JP2005505456A - 切り込みを備えたトレッド、およびこれらの切り込みを成形する層板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】このトレッドは複数の切り込みを備えており、平均幅eの各切り込みは向い合い壁部(20)により構成されており、このトレッドは以下の点を特徴としている。各切り込みを構成する壁部(20)のうちの少なくとも1つは、前記壁部に対してレリーフを形成し、且つ前記壁部と直交する方向に測定して少なくとも幅eの1/10に等しい最大高さを有する少なくとも1つの第1系列および1つの第1系列のモチーフの線(310、410)を備えており、各系列の線は同じ方向に延びている複数の線よりなり、第1系列の線(310)は第2系列の線(410)と交差しており、壁部(20)のうちの少なくとも1つは、その全面にわたって、切り込みの幅eの1/100と1/10との間の平均粗さを備えている。
Description
【0001】
本発明はタイヤ用のトレッドパターンの分野に関する。より詳細には、本発明はトレッドに成形される切り込み、およびかかる切り込みを成形するのに使用される成形要素に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能を改良する内容において、出願人の会社は切り込みの種々の形状寸法が述べられている幾つかの特許を提出しており、これらの形状寸法は、道路を覆う水の膜をきるのに必要である追加のリッジを形成しながら、これらの切り込みの存在によりトレッドの剛性の損失を制限することが可能である。例えば、特許文献1はトレッドの厚さ内でジグザグ状の切り込みの特定の配列を述べており、特許文献2は道路で痕跡を形成して通るときに互いに嵌合するようになっているレリーフ状の模様を対向壁部に備えている切り込みを述べている。これらの種々の切り込みによれば、前記壁部間の相対移動を減少させるのに非常に適切なゴム混合物の壁部の機械的協働を確保する。
【0003】
新規な駆動補助装置(制動する場合の車輪アンチロック装置、アンチスキッド装置、安定性制御装置)を使用している車両の発展は、タイヤの性能に関しての要件が変化したことを意味している。
これらの車両では、道路と接触するようになっている複数のリッジを形成するように複数の切り込みを備えたトレッドを有するタイヤの必要性が見出された。これらの切り込みは、高い剪断応力下でこのトレッドの全体剛性の低減を制限しながら、低い剪断応力下で(特に雨天において、或いは道路が濡れているとき)互いに少なくとも部分接触状態あると、対向壁部間の相対移動をできるだけ減少させることができる新規な形状寸法を有している。
【0004】
公知な従来技術では、特定な寸法を有する切り込み粗さ領域を壁部に生じる利点を述べている文献がある。例えば、特許文献3は20ミクロンと300ミクロンとの間の粗さを推薦している。
しかしながら、これらの粗さ領域だけではこれらのタイヤのすべて使用条件下で良好な妥協を達成するには不十分であることが実証された。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4794965号
【特許文献2】
米国特許第5783002号
【特許文献3】
日本特許公報第96/175115号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性を満たすために、本発明によるタイヤは、その走行中、道路と接触するようになっている走行面を有するトレッドを備えている。このトレッドはその厚さ内へ延びている複数の切り込みを備えており、平均厚さeの各切り込みはゴム混合物の向い合い壁部により構成されており、各切り込みはこれを構成する壁部から実質的に同じ距離を隔てた箇所に位置している。このトレッドは以下の点を特徴としている。すなわち、各切り込みを構成する壁部のうちの少なくとも1つは、
前記壁部と直交方向に測定して、前記壁部に対してレリーフ状であって、少なくとも幅eの1/10に等しい最大高さを有している少なくとも1つの系列のモチーフの線を備えており、各系列の線は互いに実質的に平行な複数の線よりなり、
各切り込みを構成する壁部のうちの少なくとも1つは、
