本発明は、細胞ベースのバイオセンサーのような、センサー周辺の局所溶液環境を迅速に及びプログラム可能に変更するためのシステム及び方法を提供する。本発明は、例えば、中枢神経系及び他の細胞系にある、受容体タンパク質における、新規機能を決定する方法に関する。当該方法は、リガンドに曝す時間、リガンド濃度、リガンド曝露間の洗浄回数、及び適用の順番を高精度に制御して、細胞又は受容体タンパク質を含む他の調製物を、リガンドに曝露する、微小流体プロトコルをベースとする。特に、パッチクランプの細胞が、制御された曝露時間で、上昇及び下降濃度のリガンドに周期的に曝露される、サイクル走査パッチクランプ用のプロトコルを実証する。当該方法は、更に、薬物及び医薬的に活性な物質のような受容体モジュレーターの特定化及び検証のために使用することもできる。
以下に詳細な説明で使用される具体的な用語に関して、定義を挙げる。
本明細書及びクレームで用いられているような単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに他のことを述べている場合を除き、複数形を包含する。例えば、「開口部」は、複数の「開口部」を包含する。「イオンチャネル」は、複数のイオンチャネルを包含する。「1つの開口部」又は「開口部」という用語は、複数の開口部を示すことができる。
本明細書で用いられる「パッチクランプ装置」は、パッチクランプの記録を得るのに適した装置である。このような装置は例えば、細胞膜を電極から分離するための絶縁表面を含む。この表面は開口部を特徴づけるルーメン(lumen)又はカラム中の電解質溶液を介して細胞を電極に結合させる開口部を含み、これによって細胞が電極と電気的に連通する(例えば、電極によって生成された電場に曝して、電極に戻る電流又は電圧のような、電気信号の送信を可能とする)。この絶縁表面は例えば、それぞれが細胞を受け取るために(例えばチャネルの開口部は細胞を受け取れる)、複数のセンサーチャンバー、ウェル、又はカラムを含んでいる、ウェファー又はチップの形に製造することができる。センサーチャンバー又はカラムの底は、1つ又はそれ以上の電極に繋がっている電気接触領域を含んでよく、一方チャンバー又はカラムの開口部は細胞を受け取る。センサーチャンバー又はカラム(パッチ側)は、通常のパッチクランプ装置のマイクロピペットのように、細胞を電極に結合させるために電解質溶液で充たされており、これによって細胞は電極に連通される。
「細胞保持」、「センサー保持」、「センサー位置決め」、「センサー測定」又は「細胞測定」装置は、各種の測定又は記録を得るのに適した装置である。このような装置は、例えば、細胞を定位置に保持するための表面を含む。表面は、例えば、チャネル又はチャンバーへの開口部を含む。表面は例えば、それぞれが細胞を受け取るために(例えばチャネルの開口部は一個の細胞を受け取れる)、複数のセンサーチャンバー、ウェル、又はカラムを含んでいる、ウェファー又はチップの形に製造することができる。
本明細書で用いられる「電極」という用語は、電気信号を送信又は伝導する装置を示す。
本明細書で用いられる「電化質溶液」という用語は、パッチクランプのアレーのセンサーチャンバー又はマイクロピペット内に入っている溶液を示す。
本明細書で用いられる「浴溶液」という用語は、センサーチャンバー又はカラムの細胞の細胞の外側、又はパッチクランプのマイクロピペットの外側を、取り囲む溶液又は媒体を示す。
本明細書で用いられる「開口部」という用語は、穴、割れ目又はすき間のような、何れかのすき間又はオリフィスを示す。開口部は何れの形態又は構造を取ることができ、例えば実質的に楕円形、円形、方形、又は多角形であってよい。本明細書に記載のパッチクランプ、細胞、センサー保持又は測定システムの開口部の大きさは、約0.1ミクロン〜約100ミクロンの範囲である。しかしながら、開口部は、少なくとも0.01μm、少なくとも0.05μm、少なくとも0.1μm、少なくとも10μm、少なくとも15μm、少なくとも20μm、少なくとも50μm、少なくとも75μm、又は少なくとも100μmからの範囲とすることができる。
本明細書で用いられる「開口部を特徴づける表面」は、開口部を含む表面を示して、これは細胞を電極コンパートメント又はチャネル、又は細胞保持装置、又は測定チャンバー又はチャネルと結合させる。一般に、開口部を特徴づける表面は、細胞膜と接触する表面の部分(例えば、マイクロピペットの縁、及びシールを形成するように細胞膜に接触するマイクロピペットチップの内部表面、又はオンチップ装置の場合は、センサーチャンバーの縁、及びセンサーチャンバー又はチャネルの開口部をシールする時に細胞に接触するセンサーチャンバーの壁の部分)を示す。
本明細書で用いられる「電極コンパートメント又はチャネル」は、1つ又はそれ以上の電極を開口部を有する表面に結合させて、開口部に電場を生成するか又は電流又は電圧のような、記録のための、電気信号を受け取ることを可能とする電解質溶液を含んでいる1つ又はそれ以上の電極、及びルーメン又はカラムを示す。本明細書に記載のシステムは1つ又はそれ以上の電極コンパートメント又はチャネル、及び独立して制御可能とすることができる1つ又はそれ以上の電極を有していてよい。
本明細書で用いられる「センサー保持若しくは測定用コンパートメント又はチャネル」は、開口部(例えば、センサーチャンバーの中へ)を有している1つ又はそれ以上のコンパートメント又はチャネルを示す。 コンパートメント又はチャネルは、緩衝液又は他の溶液を含んでいてもよい。溶液は例えば、栄養素、緩衝液、薬物、候補薬物などを含有していてもよい。
本明細書で用いられる「センサーチャンバー」は、1つ又はそれ以上の細胞を受け取るため、基板内にある、チャンバー、ウェル、カラム、チャネル、窪み又は貯蔵部を示す。細胞ベースのバイオセンサーに適合したパッチクランプ装置と関連して、センサーチャンバーは細胞を受け取りパッチクランプのカラムの近くに位置決めするためのチャンバーである。このチャンバーは浴溶液を含んでいてもよい。オンチップのパッチクランプ装置と関連して、このチャンバーは、単一細胞又は多細胞を受け取る。オンチップの蛍光測定と関連して、このチャンバーは複数の細胞が固定される大きなチャネルであってよい。例えば約1個から約20個以上の細胞である。チャンバーは1つ又はそれ以上の電極も含むことができる。チャンバーはチャンバーで受け取って細胞の動きを制限するような方法で設計することが好ましく、パッチクランプ測定の場合には、チャンバーの底の電極に電気的に連通している細胞を保持するために電解質溶液を含むことが好ましい。
本明細書で用いられる「細胞膜」という用語は、生物学的コンパートメントを取り囲む脂質二重層を示して、天然又は人工の細胞(例えば、リポソームのような)の膜、膜小胞体又はそれらの部分を包含する。「細胞膜」という用語は、そのような膜を含んでいる全細胞、細胞の部分、人工細胞、又は人工細胞の部分を包含する。細胞膜は細胞小器官の膜及びそれらの部分も包含する。
本明細書で用いられる「パッチ」記録は、パッチクランプが収集する、パッチクランプ装置の開口部に対してシールされた膜パッチを流れるイオン電流の記録を示す。
本明細書で用いられる「ホールセル記録」は、膜パッチが破裂して細胞内部へ直接電気的アクセスを与えた状況を示す。
本明細書で用いられる「高電気抵抗性シール」という用語は、細胞膜と、細胞を電極コンパートメント又はチャネルから分離する表面との間のシールを示し、この完全性は高い電気抵抗で示される。これは約100MΩ以上、約200MΩ以上、約300MΩ以上、約400MΩ以上、約500MΩ以上、約600MΩ以上、約700MΩ以上、約800MΩ以上、約900MΩ以上、約1GΩ以上、約1.2GΩ以上、約1.3GΩ以上、約1.4GΩ以上、約1.5GΩ以上、約1.6GΩ以上、約1.7GΩ以上、約1.8GΩ以上、約1.9GΩ以上、約2GΩ以上、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、又は200GΩ以上が好ましい。
本明細書で用いられる「マイクロチャネル」は、2つの壁、底面、少なくとも1個の入口及び少なくとも1個の出口を含む基板中の溝を言う。一態様では、マイクロチャネルは屋根も有する。「マイクロ」という用語は、寸法において下限を含まず、用語「マイクロチャネル」は、一般的に、「チャネル」と互換的に使用する。例えば、マイクロチャネルは、寸法で、約0.1μm〜約1000μmの範囲、又は1μm〜約500μmの範囲である。
本明細書で用いられる「実質的に分離した水性流」という用語は、層流がある平行な流れを示す。
本明細書で用いられる「受容体」という用語は、リガンド分子と特異的に相互作用可能な巨大分子を示す。
本明細書で用いられる「と連通している」という用語は、別のシステム又はシステムの構成部品からシグナル又はインプットされたデータを受け取って、インプットされたデータに応答してアウトプット応答を提供する、システム又はシステムの構成部品の能力を示す。「アウトプット」は、データの形式であってよく、又はシステム又はシステムの構成部品がとったアクション又はシステム又はシステムの構成部品によって(例えば、検出器に)送達されたシグナルの形式であってもよい。
例えば、電極に「電気的に連通している」細胞は、電極からシグナル(電圧、電流などのような)を受け取って、シグナルに対する応答を電気的な性質(例えば電流のような)の測定可能な変化の形式で提供する、細胞を示す。同様に、蛍光測定する場合は、細胞を、細胞から検出器への発光を介して光子検出器と「光学的に連通している」ことができる。「連通している」、更にまた「流動体的に連結された」も、一方から他方へ流れを通すことが可能であるシステムのチャネルと貯蔵部を示す。当業者は、文脈からどの連通の定義を適用するかが分かるであろう。
本明細書で用いられる「細胞と電気的な連通を達成するために非平面の素子を含んでいる実質的に平面な基板」は、その表面が基板の表面に対して相対的に上昇しているか又は窪んでいる素子を包含する基板を示す。例えば、「非平面な素子」は、ピラミッド型、ドーナツ型、積み重なった複数の平面素子からなるもの等であってよい。
本明細書で用いられる「測定可能な応答」は、この技術に対して適切な対照を用いて測定されたバックグランドと有意に異なっている応答を示す。
本明細書で用いられる「記録」は、パッチクランプ又は蛍光分析で得られるような、処理された電気的又は光学的シグナルから得られた収集された及び/又は蓄積されたデータを示す。
本発明の方法及びシステムは、蛍光ベースの検出技術を用いて、イオンチャネル又はGタンパク質結合性受容体タンパク質(GPCRs)のような標的タンパク質に結合するリガンドを検討するために使用することができる。これは、例えば脂質二重層又は細胞及び受容体プローブ中の、例えば目的のイオンチャネルを有することによって実施することができる。このプローブは、リガンドがチャネルに結合した時に、チャネルが特異的に通過できるイオン濃度の変化を伝える。候補薬物として可能性のあるリガンドを、この技術をもちいて、例えば蛍光の増大によって、選別することができる。結合によって、イオンチャネルが開き、イオンが脂質二分子層を通過して特異的に入ることができる。これにより、レポータープローブは、蛍光発生し、そしてシグナルが観察できる。
本明細書で用いられる「位置決め装置」は、それが結合して、対象物又は装置(例えば、基板、センサー、細胞、センサー保持機構など)を保持し、維持できることができる機構又は機器を言う。位置決め装置は、ナノメーター(例えば、位置決め装置はナノ位置決め装置である)、マイクロメーター(例えば、位置決め装置がマイクロ位置決め装置)及び/又はミリメーターのような距離にわたって対象物の動きを制御できるのが好ましい。適切な位置決め装置は、例えばx軸方向、y軸方向、又はz軸方向に動く。一態様では、本発明による位置決め装置は、また、ユーザーによって規定された任意の回転軸の周りを回転する。好ましい態様では、位置決め装置は、プロセッサと連通する駆動ユニットに結合し、対象物の動きを、プログラムされた指示によるプロセッサ、ジョイスティックの使用、他の類似の機器、あるいはこれらの組合せによって制御する。
本明細書で用いられる「センサー保持用機構」は、機構に対して、比較的静止位置中にセンサーを保つように、センサーの少なくとも一部分を受け取る装置を示す。一態様では、当該機構は、センサーの少なくとも一部を受け取るための開口部を含む。例えば、そのような機構は、パッチクランプのピペット、毛細管、カラム又はチャネル、中空電極などを含むがこれらに限定されるものではない。
本明細書で用いられる「チャンバー」は、底面を囲む、壁(開口部を有していても、有していなくてもよい)によって形成される区域を示す。チャンバーは、「オープンボリューム」(例えば覆われていない)あるいは「閉鎖されたボリューム」(例えば、カバーガラスで覆われている)であってもよい。「センサーチャンバー」は、1つ又はそれ以上のセンサーを受け取るものであり、少なくとも2個のマイクロチャネルから1つ又はそれ以上の壁に出口を含む。しかしながら、本発明によるセンサーチャンバーは、一般的に、その目的に限定することなく、1つ又はそれ以上のナノスケール又はマイクロスケールの対象物を受け取ることができる。センサーチャンバーは、異なる面(必ずしも平行な面である必要はない)で多数の壁を含むことができ、あるいは普通円筒形である単一の壁(例えば、チャンバーが「円盤形状」の場合)を含むこともできる。センサーチャンバーの幾何学的構造が、本発明の態様を限定するということは意図されていない。1つ又はそれ以上の壁(複数も含む)及び/又は底面は、光学的に透過性であってよい。一般的に、センサーチャンバーは、サイズで言うと、少なくとも約1μmである。センサーチャンバーはチャネル様の構造であってよく、緩衝液貯蔵部と入口貯蔵部に流動的に連通している。一態様では、チャンバーの寸法は、少なくとも単一細胞、例えば、哺乳類の細胞を受け取るのに、そして数百以上の細胞を受け取れるのに充分な大きさである。
本明細書で用いられる「センサー」は、分子が曝露される(例えば、1つ又はそれ以上の分子に結合する化合物の存在など)ような、水性環境中の条件で相互反応した時、測定可能な応答を作りうる1つ又はそれ以上の分子を含む装置を示す。一態様では、分子(複数を含む)は、基板上に固定化され、一方、他の態様では、分子(複数を含む)は細胞の部分である(例えば、センサーは「細胞ベースのバイオセンサー」である)。
本明細書で用いられる「水性」は、水性ではない他の液体、例えば、アルコール及び他の非水性流体及び液体を含む。
本明細書で用いられる「細胞ベースのバイオセンサー」又は「バイオセンサー」という用語は、無傷細胞又は無傷細胞の一部(例えば、膜パッチのようなもの)であって、細胞(又はその部分)が置かれている水性環境内の条件を感知した時、検出しうる生理的応答を提供することができるものを示す。一態様では、細胞ベースのバイオセンサーは、パッチクランプの電極又は電解質溶液のような、導電性素子と電気的に連通する細胞膜の全細胞又はその一部である。ある実施形態では、任意の構成の脂質二重層内の受容体及び再構築された受容体タンパク質、又は類似の調製物は、用語バイオセンサーの意味の中に包含される。
本明細書で用いられる「受容体を調製する」は、不連続運動状態において受容体(複数を含む)を製造する方法を示し、異なる応答機能、動的領域EC50値及びヒルスロープを有することを特徴とする。これは、例えば、本明細書に記載されたサイクリック走査パッチクランプ方法によって行うことができる。
本明細書で用いられる「順番に」は、順送りに、連続して、継続的に及び次々と、を包含するものである。あるいは、中断又は嵌合があってもよい。
本明細書で用いられる「順番に曝露する」は、バイオセンサーを、リガンド、サンプル、アゴニスト又はアンタゴニストに、順送りに、連続して、継続的に、次々と曝露すること言い、あるいは、リガンド、サンプル、アゴニスト又はアンタゴニストの緩衝液での中断又は嵌合があってもよい。
本明細書で用いられる「コントローラー」は、本明細書で記載された方法を制御又は方向付ける装置、例えば、プログラムされたプロセッサを示す。例えば、コントローラーは、曝露時間、サンプル濃度、洗浄及び休止時間を制御してもよい。また、コントローラーは、圧力、センサーの位置、緩衝液又はサンプルのパルス、バイオセンサー上の又はバイオセンサーを囲む溶液の交換を、独立して制御してもよい。
本明細書で用いられる「選定された時間間隔」又は「選定された時間の長さ」は、所望の結果を達成するため、あるいは受容体の検査の目的のために設定された時間間隔を示す。例えば、時間は、曝露時間、洗浄時間又は休止時間として選択されてもよい。
本明細書で用いられる「サンプル」は、受容体に関連して目的の提供される溶液又は材料を示す。サンプルは、リガンド、アゴニスト、又はアンタゴニスト、又は未知の及び検討するべき化合物又は組成物を含んでもよい。
本明細書で用いられる「又は」は、包含的であっても、排他的であってもよい。
本明細書で用いられる「受容体の記憶特性」は、先の出来事(例えば刺激)のために変更された受容体応答機能(複数を含む)を示し、刺激の性質、洗浄時間及び/又は先の刺激の大きさ(濃度)に依存するかもしれない。例えば、特定濃度のアゴニストに対する応答機能は、先の刺激の適応の履歴に依存して変化するかもしれない。
