘発し得る。EFCは細胞ローディング剤が追加されているので、電気浸透流はこれらの薬剤を穴形成部位にて送達する。穴形成と、EFC電解質に対して追加された薬剤の送達との組み合わせは、例えば細胞質又は細胞小器官中への物質のローディングを可能とする。ここに開示されていることは、並列送達方法であり、これは一つ又は複数のローディング剤を、例えばEFC電気穿孔プロトコルに基づく細胞又は細胞の集団或いは細胞様構造の細胞質のような細胞構造中へ、組み合わせ方法において並列して送達することと共に達成され得る。
本発明による方法は細胞内薬物作用をスクリーニングする技術及び細胞内側の細胞内蛋白質の同定技術として使用されることが可能である。そのような蛋白質の例は酵素、受容体又は構造蛋白質であり得る。これらの場合、電気穿孔技術は一つ又はいくつかの蛋白質プローブ(例えば、蛍光発生リガンド又は基質)の単一細胞又は細胞の集団中への導入に使用されている。これらのマーカは、同じ情報伝達経路において一つの標的蛋白質又は複数の標的蛋白質と直接相互作用する薬物、基質又はリガンドと組み合わせて導入されることが可能である。従って、多種多様な蛋白質の存在及びそれらの機能の両方が単一細胞レベルにて得られることが可能である。そのような能力を備えた道具は、細胞内シグナリングシステム又は代謝経路における薬物作用の特徴を明らかにすることのみならず、プロテオミクスと表現型プロファイリングとの両方にふさわしいであろう。更に、本発明による方法はバイオセンサ化学分離形態において受容体リガンド及び酵素基質を同定するために使用されることが可能である。例えば細胞内蛋白質又は生細胞内部の薬物作用をプロファイリング、スクリーニング及びプロービングするために本発明を使用するには、これらの相互作用に関する事象を検出し得ることが必要である。これは例えば蛍光顕微鏡検査法と組み合わせた選択的な蛋白質マーカの使用によって達成されることが可能である。例として、ある酵素が細胞内部に存在することを証明するため、非蛍光性である極性の細胞−膜−非浸透性基質が酵素的転換の後蛍光性生成物へ転換される。それから、蛍光性の増加が酵素活性のみならず細胞中の酵素の存在を反映するであろう。蛋白質マーカ(蛍光発生基質)は開示された電気穿孔技術を用いて生細胞の細胞質中へ導入される。マーカはまた薬物又は阻害剤と共に導入され得る。
従って、本発明は細胞構造の生化学的内容物の変性方法に関する。より正確には、本発明は細胞構造の表面へ及び細胞構造の細胞質中への薬剤の並列送達方法に関し、以下のステップからなり、
(a)電解質で満たされた管の少なくとも2つが接地電極又は対電極と共に提供され、
(b)電解質で満たされた管が電圧又は電流発生器へ接続され、
(c)薬剤の少なくとも1つが電解質で満たされた管各々に収容された電解質溶液中に導入され、
(d)電解質で満たされた管が細胞構造の表面に近接した距離で設置され、
(e)単数の薬剤/複数の薬剤が電解質で満たされた管を通過して細胞構造の表面へ移送され、
(f)細胞構造の表面の電気穿孔を得るのに十分の強度の電場が細胞構造に集束され、その結果細胞構造の膜表面中に穴を形成し、そして、
(g)単数の薬剤/複数の薬剤がステップ(f)にて形成された穴を通過して細胞構造の細胞質中に移送され、
ここにおいてステップ(b)、(c)及び(d)の順番が変更され得、そしてステップ(e)及び(f)の順番が変更され得る以外はステップ(a〜g)は連続的に順を追って達成される。
上記ステップ(a)によると、接地電極又は対電極が使用される。そのような接地電極又は対電極を1つだけ使用することが可能であり、或いは電解質で満たされた管各々に対して1つの接地電極又は対電極といったように接地電極又は対電極を1つ以上使用することも可能である。
上記ステップ(b)によると、電圧又は電流発生器が使用される。そのような電圧又は電流発生器をひとつだけ使用することが可能であり、或いは電圧又は電流発生器を1つ以上使用することも可能である。
上記ステップ(d)で使用される「近接した距離で」という表現は、キャピラリの出口末端が細胞構造に接触して、或いは細胞構造に非常に近くに設置されることを意味している。望ましくは前記近接した距離は500μm未満である。
上記ステップ(f)で使用される「細胞構造の表面の電気穿孔を得るのに十分の強度の電場が細胞構造に集束され」という表現は、電気穿孔される細胞構造又は細胞構造の一部で或いはその上方で電場が集束され、そしてこの電場が本質的にまさしく電気穿孔に必要なものであることを意味している。望ましくは、電圧発生器は電気穿孔される細胞構造の表面において10mV乃至100Vの電圧を発生する、より望ましくはそれは前記表面において100mV乃至2Vである。電圧パルスは望ましくは0.1μ秒乃至数分である。ここにおいて数分とは、例えば1乃至10分を意図する。より望ましくは電圧パルスは1μ秒乃至5秒であり、最も望ましくはそれは100m秒未満である。
ステップ(g)において薬剤は細胞構造中へ移送される。電解質で満たされた管から細胞構造の表面へ送達された薬剤の全量、又はこの量の一部のみのいずれかが、細胞表面の外側に残る他の部分を含む細胞構造中へ更に移送される。
細胞構造は、更に以下に記すように、第一細胞培養中の細胞、組織切片又は組織中の細胞、生体内細胞、リポソーム、又は細胞小器官などの細胞内細胞構造のようなあらゆる種類の細胞又は細胞様構造であって良い。
電解質で満たされた管は電解質で満たされた毛細管(EFC)、電解質で満たされた円錐状に先細にした管及び/又は電解質で満たされた電極であって良い。これらの表現はこの明細書全体にわたって互換性をもって使用される。
並列送達を用いることで、1つの細胞構造中に形成された穴又は2つ以上の異なる細胞構造に形成された穴の何れかを通して薬剤を送達することが可能である。
その上、電解質で満たされた管各々に1つ以上の薬剤を配置することが可能である。このことは細胞構造中への薬剤の並列送達と細胞構造中への薬剤の連続的な送達とを組み合わせ方法で組み合わせることを可能とする。
本発明による方法は多数の溶液、薬剤及び粒子を浸透性を有するようにされた細胞構造中へ移送する方法のために使用され得る。
発明の詳細な説明
上記の通り、本発明は高度に空間分解された電気穿孔方法及び細胞又は細胞性構造のような少なくとも1つの細胞構造への1つ又は多数の細胞−ローディング剤の並列送達、ことによると連続送達と組み合わせた方法に関する。更に具体的に言うと、開示された方法は細胞構造の電気穿孔のため電圧又は電流発生器と接続された少なくとも2つの細胞質で満たされたキャピラリ(EFC)を使用し、ここにおいてEFCは細胞構造へ隣接して配置され、少なくとも1つの電圧パルスのような電圧又は電流がEFCを横切って印加され、各EFCの端部の外側に小さな電場をもたらし、これが隣接した細胞構造の膜に穴を形成する。EFCに収容された単一又は多数の細胞−ローディング剤は穴形成部位にて並列の方法、例えばポンピングの形態によって送達され、細胞−ローディング剤が膜を転位させ、穴を通過して細胞構造の内部へ入るようにする。ある実施の形態において、細胞中へロードされる薬剤は組み合わせの方法で前記剤を含む多数のコンテナから選択されることが可能である。穴形成及びEFCの電解質溶液へ補充された剤の送達の組み合わせは、例えば細胞構造の細胞質中へ物質をローディングすることを可能とする。これは更に図1に示されている。
上記したように、本発明は膜不透過性細胞−ローディング剤の細胞構造へ及び/又は細胞構造中への送達のために使用され得る。細胞構造は一つ又はいくつかの細胞或いは1つ又はいくつかの細胞性構造何れかであって良い。一つ又はいくつかの細胞である場合、これらは密集培養、組織切片或いは組織における真核細胞又は原核細胞の如何なる種類であって良い。細胞構造は電気穿孔前に前もって処理されても良い。例えば、細胞質中のカルシウムイオンの濃度が増加する結合を検知するためにフッ化−3AMエステルのような染料で装填されても良く、リポータ遺伝子又はその他の遺伝的にアドレス可能な分子システムでトランスフェクトされても良い。細胞構造はまたその他の化学的又は物理的方法によって、例えば、記録チャンバ中にて処理されても良い。例えば、所望の薬剤は電気穿孔の前、電気穿孔の間又は電気穿孔の後に細胞−水浴溶液へ添加されても良い。そのような薬剤の送達は体積形態(bulk fashion)(全ての細胞又は細胞構造或いは細胞又は細胞構造の大部分)又は局所的(単一細胞又は単一細胞構造)の何れかにて記録チャンバに連結した更なるキャピラリ又はピペットを通過して行われることが可能である。細胞の集団、望ましくは密集培養における2乃至10,000,000細胞又は2乃至10,000細胞、組織切片、組織又は器官のような細胞の集団又は細胞の小集団、或いは平面形態の細胞を使用することも可能である。前記細胞性構造は細胞内構造、(孤立又は細胞内)細胞小器官、膜質小胞(membranous vesicle)、細菌又はナノ細菌であってよい。リポソーム又はエマルジョン滴のような合成膜で形成された細胞構造に対して本発明による方法を使用することも可能である。