その全面にわたって複数のレリーフ状の要素を備えており、これらの要素は前記壁部にわたって規則正しく分布されており、切り込みの幅eの1/100と1/10との間の平均粗さをこの壁面に形成している。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つの壁部には、第1系列および第2系列のレリーフ状のモチーフの線が形成されており、それらの最大高さは、前記壁部と直交する方向に測定して、少なくとも幅eの1/10に等しく、第1系列の線は第2系列の線と交差している。有利には、第1系列の線は第2系列の線と少なくとも45°の鋭角を形成している。
このようにして、全体剛性が本発明による切り込みの存在により比較的邪魔されず、多数のリッジを備えているトレッドを得ることが可能である。本発明による切り込みによれば、同一ゴム材料で、前記切り込みを構成するゴム混合物の部分の壁部の同等な摩擦係数を実質的に増大することが可能である。この摩擦係数の増大は、特に道路との接触面に近い1つの壁部の反対壁部に対するわずかな移動を減少させる際に特に効果的である。(マクロレベルの粗さに匹敵する)レリーフ状であって、(ミクロレベルの粗さに匹敵する)表面粗さの線の組合せての存在により、意外なことに、主に低い或いは中間の応力の範囲において1つの壁部が向い合った壁部に及ぼす係止効果を高めている。
【0009】
得られた他の利点は以下の如くである。本発明による切り込みを備えたタイヤは道路上の水の存在にさほど敏感ではなく、同じゴム混合物の2つの滑らかな壁部間の摩擦係数に及ぼす水の存在の際立った影響は知られている(50%またはそれ以上である前記係数の減少)。
本発明は乗用車または重車両のタイヤ用のトレッドに使用されており、各場合、マクロレベルの粗さおよびミクロレベルの粗さの値は3mmほどである切り込みの平均幅の関数として容易に適合される。
好ましくは、少なくとも1つの壁部の各系列のレリーフ状のモチーフの線はトレッドの走行面と直交する方向と10°と80°との間の角度βだけ実質的に傾斜されており、これはそれらの長さの少なくとも一部にわたっている。
【0010】
本発明の他の対象は弾性体材料のトレッドモールドに嵌合するようになっている層板に関する。この層板は、平均厚さeの切り込みを構成する向い合い壁部をトレッドに成形するための主面を備えており、この層板の主面のうちの少なくとも一方は、前記壁部に対する少なくとも1つの系列の中空モチーフの線を備えており、これらの線は前記壁部と直交する方向に測定して少なくとも幅eの1/10に等しい最大深さを有しており、各系列のモチーフの線は互いに実質的に平行な複数の線よりなり、層板の主面のうちの少なくとも一方はその全面にわたって切り込みの幅eの1/100と1/10との間の同等な平均粗さを有している。
「中空モチーフの線」は連続した線または不連続なモチーフで形成された線を意味している。好ましくは、本発明による層板の少なくとも1つの主面は第1系列および第2系列の中空モチーフの線を備えており、各系列の線は同一方向に延びており、第1系列の線は第2系列の線と交差して少なくとも45°に等しい平均鋭角αを形成している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の特徴および利点は、限定的でない例として本発明の実施形態を示す添付図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
図1には、本発明による切り込みをトレッドに構成する向い合い壁部を成形するようになっている2つの主面を備えた平面状の全体形状寸法の層板1が見られる。2つの主面間で測定した層板の厚さは前記の場合0.6mmに等しい。この層板の平均表面はここでは、層板を同じ体積の2つの部分に分割し、半分の厚さで延びている平面状表面である。
【0012】
各主面2、2'のすべてに対して、層板で成形されたゴム材の壁部に、層板の厚さの1/10と1/100との間の一様なミクロレベルの粗さを得るためにショットブラストによる表面処理を行った。この表面処理は層板の主面にわたって規則正しく分布された複数のキャビティ3、3'を生じ、これらのキャビティは本件では40μmと50μmとの間の最大深さを有している。これらのキャビティ3、3'は図2でより詳細に見られ、図2は層板1の線II−IIに沿った断面図を示している。
【0013】