本明細書で用いられる「短期間、中期間、又は長期間記憶機能」は、受容体の可塑性(plasticity)を示す。例えば、短期間は、約1μs〜約1秒間持ちこたえる受容体の可塑性を含み、中期間は約1秒〜約10分間持ちこたえる可塑性を含み、長期間は、約10分〜約5日間持ちこたえる可塑性を示す。可塑性は、受容体の記憶能力を示し、その応答機能を先の出来事(例えば刺激)によって変化させる。
本明細書で用いられる「周期的に再感作された」又は「周期的応答性」は、リガンドを含む、疑いのある又は公知のサンプルを提供するマイクロチャネル出口を横切って走査される時、閉ざされた(すなわちリガンド応答性)位置に保たれたイオンチャネルを示す。
本明細書で用いられる「実質的に分離した流体流」は、ボリューム内の流れ又はボリューム内の他の流れの外側に、流体で物理的に連続した、流体のボリューム内で流れる流体(例えばチャンバー又はチャネル内のような)を示すが、これは流体のボリューム内の流れ又は他の流れの外側の流体のバルク特性とは異なり、そしてこれと及び非平衡である、少なくとも1つのバルク特性を有する。本明細書で用いられる「バルク特性」は、流れの流れる方向に垂直な、流れの断面図の流れにおいて、成分(例えば、薬剤、溶質、物質又は緩衝液分子)の特定の性質の平均値を言う。「特性」には、成分の濃度、温度、pH、イオン強度、速度のような化学的又は物理的特性が挙げられる。
「センサーチャンバーに連通する検出器」は、センサーチャンバーから光学シグナル(例えば、光)を受け取るために、センサーチャンバーに光学的に十分近接している検出器を示す。チャンバーと「光学的に連通している光源」は、チャンバーからシステムの検出器へ光路を作りだして、チャンバー又はそこに含まれている対象物の光学的特性を検出器によって検出できるようにする、チャンバーに十分近接している光源を示す。
本明細書で用いられるチャンバー又はマイクロチャンバー「と交差する」出口は、チャンバー又はマイクロチャンバーの壁、底面又は上面に開くあるいは送り込む、あるいはチャンバー又はマイクロチャンバーに含まれる流体ボリュームに送り込む出口を示す。
本明細書で用いられる「灌流」は、対象物又はセンサー(例えば細胞のようなもの)の外表面を洗浄することを示す。
本明細書で使用する「サイクリック走査パッチクランプ」(CSPC)は、曝露時間(texp)、クリアランス時間(twash)及び中間サイクル時間(trest)に関して、各サイクルを制御する受容体エフェクターの固定濃度勾配によって、パッチクランプの細胞を前後に走査する方法を示す。これは、他のシステム、例えば、検出の好ましい方法が、蛍光発光であり、あるいは電気化学的、SPR、又は機能的受容体タンパク質検討の分野において公知の他の方法である、Gタンパク質結合受容体(GPRC)に適用してもよい。
微小流体装置という用語は、マイクロ加工されたチップ、毛細管システム、Uチューブ、液体フィラメント及び微小流体流れ上のシータガラスなどを包含し、これらは、細胞及びバイオセンサー周辺の溶液交換に関して低レイノルズ数挙動を特徴とする。
本明細書で用いられる「リガンド」という用語は、受容体に結合して活性化又は不活性化のどちらかになる分子を言う。リガンドは、受容体上で、アゴニスト又はアンタゴニストとして作用することができ、あるいは他のアゴニスト又はアンタゴニストによる受容体の応答を調節することによって、作用することができる。
(システム)
本発明は、細胞ベースのバイオセンサーを受け取るためのチャンバーを含んでいる基板を提供し、このバイオセンサーは、GPCR又はイオンチャネルを含む。
一態様では、このシステムは、細胞ベースのバイオセンサーを、受容体/イオンチャネルに結合する1つ又は数個のリガンドへ短時間、そしてリガンドを含んでいない緩衝液へ短時間、基板の相互嵌合チャネルを介して、順次、曝す。例えば、細胞のバイオセンサーをこれらの異なった溶液条件に短時間曝すことは、細胞ベースのバイオセンサーを、圧力変化によって容易かつ迅速に切り替えて、1つ又は数個のリガンド及び緩衝液を交互に送達する、流体流に曝すことによって行うことができる。
本発明は更に、円錐形壁及び底を含んでいる、センサーを受け取るための円形チャンバーを含む基板を提供する。一態様では、基板は、例えばパッチクランプのような細胞を保持するための、チャンバーの壁の外周周辺に垂直に配置された開口部(例えば、スポークのついた車輪配置で)を含んでいる複数のチャネルを含む。好ましくは、基板が、廃液をチャンバーから排出するための少なくと1つの出口チャネルを包含する。一態様では、少なくとも1つの追加チャネルが、緩衝液をチャンバーに送達する。緩衝液を送達するための少なくとも1つの追加チャネルと出口チャネルの間の角度は10°以上が好ましい。この角度が90°より大きいことがより好ましい。チャネルの「スポーク」は、全て同じ面にあるか、又は少なくとも2つのスポークが異なった面に位置していてもよい。
チャンバー中の溶液の迅速な、プログラム化された、連続的な交換は、チャンバーに置かれたセンサー周辺の溶液環境を変えるために使用される。例えば、それぞれのチャネルにサンプル/緩衝液を送達するために、出口チャネルがあってよい。送達用の多数のチャネルを、例えば基板を工業標準のマイクロタイタープレートとの接合に適するように、変えることができる。例えば、サンプルを送達するために、96〜1024のチャネルがあってもよい。別な態様では、緩衝液を送達するために(例えば、サンプルと緩衝液の相互嵌合流体を提供するために)、追加の、同じ数のチャネルがあってもよい。
本発明は、センサー周辺の溶液環境を変化させるための多層基板も提供するが、この基板には、センサーに流体を送達するチャネル及び第1基板に近接した1つ又はそれ以上のセンサーを保持するためのフィルター層を含む第1基板、及びフィルター層からの流体を受け取る廃液貯蔵部を含む第2基板を含有している。1つ又はそれ以上のセンサーが、第1基板とフィルター層の間に備えられている。一態様では、少なくとも1つのセンサーが細胞である。システムは更に、第1基板中のチャネルからフィルターを通って廃液貯蔵部へ流体を押し流すために、例えば、フィルター層(例えば、センサー)通る迅速な流体変化を提供する、第1と第2基板の間に圧力差を生じさせる機構を含むことが好ましい。
本発明は、細胞を電極コンパートメント又はチャネルと結合させる開口部を特徴づける表面と細胞との間の高電気抵抗性シールを作り出すためのシステム及び方法を提供する。細胞膜が表面に対してシールされているときは、細胞膜は電極コンパートメント又はチャネル内の電極と電気的に連通している。
一態様では、本発明は、細胞を電極コンパートメント又はチャネルに結合させる表面と細胞との間のシールを最適化するための改良された表面を提供する。例えば、一態様では、表面は非平面であって、細胞上に、表面に対してより強固なシールをもたらす圧力を与える。表面が突き出ていることが好ましい。開口部を特徴づける表面は、開口パッチクランプのアレー装置のような、オンチップのクランプ装置の1部であってよく、又はパッチクランプのマイクロチャネルのチップであってもよい。この表面は表面中の開口部、例えばマイクロチャネルへの開口部であってもよい。このマイクロチャネルは、例えば、基板中の微小流体チャネルであってよい。シールが形成された時に生じる電気抵抗は、少なくとも100Mオーム、少なくとも1Gオーム、少なくとも10Gオーム、又は少なくとも100Gオームである。
センサーは、捕捉チャネルと流体チャネルの交差点で捕捉されてもよい。これらの捕捉場所は整列していてよく、実験後に、捕捉されたセンサーは、新しい又は新鮮なセンサーが次の実験のために捕捉できるように、捕捉チャネルへ正圧を適用して除去できる。本明細書に記載の全てのシステムは、1回又は多数回使用することができる。
本発明は、細胞とセンサーチャンバーの開口部の間に形成されるシールの電気抵抗を最大にするために、非平面の素子を含む、センサーチャンバーを含んでいるオンチップのクランプ装置も提供する。一態様では、この開口部は、チャネルの開口部である、ここにおいて、このチャネルは例えば、電極コンパートメント若しくはチャネルであるか、又は電極を含んでいる。この態様では、センサーチャンバー(センサーチャネル)は、電極コンパートメント又はチャネルを特徴づけ、チャンバーの底に1つ又はそれ以上の電気素子、及び細胞を分離して細胞と1つ又はそれ以上の電気素子の間の直接接触を阻害する電解質溶液を含んでいる。
一態様では、センサーチャンバーの中の非平面素子は、ピラミッド型、円錐形、楕円形、又はドーナツ型である。別な態様では、非平面素子は、細胞を受け取るために窪みを含む。好ましくは、オンチップのパッチクランプ装置は、複数のセンサーチャンバー又はチャネル、及び非平面の素子を含む少なくとも1つのセンサーチャンバーを含んでいる、整列装置である。より好ましくは、実質的に全てのセンサーが非平面素子を含んでいる。
一態様では、センサーチャネルは、電極チャネルの1つ又はそれ以上の開口部を含んでいる通路を特徴づける。例えば、センサーチャネルの表面は、センサーを結合して表面に高電気抵抗性シールを形成する、電極チャネルの開口部を特徴づける。電極チャネルは、電極を含む。
本発明の他の態様では、細胞膜を電極コンパートメント若しくはチャネル、又は保持チャネル若しくはコンパートメント(例えば、細胞位置決めチャネル若しくはコンパートメント、又はセンサー位置決めチャネル)に結合させる開口部を特徴づける表面は、表面の高電気抵抗性シールの形成を最適化する表面化学的性質をもたらすように改良される。好ましくは、表面が親水性分子を含むか、親水性になるように処理する。例えば、表面をRCA方法、又は過酸化物、アンモニア、又は硝酸のような化学薬品を用いて化学洗浄に曝すことができる。
一つの好ましい態様では、このように処理された表面は、パッチクランプのアレー装置のような、オンチップのパッチクランプ装置の表面である。好ましくは、このような表面でシールが形成された場合の生成する電気抵抗は、少なくとも100Mオーム、少なくとも1Gオーム、少なくとも10Gオーム、又は少なくとも100Gオームである。
本発明は、1つ又はそれ以上の細胞を受け取るための1つ又はそれ以上のセンサーチャンバー又はチャネルを包含する、基板を含んでいるシステム(例えば、微小流体チップ又はバイオセンサー)も提供する。このセンサーチャンバーは、電極コンパートメント又はチャネル(例えば、オンチップのパッチクランプ装置として)を形成できる、又は細胞を電極コンパートメント又はチャネルに近接して位置決めするために細胞を受け取ることができる。基板は、細胞を適切なセンサーチャンバーに送達するために、1つ又はそれ以上のマイクロチャネルを含んでいてもよい。1つ又はそれ以上の圧力、光学ピンセット、電気浸透、誘電泳動及び交流又は直流の電流を、細胞をマイクロチャネルから適切なセンサーチャンバーに送るために使用することができる。
好ましくは、基板は、センサーチャンバー(複数を含む)又はチャネル(複数を含む)中の細胞の直近に流体流を提供する少なくとも1つの流体源を包含する。この流体流は、細胞を電極コンパートメント又はチャネル(例えば、貯蔵部又はチャネル)から分離するための開口部を特徴づける表面と細胞との間の高電気抵抗性シールを確立及び/又は維持するために使用される。
一態様では、この流体流はセンサーチャンバーに開いている出口を含むマイクロチャネルを介して送達される。別な態様では、基板は、それぞれが流体流をセンサーチャンバーに送達するための出口を有する、複数のマイクロチャネルを含む。好ましくは、システムが、1つ又はそれ以上の出口の静水圧を制御するための流体制御機構を含んでいる。1つ又はそれ以上のチャネルの静水圧は、プログラムされた指示に従い及び/又はフィードバックされたシグナルに応答するシステムに連通しているプロセッサによって変えることができる。一態様では、複数のチャネルのそれぞれの静水圧は異なっている。
別な態様では、同じ閉鎖チャネル中の水性流は、平行した層流であった。この水流は、圧力、負圧及び/又は正圧、を適用することによって切替えることができる。従って、例えば、バイオセンサーを、異なった適用圧力を用いて流れを切替えて、異なる内容の流れに迅速に曝すことができる。
一態様では、電極チャネルの縦軸は、実質的に平行である。このチャネルは、直線配列、二次元配列、又は三次元配列に配置することができる。電極チャネル、細胞保持チャネル、処理チャンバー若しくはチャネル、センサーチャンバー若しくはチャネル、貯蔵部、及び/又は廃液チャネルは、容器(複数を含む)若しくは多重ウェルプレート(multi-well plate)(複数を含む)又は電極を有するチャネルに接続させることができる。
一態様では、システムは、少なくとも1つの流体流をセンサーチャンバーへ送達するための、少なくとも1つのインプットチャネル、及び流体をセンサーチャンバーから除去するための少なくとも1つのアウトプット又は排水チャネルを含む。
別な態様では、アウトプットチャネルは、チャネルに過度にインプットできる(例えば、三次元配置で)。少なくとも1つのアウトプット又は排水チャネルの縦軸は、少なくとも1つのインプットチャネルの縦軸に対して、平行であるが、異なった面に位置していてもよい。正圧をインプットチャネルに適用し、同時に負圧を近接するアウトプット又は排水チャネルに適用することにより、チャンバー内にU字型の流体流を発生させることができる。このU字型の流体流は、細胞を位置決めするための圧力を発生するために、及び/又は細胞を電極コンパートメント又はチャネルに結合させる表面に細胞をシールするために使用することができる。チャネルへの開口は、細胞又は細胞様構造の位置決めとして、そしてパッチ装置として使用することができる。
一態様では、1つ又はそれ以上の流体流は、細胞(複数を含む)を電極コンパートメント又はチャネルから分離する開口部を特徴づける1つ又はそれ以上の表面と、センサーチャンバー中の1つ又はそれ以上の細胞(センサーチャンバー)との間の高電気抵抗性シールを生成するために用いられる。例えば、流体流はセンサーチャンバーに近接して位置決めされている(センサーチャンバーを移動する、マイクロピペットを移動する、又はセンサーチャンバー及びマイクロピペットの両方を移動することの何れかで)パッチクランプのマイクロピペットと、細胞との間の高電気抵抗性シールを生成するために用いられる。流体流の方向及び流体流を通すのに適用される圧力を制御することにより、高い電気抵抗(例えば、100Mオーム以上、そしてより好ましくは1Gオーム以上)を有するシールが作り出される。
本発明は更に、細胞を電極コンパートメント又はチャネル又は細胞保持コンパートメント又はチャネルと結合させる開口部を特徴づける表面と、細胞膜との間の高い電気抵抗性シールを生成するため方法を提供する。この方法は、細胞を表面に押し出して、表面に高い電気抵抗性シールを得るために、細胞を流体流に曝すことを含む。好ましくは、このシールは、長時間、例えば、約20分以上、約30分以上、約1時間以上、約2時間以上又は約5時間以上維持する。
このシールは、上記のような改良された表面を用いることによって増大させることができる(例えば、非平面又は突き出した表面を用いて、及び/又は表面を親水性にして)。さらにシールの電気抵抗を最大化するために、吸引又は1つ又はそれ以上の電圧を開口部に適用することができる。
一態様では、作り出されたシールは、測定される細胞膜の電気的性質を付与する、細胞膜と電極コンパートメント又はチャネル中の電極との間の連通している(例えば、電気的その他)ことを確立する。
一態様では、この方法は、パッチクランプの記録を得るために用いることができる。記録された電気的性質は、これらに限定されないが、細胞の表面積、細胞膜の伸縮、イオンチャネル浸透性、細胞からの内部小胞体の放出、細胞膜からの小胞体の回復、細胞内カルシウムのレベル、イオンチャネル誘導の電気的性質(例えば、電流、電圧、膜容量など)又は生存率を包含する、1つ又はそれ以上の細胞応答及び/又は細胞特性を観察するために用いられる。
上記の何れのシステムも、更に基板の少なくとも1つのマイクロチャネルに適用される正及び負の圧力を制御するための、圧力制御装置を含んでいてよい。基板が送達チャネル更にアウトプットチャネル(複数を含む)の両方を含んでいるシステムでは、システムが更に、少なくとも1つのアウトプットチャネルに負圧を適用している間に、少なくとも1つの送達チャネルに正圧を適用するための機構を含むことが好ましい。好ましくは、少なくとも1つのチャネルの静水圧が、プロセッサーによって受け取るフィードバックシグナルに応答して、変えられることができる。
システムは、従って、流体流がチャンバーから何時回収するか、そしてどのチャネルを通じて回収するか、を規制することができる。例えば、一定時間の後、流体流を、システムに導入したものと同じチャネル、又は他のチャネルを通じて、チャンバーから回収することができる。排水チャネルが送達チャネルと隣接しているとき、システムはU字型の液体流を生じることができ、これにより送達チャネルから送達される化合物を効率よく再利用することができる。
このシステムは、チャネル中の流体流を規制することもできる。例えば、層流の平行流体流を生じる圧力を適用することにより、流体流は、本明細書に記載のように差圧を適用して切替えることできる。これは、チャネル中又はオープンボリューム中で行うことができる。このシステムは多数の適切な圧力源を有することができる。例えば、システムは1〜10個の圧力源又はそれ以上を有することができる。あるシステムでは、正圧を供給する1つ又はそれ以上の圧力源、及び負圧を供給する1つ又はそれ以上の圧力源を有する。圧力源の配置例は、ある特定の態様、実施例及び図面に関連して以下に記載されている。