本発明による方法で、如何なる種類の基質、薬剤又は細胞−ローディング剤をも電気穿孔された細胞構造中へ導入することが本質的に可能である。細胞−ローディング剤は最もしばしば極性で自然には生体膜を通過することが不可能な薬剤を意味する。そのような基質又は細胞−ローディング剤の例としては、以下の薬剤:遺伝子、遺伝子アナログ、RNA、RNAアナログ、DNA、DNAアナログ、コロイド粒子、受容体、受容体リガンド、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体遮断薬、酵素、酵素基質、酵素阻害剤、アロステリック酵素モジュレータを含む酵素モジュレータ、蛋白質、蛋白質アナログ、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ペプチド、ペプチドアナログ、代謝産物、代謝産物アナログ、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドアナログ、抗原、抗原アナログ、ハプテン、ハプテンアナログ、抗体、抗体アナログ、細胞小器官、細胞小器官アナログ、細胞核、細菌、ウィルス、配偶子、無機イオン、有機イオン、金属イオン、金属クラスタ、細胞の化学反応に影響を与える薬剤、細胞医学に影響を与える薬剤、ポリマー、及び2つ以上のこれらの剤の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
使用される電解質を満たしたキャピラリ(EFC)は、確立した電場を封じ込めるために望ましくは電気的絶縁物質性であり、ガラス、溶融石英、プラスチック又はテフロン(登録商標)のような重合体、或いはその他の好適な物質でできていることが可能である。導電性の先端を備えたキャピラリを使用することも可能である。キャピラリの形状は図2aに示すように平らな端部を備えた完全な円筒形であってよい。図2bのような先細のキャピラリを使用することが、特に、単一−細胞及び細胞小器官電気穿孔のために時に有利である。そのような先細のキャピラリはガラス又は溶融石英キャピラリを機械的引っ張り装置において熱したフィラメントで引っ張ることにより作られることが可能である(A.Lundqvist,J.Pihl,O.Orwar.A Anal.Chem.(2000)72 5740−5743)。先細の先端は更にフッ化水素酸のエッチング又は研磨によって作り出されることが可能である。研磨の利点はキャピラリの外径のみが減少され、一方内径は影響されないことであり、その結果、このタイプのキャピラリの先端領域における更なる圧力増強の必要がなくなる。このタイプのキャピラリは図2cに図示される。
キャピラリの長さは0.01mmから数メータまでであってよく、用途に依存する。電圧はキャピラリを通過して連続的に降下するので、目標とされる細胞又は細胞性構造における穴−形成を引き起こすのに十分な電圧が印加され得ることを確実にするために、電圧源を適宜選択すべきである。キャピラリの外径及びチャネル面積は用途に依存する。一般論として、細胞構造に最も近いEFCの端部の直径は50nmから5000μmといった数ナノメータから数千マイクロメータである。単一細胞及び細胞小器官電気穿孔にとって外径0.03乃至50μm、チャネル直径0.025乃至49μmのキャピラリを使用することはしばしば好適であり、一方、50μm以上のキャピラリは細胞の小集団の電気穿孔に望ましく使用される。
電気的に絶縁されたキャピラリの場合、細胞構造の電気穿孔のために要する電流はキャピラリの内部チャネル中の溶液中に含まれた電解質によって運ばれる。キャピラリシステム中へ電圧発生器によって提供された電流を供給する電極、望ましくはPt−電極は、電解質で満たされたキャピラリの後端に直接、或いはEFCの内部と同じ電解質溶液を含むバイアルを介して接続されることが可能である。電極及びキャピラリ入口を包含するバイアルは、概して、キャピラリ出口から数センチメータ離れているので、潜在的に細胞を傷つけ得る電気的に創出された化学種(species)による問題がないであろう。時に、バイアルはまた細胞構造中へ吸収される薬剤も収容することが望ましい。電解質で満たされたキャピラリの内部に電極を設置することも可能である。これは非常に短い長さのキャピラリを用いた場合、望ましい。緩衝液の組成に依存して、電極の条件は変化する。電極の電気化学の反応、例えば水の減少及び塩化物の酸化は、電圧の多少の損失を引き起こし、有効電圧は与えられた状況各々の電極剤及び緩衝液システムのために算出されるべきである。
キャピラリはまた図2d−eに示されるようにそれらの先端を導電体の層で作られていることが可能である。そのような導電性の先端を有する中空のキャピラリの利点は、より短いパルスの時間が低いRC時定数による高精密性で適用されることが可能であることである。
細胞−ローディング剤を含む流動体がポンピングのいくつかの方法によって細胞構造へ送達されることは上記している。このポンピングの方法は、例えば、電気浸透、電気泳動、圧力に基づくポンピング又は重力流又はそれらの組み合わせであって良い。望ましくは、流動体の電気泳動又は電気浸透輸送が試薬の送達に使用される。ポンピングのこれらの方法はキャピラリの内表面が電気的に帯電されることを要することに注意しなくてはならない。電気浸透又は電気泳動がポンピングのために使用されない場合、蠕動ポンプ、微量注入器/マイクロポンプ又はその他の流体駆動装置のような流れを作り出す如何なる好適な装置が、電気穿孔前、電気穿孔中又は電気穿孔後の何れかにEFCの入口へ接続されることが必要である。ポンピング方法を用いて薬剤を細胞へ送達し、電気穿孔のため周期的に電気パルスを印加することも時には有利であり得る。例えば、EFC中に含まれる多量の電解質は蠕動ポンプを用いて細胞表面へ押し出され(pump)、電気穿孔電圧が入れられ、その後電気穿孔電圧が切られ、そして新しい多量の電解質が細胞表面へ同じEFCを通過して押し出され、電気穿孔電圧が再び入れられ、その後電気穿孔電圧が切られるなどである。この種の周期的な電気穿孔による送達は、特に、異なる細胞−ローディング剤のセグメント化されたバンド(個別の領域)がEFC中に存在する場合、有利である。そのようなバンドが以下に記載した微小流動スイッチング方法を用いて得られ得る。上記実施例に加えて、多くの異なる基本構想が想定されることが可能であり、電圧発生器がプログラムされ又は手動で制御され、異なる種類の細胞−ローディング剤及び細胞のための最適のローディング条件を提供する。従って、パルス幅、波形、パルス振幅及びその他の関連するパラメータの双方がEFCを用いた細胞−ローディングの過程の間変化し得る。従って、本発明によると、望ましくはプログラム可能な電圧発生器が使用される。
電気穿孔のための1つ又はいくつかのEFCは、異なる寸法及び物質の対電極、又は第二の電極と共に使用されることが可能である。電極は細胞膜の電気穿孔のため細胞の近傍へ設置されることが可能である。望ましくは、細胞−水浴溶液を接地電位に保持する対電極が使用される。
EFCは、用語が暗示するように、電解液含有溶液で満たされている。望ましくは、生理的緩衝液が使用される。細胞標的の原形質中へ導入される細胞−ローディング剤は望ましくはこの電解質含有溶液へ補充される。更に、EFCは細胞原形質膜に位置する標的と相互作用する薬物又は薬剤が補充され得る。そのような標的としては原形質−膜−結合受容体及び酵素が挙げられる。EFCの注入又は充填は、充填CEキャピラリのための標準的な技術を用いていくつかの異なる方法にて達成されることが可能である。例えば、重力流又は圧力に基づくポンピングのいくつかの方法を用いて電解質溶液は流体力学的にキャピラリ中へ注入される。