更に、2系列3、4の実質的に直線状の溝31、41が層板1の各主面2、2'に形成されている。第2系列3の溝31は三角形横断面を有しており、また0.1mmの最大深さおよび0.5mmの最大幅wp有しており、これらの溝31は本件では直線状であって、互いに平行であり、1mmに等しい平均ピッチで互いから離れている。溝間の平均ピッチは好ましくは少なくとも切り込みの平均長さL1の5%に等しく、多くともこの同長さL1の20%に等しい(本件では20mmに等しいこの長さL1は前記層板を備えたモールドで成形されたトレッドの走行面と平行な方向と平行に測定したものである)。
前記の場合、壁部2の溝31はトレッドの走行面と直交する方向と25°に等しい角度βを形成している(この方向は長さL1を測定する方向と直交している)。
主面2における第2系列の溝41は第1系列のものと同じ特性を有しており、第1系列と交差して45°に等しい平均鋭角を形成している。
【0014】
層板の他の主面2'に作られた系列の溝は前記のものと同様な特性を有している。もちろん、層板を備えて成形された切り込みの向い合い面間の相互作用を更に改良するために第1主面に作られたものと異なる配向を有する溝を第2主面に作ることが可能である。
溝が層板の主面に形成された結果、前記層板で成形された切り込みを構成する壁部にリブ(レリーフ状)が成形されており、ここでは、これらの系列のリブがミクロレベルの粗さを形成するものと考えられる。(本発明明細書で定義するような)ミクロレベルの粗さとマクロレベルの粗さとの組合せにより、低応力の現場でも中間応力の現場でも、走行中に良好なバランスを達成することが可能であることが認められた。
【0015】
線II−IIに沿った層板1の断面図を示す図2は溝31、31'の断面輪郭を示しており、これらの溝は実質的に三角形である。他方、複数のキャビティ3、3'により構成されたミクロレベルの粗さの領域が前記溝を含めて主面2、2'に見られる。
更に、切り込みが、これらを構成する対向壁部の差込みにより機械的協働を許容するのに適している幾何学的形態を持つ平均表面を有するように対策が取られてもよい。この機械的協働は、応力が実質的に増大するにつれて、本発明によるミクロレベルおよびマクロレベルの粗さの領域で得られる係止に影響すると言う利点をもたらす。
【0016】
図3は本発明による切り込みの壁部20を示しており、この切り込みはゴムトレッドのトレッドパターンブロック10に成形されている。幅Lのこの壁部20は前記幅Lと直交する方向Xに起伏部11を備えており(この方向Xはトレッドパターンブロック10の厚さ内で延びており)、前記起伏部はこの全体長さLにわたって延びている。これらの起伏部は、切り込みを構成し、且つ道路と接触して通るときに一方が他方に機械的に噛合う向い合い面に形成されている。更に、壁部20はミクロレベルの粗さとマクロレベルの粗さとの組合せを備えている(この組合せは線310、410で概略的に示すリブの形態である)。
【0017】
図3を参照して説明した場合では、ミクロレベルの粗さの領域は図1の支持体で説明した層板で成形することによって得られるものと同じである。
ここで定義するようなミクロレベルの粗さの領域とマクロレベルの粗さの領域との起伏部の存在による機械的噛合いの組合せは、特に車輪アンチロックまたはアンチスキッド装置の実施中、更に改良される性能を本発明によるトレッドを備えたタイヤに与える。
本発明は以上で説明し且つ図示した例に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなしに種々の変更例を行うことができる、例えば、切り込みを構成する壁部に成形された一連のレリーフは、壁部のうちの1つに接する平面への射影で見て、特に同心であろうとなかろうと円形の形態、ジグザグ形態、起伏形態などの非直線の軌跡を有してもよい。
同等に、レリーフの線は不連続な線の種類を形成する線分で形成されてもよく、各線分間の空間は前記線分の平均長さより小さい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による切り込みを成形するのに使用される金属層板を示す図である。
【図2】図1に示す層板の線II-IIに沿った断面図である。
【図3】トレッドに作られた本発明による切り込みのゴム壁部を示す図である。
Claims (10)