上記のように、多数の送達チャネルの配置を提供することができる;直線の、角度のある、分岐した、魚の骨形状の、などである。一態様では、各々の送達チャネルは、縦軸が送達チャネルの縦軸と垂直になっている1つ又はそれ以上の交差チャネルを含む。別な態様では、各々の送達チャネルは、縦軸が送達チャネルに対してある角度がある1つ又はそれ以上の交差チャネルを含む。
一般に、上記のチャネル配置の何れもが、サンプルを貯蔵部又はサンプルの入口へ送達するコンテナーに接合可能である(例えば、毛細管、又はコンテナーと貯蔵部/入口を接続するチューブを介して)。一態様では、少なくとも1つのチャネルは、分岐していて、複数の入口を含んでいる。好ましくは、複数の入口は、1つのコンテナーと接合している。しかしながら、複数の入口は、数個の異なるコンテナーとも接合できる。
更に、上記の基板の何れかも、1つ又はそれ以上の外部チューブ又は毛細管を介して多重ウェルプレート(例えば、マイクロタイタープレート)に接合させることができる。1つ又はそれ以上のチューブ又は毛細管は、チューブ又は毛細管を通る流体流を制御する1つ又はそれ以上の外部バルブを含むことができる。一態様では、多重ウェルプレートの複数のウェルは、公知の溶液を含む。システムは、複数のマイクロタイタープレートに接合することもでき、例えば、プレートは、他のプレートの上に、積み重ねることができる。好ましくは、システムは更に、マイクロタイタープレートのウェル又は適切なコンテナー(複数を含む)から基板の貯蔵部へ流体を送り込むマイクロポンプを含む。より好ましくは、システムは流体を貯蔵部を介して基板の選定されたチャネルへプログラム可能に送達する。
一態様では、本発明によるシステムは更に、センサーの応答を検出するために、センサーチャンバー又はチャネルに連通している検出器を含む。例えば、検出器を、センサーの電気、光学又は化学特性の1つ又はそれ以上の変化を検出するために用いることができる。一態様では、検出器からのシグナルに応答して、プロセッサーは、曝露速度、曝露回数及び1つ又はそれ以上のチャネルの圧力の、1つ又はそれ以上を変える。
一態様では、システムは、基板上に作られた複数のマイクロチャネルを包含する基板を提供する。そこには1つ又はそれ以上のセンサーチャネルがあり、複数の電極チャネル出口が、1つ又はそれ以上のセンサーを含んでいてもよいセンサーチャネルと、交差するか又はフィードする。好ましい態様では、センサーチャンバーが、電極と電気的に連通している細胞ベースのバイオセンサーを含み、検出器は細胞ベースのバイオセンサーの電気特性の変化を検出する。
システムは、好ましくは、これらに限定されないが、基板の1つ又はそれ以上のチャネルを通る流体流の制御すること、流体流を管理するために存在するバルブ及びスイッチ操作を制御すること、検出器により検出されるセンサー応答を記録すること、及びセンサーの応答に関連するデータを評価し、表示することを、包含するシステム操作を実施するためのプロセッサーを包含する。好ましくは、システムが、システムの操作を表示する及び代替えシステムパラメーターのためのグラフィカルインターフェースを含んでいる、システムプロセッサーに連通しているユーザー用の装置を含む。このシステムについて、更に以下に記載する。
(基板)
好ましい態様では、システムは、溶液を、センサーチャネルが1つ又はそれ以上のセンサーを受け取るのに適合している、センサーチャンバー又はチャネルに送達する基板を含む。基板は、以下に更に記載するように、二次元(2D)又は三次元(3D)構造として構成することができる。基板は、2Dでも3Dでも、一般的に、その出口がセンサーチャンバーに交差している、またその開口部は1つ又はそれ以上のセンサーを受け取るように適合している、複数のマイクロチャネルを包含する。センサーチャンバーの底面は、光学的に透過性があり、センサーチャンバー内に置かれた1つ又はそれ以上のセンサーから光学データを収集することが可能である。
各々のマイクロチャネルは、少なくとも1つの入口(例えば、サンプル又は緩衝液を受け取るために)を含む。好ましくは、当該入口は、基板上の幾何学的構造及び配置を工業規格のマイクロタイタープレートのウェルの幾何学的構造及び配置に統一した貯蔵部(例えば、図2A及びB中の円として示されている)からの溶液を受け取る。基板は、システムの除去可能な成分であり、したがって、一態様では、本発明は、システムでの使用のための1つ又はそれ以上の基板を含むキットを提供し、これは、異なるチャネル幾何学構造の中から選択するオプションをユーザーに提供する。
異なる基板材料の限定するものではない例示として、結晶性半導体材料(例えば、シリコン、シリコン窒化物、Ge、GaAs)、金属(例えば、Al、Ni)、ガラス、石英、結晶性絶縁体、セラミック、プラスチック又はエラストマー材料(例えば、シリコーン、EPDM及びホスタフロン)、他の重合体(例えば、テフロン(登録商標)のようなフッ素重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、ポリアリールスルホン、ポリカプロラクトン、ポリエステルカルボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリフェニルスルホン、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ重合体、熱可塑性プラスチックなど)、他の有機材料及び無機材料、及びこれらの組合せが挙げられる。
マイクロチャネルは、当分野で常用される方法、例えば、ディープ反応性イオンエッチング(以下の実施例1で更に記載する)を使用して、これらの基板の上に加工することができる。チャネル幅は、以下に更に記載するように、用途に応じて変えることができ、普通、約0.1μm〜約10mm、好ましくは約1μm〜約150μmの範囲であり、一方センサーチャンバーの寸法は、チャンバーへ送り込むチャネル出口の配列に従って変える。例えば、出口が他のものに対して実質的に並行である(例えば、図2B〜Dのような)。一態様では、全細胞バイオセンサーが、センサーチャンバー中のセンサーとして使用される場合、マイクロチャネルの1つ又はそれ以上の出口の幅は、少なくとも細胞のほぼ直径である。好ましくは、出口のそれぞれの幅は、少なくとも細胞のほぼ直径である。好ましくは、センサーチャンバーの底が光学的に透過性であり、センサーからの光学データの収集を促進する。
図1は、6−パッチサイト微小流体パッチクランプのチップを含んでいる貯蔵部の三次元斜視図である。貯蔵部200が緩衝溶液を入れて、緩衝溶液を送達チャネルを通して移動させる、+3pと印されている正圧を送るように適合する又は設定されている。中央の貯蔵部210は、送達チャネルを通って流されるセンサー又は物質を保持するように適合している。貯蔵部220は、センサー及び物質又はリガンドのパッチサイトへの送達を制御するために、−p1と印されている負圧を伝達するように、そして廃液に適合している。パッチサイトの膜透過電流応答を検出するための共通接地電極を配置する場所にしてもよい。貯蔵部230A〜Fは、電極を受け取るか又は含んで、個別のパッチサイトに細胞固定を制御するために−p2と印されている負圧を伝達するように適合している。
図2Aは、4つの多重6−パッチサイトユニットに組み入れられた微小流体パッチクランプのチップの写真を表現する。そこには4つの緩衝液貯蔵部200A〜D、4つの細胞/物質貯蔵部210A〜D、及び4つの廃液貯蔵部220A〜Dがある。チップ上の24のパッチサイトに連通している貯蔵部は、チップの第1、第3、第4及び第6列に位置していて、チップの第1列及び最終カラムに標識されているパッチクランプの貯蔵部230の代表例である。
図2Bは、図2Aの4−ユニット多重チップから取り出して拡大した、単一の6−パッチサイトユニットを描いている。これは図2Aの多重チップの左下部にある6−パッチサイトユニットを示していて、これは拡大されて、時計方向に90°回転されている。緩衝液貯蔵部200Aは、細胞/物質貯蔵部210Aの周辺で、左側の送達チャネル100に流体的に連通しているサブチャネル120A、及び右側の送達チャネル100に流体的に連通しているサブチャネル120Bに分岐している出口チャネルを有している。細胞/物質(入口)貯蔵部210Aは、緩衝液貯蔵部Bに対して1組4つの直角に反転して、次いで向き直るコースで、送達チャネル100と流動的に連通している入口チャネル110を有している。パッチサイト貯蔵部230A〜Fは、送達チャネル100と流動的に連結している、個別のチャネル130A〜Fと流動的に連通している。廃液貯蔵部220Aは、送達チャネル100に流動的に連結している。
図2Cは、図2Bに概略されている対応部分から取り出し、拡大した、流入チャネル及び送達チャネル100と流動的に連通しているパッチチャネルの配置を示す図である。入口チャネル110は、センサー又は物質を貯蔵部210Aから送達チャネル100へ伝達するのに適合している。側面にある2つのチャネル120A及び120Bは、緩衝液貯蔵部200Aから流動的に連通している分岐した入口チャネルである。6つの下流チャネル130A〜F(送達チャネル100の各々の側に3つ)は、検出電極を保持して、細胞をパッチサイト150に固定するための負圧−p2を供給する、個別の貯蔵部230A〜Fに流動的に連通している。
図2Dは、送達チャネル100に関連している6つのパッチサイト150の配置を更に拡大して取り出した図である。各々のパッチチャネル130A〜Fは、送達チャネル100に対して直角に向いているチャネルの中に入って更に狭くなり、パッチサイト150の中へ入って終結する。
図3を参照して、概要の図が示されている。微小流体6−パッチサイトユニットの機能的な要素が描かれていて、そこでは緩衝液貯蔵部200が、分岐したチャネル120A及び120Bを介して、送達チャネル100と流動的に連通している。チャネル120Aは、送達チャネル100の片側に入り、そしてチャネル120Bは送達チャネル100の反対側に入る。パッチサイト150に入って終結するパッチチャネル130が送達チャネル100の両側に3つある。送達チャネル100は、廃液貯蔵部220に入って空になる。
(センサー)
(細胞ベースバイオセンサー)
システムは、種々の細胞の応答をモニターするために、細胞ベースのバイオセンサーと連結して使用することができる。バイオセンサーは、マイクロ位置決め装置、ナノ位置決め装置又はマイクロマニピュレーター、又は光学ピンセットのような位置決め装置に連結されたピペット、毛細管又はカラムのようなセンサー(静止でも可動でもよい)を保持する機構を使用するセンサーチャンバー内に配置されている、あるいは流れ又は表面張力を制御し、細胞ベースのバイオセンサーをチャンバー内の溶液に曝露することによって、全細胞又はその一部(例えば、細胞膜パッチ)を含むことができる。バイオセンサーは、基板を動かす、すなわち、バイオセンサーに対するチャネルの位置を変化させることによって、又は細胞を動かす(例えば、マイクロ位置決め装置の走査又は流れ及び/又は表面張力を変化させる)ことによって、基板の種々のチャネルにわたって走査することができる。バイオセンサーは、例えば候補薬物及び/又は他の化合物及び組成物に、曝露することもできる。
一態様では、細胞ベースのバイオセンサーは、イオンチャネルを含み、システムは、イオンチャネル活性をモニターするために使用される。適切なイオンチャネルとして、電圧で開口されるイオンチャネル、リガンド、内因性カルシウム、他のタンパク質、膜伸張(例えば、側膜張力)及びリン酸化(例えば、Hille B., In Ion Channels of Excitable Membranes 1992, Sinauer, Sunderland, Massachusetts, USA)が挙げられる。
他の態様では、イオン開口型チャネルは、電圧開口型チャネルである。電圧開口型チャネルは、膜貫通の電圧閾値に応答して開口する。電圧開口型ナトリウム、カリウム及びカルシウムチャネルは、全て、活動電位(又は、神経パルス)を軸索に下げて、他の神経細胞(又は、ニューロン)に誘導するために必須である。これらのイオンチャネルは、一般に、リジンを有する膜貫通配列及び/又は高アルギニンS4共有配列を含む。S4配列内の正のアミノ酸は、配列を含むイオンチャネルを異なる電圧条件のもとで開閉させる、細胞膜を横切る「感知」電圧であると考えられている。
他の態様では、細胞ベースのバイオセンサー中のイオンチャネルは、リガンド開口型チャネルである。リガンド開口型チャネルはリガンド結合に応答して開口(開放又は閉鎖)する。細胞内のリガンドによって結合した時開口するものと、細胞外のリガンドによって開口するものとの2つのタイプのリガンド開口型チャネルがある。細胞の外側からリガンドによって開口されるイオンチャネルは、化学的シナプス情報伝達において非常に重要である。イオンチャネルのこれらのタイプは、現実に2つの神経細胞間でシグナルを運ぶ小分子である、神経伝達物質によって開口される。細胞の内側から作動されるイオンチャネルは、細胞内の小さなシグナル分子である第二メッセンジャーによって一般的に制御される。細胞内カルシウムイオン、cAMP及びcGMPが、第二メッセンジャーの例である。最も一般的なカルシウム開口チャネルは、カルシウム開口カリウムチャネルである。このイオンチャネルは、正のフィードバック環境に置かれた時、膜電圧変化で振動性挙動(例えば、内耳有毛細胞の周波数同調のため)を起こす。
更に他の態様では、イオンチャネルは、他のタンパク質によって開口する。イオンチャネルを直接開口するあるシグナルタンパク質が発見された。これの1例として、Gタンパク質のβ−γサブユニットによって開口されるカリウムチャネルがあり、これは、ある膜受容体によって活性化された通常のシグナルタンパク質である。
さらなる態様では、イオンチャネルは、リン酸化によって開口される。リン酸化は、タンパク質キナーゼ(例えば、セリン、トレオニン又はチロシンキナーゼ)によって、例えば、シグナル伝達カスケードの一部として、媒介されうる。
更に別の態様では、細胞ベースのバイオセンサーは、機械的誘因によって直接開口されるメカノトランスダクション(mechanotransduction)・チャネルを含む。例えば、細胞ベースのバイオセンサーは、音などの機械的振動によって直接開口される、内耳有毛細胞のカチオンチャネルを含みうる。特定の方向に毛束を曲げることによって、チャネル開口部の可能性、したがって受容体電流の脱分極性の振幅に影響を与える。
他の態様では、細胞ベースのバイオセンサーは、受容体、好ましくはシグナル変換(transduction)経路に関与する受容体を含む。例えば、細胞ベースのバイオセンサーは、Gタンパク質結合受容体又はGPCR、グルタミン酸受容体、代謝調節型受容体、造血系受容体又はチロシンキナーゼ受容体を含むことができる。疾患の進行を阻止する又は調節する薬物に感受性があるように、組換え受容体を発現するバイオセンサーをも設計することができる。
バイオセンサーを含む適切な細胞として、ニューロン、リンパ球、マクロファージ、ミクログリア、心細胞、肝細胞、平滑筋細胞、及び骨格筋細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一態様では、哺乳類の細胞が使用される。これらには、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞、NIH−3T3、及びHEK−293細胞のような培養細胞が含まれ、組換え分子(例えば、組換え受容体及び/又はイオンチャネル)を発現することができる。しかしながら、バクテリアの細胞(大腸菌、バチルス菌、ブドウ糖菌など)、原生生物細胞、酵母菌細胞、植物細胞、昆虫及び他の無脊椎動物の細胞、トリ類細胞、両生類細胞及び卵母細胞も使用することができ、これらは組換え分子の発現に非常に適している。細胞は、一般的に、当該技術分野で公知の細胞培養技術を使用して細胞培養株から、あるいは1回以上の精製(例えば、フローサイトメトリー、パニング(panning)、磁気選別など)の後、解剖した組織から調製する。
(非細胞センサー)
一態様では、センサーは、基板上に固定化された、センサー素子、好ましくは、細胞標的(例えば、細胞内受容体、酵素、シグナリングタンパク質、細胞外タンパク質、膜タンパク質、核酸、脂質分子など)である分子を含む。基板は、センサーチャンバーそれ自身の底面であっても、あるいは、チャンバーの底面上に置かれた基板であっても、又はチャンバー内に静止して置かれた(例えば、マイクロ位置決め装置を介して)、可動性の又は静止した基板であってもよい。
センサーは、固体の基板、基板に結合する1つ又はそれ以上の付着層、及び1つ又はそれ以上のチャネル出口からセンサーチャンバーへ導入された化合物を感知するための感知性分子、の任意の組合せを含みうる、1層又は数層で構成されてもよい。本発明による適切なセンサーは、免疫センサー、アフィニティーセンサー及びリガンド結合センサー(これらに限定されない)が挙げられ、これらのそれぞれが、例えば、特定の用量変化、電気化学反応、又は光学シグナルの生成(例えば、蛍光、又は感知性分子の光学スペクトルにおける変化)のような、測定可能な応答を一般化することにより、結合相手の存在に対応しうる。そのようなセンサーは、例えば、米国特許第6,331,244号に記載され、その全体を参照により、本明細書に組み込む。