毛管力又は吸引/吸入を用いて末口からキャピラリを装填することも時には望ましい。この方法は複数のEFCを同時に装填するために使用されることが可能である。EFCの先端は細胞−ローディング剤を含む個別のバイアルに配置され、小さなサンプルが上記の如何なる方法を用いてEFC中へ導入される。
電圧発生器によって供給される細胞膜に穴を創出するための電圧パルスは、二乗、指数又は如何なる別の形態であり得る波形を有し得る。DC電流及びAC電流の両者を使用することも可能である。電圧はキャピラリを通過して連続的に降下するので、目標とされる細胞又は細胞性構造における穴−形成を引き起こすのに十分な電圧が印加され得ることを確実にするために、電圧源を適宜選択すべきである。電気穿孔を引き起こすために必要な電場は処理された細胞構造の種類及び寸法に大きく依存して変化する。上記のように、薬剤を細胞構造へ送達する時間的経過の間EFCの電位及び波形を変化させることも可能である、すなわち、送達及び電気穿孔は一定の電位又は電場の強さにて達成されないのである。そのような電圧プログラミングは望ましくはいくつかの化合物が細胞構造へ連続的な方法にて導入されるときに使用される。電圧パルスの持続時間は数マイクロ秒から数分まで変化し得、細胞−ローディング剤の本質に依存するのみならず処理された細胞構造の種類及び寸法に依存する。
電圧又は電流パルスの印加の間、細胞構造は穴の生成によって浸透化され、そうしなければ生物的二重層膜を通過することができない極性溶質を放散又は流体力学的流れによって細胞構造の内部へ入れる。本発明による方法の空間分解能はEFCの先端−寸法、なおこれは直径たった数ナノメータであると考えられるが、印加された電圧及びEFCと電気穿孔標的との間の隙間の間隔によって影響される。この隙間の間隔は、細胞性構造の如何なる種類が電気穿孔されるかに主に依存し、従って、数ナノメータから数百マイクロメータの間を変化し得る。
EFCの位置決めは望ましくは、水圧又は圧電性により制御された極微操作装置のような手動で制御されたマイクロポジショナの機能によって実行される。手動で制御されたマイクロポジショナを用いることに加えて、自動制御された又はロボットにより制御されたマイクロポジショナを使用することが可能である。細胞を固定したままキャピラリを動かすよりむしろ、キャピラリを固定したまま細胞を動かすために顕微鏡又はその他の同じような装置に取り付けられた電動のトランスレーション台を使用することも可能である。
本発明による方法を細胞内スクリーニングのために使用する場合、望ましくは多数の異なる細胞−ローディング剤が1つ又はいくつかの細胞の細胞質又は細胞性構造へ制御された方法で導入される。スクリーニングは望ましくは細胞標的へローディング剤の並列送達、望ましくは連続的な送達と組み合わせた並列送達を用いて達成され、例えば以下に記載されたように成し遂げられ得る。
多数の細胞−ローディング剤の並列送達はEFC配列を用いて達成され得る。EFCの配列は微細加工技術を用いて加工され得、従って1つの固体構造からなり、又はいくつかのタイプのホルダ又は骨格によって互いに保持されたいくつかの従来のEFCから構成される。これらのキャピラリの配置は一次元配列(直線)又は二次元配列であり得る。望ましくは10〜100,000のEFCの配列が使用される。
並列電気穿孔及び送達はいくつかの物理的に分離された単一−細胞、又は物理的に分離された細胞の集団の並列方法での同時スクリーニングを可能とする。
ある実施の形態によると、細胞構造は図6に図示したようなマルチウェルプレートの多数のウェル中に収容された細胞、又は平面形態に成長した細胞から構成される。プレートは、例えば96ウェルを有する工業的に規格化されたプレートであってよい。細胞−ローディング剤の並列細胞質送達において、キャピラリの配列における各単一のキャピラリ出口は表面上又はウェル構造中の特定細胞又は細胞集団を標的とする。従って、個別の細胞又は細胞の集団は、細胞質中へ同時に吸収される同じ又は異なる化合物で個別に標的化されることが可能である。
本発明での並列スクリーニングの好ましい実施の形態は図7に図示される。
細胞−ローディング剤の並列送達は組み合わせの方法において細胞−ローディング剤の連続的な送達と共に実行されることが可能である。そのような組み合わせの送達は、図3bに示すように前記細胞−ローディング剤を収容した複数の容器から各EFCへの細胞−ローディング剤の選別によって達成され得る。各EFCが異なる細胞−ローディング剤を含む場合、EFCの配列における異なるEFCを活性化することによっても達成され得る。図7に示すように微小流体スイッチング装置を用いた単一EFC中へ剤を特定の順番で剤をローディングすることによっても達成され得る。
本発明による並列送達と共に使用すると好適な連続的な送達のいくつかの実施の形態がある。以下は好適な既知の実施の形態のいくつかの例である。
ある実施の形態によると、多数の細胞−ローディング剤の連続的な送達はEFC配列を用いて達成される。EFCの配列は微小加工技術を用いて組立てられ得、従って1つの固体の構造からなる、又はいくつかの種類のホルダ又は骨格によって互いに保持されたいくつかの従来のEFCから構成され得る。これらのキャピラリの配置は一次元配列(直線)又は二次元配列であることが可能である。望ましくは10−100,000のEFCの配列が使用される。EFC配列を用いたこの実施の形態においてローディング剤の連続的な送達を実行するために、各EFCは1つの種類のローディング剤を収容するか、いくつかのローディング剤の独自の混合物を収容する。連続的な送達はEFCの配列を立て続けに細胞標的全体にわたって迅速に移動させることにより達成されることが可能であり、各EFCは電気穿孔を引き起こし続いて1つの種類のローディング剤の又はいくつかのローディング剤の独自の混合物の送達を引き起こす。キャピラリの配列を移動させる代わりに、空間的に固定されたキャピラリに対して細胞構造を移動することも可能である。これらの配列における流体ポンピングは上記したような如何なるポンピングモードによっても引き起こされることが可能である。本実施の形態による連続的な細胞−ローディング剤の送達のために使用され得る一次元及び二次元配列の例は図3に図示される。特別な種類の配列は図4に図示される複数のバレル型EFCである。このキャピラリはいくつかの内部チャネルを有することが特徴である。細胞−ローディング剤又はいくつかのローディング剤の独自の混合物の細胞質送達を実行するために、キャピラリ中の各バレルは単一の種類のローディング剤又はいくつかのローディング剤の独自の混合物で満たされ、そして個別にアドレス可能な電極を搭載している。個々のバレルの連続的な活性化によって、すなわち単一のチャネルにおける電圧パルスの継続的な印加によって、細胞又は細胞性構造への制御された量のローディング剤の連続的な送達が可能である。この種類の複数の−バレル電極はまた1つ以上のチャネルへの電圧の同時印加によって剤のこの細胞構造への並列送達のために使用されることも可能である。複数のバレルEFCにおける流体ポンピングは望ましくは、電気浸透又は電気泳動的に生じた流れを使用することによって実行される。しかしながら、この試みで送達されることが可能な異なる剤の数はEFCのバレルの数によって制限される。上記した複数のバレル型EFCの配列を作り出すことも可能である。
別の実施の形態によると、多数の細胞−ローディング剤の連続的な送達は、サンプルを積み上げるための微小流体スイッチへ従来のEFCを接続することにより達成される。この構成において、多数のローディング剤がEFC中へ連続的に導入されることが可能であり、続いて1つ又はいくつかの細胞標的へ送達される。細胞−ローディング剤はEFCの個別の領域へ導入されることが上記の如何なるポンピングモードによっても可能である。電気穿孔試験の前にEFCは細胞−ローディング剤を事前に搭載しておくか、或いは電気穿孔試験の間その場でEFCは搭載されるかいずれかである。この第二の実施の形態は図5に図示されている。