- 各々が向い合い壁部(20)により構成されている平均厚さeおよび平均表面Smの複数の切り込みを備えているタイヤ用の弾性体材料製トレッドにおいて、各切り込みを構成する壁部(20)のうちの少なくとも1つは、前記壁部と直角に測定して少なくとも幅eの1/10に等しい最大高さを有していて、前記壁部(20)に対してレリーフ状である少なくとも1つの系列のモチーフの線を備えており、各切り込みを構成する壁部のうちの少なくとも1つは更にその全面にわたって切り込みの幅eの1/100と1/10との間の平均粗さを有していることを特徴とするタイヤ用の弾性体材料製トレッド。
- 各切り込みを構成する壁部(20)のうちの少なくとも1つは、前記壁部と直角に測定して少なくとも幅eの1/10に等しい最大高さを有していて、前記壁部(20)に対してレリーフ状である少なくとも第1系列および第2系列のモチーフの線を備えており、各系列の線は同じ方向に延びている複数の線よりなり、第1系列の線は第2系列の線と交差していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用の弾性体材料製トレッド。
- 第1系列の線(310)は第2系列の線(410)と少なくとも45°に等しい平均鋭角を形成していることを特徴とする請求項2に記載のトレッド。
- 少なくとも1つの切り込みの平均表面Smは、1つの壁部の他の壁部に対する移動を減少させるために、道路と接触して通るときに前記切り込みを構成する壁部が互いに機械的に協働するように適した非平面状の形状寸法を有していることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載のトレッド。
- 平均表面Smはこれと直交する方向に少なくとも1つの起伏部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のトレッド。
- 少なくとも1つの壁部(20)のレリーフ状の線(310、410)はトレッドの走行面と直交する方向に対して10°と80°との間の角度βだけ傾斜されていることを特徴とする請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載のトレッド。
- 各系列のレリーフ状の線(310、410)間の平均ピッチは少なくとも切り込みの長さLの5%に等しく、多くともこの長さLの20%に等しいことを特徴とする請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載のトレッド。
- 平均厚さeの切り込みを構成する向い合い壁部をトレッドに成形するための主面(2、2')を備えていて、弾性体材料製のトレッドモールドに嵌合するようになっている層板(1)であって、この層板の主面のうちの少なくとも一方は、前記壁部に対して中空部を形成し、前記壁部と直交する方向に測定して少なくとも幅eの1/10に等しい最大深さを有する少なくとも1つの系列(3、4)のモチーフの線(31、41、31'、41′)を備えており、各系列(3、4)の線は互いに実質的に平行な複数の線よりなり、層板の主面のうちの少なくとも一方はその全面にわたって切り込みの幅eの1/100と1/10との間の同等な平均粗さを有している層板(1)。
- 層板の各主面(2、2')は前記基部にわたって規則正しく分布された第1(3)および第2(4)の複数の中空モチーフの線を備えており、中空のモチーフ(31、41、31'、41')は少なくとも幅eの1/10に等しい深さを有しており、第1系列のモチーフ(31、31')の線は第2系列のモチーフ(41、41')の線と交差して少なくとも45°に等しい鋭角を形成していることを特徴とする請求項8に記載のトレッドモールドに嵌合するようになっている層板(10)。
- レリーフ(11)状のモチーフは各主壁部に形成されており、一方の壁部のレリーフ(11)状のモチーフは、成形された切り込みを構成する壁部の機械的協働を許容するために他方の壁部のレリーフ状のモチーフと相補しており、この機械的協働は向い合い壁部の相対移動を制限していることを特徴とする請求項8または9に記載のトレッドモールドに嵌合するようになっている層板(1)。
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