一態様では、センサーは、電子を移送する分子で改良したマイクロ電極を含む。マイクロチャネルの1つからの水性流中の1つ又はそれ以上の化合物との接触により引き起こされる化学反応に対して、分子は、電極表面における電気特性における変化を生み出す。例えば、分子は、相互反応する分子の還元又は酸化によってシグナルを伝達する電子移送酵素又は分子を含みうる(例えば、「Gregg et al., J. Phys. Chem. 95;5970-5975, 1991」;「Heller, Acc. Chem. Res. 23(5):128-134, 1990」;「In Diagnostic Biosensor Polymers. ACS Symposium Series. 556」;「Usmani, AM, Akmal, N; eds. American Chemical Society; Washington, D.C.; pp.47-70, 1994」; 米国特許第5,262,035号の記載を参照されたい)。酵素反応も電界効果トランジスタ(FET)又はイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)を使用して行うことができる。
他の態様では、センサーは、電子部品に連通する石英チップのような固体基板上に固定化された感知性分子を含む。電子部品は、センサー素子と1つ又はそれ以上のセンサーチャンバーに送達される化合物との相互作用の測定として、電圧、電流、光、音、温度、又は質量の任意のものの変化を測定して選択することができる(Hall, Int. J. Biochem. 20(4):357-62,1988;米国特許第4,721,677号;米国特許第4,680,268号;米国特許第4,614,714号;米国特許第6,879,11号の記載を参照されたい)。例えば、一態様では、センサーは、センサー素子が結合する、音波バイオセンサー又は水晶マイクロバランスを含む。この実施形態では、マイクロチャネルからセンサー素子へ送達される水性流の化合物が結合する時、システムがセンサーの共鳴特性における変化を検出する。
他の態様では、センサーは、光学バイオセンサーを含む。光学バイオセンサーは、表面プラズモン共鳴、全内部反射蛍光(TIRF)、臨界角屈折分析、ブルースター角顕微鏡観察、光学導波管ライトモードスペクトル観察(OWLS)、表面電荷測定及びエバネセント波偏光解析のような検出原理に基づき、これらは当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,313,264号;欧州特許公開公報第0067921号;欧州特許公開公報第0278577号;「Kronick et al., 1975, J. Immunol. Meth. 8:235-240」を参照されたい)。
例えば、エバネセント波偏光解析を使用するセンサーに関して、化合物の感知性分子への結合に関連する光学応答は、反射の際の楕円偏光の分極の状態での変化として測定する。分極の状態は、感知する表面での結合サンプル(例えば、センサー素子を含む基板)の屈折率、厚さ、及び表面濃度に関係する。TIRFにおいて、もともと蛍光性である又は蛍光標識化されたサンプル分子から放出された放射線のセンサーでの強度及び波長を測定する。エバネセント波励起散乱光技術は、光の感知性分子(結合化合物を伴う又は伴わない)との相互作用による、センサー表面で散乱する放射線の強度の測定に基礎を置く。表面プラズモン共鳴法(SPR)は、金属薄膜基板に近いセンサー分子の層の屈折率の変化を測定する(例えば、「Liedberg et al., 1983, Sensors and Actuators 4:299」;英国特許第2197068号 を参照されたい)。これらの感知スキームはそれぞれ、本発明による有用なセンサーを提供するために使用することができる。
更に別の態様では、センサーは、蛍光半導体ナノクリスタル又は量子ドット(Quantum Dot(登録商標))粒子に関連する感知性分子を含む。量子ドット粒子は、特徴的なスペクトル発光を有し、これはその組成及び粒径に関連する。センサー素子への化合物の結合は、量子ドット粒子の放出をモニターすることによって検出することができる(例えば分光的に)(例えば、米国特許第6,306,610号を参照されたい)。
センサーは、更に、化合物が重合体上のセンサー素子に結合する時、物理学的特性が変化するポリマーに基づくバイオセンサーを含むことができる。例えば、結合は、容積の変化(例えば、膨潤あるいは収縮)、電気特性の変化(例えば、電圧、電流又は共振変化)、又は光学特性変化(例えば、伝送効率の変調又は蛍光強度の変化)として明らかにすることができる。
種々の異なるタイプのセンサーが、本発明の用途で適用され、上記の例示は限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。
一般に、1つ又はそれ以上のセンサーの測定アウトプットは、検出装置及び/又はシステムプロセッサに電気的に連通する、制御及び評価装置に連結する。制御及び評価装置は、センサーの基板及び/又は感知チャンバーの底板に集積することができる。制御及び評価装置は、マイクロプロセッサ、マルチプレイクサー、IOユニットなどのような種々の電子部品を含みうる(例えば、米国特許第6,280,586号の記載を参照されたい)。
好ましい態様では、本発明による基板は、サンプル及び/又は緩衝液のセンサーチャンバーへの微小流体移送に適応している。
サンプル−ウェルプレート(例えば、96ウェルプレートのような工業規格のマイクロプレート)内に含まれるサンプル(すなわち薬物など)を、好ましくは、当該技術分野で公知の自動ロボットアレー分注器(例えば、「Beckman′s Biomek 1000&2000 automated workstations, Beckman Coulter,Inc., Fullerton, CA」から入手可能)を使用して、操作し、転送する。
システムを、細胞を細胞処置チャンバーから、細胞による化学物質及び分子の取込みをモニターする対照実験に基づく所定の時間で送達するように、プログラムすることができる。あるいは、システムは、細胞の表現型をモニターして、ある表現型が発現した時に細胞を送達することができる。例えば、一態様では、細胞処置チャンバーは、細胞の光学特性に関する情報をシステムプロセッサに提供する光学センサーと連通し、特定の表現型の発現を示す光学パラメータに応答して、システムは、細胞処置チャンバーからの細胞の放出を誘導することができる。光学パラメータは、対照実験で同定される蛍光レポーター分子又は光学パラメータの取込みを含むことができる。
微小流体を有するオンチップ電気せん孔法とパッチクランプ(あるいは細胞応答をモニターする他の方法)との組合せは、細胞内標的の活性を調節する分子(例えば、リガンド又は薬物)の選別を容易にする。一態様では、細胞不透過性分子を、細胞の一過性電気穿孔法によってある細胞の内部に送達するためにシステムを使用する。この方法では、分子を細胞内受容体、細胞内タンパク質、転写制御因子、及び他の細胞内標的に導入することができる。細胞をセンサーチャンバーに送達することができ、細胞の応答をモニターすることができる(例えば、分子を蛍光ラベルで標識する場合、パッチクランプ又は蛍光物質によって)。あるいは、センサーチャンバーを処置及び応答検出の両方を行うように修正することができる。
さらなる態様では、システムを、走査による電気せん孔法を行うように修正することができる。例えば、異なる化合物を含む複数の異なる流体流にわたって、移動又は走査されるように、細胞を繰返し電気せん孔法を導入することができる。一態様では、サンプル流れに接触するよう、孔を1つ又はそれ以上の細胞に導入し、サンプル流れ中の化合物を細胞に取り込まれるようにすることができる。
(バイオセンサー中の高電気抵抗シール)
本発明は、細胞膜を電極コンパートメント又はチャネルから分離する膜の開口部と、細胞膜との間のシールの電気抵抗を最大化し、細胞膜と開口部の間のシールの電気抵抗を最大化するシステムを更に提供する。本発明は、開口部を特徴づける表面の最適な幾何学的配置及び/又は表面トポグラフィー;開口部を特徴づける表面の最適な表面化学(例えば表面に親水基を導入して);及び開口部に近接して位置決めした細胞膜に接している流動流;のうちの1つ又はそれ以上を提供することによって、開口部に最適な配置をもたらす方法も提供する。
本発明のシステム及び方法は、例えば、卵母細胞の内部還流、パッチクランプの電気生理学、脳切片記録、細胞表面上の受容体−リガンド相互作用、カルシウム画像検討、共焦点顕微鏡検査、及びインビトロ微小透析のような、技術に利用することができる。本発明のシステムは、リガンド開口型イオンチャネル、電圧開口型イオンチャネル、Gタンパク質結合受容体、シナプスを横切っての活性、分子トランスポーター、細胞−細胞相互作用、及びイオンポンプの性質を測定するために、そしてこれら生体分子のモジュレーター(アゴニスト又はアンタゴニスト)を選別するためにも利用することができる。
細胞を電極コンパートメント又はチャネルから分離する表面の幾何学的性質については、例えば、米国特許出願第10/345,107号及び米国特許出願第10/645,834号を参照されたい、これらは参照してその全てが本明細書に組み込まれている。
従って、一態様では、本発明は、そのような開口部と細胞との間のシール抵抗を最大化して、それによりパッチクランプの記録の効果を最大にする方法を提供する。実験的に、脂質膜とこのような開口部を特徴づける表面の間の引力の相互作用が、表面が親水性になったときに最大になることが見いだされた。表面が親水性になればなる程、引力の相互作用が強固になる。強力な引力は、二つの表面の間により大きな接触面積とより小さい分離距離をもたらし、より高いシール抵抗となる。
強力な引力は、大きな接触面積をもたらすので、チップと分析される細胞との間の表面相互作用エネルギーが、細胞を変形させるのに十分となる。
(パッチクランプの記録装置の有効性を増強するためのシステム、システム構成部品及び方法)
本発明は、アゴニストによって活性化される受容体を含む細胞ベースのバイセンサー;及びアゴニスト、アンタゴニスト、又はアゴニスト及びアンタゴニストの両方を送達する複数の送達チャネルを、包含するチャンバーを含む基板を提供すること;及びバイオセンサーを2個又はそれ以上の異なった流動流に曝露すること;を含んでなる、受容体を調節し、制御し、調製し又は検討する方法を提供する。
一態様によると、チャンバーは少なくとも1つの緩衝液、サンプル、アゴニスト、アンタゴニスト、又はこれらの組み合わせを包含する。一態様では、曝露は、バイオセンサーを選定された濃度のサンプルに選択的に曝すことである。関連する態様では、曝露は、選定された時間、選択的に行われる。別な態様では、システムは更に、チャネルに1つ又はそれ以上の緩衝液を提供することを包含する。
更に別な態様では、システムは更に、バイオセンサーを1つ又はそれ以上の緩衝液に曝すことを包含する。関連する態様によれば、1つ又はそれ以上の緩衝液へ曝すことは、1つ又はそれ以上のサンプルへの曝露の間に組み入れられている。別な関連する態様では、1つ又はそれ以上の緩衝液への曝露は、洗浄期間である。更に別な関連する態様では、1つ又はそれ以上の緩衝液への曝露は、休止期間である。更に他の態様では、システムは更に、1つ又はそれ以上の緩衝液への曝露が洗浄と休止の期間であることを含む。
一態様では、緩衝液の休止期間は、1連のサンプル曝露の間で、1つ又はそれ以上の緩衝液の洗浄期間と相互嵌合する。
別な態様では、バイオセンサーを緩衝液とサンプルの流れに選択的に曝露する。関連する態様では、バイオセンサーを緩衝液とサンプルの交互流体に選択的に曝露する。別な関連する態様では、受容体をリガンド溶液に濃度が増大する順に曝露する。別な態様では、受容体をリガンド溶液に濃度が減少する順に曝露する。関連する態様では、受容体をリガンド溶液に濃度が増大する順に曝露して、次いでリガンド溶液に濃度が減少する順に曝露する。更に他の関連する態様では、受容体をリガンド溶液に濃度が減少する順に曝露して、次いでリガンド溶液に濃度が増大する順に曝露する。
更に他の関連する態様では、受容体を、モジュレーターの増減での曝露の後に、洗浄溶液に曝露する。
他の態様では、薬剤が、候補薬物、公知の薬物、疑いのある発癌物質、公知の発癌物質、候補毒剤、公知の毒剤、及びイオンチャネルに直接的又は間接的に作用する薬剤から選ばれる。
一態様によると、検討する方法は、受容体の記憶特性を検討する方法である。別な態様によると、記憶機能は、短期間、中期間、又は長期間の記憶機能である。関連する態様では、バイオセンサーの記憶特性に関する薬物の効果を検討する。
別な態様では、曝露工程は、基板若しくはセンサー又は基板とセンサーの両方を、少なくとも1つのチャネルの出口に対して移動することによって行われる。別な関連する態様によると、曝露は更に、1つ又はそれ以上のチャネルをわたる圧力低下の生成を包含する。
一態様によると、同じサンプルが複数のチャネルに供給される。関連する態様では、異なった濃度のサンプルが、複数のチャネルへ供給される。別な態様では、システムは更に、サンプルに関する用量応答曲線の作成を包含する。
別な態様では、細胞ベースのバイオセンサーは、イオンチャネルを包含する。関連する態様では、受容体は、Gタンパク質結合受容体を含む。別な関連する態様では、細胞ベースのバイオセンサーは、組み換え技術によいって発現される受容体を包含する。
更に別な関連する態様では、組み換え技術によって発現される受容体は、オーファン受容体である。
一態様では、サンプルに対する応答は、細胞の表面積を測定することによって、決定される。関連する態様では、この応答は、細胞ベースのバイオセンサーの電気的な特性を測定することによって、決定される。別な関連する態様では、この応答は、イオンチャネル透過性の特性を測定することによって、決定される。
別な態様では、サンプルは神経伝達物質放出のモジュレーターである。
別な態様によると、別々の運動状態にある受容体の調製方法が存在する。この方法は、細胞ベースのバイオセンサーを2つ又はそれ以上の濃度のモジュレーターへ順次曝露し、そしてモジュレーターへの順次曝露の間の交互休止期間及び洗浄期間を含み、この順次曝露は、所定の運動状態にあるバイオセンサーを捕捉する。
一態様によると、順次曝露は、約1ミリ秒〜約180秒、又は約1ミリ秒〜約60秒、又は約1ミリ秒〜数10秒、又は1ミリ秒〜細胞死の範囲に及ぶ。
関連する態様では、休止期間は、約1ミリ秒〜約180秒、又は約1ミリ秒〜約60秒、又は約1ミリ秒〜数10秒、又は1ミリ秒〜細胞死の範囲に及ぶ。
関連する態様では、洗浄期間は、約1ミリ秒〜約180秒、又は約1ミリ秒〜約60秒、又は約1ミリ秒〜数10秒、又は1ミリ秒〜細胞死の範囲に及ぶ。
別な態様では、システムは更に、バイオセンサーの分子記憶の測定を包含する。関連する態様では、分子記憶は、モジュレーター用量応答を測定することによって、決定される。
別な態様では、増大する濃度のモジュレーターをバイオセンサーに曝露する。関連する態様では、減少する濃度のモジュレーターをバイオセンサーに曝露する。
一態様では、モジュレーターは、候補薬物、公知の薬物、疑いのある発癌物質、公知の発癌物質、候補毒剤、公知の毒剤、及びイオンチャネルに直接的又は間接的に作用する薬剤から選ばれる。
本発明は、ナノスケール又はミクロスケールの対象物(例えば、センサーのようなもの)の周囲を局所的に水性又は他の液体の溶液環境を変更する方法も提供する。この方法は、本明細書に記載の基板及び水性又は他の液体流を提供することを包含する。
少なくとも2つのチャネルから出る又は合流する流体流は、センサーチャンバー内で平行流又は層流になることが好ましい。しかしながら、システムは、チャネルのセット(少なくとも2つの隣接するチャネル)で、少なくとも1つのセットが平行な層流を送達し、一方少なくとも1つの他のセットは非平行な層流を送達する、セットを含むことができる。一態様では、流れは、異なる速度で流れる。流体を、チャネルからセンサーチャネル又はチャンバーへ、電気泳動法及び/又は電気浸透法及び/又はポンプ注入(例えば、圧力)を含む、多くの異なった方法で、送達することができる。異なった流体流へセンサーを選択的に曝すために、層流を切替ることができる。この切替は、例えば、流れに加えられた圧力によって、行うことができる。例えば、圧力低下切替を、第2の流れに関連する1つの流れに適用する(これは例えば、より大きな正圧を第1の流れの入口貯蔵部に適用するか、又はより大きな負圧を第1の流れの出口貯蔵部に適用することによって行われる)と、第2の流れを第1の流れによる流体置換を引き起こす。その結果、最初に第2の流れにあって、第2の流れにある溶液に曝されていたセンサーが、流体置換によって第1の流れにある溶液に曝されるようになる。