また更なる別の実施の形態において、多数の細胞−ローディング剤の連続送達がEFCを通過する流体をポンピングする間に分離ステップを導入することにより実行される。試薬の送達のために電気穿孔ポンピングを使用する場合、電解質溶液中に存在する全ての種類がそれらの電荷−と−摩擦抵抗の比率に基づき分離され、細胞標的にて連続的な方法にて送達される。同じように、連続的な試薬の送達は、例えばクロマトグラフの分離技術を利用することが可能なEFCフォーマットに当てはまる如何なる分離技術を導入することによっても達成されることが可能である。
従って、本発明は以下の如何なる方法からなる迅速な細胞内スクリーニングの用途において使用され得る。
1.1つの細胞タイプの細胞の集団又は単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の細胞内送達。
2.同じ細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の細胞内送達。
3.異なる細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の細胞内送達。
4.1つの細胞タイプの細胞の集団又は単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の連続的な細胞内送達。
5.同じ細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の連続的な細胞内送達。
6.異なる細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の連続的な細胞内送達。
7.1つの細胞タイプの細胞の集団又は単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の並列細胞内送達。
8.同じ細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の並列細胞内送達。
9.異なる細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の並列細胞内送達。
10.1つの細胞タイプの細胞の集団又は単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の並列及び連続的な細胞内送達の組み合わせ。
11.同じ細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の並列及び連続的な細胞内送達の組み合わせ。
12.異なる細胞タイプの細胞の集団又は物理的に分離された単一細胞への膜不透過性細胞−ローディング剤の並列及び連続的な細胞内送達の組み合わせ。
13.組み合わせた方法において使用される上記(1から12)の細胞−ローディング剤の細胞内送達の如何なるモード。
本発明による方法の最も重要な用途は薬物スクリーニング及び蛋白質同定における使用である。特に、細胞又は細胞性構造に浸透性電場を印加することによって、特定のプローブ(マーカ)、基質又はリガンドは細胞小器官上の受容体及び細胞質酵素のような細胞内化学反応について選別するために細胞質中へ導入されることが可能である。より具体的には、酵素、受容体又は構造蛋白質のような細胞内蛋白質の分析のみならず、細胞内薬物反応のスクリーニングをこれは可能とするであろう。本発明による方法を使用する場合、これらのマーカは標的蛋白質又は同じ伝達経路における蛋白質に直接相互作用する薬物又はリガンドと組み合わされて導入され得る。従って、本発明によると、単一細胞レベルでさえ、様々な蛋白質の存在及びそれらの機能の両者を特定することが可能である。特定の経路の特異的なリガンド、アンタゴニス、阻害物又はモジュレータによるブロッキングは細胞工程(cellular process)の制御を可能とし、新規なシステムの手がかりを提供する。そのような化合物は、当該リガンドと共にEFCを用いてそれらを共電気穿孔(co−electroporating)することにより細胞へ導入されることが可能である。別の方法として、それらは別の方法、例えば細胞−浸透化剤が採用され得る、によって細胞構造中に吸収され得る。
一般論として、本発明による方法は以下の制限されない用途の範囲:プロテオミクス、ゲノム、表現型プロファイリング、薬物分析及びスクリーニング、薬物動態学、体外受精、遺伝子組み換え、核移植、細胞小器官移植及び診断において使用されることが可能である。また、本技術は細胞の特性を変化させる、すなわち細胞−プログラミングのために使用されることが可能であり、このプログラミングは細胞のネットワークにおいて実行されることが可能であるので、本発明はまたバイオセンサのみならず生物学的及び化学的コンピュータの設計及び用途においても有効である。同様に、本発明はロボット、特に細胞感覚ネットワーク及び細胞制御ネットワークのような特定の特性を備えた細胞回路を創造するために有効であり得る。
本発明による方法はまた表面原形質膜エピトープ又は受容体のためのスクリーニング技術と組み合わせても良い。従って、例えば細胞原形質膜受容体に作用する受容体リガンドはEFC電解質中で細胞内化学反応に作用する1つ又はいくつかの薬物と組み合わされても良い。溶液は次に細胞表面へ低い不−浸透性又はゼロ電場で送達されることが可能であり、そして細胞原形質膜受容体に作用するリガンドが受容体に結合した後、吸収薬剤(internalizing agent)が細胞中へ電気穿孔で導入される。そのような方法は特に伝達経路の特性決定にとって好適であり得る。
更に具体的には、しかしながら依然制限されないものであるが、本発明による方法が使用されることが可能な用途は遺伝子トランスフェクション、遺伝子同定、酵素同定、蛋白質同定、受容体同定、結合分析、酵素分析、競合酵素分析、非−競合酵素分析、モジュレータによる酵素分析、等比体積の阻害剤による酵素分析、受容体分析、アンタゴニストによる受容体分析、モジュレータによる受容体分析、ウィルス分析、細菌分析、薬物分析、反応速度分析、代謝経路の変更及び伝達経路の変更である。
特に、本発明による方法は細胞内受容体及び受容体リガンドの同定に非常に好適である。
Ca2+、cAMP,K等のような伝達分子の放出を引き起こす細胞内受容体及びイオンチャネルは細胞中に電気穿孔されたリガンドライブラリを用いて、望ましくは選択的受容体アンタゴニストと組み合わせて同定及び研究されることが可能である。例えば細胞内受容体の活性化において細胞内貯蔵庫から放出されたCa2+は、磁気−フラ(fura)−2及びフッ化−3のような蛍光発生キレート剤を用いて検出することが可能である。実施例のように、我々はここに小胞体のリアノジン受容体の同定を示す(図8)。更に、受容体を同定するために、又は受容体−リガンド相互作用を明らかにするために、選択的な受容体アンタゴニストが使用され得、細胞中へ電気穿孔されリガンドの作用を選択的にブロックする。蛍光プローブ、放射リガンド、ブロッティング又は電気生理学的方法に加えて、蛍光発生基質が使用され得る。蛍光発生マーカはしばしば細胞−浸透性エステルであり、これは細胞浴媒体へ添加されることが可能であり、細胞中へ電気穿孔される必要はない。従って、そのようなエステルを使用する場合、細胞は電気穿孔試験前に染料で満載されることが可能である。特定の受容体活性のためのマーカに加えて受容体アゴニストを導入する能力を有することにより、アゴニストのライブラリから最も強力な受容体アゴニストを同定することが可能である。用量反応曲線を得るための実験を計画することも可能である。例えば、本発明による方法で、特定の受容体活性のためのマーカに加えて受容体アゴニスト及び受容体アンタゴニストの両方を個別の化合物で異なった濃度にて細胞質中へ導入することが可能である。受容体アゴニストと受容体アンタゴニストの結合の本質すなわち、それが競合的か非−競合的か何れか等、を見出すような全体的な目的で、受容体アゴニスト及び受容体アンタゴニストの両方を個別の化合物で異なった濃度にて細胞質中へ導入することが可能である。受容体及びリガンドの同定に加え、いわゆる「リガンド探索」又は「デ−オーファンニング(de−orphaning)」もこの方法で実施されている。公知の受容体一式を備えた細胞が検出器として使用され、リガンドのポテンシャルサンプルのライブラリは細胞質へ導入され、これらのリガンドの活性を選別する。
その上、本発明は細胞内酵素及び酵素基質の同定に好適である。
蛍光性生成物をもたらす高特異的酵素基質は例えば本発明による技術を用いた個別の細胞内システムの表現型プロファイリング及びプロテオミクスにおいて蛋白質/酵素同定のために使用されることが可能である。合成基質は、ことによると薬物、阻害剤又はモジュレータと組み合わせて、本発明による電気穿孔法を用いて細胞中へ導入されることが可能である。基質−生成物転換ステップにおいてスイッチとして採用されることが可能な多種類の基質が存在する。そのような基質としてはエステラーゼ、スルファターゼ、フォスファターゼ等が挙げられる。基質が蛍光性であり生成物が非−蛍光性であるか、或いは逆もまた同様である。
例えばNADと−NADHのやり取りを利用し、その結果蛍光性にシフトさせるアルコール脱水素酵素によるアルコールの脱水素のような細胞内部の共役反応システムのため、検出可能な分子を産出する反応と結合する限り標的分子は蛍光性である必要はない。そのような細胞中の天然の蛍光化合物のその他の例はNADPH及びフラビンである。
酵素による化学増幅もまたシステムの感受性を増大させるために使用されることが可能である(W.J.Blaedel,R.C.Bougslaski,Anal Chem 1978,50,1026;H.U Bergmeyer in H.U.Bergmeyer(ed)酵素的分析の方法,verlag Chemie/Academic Press,New York 1974 voll p131)。この方法の原理は基質を生成物へ変える酵素を使用することであり、基質から、これは測定することが難しく、生成物へ、これは容易に測定することができる、高濃度の変化を引き起こす。
蛍光発生基質のある実施例はフルオレセイン二リン酸塩(FDP)であり、これはフォスファターゼの検出のために使用されることが可能である。基質はアルカリフォスファターゼによって加水分解され蛍光性生成物フルオレセインを産出する。別のシステムはカゼイン−ボディフィフル(BODIPY FL)であり、これはカテプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、パパイン、ペプシン、サーモリシン及びトリプシンを含む、金属−、セリン、酸及びスルフヒドリルプロテアーゼである。システムのその他の実施例はβ−ガラクトシターゼであり、ここで基質はβ−ガラクトシターゼによって連続的に第一にフルオレセインモノガラクトシド(FMG)そして次に高蛍光性フルオレセインへ加水分解されたフルオレセイン ジ−β−D−ガラクトピラノシド(FDGP)である。
図9は、基質のホスホエステル−結合を触媒的に加水分解する細胞内酵素アルカリフォスファターゼを捕捉するためにフルオレセイン二リン酸塩(FDP)を使用し、その結果非常に緑色の蛍光生成生物フルオレセインが細胞質中に形成された(図9A−C)実験結果を示すものである。基質フルオレセイン二リン酸塩(FDP)を細胞中のEFCの電解質へ補充した。基質は非蛍光性であり、生成物は蛍光性である。図9Bの細胞中に成立した蛍光性は、生成物の存在を示し、酵素の存在も示している。
蛋白質−蛋白質相互作用は複雑であり、多くの工程を伴う。特定のリガンドで特別な経路をブロッキングすることは細胞工程(cellular process)の制御を可能とし、新規なシステムの手がかりを提供するであろう(Zutshi R,Brickner M,Chmielewski J,蛋白質−蛋白質接点の組立体の阻害,Curr.Opin.Chem.Biol.1998 2 62−66)。例えば、細胞内プロテアーゼ活性が蛋白質、カゼイン、これは緑色の蛍光分子ボディフィフル(BODIPY FL)を大量に搭載しており、を酵素基質として用いて調べられた。溶液中にて、カゼイン−ボディフィフル(BODIPY FL)は折りたたまれているので、分子中の4つひと組の配置(quaternary arrangement)は蛍光を抑制する。ペプチド結合を切断すると、細胞質プロテアーゼの活動によって、ボディフィフル(BODIPY FL)で標識された自由ペプチドのセグメントが蛍光を発し始める。図10A−Cの画像は単一のNG108−15細胞中のプロテアーゼの同定を示している。
本発明は更に以下の実施例において例示され、これは発明の範囲を決して制限するものではない。
細胞内受容体リアノジンII型の検出
フッ化−3AMエステルは分子プローブ社(ライデン、オランダ)製であった。サイクリックADPリボース及び緩衝溶液のために使用される薬品は全て分析用の等級でありシグマ社(セントルイス、MO、USA)から購入した。全ての溶液はミリQシステム(ミリポア社)による蒸留水で作成した。
NG108−15細胞をno.1カバースリップ上又はペトリ皿にて平板培養し、1乃至3日間成長させた。細胞の皿を円形のポリカーボネイトのホルダにマウントし顕微鏡の試料台に移した。実験前に、培地をHEPES緩衝液(NaCl140mM,KCl5.0mM,MgCl1.0mM,CaCl1.0mM,D−グルコース10mM,HEPES10mM,pHをNaOHで7.4に調整した)と置換した。
細胞を30分間染料溶液(10μMのフッ化−3AMエステル、HEPES緩衝液)中で室温にて培養することにより、細胞をフッ化−3AMエステルで着色した。過剰の捕捉されていない染料を除去するために、細胞をHEPES緩衝液中で3回洗浄し、実験前に更に30分HEPES緩衝液中にて保存した。
蛍光の励起をAr−レーザ(スペクトラフィジックス社2025−05、サニーベール、CA)で実行した。レーザビームを回転盤を通して送り、干渉性(coherence)を破壊し、488nm干渉性フィルタ(ライカI−3ラインフィルタキューブ)、倒立顕微鏡(ライカDMIRB,ウェッツラ、ドイツ)に搭載した40倍対物レンズ(ライカ0.9N.A.)を用いてカバースリップ上に集束させた。画像を3−チップカラーCCD−カメラで記録した(ハママツC6157,シスタ,スウェーデン)。
高等級(high−graduation)極微操作装置(ナリシゲ、MWH−3、東京、日本)で細胞の20〜35μm上部に配置した細胞電解質で満たされたキャピラリ(長さ30cm、内径50μm、外径375μm)で電気穿孔を実行した。EFCを特定の位置に配置するために、顕微鏡の細胞を観察することにより細胞を第一に焦点を合わせるようにした。次に、顕微鏡の焦点調節ノブのマイクロメータマーカを用いて焦点を細胞上の所望の距離へ変化させた。EFCのルーメンが焦点に入るまで、EFCを下げた。正しい位置に配置された後に、焦点を細胞に戻した。細胞−水浴媒体を白金線で接地した。パルスをDC高電圧電源(モデルARB30、ベルタン、ヒックスビル、NY、USA)で印加し5〜20秒間印加した。
NG108−15細胞中にリアノジン受容体II型を検出するためにアゴニストサイクリックADPリボースを使用した。サイクリックADPR(500μM)をEFCの電解質へ添加した。高電圧パルスを印加したとき、穴が細胞原形質膜に形成され、そして細胞中へのアゴニストの導入が細胞表面へのアゴニストの電気浸透投与によって改良された。アゴニストがERのリアノジン受容体に結合した場合、カルシウムが細胞質中に放出される。cADPR(500μM)を内径50μm、長さ30cmのEFCの電解質へ添加することによりリアノジン受容体II型を検出した。10kVを10秒間印加した。活性化で、リアノジン受容体がERからのカルシウムイオンの放出を誘引し、これはフッ化−3に結合し、蛍光性の増加が測定された(図8)。異なる細胞は刺激に対してわずかに異なって応答しその結果3つの応答曲線(上部トレース)が示される。応答−比率は60%(n=17)であった。20秒後電圧パルスを印加した。下部トレースは、細胞内緩衝液がEFCを用いて導入されており、ブランク試験である。形成された穴を通過した染料の漏出によって蛍光性のわずかな減少が観察され得る。フラ(fura)−2のような染料、これはERに入る、を用いて、そのような効果が大部分避けられる。
細胞内酵素Iの検出 プロテアーゼの検出
カゼインボディフィフル(BODIPY FL)は分子プローブ社(ライデン、オランダ)製であった。緩衝溶液のために使用される薬品は全て分析用の等級でありシグマ社(セントルイス、MO、USA)から購入した。全ての溶液はミリQシステム(ミリポア社)による蒸留水で作成した。