一態様では、チャネルは、直線配列、二次元配列、又は三次元に配列することができ、センサーチャンバー若しくはチャネル、電極チャネル、貯蔵部、及び/又は廃液チャネルを含むことができ、そしてコンテナー(複数を含む)又は上記のような多重ウェルプレート(複数を含む)と結合していてもよい。一態様では、アウトプットチャネルは、チャネルに過度にインプットできる(例えば、三次元配置で)。正圧をインプットチャネルに適用し、同時に負圧を近接するアウトプット又は排水チャネルに適用することにより、チャンバー内にU字型の流体流を発生させることができる。この方法で、チャンバー内の対象物を、例えば、隣接するアウトプット又は排水チャネルを介してチャンバーから排出して再利用することができる、入口チャネルからの流体流にある化合物を曝すことができる。従って、U字型の流体流を、大容量貯蔵部にある特定の組成物による液体流の明確な領域を局所に作るために利用できる。
別な態様では、主たる流体チャネルは、1つ又はそれ以上の電極チャネルに対して垂直である。バイオセンサーのチャネルへの付着に役立つように、差圧がチャネルに適用できる。差圧は、バイオセンサーの異なる流体、例えば、緩衝液及び洗浄溶液、又は1つ又はそれ以上の溶質、例えば薬物、候補薬物組成物などを含有する溶液、への選択的曝露にも利用することができる。
センサーチャンバーは、複数の対象物を含むことができ、好ましくは、各々の対象物は少なくとも2つの流れに曝されることが好ましい。曝露は、上記のようなプロセッサーで制御される曝露機構によって行うことができる。センサーチャンバーは更に、溶液を追加及び排出するための入口及び出口を有していてもよい。例えば、新鮮な緩衝溶液を、ぜん動ポンプを用いて加えることができる。
一態様では、方法は更に、曝露速度、曝露の方向、曝露の促進、曝露の回数、及び1つ又はそれ以上のチャネルにわたる圧力のような、1つ又はそれ以上の曝露のパラメーターの変更を包含する。曝露のパラメーターは、対象物の1つ又はそれ以上の水性流への対象物の応答に関するシグナルのような、フィードバックシグナルに応答して変更される。
1つ又はそれ以上のチャネルにおける静水圧も、プログラム化された指示に従って及び/又はフィードバックシグナルに応答して変更される。一態様では、複数のチャネルの各々における静水圧は、異なっている。
別な態様では、少なくとも2つのチャネルの流体の粘度は、異なっている。更に別な態様では、少なくとも2つのチャネルの流体は、異なった温度である。更なる態様では、少なくとも2つのチャネルの流体の浸透圧は、異なっている。更なる態様では、少なくとも2つのチャネルの流体のイオン強度は、異なっている。少なくとも1つのチャネルの流体も有機溶媒を含むことができる。異なった出口のこれらのパラメーターを変えることにより、センサーの応答を、検出の感度を最大化してバックグラウンドを最小化するために、最適化することができる。ある態様では、パラメーターは、行われるいくつかの細胞処理(例えば、電気せん孔法又は電気融合のような)を最適化するために変えることもできる。
本発明は、ナノスケール又はマイクロスケールの対象物の周辺の溶液環境を迅速に変える方法も提供し、この方法は、ナノスケール又はマイクロスケールの対象物を含んでいるセンサーチャンバー又はチャネル中の溶液を迅速に変えることを包含する。一態様では、チャンバー内の流体変更は、約1分以内、好ましくは約30秒以内、約20秒以内、約10秒以内、約5秒以内、又は約1秒以内に起こる。別な態様では、流体の交換は、ミリ秒以内に起こる。他の態様では、流体の交換は数ナノ秒以内に起こる。流体は、選択圧及び流体流が対象物に接触している切替を用いて、交換することができる。
方法は、細胞又はその一部を上記の何れかの基板のチャンバー中に提供し、この細胞又はその一部を、条件を付与している1つ又はそれ以上の水性流に曝し、そして細胞又はその一部の前記条件に対する応答を検出及び/又は測定することにより、水性環境中の条件に対する細胞又はその1部の応答を測定するために、使用することができる。例えば、前記条件は、細胞又はその一部が曝されている、化学物質又は化合物であってもよく、そして/又は細胞又はその一部が浸かっている溶液の浸透圧及び/又はイオン強度及び/又は温度及び/又は粘度であってもよい。
上記の何れかの基板のセンサーチャンバー又はチャネルのバルク溶液の組成物は、例えば、センサーチャンバーのイオン組成物を変えるか、又は化学物質又は化合物を溶液に加えるか、制御することができる。例えば、層の切替システム(曝露機構)を提供して、実験中に、薬物のような、化学物質又は化合物をセンサーチャンバーに加えることができる。
一態様では、細胞又はその一部の前記条件への曝露は、センサーチャンバー内で起こる。しかしながら、あるいは、又は更に、細胞又はその一部の前記条件への曝露は、1つ又はそれ以上のチャネルを介してセンサーチャンバーに連結しているか又はそれが接合部である、マイクロチャンバー又はチャネル内で行ってもよい。細胞又はその一部を、細胞の周囲の条件を変えることによって、誘導された応答を測定するために、センサーチャンバーに移送することができる。
一態様では、本発明は、アンタゴニストを検出又は選別するために、活性化した受容体又はイオンチャネルを生成する方法も提供する。方法は、アゴニストの一定な流れをセンサーチャンバーにある細胞ベースのバイオセンサーに送達することを包含する。好ましくは、細胞ベースのバイオセンサーが、脱感作しないか、又はゆっくり脱感作する受容体/イオンチャネル複合体を発現する。バイオセンサーのアゴニストへの曝露は、受容体がアゴニストを送達するマイクロチャネルを通過するたびに活性化される、測定可能な応答を生成する。好ましくは、複数のアゴニストの送達マイクロチャネルは、細胞ベースのバイオセンサーがこれらのマイクロチャネルを通過する場合、測定可能な応答(例えば、拮抗作用)を減少することに関連する、アンタゴニストを包含する。一態様では、複数のマイクロチャネルが同量のアゴニストを含み、異なった濃度のアンタゴニストを含んでいるか、又は1つのチャネルの層流が同量のアゴニストを含み、異なった濃度のアンタゴニストを含んでいる。従って、測定可能な応答の阻害は、特定用量のアンタゴニストの存在と関連させることができる。別な態様では、複数のマイクロチャネルが、同量のアゴニストを含み、1つ又はそれ以上の、好ましくは、複数のマイクロチャネルの全てが、異なった種類のアンタゴニストを含む。この方法では、特定のタイプのアンタゴニスト(又はアンタゴニストであると疑われている化合物)の活性を測定することができる。
一態様では、周期的に再感作される受容体を、圧力による層流を細胞ベースのバイオセンサーへの緩衝液送達パルスに切り替えることによって提供し、それにより受容体がアゴニスト又は受容体モジュレーターを含有する次のチャネル出口に曝される前に、結合したアゴニスト又は受容体を脱感作するモジュレーターの何れかを除去する。アンタゴニストの検出において、層流システムの切り替えは、絶えず適用されるアゴニストを周期的に除去することもできる。応答の一時的なピーク(安定状態の応答に脱感作される)が、再感作されたバイオセンサーがアゴニストに曝されたときに生じる。この応答ピークの生成は、アンタゴニストの検出において、より良い、シグナル対ノイズ比を提供する。
別な態様では、細胞ベースのバイオセンサー中のイオンチャネルは、細胞膜を横切る電位を変更することによって、一定に活性化されるか又は周期的に活性化される。これは、電圧依存性のイオンチャネルを調節している化合物又は薬物を検出するためのセンサーを提供する。
このシステム又は方法で測定される応答は、用いるセンサーのタイプによって変わる。細胞ベースのバイオセンサーを用いると、以下のパラメーター又は細胞特性のアゴニスト、アンタゴニスト、又はモジュレーター誘導の変化を測定することができる;細胞表面積、細胞膜の伸縮、イオンチャネル透過性、細胞からの内部小胞体の放出、細胞膜からの小胞体の回復、細胞内カルシウムのレベル、イオンチャネル誘発の電気特性(例えば、電流、電圧、膜容量など)、光学特性、又は生存率。
一態様では、センサーは、少なくとも1つのパッチクランプの細胞を含む。従って、細胞又は細胞膜分画は、電極チャネルの近くに適切に配置され、層流の切り替えシステムが、1つ又はそれ以上の電極チャネルがセンサーチャンバーの一方の側面にある場合に、センサーを正確に平行な流体流に曝す。
本発明によるシステム及び方法は、イオンチャネル及びCPCRsリガンド、並びにイオンチャネル又はCPCRsを直接的又は間接的に活性化する薬物又はリガンドの、高処理能力の選別を行うために用いることができる。しかしながら、より一般的には、このシステム及び方法は、細胞外、細胞内、又は細胞膜に結合する対象物に作用する、化合物/条件を選別するために用いることができる。従って、このシステム及び方法は、例えば細胞に対する薬物の効果を、特定化するために用いることができる。本発明によるこのような目的のために得られるデータの例は、これらに限定されないが、用量応答曲線、IC50及びEC50値、電圧−電流曲線、オンオフ速度、動力学的情報、熱力学的情報などを包含する。
一態様では、本発明は、長時間、例えば、約20分以上、好ましくは約1時間以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、又は約5時間以上の、細胞膜の電気特性の測定を行うためのシステム、システムの構成部品及び方法を提供する。
一態様では、本発明によるシステムは、1つ又はそれ以上の電極、電解質溶液受け取り及び電極(複数を含む)を細胞膜へ電気的に結合するためのルーメン、及びルーメンと流動的に連通している開口部を特徴づける表面を包含する、電極コンパートメント又はチャネル(例えば、コンパートメント、貯蔵部又はチャネル)を含む。一態様では、ルーメンは、微小流装置のチャネルである。このチャネルは、センサーチャンバーと流動的に連通していてもよい。他の態様では、ルーメンは、パッチクランプのアレー装置のような、オンチップのパッチクランプ装置にある細胞膜を受け取るためのセンサーチャンバーの部分である。好ましくは、細胞膜は、電解質溶液との接触を介して、電極と電気的に連通している。
本明細書で用いられる電極(複数を含む)及びルーメンは、「電極コンパートメント又はチャネル」を特徴づける電解質溶液を含んでいる。ある場合では、電気素子は、電極コンパートメント又はチャネルの一部を形成してもよい。ルーメンと連通している、開口部を特徴づけている表面は、電極コンパートメント又はチャネルと細胞の間の、より好ましくは、電極コンパートメント又はチャネルと細胞膜が存在している浴溶液との間の、隔壁としての役目をはたす。
適切な表面は、ガラス(例えば、表面がパッチクランプのマイクロピペットの部分であるとき)又は炭素ベースの重合体、シリコンベースの重合体、プラスチック、及びこれらの改質された又は処理された形態のような、重合体を包含する。
開口部を特徴づけている表面は、例えば、平面又は非平面、又は突き出ている。開口部を特徴づけている表面が、オンチップ装置の開口を含んでいる場合は、好ましくは、開口部が装置を形成する残りの絶縁表面と異なった平面にあるように、開口部での表面形状は、突き出ており、好ましくは、残りの絶縁表面より、少なくとも約1μm〜1000μm、そして好ましくは約1〜100μm高いことが好ましい。一般に、突き出しのサイズは、細胞表面の圧力を生成するのに充分な大きさであるように選ばれる。
また、又は更に、表面は、少なくとも表面の細胞膜接触の部分が親水性になるように、例えば、上記のようなRCA洗浄法、火炎処理、又は化学剤処理によって処理される。
また、又は更に、開口部の表面特性は、高電気抵抗性シールの形成を増大させるように改変することができる。例えば、細胞は、表面におけるリーブ状、カラム状、棒状、及び突き出しのようなナノスケール構造に配列し、相互作用し、そして反応することが示されており、これらの相互作用は、細胞の運動性、位置決め及び表面に付着する能力にとって重要であることが実証されている。従って、ナノ構造の表面は、シールする工程において重要であり、長期間記録のための安定なシールをもたらす。ナノ構造は、細胞を電極コンパートメント又はチャネルから分離するための表面に、当該技術分野で公知の方法、例えばハード又はソフトのリソグラフィー、蒸着又は原子間力顕微鏡法(AFM)などによって、生成することができる。
別な好ましい態様では、パッチクランプのアレー装置、センサーチャンバーの表面形状、又はチャネルそれ自身を、細胞膜とセンサーチャンバーの開口部との間のシールを最大化するために設計する。一態様では、チャンバーは、チャンバー内細胞の移動を制限し、そして/又は開口部を特徴づける表面に対する細胞の位置決めを助けて、細胞と細胞接触表面との間のシールの電気抵抗を増強させる、非平面の表面特性を含む。例えば、ピラミッド構造をセンサーチャンバーの底部にミクロ加工することができる。一態様では、ピラミッド構造の頂部を、細胞を受け取れるように窪ます。
細胞膜は、開口部を含んでいる表面の直近に置くことが好ましい。アレー装置の個々のチャンバーへの細胞の添加は、例えば、nQUAD吸引ディスペンサーを用いることによって、これらの分注によって介在できる。電気泳動、吸引、電圧パルスの使用などのような、細胞を配置するその他の方法を用いることができる。
一態様では、圧力駆動の流れを、細胞を基板の微小流体チャネルから、適切なセンサーチャンバー又はチャネルへの移動を操作するために用いることができる。細胞の経路は、複数のマイクロチャネルを含んでいる基板のチャネルの分岐を、当該技術分野で公知のバルブを用いて、ブロックすることによってもたらされ、これによって細胞はバルク溶液と伴に他の選定されたチャネルへ移動する。
更に、あるいは、電気浸透を、例えば、緩衝溶液のような、イオンを含有する流れに、2個又はそれ以上の電極間に電圧差又は電荷勾配を適用して、運動を生じさせるために用いることができる。中性(荷電されていない)細胞を、この流れで運搬することができる。例えば、米国特許出願公開第2002/0049389号の記載を参照されたい。
誘電泳動が、正味電荷を有していないが、互いに関連する正又は負に荷電される領域を有している、誘電対象物の運動を生じさせると思われている。あるいは、細胞が存在している非均質な電場は、細胞が電気的に分極するようにし、これにより誘電泳動力を受けるようになる。粒子及び分散媒体の誘電的分極率により、誘電粒子は、電界強度の高い領域又は電界強度の低い領域いずれかに向かって移動する。生体細胞の分極率は、細胞のタイプによって決まり、そしてこれは細胞分離(例えば、異なった誘電泳動力によって)の基礎を提供する。例えば、米国特許出願公開第2002/0058332号の記載を参照されたい。
放射圧を、レーザー又は光学ピンセットのような光の集束ビームで細胞を屈折させて移動するために用いることもできる。
別な態様では、システムは、2002年2月12日出願の米国仮出願第60/356,377号(この全てが参照して本明細書に取り込まれている)に記載のような、細胞ベースバイオセンサーの一部である。
センサーチャンバーの正確な形状は、微小流体装置又はシステムにあるパッチクランプのマイクロピペット又はチャネルのような、少なくとも1つの電極コンパートメント又はチャネルの直近にある、細胞又はその一部、又は複数の細胞又はその一部を保持することができる限り、限定されるものではない。この態様では、チャンバーは一般に、無傷細胞と生理的に適合する浴溶液を包含する。少なくとも1つの電極コンパートメント又はチャネルは、電極コンパートメント又はチャネル内の細胞膜と電極の間の適切な電気的連通を保持するするために、電解質溶液を包含する。細胞は、表面によって電極コンパートメント又はチャネルから分離されるが、この表面は、電解質溶液が流れる開口部を特徴づけられ、細胞を電極コンパートメント又はチャネル内の1つ又はそれ以上の電極に電気的に結合している。
細胞を、流体流を用いて、電極コンパートメント、チャネル、又は電極チャネルの直近に移動することができる。あるいは、又は更に、光学ピンセットを用いて、又は電極コンパートメント又はチャネル自身を動かして(例えば、電極コンパートメント又はチャネルが、パッチクランプのマイクロピペットを含む場合のように、微小位置決め装置の使用により)、細胞を移動することができる。センサーチャンバー自身は、細胞(複数を含む)を適切な電極コンパートメント又はチャネルの直近への位置決めを助けるための電場を作り出す(例えば、センサーチャンバー内に電気浸透流を作り出すか、又は電極コンパートメント又はチャネルへ向かっての細胞の移動を促進するために細胞を分極して)ための1つ又はそれ以上の電気素子を包含するように設定することができる。
流体流はまた、細胞を電極コンパートメント又はチャネルから分離する開口部を特徴づける表面と、細胞膜との間のシールの電気抵抗を増強するために、使用することができる。例えば、表面の開口部に軽く付着している細胞を、液体流を提供している流体流源の出口の直近に配置することができる。また、分離する開口部を特徴づける表面と、センサーとの間のシールの電気抵抗を増強するために、圧力を使用することができる。細胞を流れに曝すと、開口部を特徴づける表面に接触する細胞膜の領域が、劇的に安定なシールを作り出す。
従って、一態様では、細胞膜を、流れから圧力を受けるように流体流と十分に近い位置に配置する。この圧力は、細胞膜を電極コンパートメント又はチャネルから分離している表面の開口部と、細胞膜との間のシールの形成又は増強を促進する。この流体流を、上記のような、細胞ベースのバイオセンサー中のオープンボリュームチャンバーのような、細胞を含むチャンバーへ提供することができる。オンチップのパッチクランプ装置では、流体流は、当該技術分野で通常に用いられている方法を用いて、装置にミクロ加工された微小流チャネルを通じて細胞へ提供することができる。