細胞培養及び調製は上記実施例1において使用された方法によって成され、装置及び器具は実施例1と同じであった。
電気穿孔を実施例1のように実施し、EFC(長さ30cm、内径50μm、外径375μm)を使用した。カゼインボディフィフル(BODIPY FL)を100μg/mlの濃度で使用し、10kVでの10秒のパルスを用いて細胞中へ電気穿孔した。
カゼインボディフィフル(BODIPY FL)を用いた細胞内プロテアーゼの検出の結果を図9に示した。特に、細胞内プロテアーゼ活性を蛋白質、カゼイン、これは緑色の蛍光分子ボディフィフル(BODIPY FL)を大量に搭載しており、を酵素基質として使用して調べた。溶液中に、カゼインボディフィフル(BODIPY FL)は折りたたまれているので、分子中の4つひと組の配置(quaternary arrangement)は蛍光を抑制する。ペプチド結合を切断すると、細胞質プロテアーゼの活動によって、ボディフィフル(BODIPY FL)で標識された自由ペプチドのセグメントが蛍光を発し始める。図9A−Cの画像は単一のNG108−15細胞中のプロテアーゼの同定を示している。
カゼインボディフィフル(BODIPY FL)を導入し、電気穿孔30秒後に蛍光強度を観察した。応答−比率は60%、n=19であった。酵素活性は蛍光の増加と相関関係にあり得、これはこの方法が単一細胞における酵素活性のスクリーニング及び測定に好適であることを意味している。酵素活性の違いが細胞集団における表現型を明らかにする場合、これは細胞プロテオミクスに単独で有効であり得る。
細胞内酵素アルカリフォスファターゼの検出
フルオレセイン二リン酸塩は分子プローブ社(ライデン、オランダ)製であった。緩衝溶液のために使用される薬品は全て分析用の等級でありシグマ社(セントルイス、MO、USA)から購入した。全ての溶液はミリQシステム(ミリポア社)による蒸留水で作成した。
細胞培養及び調製の方法及び手順は実施例1で使用されたものと同じであった。
電気穿孔を実施例1のように実施した。FDPを500μMの濃度にて細胞質に補充した。基質フルオレセイン二リン酸塩の部分はフルオレセインとして既に存在していた。従って、電気穿孔(パルス長5秒、10kV)の間その上パルスの後10秒細胞を漂白し、細胞から過剰なフルオレセインを排除した。細胞を電気穿孔の30秒後観察し、その後30秒間隔で観察した。観察の前にEFC(長さ30cm、内径50μm、外径375μm)を細胞から移動させた。
装置及び器具は実施例1で使用されたものと同じであった。
未処理NG108−15細胞におけるアルカリフォスファターゼの同定の結果を図10に示した。基質中のホスホエステル−結合を触媒的に加水分解する細胞内酵素アルカリフォスファターゼを捕捉するためにフルオレセイン二リン酸塩(FDP)を使用し、その結果非常に緑色の蛍光生成物フルオレセインが細胞質中に形成された、図10A−C。細胞を選択し基質フルオレセイン二リン酸塩(FDP)をEFCの電解質へ補充した。図10Aにおいて、高電圧パルス(5秒、10kV)を印加した。電気穿孔30秒後、蛍光性を電荷結合素子(CCD)カメラで測定した。基質は非蛍光性であり、生成物は蛍光性である。図10Bの細胞中に得られた蛍光性は、従って酵素の存在の証拠である。
応答比率は70%(n=8)であった。図10Cは電気穿孔後の同じ細胞を示している。
本発明による方法を用いた細胞及び細胞性構造の電気穿孔に適切な装置を示す。ある実施の形態が図1aに図示されており、これは1つのEFC1からなり、EFC1は第一電極3及びバイアル4を経由して電圧発生器2に接続され、バイアル4は前記EFCの内部と同じ組成の電解質溶液を含む。この電解質溶液には、細胞性構造へ導入されるよう薬剤5が追加されている。細胞構造6は例えば望ましくは接地バスタイプ対電極(groundbath−type counter electrode)8の装備されたペトリ皿7中の生理学的緩衝液中に保持されている。ここに示された好ましい実施の形態において、ペトリ皿は反転した顕微鏡試料台9の上に据えられ、細胞構造に対してEFC先端を位置決めすることを容易にするために、顕微鏡対物レンズ10を介して観察される。EFCは三次元マイクロポジショナ11によって細胞構造に近接して設置される。電極の間に生じる電場を電気穿孔される構造に高度に集束させるといった方法でこれは達成される。図1b及び図1cには、図1aの実施の形態が細胞構造6を細胞−不浸透性薬剤5をローディングするためにどのように使用されることが可能であるかということが図示されている。図1bにおいて、細胞−不浸透性薬剤5を収容しているEFC1はマイクロポジショナ11を用いて標的細胞構造6の表面に近接して設置される。図1cにおいて、電圧発生器2によって送達された電圧パルスはEFCを横断して印加される。従って、電場は細胞性構造全体に樹立され、細胞膜の絶縁破壊による穴形成を引き起こす。印加された電位はまたEFC中に収容されている溶液の電気浸透送達又は電気泳動送達を引き起こす。その結果として、EFC中に収容されている細胞−不浸透性薬剤5が穴形成部位にて送達され、ここで細胞標的の内部へローディング剤が生じた穴19を通って自由に入ることが可能である。電場が排除されると、形成されていた穴は閉じ細胞膜は治る。 異なる先端形状を備えた電解質で満たされたキャピラリを示す。図2aに図示されるように、EFC1は完全な円筒形の形状を有しても良い。図2b及び図2cに示すような先細にした末口を供えたキャピラリ1を使用することが時に都合がよい。特に、これは単細胞の電気穿孔の場合である。図2bにはガラス又は溶融石英のキャピラリを機械的引っ張り装置において熱したフィラメントで引っ張ることにより作られた先細にしたEFC1が図示されている。そのようなキャピラリの先端は非常に小さく、数ナノメータまで小さく形成されることが可能であり、そして経路径のみならず外径も減少されている。先細のキャピラリはまたフッ化水素酸のエッチング又は研磨によって調製され作り出されることも可能である。この試みの利点はキャピラリの外径のみが減少され、一方内径は影響されないことである。このタイプのキャピラリは図2cに図示される。キャピラリはまた図2d及び図2eに図示されるように導電性の先端を有されることも可能である。導電性の先端を備えたこれらの中空のキャピラリの利点は、低RC時定数により、より短いパルス時間が高精度で適用されることが可能であることである。図2dのキャピラリは内部に電極3を有しており、図2eに示されるキャピラリは外部に電極3を有している。 一列に配置した多数のEFC1を使用した細胞−ローディング剤の送達を示す。そのようなキャピラリ1の配置は図3aに示すような直列の配列12又は図3bに示すような二次元の配列14であって良い。キャピラリのこれらの配列はホルダ13によって互いに保持されることが可能である。単一細胞に立て続けに細胞−ローディング剤を送達する電気穿孔のため、図3c−eに図示したように、EFCの配列は迅速に細胞標的を横切って移動する。 特別なタイプのEFC配列を示し、すなわち多数のバレル型のEFC15であって、図3aに図示されているように(側面図は左側に図示し、正面図は右側に図示している)、ここにおいてEFCはいくつかのバレル5又はチャネル5からなり、個別にアドレス可能な電極3に装備され、そして単一又はいくつかの細胞−ローディング剤5を充填されている。個別のバレルにおける連続的な電圧印加によって、この配列を用いてローディング剤の量を制御して連続的に送達することが可能である。 EFC中に細胞−ローディング剤の個別領域を成立させるため、前記EFCの連続的なローディングのための微量液体のスイッチを使用することにより遂行される細胞−ローディング剤送達を図示する。この発想は図5aに図示されており、ここにおいて1つのEFC1が微量液体スイッチ16及び供給EFC17を経由して異なるローディング剤を収容する6つの異なるバイアル4に接続されている。バイアルは個別にアドレス可能な電極3を装備している。電圧パルスの各バイアル4への連続的な印加によって、細胞−ローディング剤は供給EFCを経由して微量液体スイッチ中へポンピングされ、ここで連続的な方法においてそれらは主要なEFC1に入る。従って、細胞−ローディング剤の個別の帯が電気穿孔標的6に対して導入されることが可能な主要EFC中に形成される。このローディング処理は図5b−dに図示されている。 平面形態に成長した細胞又はマルチウェルプレートにおける多数のウェル中に収容された細胞の並列電気穿孔のひとつの実施例を図示している。平面形態に成長した細胞又はマルチウェルプレートにおける多数のウェル中に収容された細胞は、ここに図示した二次元(2−D)EFC配列フォーマットに理想的にふさわしい。何れの場合にも、1つのキャピラリ出口は特定の細胞6又は平面の細胞6の集団又は、ここに図示したようにウェル構造18中の細胞6を標的にする。 本発明の細胞−ローディング剤の並列送達についてのひとつの実施の形態を示す。ここで配列中の各EFC1は、多数の細胞−ローディング剤のEFCへの連続的なローディングを可能とする微量液体スイッチ16に接続され、前記EFC中の前記細胞−ローディング剤の個別の領域が成立される。個別のバイアルに収容されたいくつかの異なる細胞−ローディング剤は選択可能であるので、配列における各EFCは細胞−ローディング剤の所定の如何なる連続/組み合わせでもロードされることが可能である。図7aにおいて、マルチウェル構造18中の個別のウェルに位置するいくつかの個別の細胞は、細胞−ローディング剤の連続的な配達の後、同時に(並列して)起こる電気穿孔にさらされる。この設定はまた図7bに図示したように細胞−ローディング剤の組み合わせ送達も可能とし、配列中の各EFCが異なる順序の細胞−ローディング剤でロードされる。 フッ化−3−着色NG108−15細胞における細胞内リアノジン(rhyanodine)II型受容体の同定からの、蛍光と時間の関係を示す。 カゼイン−BODIPY−FLを用いた細胞内プロテアーゼの検出の結果を示す。 NG108−15細胞中のアルカリフォスファターゼの同定の結果を示す。

Claims (93)

  1. 細胞構造の表面へ及び細胞構造の細胞質中への薬剤の並列送達方法であって、以下のステップからなり:
    (a)電解質で満たされた管の少なくとも2つが接地電極又は対電極と共に提供され、
    (b)電解質で満たされた管が電圧又は電流発生器へ接続され、
    (c)薬剤の少なくとも1つが電解質で満たされた管の各々に収容された電解質溶液中に導入され、
    (d)電解質で満たされた管が細胞構造の表面に近接した距離で設置され、
    (e)単数の薬剤/複数の薬剤が電解質で満たされた管を通過して細胞構造の表面へ移送され、
    (f)細胞構造の表面の電気穿孔を得るのに十分の強度の電場が細胞構造に集束され、その結果細胞構造の膜表面に穴を形成し、そして、
    (g)単数の薬剤/複数の薬剤がステップ(f)にて形成された穴を通過して細胞構造の細胞質中に移送され、
    ここにおいてステップ(b)、(c)及び(d)の順番が変更され得、そしてステップ(e)及び(f)の順番が変更され得る以外はステップ(a〜g)は連続的に順を追って達成される、細胞構造の表面へ及び細胞構造の細胞質中への薬剤の並列送達方法。
  2. 薬剤が1つ細胞構造中に形成された穴を通過して送達される請求項1記載の方法。
  3. 薬剤が異なる複数の細胞構造中に形成された穴を通過して送達される請求項1記載の方法。
  4. 用いられる電解質で満たされた管の各々が薬剤を少なくとも2つ包含し、これらはそれぞれ少なくとも1つの薬剤からなる個別の領域又は帯の少なくとも2つに配置され、各々の穴を通過して薬剤の連続的な送達を可能とする請求項1記載の方法。
  5. 各々の管が少なくとも1つの薬剤の個別の領域又は帯を少なくとも2つ含む請求項4記載の方法。
  6. 各々の管は薬剤を含む個別の領域又は帯が微量流体スイッチを用いて装填される請求項4又は5記載の方法。
  7. 電解質で満たされた管がいくつかのバレル又はチャネルを含む請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
  8. バレル又はチャネルが異なる薬剤を含む請求項7記載の方法。
  9. 各々のバレル又はチャネルが個別に電極へ接続される請求項7又は8記載の方法。
  10. 電場が電解質で満たされた管と対電極又は接地電極との間に電圧発生器を用いて電圧を印加することにより得られる請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法。
  11. 電場が電解質で満たされた管と対電極又は接地電極との間に電流発生器を用いて電流を印加することにより得られる請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法。
  12. 電解質で満たされた管が電解質で満たされたキャピラリである請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
  13. 電解質で満たされた管が電解質で満たされた円錐状に先細にされた管である請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
  14. 電解質で満たされた管が電解質で満たされた電極である請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
  15. 1つの薬剤/複数の薬剤が電解質で満たされた管中に収容された電解質溶液中へ末口から毛細管力又は吸引又は吸入を用いて導入される請求項1乃至14の何れか一項に記載の方法。
  16. 1つの薬剤/複数の薬剤が電解質で満たされた管中の電解質に包含される請求項1乃至15の何れか一項に記載の方法。
  17. 細胞構造が細胞水浴媒体中に含まれる請求項1乃至16の何れか一項に記載の方法。
  18. 薬剤が薬物である請求項1乃至17の何れか一項に記載の方法。
  19. 細胞構造が細胞の集団である請求項1乃至18の何れか一項に記載の方法。
  20. 細胞構造が単一の細胞である請求項1乃至18の何れか一項に記載の方法。
  21. 細胞構造が組織である請求項1乃至19の何れか一項に記載の方法。
  22. 細胞構造が器官である請求項1乃至19の何れか一項に記載の方法。
  23. 細胞構造が細胞内構造である請求項1乃至19の何れか一項に記載の方法。
  24. 細胞内構造が細胞小器官である請求項23記載の方法。
  25. 細胞構造が平面に固定される請求項1乃至24の何れか一項に記載の方法。
  26. 細胞構造がプレートのウェルの少なくとも1つに収容される請求項1乃至25の何れか一項に記載の方法。
  27. 細胞構造がステップ(f)の前に遺伝子法で前もって処理されている請求項1乃至26の何れか一項に記載の方法。
  28. 遺伝子法がトランスフェクション法である請求項27記載の方法。
  29. 細胞構造がステップ(f)の前に薬物で前もって処理されている請求項1乃至28の何れか一項に記載の方法。
  30. 細胞構造がステップ(d)の前に内在的染料又はマーカで前もって処理されている請求項1乃至29の何れか一項に記載の方法。
  31. 管が更に流体送達装置に接続される請求項1乃至30の何れか一項に記載の方法。
  32. 装置がマイクロポンプである請求項31記載の方法。
  33. 装置が蠕動ポンプである請求項31記載の方法。
  34. 装置が重力ポンプである請求項31記載の方法。
  35. 装置が空気ポンプである請求項31記載の方法。
  36. 装置がソレノイドである請求項31記載の方法。
  37. 装置が圧力駆動ポンプである請求項31記載の方法。
  38. 流体送達装置が電解質で満たされた管中へ薬剤を移送するために使用される請求項31−37の何れか一項に記載の方法。
  39. 流体送達装置が細胞構造中へ薬剤を移送するために使用される請求項31−38の何れか一項に記載の方法。
  40. 細胞構造が細胞内構造であり、電解質で満たされた管及び接地電極又は対電極を用意しその結果管の端部及び電極が細胞内構造を含むホスト細胞内部に設置される請求項1−39の何れか一項に記載の方法。
  41. 電解質で満たされた管が少なくとも1つの電極を経由して電圧発生器へ接続される請求項1−40の何れか一項に記載の方法。
  42. 電圧発生器が10mV乃至100Vの電圧を細胞構造の表面で発生する請求項1−41の何れか一項に記載の方法。