好ましくは、流体流源が、0.01mm/秒〜100cm/秒、好ましくは0.1mm/秒〜10cm/秒の範囲の流速の液体流を提供する。
従って、一態様では、本発明は、1つ又はそれ以上の細胞を含有するためのチャンバー又は貯蔵部に入る出口を少なくとも1つ包含する、流体流源を有する細胞ベースのバイオセンサーを提供する。この流体流源は、流体流を1つ又はそれ以上の細胞に提供可能な少なくとも1つのマイクロチャネルを含むことができる(例えば、図5〜8を参照されたい)。別な態様では、この流体流源は、例えば、細胞を選択的に曝露するために、又は細胞を表面の開口部近辺、例えば、チャネル(例えば、電極を含んでいるチャネル)の開口部、に位置決めするのを支援するために、複数の流体流を提供するための複数の出口を包含する。この複数の出口は、単一の面にあっても、例えば、基板上のマイクロチャネルの積み重ねた形態のような、複数の面にあってもよい。複数の流体流源は、異なった方向に流れる、例えば、細胞が細胞接触表面の面に対してある角度で移動できるように、互いに垂直であるような、流体流を提供する単一基板の一部分として提供することができる。更なる流体流源の配置は、2002年2月12日出願の米国仮出願第60/356,377号(この全てが参照して本明細書に取り込まれている)に記載されている。
高電気抵抗性シールを形成するための上記方法に加えて、シールの電気抵抗を増強するために、細胞を電極コンパートメント又はチャネルから分離している表面の開口部に、吸引を適用することができる。また、更に、シールの電気抵抗を増すために、1回又は数回電圧パルスが適用される(例えば、チャネルの内部電極又はパッチクランプのアレーの1個又はそれ以上の電極を用いて)。
また、一連の操作は、以下の通りである;
一態様では、6−パッチサイトユニットの操作方法は、図4に示されている。緩衝液貯蔵部200、緩衝液チャネル120、入口貯蔵部210、入口チャネル110、送達チャネル100、及び廃液貯蔵部220は、緩衝溶液で満たされている。
典型的なシステムの使用方法のその他の工程が、図5に示されている。例えば、細胞が入口貯蔵部210に添加されている。負圧−p2が、圧力源を用いて廃液貯蔵部220に適用される。細胞が送達チャネル100の下へ移動するにつれて、負圧−P1が電極チャネルに適用されて、パッチサイトチャネル130を通って個々の細胞を、6−パッチサイト(チャネル開口部)150に固定化するパッチサイト(チャネルの開口部)150へ伝わる。
その他の工程が図6に描かれている。例えば、正圧を緩衝液貯蔵部200に適用し、送達チャネルの各側に沿って緩衝液流体の層流125を生成して、パッチ細胞を緩衝液流体に浸す。負圧を廃液貯蔵部220に適用し続けて、入口貯蔵部210を空にする。この圧力を、細胞を曝している流体流を迅速に変更するために、切り替えることができる。
6−パッチサイトユニットの操作についての更なる他の方法の工程が、図7に描かれている。物質(又は、リガンド)を、入口貯蔵部210に添加する。パッチ細胞が送達チャネル100の各々の側に沿っている緩衝液の層流125に浸され、保護され続けている間に、廃液貯蔵部220に適用された負圧が、物質を送達チャネル100の主要部115を通って送り出す。
図8は、緩衝液貯蔵部200からの正圧の除去を描いてる。細胞パッチサイトを覆う層流を切り替える。パッチサイト150が直ちに、入口貯蔵部210から入口チャネル100を通って流される物質に曝される。工程処理中、いつでも、連続的に又は間歇的に、センサーの測定が行われる。
図9は、正圧が緩衝液貯蔵部200に再適用され、そして緩衝液の流れが分岐したチャネル120を通して再開し、送達チャネル100の壁面に沿って層流125が再構築されることを描いている。細胞が直ちに緩衝液で浸され、保護される間に、物質は入口貯蔵部210、入口チャネル110及び送達チャネル100から洗い流される。新しい物質又は異なった濃度の物質が、ここで入口貯蔵部に取り込まれて、新規の測定のために、このサイクルが繰り返される。
図10は、6−パッチサイトユニットの片側に関連する測定電気回路網を描いている。個々のパッチ電極V1〜V3が、パッチ貯蔵部に配置されており、これは個々のパッチサイトと連通している。各々のパッチチャネルに関連する抵抗が、対応する電極V1〜V3に電圧降下を引き起こす。接地電極が廃液貯蔵部に置かれ、そして廃液チャネルの抵抗が、全ての電極に共通の電圧降下をもたらす。
別な態様は、細胞膜を流体流を介して移動させることによって、細胞膜に密接して位置決めされた電極コンパートメント又はチャネルから、細胞膜を分離するための開口部を包含する表面を含む。小さい吸引力及び/又は1〜数回の電圧パルスを開口部に適用する。
表面に軽く保持されている細胞膜(表面から0.01μm以下)は、水性流を提供する流動流源の出口の直近に配置される。細胞膜が流体流に曝されている間に、表面に接触している膜の表面積が劇的に増大して、安定したシールを作り出す。所定の時間の後、又は抵抗の満足な電気的読み込みが達成された場合に、細胞を流体流から取り出し、直ちにより強力な吸引又はより高い電圧を表面に適用して、適切な記録形態(例えば、多重の連続記録を有意に変更しないもの)を達成する。
一態様では、細胞を電極チャネルから分離するために、センサーチャンバーの開口部を特徴づける電極チャネルへ細胞を導く。絶縁表面のほぼ平面部に対して正常な流体流れが、細胞上に押し出す力を与えるために供給される。装置が複数の電極チャネルを含むときは、ベース面に対して90°以上若しくは以下の角度で、又はこの平面に対して垂直に、細胞を流れで移動させることにより、及び/又はチャネルに圧力を適用することにより、細胞を更にコンパートメントのような複数の開口部に自動的に位置決めすることができる。細胞をそれぞれの電極チャネルの開口部に付着又は引き付けるように、吸引圧力及び/又は電圧を開口部に適用することができる。あるいは、又はこれに加えて、上記のように、誘電泳動が、当該技術分野の公知技術又はその他の交流(ac)方法として、用いることができる。
上記のシステムは、1つ又はそれ以上の細胞膜の電気特性を測定することを一般に含む、何れの方法も使用することができる。この方法で使用するための、適切な細胞又はその部分は、細菌、酵母、昆虫、及び細胞を包含するが、これらに限定されるものではない。
例えば、バシラス属(Bacillus spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、連鎖球菌(Streptococcus spp.)、ストレプトミセス属(Streptomyces spp.)、緑膿菌属(Psudomonas spp.)を使用することができる。サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Cansida maltosa)、ハンセヌーラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギリアマンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolitic)のような酵母細胞、さらに他の低級真核生物も使用することができる。
これらに限定されないが、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、オートグラファ・カリフォルニカ(Autograpfa californica)、ボンビクス・モリ(Bonbyx mori)、キイロショウジョウバエ(Drasophila melanogaster)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)及びイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)を包含し、昆虫の細胞株も使用することができる。
哺乳動物の細胞株は、これらに限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヘラ細胞、幼少ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、マディンダービー ウシ腎臓(「MDBK」)細胞NIH/3T3、293細胞(ATCC#CRL 1573)、COS−7、293、BHK、CHO、TM4、CV1、VERO−76、HELA、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、MMT060562、TRI細胞、さらに他のもののような、アメリカ培養系統保存機関(American Type Culture collection:ATCC)から入手可能な不死化細胞を含むが、これらに限定されるものではない。鳥類細胞株のよく知られている例は、ニワトリのB細胞株「DT−40」である。
具体的な動物細胞は、これらに限定されないが、白血病L1210細胞(In Modern Pharmcology, pp. 1121-1129 (1978))、モルモットの心臓細胞(Journal of Physiology 397:237-258 (1988))、ヒトデ卵細胞(The Journal of General Physiology 70:269-281 (1977))、及び除神経のカエル筋繊維(Neher et al., Nature 260(Apr. 29, 1976))を包含する。
本発明のシステム及び方法を用いて分析される細胞は、組み換え遺伝子生成物を発現するトランスフェクトされた細胞を包含する。例えば、このような細胞を適切なcDNAsでトランスフェクトすることにより特定なイオンチャネルを発現するように、細胞を改変することができる(例えば、米国特許第5,670,335号を参照されたい)。
上述のように、人工細胞又は小胞体も、そのような細胞の膜中に遺伝子組み換えによって製造されたタンパク質を挿入して/又は挿入しないで、使用することができる。例えば、米国特許第5,795,782号及び米国特許第6,022,720号を参照されたい。
従って、一態様では、細胞膜を電極コンパートメント又はチャネルから分離する開口部を特徴づける表面を包含する、システムが提供され、そして細胞膜は、この開口部に十分近い場所に配置されて、細胞膜と表面との間に高い電気抵抗性のシールを形成する(例えば、抵抗は少なくとも約1Gオームである)条件に曝される。一態様では、開口部を特徴づける表面は、例えば、平面、非平面、又は突き出ている。あるいは、又は更に、表面は、親水性である。一態様では、流体流及び/又は圧力が、細胞膜を開口部を特徴づける表面にシール形成する近傍に位置決めするのに用いられる。あるいは、又は更に、流体流が、既に形成されているシールの電気抵抗を最大化するために用いられる。好ましくは、細胞膜の電気特性の少なくとも1つの測定は、細胞膜を横切る電圧又は電流として得られる。より好ましくは、電気特性(複数を含む)は、細胞が、細胞周辺の浴溶液にある条件及び/又は薬剤に応答する時、又は細胞が応答した後に測定する。
薬剤の例は、これらに限定されないが、タンパク質、DNA、RNA、PNA、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、神経伝達物質、神経伝達物質類縁体、酵素阻害剤、イオンチャネルモジュレーター、Gタンパク質結合受容体モジュレーター、輸送阻害剤、ホルモン、ペプチド、毒素、抗体、医薬用薬剤、化学品、プリン作動薬、コリン作動薬、セロトニン作動薬、ドーパミン作動薬、麻酔薬、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸系睡眠薬、ステロイド、アルコール、金属カチオン、カンナビノイド、コレシストキニン、サイトカイン、興奮性アミノ酸、GABA作動薬、ガングリオシド、ヒスタミン作動薬、メラトニン、神経ペプチド、神経毒、エンドセリン、NO化合物、オピオイド、シグマ受容体リガンド、ソマトスタチン、タチキニン、アンジオテンシン、ボンベシン、ブラディキニン、プロスタグランジン及びこれらの組み合わせを包含する。
遺伝子がコードするイオンチャネル又は輸送タンパク質の検索は、テストする遺伝子で細胞を平行トランスフェクションを行い、次いで本明細書に記載のようにイオン電流を選別することによって実施できる。
本明細書に記載のシステムは、化合物の薬理学的性質を特定化するための、及び用量反応データーを得るための、ライブラリー化合物の選別にも有用である。
本発明の装置及び方法に使用できる薬剤の例は、薬物、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、神経伝達物質、神経伝達物質類縁体、酵素阻害剤、イオンチャネルモジュレーター、Gタンパク質結合受容体モジュレーター、輸送阻害剤、ホルモン、ペプチド、毒素、抗体、医薬用薬剤、化学品及びこれらの薬剤の組み合わせを包含する。本発明のシステム及び方法に使用できる具体的な薬剤は、プリン作動薬、コリン作動薬、セロトニン作動薬、ドーパミン作動薬、麻酔薬、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸系睡眠薬、ステロイド、アルコール、金属カチオン、カンナビノイド、コレシストキニン、サイトカイン、興奮性アミノ酸、GABA作動薬、ガングリオシド、ヒスタミン作動薬、メラトニン、神経ペプチド、神経毒、エンドセリン、NO化合物、オピオイド、シグマ受容体リガンド、ソマトスタチン、タチキニン、アンジオテンシン、ボンベシン、ブラディキニン、プロスタグランジン及びこれらの薬剤の組み合わせを包含する。
(センサー周辺の溶液環境の迅速な変更)
本明細書に記載されていることは、流体中に含まれる化合物又は試薬の複雑な操作のために、異なる溶液のセンサーチャンバー内のセンサーへの繰返し及び迅速な送達を可能にする方法で、ミクロ加工されたチャネルの二次元(2D)及び三次元(3D)ネットワークを使用することである。例えば、当該システムで使用される微小流体は、リガンドを、受容体を含む細胞ベースのバイオセンサーにプログラム可能に送達するシステムを可能にする。これは、サンプル(例えば化合物ライブラリー)のHTS選別用に使用されるシステムがバイオセンサーの応答における化合物の効果をモニターすることを可能にする。一態様では、細胞ベースのバイオセンサーの電気特性を、電圧クランプ又はパッチクランプ技術を使用してモニターする。
システムが、センサー周辺の溶液を迅速に変更するための機構を提供するので、システムは、サンプル化合物への曝露の後、緩衝液を有する細胞ベースのバイオセンサーを洗い流すために使用することができ、次の化合物への曝露の前に、バイオセンサーの一部である受容体又はイオンチャネルを再感作させることが可能となる。したがって、システムは、受容体機能を有する潜在的なモジュレーター(例えば、アゴニスト又はアンタゴニストのような)への曝露用の周期的再感作受容体を提供することができる。脱感作しない受容体に関しても、緩衝液の受容体へのパルス送達を提供し、(例えば、受容体から結合していないリガンドを除去する)、特異性を強化し及び/又は応答の背景を減少するため、当該システムは有利である。
マイクロチャネルの異なるネットワーク構造の形状は、ミクロの寸法での流体挙動の固有の特徴を利用するように、設計される。3つの例示的な設計を以下に記載する。
システムは、1つ又はそれ以上のセンサーを横切って異なる流れを迅速に流す能力を有している。例えば、システムは、例えば同じチャネル(例えば、層をなし平行な流体流)中で、基板を横切る圧力下降を変更することによって、静止したセンサー全部の異なる流体を一掃することもできる。システムは少量のサンプル容量(数nL〜数μL)を必要とし、そしてHTS適用のために容易に自動化及びプログラム化できる。
(流体の異なる流れにわたるセンサーの迅速な移送)
本発明による基板を流れる隣接した流体流(層流及び平行流)は、低いレイノルズ数を有し、拡散による混合を最小限受ける。流体の流れは、センサーチャネルを流れているときに迅速に切り替えられて、センサーを異なった流れに選択的に曝す。例えば、拡散係数が約5×10−6cm2/sの小分子は、10μm拡散するのに約0.1秒かかるが、拡散時間は距離の2乗で変化する(x2=2Dt(式中、Dは拡散係数である))ため、100μmの拡散に10秒かかる。同様に、D〜10−6cm2/sの代表的なタンパク質に関しては、10μmの拡散に0.5秒かかり、100μの拡散に50秒かかるだろう。例えば、米国特許出願第10/345,107号及び米国特許出願第10/645,834号(これは全てが参照として本明細書に取り込まれている)を参照されたい。
パッチクランプ測定で用いる流速で、そして約20μm以下である細胞−出口の距離で、異なる流体流が、実質的に区別されて分離し、そしてパッチクランプの細胞の存在によって乱されない。パッチクランプ測定で使用できるような、遅い流速(例えば、<100μm/秒)であっても、異なる流体流はやはり分離される。流体流のこの観察された挙動(例えば、流体流の平行化)は、異なる流体流に関してパッチ細胞の比較的迅速な輸送を必要とするHTS適用を容易にする。パッチ細胞又は蛍光観測されているチャネル内の固定細胞のような静止細胞に関しては、異なった流体流に関してパッチ細胞のこの迅速な輸送は、異なった流れをわたる相対的な圧力降下を迅速に変更することによって実施することができる。
(流体流下の測定のためのパッチクランプ又は細胞保持)
受容体モジュレーター(アゴニスト又はアンタゴニスト)及び緩衝液の相互嵌合の流れを横切ってパッチクランプの細胞を迅速に切り替える能力は、要求される流れ条件下でのパッチ細胞の機械的安定性と、走査速度に依存する。ここで、流体条件の範囲でのパッチクランプの細胞の「ギガシール(giga seal)」及びイオンチャネル活性の安定性を記載する。
パッチクランプの細胞上の液体流の効果は、細胞上の流れによって受ける抵抗力(ストーク抵抗)から発生する。このストークス抵抗は以下の式から計算することができる。
抵抗力=(摩擦係数)×(流れの速度)
式中、摩擦係数(f)は以下のように計算できる。
f=6πrμ
式中、rは細胞の半径であり、μは溶液の粘度である。この関係は、レイノルズ数流れ及び球状の粒子に関して有効である。両条件は、本発明に関連して利用される方法及び装置において充分に満たされている。
室温での水に関し、μは〜1センチポイズ(1センチポイズ=0.01g/[cm・s])であり、代表的な哺乳類の細胞はr=5μmである。これらの値を用いると、流速が1mm/秒のものは、抵抗力=9.4×10−11N又は94ピコニュートンである。抵抗力は、流速に正比例するので、0.1mm/秒で抵抗力は、9.4ピコNである。この数字を視野に入れると、マイクロピペットは、ナノ及びマイクロニュートンを細胞のような小さな粒子に日常的に使用することができる。流体流から細胞上へのドラッグによって発生する抵抗力に加えて、ある速度での細胞の走査は、細胞移動の方向において類似の流体抵抗を発揮し、これは、普通、流体流の方向に対して直角である。流れのない条件下での1mm/秒での細胞の走査は、同じ速度で流体を流すと、普通、細胞静止を保つのと同じ効果がある。
細胞のずれの問題が起こるかもしれない非常に高い流速が必要な用途に関して、パッチクランプの細胞(複数を含む)は、くぼみ領域又は細胞の寸法に合致したセンサーチャンバー中のウェル中に置かれていもよい。このウェルは電極チャネルの開口部にあるウェルであってもよい。この設計は、チャネル又はチャンバー中の流動プロフィールが、流体と固体表面の界面での、スリップのない境界条件(例えば、流体と固体表面との界面での速度は0である)のため、放射線状であるので、細胞ずれの問題を防ぎつつ、高流速の使用を可能にする。細胞と類似の寸法を有するウェル(複数を含む)中に細胞(複数を含む)を置くことによって、細胞は、事実上、ウェル及び固体表面から離れて配置された高流速領域からは、「遮蔽」されている。従って、固体表面から離れた平均流速及び流体速度は、非常に速いが、パッチ細胞が置かれているウェルの近傍の流体速度は、非常に遅くできる。この方法を使用して、非常に速い平均流速を使用することができる。
チャネルを通って流れる水性溶液は(空気と違い)圧縮性ではないので、各流体流の幅及び配置は、各マイクロチャネルを通る相対流速に依存する。従って、マイクロチャネルからの流体流も、各チャネルを通る流速を変えることによって動かし、移動させることができる。これは、各チャネルにわたる圧力低下を制御することによって、あるいは各チャネルの抵抗を変えることによって、最も簡単に達成することができる。圧力変更(あるいは他の手段)によって流体流を動かす能力は、センサー(複数を含む)が、細胞ベースであり、チップ上に固定化された用途において特に有用であり、それによりチップに対する細胞(複数を含む)の機械的な動きが不可能となる。各チャネルの圧力及び抵抗を、システムプロセッサを使用して、プログラムすることができる。プログラムされうるパラメータとして、各チャネルの圧力及び抵抗における線形変化、各チャネルの圧力及び抵抗における段階的なあるいは連続した変数変化、及び異なるチャネルの間の配列の変化が挙げられるが、これらに限定されない。更に、圧力及び抵抗変化は、リアルタイムフィードバックシグナルに基礎を置くことができ、新しい圧力及び抵抗のパラメータをアウトプットする前に、これらのシグナルを加工し、コンピュータ化してもよい。
センサーは、脱感作しない受容体/イオンチャネルを含んでもよく、受容体を再感作する必要をなくす。しかしながら、システムを、緩衝液のパルス送達を提供するために、使用してもよく、例えば、結合していない化合物のない細胞を洗浄するため、使用される。このシナリオでは、走査速度は、応答において観察される「ノイズ」に基づいて調整することができる。例えば、溶液交換速度は、サンプル化合物のある濃度での直線状の用量応答を達成するために、調整することができる。
また、リガンドは、センサーを不可逆的にブロックして、他の流体流において、他のリガンドに応答できないようにしてもよい。この場合、緩衝液でパルスすることは何の効果もないであろう。公知の効果を有する化合物を周期的に細胞に導入し、適正な応答が得られるがどうか検証することによって、細胞が不活性化されたかどうか確認することは容易である。選定された数のサンプル流体流に曝されるように、システムはセンサーによって応答の欠如を感知することができるのが好ましい。例えば、パッチクランプの記録において応答が観察されない場合、センサーが連続する流体流の選定された数を過ぎて曝されるように、システムはフィードバックシグナルを提供することができる。
あるいは、又はそれに加えて、装置を、センサー機能をモニターするために、センサーチャンバー内に設置することができる。一態様では、細胞ベースのバイオセンサーの生存率をモニターするために、光学センサーを、センサーチャンバーに連通して設置する。例えば、細胞死に関連する分光的変化(例えば、クロマチン凝集からのもの)を観察することができ、あるいは死亡したあるいは瀕死の細胞による染料の取込みをモニターすることができる。
蛍光測定も、様々な結合、膜を横切る移動、細胞の局在化、カルシウムの増加などを測定するために使用される。
一態様では、システムは、センサーシグナルを受け取らなかった曝露間隔の選定された数を経過した時、あるプログラム指示を実行する。例えば、システムは、それらのチャネルでの流れを停止するように、特定のチャネルで圧力を変えて、サンプル廃液を最小限にすることができる。別な態様では、閾値期間の間、センサーからの応答シグナルがないのに応答して、1つ又はそれ以上のバイオセンサーの再配置を、センサーチャンバーに送達する(例えば、先に記載した、細胞処置チャンバーから)。
センサーが、チャネル出口からの流速に比較して一定の速度で移動する場合は(例えば、mm/秒)、幅及び間隔が約10μmであるチャネルに関する選別速度(例えば、1秒当たりのスリーンされる化合物)は、約25Hzであろう。約100μm幅のチャネルであって、チャネル間隔が約10μmを使用した場合は、曝露速度は、約4.5Hzであろう。移動速度が増える場合、曝露範囲は、数百Hzの範囲内であろう。いくつかの用途、例えば、センサーが迅速に脱感作するイオンチャネルを含む場合は、これらは短い時間でシャープな濃度勾配を提供することができるので、狭い出口を有する流体チャネルが、好ましい。そのようなチャネルは、幅が約1μm〜約100μmの範囲であるのが好ましい。
曝露速度は、均一に又は不均一にすることができる。例えば、サンプル流れを提供する(例えば、アゴニストを提供する)チャネルを横切る曝露速度を、緩衝液流れを提供するチャネルを横切る曝露速度とは違えることができる。可変曝露速度は、予備プログラム又はセンサー測定、例えば、パッチクランプの測定からのフィードバックシグナルを基礎とすることができる。実際の走査速度は、正確な選別システムによって変わるだろうが、代表的な直線状の走査速度は、約10μmの直径の、哺乳類の細胞を含むセンサーに関して、約100μm/s〜数百mm/秒の範囲であろう。
(迅速な送達サイクル)
本発明によるシステム他の特徴は、流体をチャネルを通ってセンサーチャンバーへ迅速に送達することができ、化合物をセンサーの微小環境に導入して、当該微小環境から迅速に排出できることである。
ミクロサイズのチャネル内の流体流は、層状で可逆的な、レイノルズ数(Re)と呼ばれる、無次元指数によって測定しうる特性である。例えば、一般的に、低Re数を有する流体流は可逆的で、一方高Re数では、流体流は、乱流となり、不可逆的になる。層状可逆的な流れと乱流流れとの間の移行は、平滑な円形チャネルを通る流れ(例えば、マイクロチャネルを通る近似流れ)に基づく推測で、約2000のRe数で起こるようである。たとえ速い流速(m/s)であっても、幅が数ミクロンのチャネルのReは、〜<10である。これは、ミクロサイズのチャネル内の流体流は、層状の可逆的な仕組み内に充分入っていることを意味する。ここで利用する流体挙動の重要な特徴は、流体流の可逆性である。
一態様では、化合物又は薬物をバイオセンサー、好ましくはパッチクランプの細胞を収容するセンサーチャンバーに導入するために、正圧をマイクロチャネルに適用する。化合物/薬物とバイオセンサーとの間の相互作用を可能にする適切な培養時間の後、化合物/薬物をチャンバーから回収するために、負圧を適用する。流体流は完全に可逆的であり、また拡散は使用される条件(例えば、比較的速い流れ)下で無視できるので、薬物は、チャンバーからそこから来たマイクロチャネルへ完全に戻される。この方法で、潜在的相互作用用を選別するため、細胞上に送達された各化合物は、引き続いて細胞から回収され、当該細胞は再び、緩衝液に浸たされ、再感作され、異なるマイクロチャネルを経由して送達された次の化合物と相互作用するための準備ができる。る、96サンプル−ウェルプレートと接続するためのチップ構造全体のレイアウトを示す。
(流体の迅速な交換)
この設計は、マイクロチャネル中に含まれる溶液とセンサーチャンバー(及び/又は細胞処置チャンバー)とを、迅速かつ効率的に置き換え及び交換することができるという事実に基づく。迅速な溶液交換は、種々の異なるマイクロチャネルネットワーク幾何学構造を用いることにより、達成することができる。一態様では、複数のマイクロチャネルは、合流し、又はセンサーチャンバーへ送り込まれ、一方他の態様では、複数のマイクロチャネルは、それ自身センサーチャンバーへ合流する、単一チャネルへ合流する。複数のマイクロチャネルは、それぞれ、サンプル用の相互嵌合チャネルと送達緩衝液とを含みうる。好ましい態様では、当該設計は、パッチクランプのシステムと一体化する。3つの例示的な構造を以下に記載する。
システム中のマイクロチャネルの寸法(幅及び厚さ)(サンプル送達及び緩衝液送達の両方)は、大きく変えることができ、一般的な寸法は約1〜100μm、好ましくは約10〜90μmの範囲である。流速は、好ましくはμm/s〜cm/sの範囲で変化してもよい。
圧力は等方的であり、したがって、正圧又は負圧をかけた時、流体は、いかなる特定の方向のかたよりもなく、圧力低下に沿って流れて行く。従って、一方向受動バルブを、サンプル送達マイクロチャネルと主緩衝液チャネルとの間の接合部で一体化するのが好ましい。これらの一体化一方向バルブの目的は、正圧が緩衝液貯蔵部へかかった時、主緩衝液チャネルから各サンプル送達マイクロチャネルへの任意の流れを防ぐことであり、一方、これらのマイクロチャネルにサンプルを提供する貯蔵部に正圧がかかった時、各サンプル送達マイクロチャネルから主緩衝液チャネルへの流れを起こすことである。微小流体バルブ及びポンプ機構用の数多くの適切な設計が存在する。
以下の検討では、実施の簡素化のため、圧力駆動流れを強調するが、多くの適正な手段を、マイクロチャネル中の液体を移送するために設計することができ、例えば、圧力駆動流、電気浸透流、表面張力駆動流、移動壁駆動流、熱勾配駆動流、超音波誘発流、及びせん断駆動流が挙げられるが、これらに限定されない。これらの技術は当該技術分野で公知である。
(バルブの開閉及びポンプでの吸入排出)
(スキーム1:個々のマイクロチャネルを処理するための隔壁の使用)
このスキームでは、各マイクロチャネルに連結する貯蔵部を、隔壁、例えば、シーリング用のポリジメチルシロキサン(PDMS)又は両面接着剤、又は当該技術分野で公知の他の適切な材料を用いて密閉する。隔壁は気密シールを形成するため、隔壁を通って挿入される針又はチューブを介する正圧の適用(例えば空気又は窒素による)により、流体は、センサーチャンバー内の1つ又はそれ以上のセンサー上のマイクロチャネルへ流れ出る(例えば、放射状マイクロチャネルが合流するスポークホイールの中央へ)。隔壁を通って挿入される針又はチューブを通る小さい吸引による負圧の適用により、流体は、反対方向に回収される(例えば、スポークホイールの中央のチャンバーから、マイクロチャネルに送り込む貯蔵部へ)。
このような針−隔壁の配列のアレーは、各々の貯蔵部を、したがって各々のマイクロチャネルを、別個に処理することを可能にする。このスキームを使用することで、各々のマイクロチャネル内に含まれる流体の同時及び逐次的ポンプ吸入排出及びバルブの開閉が可能となる。正圧及び負圧がかけられた各々のマイクロチャネルにわたって正確な制御を実行することにより、1つ又はそれ以上のセンサーへの制御された流体流及び化合物送達が達成できる。マイクロチャネルの個々の処置を必要としない設計(例えば、設計1−流体の異なる流れを横切るパッチ細胞の迅速な移送)では、単一又は少しの圧力制御装置を有する単一又は少しの隔膜で十分であろう。
(スキーム2:外部バルブを用いる流体流の制御)
この構造では、アレーウェルプレートのそれぞれのウェルからの化合物を、対応するマイクロチャネルに連結する外部チューブ又は毛細管によって導入する。これらの外部チューブ又は毛細管に結合する外部バルブを、流体流を制御するために使用することができる。多数の適切な外部バルブが存在し、手動で、機械的に、電子的に、空気圧で、磁気的に、流体的に又は化学手段(例えば、ヒドロゲル)によって作動されるものが挙げられる。
(スキーム3:内部バルブを用いる流体流の制御)
外部バルブで流体流を制御するより、使用することができる多数のチップベースのバルブがある。これらのチップベースのバルブは、外部バルブ用に使用したものと同じ原理のいくつかに基礎をおくことができ、あるいは、全く異なる、例えば、ボールバルブ、泡弁、電気運動バルブ、ダイアフラム型バルブ、及びワンショットバルブであってもよい。チップベースのバルブを使用する利点は、これらが、元来、微小流体システムとの一体化に適していることである。特に関係の深いものとして、先に記載した設計のいくつか(例えば、分岐状チャネル形式)を実施するのに好ましい、一方向受動バルブがある。
他の適切な幾何学構造は、上記のシステムの任意のものと一体化してもよい。一態様では、先に記載した微小流体システムの少なくとも1つのチャネルは、2個又はそれ以上の他のチャネルからの流体の2以上の分離した流体の流れを受け取る、ミキシングチャネルである。ミキシングチャネルは、単一チャネルにおいて分離した流れを組合せるために使用することができる。そのような構造は、国際公開公報第02/22264号に記載されているように、2個又はそれ以上の分離した流れにおいて異なる濃度で提供された物質の濃度勾配を確立するために使用することができる。
(検出)
システムは、細胞の電気特性における変化を測定することによって、細胞の応答をモニターするために使用することができる。一態様では、チップのセンサーチャンバーは、細胞ベースのバイオセンサーを含み、システムは、チャネルから溶液流へのバイオセンサーの応答をモニターするための検出器を含む。モニターすることのできる1つの応答は、イオンチャネルのゲート開閉に応答する、バイオセンサーの電気特性の変化である。例えば、バイオセンサーの膜をわたって流れる電流の変化を、電圧固定法を使用して測定することができる。電流は、数ピコアンペア(pA)(例えば、単一イオンチャネル開口部に関して)から数μA(ゼノパス卵母細胞のような大きな細胞の細胞膜に関して)の範囲でありうる。
電圧固定法の中でも、pA範囲の電流を測定するには、パッチクランプが最も適している(例えば、「Neher and Sakmann,1976, supra」;「Hamill et al., 1981, supra, Sakmann and Neher,1983, supra」を参照されたい)。パッチクランプの低ノイズ特性は、ガラスミクロ電極又はパッチクランプのピペットを無傷細胞の原形質膜上にきっちりとシールし、それによって隔離されたパッチを製造することによって達成される。ピペットと原形質膜との間の抵抗は、背景ノイズを最小限にするために重要で、109オームを超え、「ギガシール」を形成するようにすべきである。「ギガシール」の形成の背後にある正確な機構を説明するが、塩架橋、静電相互作用及びファンデルワールス力のような種々の相互作用が、ピペットのガラス表面と細胞膜の脂質層中の親水性頭部の間の相互作用に介在することが示唆されている(例えば、「Corey and Stevens, 1983, In Single-Channel Recording, pp.53-68, Eds. B. Sakmann and E. Neher. New York and London, Plenum Press」を参照されたい)。パッチクランプ法の変法を、利用することができ、例えば、全細胞記録、インサイドアウト記録、アウトサイドアウト記録及び当該技術分野で公知の穿孔パッチ記録がある。
全細胞記録において、電極チップをカバーする細胞膜を、細胞内部と電極溶液との間の電気的連結(及び化学経路)を確立するために、吸引によって破裂させる。電極溶液は、細胞中のサイトゾルの量に比較して大過剰(約10μl対約1pl)であるので、電極溶液中のイオン種の変化が細胞膜を超えて濃度勾配を作り、膜貫通イオン流の方向及び大きさをを制御する手段を提供し、所与の受容体/イオンチャネル複合体が得られる。