  43. 電圧が100mV乃至10Vである請求項42記載の方法。
  44. 電解質で満たされた管が少なくとも1つの電極を経由して電流発生器へ接続される請求項1−40の何れか一項に記載の方法。
  45. 電気穿孔に必要な電流が管の中に存在する内部−電極性(intra−electrodal)電解質によって運搬される請求項1−44の何れか一項に記載の方法。
  46. 電気穿孔に必要な電流が電解質で満たされた管の導電層によって運搬される請求項1−44の何れか一項に記載の方法。
  47. 請求項10又は11に従属する場合、電圧又は電流がパルスとして印加される請求項10又は11、或いは請求項12−46の何れか一項に記載の方法。
  48. 前記パルスの長さが0.1μ秒乃至数分である請求項47記載の方法。
  49. パルスの長さが1μ秒乃至5秒である請求項48記載の方法。
  50. 強度及び/又は波形を変えるプログラム化された電場がステップ(f)にて使用される請求項1−49の何れか一項に記載の方法。
  51. パルス状の電場がステップ(f)にて使用される請求項1−50の何れか一項に記載の方法。
  52. ステップ(d)の近接した距離が100μm未満である請求項1−51の何れか一項に記載の方法。
  53. 細胞構造に近接した端部における電解質で満たされた管の直径が数ナノメータから数百マイクロメータまでである請求項1−52の何れか一項に記載の方法。
  54. 電解質で満たされた管がマイクロポジショナの使用によって配置される請求項1−53の何れか一項に記載の方法。
  55. 電解質で満たされた管の少なくとも1つが中空で溶融石英電極である請求項1−54の何れか一項に記載の方法。
  56. 電解質で満たされた管の少なくとも1つがポリマー電極である請求項1−54の何れか一項に記載の方法。
  57. 電解質で満たされた管の少なくとも1つがテフロン(登録商標)キャピラリのようなフッ化炭化水素キャピラリである請求項1−54の何れか一項に記載の方法。
  58. 薬剤が細胞−不浸透性薬剤である請求項1−57の何れか一項に記載の方法。
  59. 細胞−不浸透性薬剤が医薬品的に活性な化合物からなる請求項58記載の方法。
  60. 薬剤が電解質である請求項1−59の何れか一項に記載の方法。
  61. 薬剤が細胞原形質膜の受容体を活性化する物質である請求項1−60の何れか一項に記載の方法。
  62. 薬剤が細胞内の化学反応に作用する薬剤である請求項1−61の何れか一項に記載の方法。
  63. 薬剤が細胞の物理的性質に作用する薬剤である請求項1−62の何れか一項に記載の方法。
  64. 1つの薬剤/複数の薬剤が遺伝子、遺伝子アナログ、RNA、RNAアナログ、DNA、DNAアナログ、コロイド粒子、受容体、受容体リガンド、受容体アンタゴニスト、受容体遮断薬、酵素、酵素基質、酵素阻害剤、酵素モジュレータ、蛋白質、蛋白質アナログ、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ペプチド、ペプチドアナログ、代謝産物、代謝産物アナログ、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドアナログ、抗原、抗原アナログ、ハプテン、ハプテンアナログ、抗体、抗体アナログ、細胞小器官、細胞小器官アナログ、細胞核、細菌、ウィルス、配偶子、無機イオン、金属イオン、金属クラスタ、ポリマー及びそれらの如何なる組み合わせから構成される群から独立して選択される請求項1−63の何れか一項に記載の方法。
  65. 1つの薬剤/複数の薬剤が電気泳動又は電気浸透によって細胞構造中へ送達される請求項1−64の何れか一項に記載の方法。
  66. 電解質で満たされた管が一次元配列又は二次元配列に配置される請求項1−65の何れか一項に記載の方法。
  67. 配列がチップ装置へ固体物質から微細に組立てられ、前記チップ装置の表面がいくつかの開口部を有し、個別の電解質で満たされた管の末口によって各々構成される請求項66記載の方法。
  68. 電解質で満たされた管が個別に制御される請求項1乃至67の何れか一項に記載の方法。
  69. 電解質で満たされた管が集団状に制御される請求項1乃至67の何れか一項に記載の方法。
  70. 電解質で満たされた管がロボット装置で制御される請求項68又は69記載の方法。
  71. 細胞構造が電解質で満たされた管の出口末端に関してトランスレートされることが可能な請求項1乃至70の何れか一項に記載の方法。
  72. 細胞構造が可動試料台を用いてトランスレートされる請求項71記載の方法。
  73. 細胞構造が電動試料台を用いてトランスレートされる請求項71又は72記載の方法。
  74. 試料台が顕微鏡試料台である請求項72又は73記載の方法。
  75. ステップ(g)の後に達成されるステップ(h)を更に包含し、細胞構造中の薬剤によって誘発される応答が蛍光の検出によって測定される請求項1乃至74の何れか一項に記載の方法。
  76. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の遺伝子トランスフェクションのための使用。
  77. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の遺伝子同定のための使用。
  78. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の酵素同定のための使用。
  79. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の蛋白質同定のための使用。
  80. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の受容体同定のための使用。
  81. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の結合分析、酵素分析、受容体分析、ウィルス分析、細菌分析、薬物分析及び/又は反応速度分析における使用。
  82. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の薬物動態学における使用。
  83. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の薬理学における使用。
  84. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の代謝経路及び/又は情報伝達経路の改良のための使用。
  85. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の体外受精のための使用。
  86. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の核及び/又は細胞小器官の移植ための使用。
  87. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の細胞構造表面の受容体をスクリーニングするための使用。
  88. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の細胞構造内部の受容体をスクリーニングするための使用。
  89. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の細胞構造の内部の信号システムの研究における使用。
  90. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法のセンサにおける使用。
  91. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法のロボット工学における使用。
  92. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の化学コンピュータにおける使用。
  93. 請求項1乃至75の何れか一項に記載の方法の生物学コンピュータにおける使用。
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