インサイドアウト及びアウトサイドアウトパッチクランプ構造において、全細胞からの膜パッチの切除によりサイトゾル環境は失われる(例えば、「Neher and Sakmann, 1976,supra」;「Sakmann and Neher, 1983, supra」を参照されたい)。インサイド−アウト構造は、チャンバー内の溶液への膜のサイトゾル側の曝露を可能にする。従って、それは、単一チャネルレベルで、第二メッセンジャーで活性化されたイオンチャネルの開閉特性を検討するための選択方法である。
低ノイズレベルは、より良好なシグナル−雑音比を、モジュレーター(例えば、アゴニスト又はアンタゴニスト)で与える。最適条件下で、より高いフェムトアンペア(10−15A)範囲の単一チャネル電流を分解することができる。ノイズ(例えば、電極及び細胞の間での不良シールによって起こる)を減らして、GΩシールの形成を促進するための方法として、ガラス電極の熱加工、又はシグマコートのような薬剤を使用するガラス電極の表面処理が挙げられるが、これらに限定されるものではない。誘電性ノイズ及び容量性−抵抗性チャージングノイズもまた、ピペットチップをできるだけ大きく絶縁するために、石英ガラスを使用して、好適な電極/ピペット幾何学的構造を選択し、シルガード(登録商標)(シリコーン,PDMS)でピペットのガラス表面を覆うことによって、減少させることができる。
全細胞構造の改変にたびたび使用される、穿孔パッチモードも、使用することができる(例えば、Pusch 及び Neher, 1988, 前述参照, の記載を参照されたい)。この技術で、アンホテリシン又はナイスタチンのような細孔構築タンパク質を使用し、細孔を細胞膜に選択的に作り(例えば、「Akaike et al., 1994, Jpn. J. Physiol. 44:433-473」;「Falke et al., 1989, FEBS Lett. 251:167; Bolard et al., 1991, Biochemistry 30:5707-5715」を参照されたい)、細胞内シグナル分子を失うことなく、パッチ細胞膜をわたって導電率を向上させる。
一定の膜電位でイオンチャネルにわたるイオン電流の測定に加えて、パッチクランプ法は、公知の一定のあるいは時間変化する電流で膜電圧の測定をするために使用することができる。「電流クランプ」と言うこのパッチクランプ構造は、リガンド開口型イオンチャネルの活性化あるいは電圧開口型イオンチャネルによって起こされる、膜電位における変化を測定し、薬剤(例えば、薬物)の活性電位に対する効果(すなわち、周波数、持続時間及び振幅)をモニターするために使用することができる、バイオセンサーを製造するのに特に適している。この技術は、薬剤の効果を検査し、神経細胞の興奮性に与える薬剤の影響を検討するために使用することもできる。従って、一態様では、当該システムは、活性電位が誘発された時、電流クランプ内の細胞ベースのバイオセンサーの電圧閾値の変調(例えば、過分極又は脱分極)をモニターするために使用される。
他の態様では、システムは、オープンボリューム貯蔵部中の細胞ベースのバイオセンサーを提供し、ACモードでのバイオセンサーの膜にわたる膜のインピーダンスを測定することによって、細胞膜における電気容量変化をモニターするために使用される。例えば、システムは、細胞からの小胞体の放出(例えば、エキソサイトーシス)及び/又は細胞による小胞体の取り込み(例えば、エンドサイトーシス)に与える薬剤の影響をモニターするために使用することができる。
一態様では、電気生理学的パッチクランプの記録を、図11に示す。記録は、ナノフローのユニット細胞中に固定又はパッチクランプした、GABAイオンチャネルを発現しているWSS−1細胞上で実施された。アゴニスト;500μMのGABAを、およそ1.3秒と4秒の間で適用した。GABAの適用の前後に、細胞を細胞外緩衝液で洗浄処理した。データは、アゴニストに切り替えたときの、3個の細胞に対する平均の完全溶液交換時間が55ミリ秒であることを示している。緩衝液へ戻す切替え時のより遅い応答は、混合した液体−液体界面の拡散によるより遅い切替と、生理学的洗浄処理の効果との組み合わせによる。外部ポンプ及び流体制御装置は、標準顕微鏡に隣接して配置される。統合されたシステム全てが、好ましくは、コンピューター制御され、そして自動化されている。システムの異なった構成部品は、別々のコントローラー及び別々のソフトウェアーを使用して別個に制御することができるが、上記のように単一のシステムプロセッサーを使用してこらの構成成分全てを制御することが最も好ましい。
電気生理学的な測定に加えて、一般的で有用な検出方法は、蛍光によるものである。例えば、細胞を、細胞は、カルシウム濃度を示す蛍光性の染料(例えば、カルシウムの存在下で蛍光を発するもの及び光を発するもの)又は細胞膜の電位を伝える電位感応性の染料を取り込ませることができる。細胞の活性化又は不活性化は、光子検出器を用いて容易に検出できる蛍光の光シグナルを変化させることになる。
種々の支持溶液を、センサーチャンバーでの使用に適用することができる。溶液のタイプは、評価されるセンサー及び化合物に依存する。例えば、センサー溶液は、イオンチャネルの従来のパッチクランプの分析に使用される記録溶液であってもよい。一般的に、パッチクランプの記録用溶液の正確な組成は、評価されるチャネルのタイプによって変わり(例えば、米国特許第6,333,337号の「カリウムチャネル」;米国特許第6,323,191号の「Cl−チャネル」及び国際特許出願PCT/US99/02008号の「ナトリウムチャネル」を参照されたい)、そのような溶液は、当該技術分野で周知である。
本発明の一態様では、パッチクランプの記録を、システムプロセッサによって自動化しそして制御する。例えば、システムプロセッサは、溶液の流れ、溶質濃度、溶液への曝露、及び/又はパッチのチャネル及び/又はチャンバー、又はその他のチャネル及びチャンバーを通して適用される圧力を、方向づけることができる。一態様では、パッチクランプのデータの取得及び分析、続く微小流体設定(例えば、圧力、バルブ及びスイッチ)を変えるフィードバック制御、及び曝露パラメータ(例えば、曝露の速度及び軌道、チャネルにわたっての圧力低下)の制御は、システムプロセッサによって実施される。
本明細書は、受容体タンパク質を、異なる応答機能、動的領域EC50値及びヒルスロープを有することを特徴とする不連続運動状態で調製する方法を記載する。本発明は、感作されていない状態のような結合非活性状態での受容体の蓄積、及び受容体のこれらの状態間の動態を、論理的バイオデバイスの構造において、及びシリカで作られた神経形態超大型集積(VLSI)回路において、使用される分子レベル記憶として基本的に使用することができるかについて説明する。更に、本発明は、薬物及び医薬的に活性な物質などの受容体モジュレーターを、受容体タンパク質中の応答機能、動的領域及び感応性の調整を、アンタゴニスト濃度及び曝露時間により変更するという事実により、特定化及び評価する方法を含む。競合的アンタゴニストが応答挙動におけるいくらかの差別化を消滅させるという発見をしたことで、GABA系システム上で作用する薬物の副作用のいくらかの原因も同様であるかもしれない。
(システムの使用方法)
本発明は、数多くの異なる生物活性分子及び化合物(例えば、候補薬物)の、標的分子を含むセンサーへの送達を制御する微小流体システムを使用するための電位差を利用する。評価することのできる適切な分子/化合物として、薬物、刺激物、毒素、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、タンパク質の類縁体及び改変体、ポリペプチド、ペプチド及びアミノ酸、抗体及びその類縁体、免疫剤(例えば、抗原及びその類縁体、ハプテン、発熱物質など)、細胞(例えば、真核細胞、原核細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞、組換え細胞、細菌、酵母、生殖細胞など)及びその部分(例えば、細胞核、オルガネラ、分泌促進物質、細胞膜の部分)、ウィルス、受容体、受容体のモジュレーター(例えば、アゴニスト、アンタゴニストなど)、酵素、酵素モジュレーター(例えば、阻害物質、補助因子など)、酵素基質、ホルモン、代謝物及びその類縁体、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、フィブリノチド、規制的な配列及び/又はイントロン、及び/又はコード領域を含む遺伝子又は分画、アレル異性体、RNA、アンチセンス分子、リボザイム、ヌクレオチド、アプタマー)及びその類縁体及び改変体、化学的及び生物的兵器剤、金属クラスタ、及び無機イオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの任意の分子の2個及びそれ以上の組合せを、順番にあるいは同時に、センサーチャンバー内の1つ又はそれ以上のセンサーに送達することもできる。また、化合物は、製薬会社及び当該技術分野で公知の他の市場で入手可能なソース(例えば、「http://www.tripos.com/compounds/」から入手可能な80,000個を超える化合物を含むLeadQuest(登録商標)Library;「http://www.chemrx.com」から入手可能な骨格当たり1000〜5000個の化合物を含むChemRx Diversity Library;Nanoscale Combinatorial Synthesis社(Menlo Park, CA)から入手可能なthe Nanosyn Pharma libraryなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない)の合成ライブラリーから入手することができ、あるいは、当該技術分野で周知の方法を用いる組合せの合成によって生成することができる。分子を細胞に送達する態様では、先に記載したように、細胞を電場(例えば、細胞処置チャンバー中又は電気せん孔法に適用されるセンサーチャンバー中)に一過的に曝露することにより、先に記載された任意の分子を、細胞によって取り上げてもよい。
(周期的に再感作されたイオンチャネルセンサーの提供)
化合物(アゴニスト又はモジュレーター又は薬物のような)を広い範囲のイオンチャネルに結合することは、これらのチャネルにおける構造の変化を誘引し、細胞膜にわたるイオンのフラックスを起こさせるばかりでなく、イオンチャネルに脱感作を起こし、例えば、持続性、リガンド結合、未切断、及び非導電性状態に置く原因にもなる(例えば、「Jones 及び Westbrook, 1996, GL Trends Neurosci. 19:96-101」を参照されたい)。普通、多くのタイプのイオンチャネルの脱感作が数ミリ秒の間に起こり、中枢神経系におけるシナプス情報を加工し修正する機構の1つと考えられる。脱感作は、神経伝達物質又は他の神経モジュレーターによるイオンチャネルの過剰な活性によって起こされた刺激毒性プロセスを予防する、負のフィードバック機構としても作用しているかもしれない(例えば、「Nahum-Levy, et al., 2000, Biophys J. 80:2152-2166」;「Swope et al., 1999, Adv. Second Messenger Phosphoprotein. Res. 33,:49-78」を参照されたい)。
一態様では、例えばHTS適用において、速い選別速度を達成するために、センサーチャンバー中のパッチクランプの細胞(複数を含む)を、異なった流体の流れに間断なく曝す。イオンチャネル及び受容体の迅速な再感作を達成するため、疑いのあるモジュレーター、アゴニスト又は受容体/イオンチャネルの薬物を含む送達サンプルは、受容体/イオンチャネル(例えば、いかなるアゴニストも含まない緩衝液)の再感作のための緩衝液を送達するセンサーチャンバー内に圧力を介して切り替えられる。イオンチャネル及び受容体を再感作することに加えて、リガンドと薬物曝露との間の細胞上へのこの緩衝液の送達は、リガンド及び前もって細胞に投与された薬物を洗い流す働きをする。従って、この態様では、周期的に応答するイオンチャネルセンサーを提供することによって、システムを、特定のイオンチャネルのアゴニスト、モジュレーター又は薬物を選別するために使用される。例えば、緩衝液のパルス又は定常状態流れ送達をセンサーに提供することによって、システムは、候補アゴニスト、モジュレーター又は薬物を送達するチャネル出口に曝露された時、再感作される細胞を提供する。
所望のデータを得るために、サンプル及び緩衝液の個々の流れへ細胞(複数を含む)を曝す可変の速度と、センサーチャンバーをわたる可変の圧力低下を、前もってプログラムされた指示から、あるいはパッチクランプの電極(例えば、検出されたシグナルをベースとする又はリアルタイムで)に電気的に連通している、又はGPCRs活性の蛍光読み出しの場合には光学的に連通している、検出器からのフィードバックシグナルに応答して、システムによって実施することができる。
従って、システムを、受容体/イオンチャネルを含む細胞周辺の微小環境を迅速に変更するために使用することができる。例えば、システムは、周期的応答性イオンチャネルを提供することができる。ここで使用される基板及びマイクロチャネルは寸法が小さい(これは迅速な大量移送をもたらす)ため、当該システムは、場合によっては、ユーザーに、1個のパッチクランプのセンサーを用いて薬物を毎秒数百(すなわち毎時間数百万)の速度で選別することを可能にし、提供される薬物及び再感作溶液は、同程度の速度で、センサーに順番に送達される。以上で検討したように、曝露速度を、細胞ベースのセンサーの生理的応答を考慮して修正することができ、例えば、ゆっくりと平衡化する受容体には、より遅い走査速度を提供する。システムは、複数のセンサーを、同じ条件で同時に曝露するという、利点のある、冗長及び多重も可能にする。
用量反応曲線は、薬物の作用及び力価に関する種々の情報を提供する。マイクロピペットを含む、従来の方法を使用して用量応答曲線を得ることは、しばしば、時間がかかり面倒である可能性がある。細胞(複数を含む)周辺の微小環境の迅速で制御された操作に関し微小流体を使用する、本発明は、用量応答測定に特異的に適用される。用量応答関係は、ほとんどの場合、直線−対数プロットでS字型曲線を描き、ヒルロジスティック関数により記載することができる。
I=Imax/[1+(EC50/C)n]
式中、Iは全細胞電流であり、Cはリガンドの濃度であり、Imaxは最高電流(例えば、全チャネルが開放状態にあるときのもの)であり、EC50値は最大値の半分(例えば、受容体集団の半分が活性化された時のものであり、しばしばリガンドの解離常数、KD値に等しい)であり、そしてnは受容体に結合するリガンドの化学量を反映するヒル係数である。
この開示の利益を有している当業者は、用量応答曲線を作り出すため、及びアゴニスト及びアンタゴニストを検出及び特定化するために、このシステムを如何に使用するかを理解するであろう。例えば、米国特許出願番号10/345,107号及び10/645,834号(これらは、参照して本明細書にその全てが取り込まれている)を参照されたい。
薬物分子の受容体介在応答を活性化する能力は、無であるか又は全てであるかの特性と言うより段階的特性である。同じ受容体上で作用する、一連の化学的に関連するアゴニストを細胞上でテストすると、最大応答(例えば、高濃度においてアゴニストが生成することができる最も大きな応答)は、一般的に、アゴニストのそれぞれで相違する。ある化合物(「完全アゴニスト」として知られる)は、最大応答を作り出すことができるが、「部分アゴニスト」と言われる他のものは、準最大応答しか作り出すことはできない。従って、「部分アゴニスト」は、完全アゴニストが受容体に結合するのを阻害することによって、「弱いアンタゴニスト」として作用する。従って、最大応答を作り出す公知のアゴニストとともに規定されたイオンチャネルを使用することによって、アゴニストの活性のグレードをモニターすることができる。
一態様では、システムを、イオンチャネル活性のアンタゴニストを選別するために使用する。評価を行うことができる適切なイオンチャネルとして、(i)脱感作しないイオンチャネル、(ii)脱感作するイオンチャネル、(iii)脱感作するが、活性化された時大きな電流変動を媒介するイオンチャネル、及び(iv)脱感作特性がアロステリックモジュレーター(例えば、レクチン)の不可逆的結合によってブロックされているイオンチャネルが挙げられる。アンタゴニストを検出するために、バイオセンサーによって発現されたイオンチャネル又は受容体は、アンタゴニストを適用している間、その前、又はその後に、アゴニストにより活性化される、あるいは「テストされる」ことが必要である。例えば、異なるアンタゴニストを、公知の薬理特性を有する明確なアゴニストと共に適用することができる。異なる濃度でのアンタゴニストを、一定濃度のアゴニストと共に、マイクロチャネルに負荷することもできる。
(実施例)
ここに、本発明を、以下の実施例に関連して更に詳しく説明する。以下のものは単なる例示であって、詳しい修正がなされてもよく、それは本発明の範囲内に属するものであることは理解されるであろう。